JP2024035170A - 塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】接着性に優れたプライマー層6が得られうる、塗料組成物の提供。【解決手段】屋根2に塗料組成物が塗布され、この塗料組成物が乾燥することで、プライマー層6が得られる。この塗料組成物は、(1)その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体並びに(2)エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物を含む。好ましくは、100質量の重合体(1)に対する、部分反応生成物(2)の量は、1質量部以上150質量部以下である。好ましくは、混合物における、エポキシ化合物が有するエポキシ基の数(X)に対する、アミノシラン化合物の有するアミノ基及び/又はイミノ基の数(Y)の比(Y/X)は、0.2以上1.5以下である。【選択図】図2

Description

本明細書は、構造物等に塗布される塗料組成物を開示する。
住宅の屋根に、人造スレートが賞用されている。このスレート屋根が長期間風雨に曝されると、この屋根に劣化が生じる。劣化したスレート屋根からの雨漏りが、懸念される。雨漏りの防止の目的で、スレート屋根に塗料が塗布されている。しかし、劣化が激しいスレート屋根の場合、塗料の塗布によっても雨漏りが防止されないことがある。
特開2022-101896公報には、ポリマーセメント層と樹脂層とを有するシートによる屋根の補修方法が、開示されている。このシートが屋根に貼り付けられることで、屋根の雨漏りが抑制されうる。
特開2022-101896公報
シートが屋根に貼られるに先立ち、この屋根に塗料が塗布されることがある。この塗料から得られた塗膜は、プライマー層として機能しうる。このプライマー層は、シートを屋根に堅固に接着しうる。換言すれば、プライマー層には、優れた接着性が必要である。
スレート屋根以外の屋根の補修では、接着性に優れたプライマー層が必要である。屋根以外の構造物の補修又は補強でも、接着性に優れたプライマー層が必要である。
本出願人の意図するところは、接着性に優れた塗膜が得られうる、塗料組成物の提供にある。
本明細書が開示する塗料組成物は、
(1)その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体
並びに
(2)エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物
を含む。
この塗料組成物から、接着に寄与する塗膜が得られうる。
図1は、一実施形態に係る被覆構造が屋根と共に示された正面図である。 図2は、図1のII-II線に沿った拡大断面図である。 図3は、図1の被覆構造に含まれるシートの一部が示された拡大断面図である。 図4は、図3のシートに含まれる補強体の一部が示された拡大平面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
[被覆構造]
図1に、構造物である屋根2と、被覆構造4とが示されている。図2に示されるように、被覆構造4は、プライマー層6と、シート8とを有している。被覆構造4は、屋根2を被覆している。
[プライマー層]
プライマー層6は、屋根2に塗料組成物が塗工され、この塗料組成物が乾燥することで、形成されている。プライマー層6は、屋根2とシート8との間に介在する。プライマー層6は、シート8と屋根2との密着度を高める。プライマー層は、シート8を屋根2に堅固に接着する。図2において矢印TPは、プライマー層6の厚さを表す。屋根2へのシート8の接着力の観点から、厚さTPは50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上が特に好ましい。施工が容易であるとの観点から、厚さTPは500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、350μm以下が特に好ましい。
プライマー層6のための塗料組成物は、
(1)その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体
並びに
(2)エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物
を含む。主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体(1)は、いわゆるアクリル系重合体である。この塗料組成物から得られたプライマー層6は、屋根2へのシート8の初期接着性及び長期接着性に寄与しうる。初期接着性とは、シート8が屋根2に貼られた直後の接着性である。長期接着性とは、シート8が屋根2に貼られてから長期間径化時の接着性である。
[アクリル系重合体]
本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸のいずれか一方又は両方を意味する。この重合体は、単量体の重合反応によって得られる。この重合体は、複数の単位を含む。それぞれの単位は、単量体に由来する。本明細書では、この単位は、「単量体単位」と称される。主鎖が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体は、塗料組成物の接着性に寄与しうる。この重合体は特に、劣化した人造スレートの屋根2に対する接着性に、寄与しうる。この重合体の、主鎖と共に側鎖が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含んでもよい。塗料組成物が、2種以上のアクリル系重合体を含んでもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル及び(メタ)アクリル酸ビフェニルが例示される。2種以上の単量体の重合反応によってアクリル系重合体が得られてもよい。
アクリル系重合体(1)の主鎖が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位以外の単量体単位を含んでもよい。この単位が由来する単量体として、アクリル酸及びメタクリル酸のようなカルボキシ基を含有する単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-メチロールメタクリルアミドのようなアミド基を含有する単量体;グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を含有する単量体;ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート及びアミノエチルビニルエーテルのようなアミノ基を含有する単量体単位;ポリオキシエチレンアクリレート;並びにポリオキシエチレンメタクリレートが例示される。これらの単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体との共重合体は、塗料組成物の硬化性に寄与しうる。
