JP2024060142A - 回転電機用ステータ及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステータコイルを形成するコイル片の種類を増加させることなく、並列数のバリエーションを増加させる。【解決手段】各相に係るコイル部が2組又は4組の並列回路で中性線端子と各相の動力線端子との間に接続されるステータコイルと、複数のスロットを有し、ステータコイルが巻装されるステータコアとを備え、ステータコイルは、複数のスロットのうちの、対応する各スロットに挿入されるスロット挿入部と、ステータコアの軸方向端面から露出し、対のスロット挿入部の間を接続する態様で周方向に延在する渡り部とを有し、ステータコイルを形成するコイル片の種類は、4組の並列回路の場合と、2組の並列回路の場合とで、同じである、回転電機用ステータが開示される。【選択図】図4
Description
本開示は、回転電機用ステータ及び製造方法に関する。
ステータコイルに関して、各相に係るコイル部が4組の並列回路で中性線端子と各相の動力線端子との間に接続されるステータが知られている。
ところで、ステータの特性にバリエーションを持たせるための一方法として、並列回路の組数(並列数)にバリエーションを持たせることが有用である。例えば、並列数が2か4か2通り又はそれ以上のバリエーションを有する場合、車両のバリエーションを増加できる点で有用である。この場合、バリエーション違いでステータコアを共通化できたとしても、ステータコイルを形成するコイル片の種類が増加してしまうと非効率的となる。
そこで、1つの側面では、本開示は、ステータコイルを形成するコイル片の種類を増加させることなく、並列数のバリエーションを増加させることを目的とする。
1つの側面では、各相に係るコイル部が2組又は4組の並列回路で中性線端子と各相の動力線端子との間に接続されるステータコイルと、
複数のスロットを有し、前記ステータコイルが巻装されるステータコアとを備え、
前記ステータコイルは、
前記複数のスロットのうちの、対応する各スロットに挿入されるスロット挿入部と、
前記ステータコアの軸方向端面から露出し、対の前記スロット挿入部の間を接続する態様で周方向に延在する渡り部とを有し、
前記ステータコイルを形成するコイル片の種類は、前記2組の並列回路の場合と、前記4組の並列回路の場合とで、同じである、回転電機用ステータが提供される。
複数のスロットを有し、前記ステータコイルが巻装されるステータコアとを備え、
前記ステータコイルは、
前記複数のスロットのうちの、対応する各スロットに挿入されるスロット挿入部と、
前記ステータコアの軸方向端面から露出し、対の前記スロット挿入部の間を接続する態様で周方向に延在する渡り部とを有し、
前記ステータコイルを形成するコイル片の種類は、前記2組の並列回路の場合と、前記4組の並列回路の場合とで、同じである、回転電機用ステータが提供される。
1つの側面では、本開示によれば、ステータコイルを形成するコイル片の種類を増加させることなく、並列数のバリエーションを増加させることが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図1(図3以降も同様)において、見易さを優先するために、複数存在する同じ構成要素については、一部だけに参照符号を付している場合がある。
図1は、本実施例による回転電機(ステータ)の平面図である。
本願明細書では、「軸方向」とは、ステータコア10(ロータ150)の回転軸線(符号O)に沿った方向(Z方向:図1参照)を意味する。なお、軸方向の一方側をZ1方向側、他方側をZ2方向側とする。また、「周方向」とは、ステータコア10の周方向(A方向)を意味する。周方向の一方側をA1方向、他方側をA2方向とする。また、「径方向」とは、ステータコア10(ロータ150)の回転軸線を基準とした半径方向(B方向)を意味する。そして、「径方向内側」及び「内径側」とは、ステータコア10の中心に向かう方向(B1方向)を意味する。また、「径方向外側」及び「外径側」とは、ステータコア10の外に向かう方向(B2方向)を意味する。
図1に示すように、回転電機200は、ステータ100とロータ150とを備えている。ステータ100及びロータ150の各々は、円環状に形成されている。ステータ100及びロータ150は、互いに対向している。ロータ150は、ステータ100の径方向内側(B1方向側)に配置されている。ロータ150は、複数の永久磁石(図示せず)が設けられている。すなわち、本実施例の回転電機200は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。
ステータ100は、ステータコア10を備えている。ステータコア10は、ロータ150と半径方向に対向するように配置されている。また、ステータコア10には、複数(例えば、48個)のスロット11が設けられている。また、隣接するスロット11の間には、ティース12が設けられている。ステータコア10は、例えば、複数の電磁鋼板が回転中心軸方向(Z1方向及びZ2方向)に積層されており、磁束を通過可能に構成されている。なお、ステータコア10は、磁性体の粉末を圧縮成形することで形成されてもよい。また、ステータコア10は、軸方向の一方側(Z1方向側)と他方側(Z2方向側)との各々に、端面10aを有する。また、ステータ100は、ステータコイル20を備えている。
図2は、本実施例によるY結線された3相のコイルの回路図である。
図2に示すように、ステータコイル20は、外部の電源部に接続されており、電力(例えば、三相交流の電力)が供給されるように構成されている。そして、ステータコイル20は、電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。ステータコイル20は、三相(U相、V相、及び、W相)の交流電流の各々が流されるU相コイル30、V相コイル40、及び、W相コイル50を含む。
U相コイル30は、互いに並列に接続されたU1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34を含む。また、V相コイル40は、互いに並列に接続されたV1コイル部41、V2コイル部42、V3コイル部43、及び、V4コイル部44を含む。また、W相コイル50は、互いに並列に接続されたW1コイル部51、W2コイル部52、W3コイル部53、及び、W4コイル部54を含む。そして、U相コイル30、V相コイル40、及び、W相コイル50は、Y結線(スター結線)されている。すなわち、いわゆる“4Y”の結線が実現されている。U相、V相、及び、W相の各々に係る交流電力は、動力線端子61から、U相コイル30、V相コイル40及びW相コイル50にそれぞれ入力される。そして、U相コイル30、V相コイル40及びW相コイル50の各々の出力側は、中性線端子62を介して互いに接続されている。
図3は、本実施例によるステータ100の斜視図である。図3Aは、ステータコイル20を形成するコイル片70の構成を説明するための図である。
