JP2024063587A - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回生制動力と液圧制動力との協調制御を実行する制動制御装置において、ブレーキの引き摺りを抑制すること。【解決手段】制動制御装置(SC)は、回生制動力(Fg)を発生可能な回生装置(KG)を備える車両に適用される。制動制御装置(SC)は、マスタシリンダ(CM)とホイールシリンダ(CW)との間に配置され、前記マスタシリンダ(CM)のマスタ圧(Pm)を増加して前記ホイールシリンダ(CW)に出力する流体ユニット(HU)と、前記流体ユニット(HU)を制御するコントローラ(ECU)と、を備える。前記コントローラ(ECU)は、前記車両の制動操作部材(BP)の操作変位(Sp)に基づいて前記車両の全体に作用する総制動力(Fa)を発生する。このとき、前記総制動力(Fa)を、前記回生制動力(Fg)のみによって発生する場合には、作動している前記電動ポンプ(DB)を停止する。【選択図】図1

Description

本開示は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1には、回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータを停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することを目的に、「ハイブリッド車のブレーキ制御装置は、マスタシリンダ13と、ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRと、VDCブレーキ液圧ユニット2と、モータコントローラ8と、統合コントローラ9と、を備える。モータコントローラ8は、走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する。統合コントローラ9は、制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、マスタシリンダ圧による基本液圧分と回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分をVDCブレーキ液圧ユニット2による加圧分で補償する制御を行う。加えて、回生協調ブレーキ制御にてVDCモータ21を停止させた際、差圧弁であるM/Cカットソレノイドバルブ25,26による差圧制御を、VDCモータ21のモータ回転数に基づいて行う」旨が記載されている。
詳細には、特許文献1には、以下のことが記載されている。車速Vが、V<V≦V2の最大回生域車速範囲にある場合は、基本液圧分の発生減速度を、回生分の発生減速度により補償する回生協調制御により、目標減速度(=要求減速度)を達成できる。車速Vが、V>V2の回生制動力増加方向の車速範囲、あるいは、0<V≦V1の回生制動力減少方向の車速範囲では、基本液圧分の発生減速度を、回生分の発生減速度だけでは補償できないので、VDCブレーキ液圧ユニット2により補償しきれない分の液圧を加圧し、要求減速度を達成する。そして、車速がゼロとなり停車すると、(基本液圧分+加圧分)によって、要求減速度を達成する。停車と同時にVDCモータ21をOFFにすることで、VDCモータ21の作動頻度を低下させる。
出願人は、車両の制動時における安定性を確保しつつ安価な制動装置を提供することを目的に、特許文献2に記載されるような装置を開発している。該装置では、ブレーキECU16が、回生制動輪用差圧弁21および非回生制動輪用差圧弁31を制御するとともに回生制動輪用ポンプ24aおよび非回生制動輪用ポンプ34aを駆動することで、回生制動輪用差圧弁21の前後の間に形成される回生制動輪差圧および非回生制動輪用差圧弁31の前後の間に形成される非回生制動輪差圧を個別に制御する。ブレーキペダル11の操作量に応じた第1の要求制御液圧制動力と、回生制動部Aにより回生制動輪に実際に付与された回生実行値と、の関係に応じて、第1の要求制御液圧制動力を、回生制動輪差圧分に相当する制動力および非回生制動輪差圧分に相当する制動力に分配をする。
更に、特許文献2の装置では、マスタシリンダは、ピストンが初期位置から所定距離はなれた位置に到達しなければ基礎液圧(上記「基本液圧」に相当)が発生しないアイドルポートを備え、ピストンがアイドルポートを塞ぐまでの間において、基礎液圧が0である場合、回生制動輪には回生実行値が優先的に付与され、非回生制動輪には制動力が発生されない。つまり、制動時には、特許文献1の装置では、回生制動力よりも基礎液圧による制動力(「基礎制動力」ともいう)が優先的に発生されるが、特許文献2の装置では、逆に、基礎制動力よりも回生制動力が優先的に発生される。
ところで、特許文献2の装置において、車両が走行している際に、回生制動力のみが作用し、横滑り防止制御用のアクチュエータ(「ブレーキアクチュエータ15」に相当し、「流体ユニット」ともいう)の電動ポンプが駆動されてはいるが、調圧弁(「差圧制御弁21、31」に相当)には給電が行われていない状況を想定する。このとき、常開型の調圧弁は全開状態である。しかしながら、弁体の隙間(即ち、開弁量)には限りがあり、抵抗が存在するため、調圧弁が全開状態であっても、電動ポンプの駆動によって、ホイールシリンダの液圧(「ホイール圧」という)が僅かに生じる。ホイール圧の発生により、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材(例えば、ブレーキディスク)に押圧されるので、ブレーキの引き摺りが生じることがある。
特開2012-081814号公報 特開2014-196033号公報
本発明の目的は、回生制動力と液圧制動力との協調制御を実行する車両の制動制御装置において、ブレーキの引き摺りが抑制され得るものを提供することである。
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)は、回生制動力(Fg)を発生可能な回生装置(KG)を備える車両に適用される。車両の制動制御装置(SC)は、マスタシリンダ(CM)とホイールシリンダ(CW)との間に配置され、前記マスタシリンダ(CM)のマスタ圧(Pm)を増加して前記ホイールシリンダ(CW)に出力する流体ユニット(HU)と、前記流体ユニット(HU)を制御するコントローラ(ECU)と、を備える。
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)では、前記コントローラ(ECU)は、前記車両の制動操作部材(BP)の操作変位(Sp)に基づいて前記車両の全体に作用する総制動力(Fa)を発生し、前記総制動力(Fa)を、前記回生制動力(Fg)のみによって発生する場合には、前記電動ポンプ(DB)を停止する。例えば、前記コントローラ(ECU)は、前記操作変位(Sp)がゼロ(0)から増加する場合に、前記電動ポンプ(DB)の作動を開始する。
調圧弁UBが全開状態であっても、弁体と弁座との隙間は限られるので、循環流KLに対して該隙間が抵抗となり、調圧弁UBでの差圧Saが僅かに増加する。これにより、ブレーキの引き摺りが生じる。上記構成によれば、総制動力Faが、回生制動力Fgのみによって発生される場合(即ち、差圧Saの発生が不要な場合)には、電動ポンプDBが停止されるため、ブレーキの引き摺りが防止される。
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)では、前記マスタシリンダ(CM)は、マスタリザーバ(RV)に連通するポート(PI)の位置によって前記操作変位(Sp)が増加しても前記マスタ圧(Pm)が発生しない無効変位(sx)を有している。そして、前記コントローラ(ECU)は、前記操作変位(Sp)が前記無効変位(sx)よりも大きくなる蓋然性が高い場合には、前記電動ポンプ(DB)の停止を禁止する。例えば、前記コントローラ(ECU)は、前記操作変位(Sp)が増加している場合に、前記蓋然性が高いことを判定する。
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)では、前記コントローラ(ECU)は、前記総制動力(Fa)を前記回生制動力(Fg)のみによって発生する場合には、作動している前記電動ポンプ(DB)を停止するが、前記総制動力(Fa)を、前記回生制動力(Fg)、及び、前記マスタ圧(Pm)による基本制動力(Fcm)によって発生する場合には、前記電動ポンプ(DB)を停止しない。
アイドルポートPIが閉じられている状態で電動ポンプDBが停止されると、マスタ圧Pmに変動が生じ、制動操作部材BPの操作力Fpが変化する。上記構成によれば、アイドルポートPIが閉じられる可能性が高い場合、又は、アイドルポートPIが既に閉じられる場合には、電動ポンプDBの停止は禁止される。制動操作部材BPの操作力Fpの変化が抑制されるため、制動操作部材BPの操作感が向上される。
制動制御装置SCを搭載した車両、及び、制動制御装置SCの構成を説明するための概略図である。 マスタシリンダCMの構成を説明するための概略図である。 回生協調制御の処理を説明するためのフロー図である。 回生協調制御の動作を説明するための特性図、及び、時系列線図である。
<構成部材等の記号、及び、記号末尾の添字>
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「f」、「r」は、それが前後輪の何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。例えば、各車輪に設けられたホイールシリンダCWにおいて、「前輪ホイールシリンダCWf」、「後輪ホイールシリンダCWr」と表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は総称を表す。例えば、「CW」は、車両の前後車輪に設けられたホイールシリンダの総称である。
マスタシリンダCMからホイールシリンダCWに至るまでの流体路において、マスタシリンダCMに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(マスタシリンダCMから遠い側)が「下部」と称呼される。また、流体ユニットHUでの制動液BFの循環流KLにおいて、流体ポンプQBの吐出部に近い側(吸入部から離れた側)が「上流側」と称呼され、流体ポンプQBの吸入部に近い側(吐出部から離れた側)が「下流側」と称呼される。
