JP2024063124A - 反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法 - Google Patents

反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2024063124000001
【課題】保護膜のエッチング耐性を向上すると共に、保護膜と多層反射膜のミキシングと、保護膜の表面荒れと、保護膜の表面への元素拡散を抑制する、技術を提供すること。
【解決手段】反射型マスクブランクは、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜を保護する保護膜と、前記EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する。前記保護膜は、Rhを主成分として含有する。前記多層反射膜は、前記保護膜に最も近い最上層であってSiとNを含有する最上層を有する。前記最上層は、NとSiの元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つOとSiの元素比(O/Si)が0.00以上0.44未満である。
【選択図】図1

Description

本開示は、反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法に関する。
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、極端紫外線(Extreme Ultra-Violet:EUV)を用いた露光技術であるEUVリソグラフィー(EUVL)が開発されている。EUVとは、軟X線および真空紫外線を含み、具体的には波長が0.2nm~100nm程度の光のことである。現時点では、13.5nm程度の波長のEUVが主に検討されている。
EUVLでは、反射型マスクが用いられる。反射型マスクは、ガラス基板などの基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、多層反射膜を保護する保護膜と、EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する。吸収膜は、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜であってもよい。吸収膜には、開口パターンが形成される。EUVLでは、吸収膜の開口パターンを半導体基板などの対象基板に転写する。転写することは、縮小して転写することを含む。
特許文献1の反射型マスクは、基板と、多層反射膜と、反射率低減抑制膜と、ブロッキング膜と、エッチングストッパ膜と、吸収膜と、をこの順で有する。反射率低減抑制膜は、Siなどからなる。ブロッキング膜は、Nbなどからなり、反射率低減抑制膜を構成するSiがエッチングストッパ膜へ拡散するのを抑制する。エッチングストッパ膜は、Ru又はRu合金からなる。
日本国特開2014-170931号公報
反射型マスクは、ガラス基板などの基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、多層反射膜を保護する保護膜と、EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する。保護膜は、エッチングガスを用いて吸収膜に開口パターンを形成する際に、エッチングガスから多層反射膜を保護する。エッチングガスは、例えばハロゲン系ガス、酸素系ガスまたはこれらの混合ガスである。
保護膜は、エッチングガスに曝されても除去されずに、多層反射膜の上に残る。特許文献1の保護膜は、Ru又はRu合金からなる。保護膜の主成分がRuである場合、保護膜のエッチング耐性が十分ではなかった。特にエッチングガスとして酸素系ガスが用いられる場合(混合ガスが用いられる場合を含む。)に、保護膜のエッチング耐性が十分ではなかった。
本開示の一態様は、保護膜のエッチング耐性を向上すると共に、保護膜と多層反射膜のミキシングと、保護膜の表面荒れと、保護膜の表面への元素拡散とを抑制する、技術を提供する。
本開示の一態様に係る反射型マスクブランクは、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜を保護する保護膜と、前記EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する。前記保護膜は、Rhを主成分として含有する。前記多層反射膜は、前記保護膜に最も近い最上層であってSiとNを含有する最上層を有する。前記最上層は、NとSiの元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つOとSiの元素比(O/Si)が0.00以上0.44未満である。
本開示の一態様によれば、Rhを主成分として含有する保護膜を用いることで、保護膜のエッチング耐性を向上できる。また、多層反射膜の最上層における元素比(N/Si,O/Si)を上記範囲に収めることで、保護膜と多層反射膜のミキシングと、保護膜の表面荒れと、保護膜の表面への元素拡散とを抑制できる。
図1は、一実施形態に係る反射型マスクブランクを示す断面図である。 図2は、一実施形態に係る反射型マスクを示す断面図である。 図3は、図2の反射型マスクで反射されるEUV光の一例を示す断面図である。 図4は、一実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法を示すフローチャートである。 図5は、一実施形態に係る反射型マスクの製造方法を示すフローチャートである。 変形例に係る反射型マスクブランクを示す断面図である。 図7は、例1に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す図である。 図8は、例4に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す図である。 図9は、例5に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す図である。 図10は、例8に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す図である。 図11は、例8に係る反射型マスクの元素濃度の分布図である。
