JP2024046233A - 腸管バリアの改善のための組成物 - Google Patents

腸管バリアの改善のための組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2024046233A
JP2024046233A JP2022151492A JP2022151492A JP2024046233A JP 2024046233 A JP2024046233 A JP 2024046233A JP 2022151492 A JP2022151492 A JP 2022151492A JP 2022151492 A JP2022151492 A JP 2022151492A JP 2024046233 A JP2024046233 A JP 2024046233A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
intestinal barrier
composition
bacteria
strain
intestinal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022151492A
Other languages
English (en)
Inventor
杏輔 小林
紀宏 指原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Meiji Co Ltd
Original Assignee
Meiji Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Meiji Co Ltd filed Critical Meiji Co Ltd
Priority to JP2022151492A priority Critical patent/JP2024046233A/ja
Priority to CN202311228313.8A priority patent/CN117731008A/zh
Publication of JP2024046233A publication Critical patent/JP2024046233A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Dairy Products (AREA)
  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)

Abstract

【課題】腸管バリア機能の改善を、物理的な腸管バリアの強化やタイトジャンクションの強化を介して達成する。低下した物理的な腸管バリアを、回復し、強化し、又は維持する。【解決手段】ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)に属する菌、及びストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus) に属する菌から選択されるいずれかを含む、腸管バリアの改善のための組成物を提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、腸管バリアの改善のための組成物に関する。
健康な腸は防御機能として、腸管バリア機能と呼ばれる有害物質や病原細菌等からの攻撃を防ぐ機能を有している。腸管上皮細胞はタイトジャンクションを形成して物理的なバリアとして機能するほか、ムチン層の形成や抗菌ペプチドの分泌等を介して、宿主を防御する役割を果たしている。
特定の乳酸菌について、腸管バリア機能に関連した報告がされている。特許文献1には、受託番号:NITE P-313で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)が記載され、この乳酸菌を有効成分とする腸管バリア機能の回復剤又は機能回復用食品組成物が記載されている。また特許文献2には、乳酸菌又は乳酸菌によって発酵させた素材もしくはその両方を有効成分とし、抗菌ペプチドの遺伝子発現を誘導させることを特徴とする抗菌ペプチド誘導剤が記載されている。この文献には、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、及びストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラスを含む試験飼料を摂取した老齢マウスの空腸及び回腸において、老化による抗菌ペプチドの遺伝子発現の低下が抑制されたとの実験結果が示されている。さらに非特許文献1には、Lactobacillus rhamnosus OLL2838により、Caco-2のTNF-αによる経上皮電気抵抗値の低下とタイトジャンクションタンパク質の発現低下が回復したことが記載されている。また非特許文献2には、Lactobacillus plantarum HY7714により、Caco-2のTNF-αによるタイトジャンクションタンパク質の発現低下が回復したことが記載されている。
さらに、ラクトバチラス・ブレビスSBC8803(受託番号:FERM BP-10632)菌株の菌体又はその処理物(特許文献3)、Lactobacillus crustorumの菌体又は菌体処理物(特許文献4)、ラクトバチルス・ラムノーサスGG(特許文献5)、ラクトバチルス・パラカゼイPS23(特許文献6)、Lactobacillus plantarum(特許文献7)、ビフィドバクテリウム・ロンガムCNCM I-2618及びビフィドバクテリウム・ラクティスCNCM I-3446を含む組み合わせ(特許文献8)、ラクトバチルス株、より特定するとLactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus paracasei(特許文献9)に関し、腸管バリア機能と関連した用途が知られている。
特開2008-212006号公報(特許第5046682号) 国際公開WO2015/087919 特開2010-83881号公報(特許第5526320号) 国際公開WO2015/068809(特許第6557605号) 特開2018-537473号公報 特開2020-162595号公報 特表2021-509811号公報 特表2022-504096号公報 特表2022-506081号公報
E Miyauchi, H Morita, S Tanabe. Lactobacillus rhamnosus alleviates intestinal barrier dysfunction in part by increasing expression of zonula occludens-1 and myosin light-chain kinase in vivo. J Dairy Sci. 2009 Jun;92(6):2400-8. Bora Nam, Soo A Kim, Woo Nam, Woon Hee Jeung, Soo-Dong Park, Jung-Lyoul Lee, Jae-Hun Sim, Sung Sik Jang. Lactobacillus plantarum HY7714 Restores TNF-α Induced Defects on Tight Junctions. Prev Nutr Food Sci. 2019 Mar;24(1):64-69.