図3に示すように、ステータコイル20は、ステータコア10に巻装される。本実施例では、ステータコイル20は、波巻きとなる態様で、複数のコイル片70(図3A)が複数のスロット11の各々に配置される。具体的には、図3Aに示すように、ステータコイル20は、複数のコイル片70を接続することによって波巻きされた導線として形成されている。なお、複数のコイル片70の各々は、Z1側を上側として視て逆U字形状を有してよい。また、複数のコイル片70の各々は、矩形断面の平角導線を絶縁被覆で覆う形態であってよい。
複数のコイル片70のそれぞれは、スロット挿入部21と渡り部22とを含む。
スロット挿入部21は、軸方向(Z方向)に延在し、複数のスロット11の各々に収容される。
渡り部22は、複数のスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。すなわち、渡り部22は、互いに異なるスロット11に収容されているスロット挿入部21同士を接続する。渡り部22は、Z2方向側と、Z1方向側とにそれぞれ形成される。本実施例では、渡り部22は、後述するように、3種類の形態(第1渡り部23、第2渡り部24、及び、第3渡り部25)を有する。
なお、ステータコイル20において、U相コイル30、V相コイル40及びW相コイル50は、実質的に同様の構成を有する。そこで、以下では、主にU相コイル30について説明する。
U相コイル30は、U1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の4組が並列回路を形成する態様で、ステータコア10に配置されている。また、U1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の各々の一方の端部は、動力線端子61に接続されている。動力線端子61からは、交流の電力が供給される。そして、U1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の各々の他方の端部は、中性線端子62に接続されている。
図4は、U相コイルのU1コイル部31の構成を示す図である。図5は、U相コイルのU2コイル部32の構成を示す図である。図6は、U相コイルのU3コイル部33の構成を示す図である。図7は、U相コイルのU4コイル部34の構成を示す図である。図8は、径方向の最外径側において1ターン目のスロット挿入部同士を接続する第2渡り部24を説明するための図である。図9は、径方向の最内径側において8ターン目のスロット挿入部同士を接続する第3渡り部25を説明するための図である。
図4~図7に示すように、U相コイル30のU1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の各々は、48個のスロット11のうち、1番目(以下、「番目」を「#」と記す)、#6、#7、#12、#13、#18、#19、#24、#25、#30、#31、#36、#37、#42、#43、及び、#48のスロット11に配置されている。ここで、#1及び#48のスロット11、#6及び#7のスロット11、#12及び#13のスロット11、#18及び#19のスロット11、#24及び#25のスロット11、#30及び#31のスロット11、#36及び#37のスロット11、#42及び#43のスロット11は、それぞれ、周方向(A方向)において互いに隣り合う2つのスロット11である。なお、図4~図7は、上下方向をステータコア10の径方向(B方向)、左右方向をステータコア10の周方向(A方向)となるように、円環形のステータコア10を展開した形で示す図である。すなわち、図4~図7では、図の左右の端が互いに繋がっている。また、図示は省略するが、V相コイル40及びW相コイル50は、ステータコア10において、U相コイル30から、それぞれ、スロット11が2つずつ及び4つずつずれた状態で配置されている。
複数のスロット挿入部21は、複数のスロット11の各々において、ステータコア10の径方向(B方向)に沿って並んだ状態で収容されている。具体的には、本実施例では、1つのスロット11において、8本のスロット挿入部21が径方向に一列に並んで配置されている。例えば、1つのスロット11において、最も外側(外径側:B2方向側)に配置されているスロット挿入部21を1ターン目(1層目)として、最も内側(内径側:B1側)に配置されているスロット挿入部21を8ターン目(8層目)とする。なお、図4~図7では、スロット挿入部21は、黒地に白の数字で示された位置に白の数字の順に電流(交流電流のうちの、電源部からU相コイル30に向かう電流)が流れるように配置されている。
本実施例では、渡り部22は、3種類の形態を有し、以下では、それぞれ、区別する際は、第1渡り部23、第2渡り部24、及び、第3渡り部25とも称する。図4~図7では、実線で示された渡り部22(第1渡り部23、第2渡り部24、及び、第3渡り部25)は、ステータコア10のZ1方向側に配置されており、破線で示された渡り部22(第1渡り部23)は、ステータコア10のZ2方向側に配置されていることを示している。また、図4~図7では、渡り部22(第1渡り部23、第2渡り部24、及び、第3渡り部25)がZ方向から見て直線として模式的に図示されているが、渡り部22(第1渡り部23、第2渡り部24、及び、第3渡り部25)は、Z方向から見て湾曲した形状を有していてもよい。
第1渡り部23は、互いに異なるスロット11に収容されている複数のスロット挿入部21のうち、径方向(B方向)の位置が互いに異なるスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。具体的には、第1渡り部23は、接続するスロット挿入部21の径方向の位置(ターン数)が、径方向の一方側に向かって順に段階的に変更されるようにスロット挿入部21同士を接続する。すなわち、第1渡り部23は、周方向の一方側(A1方向側)に向かってターン数が増加するようにスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。このような第1渡り部23とスロット挿入部21とによって、各々がステータコア10に波巻きされた4つの波巻き部20a、波巻き部20b、波巻き部20c、及び、波巻き部20dが形成されている。
本実施例では、波巻き部20a~20dの各々において、複数の第1渡り部23とスロット挿入部21とが接続されることによって、最外径側(1ターン目)に配置されたスロット挿入部21から最内径側(8ターン目)に配置されたスロット挿入部21までが、順に接続されている。すなわち、複数の第1渡り部23は、スロット11において径方向の他方側(例えば、B2方向側)の端である1ターン目の位置に配置されているスロット挿入部21から、一方側(例えば、B1方向側)の端である8ターン目の位置に配置されているスロット挿入部21まで、接続するスロット挿入部21の径方向の位置が順に段階的に変更されるようにスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。本実施例では、第1渡り部23は、互いに異なるスロット11に配置されているスロット挿入部21のうち、径方向(B方向)において一つずつ外側または内側に互いにずれて配置されているスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。すなわち、波巻き部20a~20dの各々において、第1渡り部23は、8ターン目から1ターン目まで順に1ターンずつずれながらスロット挿入部21同士を接続する。