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において同一のまたは対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
図1~図3において、X軸方向とY軸方向とZ軸方向は互いに直交する方向である。Z軸方向は、基板10の第1主面10aに対して垂直な方向である。X軸方向は、EUV光の入射面(入射光線と反射光線を含む面)に直交する方向である。図3に示すように、入射光線はZ軸負方向に向かうほどY軸正方向に傾斜し、反射光線はZ軸正方向に向かうほどY軸正方向に傾斜する。
図1を参照して、一実施形態に係る反射型マスクブランク1について説明する。反射型マスクブランク1は、例えば、基板10と、多層反射膜11と、保護膜12と、吸収膜13と、エッチングマスク膜14と、をこの順番で有する。多層反射膜11と、保護膜12と、吸収膜13と、エッチングマスク膜14とは、この順番で、基板10の第1主面10aに形成される。なお、反射型マスクブランク1は、少なくとも、基板10と、多層反射膜11と、保護膜12と、吸収膜13と、を有していればよい。
反射型マスクブランク1は、図1には図示しない機能膜を更に有してもよい。例えば、反射型マスクブランク1は、基板10を基準として、多層反射膜11とは反対側に、導電膜を有してもよい。導電膜は、基板10の第2主面10bに形成される。第2主面10bは、第1主面10aとは反対向きの面である。導電膜は、例えば反射型マスク2を露光装置の静電チャックに吸着するのに用いられる。
反射型マスクブランク1は、図示しないが、保護膜12と吸収膜13の間にバッファ膜を有してもよい。バッファ膜は、吸収膜13に開口パターン13aを形成するエッチングガスから、保護膜12を保護する。バッファ膜は、吸収膜13よりも緩やかにエッチングされる。バッファ膜は、保護膜12とは異なり、最終的に吸収膜13の開口パターン13aと同一の開口パターンを有することになる。
次に、図2および図3を参照して、一実施形態に係る反射型マスク2について説明する。反射型マスク2は、例えば、図1に示す反射型マスクブランク1を用いて作製され、吸収膜13に開口パターン13aを含む。なお、図1に示すエッチングマスク膜14は、吸収膜13に開口パターン13aを形成した後に除去される。
EUVLでは、吸収膜13の開口パターン13aを半導体基板などの対象基板に転写する。転写することは、縮小して転写することを含む。以下、基板10、多層反射膜11、保護膜12、吸収膜13、およびエッチングマスク膜14について、この順番で説明する。
基板10は、例えばガラス基板である。基板10の材質は、TiOを含有する石英ガラスが好ましい。石英ガラスは、一般的なソーダライムガラスに比べて、線膨張係数が小さく、温度変化による寸法変化が小さい。石英ガラスは、SiOを80質量%~95質量%、TiOを4質量%~17質量%含んでよい。TiO含有量が4質量%~17質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。石英ガラスは、SiOおよびTiO以外の第三成分または不純物を含んでもよい。なお、基板10の材質は、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、シリコン、または金属等であってもよい。
基板10は、第1主面10aと、第1主面10aとは反対向きの第2主面10bと、を有する。第1主面10aには、多層反射膜11などが形成される。平面視(Z軸方向視)にて基板10のサイズは、例えば縦152mm、横152mmである。縦寸法および横寸法は、152mm以上であってもよい。第1主面10aと第2主面10bは、各々の中央に、例えば正方形の品質保証領域を有する。品質保証領域のサイズは、例えば縦142mm、横142mmである。第1主面10aの品質保証領域は、0.15nm以下の二乗平均平方根粗さRqと、100nm以下の平坦度と、を有することが好ましい。また、第1主面10aの品質保証領域は、位相欠陥を生じさせる欠点を有しないことが好ましい。
多層反射膜11は、EUV光を反射する。多層反射膜11は、例えば高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したものである。高屈折率層の材質は例えばシリコン(Si)であり、低屈折率層の材質は例えばモリブデン(Mo)であり、Mo/Si多層反射膜が用いられる。なお、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜、Si/Ru/Mo多層反射膜なども、多層反射膜11として使用可能である。
多層反射膜11を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、各層の材質、およびEUV光に対する反射率に応じて適宜選択できる。多層反射膜11は、Mo/Si多層反射膜である場合、入射角θ(図3参照)が6°であるEUV光に対して60%以上の反射率を達成するには、膜厚2.3±0.1nmのMo層と、膜厚4.5±0.1nmのSi層とを繰り返し単位数が30以上60以下になるように積層すればよい。多層反射膜11は、入射角θが6°であるEUV光に対して60%以上の反射率を有することが好ましい。反射率は、より好ましくは65%以上である。
