JP2024049984A - 建具シート - Google Patents

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Abstract

【課題】湿気の過度な透過が抑制され、かつ通気性が軽減された建具シートを提供する。【解決手段】課題は、セルロース微細繊維と当該セルロース微細繊維よりも平均繊維径が大であるパルプ繊維を有し、前記セルロース微細繊維の平均繊維径が3~500nmであり、坪量が45~150g/m2である、ことを特徴とする建具シートによって解決される。【選択図】なし

Description

本発明は、建具シートに関するものである。
建具シートに使用される素材には、従来より靭皮繊維や木質パルプ等の植物繊維のほか、レーヨンやプラスチック繊維等の化学繊維がある。これらの素材からなる建具シートは、紙や不織布で構成されていたり、紙や不織布のほか、プラスチックシートが積層されて構成されていたりする。建具シートに求められる機能としては、日光を適度に遮る機能や、室内外の緩やかな換気を行う機能、湿度調節機能等を挙げることができる。特に、内外の緩やかな換気を行う機能は、建具シートの通気性に関係する。通気性が高い建具シートであれば、換気がスムーズに行われる反面、室内の保温性が乏しくなる。他方、通気性が低いものであれば、換気が緩やかであるとともに、室内の保温性が高まる。
通気性が低い建具シートとしては、障子紙や壁紙、ふすま紙等を挙げることができ、これらのうち障子紙や壁紙は、自動車等の交通量が多い道路に面した部屋に設置することで空気汚染物質を遮断する作用があり、障子紙やふすま紙は、台所とそれに隣接する空間を遮るように設置することで臭いを遮断したり、冷暖房効率を高めたりする作用がある。また、建具シートは、生活空間に設置されることから意匠性が求められる場合がある。
建具シートに関する技術として、特許文献1は、障子紙と透明プラスチックフィルムを接着剤を用いてラミネートしてある障子用紫外線防止シートに関する技術を開示している。また、特許文献2は、発泡プラスチックフィルムの両面に、接着剤層を介して紙又は不織布を貼り合せた障子紙に関する技術を開示している。
特許文献1のシートによれば、気密性を向上させることができ、冷暖房を完備した近代の家屋に適した障子を提供することができるとしているが、プラスチックフィルムがシート内部にラミネートされているので、建具シートに求められる湿度調節機能が損なわれるおそれがある。また、紙とプラスチックフィルムが接着剤によって接着されており、当該接着剤によって不快な臭いや健康被害を引き起こす懸念もある。
また、特許文献2の障子紙によれば、障子紙としての風合い及び強度を持たせつつ、透光性、断熱性及び遮熱性をバランスよく持たせることができるとしているが、障子紙内部に発泡プラスチックフィルムの層が内部に設けられているので、通気性がほぼないものの、湿気を過度に透過させるおそれがある。
意匠性については、特許文献1や2では特筆すべき言及がなされていない。
特開2005-139668号公報 特開2015-003506号公報
このような背景から、本発明が解決しようとする課題は、湿気の過度な透過が抑制され、かつ通気性が軽減された建具シートを提供することにある。
上記課題を解決するための手段として、次の態様を掲げることができる。
(第1の態様)
セルロース微細繊維と当該セルロース微細繊維よりも平均繊維径が大であるパルプ繊維を有し、
前記セルロース微細繊維の平均繊維径が3~500nmであり、
坪量が45~150g/m2である、
ことを特徴とする建具シート。
この態様の建具シートは、平均繊維径の異なるセルロース微細繊維とパルプ繊維を有するので、パルプ繊維が相互に分散されてネットワーク構造が形成され、その形成されたネットワーク構造の空隙にセルロース微細繊維が入り込み易い構造になっているものと推測される。また、建具シートの坪量が上記範囲となっていることで、パルプ繊維からなる従来の建具シートではパルプ繊維間の空隙を容易に透過できた空気が、本態様では、セルロース微細繊維によって一部遮られる。また、調湿性を有するセルロース微細繊維によって、湿気の過度な透過も抑制される効果を奏する。また、この態様の建具シートは、セルロース微細繊維とパルプ繊維が混合されてなるものであり、シート全体からは太い繊維が目認でき、濃淡や色味が不均一な意匠性を有するものとなっている。
上記のほか、好ましい態様を次に示す。
(第2の態様)
さらに、無機填料を含む、
第1の態様に記載の建具シート。
(第3の態様)
比破裂強さが1.0~4.0kPa・m2/gである、
第1の態様に記載の建具シート。
(第4の態様)
透気度(高圧)が500~200000秒/10mL、かつ透湿度が1000~6000g/m2/24hである、
第1の態様に記載の建具シート。
(第5の態様)
建具シートの比引張強さ(縦)が25~90N・m/gである、
第1の態様に記載の建具シート。
(第6の態様)
プラスチックフィルムを有しない、
第1の態様に記載の建具シート。
(第7の態様)
障子紙、壁紙、ふすま紙に用いられる、
第1の態様に記載の建具シート。
(第8の態様)
前記セルロース微細繊維と前記パルプ繊維の質量比が、固形分基準で50:50~99:1である、
第1の態様に記載の建具シート。
本発明によると、湿気の過度な透過が抑制され、かつ通気性が軽減された建具シートとなる。
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本実施形態の建具シートは、セルロース微細繊維と当該セルロース微細繊維よりも平均繊維径が大であるパルプ繊維を有してなる。以下、順に説明する。
(パルプ繊維)
本実施形態のパルプ繊維は、平均繊維長が、200~5000μm、好ましくは400~3500μm、より好ましくは500~2000μmである。パルプ繊維の平均繊維長が5000μmを超過すると、パルプ繊維同士の絡み合いが大きくなり、パルプ繊維間に形成される空隙をセルロース微細繊維で被覆できなくなる結果、過度に通気性の高い建具シートとなってしまう。他方、パルプ繊維の平均繊維長が200μm未満だと、セルロース微細繊維との繊維長における違いが僅少なので、シート生産時に脱水性が悪くなり、生産効率に劣る。
パルプ繊維の平均繊維長は、JIS P8226-2:2011「パルプ光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法」で測定した長さ加重平均繊維長をいう。
パルプ繊維の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、10~100μm、好ましくは10~80μm、より好ましくは10~60μmである。パルプ繊維の平均繊維径が100μmを超過する繊維は太く、物理的な繊維の絡み合いが少なくなり、強度の小さい建具シートになる。他方、パルプ繊維の平均繊維径が10μm未満だと、物理的な繊維の絡み合いが多く、パルプ繊維が適度に分散されていない建具シートになるおそれがある。
パルプ繊維の平均繊維径は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」を使用し測定することができる。
パルプ繊維は、未叩解であっても叩解してもよく、フィブリル化率が0~85%、好ましくは0~70%、より好ましくは0~50%である。当該フィブリル化率が85%を超過すると、繊維の絡み合いが多くなり、パルプ繊維の分散性に乏しい建具シートになるおそれがある。
