JP2024047412A - 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】細線再現性に優れ、ポジゴースト及び下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体の提供。【解決手段】導電性基体と、前記導電性基体の上に設けられる下引層と、前記下引層の上に設けられる感光層と、を備え、前記下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物の硬化物で構成される、電子写真感光体。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
特許文献1には、支持体、該支持体上に形成された下引き層および該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該下引き層は、電子輸送膜であり、かつ、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を有する有機酸金属塩を含有することを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
特開2015-043056号公報
従来の電子写真感光体では、細線再現性を向上させようとすると、繰り返し画像を形成したときに、前サイクルでの画像露光部の次サイクルでの感光体表面電位が低下し、その部分の濃度が濃くなり、次サイクルでの画像に前サイクルの画像が濃く浮き出てしまう、「ポジゴースト」と称する画質欠陥が生じることがあった。また、ポジゴーストを抑制するために採用する手法によっては、下引層の剥がれが生じてしまうこともある。
そこで、本開示の課題は、導電性基体と、前記導電性基体の上に設けられる下引層と、前記下引層の上に設けられる感光層と、を備える電子写真感光体において、下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分未満である組成物の硬化物で構成される場合に比べて、細線再現性に優れ、ポジゴースト及び下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体を提供することである。
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1> 導電性基体と、
前記導電性基体の上に設けられる下引層と、
前記下引層の上に設けられる感光層と、を備え、
前記下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物の硬化物で構成される、
電子写真感光体。
<2> 前記組成物の70℃におけるゲル化時間が40分以上120分以下である、<1>に記載の電子写真感光体。
<3> 前記組成物の70℃におけるゲル化時間が60分以上90分以下である、<1>又は<2>に記載の電子写真感光体。
<4> 前記触媒が、アルミニウム、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<5> 前記触媒が、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<6> 前記触媒が、チタンを含む有機酸金属塩である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<7> 前記触媒の含有量が、前記ブロック化イソシアネートの質量に対して0.02質量%以上0.5質量%以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<8> 前記触媒の含有量が、前記ブロック化イソシアネートの質量に対して0.05質量%以上0.2質量%以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<9> 前記ブロック化イソシアネートが、沸点が130℃以上155℃以下であるブロック化剤によりブロックされたイソシアネートである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<10> 前記ブロック化イソシアネートが、メチルエチルケトンオキシムによりブロックされたイソシアネートである、<1>~<9>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<11> 導電性基体の上に、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物を塗布し、前記組成物を硬化させて下引層を形成する第1工程と、
前記下引層の上に感光層を形成する第2工程と、
を有する、電子写真感光体の製造方法。
<12> <1>~<10>のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<13> <1>~<10>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
<14> 前記帯電装置が、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電部材と、前記帯電部材に交流電圧のみを印加する交流電圧印加部と、を有し、
前記交流電圧印加部から前記帯電部材へと印加される電圧が800V以上1200V以下である、<13>に記載の画像形成装置。
<15> 前記トナー像を前記記録媒体の表面に転写した後に、前記電子写真感光体の表面に残留する電荷を除去する除電装置を更に備える、<13>又は<14>に記載の画像形成装置。
<1>又は<2>に係る発明によれば、下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分未満である組成物の硬化物で構成される場合に比べて、細線再現性に優れ、ポジゴースト及び下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
<3>に係る発明によれば、70℃におけるゲル化時間が60分未満又は90分超である組成物の硬化物で構成される場合に比べて、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
<4>に係る発明によれば、触媒がスズ又は亜鉛を含む有機酸金属塩である場合に比べて、ポジゴースト又は下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
<5>又は<6>に係る発明によれば、触媒がアルミニウムを含む有機酸金属塩である場合に比べて、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
<7>に係る発明によれば、触媒の含有量が、ブロック化イソシアネートに対して0.02質量%未満又は0.5質量%以上である場合に比べ、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
<8>に係る発明によれば、触媒の含有量が、ブロック化イソシアネートに対して0.05質量%未満又は0.2質量%以上である場合に比べ、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
