JP2024058836A - 耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Cr、Mo、N、およびAlを含有し、さらに、Nb:0.40%以下およびTi:0.40%以下の一方または双方を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板の表面から板厚(t)の1/8の厚さに相当する面である第1面と、鋼板の表面から板厚(t)の1/4の厚さに相当する面である第2面とを表出させ、鋼板の表面の法線方向と第1面および第2面で測定される{111}面方位との角度差が±10°以下の方位を有する結晶粒の面積率を、それぞれS1およびS2とし、また、第1面および第2面における平均結晶粒径(μm)を、それぞれG1およびG2とするとき、次の関係を満足する。式(1):S2≧0.3、かつ、S1/S2≧1.2 式(2):G1≦30μm、G1/G2≦1.0【選択図】図1

Description

本発明は、耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板に関する。
従来、フェライト系ステンレス鋼板は、Niを含有しないか、またはNiを含有しても微量であるため、安価であることから、建築材料、厨房用材料および電気部品用材料などに広く適用されている。しかし、従来のフェライト系ステンレス鋼板は、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼板等に比較して、耐食性が劣っていた。このため、近時は、製造技術の向上によりC及びN等の不純物元素を低減したフェライト系ステンレス鋼板に、Siを添加することで、耐食性、特に耐孔食性を向上させた高純度フェライト系ステンレス鋼板が開発されている。1.0質量%超える量のSiを添加することで、耐食性が向上し、引張強度が高くすることができる。
しかし、Siを1.0質量%超える量を含有させることで内部応力を高め、特に深絞り加工による加工性が低下する。そのために、深絞り加工後に残留するひずみが大きくなることで絞られた円筒の縁に耳と呼ばれる波状の凸凹、又は加工割れを誘発しやすくなるという問題点がある。
これまで、深絞り性の評価指標としては、ランクフォード(Lankford)値(以下、「r値」と記す。)がある。r値は板幅方向と板厚方向の真ひずみの比として、下記式で表される。
r値=ln(w/w0)/ln(t/t0)
(ここで、w0:試験前の板幅、w:試験後の板幅、t0:試験前の板厚、t:試験後の板厚を表す。)
r値が大きい材料は、深絞り成形時、板幅方向の変形が主体に起こり、板厚方向の変形量が少ないため板厚減少が小さく、破断限界が高くなることが知られている。
したがって、これまで、フェライト系ステンレス鋼板における加工性に対して、例えば、特許文献1は、鋼管の母材が、C:0.001~0.02%、Si:0.1~1.5%等とNbあるいはTiの一種以上を0.1~0.8%含有し、板厚全体におけるEBSP法により測定される{111}<112>と{111}<011>方位の面積率の総和が40%以上であり、平均r値が1.5以上、45°方向のr値が1.0以上であるステンレス鋼板からなり、鋼管のYR(引張強度/0.2%耐力)が1.1以上、溶接された鋼管突き合わせ部の板厚全体におけるEBSP法により測定される{110}<011>と{211}<011>方位の面積率の総和が30%以上である、加工性に優れた排気部品用フェライト系ステンレス鋼管が開示されている。
また、特許文献2は、Cr、Sn、Si、Mn等を含有し、板厚をtとしたとき、表層からt/4における{100}<012>方位のX線回折強度が2以上である、加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
また、特許文献3では、Si、Mn、Cr、Cu、Ti、B等を含有し、平均r値≧1.3である、耐熱性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
また、特許文献4では、Si、Mn、Ni、Cr、Nb等を含有し、粒径2μm以下の析出物が0.5質量%以下で、且つ板厚の1/4深さにおける圧延面の結晶方位が所定の式で定義される積分強度比で1.2以上である、加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
特許第6261640号公報 特許第5843982号公報 特許第5546911号公報 特許第4562281号公報
特許文献1~4に記載のフェライト系ステンレス鋼板は、いずれも優れた加工性を有するものの、耐食性については評価していないため、加工性と耐食性の両性能をバランスよく向上させることについては意図していない。特に、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼の代替として、オーステナイト系ステンレス鋼と同等の耐食性、特に耐孔食性を具備することが求められるようになってきた。また、ステンレス鋼板の耐孔食性を向上させる作用を有する添加元素としては、Cr、Mo等が知られているが、Cr、Moは、高価であるので、鋼中に過度に含有させることは、経済性を損ない、加えて、例えば精錬時の製造性を悪化させるという問題点がある。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、Si含有量を1.0質量%超えで含有し、耐食性(特に耐孔食性)と加工性(特に深絞り加工性)の両方に優れるフェライト系ステンレス鋼板を提供することである。
そこで、以下に本発明の特徴を列記する。
(1)質量%で、
C:0.020%以下、
Si:1.0%超2.5%以下、
Mn:1.0%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0030%以下、
Cr:13.0%以上23.0%以下、
Mo:0.50%以下、
N:0.020%以下、および
Al:0.20%以下を含有し、さらに、
Nb:0.40%以下およびTi:0.40%以下の一方または双方を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系ステンレス鋼板であって、
前記鋼板の板厚をtとし、前記鋼板の表面から、前記表面に平行な面が表出するように板厚方向に削り取って、前記鋼板の表面から前記板厚(t)の1/8の厚さに相当する面である第1面と、前記鋼板の表面から前記板厚(t)の1/4の厚さに相当する面である第2面とを順次表出させ、前記鋼板の表面の法線方向と前記第1面および前記第2面で測定される{111}面方位との角度差が±10°以下の方位を有する結晶粒の合計面積率を、それぞれS1およびS2とし、また、
前記第1面および前記第2面における平均結晶粒径(μm)を、それぞれG1およびG2とするとき、
S1およびS2と、G1およびG2は、下記に示す式(1)と式(2)の関係をそれぞれ満足する、耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
式(1):S2≧0.3、かつ、S1/S2≧1.2
式(2):G1≦30μm、G1/G2≦1.0
