JP2024060430A - 多孔質ガラス材の製造方法及び多孔質ガラス材 - Google Patents

多孔質ガラス材の製造方法及び多孔質ガラス材 Download PDF

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Abstract

【課題】製造時に破損しにくく、かつ細孔径が小さい多孔質ガラス材の製造方法及び多孔質ガラス材を提供する。【解決手段】ZrO2を含有する多孔質ガラス材の製造方法であって、ZrO2を含有するガラス母材を用意する用意工程、ガラス母材から分相ガラスを得る分相工程、分相ガラスを酸処理することで多孔質ガラス材を得る酸処理工程、多孔質ガラス材前駆体の細孔を収縮させて微細孔を形成する微細孔形成工程、を含む、多孔質ガラス材の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質ガラス材の製造方法及び多孔質ガラス材に関する。
多孔質ガラス材はシャープな細孔分布と大きな比表面積を持ち、耐熱性、耐有機溶媒性を持つため、分離膜、散気管、電極材料や触媒の担持体など幅広い用途への利用が検討されている。なかにはアルカリ性の環境下で使用する場合もあり、応用を考慮して耐アルカリ性を有する多孔質ガラス材が検討されている。
耐アルカリ性多孔質ガラス材は、ジルコニア(ZrO)を含むアルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス母材をシリカリッチ相と酸化ホウ素リッチ相の2相に分相させてから、酸化ホウ素リッチ相を酸で除去することにより作製することができる(例えば、特許文献1、2)。
特開昭58-140341号公報 特開2006-19334号公報
ZrOを含む多孔質ガラス材は耐アルカリ性に優れる一方、製造時に破損しやすいという問題がある。特に、平均細孔径が小さい(すなわち、細孔分布の中央径値が小さい)多孔質ガラス材は製造時に破損しやすく、効率よく製造することが困難であった。
以上に鑑み、本発明は、製造時に破損しにくく、かつ平均細孔径が小さい多孔質ガラス材の製造方法及び多孔質ガラス材を提供することを目的とする。
上記課題を解決する多孔質ガラス材の製造方法及び多孔質ガラス材の各態様について説明する。
態様1の多孔質ガラス材の製造方法は、ZrOを含有する多孔質ガラス材の製造方法であって、ZrOを含有するガラス母材を用意する用意工程、ガラス母材から分相ガラスを得る分相工程、分相ガラスを酸処理することで多孔質ガラス材前駆体を得る酸処理工程、多孔質ガラス材前駆体の細孔を収縮させて微細孔を形成する微細孔形成工程、を含むことを特徴とする。
態様2の多孔質ガラス材の製造方法では、態様1において、ガラス母材が、質量%で、SiO 40%~80%、ZrO 0%超~20%、B 0%超~40%、Al 0%~10%、LiO 0%~20%、NaO 0%~20%、KO 0%~20%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有することが好ましい。
態様3の多孔質ガラス材の製造方法では、態様1又は態様2において、ガラス母材が、さらに質量%で、P 0.01%~10%を含有することが好ましい。
態様4の多孔質ガラス材の製造方法では、態様1から態様3のいずれか一つの態様において、多孔質ガラス材の平均細孔径が10nm~30nmであることが好ましい。
態様5の多孔質ガラス材の製造方法では、態様1から態様4のいずれか一つの態様において、多孔質ガラス材が、質量%で、SiO 50%~99%、ZrO 0%超~30%、Al 0%~20%、NaO 0%~15%、KO 0%~10%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有することが好ましい。
態様6の多孔質ガラス材の製造方法では、態様1から態様5のいずれか一つの態様において、多孔質ガラス材が、さらに質量%で、P 0.1%~10%を含有することが好ましい。
態様7の多孔質ガラス材の製造方法では、態様1から態様6のいずれか一つの態様において、微細孔形成工程において収縮熱処理を行うことが好ましい。
態様8の多孔質ガラス材の製造方法では、態様7において、微細孔形成工程において、収縮熱処理温度が1080℃以下であることが好ましい。
態様9の多孔質ガラス材の製造方法では、態様7又は態様8において、微細孔形成工程において、収縮熱処理時間が10時間以上であることが好ましい。
態様10の多孔質ガラス材の製造方法では、態様1から態様9のいずれか一つの態様において、微細孔形成工程において、多孔質ガラス材前駆体の細孔を5%~50%収縮させて多孔質ガラス材を得ることが好ましい。
