JP2024063471A - 車輪用軸受装置の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輪用軸受装置のハブ輪に内輪を固定するための加締め部の成形コスト低減を図る。【解決手段】外輪11、ハブ輪13、内輪14及び複数のボール15を備えた車輪用軸受装置10の製造方法であって、ハブ輪13の中心軸O(垂直軸X)を中心として揺動回転しているパンチ34に対して、外周に外輪11、内輪14及びボール15が組み付けられたハブ輪13の筒部13aを徐々に押し込み、筒部13aの軸方向端部13a1を径方向外向きに曲げ変形させることにより、内輪14を固定するためのフランジ状の加締め部17をハブ輪13に成形するに際し、ハブ輪13をパンチ34の回転方向(矢印A方向)とは反対方向(矢印B方向)に回転させる。【選択図】図4
Description
本発明は、車輪を車体に対して回転自在に支持する車輪用軸受装置(ハブベアリング)の製造方法及び製造装置に関する。
車輪用軸受装置には、複列の転がり軸受(例えば、玉軸受又は円すいころ軸受)を組み合わせて使用する第1世代、複列の転がり軸受の外輪に車体取付用のフランジを一体に設けた第2世代、車輪取付用のフランジを有するハブ輪の外周面に内側軌道面(二つの内側軌道面のうちの一方)を形成した第3世代などがある。第3世代の車輪用軸受装置は、ハブ輪に、内側軌道面が直接形成されると共に車輪取付フランジが一体的に設けられている関係上、第1世代や第2世代の車輪用軸受装置に比べて部品点数が少なくコスト低減に有利であるとされている。
ここで、第3世代の車輪用軸受装置の一構成例を図8(a)に基づいて簡単に説明する。同図に示す車輪用軸受装置10は、第1外側軌道面Sa1及び第2外側軌道面Sa2を有する外輪11と、第1内側軌道面Sb1及び第2内側軌道面Sb2を有する内方部材12と、互いに対向する第1外側軌道面Sa1と第1内側軌道面Sb1の間、及び第2外側軌道面Sa2と第2内側軌道面Sb2の間に転動自在に配された複数の転動体(ボール)15と、複数のボール15を周方向所定間隔で保持する保持器16とを備える。内方部材12は、外周面に第1内側軌道面Sb1が形成された筒部13aを有するハブ輪13と、外周面に第2内側軌道面Sb2が形成された内輪14とを備え、内輪14は、ハブ輪13に設けられた肩面13eと、ハブ輪13の軸方向端部に形成されたフランジ状の加締め部17とで軸方向両側から挟持されることによりハブ輪13に固定されている。
上記の加締め部17は、通常、ハブ輪13の筒部13aの外周に外輪11、内輪14、ボール15及び保持器16を配置した後、図8(b)中に黒塗り矢印で示すように、筒部13aの軸方向端部13a1を径方向外向きに塑性変形(曲げ変形)させることによって得られる。例えば、特許第4127266号公報(特許文献1)には、その具体的な方法が記載されている。以下、特許文献1に記載の方法を簡単に説明する。
特許文献1に記載の方法は、非回転状態(静止状態)で保持された内方部材12(ハブ輪13)に対して外輪11を一方向に回転させることによって互いに対向する第1外側軌道面Sa1と第1内側軌道面Sb1の間、及び第2外側軌道面Sa2と第2内側軌道面Sb2の間に配された転動体15を公転運動させながら、ハブ輪13の中心軸Oを中心として振れ回り運動(揺動回転)しているパンチをハブ輪13の筒部13aの端部13a1に押し当てることにより、筒部13aの端部13a1を径方向外向きに曲げ変形させて筒部13aに加締め部17を成形するときに、ボール15の公転速度とパンチの公転速度を互いに異ならせるというものである。
特許文献1に記載の方法によれば、加締め部17を成形するのに伴って大きな荷重を受ける部分が連続的に変化するため、各軌道面Sa1,Sa2,Sb1,Sb2に圧痕が形成されるのを防止することができる、としている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、加締め加工に用いるパンチが早期に劣化し易く、パンチの交換費用、ひいては加締め部17の成形コストが嵩むことが判明した。
そこで、本発明の主な目的は、いわゆる第3世代の車輪用軸受装置の製造過程で内輪をハブ輪に固定するための加締め部を成形する際に使用するパンチの長寿命化を図り、もって加締め部の成形コスト、ひいては車輪用軸受装置の製造コストを低減可能とすることにある。