波巻き部20a~20dは、少なくとも一往復(本実施例では二往復)するように設けられている。1つの波巻き部20aは、スロット挿入部21と第1渡り部23とによって、ステータコア10の周方向の一方側(例えば、A1方向)に向かって、周方向の一方側に沿って波巻きされる。そして、波巻き部20aに接続される波巻き部20bは、波巻き部20aとは反対側の周方向の他方側(例えば、A2方向)に向かって、周方向の他方側に沿って波巻きされる。波巻き部20c及び波巻き部20dも、同様に、それぞれ、周方向の一方側及び他方側に向かって波巻きされる。そして、波巻き部20a、波巻き部20b、波巻き部20c、及び、波巻き部20dがこの順に接続されることによって、ステータコイル20におけるU相コイル30のU1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の各々として形成される。すなわち、U1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の各々は、周方向の向きを3回折り返しながらステータコア10に配置されている。
本実施例では、波巻き部20a~20dは、第2渡り部24及び第3渡り部25のいずれかによって互いに接続される。第2渡り部24及び第3渡り部25の各々は、互いに異なるスロット11に収容されている複数のスロット挿入部21のうち、径方向の位置(ターン数)が互いに共通のスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。具体的には、第2渡り部24は、複数のスロット11の各々において、径方向の最も外側(1ターン目)に配置されているスロット挿入部21同士を接続する。第3渡り部25は、複数のスロット11の各々において、径方向の最も内側(8ターン目)に配置されているスロット挿入部21同士を接続する。そして、第2渡り部24または第3渡り部25によって、スロット挿入部21同士が一対ずつ接続されることによって、第1渡り部23及びスロット挿入部21により形成された波巻き部20a~20dのうちの一往復分の一方と他方とが折り返すように接続される。例えば、U1コイル部31では、4つの波巻き部20a~20dと、1つの第2渡り部24と、2つの第3渡り部25とによって、複数回折り返されて波巻きされた1つの導体が形成されている。
具体的には、図4に示すように、U1コイル部31では、#37のスロット11の最外径側(1ターン目)に配置されたスロット挿入部21(白の数字の番号1の部分)に対して動力線端子61が接続されている。なお、動力線端子61は、コイル片70の端部の形態であってよいし、コイル片70の端部に接合される別部材の形態であってもよい。そして、スロット11に沿ってZ2方向に向かってスロット挿入部21が延びた後、#37から#31に渡ってZ2方向側の渡り部22として第1渡り部23が延びている。そして、ステータコア10のZ2方向側において、第1渡り部23は、#31のスロット11において最外径側から一つ内側にずれて2ターン目に配置されているスロット挿入部21(番号2の部分)に接続される。その後、第1渡り部23は、#25のスロット11の3ターン目、#19のスロット11の4ターン目、#13のスロット11の5ターン目の順に、Z1方向側とZ2方向側とにおいて交互にスロット挿入部21に接続され、ターン数を1つずつ内側に増やしながら#43のスロット11の8ターン目のスロット挿入部21(番号8の部分)まで接続する。このようにして、8個のスロット挿入部21と7個の第1渡り部23とによって接続された波巻き部20aが形成される。
そして、#43のスロット11の8ターン目のスロット挿入部21(白の数字の番号8の部分)から、#48のスロット11の8ターン目のスロット挿入部21(番号9の部分)まで、ステータコア10のZ1方向側において第3渡り部25が折り返すように設けられている。第3渡り部25によって折り返された後、番号9の部分が設けられた#48のスロット11から、周方向のA2方向側に向きを変更して、#42のスロット11まで、波巻き部20bが、波巻き部20aと同様に形成される。そして、U1コイル部31は、#42のスロット11の1ターン目のスロット挿入部21(番号16の部分)から、#1のスロット11の1ターン目のスロット挿入部21(番号17の部分)まで、ステータコア10のZ1方向側において第2渡り部24が設けられていることにより、波巻き部20bから波巻き部20cに折り返される。その後、U1コイル部31は、同様にして、第3渡り部25により波巻き部20cから波巻き部20dに折り返される。このようにして、3回折り返した4つの波巻き部20a~20dにより、1つのU1コイル部31が形成される。なお、波巻き部20dは、#6のスロット11の1ターン目のスロット挿入部21(番号32の部分)から、中性線端子62に接続される。なお、中性線端子62は、コイル片70の端部の形態であってよいし、コイル片70の端部に接合される別部材の形態であってもよい。
このようにして、第1渡り部23は、2ターン目から3ターン目と、4ターン目から5ターン目と、6ターン目から7ターン目とを接続し、Z1方向側に配置されている。また、1ターン目同士を接続する第2渡り部24と8ターン目同士を接続する第3渡り部25は、全てZ1方向側に配置される。なお、動力線端子61及び中性線端子62も、Z1方向側において接続されている。
以下では、複数のスロット挿入部21のうちの、動力線端子61に直接的に接続されるスロット挿入部21(U1コイル部31では、#37のスロット11に挿入されたスロット挿入部21)を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第1スロット挿入部21A」とも称する。また、複数のスロット挿入部21のうちの、中性線端子62に直接的に接続されるスロット挿入部21(#6のスロット11に挿入されたスロット挿入部21)を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第2スロット挿入部21B」とも称する。また、U1コイル部31及びU2コイル部32のそれぞれにおいて、複数のスロット挿入部21のうちの、スロット11の最内径側(8ターン目)に挿入されたスロット挿入部21を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第3スロット挿入部21C」とも称する。例えば、U1コイル部31の場合、#7、#12、#43、#48のスロット11に挿入されたスロット挿入部21を、「第3スロット挿入部21C」とも称する。また、U3コイル部33及びU4コイル部34のそれぞれにおいて、スロット11の最外径側(1ターン目)に挿入されたスロット挿入部21を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第4スロット挿入部21D」とも称する。例えば、U3コイル部33の場合、#12、#19、#24、#31のスロット11に挿入されたスロット挿入部21を、「第4スロット挿入部21D」とも称する。
