JP2024036265A - 非板状成形ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】200~1500nmの波長範囲において高透過率を有する、好ましくは特に、低い熱膨張係数、高い耐薬品性および機械的強度、ならびに低い屈折率を有する低コストで製造可能な成形ガラス、特に非板状成形ガラスを提供する。【解決手段】非板状成形ガラスであって、前記非板状成形ガラスの厚さが1mmである場合に、電磁放射に対する前記非板状成形ガラスの透過率が、254nmの波長において20%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは88%以上であり、かつ/または、好ましくは300nmの波長において82%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上であり、かつ/または、好ましくは350nmの波長において90%以上、好ましくは91%以上であり、かつ/または、他の特定の波長において特定の透過率を示す、非板状成形ガラスである。【選択図】図1

Description

本発明は、成形ガラス、すなわち非板状の成形ガラスであって、好ましくは200~1500nmの波長範囲の電磁放射に対する高透過率を有する成形ガラスに関する。
従来技術
ガラスの材料分類(Werkstoffklasse)は、以前から公知である。
成形ガラスも、長年来、従来技術に属する。成形ガラスとは、一般的に、ガラス状材料製の成形体、すなわち成形により形成されたガラスを意味する。そのような成形ガラスは、例えば板状、例えばシート状やリボン状に形成されている場合があり、その場合は板ガラスと称される。板ガラスの公知の製造方法は、例えば、フロート法、ロール加工、さらにはドロー加工である。
しかし、非板状の成形ガラスも知られており、特に球体、管、または湾曲もしくは屈曲した形状の成形体などの湾曲したまたは丸みのある成形体も知られている。板状形態から逸脱したこうした成形体は、本開示の範囲内では非板状成形ガラスと称される。
ガラスの分類においては、ホウケイ酸ガラスが特に重要である。つまり、その特性、例えば、温度変化に対する低い感受性、多数の試薬に対する高い耐薬品性、ならびに高温においてさえも優れた寸法安定性ゆえ、多数の用途において使用される。特に、このガラス系では、特定の特性、例えば、特定波長範囲、例えば、およそ850~およそ1500nmの波長というNIR範囲での、材料の特に高い透過率を実現することが可能である。したがって、ガラスの特性を調整するための多彩な可能性に基づき、ホウケイ酸ガラスの一連の用途および組成が公知である。
国際公開第2012/146860号(WO 2012/146860 A1)は、誘導用途用のホウケイ酸ガラスの使用に関する。この文献には、アルカリホウケイ酸ガラスの使用に加え、無アルカリホウケイ酸ガラスの使用も記載されている。ホウケイ酸ガラスの使用が有利であるように思われるが、なぜなら特に、低い熱膨張係数において、特に5.0×10-6/Kという熱膨張係数において材料が熱強化可能であり、それによって調理面としての用途に対して十分な硬度および強度を有するガラス板が得られるためである。
さらに、独国特許出願公開第4325656号明細書(DE 4325656 A1)には、防火等級Gの、アルカリホウケイ酸ガラスを高度に熱強化させた防火ガラスが記載されている。それらのガラスの熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)は、例えば、4×10-6/Kである。それらのガラスはすべて、6~10重量%という比較的高含有率のアルカリ土類金属酸化物ならびにZnOおよびZrOを有する。
独国特許出願公開第10150884号明細書(DE 10150884 A1)には、良好に熱強化可能なアルカリホウケイ酸ガラスが記載されている。そのガラスは、例えば、4×10-6/Kという熱膨張係数を有し、同じくアルカリ土類金属酸化物CaOを含む。
米国特許出願公開第2017/0247284号明細書(US 2017/0247284 A1)には、赤外線用途、例えば、ヒーターカバー用のホウケイ酸ガラスが記載されている。そこで挙げられているガラス1~10の実施形態の例は、無アルカリのアルカリ土類ホウケイ酸ガラスである。それに対して、米国特許出願公開第2017/0247284号明細書(US 2017/0247284 A1)の例11~13には、ガラスセラミックスのネオセラム、「パイレックス」タイプのホウケイ酸ガラス、およびTFT用途向けの無アルカリホウケイ酸ガラスが記載されている。
米国特許第9145333号明細書(US 9145333 B1)には、化学強化のために最適化された、つまり、例えば、拡散係数、圧縮応力(つまり、ガラス表面での圧縮応力)等に関して最適化されたアルカリホウケイ酸ガラス用の組成物が記載されている。
アルカリホウケイ酸ガラスは、さらに、例えば、いわゆるバイオチップまたはマイクロアレイ用のキャリア基板としても使用される。模範的に、欧州特許第1446362号明細書(EP 1446362 B1)には、その種のガラスが記載されている。そのガラスは、低い自家蛍光および優れたUV透明性を有する。着色イオンの含有率に関しては、Fe含有率(150ppm未満)、10ppm未満の、正八面体に結合したFe3+、および10ppm未満、好ましくはしかも2ppm未満のCr3+に関する限界のみが記載されている。別の着色要素、特に、第3周期の遷移金属(つまり、原子番号21~30を有する遷移金属、ここでは特にチタンから銅までの金属)は、ここでは限定されていない。しかしながら、これを用いて、波長200~1500nmの全波長範囲における高光透過率を有するガラスを実現することはできない。
本発明では、周期表の第3周期の遷移金属を、短く「3d元素」または「3d金属」とも呼ぶ。遷移金属とは、本発明では、原子数21~30、39~48、57~80、ならびに89、および104~112の金属である。
独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 102014119594 A1)は、低い脆性および高い固有強度を有するホウケイ酸ガラス、ならびにその製造および使用に関する。光学特性、例えば、光透過率、屈折率、蛍光および感光等は、記載も特許請求もされていない。それに応じて、ガラスの、いわゆる3d元素の含有率も記載されていない。
米国特許出願公開第2017/0052311号明細書(US 2017/0052311 A1)には、導光板用のガラスが記載されている。そのガラスは、400~800nmの波長範囲において高光透過性であり、かつ望ましくない選択的光吸収がないアルカリホウケイ酸ガラスである。光透過率を低下させる、3d元素、例えば、Fe、Cr、Ni、Co、Cu、Mn、TiおよびVのイオンは、合計で、最大50ppmの含有率を有するべきである。しかしながら、個々の元素の定量化は行われておらず、特に、その際、異なるイオンが、異なる強度で着色する、または互いに相互作用し得ることは考慮されていない。したがって、200~1500nmの全波長範囲において高透過性のガラスを、米国特許出願公開第2017/0052311号明細書(US 2017/0052311 A1)のガラス組成物の組成範囲にあるガラスを用いて実現することは不可能である。二価鉄Fe2+の含有率は、米国特許出願公開第2017/0052311号明細書(US 2017/0052311 A1)のガラスにおいては、鉄の全量と比べてできるだけ少ないことが望ましい。
米国特許出願公開第2017/0247285号明細書(US 2017/0247285 A1)にも、ガラス製導光板が記載されており、ただし、そのガラスは、高アルカリのアルカリ土類ホウケイ酸ガラスである。そのガラスは、380~700nmの波長範囲において高光透過率を有する。その化学強化性ゆえ、NaO含有率は、4モル%超である。B含有率は、それぞれ10モル%未満である。いくつかの3d元素、例えば、Co、NiおよびCrの含有率は限定されるものの、別の3d元素、例えば、Cu、Mn、TiおよびVは、まったく考慮されない。AlとNaOとのモル比が、それぞれおよそ1に設定されるのは、それによって特に優れた強化性が実現できることに起因する。しかしながら、それによる、200~1500nmの全波長範囲における高光透過性ガラスは不可能である。
特許第5540506号公報(JP 5540506)は、優れたUV透過率および優れた耐感光性を有するアルカリホウケイ酸ガラスに関する。この場合、SiO含有率は、最大75重量%である。このガラスの組成物中には、SnOの他に、NbおよびAsも含有されている。Fe含有率は、1~50ppmである。そのようなガラスを用いても、200~1500nmの全波長範囲における高光透過率は実現できない。
国際公開第2017/070500号(WO 2017/070500 A1)には、蛍光検出法用のマイクロアレイとして使用するためのガラス基板が記載されており、それは、例えば、顕微鏡スライドグラス、ペトリシャーレまたはその他のガラススライド(例えば、その上またはその中に導入された構造を有する)にも適切であり得る。記載されるすべてのガラス基板は、必然的にB含有率を有する。得られる膨張係数は、4.9×10-6~8.0×10-6/Kである。さらに、国際公開第2017/070500号(WO 2017/070500 A1)に記載されているガラスは、SnOを含む。
