JP2024047420A - グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物、及びグルテンフリー粉含有パン類 - Google Patents

グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物、及びグルテンフリー粉含有パン類 Download PDF

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Abstract

【課題】以下の(1)及び(2)を達成することのできる技術を提供する。(1)バイタルグルテンを添加しない、或いは添加量が少ない場合であっても良好なボリュームを有するグルテンフリー粉含有パン類を得ることができる。(2)べたつきが抑えられたグルテンフリー粉含有パン類生地を得ることができる。【解決手段】生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の含有量が50~95質量%であり且つグルテンフリー粉の含有量が5~50質量%であるグルテンフリー粉含有パン類用の練込油脂組成物であって、油脂と酵素を含み、以下の条件(a)~(c)を満たす、練込油脂組成物。(a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。(b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。(c)直捏生地又は本捏生地に用いられる油脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、小麦以外の澱粉原料由来の米粉、雑穀粉、豆粉、澱粉等(以下、「グルテンフリー粉」ともいう。)を含有するパン類(以下、「グルテンフリー粉含有パン類」ともいう。)に用いられる練込油脂組成物、及び該練込油脂組成物を含有するグルテンフリー粉含有パン類に関する。
食パンやクロワッサン等のパン類は小麦粉を主材とするものであるが、(1)国内の米の需要喚起の観点、(2)健康意識の高まりに伴うグルテンの摂取量を抑えた食品のニーズの観点、(3)世界的な小麦の不作や世界情勢の影響による小麦価格上昇の観点などから、従前より小麦粉の一部又は全部に代えて、米粉や大豆粉、各種澱粉等に代表される、グルテンフリー粉を使用したパン類であるグルテンフリー粉含有パン類の製造が行われている。
グルテンフリー粉は、パン類を製造する際に用いられる小麦粉に通常含有されるグルテンを含有しない。そのため、グルテンフリー粉を用いて製造されたグルテンフリー粉含有パン類のボリュームは、小麦粉のみでパン類を製造した場合と比較して小さく、伴ってクラムの目が詰まったものとなりやすいことが知られており、小麦粉のみで製造されるパン類とは異なる課題を有している。
グルテンフリー粉含有パン類の特有の課題を解決・改善する手法としてバイタルグルテン(又は活性グルテン)と呼ばれる小麦粉由来の蛋白質を添加する手法がとられる。また、これに加えて酵素によりグルテンフリー粉、又はグルテンフリー粉含有パン類の生地(以下、「グルテンフリー粉含有パン類生地」ともいう。)を改質する手法が検討されてきた。
酵素によりグルテンフリー粉、又はグルテンフリー粉含有パン類生地を改質する手法としては、例えば、特許文献1には、酵素含有水溶液に米粉を浸漬して酵素処理を行い且つ微細化した米粉に対し、活性グルテンを添加したパン生地用米粉が開示されており、特許文献2には、製パン改良剤を含有する油脂組成物とバイタルグルテンとを含有する米粉生地が開示されている。また、特許文献3には、米粉75質量部以上85質量部、バイタルグルテン15質量部以上25質量部以下からなる主原料100質量部に対して、副原料としてデキストリン3質量部以上5質量部以下、αアミラーゼ30U以上75U以下、βアミラーゼ570AUN以上950AUN以下を含むホームベーカリー用の米粉パン用組成物が開示されており、特許文献4には、特定のプロテアーゼを含有する米粉パン用添加剤及び米粉パン用パン生地が開示されている。
特開平5-068468号公報 特開2004-008007号公報 特開2013-039076号公報 特開2014-033646号公報
グルテンフリー粉含有パン類生地を製造する場合、バイタルグルテンを使用することにより、得られるパン類のボリュームは改善されるものの、バイタルグルテン由来の風味や食感に起因して、得られるグルテンフリー粉含有パン類の風味や食感が低下する場合があった。また、小麦粉価格の上昇に伴いバイタルグルテンの価格が上昇するため、グルテンフリー粉含有パン類のボリュームや食感に係る課題の解決手段としては採用しにくくなっていた。
また、従前の、酵素によりグルテンフリー粉又はグルテンフリー粉含有パン類生地を改質する手法は、酵素処理したグルテンフリー粉を用いるため、製造工程の全体を通して、得られる生地がべたついた状態となりやすく、作業性が落ちたり、取り扱いが困難なものとなったりするという課題があることを見出した。
さらに、バイタルグルテンと酵素処理を併用した場合は、上記の課題がいずれも生じる場合があった。
そこで、本発明の課題は、以下の(1)及び(2)を達成することのできる技術を提供することにある。
(1)バイタルグルテンを添加しない、或いは添加量が少ない場合であっても良好なボリュームを有するグルテンフリー粉含有パン類を得ることができる。
(2)べたつきが抑えられたグルテンフリー粉含有パン類生地を得ることができる。
本発明者らによる鋭意検討の結果、特定の油脂組成物を用いることで上記課題を解決しうることを知見した。本発明は以下のとおりである。
[1] 生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の含有量が50~95質量%であり且つグルテンフリー粉の含有量が5~50質量%であるグルテンフリー粉含有パン類用の練込油脂組成物であって、油脂と酵素を含み、以下の条件(a)~(c)を満たす、練込油脂組成物。
(a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
(b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
(c)直捏生地又は本捏生地に用いられる油脂組成物である。
[2] 以下の条件(d)を満たす、[1]記載の練込油脂組成物。
(d)油脂組成物100gあたり、アミラーゼを150~1500単位含有する。
[3] 以下の条件(e)を満たす、[1]又は[2]記載の練込油脂組成物。
(e)35℃における固体脂含量が8~25%である。
[4] 生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の含有量が50~95質量%であり且つグルテンフリー粉の含有量が5~50質量%であるグルテンフリー粉含有パン類の生地であって、油脂と酵素を含み且つ以下の条件(a)~(c)を満たす練込油脂組成物を含有する、生地。
(a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
(b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
(c)直捏生地又は本捏生地に用いられる油脂組成物である。
[5] 前記練込油脂組成物が、以下の条件(d)及び(e)の少なくとも一つをさらに満たす、[4]記載のグルテンフリー粉含有パン類生地。
(d)油脂組成物100gあたり、アミラーゼを150~1500単位含有する。
(e)35℃における固体脂含量が8~25%である。
[6] グルテンフリー粉のアミロース含量が5~25質量%である、[4]又は[5]のグルテンフリー粉含有パン類生地。
[7] [4]又は[5]に記載のグルテンフリー粉含有パン類生地の加熱処理品である、グルテンフリー粉含有パン類。
[8] [6]に記載のグルテンフリー粉含有パン類生地の加熱処理品である、グルテンフリー粉含有パン類。
[9] 以下の工程(1)~(3)を含むグルテンフリー粉含有パン類生地の製造方法であって、工程(3)で用いる油脂組成物が、油脂と酵素を含み、以下の条件(a)及び(b)を満たす、グルテンフリー粉含有パン類生地の製造方法。
工程(1):小麦粉類、酵母、及び水を含む原料を混合し、予備混合物を得る工程
工程(2):予備混合物を発酵させる工程
工程(3):発酵させた予備混合物に、さらに、小麦粉類、グルテンフリー粉、及び水を含む原料と、油脂組成物を混合し、本捏生地を得る工程
(a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
(b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
本発明によれば、以下の(1)及び(2)を達成することのできる技術を提供することができる。
(1)バイタルグルテンを添加しない、或いは添加量が少ない場合であっても良好なボリュームを有するグルテンフリー粉含有パン類を得ることができる。
(2)べたつきが抑えられたグルテンフリー粉含有パン類生地を得ることができる。
以下、本発明について詳述する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要素を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
[グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物]
本発明は、グルテンフリー粉含有パン類用の練込油脂組成物であって、油脂と酵素を含み、以下の条件(a)~(c)を満たすことを特徴とする。
(a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
(b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
(c)直捏生地又は本捏生地に用いられる油脂組成物である。
本発明において「グルテンフリー粉含有パン類」とは、先述のとおり、小麦以外の澱粉原料由来の澱粉類(すなわち、グルテンフリー粉)を含有するパン類をいう。本発明の効果をより享受し得る観点から、一実施形態において、本発明の練込油脂組成物は、その生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の含有量が50~95質量%であり且つグルテンフリー粉の含有量が5~50質量%であるグルテンフリー粉含有パン類の製造において、該グルテンフリー粉含有パン類の生地の製造に用いられる。なお、生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類やグルテンフリー粉の含有量の好適範囲に関しては、後述する。
以下、本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を、単に「本発明の練込油脂組成物」ともいう。
<条件(a)について>
条件(a)は、本発明の練込油脂組成物が含む酵素に関する。すなわち、本発明の練込油脂組成物は、該油脂組成物100gあたり酸化還元酵素を45~500単位含有する。
「酸化還元酵素(oxidoreductase)」とは、基質の酸化還元反応を触媒する活性を有する酵素を指し、酸化還元酵素としては、オキシダーゼ(oxidase)を挙げることができる。
「オキシダーゼ」とは、基質を酸化する反応を触媒する活性を有する酵素であり、具体的には、酸素の存在下で基質を酸化する反応を触媒する活性を有する酵素を指す。
オキシダーゼとしては、例えば、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ラクトースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リジルオキシダーゼが挙げられる。
「グルコースオキシダーゼ」とは、グルコースを酸化する反応を触媒する活性を有する酵素であり、具体的には、グルコース及び酸素を基質として、グルコノラクトン及び過酸化水素を生成する反応を触媒する活性を有する酵素を指す。
「ヘキソースオキシダーゼ」とは、ヘキソースを酸化する反応を触媒する活性を有する酵素であり、具体的には、ヘキソース及び酸素を基質として、対応するラクトン及び過酸化水素を生成する反応を触媒する活性を有する酵素を指す。基質とすることができるヘキソースとしては、例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、セロビオース等が挙げられる。
「ラクトースオキシダーゼ」とは、ラクトースを酸化する反応を触媒する活性を有する酵素であり、具体的には、ラクトース及び酸素を基質として、ラクトビオン酸及び過酸化水素を生成する反応を触媒する活性を有する酵素を指す。
「アスコルビン酸オキシダーゼ」とは、アスコルビン酸を酸化する反応を触媒する活性を有する酵素であり、具体的には、アスコルビン酸及び酸素を基質として、デヒドロアスコルビン酸及び水を生成する反応を触媒する活性を有する酵素を指す。
