以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
<実施形態1>
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、無線メッシュネットワークであり、一例において、基地局装置101と、複数の通信装置(通信装置111~通信装置116)を含んで構成される。基地局装置101は、例えば第5世代(5G)のセルラ通信規格に準拠した無線通信を行う基地局装置であり、端末装置との接続を確立して無線通信を行うように構成される。通信装置111~通信装置116は、例えば、基地局装置と同様に、端末装置との接続を確立して無線通信を行うことが可能な通信装置でありうる。ただし、本実施形態では、通信装置111~通信装置116は、基地局装置101から送信された信号を、レピータのように物理層(レイヤ1)で中継する機能を有する。また、通信装置111~通信装置116は、例えば、レイヤ1のレピータとしての機能と、他の通信装置や後述の制御装置121と通信するための機能とを併せ持つ1つの装置として構成されうるが、これに限られない。例えば、通信装置111~通信装置116は、これらの機能が別個の装置として実装された装置の集合体として実現されてもよい。なお、基地局装置101と通信装置111~通信装置116のそれぞれとの間において、例えばミリ波などの大容量な通信が可能な周波数帯を用いて信号が伝送され、無線通信によってバックホール回線が構築されるものとする。基地局装置101から送出されたバックホール回線用の周波数帯の電波は、その電波を受信した通信装置(例えば、通信装置111)によって増幅されて出力される。また、その増幅されて出力された電波は、さらに別の通信装置によって受信され、その別の通信装置は、その電波を増幅して出力する。このようにして、複数の通信装置を介して中継伝送経路が確立される。
通信装置は、自装置の配下の端末装置宛ての信号が届いた場合、その信号を復調し、端末装置が受信することのできる形式の信号に変換して、その端末装置へ送信する。また、通信装置は、端末装置から受信した信号を、バックホール回線で送信可能な形式に変換して、他の通信装置又は基地局装置へ送信する。なお、これは一例であり、通信装置は、一般的なレピータとしての機能を有してもよい。すなわち、基地局装置、端末装置又は他の通信装置(レピータ)から到来した電波を増幅して出力する機能を有し、例えば基地局装置や他の通信装置から受信した信号を端末装置が処理できる形式の無線信号へ変換する処理や、端末装置から受信した信号をバックホール回線へ流すための形式へ変換する処理などの機能を有しなくてもよい。なお、以下では、通信装置における中継通信機能に着目して説明する。
一般に、レイヤ1で中継を行うレピータを用いた通信システムでは、事前に計画された位置にレピータを配置して、そのレピータが単純に受信した電波を増幅して出力することにより、カバレッジエリアを改善するように構成される。このような構成では、レピータは、事前に設定された方向に電波を放射するのみであり、メッシュネットワークにおける中継経路の切り替えなどの柔軟な通信を行うことが容易ではない。一方で、近年、複数のパターンでビームを設定可能に構成され、そのいずれかのパターンのビームを使用して中継を行うことが可能なレピータが存在する。このようなレピータにおいて、例えば、最大の受信電力で信号を検出することができるパターンのビームを用いることにより、無線品質が良好な中継経路を選択的に使用することができる。しかしながら、このような中継経路の設定は多くの時間を必要とし、例えば、一部のリンクにおける無線品質が劣化してから他のリンクを使用するようにするなどの柔軟な経路の切り替えを迅速に行うことはできない。また、レイヤ2以上の上位レイヤに基づく制御を行う場合、柔軟な経路切り替え制御を行うことができるが、レイヤ2以上の復号処理を行う必要があり、やはり経路の切り替えに一定の時間がかかってしまう。
本実施形態では、このような事情に鑑み、レイヤ1での中継経路の切り替えを容易に実行することができるようにするための手法を提供する。例えば、制御装置121が、通信装置のそれぞれにおける位置情報、電波を受信した際のビームの指向方向、及び受信タイミングの情報に基づいて、各通信装置によって形成される中継伝送の順序の関係を特定する。そして、制御装置121は、中継伝送経路を形成するためのルーティング情報を形成する。制御装置121は、中継伝送経路を形成するための各通信装置における中継処理のための設定情報を、ルーティング情報として形成しうる。そして、制御装置121は、形成したルーティング情報を、各通信装置へ通知しうる。なお、各通信装置は、例えば有線通信回線を用いて制御装置121との間で通信してもよいし、例えば、基地局装置101を介して制御装置121と通信してもよい。また、通信装置は、例えば、ロングタームエボリューション(LTE)、第5世代(5G)セルラ通信システム、無線LAN、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)等のレガシ通信方式による無線通信が可能であってもよく、その無線通信によって、制御装置121との間の制御用の通信を行ってもよい。
例えば、通信装置は、信号の受信に使用可能な複数のビームパターンを用いて、無線信号の検出処理を実行する。通信装置は、最も強い電力で無線信号が受信された又は所定値以上の電力で無線信号が受信されたビームを選択し、そのビームを示す情報を制御装置121へ通知する。例えば、図2の例において、通信装置202は、基地局装置又は通信装置201から送信された無線信号を、ビーム211~ビーム215のそれぞれのパターンで測定する。そして、通信装置202は、例えば、自装置の位置と、ビーム212の指向方向の情報とを、制御装置121へ通知する。なお、この場合、通信装置201は、無線信号を出力する際に複数のビームを形成してもよく、受信した無線信号を増幅して、その複数のビームの少なくとも一部(一例において全部)から出力するように構成されうる。そして、通信装置202は、その1つ以上のビームのいずれかから送出された無線信号を検出する。なお、通信装置201は、1つのビームのみを形成可能であってもよく、その場合は、そのビームを用いて増幅後の無線信号を出力するように構成される。
なお、指向方向の情報は、例えば、通信装置202の姿勢(アンテナ配置)と、アンテナウェイトの情報を含みうる。この場合、制御装置121は、アンテナウェイトの情報からアンテナパターンを特定し、そのパターンと姿勢の情報に基づいて、通信装置202の指向方向の情報を特定しうる。なお、これは一例に過ぎず、通信装置202自身が、自装置のアンテナウェイト及びアンテナパターンから指向方向を特定して、特定した情報を制御装置121へ通知してもよい。また、通信装置202は、例えば固定されている複数の指向性アンテナのうち、無線信号を十分な電力で検出したのがいずれのアンテナであるかを示す情報を制御装置121へ通知してもよい。