マスタシリンダCM、流体ユニットHU、及び、ホイールシリンダCWは、流体路(連絡路HS)にて接続される。更に、流体ユニットHUでは、各種構成要素(UB等)が流体路にて接続される。ここで、「流体路」は、制動液BFを移動するための経路であり、配管、アクチュエータ内の流路、ホース等が該当する。以下の説明では、連絡路HS、戻し路HL、減圧路HG等は流体路である。
以下の説明において、車両全体に作用する実際の制動力を「総制動力Fa(実際値)」と称呼する。総制動力Faのうちで、回生装置KG(特に、回生ジェネレータGN)によって実際に発生される制動力が「回生制動力Fg(実際値)」であり、制動制御装置SC(特に、ホイールシリンダCWの液圧Pw)によって実際に発生される制動力が「液圧制動力Fw(実際値)」である。従って、回生制動力Fgと液圧制動力Fwとの和が、総制動力Faである。更に、液圧制動力Fwのうちで、マスタシリンダCMによって発生される制動力が「基本制動力Fcm(実際値)」であり、流体ユニットHUによって発生される制動力が「制御制動力Fhu(実際値)」である。従って、基本制動力Fcmと制御制動力Fhuとの和が、液圧制動力Fwである。
回生制動力Fgは回生コントローラEGによって、制御制動力Fhuは制動コントローラECUによって、夫々電子制御される。実際に発生される回生制動力Fgに対応する目標値が「目標回生制動力Fgt(「目標回生力」ともいう)」であり、実際に発生される制御制動力Fhuに対応する目標値が「目標制御制動力Fht(「目標液圧力」ともいう)」である。また、実際に発生される総制動力Faに対応する目標値が「目標総制動力Ft」である。従って、車両では、回生制動力Fg(実際値)が目標回生制動力Fgt(目標値)に一致するように制御されるとともに、制御制動力Fhu(実際値)が目標制御制動力Fht(目標値)に一致するように制御される。これにより、総制動力Fa(実際値)が、目標総制動力Ft(目標値)に一致するように制御される。
<制動制御装置SCを搭載した車両>
図1の概略図を参照して、制動制御装置SCを搭載した車両、及び、制動制御装置SCの構成について説明する。
車両は、走行用の電気モータを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。車両には、回生装置KGが備えられる。回生装置KGは、エネルギ回生用のジェネレータGN、回生装置KG用の制御ユニットEG(「回生コントローラ」ともいう)、及び、回生装置KG用の蓄電池BGにて構成される。エネルギ回生用のジェネレータGN(「回生ジェネレータ」ともいう)は、走行用の電気モータでもある。回生制動では、電気モータ/ジェネレータGNが発電機として作動し、発電された電力が、回生コントローラEGを介して、回生装置用蓄電池BGに蓄えられる。このとき、車輪WHには回生制動力Fgが作用する。即ち、回生装置KGは、回生制動力Fgを発生することができる。例えば、回生装置KGは、前輪WHfに備えられる。該構成では、回生装置KGによって、前輪WHfに回生制動力Fgが発生される。
車両の前輪及び後輪には、制動装置が備えられる。制動装置は、ブレーキキャリパ、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)、及び、回転部材KT(例えば、ブレーキディスク)にて構成される。ブレーキキャリパ(非図示)には、ホイールシリンダCWが設けられる。ホイールシリンダCW内の液圧Pw(「ホイール圧」という)によって、摩擦部材(非図示)が、各車輪WHに固定された回転部材KTに押し付けられる。これにより、車輪WHには液圧制動力Fwが発生される。
車両には、制動操作部材BPが備えられる。制動操作部材BP(例えば、ブレーキペダル)は、運転者が車両を減速するために操作する部材である。車両には、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSPが設けられる。操作変位Spは、制動操作部材BPの操作量(制動操作量)を表示する状態量(状態変数)の1つである。操作変位Spの信号は、コントローラECUに入力される。
車両には、各種センサが備えられる。具体的には、アンチロックブレーキ制御、横滑り防止制御等の各車輪WHのホイール圧Pwを個別に制御する制動制御(「各輪独立制御」という)のために、車輪WHには、その回転速度(車輪速度)Vwを検出する車輪速度センサVWが備えられる。また、操舵量Sw(例えば、ステアリングホイールの操作角)を検出する操舵量センサ、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサ、車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ、及び、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサが備えられる(以上、非図示)。車輪速度Vw、操舵量Sw、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyの各信号は、コントローラECUに入力される。
車両には、制動制御装置SCが備えられる。制動制御装置SCでは、2系統の制動系統として、所謂、前後型(「II型」ともいう)のものが採用される。制動制御装置SCによって、実際のホイール圧Pwが調整される。
制動制御装置SC(特に、制動コントローラECU)、及び、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)は、通信バスBSに接続される。通信バスBSによって、複数のコントローラ(ECU、EG等)の間で信号が共有される。つまり、複数のコントローラは、通信バスBSに信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を送信することができるとともに、通信バスBSから信号を受信することができる。
≪制動制御装置SC≫
制動制御装置SCは、マスタシリンダCM、ブレーキブースタBB、流体ユニットHU、及び、制動コントローラECUにて構成される。
マスタシリンダCMには、タンデム型のものが採用される。具体的には、マスタシリンダCMには、プライマリマスタピストンNM、及び、セカンダリマスタピストンNNが挿入される。2つのマスタピストンNM、NNによって、マスタシリンダCMの内部は、2つの液圧室Rmf、Rmr(=Rm)に区画されている。前輪、後輪液圧室Rmf、Rmrは、「前輪、後輪マスタ室」と称呼される。マスタピストンNM、NNは、操作ロッドRDを介して、制動操作部材BPに連動して移動される。
制動操作部材BPの操作力Fpを軽減するよう、ブレーキブースタBBが備えられる。つまり、ブレーキブースタBBによって、制動操作部材BPの操作力Fpが助勢される。例えば、ブレーキブースタBBとして負圧式のものが採用される。負圧式ブースタでは、内燃機関の吸気負圧、或いは、負圧ポンプにて生成された負圧が利用される。また、ブレーキブースタBBには、電動式のものが採用される。電動式ブースタでは、電気モータの動力、或いは、アキュムレータに蓄えられた液圧が利用される。
タンデム型マスタシリンダCMの前輪、後輪マスタ室Rmf、Rmr(=Rm)と、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWr(=CW)とは、前輪、後輪連絡路HSf、HSr(=HS)によって接続される。換言すれば、連絡路HSは、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとを接続する流体路である。前輪、後輪連絡路HSf、HSrは、流体ユニットHUの内部で、夫々、2つに分岐され、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrに接続される。
制動操作部材BPが操作されていない場合(非制動時)には、マスタピストンNM、NNは、最も後退した位置(即ち、マスタ室Rmの体積が最大になる位置)にある。該状態では、マスタシリンダCMのマスタ室RmとマスタリザーバRVとは連通している。マスタリザーバRVは、「大気圧リザーバ」とも称呼され、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。
制動操作部材BPが操作されると、マスタピストンNM、NNが前進方向Ha(マスタ室Rmの体積が減少する方向)に移動される。該移動により、マスタ室RmとマスタリザーバRVとの連通は遮断される。そして、マスタピストンNM、NNが、更に、前進方向Haに移動されると、前輪、後輪マスタ室Rmf、Rmrの内圧である前輪、後輪マスタ圧Pmf、Pmr(=Pm)が「0(大気圧)」から増加される。これにより、マスタシリンダCMのマスタ室Rmからは、マスタ圧Pmに加圧された制動液BFが、ホイールシリンダCWに向けて出力(圧送)される。マスタ圧Pmによって、車輪WHには、基本制動力Fcmが発生される。制動操作部材BPが戻されると、マスタピストンNM、NNは、前進方向Haとは反対の後退方向Hb(マスタ室Rmの体積が増加する方向)に移動される。これにより、ホイールシリンダCW内の制動液BFは、マスタシリンダCMに向けて戻される。
≪流体ユニットHU≫
流体ユニットHUは、連絡路HSにおいて、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとの間に設けられる。流体ユニットHUは、アンチロックブレーキ制御、トラクション制御、横滑り防止制御等の各輪独立制御を実行するための装置である。流体ユニットHUには、マスタシリンダCMから、前輪、後輪マスタ圧Pmf、Pmr(=Pm)が供給される。そして、流体ユニットHUにて、前輪、後輪マスタ圧Pmf、Pmrが調整(増減)され、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrの液圧Pwf、Pwr(前輪、後輪ホイール圧)として出力される。