上記の目的を達成するために創案された本発明は、内周面に第1及び第2外側軌道面が形成された外輪と、外周面に第1内側軌道面が形成された筒部を有するハブ輪と、外周面に第2内側軌道面が形成された内輪と、第1外側軌道面と第1内側軌道面の間、及び第2外側軌道面と第2内側軌道面の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えた車輪用軸受装置の製造方法であって、
ハブ輪の中心軸を中心として揺動回転しているパンチに対して外周に外輪、内輪及び複数の転動体が組み付けられたハブ輪の筒部を徐々に押し込み、筒部の軸方向端部を径方向外向きに曲げ変形させることにより、内輪を固定するためのフランジ状の加締め部をハブ輪に成形するに際し、ハブ輪をパンチの回転方向とは反対方向に回転させることを特徴とする。
ハブ輪の中心軸を中心として揺動回転しているパンチに対して外周に外輪、内輪及び複数の転動体が組み付けられたハブ輪の筒部を徐々に押し込み、筒部の軸方向端部を径方向外向きに曲げ変形させることにより、内輪を固定するためのフランジ状の加締め部をハブ輪に成形するに際し、ハブ輪をパンチの回転方向とは反対方向に回転させることを特徴とする。
上記のように、ハブ輪をパンチの回転方向とは反対方向に回転させつつ、ハブ輪の筒部をパンチに対して徐々に押し込むようにすれば、非回転状態(静止状態)のハブ輪の筒部に対してパンチを押し込む場合に比べ、パンチとハブ輪の相対回転速度を高速化することができる。このようにパンチとハブ輪の相対回転速度が高速化すると、パンチに対するハブ輪の押し込み速度(単位時間当たりのハブ輪の押し込み量)が一定の場合には、パンチが1回転する毎に筒部の周方向各部に作用する径方向外向きの成形荷重が低減される分、パンチが1回転する間に軌道面(特に、成形荷重の作用点に近い位置に配される第2内側軌道面、及びこれに対向する第2外側軌道面)の周方向各部に付加される転動体の接触圧を低減することができる。これにより、パンチにハブ輪の筒部を徐々に押し込む(加締め部を成形する)のに伴ってパンチに作用する応力(反力)も減じることができるので、パンチの耐久寿命を長くすることができる。
上記の構成において、パンチに対してハブ輪(パンチとは反対方向に回転しているハブ輪)の筒部を押し込む際、内輪の外周面を拘束しておくのが好ましい。このようにすれば、筒部の押し込みに伴って筒部の軸方向端部に作用する径方向外向きの成形荷重が逃げ難くなるので、加締め部を精度良く、また効率良く成形することができる。
パンチに対してハブ輪の筒部を押し込む際に、ハブ輪の外周に組み付けた外輪がハブ輪とともに回転してしまうと、外輪に設けられた外側軌道面に圧痕が形成されるおそれがある。そのため、パンチに対してハブ輪の筒部を押し込む際には、外輪の回転を規制しておくのが好ましい。なお、外輪の回転規制は、例えば、外輪の外周面を拘束することによって実現することができる。
ハブ輪は、車輪用軸受装置を車輪に対して取り付けるための車輪取付フランジを一体に有するものとすることができ、この場合には、この車輪取付フランジに、ハブ輪を回転させるための回転力(パンチの回転方向とは反対方向の回転力)を入力することができる。なお、車輪取付フランジには、例えば、車輪取付フランジを車輪に対してボルト止めするためのボルト部材を介して上記回転力を入力することができる他、車輪取付フランジの外周輪郭形状、あるいは車輪取付フランジに設けた孔を利用して上記回転力を入力することができる。
また、上記の目的は、本発明に係る車輪用軸受装置の製造装置を採用した場合にも同様に達成することができる。すなわち、本発明に係る車輪用軸受装置の製造装置は、上記の外輪と、ハブ輪と、内輪と、複数の転動体とを備えた車輪用軸受装置の製造装置であって、
筒部の外周に外輪、内輪及び複数の転動体が組み付けられたハブ輪を支持する支持部と、支持部に支持されたハブ輪の中心軸を中心として揺動回転するパンチを保持したパンチ保持部とを備え、支持部とパンチ保持部とを相対的に接近移動させ、揺動回転中の上記パンチに上記ハブ輪の筒部を徐々に押し込むことにより、筒部の軸方向端部に上記内輪を固定するためのフランジ状の加締め部をハブ輪に成形するものにおいて、支持部に、ハブ輪をパンチの回転方向とは反対方向に回転させるための回転機構を設けたことを特徴とする。
筒部の外周に外輪、内輪及び複数の転動体が組み付けられたハブ輪を支持する支持部と、支持部に支持されたハブ輪の中心軸を中心として揺動回転するパンチを保持したパンチ保持部とを備え、支持部とパンチ保持部とを相対的に接近移動させ、揺動回転中の上記パンチに上記ハブ輪の筒部を徐々に押し込むことにより、筒部の軸方向端部に上記内輪を固定するためのフランジ状の加締め部をハブ輪に成形するものにおいて、支持部に、ハブ輪をパンチの回転方向とは反対方向に回転させるための回転機構を設けたことを特徴とする。