アクリル系重合体(1)の主鎖が、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位を含んでもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、他の単量体との共重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。この比率が100質量%であってもよい。
アクリル系重合体(1)は、ビニル重合法によって得られうる。具体的には、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法等によって、アクリル系重合体(1)が得られうる。連鎖移動剤法では、特定の官能基を有する連鎖移動剤によって重合がなされ、末端に官能基を有する重合体が得られる。リビングラジカル重合法においては、重合生長末端が停止反応等を起こさずに生長することにより、ほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる。リビングラジカル重合法では、停止反応が起こりにくいため、分子量分布が狭い重合体が得られうる(Mw/Mnが1.1-1.5程度)。リビングラジカル重合法では、粘度が低い重合体が得られうる。リビングラジカル重合法では、特定の官能基を有する単量体が重合体の任意の位置に導入されうる。この重合法は、特開2003-313397公報に記載されている。溶液重合法及び塊重合法のいずれもが、採用されうる。
重合反応は、単量体、ラジカル開始剤、連鎖移動剤、溶剤等からなる混合液にて、50℃から150℃の温度下でなされうる。ラジカル開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル及びベンゾイルパーオキサイドが例示される。連鎖移動剤として、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン及びラウリルメルカプタンのようなメルカプタン類;並びに含ハロゲン化合物が例示される。溶剤として、エーテル類、炭化水素類及びエステル類が例示される。
アクリル系重合体(1)の重量平均分子量は、500以上100000以下が好ましい。このアクリル系重合体(1)のための重合反応は、容易である。この重合体は、取り扱い性及び他の化合物との相溶性に優れる。これらの観点から、重量平均分子量は1000以上50000以下がより好ましく、2000以上30000以下が特に好ましい。この分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算)にて測定される。
[部分反応生成物]
前述の通り塗料組成物は、エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物(2)を含む。この部分反応生成物(2)は、相溶化剤及び接着性付与剤としての役割を果たしうる。さらにこの部分反応生成物(2)は、接着強度の安定化にも寄与しうる。この部分反応生成物(2)を含む塗料組成物は、プライマー層6の接着性に寄与しうる。
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物として、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レソルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレソルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF及びビキシレノールのような多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのような脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p-オキシ安息香酸及びβ-オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸及び重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール又はアミノアルキルフェノールから誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;並びにアニリン、トルイジン、トリブロモアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン又は4,4’-ジアミノジフェニルスルホンから誘導されるグリシジルアミン型が例示される。エポキシ化合物としてさらに、エポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン及びトリグリシジルシアヌレートが、例示される。エポキシ化合物としてさらに、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル及びスチレンオキサイドのようなモノエポキシ化合物が例示される。エポキシ化合物が、分子中に2以上のエポキシ基を含む化合物の重合体であってもよい。部分反応生成物(2)が、2種以上のエポキシ化合物に由来してもよい。
脂肪族のエポキシ化合物が、好ましい。このエポキシ化合物として、前述の、多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型化合物が挙げられる。このエポキシ化合物は、低温での反応性に優れる。このエポキシ化合物は、プライマー層6の接着強度及び耐候性に寄与しうる。脂肪族エポキシ化合物は、1分子中に芳香環以外の脂肪環を少なくとも1つ含み、エポキシ基を少なくとも1つ含む。入手容易性の観点から、ソルビトール、グリセリン、ジグリセリン又はポリグリセリンを母骨格としたエポキシ化合物が好ましい。
[アミノシラン化合物]