「フェノールオキシダーゼ」とは、チロシナーゼ、ラッカーゼ、又はポリフェノールオキシダーゼとも呼ばれ、フェノール類を酸化する反応を触媒する活性を有する酵素を指し、具体的には、酸素の存在下でフェノール類を酸化する反応を触媒する活性を有する酵素を指す。
「リジルオキシダーゼ」とは、タンパク質中のリジン残基を酸化する反応を触媒する活性を有する酵素であり、具体的には、酸素の存在下でタンパク質中のリジン残基を脱アミノ化して、アンモニア及び過酸化水素を生成する反応を触媒する活性を有する酵素を指す。
酸化還元酵素の由来は特に制限されない。酸化還元酵素は、微生物、動物、植物等いずれの由来のものであってもよく、公知の酸化還元酵素を使用しうる。酸化還元酵素としては、例えば、市販品を利用してもよく、適宜製造して取得したものを利用してもよい。酸化還元酵素としては、1種の酸化還元酵素を用いてもよく、2種又はそれ以上の酸化還元酵素を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、酸化還元酵素は、酸化還元酵素以外の成分を含有していてもよく、含有していなくてもよい。例えば、市販のグルコースオキシダーゼ製剤にはカタラーゼを含有するものがある。酸化還元酵素としては、そのような酸化還元酵素と他の酵素の混合物を用いてもよい。
酸化還元酵素であるオキシダーゼのうち、本発明においてはグルテンフリー粉含有パン類生地の性状及びグルテンフリー粉含有パン類のボリュームが好ましく改善される点で、ヘキソースオキシダーゼ、ラクトースオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼから選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましく、入手容易である点や添加効果が得られやすい点から、グルコースオキシダーゼを用いることがより好ましい。
これらの酵素が作用することにより、上記効果が得られる理由については定かではないが、本発明者らは以下のとおり推察している。すなわち、パン類のボリュームには、パン類生地に含有される小麦由来のグルテン蛋白質の量が重要であるところ、小麦粉をグルテンフリー粉に置換することにより、グルテン蛋白質の量が減少するため、グルテンフリー粉含有パン類はボリュームが出にくいのが通常である。しかし、これらの酵素と基質との反応により生産された過酸化水素が、グルテンフリー粉含有パン類生地中に含有されるタンパク質中の-SH基を酸化することで-S-S-結合(ジスルフィド結合)生成を促進するため、グルテン間に形成される架橋構造によりグルテン間の結合が強まり、強固なグルテン骨格が形成される。その結果、小麦粉の一部をグルテンフリー粉に置換した場合であっても、ボリュームを維持・向上させることができるものと考えられる。
以下、本発明で好ましく用いられるグルコースオキシダーゼについてさらに詳述する。
グルコースオキシダーゼとしては、市販のいずれのグルコースオキシダーゼ製剤も使用することができ、例えば、DSMフードスペシャリティーズ社(又はディー・エス・エムジャパン(株))の「ベイクザイムGo Pure BG」、「ベイクザイムGO1500」、「マキサパールGO4」;ダニスコジャパン(株)の「グリンドアミルS757」、「グリンドアミルS700」;新日本化学工業(株)の「スミチームGOP」;ノボザイムジャパン(株)の「グルザイム10000BG」、「グルザイムBG」;天野エンザイム(株)の「ハイデラーゼ」、「ハイデラーゼ15」;ナガセ生化学工業(株)の「グルコースオキシダーゼAN1」が挙げられる。
グルコースオキシダーゼの酵素活性は、例えば、GOPU(Glucose Oxidase Penicillium Unit)で表示され、1GOPUは、定められた測定条件下で、3mgのグルコースをグルコン酸に酸化するのに必要な酵素量である。具体的な酵素活性の測定は、グルコース及び酸素を基質として35℃、pH5.1の条件下に15分間インキュベートし、グルコースオキシダーゼによる反応、すなわち、該酸素の存在下で過酸化水素を生成しグルコースをグルコン酸に変換する反応を過剰の水酸化ナトリウムによって終了させ、生成したグルコン酸を中和する。過剰に残った水酸化ナトリウムを滴定すると、グルコースオキシダーゼ活性に反比例しているため、反応終了後の水酸化ナトリウムの余剰分を塩酸で逆滴定する。必要な塩酸量は、酵素なしのブランク・インキュベーションの塩酸量と比較し、生成したグルコン酸の量(つまり酸化されたグルコースの量)を直接測定する。
本発明の練込油脂組成物100gあたりの酸化還元酵素の含有量は、通常、45単位以上であり、好ましくは60単位以上又は78単位以上、より好ましくは95単位以上、さらに好ましくは125単位以上であり、その上限は、通常、500単位以下であり、好ましくは315単位以下、より好ましくは250単位以下、さらに好ましくは220単位以下である。したがって一実施形態において、本発明の練込油脂組成物は、該練込油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
酸化還元酵素の含有量が上記範囲内であると本発明の効果が十分に得られやすく、良好な食感を呈するグルテンフリー粉含有パン類が得られやすい。
酸化還元酵素の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果が十分に得られやすく、良好な食感を呈するグルテンフリー粉含有パン類が得られやすい。
なお、用いる酸化還元酵素の至適温度は、35~50℃の範囲にあることが好ましい。用いる酸化還元酵素の至適温度が上記範囲内であると、得られるグルテンフリー粉含有パン類生地のべたつきが抑えられ、酸化還元酵素を十分に作用させることができる。
(その他使用しうる酵素について)
本発明の練込油脂組成物は、酸化還元酵素以外の酵素も含有してよい。例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼ等のアミラーゼをはじめとする澱粉分解酵素;プロトペクチナーゼ、ポリガラクチュロナーゼ等のペクチナーゼ;アラバナーゼ等の多糖分解酵素;プルラナーゼ、デキストラナーゼ、トランスグルコシダーゼ(αグルコシダーゼ)、βグルカナーゼ(例、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ(キシラナーゼ、ガラクタナーゼ、マンナナーゼ等))等のグルカナーゼ;リパーゼ、ホスホリパーゼ等の脂肪酸分解酵素;ペプシン、パパイン等のプロテアーゼ;マルトトリオシル転移酵素等のグリコシル基転移酵素;スターチブランチングエンザイム、グリコーゲンブランチングエンザイム等のブランチングエンザイムを挙げることができる。得られるグルテンフリー粉含有パン類のボリュームに加えて食感も改善する観点から、本発明の練込油脂組成物は、上記の酸化還元酵素に加えて、アミラーゼを含有することが好ましく、αアミラーゼを含有することがより好ましく、αアミラーゼ、及び、キシラナーゼ又はヘミセルラーゼを含有することがさらに好ましく、αアミラーゼ及びヘミセルラーゼを含有することがさらにより好ましい。
-アミラーゼ-
以下、本発明で好ましく用いられるアミラーゼについて説明する。
アミラーゼは、澱粉等が有するグリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、一般にアミラーゼはその作用部位の違いによって、α-1,4グルコシド結合をランダムに切断するα-アミラーゼ、非還元性末端からマルトース単位で逐次分解するβ-アミラーゼ、同じくα-1,4グルコシド結合をグルコース単位で分解し、また、分岐点のα-1,6結合をも分解するグルコアミラーゼ等が挙げられる。
本発明の効果をより享受し得る観点から、本発明の練込油脂組成物は、先述の酸化還元酵素に加えて、αアミラーゼ及びβアミラーゼから選ばれる1種以上を含有することが好ましく、中でもαアミラーゼを含有することがより好ましい。
αアミラーゼ等のアミラーゼは、細菌、カビ、穀物等、その由来によらずいずれも使用することができる。
本発明では、本発明の効果をいっそう好ましく得る観点や、しっとりとして歯切れのよい食感を得る観点から、アミラーゼとしては、マルトオリゴ糖生成アミラーゼを使用することが好ましく、中でもマルトオリゴ糖生成α-アミラーゼを使用することが好ましい。
マルトオリゴ糖生成α-アミラーゼは、澱粉等のα-グルカンを基質として、ある特定の重合度でグルコースがα-1,4結合したマルトオリゴ糖を生成する作用を有するα-アミラーゼをいう。マルトオリゴ糖とは、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース等をいう。
マルトオリゴ糖生成α-アミラーゼとしては、例えば、グルコースを産生するグルコアミラーゼ(単にアミラーゼと呼称される場合もある)、マルトースを産生するマルトース生成アミラーゼ、マルトテトラオースを産生するマルトテトラオース生成アミラーゼ等を挙げることができ、これらの群の中から1種又は2種以上を選択して使用してよい。なかでも上記効果がより好ましく得られる点で、マルトース生成αアミラーゼを含む1種以上を選択することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるアミラーゼ(好適にはαアミラーゼ)の至適温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは65~95℃、さらに好ましくは70~90℃である。至適温度が60℃以上のアミラーゼを用いることにより、得られるグルテンフリー粉含有パン類のボリュームの改善とともに、べたつきが抑えられ扱いやすいグルテンフリー粉含有パン類生地が得られやすくなる。
この理由は明らかではないが、本発明者らは次のように推察している。
すなわち、至適温度が60℃未満のアミラーゼを用いると、小麦粉や米粉等に含有される澱粉が比較的低温から分解されることとなるため、生地配合によってはグルテンフリー粉含有パン類生地がべたつきやすく、扱いにくいものとなる。これに対し、至適温度が60℃以上のアミラーゼを用いることにより、原料を混錬し生地を調製する過程でアミラーゼが澱粉に作用するのを抑制することができ、生地調製後のホイロや焼成の過程でアミラーゼが作用するため、生地の混練や成形の過程ではべたつきが抑えられて取り扱いしやすくなっているものと考えられる。
本発明の練込油脂組成物100gあたりのアミラーゼの含有量は、求めるグルテンフリー粉含有パン類のボリューム及び食感、グルテンフリー粉含有パン類生地に配合される本発明の練込油脂組成物の量によって異なり、これらを考慮した上で任意の量を設定してよいが、好ましくは150単位以上、より好ましくは200単位以上又は250単位以上、さらに好ましくは300単位以上、さらにより好ましくは320単位以上又は400単位以上であり、その上限は、好ましくは1500単位以下、より好ましくは1000単位以下、さらに好ましくは800単位以下、さらにより好ましくは700単位以下である。したがって好適な一実施形態において、本発明の練込油脂組成物は、該油脂組成物100gあたり、アミラーゼを150~1500単位含有する(条件(d))。該条件(d)について、油脂組成物100gあたりのアミラーゼの含有量は、より好ましくは200~1000単位又は250~1000単位、さらに好ましくは300~800単位、さらにより好ましくは320~700単位又は400~700単位である。アミラーゼの含有量を上記範囲とすることで、べたつきがより抑えられ作業性の良好なパン生地が得られやすく、ソフト性及びボリュームがより良好なパン類が得られやすい。
グルコアミラーゼの酵素活性は、標準の条件(37℃及びpH4.7)下で、1時間当たり5260mgの澱粉を分解する酵素の量(菌類α-アミラーゼ単位・FAUともいう)を指標とし、該酵素量を1単位とする。
マルトース生成アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH等)下において、マルトトリオースを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのマルトースを生成する酵素量を指標とし、該酵素量を1単位とする。
マルトテトラオース生成アミラーゼの酵素活性は、例えば0.1Mリン酸緩衡液(pH7.0)に溶解した2.0質量%可溶性澱粉0.5mLに、適量の酵素を加え、全量1.0mLで、温度40℃で酵素反応を行い、生成するマルトテトラオース及びその他還元糖をソモギー・ネルソン法で定量し、この条件で、1分間に1μmoLのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を指標とし、該酵素量を1単位とする。
-ヘミセルラーゼ-
以下、本発明に好ましく用いられるヘミセルラーゼについて述べる。