係る構成を有する製造装置を用いれば、本発明に係る車輪用軸受装置の製造方法を採用した場合と同様の作用効果を享受することができる。
上記のように、本発明によれば、いわゆる第3世代の車輪用軸受装置の製造過程で内輪をハブ輪に固定するための加締め部を成形する際に使用するパンチの長寿命化を図ることができる。これにより、加締め部の成形コスト、ひいては車輪用軸受装置の製造コストを低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図8(a)を援用して、本発明に係る製造方法を適用して製造し得る車輪用軸受装置10の一例を説明する。前述したとおり、車輪用軸受装置10は、外輪11と、ハブ輪13に内輪14を固定してなる内方部材12と、複数のボール15と、保持器16とを主な構成部材として備える。図示は省略しているが、外輪11と内方部材12の間に画成される環状空間にはグリース等の潤滑剤が充填されている。この潤滑剤の外部漏洩、及び上記環状空間への異物侵入を防止するため、上記環状空間の軸方向一方側及び他方側の端部開口は、図示外のシール部材によってそれぞれシールされる。
外輪11は、円筒状の筒部11aと、筒部11aの外周面から径方向外向きに延びた車体取付用のフランジ11bとを一体に有する。筒部11aの内周面には、円弧状をなす第1外側軌道面Sa1及び第2外側軌道面Sa2が軸方向に間隔を空けて形成されている。車体取付フランジ11bには、これを軸方向に貫通する複数のボルト装着孔11cが周方向に間隔を空けて形成されており、外輪11(車輪用軸受装置10)は、各ボルト装着孔11cに装着したボルト部材を用いて図示外の車体に取り付けられる。
ハブ輪13は、第1外側軌道面Sa1に対向する円弧状の第1内側軌道面Sb1、及び円筒面状の内輪装着面13dが外周面に形成された筒部13aと、筒部13aの外周面から径方向外向きに延びた車輪取付用のフランジ13bとを一体に有する。車輪取付フランジ13b及び内輪装着面13dは、第1内側軌道面Sb1の軸方向一方側及び他方側にそれぞれ設けられている。車輪取付フランジ13bには、これを軸方向に貫通する複数のボルト装着孔13cが周方向に間隔を空けて形成されており、ハブ輪13(車輪用軸受装置10)は、各ボルト装着孔13cに装着したボルト部材18(図2等を参照)を用いて図示外の車輪に取り付けられる。ハブ輪13の中心孔には、等速自在継手を構成する外側継手部材の軸部(図示省略)がトルク伝達可能に連結される。
内輪14の外周面には、第2外側軌道面Sa2に対向する円弧状の第2内側軌道面Sb2が形成されている。内輪14は、ハブ輪13の筒部13aの軸方向他方側の端部に設けられたフランジ状の加締め部17と、ハブ輪13の筒部13aの軸方向中央部付近に設けられた環状の肩面13eとで軸方向両側から挟持されることによりハブ輪13に対して固定されている。
本発明は、以上の構成を有する車輪用軸受装置10を製造するにあたり、上記の加締め部17を以下のように成形する点に特徴がある。以下、図1~図4に基づいて本発明の実施形態に係る車輪用軸受装置10の製造方法(加締め部17の成形方法)について詳細に説明する。
図1に、車輪用軸受装置10の製造装置、より具体的には、ハブ輪13に加締め部17を成形するために用いる加締め装置1の全体概略構造を示す。この加締め装置1は、ハブ輪13(詳細には、図2~4に示す、ハブ輪13の筒部13aの外周に外輪11、内輪14、ボール15及び保持器16等を組み付けた中間組立品10’。但し、図2~4においては保持器16の図示を省略している。)を下側から接触支持するワーク支持部2と、ワーク支持部2の上側に配設されたパンチ保持部3と、ワーク支持部2とパンチ保持部3の間に配設された内輪拘束部4とを備え、これらは同軸に配置されている。図示は省略しているが、加締め装置1は、ワーク支持部2とパンチ保持部3を相対的に接近及び離反移動させる駆動機構としての第1昇降機構と、内輪拘束部4とパンチ保持部3を相対的に接近及び離反移動させる第2昇降機構とをさらに備える。
ワーク支持部2は、ハブ輪13(を含む中間組立品10’)を下側から接触支持する支持部材23と、支持部材23の下側に配設され、支持部材23を垂直軸X回りに回転駆動させる「駆動機構」としてのモータ22と、支持部材23及びモータ22が取り付けられた下テーブル21とを備える。