流体ユニットHUは、マスタ圧センサPM、調圧弁UB、流体ポンプQB、電気モータMB、調圧リザーバRB、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
前輪、後輪調圧弁UBf、UBr(=UB)が、前輪、後輪連絡路HSf、HSr(=HS)に設けられる。調圧弁UBは、常開型のリニア電磁弁(差圧弁)である。調圧弁UBによって、ホイール圧Pwは、前後車輪系統でマスタ圧Pmから個別に増加されることが可能である。
前輪、後輪マスタ圧センサPMf、PMr(=PM)が、マスタシリンダCM(特に、前輪、後輪マスタ室Rmf、Rmr)から供給される実際の液圧Pmf、Pmr(前輪、後輪マスタ圧)を検出するよう、前輪、後輪調圧弁UBf、UBrの上部(マスタシリンダCMに近い側の連絡路HSの部位)に設けられる。マスタ圧センサPMは、流体ユニットHUに内蔵される。前輪、後輪マスタ圧Pmf、Pmr(=Pm)の信号は、制動コントローラECUに入力される。なお、前輪マスタ圧Pmfと後輪マスタ圧Pmrとは実質的には同じであるため、前輪、後輪マスタ圧センサPMf、PMrのうちの何れか一方は省略されてもよい。例えば、後輪マスタ圧センサPMrが省略され得る。該構成では、前輪マスタ圧センサPMfによって前輪マスタ圧Pmfのみが検出される。
前輪、後輪戻し路HLf、HLr(=HL)によって、前輪、後輪調圧弁UBf、UBrの上部(マスタシリンダCMに近い側の連絡路HSの部位)と、前輪、後輪調圧弁UBf、UBrの下部(ホイールシリンダCWに近い側の連絡路HSの部位)とが接続される。前輪、後輪戻し路HLf、HLrには、前輪、後輪流体ポンプQBf、QBr(=QB)、及び、前輪、後輪調圧リザーバRBf、RBr(=RB)が設けられる。流体ポンプQBは、電気モータMBによって駆動される。
電気モータMBが駆動されると、流体ポンプQBによって、制動液BFが、調圧弁UBの上部から吸い込まれ、調圧弁UBの下部に吐出される。これにより、連絡路HS、及び、戻し路HLには、流体ポンプQB、及び、調圧リザーバRBを含む、制動液BFの循環流KL(即ち、前輪、後輪循環流KLf、KLrであり、破線矢印で示す)が発生する。調圧弁UBによって、連絡路HSの流路が狭められ、制動液BFの循環流KLが絞られると、その際のオリフィス効果によって、調圧弁UBの下部の液圧Pq(「調整圧」という)が、調圧弁UBの上部の液圧Pm(マスタ圧)から増加される。換言すれば、循環流KLにおいて、調圧弁UBに対して、下流側の液圧Pm(マスタ圧)と上流側の液圧Pq(調整圧)との液圧差Sa(「差圧」ともいう)が、調圧弁UBによって発生される。なお、マスタ圧Pmと調整圧Pqとの大小関係では、調整圧Pqはマスタ圧Pm以上である(即ち、「Pq≧Pm」)。差圧Saによって、制御制動力Fhuが発生される。制動制御装置SCでは、流体ユニットHUにて差圧Saが調整されることにより、回生協調制御(後述)が実行される。
流体ユニットHUの内部にて、前輪、後輪連絡路HSf、HSrは、夫々、2つに分岐されて、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrに接続される。各ホイール圧Pwを個別に調節できるよう、ホイールシリンダCW毎に、常開型のインレット弁VI、及び、常閉型のアウトレット弁VOが設けられる。具体的には、インレット弁VIは、分岐された連絡路HS(即ち、連絡路HSの分岐部に対してホイールシリンダCWに近い側)に設けられる。連絡路HSは、インレット弁VIの下部(ホイールシリンダCWに近い側の連絡路HSの部位)にて、減圧路HGを介して、調圧リザーバRBに接続される。そして、減圧路HGには、アウトレット弁VOが配置される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOとして、オン・オフ型の電磁弁が採用される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOによって、ホイール圧Pwは、各車輪で調整圧Pqから個別に減少され得る。
流体ユニットHUでは、ホイール圧Pwが、ホイールシリンダCW毎に独立して調整される。ホイール圧Pwを減少するためには、インレット弁VIが閉弁され、アウトレット弁VOが開弁される。ホイールシリンダCWへの制動液BFの流入が阻止されるとともに、ホイールシリンダCW内の制動液BFが調圧リザーバRBに流出するので、ホイール圧Pwは減少される。ホイール圧Pwを増加するためには、インレット弁VIが開弁され、アウトレット弁VOが閉弁される。制動液BFの調圧リザーバRBへの流出が阻止され、調圧弁UBからの調整圧PqがホイールシリンダCWに供給されるので、ホイール圧Pwが増加される。但し、ホイール圧Pwの増加の上限は調整圧Pqまでである。ホイール圧Pwを保持するためには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが共に閉弁される。ホイールシリンダCWは流体的に封止されるので、ホイール圧Pwが一定に維持される。
インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOに給電が行われず、それらの作動が停止している場合には、インレット弁VIは開弁され、アウトレット弁VOは閉弁される。この状態では、ホイール圧Pwは、調整圧Pqに等しい(即ち、「Pq=Pw」)。
≪制動コントローラECU≫
流体ユニットHUは、制動コントローラECUによって制御される。制動コントローラECUは、マイクロプロセッサMP、及び、駆動回路DRにて構成される。制動コントローラECUは、通信バスBSを介して、回生コントローラEGと信号を共有することができる。
制動コントローラECU(特に、マイクロプロセッサMP)には、車輪速度Vw、操舵量Sw、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyが入力される。制動コントローラECUにて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vx(車両の走行速度)が演算される。制動コントローラECUでは、以下に列挙する各輪独立制御が実行される。具体的には、各輪独立制御として、車輪ロックを防止するアンチロックブレーキ制御(所謂、ABS制御)、駆動車輪の空転(スピン)を抑制するトラクション制御、及び、アンダステア・オーバステアを抑制して車両の方向安定性を向上する横滑り防止制御(所謂、ESC)が実行される。加えて、制動コントローラECUには、通信バスBSを介して、限界回生制動力Fx(後述)が入力される。そして、限界回生制動力Fxに基づいて、回生協調制御が実行される。
制動コントローラECUでは、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムに応じて、駆動回路DRが制御される。具体的には、駆動回路DRによって、流体ユニットHUを構成する電気モータMB、及び、各種電磁弁(UB等)が駆動される。駆動回路DRには、電気モータMBを駆動するよう、スイッチング素子(例えば、MOS-FET)にてHブリッジ回路が構成される。また、駆動回路DRには、各種電磁弁(UB等)を駆動するよう、スイッチング素子が備えられる。マイクロプロセッサMPの制御アルゴリズムに基づいて、調圧弁UBの駆動信号Ub、インレット弁VIの駆動信号Vi、アウトレット弁VOの駆動信号Vo、電気モータMBの駆動信号Mbが演算される。そして、駆動信号(Ub等)に基づいて、駆動回路DRによって、電気モータMB、及び、電磁弁UB、VI、VOへの供給電流が制御される。具体的には、駆動回路DRには、電気モータMBへの供給電流Im(実際値であり、「モータ電流」という)を検出するモータ電流センサ(非図示)、及び、調圧弁UBへの供給電流Ib(実際値であり、「調圧弁電流」という)を検出する調圧弁電流センサ(非図示)が備えられている。そして、モータ駆動信号Mb、及び、調圧弁駆動信号Ubに応じて、モータ電流Im、及び、調圧弁電流Ibが調整される。
なお、回生協調制御の実行に際しては、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOは駆動(電力供給)されず、電気モータMB、及び、調圧弁UBが駆動される。従って、インレット弁VIは開弁状態を、アウトレット弁VOは閉弁状態を、夫々維持する。このため、回生協調制御の実行時には、調整圧Pqは、ホイール圧Pwとして流体ユニットHUから出力される。つまり、回生協調制御では、調整圧Pqとホイール圧Pwとは等しい。
<マスタシリンダCMの構成>
図2の概略図を参照して、マスタシリンダCMの構成について説明する。上述するように、マスタシリンダCMには、マスタピストンNMが挿入される。マスタシリンダCMには、前輪マスタ室RmfとマスタリザーバRVとを接続するアイドルポートPI(連通孔)が形成されている。また、マスタシリンダCMには、前輪マスタ室Rmfと、流体ユニットHU(最終的には、前輪ホイールシリンダCWf)とを接続する出力ポートPOが形成されている。即ち、出力ポートPOには、前輪連絡路HSfが接続されている。
制動操作部材BPが操作されていない状態では、マスタピストンNMは、マスタスプリングDMによって、後退方向Hbに押圧されている。これにより、マスタピストンNMは、その初期位置にあり、前輪マスタ室Rmfの体積は最大の状態である。制動操作部材BPが操作されると、操作ロッドRDによって、マスタピストンNMは、前進方向Haに押される。これにより、前輪マスタ室Rmfの体積は徐々に減少される。このとき、前輪マスタ室Rmf内の制動液BFは、アイドルポートPI(連通孔)を介して、マスタリザーバRVに移動するので、前輪マスタ圧Pmfは増加せず、「0(大気圧)」のままである。後輪マスタ室Rmr内の後輪マスタ圧Pmrは、前輪マスタ圧Pmfと平衡状態にあるため、同様に、後輪マスタ圧Pmrは「0」のままである。