(2)前記化学組成中のCr、SiおよびMoの各含有量(質量%)は、それぞれ[Cr]、[Si]および[Mo]で表すとき、下記の式(3)で表される孔食指数(PI)の関係式を満足する、(1)に記載の耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
式(3):PI=[Cr]+2[Si]+3[Mo]≧19.0
(3)前記化学組成は、さらに、質量%で、
B:0.0050%以下、
Ni:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、
V:0.50%以下、
W:0.50%以下、
Sn:0.10以下、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.010%以下、
Zr:0.50%以下、
Co:0.50%以下、
Ga:0.10%以下、
La:0.10%以下、
Y:0.10%以下、
Hf:0.10%以下、および、
REM:0.10%以下からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、(1)または(2)に記載の耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
本発明は、Si含有量を1.0質量%超えで含有し、耐食性(特に耐孔食性)と加工性(特に深絞り加工性)の両方に優れるフェライト系ステンレス鋼板を提供するという特有の効果を奏することができる。
EBSDの測定による結晶方位マップの一例を示す図である。
以下に、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明はこの発明における実施形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、フェライト系ステンレス鋼板において、耐食性(特に耐孔食性)と加工性(特に深絞り加工性)との両方を改善する添加元素の作用効果と、深絞り加工後の加工性に及ぼす熱処理の影響とについて鋭意検討を行い、下記の新しい知見を得て本発明をなすに至った。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、化学組成が、質量%で、C:0.020%以下、Si:1.0%超2.5%以下、Mn:1.0%以下、P:0.040%以下、S:0.0030%以下、Cr:13.0%以上23.0%以下、Mo:0.50%以下、N:0.020%以下、およびAl:0.20%以下を含有し、さらに、Nb:0.40%以下およびTi:0.40%以下の一方または双方を必須添加元素として含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
(化学組成)
以下に、各必須添加元素の限定理由について説明する。なお、以下の化学組成の各成分の説明では、「質量%」を単に「%」として示す。
(C:0.020%以下)
C(炭素)は、加工性と耐食性を低下させる他、固溶Cは{111}集合組織の発達を阻害するため、また、固溶Cは、r値を低下させることで加工性の低下を招くことから、その含有量は少ないほど良いため、上限を0.020%以下とする。さらに、好ましくは0.010%未満にすることで、さらに、耐食性を向上させることができる。一方、Cは侵入型固溶元素であり、結晶粒界への偏析傾向も大きい元素であり結晶粒界の強化にも寄与する。これらCの作用効果を得るには下限を0.001%以上とすることが好ましい。精錬コストも考慮した好ましい範囲は、0.003%以上0.015%未満である。
(Si:1.0%超2.5%以下)
Si(ケイ素)は、脱酸元素として有効であり、耐酸化性を向上させる。また、細粒化に寄与する他、引張強度、硬度を高くし、機械的強度の向上に貢献する。さらに、耐食性、特に耐孔食性を向上させることができるため、下限は少なくとも1.0%超えとする。一方、固溶強化元素として作用しr値を低下させることで加工性の低下を招くため、上限を2.5%以下とする。それぞれの効果と製造性を考慮して、1.0%超2.5%以下とする。好ましい範囲は、それぞれの効果と製造性を考慮して、1.1%以上2.0%以下である。
(Mn:1.0%以下)
Mn(マンガン)は、脱酸元素およびSの固定で有効な元素である。一方、耐食性や耐酸化性の低下を招くため、上限を1.0%以下とする。脱酸やS固定の作用を確保するために下限を0.01%以上とすることが好ましい。好ましい範囲は、それぞれの効果と製造コストを考慮して0.05%以上0.5%以下である。
(P:0.040%以下)
P(リン)は、製造性や溶接性を阻害する元素であり、本発明の目標とする加工性の低下を招く主因であるため、その含有量は少ないほど良いため、上限を0.040%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.005%以上とすることが好ましい。より好ましい範囲は、製造コストを考慮して0.010%以上0.030%以下である。
(S:0.0030%以下)
S(硫黄)は、結晶粒界に偏析し、熱間加工性や本発明の目標とする加工性の低下にも繋がる。特に、固溶強化元素として作用しr値を低下させることで加工性の低下を招くため、その含有量は少ないほど良いことから、上限を0.0030%以下とする。但し、過度の低減は原料及び精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.0001%以上とすることが好ましい。より好ましい範囲は、脆化の抑制や製造コストを考慮して0.0002%以上0.0015%以下である。
(Cr:13.0~23.0%)
Cr(クロム)は、本発明のフェライト系ステンレス鋼の基本元素であり、耐食性や耐熱性を確保するために必須の元素である。電気ポット用途を想定した耐食性や耐熱性を確保するために下限を13.0%以上とする。上限は、固溶強化元素として作用しr値を低下させることで加工性の低下を招くため、加工性と製造性の観点から23.0%以下とする。但し、SUS430J1L(19Cr)、SUS443J1(21Cr)と比較した経済性から、好ましい範囲は15.0%以上19.0%以下とする。性能と合金コストを考慮して、より好ましい範囲は、16.0%以上18.0%以下である。
(Mo:0.50%以下)
Mo(モリブデン)は、NiやCuと同様に耐食性に加えて、本発明の目標とする加工性を得るために有効な元素である。Mo含有量は、それぞれの効果が発現するために、Moは0.02%以上とすることが好ましい。但し、過度な含有量は、合金コストの上昇と、固溶強化元素として作用しr値を低下させることで加工性の低下を招くため、熱間加工及び冷間加工の製造性を阻害するため、Mo含有量の上限は、0.50%以下とする。より好ましい範囲は、製造性と性能を考慮して0.05%以上0.30%以下である。
(N:0.020%以下)
N(窒素)は、Cと同様に加工性と耐食性を低下させるため、N含有量は少ないほど良いため、上限を0.020%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.001%とすることが好ましい。また、NはCと同様に侵入型固溶元素であるものの、結晶粒界への偏析傾向は小さく、結晶粒界の強化に殆ど寄与せず、r値を低下させることで加工性の低下を招く。したがって、好ましい範囲は、性能と製造コストを考慮して0.005%以上0.015%以下である。
