JP2024036249A - 水中油型乳化組成物 - Google Patents

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Ryoma Teranishi
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あゆみ 力丸
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Chihiro Ioka
貴史 山崎
Takashi Yamazaki
俊一 辻
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Abstract

【課題】乳化剤としての界面活性剤を実質的に用いることなく、乳化安定性と紫外線防御効果に優れた、日焼け止め化粧料として用いられる水中油型乳化組成物を提供する。【解決手段】下記の(a)及び(b)の成分を含む水中油型乳化組成物を提供する;(a)疎水性モノマー単位を含む、カチオン性基を有する疎水性部、及び少なくとも下記式(I)で表される親水性モノマー単位を含む親水性部を有する重合体を含む粒子、(b)疎水化処理微粒子金属酸化物。【化1】JPEG2024036249000014.jpg29140【選択図】図1

Description

本発明は、優れた使用感を有する水中油型乳化組成物に関する。
一般に、日焼け止め化粧料は、高いSPF(Sun Protection Factor)を得るために、金属酸化物の微粉末を含有している。この微粒子金属酸化物が、強い紫外線遮蔽効果を有することは広く知られている。日焼け止め化粧料における微粒子金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム)の配合量は、比較的多量になりやすいため、酸化チタンと酸化亜鉛との組み合わせ等、2種類以上の微粒子金属酸化物を併用したり、製品により、さらに有機系の紫外線吸収剤を併用することがある。
このような微粒子金属酸化物を水中油型乳化組成物の形態の日焼け止め化粧料に配合する場合には、油相での分散性を上げるため疎水化処理した疎水化処理微粒子金属酸化物が配合されることが多い。これと同時に、界面活性剤等を用いて、疎水化処理微粒子金属酸化物の分散性を高める試みがなされている。しかしながら、水中油型乳化組成物中に界面活性剤を多量に使用した場合は、皮膚等の人体に直接適用した際に、べたつきや刺激性等の問題を引き起こし得る上、人体に吸収され得る界面活性剤については、人体への影響を懸念する消費者も少なくない。このため、日焼け止め化粧料として使用される水中油型乳化組成物においても、界面活性剤の使用量を極力低減することが望まれる。
このような状況を背景に、水中油型乳化組成物において、界面活性剤以外の乳化作用を有する添加物の利用が試みられている。そのような試みの一つに、固体粒子を、油相と水相との界面付近に存在させることにより乳化された水中油型乳化組成物に注目が集まっている。
図1は、界面活性剤によるエマルジョンと、上述の、固体粒子を、油相と水相との界面付近に存在させることにより乳化された水中油型乳化組成物(以下、「固体粒子により乳化された水中油型乳化組成物」ともいう)とを模式的に比較した図面である。本発明は如何なる理論にも拘束されるものではないが、一般に、固体粒子により乳化された水中油型乳化組成物は、ピッカリングエマルジョンと言われる場合もあり、鉱物粒子や、両親親媒性の有機系粒子が、水性又は油性の液滴の界面に存在し、当該液滴の構造が安定化された状態となっている、と推察される。
上述のように、従来、界面活性剤を使用しない乳化組成物に対する要求が一定程度存在しているが、乳化剤としての界面活性剤を実質的に含まない、日焼け止め化粧料として使用される水中油型乳化組成物の一例としては、例えば、特許文献1に、光遮蔽性粉体を含み、表面が荷電している乳化粉体により安定化されていることを特徴とする、水中油型乳化組成物が開示されている。特許文献1に記載の水中油型乳化組成物によれば、イオンを含む水溶液に対する抵抗性に優れるとされ、当該水溶液への接触後に、光遮蔽効果が維持又は向上するものとされている。
特開2020-50627号公報
しかしながら、特許文献1に記載の水中油型乳化組成物のような、水中油型乳化組成物である日焼け止め化粧料は、光遮断性粉体である微粒子金属酸化物を高配合することが難しく、また界面活性剤の使用を回避しているため、微粒子金属酸化物の分散性に劣り、結果、紫外線遮蔽効果が十分ではないことが指摘されていた。したがって、本発明は、以上の課題にかんがみてなされたものであり、使用感に優れるとともに、良好な乳化安定性を有し、さらには紫外線遮蔽効果に優れる水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題にかんがみ鋭意研究を行った。その結果、疎水性モノマー単位を含み、カチオン性基を有する疎水性部、及び所定の親水性モノマー単位を含む親水性部を有する重合体を含む粒子を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のものを提供する。
本発明の第1の態様は、下記の(a)及び(b)の成分を含む水中油型乳化組成物である;
(a)疎水性モノマー単位を含む、カチオン性基を有する疎水性部、及び少なくとも下記式(I)で表される親水性モノマー単位を含む親水性部を有する重合体を含む粒子、
(b)疎水化処理微粒子金属酸化物。
本発明の第2の態様は、上記水中油型乳化組成物中に占める、上記疎水化処理微粒子金属酸化物の含有量が、1質量%以上30質量%以下である、上記第1の態様に記載の水中油型乳化組成物である。
本発明の第3の態様は、上記水中油型乳化組成物が、実質的に、乳化剤としての界面活性剤を含まない、上記第1又は第2の態様に記載の水中油型乳化組成物である。
本発明の第4の態様は、上記カチオン性基が、カチオン性ラジカル重合開始剤に由来する、上記第1から3のいずれかの態様に記載の水中油型乳化組成物である。