態様11の多孔質ガラス材は、質量%で、SiO 50%~99%、ZrO 0%超~30%、Al 0%~20%、NaO 0%~15%、KO 0%~10%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有し、平均細孔径が5nm~30nmであることを特徴とする。
本発明によれば、製造時に破損しにくく、かつ平均細孔径が小さい多孔質ガラス材の製造方法及び多孔質ガラス材を提供することができる。
図1は、実施例1で作製した多孔質ガラス材のFE-SEM画像である。 図2は、実施例2で作製した多孔質ガラス材のFE-SEM画像である。 図3は、比較例3で作製した多孔質ガラス材のFE-SEM画像である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り「%」は「質量%」を意味する。
本発明の多孔質ガラス材の製造方法は、ZrOを含有する多孔質ガラス材の製造方法に関する。具体的には、ZrOを含有するガラス母材を用意する用意工程、ガラス母材から分相ガラスを得る分相工程、分相ガラスを酸処理することで多孔質ガラス材前駆体を得る酸処理工程、多孔質ガラス材前駆体の細孔を収縮させて微細孔を形成する微細孔形成工程、を含む。
ZrOを含有する多孔質ガラス材は、製造工程において、細孔中に存在する水が揮発する際に発生する応力(すなわち、毛細管力)によって破損しやすい。また、毛細管力は細孔径が小さいほど大きくなりやすいため、より小さな細孔(すなわち、微細孔)を有する多孔質ガラス材は一層毛細管力により破損しやすい。したがって、ZrOを含有し、かつ平均細孔径が小さい多孔質ガラス材は製造時に破損しやすい。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、目的とする平均細孔径よりも大きな平均細孔径を有する多孔質ガラス材(すなわち、多孔質ガラス材前駆体)をあらかじめ作製した後、多孔質ガラス材前駆体の細孔を収縮させることにより、微細孔を有する多孔質ガラス材を安定して製造できることを見出した。以下、各工程について説明する。また、以下の説明において、多孔質ガラス材前駆体を単に多孔質ガラス材と記載することがある。
<用意工程>
初めに、ZrOを含有するガラス母材を用意する。ZrOを含有するガラス母材は、例えば、質量%で、SiO 40%~80%、ZrO 0%超~20%、B 0%超~40%、Al 0%~10%、LiO 0%~20%、NaO 0%~20%、KO 0%~20%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有することが好ましい。
多孔質ガラス材は、上述した毛細管力以外にも酸処理工程で生じる体積変化が原因で割れることがある。体積変化の原因としては、多孔質ガラス材の細孔中に残留したシリカゲルの水和による膨張や、シリカリッチ相中からNaOが溶出することによる収縮が挙げられる。ガラス母材の組成を上記のように限定すれば、膨張量と収縮量を同程度とすることができ、多孔質ガラス材の体積変化を低減することができる。よって、多孔質ガラス材が製造時に破損しにくくなる。
上記のガラス組成となるように調合したガラスバッチを、例えば、1300℃~1600℃で4時間~12時間溶融する。次に、溶融ガラスを成形した後、例えば、400℃~600℃で10分~10時間徐冷を行うことによりガラス母材を得る。得られたガラス母材の形状は特に限定されないが、例えば、矩形や円形の板状であることが好ましい。なお、得られたガラス母材を所望の形状にするために、切削、研磨等の加工を施してもよい。
得られたガラス母材は、アスペクト比が2~1000、特に5~500であることが好ましい。アスペクト比が小さすぎると、酸処理工程において酸化ホウ素リッチ相を酸により除去(エッチング)する際に、ガラス母材の表面と内部でエッチング速度に大きな差が出やすい。そうすると、多孔質ガラス材内部に応力が発生しやすくなるため、割れが発生しやすくなる。アスペクト比が大きすぎると取り扱いにくくなる。なお、アスペクト比は下記の式により算出する。
アスペクト比=(ガラス母材の底面積)1/2/ガラス母材の厚み
ガラス母材の底面積と厚みは、上記アスペクト比となるように適宜調整すればよい。例えば、底面積は1mm~1000mm、特に5mm~500mmであることが好ましく、厚みは0.1mm~1mm、特に0.2mm~0.5mmであることが好ましい。
以下、ガラス母材の各成分の好ましい含有量について説明する。
SiOはガラスネットワークを形成する成分である。SiOの含有量は40%~80%、45%~75%、47%~70%、特に50%~65%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、多孔質ガラス材の耐候性や機械的強度が低下しやすくなる。また、シリカゲルの水和による膨張量が、シリカリッチ相中からNaO等のアルカリ成分が溶出することによる収縮量より小さくなりやすくなり、多孔質ガラス材に割れが発生しやすくなる。SiOの含有量が多すぎると、分相しにくくなる。