好ましいアミノシラン化合物は、少なくとも1個のアミノ基及び/又はイミノ基と、少なくとも1個の加水分解性ケイ素含有基を有する。アミノシラン化合物として、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3,3-ジメチル-4-アミノブチルトリメトキシシラン、3,3-ジメチル-4-アミノブチルメチルジメトキシシラン、(N-シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、(N-フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン及び(N-フェニルアミノメチル)トリメチルオキシシランが例示される。
好ましい他のアミノシラン化合物として、下記式(I)で表される構造を有する化合物、及び下記数式(II)で表される構造を有する化合物が、例示される。
Figure 2024035170000002
Figure 2024035170000003
部分反応生成物(2)が、2種以上のアミノシラン化合物に由来してもよい。
[混合物]
部分反応生成物(2)のための混合物における、エポキシ化合物が有するエポキシ基の数(X)に対する、アミノシラン化合物の有するアミノ基及び/又はイミノ基の数(Y)の比(Y/X)は、0.2以上1.5以下が好ましい。この比(Y/X)は0.4以上がより好ましく、0.5以上が特に好ましい。この(Y/X)は1.3以下がより好ましく、1.2以下が特に好ましい。
部分反応生成物(2)のための混合物は、エポキシ化合物及びアミノシラン化合物以外の化合物を含みうる。好ましい化合物として、アルコキシシラン含有エポキシ化合物が例示される。アルコキシシラン含有エポキシ化合物は、エポキシ化合物及びアミノシラン化合物の反応生成物との相溶性に優れる。このアルコキシシラン含有エポキシ化合物は、塗料組成物において湿気硬化性の促進剤として機能しうる。このアルコキシシラン含有エポキシ化合物は、塗料組成物の硬化性に寄与しうる。アルコキシシラン含有エポキシ化合物を含む部分反応生成物(2)は、長期の保存に適する。さらに、この塗料組成物から得られるプライマー層6は、シート8が屋根2から剥がされたときの、屋根2に由来する粉塵の飛散を抑制しうる。換言すれば、このプライマー層6は、目止め性に優れる。
アルコキシシラン含有エポキシ化合物として、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが、例示される。
混合物における、エポキシ化合物、アミノシラン化合物及びアルコキシシラン含有エポキシ化合物の合計量に対する、アルコキシシラン含有エポキシ化合物の量の比率は、固形分換算で、10質量%以上40質量%以下が好ましい。この比率は、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。この比率は、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物は、既知の反応に供される。エポキシ化合物とアミノシラン化合物との反応の進行により、反応生成物が生じ、混合物のゲル化が生じうる。このゲル化が生じていない段階で反応が停止されることで、部分反応生成物(2)が得られうる。反応が停止させる方法として、エタノール等の溶媒による混合液の希釈が例示される。
部分反応生成物(2)におけるゲル分率は、15%以上85%以下が好ましい。ゲル分率が15%以上である部分反応生成物(2)から、目止め性に優れた塗料組成物が得られうる。この観点から、ゲル分率は30%以上がより好ましく、35%以上が特に好ましい。ゲル分率が85%以下である部分反応生成物(2)から、粘度が適正な塗料組成物が得られうる。この観点から、ゲル分率は70%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。
[塗料組成物]
前述の通り、塗料組成物は
(1)その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体
並びに
(2)エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物
を含む。100質量部のアクリル系重合体(1)に対する、部分反応生成物(2)の量は、1質量部以上150質量部以下が好ましい。この塗料組成物から、シート8の貼り付けの施工を容易とするプライマー層6が得られうる。この観点から、部分反応生成物(2)の量は30質量部以上がより好ましく、50質量部以上が特に好ましい。
塗料組成物は、有機溶剤を含有しうる。100質量部のアクリル系重合体(1)に対する、有機溶媒の量は、250質量部以上400質量部以下が好ましい。
塗料組成物が、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤は、プライマー層6の接着性に寄与しうる。シランカップリング剤は、部分反応生成物(2)の分子中の有機基との反応性を有する官能基を、少なくとも1つ含む。シランカップリング剤はさらに、加水分解性ケイ素基を少なくとも1つ含む。この官能基として、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基及びエポキシ基が例示される。シランカップリング剤が、2種以上の官能基を含んでもよい。塗料組成物の硬化性及びプライマー層6の接着性の観点から、メタクリル基、アクリル基及びエポキシ基が好ましい。取り扱い性の観点から好ましい加水分解性ケイ素基は、アルコキシシリル基である。反応性の観点から特に好ましい加水分解性ケイ素基は、メトキシシリル基及びエトキシシリル基である。
好ましいシランカップリング剤として、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン及びアクリロキシメチルトリエトキシシランのようなメタクリル基又はアクリル基を有するアルコキシシラン類;並びにγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及びγ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランのようなエポキシ基含有シラン化合物が例示される。
接着性の観点から、100質量部のアクリル系重合体(1)に対する、シランカップリング剤の量は、1質量部以上が好ましい。プライマー層6の物性の観点から、この量は100質量部以下が好ましく、50質量部以下が特に好ましい。
塗料組成物が、補強剤を含有してもよい。補強剤は、プライマー層6の強度に寄与しうる。補強剤としては、有機微粒子及び無機微粒子が挙げられる。耐熱性の観点から、無機微粒子が好ましい。無機微粒子の材質として、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、セリア及び炭酸カルシウムが例示される。