マスタピストンNMが更に前進方向Haに移動されると、マスタピストンNMによって、アイドルポートPIが塞がれ、前輪マスタ室RmfとマスタリザーバRVとの連通が遮断される。この状態で、マスタピストンNMが前進方向Haに移動されると、前輪、後輪マスタ圧Pmf、Pmrが「0」から増加され、制動液BFが、出力ポートPOから、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrに向けて圧送される。
操作変位Spは、マスタピストンNMが初期位置にある状態が基準とされる。即ち、「Sp=0」の場合(非制動時)が、マスタピストンNMの初期位置に対応している。そして、マスタピストンNMが、アイドルポートPIを塞いでいない状態から、アイドルポートPIを塞ぐ状態に遷移するときの操作変位Spが、「無効変位sx」と称呼される。つまり、操作変位Spが「0」から無効変位sxまでの範囲では、マスタ圧Pmは発生されず、基本制動力Fcmは「0」のままである。そして、操作変位Spが無効変位sx以上になると、マスタ圧Pm(結果、基本制動力Fcm)が発生される。無効変位sxは、効率良くエネルギが回生されるよう、最大回生制動力fx(後述)に対応して設定される。
アイドルポートPIの開口部は、所定の断面積を有する。無効変位sxは、詳細には、マスタシリンダCMのマスタ室RmとマスタリザーバRVとの間で、制動液BFが移動され難くなる位置に相当する。例えば、無効変位sxは、アイドルポートPIの開口部が完全に塞がれる状態に相当する。しかし、無効変位sxでは、該開口部が完全に塞がれていなくてもよい。つまり、無効変位sxでは、アイドルポートPIの開口部の断面積が所定割合だけ閉塞される状態であってもよい。しかしながら、無効変位sxでは、マスタ室RmとマスタリザーバRVとの間の制動液BFの移動が制限されなければならないので、「Sp=sx」では、開口部の断面積が少なくとも半分は塞がれている。換言すれば、アイドルポートPIの開口部が半分以上塞がれる位置が無効変位sxに相当する。
<回生協調制御の処理>
図3のフロー図を参照して、回生協調制御の処理について説明する。「回生協調制御」では、回生装置KGによって実際に発生される回生制動力Fgと、流体ユニットHUによって実際に発生される制御制動力Fhuとが協働される。回生協調制御により、車両の減速性能が確保された上で、エネルギ回収が効率的に行われる。
回生協調制御では、電気モータMB、及び、調圧弁UBが制御され、ホイール圧Pwが調節される。なお、回生協調制御の実行時には、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOへの給電は行われないため、「Pq=Pw」である。回生協調制御のアルゴリズムは、制動コントローラECUのマイクロプロセッサMPにプログラムされている。
ステップS110にて、操作変位Sp、車輪速度Vw、限界回生制動力Fx、等の各種信号が読み込まれる。操作変位Spは、操作変位センサSPによって検出される。車輪速度Vwは、車輪速度センサVWによって検出される。そして、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vx(走行速度)が演算される。車体速度Vxは、通信バスBSを介して、回生コントローラEGに送信される。
「限界回生制動力Fx(「限界回生力」ともいう)」は、回生装置KGが発生し得る回生制動力Fgの上限値(限界値)である。つまり、回生装置KGは、「0」から限界回生力Fxまでの範囲(限度)で、回生制動力Fgを、実際に発生することができる。限界回生力Fxは、「アベイラビリティ」とも称呼される。限界回生力Fxは、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)にて演算され、通信バスBSを介して、制動コントローラECUにて取得される。
回生装置KGでの回生量(即ち、回生制動力Fg)は、回生コントローラEGのパワートランジスタ(IGBT等)の定格、及び、蓄電池BGの充電受入性によって制限される。例えば、回生装置KGによる回生制動力Fgは、所定の電力(単位時間当りの電気エネルギ)に制御される。電力(仕事率)が一定であるため、回生制動力Fgは、回生ジェネレータGNの回転数Ng(即ち、車輪WHの回転数であり、車体速度Vxに相当)に反比例する。また、回生ジェネレータGNの回転数Ngが低下すると、回生制動力Fgは減少する。更に、限界回生制動力Fxには、最大回生制動力fx(「最大回生力」ともいう)の制限が設けられる。
限界回生力Fx(例えば、最大回生力fx)は、回生装置KGの作動状態で変化する。具体的には、回生装置KGの作動状態が不適である場合(蓄電池BGの満充電時、パワートランジスタの高温時等)には、限界回生力Fxは低下する。これに伴い、最大回生力fxも低下する。
以上のことから、回生コントローラEGでは、回生装置KGが適正に作動する状態(「適正状態」ともいう)での限界回生力Fxの特性Zfa(「適正時特性」ともいう)に一致するように、車体速度Vxに応じた演算マップZfxが設定されている(限界回生力演算ブロックFXを参照)。「回生装置KGの適正状態」では、蓄電池BGの充電状態に余裕があり、パワートランジスタの作動状態(温度等)が適正な範囲内にある。
回生コントローラEGでは、車体速度Vx、及び、演算マップZfxに基づいて、限界回生力Fxが決定される。詳細には、車体速度Vxが第1所定速度vo以上の場合には、車体速度Vxの減少に従って、限界回生力Fxが増加するように決定される。例えば、演算マップZfxでは、「Vx≧vo」において、車体速度Vxと限界回生力Fxとは、反比例の関係で表される。これは、回生される電力が一定であることを意味する。また、車体速度Vxが第2所定速度vp未満の場合には、車体速度Vxの減少に従って、限界回生力Fxが減少するように決定される。そして、車体速度Vxが、第2所定速度vp以上、且つ、第1所定速度vp未満の場合には、限界回生力Fxは最大回生力fxに制限される。第1、第2所定速度vo、vp、及び、最大回生力fxは、予め設定された所定値(定数)である。ここで、第1所定速度voは第2所定速度vpよりも大きい値として設定される(即ち、「vo>vp」)。なお、演算マップZfxでは、車体速度Vxに代えて、回生ジェネレータGNの回転数Ng、或いは、車輪速度Vwが採用されてもよい。
マスタシリンダCMでは、無効変位sxが最大回生力fxに対応するように設定される。最大回生力fxは、回生装置KGの適正状態において、回生装置KGが発生し得る回生制動力Fgの最大値である。また、無効変位sxは、マスタシリンダCMが基本制動力Fcmを発生させない操作変位Spの最大値である。操作変位Spが無効変位sxに達する場合に、回生制動力Fgが最大回生力fxに達するように、アイドルポートPIの位置が幾何的に定められている。これにより、操作変位Spが「0」から無効変位sxまでの範囲では、基本制動力Fcmは発生されず、回生制動力Fgが「0」から最大回生力fxの範囲で発生される。無効変位sxが、最大回生力fxに対応付けられて設定されるため、回生装置KGによる回収エネルギが十分に確保される。
ステップS120にて、操作変位Spに基づいて、目標総制動力Ftが演算される。目標総制動力Ftは、総制動力Fa(実際値)に対応する目標値である。目標総制動力Ftは、予め設定された演算マップZftに従って、操作変位Spの増加に伴って、増加するように決定される。演算マップZftでは、操作変位Spが無効変位sxである場合に、目標総制動力Ftが最大回生力fxに決定される(即ち、「Sp=sx」の場合に「Fx=fx」)。操作変位Spが無効変位sxよりも大きくなると、マスタシリンダCMのアイドルポートPIは塞がれるので、操作変位Spの増加に応じて、特性線Zfc(破線で示す)に沿って、基本制動力Fcmは増加する。ここで、基本制動力Fcmに係る特性Zfcは、マスタシリンダCM、及び、制動装置の諸元(シリンダCM、CWの受圧面積、有効制動半径、摩擦部材の摩擦係数、等)に応じて、制動操作部材BPの操作変位Spに対して定まる。
ステップS130にて、目標総制動力Ft、限界回生力Fx、及び、基本制動力Fcmに基づいて、目標回生制動力Fgt、及び、目標制御制動力Fhtが演算される。目標回生制動力Fgtは、実際の回生制動力Fgに対応する目標値であり、目標制御制動力Fhtは、実際の制御制動力Fhuに対応する目標値である。なお、実際の基本制動力Fcmは、操作変位Sp、及び、予め設定された特性Zfc(演算マップ)に基づいて決定される。
状態(1):目標総制動力Ftが「限界回生力Fxと基本制動力Fcmとの和」以下である場合には、目標回生制動力Fgtは「目標総制動力Ftから基本制動力Fcmを減じた値」に決定され、目標制御制動力Fhtは「0」に決定される。即ち、「Ft≦(Fx+Fcm)」の場合には、「Fgt=Ft-Fcm、Fht=0」が演算される。これにより、目標総制動力Ftは、回生制動力Fg、及び、基本制動力Fcmによって達成される。
例えば、状態(1)において、操作変位Spが無効変位sxよりも小さく、アイドルポートPIが開いている場合には、マスタ圧Pmは「0(大気圧)」であるため、基本制動力Fcmは発生されない(即ち、「Pm=0、Fcm=0」)。従って、「Sp<sx、Ft≦Fx」の状態では、「Fgt=Ft、Fht=0」が演算され、目標総制動力Ftは回生制動力Fgのみによって達成される。
状態(2):目標総制動力Ftが「限界回生力Fxと基本制動力Fcmとの和」よりも大きい場合には、目標回生制動力Fgtは限界回生力Fxに決定され、目標制御制動力Fhtは「目標総制動力Ftから、限界回生力Fxと基本制動力Fcmとの和を減じた値」に決定される。即ち、「Ft>(Fx+Fcm)」の場合には、「Fgt=Fx、Fht=Ft-(Fx+Fcm)」が演算される。これにより、目標総制動力Ftは、回生制動力Fg、基本制動力Fcm、及び、制御制動力Fhuによって達成される。
例えば、状態(2)において、操作変位Spが無効変位sxよりも小さく、アイドルポートPIが閉じられていない場合には「Fcm=0」である。このため、「Sp<sx、Ft>Fx」の状態では、目標回生制動力Fgtは限界回生力Fxに決定され、目標制御制動力Fhtは「目標総制動力Ftから限界回生力Fx(=Fgt)を減じた値」に決定される(即ち、「Fgt=Fx、Fht=Ft-Fx)。これにより、目標総制動力Ftは、回生制動力Fg、及び、制御制動力Fhuによって達成される。