本実施例では、上述したように、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、スロット番号の変化傾向(増加及び減少)に係る反転を少なくとも1回(本例では「3回」)有する態様で、対応するスロット11に挿入される。ここでいう“スロット番号”とは、ステータコア10に対して軸方向視の周方向に沿って時計回り又は反時計回りで順に相対的に増加するものとする。本実施例の場合、#1から#48をスロット番号に対応させると、#1から#48まで1つずつ増加する方向が、スロット番号が増加する方向に対応し、#48から#1を介して変化する方向も、スロット番号が増加する方向に対応する。また、#48から#1まで1つずつ減少する方向が、スロット番号が減少する方向に対応し、#1から#48を介して変化する方向も、スロット番号が減少する方向に対応する。
特に、本実施例では、U1コイル部31及びU2コイル部32のそれぞれにおいて、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、第3スロット挿入部21Cを起点として、スロット番号の増減が反転する。例えば、U1コイル部31の場合、第1スロット挿入部21Aから電流の流れ方向で最初の第3スロット挿入部21C(#43のスロット11に挿入されたスロット挿入部21C)までスロット番号が減少する態様、かつ、電流の流れ方向で最後の第3スロット挿入部21C(#12のスロット11に挿入されたスロット挿入部21C)から第2スロット挿入部21Bまでスロット番号が増加する態様で、対応するスロットに挿入される。
また、U3コイル部33及びU4コイル部34のそれぞれにおいて、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、第4スロット挿入部21Dを起点として、スロット番号の増減が反転する。例えば、U3コイル部33の場合、第1スロット挿入部21Aから電流の流れ方向で最初の第4スロット挿入部21D(#31のスロット11に挿入されたスロット挿入部21D)までスロット番号が増加する態様、かつ、電流の流れ方向で最後の第4スロット挿入部21D(#12のスロット11に挿入されたスロット挿入部21D)から第2スロット挿入部21Bまでスロット番号が減少する態様で、対応するスロットに挿入される。
また、本実施例では、U1コイル部31及びU2コイル部32のそれぞれにおいて、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、規則的に径方向位置を変化させる。例えば、U1コイル部31の場合、スロット番号が減少する際はスロット11内の径方向位置が径方向内側に1ターン分だけずれる(第1渡り部23参照)。また、スロット番号が増加する際はスロット内の径方向位置が径方向外側に1ターン分だけずれる(第1渡り部23参照)又は同じ径方向位置が維持される(第2渡り部24、第3渡り部25参照)。
また、本実施例では、U3コイル部33及びU4コイル部34のそれぞれにおいて、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、規則的に径方向位置を変化させる。例えば、U3コイル部33の場合、スロット番号が減少する際はスロット11内の径方向位置が径方向内側に1ターン分だけずれる(第1渡り部23参照)又は同じ径方向位置が維持される(第2渡り部24、第3渡り部25参照)。また、スロット番号が増加する際はスロット内の径方向位置が径方向外側に1ターン分だけずれる(第1渡り部23参照)。
また、本実施例では、U3コイル部33及びU4コイル部34のそれぞれにおいて、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、規則的に径方向位置を変化させる。例えば、U3コイル部33の場合、スロット番号が減少する際はスロット11内の径方向位置が径方向内側に1ターン分だけずれる(第1渡り部23参照)又は同じ径方向位置が維持される(第2渡り部24、第3渡り部25参照)。また、スロット番号が増加する際はスロット内の径方向位置が径方向外側に1ターン分だけずれる(第1渡り部23参照)。
図5~図7に示すように、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の各々も、U1コイル部31と同様に、4つの波巻き部20a~20dが折り返されることによって、複数回折り返して波巻きされたステータコイル20の一部として構成されている。
ただし、図4~図7に示す例では、U1コイル部31及びU2コイル部32の各々は、第1スロット挿入部21A及び第2スロット挿入部21Bは、スロット11の最外径側に配置される。これに対して、U3コイル部33及びU4コイル部34の各々は、第1スロット挿入部21A及び第2スロット挿入部21Bは、スロット11の最内径側に配置される。
ただし、変形例では、図6A及び図7Aに示すU3コイル部33B及びU4コイル部34Bのように、第1スロット挿入部21A及び第2スロット挿入部21Bがスロット11の最外径側に配置されてもよい。
また、本実施例では、波巻き部20a~20dのうちの一往復分の一方を形成する第1渡り部23と、一往復分の他方を形成する第1渡り部23とは、接続するスロット挿入部21の径方向の位置が互いに平行に段階的に(スロープ状に)変更されるようにスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。また、複数の波巻き部20a~20dの各々において、第1渡り部23が跨ぐスロット11の個数(ピッチ)は共通である。具体的には、第1渡り部23は、ターンを1つ分ずらしてスロット挿入部21同士を繋ぐ間に、5つのスロット11を跨いでスロット挿入部21同士を接続する。言い換えれば、複数の波巻き部20a~20dの各々において、第1渡り部23のピッチ数は、全て「6」となる。第1渡り部23は、ステータコア10の一方側(Z1方向側)と他方側(Z2方向側)とで、共通のピッチを有する。なお、ここで言う「平行」とは、第1渡り部23に接続されるスロット挿入部21の径方向の位置が周方向に沿って配置されている状態で平行であることを意味する。すなわち、図4~図7のように円環形のステータコア10を展開した形で示した状態でスロット挿入部21の位置が平行となることを意味する。
なお、第2渡り部24及び25の各々では、ピッチ数5とピッチ数7との2種類が存在する。例えば、図4のU1コイル部31では、スロット11の#42と#1との間にピッチ数が7の第2渡り部24が設けられ、#43と#48との間と、#7と#12との間との各々に、ピッチ数が5の第3渡り部25が設けられている。これに対して、図5のU2コイル部32では、スロット11の#43と#48との間にピッチ数が5の第2渡り部24が設けられ、#42と#1との間と、#6と#13との間との各々に、ピッチ数が7の第3渡り部25が設けられている。