ZrOは多孔質ガラス材の耐候性や耐アルカリ性を向上させる成分である。ZrOの含有量は0%超~20%、0.1%~20%、1%~20%、2%~20%、2%~15%、2.5%~12%、5%~12%、6%~12%、特に8%~12%であることが好ましい。ZrOの含有量が少なすぎると、上記効果が得づらくなる。ZrOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。また、分相しにくくなる。
はガラスネットワークを形成し、分相を促進する成分である。Bの含有量は0%超~40%、10%~30%、特に15%~25%であることが好ましい。Bの含有量が少なすぎると、上記効果が得づらくなる。Bの含有量が多すぎると、ガラス母材の耐候性が低下しやすくなる。
Alは多孔質ガラス材の耐候性や機械的強度を向上させる成分である。Alの含有量は0%~10%、0.1%~7%、1%~5%、1%~4%、特に1%~3%であることが好ましい。Alの含有量が多すぎると、溶融温度が上昇して溶融性が低下しやすくなる。
LiOは溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分であるとともに、分相を促進させる成分である。LiOの含有量は0%~20%、0%超~20%、0.3%~15%、特に0.6%~10%であることが好ましい。LiOの含有量が多すぎると、逆に分相しにくくなる。
NaOは溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分であるとともに、分相を促進させる成分である。NaOの含有量は0%~20%、3%~15%、特に4%~10%であることが好ましい。NaOの含有量が多すぎると、逆に分相しにくくなる。
Oは溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分であるとともに、分相を促進させる成分である。また、シリカリッチ相中のZrO含有量を増加させる成分でもある。そのため、KOを含有させることにより、得られる多孔質ガラス材中のZrO含有量を増加させ、耐アルカリ性を一層向上させることができる。KOの含有量は0%~20%、0%超~20%、0.3%~5%、特に0.8%~3%であることが好ましい。KOの含有量が多すぎると、逆に分相しにくくなる。
LiO+NaO+KOの含有量(LiO、NaO及びKOの合量)は0%超~20%、0%超~18%、2%~15%、4%~12%、特に5%~10%であることが好ましい。LiO+NaO+KOの含有量が少なすぎると、溶融性を改善したり、分相を促進させる効果を得づらくなる。一方、LiO+NaO+KOの含有量が多すぎると、分相しにくくなる。また、LiO、NaO及びKOのいずれか2種を含有させる場合、その合量は0%超~20%、0%超~18%、2%~15%、4%~12%、特に5%~10%であることが好ましい。なお本明細書において、「x+y+・・・」は各成分の合量を意味する。ここで、各成分は必須成分でなくてもよく、含有しない(即ち0%の)成分があってもよい。
O/(LiO+NaO+KO)は0.1~0.5、0.13~0.45、特に0.15~0.4であることが好ましい。このようにすれば、耐アルカリ性を向上させつつ、溶融性を改善するとともに、分相を促進させることができる。なお、本明細書において、「x/y」はxの含有量をyの含有量で除した値を意味する。
NaO/Bは0.1~0.5、0.15~0.45、特に0.2~0.4であることが好ましい。このようにすれば、製造工程において、シリカゲルの水和による膨張量と、シリカリッチ相中からNaOが溶出することによる収縮量のバランスが取れ、多孔質ガラス材に割れが発生しにくくなる。
(LiO+NaO+KO)/Bは0.2~0.5、0.29~0.45、0.31~0.42、特に0.33~0.42であることが好ましい。このようにすれば、製造工程において、シリカゲルの水和による膨張量と、シリカリッチ相中からアルカリ成分が溶出することによる収縮量のバランスが取れ、多孔質ガラス材に割れが発生しにくくなる。