(Al:0.20%以下)
Al(アルミニウム)は、脱酸元素として極めて有効な元素である。一方、鋼の靭性や溶接性の低下を招くため、上限を0.20%以下とする。下限は、脱酸効果を考慮して0.005%以上とすることが好ましい。より好ましい範囲は、製造性と性能を考慮して0.010%以上0.070%以下である。
(Nb:0.40%以下およびTi:0.40%以下の一方または双方)
Nb、Tiは、C、Nを固定する安定化元素の作用により、加工性及び耐食性に加えて、本発明の目標とする加工性の改善にも有効な元素である。Nb、Tiは、CやNと結合して炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、{111}方位を発達させ、r値の向上を促進する。しかし、Nb、Tiは、それぞれC、Nに対して別に独立して作用することから、Nb、Ti含有量は、それぞれその効果が発現する0.01%以上とすることが好ましい。但し、Nb、Ti含有量がそれぞれ0.40%を超えると、合金コストの上昇や再結晶温度上昇に伴い{111}方位の発達を阻害するため、上限を0.40%以下とする。好ましい範囲は、それぞれの効果と合金コストおよび製造性を考慮して、0.03%以上0.30%以下とする。より好ましい範囲は0.05%以上0.20%以下とある。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、必要に応じて、以下に示す任意添加元素をさらに添加することができる。
(B:0.0050%以下)
B(ホウ素)は、結晶粒経に偏析して粒界強度を高くし、特に靭性に関する加工性を向上させる元素であり、フェライト系ステンレス鋼への添加は有効である。B含有量は、これらの効果を発現する0.0003%以上とすることが好ましい。しかし、B含有量が0.0050%超えだと、伸びの低下をもたらすため、上限を0.0050%とする。好ましくは、材料コストや加工性を考慮して0.0005%以上0.0020%以下とする。
(Ni:1.0%以下)
Ni(ニッケル)は、耐食性に有効な元素であり、加工性を得るために好適な元素である。本発明の対象とする熱処理後のP偏析を遅延させて、加工性を得るには、Ni含有量は0.03%超とすることが好ましい。一方、Ni含有量が1.0%超えだと、合金コストの上昇や材料強度の上昇させr値を低下させることで加工性の低下を招くため、Ni含有量の上限は1.0%とする。Ni含有量の好ましい範囲は、性能と合金コストを考慮して、0.05%以上0.5%以下とする。
(Cu:1.0%以下)
Cu(銅)は、耐食性に有効な元素であり、加工性を得るために好適な元素である。本発明の対象とする熱処理後のP偏析を遅延させて、加工性を得るには、Cu含有量は0.03%超とすることが好ましい。一方、Cu含有量が1.0%超えだと、合金コストの上昇や材料強度の上昇による加工性の低下を招くため、Cu含有量の上限は1.0%とする。Cu含有量の好ましい範囲は、性能と合金コストを考慮して、0.05%以上0.5%以下とする。
(V:0.50%以下)
V(バナジウム)は、耐食性と本発明の目標とする加工性の改善にも有効な元素である。特に、炭窒化物の生成により固溶C、Nの低減させることで、耐食性と加工性の改善に寄与することから必要に応じて添加する。V含有量は、その効果が発現する0.01%以上とすることが好ましい。V含有量が0.50%超えだと、合金コストの上昇や製造性の低下に繋がり、固溶強化と析出強化により硬質化と伸びの低下を招くため、V含有量の上限を0.50%以下とする。V含有量の好ましい範囲は、加工性及び製造性と合金コストを考慮して、0.02%以上0.30%以下とする。
(W:0.50%以下)
W(タングステン)は、耐食性と本発明の目標とする加工性の改善にも有効な元素であり、鋼中に固溶して耐食性および加工性に寄与することから、必要に応じて添加する。その含有量は、それぞれその効果が発現する0.01%以上とすることが好ましい。W含有量が0.50%超えだと、合金コストの上昇や製造性の低下に繋がり、固溶強化と析出強化により硬質化と伸びの低下を招くため、W含有量の上限を0.50%以下とする。W含有量の好ましい範囲は、性能及び製造性と合金コストを考慮して、0.02%以上0.30%以下とする。
(Sn:0.10%以下)
Sn(錫)は、耐食性とPの粒界偏析を抑制して加工性の改善にも有効な元素であり、必要に応じて添加する。Sn含有量は、それぞれの効果が発現するために、下限は、0.01%以上とすることが好ましい。但し、Sn含有量が0.10%超えだと、合金コストの上昇と熱間加工及び冷間加工の製造性を阻害するため、Sn含有量の上限は、0.10%以下とする。
(Ca:0.0100%以下)
Ca(カルシウム)は、熱間加工性や鋼の清浄度を向上させる元素であり、必要に応じて添加する。Ca含有量は、それぞれの効果を発現する0.0003%以上とすることが好ましい。しかし、Ca含有量が0.10%超えだと、製造性の低下やCaSなどの水溶性介在物による耐食性の低下に繋がるため、Ca含有量の上限を0.0100%とする。好ましくは、製造性や耐酸化性を考慮して0.0003%以上0.0050%以下とする。
(Mg:0.010%以下)
Mg(マグネシウム)は、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用する他、TiNの晶出核として作用する。TiNは凝固過程においてフェライト相の凝固核となり、TiNの晶出を促進させることで、凝固時にフェライト相を微細生成させることができる。凝固組織を微細化させることにより、製品のリジングなどの粗大凝固組織に起因した表面欠陥を防止できる他、加工性の向上をもたらすため必要に応じて添加する。Mg含有量は、それぞれの効果を発現する0.0001%以上とすることが好ましい。但し、Mg含有量が0.010%超えだと、製造性が劣化するため、Mg含有量の上限を0.010%以下とする。好ましくは、製造性を考慮して0.0003%以上0.0020%以下とする。
(Zr:0.50%以下)
Zr(ジルコニウム)は、鋼の清浄度を向上させて加工性を得るために有効な元素であり、必要に応じて添加する。その含有量は、それぞれその効果が発現する0.01%以上とすることが好ましい。Zr含有量が0.50%超えだと、合金コストの上昇や製造性の低下に繋がるため、Zr含有量の上限を0.50%とする。好ましい範囲は、性能及び製造性と合金コストを考慮して、0.02%以上0.30%以下とする。
(Co:0.50%以下)
Co(コバルト)は、鋼中に固溶して加工性を得るために有効な元素であり、必要に応じて添加する。その含有量は、それぞれその効果が発現する0.01%以上とすることが好ましい。Co含有量が0.50%超えだと、合金コストの上昇や製造性の低下に繋がるため、Co含有量の上限を0.50%以下とする。好ましい範囲は、性能及び製造性と合金コストを考慮して、0.02%以上0.30%以下とする。
(Ga:0.10%以下)