また、図8及び図9に示すように、共通するスロット11に配置されているスロット挿入部21に接続される第2渡り部24同士、または、第3渡り部25同士であって、ピッチ数の互いに異なる第2渡り部24同士、または、第3渡り部25同士は、軸方向(Z方向)から見て互いに重なり合うように配置されている。ピッチ数の大きい第2渡り部24または第3渡り部25が、ピッチ数の小さい第2渡り部24または第3渡り部25の上方側(Z1方向側)に配置されている。具体的には、ピッチ数が7である第2渡り部24及び第3渡り部25が、それぞれ、ピッチ数が5である第2渡り部24及び25を上方側において覆うように配置される。
また、図4~図7に示すように、複数の波巻き部20a~20dのうちの一往復分の一方を形成するスロット挿入部21と、一往復分の他方を形成するスロット挿入部21とは、互いに隣り合うスロット11に各々配置されている。また、U相コイル30、V相コイル40、及び、W相コイル50の各々は、互いに隣り合う一対のスロット11に径方向に沿って交互に配置されている。
例えば、図4のU相のU1コイル部31において、波巻き部20a~20dを形成するスロット挿入部21は、周方向において互いに隣り合う2つのスロット11である#1及び#48、#6及び#7、#12及び#13、#18及び#19、#24及び#25、#30及び#31、#36及び#37、#42及び#43に収容されている。そして、波巻き部20a~20dのうちの隣り合う(一往復分)同士では、スロット挿入部21は、互いに異なるスロット11に交互に配置されている。そして、図5~図7のU相のU2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34も、U相のU1コイル部31と同様である。これにより、U相のU1コイル部31、U2コイル部32、U3コイル部33、及び、U4コイル部34の各々同士において、ロータ150の図示しない永久磁石に対する位置関係が偏ることを抑制できる。
また、本実施例では、7種類のコイル片70を用いてステータコイル20が構成される。すなわち、一対のスロット挿入部21と第1渡り部23とを構成する3種類のコイル片70と、一対のスロット挿入部21と第2渡り部24とを構成する2種類のコイル片70と、一対のスロット挿入部21と第3渡り部25とを構成する2種類のコイル片70とが用いられる。一対のスロット挿入部21と第1渡り部23とを構成する3種類のコイル片70は、Z1方向側において、第1渡り部23が、それぞれ、2ターン目から3ターン目を接続するコイル片70と、4ターン目から5ターン目を接続するコイル片70と、6ターン目から7ターン目を接続するコイル片70との3種類である。一対のスロット挿入部21と第2渡り部24とを構成する2種類のコイル片70と、一対のスロット挿入部21と第3渡り部25とを構成する2種類のコイル片70とは、各々ピッチ数が5と7との2種類である。
ところで、上記の“発明が解決しようとする課題”で説明したように、ステータコイル20を形成するコイル片70の種類を増加させることなく、並列数のバリエーションを増加させることができると、効率的である。ステータコア10も共通化でき、効率的なバリエーション増加が実現できるためである。そこで、以下では、上述した並列数が“4”であるいわゆる4Y結線のステータコイル20において利用する7種類のコイル片70を用いて、上述した並列数が“2”であるいわゆる2Y結線のステータコイル20Aを実現する構成について説明する。
なお、2Y結線と4Y結線とでは、トルク特性等のようなモータ特性が異なるため、並列数を変えるだけで、回転電機のバリエーションの増加(及びそれに伴う車両のバリエーションの増加)を実現できる。
以下の2Y結線に関する構成については、上述した4Y結線に関する構成と同じ構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
図10は、“2Y結線”による3相のコイルの回路図である。2Y結線の場合、図2に示した4Y結線の場合に比べて、並列数が2つ減るだけであり、その他は実質的に同じである。すなわち、ステータコイル20Aは、三相(U相、V相、及び、W相)の交流電流の各々が流されるU相コイル30A、V相コイル40A、及び、W相コイル50Aを含む。
U相コイル30Aは、互いに並列に接続されたU1コイル部31A及びU2コイル部32Aを含む。また、V相コイル40Aは、互いに並列に接続されたV1コイル部41A及びV2コイル部42Aを含む。また、W相コイル50Aは、互いに並列に接続されたW1コイル部51A及びW2コイル部52Aを含む。そして、U相コイル30A、V相コイル40A、及び、W相コイル50Aは、Y結線(スター結線)されている。すなわち、いわゆる“2Y結線”が実現されている。
図11は、U相コイル30AのU1コイル部31Aの構成を示す図である。図12は、U相コイル30AのU2コイル部32Aの構成を示す図である。図11及び図12の表記等は、4Y結線に関して上述した図4~図7と同様である。以下では、第1スロット挿入部21A及び第2スロット挿入部21Bは、上述した定義どおりに用いる。また、U1コイル部31A及びU2コイル部32Aのそれぞれにおいて、複数のスロット挿入部21のうちの、スロット11の最内径側(8ターン目)に挿入されたスロット挿入部21を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第3スロット挿入部21C」とも称する。また、U1コイル部31A及びU2コイル部32Aのそれぞれにおいて、スロット11の最外径側(1ターン目)に挿入されたスロット挿入部21のうち、第1スロット挿入部21A及び第2スロット挿入部21B以外を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第4スロット挿入部21D」とも称する。
図11は、U相コイル30AのU1コイル部31Aの構成を示す図である。図12は、U相コイル30AのU2コイル部32Aの構成を示す図である。図11及び図12の表記等は、4Y結線に関して上述した図4~図7と同様である。以下では、第1スロット挿入部21A及び第2スロット挿入部21Bは、上述した定義どおりに用いる。また、U1コイル部31A及びU2コイル部32Aのそれぞれにおいて、複数のスロット挿入部21のうちの、スロット11の最内径側(8ターン目)に挿入されたスロット挿入部21を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第3スロット挿入部21C」とも称する。また、U1コイル部31A及びU2コイル部32Aのそれぞれにおいて、スロット11の最外径側(1ターン目)に挿入されたスロット挿入部21のうち、第1スロット挿入部21A及び第2スロット挿入部21B以外を、他のスロット挿入部21と区別する際、「第4スロット挿入部21D」とも称する。