パルプ繊維のフィブリル化率の測定は、後述するセルロース微細繊維のフィブリル化率の測定と同様の操作手順で測定した値である。
パルプ繊維のフィブリル化率は、叩解の方式(例えば、粘状叩解やカッティング叩解等)その他の様々な条件によって調節することができる。具体的には、叩解の方式の他、例えば、叩解に用いる刃の大きさ、形状や角度、ビッカース硬度、クリアランス等の装置特性に関する条件、叩解を行う際の濃度や温度、pH等の工程変数に関する条件によって、フィブリル化率を調節することができる。
パルプ繊維は、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等の叩解機を用いて叩解することができる。叩解の手法としては、パルプ繊維を第1叩解機に供給して、叩解処理されたパルプ繊維を、さらに第2叩解機に供給して叩解処理をして、2回叩解処理されたパルプ繊維を得る手法を挙げることができる。この手法によれば、供給されるパルプ繊維が全体的に叩解がなされる。
前述のように叩解処理は、2回又は3回以上行うようにしてもよい。
パルプ繊維のカッパー価は、0.5~70であるのが好ましく、0.5~50であるのがより好ましく、0.5~30であるのが特に好ましい。カッパー価は、パルプ繊維中の樹脂分量、主にリグニン量を示す指標であり、この値が高いほど樹脂分量が多いことになる。また、樹脂分はウェブ形成工程において添加剤と結合して塊状化すると、繊維相互の結合を阻害して、シートの強度を低下させるおそれがある。そこで、建具シートの製造おいては、カッパー価を上記範囲に抑えることで、JIS P3401に規定する引張強さが達成される。
本実施形態においてカッパー価とは、パルプ繊維について、JIS-P8211に準じて測定した値をいう。
カッパー価が高くなるとパルプ製造で発生する廃棄物量が減るため、カッパー価が高いパルプ繊維を用いると、環境負荷が低減する。また、カッパー価が高いパルプ繊維を用いると、パルプ繊維に含まれる樹脂分が、添加剤(例えば、歩留まり向上剤や紙力増強剤)と同様の機能を発揮するため、添加剤の使用量を低減することができる。ただし、パルプ繊維のカッパー価が上記範囲を超えると、引張強さに乏しい建具シートになる可能性がある。
カッパー価を上記の好ましい範囲に調節し易いパルプ種としては、特に限定されないが、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプが好適である。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
リグニン含有量の多い原料パルプとして特に機械パルプを例示することができる。機械パルプの具体例としては、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等を示すことができ、これらの中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
本実施形態の建具シートに用いられるパルプ繊維としては、化学パルプが好ましい。化学パルプは相対的に高強度であるので、化学パルプを有する建具シートも強度に優れたものとなる。また、光を適度に透過させる観点からは、白色パルプが好ましく、例えば、広葉樹晒クラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプを挙げることができる。
さらに、意匠性を持たせる観点からは、太繊維又は長繊維である広葉樹晒クラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプをパルプ繊維に用いられるパルプとして挙げることができる。これらパルプをパルプ繊維の原料とし、セルロース微細繊維と混合して製造された建具シートであれば、外観上、シート表面に太い繊維や長い繊維を目認することができ、また、当該パルプ繊維によってシート表面に形成された凹凸を確認でき、意匠性に富んだものとなる。このような意匠性を有する建具シートは、パルプ繊維の多くが相互に絡み合った状態のパルプ繊維スラリーとセルロース微細繊維スラリーを混合した混合スラリーを、原料として製造することで得ることができる。この場合、パルプ繊維として、広葉樹晒クラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプを用いると、意匠性が際立つ建具シートとなる。ただし、パルプ繊維相互の絡み合いが多すぎると、通気孔を有する建具シートとなってしまう懸念がある。パルプ繊維相互の絡み合いの度合いは、例えば、パルプ繊維スラリーを撹拌する等により調節することができる。なお、建具シートがセルロース微細繊維のみからなるもの、又はパルプ繊維のみからなるものであれば、上記の意匠性が際立たないおそれがある。
パルプ繊維として、リグニンを所定濃度含有するパルプ繊維とそれ以外のパルプ繊維(例えば、広葉樹晒クラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプ)を含有させることで、リグニンによる茶色の部分と白色の部分が混在する建具シートが得られ、これも意匠性を有する建具シートといえる。
パルプ繊維のフリーネスは、100~750ccとするのが好ましく、200~700ccとするのがより好ましく、300~650ccとするのが特に好ましい。当該フリーネスを上記範囲にすることで、パルプ繊維が相互に絡み合い、空隙が形成されるので、セルロース微細繊維が当該空隙に入り込みやすいものとなる。
本形態において、フリーネスとは、JIS P8121に規定されるカナダ標準形ろ水度試験機を用いて測定した値をいう。
(セルロース微細繊維)
本形実施態のセルロース微細繊維について、詳細に説明する。
本形態においてセルロース微細繊維は、セルロース繊維の水素結合点を増やし、もってシートの強度を向上する役割を有する。セルロース微細繊維は、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができ、化学処理、機械処理等公知の処理手法で製造することができる。原料となるセルロース繊維としては、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、植物繊維であるパルプ繊維(原料パルプ)を使用するのが、経済的コストがかからず好ましい。
セルロース微細繊維の原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。古紙パルブ以外のパルプは、古紙パルプよりもセルロース繊維の純度が高く、セルロース繊維以外の夾雑物が少ないので好ましい。セルロース繊維の純度が高いパルプから得られたセルロース微細繊維は、流動性や被膜形成性に優れる。
なお、以上の各種原料パルプの形態は、特に限定されないが、例えば、セルロース系パウダーなどといわれる粉砕物の形態であってもよい。近年ではオーガニック成分含有の建具の需要が増加傾向にあるため、特に、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプが好適である。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