本発明の第5の態様は、上記カチオン性ラジカル重合開始剤が、2,2’-[ジアゼン-1,2-ジイルビス(プロパン-2,2-ジイル)]ビス(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム)=ジトリフルオロメタンスルホネート(ADIP)、2,2’-[ジアゼン-1,2-ジイルビス(プロパン-2,2-ジイル)]ビス(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム)=ジクロライド(ADIP-Cl)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(V-50)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(VA-044)及び2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](VA-061)からなる群から選択される一種又は二種以上である、上記第1から5のいずれかの態様に記載の水中油型乳化組成物である。
本発明の第6の態様は、上記親水性部が、さらに、下記式(II)で表されるモノマー単位を含み、上記式(I)で表されるモノマー単位の数、及び下記式(II)で表されるモノマー単位の数の総量に対する、上記式(I)で表されるモノマー単位の数の割合(けん化度)が70%以上99%以下である、上記第1から5のいずれかの態様に記載の水中油型乳化組成物である。
本発明によれば、乳化剤としての界面活性剤を実質的に用いることなく、乳化安定性と紫外線遮蔽効果に優れた、日焼け止め化粧料として用いられる水中油型乳化組成物を提供することができる。
界面活性剤によるエマルジョンと、固体粒子によるエマルジョンの模式的比較図である。 実験例1から3、及び比較実験例1から3のSPFを示すグラフである。 実験例1及び比較実験例2における、耐水性の比較結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について、図面も参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、例示的な説明のために記載されるものであって、本実施形態における下記の説明は、特許請求の範囲の文言を限定するものと解釈されるべきではない。
<水中油型乳化組成物>
本実施形態の水中油型乳化組成物は、(a)疎水性モノマー単位を含む、カチオン性基を有する疎水性部、及び少なくとも所定の親水性モノマー単位を含む親水性部を有する重合体を含む粒子及び(b)疎水化処理微粒子金属酸化物を含む。本実施形態の水中油型乳化組成物は、使用感と乳化安定性にも優れ、日焼け止め化粧料として汎用的に利用できるとともに、疎水化処理微粒子金属酸化物が十分に分散していることにより、紫外線遮蔽効果にも優れる。さらに、本実施形態の水中油型乳化組成物は、これにより形成される皮膜の耐水性にも優れ、水浴後も高いSPFを維持しやすい。また、本実施形態の水中油型乳化組成物は、塗布した後の使用感も良好なものとなる観点から、乳化剤としての界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。特に、日焼け止め化粧料は、皮膚の広範囲に塗布される傾向にあるので、塗布後の使用感は極めて重要になりうる。なお、「実質的に含まない」とは、例えば、本実施形態の水中油型乳化組成物中に占める含有量が1質量%未満であることを指す。
また、本実施形態の水中油型乳化組成物は、超音波処理装置やホモジェナイザー等の、工業的に強い外力を発生させる装置を使用せずに調製でき、分散状態の安定化のための加熱処理も必ずしも必要ではない。よって、本実施形態によれば、水中油型乳化組成物の調整時の環境負荷低減にも貢献することもできる。しかしながら、本発明は、超音波処理装置やホモジェナイザー等を用いて調製された水中油型乳化組成物も、その権利範囲に含まれるものである。
[(a)粒子]
本実施形態の水中油型乳化組成物は、疎水性モノマー単位を含み、カチオン性基を有する疎水性部、及び所定の親水性モノマー単位を含む親水性部を有する重合体を含む粒子を含んでいる。なお、本実施形態の水中油型乳化組成物中に占める、粒子の含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。当該粒子の含有量が上記の範囲内であることにより、本実施形態の水中油型乳化組成物が、界面活性剤を実質的に用いなくても、乳化安定性を有するものとなる。
(疎水性部)
上述のとおり、疎水性部は、疎水性モノマー単位を含むが、この「疎水性モノマー単位」としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーから得られるモノマー単位を挙げることができる。ここで、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、分子内に炭素-炭素二重結合を有する、重合性のモノマーを挙げることができ、より具体的には、(メタ)アクリル酸系モノマー単位やスチレン系モノマー単位等を挙げることができる。
ここで、(メタ)アクリル酸系モノマー単位としては、炭素数1以上6以下のアルキルエステル基を有する、(メタ)アクリル酸アルキルに由来するモノマー単位を挙げることができる。ここで、炭素数1以上6以下のアルキルエステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、n-プロピルエステル基、n-ブチルエステル基、n-ペンチルエステル基、n-ヘキシルエステル基を挙げることができる。これらのアルキルエステル基は、必要に応じ、上記アルキルエステル基を構成するアルキル基の1以上の水素原子が水酸基により置換されていてもよい。上記アルキルエステル基としては、粒子の保存安定性を十分なものとする観点から、炭素数が1以上4以下のものがより好ましい。
そのような(メタ)アクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を使用することが好ましく、メタクリル酸メチルの使用がより好ましい。これらのモノマーを使用した場合、得られる粒子の保存安定性が向上するとともに、粒子の乳化能がより優れたものとなる。