<9>又は<10>に係る発明によれば、ブロック化イソシアネートが、沸点が130℃未満又は155℃超えであるブロック化剤によりブロックされたイソシアネートである場合に比べ、細線再現性に優れ、ポジゴーストが抑制された電子写真感光体が提供される。
<11>に係る発明によれば、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分未満である組成物を硬化させて下引層を形成する第1工程を行う場合に比べて、細線再現性に優れ、ポジゴースト及び下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体を製造しうる、電子写真感光体の製造方法が提供される。
<12>、<13>、<14>、又は<15>に係る発明によれば、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分未満である組成物の硬化物で構成される下引層を有する電子写真感光体を備えた場合に比べて、細線再現性に優れ、ポジゴーストが抑制されたプロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図である。 本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう)は、導電性基体と、前記導電性基体の上に設けられる下引層と、前記下引層の上に設けられる感光層と、を備え、前記下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物の硬化物で構成される、電子写真感光体である。
近年、画像の更なる高画質化を指向して、画像形成の際に帯電電圧を上げて画像濃度を高くし細線再現性を向上させる技術が知られている。しかし、帯電電圧を上げると、これに伴い感光体の帯電電位(VH)が高くなり電荷発生量が増加することから、感光体としての通電電荷量が多くなる。そのため、この条件で感光体の表面を帯電及び露光し、静電潜像を形成すると、露光時に生成された電荷の一部が感光体の層内に残留することがある。この感光体の層内に電荷が残留する現象は、下引層に含まれるブロック化イソシアネートから遊離した物質(例えば、ブロック化剤)等の残存量が多い場合に特に顕著である。
感光体の層内に電荷が残留したまま、次の静電潜像を形成するために感光体の表面を再度帯電すると、層内に残留していた電荷が表面に移動し、その領域の表面電位が低下し易くなる。その結果、表面電位が低下した領域では、前画像形成サイクルでの画像の履歴が、次画像形成サイクルの画像中に重なって現れる現象(以下「ポジゴースト」ともいう)が生じる場合がある。
なお、下引層を形成する際の乾燥強度を上げることで、下引層に含まれるブロック化イソシアネートから遊離した物質(例えば、ブロック化剤)の揮発を促し、その残存量を低減させる手法がある。しかしながら、この手法の場合、下引層(硬化物)内の内部応力が大きくなり、導電性基体から下引層の一部が剥がれる現象(以下「膜剥がれ」ともいう)が生じる場合がある。
一方、本実施形態に係る電子写真感光体は、上記構成を有することにより、細線再現性に優れ、ポジゴースト及び下引層の膜剥がれが抑制される。この作用機序は必ずしも明らかではないが以下のように推察される。
本実施形態に係る電子写真感光体は、下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物の硬化物で構成される。これは、下引層を構成する硬化物を得る際の硬化速度がマイルドであることを意味する。硬化速度をマイルドにすることで、下引層に含まれるブロック化イソシアネートから遊離した物質(例えば、ブロック化剤)が層内に留まり難くなり、下引層中の残存量を低減させうる。これにより、ポジゴーストを抑制しうるものと推測される。また、硬化速度をマイルドにすることで、得られる硬化物中の内部応力を下げることができ、下引層の膜剥がれをも抑制しうるものと推測される。
また、硬化速度をマイルドにすることで、架橋度が高まり、未反応のイソシアネート基の残存量を低下させることもできる。これにより、ブロック化イソシアネートから遊離した物質(例えば、ブロック化剤)以外の成分の補足量も低減することから、下引層内の電荷の蓄積が抑制され、サイクル変動を抑制しうると推測される。
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と、導電性基体上に配置された下引層と、下引層上に配置された感光層と、を備える。
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成の一例を概略的に示している。
図1に示す感光体12は、導電性基体4上に、下引層1、電荷発生層2及び電荷輸送層3が、この順序で積層された構造を有する。電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。感光体12は、電荷輸送層3上に、さらに保護層が設けられた層構成であってもよい。
本実施形態に係る感光体において、感光層は、図1に示す感光体12のように電荷発生層2と電荷輸送層3とが分離した機能分離型の感光層であってもよいし、電荷発生層2と電荷輸送層3とに代えて、電荷発生能及び電荷輸送能を有する単層型の感光層(不図示)であってもよい。
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
[下引層]
本実施形態における下引層は、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物(以下、「下引層形成用組成物」)の硬化物で構成される。
以下、下引層形成用組成物について説明する。
(下引層形成用組成物)
下引層形成用組成物は、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、必要に応じて、無機粒子、電子受容性化合物、樹脂粒子等を更に含んでいてもよい。
また、下引層形成用組成物は、70℃におけるゲル化時間が40分以上である。
-70℃におけるゲル化時間-
本実施形態におけるゲル化時間とは、以下のようにして測定される。
測定対象の下引層形成用組成物から触媒を除いた組成物を、70℃の恒温槽にて攪拌させ、そこに触媒を添加し、攪拌させる。攪拌子の回転が不安定になり、組成物がゲル状態になった時点で攪拌を停止し、触媒添加から攪拌停止までの時間をゲル化時間とする。
感光体における下引層から、下引層形成用組成物の70℃におけるゲル化時間を求める方法は、以下のとおりである。
感光体から下引層の上層を除去した後、下引層を導電性基体から剥がし取って、下引層を構成する成分及びその含有量を、ガスクロクロマトグラフィー・質量分析法(GC/MS)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー分析法(GPC)等を用いて、必要であれば組み合わせて求める。
得られた結果をもとに下引層形成用組成物を作製し、これを用いて、上述のようにして、70℃におけるゲル化時間を求める。
70℃におけるゲル化時間は、40分以上であり、60分以上であることが好ましい。