多層反射膜11を構成する各層の成膜方法は、例えば、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、またはイオンビームスパッタリング法などである。イオンビームスパッタリング法を用いてMo/Si多層反射膜を形成する場合、Mo層とSi層の各々の成膜条件の一例は下記の通りである。
<Si層の成膜条件>
ターゲット:Siターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.013Pa~0.027Pa、
イオン加速電圧:300V~1500V、
成膜速度:0.030nm/sec~0.300nm/sec、
Si層の膜厚:4.5±0.1nm、
<Mo層の成膜条件>
ターゲット:Moターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.013Pa~0.027Pa、
イオン加速電圧:300V~1500V、
成膜速度:0.030nm/sec~0.300nm/sec、
Mo層の膜厚:2.3±0.1nm、
<Si層とMo層の繰り返し単位>
繰り返し単位数:30~60(好ましくは40~50)。
多層反射膜11の最上層は、例えば、Si層を形成した後に、Si層を少なくとも窒化することで形成される。Si層は、例えばプラズマ化した窒素含有ガスに曝すことで窒化される。以下、プラズマ化した窒素含有ガスを用いた窒化を、ラジカル窒化とも記載する。Si層の形成後にラジカル窒化を行う場合、多層反射膜11の最上層とはラジカル窒化した層のことを意味する。ラジカル窒化の後、Si層は、大気雰囲気に曝すことで酸化されてもよい。以下、大気雰囲気を用いた酸化を、大気酸化とも記載する。
なお、多層反射膜11の最上層は、反応性スパッタリング法で形成されてもよい。反応性スパッタリング法は、最上層におけるNとSiの元素比(N/Si)を、スパッタガス中のNガスの含有率で制御可能である。また、反応性スパッタリング法は、最上層におけるOとSiの元素比(O/Si)を、スパッタガス中のOガスの含有率で制御可能である。
多層反射膜11は、保護膜12に最も近い最上層であってSiとNを含有する最上層を有する。最上層は、NとSiの元素比(N/Si)が0.00超1.50未満(0.00<(N/Si)<1.50)であって、且つOとSiの元素比(O/Si)が0.00以上0.44未満(0.00≦(O/Si)<0.44)である。本明細書において、元素比とは、モル比のことである。
詳しくは実施例の欄で説明するが、多層反射膜11の最上層における元素比(N/Si,O/Si)を上記範囲に収めることで、保護膜12と多層反射膜11のミキシングと、保護膜12の表面荒れと、保護膜12の表面への元素拡散とを抑制できる。
ここで、保護膜12と多層反射膜11のミキシングは、保護膜12の成膜時に生じる現象である。一方、保護膜12の表面への元素拡散は、酸素系ガスを用いて吸収膜13に開口パターン13aを形成する際に、酸素系ガスに保護膜12が曝されることで、酸化しやすい元素(例えば最上層に含まれるSi)が保護膜12の表面に拡散する現象である。
多層反射膜11の最上層における元素比(N/Si)は、0.00超1.50未満である。元素比(N/Si)が大きいほど、保護膜12と多層反射膜11のミキシングと、保護膜12の表面への元素拡散とを抑制できる。また、元素比(N/Si)が1.50未満であることで、EUV光に対する反射率の低下を抑制できる。元素比(N/Si)は、好ましくは0.10超0.50未満であり、より好ましくは0.10超0.30未満である。
多層反射膜11の最上層における元素比(O/Si)は、0.00以上0.44未満である。元素比(O/Si)が大きいほど、保護膜12と多層反射膜11のミキシングと、保護膜12の表面への元素拡散とを抑制できる。また、元素比(O/Si)が0.44未満であることで、保護膜12の表面荒れを抑制できる。元素比(O/Si)は、好ましくは0.00以上0.40以下であり、より好ましくは0.00以上0.30以下であり、さらに好ましくは0.00以上0.25未満であり、特に好ましくは0.00以上0.10未満であり、最も好ましくは0.00である。
保護膜12は、多層反射膜11と吸収膜13の間に形成され、多層反射膜11を保護する。保護膜12は、吸収膜13に開口パターン13a(図2参照)を形成するエッチングガスから多層反射膜11を保護する。保護膜12は、エッチングガスに曝されても除去されずに、多層反射膜11の上に残る。
エッチングガスは、例えばハロゲン系ガス、酸素系ガス、またはこれらの混合ガスである。ハロゲン系ガスとしては、塩素系ガスと、フッ素系ガスと、が挙げられる。塩素系ガスは、例えばClガス、SiClガス、CHClガス、CClガス、BClガスまたはこれらの混合ガスである。フッ素系ガスは、例えばCFガス、CHFガス、SFガス、BFガス、XeFガスまたはこれらの混合ガスである。酸素系ガスは、Oガス、Oガスまたはこれらの混合ガスである。
保護膜12のエッチング速度ER1に対する、吸収膜13のエッチング速度ER2の比(ER2/ER1)を、選択比(ER2/ER1)とも呼ぶ。選択比(ER2/ER1)が大きいほど、吸収膜13の加工性が良い。選択比(ER2/ER1)は、好ましくは5.0以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは30以上である。選択比(ER2/ER1)は、好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下である。
保護膜12は、Rhを主成分として含有する。保護膜12は、Rhを50at%以上100at%以下含有する。保護膜12の主成分としてRuの代わりにRhを用いることで、保護膜12のエッチング耐性を向上できる。特にエッチングガスとして酸素系ガスが用いられる場合(混合ガスが用いられる場合を含む。)に、保護膜12のエッチング耐性を向上できる。
