JP2024044393A - 総蛋白濃度計測装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 非侵襲総蛋白計測により、総蛋白濃度計測の個人差を低減する装置を提供する。【解決手段】 生体に所定の光強度で光を照射する照射部と、照射部から10mm以上の距離に位置し、生体から放出される光強度を検出する光強度検出部と、光強度に基づき血流の乱流強度を算出し、乱流強度から総蛋白濃度を算出する制御部と、を有する。【選択図】 図1
Description
本発明は、血液中の総蛋白濃度を計測する装置及び方法に関する。
血中の総蛋白は、個人の栄養状態を知るのに重要な指標である。この栄養状態を常に把握するためには、採血が必要であり、医療機関で採血する必要があり、家庭で気軽に検査することは困難であった。
総蛋白は、血中に溶解している水溶性のタンパク質である。総蛋白は、臨床検査の診断項目で指定されているもので、アルブミンとグロブリンを主成分とする。一方、リポタンパクは、水に不溶の脂肪分をリン脂質とアポタンパクで覆った球状の複合体である。
アポタンパクの濃度は数mg/dLであるのに対し、総蛋白は、g/dLの単位で1000倍以上の濃度水準となる。また、水溶性蛋白(総蛋白)の大きさ13nm程度であり、水溶性であることから散乱はほとんど生じず、また不溶であったとしてもそのサイズから、散乱はほとんど生じない。
一方、リポタンパクは粒子径は100nm以上あり、また目視でも白濁する(不溶性)ことから散乱として観測できる。このように、総蛋白とリポタンパクには、物性の差がある。
特許文献1には、採血を無くすことにより医療機関のみならず家庭でも血中リポタンパク質(脂質)を計測できる方法が開示されている。即時的なデータ取得を可能とすることで、時間的に連続した血中リポタンパク質を計測することが可能となる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、リポ蛋白粒子による散乱係数の変動をとらえるため、栄養状態の把握に必要な総蛋白の計測は困難であった。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされた発明であって、採血することなく血中の総蛋白(TP)濃度を計測するものである。
本発明の総蛋白濃度計測装置は、生体に所定の光強度で光を照射する照射部と、照射部から10mm以上の距離に位置し、生体から放出される光強度を検出する光強度検出部と、光強度に基づき血流の乱流強度を算出し、乱流強度から総蛋白濃度を算出する制御部とを有する。
また、本発明の総蛋白濃度計測装置は、生体に所定の光強度で光を照射する照射部と、照射部から10mm以上の距離に位置し、生体から放出される光強度を検出する光強度検出部と、光強度検出部により検出された光強度を送信する通信部とを有する第1装置に、通信可能に接続される総蛋白濃度計測装置であって、第1装置から送信された光強度に基づき血流の乱流強度を算出し、乱流強度から総蛋白濃度を算出する制御部を有する。
また、本発明の総蛋白濃度計測方法は、生体に所定の光強度で光を照射する照射工程と、照射工程による光の照射位置から10mm以上の距離の位置の生体から放出される光強度を検出する光強度検出工程と、光強度に基づき血流の乱流強度を算出する乱流強度算出工程と、乱流強度から総蛋白濃度を算出する総蛋白濃度算出工程とを有する。
本発明の総蛋白濃度計測装置及び方法によれば、非侵襲的に総蛋白濃度を計測することが可能となる。
実施形態の総蛋白濃度計測装置及び方法について説明する。
図1に示すように、光を用いた計測は、照射部から生体を通した受光部までの光の経路に含まれる、皮膚、血液、及び、筋肉等のすべての情報を含む。血液からの情報のみを得るためには、皮膚や筋肉からの情報を取り除く必要がある。
そこで、本発明者は、実際の生体における血液は常に流動していることに着目し、血液の動きから血液情報のみを取り出すことを試みた。
参考文献(日生誌 Vol.66, No.9, 2004)の図13によれば、タンパク質濃度が増加すれば、血液の粘性は増加することになる。すなわち、光学計測において、血液の粘性あるいは粘性に依存する現象を計測することにより、総蛋白濃度を求めることができる。
図2は、赤血球の凝集と計測時間内における光強度の乱れとの関係を示す図である。図2のa)は、赤血球の凝集が少なく(図2のa)の左)、その場合の光強度の時間変化を示し(図2のa)の右)、図2のb)は、赤血球の凝集が多く(図2のb)の左)、その場合の光強度の時間変化を示す(図2のb)の右)。図2のb)に示すように、血液の粘性が増加することで、赤血球が凝集しやすくなり、血液の不均一性の増大という性質が現れる(図2のb)の左)。つまり、不均一性が増加した液体となった血液の血流は、光強度の測定値の時間変化の乱れとなって表れる(図2のb)の右)。この光強度の測定値の時間変化の乱れの大きさは、数1で算出することができる。