Ga(ガリウム)は、熱間加工性や鋼の清浄度を向上させる元素であり、必要に応じて添加する。その含有量は、それぞれの効果を発現する0.0003%以上とすることが好ましい。しかし、Ga含有量が0.10%超えだと、製造性の低下や耐食性の低下に繋がるため、Ga含有量の上限を0.10%以下とする。好ましくは、製造性や耐酸化性を考慮して0.01%以上0.05%以下とする。
(La、Y、Hf、REM:それぞれ0.10%以下)
La(ランタン)、Y(イットリウム)、Hf(ハフニウム)、REM(希土類元素)は、熱間加工性や鋼の清浄度を向上させ、耐酸化性や熱間加工性を著しく向上させる効果を持つため、必要に応じて添加しても良い。それらの含有量は、それぞれその効果が発現する0.001%以上とすることが好ましい。しかし、La、Y、Hf、REMを過剰に添加しても、合金コストの上昇と製造性の低下に繋がるだけであるため、La、Y、Hf、REMの各含有量の上限をそれぞれ0.10%以下とする。好ましくは、効果と経済性および製造性を考慮して、少なくとも1種以上で0.001%以上0.050%以下とする。
REMは、Ce、Pr、Sm等のランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類金属及びこれらの複合した金属を示している。
(残部はFeおよび不可避的不純物)
残部はFeおよび不可避的不純物からなり、不可避的不純物としては、例えばAs及びSbなどが挙げられるが、ここで不可避的不純物とは、ステンレス鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(合計面積率、面積比)
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼板(以下、単に「ステンレス鋼板」と記す。)は、ステンレス鋼板の板厚をtとし、鋼板の表面から、表面に平行な面が表出するように板厚方向に削り取って、鋼板の表面から板厚(t)の1/8の厚さに相当する面である第1面と、鋼板の表面から板厚(t)の1/4の厚さに相当する面である第2面とを順次表出させ、鋼板の表面の法線方向と第1面および第2面で測定される{111}面方位との角度差が±10°以下の方位を有する結晶粒の合計面積率(以下、単に「面積率」と記す。)を、それぞれS1およびS2とし、式(1)の関係を満足する。
式(1):S2≧0.3、かつ、S1/S2≧1.2
本発明のステンレス鋼板は、C、Nなど不純物元素を低減し、Siを1%以上を含有させたフェライト系ステンレス鋼において耐食性を向上させている。しかし、Siは固溶強化元素であり、Siを添加したフェライト系ステンレス鋼板は、通常の冷間圧延及び焼鈍工程を有する製造方法で、加工性、特に深絞り加工性が低下することが知られている。これは、冷間加工によるせん断変形が作用する鋼板表層で、r値の高い{111}面の集積が鈍化することによる。フェライト系ステンレス鋼は、結晶構造が体心立方晶であり、オーステナイト系ステンレス鋼板の面心立法晶と比較して、対称性が低くなっている。しかし、対称性の低い体心立方晶であっても、原子間距離が小さくなる{111}面が集合することがr値を大きくし深絞り加工性を改善する。{111}面はフェライト系ステンレス鋼の代表的な加工性を高める結晶面であり、r値を高める作用を有している。{111}面方位の結晶粒とは、鋼板の板面に平行な面の法線方向と{111}面方位の垂直方向との角度差が0°である結晶方位を有する結晶粒をいう。また、鋼板の板面に平行な面の法線方向と{111}面方位との角度差が10°以下の方位を有する結晶粒とは、ステンレス鋼板の表面における法線方向と鋼板の板面にある{111}面方位の角度差が10°以下である面方位を有する結晶粒を(以下、「結晶方位粒{111}±10°」と記す。)」をいう。
ステンレス鋼の表面には、表面における法線方向に対して{111}面、{110}面、{100}面等の多数の面が存在する。しかし、ステンレス鋼板の体心立方構造では、{111}面が対称性が高く、加工性に優れていてr値が大きくなり、{110}面又は{100}面になるに従って加工性が低下し、r値が小さくなる。したがって、ステンレス鋼板の板厚方向に深い位置における結晶方位粒{111}±10°の面積率S2が0.3以上であれば、r値が大きくなって、優れた深絞り加工性を有することができる。このために、本発明のステンレス鋼板は、板厚方向の深い位置における{111}面の集合組織が多くなるようにする。面積率S2が0.3未満では、ステンレス鋼板の表面がr値の低い{110}面と{100}面や{211}面が多くなることで、r値が1.0未満となり、本発明の平均r値に未達となる。
さらに、本発明のステンレス鋼板は、第1面における結晶方位粒{111}±10°の面積率S1が、第2面における面積率S2との関係で、式(1)に示す面積比(S1/S2)が1.2以上を満足する。これにより、本発明のステンレス鋼板において、板厚方向の深い位置における{111}面の集合組織が多くなるようにする。
本発明のステンレス鋼板の深絞り加工は、ステンレス鋼板の表面だけではなく、厚さ方向にも変位する。したがって、板厚方向における金属組織の結晶方位粒{111}、結晶方位粒{110}、結晶方位粒{100}の面積率によって、r値が変動する。そこで、本発明のステンレス鋼板では、面積比(S1/S2)が1.2以上にすることで、深絞り加工によるステンレス鋼板の表面に近い第1面が、ステンレス鋼板の板厚方向の深い第2面におけるより大きな応力やひずみがあっても、第1面と第2面との間における変形の差を小さくすることができる。逆に、面積比(S1/S2)が1.2未満では、深絞り加工後の板厚減少が大きくなり、ステンレス鋼板の表面に割れの発生する可能性が高くなる。
面積率は、EBSD(電子線後方散乱回折法)で測定することができる。EBSDは、試料表面における結晶粒毎の結晶方位を高速に測定・解析するものである。結晶方位粒の面積率は、{111}±10°とそれを除く2つの領域に分割した結晶方位マップを表示させて数値化することができる。第1面および第2面における鋼板表面において、板幅方向850μm、圧延方向2250μmの測定領域で倍率100としてEBSDの測定を行う。例えば、図1のように、板面に平行な面の法線方向と{111}面方位との角度差が10°以下である{111}±10°の結晶方位マップを表示してその面積率を求める。図1に示す結晶方位マップでは、{111}±10°の方位を有する結晶粒は、黒塗りの領域として示され、また、{111}±10°以下の方位を有する結晶粒以外の方位粒は、白抜きの領域として示されている。
ここで、図1は、EBSDの測定による結晶方位マップの一例を示す図である。板厚方向にt/8面において、黒い部分が{111}±10°以下の方位を有する結晶粒を示しており、合計面積率が0.5である。
(平均結晶粒径、粒径比)
また、本発明のステンレス鋼板は、第1面および第2面における平均結晶粒径(μm)を、それぞれ平均結晶粒径G1および平均結晶粒径G2とするとき、式(2)を満足する。
式(2):G1≦30μm、G1/G2≦1.0