ヘミセルラーゼとはヘミセルロースを基質として加水分解する酵素の総称であり、基質となるヘミセルロースは陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロース及びペクチン以外のものであり、具体的には、キシラン、アラビノキシラン、アラビナン、マンナン、ガラクタン、キシログルカン、グルコマンナン等が挙げられる。
へミセルラーゼの由来としては、第9版食品添加物公定書の規格を満たすものを用いてよく、これらのうち1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
ヘミセルラーゼは、主たる基質の違いから、キシランを分解するキシラナーゼ、アラビノキシランを分解するアラビノキシラナーゼ等にさらに分類することができるが、実態としてはこれらの活性を具有するものであることが多く、市販されている酵素製剤もこれらの活性を具有するものが多い。
本発明の練込油脂組成物に用いることができるヘミセルラーゼを含む市販の酵素製剤としては、例えば、DSMフードスペシャリティーズ社(又はディー・エス・エムジャパン(株))の「ベイクザイムBXP5001BG」、「ベイクザイムHS2000」、「ベイクザイムIConc」;天野製薬株式会社のヘミセルラーゼ「アマノ」;洛東化成工業社のエンチロンLQ;エイチビィアイ社の「ヘミセルラーゼM」;新日本化学工業社の「スミチーム(登録商標)X」が挙げられる。
本発明では、よりべたつきが少ないグルテンフリー粉含有パン類生地が得られる点で、アラビノキシランを主たる基質とするヘミセルラーゼを用いることが好ましく、アラビノキシランを主たる基質とするヘミセルラーゼのうち不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン、以下単に「分解活性比」という。)が10以上であるヘミセルラーゼを使用することがより好ましい。
本発明において、「アラビノキシランを主基質とする」とは、アラビノキシランを分解する活性が、好ましくは1000単位/g以上、より好ましくは2000単位/g以上、さらに好ましくは3000単位/g以上であることを指す。
ここでいうアラビノキシランは不溶性又は水溶性を問わず、いずれのアラビノキシランを基質とした場合であっても、上記の下限以上の活性に該当した場合には「アラビノキシランを主基質とする」ことに該当するものとする。また、1単位とは、1分間につき1μmolのキシロース当量の還元糖を生じる酵素の量として定義されるものとし、ヘミセルラーゼを、至適条件(至適温度、至適pH等)下で基質に作用させ、単位時間あたりに所定のモル数の分解物を生成する酵素量として定義することができる。
なお、本発明で用いられるヘミセルラーゼの至適温度は、ミキシングからホイロの間で、主として不溶性アラビノキシランに作用させ、べたつきの少ないグルテンフリー粉含有パン類生地を得る目的から、20~90℃であることが好ましく、22~50℃であることがより好ましく、25~50℃又は23~45℃であることがさらに好ましく、最も好ましくは25~40℃である。
本発明の練込油脂組成物100gあたりのヘミセルラーゼの含有量は、アラビノキシランを基質とした場合の活性が、好ましくは100単位以上、より好ましくは150単位以上、さらに好ましくは200単位以上、さらにより好ましくは250単位以上であり、その上限は、好ましくは1000単位以下、より好ましくは600単位以下、さらに好ましくは500単位以下、さらにより好ましくは400単位以下である。したがって、好適な一実施形態において、本発明の練込油脂組成物は、該油脂組成物100gあたり、ヘミセルラーゼを100~1000単位含有する。本発明の練込油脂組成物100gあたりのヘミセルラーゼの含有量は、より好ましくは150~600単位、さらに好ましくは200~500単位、さらにより好ましくは250~400単位である。ヘミセルラーゼの含有量を上記の数値範囲とすることで、べたつきがより抑えられ作業性の良好なパン生地が得られやすく、歯切れがより良好なパン類が得られやすい。
また、用いられるヘミセルラーゼの分解活性比は、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、その上限は好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下である。したがって、一実施形態において、ヘミセルラーゼの分解活性比は、好ましくは10~40であり、より好ましくは15~35、さらに好ましくは20~30である。ヘミセルラーゼの分解活性比が上記数値範囲内であることにより、酵素を十分作用させることができ、水分含量の高いグルテンフリー粉含有パン類生地であっても、生地のべたつきを抑えることができる。
用いるヘミセルラーゼの分解活性比を算出する方法は、例えば下記(1)~(3)による方法が挙げられる。
(1)不溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
不溶性アラビノキシラン製剤(XylazymeAX:メガザイム社製)の懸濁液(40mgの試料を8mLの脱イオン水に懸濁)300μLをマイクロプレートに分注し凍結乾燥したものを測定に用いる。このマイクロプレートの各ウェルに酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/mL)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0~40単位懸濁したもの)25μL及び該緩衝液25μLを分注して酵素反応を開始し、37℃で1時間酵素反応させた後、1%(w/v)トリス緩衝液200μLを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。なお、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(2)水溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
水溶性アラビノキシラン溶液(AZOWAX:メガザイム社製)33μL及び酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/mL)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0~40単位懸濁したもの)33μLをマイクロプレートの各ウェルに分注して酵素反応を開始する。37℃で1時間酵素反応させた後、エタノール140μLを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。なお、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(3)不溶性アラビノキシランへの基質親和性、及び水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比の算出
1つの酵素につき上記(1)及び(2)の両方の酵素活性の測定を行い、それらの結果から以下のようにして、「不溶性アラビノキシランへの基質親和性、及び水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比」を算出する。
それぞれの吸光度と酵素含量について非線形回帰曲線Y=Ymax×(1-e-K*X)(Yは吸光度、Xは酵素量)をプロットし、その直線性のある部分、好ましくはYの最大値の1/10以下の範囲で、その傾き(S)を下記の式により算出する。
傾き(S)=(Ymax×K)/1.0536
ここで、この傾きの比、すなわちS(不溶性アラビノキシラン)/S(水溶性アラビノキシラン)の値を「不溶性アラビノキシランへの基質親和性、及び水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比」とする。
<条件(b)について>
条件(b)は、本発明の練込油脂組成物が含む油脂に関する。すなわち、本発明の練込油脂組成物は、油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
本発明に用いられるランダムエステル交換油脂は特に限定されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油(ハイエルシン種を含む)、米油、ヒマワリ油(ハイオレイック種を含む)、サフラワー油(ハイオレイック種を含む)、オリーブ油、キャノーラ油等の各種植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂のうちから、1種又は2種以上を選択して混合した油脂混合物をランダムエステル交換して得られる油脂を用いてよい。
なお、本発明においては、ランダムエステル交換した後に、水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した油脂も、ランダムエステル交換油脂として取り扱うものとする。
ランダムエステル交換油脂は、1種単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
先述のとおり、本発明の練込油脂組成物において、該油脂組成物の油相を構成する油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。該ランダムエステル交換油脂の含有量は、グルテンフリー粉含有パン類のボリュームに加えて、食感も改善する観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
ランダムエステル交換油脂を上記範囲で含有させることにより本発明の効果が得られる理由は現段階で明らかになっていないが、本発明者らは以下のとおり推察する。
本発明の練込油脂組成物中に配合される上記酵素はごく少量であり、ごく少量の上記酵素がパン生地全体に均一に作用するためには、(1)本発明の練込油脂組成物がパン生地に手早く均一に分散すること、(2)ごく少量の上記酵素が練込油脂組成物中に均一に分散していることが必要であると推測される。この点、本発明の練込油脂組成物は、その油相を構成する油脂の80質量%以上となるように、ランダムエステル交換油脂を含有する。これにより、本発明の練込油脂組成物を製造する際の固化性が向上し、該練込油脂組成物中における上記酵素の分散状態が維持されると共に、パン生地への分散性が向上しているものと考えている。
本発明に用いられるランダムエステル交換油脂を製造するにあたり、ランダムエステル交換は、常法に従って行うことができ、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよい。上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂、ケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いてもよく、粉末の形態で用いてもよい。以下、本発明において同様である。
良好なボリュームを有すると共に良好な食感を呈するグルテンフリー粉含有パン類を得る観点から、本発明の練込油脂組成物は、ランダムエステル交換油脂として、以下のランダムエステル交換油脂αを含有することが好ましく、ランダムエステル交換油脂αに加えてランダムエステル交換油脂β又はランダムエステル交換油脂γのいずれか1つ以上を含有することがより好ましく、ランダムエステル交換油脂α、ランダムエステル交換油脂β、ランダムエステル交換油脂γを全て含有することが最も好ましい。
ランダムエステル交換油脂α:パーム分別軟部油を80質量%以上含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂
ランダムエステル交換油脂β:パーム極度硬化油を30~50質量%含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂
ランダムエステル交換油脂γ:ラウリン系油脂を40~80質量%含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂
本発明においてパーム分別軟部油とは、例えば、パームオレイン、スーパーオレイン、ソフトパームミッドフラクション、トップオレイン、ハードパームミッドフラクション等の、パーム油やその分別油を分別して得られる油脂が挙げられ、また、パーム分別硬部油としては、例えば、ハードステアリン、ソフトステアリン、スーパーステアリンが挙げられる。
本発明においてパーム極度硬化油とは、パーム油を好ましくはヨウ素価が3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下となるまで水素添加を行った油脂を指し、また、ラウリン系油脂とは、パーム核油やヤシ油、及びこれらの油脂に対して水素添加、分別から選択される1又は2の処理を施して得られる加工油脂を指す。