図11及び図12に示すように、2Y結線の場合も、4Y結線の場合と同様、U相コイル30AのU1コイル部31A及びU2コイル部32Aの各々は、48個のスロット11のうち、1番目(以下、「番目」を「#」と記す)、#6、#7、#12、#13、#18、#19、#24、#25、#30、#31、#36、#37、#42、#43、及び、#48のスロット11に配置されている。なお、図示は省略するが、V相コイル40A及びW相コイル50Aは、ステータコア10において、U相コイル30Aから、それぞれ、スロット11が2つずつ及び4つずつずれた状態で配置されている。
2Y結線の場合も、渡り部22は、3種類の形態を有し、以下では、それぞれ、区別する際は、第1渡り部23、第2渡り部24、及び、第3渡り部25とも称する。図11及び図12では、実線で示された渡り部22(第1渡り部23、第2渡り部24、及び、第3渡り部25)は、ステータコア10のZ1方向側に配置されており、破線で示された渡り部22(第1渡り部23)は、ステータコア10のZ2方向側に配置されていることを示している。
2Y結線の場合も、4Y結線の場合と基本的に同様であり、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、スロット番号の変化傾向(増加及び減少)に係る反転を少なくとも1回(本例では「7回」)有する態様で、対応するスロット11に挿入される。
具体的には、U1コイル部31Aにおいて、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、第3スロット挿入部21C及び第4スロット挿入部21Dを起点として、スロット番号の増減が反転する。例えば、第1スロット挿入部21Aから電流の流れ方向で最初の第3スロット挿入部21C(白の数字の番号8の部分)までスロット番号が減少する態様、かつ、電流の流れ方向で最後の第3スロット挿入部21C(白の数字の番号57の部分)から第2スロット挿入部21Bまでスロット番号が増加する態様で、対応するスロットに挿入される。
また、U2コイル部32Aにおいて、第1スロット挿入部21Aから第2スロット挿入部21Bまでの電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部21は、第3スロット挿入部21C及び第4スロット挿入部21Dを起点として、スロット番号の増減が反転する。例えば、第1スロット挿入部21Aから電流の流れ方向で最初の第3スロット挿入部21C(白の数字の番号8の部分)までスロット番号が減少する態様、かつ、電流の流れ方向で最後の第3スロット挿入部21C(白の数字の番号57の部分)から第2スロット挿入部21Bまでスロット番号が増加する態様で、対応するスロットに挿入される。
また、2Y結線の場合も、4Y結線の場合と基本的に同様であり、波巻き部20a~20dのうちの一往復分の一方を形成する第1渡り部23と、一往復分の他方を形成する第1渡り部23とは、接続するスロット挿入部21の径方向の位置が互いに平行に段階的に(スロープ状に)変更されるようにスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する。また、複数の波巻き部20a~20dの各々において、第1渡り部23が跨ぐスロット11の個数(ピッチ)は共通である。具体的には、第1渡り部23は、ターンを1つ分ずらしてスロット挿入部21同士を繋ぐ間に、5つのスロット11を跨いでスロット挿入部21同士を接続する。
また、図11及び図12に示すように、2Y結線の場合も、4Y結線の場合と基本的に同様、複数の波巻き部20a~20dのうちの一往復分の一方を形成するスロット挿入部21と、一往復分の他方を形成するスロット挿入部21とは、互いに隣り合うスロット11に各々配置されている。なお、U相コイル30A、V相コイル40A、及び、W相コイル50Aの各々は、互いに隣り合う一対のスロット11に径方向に沿って交互に配置されてよい。
また、2Y結線の場合も、4Y結線の場合と基本的に同様であり、第2渡り部24及び25の各々では、ピッチ数5とピッチ数7との2種類が存在する。例えば、図11のU1コイル部31Aでは、スロット11の#42と#1との間と、#6と#13との間と、#18と#25との間の各々に、ピッチ数が7の第2渡り部24が設けられる。また、#43と#48との間と、#7と#12との間と、#19と#24との間と、#31と#36の間の各々に、ピッチ数が5の第3渡り部25が設けられている。これに対して、図12のU2コイル部32Aでは、スロット11の#43と#48との間と、#7と#12との間と、#19と#24との間の各々に、ピッチ数が5の第2渡り部24が設けられる。また、#42と#1との間と、#6と#13との間と、#18と#25との間と、#30と#37との間との各々に、ピッチ数が7の第3渡り部25が設けられている。
このようにして、2Y結線の場合も、4Y結線の場合と同様、7種類のコイル片70を用いてステータコイル20Aを形成できる。そして、7種類のコイル片70は、種類の数が同じだけでなく、形状も同じである。すなわち、2Y結線の場合と4Y結線の場合とで、7種類のコイル片70を共通化できる。
このようにして、本実施例によれば、4Y結線のステータコイル20と2Y結線のステータコイル20Aを、コイル片70の種類を増加させることなく形成することが可能となる。
なお、図13には、比較例として、通常的な波巻きによる4Y結線のステータコイル20’の巻装態様が、図4から図7と同様の表現で示されている。かかる4Y結線のステータコイル20’を、2Y結線に変更する場合、図13中に模式的に示すように、変換用の各コイル片(77A、77B参照)が新たに必要となりうる。この場合、4Y結線と2Y結線の双方を成立させるためには、4Y結線で用いるコイル片の種類よりも多い種類のコイル片が必要となる。本実施例によれば、かかる不都合を回避できる。
本実施例では、上述した効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本実施例では、上記のように、第1渡り部23は、接続するスロット挿入部21の径方向の位置が、径方向の一方側に向かって順に段階的に変更されるようにスロット挿入部21同士を一対ずつ接続することによって、スロット挿入部21と共にステータコア10に波巻きされた波巻き部20a~20dを形成する。これにより、複数のスロット11の各々において、径方向に隣り合うスロット挿入部21を交互に接続する場合と異なり、接続されるスロット挿入部21の径方向の位置を途中で切り替える部分を設けることなくスロット挿入部21同士を接続できる。そのため、ステータコア10の軸方向の一方側におけるコイル片70の形状の種類が増加することを抑制できる。その結果、ステータコイル20を形成するためのコイル片70の種類が多くなることを抑制できる。また、本実施例では、上記のように、第2渡り部24及び第3渡り部25は、スロット挿入部21同士を一対ずつ接続することによって、第1渡り部23とスロット挿入部21とにより形成された一往復分の波巻き部20a~20dの一方と他方とを折り返すように接続する。これにより、スロット11内において径方向の位置が互いに共通のスロット挿入部21同士を接続する第2渡り部24及び第3渡り部25によって、波巻き部20a~20d同士を折り返すように接続できるので、折り返し部分の形状が複雑になることを抑制できる。