なお、制御装置121は、各アンテナパターンとその指向方向との関係及びそれに対応するインデクスに関する情報を事前に有していてもよい。この場合、通信装置202は、いずれのアンテナパターンにおいて無線信号が十分な電力で検出されたかを示すインデクスの情報を、制御装置121へ通知しうる。これにより、制御装置121は、インデクスに対応するアンテナパターンを特定し、通信装置202がどの方向において到来した電波を十分な電力で検出したかを特定することができる。なお、通信装置202は、例えば設置された際に、アンテナパターンを示す情報と、そのアンテナパターンを特定可能なインデクスを示す情報とを、制御装置121へ通知してもよい。また、例えば、そのような情報が、通信事業者によって、通信装置202と制御装置121に対して、実際に通信装置202の運用が開始される前に入力されてもよい。さらに、通信装置が設置された際に、その通信装置の位置情報が制御装置121に入力されてもよい。この場合、制御装置121は、各通信装置においていずれのアンテナパターンを用いて十分な電力の無線信号を検出したかを特定可能な情報のみを取得するようにしてもよい。
制御装置121は、各通信装置から、通信装置の位置と電波の受信方向を取得すると、その通信装置が受信した電波を出力したノードを特定する。例えば、制御装置121は、図3に示すように、通信装置202から受信した情報に基づいて、通信装置202の位置からビーム212に対応する方向に存在する基地局装置や他の通信装置を特定する。制御装置121は、例えば、通信装置201や通信装置203についても位置情報および無線信号を検出した際に使用したビームの方向の情報を取得する。また、制御装置121は、例えば、基地局装置101の位置の情報も保持しているものとする。ここで、通信装置202が受信した無線信号の発信元の候補は、通信装置202以外の装置である。このため、制御装置121は、基地局装置101の位置、通信装置201の位置、及び通信装置203の位置が、通信装置202の位置を基準としてビーム212に対応する方向に存在するか否かを判定する。これにより、制御装置121は、例えば、通信装置202において検出された無線信号の発信元が通信装置201であることを特定する。また、制御装置121は、同様にして、通信装置201が検出した無線信号の発信元が基地局装置101であることを特定しうる。そして、制御装置121は、これらの特定結果から、基地局装置101、通信装置201、通信装置202の順で無線信号が中継される中継伝送経路が存在することを特定することができる。
同様にして、制御装置121は、利用可能な中継伝送経路を全て特定する。例えば、図1の例において、基地局装置101から通信装置116までの経路として、(1)基地局装置101、通信装置111、通信装置114、通信装置115を経由する経路、(2)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置115を経由する経路、及び、(3)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置113を経由する経路の3つの経路を特定しうる。
なお、経路(1)~経路(3)を切り替えて使用するには、それらの経路において、基地局装置101から送信された信号が中継されていること、そして、その信号を送信するのに使用されたビームが同じである必要がある。すなわち、基地局装置101と異なる他の基地局装置から送信された信号が中継される経路や、基地局装置101における異なるビームから送信された信号が中継される経路に切り替える場合、その切り替えのために基地局装置101やコアネットワークにおける制御が必要となり、迅速な経路の切り替えができないからである。このため、各通信装置は、例えば基地局装置101から送信された信号がいずれのビームによって送信されたかを示すビームIDを特定し、制御装置121に対してそのビームIDを通知してもよい。各通信装置は、少なくともビームIDを変更することなく、受信した無線信号を増幅して出力する。なお、各通信装置が、基地局装置101以外の他の基地局装置から信号を受信しない位置に存在しており、かつ、基地局装置101が1つのビームのみを形成する場合には、各通信装置は、ビームIDを通知しなくてもよい。
また、制御装置121は、例えば、上述の各通信装置における位置関係及び信号を検出したビームのパターンに加えて、又はこれらに代えて、無線信号の到来タイミングに基づいて、中継伝送経路を特定してもよい。例えば、制御装置121は、各通信装置において無線信号が検出されたタイミングを収集する。一例において、制御装置121は、各通信装置において設定されたタイミングアドバンスの値を収集しうる。例えば、通信装置111におけるタイミングアドバンスの値がT1である場合、基地局装置から送信された信号が、そのT1の半分の時間(T1/2)だけ遅延して受信されると判定することができる。同様に、通信装置112におけるタイミングアドバンスの値がT2である場合、基地局装置から送信された信号が、時間(T2/2)だけ遅延して受信されると判定することができる。また、各通信装置は、例えば全地球測位システム(GPS)や標準電波などを用いて、無線信号を検出した時刻を記録し、制御装置121へ通知してもよい。なお、ここでは、信号の検出タイミングとフレームが送信されたタイミングとの差分が特定される。例えば、各通信装置において個別のタイミングで無線信号の検出時刻が特定された場合、例えば、無線信号のフレーム番号に基づいて特定されたそのフレーム番号の無線信号が送出されたタイミングと、検出時刻との差分が特定される。すなわち、ここでは、基地局装置101から送出された無線信号が各通信装置において検出されるまでの時間差が特定される。
制御装置121は、例えば、図1における基地局装置101によって無線信号が送出されたタイミングと、通信装置111~通信装置116においてその無線信号が検出されたタイミングとの時間差を、図4のように特定したものとする。この場合、制御装置121は、基地局装置101、通信装置111、通信装置112及び通信装置114、通信装置113及び通信装置115、通信装置116の順で無線信号が到達したと特定する。制御装置121は、このような無線信号が到達する順序により、中継伝送経路を大まかに特定することができる。ここで、制御装置121は、例えば、通信装置の位置関係を事前に保持し又は各通信装置から取得し、その位置関係と無線信号の到来タイミングとに基づいて、詳細な中継伝送経路を特定することができる。制御装置121は、例えば、通信装置111と通信装置112との間の距離を電波が伝搬する時間と無線信号の到達時間差とが対応することに応じて、通信装置111と通信装置112との間に中継伝送区間が形成されると判定しうる。また、制御装置121は、例えば、基地局装置101と通信装置112との間の距離を電波が伝搬する時間と、基地局装置101における無線信号の送出タイミングと通信装置112における無線信号の到達タイミングとの時間差が対応しないことを特定しうる。これにより、制御装置121は、基地局装置101と通信装置112との間に直接電波が到達する区間がないことを特定しうる。このように、制御装置121は、各通信装置における無線信号の到達タイミングに基づいて中継伝送において電波が伝搬する区間を特定し、中継伝送経路を特定することが可能となる。なお、制御装置121は、例えば、事前に各通信装置が使用可能なビームを認識していてもよく、その場合、中継伝送経路において使用すべきビームを特定することができる。なお、例えば通信装置がそれぞれ1つのパターンのビームのみを形成可能である場合には、ビームの特定は行われなくてもよい。