なお、本発明において、水素添加した油又は水素添加した油をさらに分別した油脂を用いる場合には、構成脂肪酸残基組成におけるトランス脂肪酸残基の量を低減する観点から、ヨウ素価が3以下となるまで硬化させた油脂を用いることが好ましく、1以下となるまで硬化させた油脂を用いることがより好ましい。
(ランダムエステル交換油脂αについて)
本発明の練込油脂組成物に好ましく用いられるランダムエステル交換油脂αについて述べる。
ランダムエステル交換油脂αは、パーム分別軟部油を80質量%以上含有する油脂混合物(以下、単に「油脂混合物α」ともいう。)をランダムエステル交換して得られる油脂である。油脂混合物α中のパーム分別軟部油の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。油脂混合物αは、任意に選択された1種又は2種以上のパーム分別軟部油を含有してよい。
なお、本発明においては、二以上の油脂から構成される場合、又は単一の油脂から構成される場合のいずれの場合であっても「油脂混合物」と呼称する。以下同様である。
油脂混合物αにパーム分別軟部油以外の油脂を含有させる場合、任意の油脂を混合することができるが、本発明の練込油脂組成物が過度に硬くなり、グルテンフリー粉含有パン類生地へ均一に練り込むのが難しくなるため、極度硬化油、及び硬化油を含有させないことが好ましい。
油脂混合物αの調整に用いられるパーム分別軟部油のヨウ素価は、グルテンフリー粉含有パン類生地中に均一に分散させやすいものとする観点から、好ましくは50以上、より好ましくは51以上、さらに好ましくは52以上である。
なお、油脂のヨウ素価の測定は常法に基づいて行うことができるが、例えば基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1-2013 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」により実施することができる。
本発明の練込油脂組成物がランダムエステル交換油脂αを含有する場合、良好なボリュームと食感を有するグルテンフリー粉含有パン類を得る観点から、その含有量は、本発明の練込油脂組成物の油相中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは40質量%以上又は45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは55質量%以上であり、その上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。したがって、一実施形態において、ランダムエステル交換油脂αの含有量は、本発明の練込油脂組成物の油相中、好ましくは25~85質量%、より好ましくは45~70質量%、さらに好ましくは50~70質量%、さらにより好ましくは55~70質量%である。
ランダムエステル交換油脂αを、好ましくは上記含量で含有させることにより、本発明の練込油脂組成物を用いて製造されるグルテンフリー粉含有パン類の食感がソフトで口溶けのよいものとなりやすい。
(ランダムエステル交換油脂βについて)
本発明の練込油脂組成物に好ましく用いられるランダムエステル交換油脂βについて述べる。
ランダムエステル交換油脂βは、パーム極度硬化油を30~50質量%含有する油脂混合物(以下、単に「油脂混合物β」ともいう。)をランダムエステル交換して得られる油脂である。油脂混合物β中のパーム極度硬化油の含有量は、好ましくは30~45質量%、より好ましくは30~40質量%である。油脂混合物βは、任意に選択された1種又は2種以上のパーム極度硬化油を含有してよい。
油脂混合物βに含有されるパーム極度硬化油以外の油脂としては特に限定されず、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油(ハイエルシン種を含む)、米油、ヒマワリ油(ハイオレイック種を含む)、サフラワー油(ハイオレイック種を含む)、オリーブ油、キャノーラ油等の各種植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂のうちから、1種又は2種以上を選択して混合してよい。中でも、得られるグルテンフリー粉含有パン類のボリュームの向上と、食感の向上とを両立する観点から、パーム油、パーム分別硬部油、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が好ましく選択され、パーム油又はパーム分別硬部油がより好ましく選択され、パーム油がさらに好ましく選択される。
油脂混合物β中のパーム極度硬化油以外の油脂の含有量は、好ましくは50~70質量%、より好ましくは55~70質量%、さらに好ましくは60~70質量%である。
本発明の練込油脂組成物がランダムエステル交換油脂βを含有する場合、良好なボリューム及び食感を有するグルテンフリー粉含有パン類を得る観点から、その含有量は、本発明の練込油脂組成物の油相中、好ましくは3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは23質量%以上であり、その上限は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは43質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。したがって、一実施形態において、ランダムエステル交換油脂βの含有量は、本発明の練込油脂組成物の油相中、好ましくは3~50質量%、5~50質量%、10~50質量%又は15~50質量%であり、より好ましくは20~43質量%であり、さらに好ましくは23~43質量%、23~35質量%又は25~35質量%である。
ランダムエステル交換油脂βを、好ましくは上記含量で含有させることにより、グルテン含量が少ないグルテンフリー粉含有パン類であっても、ボリュームの大きなパンが得られやすい。
なお、油脂混合物β中に、パーム極度硬化油以外の油脂としてラウリン系油脂を40質量%以上含む場合には、後述のランダムエステル交換油脂γとして取り扱うものとする。
(ランダムエステル交換油脂γについて)
本発明の練込油脂組成物に好ましく用いられるランダムエステル交換油脂γについて述べる。
ランダムエステル交換油脂γは、ラウリン系油脂を40~80質量%含有する油脂混合物(以下、単に「油脂混合物γ」ともいう。)をランダムエステル交換して得られる油脂である。油脂混合物γ中のラウリン系油脂の含有量の下限は、好ましくは42質量%以上、44質量%以上又は45質量%以上、より好ましくは46質量%以上又は48質量%以上であり、さらに50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上又は65質量%以上としてもよい。油脂混合物γは、任意に選択された1種又は2種以上のラウリン系油脂を含有してよい。
油脂混合物γに含有される、ラウリン系油脂以外の油脂としては特に限定されないが、ボリュームのあるグルテンフリー粉含有パン類を得る観点や、良好な食感のグルテンフリー粉含有パン類を得る観点から、パーム油の極度硬化油、パーム油の硬化油、パーム分別硬部油、及びパーム油から選ばれる1種以上が好ましく、パーム油の極度硬化油、及びパーム分別硬部油から選ばれる1種以上がより好ましく、パーム油の極度硬化油がさらに好ましい。
油脂混合物γ中のラウリン系油脂以外の油脂の含有量は、20~60質量%であり、その上限は58質量%以下、56質量%以下又は55質量%以下、より好ましくは54質量%以下又は52質量%以下であり、さらに50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下又は35質量%以下としてもよい。
これらの要件を満たし、本発明の練込油脂組成物に好ましく用いられるランダムエステル交換油脂γとしては、例えば、パーム核油とパーム油の極度硬化油とを、この順で40~80:20~60の質量比で混合した油脂混合物を常法に則りランダムエステル交換した油脂等を、好ましく用いることができる。
本発明の練込油脂組成物がランダムエステル交換油脂γを含有する場合、良好なボリュームと食感を有するグルテンフリー粉含有パン類を得る観点から、その含有量は、本発明の練込油脂組成物の油相中、好ましくは5質量%以上であり、その上限は、好ましくは35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、18質量%以下又は16質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、14質量%以下又は12質量%以下である。したがって、一実施形態において、ランダムエステル交換油脂γの含有量は、本発明の練込油脂組成物の油相中、好ましくは5~35質量%、5~30質量%又は5~20質量%であり、より好ましくは5~16質量%であり、さらに好ましくは5~12質量%である。
ランダムエステル交換油脂γを、好ましくは上記含量で含有させることにより、一般的にグルテン含量が少ないグルテンフリー粉含有パン類であっても、ボリュームの大きなパンが得られやすい。
なお、油脂配合物γ中に、ラウリン系油脂以外の油脂としてパーム極度硬化油を30~50質量%の範囲で含む場合であっても、ラウリン系油脂を40~80質量%の範囲で含有するものであれば、ランダムエステル交換油脂γとして取り扱うものとする。
(ランダムエステル交換油脂以外の油脂について)
本発明の練込油脂組成物は、上記のランダムエステル交換油脂以外の油脂(非ランダムエステル交換油脂)も含有してよい。
非ランダムエステル交換油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油(ハイエルシン種を含む)、米油、ヒマワリ油(ハイオレイック種を含む)、サフラワー油(ハイオレイック種を含む)、オリーブ油、キャノーラ油等の各種植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及び位置特異性エステル交換から選択される1または2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明の練込油脂組成物は、該非ランダムエステル交換油脂のうち、1種又は2種以上を含有してよい。
本発明の練込油脂組成物の油相における非ランダムエステル交換油脂の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で任意に決定してよいが、好ましくは25質量%以下又は20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下又は5質量%以下である。なお、下限は0質量%である。
(本発明の練込油脂組成物の固体脂含量について)
本発明の練込油脂組成物の35℃におけるSFC(Solid Fat Content、固形脂肪含量ないし固形脂含量)は8~25%であることが好ましい(条件(e))。条件(e)について、35℃におけるSFCは、好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上、さらに好ましくは14%以上であり、その上限値は、好ましくは23%以下、より好ましくは21%以下、さらに好ましくは19%以下又は17%以下である。
本発明の練込油脂組成物の35℃におけるSFCが上記範囲内にあることで、本発明の効果がさらに得られやすい。この理由は定かではないが、35℃におけるSFCが上記範囲を満たすことで、本捏生地のホイロ(通常、35~38℃に設定される)の際に、本発明の練込油脂組成物が生地中でゆっくりと溶解し、徐々に酵素がグルテンフリー粉含有パン類生地に作用するために、グルテンフリー粉含有パン類生地のべたつきが抑制されて作業性が良く、かつ得られるグルテンフリー粉含有パン類のボリュームや食感が向上するものと考えている。
SFCの値は、所定温度における油脂中の固体脂の含有量を示すもので、油脂の熱膨張による比容の変化を利用して求める手法や、核磁気共鳴(NMR)を利用して求める手法等、常法により測定することが可能であるが、本発明においては、AOCS official methodのcd16b-93に記載のパルスNMR(ダイレクト法)にて、測定対象となる試料のSFCを測定した後、測定値を油相量に換算した値を使用する。すなわち、水相を含まない試料を測定した場合は、測定値がそのままSFCとなり、水相を含む試料を測定した場合は、測定値を油相量に換算した値がSFCとなる(以下、SFCの測定について同様である。)。
<条件(c)について>
本発明の練込油脂組成物は、グルテンフリー粉含有パン類生地の製造に際し、直捏生地又は本捏生地の調製に用いられるものである。
パン生地の製造方法にはいくつか種類があり、その中でも代表的なものとしてストレート法と中種法を挙げることができる。