Rhは、Ruに比べて、Siと相互拡散しやすい。そのため、保護膜12がRhを主成分として含有する場合、保護膜12がRuを主成分として含有する場合よりも、多層反射膜11の最上層における元素比(N/Si,O/Si)が重要になる。多層反射膜11の最上層における元素比(N/Si,O/Si)が上記範囲内であれば、多層反射膜11の最上層と保護膜12とのミキシングを抑制できる。ミキシングを抑制することで、エッチング耐性の低下と、EUV光に対する反射率の低下とを抑制できる。
保護膜12は、金属元素として、Rhのみを含有してもよいが、Rh化合物を含有することが好ましい。Rh化合物は、Rhに加えて、Ru、Nb、Mo、Ta、Ir、Pd、Zr、YおよびTiからなる群から選択される少なくとも1つの元素Z1を含有してもよい。好ましくは、保護膜12は、金属元素として、Rhのみを含有するか、Rhに加えてRuとPdの少なくとも1つを含有する。
Rhに対してRu、Nb、Mo、Zr、YまたはTiを添加することで、屈折率の増大を抑制しつつ、消衰係数を小さくでき、EUV光に対する反射率を向上できる。また、Rhに対してTa、Ir、PdまたはYを添加することで、エッチングガス又は/及び硫酸過水に対する耐久性を向上できる。硫酸過水は、後述するレジスト膜の除去または反射型マスク2の洗浄などに用いられる。
Z1(全てのZ1)とRhの元素比(Z1:Rh)は、好ましくは1:99~1:1である。比の値(Z1/Rh)が1/99以上であれば、EUV光に対する反射率が良好である。比の値(Z1/Rh)が1以下であれば、保護膜12のエッチング耐性が良好である。Z1とRhの元素比(Z1:Rh)は、より好ましくは3:10~1:1である。
Z1がRuである場合、RuとRhの元素比(Ru/Rh)は、好ましくは0.0超1.0未満(0.0<(Ru/Rh)<1.0)であり、より好ましくは0.3超0.5未満(0.3<(Ru/Rh)<0.5)である。元素比(Ru/Rh)が0.0超であれば、EUV光に対する反射率が良好である。元素比(Ru/Rh)が1.0未満であれば、エッチング耐性が良好である。
Z1がPdである場合、PdとRhの元素比(Pd/Rh)は、好ましくは0.00超1.0未満(0.00<(Pd/Rh)<1.0)であり、より好ましくは0.01超0.1未満(0.01<(Pd/Rh)<0.1)である。元素比(Ru/Rh)が0.00超であれば、エッチング耐性が良好である。元素比(Ru/Rh)が1.0未満であれば、EUV光に対する反射率が良好である。
Rh化合物は、Rhに加えて、N、O、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素Z2を含有してもよい。元素Z2は、保護膜12のエッチング耐性を低下させてしまう反面、保護膜12の結晶化を抑制でき、保護膜12の表面を平滑に形成できる。元素Z2を含有するRh化合物は、非結晶構造または微結晶構造を有する。Rh化合物が非結晶構造または微結晶構造を有する場合、Rh化合物のX線回折プロファイルは明瞭なピークを有しない。
Rh化合物がRhに加えてZ2を含有する場合、Rhの含有量(但しZ1の含有量は0at%)またはRhとZ1の合計の含有量は40at%~99at%であって且つZ2の合計の含有量は1.0at%~60at%であることが好ましい。Rh化合物がRhに加えてZ2を含有する場合、Rhの含有量(但しZ1の含有量は0at%)またはRhとZ1の合計の含有量は80at%~99at%であって且つZ2の合計の含有量は1.0at%~20at%であることがより好ましい。
Rh化合物は、Rhを90at%以上含有し、Z1とZ2の少なくとも1つを含有し、且つ10.0g/cm~14.0g/cmの膜密度を有する場合、非結晶構造または微結晶構造を有する。保護膜12の膜密度は、好ましくは11.0g/cm~13.0g/cmである。なお、保護膜12は、Rhを100at%含有し、且つ11.0g/cm~12.0g/cmの膜密度を有する場合、非結晶構造または微結晶構造を有する。なお、保護膜12の膜密度は、X線反射率法を用いて測定する。
保護膜12の厚みは、好ましくは1.0nm~4.0nmであり、より好ましくは2.0nm~3.5nmであり、さらに好ましくは2.5nm~3.0nmである。保護膜12の厚みが1.0nm以上であれば、エッチング耐性が良好である。また、保護膜12の厚みが4.0nm以下であれば、EUV光に対する反射率が良好である。
保護膜12の膜密度は、好ましくは10.0g/cm~14.0g/cmである。保護膜12の膜密度が10.0g/cm以上であれば、エッチング耐性が良い。また、保護膜12の膜密度が14.0g/cm以下であれば、EUV光に対する反射率の低下を抑制できる。
保護膜12の上面、すなわち保護膜12の吸収膜13が形成される表面は、二乗平均平方根粗さRqが好ましくは0.20nm以下であり、より好ましくは0.17nm以下である。二乗平均平方根粗さRqが0.20nm以下であれば、保護膜12の上に吸収膜13などを平滑に形成できる。また、EUV光の散乱を抑制でき、EUV光に対する反射率を向上できる。二乗平均平方根粗さRqは、好ましくは0.05nm以上である。
保護膜12の成膜方法は、例えば、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法またはイオンビームスパッタリング法などである。DCスパッタリング法を用いてRh膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<Rh膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:1.0×10-2Pa~1.0×10Pa、
ターゲットの出力密度:1.0W/cm~8.5W/cm
成膜速度:0.020nm/sec~1.000nm/sec、
Rh膜の膜厚:1.0nm~4.0nm。
なお、Rh膜を形成する場合、スパッタガスとして、NガスまたはArガスとNの混合ガスを使用してもよい。スパッタガス中のNガスの体積比(N/(Ar+N))は0.05以上1.0以下である。