上述の処理は、一例において、基地局装置101による通信サービスが提供されている間に行われてもよい。すなわち、上述のような中継伝送経路の特定のために専用の期間を用意しなくてもよい。各通信装置は、例えば、無線信号を最も強く又は所定電力以上で受信するアンテナパターンを用いて無線信号を取得して、その無線信号を増幅して出力する。その際のアンテナパターンや無線信号の受信タイミングを特定して、制御装置121へ提供する。また、例えば、データトラフィックの少ない時間帯などにおいて、中継伝送経路の特定のための専用の期間を設けてもよい。これによれば、中継伝送経路を精度よく特定することができる。なお、制御装置121は、その専用の期間を示す情報を、各通信装置へ通知し、各通信装置は、その専用の期間において、中継伝送経路の特定のための処理を実行しうる。
なお、上述の処理では、制御装置121が、各通信装置において無線信号を十分な電力で検出した受信側のビームパターンに基づいて、中継伝送経路を特定する場合の例について説明した。この受信側のビームパターンに代えて、又はこれに加えて、送信側のビームパターンが中継伝送経路を特定する際に使用されてもよい。例えば、通信装置は、上述の中継伝送経路の特定のための専用の期間において、送信側のビームパターンを時分割で切り替えながら電波を出力し、他の通信装置は、その電波を検出するようにしうる。他の通信装置は、最も強く又は所定電力以上で電波を検出したタイミングを特定し、そのタイミングの情報を制御装置121へ通知しうる。一例において、各通信装置が、送信用のビームパターンと時間区間との対応関係を制御装置121へ通知することにより、制御装置121は、他の通信装置における電波の検出タイミングに応じて、送信ビームパターンを特定することができる。また、各通信装置は、例えば、使用可能な送信用のビームパターンを制御装置121へ通知し、制御装置121が、送信用のビームパターンのそれぞれを使用する時間区間を指定する情報を生成して、各通信装置へ通知してもよい。これにより、制御装置121は、中継伝送で使用されるべき送信側のビームパターンを特定することができる。これによれば、制御装置121は、上述の受信側のビームパターンの場合と同様にして、通信装置において利用可能な送信側のビームパターンを考慮した中継伝送経路を特定することができる。
制御装置121は、上述のようにして特定した中継伝送経路の情報を、ルーティング情報の情報として各通信装置に通知する。一例において、制御装置121は、各通信装置に対して、その通信装置が関与する中継伝送経路を特定可能な情報を通知する。例えば、図1のシステムにおいて、通信装置115に対して、基地局装置101から通信装置115に到達するまでの経路の情報として、(1)基地局装置101、通信装置111、通信装置114、通信装置115からなる中継伝送経路と、(2)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置115からなる中継伝送経路とが、通知される。また、通信装置115が関与する通信経路として、基地局装置101と通信装置116との間の通信経路である、(3)基地局装置101、通信装置111、通信装置114、通信装置115、通信装置116からなる中継伝送経路と、(4)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置115、通信装置116からなる中継伝送経路が、通信装置115へ通知される。各通信装置は、例えば、基地局装置101から通信装置115までの経路が使用されるべきことが制御装置121や基地局装置101によって指示された場合、上述の(1)又は(2)のいずれかの経路を用いるように、各通信装置が動作しうる。なお、基地局装置101から通信装置116までの経路が使用されるべき際には、上述の(3)及び(4)に加えて、(5)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置113、通信装置116からなる中継伝送経路のいずれかの経路を使用するように、各通信装置が動作しうる。
また、制御装置121は、ルーティング情報の情報として、通信装置のそれぞれが使用すべきビームのパターンを1つ以上通知しうる。例えば、制御装置121は、通信装置115に対して、(1)の経路では通信装置114の方向に向けたビームを、(2)の経路では通信装置112の方向に向けたビームを、それぞれ使用すべきことを通知しうる。なお、上述の経路を示す情報は通知されなくてもよく、基地局装置101から送出された無線信号を中継可能なビームの情報のみが通知されてもよい。また、制御装置121は、各通信装置が、信号を出力する際に使用すべきビームのパターンをルーティング情報の情報として含めてもよい。すなわち、制御装置121は、例えば、各中継伝送経路を形成するために使用されるべき各通信装置の送信または受信のためのビームのパターンを特定し、そのビームのパターンの情報を各通信装置へ提供する。なお、複数の中継伝送経路に対応するビームのパターンの情報が通信装置へ提供されてもよい。この場合、いずれの中継伝送経路(ビームパターン)が優先して使用されるべきかを示す優先順位の情報が各通信装置へ提供されうる。優先順位は、例えば、無線品質や基地局装置101までのホップ数等に応じて決定されうる。このため、各通信装置は、例えば、所定の電力以上で無線信号を検出した際のビームパターンや検出タイミングに関する情報を通知する際に、さらに、その無線信号の無線品質を示す情報を制御装置121へ通知しうる。無線品質を示す情報は、例えば参照信号受信電力(RSRP)や参照信号受信品質(RSRQ)、信号対雑音比(SNR)などでありうる。制御装置121は、例えば、中継伝送経路上の無線品質の最低値が良好であるほど優先順位が高くなるように、中継伝送経路の優先順位を決定しうる。なお、これは一例であり、例えば無線品質の平均値や最大値などに基づいて、優先順位が決定されてもよい。通信装置は、通知された複数の中継伝送経路のうち、例えば優先順位が最も高いビームのパターンを用いて中継伝送を実行する。そして、通信装置は、使用中の経路において無線信号が所定期間にわたって届かなくなったことなどにより障害の発生を検出すると、使用するビームパターンを、次に優先順位の高いビームのパターンに切り替えて中継伝送を行うようにしうる。これによれば、通信装置が、通信の状況に応じてビームパターンを切り替えることにより、結果として中継伝送経路が迅速に切り替えられる。この結果、障害発生時などで通信が途絶する期間を短縮することができる。