なお、(メタ)アクリル酸系モノマー単位がカルボキシル基等の酸性基を有する場合、当該カルボキシル基は塩の形態であってもよく、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩であってもよい。
スチレン系モノマー単位としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等を挙げることができる。これらの中でも、得られる粒子の保存安定性及び乳化能を十分なものとする観点から、スチレンを使用することが好ましい。
以上のようなモノマーを用いて、疎水性モノマー単位を含み、カチオン性基を有する疎水性部を調製する場合、一般には、上記モノマーをラジカル重合すればよい。
(カチオン性基)
本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子の疎水性部が有するカチオン性基は、カチオン性ラジカル重合開始剤に由来するカチオン性基が一般的に想定されるが、カチオン性ラジカル重合開始剤に由来するカチオン性基のみに限定されるわけではなく、疎水性部の末端、又は疎水性部中に任意のカチオン性基を導入できる任意の化合物又は重合単位に由来するカチオン性基を挙げることができる。このようなカチオン性基の具体例としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、イミダゾール基、イミダゾリウム基、ピリジル基、ピリジニウム基、ピペリジル基、ピペリジニウム基、ピロリジニル基、ピロリジニウム基、ホスホニウム基等を挙げることができる。しかしながら、本実施形態においては、特に、重合開始剤として、カチオン性ラジカル重合開始剤を用いて、疎水性モノマーを重合させることにより、疎水性部の末端に導入されるカチオン性基を、カチオン性基として採用することが特に好ましい。カチオン性ラジカル重合開始剤を用いることで、カチオン性ラジカル重合開始剤由来の末端構造が、疎水性部の末端のモノマー単位に共有結合的に結合した状態とすることができる。本実施形態においては、コア部が疎水性部を含み、コア部の表面又はその近傍にカチオン性基が配置されることで、粒子の乳化能が優れたものとなりうる。
(カチオン性ラジカル重合開始剤)
本実施形態において使用できる、カチオン性ラジカル重合開始剤としては、重合後の安全性とラジカル重合開始剤としての反応性が両立されたものを、一般的に使用することができるが、より具体的には、2,2’-[ジアゼン-1,2-ジイルビス(プロパン-2,2-ジイル)]ビス(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム)=ジトリフルオロメタンスルホネート(ADIP)、2,2’-[ジアゼン-1,2-ジイルビス(プロパン-2,2-ジイル)]ビス(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム)=ジクロライド(ADIP-Cl)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(V-50、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(VA-044、富士フイルム和光純薬株式会社製)及び2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](VA-061、富士フイルム和光純薬株式会社製)からなる群から選択される一種又は二種以上を使用することが好ましい。これらのカチオン性ラジカル重合開始剤を用いることにより、得られる粒子の乳化能がより良好なものとなる。
なお、本実施形態において使用できるラジカル重合開始剤としては、例えば、一般式(III)で表されるカチオン性ラジカル重合開始剤を挙げることができる。なお、下記のカチオン性ラジカル重合開始剤についての更なる詳細は、例えば、特開2017-051113号公報を参照されたい。当該文献の内容は、参照により本明細書の一部に組み込まれる。なお、一般式(III)により示されるカチオン性ラジカル重合開始剤の具体例としては、上述のADIPやADIP-Clを挙げることができるが、ADIPやADIP-Clを用いることにより、より温和な反応条件で本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子を調製することができ、粒子の調製時における加熱等のダメージによる粒子の保存安定性の低下を抑制することもできる。また、ADIPやADIP-Clを用いることにより、上述のとおり、より温和な反応条件で本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子を調製することができるから、合成時の環境負荷にも貢献し得る。

[式中、
Yは、単結合又はCR85を表し、
Zは、単結合又はCR86を表し、
72、R73、R75、R76、R77、R78、R85及びR86は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニル、及びヒドロキシからなる群から選択され、ここで上記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、及びフェニルは、さらにC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニル、及びヒドロキシからなる群から選択される1又は2個の置換基で置換されていてもよく
72及びR73は、さらに、それぞれ独立して、アダマンチル、又はSi(OCH(CH)で置換されたC1-6アルキルを表してもよく、あるいは、R75及びR76、又はR77及びR78は、一緒になって-(CH3-5-を形成してもよく、
81、R82、R83、及びR84は、C1-4アルキル、C1-4アルキルカルボニル、及びC1-3アルコキシからなる群から選択される置換基であり、ここで上記C1-4アルキルは一つのC1-3アルコキシ基で置換されていてもよく、及び