プライマー層6の強度の観点から、100質量部のアクリル系重合体(1)に対する、補強剤の量は、1質量部以上が好ましい。プライマー層6の接着性の観点から、この量は100質量部以下が好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
プライマー層6の透明性の観点から、補強剤の粒子径は1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。透明性の観点から、マトリクスの屈折率と実質的に等しい屈折率を有する補強剤が、好ましい。
塗料組成物が、さらに他のポリマーを含有してもよい。塗料組成物が、他の添加剤を含有してもよい。添加剤として、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤、レベリング剤、分散剤、脱水剤、粘着付与剤、帯電防止剤及び充填剤が、例示される。
この塗料組成物は、硬化性、ポットライフ及び作業性に優れる。この塗料組成物から、初期接着性、長期接着性、目止め性及び昆虫忌避性に優れたプライマー層6が得られうる。
[塗料組成物の製造方法]
塗料組成物は、アクリル系重合体(1)を含む溶液又は分散液と、部分反応生成物(2)を含む溶液又は分散液との混合液の撹拌によって得られうる。撹拌には、ボールミル等の撹拌装置が用いられうる。この撹拌により、溶媒中に固形分が均一に分散する。典型的な溶媒は、エタノールである。混合液に、エチルベンゼン等の溶媒と共に添加剤が添加されてもよい。
[シート]
図3に示される通り、シート8は、機能層10、中間層12、粘着層14及び補強体16を有している。補強体16は、中間層12に埋設されている。
[機能層]
図3から明らかなように、本実施形態では、機能層10は、シート8において最も上に位置している。換言すれば、シート8が構造物に貼られたとき、機能層10は、厚さ方向において、この構造物から最も離れて位置する。機能層10は、シート8に望まれる機能に、寄与する。この機能として、耐候性、耐摩耗性、耐薬品性、非透水性、非透湿性及び透湿性が例示される。典型的な耐候性は、耐熱性及び耐光性である。機能層10は、1又は2以上の機能に寄与しうる。
機能層10の好ましい材質は、ポリマー組成物である。この機能層10は、概して柔軟である。この機能層10を有するシート8は、屋根2の凹凸に追従しうる。ポリマー組成物は、基材ポリマーを含む。合成樹脂、合成ゴム及び天然ゴムが、基材ポリマーとして、組成物に含有されうる。好ましい基材ポリマーとして、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、柔軟エポキシ樹脂及びポリブタジエンが例示される。基材ポリマーが合成樹脂である機能層10は、「樹脂層」とも称される。
耐光性の観点から、機能層10の基材ポリマーに特に適した樹脂は、アクリルシリコーン樹脂である。アクリルシリコーン樹脂は、シロキサン結合を含む。アクリルシリコーン樹脂は、耐熱性及び耐寒性にも優れる。アクリルシリコーン樹脂を含む組成物の具体例として、大日精化社の商品名「クールライフSPブラック(CB1)P5-0」、藤倉化成社の商品名「ベルアース弾性黒」、東亞合成社の商品名「アロンブルコートT-1000」、並びに日本触媒社の商品名「アクリセットEMN325E」及び「ユーダブルEF008」が挙げられる。
機能層10のポリマー組成物は、必要に応じ、顔料、充填剤、補強材、防汚剤等の添加剤を含みうる。顔料を含む機能層10は、意匠性に優れる。有機顔料及び無機顔料を、ポリマー組成物は含みうる。充填剤として、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物粒子が例示される。補強材として、セルロールナノファイバーが例示される。それぞれの添加剤の含有率は、機能に応じ調整される。
図3において矢印T1は、機能層10の厚さを表す。機能の観点から、厚さT1は10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上が特に好ましい。シート8の追従性、生産性及び軽量の観点から、厚さT1は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、150μm以下が特に好ましい。厚さT1の分布が±50μmの範囲内であることが、好ましい。シート8が、2以上の機能層10を有してもよい。
[中間層]
中間層12は、シート8の剛性等に寄与する。中間層12の好ましい材質は、ポリマーとフィラーとの複合材料である。複合材料のポリマーとして、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びスチレン-ブタジエン共重合体が例示される。複合材料のフィラーとして、セメント、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム及びカーボンブラックが例示される。好ましい複合材料は、ポリマーセメントである。このポリマーセメントは、ポリマーとセメントとを含む。セメントは、ポリマーのマトリックスに分散している。典型的なポリマーは、アクリル樹脂である。セメントとして、ポルトランドセメント及びアルミナセメント並びにこれらの混合物が例示される。ポルトランドセメントが、好ましい。材質がポリマーセメントである中間層12は、「ポリマーセメント硬化層」とも称される。
中間層12がポリマーとセメントとを含む場合、中間層12の固形分に占めるポリマーの質量比率は、10%以上40%以下が好ましい。この比が10%以上である中間層12は、他の層(機能層10又は粘着層148)との密着性に優れる。この観点から、この比は15%以上がより好ましく、20%以上が特に好ましい。この比率が40%以下である中間層12は、十分な量のセメントを含みうる。この観点から、この比は35%以下がより好ましく、30%以下が特に好ましい。
中間層12がポリマーとセメントとを含む場合、中間層12の固形分に占めるセメントの質量比率は、20%以上70%以下が好ましい。この比が20%以上である中間層12を有するシート8では、大きな引張強さ及び小さな伸びが達成されうる。このシート8は、取り扱い性に優れる。この観点から、この比は30%以上がより好ましく、35%以上が特に好ましい。この比率が70%以下である中間層12は、十分な量のポリマーを含みうる。この観点から、この比は60%以下がより好ましく、55%以下が特に好ましい。