RO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種)は、シリカリッチ相中のZrO含有量を増加させる成分である。そのため、ROを含有させることにより、得られる多孔質ガラス材中のZrO含有量が増加し、耐アルカリ性を向上させることができる。また、ROは多孔質ガラス材の耐候性を向上させる成分である。ROの含有量(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量)は0%~20%、1%~17%、3%~15%、4%~13%、5%~12%、特に6.5%~12%であることが好ましい。ROの含有量が多すぎると、分相しにくくなる。なお、MgO、CaO、SrO及びBaOの含有量は各々0%~20%、1%~17%、3%~15%、4%~13%、5%~12%、特に6.5%~12%であることが好ましい。また、MgO、CaO、SrO及びBaOから選択される少なくとも2種の成分を含有させる場合、その合量は0%~20%、1%~17%、3%~15%、4%~13%、5%~12%、特に6.5%~12%であることが好ましい。ROのなかで、多孔質ガラス材の耐アルカリ性を向上させる効果が特に大きいという点で、CaOを使用することが好ましい。
ガラス母材には、上記成分以外にも下記の成分を含有させることができる。
は分相を顕著に促進させる成分である。また、シリカリッチ相中のZrO含有量を増加させる成分である。そのため、Pを含有させることにより、得られる多孔質ガラス材中のZrO含有量が増加し、耐アルカリ性を向上させることができる。Pの含有量は0%~10%、0%超~10%、0.01%~10%、特に0.02%~9%であることが好ましい。Pの含有量が多すぎると、溶融中に分相しやすくなる。ガラスが溶融中に分相すると、分相状態を制御できず、透明性を有するガラスを得にくくなる。またPの含有量が多すぎると、溶融中に結晶化しやすくなり、この場合も透明性を有するガラスを得にくくなる。
/ZrOは、0.001~1、0.005~0.5、0.005~0.3、0.005~0.2、0.005~0.1、0.005~0.08、特に0.01~0.06であることが好ましい。P/ZrOが大きすぎると、溶融中に分相または結晶化しやすくなり、透明性を有するガラスを得にくくなる。一方、P/ZrOが小さすぎると分相しにくくなる。
O+Pの含有量(すなわち、KO及びPの合量)は0%~20%、0.1%~10%、0.1%~8%、0.1%~5%、0.1%~3%、0.1%~2%、特に0.1%~1.5%であることが好ましい。上記を満たすことにより、シリカリッチ相中のZrO含有量を増加させやすくなる。そのため、得られる多孔質ガラス材中のZrO含有量を増加させることができ、多孔質ガラス材の耐アルカリ性を特に向上させやすくなる。KO+Pの含有量が多すぎると、分相状態の制御が困難になりやすく、多孔質ガラス材の製造が不安定になりやすい。
多孔質ガラス材の耐アルカリ性を向上させ、かつ分相状態の制御を容易にするという観点からは、P/(KO+P)が0.5以下、0.45以下、0.4以下、特に0.35以下であることが好ましく、0.01以上、特に0.05以上とすることが好ましい。
ZnOはシリカリッチ相中のZrO含有量を増加させる成分である。また多孔質ガラス材の耐候性を向上させる効果もある。ZnOの含有量は0%~20%、0%~10%、特に0%~3%未満であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、分相しにくくなる。
TiOはガラス母材の酸処理時のエッチングレートを高める効果を有する成分である。TiOの含有量は0%~10%、0.1%~8%、特に0.5%~6%であることが好ましい。TiOの含有量が少なすぎると、上記効果を得にくくなる。一方、TiOの含有量が多すぎると、ガラスが着色しやすくなる。
また、La、Ta、TeO、Nb、Gd、Y、Eu、Sb、SnO及びBi等を各々15%以下、各々10%以下、特に各々5%以下、合量で30%以下の範囲で含有させてもよい。
なお、PbOは環境負荷物質であるため、実質的に含有しないことが好ましい。ここで「実質的に含有しない」とは、意図的に原料として含有させないことを意味し、不可避的不純物の混入を排除するものではない。客観的には含有量が0.1%未満であることを意味する。
<分相工程>
次に、ZrOを含有するガラス母材から分相ガラスを得る。具体的には、得られたガラス母材に分相熱処理を行い、シリカリッチ相と酸化ホウ素リッチ相の2相に分相(スピノーダル分相)させる。
分相熱処理温度は500℃~800℃、特に600℃~750℃であることが好ましい。分相熱処理温度が低すぎると、ガラス母材を分相させにくくなる。分相熱処理温度が高すぎると、ガラス母材が軟化し所望の形状を得にくくなる。
分相熱処理時間は30分以上、1時間以上、3時間以上、特に5時間以上であることが好ましい。分相熱処理時間が短すぎると、ガラス母材を分相させにくくなる。分相熱処理時間の上限は特に限定されないが、長時間熱処理してもある一定以上は分相が進まなくなるため、現実的には180時間以下である。
なお、本工程において、分相ガラスの最表面にシリカ含有層(シリカを概ね80質量%以上含有する層)が形成される場合がある。この場合は、分相ガラスを切削または研磨し、シリカ含有層を除去した後で酸処理工程に進めることが好ましい。このようにすれば、シリカ含有層が形成された場合であっても酸化ホウ素リッチ相を除去しやすくなる。また、分相ガラスをフッ酸に短時間浸漬させてシリカ含有層を除去してもよい。