また、70℃におけるゲル化時間の上限は、生産性の観点から、120分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。
以上のことから、70℃におけるゲル化時間は、40分以上120分以下であることが好ましく、60分以上90分以下であることがより好ましい。
-樹脂-
樹脂としては、後述するブロック化イソシアネートと反応する基を有する樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂等が挙げられる。
中でも、下引層の上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルアセタール樹脂(好ましくはポリビニルブチラール樹脂等)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましく、特に、ポリビニルアセタール樹脂(好ましくはポリビニルブチラール樹脂)が好ましい。
-ブロック化イソシアネート-
ブロック化イソシアネートとしては、公知のブロック化イソシアネートが挙げられるが、中でも、沸点が130℃以上155℃以下であるブロック化剤によりブロックされたイソシアネート(以下、「特定ブロック化イソシアネート」ともいう)が好ましい。
沸点が130℃以上155℃以下であるブロック化剤としては、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)、アセトンオキシム等が挙げられる。中でも、入手しやすさの観点から、ブロック化剤としてはメチルエチルケトンオキシムが好ましい。
つまり、ブロック化イソシアネートは、メチルエチルケトンオキシムによりブロックされたイソシアネートであることが特に好ましい。
ブロック化剤によりブロックされるイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)等のジイソシアネート、これらのジイソシアネートが三量体化したイソシアヌレートなどが挙げられる。
中でも、ブロック化剤によりブロックされるイソシアネートは、イソシアネート基を複数有する多官能のものが好ましく、特に、イソシアヌレートが好ましい。
-触媒-
触媒としては、ブロック化イソシアネートの硬化反応に寄与する触媒が挙げられる。
触媒としては、下引層形成用組成物の70℃におけるゲル化時間を40分以上に調整しやすい観点から、有機酸金属塩が挙げられる。
有機酸金属塩としては、下引層形成用組成物の70℃におけるゲル化時間を40分以上に調整しやすい観点から、特に、アルミニウム、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩が好ましく、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩がより好ましく、チタンを含む有機酸金属塩が更に好ましい。
有機酸金属塩における有機酸としては、サリチル酸、オクチル酸、ナフテン酸等の、炭素数5以上10以下の有機酸が好ましい。
つまり、有機酸金属塩としては、炭素数5以上10以下の有機酸の、アルミニウム塩、チタン塩、又はジルコニウム塩であることが好ましい。
触媒として、例えば、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム塩;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、チタン酸イソプロピル等のチタン塩;アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、オクチル酸アルミニウム等のアルミニウム塩が挙げられる。
触媒の含有量は、下引層形成用組成物の70℃におけるゲル化時間を40分以上に調整しやすい観点から、ブロック化イソシアネートの質量に対して、0.02質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上0.1質量%以下であることが更に好ましい。
また、触媒の含有量は、下引層形成用組成物の70℃におけるゲル化時間を40分以上に調整しやすい観点から、下引層形成用組成物の全固形分に対して、0.004質量%以上0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上0.03質量%以下であることが更に好ましい。
-無機粒子-
下引層は、無機粒子を更に含んでいてもよい。つまり、下引層形成用組成物は、無機粒子を更に含んでいてもよい。
下引層が無機粒子を含むことにより、帯電性がより調整されやすくなり、ポジゴーストがより抑制される。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子が好ましく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
無機粒子の含有量は、例えば、下引層の全質量に対して、50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
-電子受容性化合物-
下引層は、電子受容性化合物(アクセプター化合物)を更に含んでいてもよい。つまり、下引層形成用組成物は、電子受容性化合物(アクセプター化合物)を更に含んでいてもよい。
電子受容性化合物(より好ましくは無機粒子と電子受容性化合物)を含有することで、下引層の電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる傾向にある。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物の含有量は、下引層の全質量に対して、0.75質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.75質量%以上1.25質量%以下であることがより好ましく、0.75質量%以上1質量%以下であることが更に好ましい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
更に、添加剤としては、下引層の硬度の調整のため、樹脂粒子を用いてもよい。
樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物として用いてもよく、添加剤の種類によっては重縮合物として用いてもよい。
-下引層の好ましい態様-
・メチルエチルケトンオキシムの含有量
下引層は、メチルエチルケトンオキシムの含有量が、下引層の全質量に対して、0ppm以上220ppm未満であることが好ましく、0ppm以上200ppm以下であることがより好ましく、0ppm以上150ppm以下であることが更に好ましい。下引層は、メチルエチルケトンオキシムの含有量が、下引層の全質量に対して、0ppmに近いほど好ましい。
メチルエチルケトンオキシムの含有量が上記範囲内であると、ポジゴーストがより抑制される。
メチルエチルケトンオキシムの含有量は、下記のようにして測定する。