ステップS130にて演算された目標回生制動力Fgtは、制動コントローラECUから回生コントローラEGに、通信バスBSを通して送信される。回生コントローラEGでは、目標回生制動力Fgtに一致するように、実際の回生制動力Fgが、回生ジェネレータGNを介して制御される。
ステップS140にて、目標制御制動力Fhtに基づいて、目標差圧Stが演算される。「目標差圧St」は、実際の差圧Sa(=Pw-Pm)に対応する目標値である。具体的には、目標制御制動力Fhtが、ホイール圧Pwに係る液圧に変換され、目標差圧Stが決定される。目標制御制動力Fhtから目標差圧Stへの変換演算は、制動装置、及び、車輪周りの諸元(ホイールシリンダWCの受圧面積、回転部材KTの有効制動半径、摩擦部材の摩擦係数、車輪WHの動荷重半径、等)に基づいて行われる。
ステップS150にて、目標差圧Stに基づいて、電動ポンプDBが駆動される。先ず、ステップS150では、目標差圧Stに基づいて、目標回転数Ntが演算される。「目標回転数Nt」は、電動ポンプDB(特に、電気モータMB)の実際の回転数Nbに対応する目標値である。具体的には、ステップS150では、予め設定された演算マップZst(非図示)に従って、目標差圧Stが大きいほど、目標回転数Ntが大きくなるように決定される。また、目標差圧Stの時間変化量である差圧変化量dStが演算され、予め設定された演算マップZds(非図示)に従って、差圧変化量dStが大きいほど、目標回転数Ntが大きくなるように決定されてもよい。目標回転数Ntには、下限回転数nkが設けられる。「下限回転数nk」は予め設定された所定値(定数)である。更に、ステップS150では、目標回転数Ntが、変数ではなく、定数として決定され得る。該構成では、目標回転数Ntは、予め設定された所定回転数ntに決定される。
次に、ステップS150では、目標回転数Ntに基づいて、電気モータMBが制御される。具体的には、目標回転数Nt(目標値)、及び、実際の回転数Nb(実際値であり、「モータ回転数」ともいう)に基づいて、実際値Nbが、目標値Ntに一致するように、駆動信号Mb(モータ駆動信号)が演算される。そして、モータ駆動信号Mbに基づいて、電気モータMBへの供給電流Im(モータ電流)が調整される。「Nt>Nb」の場合にはモータ回転数Nbが増加するよう、モータ電流Imが増加される。一方、「Nt<Nb」の場合には、モータ回転数Nbが減少するよう、モータ電流Imが減少される。なお、モータ回転数Nbは、電気モータMBに設けられた回転角センサ(非図示)の検出結果Kb(回転角)に基づいて、該回転角Kbが時間微分されて決定される。
ステップS160にて、目標差圧Stに基づいて、調圧弁UBが駆動される。先ず、ステップS160では、目標差圧St、及び、予め設定された演算マップZib(非図示)に基づいて、目標電流Ibtが演算される。「目標電流Ibt」は、目標差圧Stを達成するために必要な、調圧弁UBの供給電流Ib(実際値)に係る目標値である。演算マップZibに従って、目標電流Ibtは、目標差圧Stが大きいほど、大きくなるように決定される。
次に、ステップS160では、目標電流Ibt(目標値)、及び、供給電流Ib(実際値)に基づいて、実際値Ibが、目標値Ibtに一致するように、駆動信号Ubが演算される。そして、調圧弁駆動信号Ubに基づいて、調圧弁UBへの供給電流Ib(調圧弁電流)が調整される。「Ibt>Ib」であれば、調圧弁電流Ibが増加するように駆動信号Ubが決定される。一方、「Ibt<Ib」であれば、調圧弁電流Ibが減少するように駆動信号Ubが決定される。なお、調圧弁電流Ibは、駆動回路DRに設けられた調圧弁電流センサ(非図示)によって検出される。
上述する調圧弁UBの駆動制御は開ループ制御であるが、液圧に係るフィードバック制御を含む閉ループ制御として構成されてもよい。該構成では、調整圧Pqを検出するよう、調圧弁UBの下部に調整圧センサ(非図示)が設けられる。そして、マスタ圧Pmと調整圧Pqとの偏差(即ち、差圧Sa)が、目標差圧Stに一致するように、目標電流Ibtが調整される。
≪電動ポンプDBの始動と停止≫
電動ポンプDBが駆動されると、戻し路HL等には、調圧弁UBを含む制動液BFの循環流KLが発生する。調圧弁UBが非通電状態であれば、電動ポンプDBが駆動されていても、制御制動力Fhuは発生されない。従って、制御制動力Fhuが不要な場合でも、電動ポンプDBは作動していてもよい。しかしながら、調圧弁UBが全開状態であっても、弁体隙間での抵抗により、実差圧Saが僅かに生じる。この微小な差圧Saによって、摩擦部材が回転部材KTに押されることで、ブレーキの引き摺り現象が発生する。加えて、制動制御装置SCの電力消費の観点において、制御制動力Fhuが不要な場合には、電動ポンプDBが停止されることが好ましい。
一方、基本制動力Fcmが発生されている状態(即ち、アイドルポートPIの閉塞状態)で、作動している電動ポンプDBが停止される場合、或いは、停止されている電動ポンプDBが作動される場合には、マスタ圧Pmに僅かな変化が発生する。マスタ圧Pmの変化により、制動操作部材BPの操作力Fpの変化が引き起こされる。このため、運転者に対する違和感低減の観点では、電動ポンプDBの駆動は継続されることが好ましい。これらの事柄を踏まえて、制動制御装置SCでは、電動ポンプDBの作動(始動、再始動)、及び、停止を以下のように行う。
操作変位Spが「0(ゼロ)」から増加される場合に電動ポンプDBは始動される。制動開始の直後は、目標総制動力Ftは回生制動力Fgだけで達成される。しかし、車体速度Vxが高い場合、回生制動力Fgの限界(即ち、限界回生力Fx)は然程大きくないため、制御制動力Fhuの発生が必要になる蓋然性が高い。このため、制動開始時点にて、電動ポンプDBが起動される。これにより、回生協調制御における制御制動力Fhu(即ち、実差圧Saの発生)の応答性が確保される。
制御制動力Fhuの発生が不要な場合(例えば、目標総制動力Ftが回生制動力Fgのみによって達成され得る場合)には、作動(回転)している電動ポンプDBが停止される。これにより、上述するブレーキの引き摺りが回避されるとともに、制動制御装置SCの省電力化が図られる。
電動ポンプDBの停止においては、制限(「禁止条件」ともいう)が設けられ得る。具体的には、操作変位Spが無効変位sxよりも大きい場合には、電動ポンプDBの停止が禁止される。該条件が、「第1禁止条件」と称呼される。第1禁止条件により、作動中の電動ポンプDBは、操作変位Spが無効変位sx以下である場合に限って停止される。つまり、操作変位Spが無効変位sxよりも大きい場合には、制御制動力Fhuの発生が不要であっても、電動ポンプDBの作動は継続される。アイドルポートPIが閉じられている状態で、電動ポンプDBが停止されると、制動操作部材BPの操作力Fpに変動が生じる。第1禁止条件が設けられることにより、制動操作部材BPの操作感が向上され、運転者の違和感が低減され得る。
或いは、操作変位Spが無効変位sxよりも大きくなる蓋然性が高い場合には、電動ポンプDBの停止が禁止されてもよい。該条件が、「第2禁止条件」と称呼される。第2禁止条件により、作動中の電動ポンプDBは、操作変位Spが無効変位sxよりも大きくなる蓋然性が低い場合に限って停止される。つまり、操作変位Spが無効変位sxよりも大きくなる蓋然性が高い場合には、制御制動力Fhuの発生が不要であっても、電動ポンプDBの作動が継続される。上記同様に、第2禁止条件が設けられることにより、制動操作部材BPの操作感が向上され、運転者の違和感が低減される。
例えば、上記蓋然性は、「操作変位Spが判定変位sz未満であるか、否か」に基づいて判定される。操作変位Spが判定変位sz未満である場合には、蓋然性は低いと識別される。これに対して、操作変位Spが判定変位sz以上である場合には、蓋然性が高いと判断される。ここで、「判定変位sz」は、第2禁止条件に係る判定用しきい値であり、無効変位sxよりも小さい、予め設定された所定値(定数)である。
上記の蓋然性は、「操作変位Spが増加しているか、否か」に基づいて判定されてもよい。制動操作部材BPの操作変位Spが増加している場合には、蓋然性は高いと判定される。これに対して、制動操作部材BPが保持又は戻されていて、操作変位Spが一定である、又は、減少されている場合には、蓋然性は低いと判断される。詳細には、「操作変位Spの時間変化量dS(「操作速度」ともいう)が、判定速度ds以上であるか、否か」に基づいて、「操作変位Spが増加しているか、或いは、維持/減少されているか」が判定される。操作速度dSが判定速度ds以上である場合には、操作変位Spの増加が判定され、電動ポンプDBの作動停止は禁止される。これに対して、操作速度dSが判定速度ds未満である場合には、操作変位Spの維持又は減少が判定され、電動ポンプDBの作動停止は許可される。ここで、「判定速度ds」は、判定用のしきい値であり、予め設定された所定値(定数)である。
<回生協調制御の動作>
図4を参照して、回生協調制御の動作について説明する。回生協調制御では、回生制動力Fgと液圧制動力Fw(=Fcm+Fhu)とが協調制御される。先ず、図4(a)の特性図を参照して、回生装置KGの作動について説明する。回生装置KGでは、回生ジェネレータGNが発電し、その電力が、回生コントローラEGを通して、蓄電池BGに蓄えられる。このとき、回生装置KGの回生量に応じて、車輪WHには回生制動力Fgが発生する。
図4(a)の適正時特性Zfaは、回生装置KGの適正状態(例えば、蓄電池BGが満充電ではなく、パワートランジスタの作動状態(温度等)が適正である場合)における限界回生力Fxの特性を示している。適正時特性Zfaは、回生ジェネレータGNの回転速度Ng(即ち、車輪速度Vw、車体速度Vx)に従って変化する。限界回生力演算ブロックFXの演算マップZfxは、適正時特性Zfaを基にして作成されている。限界回生力Fxの演算マップZfx(即ち、回生装置KGの作動特性)は、車体速度Vxに応じて、3つの速度領域に分類される。
≪3つの速度域S1、S2、S3≫