化学パルプは、リグニン含有量が少なく、かつ純度が相対的に高いため、解繊が容易である。純度が高いと、解繊したときに繊維径及び繊維長の統計的分散が小さい、すなわち繊維径及び繊維長のばらつきが小さいセルロース微細繊維となるので好ましい。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
本実施形態の建具シートに用いられるパルプ繊維としては、化学パルプが好ましい。化学パルプは相対的に高強度であるので、化学パルプを有する建具シートも強度に優れたものとなる。また、光を適度に透過させる観点からは、白色パルプが好ましく、例えば、広葉樹晒クラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプを挙げることができる。
セルロース微細繊維の解繊に先立って、解繊の前処理として、化学的な手法によってセルロース微細繊維(原料パルプ)を処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化やTEMPO触媒による酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)、リンオキソ酸によるエステル化(化学的処理)等を例示することができる。
解繊に先立って上記に掲げる前処理を施すと、解繊し易くなり、セルロース微細繊維が均質性に優れるものとなる。具体的には、前処理をすることにより、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、セルロース微細繊維への解繊に要するエネルギーを低減することができ、解繊されたセルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、建具シートにおけるセルロース微細繊維の分布に直結し、建具シートの均質性の向上に資する。ただし、前処理は、セルロース微細繊維のアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
なお、化学的な変性処理(化学修飾処理)を原料パルプに施して解繊すると、平均繊維径の相対的に小さいセルロース微細繊維が生成される。本実施形態の建具シートは、セルロース微細繊維を有するものであるが、そのセルロース微細繊維は、化学的な変性処理がなされていないものであってもよいし、化学的な変性処理がなされているものであってもよい。
セルロース微細繊維の一部分が化学的に変性されたものと、残りの部分が化学的に変性されていないものとの混合であってもよい。化学的な変性がなされていないセルロース微細繊維と化学的な変性がなされたセルロース微細繊維が混合されたセルロース微細繊維は、平均繊維径の大きいものと平均繊維径が小さいものが混在するので、当該混合されたセルロース微細繊維を有する建具シートは、セルロース微細繊維の分散性に優れたものとなる。
建具シートに含まれるセルロース微細繊維が前記混合されたセルロース微細繊維である場合は、セルロース微細繊維全体に占める、化学的な変性がなされていないセルロース微細繊維の百分率を50~99%とすると、建具シートにおけるパルプ繊維で形成された空隙に、化学的な変性がなされたセルロース微細繊維と化学的な変性がなされていないセルロース微細繊維が入り込み、透湿性を調整できるため好ましい。
前処理の一例として、リンオキソ酸によるエステル化処理について、詳細に説明する。原料パルプをリンオキソ酸によるエステル化(化学的修飾)を施す処理を行うと、原料パルプを微細化して製造されるセルロース微細繊維は、アスペクト比が大きく強度に優れ、光透過度及び粘度が高いものとなる。リンオキソ酸によるエステル化は、特開2019-199671号公報に掲げる手法で行うことができる。リンオキソ酸によりエステル化されたセルロース微細繊維の一例を次記に示す。セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されてリンオキソ酸でエステル化されており、構造式(1)に示す官能基の導入量が、セルロース繊維1gあたり0.5mmоl以上、好ましくはセルロース繊維1gあたり1.0mmоl以上、より好ましくはセルロース繊維1gあたり1.5mmоl以上であると、解繊が容易であり、統計的分散が小さいセルロース微細繊維となり好ましい。
〔構造式(1)〕
Figure 2024049984000001
構造式(1)において、a,b,m,nは自然数である。
A1,A2,・・・,AnおよびA’のうちの少なくとも1つはOであり、残りはR、OR、NHR、及び、なしのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。αは有機物又は無機物からなる陽イオンである。このセルロース微細繊維は光透過度及び粘度が極めて高いものである。
リンオキソ酸によるエステル化の反応は、セルロース繊維に、リンオキソ酸類及びリンオキソ酸金属塩類の少なくともいずれか一方を含む添加物からなるpH3.0未満の溶液を添加し、加熱し、解繊することで進行する。
添加物としては、例えば、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等を使用することができる。これらの添加物は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
セルロース繊維の全部又は一部に化学的な変性処理を施す手法の一例として、特に亜リン酸を導入してエステル化する手法を挙げることができる。この手法でセルロース繊維をエステル化して解繊することで、次記の構造式(2)がセルロース繊維に導入された、亜リン酸エステル化セルロース微細繊維を得ることができる。
〔構造式(2)〕
Figure 2024049984000002
αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
亜リン酸が導入されてエステル化されたセルロース繊維は、エステル基中のO原子が電子(例えば、不対電子)を複数有し、マイナスに帯電して極性を帯びている。このO原子を有するセルロース繊維は、相互に電気的に反発し合い、結果、解繊され易いものとなる。また、解繊された亜リン酸エステル化されたセルロース微細繊維は、相互に反発し合い、分散液中において分散性に優れたものとなる。さらに、分散液の媒体がプロトン性媒体であれば、水素結合等の相互作用により、この亜リン酸エステル化されたセルロース微細繊維が高い分散性を有するものとなる。
この亜リン酸エステル化されたセルロース微細繊維のスラリーとパルプ繊維スラリーとの混合スラリーは、当該セルロース微細繊維の優れた分散性の作用により、パルプ繊維も分散された状態が維持されるので、当該混合スラリーを原料として製造された建具シートは、局所的な密度差の少ない良質なものとなる。
次に前処理の一例として酵素処理について説明する。酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、セルロース繊維の解繊がより容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ-ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
酵素処理を行う際のセルロース繊維に対する酵素の添加量は、例えば、セルロース繊維に対する酵素の添加量は、セルロース繊維を100質量%とすると、好ましくは0.1~3質量%と、より好ましくは0.3~2.5質量%、特に好ましくは0.5~2質量%である。