なお、通信装置は、障害の発生を検出した場合、障害が発生したことを、制御装置121へ通知するようにしてもよい。また、この場合に、制御装置121が、各通信装置に対して中継伝送経路の切り替えを指示してもよい。これにより、制御装置121が、中継伝送経路のどの箇所で障害が発生しているかを特定し、その特定した結果に基づいて、適切に中継伝送経路の切り替えを行わせることが可能となる。例えば、図1の例において、基地局装置101、通信装置111、通信装置114、通信装置115、及び通信装置116を含んだ中継伝送経路が使用されていたものとする。ここで、通信装置114と通信装置115との区間において障害が発生すると、通信装置115は、例えば通信装置114からの信号が届かないことにより、障害の発生を検出する。このとき、通信装置115において信号が届かない結果、通信装置116にも信号が届かないこととなり、通信装置116も障害が発生したと判定しうる。このような場合に、各通信装置が自律的に中継伝送経路を切り替えると、例えば、通信装置115が、基地局装置101、通信装置111、通信装置112を含んだ経路を使用するように、ビームのパターンを切り替える一方で、通信装置116も、基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置113を含んだ経路を使用するようにビームのパターンを切り替えうる。このとき、通信装置113が使用中の中継伝送経路のいずれにも関与せず、後述のように電源をオフとしていることが想定されうる。この場合、通信装置113が通信装置112から送出された電波を中継することがないため、通信装置116は、ビームのパターンを切り替えた後にもやはり電波を検出することができず、通信できない状況が継続してしまいうる。これに対して、上述のように、通信装置115及び通信装置116が制御装置121に対して障害の発生を通知することにより、通信装置121は、通信装置115と通信装置116との間には障害が発生していないと判定することができる。そして、制御装置121は、例えば、通信装置115にビームのパターンを変更させる一方で、通信装置116にはビームのパターンを変更させないようにするような、中継伝送経路の切り替え制御を行うことができる。
また、各通信装置は、障害が発生した通信経路において、その障害が解消したかを監視するようにしてもよい。例えば、上述のような状況において、通信装置115は、通信装置112の方向にビームを向けながら、通信装置114からの電波が到来するか否かを監視するようにしてもよい。そして、各通信装置は、例えば、正常に電波が到来したことや現在使用中のビームで受信されるより良好な無線品質の電波を検出したことなどによって障害から回復したと判定しうる。そして、各通信装置は、障害から回復したことによって、元の中継伝送経路を使用するように、ビームのパターンを自律的に切り替えてもよい。また、各通信装置は、障害が解消した場合に、障害からの回復を制御装置121へ通知してもよい。この場合、制御装置121がその通知に基づいて、中継伝送経路を元の経路に戻すように各通信装置に指示してもよい。
なお、複数の中継伝送経路の情報を用意するには、その複数の中継伝送経路が、いずれも基地局装置101から送出された同じ信号を転送する経路となっていることが重要である。例えば、基地局装置101が複数のビームを形成可能な場合、その複数のビームからは、それぞれ別個の情報が送出されうる。このため、基地局装置101から送出された同じ信号を転送する複数の経路が形成されるようにするために、各通信装置は、例えば、検出した無線信号のビームIDや同期信号/物理ブロードキャスト信号ブロック(SSB)の識別情報(SSB ID)を、制御装置121へ通知してもよい。そして、制御装置121は、例えば異なるビームで送出された信号に対して別個の中継伝送経路を設定し、その情報を各通信装置へ通知しうる。このような通知がなされた場合、通信装置は、基地局装置101が形成可能な複数のビームのいずれから送出された無線信号が到来したかを、例えばその無線信号の物理層のヘッダを確認することにより特定する。そして、通信装置は、その特定したビームで送出された無線信号を伝送するための中継伝送経路に対応して通知された、自装置において使用すべきビームを用いて、中継を行うようにしうる。
また、制御装置121は、使用されない中継伝送経路に属する通信装置に対して、少なくともその経路に対応する通信回路等の電源をオフとするように指示してもよい。例えば、図1の例において、通信装置112から通信装置115へ電波が到達する経路が使用されない場合、通信装置112における通信装置115の方向へ電波を出力する回路の電源がオフとされ、通信装置115における通信装置112の方向からの電波を受信する回路の電源がオフとされうる。また、例えば通信装置113を通過する中継伝送経路が使用されない場合、通信装置113の全体をオフとするように制御装置121が指示してもよい。なお、この場合に、通信装置113は、例えば通信装置112の方向からの電波を受信する回路のみオンとしておいてもよい。通信装置113は、通信装置112の方向からの電波を受信した場合、例えば通信装置112から通信装置115を経て通信装置116へ至る中継伝送経路を使用できないことによって通信装置112が通信装置113の方向へ電波を出力したと判定しうる。この場合、通信装置113は、通信装置116の方向への電波の出力を開始しうる。このようにして、本実施形態では、使用されない通信機能をオフとすることによって電力消費を抑制しながら、迅速に中継伝送経路を切り替えて使用することが可能となる。
(装置構成)
図5を用いて、制御装置および通信装置のハードウェア構成例について説明する。制御装置および通信装置は、一例において、プロセッサ501、ROM502、RAM503、記憶装置504、及び、通信回路505を含んで構成される。プロセッサ501は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM502は、制御装置および通信装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM503は、プロセッサ501がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置504は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。