国際公開第2017/070066号(WO 2017/070066 A1)には、ガラス基板製導光板の製造が記載されており、ただし、そのガラスは、国際公開第2017/070500号(WO 2017/070500 A1)のガラスに相当する。特に、国際公開第2017/070066号(WO 2017/070066 A1)に記載されているガラス組成物に関しては、SiO含有率が65.79~78.17モル%にあり、B含有率が0~11.16モル%である。
特開2010-208906号公報(JP 2010/208906 A)は、365nmの波長を有するUV放射に対して安定であるガラスに関する。ベースガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、Bを有さない。感光は、0.2~2.0重量%の含有率でのTiO、および0.01~0.015重量%の含有率の酸化鉄の添加、ならびに制御下に調整したFe2+/Fe3+のレドックス比により阻止される。
米国特許第4298389号明細書(US 4298389)には、高透過率を有するソーラ用途向けガラスが記載されている。この場合、最適化された日射透過率は、350~2100nmの波長範囲に該当する。ベースガラスは、2~10重量%のB含有率を有するアルカリ土類アルミノホウケイ酸ガラスである。Fe含有率は、200ppmであり、ただし、すべての鉄は、三価の酸化状態で存在する。したがって、UV透過率はきわめて低い。
米国特許出願公開第2014/0152914号明細書(US 2014/0152914 A1)には、タッチスクリーンでの用途に向けたガラスが記載されている。そのガラスは、商標「Gorilla」ないしはゴリラガラスの名称で提供されるアルミノケイ酸ガラスである。
欧州特許出願公開第2261183号明細書(EP 2261183 A2)には、高透過ガラス板が記載されている。そのガラスは、NaOおよびCaOならびにSiOを含み、Bを含まない組成を有する。UV照射後、つまり、400nmまでの波長による照射後に、この板は、可視スペクトル範囲において透過率の低下を示さない。
独国特許出願公開第69214985号明細書翻訳文(DE 69214985 T2)は、可視範囲では高い分光透過率を有するが、低いUV透過率を有するホウケイ酸ガラス組成物に関する。そのように構成されたガラス板は、特に、ガリウムヒ素太陽電池用カバーとして利用される。このホウケイ酸ガラスは、6.4×10-6~7.0×10-6/Kの熱膨張係数を有する。UVブロッカーとしてはCeOを使用する。
独国特許発明第4338128号明細書(DE 4338128 C1)には、UV範囲での高透過率、ならびに3.2×10-6~3.4×10-6/Kの範囲にある低い熱膨張係数および高い耐薬品性を有するホウケイ酸ガラスが記載されている。還元剤として金属ケイ素を使用する。その結果、Fe3+に対するFe2+の割合が高いため、近IR範囲での透過率が下がる。
さらに、独国特許発明第4335204号明細書(DE 4335204 C1)には、UV範囲での高透過率を有する還元溶融ホウケイ酸ガラスが記載されている(254nmおよび1mmのガラス厚において85%)。SiO含有率は、58~65重量%であり、熱膨張係数は5×10-6~6×10-6/Kである。溶融体中での還元剤としては、炭素が使用されている。
西独国特許出願公開第3801840号明細書(DE 3801840 A1)は、64~66.5重量%のSiOおよび20~22.5重量%のBの組成を有するUV透過性ホウケイ酸ガラスに関し、ただし、還元剤として、糖および金属アルミニウムが使用されている。熱膨張係数は、3.8×10-6~4.5×10-6/Kである。
米国特許第4925814号明細書(US 4925814)には、60~70モル%のSiOおよび16~20モル%のBを有するUV透過性ガラスが記載されている。熱膨張係数は、4.7×10-6~6.2×10-6/Kの範囲である。
独国特許出願公開第102009021115号明細書(DE 102009021115 A1)には、UV範囲での高透過率を有するケイ酸ガラスが記載されている。このガラスは、65~77重量%のSiO含有率、0.5~8重量%のB含有率、ならびにさらには高含有率のアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンを有する。熱膨張係数は、9×10-6~10×10-6/Kである。三価鉄を二価鉄に還元するために、炭素または金属ケイ素が添加される。
独国特許発明第102012219614号明細書(DE 102012219614 B4)には、耐感光性ホウケイ酸ガラスが記載されている。そのガラスの組成は、65~85重量%のSiOならびに7~20重量%のBを有する。耐感光性は、一定位置のUV端(UV-Kante)によって達成される(1.3mmというガラス厚における、およそ280nmでの5%透過率、256nmでの0%透過率)。したがって、ガラスはもはやUV-C放射に対して透過性でない。UV端の特異的な位置は、TiO、MoOおよびVの組み合わせによって達成される。
西独国特許出願公開第2519505号明細書(DE 2519505)には、61~70重量%のSiOおよび0.5~3.5重量%のBを有するUV透過性ホウケイ酸ガラスが記載されている。ただし、そのガラスには、有機還元剤が添加される。ガラスは、UV照射後にあまり感光を示さない。
西独国特許出願公開第3826586号明細書(DE 3826586 A1)には、UV透過性のアルカリアルミノホウケイ酸ガラスが記載されている。熱膨張係数は、5.2×10-6~6.2×10-6/Kの範囲であり、SiO含有率は58~62重量%であり、B含有率は15~18重量%である。UV透過率は、厚さが1mmのガラスの場合、254nmの波長において少なくとも80%である。しかしながら、そこで記載されるガラスは、5.6×10-6~6.2×10-6/Kの高い熱膨張係数を有する。
国際公開第2016/115685号(WO 2016/115685 A1)には、低い熱膨張係数を、高いUV透過性および耐感光性と同時に有するガラスが記載されている。2つのガラスタイプが記載されており、つまり、一方では、50~75モル%のSiO、5~20モル%のBの組成および3~25モル%のアルカリ土類金属酸化物含有率を有する無アルカリのアルカリ土類ホウケイ酸ガラスが記載されており、他方では、78~85モル%のSiO、5~20モル%のBの組成および0~13モル%のアルカリ金属酸化物含有率を有する無アルカリ土類のアルカリホウケイ酸ガラスが記載されている。熱膨張係数は、2×10-6~4×10-6/Kの範囲である。その際、UV透過率は、非架橋酸素原子数の調整によって、つまりガラス網目構造への影響によって改善される。その際、0.01モル%未満のFe含有率を有する高純度ガラスによって、248nmにおける51%および308nmにおける88%という透過率が達成された。しかしながら、それらの高純度ガラスを、明らかに高いFe含有率を有するようなガラスと比べると、後者は、さらにUV範囲での明らかに低下した透過率も有することが判明し、詳しくは、248nmにおける10%および308nmにおける61%である。したがって、記載とは異なり、非架橋酸素数ではなく、むしろ不純物、特に着色イオン、例えば鉄イオンの形の不純物含有率がUV透過率には決定的であるように思われる。その際、記載の国際特許出願には、別の着色イオン、例えば、別の3d元素の含有率について記載されていないことに注目すべきである。
国際公開第2017/119399号(WO 2017/119399 A1)では、380~780nmの波長を有する可視スペクトル範囲において高透過性と記載される異なる3つのガラスタイプが提案されている。この場合、記載のガラスタイプAはアルカリ含有率の高いアルカリ土類アルモケイ酸ガラスであり、ガラスタイプBはアルカリ含有率の高いホウケイ酸ガラスであり、ガラスタイプCは無アルカリのアルカリ土類ホウケイ酸ガラスである。これらのガラスを用いると、低い屈折率は実現不可能であり、国際公開第2017/119399号(WO 2017/119399 A1)の表1中の例示的ガラスはすべて、1.5を超える屈折率を有する。
国際公開第2017/052338号(WO 2017/052338 A1)には、75~85重量%のSiOという組成、5~20重量%のB含有率、1~5重量%のAlおよび3~8重量%のRO(ただし、Rは、元素リチウム、ナトリウムまたはカリウムの少なくとも1つである)、ならびに0.0025重量%未満のFeを有するガラスからなる導光板が記載されている。
特開2010-208906号公報(JP 2010/208906 A)では、UV放射に対して耐性であるガラス用の組成が提案されている。そのガラスは、66~75重量%のSiO、0.1~30重量%のAl、5~15重量%のNaO、5~15重量%のRO(ただし、ROは、LiO、NaOおよびKOの合計である)、3~10重量%のCaO、0~7重量%のMgOの範囲の組成、ならびに3~18重量%のRO含有率(ただし、ROは、アルカリ土類金属酸化物CaO、MgO、BaO、およびSrOの合計である)、酸化鉄FeOおよびFeの、合わせて0.005~0.02重量%の割合、ならびに0.2~2重量%のTiO含有率を有するソーダ石灰ガラスである。