感光体から下引層の上層を除去した後、下引層を導電性基体から剥がし取って、下引層の質量を測定する。続いて、剥がし取った下引層を、熱重量分析測定装置Extra6300(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)のTG/DTA測定用アルミニウムセルに封入し、TG/DTA10℃/分昇温にて30℃から500℃まで昇温させる。この際の、30℃から155℃までに減量(g)したものを、下引層内に残存するブロック化イソシアネートから遊離したブロック化剤の量(g)とする。なお、30℃から155℃までに減量した成分が、ブロック化剤(例えば、メチルエチルケトンオキシム)であることは、GC/MS分析にて確認を行う。
・ビッカース硬度、表面粗さ
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることが好ましい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
-下引層の形成方法-
下引層の形成方法には、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、以下の方法が挙げられる。
すなわち、上述した成分を含む下引層形成用組成物に、溶剤を加えた下引層形成用塗布液を用い、下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱する方法である。
このとき、加熱条件としては、例えば、160℃以上220℃以下(好ましくは170℃以上200℃以下)にて、10分以上40分以下(好ましくは20分以上30分以下)で行うことが好ましい。
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
また、下引層の表面粗さの調整のために下引層の表面を研磨してもよい。
研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層
は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン;クロロガリウムフタロシアニン;ジクロロスズフタロシアニン;チタニルフタロシアニンがより好ましい。
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;ビスアゾ顔料等が好ましい。
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷発生層の形成方法は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、ポリエステル系の高分子電荷輸送材は好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷輸送層の形成方法には、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、
-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH、-SH、-COOH、-SiRQ1 3-Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
保護層の形成方法には、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
(単層型感光層)
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。また、単層
型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
<電子写真感光体の製造方法>
本実施形態に係る電子写真感光体の製造方法は、導電性基体の上に、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物を塗布し、前記組成物を硬化させて下引層を形成する第1工程と、前記下引層の上に感光層を形成する第2工程と、を有する、電子写真感光体の製造方法である。
本実施形態に係る電子写真感光体の製造方法により、上記本実施形態に係る電子写真感光体が得られる。
本実施形態に係る電子写真感光体の製造方法において、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物としては、上述の下引層形成用組成物と同様であり、好ましい態様も同様である。
第1工程は、上述した下引層の形成に記載の方法と同様の方法を適用すればよい。
また、第2工程は、電荷輸送層及び電荷発生層の形成方法と同様の方法、又は、単層型感光層の形成方法と同様の方法を適用すればよい。
<画像形成装置及びプロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
-好ましい態様-
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、帯電装置が、電子写真感光体の表面を帯電する帯電部材と、帯電部材に交流電圧のみを印加する交流電圧印加部と、を有し、交流電圧印加部から帯電部材へと印加される電圧が800V以上1200V以下であることが好ましい態様の1つである。
このような態様の画像形成装置によれば、細線再現性を向上させることができる。なお、このような態様の場合であっても、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用されることで、細線再現性を高めつつも、ポジゴーストを抑制することができる。
また、トナー像を記録媒体の表面に転写した後に、電子写真感光体の表面に残留する電荷を除去する除電装置を更に備えることも好ましい態様の1つである。
このような態様の画像形成装置によれば、ポジゴーストをより抑制することができる。
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電装置、静電潜像形成装置、現像装置、転写装置からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置10には、図1に示すように、例えば、感光体12が設けられている。感光体12は、円柱状とされ、モータ等の駆動部27にギア等の駆動力伝搬部材(不図示)を介して連結されており、当該駆動部27により、黒点で示す回転軸の周りに回転駆動される。図2に示す例では、矢印A方向に回転駆動される。
感光体12の周辺には、例えば、帯電装置15(帯電装置の一例)、静電荷像形成装置16(静電荷像形成装置の一例)、現像装置18(現像装置の一例)、転写装置31(転写装置の一例)、クリーニング装置22、及び除電装置24が、感光体12の回転方向に沿って順に配設されている。そして、画像形成装置10には、定着部材26Aと、定着部材26Aに接触して配置される加圧部材26Bと、を有する定着装置26も配設されている。また、画像形成装置10は、各装置(各部)の動作を制御する制御装置36を有している。なお、感光体12、帯電装置15、静電荷像形成装置16、現像装置18、転写装置31、クリーニング装置22を含むユニットが画像形成ユニットに該当する。
画像形成装置10において、少なくとも感光体12は、他の装置と一体化したプロセスカートリッジとして備えてもよい。
以下、画像形成装置10の各装置(各部)の詳細について説明する。
[帯電装置]
帯電装置15は、感光体12の表面を帯電する。帯電装置15は、例えば、感光体12表面に接触又は非接触で設けられ、感光体12の表面を帯電する帯電部材14、及び帯電部材14に帯電電圧を印加する電源28(帯電部材用の電圧印加部の一例)を備えている。電源28は、帯電部材14に電気的に接続されている。
