JP2024058417A - 電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】繊維状物質を含む電極触媒層において、高い初期発電性能を発揮しながら、耐久性能も向上できるようにする。【解決手段】高分子電解質膜に接合して使用される電極触媒層20であって、触媒担持粒子21と、フッ素原子を含む高分子電解質22と、2種類以上の繊維状物質と、を含み、触媒担持粒子21は、担体と、担体に担持された触媒と、を含み、繊維状物質は、導電性繊維状物質23および非導電性繊維状物質24をそれぞれ1種類以上含み、担体の含有量を100質量部としたとき、導電性繊維状物質23の含有量が5質量部以上50質量部以下であり、非導電性繊維状物質24の含有量が5質量部以上20質量部以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池に関する。
年々増大する地球環境負荷への対策として、よりクリーンなエネルギー創出に対する需要が高まりつつある。燃料電池は、水素と酸素の化学反応によって電気エネルギーを生成し、水のみを排出する発電システムであり、燃料電池には、将来的なエネルギー源として高い期待が寄せられている。
燃料電池は、電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、固体高分子形、溶融炭酸塩形、及び固体酸化物形などに分類される。固体高分子形燃料電池は、室温付近で使用可能なことから、車載用電源や家庭据置用電源などへの幅広い活用が見込まれている。そのため、固体高分子形燃料電池の実用化に向けて、発電性能や耐久性の向上、コスト低減対策などについての研究開発が盛んに行われている。
固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜と、アノードである燃料極と、カソードである空気極とを備えている。高分子電解質膜の厚さ方向において、燃料極と空気極とが高分子電解質膜を挟んでいる。燃料極は、燃料ガスをプロトンと電子に分離する電極触媒層を有する。空気極は、高分子電解質膜を介して輸送されたプロトンを、酸素を含む酸化剤により酸化するとともに、外部回路から電子を受け取る電極触媒層を有する。燃料極及び空気極の電極触媒層は、白金系の貴金属などの触媒物質と、触媒物質を担持する担体、及び高分子電解質を含む。
固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極の各々の電極触媒層における高分子電解質膜と反対側の面にガス拡散層及びセパレーターを配置したものを基本構成である単セルとし、この単セルが複数積層されてなる。ガス拡散層は、導電性を有し、反応ガスを均一に拡散するための層である。セパレーターは、ガス流路及び冷却水流路を有するとともに電子を外部回路に取り出す役割を担う部材であり、ガス拡散層の外側に配置される。以下、高分子電解質膜の両面に燃料極、空気極が形成されたものを膜電極接合体という。
固体高分子形燃料電池は、燃料極に水素を含む燃料ガスが供給され、空気極に酸素を含む酸化剤ガスが供給されることにより、燃料極及び空気極において下記の式1及び式2に示す電極反応が生じ、発電する。
燃料極:H2→2H++2e-・・・(式1)
空気極:1/2O2+2H++2e-→H2O・・・(式2)
式1に示すように、燃料極に供給された燃料ガスが、燃料極の電極触媒層に含まれる触媒物質によりプロトンと電子に分離される。分離したプロトンは、燃料極の電極触媒層に含まれる加湿された高分子電解質及び高分子電解質膜を通って空気極に移動する。分離した電子は、燃料極から外部回路に取り出され、外部回路を通って空気極に移動する。式2に示すように、空気極では、酸化剤ガスと、燃料極から移動してきたプロトン及び電子とが反応して水が生成される。電子が外部回路を通ることにより電流が生じる。
ところで、燃料電池の電極触媒層は一般的に百μm以下の厚さの薄膜で形成されており、製造時に電極触媒層にヒビが生じる所謂クラックが問題として挙げられている。クラックが発生する事で、電極触媒層内のプロトン伝導経路や電子伝導経路が遮断され、発電性能や耐久性が低下する。この問題を解決するため、電極触媒層の結合強度を向上させる技術として特許文献1に開示される技術が知られている。
特許文献1では、親水性の炭素ウィスカーのような繊維状物質を電極触媒層に加えることにより、電極触媒層の結合強度を向上させている。
特許第4065862号
しかし、特許文献1に開示される電極触媒層を用いた従来の燃料電池には、初期発電性能および耐久性能の観点において改善の余地があった。
繊維状物質を電極触媒層内に加えると、繊維状物質上をプロトンが伝導出来ないため、電極触媒層内でのプロトン伝導抵抗が増大し、膜電極接合体の発電性能が低下することがある。特に、低加湿条件下では高分子電解質の含水率が低下することによりプロトン伝導抵抗が顕著に増大することがある。
一方、プロトン伝導性を向上するために電極触媒層内の高分子電解質の比率を高くすると、電極触媒層内の電子伝導性が確保されず、あるいは高分子電解質による保水により高電流密度での発電時に排出される水を系外に出すことができず、発電性能が低下する。
そのため、触媒層内の高分子電解質の量は少量に抑えながら、発電性能を発揮する必要がある。そこで、繊維状物質を添加した電極触媒層内の電子伝導経路とプロトン伝導経路を適切に構築する事が重要になる。
本発明の課題は、繊維状物質を含む電極触媒層を用いた固体高分子形燃料電池において、高い初期発電性能を発揮しながら、耐久性能も向上できるようにすることである。