血液の粘性が変化した場合には、血球等は、ズリ速度の上昇に伴い、変形することが知られている。つまり、光の散乱計測においては、この赤血球の形状の変化が、光強度の計測値のゆらぎ(乱れ)として計測される。また、光強度の計測値のゆらぎ(乱れ)は、血管内の血流の乱流強度Iにより表すことができる。
血管内の血流の乱流強度Iは、次のように求めることができる。
図3は、健常者の採血したTPと、実施形態の総蛋白濃度計測装置により測定された乱流強度Iとの相関図である。図からわかるように、良好な相関が得られている。また、乱流強度Iは統計解析で用いられる変動係数(Coefficient of Variation)(標準偏差を平均値で割った値のこと)を求めてもよい。
なお、乱流強度Iは、数1に限らず、標準偏差、変動係数、分散などでもよく、測定時間内における血液の流動による受光強度の乱れを用いてもよい。
図4は、照射―受光部間の距離と相関係数との関係を示す図である。乱流強度Iと総蛋白濃度との相関は、照射―受光部間の距離に応じ相関が良化していく傾向がある。下図より、照射―受光部間の距離が10mm以上あたりから、総蛋白濃度を反映した計測結果が得られ始める。
すなわち、定性判定や毎日の総蛋白濃度の個人内変動を目的とするのであれば、照射―受光部間距離は、10mm以上あればよい。実施形態上、10mm以上50mm以下が望ましい。なお、照射強度を調整することで、照射―受光部間距離は短くすることもできる。
実施形態では、照射-受光部間距離ρを、10mm以上、好ましくは10mm以上50mm以下とする。乱流強度Iと総蛋白濃度との相関は、照射―受光部間の距離に応じ相関が良化していく傾向がある。図4より、照射―受光部間の距離が10mmを超えたあたりから、総蛋白濃度を反映した計測結果が得られ始める。したがって、「総蛋白濃度」を算出するに際し、照射-受光部間距離ρを、10mm以上50mm以下とすることが好適であることがわかる。
また、総蛋白濃度と乱流強度との相関をさらに向上させるために、血圧や脈動、血液量情報などを用いて、精度を向上させることも可能である。また、一定時間における受光強度の変動を評価する方法として、変動係数などの評価指標を用いてもよい。
次に、実施形態である総蛋白濃度計測装置及びその方法について、図を参照して詳細に説明をする。
図5は、第1実施形態の総蛋白濃度計測装置の構成を示す図である。
図5に示すように、実施形態の総蛋白濃度計測装置11は、照射部12と、光強度検出部13と、制御部14と、を有する。
照射部12は、生体(被検体)外から生体内に向けて、所定の照射位置121に照射光を照射するための光源122を有する。本実施形態の光源122は、照射光の波長を調整することができる。光源122は、波長範囲を血漿の無機物によって光が吸収される波長範囲以外に調整できる。光源122は、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲以外に調整できる。ここで、血液の細胞成分とは、血中の赤血球、白血球及び血小板である。血漿の無機物とは、血中の水及び電解質である。光源122は、例えば、蛍光灯、LED、レーザー、白熱灯、HID、ハロゲンランプ等である。光源122の照度は、制御部4により制御されてもよいし、別途制御回路を設けてもよい。
また、実施形態の照射部12は、後述する乱流強度の算出方法に応じて、光の連続的な照射や光のパルス状の照射等の光を照射する時間長さを任意に調整することができる。照射部12は、照射する光の強度または光の位相を任意に変調することができる。
光強度検出部13は、生体から生体外に放出される照射光を受光して、光強度を検出する。光強度検出部13はフォトダイオードや、CCDや、CMOS等の受光素子であればよい。
図6に示すように、光を生体に照射する照射位置121と、生体中の血液(図中のE)から放出される光強度を検出する検出位置131との間に所定の距離ρを設ける。所定の距離ρを設けることにより、照射した光(図中のA)が生体表面及び表面近傍の散乱体により反射して直接的に生体から放出される光(図中のB)の影響を抑制する。照射した光が、リポ蛋白等の総蛋白が存在する深さに達したのち、血液中の総蛋白(図中のD)によって光が反射する。
総蛋白による光の反射による散乱を経て、生体から放出される後方散乱光(図中のC)による光強度を検出する。また、照射位置121と検出位置131との距離ρを長くすることで、光路長は長くなる。このため、総蛋白との衝突回数が増え、検出される光は散乱の影響を多く受ける。距離ρを長くすることにより、これまでは弱く、検出しにくかった散乱の影響が捉えやすくなる。