71及びR74は、それぞれ独立して、C1-3アルキル基であり、X はカウンターアニオンである]
上記式(III)のカチオン性ラジカル重合開始剤における「カウンターアニオン」とは、有機化学の技術分野で有機化合物のカウンターアニオンとして通常用いられるアニオンであれば特に制限されず、例えば、ハロゲン化物アニオン(塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン)、有機酸の共役塩基(例えば酢酸イオン、クエン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン)、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン等が含まれる。本実施形態において好ましいカウンターアニオンとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(トリフレート)、塩化物イオン、硝酸イオン等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態の水中油型乳化組成物の保存安定性を著しく向上させ、本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子の調製の際における当該粒子の収率を高め、製造コストを改善できるという観点から、塩化物イオン、酢酸イオン及びクエン酸イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
(親水性部)
本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子が備える親水性部は、より具体的には、下記式(I)で表される親水性モノマー単位を含むものである。
なお、上記式(I)で表される親水性モノマー単位は、特に限定されるものではないが、一般には、酢酸ビニルをラジカル重合反応により重合し、酢酸エステル基を加水分解(けん化)することにより得ることができる。このため、本実施形態においては、親水性部は、上記式(I)で表される親水性モノマー単位を必ず有しているものの、上記親水性部のすべてのモノマー単位が上記式(I)で表されるものに限定されるものではない。より具体的に、上記親水性部は、酢酸ビニルから誘導される、下記式(II)で表されるモノマー単位と、上記式(I)で表されるモノマー単位と、を含み、下記式(II)で表されるモノマー単位中の酢酸基、及び上記式(I)で表されるモノマー単位中の水酸基の合計数に対する、上記水酸基の割合(本発明において、簡易的に、「けん化度」と言及することがある)が、粒子自体の保存安定性及び乳化能を高めるともに、この粒子を用いて形成される水中油型乳化組成物の乳化安定性を良好なものとする観点から、70%以上99%以下であることが好ましく、75%以上98%以下であることがより好ましく、78%以上96%以下であることが更に好ましい。この「けん化度」を調整することにより、上記粒子の親水性部における親水性の度合いが調整されるため、上記「けん化度」は、本実施形態の水中油型乳化組成物の使用目的に応じ、適宜、調整することが好ましい。
(粒子のコア部)
本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子は、少なくとも表面に、有機系の基が露出したものであるが、そのコア部は、有機系のもののみからなっていてもよいが、そのような有機系の基のみからなるものに限定されず、無機系の材料を含んでいてもよい。本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子のコア部が無機系の材料を含む場合、コア部に無機物質の表面に疎水性モノマー単位を含む重合体を結合又は会合させることが挙げられる。
(架橋性モノマー)
コア部を構成する有機系のモノマー単位としては、架橋性のモノマー単位を用いてもよいが、そのような態様においては、本実施形態の水中油型乳化組成物に含まれる粒子を調製するモノマーの一つとして、架橋性モノマーを部分的に使用してもよい。そのような架橋性モノマーの具体例としては、分子中に2以上のエチレン性不飽和二重結合を含むモノマーであって、架橋剤として通常使用されているものを挙げることができる。しかしながら、本実施形態において、そのような架橋性モノマーを使用しなくてもよく、使用する場合には、粒子の保存安定性を十分なものとする観点から、疎水性部を構成するモノマー、親水性部を構成するモノマーに対し、それぞれモル換算で、通常0.1%以上20%以下、好ましくは3%以上10%以下、より好ましくは5%以下の範囲でその含有量を設定できる。このような架橋性モノマーの具体的な例としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N,N’-エチレンビスメタクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
(疎水性部と親水性部の組み合わせ態様)
上記粒子は、疎水性部及び親水性部を有する重合体を含む。上記粒子においては、粒子による乳化能をより良好なものとする観点から、粒子のコア部の表面が疎水性であり、その一部又は全部が親水性モノマー又はその重合体によって直接又は間接的に被覆されることが好ましい。より具体的には、疎水性モノマー単位と、親水性モノマー単位とが、共有結合により結合していてもよいし(「直接的に被覆される」態様)、疎水性モノマー単位と、親水性モノマー単位とが、分子間力により結合してもよい(「間接的に被覆される」態様)。
また、疎水性モノマー単位と、親水性モノマー単位とが、共有結合により結合している場合、両者が共有結合した重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよいが、特にグラフト共重合体である場合には粒子の保存安定性がより良好なものとなるため、疎水性モノマー単位と、親水性モノマー単位とが共有結合した重合体はグラフト共重合体であることがより好ましい。