車体速度Vxが第1所定速度vo以上である領域が「第1速度域S1」と称呼される。第1速度域S1では、車体速度Vxの減少に伴って、限界回生力Fxが増加する。例えば、回生装置KGによる回生電力が一定である場合には、車体速度Vxと限界回生力Fxとは反比例の関係(即ち、双曲線の特性)となる。
車体速度Vxが第1所定速度vo未満、且つ、第2所定速度vp以上である領域が「第2速度域S2」と称呼される。第2速度域S2では、車体速度Vxが減少しても、限界回生力Fxは、最大回生力fxで一定に維持される。回生装置KGの適正状態(蓄電池BGの充電状態に余裕があり、パワートランジスタの作動状態が適正範囲内の状態)で発生される限界回生力Fxは、最大回生力fxによって制限される。最大回生力fx(限界回生力Fxの最大値)は、予め所定値(定数)として設定される。
車体速度Vxが第2所定速度vp未満である領域が「第3速度域S3」と称呼される。第3速度域S3では、車体速度Vxの減少に従って、限界回生力Fxが減少する。ここで、各々の速度域S1、S2、S3を識別するための第1、第2所定速度vo、vpは、予め設定された所定値(定数)である。
次に、図4(b)の時系列線図(時間Tに対する各種状態量の遷移を表す線図)を参照して、回生協調制御の動作について説明する。図4(b)では、上図に示す速度域S1、S2、S3に対応して、総制動力Fa(目標総制動力Ftの結果)が、回生制動力Fg、基本制動力Fcm、及び、制御制動力Fhuのうちの何れによって発生されるかが、下図で模式的に表示されている。該下図は、制動力発生に係る作動域(回生装置KG、制動制御装置SCにおける制動力発生状態)を表し、「作動域図」と称呼される。以下、作動域図について説明する。
≪3つの作動域R1、R2、R3≫
回生制動力Fgが発生される領域が「第1作動域R1」と称呼される。第1作動域R1は、回生装置KGによる制動力Fgの発生特性を表す。回生協調制御では、車両の運動エネルギを効率良く回収するため、回生制動力Fgが優先して発生される。従って、制動初期には、先ず、第1作動域R1にて、回生制動力Fgが発生される。
基本制動力Fcmが発生される領域が「第2作動域R2」と称呼される。第2作動域R2は制動制御装置SC(特に、マスタシリンダCM)による制動力Fcmの発生特性を表す。マスタシリンダCMにおける無効変位sxは、最大回生力fxに対応するように設定されている。このため、操作変位Spが無効変位sxに達すると、第2作動域R2にて、基本制動力Fcmの発生が開始される。作動域図では、第2作動域R2は、目標総制動力Ft(結果、総制動力Fa)が最大回生力fxよりも大きい状況に対応している。なお、基本制動力Fcmは、制動操作部材BPの操作に応じて機械的に発生するので、制御(即ち、コントローラECU)によって任意に発生させることはできない。
制御制動力Fhuが発生される領域が「第3作動域R3」と称呼される。第3作動域R3は、制動制御装置SC(特に、流体ユニットHU)による制動力Fhuの発生特性を表す。第1作動域R1と第2作動域R2との間には隙間が存在する。該隙間では、目標総制動力Ftは、回生制動力Fg、及び、基本制動力Fcmだけでは達成され得ない。このため、該隙間が、第3作動域R3によって補われる。つまり、第3作動域R3では、目標総制動力Ftに対する、総制動力Faの不足分が、制御制動力Fhuによって補完される(即ち、「Fhu=Fa-(Fg+Fcm)」)。
目標総制動力Ftは、操作変位Spから算出されるので、実際の総制動力Faは、操作変位Spの結果として発生される。このため、図4(b)では、目標総制動力Ft(結果、総制動力Fa)と操作変位Spとが対応付けられて表記されている(角括弧[ ]内の記号を参照)。具体的には、「Sp=0」は「Ft=Fa=0」に、「Sp=sx」は「Ft=Fa=fx」に、夫々対応している。従って、各作動域R1、R2、R3は、操作変位Spに基づいて識別されてもよい。
≪速度域(S1-S3)と作動域(R1ーR3)との関係≫
回生装置KGの作動(即ち、第1作動域R1)は車体速度Vxに依存する。しかしながら、マスタシリンダCM等の作動(即ち、第2作動域R2)は車体速度Vxには依存せず、それとは独立である。このことに起因して、上述する第1作動域R1と第2作動域R2との隙間が生じる。該隙間を埋めるように、流体ユニットHUの作動(即ち、第3作動域R3)が制御される。
加えて、回生協調制御では、回生制動力Fgを優先的に発生する。また、基本制動力Fcmを任意に発生することはできない。このため、速度域及び作動域の組み合わせにおいて、制動力Fg、Fcm、Fhuの発生には、以下の制約がある。
先ず、回生装置KGが第1速度域S1にて作動する場合について説明する。第1速度域S1の場合(即ち、「Vx≧vo」の場合)には、第1作動域R1は、車体速度Vxが減少するにつれて拡大する。回生協調制御の作動点(即ち、目標総制動力Ft)が第1作動域R1に属する場合(即ち、「Ft≦Fx」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fgのみによって発生される。作動点が第3作動域R3に属する場合(即ち、「Fx<Ft<fx」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fgと制御制動力Fhuとによって発生される。作動点が第2作動域R2に属する場合(即ち、「Ft≧fx」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fg、制御制動力Fhu、及び、基本制動力Fcmによって発生される。つまり、第1速度域S1では、目標総制動力Ftは、「回生制動力Fgのみ」、「回生制動力Fg、及び、制御制動力Fhu」、及び、「回生制動力Fg、基本制動力Fcm、及び、制御制動力Fhu」のうちの何れかによって達成される。
次に、回生装置KGが第2速度域S2にて作動する場合について説明する。第2速度域S2の場合(即ち、「vp≦Vx<vo」の場合)には、第1作動域R1は、車体速度Vxが減少しても変化しない。また、無効変位sxは、最大回生力fxに相当するように設定されているので、第1作動域R1と第2作動域R2とが接し、第3作動域R3は存在しない。回生協調制御の作動点(=Ft)が第1作動域R1に属する場合(即ち、「Ft≦Fx(=fx)」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fgのみによって発生される。また、作動点が第2作動域R2に属する場合(即ち、「Ft≧Fx(=fx)」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fg、及び、基本制動力Fcmによって発生される。つまり、第2速度域S2では、目標総制動力Ftは、「回生制動力Fgのみ」、又は、「回生制動力Fg、及び、基本制動力Fcm」によって達成される。このため、第2速度域S2では、制御制動力Fhuは不要であるため、発生されない。
最後に、回生装置KGが第3速度域S3にて作動する場合について説明する。第3速度域S3の場合(即ち、「Vx<vp」の場合)には、第1作動域R1は、車体速度Vxが減少するにつれて縮小する。回生協調制御の作動点(=Ft)が第1作動域R1に属する場合(即ち、「Ft≦Fx」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fgのみによって発生される。作動点が第3作動域R3に属する場合(即ち、「Fx<Ft<fx」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fgと制御制動力Fhuとによって発生される。作動点が第2作動域R2に属する場合(即ち、「Ft≧fx」の場合)には、総制動力Faは、回生制動力Fg、制御制動力Fhu、及び、基本制動力Fcmによって発生される。つまり、第3速度域S3では、第1速度域S1と同様に、目標総制動力Ftは、「回生制動力Fgのみ」、「回生制動力Fg、及び、制御制動力Fhu」、及び、「回生制動力Fg、基本制動力Fcm、及び、制御制動力Fhu」のうちの何れかによって達成される。なお、第3速度域S3において、回生制動力Fgが制御制動力Fhuに順次、置き換えられる作動が、「すり替え作動」と称呼される。
回生装置KGは、車体速度Vxの減少に伴い限界回生力Fxが増加する第1速度域S1、車体速度Vxの減少に伴い限界回生力Fxが一定である第2速度域S2、及び、車体速度Vxの減少に伴い限界回生力Fxが減少する第3速度域S3を有している。ここで、限界回生力Fxは、回生装置KGが発生可能な回生制動力Fgの上限(限界)である。マスタシリンダCMでは、マスタリザーバRVに連通するアイドルポートPI(連通孔)の位置が、制動操作部材BPの操作変位Spが無効変位sxにまで増加しても、マスタ圧Pmが発生しないように設定される(図2を参照)。そして、コントローラECUは、操作変位Spが無効変位sxに一致する場合に、操作変位Spから算出される目標制動力Ftを、限界回生力Fxの最大値fx(最大回生力)に決定する。
回生装置KG(GN、BG、EG等)の適正状態において、限界回生力Fxの特性Zfa(適正時特性)は既知である。マスタシリンダCMでは、該特性Zfaに基づいて、アイドルポートPIの位置が、最大回生力fxに相当するように幾何的に設定されている。制動コントローラECUでは、「Sp=sx」の場合に「Ft=fx」が決定される。これにより、回生協調制御では、回生装置KGによるエネルギ回生が十分、且つ、効率的に行われ得る。
アイドルポートPIの位置が最大回生力fxに対応しているので、制動制御装置SCでは、第2速度域S2において、回生制動力Fgによる第1作動域R1と、基本制動力Fcmによる第2作動域R2とが隣り合う。第2速度域S2では、制御制動力Fhuの発生が不要になるため、流体ユニットHUの作動頻度の低減が可能になる。
≪制動時の状態遷移≫
車両が減速される際の状態遷移(特に、電動ポンプDBの作動遷移)を、作動域図に重ね合わせて説明する。上述するように、作動域図は、車体速度Vxの減少度合い(即ち、車体減速度)に依存する。しかしながら、説明が煩雑になることを回避するため、以下では、車体減速度は一定であるとして表示している(図4(b)上図を参照)。なお、線図では、総制動力Faは目標総制動力Ftに一致するように制御されるため、目標総制動力Ftと総制動力Faとは重なっている。