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0~6.9)であるのが好ましい。一方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1~10.0)であるのが好ましい。
酵素処理時の温度は、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、特に好ましくは40~60℃である。
次に、アルカリ処理の方法について、説明する。
アルカリ処理の方法としては、例えば、アルカリ溶液中に、セルロース繊維を浸漬する方法が存在する。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であっても、有機アルカリ化合物であってもよい。無機アルカリ化合物としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩等を例示することができる。また、アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等を例示することができる。
有機アルカリ化合物としては、例えば、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物及びその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を例示することができる。具体的には、例えば、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等を例示することができる。
アルカリ溶液の溶媒は、水及び有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)であるのが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であるのがより好ましい。
セルロース繊維を解繊するに先立って、機械処理や化学処理等による予備的な叩解を行ってもよい。予備的な叩解を行う場合は、原料パルプに対して、先ず化学的な変性処理を行い、その後、予備的な叩解を行い、最後に解繊処理を行うとよい。他方、原料パルプに対して、先ず予備的な叩解を行い、その後、解繊を行った後に、化学的な変性処理を行う手法もある。しかしながら、前者の方が、全体として製造にかけるエネルギーが少なくて済むという利点があり、効率的である。
セルロース繊維を解繊するにあたっては、当該セルロース繊維をスラリー状にしておくのが好ましい。このスラリーの固形分濃度は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは1~4質量%、特に好ましくは2~3質量%である。固形分濃度が上記範囲内であれば、効率的に解繊することができる。
セルロース繊維の解繊は、例えば、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、高速回転式ホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等のリファイナー、一軸混練機、多軸混練機、各種バクテリア等の中から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。ただし、セルロース繊維の解繊は、水流、特に高圧水流で微細化する装置・方法を使用して行うのが好ましい。この装置・方法によると、得られるセルロース微細繊維の寸法均一性、分散均一性が非常に高いものとなる。これに対し、例えば、回転する砥石間で磨砕するグラインダーを使用すると、セルロース繊維を均一に微細化するのが難しく、場合によっては、一部に解れない繊維塊が残ってしまうおそれがある。
セルロース繊維の解繊に使用するグラインダーとしては、例えば、増幸産業株式会社のマスコロイダー等が存在する。また、高圧水流で微細化する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)等が存在する。また、セルロース繊維の解繊に使用する高速回転式ホモジナイザーとしては、エムテクニック社製のクレアミックス-11S等が存在する。
原料パルプの解繊は、得られるセルロース微細繊維の各種物性等が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
セルロース微細繊維の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、0.5μm以下、好ましくは0.003~0.25μm、より好ましくは0.01~0.1μm、特に好ましくは0.02~0.08μmである。セルロース微細繊維の平均繊維径が0.5μmを上回ると、パルプ繊維相互の絡み合いによって形成される空隙に対して、セルロース微細繊維が太く、当該空隙に入り込みにくくなり、低密度の建具シートとなるおそれがある。
セルロース微細繊維の平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロース微細繊維の平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロース微細繊維の水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
セルロース微細繊維の平均繊維長(単繊維の長さ)は、上限が500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下であるとよい。セルロース微細繊維の平均繊維長の下限は、特に限定されない。しかしながら、同平均繊維長の上限が500μmを超過するセルロース微細繊維は、アスペクト比が大きく、繊維相互の絡み合いによる立体的なネットワーク構造が形成しやすい一方で、パルプ繊維相互によって形成される空隙に入り込みにくくなるおそれがある。
セルロース微細繊維の平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって任意に調整することができる。
セルロース微細繊維の平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
セルロース微細繊維(ただし、リンオキソ酸によりエステル化されたセルロース微細繊維を除く。)の保水度は、下限を200%以上、より好ましくは250%以上とするとよい。また、同保水度の上限を500%以下とするとよい。セルロース微細繊維の保水度が500%を超えると、製造時において、スラリーの乾燥が遅くなり、機器設備の汚れにもつながり、製品のムラや欠陥が発生するおそれがある。他方、同保水度が200%未満であるセルロース微細繊維は、繊維の解繊が不十分であり、通気性が低い建具シートにならないおそれがある。
セルロース微細繊維の保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
セルロース微細繊維のアスペクト比(軸比ともいう。(繊維長/繊維径))は、好ましくは10~150000、より好ましくは20~50000、特に好ましくは50~25000である。軸比が10未満であるセルロース微細繊維は、微粒子状に近く、セルロース微細繊維相互の絡み合いが乏しく、強度の低い建具シートになる。他方、軸比が150000を超えるセルロース微細繊維は細長く、パルプ繊維相互で形成される空隙に入り込みにくくなる。