図示は省略しているが、本実施形態では、上記の第1昇降機構の出力部材が、パンチ保持部3には連結されずにワーク支持部2の下テーブル21に連結される。そのため、第1昇降機構が駆動されると、下テーブル21に取り付けられた支持部材23及びモータ22、さらには支持部材23に支持されるハブ輪13(を含む中間組立品10’)が下テーブル21と一体的に昇降移動する。第1昇降機構としては、例えば、サーボモータ等の電動モータと、ボールねじ等のねじ機構とを組み合わせた電動アクチュエータや、油圧シリンダ等の油圧機器などを使用することができる。
図2等に示すように、支持部材23は、中心軸Oを垂直軸Xに沿わせ、かつ車輪取付フランジ13bを下側に配した縦姿勢のハブ輪13をその下側から支持する。支持部材23にはその上端面24に開口したボルト孔25が設けられており、このボルト孔25には、ハブ輪13の車輪取付フランジ13bのボルト装着孔13cに装着したボルト部材18が締結される。これにより、モータ22が回転駆動されると、その回転駆動力がボルト部材18を介して支持部材23に支持されたハブ輪13の車輪取付フランジ13bに入力され、ハブ輪13(を含む中間組立品10’)がその中心軸O(垂直軸X)回りに支持部材23と一体的に回転する。
パンチ保持部3は、加締め加工具としてのパンチ34を保持したヘッド33と、ヘッド33を垂直軸X回りに回転駆動させるモータ32と、モータ32及びヘッド33が取り付けられた上部テーブル31とを備える。パンチ34は、その下端面の中心部を支持部材23の中心軸(支持部材23に支持されるハブ輪13の中心軸O)上に配置し、かつその中心軸X1を支持部材23に支持されるハブ輪13の中心軸O(垂直軸X)に対して所定角度θ(例えば、5°~30°)傾けた傾斜姿勢でヘッド33に保持されている。このため、モータ32の出力を受けてヘッド33が回転駆動されると、ヘッド33に保持されたパンチ34は、支持部材23に支持されるハブ輪13の中心軸Oを中心として揺動回転する。パンチ34の下端面には、ハブ輪13の筒部13aの軸方向端部13a1の変形を案内(軸方向端部13a1を所定形状に成形)するための環状の変形案内面35が形成されている。
内輪拘束部4は、中間組立品10’を構成する内輪14の外周面を拘束する環状の拘束部材41と、この拘束部材41を、環状のスラスト軸受43を介して垂直軸X回りに回転自在に支持した中間テーブル42とを備える。
図示は省略しているが、本実施形態では、上記の第2昇降機構の出力部材が、パンチ保持部3には連結されずに内輪拘束部4の中間テーブル42に連結される。そのため、第2昇降機構が駆動されると、スラスト軸受43を介して中間テーブル42に支持された拘束部材41が昇降移動する。なお、第2昇降機構としては、第1昇降機構と同様に、例えば、サーボモータ等の電動モータと、ボールねじ等のねじ機構とを組み合わせた電動アクチュエータや、油圧シリンダ等の油圧機器を使用することができる。
本実施形態の加締め装置1は以上の構成を有し、ハブ輪13の筒部13aには、以下のようにして加締め部17が成形される。
まず、図2及び図3に示すように、ハブ輪13の筒部13aの外周の所定位置に外輪11、内輪14、複数のボール15及び保持器16を組み付けた中間組立品10’を作製し、これを加締め装置1のワーク支持部2にセットする。具体的には、前述したとおり、中心軸Oが垂直軸Xに沿い、かつ車輪取付フランジ13bを下側に配した縦姿勢のハブ輪13を含む中間組立品10’を支持部材23の上端面24に載置し、車輪取付フランジ13bのボルト装着孔13cに装着したボルト部材18を支持部材23のボルト孔25に締結する。このようにして中間組立品10’をワーク支持部2と一体回転可能にワーク支持部2にセットした後、第1昇降機構(の出力部材が連結された下テーブル21)及び/又は第2昇降機構(の出力部材が連結された中間テーブル42)を駆動して中間組立品10’の内輪14の径方向外側に内輪拘束部4の拘束部材41を配置する。これにより、内輪14の外周面が拘束部材41(の内周面)で拘束される。
そして、第1及び第2昇降機構を駆動し、下テーブル21及び中間テーブル42を同期して上昇移動させる(図3中の黒塗り矢印を参照)。また、パンチ保持部3のモータ32を駆動することでヘッド33を回転駆動させ、ヘッド33に傾斜姿勢で保持されたパンチ34をハブ輪13の中心軸O(垂直軸X)を中心として揺動回転させる。下テーブル21及び中間テーブル42が同期して上昇移動し、ハブ輪13の筒部13aの軸方向端部13a1がパンチ34(の下端面に設けた変形案内面35)に接触したとき、ハブ輪13が上記の縦姿勢で支持されると共にパンチ34が上記の傾斜姿勢で保持されている関係上、筒部13aの軸方向端部13a1は、その周方向の一部がパンチ34の変形案内面35に対して接触する(図4参照)。