上述のように、電源28は、帯電部材14に交流電圧のみを印加する交流電圧印加部であることが好ましい。更に、交流電圧印加部である電源28から帯電部材14へと印加される電圧が800V以上1200V以下であることが好ましい。
帯電装置15の帯電部材14としては、例えば、導電性の帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触方式の帯電器が挙げられる。また、帯電部材14としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器又はコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。
[静電荷像形成装置]
静電荷像形成装置16は、帯電された感光体12の表面に静電荷像を形成する。具体的には、例えば、静電荷像形成装置16は、帯電部材14により帯電された感光体12の表面に、形成する対象となる画像の画像情報に基づいて変調された光Lを照射して、感光体12上に画像情報の画像に応じた静電荷像を形成する。
静電荷像形成装置16としては、例えば、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を像様に露光する光源を持つ光学系機器等が挙げられる。
[現像装置]
現像装置18は、例えば、静電荷像形成装置16による光Lの照射位置より感光体12の回転方向下流側に設けられている。現像装置18内には、現像剤を収容する収容部が設けられている。この収容部には、トナーを有する静電荷像現像剤が収容されている。トナーは、例えば、現像装置18内で帯電された状態で収容されている。
現像装置18は、例えば、トナーを含む現像剤により、感光体12の表面に形成された静電荷像を現像する現像部材18Aと、現像部材18Aに現像電圧を印加する電源32と、を備えている。この現像部材18Aは、例えば、電源32に電気的に接続されている。
現像装置18の現像部材18Aとしては、現像剤の種類に応じて選択されるが、例えば、磁石が内蔵された現像スリーブを有する現像ロールが挙げられる。
現像装置18(電源32を含む)は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、現像部材18Aに現像電圧を印加する。現像電圧を印加された現像部材18Aは、現像電圧に応じた現像電位に帯電される。そして、現像電位に帯電された現像部材18Aは、例えば、現像装置18内に収容された現像剤を表面に保持して、現像剤に含まれるトナーを現像装置18内から感光体12表面へと供給する。トナーが供給された感光体12表面では、形成された静電荷像がトナー画像として現像される。
[転写装置]
転写装置31は、例えば、現像部材18Aの配設位置より感光体12の回転方向下流側に設けられている。転写装置31は、例えば、感光体12の表面に形成されたトナー画像を記録媒体30Aへ転写する転写部材20と、転写部材20に転写電圧を印加する電源30と、を備えている。転写部材20は、例えば、円柱状とされており、感光体12との間で記録媒体30Aを挟んで搬送する。転写部材20は、例えば、電源30に電気的に接続されている。
転写部材20としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムクリーニングブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器又はコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の非接触型転写帯電器が挙げられる。
転写装置31(電源30を含む)は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、転写部材20に転写電圧を印加する。転写電圧を印加された転写部材20は、転写電圧に応じた転写電位に帯電される。
転写部材20の電源30から転写部材20に、感光体12上に形成されたトナー画像を構成するトナーとは逆極性の転写電圧が印加されると、例えば、感光体12と転写部材20との向かい合う領域(図1中、転写領域32A参照)には、感光体12上のトナー画像を構成する各トナーを静電力により感光体12から転写部材20側へと移動させる電界強度の転写電界が形成される。
記録媒体30Aは、例えば、図示を省略する収容部に収容されており、この収容部から図示を省略する複数の搬送部材によって搬送経路34に沿って搬送され、感光体12と転写部材20との向かい合う領域である転写領域32Aに到る。図1中に示す例では、矢印B方向に搬送される。転写領域32Aに到った記録媒体30Aは、例えば、転写部材20に転写電圧が印加されることにより該領域に形成された転写電界によって、感光体12上のトナー画像が転写される。すなわち、例えば、感光体12表面から記録媒体30Aへのトナーの移動により、記録媒体30A上にトナー画像が転写される。そして、感光体12上のトナー画像は、転写電界により記録媒体30A上に転写される。
[クリーニング装置]
クリーニング装置22は、転写領域32Aより感光体12の回転方向下流側に設けられている。クリーニング装置22は、トナー画像を記録媒体30Aに転写した後に、感光体12に付着した残留トナーをクリーニング(清掃)する。クリーニング装置22では、残留トナー以外にも、紙粉等の付着物をクリーニングする。
クリーニング装置22は、クリーニングブレード220を有し、クリーニングブレード220の先端を感光体12の回転方向と対向する方向に向けて接触させて感光体12の表面の付着物を除去するものである。
[除電装置]
除電装置24は、例えば、クリーニング装置22より感光体12の回転方向下流側に設けられている。除電装置24は、トナー画像を転写した後、感光体12の表面を露光して除電する。具体的には、例えば、除電装置24は、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、感光体12の全表面(具体的には例えば画像形成領域の全面)を露光して除電する。
除電装置24としては、例えば、白色光を照射するタングステンランプ、赤色光を照射する発光ダイオード(LED)等の光源を有する装置が挙げられる。
[定着装置]
定着装置26は、例えば、転写領域32Aより記録媒体30Aの搬送経路34の搬送方向下流側に設けられている。定着装置26は、定着部材26Aと、定着部材26Aに接触して配置される加圧部材26Bと、を有し、定着部材26Aと加圧部材26Bとの接触部で記録媒体30A上に転写されたトナー画像を定着する。具体的には、例えば、定着装置26は、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、記録媒体30A上に転写されたトナー画像を熱及び圧力によって記録媒体30Aに定着する。
定着装置26としては、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
具体的には、例えば、定着装置26は、定着部材26Aとして、定着ロール又は定着ベルトと、加圧部材26Bとして、加圧ロール又は加圧ベルトとを備える周知の定着装置が適用される。