腸管バリア機能が物理的に破綻することで腸管透過性が亢進し、慢性炎症が発生する。慢性炎症は炎症性腸疾患だけでなく種々の臓器に悪影響を及ぼしうる。そのため腸管バリア機能の改善を、物理的な腸管バリアの強化やタイトジャンクションの強化を介して達成する手段があれば望ましい。
また、低下した物理的な腸管バリアを、回復するのみならず、強化し、また維持するための手段があれば望ましい。
本発明は以下を提供する。
[1] ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)に属する菌、及びストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)に属する菌から選択されるいずれかを含む、腸管バリアの改善のための組成物。
[2] 腸管バリアの改善が、腸管バリアの維持、腸管バリアの強化、腸管バリアの破壊の進行抑制、及び腸管バリアの回復から選択されるいずれかである、1に記載の組成物。
[3] 腸管バリアの改善が、腸管細胞のタイトジャンクションの改善を介してなされるものである、1又は2に記載の組成物。
[4] タイトジャンクションの改善が望ましい対象に摂取させるための、1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[5] リーキーガットの処置に用いるための、1~4のいずれか1項に記載の組成物。
[6] Lactobacillus delbrueckiiに属する菌が、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus)に属する菌である、1~5のいずれか1項に記載の組成物。
[7] Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、及びStreptococcus thermophilusに属する菌から選択されるいずれかが、Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricusの2038株、及びJCM1002T株、並びにStreptococcus thermophilusの1131株、及びNCIMB8510T株から選択されるいずれかである、1~6のいずれか1項に記載の組成物。
[8] 腸管バリアを改善する方法における使用のための、Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、及びStreptococcus thermophilusに属する菌から選択されるいずれかを含む組成物。Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、及びStreptococcus thermophilusに属する菌から選択されるいずれかの、腸管バリアを改善するための組成物の製造における使用。Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、及びStreptococcus thermophilusに属する菌から選択されるいずれかを含む組成物を対象に投与する工程を含む、腸管バリアを改善する方法。腸管バリアを改善するための、Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、及びStreptococcus thermophilusに属する菌から選択されるいずれかを含む組成物の使用。
[9] 腸管バリアの改善が、腸管バリアの維持、腸管バリアの強化、腸管バリアの破壊の進行抑制、及び腸管バリアの回復から選択されるいずれかである、8に記載の、組成物、製造における使用、方法、又は使用。
[10] 腸管バリアの改善が、腸管細胞のタイトジャンクションの改善を介してなされるものである、8又は9に記載の組成物、製造における使用、方法、又は使用。
[11] タイトジャンクションの改善が望ましい対象に摂取させるための、8~10のいずれか1項に記載の組成物、製造における使用、方法、又は使用。
[12] リーキーガットの処置に用いるための、8~11のいずれか1項に記載の組成物、製造における使用、方法、又は使用。
[13] Lactobacillus delbrueckiiに属する菌が、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus)に属する菌である、8~12のいずれか1項に記載の組成物、製造における使用、方法、又は使用。
[14] Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、及びStreptococcus thermophilusに属する菌から選択されるいずれかが、Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricusの2038株、及びJCM1002T株、並びにStreptococcus thermophilusの1131株、及びNCIMB8510T株から選択されるいずれかである、8~13のいずれか1項に記載の組成物、製造における使用、方法、又は使用。
本発明により、新規な、腸管バリアの改善のための組成物が提供される。これにより、腸管バリアの破壊による疾患の発生リスクを低減できること等が期待できる。
L. bulgaricus 2038及びS. thermophilus 1131はTNF-αとIFN-γによるTEER値低下を抑制する。 平均値±SE(n=5/群)。菌やTNF-α、IFN-γを添加する前のTEER値に対する18時間反応後のTEER値の割合を表す。*p<0.05(Tukey-Kramer法)。 L. bulgaricus 2038及びS. thermophilus 1131はTNF-αとIFN-γによるFD-4透過亢進を抑制する。 平均値±SE(n=5/群)。膜透過係数Pappは下記の通り算出する。*p<0.05(Tukey-Kramer法)。Papp(cm/sec)= (dQ/dt) / (C0×S)、dQ/dt: 透過速度(単位時間当たりにbasal側に出現する薬物量 nmol/sec)、C0: Apical 側の薬物の初濃度(μmol/L)、S: 単層膜の表面積 L. bulgaricus 2038及びS. thermophilus 1131はTNF-αとIFN-γによるTJタンパク質(OCCLUDIN、ZO-1)の遺伝子発現低下を抑制する。 平均値±SE(n=8-9/群)。GAPDHの発現でノーマライズし、コントロール群の発現を1としたときの相対発現量を表す。*p<0.05(Tukey-Kramer法)。 L. bulgaricus 2038及びS. thermophilus 1131はTNF-αとIFN-γによるTJタンパク質の破壊を抑制する カルシウムスイッチアッセイにおいてL. bulgaricus 2038及びS. thermophilus 1131はTEER値の上昇を促進させる 平均値±SE(n=8/群)。カルシウム不含培地に交換する前のTEER値に対する各タイムポイントでのTEER値の割合を表す。*p<0.05(Tukey-Kramer法)。 FD-4の透過抑制作用 破線はコントロール群、実線はTNF-α+IFN-γ群における値を示す。n=3で実施、JCM1002Tのみn=2 Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus 2038株の、16S rRNA遺伝子の配列(SEQ ID NO:1)、及びStreptococcus thermophilus 1131株の、16S rRNA遺伝子の配列 (SEQ ID NO:2)