特開2015-193521号公報(JP 2015/193521 A)には、50~80重量%の組成範囲のSiO、1~45重量%の、AlおよびBの合計含有率、0~25重量%の、LiO、NaOおよびKOの合計含有率、ならびに0~25重量%の、アルカリ土類金属酸化物MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有率からなる高透過性ホウケイ酸ガラスが記載されている。さらに、FeおよびTiOの含有率の合計は100ppm未満である。例示的ガラスはすべて、およそ65重量%という非常に低いSiO含有率を、およそ8~13重量%の高いアルカリ金属酸化物含有率と同時に有する。それに応じてこれは、およそ5.5×10-6~7.5×10-6/Kの熱膨張係数を有する高膨張性ガラスである。
国際公開第2016/194780号(WO 2016/194780 A1)には、特にDUV(深紫外光)、つまりUV-C放射の範囲の電磁放射に対する高透過率を有するホウケイ酸ガラスが記載され、そのガラスは、次の組成範囲:55~80モル%のSiO、12~27モル%のB、0~3.5モル%のAl、0~20モル%の、LiO、NaOおよびKOの含有率の合計、ならびに0~5モル%のアルカリ土類金属酸化物RO含有率に由来する。例示的ガラスはすべてアルカリ含有率が高く、4×10-6~7×10-6/Kの熱膨張係数を有する。
しかしながら、最新の光学用途に関しては、材料のガラスに対して、ますます複雑さを増す要件が課されている。その際、ガラスの適用範囲は、いわゆるUV硬化の分野、つまり200~380nmの波長範囲の高エネルギーUV放射による、有機コーティング材、例えば、ラッカーの硬化分野、平坦なUV透過性ガラスカバーが必要とされる、UV範囲のLEDに対するLED分野にあり、また、窓、フィルタまたは封止、例えば、NIRカメラないしはレーダまたはLiDAR用途であり、その場合、850~1500nmの波長範囲の放射に対する高透過率が必要とされる。可視波長範囲、つまりおよそ380~およそ780nmの波長範囲の放射に対するガラス材料の高透過率が必要である用途も非常に重要であり、例えば、可視光の波長範囲、ここでは特に380~700nmの波長におけるLEDに対するカバー、いわゆる導光板、または例えば、特に、いわゆる「スリムデザイン」の大型ディスプレイにおいて、直下型バックライトおよび/または間接光照射による周縁部での色ずれを起こさずに、均質白色光を生み出すためのLEDベース光管理用のカバーを含み、その場合、およそ380~およそ780nmの可視光の全波長範囲が特に重要である。
さらなる用途は、例えば、診断用のいわゆるマイクロアレイに関し、その場合、非常に低い自家蛍光および380~780nmの波長範囲における高い光透過率を有する薄いガラス基板が要求される。
超薄型半導体シリコンウェハを製造するためのキャリアガラスとしては、およそ254nmにおいてUVデボンディング(Debonding)を実施できる、ケイ素に適合させた熱膨張係数を有するガラスが要求される。
高周波用途、例えば、低い誘電損率を有する新型フラットアンテナには、GHz範囲の放射に対する透明性を有するマイクロ波透過性ガラス基板が必要とされる。
ガラス用のこれらの最新かつ様々に新種の用途範囲から、使用されるガラス基板の特性に課される次の有利な要件が生じる。
- 特に200~300nmの波長範囲における高いUV透明性
- 可視、つまり380~780nmにおける高い透明性
- 近赤外線、つまり780~1500nmの波長範囲における高い透明性
- わずかな自家蛍光
- 高い耐感光性
- 低い光屈折
- 低い熱膨張係数
- 高い耐薬品性および低い腐食傾向
- ガラス内でのアルカリの最小限のマイグレーション、特にガラス表面でのアルカリ放出なし
- 優れた機械的安定性、および様々な媒体によるガラス表面への摩耗性浸食に対する高い強度
- 最適な誘電特性:1MHzにおいてε≦5、tanσ≦50×10-4
しかしながら、前記のガラスすべてに共通するのは、前記の要件の部分範囲しか満たさないことである。したがって、前記のように、ホウケイ酸ガラスの範囲でガラス組成を特定の様式に変化させて、特定用途に関する特性、例えば、いわゆる光学スペクトル範囲(およそ380~およそ800nmの波長範囲)での電磁放射に対する高透過率のもとで高い強化性を最適化することは可能であるものの、そのように最適化されたガラスは、例えば、UV範囲(およそ200~およそ400nm)での放射に対する高透過率と同時に高い耐感光性を必要とする別の用途には適切でないという欠点を伴う。他方、比較的高いUV透過率を有するガラスを得た場合、そのガラスは、通常、非常に高い熱膨張係数を有し、プリント基板製造(Siデボンディング)の分野での用途には不利である。しかしながら、特殊用途への、ガラス組成の適合は、常に大変な労力を伴う。
前記のガラスに対する一別法は、例えば、高いUV透過率および高い耐薬品性を有する純シリカガラスSiOの使用であり得る。しかしながら、シリカガラスは手間のかかる製造ゆえ非常に高価であるため、純シリカガラスの使用には限界がある。さらに、シリカガラスは、バッチから溶融プロセス後に通常の熱間成形を行うことができないため、成形ガラスとしての製造が不可能である。
したがって、200~1500nmの波長範囲において高透過率を有する、好ましくは特に、低い熱膨張係数、高い耐薬品性および機械的強度、ならびに低い屈折率を有する低コストで製造可能な成形ガラス、特に非板状成形ガラスの需要が存在する。
発明の課題
本発明の課題は、従来技術の弱点を克服するかまたは少なくとも低減する非板状成形ガラスの提供である。
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。さらに特定の、かつ好ましい実施形態は、従属請求項において見出される。
したがって、本発明は、非板状成形ガラスであって、該成形ガラスの厚さが1mmである場合に、電磁放射に対する該成形ガラスの透過率が、254nmの波長において20%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは88%以上であり、かつ/または好ましくは300nmの波長において82%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上であり、かつ/または好ましくは350nmの波長において90%以上、好ましくは91%以上であり、かつ/または好ましくは546nmの波長において92%以上、好ましくは92.5%以上であり、かつ/または好ましくは1400nmの波長において92.5%以上、好ましくは93%以上であり、かつ/または好ましくは380~780nmの波長範囲において91.5%以上、好ましくは92%以上であり、かつ/または好ましくは780~1500nmの波長範囲において92.5%以上、好ましくは93%以上である非板状成形ガラスに関する。
より厚いまたはより薄い成形ガラスも、同じく厚さが1mmで独立請求項の値を満たす場合には本発明の範囲内にある。
より厚い成形ガラスが保護範囲にあるか否かを確認するためには、1mmの厚さに薄くすることができる。
より薄い成形ガラスは、積層してから必要であれば薄型化することで、同じく1mmの厚さにすることができるため、それらのより薄い成形ガラスが保護範囲にあるか否かを調べるためには、換算の代わりに、同じく透過率の物理的測定を行うことができる。
したがって、本発明による成形ガラスは、200~1500nmの波長範囲の電磁波長に対して広域に高い透過率を有する。
本発明では、次の定義が成り立つ。
成形ガラスとは、本発明の趣旨では、所定の形状を有し、例えば管として形成されているガラス体であると理解される。成形ガラスには、総じて、例えばシートやリボンとして形成されている板ガラスの他、シート状の板状形態から逸脱したジオメトリを有する非板状成形ガラスが含まれる。
特に、成形ガラスとは総じて、製造工程自体からすでに対応して所定のジオメトリに成形された物体として得られるガラスと理解される。例えば、対応する様々なジオメトリを有するガラス体が、「本発明の趣旨での成形ガラス」と理解されるべきである。例えば、ガラスブロックから、切断および続いて行う研削および/または研磨によって管を製造することも可能である。特に、本開示の範囲内での成形ガラスは、溶融工程およびそれに続く熱間成形で得られる。本開示の趣旨での非板状成形ガラスには、非板状成形ガラスが管である場合には、特に例えばベロー法やダンナー法での管引きなどの方法が該当する。しかし、原則的には他の方法も考えられる。成形ガラスの表面は、総じて火炎研磨された状態で存在してもよいが、さらには熱間成形法後に常温の後処理段階において後処理されていてもよい。その際、成形ガラスの表面特性は、選択した熱間成形法に応じて異なる。
本開示の範囲内で「成形ガラス」に言及する場合、これは、特に明示しない限り、非板状成形ガラス、すなわち、平坦な板状のシートや平坦な板状のリボンとは異なる形状を有する成形体を意味する。
本出願において熱膨張係数に関する場合、明確に他の記載がない限り、これは線熱膨張係数αである。その際、線熱膨張係数は、明確に他の記載がない限り、20~300℃の範囲で示される。CTE、WAK、α、およびα20~300、さらには総じて「熱膨張係数」という表現は、本発明では同義に用いられる。示された値は、静的測定において求められた、ISO 7991に準拠する公称平均熱膨張係数である。
転移温度Tは、5K/分の加熱速度で測定した際の、膨張曲線の2つの分枝線への接線の交点から定められる。これは、ISO 7884-8ないしはDIN 52324に準拠する測定に相応する。