ストレート法は、最初に全ての原材料を混ぜ合わせて直捏生地を調製したうえで、発酵から焼き上げまで行う手法であり、直捏法とも呼ばれる方法である。中種法とは使用する原材料のうち、小麦粉や水、塩、砂糖等の一部を捏ねて発酵させ、中種生地を得た後、この中種生地に残りの原材料を加えてさらに捏ねて得られる本捏生地を得て、焼き上げを行う手法である。
本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物は、グルテンフリー粉含有パン類生地の製造にあたり、直捏生地又は本捏生地の調製に用いられ、好ましくは本捏生地に用いられる。これにより、グルテンフリー粉含有パン類生地のべたつきが抑えられるとともに、得られるグルテンフリー粉含有パン類のボリュームが向上するとともに、食感がソフトで口溶け良好なものとなる。
この理由は現段階では定かでないが、従前知られた酵素によりグルテンフリー粉含有パン類生地を改質する手法としては、グルテンフリー粉自体に酵素処理を施したり、中種法における中種生地の調製の際に酵素を添加してグルテンフリー粉含有パン類生地を改質するものであったところ、過度に低分子化されたグルテンフリー粉が用いられた、若しくは酵素がグルテンフリー粉に作用する時間が結果的に長くなり過度に低分子化されたために、吸水後のグルテンフリー粉がグルテンフリー粉含有パン類生地のべたつきに影響したものと推定される。これに対し、本発明のグルテンフリー粉含有パン類用油脂組成物を直捏生地又は本捏生地の調製の際に用いることにより、これを回避できたものと考えられる。
また、本発明者らは、油脂の内部に酵素を含有させたことにより、酵素が作用する時期を、従前の生地調製前又は調整中から、生地調製後、ホイロ又は焼成中へずらすことにより、グルテンフリー粉含有パン類生地のべたつきが抑制されたものと考えている。また、酵素がグルテンフリー粉に作用する時間が短時間になるため、低分子化しすぎず、結果としてボリュームのある、食感が良好なグルテンフリー粉含有パン類が得られるものと推察している。
<グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物の形態>
本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物は、生地中に容易に分散させることが可能になると共に、本願発明の効果が得られやすくなる点で、油脂を分散相とする水中油型乳化物等の油脂組成物ではなく、油脂を連続相とする油脂組成物の形態をとることが好ましい。
本発明の練込油脂組成物が、油脂を連続相とする油脂組成物の形態をとる場合、マーガリンやファットスプレッド等の水分を含有する乳化物の形態であってもよく、水分を実質的に含有しないショートニングの形態であってもよい。
本発明の練込油脂組成物が油脂を連続相とし、水分を含有する乳化物である場合、その乳化型は、水を分散相とする油中水型であってもよく、油脂が分散した水を分散相とする油中水中油型等の二重乳化以上の多重乳化型であってもよい。
なお、本発明の練込油脂組成物は、可塑性の有無は問われないが、グルテンフリー粉含有パン類生地中に均一に分散させる観点から、可塑性を有していることが好ましい。すなわち、本発明の練込油脂組成物は、可塑性を有する、油脂を連続相とする油脂組成物(以下、単に「可塑性油脂組成物」ともいう。)の形態であることが好ましい。
本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物中の油脂量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、上限は、好ましくは99.6質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。なお、後述するその他成分のうち、油脂を含有するその他成分を本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物に含有させる場合にはその油脂もあわせて考慮するものとする。
また、本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物中の水分量は、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上であり、上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは25質量%以下又は20質量%以下である。なお、後述するその他成分のうち、水分を含有するその他成分を本発明の練込油脂組成物に含有させる場合にはその水分もあわせて考慮するものとする。
<その他成分について>
本発明の練込油脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、上記の酵素及び油脂以外のその他の成分を含有することができる。
上記のその他の成分としては、例えば、水、蛋白質、糖類、甘味料、乳化剤、増粘安定剤、食塩・塩化カリウム等の塩味剤、無機塩類、乳清ミネラル、乳脂肪球皮膜、β―カロチン・カラメル等の着色料、酢酸・乳酸等の酸味料、調味料、蒸留酒、ワイン・日本酒・ビール等の醸造酒、各種リキュール、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス・カカオパウダー等のカカオ製品、コーヒー・紅茶・緑茶・ハーブ・穀類・豆類・野菜類・肉類魚介類・卵類等の食品素材、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、保存料、苦味料、酸味料、ジャム、フルーツソース、コンソメ・ブイヨン等の植物及び動物エキス、食品添加剤等を挙げることができる。その他の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の成分は、本発明の目的・効果を損なわない限り、任意に使用することができるが、その含有量は、好ましくは、本発明の練込油脂組成物中、30質量%以下である。
なお、穀類、豆類等は、本発明の練込油脂組成物が含有する酵素が作用してしまう場合があり、得られるグルテンフリー粉含有パン類生地がべたついたり、グルテンフリー粉含有パン類のボリュームが低減してしまう場合がある。そのため、本発明の練込油脂組成物は、穀類、豆類等を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、穀類、豆類等についていう「実質的に含有しない」とは、本発明の練込油脂組成物におけるこれらの含有量が、1質量%以下であることを意味し、該含有量は好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
<グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物の製造方法>
次に、本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)について説明する。
本発明の製造方法は、特に限定されるものではなく、油相を構成する油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である油脂組成物中に、最終的に酸化還元酵素を油脂組成物100gあたり45~500単位含有させることが可能である限り、公知の方法で製造することができる。
まず、油脂組成物の調製について述べる。
本発明の練込油脂組成物がショートニングの形態をとる場合は、ランダムエステル交換油脂を80質量%以上含有する油脂に、必要により油溶性の乳化剤、その他の原材料等を添加した油相を用意する。本発明の練込油脂組成物がマーガリン、ファットスプレッド等の水分を含有する乳化物の形態をとる場合は、ランダムエステル交換油脂を80質量%以上含有する油脂に必要により油溶性の乳化剤、その他の原材料等を添加した油相と、水に必要により水溶性の乳化剤、その他の材料等を添加した水相とを準備し、油相と水相とを混合して、油中水型乳化物を用意する。
次に、必要に応じて、ショートニングの場合は油相を、マーガリンの場合は油中水型乳化物を、殺菌処理してよい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でもよく、プレート型熱交換機、掻き取り式熱交換機等を用いた連続方式でもよい。また、殺菌温度は好ましくは80~100℃、さらに好ましくは80~95℃、さらにより好ましくは80~90℃とする。その後、必要に応じて、油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は好ましくは40~60℃、さらに好ましくは40~55℃、さらにより好ましくは40~50℃とする。
次に冷却、好ましくは急冷可塑化を行なう。この急冷可塑化は、例えば、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機が挙げられ、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターをとの組合せが挙げられる。これらの装置の後に、例えば、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)、レスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
急冷可塑化の速度は、特に限定されないが、通常、-2~-8℃/分であり、好ましくは-4~-6℃/分である。また、急冷可塑化の最終温度は、特に限定されないが、通常、5~15℃であり、好ましくは、8~12℃である。
次に、酵素を含有させる方法について述べる。
先述のとおり、本発明の練込油脂組成物は、酸化還元酵素に加えて、好ましくはアミラーゼ(より好ましくはαアミラーゼ)を含有する。本発明の練込油脂組成物の製造にあたり、複数の酵素を用いる場合には各酵素を順次別個に添加してもよく、粉末状の酵素を事前に混合してから添加してもよい。また、酵素を含む水溶液を添加、混合してもよい。
例えば、本発明の練込油脂組成物が、可塑性油脂組成物の形態をとるとき、その製造の過程で、酵素を複数用いる場合には、それぞれ別個に、或いは事前に各酵素を混合したものを直接分散してから、急冷可塑化により可塑性油脂組成物を製造することができ、水相を含有する場合は水相に各酵素を別個に、或いは事前に各酵素を混合したものを分散させてから、油相と共に急冷可塑化することにより、可塑性油脂組成物を製造することができる。
また、可塑性油脂組成物の製造の過程で、急冷可塑化後に上記の酵素、又は上記の酵素を含有する水溶液を添加、混合する方法を採用してもよい。
本発明においては、高い酵素活性を有し、且つ、保存時の酵素活性の低下を抑制する観点から、急冷可塑化後に、酵素、又は上記の酵素を含有する水溶液を添加、混合することが好ましい。
また、本発明の練込油脂組成物は、その製造工程において比重を低下させてもよい。
本発明の練込油脂組成物の比重を低下させる際は、上記のとおりグルテンフリー粉含有パン類用油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させることで調整する。本発明の練込油脂組成物の25℃における比重は、好ましくは0.90未満、より好ましくは0.87以下、さらに好ましくは0.84以下、さらにより好ましくは0.80以下であり、下限は、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.60以上である。したがって、一実施形態において、本発明の練込油脂組成物の25℃における比重は、好ましくは0.90未満、より好ましくは0.4~0.87、さらに好ましくは0.5~0.84、さらにより好ましくは0.60~0.80である。練込油脂組成物の25℃における比重を上記の数値範囲内に低下させることにより、本発明の効果が得られやすくなる。
本発明の練込油脂組成物の比重は、容積法により測定することができる。具体的には、一定容積の計量カップに油脂組成物を充填し、該カップ内の油脂組成物の質量を測定し、その質量を計量カップの容積で除して得られる数値を練込油脂組成物の比重とする。なお、練込油脂組成物の比重は25℃において測定するものとする。
本発明の練込油脂組成物の比重を上記範囲とする際には、従前知られた手法を用いてよい。グルテンフリー粉含有パン類用油脂組成物の製造工程の任意の時点で、例えば、(i)空気、窒素、酸素等の食品に使用することのできるガスを、冷却可塑化中、又は冷却可塑化後の油脂組成物中に、注入、混和、又はその両方を行うことで、油脂組成物中にガスを分散させて比重を上記範囲内とする手法、(ii)冷却可塑化した油脂組成物を泡立て器等でかき混ぜて空気を含気させ、比重を上記範囲内とする手法が挙げられる。
[グルテンフリー粉含有パン類生地およびグルテンフリー粉含有パン類]
本発明の練込油脂組成物を用いてグルテンフリー粉含有パン類の生地、ひいてはグルテンフリー粉含有パン類を製造することができる。本発明は、斯かるグルテンフリー粉含有パン類生地およびグルテンフリー粉含有パン類も提供する。