セルロース微細繊維の結晶化度は、好ましくは50~90、より好ましくは55~88、特に好ましくは60~86である。当該結晶化度が50未満であると、製造される建具シートの強度が低くなるおそれがある。
結晶化度は、JIS K0131:1996の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、セルロース微細繊維は、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度はセルロース微細繊維全体における結晶質部分の割合を意味する。
セルロース微細繊維の擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロース微細繊維は、繊維長及び繊維径の均一性が高く、相互に分散性が優れたものとなる。
セルロース微細繊維のピーク値はISO-13320(2009)に準拠して測定する。より詳細には、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロース微細繊維の水分散液における体積基準粒度分布を調べる。そして、この分布からセルロース微細繊維の最頻径を測定する。この最頻径をピーク値とする。
上記単一のピークとなるセルロース微細繊維の粒径の擬似粒度分布のピーク値は、例えば300μm以下であるのが好ましく、200μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのが特に好ましい。ピーク値が300μmを超えると、均質な解繊がなされていないおそれがある。
セルロース微細繊維の粒径におけるピーク値、及び擬似粒度分布の中位径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
本実施形態のセルロース微細繊維は、リグニン含有量が20%以下、好ましくは0.5~20%、より好ましくは0.5~15%、好適には0.5~10%である。セルロース微細繊維に含まれるリグニンの含有量を変化させることによって、建具シートの白色度や不透明度を調節することができる。セルロース微細繊維におけるリグニン含有量が20%を超過すると、白色度が低く(黄色味が高く)なり、建具シートとしての用途が限定される場合がある。他方、当該リグニン含有率が0.5%未満だと建具シートの不透明度が低下する(透明に近づく)可能性があり、建具シートとして適さなくなる場合がある。
ところで、前述したようにカッパー価はパルプ中の樹脂分量、主にリグニン量を示す指標であり、パルプ繊維のスラリー及びセルロース微細繊維のスラリーのいずれにおいても同様である。そこで、パルプ繊維のカッパー価を0.5~70とし、かつセルロース微細繊維のリグリン含有量を0.5%~20%に調整すると、セルロース微細繊維の層形成が促進されるので、建具シートは、所定の強度を有しつつ、透気度に優れたものとなる。
セルロース微細繊維のリグニン含有量は、クラーソンリグニン法(TAPPI T-222 om-83)に準拠して行うことで測定した値である。
解繊して得られたセルロース微細繊維は、水系媒体中に分散させて分散液(スラリー)としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水分散液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
セルロース微細繊維の濃度を1.5質量%(w/w)とした場合における水分散液のB型粘度は、25℃かつ60rpmの条件で100~3,000cP、より好ましくは150~2,000cPとするとよい。当該B型粘度が100cP未満であると粘度が低すぎるため、セルロース微細繊維が建具シートの製造過程で使用するメッシュ状シートを透過し易くなってしまい、建具シートに占めるセルロース微細繊維の割合を所望の量に調節するのが困難になる。他方、当該B型粘度が3,000cPを超過すると、セルロース微細繊維スラリーとパルプ繊維スラリーを混ぜて混合スラリーとする過程で、パルプ繊維のフロックが十分に解れず、製造過程で得られる中間シートや最終製造物である建具シートに、パルプ繊維の凝集物ができてしまい、通気孔となってしまうおそれがある。
本形態においてB型粘度は、JIS Z8803:2011の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
セルロース微細繊維のパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは2~9cps、特に好ましくは3~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示しており、繊維そのものの強さにも影響し、分散液の状態の粘度そのものに影響する。
セルロース微細繊維のパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
本実施形態の建具シートは、セルロース微細繊維とパルプ繊維の質量比(セルロース微細繊維の質量:パルプ繊維の質量)が、固形分基準で好ましくは50:50~99:1、より好ましくは55:45~95:5、さらに好ましくは60:40~90:10である。パルプ繊維の質量に対するセルロース微細繊維の質量が、前記質量比の範囲より少ないと、パルプ繊維が多すぎるので、建具シートの透湿度が高くなってしまう。他方、当該質量比が99:1未満だと、セルロース微細繊維に対してパルプ繊維が少なすぎるので、建具シートが高密度化してしまい、扱いづらくなるおそれがある。
(建具シート)
本実施形態の建具シートは、セルロース微細繊維とパルプ繊維を有するものである。具体的には、建具シートは、セルロース微細繊維とパルプ繊維が混合されてシート状に形成されたものや、セルロース微細繊維とパルプ繊維が混合され、分散してシート状に形成されたものを例示できる。
建具シートを構成するセルロース微細繊維とパルプ繊維は、建具シートの用途によって、種々の機械パルプ、化学パルプを原料とすることができる。しかしながら、これらのパルプの中でも、化学パルプをセルロース微細繊維とパルプ繊維双方の原料とすると、強度の強い建具シートとなり好ましい。特に、パルプ繊維の原料及びセルロース微細繊維の原料として、針葉樹晒クラフトパルプ又は広葉樹晒クラフトパルプを用いると、白色又は白色に近い建具シートになる。
本実施形態の建具シートの物性を次に説明する。
建具シートは、坪量が好ましくは45~150g/m2、より好ましくは50~140g/m2、さらに好ましくは55~130g/m2である。当該坪量が150g/m2を超過すると、建具シートの気密性が高くなり過ぎてしまい、緩やかな換気がなされないおそれがある。他方、当該坪量が45g/m2未満だと、建具シートが光を透過し過ぎてしまい、空間を仕切る用途として用いにくくなる。
建具シートの厚みは、用途に応じて調節することができるが、好ましくは40~250μm、より好ましくは45~230μm、さらに好ましくは50~200μmである。本実施形態の建具シートは、パルプ繊維相互で形成される空隙にセルロース微細繊維が入り込んでいるため、従来の建具シートよりも強度が高い。そのため、建具シートの厚みが250μmを超過すると、曲げに対する抵抗が強く、輸送等を行う際の取り扱いが困難となる場合がある。他方、当該厚みが40μm未満だと、光を多く透過してしまうものとなる。