<酸処理工程>
次に、分相ガラスを酸処理することで多孔質ガラス材前駆体を得る。具体的には、分相ガラスを酸に浸漬させて酸化ホウ素リッチ相を除去し、多孔質ガラス材前駆体を得る。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等を用いることができる。なお、これらの酸を混合して用いてもよい。
酸の濃度は0.1規定~5規定、特に0.5規定~3規定であることが好ましい。
浸漬時間は1時間以上、10時間以上、特に20時間以上であることが好ましい。浸漬時間が短すぎると、エッチングが不十分となり、所望の連続孔を有する多孔質ガラス材前駆体を得にくくなる。浸漬時間の上限は特に限定されないが、現実的には100時間以下である。
酸の温度は20℃以上、25℃以上、特に30℃以上であることが好ましい。酸の温度が低すぎると、エッチングが不十分となり、所望の連続孔を有する多孔質ガラス材前駆体を得にくくなる。酸の温度の上限は特に限定されないが、現実的には、95℃以下である。
多孔質ガラス材前駆体の細孔中にZrOコロイド及び/またはSiOコロイドが残留する場合は除去することが好ましい。以下に、ZrOコロイド、SiOコロイドの除去方法を説明するが、除去方法はこれらの方法に限定されない。
ZrOコロイドは、例えば、硫酸を用いて除去することができる。硫酸の濃度は0.1規定~5規定、特に1規定~5規定であることが好ましい。硫酸の浸漬時間は1時間以上、特に10時間以上であることが好ましい。浸漬時間が短すぎると、ZrOコロイドを除去しにくくなる。浸漬時間の上限は特に限定されないが、現実的には、100時間以下である。浸漬温度は20℃以上、25℃以上、特に30℃以上であることが好ましい。浸漬温度が低すぎると、ZrOコロイドを除去しにくくなる。浸漬温度の上限は特に限定されないが、現実的には、95℃以下である。
SiOコロイドは、例えば、アルカリ水溶液を用いて除去することができる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。なお、これらのアルカリを混合して用いてもよい。アルカリ水溶液の浸漬時間は10分間以上、特に30分間以上であることが好ましい。浸漬時間が短すぎると、SiOコロイドを除去しにくくなる。浸漬時間の上限は特に限定されないが、現実的には、100時間以下である。浸漬温度は15℃以上、特に20℃以上であることが好ましい。浸漬温度が低すぎると、SiOコロイドを除去しにくくなる。浸漬温度の上限は特に限定されないが、現実的には、95℃以下である。
さらに、得られた多孔質ガラス材前駆体を乾燥する。乾燥させて細孔内の液体を取り除くことにより、細孔を気体の拡散経路、反応場、吸着場として利用することが可能となる。
<微細孔形成工程>
次に、多孔質ガラス材前駆体の細孔を収縮させて微細孔を形成し、微細孔を有する多孔質ガラス材を得る。微細孔は、例えば、多孔質ガラス材前駆体に収縮熱処理を行うことにより形成することができる。
収縮熱処理温度は、1080℃以下、1070℃以下、1060℃以下、特に1050℃以下であることが好ましく、800℃以上、900℃以上、特に950℃以上であることが好ましい。収縮熱処理温度が低すぎると、十分な収縮が生じないため微細孔を得づらくなる。収縮熱処理温度が高すぎると、細孔が収縮しすぎて潰れてしまい、多孔質ガラス材が得られなくなる。
収縮熱処理時間は10時間以上、特に15時間以上であることが好ましく、50時間以下、特に30時間以下であることが好ましい。収縮熱処理時間が短すぎると、十分な収縮が生じないため微細孔を得づらくなる。収縮熱処理時間が長すぎると、細孔が収縮しすぎて潰れてしまい、多孔質ガラス材が得られなくなる。
本工程において、多孔質ガラス材前駆体の細孔を5%~90%、5%~80%、5%~70%、5%~60%、5%~50%、6%~48%、特に7%~45%収縮させて前記多孔質ガラス材を得ることが好ましい。収縮率が大きすぎると、細孔が収縮しすぎて潰れてしまい、多孔質ガラス材が得られなくなる。収縮率が小さすぎると、所望の細孔径を有する多孔質ガラスが得づらくなる。ここで、収縮率は多孔質ガラス材前駆体の平均細孔径r1と、多孔質ガラス材の平均細孔径r2から以下の式により求めることができる。
収縮率(%)=(1-(r2/r1))×100
本発明の多孔質ガラス材の製造方法は、以上の工程を有することにより、製造時に破損しにくく、かつ平均細孔径が小さい多孔質ガラス材を得ることができる。例えば、質量%で、SiO 50%~99%、ZrO 0%超~30%、Al 0%~20%、NaO 0%~15%、KO 0%~10%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有し、平均細孔径が10nm~30nmである多孔質ガラス材を得ることができる。上記多孔質ガラス材はZrOを含有するため耐アルカリ性に優れ、かつ細孔径が小さい。そのため、本発明の多孔質ガラス材は、検出器、センサーに好適である。