そのため、その後、下テーブル21及び中間テーブル42が継続して上昇移動し、ハブ輪13の筒部13aが揺動回転中のパンチ34に対して徐々に押し込まれると、筒部13aの軸方向端部13a1には、その周方向の一部に対して径方向外向きで上下方向下向きの成形荷重が作用し、かつこの成形荷重が作用する部分が周方向で連続的に変化する。これにより、筒部13aの軸方向端部13a1は、パンチ34の変形案内面35に倣って徐々に径方向外向きに塑性変形する。そして、揺動回転しているパンチ34に対するハブ輪13の筒部13aの押し込みが完了すると、ハブ輪13の筒部13aに図8(a)に示すようなフランジ状の加締め部17が成形される。これにより、筒部13aの外周に配された内輪14は、その軸方向両側から挟持されるようにしてハブ輪13に固定される。
上記のとおり、本実施形態のワーク支持部2には、ハブ輪13を含む中間組立品10’を一体回転可能な状態で支持した支持部材23を垂直軸X(ハブ輪13の中心軸O)回りに回転駆動させる駆動機構としてのモータ22が設けられており、ハブ輪13の筒部13bを揺動回転中のパンチ34に対して押し込む際、支持部材23は、モータ22により垂直軸X回りに回転駆動される。そのため、中間組立品10’に含まれるハブ輪13は、垂直軸X回りに回転しながら揺動回転しているパンチ34(の下端面に設けた変形案内面35)に対して徐々に押し込まれる。但し、支持部材23の回転方向は、パンチ34を保持したヘッド33(に回転力を付与するモータ32)の回転方向とは逆方向とする。すなわち、図3及び図4に示すように、パンチ34を保持したヘッド33が矢印A方向(周方向一方側)に回転する場合、ハブ輪13を含む中間組立品10’を支持した支持部材23の回転方向は、矢印A方向とは反対方向である矢印B方向(周方向他方側)とする。
上記のように、ハブ輪13を含む中間組立品10’をパンチ34の回転方向とは反対方向に回転させつつ、ハブ輪13の筒部13aをパンチ34(の変形案内面35)に対して徐々に押し込むようにすれば、非回転状態(静止状態)のハブ輪の筒部を回転中のパンチを押し込む場合に比べ、パンチ34とハブ輪13の相対回転速度を高速化することができる。このようにパンチ34とハブ輪13の相対回転速度が高速化すると、パンチ34に対するハブ輪13の押し込み速度(単位時間当たりのハブ輪13の押し込み量)が一定の場合には、パンチ34が1回転する毎に筒部13aの周方向各部に作用する径方向外向きの成形荷重が低減される分、パンチ34が1回転する間に軌道面(特に、成形荷重の作用点に近い位置に配される第2内側軌道面Sb2、及びこれに対向する第2外側軌道面Sa2)の周方向各部に付加されるボール15の接触圧も低減することができる。そのため、揺動回転するパンチ34にハブ輪13の筒部13aを徐々に押し込むのに伴ってパンチ34に作用する応力(反力)も減じることができるので、パンチ34の耐久寿命を長くすることができる。これにより、加締め部17の成形コスト、ひいては車輪用軸受装置10の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態では、ハブ輪13の筒部13aをパンチ34(の変形案内面35)に対して徐々に押し込む際、筒部13aの外周に配置した内輪14の外周面を拘束部材41によって拘束している。このようにすれば、筒部13aの押し込みに伴って筒部13aに作用する径方向外向きの成形荷重が逃げ難くなるので、加締め部17を精度良く、また効率良く成形することができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限られない。
例えば、図5に示すように、加締め装置1には、ハブ輪13の外周に組み付けられた外輪11(中間組立品10を構成する外輪11)の回転を規制する回転規制部5を設けることもできる。図示例の回転規制部5は、外輪11の外周面を拘束することにより、外輪11がハブ輪13とともに回転するのを規制するものであり、下テーブル21及び中間テーブル42と同期して昇降移動可能に設けられている。
このような回転規制部5を設けておけば、揺動回転しているパンチ34に対してハブ輪13の筒部13bを押し込むことでハブ輪13に加締め部17を成形する際に、外輪11がハブ輪13とともに回転するのを規制することができるので、外輪11の外側軌道面Sa1,Sa2に圧痕が形成されるのを可及的に防止することができる。