本発明のステンレス鋼板では、表面に近い第1面における平均結晶粒径G1が30μm以下にする。一般的に平均結晶粒径が大きいほど、r値は大きくなるが、表層はr値の低い結晶方位粒の成長によりr値が低下する場合もあり、深絞り加工性の向上には細粒化が好ましい。それだけではなく、フェライト系ステンレス鋼板の金属組織において、フェライト母相の集合組織だけでなく、平均結晶粒径が30μm以下のフェライト粒の金属組織内での分布状態に大きく影響することが判明した。したがって、鋼板の表面に近い平均結晶粒径G1を、30μm以下にする。好ましくは20μm以下である。平均結晶粒径が細かいほどr値が上昇しがたいため平均結晶粒径の下限は特に限定しないものの5μmが好ましい。このため、鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置におけるフェライト平均結晶粒径G1は5μm以上とすることが好ましい。
また、本発明のステンレス鋼板は、第1面および第2面における平均結晶粒径(μm)を、それぞれG1およびG2とするとき、式(2)中の粒径比(G1/G2)が1.0以下を満足する。これは、鋼板表面近傍における粒成長の進行を抑制し、鋼板内部に比較して結晶粒径の細粒化することで、優れた深絞り加工性を得ることができる。これによって、板厚中心部から鋼板表面近傍にかけて粒径が小さくなるという傾斜組織を有するステンレス鋼板が得られ、板厚中心部のみならず鋼板表面においてもr値を向上させるとともにr値の面内異方性を低下させる集合組織を十分に発達させることができ、ステンレス鋼板全体としての深絞り性を著しく向上させることができるのである。
なお、ステンレス鋼板表面の平均結晶粒径の測定については、鋼板の表面を所定の深さまで湿式又は電解研磨して表出させた鋼板表面を、JIS G 0551:2013(結晶粒度の顕微鏡試験方法)における切断法に準拠して結晶粒度を任意に5点測定して平均値を求め、平均結晶粒径を算出する。
(孔食指数)
さらに、本発明のステンレス鋼板は、Cr、SiおよびMoの各含有量[Cr]、[Si]および[Mo]を変数として表される孔食指数(PI)が下記式(3)の関係を満足する。
式(3):PI=[Cr]+2[Si]+3[Mo]≧19.0
Crを含有するステンレス鋼は、塩素イオン等のハロゲン系イオンを含む環境で起こる腐食で、塩素イオン等の作用により不動態皮膜が局部的に破壊され、その部分が優先破壊されることにより孔食が進行する。この孔食は、ステンレス鋼が含有する元素によって腐食の進行が大きく変動する。一般に、ステンレス鋼の耐孔食性の指標として孔食指数(PI=Cr+3Mo)が知られている。本発明のステンレス鋼板は、孔食指数(PI)としてSiの効果を新たに見出して得られた式(3)を満足している。
本発明のステンレス鋼板は、耐食性の序列を簡易的に評価できる手法として孔食電位測定を採用し、含有する添加元素のうち、多くの添加元素を測定し、CrとMoに加えて、特に効果が見出されたSiに着目して、その各の含有量[Cr]、[Si]および[Mo]の影響について検討した。孔食電位測定はJIS G 0577(ステンレス鋼の孔食電位測定方法)に準拠して行い、30℃の3.5質量%NaCl水溶液中における電流値が100μA/cmを超える電位を孔食電位V‘c100と定めた。本発明のステンレス鋼板において、1.0%を超える[Si]を含有する場合には、[Cr]の増加はもとより[Si]の増加によっても孔食電位が向上し、その効果は[Cr]の2倍あることを知見した。この効果は必ずしも明らかではないが、不動態皮膜の分析から、皮膜内層および鋼界面に生成するSiの酸化物がハロゲンイオンによる不動態皮膜の破壊を抑制する作用を発現したものと推察している。さらに、1.0%を超えてSiを添加した場合においても、[Mo]を含有する場合には、その効果は[Cr]の3倍あることを知見した。したがって、本発明のステンレス鋼板は、孔食指数(PI)として、PI=[Cr]+2[Si]+3[Mo]と表している。
さらに、SUS430J1L(19Crフェライト系ステンレス鋼)、SUS443J1(21Crフェライト系ステンレス鋼)とSUS304(18Cr-8Niオーステナイト系ステンレス鋼)と孔食電位V‘c100を比較した。本発明のステンレス鋼板の式(1)をPI=19.0にすることで、SUS430J1L(19Crフェライト系ステンレス鋼)と同等以上の孔食電位0.25Vとすることができた。また、本発明のステンレス鋼板をPI=21.0にすることで、SUS443J1(21Crフェライト系ステンレス鋼)とSUS304(18Cr-8Niオーステナイト系ステンレス鋼)と同等の孔食電位0.35Vとすることができた。そこで、本発明のステンレス鋼板の孔食指数(PI)を19.0以上とした。
また、本発明のステンレス鋼板における孔食指数(PI)が25.0を超えると、鋼中のSi含有量[Si]が多くなりすぎる傾向があるため、引張強度および硬度が高くなりすぎて加工性が低下し、製造コストが高くなるという不利益がある。また、同様に、鋼中のMo含有量[Mo]が大きくなると、原材料費が高くなるという不利益がある。このため、孔食指数(PI)の上限は25.0とすることが好ましい。
(平均r値、Δr値)
本発明のステンレス鋼板は、r値を制御することが重要である。さらに、圧延方向のr値(r0)を適正範囲に制御し、かつ、伸び14.4%の引張歪を与えて求められる圧延方向のr値(r0)、圧延方向に対して45°のr値(r45)、圧延方向に対して90°のr値(r90)の平均r値が1.5以上、かつ、面内異方性のΔr値が0.5以下にする。
平均r値、Δr値は、以下の式(4)、式(5)で表している。
式(4):平均r値=(r0+2r45+r90)/4
式(5):Δr=(r0+r90-2r45)/2
ここで、以下に各符号の内容を示している。
r0:圧延方向のr値
r45:圧延方向に対して45°方向のr値
r90:圧延方向に対して90°方向のr値
平均r値を1.50以上とすることが、深絞り加工度を高くしても、加工割れを防止するために必要であるため、これを下限とした。加工割れは、絞られた円筒の縁に耳と呼ばれる波状の凸凹が生ずる。深絞り加工度を高くしても、鋼板が安定して変位し、加工割れをより抑制するためには、平均r値を1.90以上とすることが好ましい。なお、平均r値の上限は特に設けられるものではなく、一般的な製造設備、装置等で製造可能なフェライト系ステンレス鋼板の平均r値を考慮して適宜決定してよいが、例えば2.50以下を上限としてもよい。
さらに、平均r値を1.50以上とするためには、r値(r0)を1.00以上とする必要があるため、これを下限とした。深絞り加工度を高くしても、鋼板が安定して変位し、加工割れをより抑制するためには、r値(r0)を1.50以上とすることが好ましい。なお、r値(r0)の上限は特に設けられるものではないが、異方性Δrが極端に大きくなることを防ぐために、r値(r0)は3.00以下を上限とすることが好ましい。さらに好ましくは、r値(r0)は1.50~2.50の範囲にあることが好ましい。