<グルテンフリー粉含有パン類生地>
本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地(以下、単に「本発明のパン類生地」ともいう。)は、本発明の練込油脂組成物を含有する。本発明の練込油脂組成物に関しては、それが含む油脂や酵素、満たすべき条件(a)~(c)をはじめ、満たすことが好適な条件(d)、(e)など、先述の[グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物]欄にて説明したとおりである。なお、本発明のグルテンフリー粉含有パン類は、後述のとおり、本発明のパン類生地の加熱処理品である。
まず、本発明のパン類生地の種類、及び該パン類生地中の練込油脂組成物の含有量について述べる。
本発明のパン類生地の種類は、特に限定されず、具体的には例えば、食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、セミハードロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地、ハンバーガーバンズ生地、イングリッシュマフィン生地、イーストドーナツ生地等が挙げられる。
本発明のパン類生地における、本発明の練込油脂組成物の含有量は、パン類生地の種類、練込油脂組成物中の酵素量等によっても異なり、適宜決定してよいが、本発明のパン類生地に用いられる澱粉類100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下であり、下限は、本発明のパン類生地に用いられる澱粉類100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上である。本発明の練込油脂組成物の含有量を上記範囲とすることで、生地の作業性にいっそう優れ、ボリューム及び食感がより良好なパン類を得やすいため好適である。
本発明のパン類生地の製造にあたり、本発明の練込油脂組成物以外の油脂組成物(市販のショートニング、マーガリン、ファットスプレッド、バター等を指し、本明細書において、「他の油脂組成物」ともいう。)を本発明の練込油脂組成物と併用する場合においては、該他の油脂組成物と本発明の練込油脂組成物との合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。本発明の練込油脂組成物と他の油脂組成物との合計含有量を100質量%としたとき、本発明の練込油脂組成物の含有量は好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上又は90質量%以上であり、上限は100質量%である。
次に、本発明のパン類生地の製造に用いられる、澱粉類について述べる。
本発明のパン類生地は、澱粉類として小麦粉類とグルテンフリー粉を含有する。
本発明のパン類生地の製造に用いられる小麦粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、胚芽を挙げることができるが、強力粉、準強力粉、中力粉のいずれか1つ以上を含むことが好ましい。
本発明のパン類生地に含有されるグルテンフリー粉とは、パン類生地の製造に用いられる澱粉類のうち、小麦粉類以外のものを指し、例えば、米粉、雑穀粉、豆粉、堅果粉、澱粉を挙げることができる。
本発明のパン類生地の製造に用いることができる米粉としては、例えば、水稲米、陸稲米、玄米、古代米、黒米、赤米、緑米、精米等を製粉したものを挙げることができる。
本発明のパン類生地の製造に用いることができる雑穀粉としては、例えば、キビ、粟、ヒエ、モロコシ、トウモロコシ、ライ麦、大麦、オート麦、ハトムギ、そば、小豆、アマランサス、キヌア、シコクビエ、白ゴマ、黒ゴマ等を製粉したものを挙げることができる。
本発明のパン類生地の製造に用いることができる豆粉としては、例えば、大豆、えんどう豆、あずき、ひよこ豆等を製粉したものを挙げることができ、いわゆるきな粉を用いることもできる。
本発明のパン類生地の製造に用いることができる堅果粉としては、例えば、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉等の堅果粉等を挙げることができる。
本発明のパン類生地の製造に用いることができる澱粉としては、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の未加工澱粉、これらの未加工澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉を挙げることができる。
本発明のパン類生地においては、これらのグルテンフリー粉のうちから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
本発明においては得られるグルテンフリー粉含有パン類の風味を良好なものとする観点や、食感をよりソフトなものとする観点から、グルテンフリー粉として、米粉を50質量%以上含有させることが好ましく、米粉のみを含有させることがより好ましい。
グルテンフリー粉を得るための製粉工程は、乾式及び湿式のいずれであってもよく、任意の製粉工程を用いることができる。グルテンフリー粉の平均粒子サイズは、通常、20μm以上500μm以下である。グルテンフリー粉の平均粒子径は、例えば、レーザー回折分散法などの方法により測定することができる。
なお、グルテンフリー粉のアミロース含量は、好ましくは5質量%以上であり、上限は、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらにより好ましくは15質量%以下、10質量%以下である。したがって、一実施形態において、グルテンフリー粉のアミロース含量は、好ましくは5~25質量%であり、より好ましくは5~20質量%であり、さらにより好ましくは5~15質量%又は5~10質量%である。アミロース含量が上記範囲を満たすグルテンフリー粉を用いることにより、得られるグルテンフリー粉含有パン類がよりソフトな食感となりやすい。このような米粉の原料米としては、例えば、ゆめふわり、ミルキークイーン等の低アミロース米、ほしのこ、こなだもん等の中アミロース米、ミズホヂカラ、モミマロン等の高アミロース米が挙げられる。米粉の原料米は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
本発明のパン類生地に使用する澱粉類に占めるグルテンフリー粉の割合は、通常、5質量%以上であり、その上限は、通常、50質量%以下であり、好ましくは38質量%以下又は35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、28質量%以下又は26質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、24質量%以下又は22質量%以下である。したがって、一実施形態において、本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地に使用する澱粉類に占めるグルテンフリー粉の割合は、通常、5~50質量%であり、好ましくは5~38質量%又は5~35質量%であり、より好ましくは5~30質量%、5~28質量%又は5~26質量%であり、さらに好ましくは5~25質量%である。
また、本発明のパン類生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の含有量は、通常、50質量%以上であり、好ましくは62質量%以上又は65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、72質量%以上又は74質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上、76質量%以上又は78質量%以上であり、その上限は、通常、95質量%以下である。したがって、一実施形態において、本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の割合は、通常、50~95質量%であり、好ましくは62~95質量%又は65~95質量%であり、より好ましくは70~95質量%、72~95質量%以上又は74~95質量%以上であり、さらに好ましくは75~95質量%である。
本発明のパン類生地の製造に用いられる澱粉類のうち、グルテンフリー粉の割合、及び小麦粉類の割合が上記数値範囲を満たすことにより、バイタルグルテンを使用せずとも、又は、バイタルグルテンの使用量を低減していても、小麦粉の使用量を抑えつつ、良好なボリューム、食感、風味を有し、べたつきが抑えられたグルテンフリー粉含有パン類生地を得ることができる。
次に、本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地中に含有しうる、バイタルグルテンの含有量について述べる。
小麦粉類以外の澱粉類を使用したパン類生地を調製する場合、不足する小麦粉類由来のグルテンを補う観点から、生地の調製に使用される澱粉類100質量部に対して通常1~5質量部、好ましくは2~3質量部程度のバイタルグルテンを添加することが一般的である。しかし、バイタルグルテン由来の特徴的な風味や食感が、小麦粉類以外の澱粉類を使用したパン類の風味や食感を阻害する場合があった。
本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地は、本発明の練込油脂組成物を用いて製造されることにより、従前のグルテンフリー粉含有パン類とは異なり、グルテンフリー粉を含有する場合であっても、バイタルグルテンの使用量を低減、又はバイタルグルテンを不使用とすることが可能である。
バイタルグルテンの添加量は、得られるグルテンフリー粉含有パン類の風味や食感に悪影響を生じない範囲で任意に設定してよいが、本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地中の澱粉類100質量部に対して、バイタルグルテンが好ましくは3質量部未満であり、より好ましくは2.5質量部以下又は2質量部以下であり、さらに好ましくは1.5質量部以下、1質量部以下又は0.5質量部以下であり、下限は、0質量部である。
本発明において用いてよいバイタルグルテンとは、生のグルテンの活性を損なわないように乾燥し粉末状にしたグルテンであり、活性グルテンともいう。具体的には、小麦蛋白質であるグリアジンとグルテニンとの複合体を主な構成成分とし、その総蛋白含有量が、典型的には60~95質量%であり、より典型的には65~90質量%であり、さらに典型的には70~85質量%である小麦蛋白質含有物である。バイタルグルテンは、通常、粉体状製品として市場に流通しており、その粉体状製品を水等に戻したときには、生地様の伸展性や弾力性を呈する。
バイタルグルテンは、小麦粉と水とを混捏した生地から澱粉等の水溶性成分を洗い流して、その残留物を回収すること等により得ることができる。例えば、「エマソフトM-1000」(商品名、理研ビタミン株式会社製)、「AグルG」(商品名、グリコ栄養食品株式会社製)等の市販品を用いることができる。
次に、本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地に含有しうる、その他原料について述べる。
本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地においては、必要に応じ、一般のパン類の材料として使用することのできる、その他の原料を配合してよい。該その他の原料としては、例えば、水、上記の他の油脂組成物、パン酵母(イースト)、イーストフード、糖類、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、増粘安定剤、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、酸化防止剤、デキストリン、チーズ類・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳・蛋白質濃縮ホエイ等の乳又は乳製品、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、蒸留酒・醸造酒・各種リキュール等の酒類、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩・塩化カリウム等の塩味剤、ベーキングパウダー、カカオ及びカカオ製品・コーヒー及びコーヒー製品・ハーブ・果実・果汁・ジャム・フルーツソース・調味料・香辛料・野菜類・肉類・魚介類等の各種食品素材、保存料、苦味料、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、香料、食品添加物等を挙げることができる。