DCスパッタリング法を用いて、RhO膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<RhO膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:OガスまたはArガスとOの混合ガス、
スパッタガス中のOガスの体積比(O/(Ar+O)):0.05~1.0、
ガス圧:1.0×10-2Pa~1.0×10Pa、
ターゲットの出力密度:1.0W/cm~8.5W/cm
成膜速度:0.020nm/sec~1.000nm/sec、
RhO膜の膜厚:1.0nm~4.0nm。
DCスパッタリング法を用いて、RhRu膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<RhRu膜の成膜条件>
ターゲット:RhターゲットおよびRuターゲット(またはRhRuターゲット)、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:1.0×10-2Pa~1.0×10Pa、
ターゲットの出力密度:1.0W/cm~8.5W/cm
成膜速度:0.020nm/sec~1.000nm/sec、
RhRu膜の膜厚:1.0nm~4.0nm。
吸収膜13は、EUV光を吸収する。吸収膜13は、開口パターン13aが形成される膜である。開口パターン13aは、反射型マスクブランク1の製造工程では形成されずに、反射型マスク2の製造工程で形成される。吸収膜13は、EUV光を吸収するだけではなく、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜であってもよい。吸収膜13は、図3に示す第1EUV光L1に対して、第2EUV光L2の位相をシフトさせる。
第1EUV光L1は、吸収膜13を透過することなく開口パターン13aを通過し、多層反射膜11で反射され、再び吸収膜13を透過することなく開口パターン13aを通過した光である。第2EUV光L2は、吸収膜13に吸収されながら吸収膜13を透過し、多層反射膜11で反射され、再び吸収膜13に吸収されながら吸収膜13を透過した光である。
第1EUV光L1と第2EUV光L2の位相差(≧0)は、例えば170°~250°である。第1EUV光L1の位相が、第2EUV光L2の位相よりも、進んでいてもよいし、遅れていてもよい。吸収膜13は、第1EUV光L1と第2EUV光L2の干渉を利用して、転写像のコントラストを向上する。転写像は、吸収膜13の開口パターン13aを対象基板に転写した像である。
EUVLでは、いわゆる射影効果(シャドーイング効果)が生じる。シャドーイング効果とは、EUV光の入射角θが0°ではない(例えば6°である)ことに起因して、開口パターン13aの側壁付近に、側壁によってEUV光を遮る領域が生じ、転写像の位置ずれまたは寸法ずれが生じることをいう。シャドーイング効果を低減するには、開口パターン13aの側壁の高さを低くすることが有効であり、吸収膜13の薄化が有効である。
吸収膜13の膜厚は、シャドーイング効果を低減すべく、例えば60nm以下であり、好ましくは50nm以下である。吸収膜13の膜厚は、第1EUV光L1と第2EUV光L2の位相差を確保すべく、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは30nm以上である。
吸収膜13は、好ましくはRu、Ta、Cr、Nb、Pt、Ir、Re、W、MnおよびAuから選択される少なくとも1つの金属元素を含有する。これらの金属元素は、比較的小さな屈折率を有するので、位相差を確保しつつ、位相シフト膜の膜厚を小さくできる。吸収膜13は、上記の金属元素の中でもRuを含有することが好ましい。
吸収膜13は、上記の金属元素の化合物を含有することが好ましい。化合物は、上記の金属元素に加えて、O、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有する。金属元素に非金属元素を添加することで、吸収膜13の結晶化を抑制でき、開口パターン13aの側壁のラフネスを小さくできる。吸収膜13は、非金属元素として、酸素を含有することが好ましく、酸素と窒素を含有することがより好ましい。
吸収膜13の屈折率nは、好ましくは0.930以下であり、より好ましくは0.920以下であり、さらに好ましくは0.910以下であり、特に好ましくは0.90以下である。また、屈折率nは、好ましくは0.885以上である。本明細書において、屈折率は、波長13.5nmの光に対する屈折率である。
吸収膜13の消衰係数kは、好ましくは0.015以上であり、より好ましくは0.020以上である。また、消衰係数kは、好ましくは0.065以下である。本明細書において、消衰係数は、波長13.5nmの光に対する消衰係数である。
吸収膜13の光学特性(屈折率nと消衰係数k)は、Center for X-Ray Optics,Lawrence Berkeley National Laboratoryのデータベースの値、または後述する反射率の「入射角の依存性」から算出した値を用いる。
EUV光の入射角θと、EUV光に対する反射率Rと、吸収膜13の屈折率nと、吸収膜13の消衰係数kとは、下記の式(1)を満たす。
R=|(sinθ-((n+ik)2-cos2θ)1/2)/(sinθ+((n+ik)2-cos2θ)1/2)|・・・(1)
入射角θと反射率Rの組み合わせを複数測定し、複数の測定データと式(1)との誤差が最小になるように、最小二乗法で屈折率nと消衰係数kを算出する。
吸収膜13は、好ましくは硫酸過水によるエッチング速度が0nm/min~0.05nm/minである。吸収膜13の硫酸過水によるエッチング速度が0.05nm/min以下であれば、洗浄時に吸収膜13の損傷を抑制できる。
吸収膜13の成膜方法は、例えば、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法または反応性スパッタリングなどである。反応性スパッタリングは、スパッタガス中のOガスの含有量で、吸収膜13の酸素含有量を制御可能である。また、反応性スパッタリングは、スパッタガス中のNガスの含有量で、吸収膜13の窒素含有量を制御可能である。