また、本発明のステンレス鋼では、Δr値を0.5以下に制御する。一般に、圧延方向のr値(r0)と圧延90度方向のr値(r90)が高ければ、深絞り加工度を高くしても、鋼板が安定して変位し、加工割れをより抑制する。しかし、圧延方向のr値(r0)と圧延90度方向のr値(r90)が、圧延45度方向のr値(r45)と比較して極端に大きいことで、Δr値が0.5を超えて大きい場合円筒の縁の耳の長さが大きくなり、深絞り加工で耳の発生しない成形の高さを得ることが困難になる。そのためΔr値を小さくして耳の発生を抑える。すなわち、深絞り加工度を高くしても、鋼板が安定して加工することができる。したがって、深絞り加工では、耳の発生を抑え、かつ、加工割れを防止するためには、平均r値を高めるだけでは不十分であり、r0、r45およびr90のバランスを図り、Δr値が大きくなるのを防止し、0.5以下にすることが必要である。
なお、圧延方向のr値(r0)、平均r値、Δr値の制御方法は、鋼板の製造工程の各条件を調整することで制御すればよい。例えば、冷延での圧下率や、最終焼鈍温度を適正な値とすることなど、製造条件を適宜設定することによって式(4)と式(5)を満足するような鋼板を製造することができる。
r値、平均r値、Δr値は、JIS Z 2254:2008(薄板金属材料の塑性ひずみ比試験方法)により測定し、求めることができる。具体的には、引張試験によって,JIS13号B引張試験片に所定の水準まで均一な塑性ひずみを与えたときの、引張変形前後の試験片の幅及び厚さの値からr値を計算する。さらに、引張試験片を圧延方向に対して、14.4%歪みを付与した後に、平行、45°方向、90°方向から幅及び厚さの値を測定し、それぞれの方向のr値(r0、r45、r90)を求めた後に、平均r値、Δr値の式に各r値を代入し算出した。
(製造方法)
以下に、本発明のステンレス鋼板の好適な製造方法、条件について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
フェライト系ステンレス鋼板は、例えば、鋳片加熱→熱間圧延→(熱延板焼鈍)→冷間圧延→中間焼鈍→仕上冷間圧延→仕上焼鈍の工程によって製造することができる。工程中には「酸洗」の記載を省略しているが、酸洗は常法に従い適宜実施される。また、従来は、「冷間圧延→中間焼鈍」の工程は必要に応じて複数回行っていた。
しかし、本発明のステンレス鋼板では、製造方法に関して、冷延条件および冷延板焼鈍条件の影響について検討を行った。そこで、本発明のステンレス鋼板における金属組織の制御には、大径ロールと小径ロールを組み合わせた冷間圧延が好適であり、特に、冷間圧延における中間焼鈍を挟まず大径ロールと小径ロールによる連続冷延をし、低い焼鈍温度で仕上焼鈍することが望ましい。これを以下に、説明する。
本発明のステンレス鋼板は、スラブを出発材として所定の板厚に熱延された熱延板は、熱延板焼鈍が施される。焼鈍後に、冷延および冷延焼鈍を行っている。冷間圧延途中に中間焼鈍を行わずに、大径ロールと小径ロールを組み合わせた1回の冷延工程で製造する。大径ロールと小径ロールを組み合わせた冷間圧延が好ましい。特に、ここで、冷間圧延は、大径ロールと小径ロールを組み合わせて、金属組織を制御している。また、冷間圧延において、中間焼鈍を挟まずに大径ロールと小径ロールとを連続的に圧延することが望ましい。これによって、板厚中心付近に加えて表層で{111}方位への発達を促進することができる。冷間圧延の大径ロールは400mmで、小径ロールは100mmであることが好ましい。圧延機として、クラスターミル(多段圧延機)、プラネタリー圧延機、ゼンジミア圧延機等のいずれも用いることが可能である。
通常の製造方法では、加工性を向上されるために、冷延工程における圧下率を高くすることが行われている。本発明のステンレス鋼板では、Δr値を0.5以下とするため圧下率を80%未満とする。更に、冷延後の焼鈍に際しては、加熱温度を950℃未満として、細粒化と加工性を向上させる集合組織の発達を促進させている。細粒化と再結晶集合組織の発達を考慮すると、仕上冷延圧下率は60~80%未満、焼鈍温度は880~930℃が望ましい。
また、生産性を考慮すると前述のように1回の冷延工程で製造することが望ましいが、本発明のステンレス鋼板では、中間焼鈍を付与する2回冷延工程で製造することができる。2回冷延工程では、大径ロール又は小径ローラのいずれかを2回冷延し、その後仕上焼鈍を行う。中間焼鈍を付与する前の1回目(前段)冷延工程においては圧下率を50%未満、中間焼鈍後の2回目(後段)冷延工程(仕上冷延)の圧下率は75%未満とする。これは過度に冷延圧下率を高くするとr0とr90のr値の上昇によりΔr値が大きくなるためであり、望ましくは、1回目(前段)冷延工程においては圧下率を30~50%未満、中間焼鈍後の2回目(後段)の仕上冷延工程の圧下率は60~75%未満とする。
このときに、冷延板の冷間圧延における焼鈍温度は950℃未満とし、結晶粒の粒成長を抑え細粒化し、結晶方位の面積率、平均結晶粒径等の金属組織および平均r値等を制御することが好ましい。また、同様に、冷間圧延後の焼鈍温度は880~930℃とし、結晶粒の粒成長を抑え細粒化し、結晶方位の面積率、平均結晶粒径等の金属組織および平均r値等を制御することが好ましい。
本発明のステンレス鋼板では、本発明に規定する所定の化学組成の範囲にあり、上述の製造方法により、式(1)及び式(2)の値いずれもが本発明の適正範囲を満たすフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。仕上冷延の際の剪断変形を抑制することで、中間焼鈍を設けずに、大径ロールと小径ロールを組み合わせた冷延工程で製造する。これにより、中間焼鈍を省略し再結晶させないことで、平均結晶粒径を微細化することができる。また、ステンレスへの圧延に利用される直径100mm程度の通常の径のロールによる圧延では、剪断変形の抑制は不十分であり、直径400mm以上のロール径を有する圧延機と組み合わせることで、{111}面方位の面積率が0.3以上で、面積比を1.2以上で、さらに、表層付近でt/4の面における平均結晶粒径30μm以下で、粒径比を1.0以下にすることができる。
なお、スラブ厚さ、熱延板厚などは適宜選択することができる。また、冷間圧延においては、圧下率、ロール粗度、ロール径、圧延油、圧延パス回数、圧延速度、圧延温度などは適宜選択することができる。焼鈍は、必要であれば水素ガスあるいは窒素ガスなどの無酸化雰囲気で焼鈍する光輝焼鈍でも大気中で焼鈍することができる。更に、焼鈍後に調質圧延や形状矯正のためのテンションレベラー工程を選択することができる。
本発明を以下の発明例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す発明例に限定されるものではない。
表1は、鋼種A~Pにおける必須添加元素及び一部では任意添加元素を含有量を示している。鋼種A~Hは、必須添加元素が本発明の範囲内である。鋼種I~Pは、必須添加元素が本発明の範囲外である。なお、鋼種Cは、Nbが0%であるが、実際には不純物として不可逆的に含有する場合があることから、ここで「0%」は、実質的な含有量を示しており、0.01%未満で含有することを許容する。同様に、鋼種Eは、Tiが0%であるが、実際には不純物として不可逆的に含有する場合があることから、ここで「0%」は、実質的な含有量を示しており、0.01%未満で含有することを許容する。
Figure 2024058836000002
以下、発明例1~12、比較例1~13の製造方法を示している。