本実施形態の建具シートは、密度において従来の建具シートと大きく異なるという特徴を有する。この特徴により、建具シートを従来の使い方と異なる使い方をすることができると期待される。例えば、本実施形態の建具シートの坪量を、従来の建具シート(例えば、主な原料をパルプ繊維とする建具シート)の坪量と同程度となるように形成した場合、本実施形態の建具シートの厚みを薄く加工することができる。すなわち、密度において本実施形態の建具シートが従来の建具シートよりも高いものとなっている。本実施形態の建具シートの密度は、好ましくは0.45~1.50g/cm3、より好ましくは0.50~1.30g/cm3、さらに好ましくは0.55~1.20g/cm3である。本実施形態の建具シートに用いられるセルロース微細繊維の平均繊維長及び平均繊維幅が前述の範囲であれば、建具シートの密度を前記密度の範囲よりも高くするのは困難である。他方、本実施形態の建具シートの密度が0.45g/cm3よりも低い場合は、従来の建具シートの密度と同程度となってしまう。
本実施形態の建具シートに求められる、湿気の過度な透過が抑制され、かつ通気性が軽減される効果を奏する限り、当該建具シートの一方の面又は両面に別のシート状の層を配してもよい。配する層としては、紙や不織布を例示できる。前記紙としては、特に限定されないが、例えば坪量が30~100g/m2で、厚みが40~120μmのものがよく、パルプ繊維からなるものが好ましい。前記不織布としては、特に限定されないが、例えば坪量が5~60g/m2で、厚みが10~60μmのものがよい。前記不織布の構成繊維としては、公知のものを適宜使用することができ、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
前述のように建具シートに別のシート状の層を配する場合には、建具シートと層を接着することが望ましく、接着する場合の接着剤としては、例えばでん粉系接着剤、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ゴム系接着剤を挙げることができ、これらの中でも、でん粉系接着剤であれば揮発することに伴う不快な臭いが少なく、健康被害を引き起こすこともないので好ましい。また、上記別のシート状の層が不織布である場合は、建具シートと不織布をヒートシール等により熱融着させてもよい。
また、本実施形態の建具シートは、無機填料を含んでもよい。無機填料は、建具シートの製造途中で得られた中間シートに含浸させてもよいし、当該中間シートの一方の面又は両方の面に無機填料を含む層を設けてもよい。建具シートにおける無機填料の含有量は、例えば、5~30質量%であると好ましい。無機填料としては、二酸化チタン、シリカゲル、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化アルミニウム、シリカ、焼成クレー、合成ゼオライト等種々のものを、単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、炭酸カルシウム、マイカを含む層を設けることで、建具シートの不透明度や白色度を調節することができる。
本実施形態の建具シートは、建具であれば限定なく使用でき、例えば障子紙、壁紙、ふすま紙に用いることができる。建具シートを建具(例えば障子、ふすま)に張る場合、建具シートを建具に貼り付けるために接着剤を用いるとよい。当該接着剤としては、でん粉系接着剤、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ゴム系接着剤を挙げることができ、これらの中でも、でん粉系接着剤であれば揮発することに伴う不快な臭いが少なく、健康被害を引き起こすこともないので好ましい。
本実施形態の建具シートは、プラスチックフィルムを有しないものとすると、セルロース微細繊維の持つ調湿性が減殺されることなく発揮され好ましい。
本実施形態の建具シートの透気度(高圧)は、従来の建具シートの透気度(高圧)と比較して顕著に高い。従来の建具シートでは、透気度を高めるためにプラスチックフィルムの層を建具シート内部に設ける等の処置を採っていたが、この場合、プラスチックフィルムと紙との吸湿性の差等の原因により、長期使用で紙の層やプラスチックフィルムの層が変色したり、皺が形成されたりする不具合があった。この点について、本実施形態の建具シートは、セルロース微細繊維とパルプ繊維が混在された状態で形成されているので、隣接する層間における前記不具合が発生しにくいものとなっている。また、本実施形態の建具シートは、従来の建具シートと比較して、湿気の過度な透過が抑制されたものとなっている。
ここで、本実施形態の建具シートにおいては、透気度(高圧)が相対的に高く(すなわち、通気性が軽減され)、かつ透湿度が相対的に高くない(すなわち、湿気の過度な透過が抑制された)ものであることが好ましい。例えば、透気度(高圧)が高く、かつ透湿度も高いものである場合は、通気性が軽減され好ましい一方で、湿気が容易に建具シートを透過してしまうので、建具シートで閉じられた室内の湿気が室外へ容易に流れ、乾燥しやすくなる。また、透湿度が高くない場合であっても、透気度(高圧)が低いと、室内の湿気は保たれつつも、空気の透過が起こりにくく室内の保温性が乏しくなる。従来の建具シートは、例えばパルプ繊維からなるものであるので、透気度(高圧)が著しく低かった。また、パルプ繊維層とプラスチックフィルムが積層された建具シートは、透湿度が抑制されるものの透気度(高圧)が依然として低いままであった。
前述を踏まえ、本実施形態の建具シートは、好ましくは透気度(高圧)が500~200000秒/10mL、かつ透湿度が1000~6000g/m2/24hであり、より好ましくは透気度(高圧)が600~150000秒/10mL、かつ透湿度が1250~5500g/m2/24hであり、さらに好ましくは透気度(高圧)が700~100000秒/10mL、かつ透湿度が1500~5000g/m2/24hである。
本実施形態の建具シートでは、透気度(高圧)は、セルロース微細繊維とパルプ繊維との混合割合、坪量を変化させることで、調節することができる。
透気度(高圧)は、JIS P8117:2009:「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)-ガーレー法」に基づき、測定機器「熊谷理機工業株式会社 高圧型デンソメーター」を用いて測定した。
透湿度は、JAPAN TAPPI No.7:2000に準拠して測定した値であり、セルロース微細繊維とパルプ繊維との混合割合、坪量を変化させることで、調節することができる。
建具シートのISO不透明度は、好ましくは30~90%、より好ましくは35~85%、さらに好ましくは40~80%である。当該ISO不透明度が90%を超過すると、シートが光を遮り、採光性に劣るため好ましくない。他方、当該ISO不透明度が30%未満だと、光を多く透過し過ぎるため、室内空間を仕切る用途として不適当な場合がある。