通信装置の通信回路505は、例えば、基地局装置や他の通信装置が送信した無線信号を増幅して出力する機能を有する。なお、通信装置の通信回路505は、例えば、複数のアンテナのそれぞれに対応するアンテナウェイトを設定することにより、信号の送信と受信との少なくともいずれかのためのアンテナウェイトを形成するように構成されうる。また、通信装置の通信回路505は、例えば、複数の指向性アンテナと接続され、その少なくともいずれかを使用するように構成されてもよい。さらに、通信装置の通信回路505は、複数のビームパターンのそれぞれに対して別個に用意されてもよく、使用されるビームパターン以外のビームパターンに対応する通信回路505は、オフとされるように構成されてもよい。また、通信装置の通信回路505は、最も強く又は所定の電力以上で無線信号を検出したビームパターンを特定可能な情報、その無線信号が送出されてから受信されるまでの時間差を特定可能な情報、通信装置の位置情報などを、制御装置へ通知するための通信機能を有しうる。一例において、通信装置の通信回路505は、例えば中継伝送経路を介して基地局装置へその情報を通知するように構成されうる。この場合、基地局装置が、その情報を制御装置へ転送しうる。また、通信装置の通信回路505は、レガシ通信方式や有線通信方式を用いて、その情報を直接、制御装置へ通知する機能を有してもよい。また、通信装置の通信回路505は、例えば中継伝送経路を介して、又は、制御装置から直接、制御装置によって生成されたルーティング情報の情報を受信するように構成されうる。
制御装置の通信回路505は、通信装置から情報を取得し、通信装置へ情報を送信可能な任意の通信機能を有しうる。制御装置の通信回路505は、例えば、基地局装置や通信装置との間で有線通信方式を用いて接続を確立して、情報を送受信するように構成されうる。また、制御装置の通信回路505は、例えば、レガシ通信方式で通信可能な構成を有し、通信装置とその通信方式を用いて無線通信を行うように構成されてもよい。
図6は、制御装置の機能構成例を示す図である。制御装置は、その機能として、例えば、情報取得部601、伝送経路特定部602、及び、ルーティング情報通知部603を有する。なお、図6の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図6の各機能は、例えば、プロセッサ501がROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路505の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
情報取得部601は、無線信号を最も強く又は所定の電力以上で受信した通信装置のビームパターンを特定可能な情報、通信装置の位置情報、基地局装置から無線信号が送信されてから通信装置が無線信号を検出するまでの時間差を特定可能な情報の少なくともいずれかを取得する。伝送経路特定部602は、情報取得部601によって取得された情報に基づいて、例えば上述のようにして、各通信装置がどの装置からの信号を増幅して出力するかを特定し、中継伝送経路を特定する。ルーティング情報通知部603は、伝送経路特定部602によって特定された中継伝送経路を形成するために、使用すべきビームパターンを各通信装置へ通知する。また、ルーティング情報通知部603は、例えば、使用されない中継伝送経路に対応するビームパターンでの通信機能のオフなどを、通信装置へ指示してもよい。
図7は、通信装置の機能構成例を示す図である。通信装置は、その機能として、例えば、測定部701、情報通知部702、及び、ルーティング制御部703を有する。なお、図7の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図7の各機能は、例えば、プロセッサ501がROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路505の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
測定部701は、他の通信装置や基地局装置から到来した無線信号を、例えば複数のビームパターンのそれぞれで受信し、いずれのビームパターンを用いた場合に、その無線信号が最も強く又は所定の電力以上で検出されるかを特定する。また、測定部701は、例えば、他の通信装置や基地局装置から到来した無線信号を検出したタイミングを特定する。また、測定部701は、例えば、特定したタイミングと、その無線信号が基地局装置において送信されたタイミングとの時間差を特定しうる。なお、測定部701は、タイミングアドバンスの値から、この時間差を特定してもよい。また、測定部701は、例えば、他の通信装置が複数の送信用のビームパターンを切り替えて無線信号を出力する場合に、1つの受信用のビームパターンを用いてその無線信号を測定し、その無線信号が最も強く又は所定の電力以上で検出されたタイミングを特定しうる。そして、測定部701は、そのタイミングに基づいて、最も強く又は所定の電力以上で検出される無線信号の送信に使用された送信用のビームパターンを特定しうる。
情報通知部702は、測定部701によって特定されたビームパターンの情報や、上述の時間差の情報を、制御装置へ通知する。なお、情報通知部702は、例えば、受信用のビームパターンの情報として、そのビームパターンに事前に割り当てられたインデクスを通知しうる。また、情報通知部702は、時間差の情報ではなく、例えば、どのフレームがどのタイミングで受信されたかを特定するための情報(例えばフレーム番号及び受信タイミング)を、制御装置へ通知してもよい。また、情報通知部702は、例えば他の基地局装置の送信用のビームパターンを特定せず、複数の送信用のビームパターンを切り替えて無線信号が出力された期間において、その無線信号を最も強く又は所定の電力以上で検出したタイミングの情報を、制御装置へ通知してもよい。この場合、制御装置は、そのタイミングに対応する送信用のビームパターンを特定しうる。
ルーティング制御部703は、情報通知部702によって通知された情報に基づいて制御装置が決定したルーティング情報を制御装置から取得し、その情報に基づいて、通信に使用すべき受信用のビームパターンや送信用のビームパターンを設定する。なお、ルーティング制御部703は、それぞれ優先順位が付された複数のルーティング情報を取得してもよい。この場合、ルーティング制御部703は、優先順位の高いルーティング情報を優先的に用いて、中継用の設定を行う。また、ルーティング制御部703は、例えば、使用中の設定を用いた通信における無線品質が低下した場合などに、次に優先順位の高いルーティング情報を用いて設定を行い、中継伝送経路を切り替える。なお、各通信装置において使用されるべき送信用のビームパターンの情報が、無線信号内の物理層のヘッダなどに含められてもよく、ルーティング制御部703は、その情報に基づいて、無線信号ごとに使用するアンテナパターンを設定してもよい。また、無線信号がどの通信装置まで転送されるべきかを示す情報がその無線信号の物理層のヘッダ等に含められてもよい。この場合、ルーティング制御部703は、例えば、自装置まで転送されるべきことを示す情報が含まれた無線信号を受信した場合に、その無線信号を中継しないように設定を行ってもよい。