表1に示す成分組成の鋼を溶製しスラブに鋳造し、スラブを熱間圧延して、4.0mm又は6.0mm厚の熱延板とした。その後、熱延板を連続焼鈍処理した後、酸洗した後に、冷間圧延をし、焼鈍処理した後、酸洗し、発明例1~12、比較例1~13の試料板を作製した。冷間圧延の工程を表2に示している。
Figure 2024058836000003
冷間圧延は、熱延板を、直径400mm大径ロールと直径100mm小径ロールを組み合わせて、冷延板の金属組織を制御している。
冷延回数が1回の場合は、4.0mm厚さの熱延板を870~950℃で焼鈍(HA:Heat Anealing)し、大径ロールと小径ロールとの連続、又は小径ロール単独で、厚さ0.8mmまで冷間圧延をし、最終焼鈍(FA:Final Heating)をして製品とした。
また、冷延回数が2回の場合は、6.0mm厚さの熱延板を870~950℃で焼鈍(HA:Heat Anealing)し、1回目の中間冷延を大径ロール又は小径ロールで冷延し、中間焼鈍(IA:Internal Heating)をした後に、2回目の仕上圧延として、大径ロールと小径ロールとの連続、又は小径ロール単独で、厚さ0.8mmまで冷間圧延をし、最終焼鈍(FA:Final Heating)をして製品とした。
表2に示す数値は、圧延機による圧下率を示している。圧延前後の材料の板厚をそれぞれh1、h2とするとき、(h1-h2)/h1の式で算出される量で、百分率で示している。また、表2における括弧()内の数値は、IAの前(1)か、後(2)かを示している。
次に、発明例1~12、比較例1~13の試料を、結晶方位粒{111}±10°の合計面積率、面積比、平均結晶粒径、粒径比、平均r値とΔr値を測定した。また、式(3)のPIの計算の値、孔食電位測定値を示している。その結果を表3に示している。
また、以下に結晶方位粒{111}±10°の合計面積率、面積比、平均結晶粒径、粒径比、平均r値とΔr値、孔食電位の測定方法を説明する。
<結晶方位粒{111}±10°の面積率の測定>
ステンレス鋼板の表面を所定の深さまで湿式又は電解研磨して表出させた鋼板表面を、EBSD(電子線後方散乱回折法)で測定する。EBSD(電子線後方散乱回折法)測定では、結晶方位解析システム(TSL社製;PEGASUS2300)を使用して結晶方位が異なる結晶粒ごとのマッピング画像を作成し、このマッピング画像について、画像解析ソフトウエアの輪郭追跡アルゴリズムにより1つの閉じた輪郭線に囲まれた領域の合計面積率を処理した。さらに、所定の深さのそれぞれの合計面積率から面積比を計算した。
<結晶粒径の測定>
ステンレス鋼板表面の平均結晶粒径の測定については、鋼板の表面を所定の深さまで湿式又は電解研磨して表出させた鋼板表面を、JIS G 0551:2013(結晶粒度の顕微鏡試験方法)における切断法に準拠して結晶粒度を任意に5点測定して平均値を求め、平均結晶粒径を算出した。さらに、所定の深さのそれぞれの平均結晶粒径から粒径比を計算した。
<平均r値とΔr値の測定>
平均r値、Δr値は、JIS Z 2254:2008(薄板金属材料の塑性ひずみ比試験方法)により測定した。JIS13号B引張試験片に所定の水準まで均一な塑性ひずみを与えたときの、引張変形前後の試験片の幅及び厚さの値からr値を計算することができる。さらに、引張試験片を圧延方向に対して、14.4%歪みを付与した後に、平行、45°方向、90°方向から幅及び厚さを測定し、それぞれの方向のr値(r0、r45、r90)を求めた後に、平均r値、Δr値の式に各r値を代入し算出した。
(孔食電位の測定)
孔食電位測定を、JIS G 0577に準拠して行い、孔食電位V‘c100は、電流値100μA/cmを超えるときの電位(V)として測定した。このときに、孔食電位が0.30V未満では、十分な耐孔食性が得られないとしてと、孔食電位が0.30V以上0.35V未満では、19Cr含有フェライト系ステンレス鋼(SUS304J1L)と同等の耐孔食性が得られているとして、孔食電位が0.35V以上では21Cr含有フェライト系ステンレス鋼、18-8オーステナイト系ステンレス鋼(SUS443J1、SUS304)と同等の耐孔食性が得られている耐孔食性を評価した。
Figure 2024058836000004
次に、本発明のステンレス鋼の耐食性、加工性について評価する。
評価方法を以下に説明する。併せて、その結果を表4に示している。
(加工性)
加工性の評価は、以下の手順で評価した。先ず、表2における発明例・比較例のそれぞれを板厚0.8mmで、直径80mmと直径90mmの円板(ブランク)を作製し、パンチ径:40mmで、絞り比(ブランク径÷パンチ径:80÷40=2.00、90÷40=2.25)2.00、2.25を行って、内径20mm、22.5mmのカップ状円筒深絞り品をそれぞれ2個作製した。次いで、作製した円筒深絞り品を冷凍庫で-45℃に冷却した。次に、冷凍庫から取り出した円筒深絞り品の胴部へ、重さ1kgの重りを高さ1mから落下させ、縦割れの発生の有無を評価する落重試験を行った。この落重試験の評価内容としては、2.00の絞り比で作製した円筒深絞り品で縦割れが発生した場合は「×(不可)」と、2.00の絞り比で作製した円筒深絞り品で縦割れが発生せず、2.25の絞り比で作製した円筒深絞り品で縦割れが発生した場合は「〇(良)」と、2.00および2.25の絞り比でそれぞれ作製した円筒深絞り品の両方で縦割れが発生しない場合は「◎(優)」として加工性を評価した。この場合、絞り比が大きいほど評価が厳しく、加工性が優位であることを示している。
(耐食性)
耐食性の評価方法について詳述する。幅方向50mm×圧延方向100mmの測定用試験片を切り出した後、測定用試験片の片側表面に#600湿式研磨を施した。次に、測定用試験片の3つの側面(幅方向の側面1つを除く)を樹脂(信越シリコーン株式会社製の一液縮合型RTVゴムKE44)で被覆した。次に、70mm×150mmのベークライト板の上に20mmφ×10mmのポリエチレン製チューブ2個を接着し、その上に測定用試験片の研磨を施していない表面を配置して接着した。このようにして得られたサンプルに対して塩乾湿複合サイクル試験(CCT)を行った。サンプルは、測定用試験片の表面が水平面に対して75°、且つ測定用試験片の樹脂で被覆されていない側面が下部となるようにしてCCT装置に配置し、5%塩水噴霧(35℃、2時間)、乾燥(60℃、25%RH、4時間)、湿潤(50℃、95%RH、2時間)を1サイクルとして3サイクル行った。その後、サンプルを水洗及び乾燥し、測定用試験片の表面における発銹面積率を評価した。
また、この評価において、レイティングナンバ(RN)が、8未満(発銹面積率が0.25%超えに相当)であれば耐食性に劣るとして「×」とし、RNが8以上(発銹面積率が0.25%以下に相当)であれば耐食性に優れているとして「〇」とし、RNが9.5以上(発銹面積率が0.05%以下に相当)であれば耐食性に非常に優れているとして「◎」と評価している。
なお、この発銹面積率の評価は、JIS Z 2371:塩水噴霧試験方法の「附属書JC(規定)レイティングナンバ方法」に準拠している。
Figure 2024058836000005