反応性スパッタリング法を用いて吸収膜13として、RuN膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<RuN膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット、
スパッタガス:ArガスとNガスの混合ガス、
スパッタガス中のNガスの体積比(N/(Ar+N)):0.3~0.7、
ガス圧:0.05Pa~0.40Pa、
ターゲットの出力密度:1.0W/cm~8.5W/cm
成膜速度:0.010nm/sec~0.030nm/sec、
膜厚:20nm~60nm。
エッチングマスク膜14は、吸収膜13を基準として保護膜12とは反対側に形成され、吸収膜13に開口パターン13aを形成するのに用いられる。エッチングマスク膜14の上には、不図示のレジスト膜が設けられる。反射型マスク2の製造工程では、先ずレジスト膜に第1開口パターンを形成し、次に第1開口パターンを用いてエッチングマスク膜14に第2開口パターンを形成し、次に第2開口パターンを用いて吸収膜13に第3開口パターン13aを形成する。第1開口パターンと第2開口パターンと第3開口パターン13aは、平面視(Z軸方向視)で同一の寸法および同一の形状を有する。エッチングマスク膜14は、レジスト膜の薄膜化を可能にする。
エッチングマスク膜14は、好ましくはAl、Hf、Y、Cr、Nb、Ti、Mo、TaおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含有する。エッチングマスク膜14は、さらにO、NおよびBから選択される少なくとも1つの元素を含有してもよい。
エッチングマスク膜14の膜厚は、好ましくは2nm以上30nm以下であり、より好ましくは2nm以上25nm以下であり、更に好ましくは2nm以上10nm以下である。
エッチングマスク膜14の成膜方法は、例えば、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、またはイオンビームスパッタリング法などである。
次に、図4を参照して、一実施形態に係る反射型マスクブランク1の製造方法について説明する。反射型マスクブランク1の製造方法は、例えば、図4に示すステップS101~S105を有する。ステップS101では、基板10を準備する。ステップS102では、基板10の第1主面10aに多層反射膜11を形成する。ステップS103では、多層反射膜11の上に保護膜12を形成する。ステップS104では、保護膜12の上に吸収膜13を形成する。ステップS105では、吸収膜13の上にエッチングマスク膜14を形成する。
なお、反射型マスクブランク1の製造方法は、少なくとも、ステップS101~S104を有していればよい。反射型マスクブランク1の製造方法は、図4には図示しない機能膜を形成するステップを更に有してもよい。
次に、図5を参照して、一実施形態に係る反射型マスク2の製造方法について説明する。反射型マスク2の製造方法は、図5に示すステップS201~S204を有する。ステップS201では、反射型マスクブランク1を準備する。ステップS202では、エッチングマスク膜14を加工する。エッチングマスク膜14の上には、不図示のレジスト膜が設けられる。先ずレジスト膜に第1開口パターンを形成し、次に第1開口パターンを用いてエッチングマスク膜14に第2開口パターンを形成する。ステップS203では、第2開口パターンを用いて吸収膜13に第3開口パターン13aを形成する。ステップS203では、エッチングガスを用いて吸収膜13をエッチングする。ステップS204では、レジスト膜およびエッチングマスク膜14を除去する。レジスト膜の除去には、例えば硫酸過水が用いられる。エッチングマスク膜14の除去には、例えばエッチングガスが用いられる。ステップS204(エッチングマスク膜14の除去)で用いられるエッチングガスは、ステップS202(エッチングマスク膜14の加工)で用いられるエッチングガスと同種であってもよい。なお、反射型マスク2の製造方法は、少なくとも、ステップS201およびS203を有していればよい。
次に、図6を参照して、変形例に係る反射型マスクブランク1について説明する。反射型マスクブランク1は、多層反射膜11と保護膜12の間に、Ruを主成分として含有する反射率調整膜15を有してもよい。Ruは、Rhに比べて、消衰係数が低い。Rhを主成分として含有する保護膜12と、Ruを主成分として含有する反射率調整膜15とを組み合わせることで、エッチング耐性を向上しつつ、EUV光に対する反射率を向上することができる。
反射率調整膜15は、Ruを50at%以上100at%以下含有する。反射率調整膜15は、金属元素として、Ruのみを含有してもよいが、Ru化合物を含有してもよい。Ru化合物は、Ruに加えて、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaおよびTiからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。
Ru化合物は、Ruに加えて、O、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有してもよい。非金属元素は、エッチング耐性を低下させてしまう反面、反射率調整膜15の結晶化を抑制でき、反射率調整膜15の表面を平滑に形成できる。
反射率調整膜15の膜厚は、好ましくは0.1nm~2.0nmであり、より好ましくは0.5nm~2.0nmであり、さらに好ましくは1.0nm~1.5nmである。反射率調整膜15の膜厚が0.1nm以上であれば、EUV光に対する反射率が良好である。反射率調整膜15の膜厚が2.0nm以下であれば、エッチング耐性が良好である。