平均繊維径が、可視光線の波長領域のうちの長波長領域の波長よりも小さいセルロース微細繊維が建具シートに含まれていると、建具シートを透過する光が増大するので、建具シートの不透過度が低くなる。したがって、本実施形態の建具シートは、従来のパルプ繊維からなる建具シートよりもISO不透明度が低くなる傾向にある。このようにISO不透明度が低い建具シートは、よりISO不透明度が高い基材と組み合わせて利用したり、光を多く取り入れることが望まれる空間へ利用したりすることができ、用途が限定されず幅広いニーズに対応できる。
また、本実施形態の建具シートは、ISO不透明度を低いものとしての利用に限らず、ISO不透明度をより高く調節した利用をすることもできる。本実施形態の建具シートのISO不透明度を従来の建具シートのISO不透明度に高めるためには、平均繊維径が相対的に大きなパルプ繊維を用いたり、リグニンを所定濃度含有するパルプ繊維を用いたりするとよい。ただし、所望の平均繊維径を超過するセルロース微細繊維を建具シートの原料の一つとして用いると、建具シートの透気度が大きく低下してしまうおそれがある。
ISO不透明度は、JIS P8149:2000に準拠して測定した値である。
建具シートのISO白色度は、好ましくは50~100%、より好ましくは55~95%、さらに好ましくは60~90%である。当該ISO白色度が50%を下回ると、もはや白いとは言えず、黄色味を強く帯びた建具シートといえる。パルプ繊維として化学パルプを用いた場合、白色度は、セルロース微細繊維よりもパルプ繊維の方が高い。建具シートのISO白色度は、パルプ繊維に用いるパルプの種類や、建具シートにおけるセルロース微細繊維とパルプ繊維の質量比、蛍光増白剤を含めること等で調節することができるが、この限りではない。
ISO白色度は、JIS P 8148:2018に準拠して測定した値である。
建具シートのベック平滑度は、例えば、0.1~100秒、好ましくは0.2~80秒、より好ましくは0.3~60秒である。
本実施形態においてベック平滑度は、JIS P8119:1998に準拠して測定した値である。
建具シートの破裂強さは、例えば、65~400kPa、好ましくは70~350kPa、より好ましくは75~300kPaである。また、破裂強さを坪量で除して算出された、建具シートの比破裂強さは、例えば、1.0~4.0kPa・m2/g、好ましくは1.1~3.8kPa・m2/g、より好ましくは1.2~3.6kPa・m2/gである。破裂強さ、特に比破裂強さが前述の範囲であれば、本実施形態の建具シートが、従来のものよりも、建具シートに垂直に加わる外力に対して破れにくく、耐久性を備えたものとなり好ましい。この点、従来の建具シートは、主な原材料をパルプ繊維とするものなので破れやすい。
本実施形態において破裂強さは、JIS P8113:2008「紙-破裂強さ試験方法」に準拠して測定した値である。
建具シートの引張強さ(縦)は、例えば、1.0~10.0kN/m、好ましくは1.2~9.0kN/m、より好ましくは1.5~8.0kN/mである。また、引張強さ(縦)を坪量で除して算出された、建具シートの比引張強さ(縦)は、例えば、25~90N・m/g、好ましくは27~85N・m/g、より好ましくは30~80N・m/gである。本実施形態の建具シートは、引張強さ(縦)、特に比引張強さ(縦)が前述の範囲であるので、従来のものより高強度であり、様々な建具に用いることができる。
「引張強さ(縦)」とは、JIS P8113:「紙及び板紙-引張特性の試験方法」に準拠して測定した値をいう。
建具シートのコッブサイズ度(2分)は、例えば、250g/m2以下、好ましくは5~240g/m2、より好ましくは8~220g/m2、好適には10~200g/m2である。同コッブサイズ度(2分)が250g/m2を超過すると、建具シートが吸水し易く、例えば水系接着剤を用いて他のシートや枠と接着させる際に変形を来すおそれがある。建具シートのコッブサイズ度(2分)は、建具シートに占める変性処理していないセルロース微細繊維の割合を変えることで調節することができる。
ただし、建具シートに用いられるセルロース微細繊維が、例えばセルロースのヒドロキシ基が亜リン酸エステルで置換された変性セルロース微細繊維である場合は、コッブサイズ度(2分)が高い値を示す傾向にある。これは、当該変性セルロース微細繊維自体が高アスペクト比を有し、セルロース表面にヒドロキシ基が多くあり、水分子の吸着性が高いことによるものと考えられる。
本実施形態のコッブサイズ度(2分)は、JIS P8140:1998「紙及び板紙-吸水度試験方法-コッブ法」に準拠して測定した値である。
建具シートにおける、パルプ繊維の平均繊維径に対するセルロース微細繊維の平均繊維径の割合((セルロース微細繊維の平均繊維径)/(パルプ繊維の平均繊維径))は、好ましくは0.00003~0.025、より好ましくは0.0001~0.001、さらに好ましくは0.0003~0.008である。当該割合が0.00003未満であったり、又は0.025を超過したりすると、パルプ繊維が相互に分散して形成されたネットワーク構造の空隙にセルロース微細繊維が入り込みにくくなり、湿気の過度な透過が抑制され、かつ通気性が軽減された建具シートとならないおそれがある。
(製造方法)
本実施形態の建具シートは、例えば次の通りに製造することができる。
[製法第1例]
(1)混合スラリーの調成
パルプ繊維スラリーとセルロース微細繊維スラリーを混合して混合スラリーを調成する。パルプ繊維スラリーは、パルプ繊維が固形分基準で1~5質量%含有されたものを用いるとよい。セルロース微細繊維スラリーは、セルロース微細繊維が固形分基準で1~5質量%含有されたものを用いるとよく、特にセルロース微細繊維が変性処理された変性セルロース微細繊維である場合は固形分基準で0.1~2質量%含有されたものを用いるとよい。
セルロース微細繊維の濃度が上記範囲を超過するセルロース微細繊維スラリーは、高粘度であり、パルプ繊維スラリーとの混合が困難な場合がある。他方、セルロース微細繊維の濃度が上記範囲を下回るセルロース微細繊維スラリーは、混合スラリーにしたときに、パルプ繊維がセルロース微細繊維に対して過剰になり、製造される建具シートが本発明に期待される効果を伴わないおそれがある。
パルプ繊維の濃度が上記範囲を超過するパルプ繊維スラリーは、取り扱いが困難である。他方、パルプ繊維の濃度が上記範囲を下回るパルプ繊維スラリーを用いると、後の工程である搾水処理で搾水に手間がかかる。
混合スラリー全体の質量に占める、パルプ繊維とセルロース微細繊維の合計の質量百分率は、固形分基準で、1.0~10質量%、好ましくは1.0~8質量%、より好ましくは1.2~5質量%である。混合スラリーはメッシュ状シートに載せた状態で脱水されるが、当該パルプ繊維とセルロース微細繊維の合計の質量百分率が1.0質量%未満だと、スラリーの脱落が多くなり、均質なシートが得られないおそれがある。他方、当該パルプ繊維とセルロース微細繊維の合計の質量百分率が10質量%を超過すると、パルプ繊維の含有量が多いので、パルプ繊維相互が強く絡み合い、剛直な建具シートとなる。
(2)積層体の形成
第1メッシュ状シートに前述の調成した混合スラリーを乗せ、当該混合スラリーの上に第2メッシュ状シートを重ね、積層体とする。
(3)搾水及び乾燥
サクション等を用いて当該積層体を脱水処理し、脱水処理された積層体をロールプレス等で加圧して搾水処理した後、回転式乾燥機等で加熱乾燥処理をする。加熱乾燥処理は、例えば、80~150℃で1~10分間行うとよい。
(4)建具シート