その他原料は、目的とする効果を損なわない限り、任意の量で使用してよいが、水については、例えばグルテンフリー粉含有パン類生地中の、澱粉類100質量部に対して、好ましくは30質量部以上であり、上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。したがって、一実施形態において、水含有量は、グルテンフリー粉含有パン類生地中の、澱粉類100質量部に対して、好ましくは30~100質量部、より好ましくは30~70質量部である。また、水以外のその他の原料については、澱粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用してよい。なお、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、水の量は、水以外のその他の原料に含まれる水分も含めた量である。
(グルテンフリー粉含有パン類生地の製法)
本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地は、通常使用されている、あらゆるパン類のための製造方法を適用することができ、具体的には例えば、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法が挙げられるが、好ましくは直捏法又は中種法で製造され、より好ましくは中種法で製造される。これらの方法で製造することにより、本発明の練込油脂組成物を用いたパン類生地のべとつきが好ましく抑制され、また得られるグルテンフリー粉含有パン類が良好なボリュームを有するものとなりやすい。
なお、中種法で本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地を製造する場合、本発明の練込油脂組成物は、中種生地の製造時ではなく、本捏生地の製造時に添加することが好ましい。本発明の練込油脂組成物を発酵後の中種に添加するタイミングは、本捏生地の製造時であれば、特に限定されず、残りの原料の添加前に添加してもよく、残りの原料と共に添加してもよく、残りの原料を添加した後に添加してもよい。残りの原料と練込油脂組成物は、各々を少しずつ一緒に又は交互に添加してもよい。本捏生地の製造時に添加することにより、グルテンフリー粉含有パン類生地のべたつきが抑えられると共に、ボリュームや食感に優れたグルテンフリー粉含有パン類が得られやすくなる。
したがって、本発明の練込油脂組成物は、好ましくは、中種法にてグルテンフリー粉含有パン類生地を製造するにあたって、本捏生地を製造する際に用いられる。本発明は、斯かるグルテンフリー粉含有パン類生地(本捏生地)の製造方法も提供する。一実施形態において、本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地の製造方法は、以下の工程(1)~(3)を含み、工程(3)で用いる油脂組成物が、油脂と酵素を含み、以下の条件(a)及び(b)を満たすことを特徴とする。
工程(1):小麦粉類、酵母、及び水を含む原料を混合し、予備混合物を得る工程
工程(2):予備混合物を発酵させる工程
工程(3):発酵させた予備混合物に、さらに、小麦粉類、グルテンフリー粉、及び水を含む原料と、油脂組成物を混合し、本捏生地を得る工程
(a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
(b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
工程(1)~(3)における混合や発酵等の処理は常法にしたがって実施してよく、工程(1)で用いる小麦粉類や酵母等の原料、工程(3)で用いるグルテンフリー粉や油脂組成物、条件(a)及び(b)については、その好適な態様も含め、先述のとおりである。なお、工程(3)において、発酵させた予備混合物(発酵させた中種)に、小麦粉類やグルテンフリー粉を含む原料(「残りの原料」ともいう。)と、油脂組成物(本発明の練込油脂組成物)とを添加するに際し、残りの原料の添加前に油脂組成物を添加してもよく、残りの原料と共に油脂組成物を添加してもよく、残りの原料を添加した後に油脂組成物を添加してもよい。残りの原料と油脂組成物は、各々を少しずつ一緒に又は交互に添加してもよい。
本捏生地を得た後の工程としては、特に限定されないが、例えば、一次発酵(フロアタイム)、分割、丸目、ベンチタイム、成形、ホイロ(二次発酵)、焼成をこの順により行う方法が挙げられる。本捏生地を得た後から、焼成前までの各種工程における生地の処理温度は特に限定されないが、好ましくは20~45℃、より好ましくは25~40℃である。本捏生地を上記数値範囲内の温度で処理することにより、グルテンフリー粉含有パン類生地のべたつきが抑えられると共に、ボリュームや食感に優れたグルテンフリー粉含有パン類が得られやすくなる。
なお、得られたグルテンフリー粉含有パン類生地は冷蔵保存、又は冷凍保存することができる。
<グルテンフリー粉含有パン類>
本発明のグルテンフリー粉含有パン類は、本発明のグルテンフリー粉含有パン類生地を加熱処理することにより得られる。すなわち、本発明のグルテンフリー粉含有パン類は、本発明のパン類生地の加熱処理品である。本発明のパン類生地の加熱処理の方法は特に限定されず、例えば、焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。
加熱処理により得られるグルテンフリー粉含有パン類の種類は特に限定されず、各種のパン類であってよい。このようなパン類としては、例えば、食パン、ソフトロール、セミハードロール、ハードロール、フランスパン、バターロール、ハンバーガーバンズ、イングリッシュマフィン、スイートロール、デニッシュ、ペストリーが挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
<使用したランダムエステル交換油脂>
(製造例1:ランダムエステル交換油脂RIE-1)
加熱により液状としたパームオレイン(ヨウ素価53)を4つ口フラスコにとり、これを撹拌しながら更に液温が90℃となるまで加熱した。90℃に達温後、油脂100質量部に対してナトリウムメトキシド0.2質量部を添加し、真空下で1時間加熱し、ランダムエステル交換反応を行った。この後、クエン酸を添加してナトリウムメトキシドを中和した後、常法により漂白工程及び脱臭工程を行い、ランダムエステル交換油脂RIE-1(以下、単に「RIE-1」と記載する。後述するRIE-2~4も同様)を得た。なお、RIE-1は、ランダムエステル交換油脂αに該当する。
(製造例2:ランダムエステル交換油脂RIE-2)
パームオレインに代えて、パームスーパーオレイン(ヨウ素価63)を用いた他は、製造例1と同様にランダムエステル交換及び精製を行い、RIE-2を得た。なお、RIE-2はランダムエステル交換油脂αに該当する。
(製造例3:ランダムエステル交換油脂RIE-3)
パームオレインに代えて、溶解したパーム油65質量部と、溶解したパーム極度硬化油(ヨウ素価1以下)35質量部とを混合した油脂混合物を用いた他は、製造例1と同様にランダムエステル交換及び精製を行い、RIE-3を得た。なお、RIE-3はランダムエステル交換油脂βに該当する。
(製造例4:ランダムエステル交換油脂RIE-4)
パームオレインに代えて、溶解したパーム核油50質量部と、溶解したパーム極度硬化油(ヨウ素価1以下)50質量部とを混合した油脂混合物を用いた他は、製造例1と同様にランダムエステル交換及び精製を行い、RIE-4を得た。なお、RIE-4はランダムエステル交換油脂γに該当する。
<使用した酵素製剤等>
以下の実施例、比較例では、下記の酵素剤を用いた。なお、u/gは酵素剤1gあたりの活性値である。各々の1uは製造者の示す定義による。
グルコースオキシダーゼ:3150u/g、至適温度が35~50℃の範囲を満たすもの
αアミラーゼ(マルトース生成アミラーゼ):10000u/g、至適温度が70~90℃の範囲を満たすもの
ヘミセルラーゼ:5000u/g、Bacillus subtili由来のヘミセルラーゼ、至適温度が25~40℃の範囲を満たすもの
<使用したグルテンフリー粉>
以下の実施例、比較例では、グルテンフリー粉として下記の米粉A~Cを用いた。なお、米粉A~Cの平均粒子径は何れも上記の範囲内であった。
米粉A
:水稲品種「ゆめふわり」の米粉(アミロース含量8%)
米粉B
:水稲品種「ほしのこ」の米粉(アミロース含量16.5%)
米粉C
:水稲品種「ミズホチカラ」の米粉(アミロース含量24%)
<検討1:使用するグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物について>
<実施例1~16、比較例1~3、コントロールの製造>
表1又は表2に示す種類及び量の油脂を、それぞれ60℃に加熱して溶解・混合し、油脂配合物を調製してこれを油相とした。ここで、実施例1、4及び比較例3で使用した液状油は菜種油である。この中に水を水相として表1又は表2に示す量を加えて混合し、乳化させ、油中水型の予備乳化物を得た。
この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化しながら、窒素ガスを注入、混和してガスを分散させた。
続いて、表1又は表2に示す量の各種酵素を添加・混合し、油中水型乳化物のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を調製した。
得られたグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物の25℃における比重、並びに35℃におけるSFCを測定し、表1又は表2に示す。表1又は表2において、各油脂の量は、油脂の合計量(油脂配合物)を100質量%とした場合の配合量(質量%)であり、油脂以外の各成分の量は、グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物の合計配合量を100質量%とした場合の各配合量(質量%)である。
なお、酵素を含有させない他は、実施例・比較例と同様に製造し、コントロールを調製した。
Figure 2024047420000001
Figure 2024047420000002
<ワンローフ食パンの製造>
調製したグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物の各々を用いて、下記の製法で、ワンローフ食パンを製造した。
強力粉(商品名「カメリア」:日清製粉製)70質量部、パン酵母2.2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。
この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。
この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉20質量部、米粉A10質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。ここで、グルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物5質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で4分ミキシングを行ない、食パン用の本捏生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを20分とった後、380gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、ワンローフ食パン用の型に1個入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ25分焼成して、グルテンフリー粉含有パン類であるワンローフ食パンを得た。
以下、使用したグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物に応じて、得られたワンローフ食パンをCex-1~3、Ex-1-1~16と表記する。検討2以降も同様である。
<評価>
-生地作業性-
グルテンフリー粉含有パン類生地の生地作業性について、下記の評価基準にしたがって評価し、結果を表3及び表4に示した。
●生地作業性の評価基準
+:べとつきもなく、良好な作業性であった。
±:わずかにべとつきが感じられるが、良好な作業性であった。
―:べとつきがあり、作業性が劣るものであった。
-グルテンフリー粉含有パン類のボリューム-
得られたグルテンフリー粉含有パン類であるワンローフ食パンのボリュームについて、下記のとおり評価を行った。
詳細には、得られた食パンを室温で1時間置き、熱が取れた後、ポリエチレン袋に密封し、室温(25℃)に保管した。焼成1日後、3Dレーザースキャナー(株式会社アステックス製)にて体積(ml)を測定し、体積(ml)/質量(g)を比容績とし、パンのボリュームを評価した。結果を表3又は表4に示す。ボリュームについては、比容積の値が4.8以上のものを合格品とした。