また、図7及び図8に示すように、光強度検出部13は、照射部12の対面に配置されてもよい。耳たぶや指先など、比較的厚みがなく、光が貫通しやすい場所を測定する場合には、このような配置もできる。照射部及び受光部(光強度検出部)は被検体に接触してもよいし(図8)、接触しなくてもよい(図7)。
図9は実施形態の総蛋白濃度計測装置11のブロック図である。システムバス142を介して、CPU(Central Processing Unit)141、ROM(Read Only Memory)143、RAM(Random Access Memory)144、記憶部145、外部I/F(Interface)146、照射部12、及び、光強度検出部13が接続される。CPU141とROM143とRAM144とで制御部(コントローラー)14を構成する。
ROM143は、CPU141により実行されるプログラムや閾値を予め記憶する。
RAM144は、CPU141が実行するプログラムを展開するエリアと、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの様々なメモリエリア等を有する。
記憶部145は、検知・算出された光強度等のデータを記憶する。記憶部145は、HDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)等の、不揮発性に記憶する内部メモリーでよい。
外部I/F146は、例えばクライアント端末(PC)などの外部装置と通信するためのインターフェースである。外部I/F146は、外部装置とデータ通信を行うインターフェースであれば良く、たとえば、外部装置にローカルに接続する機器(USBメモリ等)であっても良いし、ネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイスであっても良い。
制御部14は、光強度検出部13により検出された光強度に基づき血流の乱流強度を算出する。実施形態では、光学計測において、単純な1点のみの受光で観測する。1点のみの受光の場合には、乱流強度Iの算出式は上記数式1となる。なお、1点のみの受光の場合には、照射-受光部間距離ρは、10mm以上50mm以下付近とすることが好ましい。
また、パルス光を用いた時間分解計測により濁度を求める場合も1点計測が可能となる。この場合、光源側の周期より、受光部のサンプリングレートが重要となる。例えば無線でデータを取得する場合であっても、1秒間に250回以上のサンプリングレートがあれば、血液の濁度変化を計測することが可能である。
制御部14は、算出された乱流強度Iから、血中の総蛋白濃度を算出する。
図3は、乱流強度と総蛋白濃度の相関を示す図である。図3に示すように乱流強度I(図3の縦軸)と総蛋白濃度(図3の横軸のTP)とは相関があることがわかる。相関係数が0.71と良好な結果が得られており、総蛋白濃度の増加が血液の乱流強度の上昇をもたらすことがわかる。したがって、乱流強度Iに基づいて総蛋白濃度を算出することが可能である。なお、図3では線形近似としているが、曲線近似等、他の近似手法を適宜使用してもよい。
また、乱流強度の相関をさらに向上させるために、血圧や脈動、血液量情報などを用いて、精度を向上させることも可能である。
実施形態では、図3に示すような、乱流強度Iと総蛋白の血液中の濃度の変化量の関係についてあらかじめ統計データ(もしくは検量線等)を取り、記憶部145に記憶し、制御部14は、測定された乱流強度Iと、記憶された統計データとを比較することにより、もしくは、検量線を用いて、総蛋白の濃度の変化量を算出する。なお、統計データについては、ROM143等に記憶されてもよい。
また、臨床現場において、濃度と濁度とは同義で使われることがあり、本実施形態における濃度には濁度の概念も含まれる。よって、総蛋白濃度算出部5の算出結果として、濃度のみならず、単位量当たりの粒子数やホルマジン濁度、あるいは総蛋白の平均粒子系変化量とすることができる。
なお、統計データの形式は特に限定されるものではなく、例えば、性別、身長、体重、BMI等で分類していてもよく、表やグラフ、関数式等を用いて算出してもよい。
以下、第2実施形態である総蛋白濃度計測装置について説明をする。なお、第2実施形態の総蛋白濃度計測装置の構成は、第1実施形態の総蛋白濃度計測装置の構成と共通する部分もあるため、相違する部分を主に説明する。
上記第1実施形態では、照射部12と光強度検出部13と制御部14とを一体として構成した例を示したが、これに限られず、光を照射する照射部32と光強度検出部33とをユーザー装置として構成し、制御部34を総蛋白濃度計測装置として構成したシステムとしてもよい。
図10は、第2実施形態の総蛋白濃度計測装置の構成を示す図である。