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、特定の菌を含む組成物に関する。より詳細には、特定の菌を有効成分とする、腸管バリアの改善のための組成物に関する。
[有効成分]
本発明の組成物は、有効成分として、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する菌、及びストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する菌から選択されるいずれかを含む。
Lactobacillus属に属する菌は、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)に属する菌であることが好ましい。Streptococcus属に属する菌は、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)に属する菌であることが好ましい。以下、組成物において有効成分として用いるこれらの菌のいずれかを指す場合、有効菌ということがある。なお、本発明に関し、いずれかというときは、数及び種類が任意であることを指す。
本発明者らの検討によると、乳酸菌のうちLactococcus lactis subsp. lactisに属するある株には、実験した条件では目的の機能は認められなかった。
組成物においては、Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、Streptococcus thermophilusに属する菌であれば、亜種、菌株に特定されず、種々のものを有効成分として用いることができる。
Lactobacillus delbrueckiiに属する菌の好ましい例として、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp.bulgaricus)に属する菌が挙げられ、より特定した例として、2038株、JCM1002T株、及びこれらと分類学的に同等の菌株が挙げられる。2038株は、明治ブルガリアヨーグルトLB81(株式会社明治)より単離することができる。JCM1002T株は、国立研究開発法人理化学研究所 バイオリソース研究センター 微生物材料開発室(〒305-0074 茨城県つくば市高野台3-1-1)より購入できる。
Streptococcus thermophilus属に属する菌の例として、1131株、NCIMB8510T株、及びこれらと分類学的に同等の菌株が用いられる。1131株は、明治ブルガリアヨーグルトLB81(株式会社明治)より単離することができる。NCIMB8510T株は、国立研究開発法人理化学研究所 バイオリソース研究センター 微生物材料開発室(〒305-0074 茨城県つくば市高野台3-1-1)より購入できる。
ある菌株(以下、菌株Sと記載)と分類学的に同等の菌株とは、例えば、下記のいずれかをいう。
・菌株Sと同じ属に属する菌株であって、その16S rRNA遺伝子の配列の全部又は特徴のある一部(V1領域、V2領域、又はV1領域及びV2領域の、全部又は一部)が、菌株Sの配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは98.5%以上、さらに好ましくは98.7%より高く、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の配列同一性を有する菌株;
・菌株Sと同一の菌学的性質を有する菌株。
なお、16S rRNA遺伝子配列に基づく種の異同の判断基準に関し、当業者はStackebrandt E, Ebers J. Taxonomic parameters revisited: tarnished gold standards. Microbiol Today 2006;33:152-155を参考にすることができる。
(Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus 2038株)
2038株の菌学的性質を以下に示す。
形態:桿菌、グルコースよりガス産生せず、GC含量49.7%、グラム陽性、カタラーゼ陰性、乳酸旋光性D型、15℃で生育せず、グルコース、ラクトース等を資化して酸を生成する、胞子非形成、運動性無し。
2038株の16S rRNA遺伝子の配列を、配列表の配列番号1及び図7に示す。
(Streptococcus thermophilus 1131株)
1131株の菌学的性質を以下に示す。
形態:連鎖球菌、グルコースよりガス産生せず、グラム陽性、カタラーゼ陰性、乳酸旋光性L型、45℃で生育する、グルコース、ラクトース、フルクトース等を資化して酸を生成する、胞子非形成、運動性無し。
1131株の16S rRNA遺伝子の配列を、配列表の配列番号1及び図7に示す。
なお、組成物は、目的とする機能を損なわない限り、Lactobacillus属に属する菌、及びStreptococcus属に属する菌以外の乳酸菌を含んでいてもよい。また、組成物は、目的とする乳酸菌以外の酵母等の微生物を含みうる。好ましい態様の一つにおいては、組成物は、1種又は複数種の乳酸菌を含むが、それ以外の微生物、例えば酵母を含まない。
(有効菌の製造、入手)
組成物に含まれる有効菌は、培養により製造することができる。培養条件としては、目的の効果が奏される限り特に限定されない。Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus 2038株は、明治ブルガリアヨーグルトLB81(株式会社明治)より単離することができる。Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus JCM1002T株は、国立研究開発法人理化学研究所 バイオリソース研究センター 微生物材料開発室(〒305-0074 茨城県つくば市高野台3-1-1)より購入できる。