(処理の流れ)
図8は、本実施形態において実行される処理の流れの例を示している。まず、各通信装置は、基地局装置が送出した無線信号を例えば複数の受信用のビームパターンを用いて測定する。ここで、通信装置Aにおいて基地局装置が送出した無線信号が検出され(S801)、通信装置B及び通信装置Cにおいてはその無線信号が検出されなかったものとする。その後、通信装置Aは、基地局装置から受信した無線信号を増幅して、1つ以上の送信用のビームパターンを用いてその無線信号を出力し、通信装置B及び通信装置Cが、この無線信号を検出したものとする(S802、S803)。また、通信装置Bは、通信装置Aから受信した無線信号を増幅して、1つ以上の送信用のビームパターンを用いてその無線信号を出力し、通信装置Cが、この無線信号を検出したものとする(S804)。そして、通信装置A~通信装置Cは、この無線信号を最も強く又は所定の電力以上で検出した際の受信用のビームパターンを特定可能な情報、無線信号の検出タイミングの情報等を、制御装置へ通知する(S805~S807)。制御装置は、受信した情報に基づいて、基地局装置から各通信装置までの通信経路を特定する(S808)。このとき、制御装置は、例えば、各通信装置までの複数の通信経路を特定しうる。
そして、制御装置は、その複数の通信経路を形成するためのビームパターンの情報などを含んだルーティング情報を、各通信装置へ通知する(S809~S811)。ここでは、制御装置は、基地局装置、通信装置A、及び通信装置Cの順で無線信号が中継されるような中継伝送経路を最も優先順位の高い経路として設定するように、ルーティング情報を通知したものとする。通信装置Aは、このルーティング情報に基づいて、例えば、基地局装置からの無線信号を最も強く又は所定電力以上で受信することができた受信用のビームパターンを設定する。また、通信装置Aは、このルーティング情報に基づいて、例えば、通信装置Cにおいて通信装置Aからの無線信号を最も強く又は所定電力以上で受信することができたタイミングに対応する送信用のビームパターンを設定しうる。また、通信装置Cは、このルーティング情報に基づいて、例えば、通信装置Aからの無線信号を最も強く又は所定電力以上で受信することができた受信用のビームパターンを設定する。ここで、通信装置Bはこの中継伝送経路には関与しないため、一例において、制御装置は、通信回路をオフとするように通信装置Bに指示してもよい。この場合、通信装置Bは、例えば、次に優先順位が高い、通信装置Aからの無線信号を中継する経路のために、通信装置Aからの無線信号を検出するための機能を残して、電源をオフとすることによって、消費電力を抑制することができる。この設定が行われた後に、基地局装置から送信された無線信号は、通信装置Aによる中継を介して、通信装置Cまで転送される(S814、S815)。なお、同様にして、通信装置Cからの信号が、通信装置Aを介して基地局装置まで転送されうる。
その後、通信装置Aは、例えば、通信装置Cから基地局装置へ宛てた信号が届かなくなったことなどに基づいて通信装置Cとの間の無線区間における障害が発生したと判定したものとする(S816)。この場合、通信装置Aは、例えば、次に優先順位が高い、通信装置Bを経由して通信装置Cまで到達する中継伝送経路での通信を行うための設定を行う(S817)。通信装置Aは、S809で受信したルーティング情報に基づいて、例えば、通信装置Bにおいて通信装置Aからの無線信号を最も強く又は所定電力以上で受信することができたタイミングに対応する送信用のビームパターンを設定しうる。なお、通信装置Cにおいても、通信装置Aからの信号が届かなくなったことなどに基づいて通信装置Aとの間の無線区間における障害が発生したと判定しうる(S818)。この場合、通信装置Cは、通信装置Aは、例えば、次に優先順位が高い、通信装置Bを経由して基地局装置まで到達する中継伝送経路での通信を行うための設定を行う(S819)。通信装置Cは、S811で受信したルーティング情報に基づいて、例えば、通信装置Bからの無線信号を最も強く又は所定電力以上で受信することができた受信用のビームパターンを設定する。
そして、基地局装置から送信された無線信号は、通信装置Aによって中継されて通信装置Bに到達し、その後、通信装置Bによる中継を経て通信装置Cに到達するようになる(S820~S822)。なお、通信装置Bは、例えば、S821において、通信装置Aからの無線信号を所定電力以上で受信したことに応じて、通信経路の切り替えが発生したことを特定する。そして、通信装置Bは、電源をオフとしていた通信機能をオンとし、無線信号を通信装置Aから受信して通信装置Cへ転送するような設定を行う。
以上のように、本実施形態では、制御装置が、各通信装置における無線信号の測定結果に基づいてルーティング情報を決定し、各通信装置がそのルーティング情報に基づいて、無線信号の中継設定を行うことにより、迅速に通信経路の切り替え等の制御を行うことが可能となる。
<実施形態2>
上述の実施形態1では、制御装置121が中継伝送経路の特定などの処理を集中的に行う場合の例について説明した。本実施形態では、制御装置121を用いない場合の例について説明する。
本実施形態では、例えば、各通信装置は、基地局装置等から受信した電波を、複数の送信用のビームパターンを切り替えながら転送する。ここで、通信装置は、電波を転送する際に、その電波が基地局装置から受信したものであること、及び、どのビームパターンでその電波を送出するかを示す情報を送出する。なお、この情報は、例えば、中継伝送とは別個の通信機能を用いて送出されうる。例えば、通信装置は、LTEや5Gなどにおける端末間通信(D2D通信)機能やセルラV2X(Vehicle-to-Everything)通信機能を用いて、この情報を送出しうる。一例において、通信装置は、D2D通信機能を用いて、情報をブロードキャストしうる。そして、他の通信装置は、その情報を受信すると、転送された電波の検出処理を実行する。他の通信装置は、転送された電波を所定の電力以上で検出すると、その検出結果を示す情報を、電波の転送元の通信装置へ通知する。このとき、他の通信装置は、通信装置がどの送信用のビームパターンで電波を転送した際に、その電波を検出したかを示す情報を併せて通信装置へ通知しうる。なお、他の通信装置は、このときに、自装置が使用可能な複数の受信用のビームパターンを用いて、例えば最も強く又は所定電力以上で電波を検出することができた受信用のビームパターンを特定し、その特定したビームパターンを通信装置へ通知してもよい。なお、他の通信装置は、例えば、電波の受信タイミングに応じて送信用のビームパターンを特定することができる。