また、加締め装置1のワーク支持部2を構成する支持部材23としては、図6(a)に示すようなものを使用することもできる。図示例の支持部材23は、ボルト部材18が締結されるボルト孔25(図1等を参照)が省略される代わりに、上端面24に突起26が設けられている。この突起26は、図6(b)に示すように、ハブ輪13の車輪取付フランジ13bに設けられたボルト孔13c、あるいはボルト孔13cとは別に設けられた孔部(貫通孔)13eに嵌合可能な突起とされる。
つまり、詳細な図示は省略するが、このような支持部材23を用いる場合、中間組立品10’を構成するハブ輪13は、車輪取付フランジ13bに設けられたボルト孔13c、あるいはボルト孔13cとは別の孔部13eに突起26が挿入されることにより、支持部材23と一体的に回転可能となる。この場合、ハブ輪13を垂直軸X回りに回転させるための回転力(モータ22の回転駆動力)は、ボルト部材18等を介することなく車輪取付フランジ13bに直接入力される。このような支持部材23を用いれば、加締め装置1に車輪用軸受装置10をセットするときのボルト部材18の締結作業、及び加締め装置1から車輪用軸受装置10を取り外す際のボルト部材18の取り外し作業を実行する必要がなくなるので、加締め部17の成形加工を効率良く実施することができる。
ハブ輪13の車輪取付フランジ13bの外周輪郭形状は、図6(b)に示したような真円形状とされる場合が多いが、図7に例示するような非真円形状(略十字状)とされる場合もある。このようなハブ輪13の筒部13aに加締め部17を成形する際に使用する支持部材23としては、図1等に示すように、車輪取付フランジ13bのボルト装着孔13cに装着したボルト部材18が締結される孔部25が設けられたものや、図6(a)に示すように、車輪取付フランジ13bのボルト装着孔13c(又は孔部13e:図6(b)参照)に嵌合される突起26が設けられたもの以外にも、車輪取付フランジ13bの外周部と支持部材23の回転方向で係合可能な係合凸部27が設けられたもの(図7参照)を用いることもできる。これにより、モータ22が回転駆動されると、支持部材23に支持されたハブ輪13(を含む中間組立品10’)は、その中心軸O(垂直軸X)回りに支持部材23と一体的に回転する。
図1~図4を参照して説明した実施形態では、パンチ34(を保持したヘッド33)が取り付けられた上テーブル31に昇降機構の出力部材を連結せず、ハブ輪13の筒部13aに加締め部17を成形する際にパンチ34を上下方向の定位置で回転駆動するようにしたが、例えば上テーブル31に昇降機構の出力部材を連結することにより、加締め部17の成形時には、パンチ34を下降(ハブ輪13の筒部13aに対して接近移動)させつつ回転駆動するようにしても良い。この場合、ハブ輪13(を含む中間組立品10’)を支持する支持部材23は、上下方向の定位置でパンチ34とは逆方向に回転駆動するようにしても良い。
また、以上では、転動体としてボール15を用いた車輪用軸受装置10を製造する(車輪用軸受装置10に加締め部17を成形する)に際して本発明を適用する場合について説明したが、本発明は、例えば円すいころ等、ボール15以外の転動体を用いる車輪用軸受装置10を製造する際にも適用することができる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得る。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 加締め装置
2 ワーク支持部
3 パンチ保持部
4 内輪拘束部
5 回転規制部
10 車輪用軸受装置
11 外輪
12 内方部材
13 ハブ輪
13a 筒部
13a1 軸方向端部
14 内輪
15 ボール(転動体)
17 加締め部
22 モータ
23 支持部材
34 パンチ
35 変形案内面
41 拘束部材
O (ハブ輪の)中心軸
X 垂直軸
X1 パンチの中心軸
2 ワーク支持部
3 パンチ保持部
4 内輪拘束部
5 回転規制部
10 車輪用軸受装置
11 外輪
12 内方部材
13 ハブ輪
13a 筒部
13a1 軸方向端部
14 内輪
15 ボール(転動体)
17 加締め部
22 モータ
23 支持部材
34 パンチ
35 変形案内面
41 拘束部材
O (ハブ輪の)中心軸
X 垂直軸
X1 パンチの中心軸
Claims (5)