-グルテンフリー粉含有パン類の食感-
得られたグルテンフリー粉含有パン類であるワンローフ食パンの食感(ソフト性と歯切れ)について、下記のとおり評価を行った。
詳細には、10名の専門パネラーにより、コントロールの油脂組成物(表1中、Cont.と表記)を用いて製造されたワンローフ食パン(表3中、Cont.と表記)をコントロールとして、下記の評価基準にしたがって評価を行った。食感の評価は2cm幅にカットしたワンローフ食パンのスライスを喫食することにより評価を行った。
●食感(ソフト性)の評価基準
5点:コントロールと比較してきわめて良好。
3点:コントロールと比較して良好。
1点:コントロールと比較してやや悪い。
0点:コントロールと比較して悪い。
●食感(歯切れ)の評価基準
5点:コントロールと比較してきわめて良好。
3点:コントロールと比較して良好。
1点:コントロールと比較してややくちゃつく。
0点:コントロールと比較してくちゃつきが激しい。
次いで、各専門パネラーの評価点(0~5点)を合計し、求めた合計点を次の表示方法で表3及び表4に示した。
+++:45~50点、
++ :39~44点、
+ :34~38点、
± :30~33点、
- :24~29点、
-- :18~23点、
---:17点以下
評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。なお、すべての項目について、±以上の評価を得たものを合格品とした。
Figure 2024047420000003
Figure 2024047420000004
表3及び4の結果から、酸化還元酵素を所定量含みかつ油脂の80質量%がランダムエステル交換油脂である実施例1~16の油脂組成物を用いて製造したEx-1-1~16のグルテンフリー粉含有パン類(食パン)は、生地作業性、ボリューム、食感(ソフト性、歯切れ)のいずれも良好であった。なかでも、ランダムエステル交換油脂α、β、及びγを好適量にて含むと共に酸化還元酵素を好適量にて含む油脂組成物を用いて製造したEx-1-7~16の食パンは、より良好な食感(ソフト性、歯切れ)を呈することを確認した。
<検討2:使用するグルテンフリー粉の種類について>
検討1で最も評価の高かった、実施例16のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を用いて、米粉Aの代わりに、米粉B、又は米粉Cを用いる他はEx-1-16と同様に製造し、グルテンフリー粉含有パン類であるワンローフ食パン(Ex-2-1、Ex-2-2)を得た。
得られたワンローフ食パンを、検討1と同様に評価を行った結果を表5に示す。
Figure 2024047420000005
本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を用いることで、米粉のアミロース含量によらず、生地作業性、ボリューム、食感(ソフト性、歯切れ)のいずれも良好な食パンが得られた。なかでも、アミロース含量が好適範囲にある米粉Aや米粉Bを用いたEx-1-16、Ex-2-1の食パンは一際良好な結果を奏することを確認した。
<検討3:使用する米粉の量について>
検討1で最も評価の高かった、実施例16のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を用い、生地中の米粉の量を代えて、以下のとおり、グルテンフリー粉含有パン類であるワンローフ食パン(Ex-3-1、Ex-3-2)を得た。得られたワンローフ食パンを、検討1と同様に評価を行った結果を表6に示す。
(ワンローフ食パンEx-3-1の製造)
中種醗酵の終了した生地をミキサーボウルに投入した後、強力粉10質量部、米粉A20質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加した他は、Ex-1-16と同様に製造し、ワンローフ食パンEx-3-1を得た。
(ワンローフ食パンEx-3-2の製造)
中種醗酵の終了した生地をミキサーボウルに投入した後、米粉A30質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加した他は、Ex-1-16と同様に製造し、ワンローフ食パンEx-3-2を得た。
Figure 2024047420000006
本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を用いることで、生地中の米粉の含有量を増やしても、生地作業性、ボリューム、食感(ソフト性、歯切れ)のいずれも良好な食パンが得られた。
<検討4:使用するバイタルグルテンの量についての検討>
グルテンフリー粉含有パン類に一般的に用いられるバイタルグルテンの使用量について、検討を行った。具体的には、検討1で最も評価の高かった、実施例16のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を用い、生地中のバイタルグルテン(商品名:「AグルG」、グリコ栄養食品株式会社製、総蛋白含有量73.5%)の量を変えて、以下のとおり、グルテンフリー粉含有パン類であるワンローフ食パン(Cont.-4-1、Ex-4-2、Cont.-4-2、Ex-4-3、Cont.-4-3)を得た。なお、検討3の検討結果をもとに、ボリュームやソフト性が良好でありながら、グルテンフリー粉での小麦粉置換量が高い得られたワンローフ食パンについて、検討1と同様の評価に加えて、以下の評価基準で風味評価を行った結果を表7に示す。
(ワンローフ食パンCont.-4-1の製造)
中種醗酵の終了した生地をミキサーボウルに投入した後、強力粉10質量部、米粉A20質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加した他は、コントロールと同様に製造し、ワンローフ食パンCont.-4-1を得た。
(ワンローフ食パンEx-4-2の製造)
中種醗酵の終了した生地をミキサーボウルに投入した後、バイタルグルテン1質量部、強力粉10質量部、米粉A20質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加した他は、Ex-1-16と同様に製造し、ワンローフ食パンEx-4-2を得た。
(ワンローフ食パンCont.4-2の製造)
中種醗酵の終了した生地をミキサーボウルに投入した後、バイタルグルテン1質量部、強力粉10質量部、米粉A20質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加した他は、コントロールと同様に製造し、ワンローフ食パンCont.4-2を得た。
(ワンローフ食パンEx-4-3の製造)
中種醗酵の終了した生地をミキサーボウルに投入した後、バイタルグルテン3質量部、強力粉10質量部、米粉A20質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加した他は、Ex-1-16と同様に製造し、ワンローフ食パンEx-4-3を得た。
(ワンローフ食パンCont.4-3の製造)
中種醗酵の終了した生地をミキサーボウルに投入した後、バイタルグルテン3質量部、強力粉10質量部、米粉A20質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部及び水25質量部を添加した他は、コントロールと同様に製造し、ワンローフ食パンCont.4-3を得た。
<風味の評価>
得られたグルテンフリー粉含有パン類であるワンローフ食パンの風味について、下記のとおり評価を行った。
詳細には、10名の専門パネラーにより、コントロールの油脂組成物(表7中、Cont.と表記)を用いて製造されたワンローフ食パン(表7中、Cont.と表記)をコントロールとして、下記の評価基準にしたがって評価を行った。風味の評価は2cm幅にカットしたワンローフ食パンのスライスを喫食することにより評価を行った。評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
●風味の評価基準
5点:コントロールと比較して、バイタルグルテンに由来する風味が感じられない。
3点:コントロールと比較して、バイタルグルテンに由来する風味がわずかに感じられるが許容範囲内である。
1点:コントロールと比較して、バイタルグルテンに由来する風味が強く感じられる。
0点:コントロールと比較して、バイタルグルテンに由来する風味が非常に強く感じられる。
次いで、各専門パネラーの評価点を合計し、求めた合計点を次の表示方法で表7に示した。
+++:45~50点、
++ :39~44点、
+ :34~38点、
± :30~33点、
- :24~29点、
-- :18~23点、
---:17点以下
Figure 2024047420000007
バイタルグルテンを一定量用いることにより、得られた食パンのボリュームは増大するものの、バイタルグルテンの配合量が増すと食感(ソフト性、歯切れ)や風味が悪化する傾向にあることが確認された(Cont.4-1、4-2、4-3)。これに対し、本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を用いることにより、得られた食パンは、バイタルグルテンを用いずともバイタルグルテンを十分量用いた場合と同等の十分なボリュームを呈することが確認された(Ex3-1とCont.-4-3の対比)。さらには、本発明のグルテンフリー粉含有パン類用練込油脂組成物を用いることにより、バイタルグルテンの使用に伴う食感の悪化を抑制し得、良好な食感を実現できることが確認された。

Claims (9)

  1. 生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の含有量が50~95質量%であり且つグルテンフリー粉の含有量が5~50質量%であるグルテンフリー粉含有パン類用の練込油脂組成物であって、油脂と酵素を含み、以下の条件(a)~(c)を満たす、練込油脂組成物。
    (a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
    (b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
    (c)直捏生地又は本捏生地に用いられる油脂組成物である。
  2. 以下の条件(d)を満たす、請求項1記載の練込油脂組成物。
    (d)油脂組成物100gあたり、アミラーゼを150~1500単位含有する。
  3. 以下の条件(e)を満たす、請求項1又は2記載の練込油脂組成物。
    (e)35℃における固体脂含量が8~25%である。
  4. 生地に使用する澱粉類に占める小麦粉類の含有量が50~95質量%であり且つグルテンフリー粉の含有量が5~50質量%であるグルテンフリー粉含有パン類の生地であって、油脂と酵素を含み且つ以下の条件(a)~(c)を満たす練込油脂組成物を含有する、生地。
    (a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
    (b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
    (c)直捏生地又は本捏生地に用いられる油脂組成物である。
  5. 前記練込油脂組成物が、以下の条件(d)及び(e)の少なくとも一つをさらに満たす、請求項4記載のグルテンフリー粉含有パン類生地。
    (d)油脂組成物100gあたり、アミラーゼを150~1500単位含有する。
    (e)35℃における固体脂含量が8~25%である。
  6. グルテンフリー粉のアミロース含量が5~25質量%である、請求項4又は5のグルテンフリー粉含有パン類生地。
  7. 請求項4又は5に記載のグルテンフリー粉含有パン類生地の加熱処理品である、グルテンフリー粉含有パン類。
  8. 請求項6に記載のグルテンフリー粉含有パン類生地の加熱処理品である、グルテンフリー粉含有パン類。
  9. 以下の工程(1)~(3)を含むグルテンフリー粉含有パン類生地の製造方法であって、工程(3)で用いる油脂組成物が、油脂と酵素を含み、以下の条件(a)及び(b)を満たす、グルテンフリー粉含有パン類生地の製造方法。
    工程(1):小麦粉類、酵母、及び水を含む原料を混合し、予備混合物を得る工程
    工程(2):予備混合物を発酵させる工程
    工程(3):発酵させた予備混合物に、さらに、小麦粉類、グルテンフリー粉、及び水を含む原料と、油脂組成物を混合し、本捏生地を得る工程
    (a)油脂組成物100gあたり、酸化還元酵素を45~500単位含有する。
    (b)油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂である。
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