Streptococcus thermophilus属に属する菌の例として、1131株、NCIMB8510T株、及びこれらと分類学的に同等の菌株が用いられる。Streptococcus thermophilus 1131株は、明治ブルガリアヨーグルトLB81(株式会社明治)より単離することができる。Streptococcus thermophilus NCIMB8510T株は、NCIMB研究所(The National Collections of Industrial of Industrial, Food and Marine Bacteria, Ltd., Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland, UK)より購入できる。
(有効菌の形態)
本発明の組成物において、有効菌は、目的の効果を発揮できる限り、どのような状態で含まれていてもよい。例えば、有効菌は、有効菌菌体そのものである場合のほか、有効菌の培養物(有効菌菌体と培養上清とからなる。)である場合がある。菌体は、目的の効果を発揮できる限り、生きた状態(生菌体)であってもよく、死んだ状態(死菌体)であってもよい。
有効菌は、組成物に死菌体として含まれていてもよい。死菌体は有効菌を殺菌処理することにより得ることができる。殺菌処理は、目的の効果を発揮できる限り、特に限定されず、加熱、殺菌灯(UV)、オゾン、薬剤、高浸透圧等に拠ることができる。
死菌体は、生菌体を加熱処理することにより得られる加熱処理死菌体であることが好ましい。加熱処理死菌体を得るための加熱処理は、目的の効果が奏される限り特に限定されず、用いる有効菌を死滅させるために十分な温度及び時間で実施される。このような条件は、用いる有効菌にもよるが、加熱処理温度は、例えば55℃以上であり、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは65℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上であり、80℃以上としてもよく、90℃以上としてもよい。加熱処理温度の上限は、適宜とすることができ、例えば121℃以下であり、100℃以下としてもよく、90℃以下、80℃以下としてもよい。また加熱処理温度に応じて、加熱処理時間は1分間以上とすることができ、3分間以上としてもよく、10分間以上、15分間以上、30分間以上、45分間以上としてもよい。加熱処理時間の上限は、例えば120分間以下とすることができ、100分間以下であってもよく、90分間以下であってもよく、80分間以下であってもよい。
組成物に含有させるための有効菌は、生菌体であるか死菌体であるかに関わらず、乾燥物、懸濁物、ペースト状、ゲル状等の形態として調製することができる。
[用途]
本発明の組成物は、腸管バリアの改善のために用いることができる。本発明に関し、腸管バリアというときは、特に記載した場合を除き、腸管における物理的なバリアを指す。腸管の上皮細胞同士はタイトジャンクションと呼ばれる強固な接着により物理的なバリアを形成している。タイトジャンクションは、クローディン(CLAUDIN)、オクルディン(OCCLUDIN)、Junctional Adhesion Molecule (JAM‐A)、Zonula occluden(ZO)等から構成される。
腸管バリアの改善は、腸管バリアの維持、腸管バリアの強化、腸管バリアの破壊の進行抑制、及び腸管バリアの回復を含む。腸管バリアの強化は、破壊された腸管バリアを正常な状態に近づけること、及び正常な腸管バリアをより強くすることを含む。腸管バリアの破壊は、腸管バリアを緩ませることを含む。腸管バリアの破壊の進行は、腸管バリアの透過性の亢進を伴うことがある。なお、高齢、食生活、アレルギー、ストレス等で腸管バリアが緩むことが知られている。本発明の組成物は、高齢、食生活、アレルギー、ストレス等で緩んだ腸管バリアを改善するために用いることができる。
ある成分が、腸管バリアを改善するか否かは、当業者であれば種々の方法で確認できる。例えば、バリアを形成した培養細胞の層に対して、必要に応じてTNF-α、IFN-γを添加する、カルシウム不含培地に曝す等により形成されたバリアを破壊する処理を行った上で、その成分を添加し、電気抵抗値(TEER値)の測定、物質の透過試験、タイトジャンクション(TJ)タンパク質の遺伝子発現の分析、TJタンパク質の免疫染色等により、腸管バリアの改善を確認することができる。分析に適したTJタンパク質の例として、CLAUDIN-1、CLAUDIN-3、CLAUDIN-4、OCCLUDIN、F11R (JAM-A)、TJP1 (ZO-1) が挙げられる。
[組成物]
(食品組成物等)
本発明の組成物は、食品組成物又は医薬組成物とすることができる。食品及び医薬品は、特に記載した場合を除き、ヒトのためのもののみならず、ヒト以外の動物のためのものを含む。食品は、特に記載した場合を除き、一般食品、機能性食品、栄養組成物を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、介護食、治療支援用食品を含む。食品は、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えば飲料、ドリンク剤、流動食、及びスープを含む。機能性食品とは、生体に所定の機能性を付与できる食品をいい、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)、機能性表示食品、栄養機能食品を含む保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル、液剤等の各種の剤型のもの)、美容食品(例えば、ダイエット食品)等の、健康食品の全般を包含している。また、本発明において「機能性食品」とは、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含している。
(対象)
本発明の組成物は、腸管バリアを改善することが好ましい対象に、摂取させるのに適している。また本発明の組成物は、腸管を健康に保ちたい対象、腸管の恒常性を維持したい対象;腸管バリアを健康に維持したい対象;腸管における炎症のリスクを低減したい対象に、摂取させるのに適している。いずれの対象においても、健常である(例えば、腸管バリアが健康である、腸管における炎症がない)ことが好ましい。
上記のような対象には、成人(15歳以上)、中高年者、高齢者(65歳以上(世界保健機関 (WHO)の定義より))、病中病後の者、妊婦、産婦、乳幼児、子どもが含まれる。また本発明の組成物は、有効成分が食経験の長い菌であるため、長期間の摂取に適しているため、日常生活における腸管バリアを維持したい対象に、特に適している。