- 内周面に第1及び第2外側軌道面が形成された外輪と、外周面に第1内側軌道面が形成された筒部を有するハブ輪と、外周面に第2内側軌道面が形成された内輪と、前記第1外側軌道面と前記第1内側軌道面の間、及び前記第2外側軌道面と前記第2内側軌道面の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えた車輪用軸受装置の製造方法であって、
前記ハブ輪の中心軸を中心として揺動回転しているパンチに対して外周に前記外輪、前記内輪及び前記複数の転動体が組み付けられた前記ハブ輪の筒部を徐々に押し込み、前記筒部の軸方向端部を径方向外向きに曲げ変形させることにより、前記内輪を固定するためのフランジ状の加締め部を前記ハブ輪に成形するに際し、前記ハブ輪を前記パンチの回転方向とは反対方向に回転させることを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。 - 前記内輪の外周面を拘束した状態で、前記パンチに対して前記ハブ輪の筒部を押し込む請求項1に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
- 前記外輪の回転を規制した状態で、前記パンチに対して前記ハブ輪の筒部を押し込む請求項1又は2に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
- 前記ハブ輪は、前記車輪用軸受装置を車輪に対して取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、この車輪取付フランジに、前記ハブ輪を回転させるための回転力を入力する請求項1又は2に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
- 内周面に第1及び第2外側軌道面が形成された外輪と、外周面に第1内側軌道面が形成された筒部を有するハブ輪と、外周面に第2内側軌道面が形成された内輪と、前記第1外側軌道面と前記第1内側軌道面の間、及び前記第2外側軌道面と前記第2内側軌道面の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えた車輪用軸受装置の製造装置であって、
前記筒部の外周に前記外輪、前記内輪及び前記複数の転動体が組み付けられた前記ハブ輪を支持する支持部と、前記支持部に支持された前記ハブ輪の中心軸を中心として揺動回転するパンチを保持したパンチ保持部とを備え、前記支持部と前記パンチ保持部とを相対的に接近移動させ、揺動回転中の前記パンチに前記ハブ輪の前記筒部を徐々に押し込むことにより、前記筒部の軸方向端部に前記内輪を固定するためのフランジ状の加締め部を前記ハブ輪に成形するものにおいて、
前記支持部に、前記ハブ輪を前記パンチの回転方向とは反対方向に回転させるための回転機構を設けたことを特徴とする車輪用軸受装置の製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022171451A JP2024063471A (ja) | 2022-10-26 | 2022-10-26 | 車輪用軸受装置の製造方法及び製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022171451A JP2024063471A (ja) | 2022-10-26 | 2022-10-26 | 車輪用軸受装置の製造方法及び製造装置 |
Publications (1)
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JP2024063471A true JP2024063471A (ja) | 2024-05-13 |
Family
ID=91030727
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2022171451A Pending JP2024063471A (ja) | 2022-10-26 | 2022-10-26 | 車輪用軸受装置の製造方法及び製造装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2024063471A (ja) |
-
2022
- 2022-10-26 JP JP2022171451A patent/JP2024063471A/ja active Pending
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