我々は鋭意検討の末、電極触媒層内に複数の繊維状物質を含むことにより、プロトン伝導性と電子伝導性を両立できることを見出した。さらに、複数の繊維状物質の含有量がある範囲に存在する場合、高い初期発電性能を保ちながら、耐久性能を飛躍的に向上する事ができる知見を得るに至った。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、高分子電解質膜に接合して使用される電極触媒層であって、触媒担持粒子と、フッ素原子を含む高分子電解質と、2種類以上の繊維状物質と、を含み、前記触媒担持粒子は、担体と、前記担体に担持された触媒と、を含み、前記繊維状物質は、導電性繊維状物質および非導電性繊維状物質をそれぞれ1種類以上含み、前記担体の含有量を100質量部としたとき、前記導電性繊維状物質の含有量が5質量部以上50質量部以下であり、前記非導電性繊維状物質の含有量が5質量部以上20質量部以下である電極触媒層を提供する。
本発明の他の態様は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の厚さ方向両面に配置された一対の電極触媒層と、を備え、前記一対の電極触媒層のいずれか又は両方が本発明の一態様の電極触媒層である膜電極接合体を提供する。
本発明の他の態様は、本発明の一態様の電極触媒層を備えた膜電極接合体と、前記膜電極接合体の厚さ方向両面に配置された一対のガス拡散層と、前記膜電極接合体及び前記一対のガス拡散層を挟んで対向する一対のセパレーターと、を備える固体高分子形燃料電池を提供する。
本発明によれば、繊維状物質を含む電極触媒層内において、複数の繊維状物質の含有量をある規定の範囲で含有させることによって、固体高分子形燃料電池の高い初期発電性能を発揮しながら、耐久性能も向上する事が期待できる。
一実施形態の膜電極接合体を示す断面図である。 一実施形態の膜電極接合体を構成する電極触媒層の構造を模式的に示す図である。 一実施形態の電極触媒層に含まれる触媒担持粒子の構造を示す断面図である。 一実施形態の固体高分子形燃料電池を示す分解斜視図である。
図1から図4を参照して、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池の一実施形態を説明する。図面の各図は、理解を容易にするために適宜誇張して表現している。また、本発明の電極触媒層、膜電極接合体、固体高分子形燃料電池、及びそれらの製造方法の構成及び材料は、以下に記載する構成及び材料に限定されるものではなく、同様の機能を持つと類推される全ての材料及び構成を含む。
[膜電極接合体]
図1に示すように、膜電極接合体10は、高分子電解質膜11と、カソード側電極触媒層12Cと、アノード側電極触媒層12Aとを備えている。
高分子電解質膜11は、固体状の高分子電解質膜である。高分子電解質膜11は、例えば、プロトン伝導性を有する高分子材料によって形成されている。プロトン伝導性を有する高分子材料としては、例えば、フッ素系樹脂、炭化水素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、例えば、Nafion(デュポン社製、登録商標)、Flemion(AGC社製、登録商標)、Gore-Select(ゴア社製、登録商標)が挙げられる。炭化水素系樹脂としては、例えば、エンジニアリングプラスチック、及びスルホン酸基が導入されたエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
カソード側電極触媒層12Cは、カソードである空気極を構成する電極触媒層であり、高分子電解質膜11の片側の面に接合している。カソード側電極触媒層12Cは、高分子電解質膜11を介して輸送されたプロトンを、酸素を含む酸化剤により酸化するとともに、外部回路から電子を受け取るための層である。
アノード側電極触媒層12Aは、アノードである燃料極を構成する電極触媒層であり、高分子電解質膜11におけるカソード側電極触媒層12Cが接合する面の反対側の面に接合している。アノード側電極触媒層12Aは、燃料ガスをプロトンと電子に分離するための層である。
また、以下では、カソード側電極触媒層12C及びアノード側電極触媒層12Aを、単に「電極触媒層」と記載する場合がある。
[電極触媒層]
膜電極接合体10を構成するカソード側電極触媒層12C及びアノード側電極触媒層12Aは、いずれも、図2に示す構造の電極触媒層(以下、これを「第1電極触媒層」と称する)20である。なお、カソード側電極触媒層12C及びアノード側電極触媒層12Aのいずれか一方が第1電極触媒層20で、他方は図2とは異なる構造の電極触媒層(以下、これを「第2電極触媒層」と称する)であってもよい。
つまり、カソード側電極触媒層12C及びアノード側電極触媒層12Aの少なくとも一方が第1電極触媒層であることにより、初期発電性能および耐久性能を向上させる効果が得られる。なお、上記効果を高める観点から、カソード側電極触媒層12C及びアノード側電極触媒層12Aの一方のみを第1電極触媒層とする場合には、空気極を構成するカソード側電極触媒層12Cを第1電極触媒層とすることが好ましい。
(第1電極触媒層)
図2に示すように、第1電極触媒層20は、触媒担持粒子21と、高分子電解質22と、導電性繊維状物質23と、非導電性繊維状物質24とを含む。また、第1電極触媒層20は、任意成分として、燃料電池の電極触媒層に含有される公知のその他成分を含んでもよい。
<触媒担持粒子>
図3に示すように、触媒担持粒子21は、触媒21aと、触媒21aを担持する担体21bとを備えている。
触媒21aとしては、例えば、白金族に含まれる金属、白金族以外の金属、又はこれらの合金、酸化物、複酸化物、炭化物を用いることができる。白金族に含まれる金属としては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムが挙げられる。白金族以外の金属としては、例えば、金、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの合金は、触媒としての活性が高く、好適である。