したがって、本発明によれば、成形ガラス、特に非板状成形ガラスは、板状のシートやリボン状のガラス体ではなく、総じて、管や管部分のような非板状成形体、または例えばチャネルや球体や球状セグメントのような湾曲を有する成形体である。この成形体は、特に、ネイティブな表面を有することができる。その際、本発明の範囲内で、ガラス体の面、すなわち、まとまって成形体の表面積の半分超(しばしばこれよりはるかに多い)を占める面が、非板状成形ガラスの表面と称される。エッジ面は、この意味での表面とは理解されない。これらは、ガラス成形体、特に非板状ガラス成形体の面積分率のごく一部を占めるに過ぎない。
本発明による成形ガラス、特に非板状成形ガラスとしてのガラスの存在は、広範な利点を有する。つまり、時間のみならず費用もかかる手間のかかる製造段階が省略される。さらに、成形ガラス、特に非板状成形ガラスの通常の製造方法によって入手可能なジオメトリ、特に、例えば管などの中空体、またはロッドや非板状成形体の製造物が容易に得られる。その上、火炎研磨とも呼ばれるガラスのネイティブな表面は、例えばガラス体の機械的特性にとって重要であり、ガラス表面の仕上げ加工は、たいていの場合、著しい強度損失を招く。したがって、本発明による成形ガラス、特に非板状成形ガラスは、好ましくは、仕上げ加工されたガラスと比べて高い強度を有する。
本発明による成形ガラス、特に非板状成形ガラスは、すでに前記したように、200~1500nmの全波長範囲の電磁放射に対して広域に高い透過率を有するため、その品質ではこれまでのところ光学ガラスでしか達成できなかった透過率レベルを達成する。しかしながら、本発明による成形ガラス、特に非板状成形ガラスは、それらの光学ガラスと比べて、特にシリカガラスと比べて、特に連続溶融装置における明らかに改善された溶融性を有するため、200~1500nmの全波長範囲の電磁放射に対する広域の透過性を有するガラスの提供が、初めて成形ガラス、特に非板状成形ガラスとしても可能となり、詳しくは工業的にも経済的にも可能となる。
非板状成形ガラスの優れた溶融性、したがって経済的な製造を保証するためには、非板状成形ガラスの網目形成酸化物、特にケイ素および/またはホウ素の酸化物の含有率の合計は、一実施形態によれば最大98モル%である。
その際、本発明の実施形態による非板状成形ガラスの網目形成成分、特にSiOおよび/またはBの高い含有率によって、非板状成形ガラスの優れた透過特性が概して達成可能となる。すでに前記したように、純シリカガラス(石英ガラスとも呼ばれる)SiOは、電磁放射に対して広域に非常に高い透過率を示す。しかしながら、純SiOからなる溶融体は工業的に製造不可能である。
その際、網目形成成分とはサッカリアセン則の趣旨で理解され、つまり主に配位数3または4を有するカチオンを含み、それは特に、元素Si、B、P、Geのカチオンである。その際、網目形成成分は、網目修飾成分、例えば、通常は6以上の配位数を有するNa、K、Ca、Ba、および主に4~6の酸化数を有する中間酸化物、例えばAl、Mg、Znとは異なる。
さらに、少量の不純物であってもすでにシリカガラスの透過特性に劇的に影響を及ぼす、つまり悪化させることが公知である。しかしながら、それにもかかわらず、驚くべきことに、98モル%という網目形成成分の最大の含有率によりすでに、実施形態による非板状成形ガラスの、前記で説明した有利な透過特性が実現可能であると判明した。
有利には、一実施形態によれば、非板状成形ガラスの線熱膨張係数αは、2.4×10-6~3.5×10-6/Kである。
線熱膨張係数αのそのような値は有利である。なぜならそれによって、例えばプリント基板産業で頻繁に使用されるケイ素への、熱膨張係数のより適切な適合が可能となるためである。例えば、わずか0.5×10-6/Kという非常に低い熱膨張係数を有する石英ガラスを使用した場合、そこでは温度変化の負荷時に、石英ガラス製基板上に施与されたケイ素からなる層の亀裂が起こりかねないが、そうした亀裂は、この実施形態による非板状成形ガラスでは、有利な線熱膨張係数に起因して明らかに低減されている。
非板状成形ガラスのさらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラスのSiO含有率は、少なくとも68モル%、好ましくは68~85モル%、好ましくは72~85モル%、有利には76~85モル%である。
これは特に有利である。なぜならば、それによってガラス状材料全般の溶融性がさらに改善され、これにより成形性が良好となり、したがって成形ガラス、特に実施形態による非板状成形ガラスの製造が容易になるためである。しかしながら、非板状成形ガラスのSiO含有率は、低すぎるべきでなく、特に72モル%を下回るべきでなく、有利には76モル%を下回るべきでない。
単純な無色ベースガラス系、例えば、シリカガラス(石英ガラスとも呼ばれる)SiO、さらには純ホウ酸塩ガラスB(ならびに酸化リンの高吸湿性ゆえ製造不可能である仮説上の純リン酸塩ガラスP)が、UV範囲の放射に対して非常に高い透過率を有することは、当業者には公知である。通常、ガラスは、その透過特性に関して、吸収端、例えば、いわゆるUV吸収端の位置によって説明される。吸収端の位置は、通常、波長λの指定によって特徴づけられる。UV吸収端を特徴づけるための波長λは、透過曲線の急降下部分の、λ座標との交点への直線外挿法によって得られる波長値である。以下に、いくつかの無色ベースガラスのλ値(nm)を記載する。
SiO: λ=162nm
: λ=200nm
HPO: λ=273nm。
吸収端の最小値は、理論上は、組成Pの純リン酸塩ガラスが有するものであるが、それは、前記したように製造できない。ガラス内への水の組込みは、ここで考察するUV吸収端をより高波長へとシフトさせる。無水Bガラスも製造が難しいため、純無水シリカガラスは、すべてのガラス系の中で最高のUV透過率を有する。すでに前記したように、シリカガラスは、成形ガラス、特に非板状成形ガラスとして経済的にも工業的にも製造不可能である。
SiOまたはBのベースガラス曲線の、長波UV領域へのさらなるシフトは、ベースガラスSiOまたはB内にさらなる酸化物、例えば、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物(塩基性酸化物とも呼ばれる)が組み込まれた場合にもたらされる。これらの酸化物の取込みにより、ガラス構造内で、いわゆる分離部位(Trennstelle)酸素イオンが生み出される(これらの酸素イオンは、「non-bridging oxygen(非架橋酸素)」または略してNBOとも呼ばれる)。金属酸化物Meの組込みによる吸収端のシフトに関しては、例示的に次の見積もりが成り立つ。
SiO+Me 162nmからおよそ270nmへのλのシフト
+Me 200nmからおよそ360nmへのλのシフト。
ここで、「Me」は、酸化物において通常は酸化数yを有する金属を表す。その際、吸収端、つまりここではUV吸収端のシフトが実際にどれほど厳密な範囲で起こるかは、金属の性質に依存し、つまり、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるか否か、ならびに他方ではアルカリ金属酸化物の例示的事例については、具体的に、例えばNaOまたはKOがベースガラス内に組み込まれたか否かに依存する。
酸化物ガラスのUV吸収は、主に、電磁放射によって励起される酸素イオンの電子によって起こる。堅固に結合された酸素イオンは、その励起のために非常に高エネルギーの短波放射を必要とするのに対して、さほど堅固でない酸素結合、特に、分離部位酸素イオン(非架橋酸素、NBO)の存在によっても引き起こされるような酸素結合は、さほど高エネルギーでない長波UV放射でも励起される。
本発明の一実施形態によれば、非板状成形ガラスはBを含み、ただし、好ましくは非板状成形ガラスのB含有率は、10~25モル%、特に好ましくは10~22モル%である。純ホウ酸塩ガラスとしてのBは、透過特性に関して、UV吸収端のより不利な位置を有するものの、SiOほどには高くない融点を有するという利点を伴う。しかしながら、高すぎるB含有率は、Bの吸湿性同様に溶融体からのその蒸発傾向ゆえにも不利である。
前記のように、純シリカガラスは、ガラスの透過特性に関して特に有利であるものの、工業上および経済上の理由から成形ガラス、特に非板状成形ガラスとしては製造不可能である。つまり、例えば、非板状成形ガラスの工業的および/または経済的な製造可能性の理由から、本発明の実施形態による非板状成形ガラス中での網目形成酸化物の含有率の合計が限定されている場合、つまり98モル%を超えず、その際、好ましくは85モル%以上、好ましくは少なくとも87モル%である場合、非板状成形ガラスのさらなる成分が特に重要である。
したがって、本発明のさらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラスは、SiOおよびBを含む。
事実上、SiOおよびBを、別のカチオン、特に「塩基性」カチオン、例えば、Na、K、Li、Ca2+と共にほぼあらゆる任意の混合物中でガラスとして得ることが可能である。しかしながら、特に、200~1500nmの全波長範囲の電磁放射に対して特に高い透過率を有するガラス、特に例えば非板状成形ガラスを得たい場合、製造条件に起因して単に事実上存在する限界に加えて、例えば、失透傾向、溶融性および/または成形性ならびに耐薬品性に関して、特に有利な光学特性は、酸化物SiOおよびBの総分率を高くすることによって得られることが注目に値する。
したがって、好ましくは、非板状成形ガラスは、SiOおよびBを含み、特に好ましくは、
Σ(SiO+B) 少なくとも87モル%、好ましくは87~98モル%、特に好ましくは92~98モル%
が成り立つ。
好ましくは、非板状成形ガラス中のアルカリ金属酸化物含有率は、最小限に抑えられている。本発明の一実施形態によれば、