本実施例では、上記のように、一往復分の波巻き部20a~20dの一方と他方とにおいて、接続されるスロット挿入部21の径方向における位置が互いに平行に段階的に変更されるように配置されているため、一往復分の波巻き部20a~20dの一方と他方との各々を構成する導体(コイル片70)の形状を共通化できる。そのため、一往復分の波巻き部20a~20dを折り返すように接続する場合にも、コイル片70の形状の種類が増加することを抑制できるので、ステータコイル20を形成するためのコイル片70の種類が多くなることをより抑制できる。
本実施例では、上記のように、複数のスロット11の各々において、径方向の一方側の端から他方側の端に向かって段階的に接続されるスロット挿入部21が配置されるように波巻き部20a~20dを形成できるので、波巻き部20a~20dの端部を径方向の一番内側または一番外側に配置できる。そのため、動力線端子61または中性線端子62などをステータコイル20に接続する場合に、スロット11の途中の導体(コイル片70)に接続する場合に比べて、製造工程が複雑化することを抑制できる。
本実施例では、上記のように、複数の波巻き部20a~20dと、第2渡り部24(最外コイルエンド部分)及び第3渡り部25(最内コイルエンド部分)とによって、複数回折り返されて波巻きされたステータコイル20が形成されているので、スロット11の径方向の最も内側と最も外側との各々において複数回折り返しながら波巻きされるようにステータコイル20を形成できる。そのため、1つのスロット11に収容されるスロット挿入部21の本数が多くなる場合にも、スロット11の径方向の最も内側と最も外側との各々において複数回折り返すことによってステータコイル20を形成できるので、ステータコイル20を構成するコイル片70の種類が多くなることを抑制できる。
本実施例では、上記のように、径方向において一つずつ外側または内側に互いにずれて配置されているスロット挿入部21同士を一対ずつ接続することによって、ステータコイル20を形成できるので、複数のスロット11の各々にスロット挿入部21を密に配置できる。そのため、スロット11内に配置された複数のスロット挿入部21に対して効率よく接続しながら、接続されるスロット挿入部21の径方向の位置が径方向の一方側に向かって順に段階的に変更されるようにスロット挿入部21同士を一対ずつ接続できる。
ここで、一往復分の波巻き部20a~20dの一方と他方との両方ともにおいて、スロット挿入部21が共通のスロット11に配置されている場合には、ステータ100と対向するロータ150に配置されている磁石に対するステータコイル20の位置関係が偏ることとなるため、波巻き部20a~20dに流れる電流に偏りが生じる。この点を考慮して、本実施例では、上記のように、一往復分の波巻き部20a~20dの一方を形成するスロット挿入部21と、一往復分の波巻き部20a~20dの他方を形成するスロット挿入部21とを、互いに隣り合うスロット11に各々配置することにより、波巻き部20a~20dに流れる電流に偏りが生じることを抑制できる。
次に、図14を参照して、本実施例によるステータ製造方法を概説する。
図14は、本実施例によるステータ製造方法の一例を示す概略的なフローチャートである。
本製造方法は、まず、回転電機200のバリエーションに関するバリエーション情報を取得する工程(ステップS1)を含む。回転電機200のバリエーションは、2Y結線のステータコイル20Aとステータコア10の組み合わせを含む第1種別と、4Y結線のステータコイル20とステータコア10の組み合わせを含む第2種別とを含む。なお、第1種別と第2種別とでは、ステータコア10は共通である。
ついで、本製造方法は、バリエーション情報に基づいて、複数種類のコイル片70と、ステータコア10とを準備する準備工程(ステップS2)を含む。本実施例では、上述したように、第1種別の場合も、第2種別の場合も、準備工程で準備される複数種類のコイル片70は、上述した7種類のコイル片70である。ただし、準備工程で準備されるコイル片70の数は、第1種別の場合と、第2種別の場合とで、異なりうる。例えば、第1種別(2Y結線)の場合、図11及び図12に示すように、上述したようにU相コイル30Aを形成するために、合計14本の第2渡り部24と第3渡り部25が必要であるのに対して、第2種別(4Y結線)の場合、図4~図7に示すように、合計12本の第2渡り部24と第3渡り部25が必要である。
ついで、本製造方法は、準備工程で準備した複数種類のコイル片70をステータコア10に巻装する(組み付ける)ことで、バリエーション情報に応じた種類のステータコイル20A又は20を形成する形成工程(ステップS3)を含む。なお、4Y結線のステータコイル20は、図3~図7を参照して上述したとおりであり、2Y結線のステータコイル20Aは、図10~図12を参照して上述したとおりである。
このようにして本製造方法によれば、同じ種類のコイル片70を利用して、2種類のステータコイル20、20Aのうちの、バリエーション情報に応じた種類のステータコイルを有するステータを効率的に製造できる。また、同じ種類のコイル片70を利用するため、部品点数が低減されるだけでなく、部品配置スペースの省スペース化や部品管理の簡略化を図ることもできる。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、波巻き部20a~20dのうちの一往復分のうちの一方を形成する第1渡り部23と、他方を形成する第1渡り部23とは、接続するスロット挿入部21の径方向の位置が互いに平行に段階的に変更される例を示したが、これに限られない。例えば、一往復分の一方と他方とで、スロット挿入部の径方向の位置が互いに平行ではなくてもよい。
また、上述した実施例では、径方向の最外側及び最内側で波巻き部20a~20dが折り返される例を示したが、これに限られない。例えば、径方向の途中で折り返すようにしてもよい。
また、上述した実施例では、4つの波巻き部20a~20dによって、3回折り返されたステータコイル20が形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、2つの波巻き部によって、1回だけ折り返すようにステータコイル20を構成してもよい。
また、上述した実施例では、第1渡り部23は、互いに異なるスロット11に配置されているスロット挿入部21のうちの、径方向において一つずつ外側または内側に互いにずれて配置されているスロット挿入部21同士を一対ずつ接続する例を示したが、これに限られない。例えば、第1渡り部23を、スロット挿入部の2つ分以上ずれて配置されたスロット挿入部同士を接続するようにしてもよい。すなわち、互いに2ターン以上ずれたスロット挿入部同士を接続するようにしてもよい。