なお、触媒担持粒子21を構成する触媒21aは、上記例の一種類のみであってもよいし、二種類以上の組み合わせであってもよい。
触媒21aの平均粒子径は、例えば、0.5nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上5nm以下であることがより好ましい。触媒21aの平均粒子径を0.5nm以上とすることにより安定性の低下を抑制できる。また、触媒21aの平均粒子径を20nm以下とすることにより活性の低下を抑制できる。
なお、本明細書では、粒度測定から求めた算術平均粒子径を平均粒子径と定義する。
担体21bとしては、導電性を有し、触媒21aに侵されず、かつ触媒21aを担持することが可能な物質を用いる。担体21bを構成する上記物質としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン等の炭素材料が挙げられる。
なお、触媒担持粒子21を構成する担体21bは、上記例の一種類のみであってもよいし、二種類以上の組み合わせであってもよい。
担体21bの形状は特に限定されるものではなく、例えば、粒子形状であってもよいし、繊維形状であってもよい。なお、触媒21aの表面で生じる電子を円滑に系外に伝達する観点において、担体21bは、その外表面に触媒21aを担持可能な形状であることが好ましい。
担体21bの平均粒子径は、例えば、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。担体21bの平均粒子径を10nm以上とすることにより、電極触媒層内に電子の伝導経路が形成されやすくなる。また、担体21bの平均粒子径を1000nm以下とすることにより、第1電極触媒層20の厚みが増大することによる抵抗増加を抑制できる。
<高分子電解質>
高分子電解質22としては、プロトン伝導性を有する物質を用いる。プロトン伝導性を有する物質としては、例えば、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質が挙げられる。フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製Nafion(登録商標)に代表されるテトラフルオロエチレン骨格を有するものが挙げられる。炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンが挙げられる。
なお、第1電極触媒層20を構成する高分子電解質22としては、上記例の一種類のみを使用してもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
第1電極触媒層20における高分子電解質の含有量は、例えば、第1電極触媒層20における担体21bの含有量を100質量部としたとき、40質量部以上140質量部以下であることが好ましい。
高分子電解質の含有量を40質量部以上とすることにより、プロトンの伝導経路が欠損することによるプロトン伝導性の低下を抑制することができる。その結果、第1電極触媒層20におけるプロトン伝導性及び電子伝導性のバランスを確保することが容易になる。高分子電解質の含有量を140質量部以下とすることにより、触媒担持粒子21の触媒21aを好適に露出させることができる。その結果、第1電極触媒層20における触媒活性が向上する。
<繊維状物質>
導電性繊維状物質23としては、触媒21aおよび高分子電解質22におかされないものがよく、かつ導電性を持つものが好適であり、例えば炭素繊維が好ましい。炭素繊維としては、例えば、VGCF(Vapor Grown Carbon Fiber)、CNT(Carbon Nano Tube)が挙げられる。導電性繊維状物質23により、電極触媒層にクラックが生じ難くなり、物理的な耐久性が向上する。また、導電性繊維状物質が第1電極触媒層内の電子伝導経路を補助するため、電気的な耐久性も向上する。
非導電性繊維状物質24としては、触媒21aおよび高分子電解質22におかされないものがよく、例えば高分子ポリマー繊維を用いる事ができる。高分子ポリマー繊維としては、例えば、イミド構造やアゾール構造などのアミン類の高分子ポリマーのナノファイバーが挙げられる。
非導電性繊維状物質24は、その材料の分子構造中に塩基性の官能基を含んで良い。これにより、高分子電解質22が非導電性繊維状物質24の周辺に存在し易くなる。塩基性の官能基を有する非導電性繊維状物質24としては、イミド構造やアゾール構造などを有する高分子ポリマー繊維などが挙げられる。
非導電性繊維状物質24中に塩基性官能基がある場合、高分子電解質22中に含まれるスルホニル基などの酸性のプロトン伝導部位が、酸塩基で結合することで非導電性繊維状物質24の周辺に高分子電解質22が存在し易くなる。水素結合に比べ、酸塩基の結合の方が結合力は強いため、非導電性繊維状物質24は塩基性の官能基を含んでいることが好ましい。
酸性の官能基としてはカルボニル基などが、塩基性の官能基としてはピリジンやイミドなどを含むアミン基が挙げられる。
すなわち、非導電性繊維状物質24としては、その分子構造中に窒素原子を含む塩基性官能基を有していることで、高分子電解質22が周辺に存在し易くなる。
導電性繊維状物質23、非導電性繊維状物質24の形状は特に限定されるものではなく、例えば、中空構造であってもよいし、中実構造であってもよい。