ΣRO 1~6モル%
が成り立ち、ここで、ROはアルカリ金属酸化物を表す。
非板状成形ガラスの特に有利な特性、特に、UV吸収端の特に有利な位置に関しては(つまり、できるだけ低いλに関しては)、ガラスが含む成分の互いのモル比が重要である。
さらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラスの成分の物質量比に関して、
/SiO 0.12~0.35であり、かつ/または
Σ(Me)/(Σ(SiO+B) 0.02~0.10
が成り立ち、ここで、Meは、酸化物において通常は酸化数yを有する金属を表し、特に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ならびにアルミニウムを表す。
言い換えると、一実施形態による非板状成形ガラス中のすべての金属酸化物の合計は、最小限に抑えられており、かつ主要成分の合計に対して少ない。
その際、「Me」は、酸化物において通常は酸化数yで存在する金属を表す。特に、Meは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であってもよいし、例えばアルミニウムであってもよい。ガラス組成物が、さらに複数の金属イオン「Me」を含むことも当然ながら可能である。その際、「金属イオン」という用語は、酸化数とは関係なく理解されるため、該当する物質は、非板状成形ガラスによって、例えば金属でも、しかしながら特にイオンとしてもまたは酸化物型でも含まれ得ることになる。通常、ここで考察される酸化物ガラス中の金属は、イオンとして存在する。さらに、特に遷移金属の場合、イオンにおいて異なる酸化状態が生じることを考慮すべきである(いわゆる多価イオン)。この趣旨では、「通常の酸化数」という用語は、該当する酸化物が通常、例えば、組成物分析におけるデータ中で記載または表示される数と理解される。例えば、ガラス、例えば非板状成形ガラスのクロム含有率の記載は、たとえ別の酸化数が十分に可能であっても、通常はCr(つまり、酸化数3のクロム)の百分率データとして行われる。明確に他の記載がない限り、本発明において、酸化状態とは関係なく常に物質の全量が記載される。
SiOに対するBのモル比が0.12~0.35の範囲内であることは、特に有利である。なぜならば、これによって、SiO-B系と同様に、SiOおよびBの他にもう1つの金属酸化物Meを含む三元系においても、例えば偏析現象によって生じ得る構造不均質性が、阻止されるかまたは少なくとも最小限に抑えられるためである。つまり、ガラス内、例えば非板状成形ガラス内でのミクロ相分離の形での偏析現象により生じ得る構造不均質性も、特に光散乱によりUV吸収に寄与する。
本発明のさらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラスが含む鉄イオンの重量分率に関して、
0.1≦Fe2+/(Fe2++Fe3+)≦0.3
が成り立つ。
この値は、レドックス比とも呼ばれる。
言い換えると、非板状成形ガラス中の二価鉄の含有率(重量基準)は、非板状成形ガラスが含む鉄イオンの合計に対して、少なくとも10%~最大30%である。
鉄は、製造原料から生じる不可避の不純物である。その際、鉄は、通常は主要不純物であり、つまり、別の不純物が、通常はかなりわずかな量で、ガラス、例えば非板状成形ガラスに含まれている。
驚くべきことに、鉄のレドックス比を前記の範囲内とすることにより、特に有利な透過特性、特に、200~1500nmの全波長範囲の電磁放射に対する非板状成形ガラスの特に高い透過率が達成されることが判明した。
その際、電磁放射に対する有利な高い透過特性が、まさにこうしたレドックス比によって達成されることは、特に驚くべきことである。なぜならば、従来は、二価鉄の含有率ができるだけ最小限に抑えられていたためである。例えば、米国特許出願公開第2017/0052311号明細書(US 2017/0052311 A1)によるガラスに関しては、できるだけ5%を下回るレドックス比が特に好ましいと記載されている。しかしながら、前記の範囲内となるように正確に調整されたレドックス比によって最適な折衷策が可能となるため、非板状成形ガラスの、UV放射に対する高透過率と同様に、電磁スペクトルの可視範囲および近IR範囲における高透過率も実現可能となる。
さらなる好ましい一実施形態によれば、非板状成形ガラスの多価金属イオン含有率、例えば、いわゆる遷移金属のイオン含有率は、特異的に最小限に抑えられている。
特に多価金属イオン、例えば、いわゆる遷移金属のイオンがガラスを着色し得ることは公知である。着色イオンを含むガラスに対する配位子場理論の直接適用は不可能であるものの、配位子場理論の原則を、イオンを含むガラスに対して相応に適用することはできる。しかしながら、その際、ガラスが含むさらなる成分、例えば、場合によってはガラスが含むいわゆる網目修飾成分の種類および濃度と同様に、ベースガラスも、結果として生じる着色に対して実質的な影響を有することを追加的に考慮する必要がある。したがって、ガラス内での吸収比は予想が難しく、一般化は限定的にしか許容されない。
本発明者は、少なくともアルカリ含有率の低いアルカリホウケイ酸ガラスに対して、例えば不純物としてガラス中に頻繁に存在する、様々な金属ないしは元素ないしはそれらのイオン、例えば、遷移金属ないしはそれらのイオンの、200~およそ1500nmの波長範囲における着色能または吸収能ないしはさらに総じては吸収挙動の特定を行うことに成功した。これらの、ガラスに頻繁に含まれる遷移金属ないしはそのイオンは、特に、周期表の第3周期の遷移金属(いわゆる3d元素)であり、特にFe2+/3+、Co2+、Ni2+、Cr3+、Cu2+、Mn2+、V5+およびTi4+である。その際、すでに前記したように、イオンの酸化数ないしは価数の記載は、該当する元素に関して通常挙げられる酸化数を用いて行う。特に、遷移金属は、ある酸化状態から別の酸化状態へと比較的簡単に変動し、かつ異なる酸化状態、しかも部分的には多数の異なる酸化状態で存在し得る多価イオンであり、それは特にマンガンおよびクロムに関して公知である。この特異的な(無次元の)着色効果、ないしはより総じては吸収能を、最も頻繁に存在する着色不純物、例えば、3d遷移金属イオンについて、それぞれ、該当するイオンの(重量基準での)1ppmという濃度に対して、以下の一覧に表す:
元素 吸収能/ppm
Fe2+/3+
Co2+ 300
Ni2+ 70
Cr3+ 50
Cu2+ 20
Mn2+
5+
Ti4+ 0.5。
この場合も、該当する金属イオンの価数は、単に「最も頻繁な」または「通常の」酸化状態ないしは価数と見なされる。その際、多価イオンが実際にはどの酸化状態にあるかは、通常は特定できない。したがって、ガラス組成物中の該当する金属ないしはそのイオンの全量を基準に調整すべきである。
前記の一覧は、光学特性、例えば、200~1500nmの電磁波長範囲における吸収挙動、特に200~1200nmの電磁波長範囲における吸収挙動に関して、単に不純物の全量を考慮するのみならず、不純物含有率を重みづけして考慮することが注目に値することを示している。
したがって、一実施形態によるガラスに関して有利には、
Σ(1×Fe+300×Co+70×Ni+50×Cr+20×Cu+5×Mn+2×V)[重量ppm]
が、200ppm未満、好ましくは150ppm未満、さらに好ましくは100ppm未満、特に好ましくは50ppm未満、とりわけ好ましくは25ppm未満であるということが成り立ち、ここで、非板状成形ガラスの該当金属の全量は、その酸化状態に関係なく考慮される。
その際、元素名は、非板状成形ガラスの各元素の全量を、その酸化状態には関係なくppmで表すが、ただし、ppmはそれぞれ重量に関するものである。
記載されるこの包括的な色価は、最大限許容される限界値と理解される。つまり、それぞれの着色3d遷移金属イオンは、任意の濃度で存在してはならない。特に高い透過率ないしは特に低い吸収率を達成するためには、強着色イオンの含有率を、そのより大きい着色効果に応じて、ガラス、つまりここでは非板状成形ガラス中で総じてより大量である主要不純物の鉄(Fe)に対して相補的に低く調整する必要がある。
強着色金属ないしはそのイオンの含有率をこうして特定の様式で最小限に抑えることにより、200~1500nmの波長範囲における電磁放射に対して、非板状成形ガラスの特に低い吸収率、それに応じて特に高い透過率を達成できる。さらにこれにより、ガラス、ここではアルカリ含有率の低いホウケイ酸ガラスのマトリックスと、着色不純物および主要不純物の鉄との間の関係を確立することに初めて成功した。
光透過率に及ぼすこれらのイオンの影響はその価数に依存し、その価数は他方で、ガラス溶融体が平衡にある酸素分圧に依存する。工業用ガラス溶融体中には常に、互いに相互作用し得る複数の多価イオンが同時に存在する。その際、酸化状態の濃度は変化し得る。
したがって、多価イオン対間の電子交換は、生成物特性(光透過率)の狙いどおりの調整に莫大な影響を有する。
その酸化物状態の濃度は、特に、
- ガラス原料およびカレットの純度
- ガラス溶融体と溶融装置の耐火材料との間の相互作用による着色3d元素の導入(ガラス腐食)
によって影響される。
したがって、本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスの溶融には、好ましくは、少なくとも90重量%のZrO含有率を有する、溶融鋳造されたきわめて耐腐食性の耐火材料を使用する(上位概念:HZFC-high zirconia fused cast(高ジルコニア質溶融鋳造))。この材料は、ガラス溶融体への、不純物の最小限の導入を保証する。