イオンビームスパッタリング法を用いて反射率調整膜15としてRu膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<Ru膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.010Pa~0.020Pa、
イオン加速電圧:300V~1500V、
成膜速度:0.010nm/sec~0.100nm/sec、
Ru膜の膜厚:0.1nm~2.0nm。
以下、実験データについて説明する。例1~例10では、多層反射膜11の最上層および反射率調整膜15の有無と材質を除き、同じ条件でEUVL用反射型マスクブランク1を作製した。各反射型マスクブランク1は、基板10と多層反射膜11と保護膜12と吸収膜13とで構成した。例1~例3、例9~例10が実施例であり、例4~例8が比較例である。
基板10としては、SiO-TiO系のガラス基板(外形6インチ(152mm)角、厚さが6.3mm)を準備した。このガラス基板は、20℃における熱膨張係数が0.02×10-7/℃であり、ヤング率が67GPaであり、ポアソン比が0.17であり、比剛性は3.07×10/sであった。基板10の第1主面10aの品質保証領域は、研磨によって0.15nm以下の二乗平均平方根粗さRqと、100nm以下の平坦度と、を有していた。基板10の第2主面10bには、マグネトロンスパッタリング法を用いて厚さ100nmのCr膜を成膜した。Cr膜のシート抵抗は100Ω/□であった。
多層反射膜11としては、Mo/Si多層反射膜を形成した。Mo/Si多層反射膜は、イオンビームスパッタリング法を用いてSi層(膜厚4.5nm)とMo層(膜厚2.3nm)を成膜することを40回繰り返すことにより形成した。Mo/Si多層反射膜の合計膜厚は272nm((4.5nm+2.3nm)×40)であった。
多層反射膜11の最上層の成膜方法を、表1に示す。表1において、「IBD」はイオンビームスパッタリング法を表し、「MS」はマグネトロンスパッタリング法を表す。また、「MS(SiON層の形成)」は、反応性マグネトロンスパッタリング法で、SiとOとNを含む層を形成したことを意味する。表1に示す元素比(N/Si)と元素比(O/Si)は、アルバックファイ社製X線光電子分光装置(PHI 5000 VersaProbe)を用いて測定した。
反射率調整膜15として、例3および例6~例7ではRu膜(膜厚1.0nm)はイオンビームスパッタリング法、もしくはDCスパッタリング法で形成し、例8ではNb膜(膜厚1.0nm)はDCスパッタリング法で形成した。例1、例2、例4、例5、例9および例10では、反射率調整膜15を形成しなかった。
保護膜12としては、Rh膜(膜厚2.5nm)を形成した。Rh膜は、DCスパッタリング法を用いて形成した。表1に示すミキシング層の厚みTは、TEM画像を用いて測定した。ミキシング層は、保護膜12の形成時に、保護膜12と多層反射膜11の最上層との相互拡散によって生じた層である。ミキシング層の厚みTは、ミキシングの程度を表す。ミキシングが進むほど、ミキシング層の厚みTが大きくなる。
保護膜12の形成後、吸収膜13の形成前に、保護膜12の表面の二乗平均平方根粗さRqを測定した。測定結果を表1に示す。表1に示す保護膜12の表面の二乗平均平方根粗さRqは、JIS B0601:2013に準拠して測定した。二乗平均平方根粗さRqは、表面荒れの程度を表す。
吸収膜13としては、RuN膜(膜厚35nm)を形成した。RuN膜は、反応性スパッタリング法を用いて形成した。その後、吸収膜13を、開口パターン13aの形成に用いる酸素系ガスに曝した。その際に、酸化しやすい元素が保護膜12の表面に拡散したか否か、拡散の有無を調べた。酸化しやすい元素は、例1~例7及び例9~例10では多層反射膜11の最上層に含まれるSiであり、例8では反射率調整膜15に含まれるNbである。拡散の有無を表1に示す。拡散の有無は、TEM-EDXを用いて調べた。
例1~例10で得られた、反射型マスクブランク1の成膜条件と評価結果を表1に示す。
Figure 2024063124000002
表1に示すように、例1~例2及び例9~例10は、多層反射膜11の最上層において、元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つ元素比(O/Si)が0.00以上0.44未満であった。そのため、例1~例2及び例9~例10によれば、ミキシング層の厚みTが小さく、保護膜12の表面の二乗平均平方根粗さRqが小さく、且つ保護膜12の表面への元素拡散が認められなかった。つまり、例1~例2及び例9~例10によれば、保護膜12がRh膜であっても、保護膜12と多層反射膜11のミキシングと、保護膜12の表面荒れと、保護膜12の表面への元素拡散とを抑制できた。また、例1~例2及び例9~例10から、多層反射膜11の最上層の成膜方法に関係なく、元素比(N/Si,O/Si)が重要であることが分かる。図7に、例1に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す。図7からも、例1によれば、ミキシング層の厚みTが小さいことが分かる。
一方、例4では、元素比(N/Si)と元素比(O/Si)がいずれも0.00であった。そのため、保護膜12の表面の二乗平均平方根粗さRqは良好であったが、保護膜12のミキシング層の厚みTが大きく、保護膜12の表面への元素拡散が認められた。図8に、例4に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す。図8から、多層反射膜11の最上層の厚みが薄くなっており、多層反射膜11の最上層と保護膜12のミキシングが進行したことが分かる。