ポリマーを含む組成物と、セメントを含む組成物とから得られた混合液から、中間層12が形成されうる。ポリマーを含む好ましい組成物は、アクリル系エマルションである。このアクリル系エマルションは、モノマーが乳化重合されて得られうる。乳化重合は、乳化剤によってなされうる。重合は、界面活性剤を含む水の中でなされうる。典型的なモノマーは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。アクリル系エマルションにおけるモノマー成分の好ましい含有量は、20質量%から100質量%である。
ポリマーを含む組成物の具体例として、菊水化学工業社の商品名「スプリングコートハケ混和液」及び東亞合成社の商品名「アロンブルコートA450ベース」が挙げられる。セメントを含む組成物の具体例として、菊水化学工業社の商品名「スプリングコートハケ粉体」及び東亞合成社の商品名「アロンブルコートA450セッター」が挙げられる。
ポリマーとセメントとを含む中間層12は、水蒸気透過性に優れる。この中間層12を有するシート8で構造物が覆われても、この構造物中の金属は腐食しにくい。中間層12の水蒸気透過率は、20g/m・day以上60g/m・day以下が好ましい。水蒸気透過率は、「JIS Z0208」の規定に準拠して測定される。
図3において矢印T2は、中間層12の厚さを表す。本実施形態では、前述の通り、中間層12には補強体16が埋設されている。従って、補強体16を含め、厚さT2が測定される。シート8の取り扱い性の観点から、厚さT2は100μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましく、500μm以上が特に好ましい。シート8の追従性、生産性及び軽量の観点から、厚さT2は1500μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、700μm以下が特に好ましい。厚さT2の分布が±100μmの範囲内であることが、好ましい。
中間層12の材質が、樹脂組成物又はゴム組成物であってもよい。シート8が、2以上の中間層12を有してもよい。シート8が、互いの材質が異なる2つの中間層12を有してもよい。シート8が、中間層12を含まない層構造を有してもよい。
中間層12の、機能層10との密着の観点から、中間層12の基材ポリマーが、機能層10の基材ポリマーと同種であることが好ましい。
[粘着層]
粘着層14(又は接着層)は、プライマー層6と当接する。粘着層14の粘着力により、シート8が構造物に貼り付けられうる。
粘着層14の好ましい材質は、ポリマーを基材とする粘着剤組成物である。この粘着剤組成物に適したポリマーとして、アクリル樹脂、シリコーン、ポリウレタン、ポリエステル、天然ゴム及び合成ゴムが、例示される。基材として特に好ましいポリマーは、アクリル樹脂である。粘着剤組成物の具体例として、トーヨーケム社の商品名「オリバインBPS6574」、「オリバインBPS6554」及び「オリバインBPS5565K」が挙げられる。粘着層14の、中間層12との密着の観点から、粘着層14の基材ポリマーが、中間層12の基材ポリマーと同種であることが好ましい。粘着層14の、プライマー層6との密着の観点から、粘着層14の基材ポリマーが、プライマー層6の基材ポリマーと同種であることが好ましい。
粘着剤組成物が、硬化剤を含んでもよい。好ましい硬化剤として、イソシアネート系硬化剤、アミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤が例示される。基材がアクリル樹脂である場合の好ましい硬化剤は、イソシアネート硬化剤である。アクリル樹脂100質量部に対するイソシアネート硬化剤の比率は1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上が特に好ましい。この比率は10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下が特に好ましい。
粘着剤組成物は、粘着付与剤を含みうる。粘着付与剤として、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤及びフェノール樹脂系粘着付与剤が例示される。基材ポリマー100質量部に対する粘着付与剤の比率は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。この比率は15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、7質量部以下が特に好ましい。粘着付与剤の具体例として、荒川化学の商品名「エステルガム H」、「エステルガム AA-V」及び「エステルガム 105」が例示される。
図3において矢印T3は、粘着層14の厚さを表す。粘着性の観点から、厚さT3は20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上が特に好ましい。シート8の生産性、軽量及び取り扱い性の観点から、厚さT3は500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下が特に好ましい。粘着層14の量は、20g/m以上250g/m以下が好ましい。シート8が、2以上の粘着層14を有してもよい。
[補強体(Reinforcement)]
補強体16は、シート8に適切なヤング率を付与しうる。補強体16は、シート8の大きな引張強さに寄与しうる。補強体16はさらに、シート8の小さな伸びに寄与しうる。補強体16を含むシート8は、取り扱い性に優れる。前述の通り補強体16は、中間層12に埋設されている。補強体16が、機能層10に埋設されてもよい。補強体16が、粘着層14に埋設されてもよい。補強体16が、機能層10と中間層12との間に位置してもよい。補強体16が、中間層12と粘着層14との間に位置してもよい。本明細書において補強体16とは、この補強体16を有さない点を除いてシート8の層構造と同じ層構造を有する仮想のシートに比べ、大きな引張強さをシート8に付与しうる物体を、意味する。
この補強体16の引張強さは、5.0MPa以上が好ましい。補強体16の引張強さが5.0MPa以上であるシート8は、張力がかかっても破れにくい。このシート8は、取り扱い性に優れる。この観点から、引張強さは5.5MPa以上がより好ましく、6.0MPa以上が特に好ましい。シート8の追従性の観点から、補強体16の引張強さは15.0MPa以下が好ましく、10.0MPa以下がより好ましく、7.0MPa以下が特に好ましい。
この補強体16の破断時の伸びは、15.0%以下が好ましい。補強体16の伸びが15.0%以下であるシート8は、張力がかかっても変形しにくい。このシート8は、取り扱い性に優れる。この観点から、補強体16の伸びは13.0%以下がより好ましく、11.0%以下が特に好ましい。シート8の追従性の観点から、補強体16の伸びは5.0%以上が好ましく、7.0%以上がより好ましく、8.5%以上が特に好ましい。