さらに、疎水性モノマー単位と、親水性モノマー単位とが、分子間力により結合している場合、分子間力による結合は、粒子の保存安定性及び粒子による乳化能をより良好なものとする観点から、加熱処理によりもたらされるものであることが好ましい。この場合の加熱処理としては、例えば、20℃以上100℃以下、より具体的には、30℃以上80℃以下の温度で、30分以上480分以下の加熱処理を例示することができる。
なお、上記の粒子は、疎水性モノマー単位と、親水性モノマー単位とが、共有結合のみで結合している粒子や、分子間力のみにより結合している粒子のみに限定されず、一部の疎水性モノマー単位が、共有結合により親水性モノマー単位と結合し、残る疎水性モノマー単位が、分子間力により、親水性モノマー単位と結合していてもよい。親水性モノマー単位と、共有結合により結合する疎水性モノマー単位の存在割合は、粒子による乳化能を良好なものとする観点から、親水性モノマー単位と結合する疎水性モノマー単位の全体に対して、10%以上90%以下であることが好ましく、30%以上70%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることが更に好ましい。
以上に説明した態様において、本実施形態の水中油型乳化組成物の乳化安定性及び乳化の度合いを良好なものとする観点から、疎水性部及び親水性部の存在割合は、疎水性部に対応する質量100質量部に対して、親水性部に対応する質量が1質量部以上6質量部以下相当であることが好ましく、3質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
(キュムラント平均径)
上記の粒子のキュムラント平均径は、当該粒子を含む分散体において、分散媒中でブラウン運動をする粒子からの散乱光強度を測定し、その強度の時間的変動から算出されるものである(動的光散乱法)。本実施形態の粒子のキュムラント平均径は、粒子の保存安定性を高め、粒子による乳化能を良好なものとし、及び乳化組成物の乳化安定性を高める観点から、100nm以上500nm以下であることが好ましく、150nm以上450nm以下であることがより好ましい。
[(b)疎水化処理微粒子金属酸化物]
本実施形態の水中油型乳化組成物は、疎水化処理微粒子金属酸化物を含有する。この疎水化処理微粒子金属酸化物は、紫外線を散乱または遮蔽する目的で配合されるものであり、脂肪酸やシリコーン等で表面処理(被覆処理)をすることにより、表面が疎水化されているものである。疎水化処理微粒子金属酸化物に用いられる金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム等を挙げることができるが、これらの中でも、特に、酸化チタン及び酸化亜鉛を利用することが好ましい。疎水化処理剤の種類としては制限されないが、例えば、脂肪酸、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、トリグリセライド、エステル、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素化合物、アシルアミノ酸等などが挙げられる。なお、本実施形態の水中油型乳化組成物において用いられる、疎水化処理微粒子金属酸化物は、金属酸化物が揮発性シリコーン基材中に安定的に低次粒子化されたペースト状の市販品を用いてもよい。そのようなペースト状の市販品としては、テイカ株式会社製の「FLT-01」(酸化チタン、水酸化アルミニウム、含水シリカ、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリメチルシロキシケイ酸、シクロペンタシロキサン)、三好化成株式会社製の「SA-UT-A40/D5(50%)MiBrid Dispersion」(酸化チタン、水酸化アルミニウム、ステアリン酸、ジメチコン、シクロペンタシロキサン)、三好化成株式会社製の「MiyoSCREEN UT-01/D5」(酸化チタン、水酸化アルミニウム、ステアリン酸、ジメチコン、シクロペンタシロキサン)、三好化成株式会社製の「MiyoSCREEN UZ-01/D5」(酸化亜鉛、ジメチコン、メチコン、ミリスチン酸、シクロペンタシロキサン)等を挙げることができる。本実施形態の水中油型乳化組成物に占める、疎水化処理微粒子金属酸化物の含有量は、目標とするSPFの値にもよるが、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。疎水化処理微粒子金属酸化物の含有量が上記の範囲内のものであることにより、本実施形態の水中油型乳化組成物を、好適なSPFを有する日焼け止め化粧料として構成することができる。
[(c)油剤]
本実施形態の水中油型乳化組成物は、油剤を含む。なお、本実施形態の水中油型乳化組成物中に占める、油剤の含有量は、35質量%以上70質量%以下であることが好ましく、40質量%以上65質量%以下がより好ましく、45質量%以上60質量%以下であることが更により好ましい。油剤の含有量が上記の範囲内のものであることにより、乳化安定性を十分に保ちつつも、水中油型乳化組成物の使用感を良好なものとすることができる。上記油剤は、化粧料等に通常用いられるものであれば、その性状や種類等は特に限定されないが、乳化安定性と使用性の観点から、炭化水素油、シリコーン油及びエステル油から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
[その他の添加剤]
本実施形態の水中油型乳化組成物は、当該組成物の用途に応じ、必要に応じて加えられてもよい各種有効成分(例えば、化粧品有効成分用成分;美白剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤等)に加え、任意成分として、当該用途に慣用される各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜含有してもよい。当該添加剤としては、例えば、酸化防止剤、防錆剤、ゲル化剤、分散剤、増粘剤、アルコール、エーテル、pH調整剤、安定剤、殺菌剤、防黴剤、防腐剤、着色剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
<粒子の製造方法>