時点t0にて、制動が開始され、操作変位Sp(結果、目標総制動力Ft)が「0」から増加される。時点t0の直後は第1速度域S1である。第1速度域S1では、車体速度Vxの減少に伴って、回生装置KGにおける限界回生力Fxが増加する。時点t1にて、車体速度Vxが第1所定速度voにまで低下し、第2速度域S2に遷移(移行)する。第2速度域S2では、回生ジェネレータGNによる限界回生力Fxは、最大回生力fxに制限される。時点t2にて、車体速度Vxが第2所定速度vpにまで低下し、第3速度域S3に遷移する。第3速度域S3では、車体速度Vxの減少に伴って、限界回生力Fxは減少する。そして、時点t3にて、車両は停止する(即ち、「Vx=0」)。
≪動作例A≫
動作例Aでは、時点t0にて、操作変位Spが「0」から増加され、時点thにて一定の値に維持される。これに伴い、動作例Aでは、目標総制動力Ftは、線図(A)で示すように変化する。時点t0にて、電動ポンプDBの駆動が開始される。目標総制動力Ftに係る作動域は、第1作動域R1に属するため、総制動力Faは回生制動力Fgだけで発生される。このとき、調圧弁UBへの通電は行われていないので、制御制動力Fhuは略「0」のままである。作動域が、第3作動域R3に移行(遷移)すると、総制動力Faは、回生制動力Fg、及び、制御制動力Fhuにより発生される。詳細には、目標総制動力Ftに対する回生制動力Fgの不足分が補われるように、制御制動力Fhuが発生される。
車両の減速に伴って、回生制動力Fgは増加する。このため、操作変位Sp(結果、目標総制動力Ft)が一定に維持されると、目標総制動力Ftに係る作動域は、第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する。目標総制動力Ftが回生制動力Fgのみによって達成可能になるため、目標総制動力Ftの遷移後に、作動している電動ポンプDBは停止される。これにより、制動液BFの循環流KLは発生されなくなるので、調圧弁UBによる差圧Saは、完全に「0」にされる。電動ポンプDBの停止により、ブレーキの引き摺りが回避されるとともに、制動制御装置SCの電力消費が抑制される。
その後、作動域は、第1作動域R1から第3作動域R3に遷移し、すり替え作動が行われる。第3作動域R3では、制御制動力Fhuの発生が必要になるため、第3作動域R3に遷移する直前にて、停止されている電動ポンプDBが再始動される。
≪動作例B≫
動作例Aでは、時点thにて、制動操作部材BPが保持され、操作変位Spが維持されたが、動作例Bでは、操作変位Spの増加勾配(操作変位Spの時間変化量)は減少されるが、依然、操作変位Spは増加される。該状況では、目標総制動力Ftは、線図(B)にて示すように変化する。動作例Aと同様に、目標総制動力Ftに係る作動域は、第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する。しかしながら、作動域は、第2作動域R2に遷移する可能性が高いため、第3作動域R3から第1作動域R1に遷移しても、電動ポンプDBは停止されない。即ち、動作例Bでは、上記の第2禁止条件によって、電動ポンプDBの停止が制限される。
具体的には、目標総制動力Ftに係る作動域が第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する際に、目標総制動力Ftが判定値fz未満である場合には、電動ポンプDBの停止は許可され、実行される。一方、目標総制動力Ftが判定値fz以上である場合には、電動ポンプDBの停止が禁止される。ここで、「判定値fz」は、最大回生力fxよりも、所定値hxだけ小さい値である。判定値fz、及び、所定値hxは、予め設定された所定値(定数)である。目標総制動力Ftが第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する際に、「Ft<fz」の場合には電動ポンプDBは停止されるが、「Ft≧fz」の場合には電動ポンプDBは駆動され続ける。換言すれば、最大回生力fxに対して所定値hxの範囲を設定すると、目標総制動力Ftが、範囲外の場合には電動ポンプDBは停止され、範囲内の場合には電動ポンプDBは停止されない。
上述するように、目標総制動力Ftは、操作変位Spに基づいて演算されるので、作動域の遷移が、操作変位Spに基づいて判別されてもよい。操作変位Spによる識別では、作動域が第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する際に、操作変位Spが判定変位sz以上である場合に、電動ポンプDBの停止が禁止される。「判定変位sz」は、無効変位sxよりも、所定値hzだけ小さい値であり、判定変位sz、及び、所定値hzは、予め設定された所定値(定数)である。即ち、目標総制動力Ftが第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する際に、「Sp<sz」の場合には電動ポンプDBは停止されるが、「Sp≧sz」の場合には、電動ポンプDBの駆動は維持される。換言すれば、無効変位sxに対して所定値hzの範囲を設定すると、操作変位Spが、範囲外の場合には電動ポンプDBは停止され、範囲内の場合には電動ポンプDBは停止されない。
或いは、作動域が第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する状況において、目標総制動力Ftが増加している場合には、電動ポンプDBの停止が禁止されてもよい。従って、目標総制動力Ftが維持又は減少されている場合には、電動ポンプDBの停止は許可される。例えば、目標総制動力Ftの増加は、その増加勾配dF(即ち、増加している目標総制動力Ftの時間変化量)が、判定勾配df以上である場合に判定される。「判定勾配df」は、予め設定された所定値(定数)である。即ち、作動域が第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する際に、目標総制動力Ftの増加勾配dFが判定勾配df未満である場合には、電動ポンプDBの停止は許可され、実行される。一方、増加勾配dFが判定勾配df以上である場合には、電動ポンプDBの停止が禁止される。
上記同様に、作動域は操作変位Spに基づいて判定される。そして、作動域が、第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する際に、操作変位Spの操作速度dSが判定速度ds以上である場合に、電動ポンプDBの停止が禁止されてもよい。ここで、「判定速度ds」は、予め設定された所定値(定数)である。操作変位Spによって識別される作動域が第3作動域R3から第1作動域R1に遷移する際に、操作速度dSが判定速度ds未満である場合には、電動ポンプDBは停止されるが、操作速度dSが判定速度ds以上である場合には、電動ポンプDBは駆動され続ける。
アイドルポートPIが閉じられている状態(即ち、作動域が第2作動域R2であり、マスタ圧Pmが発生している状態)において、電動ポンプDBの作動遷移(即ち、作動中からの停止、又は、停止中からの始動)により、マスタ圧Pmが変化し、制動操作部材BPの操作力Fpに変動が生じる。加えて、最終的には、第3速度域S3におけるすり替え作動では、電動ポンプDBの駆動が必要になる。このため、操作変位Spが無効変位sxよりも大きくなる蓋然性が高い場合(即ち、アイドルポートPIが塞がれる可能性が高い場合)には、電動ポンプDBの停止は禁止される。これにより、電動ポンプDBの作動遷移に起因する操作力Fpの変動が抑制され、制動操作部材BPの操作感が向上される。
≪動作例C≫
動作例A、Bでは、作動域は、第3作動域R3から第1作動域R1に遷移したが、動作例Cでは、線図(C)にて示すように、第3作動域R3から第2作動域R2に遷移する。作動域が、第2作動域R2に遷移すると、アイドルポートPIは閉じられ、マスタ圧Pmが生じる。これにより、第1速度域S1では、総制動力Faは、回生制動力Fg、基本制動力Fcm、及び、制御制動力Fhuによって発生する。車体速度Vxが減少して、作動域が第2作動域R2のままで、速度域が、第1速度域S1から第2速度域S2に遷移すると、目標総制動力Ftは、回生制動力Fg、及び、基本制動力Fcmによって達成可能となるため、制御制動力Fhuの発生は不要になる。しかしながら、操作変位Spは、無効変位sxよりも大きいため、電動ポンプDBは停止される。即ち、動作例Cでは、上記の第1禁止条件によって、電動ポンプDBの停止が制限される。動作例Aで例示するように、第2速度域S2において、作動域が第1作動域R1である場合には、電動ポンプDBは停止される。これに対して、動作例Cで例示するように、第2速度域S2において、作動域が第2作動域R2である場合には、電動ポンプDBは停止されない。
上述するように、アイドルポートPIが閉じられている状態(即ち、マスタ圧Pmが発生している状態)において、作動中の電動ポンプDBが停止されると、マスタ圧Pmが変化し、制動操作部材BPの操作力Fpに変動が生じる。このため、制御制動力Fhuの発生が不要であっても、操作変位Spが無効変位sxよりも大きい場合には、電動ポンプDBの停止は禁止される。これにより、操作力Fpの変化が抑制され、運転者への違和感が回避される。
<他の実施形態>
他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(ブレーキの引き摺り低減、制動制御装置SCの省電力化、制動操作部材BPの操作感の向上等)を奏する。
上述の実施形態では、制動開始時点で電動ポンプDBが始動された。これに代えて、制御制動力Fhuが初めて必要になる時点(又は、該時点の直前)にて、電動ポンプDBが始動されてもよい。具体的には、制動開始直後には作動域は第1作動域R1であるが、作動域が第1作動域R1から第3作動域R3に遷移する直前の時点で、停止中の電動ポンプDBの作動が開始される。