引張強さ及び伸びは、「JIS L1913:2010」に規定された一般不織布試験法に準拠して測定される。測定のための試験片は、補強体16又はその原反から切り出される。その長さ方向が補強体16又はその原反の長さ方向と一致する5個の試験片と、その長さ方向が補強体16又はその原反の幅方向と一致する5個の試験片とが、測定に供される。10の測定値が平均されて、引張強さ及び伸びが算出される。
平面視における、シート8の面積に対する補強体16の輪郭の面積の比率は、60%以上が好ましい。この比率が60%以上である補強体16は、シート8の取り扱い性に寄与しうる。この観点から、この比率は70%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。この比率が、100%であってもよい。段差へのシート8の追従性の観点から、この比率は95%以下が好ましい。
[ファブリック]
図4に、補強体16が示されている。この補強体16では、複数の縦糸18aと複数の横糸18bとが、織られている。換言すれば、補強体16は、織物(クロス)である。本実施形態では、この織物は、平織り組織を有する。織物は、ファブリックの一種である。ファブリックである補強体16には、中間層12の組成物が含浸しうる。この含浸は、シート8の大きな引張強さに寄与しうる。この含浸はさらに、シート8の小さな伸びに寄与しうる。補強体16が、織物以外のファブリックであってもよい。織物以外のファブリックとして、編み物(ニット)及び交点溶着メッシュが例示される。
補強体16の材質として、合成樹脂組成物及び金属が例示される。合成樹脂組成物の好ましい基材樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ビニロン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリフッ化ビニリデンが例示される。好ましい金属として、アルミニウム合金、炭素鋼及び合金鋼が例示される。引張強さが大きい縦糸18a及び横糸18bが採用されることにより、シート8の、十分に大きい引張強さが達成されうる。伸びの小さい縦糸18a及び横糸18bが採用されることにより、シート8の、十分に小さい伸びが達成されうる。
図4から明らかなように、この補強体16は、多くの目20を有している。本実施形態では、それぞれの目20の平面形状は、概して正方形である。中間層12は、この目20を貫通している。この貫通は、シート8の大きな引張強さに寄与しうる。この貫通はさらに、シート8の小さな伸びに寄与しうる。
図4において矢印P1は、糸18のピッチを表す。ピッチP1は、1.2mm以上50mm以下が好ましい。ピッチP1が1.2mm以上である補強体16では、中間層12の組成物が補強体16に十分に含浸する。この補強体16は、シート8の、大きな引張強さ及び小さな伸びに寄与しうる。この観点から、ピッチP1は1.5mm以上がより好ましく、1.7mm以上が特に好ましい。ピッチP1が50mm以下である補強体16では、この補強体16が、シート8の、大きな引張強さ及び小さな伸びに寄与しうる。この観点から、ピッチP1は40mm以下がより好ましく、35mm以下が特に好ましい。
図4において矢印D1は、糸18の太さを表す。太さD1が大きい糸18により、シート8の、大きな引張強さ及び小さな伸びが、達成されうる。この観点から、太さD1は0.05mm以上が好ましく、0.10mm以上がより好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。太さは、1.0mm以下が好ましい。
ファブリック以外の補強体16を、シート8が含んでもよい。ファブリック以外の補強体16として、不織布、長繊維、樹脂フィルム及び金属箔が例示される。組成物に分散した多数の短繊維が、補強体16であってもよい。シート8が、補強体16を含まない層構造を有してもよい。
[他の層]
シート8が、機能層10の上に位置する他の層を有してもよい。典型的な他の層は、クリアーペイント層である。シート8が、機能層10と中間層12との間に位置する層を、有してもよい。シート8が、中間層12と粘着層14との間に位置する層を、有してもよい。
[総厚さ]
図3において矢印TSは、シート8の総厚さを表す。総厚さTSは、200μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましく、500μm以上が特に好ましい。この総厚さTSは、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。総厚さTSの分布が±100μmの範囲内であることが、好ましい。
[シートの特性]
シート8の水蒸気透過率は、10g/m・day以上が好ましい。このシート8が屋根2に貼り付けられた後、屋根2に含まれる水分や、屋根2とシート8との間に存在する水分が、シート8を通じて排出されうる。このシート8は、屋根2の中の金属の腐食を抑制しうる。このシート8は、水分を含む構造物(例えば乾燥が不十分なコンクリートを有する構造物)にも、適している。このシート8は、雨天時の施工にも適している。これらの観点から、水蒸気透過率は20g/m・day以上がより好ましく、25g/m・day以上が特に好ましい。水蒸気透過率は、50g/m・day以下が好ましい。水蒸気透過率は、「JIS Z0208」の規定に準拠して測定される。
このシート8の、180°ピール試験における剥離強さは、1.5N/25mm以上が好ましい。このシート8は、強風下でも、屋根2から剥がれにくい。この観点から、この剥離強さは5.0N/25mm以上がより好ましく、8.0N/25mm以上が特に好ましい。
剥離強さは、「JIS Z 0237:2022」の規定に準拠した180°ピール試験によって測定される。試験片の詳細は、以下の通りである。
試験片の作成:「JIS Z 0237:2022」の項目「10.1」の規定に準拠
PETフィルム:25mm×200mm、三菱ケミカル社の「T601E」、厚さ:50μm)
両面粘着テープ:25mm×100mm、日東電工社の「No.5015」
シート:25mm×100mmに切り出し
下地:「JIS Z 0237:2022」の項目「10.2.2」に規定の鋼板(SUS30)、表面仕上げ:BA(BASUS板)、75mm×150mm
剥離強さの測定のための試験片は、以下の手順によって作成される。
(1)BASUS板の表面が、MEKつきベンコット(旭化成社製M-3II)にて洗浄される。
(2)上記シートの表側表面に、両面粘着テープの接着面が、テープ圧着ロール(質量:2kg)にて貼り付けられる。