なお、第1電極触媒層20を構成する導電性繊維状物質23、非導電性繊維状物質24としては、それぞれ上記例の一種類のみを使用してもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、燃料電池において、電池反応の結果、電極触媒層内に生成される生成水の量は、化学反応の量に比例する。そのため、高電流密度で発電した場合、生成水の量は増大する。この生成水が十分に電極触媒層外に排水されないと、電極触媒層に滞留した生成水がガスの拡散経路を塞ぐ場合がある。この場合、反応ガスが活性点に到達できず発電性能が著しく低下する現象であるフラッディング(flooding)が生じる。
導電性繊維状物質23、非導電性繊維状物質24を第1電極触媒層20の構成材料とすることで、第1電極触媒層20の中に適度な空間が確保され、上記生成水の排水を促進できる一面も備える。
第1電極触媒層20における導電性繊維状物質23の含有量は、第1電極触媒層20における担体21bの含有量を100質量部としたとき、5質量部以上50質量部以下が好ましい。
導電性繊維状物質23の含有量を5質量部以上とすることにより、導電性繊維状物質23同士のネットワークが形成され、電極触媒層が形成しやすくなる。これにより、電極触媒層内における電子伝導経路の構築及び電極触媒層の構造的強化を十分に行うことができる。その結果、燃料電池の発電性能および耐久性能が向上する。導電性繊維状物質23の含有量を50質量部以下とすることにより、第1電極触媒層20の厚みが増大することによる抵抗増加を抑制できる。
第1電極触媒層20における非導電性繊維状物質24の含有量は、第1電極触媒層20における担体21bの含有量を100質量部としたとき、5質量部以上20質量部以下が好ましい。
非導電性繊維状物質24の含有量を5質量部以上とすることにより、非導電性繊維状物質24同士のネットワークが形成され、電極触媒層が形成しやすくなる。これにより、電極触媒層内におけるプロトン伝導経路の構築及び電極触媒層の構造的強化を十分に行うことができる。その結果、燃料電池の発電性能が向上する。非導電性繊維状物質24の含有量を20質量部以下とすることにより、第1電極触媒層20の厚みが増大することによる抵抗増加を抑制できる。
(第2電極触媒層)
第2電極触媒層としては、膜電極接合体に適用される公知の電極触媒層を用いることができる。第2電極触媒層としては、例えば、高分子ポリマー繊維(非導電性繊維状物質)を含まない点において第1電極触媒層20と相違し、その他の構成は、第1電極触媒層20と同様である電極触媒層が挙げられる。
なお、第1電極触媒層及び第2電極触媒層の構成成分に用いられる上記の材料に関して、カソード側電極触媒層12C用いられる場合の材料と、アノード側電極触媒層12Aに用いられる場合の材料は、同一であってもよいし、少なくとも一部が異なっていてもよい。
[固体高分子形燃料電池]
次に、膜電極接合体10を備える固体高分子形燃料電池の構成を説明する。以下では、固体高分子形燃料電池の一例として、単セルの固体高分子形燃料電池について説明する。固体高分子形燃料電池は、単セルの構成に限定されるものではなく、複数の単セルを備え、かつ複数の単セルが積層された構成であってもよい。
図4に示すように、固体高分子形燃料電池30は、膜電極接合体10と、一対のガス拡散層31a、31bと、一対のセパレーター32a、32bとを備える。
ガス拡散層31a、31bは、反応ガスを均一に拡散するための層である。ガス拡散層31aは、膜電極接合体10のカソード側電極触媒層12Cと対向するように配置される。ガス拡散層31bは、膜電極接合体10のアノード側電極触媒層12Aと対向するように配置される。一対のガス拡散層31a、31bは、膜電極接合体10の厚さ方向において膜電極接合体10を挟んでいる。
また、カソード側電極触媒層12C及びガス拡散層31aは、カソードである空気極を形成する。アノード側電極触媒層12A及びガス拡散層31bは、アノードである燃料極を形成する。
ガス拡散層31a、31bは、電子伝導性及びガス拡散性を有する材料により構成される。ガス拡散層31a、31bを構成する材料としては、例えば、ポーラスカーボン材を用いることができる。ポーラスカーボン材としては、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパー、不織布が挙げられる。
セパレーター32a、32bは、電子を外部回路に取り出す役割を担う部材であり、ガス拡散層31bの外側に配置される。一対のセパレーター32a、32bは、膜電極接合体10の厚さ方向において、膜電極接合体10及び一対のガス拡散層31a、31bを挟んでいる。
セパレーター32a、32bは、ガス流路33a、33b及び冷却水流路34a、34bを有している。ガス流路33a、33bは、反応ガスを流通させるための流路であり、セパレーター32a、32bにおけるガス拡散層31a、31bに対向する面に形成されている。冷却水流路34a、34bは、冷却水を流通させるための流路であり、セパレーター32a、32bにおけるガス拡散層31a、31bに対向する面と反対側の面に形成されている。
セパレーター32a、32bは、導電性及びガスに対する不透過性を有する材料によって形成される。セパレーター32a、32bを構成する材料としては、例えば、カーボン材料、金属材料が挙げられる。また、セパレーター32a、32bを構成する材料は、ある程度強度を持ち成形性の良いものであることが好ましい。
空気極を構成するガス拡散層31aに対向するセパレーター32aのガス流路33aには、反応ガスとしての酸化剤ガスが供給される。酸化剤ガスは、例えば、空気、酸素ガスである。燃料極を構成するガス拡散層31bに対向するセパレーター32bのガス流路33bには、反応ガスとしての燃料ガスが供給される。燃料ガスは、例えば、水素ガスである。