実施形態の血中総蛋白濃度計測システム300は、光強度を測定するユーザー装置310と、当該光強度から総蛋白濃度を算出する血中総蛋白濃度計測装置320から構成される。ユーザー装置310と血中総蛋白濃度計測装置320は、無線又は有線通信網Nを介してネットワーク接続される。
血中総蛋白濃度計測装置320は、ユーザー装置310から送信された光強度に基づいて所定の処理を行い、総蛋白濃度を算出するための装置であり、具体的には、パーソナルコンピュータや、装置の台数や送受信するデータ量によってはサーバー装置が適宜用いられる。
ユーザー装置310は、ユーザーが所持する装置であり、単独の装置である場合もあり、携帯電話、腕時計等に搭載される場合もある。
ユーザー装置310は、光を照射する照射部32と光強度検出部33と通信部310aとを有する。通信部310aは、光強度検出部33で検出された光強度を送信する。照射部32と光強度検出部33の動作・機能については第1実施形態と同様である。
総蛋白濃度計測装置320は、通信部320aと制御部34とを有する。通信部320aは、通信部310aから送信された光強度を有線又は無線ネットワークNを介して受信し、制御部34へ送信する。制御部34の動作・機能については第1実施形態の制御部14と同様である。
なお、本実施形態では、ユーザー装置310から血中総蛋白濃度計測装置320へ、ネットワークNを介して光強度を送信したが、これに限られず、ユーザー装置310と血中総蛋白濃度計測装置320とが、ネットワークNを介さずに直接接続し、有線通信や無線通信等の手段により光強度を送信してもよい。
次に、実施形態の総蛋白濃度計測方法について説明する。図11は、実施形態の総蛋白濃度計測方法のフローチャートである。なお、第1実施形態の総蛋白濃度計測装置の構成を用いて実施形態の総蛋白濃度計測方法を説明するが、装置構成はこれに限られない。
第1実施形態の総蛋白濃度計測装置11において、予め設定されているプログラムに基づいて、総蛋白濃度計測装置11は、以下の総蛋白濃度計測処理を実行する。
照射工程(S501)では、照射部12を用いて照射位置121に対して連続光を照射する。
光強度検出工程(S502)では、光強度検出部131を用いて検出位置1331における光強度を検出する。検出位置1331で検出された光強度は、乱流強度算出工程へと送られる。
乱流強度算出工程(S503)では、光強度検出工程で検出された光強度から、血流の乱流強度Iを算出する。乱流強度Iの算出法については上述した。
総蛋白濃度算出工程(S504)では、乱流強度Iから、血中の総蛋白濃度を算出する。総蛋白濃度の算出法については上述した。
以上説明したように、実施形態の総蛋白濃度計測装置及びその方法によれば、血流の乱れを測定することにより、使用用途が拡大するとともに、総蛋白濃度測定の個人差を軽減することが可能となる。
11 総蛋白濃度計測装置
12 照射部
13 光強度検出部
14 制御部
12 照射部
13 光強度検出部
14 制御部
Claims (5)
- 生体に所定の光強度で光を照射する照射部と、
前記照射部から10mm以上の距離に位置し、前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出部と、
前記光強度に基づき血流の乱流強度を算出し、
前記乱流強度から総蛋白濃度を算出する制御部と、
を有することを特徴とする総蛋白濃度計測装置。 - 前記照射部と前記光強度検出部の距離は、10mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の総蛋白濃度計測装置。
- 前記制御部は、前記乱流強度を下記数式2により算出することを特徴とする請求項1または2に記載の総蛋白濃度計測装置。
- 生体に所定の光強度で光を照射する照射部と、前記照射部から10mm以上の距離に位置し、前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出部と、前記光強度検出部により検出された光強度を送信する通信部とを有する第1装置に、通信可能に接続される総蛋白濃度計測装置であって、
前記第1装置から送信された前記光強度に基づき血流の乱流強度を算出し、
前記乱流強度から総蛋白濃度を算出する制御部を、有することを特徴とする総蛋白濃度計測装置。 - 生体に所定の光強度で光を照射する照射工程と、
前記照射工程による光の照射位置から10mm以上の距離の位置の前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出工程と、
前記光強度に基づき血流の乱流強度を算出する乱流強度算出工程と、
前記乱流強度から総蛋白濃度を算出する総蛋白濃度算出工程と、
を有することを特徴とする総蛋白濃度計測方法。
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