(3)上記両面粘着テープの他の接着面に、上記PETフィルムが、短辺同士が揃うように、テープ圧着ロール(質量:2kg)にて貼り付けられる。
(4)上記シートの粘着層が、BASUS板に、テープ圧着ロール(質量:2kg)にて貼り付けられる。
この手順で得られた試験片が、常温常湿(23±2℃、50±10%RH)の環境下に、24時間保存される。
試験は、「JIS Z 0237:2022」の項目「11.5」の規定に準拠してなされる。測定条件は、以下の通りである。
ロードセル:1kN
温度:23±2℃
相対湿度:50±5%RH
速度:300mm/min
剥離長さ:100mm
測定開始後の長さが30mmに達するまでの測定値は、無視される。その後の30mmの剥離における測定値が、平均される。試験に適した装置として、島津製作所社の商品名「オートグラフAGX-V 10kN」が例示される。
[シートの製造方法]
以下、このシート8の製造方法の一例が、説明される。この製造方法では、機能層10のポリマー組成物が溶媒と混合され、第一塗料が得られる。この第一塗料がベースフィルムの上に塗工され、第一塗膜が得られる。この第一塗膜が加熱され、第一塗料から溶媒が揮発する。この加熱よって基材ポリマーが硬化し、機能層10が得られる。表面にラフネス模様を有するベースフィルムに第一塗料が塗工されることにより、ラフネス模様を有する機能層10が得られうる。機能層10のラフネス模様は、ベースフィルムのラフネス模様の形状が反転した形状を有する。
次ぎに、中間層12の複合材料が溶媒と混合され、第二塗料が得られる。この第二塗料が機能層10の上に塗工され、第二塗膜が得られる。この第二塗膜に、補強体16が押し当てられる。この第二塗膜が加熱され、第二塗料から溶媒が揮発する。この加熱よってポリマーが硬化し、補強体16を含む中間層12が得られる。
次ぎに、粘着層14の粘着剤組成物が溶媒と混合され、第三塗料が得られる。この第三塗料が離型フィルムの上に塗工され、第三塗膜が得られる。この第三塗膜が加熱され、第三塗料から溶媒が揮発して、粘着層14が得られる。
この粘着層14が、中間層12と重ねられる。さらに、機能層10からベースフィルムが剥離され、粘着層14から離型フィルムが剥離されて、構造物用シート8が得られる。ベースフィルム又は離型フィルムが、構造物用シート8に残存してもよい。
[屋根の補修又は補強]
前述の被覆構造4による屋根2の補修では、まず屋根2の表面から付着物が除去された後、この表面に塗料組成物が塗られる。この塗料組成物が乾燥することで、プライマー層6が得られる。次に、シート8を、このシート8の粘着層14の粘着力により、プライマー層6に貼り付ける。これらの工程を経て、被覆構造4が完成する。補修の必要のない屋根2に被覆構造4が形成されることで、屋根2が補強されてもよい。
このシート8は追従性に優れるので、前述の通り、段差が存在する屋根2にも適用されうる。複数のシート8が継ぎ貼りされることで、広い面積にて、屋根2の表面がシート8で覆われうる。シート8が粘着層14を有するので、屋根2への粘着剤(又は接着剤)の塗布は、必須ではない。この粘着層14は粘着性に優れるので、屋根2の表面の材質が複合的である場合でも、広い面積にて、屋根2の表面がシート8で覆われうる。例えば、表面が金属及び人造スレートの両方を含む屋根2であっても、広い面積にて、屋根2の表面がシート8で覆われうる。
屋根2の表面の全体が、シート8で覆われてもよい。本明細書において屋根2の表面とは、鉛直方向の上から屋根2が見られたとき、視認されうる面を意味する。屋根2の表面の全体が単一種類のシート8で覆われる補修は、従来の工法には見られない。
このシート8は、鋼板、銅板、トタン板等に比べ、軽量である。従って、広い面積にて屋根2の表面がシート8で覆われても、建築物の耐震性への悪影響は、小さい。耐震性の観点から、シート8の密度は4.0g/cm以下が好ましく、3.0g/cm以下がより好ましく、2.5g/cm以下が特に好ましい。この密度は、屋根2の補修に賞用されているアルミニウム-亜鉛合金メッキ鋼板(商品名「ガルバリウム鋼板」)の密度に比べ、はるかに小さい。
[被覆構造の接着仕事量]
プライマー層6と粘着層14との接着仕事量W2は、屋根2等の構造物とプライマー層6との接着仕事量W1よりも、小さい。この被覆構造4では、シート8がプライマー層6に貼られた後、このシート8が屋根2から剥がされるとき、プライマー層6と粘着層14との界面での剥離が生じうる。換言すれば、シート8が剥がされるとき、プライマー層6と粘着層14との界面での剥離は、抑制される。この被覆構造4では、シート8が剥がされるときの、屋根2の損傷が抑制される。さらにこの被覆構造4では、シート8が剥がされるときの、屋根2に由来する粉塵の飛散が抑制される。これらの観点から、接着仕事量W1と接着仕事量W2との比(W1/W2)は、1.20以上が好ましく、1.23以上がより好ましく、1.25以上が特に好ましい。プライマー層6が、前述された塗料組成物から得られることで、適切な比(W1/W2)が達成されうる。
接着仕事量は、表面自由エネルギーと相関する。第一固体及び第二固体の間の接着仕事量Wは、下記数式によって算出される。
W=2(γSV1 γSV2 1/2+2(γSV1 γSV2 1/2
γSV1 :第一固体の表面自由エネルギーの分散成分
γSV2 :第二固体の表面自由エネルギーの分散成分
γSV1 :第一固体の表面自由エネルギーの水素結合成分
γSV2 :第二固体の表面自由エネルギーの水素結合成分
本明細書では、表面自由エネルギーの測定には、水の液滴及びヨウ化メチレンの液滴が用いられる。水の表面自由エネルギーγL1V1は、72.8mJ/mである。この表面自由エネルギーγLV1は、以下の数式によって算出される。
γLV1= γLV1 + γLV1
γLV1 :表面自由エネルギーの分散成分
γLV1 :表面自由エネルギーの水素結合成分
ヨウ化メチレンの表面自由エネルギーγLV2は、50.8mJ/mである。この表面自由エネルギーγLV2は、以下の数式によって算出される。
γLV2= γLV2 + γLV2
γLV2 :表面自由エネルギーの分散成分
γLV2 :表面自由エネルギーの水素結合成分
水の固体との接触角がθ1とされ、ヨウ化メチレンの固体との接触角がθ2とされたとき、下記の数式が成立する。
(γSV γLV1 1/2+(γSV γLV1 1/2=(γL1(1+cosθ1))/2
(γSV γLV2 1/2+(γSV γLV2 1/2=(γL2(1+cosθ2))/2