固体高分子形燃料電池30は、燃料極に水素を含む燃料ガスが供給され、空気極に酸素を含む酸化剤ガスが供給されることにより、燃料極及び空気極において下記の式1及び式2に示す電極反応が生じ、発電する。また、固体高分子形燃料電池は、ガス供給装置や冷却装置などの付随装置と組み合わせて用いられる。
燃料極:H2→2H++2e-・・・(式1)
空気極:1/2O2+2H++2e-→H2O・・・(式2)
[膜電極接合体の製造方法]
以下、膜電極接合体10の製造方法を説明する。
膜電極接合体10の製造方法は、触媒インクを調製する調製工程と、触媒インクを用いて電極触媒層を形成する形成工程とを有する。
(調製工程)
調製工程では、電極触媒層を構成する各成分を、分散媒を用いて混合することにより触媒インクを調製する。
分散媒は、電極触媒層を構成する各成分を分散できるものであれば特に限定されない。分散媒としては、例えば、水、アルコール、ケトン類又はその混合物が挙げられる。具体的には、水や、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイゾブチルケトン、メチルアミルケトン、ペンタノン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類を適宜使用することができる。
また、触媒インクには、電極触媒層を構成する各成分を良好に分散させるための分散剤が含まれていてもよい。分散剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、アルカノイルザルコシン、アルカノイルグルタミン酸塩、アシルグルタメート、オレイン酸・N-メチルタウリン、オレイン酸カリウム・ジエタノールアミン塩、アルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、特殊変成ポリエーテルエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸誘導体のアミン塩、特殊変成ポリエステル酸のアミン塩、高分子量ポリエーテルエステル酸のアミン塩、特殊変成リン酸エステルのアミン塩、高分子量ポリエステル酸アミドアミン塩、特殊脂肪酸誘導体のアミドアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホサクシネート、スルホコハク酸ジアルキル塩、1,2-ビス(アルコキシカルボニル)-1-エタンスルホン酸塩、アルキルスルホネート、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ポリナフチルメタンスルホネート、ポリナフチルメタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネート-ホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホネート、アルカノイルメチルタウリド、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸型界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、アルキルポリエトキシ硫酸塩、ポリグリコールエーテルサルフェート、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、硫酸化油、高度硫酸化油等の硫酸エステル型界面活性剤、リン酸(モノ又はジ)アルキル塩、(モノ又はジ)アルキルホスフェート、(モノ又はジ)アルキルリン酸エステル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、アルキルエーテルホスフェート、アルキルポリエトキシ・リン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、リン酸アルキルフェニル・ポリオキシエチレン塩、アルキルフェニルエーテル・ホスフェート、アルキルフェニル・ポリエトキシ・リン酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルフェニル・エーテルホスフェート、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、高級アルコールリン酸ジエステルジナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等のリン酸エステル型界面活性剤が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、ベンジルジメチル{2-[2-(P-1,1,3,3-テトラメチルブチルフェノオキシ)エトキシ]エチル}アンモニウムクロライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂トリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1-ヒドロキシエチル-2-牛脂イミダゾリン4級塩、2-ヘプタデセニルーヒドロキシエチルイミダゾリン、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩、アルキルピリジウム塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリアクリルアミドアミン塩、変成ポリアクリルアミドアミン塩、パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ジメチルヤシベタイン、ジメチルラウリルベタイン、ラウリルアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、アミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、3-[ω-フルオロアルカノイル-N-エチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、N-[3-(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチレンアンモニウムベタインが挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールヤシアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコール牛脂アミン、ポリエチレングリコール牛脂プロピレンジアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、ポリビニルピロリドン、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステルが挙げられる。
上記の界面活性剤の中でも、アルキルベンゼンスルホン酸、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸型の界面活性剤は、カーボンの分散効果に優れる点、分散剤の残存による触媒性能の変化が生じ難い点から、分散剤として好適に用いることができる。
調製工程における分散方法は、触媒インクに含まれる各成分を分散できるものであれば特に限定されるものではなく、公知の分散方法を用いることができる。公知の分散方法としては、例えば、遊星型ボールミル、ビーズミル、又は超音波ホモジナイザーを用いた方法が挙げられる。また、触媒インクにおける各成分及び分散媒の配合比率は、塗工性や要求される発電性能に応じて適宜、選択することができる。
(形成工程)
形成工程では、調製工程にて得られた触媒インクを基材に塗布した後、分散媒を揮発させる乾燥処理を行うことにより、塗膜状の電極触媒層を形成する。基材としては、高分子電解質膜11、転写用基材、又はガス拡散層31a、31bを用いることができる。
基材に触媒インクを塗布する際の塗布方法は特に限定されるものではなく、スラリー状の混合物を基材上に均一な膜厚で塗布する場合に適用される公知の塗布方法を用いることができる。公知の塗布方法としては、例えば、ダイコート、バーコート、スプレーコート、ディッピング、スクリーン印刷が挙げられる。これらの中でも、比較的塗工できる触媒インクの粘度範囲が広い点、及び高い膜厚均一性で塗布することができる点から、ダイコート法を用いることが好ましい。
乾燥処理に用いる乾燥方法は、分散媒を揮発させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、オーブン、ホットプレート、遠赤外線を用いた方法等の公知の乾燥方法を用いることができる。また、乾燥処理における乾燥温度及び乾燥時間は、電極触媒層及び基材に用いた材料に応じて適宜選択することができる。
また、基材として転写用基材を用いた場合には、転写用基材に形成された電極触媒層を、転写用基材から高分子電解質膜11に転写する処理を行う。その際の転写方法としては、例えば、熱圧着による転写方法を用いることができる。
転写用基材は、形成された電極触媒層を離型させて、高分子電解質膜に転写できるものであれば特に限定されない。転写用基材としては、例えば、フッ素系樹脂フィルムを用いることができる。フッ素系樹脂フィルムは、転写性に優れている。フッ素系樹脂フィルムを構成するフッ素系樹脂としては、例えば、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
転写用基材として、高分子電解質膜11又は転写用基材を用いた場合には、高分子電解質膜11の両面に電極触媒層を設けることにより膜電極接合体10が得られる。そして、得られた膜電極接合体10と、ガス拡散層31a、31bと、セパレーター32a、32bとを積層することにより、固体高分子形燃料電池30が得られる。
また、転写用基材として、ガス拡散層31a、31bを用いた場合には、高分子電解質膜11と、電極触媒層が形成されたガス拡散層31a、31bとを積層することにより、ガス拡散層31a、31bを有する膜電極接合体10が得られる。そして、得られた膜電極接合体10にセパレーター32a、32bを積層することにより、固体高分子形燃料電池30が得られる。
なお、カソード側電極触媒層12Cを製造する際の電極触媒層の製造方法と、アノード側電極触媒層12Aを製造する際の電極触媒層の製造方法は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。なお、本発明は、実施例の構成に限定されるものではない。
[No.1(実施例)]
先ず、触媒担持粒子と、高分子電解質と、導電性繊維状物質と、非導電性繊維状物質と、分散媒を混合した混合液を分散処理することにより、触媒インクを調製した。
高分子電解質の配合量は、触媒担持粒子の担体含有量(以下、これを「担体換算の触媒担持粒子の配合量」と言う)100質量部に対して70質量部となる量とした。導電性繊維状物質の配合量は、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して5質量部となる量とした。非導電性繊維状物質の配合量は、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して5質量部となる量とした。
分散媒の配合量は、触媒インクの固形分濃度が10質量%となる量とした。分散処理は、直径3mmのジルコニアボール及び遊星型ボールミルを用いて600min-1(rpm)の回転速度で60分間、実施した。
触媒インクに用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