好ましい態様において、組成物が投与される対象は、腸管バリアの改善が望ましい者である。このような者には、腸管細胞のタイトジャンクションの改善が望ましい者、リーキーガット症候群の者、高齢(加齢)、食生活、アレルギー、ストレス、肥満等により腸管バリアが緩んでいる者、そのようなリスクのある者(例えば、高齢者、アレルギーを有する者、ストレスに曝されている者、肥満者)が含まれる。また、組成物が投与される対象には、小麦又は小麦を原料とする飲食品(パン類、麺類、焼き菓子類等)を多く摂取する者が含まれる。小麦由来のグリアジン(タンパク質の一種)は、腸管バリアを緩めることが知られている。
好ましい態様において、組成物が投与される対象者から、前掲特許文献2に記載されているような抗菌ペプチドを介して腸管における病原菌の攻撃や侵入を防ぐための組成物が投与される対象を除いてもよい。
(投与経路)
本発明の組成物は、それを非経口的に、例えば経管的(胃瘻、腸瘻)に投与してもよいし、経鼻的に投与してもよいし、経口的に投与してもよいが、経口的に投与することが好ましい。
(有効成分の含有量・用量)
本発明の組成物における、有効菌の含有量は、目的の効果が発揮される量であればよい。組成物は、摂取・投与する対象の年齢、体重、症状等の種々の要因を考慮して、有効菌の含有量を適宜設定することができる。組成物の1単位は、1日又は1回あたり(一日1回の投与・摂取としてもよいし、一日複数回、例えば3回の投与としてもよい。)に摂取・投与する量とすることができる。組成物の1単位あたりの有効菌の含有量は、例えば、1×10個以上とすることができ、1×10個以上、5×10個以上、1×10個以上、5×10個以上としてもよく、1×1010個以上とすることが好ましく、1×1011個以上とすることがより好ましく、2×1011個以上とすることがさらに好ましい。上限値は適宜とすることができ、下限値がいずれの場合であっても、例えば、1×1014個以下としてもよく、1×1013個以下としてもよく、1×1012個以下としてもよい。
また有効菌の含有量を上述のようにする場合は、いずれの場合も、1単位は、例えば0.5g以上とすることができ、1g以上、5g以上、10g以上、20g以上、30g以上とすることができる。組成物を発酵乳のような食品の形態にする場合、1単位は食品として1回で摂取しやすい量、例えば50g以上とすることができ、60g以上、70g以上、80g以上、90g以上、100g以上とすることができる。上限値は適宜とすることができ、下限値がいずれの場合であっても、500g以下とすることができ、400g以下、300g以下、200g以下、150g以下、125g以下とすることができる。
組成物は、食経験豊富な有効菌を有効成分としている。そのため、本発明の組成物は、繰り返し、又は長期間にわたって摂取してもよく、例えば3日以上、好ましくは1週間以上、より好ましくは4週間以上、特に好ましくは1カ月以上、連続して摂取・投与することができる。
(他の成分、添加剤)
本発明の組成物は、食品又は医薬品として許容可能な他の有効成分や栄養成分を含んでいてもよい。そのような成分の例は、アミノ酸類(例えば、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン)、糖質(グルコース、ショ糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、エリスリトール、マルチトール、パラチノース、キシリトール、デキストリン)、電解質(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)、ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、葉酸、パントテン酸及びニコチン酸類)、ミネラル(例えば、銅、亜鉛、鉄、コバルト、マンガン)、抗生物質、食物繊維、タンパク質、脂質等である。
また組成物は、食品又は医薬品として許容される添加物をさらに含んでいてもよい。そのような添加物の例は、不活性担体(固体や液体担体)、賦形剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤、コーティング剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、天然物である。より具体的には、水、他の水性溶媒、製薬上で許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、クエン酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、リン酸、酢酸、果汁、野菜汁等である。
(剤型・形態)
本発明の食品組成物は、固体、液体、混合物、懸濁液、粉末、顆粒、ペースト、ゼリー、ゲル、カプセル等の任意の形態に調製されたものであってよい。また、本発明に係る食品組成物は、乳製品、サプリメント、菓子、飲料、ドリンク剤、調味料、加工食品、惣菜、スープ等の任意の形態にすることができる。より具体的には、本発明の組成物は、発酵乳、乳酸菌飲料、乳性飲料、乳飲料、清涼飲料、アイスクリーム、タブレット、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、栄養食品、冷凍食品、加工食品等の形態とすることができ、また飲料や食品に混合して摂取するための、顆粒、粉末、ペースト、濃厚液等の形態とすることができる。発酵乳とは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(以下「乳等省令」と略する。)」で定義された発酵乳及び乳酸菌飲料である。乳等省令における発酵乳は、乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状もしくは液状にしたもの又はこれらを凍結したものである。
本発明の医薬組成物は、経口投与に適した、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液体製剤、ジェル剤、エアロゾル剤等の任意の剤型にすることができる。
(その他)
本発明の組成物の製造において、有効菌の配合の段階は、適宜選択することができる。有効菌の特性を著しく損なわない限り配合の段階は特に制限されない。例えば、乳と乳製品と水を混合し、必要に応じ均質化し、殺菌し、有効菌を接種し、発酵することにより、十分な量の有効菌を含む発酵乳として、組成物を製造することができる。原料とする乳及び乳製品は、発酵に用いる有効菌に合わせて適宜選択することができる。好ましい態様の一つにおいては、原料とする乳及び乳製品は、動物由来のものを含む。また原料とする乳及び乳製品は、植物性の乳、例えば豆乳、アーモンド乳、オーツ乳、ココナッツ乳、ライス乳、ヘンプ乳を含まなくてもよい。
組成物には、使用目的(用途)を表示することができ、また特定の対象に対して摂取を薦める旨を表示することができる。表示は、直接的に又は間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、パンフレット、展示会、メディアセミナー等のセミナー、書籍、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール、音声等の、場所又は手段による、広告・宣伝活動を含む。
食品である組成物に表示する用途・機能の例として、腸管バリアの改善、腸管バリアの維持、腸管バリアの強化、腸管バリアの破壊の進行抑制、腸管バリアの透過性の亢進の抑制、腸管バリアの回復(修復)、腸管バリアの正常化、腸管バリアを正常に維持する、腸管バリアを守る、腸管バリアの完全性(integrity)の維持、腸漏れ症候群(リーキーガット症候群)の予防、リーキーガット症候群の改善、腸管細胞のタイトジャンクションの強化(強固にする)、タイトジャンクションの維持、タイトジャンクションの正常化、タイトジャンクションを守る、タイトジャンクション形成を促進する、タイトジャンクションの完全性(integrity)の維持等が挙げられる。
[実施例1]
ヒト結腸癌由来の細胞株Caco-2をトランズウェルプレート(製品名:トランズウェル12ウェル0.4μm、細胞培養表面処理済、滅菌済、製造者:Corning、型番:3401)のインサート上で2週間培養し、単層化させた。Minimum Essential Media (Thermo Fisher Scientific)をベースとして、10% のウシ胎児血清(Biowest)、1% MEM 非必須アミノ酸溶液(Thermo Fisher Scientific)、100 U/mL ペニシリン、100 μg/mL ストレプトマイシン (Thermo Fisher Scientific)を含む培地を使用した。
L. bulgaricus 2038はMRS培地、S. thermophilus 1131は1%ラクトースを含むM17培地で18時間培養した。PBSで洗浄後にPBSでOD600=10となるように懸濁し、培地に対して1%添加した。また、バリアを破壊するために終濃度各10 ng/mLとなるようにTNF-α(製品名:Recombinant Human TNF-alpha、製造者:R&D Systems、型番:210-TA-020)とIFN-γ(製品名:IFN-γ, Human, Recombinant、製造者:R&D Systems、型番:285-IF-100)を添加した。
18時間培養後における経上皮電気抵抗値(TEER値)を測定した。蛍光物質FITC-dextran 分子量4,000(FD-4)透過試験を実施した。さらに、タイトジャンクション(TJ)タンパク質の遺伝子発現をリアルタイムPCRにより測定し、TJタンパク質の免疫染色を実施した。
TEER値に関し、コントロール群と比較してTNF-α+IFN-γ群で有意に低下し、L. bulgaricus 2038又はS. thermophilus 1131により有意に低下が抑制された(図1)。また、TNF-αとIFN-γ を添加せずに、2038、又は1131を添加した系でも、TEER値が上昇した。
FD-4の透過量に関し、コントロール群と比較してTNF-α+IFN-γ群で有意に増加し、L. bulgaricus 2038又はS. thermophilus 1131により透過の亢進が有意に抑制された(図2)。
TJタンパク質の遺伝子発現はOCLN (OCCLUDIN)、TJP1 (ZO-1) を測定した。コントロール群と比較してTNF-α+IFN-γ群で遺伝子発現が有意に低下し、L. bulgaricus 2038又はS. thermophilus 1131により低下が有意に抑制された(図3)。このことから、L. bulgaricus 2038又はS. thermophilus 1131により、TJタンパク質の発現低下が抑制されることでバリア破壊を抑制できることが示唆された。
TJタンパク質の免疫染色はCLAUDIN-1、CLAUDIN-4、OCCLUDIN、JAM-A、ZO-1を対象とした。コントロール群と比較してTNF-α+IFN-γ群でTJタンパク質の構造が破壊される様子が観察され、L. bulgaricus 2038又はS. thermophilus 1131により破壊が抑制された(図4)。
[実施例2]
Caco-2細胞をトランズウェルプレート(実施例1に同じ)のインサート上で2週間培養(実施例1に同じ)し単層化させた。TEER値を測定後、カルシウム不含培地で16時間培養することで細胞接着を緩めた。カルシウムを含有する通常培地に交換すると同時にL. bulgaricus 2038又はS. thermophilus 1131を添加した。なお、菌の調製と濃度は実施例1と同様である。その後1時間ごとに8時間後までTEER値を経時的に測定した。
8時間後において、L. bulgaricus 2038添加群でコントロール群と比較してTEER値の有意な上昇が見られた(図5)。S. thermophilus 1131添加群においてもコントロール群と比較してTEER値が上昇した(図5)。
[実施例3]
Caco-2細胞をトランズウェルプレート(実施例1に同じ)のインサート上で2週間培養(実施例1に同じ)し、単層化させた。表1に示す菌株を各々の条件で18時間培養した。PBSで洗浄後にPBSでOD600=10となるように懸濁し、培地に対して1%添加した。また、バリアを破壊するために終濃度各10 ng/mLとなるようにTNF-αとIFN-γを添加した。18時間培養後にFD-4透過試験を実施した。
Figure 2024046233000002
コントロール群と比較してTNF-α+IFN-γ群でFD-4の透過量が増加し、L. bulgaricus S. thermophilus、によりFD-4の透過量が抑制され、特にL. bulgaricus 2038又はS. thermophilus 1131によりFD-4の透過量が強く抑制された(図6)。 L. bulgaricusに関しては2038の他、JCM1002Tで透過亢進が抑制された。S. thermophilusに関しては1131の他、NCIMB8510Tで透過亢進が抑制された。
今回対象とした乳酸菌種の中にはFD-4の透過亢進を抑制しない乳酸菌種も存在し、菌種特異的であることが推定された。
[まとめ]
今回、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞の単層バリアをTNF-αとIFN-γにより破壊した系において、Lactobacillus delbrueckiiに属する菌(より特定すると、Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricusに属する菌)、又はStreptococcus thermophilusに属する菌に、そのバリア破壊を抑制する作用を見出した。またヒト結腸ガン由来Caco-2細胞の単層バリアを破壊したり、強制的に緩めたりせずに、Lactobacillus delbrueckiiに属する菌(より特定するとLactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricusに属する菌)、又はStreptococcus thermophilusに属する菌を培地に添加することで、これらの菌にバリアを強化する作用を見出した。また上述の系において、TJタンパク質の遺伝子発現の低下を抑制する作用、並びにTJタンパク質の破壊を抑制する作用を、上述の菌に見出した。