そのようなHZFC製品の市販名は、例えば以下のとおりである:
ZB-X 9510(ASAHI/日本)(ZrO 94.5%)
Monofrax Z(Monofrax/米国)(ZrO 94%)
ER 1195(SEFPRO/フランス)(ZrO 94%)。
特殊ガラスの工業用ガラス溶融体において通常使用される、32~41重量%のZrO含有率を有するAZS型の溶融鋳造FF材料は、要件を満たさない。
さらに、本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスを溶融するには、ガラスと直接接触する高負荷部位(例えば、ウォール、フロー、清澄チャンバ、均質化チャンバ、スターラー、ツイール等)において、できるだけ
- 特殊耐火金属、例えば、モリブデンまたはタングステン(製造会社はPlansee、HC Starck等)
- 特殊耐火貴金属合金、例えば、白金/ロジウム、白金/イリジウム、および白金/金(製造会社はUmicore/ベルギー、Heraeus/ドイツ、Tanaka/日本等)
を使用する。
本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスに課される透過要件を満たせるように、使用する原料中の不純物含有率、特に、3d元素および他の多価イオンの含有率を定めておく必要がある。
本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスの場合、3d元素は、実質的にはSiOキャリア(製造された天然石英砂)を介して導入される。なぜならば、そのガラスのSiO含有率がおよそ75~80重量%であるためである。
パイレックスタイプのホウケイ酸ガラス、つまり市販の公知のタイプのホウケイ酸ガラスの製造には、例えば、150~500ppmのFe含有率を有するSiOキャリアが使用される。
例:
Sand- und Tonwerke Waalbeck
品質番号3 最大500ppmのFe
品質番号3s 最大150ppmのFe
それに対して、本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスの製造には、より高純度のSiO砂を使用する必要がある。
例:
Dorfner社/ドイツ
Hi-Pu 005 最大65ppmのFe
Sigrano社/オランダ
MAM1U 最大50ppmのFe
Sasil社/イタリア
Bianco Neve 最大40ppmのFe
The Quartz Corp./米国
SP2-C 最大30ppmのFe
SP2 最大15ppmのFe
Brementhaler Quarzit/ドイツ
Sipur A1 最大10ppmのFe
KMC Corp./日本
30C 最大30ppmのFe
5C-E 最大5ppmのFe
これらの原料は、例えば、高透過性ホウケイ酸ガラスの製造にすでに大工業的に使用されている。
残りのホウケイ酸ガラス原料(Alキャリア、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、およびB)は、合成が可能であり、3d元素を少量しか導入しない。
天然原料、例えば、長石およびケルナイトの使用は、本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスを製造する際には、当然ながら省かなければならない。
3d元素のさらなる導入源は、ガラスカレットである。
ホウケイ酸ガラスを製造する際には、工業上の理由から、バッチ中のガラスカレット含有率が30~70%の状態で作業する。その際、自身のカレット(自身のガラス製造由来、例えば、品質損失、ガラス破損、切削屑等)しか使用しない。このカレットは、再利用前に、精製、つまりおよそ<20mmの破片サイズに細砕する必要がある。ガラスの精製は、破砕機(ジョークラッシャー、ローラクラッシャー等)において行う。その際、破砕工具の摩耗片が生じ(Fe,Cr、Mn等)、カレットを介してガラス溶融体へと導入される。本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスの製造に関しては、そのような摩耗片の導入を最小限に抑えるべきである。
そのための措置:
- 強磁場磁気分離機による摩耗片の除去(およそ70~80%が除去される)
- 細粒分<5mmのふるい分けによる摩耗片の除去(およそ85~95%)
- 金属性摩耗工具を使用しない細砕技術(向流法、爆発法等)による摩耗片の回避
- バッチ中の破片含有率を≦20%に最小限化。
現在、工業用ホウケイ酸ガラスの製造は、ガラス溶融窯中で行われている。部分工程である、バッチの溶融、脱気、および清澄は、同一装置内で順々に進行する。溶融装置の加熱は、燃料としてオイルまたはガスを用い空気を酸素供給源として、通常、回復式または再生式で行われる。
本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスは、好ましくは酸素燃焼窯中で溶融される(天然ガス酸素バーナー)。ガラスの均質化を、溶融窯に後続する耐火貴金属製装置内で行う。
ガラス溶融体の酸素化学的性質は、溶融ガラスの光透過率に対して大きな影響を有する。
酸素分圧pOは、溶融体中に溶解された成分酸素の反応性(または化学ポテンシャル)を表す。
市販のNa-Ca板ガラスは、硫酸ナトリウムを使用して清澄される。この硫酸塩による清澄は、優れた清澄作用とするために常に還元性となるように調整されている。したがって、ガラス溶融体中での酸素分圧(pO)は低い(<0.35bar)。その結果、Fe2+含有率が高くなるため、NIRでの吸収に基づき、青緑色の色彩印象となる。Fe2+が少ないガラスを得るためには、例えば、CeO、さらにはCrによる化学変色
Ce4++Fe2+<->Ce3++Fe3+または
セレンもしくは希土類(Er)による物理変色(過染)のような追加措置が必要である。ただし、両措置とも、UV-VISにおける透過率低下を招く。
本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラスには、特に、ハロゲン化アルカリ、好ましくはNaClを清澄剤として使用する。
1450℃以上では、NaClの蒸発が起こる。急速に形成/成長する多数の気泡によって、ガラス溶融体の強力混合が生じ、溶存ガス/N、HO、CO等が除去される。還元バーナーの使用は不要である。実施形態によるホウケイ酸ガラスの窯溶融体を、特に、天然ガス/酸素バーナーで加熱する。
空気の場合のような、Oキャリアの予備加熱は不要である。
窯用バーナーは、好ましくは定常運転バーナーであり、再生式設備におけるようなバーナー交換は不要である。
通常、窯用バーナーを、わずかに酸化性に調整する。
天然ガス:O比は、1:2.2~2.3であり、燃焼の化学量論比は、およそ1:2.1(天然ガスのメタン含有率に依存)であろう。必要に応じて、さらに強力に酸化性、または還元性にも調整可能である。
ホウケイ酸ガラス溶融窯の場合、窯縦方向の両側に、通常、5~10個のバーナーが配置されている。ガス:O比の変化により、ガラス溶融体中のpOに影響を及ぼし、多価イオンの所望のレドックス比を調整できる。
好ましくは、ガラス溶融体中のpOを、窯底を貫く電極を使用して電気化学的に、様々な位置で直接に測定する。
レドックス比を狙いどおりに調整するための代案的または追加的なさらなる方法は、例えば以下のとおりである:
- 分解によりOを放出させ、Fe2+/Fe3+比をFe3+方向にずらす、O含有原料の使用、
- 通常使用するNaCOの代わりの、NaOキャリアとしてのNaNOの使用、
- 通常使用するKCOの代わりの、KOキャリアとしてのKNOの使用、
- Oガスによるバブリング(ガス噴射)。
バブリングは、人工的に生み出される、窯底から恒常的に上昇する気泡のカーテンにより、溶融窯内でのガラス流動に影響を及ぼす方法である。そのために、バブリングノズルは、窯底の源点近くに配置される。気泡発生ガス(たいていの場合は空気またはN)は、窯底からブローノズルを介してガラス溶融体内へと押し込まれる。
好ましくは、本明細書の実施形態によるホウケイ酸ガラス用の気泡発生ガスとして、純酸素(O)を使用する。それによっても、所望のレドックス比に付加的に影響を及ぼすことができ、例えば、ブローノズル数、0~200l/hのブローノズル処理量、ブローノズル予圧(Blasduesenvordruck)等によっても影響を及ぼすことができる。
一定のレドックス比を調整するためのこれらの措置はいずれも従来技術であり、該当する当業者には同様に公知である。
さらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラスの転移温度Tは、430~550℃、好ましくは450~550℃である。
転移温度Tは、5K/分の加熱速度で測定した場合の、膨張曲線の2つの分枝線への接線の交点から求められる。これは、ISO 7884-8ないしはDIN 52324に準拠する測定に相応する。
なおもさらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラスは粘度ηを有し、ここで、1000~1320℃の温度でのlgηの値は、4である。そのような組成のガラスは、良好に加工可能であり、特に、非板状成形ガラスの製造方法にも利用できる。特にこれによって、2nm未満という特に低い表面粗さRを有する成形ガラスも製造可能である。