上述の実施形態では、各種の制動力(Ft、Fa、Fg、Fgt、Fht、Fhu等)において、車両の前後方向に作用し、車両を減速させる力(前後力)の次元で演算が行われ、制御が実行された。これに代えて、車両の減速度の次元、或いは、車輪WHのトルクの次元で演算が行われ、制御が実行されてもよい。これは、車輪WHに作用する前後力から車両減速度に至るまでの状態量は、等価であることに基づく。従って、上述の目標総制動力Ftに代えて、車両全体に作用する制動力の目標値として、目標減速度、目標総トルク等が採用される。ここで、目標総制動力Ft、目標減速度、目標総トルクが、「目標相当値Fs(車両全体に作用する実際の総制動力Faについての目標値)」と総称される。即ち、上記の回生協調制御は、操作変位Spから演算される総制動力Faの目標値Fs(例えば、目標制動力Ft)に基づいて実行される。
上述の実施形態では、2系統の制動系統として、前後型のものが採用された。これに代えて、2系統の制動系統として、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されてもよい。該構成では、2つのマスタ室Rmのうちの一方が、左前輪ホイールシリンダ、及び、右後輪ホイールシリンダに接続され、2つのマスタ室Rmのうちの他方が、右前輪ホイールシリンダ、及び、左後輪ホイールシリンダに接続される。
上述の実施形態では、電気モータMBの回転角Kb(モータ回転角)が、回転角センサによって検出された。そして、モータ回転角Kbに基づいて、モータ回転数Nbが演算された。回転角センサは省略されてもよい。即ち、電気モータの回転角Kb、回転数Nbは、演算に基づいて決定(推定)される。例えば、モータ電流センサの検出結果Im(モータ電流)に基づいて、モータ回転数Nbが推定される。そして、モータ回転数Nb(モータ回転速度)に基づいて、それが時間積分されて、モータ回転角Kbが推定され得る。
<実施形態のまとめ>
制動制御装置SCの実施形態についてまとめる。制動制御装置SCは、回生制動力Fgを発生可能な回生装置KGを備える車両に適用される。制動制御装置SCは、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとの間に配置され、マスタシリンダCMのマスタ圧Pmを増加してホイールシリンダCWにホイール圧Pwとして出力する流体ユニットHU、及び、流体ユニットHUを制御するコントローラECUにて構成される。ここで、マスタシリンダCMは、マスタリザーバRVに連通するポートPIの位置によって操作変位Spが発生し、増加しても、マスタ圧Pmが発生しない無効変位sxを有している。そして、アイドルポートPIの位置(即ち、無効変位sx)は、回生装置KGによる限界回生力Fxの最大回生力fxに対応するように設定される。
コントローラECUは、制動操作部材BPの操作変位Spに基づいて、車両の全体に作用する制動力Fa(総制動力)を発生する。ここで、コントローラECUは、総制動力Faを、回生制動力Fgのみによって発生する場合には(即ち、第1作動域R1での作動では)、作動している電動ポンプDBを停止する。例えば、コントローラECUは、操作変位Spが「0」から増加する時点で、電動ポンプDBの作動を開始する(即ち、始動する)。
調圧弁UBが全開状態であっても、弁体と弁座との隙間は限定的であるため、該隙間は、制動液BFの循環流KLに対して抵抗として作用する。従って、調圧弁UBが全開であっても、電動ポンプDBが作動中であれば、僅かではあるが差圧Saが発生する。該差圧Saによって、摩擦部材は回転部材KTに対して押圧されるので、ブレーキの引き摺りが生じる。制動制御装置SCでは、目標相当値Fs(例えば、目標制動力Ft)が、回生制動力Fgのみによって達成可能な場合(即ち、制御制動力Fhuの発生が不要な場合)には、電動ポンプDBが停止される。これにより、制動液BFの循環流KLに起因するブレーキの引き摺りが防止される。
コントローラECUでは、総制動力Faが回生制動力Fgのみによって発生される場合(即ち、目標相当値Fsが回生制動力Fgのみによって達成され得る場合)には、作動中の電動ポンプDBは停止される。これに対して、総制動力Faが回生制動力Fg、及び、基本制動力Fcm(マスタ圧Pmによる制動力)によって発生される場合(即ち、目標相当値Fsが、回生制動力Fg、及び、基本制動力Fcmによって達成される場合)には、電動ポンプDBは停止されない。つまり、第2速度域S2において(限界回生制動力Fxが最大回生制動力fxに制限されている場合には)、電動ポンプDBは、上記の第1禁止条件に基づいて、第1作動域R1の作動では停止されるが、第2作動域R2では停止されない。
アイドルポートPIが閉じられているときに、作動中の電動ポンプDBが停止されると、制動操作部材BPに、その操作力Fpの変動が生じる。このため、操作変位Spが無効変位sxよりも大きい場合には、電動ポンプDBの停止は禁止される。これにより、操作力Fpの変化が抑制されるので、制動操作部材BPの操作感が向上される。
コントローラECUでは、上記の第2禁止条件に基づいて、操作変位Spが無効変位sxよりも大きくなる蓋然性が高い場合には、電動ポンプDBの停止が禁止される。例えば、蓋然性が高いことは、操作変位Spが無効変位sxの所定範囲内である場合に判定される。或いは、蓋然性が高いことは、操作変位Spが増加している場合に判定される。
現在の状態において、総制動力Faが回生制動力Fgのみで発生されていても、その後、車両が停止される間際(即ち、すり替え作動時)には、制御制動力Fhuが必要になるので、最終的には電動ポンプDBは作動される。このとき、アイドルポートPIが閉じられていると、マスタ圧Pmの変動が発生する。そして、マスタ圧Pmの変化に起因して、制動操作部材BPの操作力Fpに変動が発生する。このため、アイドルポートPIが閉じられる可能性が高い場合には、電動ポンプDBは停止されない。なお、操作変位Spが無効変位sxよりも小さい場合には、マスタシリンダCMのマスタ室Rmは、アイドルポートPIを介して、マスタリザーバRVに連通されているので、電動ポンプDBの作動状態の変化(停止又は始動)によって、マスタ圧Pmは変化せず、大気圧のままである。このため、操作変位Spが無効変位sxよりも大きくなる蓋然性が低い場合(例えば、制動操作部材BPが保持又は戻されて、操作変位Spが一定に維持又は減少されている場合)には、制御制動力Fhuが不要になると、電動ポンプDBは停止される。
BP…制動操作部材(ブレーキペダル)、SC…制動制御装置、KG…回生装置、GN…回生ジェネレータ(エネルギ回生用のモータ/ジェネレータ)、EG…回生コントローラ(KG用の電子制御ユニット)、HU…流体ユニット、ECU…制動コントローラ(SC用の電子制御ユニット)、BS…通信バス、RV…マスタリザーバ、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、UB…調圧弁、MB…電気モータ、QB…流体ポンプ、DB…電動ポンプ(QBとMBとの組み合わせ)、SP…操作変位センサ、Sp…操作変位、Pm…マスタ圧、Sa…(実際の)差圧、St…目標差圧(Saの目標値)、Pq…調整圧、Pw…ホイール圧、Fa…(実際の)総制動力、Ft…目標総制動力(Faの目標値)、Fs…目標相当値(Faの目標値についての総称)、Fg…実際の回生制動力、Fgt…目標回生制動力(Fgの目標値)、Fx…限界回生制動力(Fgの限界値であり、「限界回生力」ともいう)、fx…最大回生制動力(Fxの最大値であり、「最大回生力」ともいう)、Fhu…(実際の)制御制動力(HUによる制動力)、Fht…目標制御制動力(Fhuの目標値)、Fcm…(実際の)基本制動力(CMによる制動力)、Fw…(実際の)液圧制動力(FcmとFhuとの和)、Vx…車体速度(車両の走行速度)。


Claims (5)

  1. 回生制動力を発生可能な回生装置を備える車両に適用され、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に配置され、前記マスタシリンダのマスタ圧を増加して前記ホイールシリンダに出力する流体ユニットと、前記流体ユニットを制御するコントローラと、を備える車両の制動制御装置において、
    前記コントローラは、
    前記車両の制動操作部材の操作変位に基づいて前記車両の全体に作用する総制動力を発生し、
    前記総制動力を、前記回生制動力のみによって発生する場合には、前記電動ポンプを停止する、車両の制動制御装置。
  2. 請求項1に記載される車両の制動制御装置において、
    前記コントローラは、前記操作変位がゼロから増加する場合に、前記電動ポンプの作動を開始する、車両の制動制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載される車両の制動制御装置において、
    前記マスタシリンダは、マスタリザーバに連通するポートの位置によって前記操作変位が増加しても前記マスタ圧が発生しない無効変位を有し、
    前記コントローラは、前記操作変位が前記無効変位よりも大きくなる蓋然性が高い場合には、前記電動ポンプの停止を禁止する、車両の制動制御装置。
  4. 請求項3に記載される車両の制動制御装置において、
    前記コントローラは、前記操作変位が増加している場合に、前記蓋然性が高いことを判定する、車両の制動制御装置。
  5. 回生制動力を発生可能な回生装置を備える車両に適用され、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に配置され、前記マスタシリンダのマスタ圧を増加して前記ホイールシリンダに出力する流体ユニットと、前記流体ユニットを制御するコントローラと、を備える車両の制動制御装置において、
    前記マスタシリンダは、マスタリザーバに連通するポートの位置によって前記操作変位が増加しても前記マスタ圧が発生しない無効変位を有し、
    前記コントローラは、
    前記車両の制動操作部材の操作変位に基づいて前記車両の全体に作用する総制動力を発生し、
    前記総制動力を前記回生制動力のみによって発生する場合には、作動している前記電動ポンプを停止するが、
    前記総制動力を、前記回生制動力、及び、前記マスタ圧による基本制動力によって発生する場合には、前記電動ポンプを停止しない、車両の制動制御装置。
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