ここで、搬送経路34に沿って搬送されて感光体12と転写部材20との向かい合う領域(転写領域32A)を通過することによりトナー画像を転写された記録媒体30Aは、例えば、図示を省略する搬送部材によってさらに搬送経路34に沿って定着装置26の設置位置に到り、記録媒体30A上のトナー画像の定着が行われる。
トナー画像の定着によって画像形成された記録媒体30Aは、図示を省略する複数の搬送部材によって画像形成装置10の外部へと排出される。なお、感光体12は、除電装置24による除電後、再度、帯電装置15によって帯電電位に帯電される。
[画像形成装置の動作]
本実施形態に係る画像形成装置10の動作の一例について説明する。なお、画像形成装置10の各種動作は、制御装置36において実行する制御プログラムにより行われる。
画像形成装置10の画像形成動作について説明する。
まず、感光体12の表面が帯電装置15により帯電される。静電荷像形成装置16は、帯電された感光体12の表面を画像情報に基づいて露光する。これにより、感光体12上に画像情報に応じた静電荷像が形成される。現像装置18では、トナーを含む現像剤により、感光体12の表面に形成された静電荷像が現像される。これにより、感光体12の表面に、トナー画像が形成される。
転写装置31では、感光体12の表面に形成されたトナー画像が記録媒体30Aへ転写される。記録媒体30Aに転写されたトナー画像は、定着装置26により定着される。
一方、トナー画像を転写した後の感光体12の表面が、クリーニング装置22におけるクリーニングブレード22Aによりクリーニング(清掃)され、その後、除電装置24により除電される。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
[電子写真感光体の作製]
<実施例1>
-下引層の形成-
酸化亜鉛粒子(テイカ社製、体積平均粒径:70nm、比表面積値:15m/g)60質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(表面処理剤)として、KBM-603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)を、酸化亜鉛粒子100質量部に対し1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧蒸留にて除去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子を得た。
上記のようにして得られた表面処理酸化亜鉛粒子100質量部、下記アントラキノン誘導体0.8質量部、ブロック化イソシアネート1(MEKOでブロックされたHDIイソシアヌレート、商品名:スミジュールBL3175、住化コベストロウレタン(株)製)22.5質量部、及びポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM-1、積水化学工業(株)製)25質量部を、メチルエチルケトン142質量部と混合し、混合液を得た。この混合液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部と、を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてオクチル酸ジルコニウム0.008質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)6.5質量部と、を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、加熱温度190℃、保持時間45分の条件で加熱乾燥し、厚さ23.5μmの硬化膜である下引層を得た。
下記アントラキノン誘導体における「OEt」はエトキシ基を示す。
-電荷発生層の形成-
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn-ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用の塗布液を下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
-電荷輸送層の形成-
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)8質量部と、フッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量:30000)0.015質量部と、テトラヒドロフラン4質量部と、トルエン1質量部と、を20℃の液温に保って48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを得た。
次に、電荷輸送物質として、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’]ビフェニル-4,4’-ジアミン4質量部と、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6質量部と、酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.1質量部と、を混合して、テトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合溶解して、混合溶解液Bを得た。
この混合溶解液Bに4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、4900N/cm(500kgf/cm)まで昇圧しての分散処理を6回繰り返した。ここにフッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL-100 信越化学工業社製)を5ppmとなるように添加し、撹拌して電荷輸送層形成用の塗布液を得た。
この塗布液を電荷発生層上に塗布して140℃で25分間乾燥して電荷輸送層を形成し、厚みが32.0μmの電子写真感光体1を得た。
<実施例2~11、参考例1、比較例1~7>
下引層の作製において、ブロック化イソシアネートの種類、触媒の種類及び量(ブロック化イソシアネートに対する含有量)を変えてゲル化時間を調整し、下引層形成用塗布液を導電性基材の上に塗布し加熱乾燥するときの加熱温度と保持時間を、表1に示す仕様とした以外は、実施例1と同様の手法により各例の電子写真感光体を得た。
なお、参考例1及び比較例1の電子写真感光体は、同じものである。
・ブロックイソシアネート1:MEKOでブロックされたHDIイソシアヌレート(ブロック化剤(MEKO)の沸点152℃)
・ブロックイソシアネート2:MEKOでブロックされたIPDIイソシアヌレート(ブロック化剤(MEKO)の沸点152℃)
なお、各例における下引層形成用組成物の70℃におけるゲル化時間は、既述の方法で測定した。
結果を表1に示す。
<評価>
-細線再現性の評価-