本実施形態の水中油型乳化組成物に用いられる、上記粒子の製造方法としては、特に限定されず、疎水性モノマー及び上記親水性モノマーをそれぞれ別々に又は逐次的に重合して(即ち、疎水性モノマーとは別に上記親水性モノマーを重合する;又は疎水性モノマーの重合の完了後に上記親水性モノマーを重合することにより)、粒子化すること等が挙げられる。上記粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す粒子化工程を有し、修飾工程やその他の工程を含んでいてもよい。
[(1)粒子化工程]
上記粒子化工程としては、特に限定されるものではいが、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等、例えば、疎水性モノマー等のモノマー成分を重合しながら粒子化する工程を挙げることができる。なお、この重合の際には、乳化剤の存在下で重合反応が行われることが好ましい。また、上記の粒子化工程は、溶液重合法等によりモノマー成分を重合した後、得られた反応生成物を転相乳化法、懸濁法等により粒子化する工程であってもよい。
しかしながら、製造における煩雑さを低減するという観点からは、モノマー成分を重合しながら粒子化する工程が好ましく、乳化重合法、懸濁重合法又は分散重合法がより好ましく、乳化重合法がさらにより好ましい。さらに、乳化重合法の中でも、コア部となる疎水性部の表面に乳化剤などの不純物が混入せず、後続してもよい下記修飾工程に影響を及ぼしにくいという観点から、ソープフリー乳化重合法を採用することが好ましい。このソープフリー乳化重合法の具体的実施手法については、特に限定されず、公知の方法で実施することができる。例えば、界面活性剤、高分子型乳化剤、反応型界面活性剤等の乳化剤を用いずに、モノマー成分を、重合開始剤の存在下で、乳化重合すること等により行うことができる。
粒子化工程において、用いる溶媒は、特に限定されないが、水性媒体等が挙げられる。粒子化工程において用いる水性媒体は、粒子の保存安定性を高める観点から、水又はアルコールを含んでいてもよい。粒子化工程を実施する際の反応温度は、溶媒の沸点以下の温度に設定されることが好ましい。
[(2)修飾工程]
上記の修飾工程においては、例えば、疎水性部表面の一部又は全部を、親水性モノマー、又は上記親水性モノマーの重合体によって直接的又は間接的に被覆する。或いは、上記の修飾工程においては、例えば、重合した疎水性モノマーと、重合した上記親水性モノマーと、を結合又は会合させる。
疎水性部の表面を、上記親水性モノマー等によって、直接に被覆する態様としては、例えば、疎水性部表面に存在する疎水性モノマー単位と、上記親水性モノマー単位とを、共有結合により結合させる態様を挙げることができ、より具体的には、コア部の表面に存在する疎水性モノマー単位に由来する原子団に対して、上記親水性モノマーの重合体に由来する原子団を共有結合させる態様や、コア部の表面に存在する疎水性モノマー単位に由来する原子団に対して、親水性モノマーである酢酸ビニルを共有結合させ、これに酢酸ビニルを更に重合させた後、ポリ酢酸ビニル部分のエステル加水分解を行ってけん化し、親水性部として形成させる態様がある。しかしながら、疎水性部の表面を、上記親水性モノマー等によって、直接に被覆する態様としては、乳化能を良好なものとする観点から、上記親水性モノマー単位を含む重合体を、コア部の表面に存在する疎水性モノマー単位に由来する原子団に対して共有結合させる態様を採用することが好ましく、上記親水性モノマー単位を含む重合体がポリビニルアルコールであることがより好ましく、共有結合はラジカル重合開始剤を用いたラジカル反応により形成される炭素-炭素共有結合等であることが更に好ましい。
疎水性部の表面を、上記親水性モノマー等によって、間接的に被覆する態様としては、例えば、コア部(疎水性部)表面に存在する疎水性モノマー単位に含まれる原子団と、上記親水性モノマー単位に含まれる原子団とを、分子間力や製電気的相互作用等により相互作用させる態様が挙げられる。この際、結果的に疎水性部と上記親水性部とが相互作用をすることになるため、両者の相互作用をより容易なものとするため、疎水性部及び/又は上記親水性部に、任意の官能基や原子団を導入してもよい。疎水性部表面に存在する疎水性モノマー単位に含まれる原子団と、上記親水性モノマー単位に含まれる原子団とを、分子間力や製電気的相互作用等により相互作用させるための方法としては、(1)粒子化工程で得られた粒子に対して、上記親水性モノマー単位を含む重合体を添加し、必要に応じて任意の官能基・原子団を導入しつつ、混合液の温度、圧力、濃度条件等を適宜設定する方法を採用することが好ましく、混合液の加温、加圧、又は濃縮を行うことがより好ましい。
[その他の工程]
上記粒子の製造方法は、(1)粒子化工程、及び(2)修飾工程以外にその他の工程を有していてもよい。付加される「その他の工程」は、特に限定はされないが、洗浄工程、濃縮工程、及び乾燥工程等が挙げられる。例えば、洗浄工程、濃縮工程、及び乾燥工程は、(1)粒子化工程、及び(2)修飾工程の少なくとも一方の工程の中に、組み込まれていてもよいし、(時間的又は空間的に)(1)粒子化工程、及び(2)修飾工程から独立していてもよい。
上記粒子の製造方法は、得られる粒子を含む組成物の刺激性を低減するため、洗浄工程を有していることが好ましい。洗浄工程に用いられる媒体としては、特に限定されず、水性媒体を用いることができる。洗浄工程は、例えば、粒子化工程に用いられる反応溶媒が水性媒体の場合には、上記粒子を遠心分離により沈降させ、その上清を除去した後に、上記水性媒体を加えて再分散を行う操作を繰り返すこと等により行うことができる。また、粒子化工程に用いられる反応溶媒が有機溶媒の場合には、ブライン等、塩を添加した水性媒体を反応溶媒に混合して攪拌し、分液漏斗等を用いて、水相と有機相とを分離することにより行ってもよい。上記粒子の製造方法が、洗浄工程を有することにより、媒体中の未反応のラジカル重合開始剤やその分解生成物、未反応モノマーの残存量を低減(例えば、それらの各濃度を100ppm未満とする)することができる。