触媒担持粒子:白金担持カーボン触媒(カーボン:白金=1:1、質量比)
高分子電解質:フッ素系高分子電解質(富士フィルム和光純薬株式会社製「ナフィオン(登録商標)」の分散液)
導電性繊維状物質:炭素繊維(昭和電工パッケージング株式会社製「VGCF-H」)
非導電性繊維状物質:アゾール構造含有高分子ポリマー繊維(繊維径300nm×繊維長10μm)
分散媒:水と1-プロパノールの質量比1:1の混合液
次に、調製した触媒インクを、ダイコーターを用いて、高分子電解質膜(Dupont社製ナフィオン(登録商標)211)の片面に塗布することにより、縦50mm×横50mmの四角形状の塗膜を形成した。触媒インクの塗布量は、白金担持量が0.3mg/cm2となる量とした。次に、この塗膜に含まれる分散媒を80℃に加熱されたオーブン内で揮発させることにより、カソード側電極触媒層を形成した。
次に、高分子電解質膜におけるカソード側電極触媒層が形成された面の反対の面に対して、調製した触媒インクを塗布することにより、縦50mm×横50mmの四角形状の塗膜を形成した。触媒インクの塗布量は、白金担持量が0.1mg/cm2となる量とした。次に、この塗膜に含まれる分散媒を80℃に加熱されたオーブン内で揮発させることにより、アノード側電極触媒層を形成して、実施例1の膜電極接合体を得た。
[No.2(実施例)]
非導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して20質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.2の膜電極接合体を得た。
[No.3(実施例)]
導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して50質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.3の膜電極接合体を得た。
[No.4(実施例)]
導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して50質量部、非導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して20質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.4の膜電極接合体を得た。
[No.5(比較例)]
導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して2量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.5の膜電極接合体を得た。
[No.6(比較例)]
導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して60質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.6の膜電極接合体を得た。
[No.7(比較例)]
非導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して2質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.7の膜電極接合体を得た。
[No.8(比較例)]
非導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して30質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.8の膜電極接合体を得た。
[No.9(比較例)]
導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して2質量部、非導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して2質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.9の膜電極接合体を得た。
[No.10(比較例)]
導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して60質量部、非導電性繊維状物質の配合量を、担体換算の触媒担持粒子の配合量100質量部に対して30質量部となる量とした点以外は、No.1と同様の方法によって、No.10の膜電極接合体を得た。
[初期の発電性能の評価]
No.1~10の膜電極接合体の各々について、膜電極接合体を挟持するように、ガス拡散層であるカーボンペーパーを貼りあわせてサンプルを作製した。各サンプルを、発電評価セル内に設置し、燃料電池測定装置を用いて電流電圧測定を行った。測定時のセル温度は、80℃に設定した。加湿条件は、アノード側相対湿度を90%RH、カソード側相対湿度を30%RHとした。また、燃料ガスとして水素を用い、酸化剤ガスとして空気を用いた。この際に、水素を水素利用率が80%となる流量で流すとともに、空気を酸素利用率が40%となる流量で流した。なお、背圧は50kPaとした。
[耐久性能の評価]
耐久性の測定には、初期の発電性能の評価で用いたサンプルと同一のものを使用して、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が刊行する「セル評価解析プロトコル」に記載されている電位サイクル試験を行うとともに、その前後に上記と同様の発電評価を行うことにより、電流密度が1.5A/cm2のときの電圧降下量を評価した。