多孔質ガラス材の平均細孔径(すなわち、細孔径分布の中央値)は5nm~30nm、7nm~29nm、10nm~25nm、特に10nm~20nmであることが好ましい。平均細孔径が上記値を満たすことにより、多孔質ガラス材の光透過率を高めることができる。平均細孔径が小さすぎると、多孔質ガラス材が割れやすくなる。また、製造工程において細孔が収縮しすぎて潰れてしまい、多孔質ガラス材が得られなくなる。平均細孔径が大きすぎると、多孔質ガラス材の吸着特性が低下する。なお、平均細孔径は細孔径分布測定装置を用いて測定することができる。
なお、得られる多孔質ガラス材における各成分の好ましい含有量について以下で説明する。
SiOの含有量は50%~99%、55%~95%、60%~93%、65%~90%、70%~87%、特に75%~85%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、多孔質ガラス材の耐アルカリ性、耐候性、機械的強度が低下しやすくなる。SiOの含有量が多すぎても、多孔質ガラス材の耐アルカリ性が低下しやすくなる。
ZrOの含有量は0%超~20%、0.1%~20%、1%~20%、2%~20%、2%~15%、特に2.5%~12%であることが好ましい。ZrOの含有量が少なすぎると、多孔質ガラス材の耐アルカリ性が低下しやすくなる。ZrOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
多孔質ガラス材は、上記成分以外にも、Al 0%~20%(さらには0%超~20%、特に1%~15%)、NaO 0%~15%(さらには1%~10%)、KO 0%~10%(さらには0%超~5%)、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%(さらには、0%超~15%)を含有していてもよい。また、P 0%~10%(さらには0.1%~10%、特に0.1%~5%)、TiO 0%~20%(さらには0%超~15%、特に1%~10%)を含有してもよい。これらの成分は、多孔質ガラス材を製造するためのガラス母材が含有する成分に由来するものである。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1は本発明の実施例1、2及び比較例3、4を示す。
実施例は以下のように作製した。
<用意工程>
はじめに、質量%で、SiO 52.5%、ZrO 11.1%、B 17.8%、Al 2.6%、NaO 5.3%、KO 1.1%、CaO 7.4%、P 0.2%、TiO 2.0%のガラス組成になるように原料を調合した。次に、調合した原料を白金坩堝に入れ、1500℃で4時間溶融した。溶融時には白金スターラーを用いて攪拌し、溶融ガラスの均質化を行った。次に、得られた溶融ガラスを金属板上に流し出して板状に成形した後、540℃~580℃で30分間徐冷し、ガラス母材を得た。得られたガラス母材は10mm×10mm×0.5mmのサイズとなるよう切削及び研磨を行った。
<分相工程>
次に、ガラス母材に第1の熱処理を行い、分相ガラスを得た。具体的には、ガラス母材を電気炉に入れて695℃で24時間熱処理を行った。
<酸処理工程>
得られた分相ガラス母材に対して以下の処理を行った。初めに、第1の酸処理として1規定の硝酸(95℃)中に48時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。続いて、第2の酸処理として3規定の硫酸(95℃)中に48時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。続いて、0.5規定の水酸化ナトリウム水溶液(25℃)中に5時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。最後に、自然乾燥により水分を揮発させ、多孔質ガラス材を得た。
得られた多孔質ガラス材の断面をFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡、日立製作所社製SU-8220)で観察したところ、いずれのガラスもスピノーダル分相に基づいたスケルトン構造を有していた。また、得られた多孔質ガラス材の組成は、質量%で、SiO 83.3%、ZrO 10.6%、Al 2.9%、P 1.7%、TiO 1.0%、NaO 0.1%、CaO 0.4%であり、平均細孔径(細孔径分布の中央径)は34nmであった。
<微細孔形成工程>