一実施形態による非板状成形ガラスのさらなる利点は、低い屈折率にある。一実施形態によれば、非板状成形ガラスの、587.6nmの光波長における屈折率nは、1.479未満、好ましくは1.475未満である。
特に有利には、非板状成形ガラスの一実施形態は、以下の耐薬品性値:
- 水に対して、DIN ISO 719に準拠するクラスHGB1、
- 酸に対して、DIN 12116に準拠するクラスS1W、および
- アルカリに対して、DIN ISO 695に準拠するクラスA3以上
を特徴とする。
非板状成形ガラスのそのような(高い)耐薬品性値は有利である。なぜならば、それによって、非板状成形ガラスを、例えば、チップ産業、さらには別の業界における、部分的に浸食性媒体が非板状成形ガラス表面と接触する場合がある様々な工程および方法において使用できるためである。ここでは、特に、非板状成形ガラスのアルカリ含有率が低いことが有利である。しかしながら、ガラス、例えば非板状成形ガラスのアルカリ含有率のみがその耐薬品性に関して重要であるわけではなく、ガラスマトリックスにおけるアルカリの結合性も重要である。つまり、一実施形態による非板状成形ガラスの耐薬品性に関する高い値は、一方では、全アルカリ含有率が低いこととの相互作用に起因し、他方では、ガラスマトリックスにおけるアルカリの特に強力な構造上の結合性に起因する。
さらなる好ましい一実施形態によれば、非板状成形ガラスは、次の成分:
SiO 68~85モル%、好ましくは72~85モル%、特に好ましくは76~85モル%、
10~25モル%、好ましくは10~22モル%、
Al 0.2~3.5モル%、好ましくは0.2~2.5モル%、
NaO 0.5~5.0モル%、
O 0~1.5モル%、好ましくは0~1.0モル%、
LiO 0~2.5モル%、好ましくは0~1.5モル%
を含むが、ただし、好ましくは非板状成形ガラスに含まれるアルカリ金属酸化物NaO、KO、LiOの合計、好ましくは非板状成形ガラスに含まれる全アルカリ金属酸化物の合計は、6モル%未満、好ましくは5モル%未満である。
非板状成形ガラスは、一実施形態によれば、溶融工程およびそれに続く熱間成形、特にドロー法、例えばダンナー法またはベロー法などの管引きで製造されているか、または製造可能である。
実施例
次の表1には、200~1500nmの波長範囲において高透過率を有する成形ガラスの組成を列挙する。次の表2は、比較ガラスの組成を含む。
略語「ND」は、この場合、「検出せず」を意味する。
Figure 2024036265000002
Figure 2024036265000003
Figure 2024036265000004
Figure 2024036265000005
特に好ましい実施形態において、ガラスは、(酸化物ベースでモル%単位にて)以下の成分を含むことができる:
Figure 2024036265000006
さらなる特に好ましい実施形態において、ガラスは、モル%単位にて以下の成分を含む:
Figure 2024036265000007
表3~表6は、モル%単位でのさらなる例示的なガラス組成およびさらなるガラス特性を示す:
Figure 2024036265000008
Figure 2024036265000009
Figure 2024036265000010
Figure 2024036265000011
以下の表7は、ここに挙げられたガラスのうちのいくつかについての偏析係数を示す:
Figure 2024036265000012
以下の表8は、重水素ランプを48時間あるいは96時間照射した後の200nmあるいは254nmにおけるガラスの耐ソラリゼーション性(誘導吸光度)を示す。透過率の測定は、それぞれ0.70~0.75mmの範囲のガラス厚さで行った。
Figure 2024036265000013
以下の表9は、重水素ランプを48時間あるいは96時間照射した後の若干のガラスの透過率値を丸め処理して示したものである。
Figure 2024036265000014
以下の表は、ガラス物品とガラスあるいは金属合金(コバール)との融着後に得られた融着応力を示す。ガラスのCTEは、5.0ppm/Kであり、金属合金のCTEは、5.4ppm/Kであった。「ppm/K」とは、総じて10-6/Kの単位を意味すると理解される。
Figure 2024036265000015
Figure 2024036265000016
本発明の成形ガラスによる、200~1500nmの波長範囲における電磁放射の透過率スペクトルを示す。 例示的ガラス8の、200~800nmの波長範囲におけるもう1つの透過率スペクトルを、選択した比較ガラスと比べて示す。 非板状成形ガラスの縮尺どおりではない概略図を示す。
図1に、異なる実施形態による、厚さ1mmの異なる非板状成形ガラスの透過率スペクトルを示す。
透過率曲線1は、表1のガラス5に相当する組成を有する非板状成形ガラスに関して得られたものである。
透過率曲線2は、表1のガラス4に相当する組成を有する非板状成形ガラスに関して得られたものである。
透過率曲線3は、表1のガラス8に相当する組成を有する非板状成形ガラスに関して得られたものである。
透過率曲線4は、表1のガラス3に相当する組成を有する非板状成形ガラスに関して得られたものである。
透過率曲線5は、表1のガラス2に相当する組成を有する非板状成形ガラスに関して得られたものである。
図2に、一実施形態による厚さ1mmの非板状成形ガラスのもう1つの透過率スペクトルを、選択した同じく厚さ1mmの比較ガラスに関して得られた透過率スペクトルと比べて示す。観察する波長範囲は200~800nmである。
透過率曲線6は、表1のガラス8に相当する組成を有する非板状成形ガラスに関して得られたものである。
透過率曲線7は、表2のガラスBに相当する組成を有する1mmの厚さのガラスに関して得られたものである。
透過率曲線8は、表2のガラスFに相当する組成を有する1mmの厚さのガラスに関して得られたものである。
透過率曲線9は、表2のガラスDに相当する組成を有する1mmの厚さのガラスに関して得られたものである。
透過率曲線10は、表2のガラスIに相当する組成を有する1mmの厚さのガラスに関して得られたものである。
透過率曲線11は、表2のガラスEに相当する組成を有する1mmの厚さのガラスに関して得られたものである。
本発明の一実施形態による非板状成形ガラスに関して、示されている全波長範囲において、従来技術のガラスと比較して透過率の向上が明らかに見て取れる。
図3には、ここでは管の形態の非板状成形ガラス100の、縮尺どおりではない概略図を示す。非板状成形ガラス100は、2つの表面101および102を含む。その際、本発明において、非板状成形ガラス100の表面101、102と呼ばれるのは、ガラス体の両方の主面、つまり非板状成形ガラスのガラス体の総表面積の50%超を占める面である。ここでは、これは、非板状成形ガラス100の内側(102)および外側(101)である。
非板状成形ガラス100は、特に200~1500nmの波長範囲における電磁放射に対する透過性を有するが、ただし、該非板状成形ガラスの厚さが1mmである場合に、電磁放射に対する該非板状成形ガラスの透過率は、254nmの波長において20%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは88%以上であり、かつ/または好ましくは300nmの波長において82%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上であり、かつ/または好ましくは350nmの波長において90%以上、好ましくは91%以上であり、かつ/または好ましくは546nmの波長において92%以上、好ましくは92.5%以上であり、かつ/または好ましくは1400nmの波長において92.5%以上、好ましくは93%以上であり、かつ/または好ましくは380~780nmの波長範囲において91.5%以上、好ましくは92%以上であり、かつ/または好ましくは780~1500nmの波長範囲において92.5%以上、好ましくは93%以上である。
好ましい一実施形態によれば、非板状成形ガラス100の網目形成酸化物、特にケイ素および/またはホウ素の酸化物の含有率の合計は、最大98モル%である。
好ましくは、非板状成形ガラス100の線熱膨張係数αは、2.4×10-6~3.5×10-6/Kである。
一実施形態によれば、非板状成形ガラス100のSiO含有率は、少なくとも68モル%、好ましくは68~85モル%、特に好ましくは72~85モル%、有利には76~85モル%である。
さらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラス100はBを含むが、ただし好ましくは、非板状成形ガラスのB含有率は、10~25モル%、特に好ましくは10~22モル%である。
好ましくは、非板状成形ガラス100は、SiOおよびBを含むが、ただし好ましくは、
Σ(SiO+B) 87~98モル%、好ましくは92~98モル%
が成り立つ。
非板状成形ガラス100のさらなる一実施形態によれば、
ΣRO 1~6モル%、好ましくは1~5モル%
が成り立ち、ここで、ROは、アルカリ金属酸化物を意味する。
好ましくは、非板状成形ガラス100の成分の物質量比に関して、
/SiO 0.12~0.35であり、かつ/または
Σ(Me)/(Σ(SiO+B) 0.02~0.10
が成り立ち、ここで、Meは、酸化物において通常は酸化数yを有する金属を表し、特に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ならびにアルミニウムを表す。