例えば、図9の例では、通信装置901は、複数のビームパターン(ビーム911~ビーム915)で、基地局装置から到来した電波を出力することができるものとする。このとき、通信装置901は、例えば第1の時間区間においてビーム911を用いて基地局装置から到来した電波を転送する場合、第1の時間区間とビーム911とを特定可能な情報と基地局装置から到来した電波を転送することを示す情報とを、例えばD2D通信機能を用いて、周囲の通信装置へ通知する。同様に、通信装置901は、例えばビーム912~ビーム915のそれぞれを用いて基地局装置から到来した電波を転送する場合、ビーム912~ビーム915のそれぞれについて電波を転送する時間区間を特定可能な情報と基地局装置から到来した電波を転送することを示す情報とを周囲の通信装置へ通知する。通信装置902及び通信装置903は、この情報を受信すると、第1の時間区間において、転送されてくる電波の検出処理を行う。このとき、通信装置902及び通信装置903は、所定電力以上で電波を検出できなかったものとする。この場合には、通信装置902及び通信装置903は、そのまま処理を終了する。続いて、通信装置902及び通信装置903は、例えば、第2の時間区間においてビーム912を用いて転送されてくる電波の検出処理を行う。ここで、通信装置902が、転送された電波を所定電力以上で検出できたものとする。この場合、通信装置902は、第2の時間区間において電波を検出することができたため、通信装置901がビーム912を用いて電波を転送することにより、通信装置902がその電波を十分な電力で受信することができると判定することができる。この場合、通信装置902は、通信装置901に対して、基地局装置から送出された電波が通信装置901のビーム912を介して通信装置902に届いたことを、例えばD2D通信機能を用いて通知しうる。これにより、通信装置901は、ビーム912を用いることにより、基地局装置、通信装置901、及び通信装置902の中継伝送経路を確立することができることを認識することができる。同様にして、通信装置903が、ビーム914を介して転送された電波を検出し、通信装置901に対して、基地局装置から送出された電波が通信装置901のビーム914を介して通信装置903に届いたことを通知する。これにより、通信装置901は、ビーム914を用いることにより、基地局装置、通信装置901、及び通信装置903の中継伝送経路を確立することができることを認識することができる。なお、通信装置902及び通信装置903は、さらに、電波の受信電力を示す情報を通信装置901へ通知しうる。
続いて、通信装置902及び通信装置903が、通信装置901から出力された電波を、使用可能な送信用のビームパターンのそれぞれで出力する。例えば、図9では、通信装置902が、第3の時間区間において、ビーム921を用いて電波を転送するものとする。このとき、通信装置902は、第3の時間区間とビーム921とを特定可能な情報と、電波が、基地局装置、通信装置901、及び通信装置902からなる中継伝送経路を介して送出されることを示す情報とを、例えばD2D通信機能を用いて、周囲の通信装置へ通知する。ここで、通信装置904が、転送された電波を所定電力以上で検出できたものとする。この場合、通信装置904は、第3の時間区間において電波を検出することができたため、通信装置902においてビーム921を用いて電波を転送することにより、通信装置904がその電波を十分な電力で受信することができると判定することができる。この場合、通信装置904は、基地局装置、通信装置901を介して通信装置902のビーム921を介して、電波が通信装置904に届いたことを、通信装置902へ通知しうる。通信装置902は、この通知を、通信装置901にも転送しうる。これにより、通信装置901、通信装置902、及び通信装置904は、通信装置901のビーム912及び通信装置902のビーム921を用いることにより、基地局装置、通信装置901、通信装置902、及び通信装置904の中継伝送経路を確立することができることを認識することができる。また、このときの電波の受信電力を示す情報が、通信装置901、通信装置902、及び通信装置904の間で共有されうる。これにより、各通信装置は、設定可能な中継伝送経路の情報を共有することができる。また、例えば、電波の受信電力が良好なほど優先順位が高くなるようにする等の優先順位を決定する所定のルールを共有することにより、中継伝送経路に関与する通信装置間で、優先順位の情報を共有することもできる。
図10に、本実施形態の通信装置の機能構成例を示す。なお、ハードウェア構成例は、図5と同様である。情報通信部1001は、例えば基地局装置の通信を中継する通信方式とは異なる通信方式で、他の装置との間で通信を行う。一例において、情報通信部1001は、例えば、基地局装置から自装置までの経路を示す情報と、中継伝送経路の特定のために電波を出力することを示す情報を、D2D通信機能を用いてブロードキャスト又はグループキャスト送信する。また、情報通信部1001は、他の装置からブロードキャスト又はグループキャスト送信された、基地局装置から他の装置までの経路を示す情報と、中継伝送経路の特定のために他の装置が電波を出力することを示す情報を受信する。検出部1002は、他の装置から送出された電波を、受信した情報に基づいて検出する。なお、検出部1002は、例えば、他の装置が、送信用のビームパターンを切り替えながら電波を出力した場合に、各ビームパターンで電波が出力された時間区間と、その電波を検出したタイミングとに基づいて、検出された電波がどのビームパターンで送出されたかを特定しうる。なお、ここでは、ビームパターンに付与されたインデクスが特定されれば足り、通信装置は、他の装置からどの方向に電波が送出されたかを認識する必要はない。情報通信部1001は、例えば、他の装置からの電波を検出した場合に、その他の装置から通知された基地局装置からその他の装置までの経路に、他の装置から通信装置までの区間を加えた新たな経路を示す情報を、その他の装置へ通知する。なお、情報通信部1001は、検出した電波の送出に他の装置が使用した送信用のビームパターンを検出部1002が特定した場合、そのビームパターンを特定可能な情報を、新たな経路を示す情報に含めて、他の装置へ通知する。送出部1003は、中継伝送経路の特定のために電波を送出する。送出部1003は、基地局装置から自装置までの経路を示す情報と中継伝送経路の特定のために電波を出力することを示す情報が情報通信部1001によって送出されたことに応じて、電波を出力しうる。また、送出部1003は、複数の送信用のビームパターンを使用可能である場合、それらのビームパターンを時間で切り替えながら、電波を出力する。この場合、情報通信部1001は、各ビームパターンを特定可能な情報(例えばインデクス)と、そのビームパターンで電波が送出される時間区間とを関連付けた情報を、中継伝送経路の特定のために電波を出力することを示す情報に含めて送出する。情報通信部1001は、送出された電波を検出した他の装置から、基地局装置から通信装置までの経路に、通信装置からその他の装置までの区間を加えた新たな経路を示す情報を受信する。