上記粒子の製造方法は、粒子の有する乳化能を十分に発揮させる観点から、組成物中の粒子の濃度を高めるための濃縮工程を有していることが好ましい。特に限定されるものではないが、この濃縮工程は、上記粒子を遠心分離により沈降させ、その上清を除去した後に、除去した上清の質量及び/又は体積よりも少量の媒体を加えて再分散を行うことにより実施してもよく、上記粒子を乾燥により粉末とした後に、乾燥により除去した媒体の質量及び/又は体積よりも少量の媒体を加えて再分散を行うこと等により実施してもよい。
また、上記粒子の製造方法は、上記粒子の状態を粉末状態にするために、乾燥工程を有することが好ましい。当該乾燥工程は、上記粒子が含まれる媒体を蒸発させて乾燥等させることにより実施することができる。乾燥工程において採用する具体的手法としては、特に限定されず、熱風乾燥、赤外線乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
なお、上記粒子の製造方法は、粒子化工程の一段階のみを有していてもよいが、粒子化工程以外にも他の工程を含む多工程の製造方法としてもよい。
上記粒子の製造方法を粒子化工程の一工程のみを有する方法とする場合には、粒子化工程中において、適宜、疎水性部の修飾等を行うことで、上記粒子のコア部の表面が疎水性となるように構成しつつ、コア部の表面の一部又は全部を親水性モノマー等により、直接的又は間接的に被覆することが好ましい。
上記粒子の製造方法を粒子化工程も含めた多工程を有する方法とする場合には、粒子の保存安定性を高め、粒子による乳化能を十分なものとする観点から、(1)粒子化工程と、(2)修飾工程とを含む二工程の方法とすることが好ましい。また、上記粒子の製造方法を粒子化工程も含めた多工程を有する方法とする場合、その他の工程を一工程又は複数工程含む、三工程以上の方法としてもよいが、それぞれの工程の順序は問わず、各工程を、複数回重複させて実施してもよい。上記粒子の製造方法を、(1)粒子化工程と(2)修飾工程とを含む二工程以上の方法とする場合には、(1)粒子化工程において、疎水性部(コア部)を形成し、(2)修飾工程において、その疎水性部(コア部)表面の一部又は全部を親水性モノマー等によって、直接的又は間接的に被覆することが好ましい。
なお、より具体的な粒子の製造方法については、以下の実施例に詳細に開示される。
<水中油型乳化組成物の製造方法>
なお、本実施形態の水中油型乳化組成物の製造にあたっては、油相成分及び水相成分をそれぞれ混合溶解させた後、ホモミキサー等の撹拌混合装置を用いて、撹拌しながら乳化混合することで容易に調製することができる。より具体的な製造方法については、実施例の記載を参照されたい。
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、例示による説明のために記載されたものであり、本発明の内容は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<製造例1;PMMA-PVA分散体1の合成>
300mL邪魔板付きセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル(MMA)を42g加え、アルゴン置換した純水(商品名:Elix Essential UV[Merck Millipore社製]によって精製された水;以下、単に「Elix水」と言及することがある。また、Elix水の比抵抗は5MΩ・cm以上となる。)を166g加えた。密閉攪拌装置(商品名:UZ-SM1、中村科学器械工業社製)およびマントルヒーターにより450rpmで攪拌しながら80℃になるまで加温した。カチオン性ラジカル重合開始剤として、カウンターアニオンが塩化物イオンであるADIP(以下、ADIP-Clという)0.36gを2gのElix水に溶解し全量を加えた。6時間攪拌することで、PMMA分散体を得た。
300mL邪魔板付きセパラブルフラスコに、上記PMMA分散体を最終固形分質量が30gとなるように加え、さらに、ポリビニルアルコール(けん化度:86%から89%、重合度:500)を15g加え、全体質量が198gとなるようにElix水を加えた。その後、攪拌速度450rpmで攪拌しながら溶液を60℃まで昇温した。次いで、ADIP-Cl 0.20gを2gのElix水に溶解し全量を加えて、60℃、攪拌速度450rpmで3時間攪拌することで、PMMA-PVA分散体1を得た。
<実験例1;水中油型乳化組成物の調製>
表1Aに示す配合(数値は質量%)にて、水性成分として、PMMA-PVA分散体1、Elix水、1,3-ブチレングリコール(BG)を均一に混合し、水相組成物を得た。別途、表1Aに示す配合にて、疎水処理化微粒子酸化チタン分散体(製品名:MiyoSCREEN UT-01/D5、三好化成株式会社製)とシクロペンタシロキサン(製品名:KF-995、信越化学工業株式会社製)を均一に混合し、油相組成物を得た。その後に、水相組成物に油相組成物を加え、室温にてホモミキサーで4、500rpmで1分間攪拌した。攪拌終了1分後の性状外観観察により、相分離等は認められず、乳化されたことが確認された。
<比較実験例1及び2>
表1Bに示すように、PMMA-PVA分散体1に変えて、ポリビニルアルコール(製品名:ゴーセノールEG-05C、けん化度86.5%から89.0%、三菱ケミカル株式会社製)を0.5質量%又は1.0質量%とし、Elix水の添加量をそれぞれ19.5質量%又は19.0質量%とした点以外は、実験例1に準じ、それぞれ比較実験例1又は2の水中油型乳化組成物を調製した。
<実験例2及び3、並びに比較実験例3>
各成分の量を表1Cのとおりに変更した点以外は、実験例1に準じ、それぞれ実験例2及び3、並びに比較実験例3の水中油型乳化組成物を調製した。
<比較実験例4から6>
表1Dに示すように、PMMA-PVA分散体1に変えて、シリル化シリカ(AEROSIL VPNX200、日本アエロジル株式会社製)を1.0質量%とし、Elix水の添加量をそれぞれ19.0質量%とした点以外は、実験例1から3に準じ、それぞれ比較実験例4から6の水中油型乳化組成物を調整した。
<評価>