次に、多孔質ガラス材に第2の熱処理を行い、多孔質ガラス材を得た。具体的には、ガラス母材を電気炉に入れて、表1に示す温度で24時間熱処理を行った。雰囲気は空気とした。得られた多孔質ガラス材に対し、細孔分布を測定し平均細孔径(細孔径分布の中央値)を求めた。細孔径分布の中央値は、細孔径分布測定装置(アントンパール社製 QUADRASORB SI)により測定した。また、FE-SEMを用いて細孔構造の観察を行った。観察された微細構造を図1、2に示す。なお、第2の熱処理後の多孔質ガラス材の組成は、第2の熱処理前の多孔質ガラス材の組成と同一である。
<比較例>
第2の熱処理を1100℃で行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質ガラス材を作製し、これを比較例3とした。また、第2の熱処理を行っていない多孔質ガラス材を比較例4とした。
表1に示すように、1000℃で熱処理した多孔質ガラス材の平均細孔径は30nm、1050℃で熱処理した多孔質ガラス材の平均細孔径は20nmであり、いずれも多孔質ガラス材(比較例4)の平均細孔径に比べて小さな値を示した。また、図1及び図2に示すように、実施例1、2の多孔質ガラス材はいずれもスピノーダル構造を有していた。一方、図3に示すように、比較例3の多孔質ガラス材は細孔が潰れていた。
本発明の多孔質ガラス材の製造方法は、呼気診断、皮膚ガス測定、口臭チェッカー、環境モニタリング、作業環境管理など幅広い用途に適用可能な多孔質ガラス材を製造する方法として好適である。

Claims (11)

  1. ZrOを含有する多孔質ガラス材の製造方法であって、
    ZrOを含有するガラス母材を用意する用意工程、
    前記ガラス母材から分相ガラスを得る分相工程、
    前記分相ガラスを酸処理することで多孔質ガラス材前駆体を得る酸処理工程、
    前記多孔質ガラス材前駆体の細孔を収縮させて微細孔を形成する微細孔形成工程、を含む、多孔質ガラス材の製造方法。
  2. 前記ガラス母材が、質量%で、SiO 40%~80%、ZrO 0%超~20%、B 0%超~40%、Al 0%~10%、LiO 0%~20%、NaO 0%~20%、KO 0%~20%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有する、請求項1に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  3. 前記ガラス母材が、さらに質量%で、P 0.01%~10%を含有する、請求項1又は2に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  4. 前記多孔質ガラス材の平均細孔径が5nm~30nmである、請求項1又は2に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  5. 前記多孔質ガラス材が、質量%で、SiO 50%~99%、ZrO 0%超~30%、Al 0%~20%、NaO 0%~15%、KO 0%~10%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有する、請求項1又は2に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  6. 前記多孔質ガラス材が、さらに質量%で、P 0.1%~10%を含有する、請求項5に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  7. 前記微細孔形成工程において収縮熱処理を行う、請求項1又は2に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  8. 前記微細孔形成工程において、収縮熱処理温度が1080℃以下である、請求項7に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  9. 前記微細孔形成工程において、収縮熱処理時間が10時間以上である、請求項7に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  10. 前記微細孔形成工程において、前記多孔質ガラス材前駆体の細孔を5%~90%収縮させて前記多孔質ガラス材を得る、請求項1又は2に記載の多孔質ガラス材の製造方法。
  11. 質量%で、SiO 50%~99%、ZrO 0%超~30%、Al 0%~20%、NaO 0%~15%、KO 0%~10%、及びRO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0%~20%を含有し、平均細孔径が5nm~30nmである、多孔質ガラス材。
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