表4に示す結果から、発明例1~12のフェライト系ステンレス鋼板は、化学組成、式(1)、式(2)、式(3)の値いずれもが本発明の適正範囲を満たしており、孔食電位が0.25V以上で耐食性に優れすべて「〇」以上、かつ、加工性に優れすべて「〇」以上の良好であることが分かる。
それに対して、比較例1~13のフェライト系ステンレス鋼板を以下に説明する。
比較例1は、化学組成は本発明の範囲内であるが、製造方法において小径ロールのみによる冷間圧延で、結晶粒径はG1、G1/G2は本発明の範囲内であり、面積率の中でS2が0.3で本発明の範囲内であるが、S1/S2が1.1と低く、かつ、平均r値が「1.45」と低くいことから加工性が「×」と劣っていた。なお、孔食電位は0.35Vで、耐食性は「◎」で優れていた。
比較例2は、化学組成は本発明の範囲内であるが、製造方法において小径ロールのみによる2回冷間圧延で、結晶粒径はG1が25μmであり、G1/G2は0.90と本発明の範囲内であり、面積率の中でS2が0.6で本発明の範囲内であるが、S1/S2が1.1と低くいことからΔr値が「0.90」と高く、加工性が「×」と劣っていた。なお、孔食電位は0.35Vで、耐食性は「◎」で優れていた。
比較例3は、化学組成は本発明の範囲内であるが、製造方法において小径ロールのみによる冷間圧延で、結晶粒径はG1が25μmであり、G1/G2は0.75と本発明の範囲内であり、面積率の中でS2が0.35で本発明の範囲内であるが、S1/S2が1.1と低くいことからΔr値が「0.90」と高く、加工性が「×」と劣っていた。なお、孔食電位は0.35Vで、耐食性は「◎」で優れていた。
比較例4は、鋼中のC含有量が0.021質量%と高く、本発明の範囲外であるが、面積率の中でS2が0.25と低く、かつ、平均r値が「1.40」と低くいことから加工性が「×」と劣っていた。
比較例5は、鋼中のSi含有量が2.6%と高く、本発明の範囲外であることから、面積率の中でS2が0.25と低く、かつ、平均r値が「1.35」と低くいことから加工性が「×」と劣っていた。
比較例6は、鋼中のCrの含有量が23.2%と高く、面積率の中でS2が0.25と低く、かつ、平均r値が「1.35」と低くいことから加工性が「×」と劣っていた。
比較例7は、鋼中のMnの含有量が1.05%と高く、面積率の中でS2が0.25と低く、かつ、平均r値が「1.45」と低く、加工性が「×」と劣っていた。
比較例8は、鋼中のPの含有量が0.042%と高く、面積率の中でS1/S2が1.0と低く、結晶粒径はG1が31μmと大きいことから加工性が「×」と劣っていた。
比較例9は、鋼中のNの含有量が0.021%と高く、面積率の中でS2が0.25と低く、かつ、平均r値が「1.35」と低くいことから加工性が「×」と劣っていた。
比較例10は、鋼中のNbの含有量が0.41%と高く、面積率の中でS1/S2が1.1と低く、Δr値が「0.65」と高いことから加工性が「×」と劣っていた。
比較例11は、鋼中のTiの含有量が0.41%と高く、面積率の中でS1/S2が1.1と低く、結晶粒径はG1が35μmと大きく、かつ、G1/G2が1.05と大きく、Δr値が「0.75」と高いことから加工性が「×」と劣っていた。
比較例12は、化学組成が鋼中のSiの含有量が0.9%と低く本発明の範囲外である。孔食指数が19.0であったが、平均結晶粒径G1は31μmで本発明の範囲外であり、孔食電位は0.20Vで耐食性は「×」であった。
比較例13は、化学組成が鋼中のCrの含有量が12.8%と低く、Si、Moを多く含有させてPIを19.0としたが、平均r値が低いことから加工性が「×」と劣っていた。
これらの発明例1~12および比較例1~13の結果から、本発明の目標とした耐食性および加工性を得るためには、本発明で規定する化学組成の範囲と、合計面積率、面積比、平均結晶粒径、粒径比、平均r値とΔr値、孔食指数(PI)が本発明の範囲内にあることが重要であることがわかる。更に、微量元素であるB、Ni、Cu、V、W、Sn、Ca、Mg、Zr、Co、Ga、La、Y、Hf、REMの添加や、本発明で規定する好ましい製造方法は、耐食性および加工性の向上に有効である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.020%以下、
    Si:1.0%超2.5%以下、
    Mn:1.0%以下、
    P:0.040%以下、
    S:0.0030%以下、
    Cr:13.0%以上23.0%以下、
    Mo:0.50%以下、
    N:0.020%以下、および
    Al:0.20%以下を含有し、さらに、
    Nb:0.40%以下およびTi:0.40%以下の一方または双方を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系ステンレス鋼板であって、
    前記鋼板の板厚をtとし、前記鋼板の表面から、前記表面に平行な面が表出するように板厚方向に削り取って、前記鋼板の表面から前記板厚(t)の1/8の厚さに相当する面である第1面と、前記鋼板の表面から前記板厚(t)の1/4の厚さに相当する面である第2面とを順次表出させ、前記鋼板の表面の法線方向と前記第1面および前記第2面で測定される{111}面方位との角度差が±10°以下の方位を有する結晶粒の合計面積率を、それぞれS1およびS2とし、また、
    前記第1面および前記第2面における平均結晶粒径(μm)を、それぞれG1およびG2とするとき、
    S1およびS2と、G1およびG2は、下記に示す式(1)と式(2)の関係をそれぞれ満足する、耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
    式(1):S2≧0.3、かつ、S1/S2≧1.2
    式(2):G1≦30μm、G1/G2≦1.0
  2. 前記化学組成中のCr、SiおよびMoの各含有量(質量%)は、それぞれ[Cr]、[Si]および[Mo]で表すとき、下記の式(3)で表される孔食指数(PI)の関係式を満足する、請求項1に記載の耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
    式(3):PI=[Cr]+2[Si]+3[Mo]≧19.0
  3. 前記化学組成は、さらに、質量%で、
    B:0.0050%以下、
    Ni:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下、
    V:0.50%以下、
    W:0.50%以下、
    Sn:0.10以下、
    Ca:0.0100%以下、
    Mg:0.010%以下、
    Zr:0.50%以下、
    Co:0.50%以下、
    Ga:0.10%以下、
    La:0.10%以下、
    Y:0.10%以下、
    Hf:0.10%以下、および、
    REM:0.10%以下からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1または2に記載の耐食性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
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