測定された各膜電極接合体の初期の発電性能および耐久性能を表1に示す。なお、「電流密度が1.5A/cm2のときの電圧が0.65V以上であること」と、「耐久試験後の電流密度1.5A/cm2における電圧低下量が100mV以内であること」の両方を満たすことで、初期発電性能が重視される乗用車および耐久性能が重視される商用車双方への適用が可能となる。よって、表1においては、電流密度が1.5A/cm2のときの電圧が0.65V以上である場合を「〇」、同電圧が0、65V未満である場合を「×」で示すとともに、耐久試験後の電流密度1.5A/cm2における電圧低下量が100mV以内のものを「〇」、100mV以上であるものを「×」で示している。
Figure 2024058417000002
表1に示すように、本発明の一態様の構成(担体の含有量を100質量部としたとき、導電性繊維状物質の含有量が5質量部以上50質量部以下であり、非導電性繊維状物質の含有量が5質量部以上20質量部以下)を満たすNo.1~4では、初期の発電性能および耐久性能において良好な結果(初期発電性能が重視される乗用車および耐久性能が重視される商用車双方への適用が可能となる)となった。
導電性繊維状物質の含有量が5質量部より少ないNo.5では、耐久性能において必要な性能が発揮できない結果となった。
導電性繊維状物質の含有量が50質量部より多いNo.6では、初期の発電性能において必要な性能が発揮できない結果となった。
非導電性繊維状物質の含有量が5質量部より少ないNo.7では、初期の発電性能において必要な性能が発揮できない結果となった。
非導電性繊維状物質の含有量が20質量部より多いNo.8では、初期の発電性能において提示した性能に達しなかった。
導電性繊維状物質の含有量が5質量部より少ないとともに、非導電性繊維状物質の含有量も5質量部より少ないNo.9では、初期の発電性能および耐久性能ともに必要な性能が発揮できない結果となった。
導電性繊維状物質が50質量部より多いとともに、非導電性繊維状物質の含有量が20質量部より多いNo.10では、初期の発電性能において必要な性能が発揮できない結果となった。
No.1~4の結果から、導電性繊維状物質および非導電性繊維状物質の含有量が本発明の一態様の構成を満たす場合は良好な発電性能が得られることが分かった。また、No.5およびNo.9の結果から、導電性繊維状物質の添加量が本発明の一態様の構成より少ない場合は、良好な耐久性能が得られないことが分かった。さらに、No.6,7,8,10の結果から、導電性繊維状物質の含有量が本発明の一態様の構成より多い場合、あるいは非導電性繊維状物質の含有量が本発明の一態様の構成外の場合、良好な発電性能が得られない事が分かった。
この事から、この効果が得られるメカニズムは以下のように推測される。導電性繊維状物質は電極触媒層内の電子伝導性を向上するために、非導電性繊維状物質は電極触媒層内のプロトン伝導性を向上するために含有され、導電性繊維状物質が本発明の一態様の構成より少ない場合は、耐久試験時に劣化する担体の電子伝導性を導電性繊維状物質による補填ができず、耐久性が低下し、導電性繊維状物質が本発明の一態様の構成より多い場合は、電子伝導性の補填はできるものの、膜厚が厚くなりすぎることによる抵抗により、初期発電性能が低下する。
一方、非導電性繊維状物質が本発明の一態様の構成より少ない場合は、プロトン伝導性の構築を補助できず、初期発電性能が低下し、非導電性繊維状物質が本実施形態より多い場合は、膜厚が厚くなりすぎることによる抵抗により、初期発電性能が低下する。即ち、導電性繊維状物質と非導電性繊維状物質の含有量が本発明の一態様の構成を満たす場合に、適切な電子伝導性とプロトン伝導性の補助がなされ、初期発電性能と耐久性能の向上の両立につながるものと考えられる。
以上の説明により、繊維状物質を含む電極触媒層内において、複数の繊維状物質の含有量を本発明の一態様の構成の範囲で含有させることによって、高い初期発電性能を発揮しながら、耐久性能も向上する事ができる事が示された。
10…膜電極接合体
11…高分子電解質膜
12C…カソード側電極触媒層
12A…アノード側電極触媒層
20…第1電極触媒層
21…触媒担持粒子
21a…触媒
21b…担体
22…高分子電解質
23…導電性繊維状物質
24…非導電性繊維状物質
30…固体高分子形燃料電池
31a、31b…ガス拡散層
32a、32b…セパレーター
33a、33b…ガス流路
34a、34b…冷却水流路

Claims (3)

  1. 高分子電解質膜に接合して使用される電極触媒層であって、
    触媒担持粒子と、フッ素原子を含む高分子電解質と、2種類以上の繊維状物質と、を含み、
    前記触媒担持粒子は、担体と、前記担体に担持された触媒と、を含み、
    前記繊維状物質は、導電性繊維状物質および非導電性繊維状物質をそれぞれ1種類以上含み、
    前記担体の含有量を100質量部としたとき、前記導電性繊維状物質の含有量が5質量部以上50質量部以下であり、前記非導電性繊維状物質の含有量が5質量部以上20質量部以下である電極触媒層。
  2. 高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の厚さ方向両面に配置された一対の電極触媒層と、を備え、
    前記一対の電極触媒層のいずれか又は両方が請求項1記載の電極触媒層である膜電極接合体。
  3. 請求項2に記載の膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体の厚さ方向両面に配置された一対のガス拡散層と、
    前記膜電極接合体及び前記一対のガス拡散層を挟んで対向する一対のセパレーターと、
    を備える固体高分子形燃料電池。
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