各例で得られた電子写真感光体を、電子写真方式の画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション(株)製:Versant 2100 Press)に搭載し、25℃20%RH環境下でA4用紙に1%印字チャートを100,000枚形成した。このとき、帯電装置において、帯電部材には電圧印加部から交流電圧のみを印加し、電圧印加部から帯電部材へと印加される電圧(「印加電圧」ともいう)は900V又は700V(参考例)とした。初期(10枚目)、1,000枚目、10,000枚、50,000枚、及び100,000枚印字後、並びに、100,000枚印字後72時間放置した後のそれぞれについて、2,400dpi(dot per inch)の解像度での1on1off画像(1ドットラインが1ドット間隔で並行に配置された画像)を、現像方向に対し垂直方向の5cm×5cmチャートとして、A4用紙の左上、中央、及び右下に形成した。得られたサンプルに印字された各チャートの線間隔について、×100倍の目盛付きルーペを用いて、トナーの飛び散り等によって狭くなっている箇所、又は、細線が細くなることにより広くなっている箇所の有無を観察した。その観察結果と観察された箇所の線間隔から、下記の基準でグレード評価を行った。細線再現性の許容グレードはG2以下(G1及びG2)である。結果を表1に示す。
-評価基準-
G1:全てのチャートにおいて、飛び散りによる線間隔の減少又は細線細りによる線間隔の増加がない場合。
G2:線間隔の減少または増加が見られるが、細線が確認できるチャートが少なくとも1つある場合。
G3:細線の間隔が判別できないか又は細線に欠落が見られるチャートが、2つ以上ある場合。
-ポジゴーストの評価-
各例で得られた電子写真感光体を、電子写真方式の画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション(株)製:Versant 2100 Press)に搭載し、A3サイズの用紙に1cm角の正方形100%黒画像を1サイクル目に相当する領域(用紙先端より147mm)に出力した後、用紙先端より147mm以降の2サイクル目に相当する領域に、画像濃度20%の全面ハーフトーン画像(Cyan色の全面ハーフトーン画像)を1枚出力した。このとき、帯電装置において、帯電部材には電圧印加部から交流電圧のみを印加し、電圧印加部から帯電部材へと印加される電圧(「印加電圧」ともいう)は900V又は700V(参考例)とした。そして、出力した全面ハーフトーン画像を観察し、1cm角の正方形と周囲との濃度差(ポジゴースト)について、G0~G5まで1G刻みでグレード判定を行った。グレード判定では、Gの数字が小さい程、濃度差が小さく、ポジゴーストが発生していないことを示す。ポジゴーストの許容グレードはG3以下(G0、G1、G2、及びG3)である。なお、画像出力は全て10℃、15%RHの環境下で実施した。結果を表1に示す。
-膜剥がれの評価-
各例で得られた電子写真感光体をテトラヒドロフラン(THF)に浸漬し、電荷発生層及び電荷輸送層を除去し、アルミニウム基材上に塗布された下引層(単層)を得た。下引層の表面に1mm間隔で11本碁盤目状の切り傷を付け、100個碁盤目を作る。碁盤目部分にセロテープ(ニチバン(株)製)を強く圧着させた後、一気に剥離させ、テープと共に剥離された下引層の割合から得られた剥離強度により、膜剥がれを評価した。膜剥がれの許容グレードはG2以下(G0、G1、及びG2)である。
-評価基準-
G0:剥離された下引層の割合が20%未満。
G1:剥離された下引層の割合が20%以上40%未満。
G2:剥離された下引層の割合が40%以上60%未満。
G3:剥離された下引層の割合が60%以上80%未満。
G4:剥離された下引層の割合が80%以上。
表1に示す通り、実施例の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べ、細線再現性に優れており、ポジゴースト及び箔剥がれの両方が抑えられていることがわかった。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
(((1))) 導電性基体と、
前記導電性基体の上に設けられる下引層と、
前記下引層の上に設けられる感光層と、を備え、
前記下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物の硬化物で構成される、
電子写真感光体。
(((2))) 前記組成物の70℃におけるゲル化時間が40分以上120分以下である、(((1)))に記載の電子写真感光体。
(((3))) 前記組成物の70℃におけるゲル化時間が60分以上90分以下である、(((1)))又は(((2)))に記載の電子写真感光体。
(((4))) 前記触媒が、アルミニウム、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((5))) 前記触媒が、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩である、(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((6))) 前記触媒が、チタンを含む有機酸金属塩である、(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((7))) 前記触媒の含有量が、前記ブロック化イソシアネートの質量に対して0.02質量%以上0.5質量%以下である、(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((8))) 前記触媒の含有量が、前記ブロック化イソシアネートの質量に対して0.05質量%以上0.2質量%以下である、(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((9))) 前記ブロック化イソシアネートが、沸点が130℃以上155℃以下であるブロック化剤によりブロックされたイソシアネートである、(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((10))) 前記ブロック化イソシアネートが、メチルエチルケトンオキシムによりブロックされたイソシアネートである、(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((11))) 導電性基体の上に、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物を塗布し、前記組成物を硬化させて下引層を形成する第1工程と、
前記下引層の上に感光層を形成する第2工程と、
を有する、電子写真感光体の製造方法。
(((12))) (((1)))~(((10)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
(((13))) (((1)))~(((10)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
(((14))) 前記帯電装置が、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電部材と、前記帯電部材に交流電圧のみを印加する交流電圧印加部と、を有し、
前記交流電圧印加部から前記帯電部材へと印加される電圧が800V以上1200V以下である、(((13)))に記載の画像形成装置。