非板状成形ガラス100のなおもさらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラスが含む鉄イオンの重量分率比に関して、
0.1≦Fe2+/(Fe2++Fe3+)≦0.3
が成り立つ。
非板状成形ガラス100のなおもさらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラス100が含む次の金属Fe、Co、Ni、Cr、Cu、Mn、Vの重量分率(ppm)に関して、
Σ(1×Fe+300×Co+70×Ni+50×Cr+20×Cu+5×Mn+2×V)[重量ppm]
が、200ppm未満、好ましくは150ppm未満、さらに好ましくは100ppm未満、特に好ましくは50ppm未満、とりわけ好ましくは25ppm未満であるということが成り立ち、ここで、非板状成形ガラス100の該当金属の全量は、その酸化状態に関係なく考慮される。
好ましくは、非板状成形ガラス100の転移温度Tは、450~550℃である。
非板状成形ガラス100の一実施形態によれば、該非板状成形ガラスは粘度ηを有し、ここで、1000~1320℃の温度でのlgηの値は、4である。
非板状成形ガラス100のさらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラス100の、587.6nmの光波長における屈折率nは、1.479未満、好ましくは1.475未満である。
好ましくは、非板状成形ガラス100は、以下の耐薬品性値:
- 水に対して、DIN ISO 719に準拠するクラスHGB1、
- 酸に対して、DIN 12116に準拠するクラスS1W、および
- アルカリに対して、DIN ISO 695に準拠するクラスA3以上
を特徴とする。
さらなる一実施形態によれば、非板状成形ガラス100は、次の成分:
SiO 68~85モル%、好ましくは72~85モル%、特に好ましくは76~85モル%、
10~25モル%、好ましくは10~22モル%、
Al 0.2~3.5モル%、好ましくは0.2~2.5モル%、
NaO 0.5~5.0モル%、
O 0~1.5モル%、好ましくは0~1.0モル%、
LiO 0~2.5モル%、好ましくは0~1.5モル%
を含むが、ただし、好ましくは非板状成形ガラス100に含まれるアルカリ金属酸化物NaO、KO、LiOの合計、好ましくは非板状成形ガラス100に含まれる全アルカリ金属酸化物の合計は、6モル%未満、好ましくは5モル%未満である。
非板状成形ガラス100は、一実施形態によれば、溶融工程およびそれに続く熱間成形、特にドロー法、例えばダンナー法またはベロー法などの管引きで製造されているか、または製造可能である。

Claims (16)

  1. 非板状成形ガラスであって、前記非板状成形ガラスの厚さが1mmである場合に、電磁放射に対する前記非板状成形ガラスの透過率が、
    254nmの波長において20%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは88%以上であり、かつ/または
    好ましくは300nmの波長において82%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上であり、かつ/または
    好ましくは350nmの波長において90%以上、好ましくは91%以上であり、かつ/または
    好ましくは546nmの波長において92%以上、好ましくは92.5%以上であり、かつ/または
    好ましくは1400nmの波長において92.5%以上、好ましくは93%以上であり、かつ/または
    好ましくは380~780nmの波長範囲において91.5%以上、好ましくは92%以上であり、かつ/または
    好ましくは780~1500nmの波長範囲において92.5%以上、好ましくは93%以上である、非板状成形ガラス。
  2. 前記非板状成形ガラスの網目形成酸化物、特にケイ素および/またはホウ素の酸化物の含有率の合計が、最大98モル%である、特に請求項1記載の非板状成形ガラス。
  3. 前記非板状成形ガラスの線熱膨張係数αが、2.4×10-6~3.5×10-6/Kである、請求項1または2記載の非板状成形ガラス。
  4. 前記非板状成形ガラスのSiO含有率が、少なくとも68モル%、好ましくは68~85モル%、特に好ましくは72~85モル%、有利には76~85モル%である、請求項1から3までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  5. 前記非板状成形ガラスがBを含むが、ただし好ましくは、前記非板状成形ガラスのB含有率が、10~25モル%、特に好ましくは10~22モル%である、請求項1から4までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  6. 前記非板状成形ガラスが、SiOおよびBを含むが、ただし好ましくは、
    Σ(SiO+B) 87~98モル%、好ましくは92~98モル%
    が成り立つ、請求項1から5までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  7. ΣRO 1~6モル%、好ましくは1~5モル%
    が成り立ち、ここで、ROはアルカリ金属酸化物を表す、請求項1から6までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  8. 前記非板状成形ガラスの成分の物質量比に関して、
    /SiO 0.12~0.35であり、かつ/または
    Σ(Me)/(Σ(SiO+B) 0.02~0.10
    が成り立ち、ここで、Meは、酸化物において通常は酸化数yを有する金属を表し、特に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ならびにアルミニウムを表す、請求項1から7までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  9. 前記非板状成形ガラスが含む鉄イオンの重量分率比に関して、
    0.1≦Fe2+/(Fe2++Fe3+)≦0.3
    が成り立つ、請求項1から8までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  10. 前記非板状成形ガラスが含む次の金属Fe、Co、Ni、Cr、Cu、Mn、Vの重量分率(ppm)に関して、
    Σ(1×Fe+300×Co+70×Ni+50×Cr+20×Cu+5×Mn+2×V)[重量ppm]
    が、200ppm未満、好ましくは150ppm未満、さらに好ましくは100ppm未満、特に好ましくは50ppm未満、とりわけ好ましくは25ppm未満であるということが成り立ち、ここで、前記非板状成形ガラスの該当金属の全量は、その酸化状態に関係なく考慮される、請求項1から9までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  11. 前記非板状成形ガラスの転移温度Tが、430~550℃、好ましくは450~550℃である、請求項1から10までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  12. 粘度ηを有し、ここで、1000~1320℃の温度でのlgηの値が4である、請求項1から11までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  13. 前記非板状成形ガラスの、587.6nmの光波長における屈折率nが、1.479未満、好ましくは1.475未満である、請求項1から12までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  14. 以下の耐薬品性値:
    - 水に対して、DIN ISO 719に準拠するクラスHGB1、
    - 酸に対して、DIN 12116に準拠するクラスS1W、および
    - アルカリに対して、DIN ISO 695に準拠するクラスA3以上
    を特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  15. 前記非板状成形ガラスは、次の成分:
    SiO 68~85モル%、好ましくは72~85モル%、特に好ましくは76~85モル%、
    10~25モル%、好ましくは10~22モル%、
    Al 0.2~3.5モル%、好ましくは0.2~2.5モル%、
    NaO 0.5~5.0モル%、
    O 0~1.5モル%、好ましくは0~1.0モル%、
    LiO 0~2.5モル%、好ましくは0~1.5モル%
    を含むが、ただし、好ましくは前記非板状成形ガラスに含まれるアルカリ金属酸化物NaO、KO、LiOの合計、好ましくは前記非板状成形ガラスに含まれる全アルカリ金属酸化物の合計が、6モル%未満、好ましくは5モル%未満である、請求項1から14までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
  16. 溶融工程およびそれに続く熱間成形、特にドロー法、例えばダンナー法またはベロー法などの管引きで製造されているか、または製造可能である、請求項1から15までのいずれか1項記載の非板状成形ガラス。
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