以上の実験例1から3、並びに比較実験例1から6において調製した水中油型乳化組成物について、初期粘度及び経時粘度、乳化性、乳化安定性、使用感、並びにSPFを以下の手法で評価した。
[初期粘度及び経時粘度]
得られた水中油型乳化組成物を透明なガラス軽量規格6K瓶に充填後25℃又は50℃に保存し、当日及び翌日の粘度(25℃のみ)、並びに1週間後及び2週後の粘度を、B型粘度計(4号ローター、12rpm、30秒、25℃)で測定した。表中の単位はmPasである。
[乳化性]
得られた水中油型乳化組成物の油剤と水の混和状態を下記の基準により目視評価した。
〇;良好に乳化している
△;表面に油性成分のにじみがある又は油滴が少し浮いている
×;完全分離または明らかな油滴がある
[乳化安定性]
得られた水中油型乳化組成物の経時での乳化安定性を確認するため、室温で2カ月間、50℃で1カ月間静置保管し、外観変化を以下の基準で判定した。なお、下記の評価基準の「分離」とは、静置後、乳化層中の油分が分離してしまっている状態をいう。「固化」とは、静置後、乳化層の一部または全部が固化し、流動性がない状態をいう。なお、乳化性の評価が×だったものは評価を行わなかった。
(評価基準)
〇:問題なし(分離、又は固化がない)
△:極めて軽微な分離又は、若干流動性が低下して固化の傾向が認められる
×:あきらかな分離又は、あきらかな固化のいずれかが発生
[使用感]
訓練された、5人の専門パネラーに、実験例及び比較実験例の水中油型乳化組成物を前腕内側部に0.5g塗布してもらい、塗布後の使用感を以下の基準に基づいて評価した。各パネラー間の合議にて、使用感の判定を行った。なお、乳化性の評価が×だったものは評価を行わなかった。
(評価基準)
〇;べたつかず、滑らかな感触である
△:ややべたつく
×;べたつく
[SPF]
得られた水中油型乳化組成物の紫外線遮蔽効果を確認するため、ISO 24443に準じ、SPF Analyzer UV-2000S(Labsphere社製)を用いてSPFの測定を行った。結果を表1Aから表1D及び図2に示す。なお、乳化性の評価が×だったものは評価を行わなかった。



表1Aから表1Dの記載、及び図2から明らかなように、実験例1から3において調製した水中油型乳化組成物については、乳化性、乳化安定性、官能評価共に良好なものとなり、かつSPFも35以上の良好な数値を示した。また、比較実験例1及び2は、実験例1と比較して、明らかにSPFが劣っており、かつSPFも35未満で所望する値が得られなかった。よって、実験例1から3において調製した水中油型乳化組成物は、乳化剤としての界面活性剤を実質的に用いることなく、乳化安定性と紫外線遮蔽効果に優れ、使用感にも優れることが実際に確認できた。
[耐水性]
以上の実験例1及び比較実験例2において調製した水中油型乳化組成物について、耐水性の評価を行った。耐水性は、水浴前のSPFをSPFiとし、SPFi測定後の試料を30分間に水浴中で静置させ、試料を乾燥後に測定した水浴後のSPFをSPFaとした場合、水浴の前後でのSPF値の残存率(SPFa/SPFi)を求め、t検定を用いて有意差評価を行った。有意差水準はp<0.01とした。その結果、表2及び図3で示すとおり、実験例1は比較実験例2に比べ、SPF値の残存率が高く、耐水性に優れていることが確認できた。なお、本発明は如何なる理論にも拘束されるものではないが、実験例1の水中油型乳化組成物において、良好な耐水性が得られた背景には、実施例1の水中油型乳化組成物が界面活性剤を使用せずに、固体粒子を使用していることによるものである可能性があり得る。

Claims (6)

  1. 下記の(a)及び(b)の成分を含む水中油型乳化組成物;
    (a)疎水性モノマー単位を含む、カチオン性基を有する疎水性部、及び少なくとも下記式(I)で表される親水性モノマー単位を含む親水性部を有する重合体を含む粒子、
    (b)疎水化処理微粒子金属酸化物。
  2. 前記水中油型乳化組成物中に占める、前記疎水化処理微粒子金属酸化物の含有量が、1質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
  3. 前記水中油型乳化組成物が、実質的に、乳化剤としての界面活性剤を含まない、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
  4. 前記カチオン性基が、カチオン性ラジカル重合開始剤に由来する、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
  5. 前記カチオン性ラジカル重合開始剤が、2,2’-[ジアゼン-1,2-ジイルビス(プロパン-2,2-ジイル)]ビス(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム)=ジトリフルオロメタンスルホネート(ADIP)、2,2’-[ジアゼン-1,2-ジイルビス(プロパン-2,2-ジイル)]ビス(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム)=ジクロライド(ADIP-Cl)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(V-50)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(VA-044)及び2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](VA-061)からなる群から選択される一種又は二種以上である、請求項4に記載の水中油型乳化組成物。
  6. 前記親水性部が、さらに、下記式(II)で表されるモノマー単位を含み、前記式(I)で表されるモノマー単位の数、及び下記式(II)で表されるモノマー単位の数の総量に対する、前記式(I)で表されるモノマー単位の数の割合(けん化度)が70%以上99%以下である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
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