加熱乾燥処理後の積層体の第1メッシュ状シート、第2メッシュシートを取り除いて建具シートを得ることができる。
[製法第2例]
上記、「製造方法(3)搾水及び乾燥」以下の工程は、次のとおりに行ってもよい。
(3)’搾水及び乾燥
サクション等を用いて当該積層体を脱水処理し、脱水処理された積層体をプレス機等で徐々に圧力をかけて搾水処理した後、熱プレス機で加圧しつつ加熱乾燥処理をする。搾水処理によりかける圧力は最大2MPaとするとよい。加熱乾燥処理は、例えば、80~150℃で1~10分間行うとよい。
(4)’建具シート
加熱加圧乾燥処理後の積層体の第1メッシュ状シート、第2メッシュシートを取り除いて建具シートを得ることができる。
[製法第3例]
また、上記「製造方法(3)搾水及び乾燥」以下の工程は、次のとおりに行ってもよい。
(3)’ ’搾水及び乾燥
サクション等を用いて当該積層体を脱水処理し、脱水処理された積層体をロールプレス等で加圧して搾水処理した後、当該スラリーの上側に重ねた第2メッシュ状シートを取り外し、その後回転式乾燥機等で加熱乾燥処理をする。加熱乾燥処理は、例えば、80~150℃で1~10分間行うとよい。
(4)’ ’建具シート
加熱乾燥処理後の積層体の第1メッシュ状シートを取り除いて建具シートを得ることができる。
製法第1例~第3例を通じ、注意点として、加熱乾燥処理は、少なくとも混合スラリーが第1メッシュ状シート上に保持された状態で行われるのが好ましい。当該状態であれば、混合スラリーが加熱乾燥処理によってシートになる過程で発生する、混合スラリー(シート)の収縮を軽減することができ、また、微細なひび割れなどを防ぐことができる。
上記、製法第1例(3)「搾水及び乾燥」、製法第2例(3)’「搾水及び乾燥」、又は製法第3例(3)’ ’「搾水及び乾燥」の工程では、搾水処理後の混合スラリーは、セルロース微細繊維の濃度が、固形分基準で50質量%以下、好ましくは40質量%以下であるとよい。当該セルロース微細繊維の濃度が50質量%を超過していると、高坪量の個所と低坪量の箇所が混在し、坪量にムラのある建具シートとなるおそれがある。
<実施例1~8,比較例1~4>
以下、本発明の実施例を説明する。下記、(1)混合スラリーの調成と(2)積層体の形成の操作は、実施例1~8,比較例1~4に対して共通とした。
(1)混合スラリーの調成
パルプ繊維スラリーとセルロース微細繊維スラリーを混合して混合スラリーを調成した。パルプ繊維スラリーとセルロース微細繊維スラリーの混合百分率は、実施例及び比較例毎に変化させた。パルプ繊維スラリーは、パルプ繊維が固形分基準で3質量%含有されたものを用いた。セルロース微細繊維スラリーは、セルロース微細繊維が固形分基準で3質量%含有されたものを用いた。また、セルロースのヒドロキシ基が亜リン酸エステルで置換された変性セルロース微細繊維については固形分基準で1.5質量%含有されたものを用いた。混合スラリー全体の質量に占める、パルプ繊維とセルロース微細繊維の合計の質量百分率は固形分基準で2質量%になるように調節した。
パルプ繊維スラリーに用いるパルプ繊維の原料は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)又は広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)であり、セルロース微細繊維スラリーに用いたセルロース微細繊維の原料は、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)である。図中、「変性LBKP」とは、広葉樹晒クラフトパルプを原料として製造したセルロース微細繊維であって、セルロースのヒドロキシ基が亜リン酸エステルで置換されたものをいう。
(2)積層体の形成
第1メッシュ状シートに前述の調成した混合スラリーを乗せ、当該混合スラリーの上に第2メッシュ状シートを重ね、積層体とした。
(3)搾水及び乾燥
実施例1~3については、サクションを用いて当該積層体を脱水処理し、脱水処理された積層体をロールプレスで加圧して搾水処理した後、回転式乾燥機で加熱乾燥処理をした。加熱乾燥処理は、100℃で4分間行った。
実施例4~8,比較例1~4については、サクション等を用いて当該積層体を脱水処理し、脱水処理された積層体をプレス機等で徐々に圧力をかけて搾水処理した後、熱プレス機で加圧しつつ加熱乾燥処理をした。搾水処理によりかける圧力は最大2MPaとした。加熱乾燥処理は、120℃で2分間行った。
(4)建具シート
実施例1~8について、加熱乾燥処理後の積層体の第1メッシュ状シート、第2メッシュシートを取り除いて建具シートを得た。
<比較例5>
比較例5は、株式会社アサヒペンの品番:No.5421「障子紙(無地)」を用いた。
<比較例6>
比較例6は、株式会社アサヒペンの品番:No.6841「プラスチック障子紙」を用いた。
実施例、比較例について各物性、坪量、厚み、密度、透気度(低圧)、透気度(高圧)、透湿度、ISO不透明度、ISO白色度、ベック平滑度、破裂強さ、比破裂強さ、引張強さ(縦)、比引張強さ(縦)、引張強さ(横)、比引張強さ(横)、コップサイズ度(2分)、及び意匠性を測定・評価した。
意匠性については、実施例及び比較例の外観を目視して、太い繊維又は長い繊維(パルプ繊維)の有無、濃淡、色味を確認した。そして、次の基準により「◎」、「○」、「×」の3段階に分類して、意匠性に優れるものを「◎」又は「○」と評価した。
◎:シート表面に太い繊維又は長い繊維をはっきりと認識でき、濃淡や色味が不均一で明確に差があるもの
○:シート表面に太い繊維又は長い繊維をはっきりと認識できないが、濃淡や色味が不均一で明確に差があるもの
×:シート表面の濃淡や色味が均一で明確に差が無いもの
結果を表1に示す。
Figure 2024049984000003
(その他)
透気度(低圧)は、JIS P8117に準拠して測定した。
引張強さ(横)は、JIS P8113:「紙及び板紙-引張特性の試験方法」に準じて測定した値をいう。また、比引張強さ(横)は、引張強さ(横)を坪量で除して算出された値である。
本発明は、障子紙やふすま紙、その他の等の建具シートとして利用可能である。

Claims (8)

  1. セルロース微細繊維と当該セルロース微細繊維よりも平均繊維径が大であるパルプ繊維を有し、
    前記セルロース微細繊維の平均繊維径が3~500nmであり、
    坪量が45~150g/m2である、
    ことを特徴とする建具シート。
  2. さらに、無機填料を含む、
    請求項1に記載の建具シート。
  3. 比破裂強さが1.0~4.0kPa・m2/gである、
    請求項1に記載の建具シート。
  4. 透気度(高圧)が500~200000秒/10mL、かつ透湿度が1000~6000g/m2/24hである、
    請求項1に記載の建具シート。
  5. 建具シートの比引張強さ(縦)が25~90N・m/gである、
    請求項1に記載の建具シート。
  6. プラスチックフィルムを有しない、
    請求項1に記載の建具シート。
  7. 障子紙、壁紙、ふすま紙に用いられる、
    請求項1に記載の建具シート。
  8. 前記セルロース微細繊維と前記パルプ繊維の質量比が、固形分基準で50:50~99:1である、
    請求項1に記載の建具シート。
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