(((15))) 前記トナー像を前記記録媒体の表面に転写した後に、前記電子写真感光体の表面に残留する電荷を除去する除電装置を更に備える、(((13)))又は(((14)))に記載の画像形成装置。
(((1)))又は(((2)))に係る発明によれば、下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分未満である組成物の硬化物で構成される場合に比べて、細線再現性に優れ、ポジゴースト及び下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、70℃におけるゲル化時間が60分未満又は90分超である組成物の硬化物で構成される場合に比べて、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、触媒がスズ又は亜鉛を含む有機酸金属塩である場合に比べて、ポジゴースト又は下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
(((5)))又は(((6)))に係る発明によれば、触媒がアルミニウムを含む有機酸金属塩である場合に比べて、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、触媒の含有量が、ブロック化イソシアネートに対して0.02質量%未満又は0.5質量%以上である場合に比べ、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、触媒の含有量が、ブロック化イソシアネートに対して0.05質量%未満又は0.2質量%以上である場合に比べ、下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体が提供される。
(((9)))又は(((10)))に係る発明によれば、ブロック化イソシアネートが、沸点が130℃未満又は155℃超えであるブロック化剤によりブロックされたイソシアネートである場合に比べ、細線再現性に優れ、ポジゴーストが抑制された電子写真感光体が提供される。
(((11)))に係る発明によれば、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分未満である組成物を硬化させて下引層を形成する第1工程を行う場合に比べて、細線再現性に優れ、ポジゴースト及び下引層の膜剥がれが抑制された電子写真感光体を製造しうる、電子写真感光体の製造方法が提供される。
(((12)))、(((13)))、(((14)))、又は(((15)))に係る発明によれば、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分未満である組成物の硬化物で構成される下引層を有する電子写真感光体を備えた場合に比べて、細線再現性に優れ、ポジゴーストが抑制されたプロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
10 画像形成装置
12 感光体
14 帯電部材
15 帯電装置
16 静電荷像形成装置
18 現像装置
20 転写部材
22 クリーニング装置
220 クリーニングブレード
24 除電装置
26 定着装置
30A 記録媒体
31 転写装置
36 制御装置

Claims (15)

  1. 導電性基体と、
    前記導電性基体の上に設けられる下引層と、
    前記下引層の上に設けられる感光層と、を備え、
    前記下引層が、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物の硬化物で構成される、
    電子写真感光体。
  2. 前記組成物の70℃におけるゲル化時間が40分以上120分以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記組成物の70℃におけるゲル化時間が60分以上90分以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  4. 前記触媒が、アルミニウム、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  5. 前記触媒が、チタン、又はジルコニウムを含む有機酸金属塩である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  6. 前記触媒が、チタンを含む有機酸金属塩である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  7. 前記触媒の含有量が、前記ブロック化イソシアネートの質量に対して0.02質量%以上0.5質量%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  8. 前記触媒の含有量が、前記ブロック化イソシアネートの質量に対して0.05質量%以上0.2質量%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  9. 前記ブロック化イソシアネートが、沸点が130℃以上155℃以下であるブロック化剤によりブロックされたイソシアネートである、請求項1に記載の電子写真感光体。
  10. 前記ブロック化イソシアネートが、メチルエチルケトンオキシムによりブロックされたイソシアネートである、請求項1に記載の電子写真感光体。
  11. 導電性基体の上に、樹脂、ブロック化イソシアネート、及び触媒を含み、且つ、70℃におけるゲル化時間が40分以上である組成物を塗布し、前記組成物を硬化させて下引層を形成する第1工程と、
    前記下引層の上に感光層を形成する第2工程と、
    を有する、電子写真感光体の製造方法。
  12. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
    画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
  13. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
    帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
    トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
    前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
    を備える画像形成装置。
  14. 前記帯電装置が、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電部材と、前記帯電部材に交流電圧のみを印加する交流電圧印加部と、を有し、
    前記交流電圧印加部から前記帯電部材へと印加される電圧が800V以上1200V以下である、請求項13に記載の画像形成装置。
  15. 前記トナー像を前記記録媒体の表面に転写した後に、前記電子写真感光体の表面に残留する電荷を除去する除電装置を更に備える、請求項13に記載の画像形成装置。
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