例5では、元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であったため、ミキシング層の厚みTが小さく、且つ保護膜12の表面への元素拡散が認められなかった。図9に、例5に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す。図9からも、例5によれば、ミキシング層の厚みTが小さいことが分かる。但し、表1に示すように、例5では、元素比(O/Si)が0.44を超えており、保護膜12の表面の二乗平均平方根粗さRqが大きかった。
例3と例6~例7とを比較すれば明らかなように、多層反射膜11と保護膜12の間に反射率調整膜15を形成する場合も、反射率調整膜15を形成しない場合と同様に、多層反射膜11の最上層の組成が重要であることが分かる。多層反射膜11の最上層において、元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つ元素比(O/Si)が0.00以上0.44未満であれば、保護膜12がRh膜であっても、保護膜12と多層反射膜11のミキシングと、保護膜12の表面荒れと、保護膜12の表面への元素拡散とを抑制できることが分かる。
例8では、多層反射膜11の最上層であるSi層と、保護膜12であるRh膜との間に、反射率調整膜15としてNb膜を形成した。図10に、例5に係る反射型マスクブランクのSTEM像と元素マッピング像を示す。図10からも、Nb膜を形成することで、保護膜12と多層反射膜11のミキシングを抑制できることが分かる。但し、表1に示すように、例8によれば、保護膜12の表面への元素拡散が認められた。図11に、例8に係る反射型マスクブランク1を酸素系ガスに曝した後の元素濃度の分布を示す。図11に示すように、Nbの最大ピークの左側(基板10からの距離が遠い位置)に、Nbのピークが存在する。これは、酸素系ガスに保護膜12が曝される際に、保護膜12の表面にNbが拡散したことを表す。
以上、本開示に係る反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
本出願は、2022年7月25日に日本国特許庁に出願した特願2022-117803号に基づく優先権を主張するものであり、特願2022-117803号の全内容を本出願に援用する。
1 反射型マスクブランク
2 反射型マスク
10 基板
11 多層反射膜
12 保護膜
13 吸収膜

Claims (11)

  1. 基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜を保護する保護膜と、前記EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する、反射型マスクブランクであって、
    前記保護膜は、Rhを主成分として含有し、
    前記多層反射膜は、前記保護膜に最も近い最上層であってSiとNを含有する最上層を有し、
    前記最上層は、NとSiの元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つOとSiの元素比(O/Si)が0.00以上0.44未満である、反射型マスクブランク。
  2. 前記最上層は、NとSiの元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つOとSiの元素比(O/Si)が0.00以上0.25未満である、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  3. 前記保護膜は、金属元素として、RhまたはRhに加えてRuとPdの少なくとも1つを含有する、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
  4. 前記保護膜の表面の二乗平均平方根粗さRqが0.05nm以上、0.20nm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
  5. 前記保護膜の膜厚が、1.0nm~4.0nmである、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
  6. 前記多層反射膜と前記保護膜の間に、Ruを主成分として含有する反射率調整膜を有する、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
  7. 前記反射率調整膜の膜厚が、0.1nm~2.0nmである、請求項6に記載の反射型マスクブランク。
  8. 請求項1又は2に記載の反射型マスクブランクを備え、
    前記吸収膜に開口パターンを含む、反射型マスク。
  9. 基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜を保護する保護膜と、前記EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する、反射型マスクブランクの製造方法であって、
    前記基板の上に前記多層反射膜と前記保護膜と前記吸収膜をこの順番で成膜することを有し、
    前記保護膜は、Rhを主成分として含有し、
    前記多層反射膜は、前記保護膜に最も近い最上層であってSiとNを含有する最上層を有し、
    前記最上層は、NとSiの元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つOとSiの元素比(O/Si)が0.00以上0.44未満である、反射型マスクブランクの製造方法。
  10. 前記最上層は、NとSiの元素比(N/Si)が0.00超1.50未満であって、且つOとSiの元素比(O/Si)が0.00以上0.25未満である、請求項9に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
  11. 請求項1又は2に記載の反射型マスクブランクを準備することと、
    前記吸収膜に開口パターンを形成することと、
    を有する、反射型マスクの製造方法。
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