また、Caco-2細胞の単層バリアをカルシウム不含培地で培養することで細胞間の接着をを強制的に緩めた系において、カルシウムを含有する通常培地に交換すると同時にLactobacillus delbrueckiiに属する菌(より特定するとLactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricusに属する菌)、又はStreptococcus thermophilusに属する菌を培地に添加することで、これらの菌に腸管バリアの回復を促進する作用を見出した。
したがって、上述の菌は、物理的な腸管バリアの改善、特に腸管細胞のタイトジャンクションの改善のために用いることができる。また上述の菌は、特に腸管バリアの維持、腸管バリアの強化、腸管バリアの破壊の進行抑制、及び腸管バリアの回復から選択されるいずれかのために有効に用いることができるといえる。
腸管バリアの破壊や腸管バリアが緩むことによりLPSなどの物質が体内に流入することで炎症が起き、様々な疾患を引き起こす腸漏れ症候群(リーキーガット)が知られている。したがって上述の菌により、リーキーガットの予防及び改善が期待できる。
[実施例で用いた方法]
(経上皮電気抵抗値(TEER値)の測定)
TEERはMILLICELL(登録商標)-ERS voltohmmeter (Millipore)を使用して測定した。
(FD-4透過試験)
平均分子量4,000のFITC-デキストラン(Sigma-Aldrich)を終濃度1 mg/mLとなるようにapical側に添加した。1時間後にbasolateral側の培地を回収し、蛍光プレートリーダーSynergy H1(BioTek)で透過量を測定した(蛍光波長535 nm、励起波長480 nm)。
(タイトジャンクション(TJ)タンパク質の遺伝子発現試験)
Caco-2細胞のトータルRNAをMaxwell RSC simpleRNA Cells Kit (Promega)により抽出した。トータルRNAの濃度をNanodrop 8000 (Thermo Fisher Scientific)で測定した。1 μg のトータルRNAを用い、PrimeScript RT Master Mix (TaKaRa Bio)により、相補的DNAを作製した。SYBR Premix Ex Taq II (TaKaRa Bio)を用い、QuantStudio 3 Real-Time PCR System (Thermo Fisher Scientific)によりリアルタイムPCRを実施した。
プライマーは、下記を使用した。定量比較はΔΔCT法にて実施した。また、GAPDHの発現によりノーマライズを実施した。
OCCLUDIN (OCLN):
forward 5’-TCAGGGAATATCCACCTATCACTTCAG-3’(SEQ ID NO:3)
reverse 5’-CATCAGCAGCAGCCATGTACTCTTCAC-3’(SEQ ID NO:4)
ZO-1 (TJP1):
forward 5’-CGGTCCTCTGAGCCTGTAAG-3’(SEQ ID NO:5)
reverse 5’-GGATCTACATGCGACGACAA-3’(SEQ ID NO:6)
Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH):
forward 5’-GCACCGTCAAGGCTGAGAAC-3’(SEQ ID NO:7)
reverse 5’-TGGTGAAGACGCCAGTGGA-3’(SEQ ID NO:8)
(TJタンパク質の免疫染色)
Caco-2細胞に4%パラホルムアルデヒド (Wako)を加えて10分間室温でインキュベートすることで固定した。PBSで洗浄後、0.2% Triton X-100を含むPBS(PBST)を加えて5分間室温でインキュベートした。Image-iT FX signal enhancer (Thermo Fisher Scientific)を1滴加えて30分間室温でインキュベートした。10%ヤギ血清を加えて20分間室温でインキュベートした。その後、抗CLAUDIN-4抗体 (MAB42191-SP; R&D Systems)、抗OCCLUDIN抗体 (GTX114949; Genetex)、抗JAM-A抗体 (NBP2-71876; Novus Biologicals)、そして抗ZO-1抗体 (GTX108627; Genetex)を添加し、2時間室温でインキュベートした。次に、蛍光標識したヤギ由来抗IgG抗体 (ab150087 and ab150117; abcam)を加えて1時間室温でインキュベートした。インサートを切り取り、スライドグラスに載せ、共焦点レーザー顕微鏡LSM880 (Zeiss)で観察した。
[発酵乳製品(プレーンヨーグルト)の製造]
牛乳と乳製品(牛乳由来)と水を最終製品の無脂乳固形分が9.5%、乳脂肪分が3.0%となるように混合して、ヨーグルトベースミックスを調製する。次に、調製したヨーグルトベースミックスを均質化後、95℃、5分間加熱殺菌し、その後、約40℃まで冷却する。この殺菌済ヨーグルトベースミックスに、「明治ブルガリアヨーグルト(株式会社明治)」より単離したLactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus 2038株、及びStreptococcus thermophilus 1131株の混合スターターを接種し、発酵し、腸管バリア改善のためのヨーグルトを製造する。
SEQ ID NO:1 16S rRNA gene, Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus 2038
SEQ ID NO:2 16S rRNA gene, Streptococcus thermophilus 1131
SEQ ID NO:3 forward primer for OCCLUDIN
SEQ ID NO:4 reverse primer for OCCLUDIN
SEQ ID NO:5 forward primer for ZO-1
SEQ ID NO:6 reverse primer for ZO-1
SEQ ID NO:7 forward primer for Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase
SEQ ID NO:8 reverse primer for Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase

Claims (7)

  1. ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)に属する菌、及びストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)に属する菌から選択されるいずれかを含む、腸管バリアの改善のための組成物。
  2. 腸管バリアの改善が、腸管バリアの維持、腸管バリアの強化、腸管バリアの破壊の進行抑制、及び腸管バリアの回復から選択されるいずれかである、請求項1に記載の組成物。
  3. 腸管バリアの改善が、腸管細胞のタイトジャンクションの改善を介してなされるものである、請求項1に記載の組成物。
  4. タイトジャンクションの改善が望ましい対象に摂取させるための、請求項1に記載の組成物。
  5. リーキーガットの処置に用いるための、請求項1に記載の組成物。
  6. Lactobacillus delbrueckiiに属する菌が、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus)に属する菌である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. Lactobacillus delbrueckiiに属する菌、及びStreptococcus thermophilusに属する菌から選択されるいずれかが、Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricusの2038株、及びJCM1002T株、並びにStreptococcus thermophilusの1131株、及びNCIMB8510T株から選択されるいずれかである、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。



JP2022151492A 2022-09-22 2022-09-22 腸管バリアの改善のための組成物 Pending JP2024046233A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022151492A JP2024046233A (ja) 2022-09-22 2022-09-22 腸管バリアの改善のための組成物
CN202311228313.8A CN117731008A (zh) 2022-09-22 2023-09-22 用于改善肠道屏障的组合物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022151492A JP2024046233A (ja) 2022-09-22 2022-09-22 腸管バリアの改善のための組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024046233A true JP2024046233A (ja) 2024-04-03

Family

ID=90278190

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022151492A Pending JP2024046233A (ja) 2022-09-22 2022-09-22 腸管バリアの改善のための組成物

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2024046233A (ja)
CN (1) CN117731008A (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
CN117731008A (zh) 2024-03-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Saxelin et al. Probiotic and other functional microbes: from markets to mechanisms
TWI633846B (zh) 包含益生菌及益生質成分及礦物鹽及乳鐵蛋白之組合物
JP4706016B2 (ja) 炎症性疾患治療におけるビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)
EP2179028B1 (en) A novel strain of bifidobacterium and active peptides against rotavirus infections
US7943124B2 (en) Composition for immunostimulation
AU2015100952A4 (en) Probiotic- and enzyme-containing compositions and uses thereof
JP5300772B2 (ja) 新規乳酸菌、並びに新規乳酸菌を含有する医薬、飲食品、及び飼料
EP3725321A1 (en) Composition containing bacterium belonging to genus bifidobacterium as active ingredient
WO2007020884A1 (ja) β-ディフェンシンを介した感染予防効果を有するビフィズス菌または乳酸菌とそれを含有する食品・医薬品組成物
JP6856743B2 (ja) オピオイドペプチド分解用組成物
CN111212575A (zh) 肌肉增量用组合物
Kalliomäki et al. Positive interactions with the microbiota: probiotics
KR102224072B1 (ko) 면역 조절능력과 혈중콜레스테롤 감소 능력이 모두 뛰어난 비피도박테리엄 롱검 아종 균주 및 이의 용도
WO2019182160A1 (ja) 母乳成分増強用組成物
KR20140026326A (ko) 신장 기능을 강화시키는 조성물 및 방법
TW201701891A (zh) 大腸炎抑制劑
JP7490554B2 (ja) 免疫チェックポイント阻害療法を促進するための組成物
WO2020067422A1 (ja) T細胞を活性化するための組成物
JP2024046233A (ja) 腸管バリアの改善のための組成物
WO2020116511A1 (ja) ノロウイルス感染抑制用組成物
JP2021080187A (ja) ウイルス増殖を抑制するための組成物
WO2023286754A1 (ja) オートファジー活性化用組成物
KR102503641B1 (ko) 프로바이오틱스의 장기 배양공법
WO2023120547A1 (ja) 二次性感染症の予防又は発症リスクを低減するための組成物
WO2024043298A1 (ja) 腸内細菌叢改善用組成物