また、上述した実施例では、波巻き部20a~20dのうちの一往復分のうちの一方を形成するスロット挿入部21と、他方を形成するスロット挿入部21とは、互いに隣り合うスロット11に各々配置されている例を示したが、これに限られない。例えば、一往復分の波巻き部の一方を形成するスロット挿入部と、一往復分の波巻き部の他方を形成するスロット挿入部とを、共通のスロットに配置するようにしてもよい。また、一往復分の波巻き部の一方を形成するスロット挿入部と、一往復分の波巻き部の他方を形成するスロット挿入部とを、互いに離間したスロットに配置するようにしてもよい。
また、上述した実施例では逆U字形状のコイル片70によってステータコイル20が形成される例を示したが、これに限られない。例えば、棒状のコイル片をスロット挿入部としてスロット内に配置したあと、棒状のコイル片とは別個のコイル片を接合することによってコイルエンド部分を形成するようにしてもよい。また、ステータコアの軸方向の一方側と他方側から、逆U字形状のコイル片とU字形状のコイル片とを組み合わせることによってコイル部を形成するようにしてもよい。
また、上述した実施例では、ステータコア10に48個のスロット11が設けられており、各々のスロット11には、8本のスロット挿入部21が径方向に並んで収容される例を示したが、これに限られない。例えば、ステータコアのスロット数は48以外でもよい。また、1つのスロットに収容されるスロット挿入部の本数も8本以外であってもよい。
100・・・ステータ(回転電機用ステータ)、10・・・ステータコア、10a・・・端面(軸方向端面)、20・・・ステータコイル(第2種類のステータコイル)、20A・・・ステータコイル(第1種類のステータコイル)、31・・・U1コイル部(コイル部)、32・・・U2コイル部(コイル部)、33・・・U3コイル部(コイル部)、34・・・U4コイル部(コイル部)、41・・・V1コイル部(コイル部)、42・・・V2コイル部(コイル部)、43・・・V3コイル部(コイル部)、44・・・V4コイル部(コイル部)、51・・・W1コイル部(コイル部)、52・・・W2コイル部(コイル部)、53・・・W3コイル部(コイル部)、54・・・W4コイル部(コイル部)、10・・・ステータコア、11・・・スロット、21・・・スロット挿入部、21A・・・第1スロット挿入部、21B・・・第2スロット挿入部、21C・・・第3スロット挿入部、22・・・渡り部、61・・・動力線端子、62・・・中性線端子
Claims (5)
- 各相に係るコイル部が2組又は4組の並列回路で中性線端子と各相の動力線端子との間に接続されるステータコイルと、
複数のスロットを有し、前記ステータコイルが巻装されるステータコアとを備え、
前記ステータコイルは、
前記複数のスロットのうちの、対応する各スロットに挿入されるスロット挿入部と、
前記ステータコアの軸方向端面から露出し、対の前記スロット挿入部の間を接続する態様で周方向に延在する渡り部とを有し、
前記ステータコイルを形成するコイル片の種類は、前記2組の並列回路の場合と、前記4組の並列回路の場合とで、同じである、回転電機用ステータ。 - 前記複数のスロットについて、前記ステータコアに対して軸方向視の周方向に沿って時計回り又は反時計回りで順に相対的に増加するスロット番号を付与した場合に、前記ステータコイルにおける一の相に係る各組において、電流の流れ方向に沿った各スロット挿入部は、スロット番号が増加又は減少してから減少又は増加する反転が少なくとも1回生じる態様で、対応するスロットに挿入される、請求項1に記載の回転電機用ステータ。
- 前記各組において、前記流れ方向に沿った各スロット挿入部は、スロット番号が増加方向及び減少方向のいずれかである第1方向に変化する際はスロット内の径方向位置が径方向内側に1ターン分だけずれる又は同じ径方向位置が維持される態様、かつ、スロット番号が前記第1方向とは逆の第2方向に変化する際はスロット内の径方向位置が径方向外側に1ターン分だけずれる又は同じ径方向位置が維持される態様で、対応するスロットに挿入される、請求項2に記載の回転電機用ステータ。
- 前記ステータコイルは、前記2組の並列回路の場合と、前記4組の並列回路の場合とで、同じ7種類のコイル片からなる、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ステータ。
- 回転電機のバリエーションに関するバリエーション情報を取得する工程と、
前記バリエーション情報に基づいて、複数種類のコイル片と、ステータコアとを準備する準備工程と、
準備工程で準備した前記複数種類のコイル片を前記ステータコアに巻装することで、前記バリエーション情報に応じた種類のステータコイルを形成する形成工程とを含み、
前記バリエーション情報に応じた種類のステータコイルは、各相に係るコイル部が2組の並列回路で中性線端子と各相の動力線端子との間に接続する第1種類のステータコイルと、各相に係るコイル部が4組の並列回路で中性線端子と各相の動力線端子との間に接続する第2種類のステータコイルとを含み、
前記第1種類のステータコイルを形成する前記コイル片の種類と、前記第2種類のステータコイルを形成する前記コイル片の種類とは、同じである、回転電機用ステータの製造方法。
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JP2022167301A JP2024060142A (ja) | 2022-10-19 | 2022-10-19 | 回転電機用ステータ及び製造方法 |
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JP2022167301A JP2024060142A (ja) | 2022-10-19 | 2022-10-19 | 回転電機用ステータ及び製造方法 |
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JP2024060142A true JP2024060142A (ja) | 2024-05-02 |
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Family Applications (1)
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JP2022167301A Pending JP2024060142A (ja) | 2022-10-19 | 2022-10-19 | 回転電機用ステータ及び製造方法 |
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JP (1) | JP2024060142A (ja) |
-
2022
- 2022-10-19 JP JP2022167301A patent/JP2024060142A/ja active Pending
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