なお、情報通信部1001は、新たな経路を示す情報から、自装置の送信用のビームパターンを特定可能な情報を取得してもよい。ルーティング制御部1004は、例えば、検出部1002によって他の装置からの電波を検出した場合に、基地局装置からその他の装置を介して通信装置に至る中継伝送経路の情報を、ルーティング情報として保持する。また、ルーティング制御部1004は、例えば、送出部1003によって電波を送出した結果、他の装置から基地局装置から通信装置を介して他の装置に至る新たな経路を示す情報を受信した場合も、その新たな経路の情報を、ルーティング情報として保持する。そして、ルーティング制御部1004は、保持している情報に基づいて、通信に使用すべき経路を決定し、例えば、その経路に対応するビームパターンを使用するように設定を行う。なお、ルーティング制御部1004は、例えば、各経路における無線品質等に基づいて、それぞれ優先順位を付してもよい。この場合、ルーティング制御部1004は、優先順位の高いルーティング情報を優先的に用いて、中継用の設定を行う。また、ルーティング制御部1004は、例えば、使用中の設定を用いた通信における無線品質が低下した場合などに、次に優先順位の高いルーティング情報を用いて設定を行い、中継伝送経路を切り替える。なお、各通信装置において使用されるべき送信用のビームパターンの情報が、無線信号内の物理層のヘッダなどに含められてもよく、ルーティング制御部1004は、その情報に基づいて、無線信号ごとに使用するアンテナパターンを設定してもよい。なお、この場合、各経路の情報が基地局装置にも通知される。また、無線信号がどの通信装置まで転送されるべきかを示す情報がその無線信号の物理層のヘッダ等に含められてもよい。この場合、ルーティング制御部1004は、例えば、自装置まで転送されるべきことを示す情報が含まれた無線信号を受信した場合に、その無線信号を中継しないように設定を行ってもよい。
図11を用いて、本実施形態において実行される処理の流れの例について説明する。通信装置Aが、例えば基地局装置が形成可能な複数のビームのうち、「ビーム1」で送信された電波を検出したものとする(S1101)。通信装置Aは、そのビーム1の電波を中継すること、及び、その中継の際に自装置が使用する送信用のビームを特定可能な情報とそのビームを使用する時間区間の情報とを、例えばD2D通信機能を用いて周囲の他の通信装置へ通知する(S1102)。ここでは、通信装置Aが、第1の時間区間においてビームA1を用いて、第2の時間区間においてビームA2を用いて、それぞれビーム1の電波を中継することが通知されたものとする。そして、通信装置Aは、第1の時間区間においてビームA1を用いて、第2の時間区間においてビームA2を用いて、それぞれビーム1の電波を中継する(S1103、S1104)。通信装置Bは、例えば、第2の時間区間において電波を検出することができたものとする。この場合、通信装置Bは、基地局装置のビーム1から送出されて通信装置AのビームA2によって中継された電波を検出したこと、及び、その検出した際の電波の無線品質(例えば、RSRP、RSRQ、SNRなど)を、通信装置Aへ通知する(S1105)。これにより、通信装置Aは、ビームA2を使用することにより、基地局装置、通信装置A、及び、通信装置Bからなる中継伝送経路を形成することが可能であると認識することができる。
その後、通信装置Bが、通信装置Aから受信した電波の中継を実行する。その際に、通信装置Bは、基地局装置からビーム1で送出されて通信装置AのビームA2を介して到来した電波を中継すること、及び、その中継の際に自装置が使用する送信用のビームを特定可能な情報とそのビームを使用する時間区間の情報とを、例えばD2D通信機能を用いて周囲の他の通信装置へ通知する(S1106)。ここでは、通信装置Bが、第3の時間区間においてビームB1を用いて、第4の時間区間においてビームB2を用いて、それぞれ通信装置Aから到来した電波を中継することが通知されたものとする。そして、通信装置Bは、第3の時間区間においてビームB1を用いて、第4の時間区間においてビームB2を用いて、それぞれビーム1の電波を中継する(S1107、S1108)。通信装置Cは、例えば、第3の時間区間と第4の時間区間との両方において電波を検出することができたものとする。この場合、通信装置Cは、基地局装置のビーム1から送出されて、通信装置AのビームA2及び通信装置BのビームB1/ビームB2によって中継された電波を検出したこと、及び、その検出した際の電波の無線品質(例えば、RSRP、RSRQ、SNRなど)を、通信装置Bへ通知する(S1109)。また、通信装置Bは、その通知された情報を、通信装置Aへ転送する。これにより、通信装置A及び通信装置Bは、通信装置AがビームA2を使用し、通信装置BがビームB1又はビームB2を使用することにより、基地局装置、通信装置A、通信装置B、及び通信装置Cからなる中継伝送経路を形成することが可能であると認識することができる。
また、ビームB1が使用された際の無線品質と、ビームB2が使用された際の無線品質とがそれぞれ通知されることにより、いずれのビームを使用する中継伝送経路に対して高い優先順位を付与するかを決定することができる。なお、図11の例では、通信装置Aの送出した電波が通信装置Cに届かない例を示したが、この電波が通信装置Cに直接届いてもよい。その場合、通信装置Cは、通信装置BがS1105で実行した処理と同様の処理を実行しうる。そして、通信装置Aは、例えば、通信装置Bを介する経路と、通信装置Bを介さない経路とのいずれを優先すべきかを、例えば通信装置Bと通信装置Cとからそれぞれ受信した無線品質の情報に基づいて決定することができる。
なお、上述の例では、通信装置Aが基地局装置から受信した電波を増幅して出力し、通信装置B等が、通信装置Aから到来した電波を増幅して出力する場合の例について説明したが、これに限られない。例えば、測定用の専用の期間が設けられる場合、各通信装置が出力する電波は、その通信装置において生成された測定用の電波であってもよい。この場合、例えば通信装置Aは、測定用の期間外において、基地局装置から送出された電波(例えば、SSBや参照信号)を受信することができている。このため、通信装置Aは、基地局装置との直接通信経路が存在することを示す情報と、自装置が形成可能なビームを示す情報とそのビームで電波を出力する期間の情報を、例えばD2D通信によって周囲の他の通信装置へ送信する。その後の処理は、上述の例と同様である。
以上のようにして、本実施形態では、制御装置を介さずに、複数の通信装置間で中継伝送経路の情報を共有することができる。これにより、実施形態1において制御装置の制御の下で設定された中継伝送経路を、通信装置による処理によって制御装置を介さずに設定することが可能となる。
以上のようにして、上述の各実施形態によれば、レイヤ1の中継伝送を伴うメッシュネットワークの高度かつ効率的な制御が可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。