固体の接触角θ1及びθ2が上記式に代入されることで、この固体のγSV 及びγSV が算出されうる。接触角の測定のための試料は、厚さが188μmであり材質がPETであるフィルム(東洋紡社の商品名「コスモシャインA4300」)の上に、塗料組成物が塗工されて得られる。塗工には、アプリケータが用いられる。塗工量は、400g/mである。この塗料組成物が、100℃の温度下で5分間保持される。この保持により、塗料組成物が乾燥し、試料が得られる。
本明細書では、接触角(θ1又はθ2)は、23℃の環境下で測定される。2μLの液滴(水又はヨウ化メチレン)が固体の上に滴下される。この固体と液体とのなす角度が、測定される。測定に適した装置として、協和界面科学社のポータブル接触角計「PCA-11」が例示される。
[被覆構造の剥離強さ]
粘着層14の、プライマー層6との間の180°ピール力は、1.5N/25mm以上が好ましい。このピール力が1.5N/25mm以上である粘着層14を含むシート8は、屋根2に堅固に接合されうる。この観点から、このピール力は7N/25mm以上がより好ましく、11N/25mm以上が特に好ましい。このピール力は、前述された「JIS Z 0237(2022)」の規定に準拠して測定される。但し、BASUS板に代えて、BASUS板及びプライマー層6からなる下地が用いられる。
[被覆構造の他の用途]
このプライマー層6及びシート8は、屋根2以外の構造物の補修又は補強に寄与しうる。屋根2以外の構造物として、住宅の壁、柱、軒、塀、門、扉、パラペット、笠木等が挙げられる。このプライマー層6及びシート8が、商用ビルディング、工場、倉庫、橋梁、下水施設、鉄道施設、電柱、トンネル等に用いられてもよい。
[再補修又は再補強]
このシート8又は他のシートにより構造物(屋根2等)が補修又は補強された後、経年変化により、シートや構造物が破損又は劣化することがある。この破損箇所又は劣化箇所のシートに前述の塗料組成物が塗布されることで、プライマー層6が形成されうる。このプライマー層6に新シート8が貼り付けられることで、構造物の再補修又は再補強がなされうる。旧シートに新シート8が重ね貼りされることで、極めて長い期間にわたり、構造物の価値が保全され、かつ維持されうる。この重ね貼りは、プライマー層6の接着力によって、達成されうる。この再補修及び再補強では、旧シートが廃棄される必要がない。この再補修及び再補強では、廃棄物の発生が抑制されうる。このプライマー層6は、サーキュラーエコノミーの趣旨に沿う。新シート8の密度が小さいので、この新シート8が旧シートに積層されても、構造物の耐震性への悪影響は、小さい。
以下、実施例に係るシートの効果が明らかにされる。この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
[実験1 塗料組成物]
[実施例1]
エポキシ化合物としての19.9質量部のトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社の商品名「デナコールEX-321L」)、アミノシラン化合物としての53.9質量部の3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社)、及びアルコキシシラン含有エポキシ化合物としての26.2質量部の3-グリトキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社)を、パイレックスガラス製のセパラブルフラスコに投入した。これらの化合物を、60℃であって常圧である窒素気流下で、2.5時間混合し、反応を進行させた。100質量部のエタノール100を添加して反応を停止させ、ゲル分率が50%である部分反応生成物を得た。
100質量部の主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体(三菱ケミカル社の商品名「ダイヤナールBR105」、重量平均分子量45000)を、100質量部のエタノールに溶解させて、アクリル系樹脂の溶液を得た。25質量部の部分反応生成物と、100質量部のアクリル系樹脂の溶液(固形分換算で100質量部)とを、ボールミルにて混練し、塗料組成物を得た。
[実施例2]
100質量部のアクリル系樹脂の溶液と、10質量部の部分反応生成物とを混練した他は実施例1と同様にして、塗料組成物を得た。
[実施例3]
100質量部のアクリル系樹脂の溶液と、90質量部の部分反応生成物とを混練した他は実施例1と同様にして、塗料組成物を得た。
[実施例4]
窒素気流下での反応時間を1.0時間とした他は実施例1と同様にして、塗料組成物を得た。この反応により、ゲル分率が35%である部分反応生成物が得られた。
[実施例5]
窒素気流下での反応時間を4.0時間とした他は実施例1と同様にして、塗料組成物を得た。この反応により、ゲル分率が60%である部分反応生成物が得られた。
[比較例1]
100質量部の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体(前述の商品名「ダイヤナールBR105」)を、100質量部のエタノールに溶解させて、塗料組成物を得た。
[比較例2]
66.7質量部のエポキシ樹脂(コニシ社の商品名「E2300主剤」)、及び33.3質量部のポリアミドアミン変性脂肪族ポリアミン(コニシ社の商品名「E2300硬化剤」)を混合し、塗料組成物を得た。
[比較例3]
19.9質量部のトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(前述の商品名「デナコールEX-321L」)、53.9質量部の3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社)、及び26.2質量部の3-グリトキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社)を、容器に投入した。これらの化合物を、23℃の温度下で30分間撹拌し、混合物を得た。この混合物のゲル分率は、0%であった。この混合物25質量部と、実施例1で用いたアクリル系樹脂の溶液100質量部とを、ボールミルにて混練し、塗料組成物を得た。
[評価用試験片]
人造スレート(ケイミュー社の商品名「コロニアルグラッサ」)に、ウエザーメーターにて、キセノン光を照射した。照射の条件は、以下の通りであった。
ウエザーメーター:スーパーキセノンウエザーメーター(スガ試験機株式会社の「SX-75」)
ブラックパネル温度:63℃
湿度:55%
放射照度:180W/m@300~400nm
照射時間:5000hr
この人造スレートに、塗料組成物を塗布した。塗布量は、200g/mであった。この塗料組成物を、指触乾燥でタック性がなくなるまで、23℃の温度下にて乾燥し、厚さが80μmであるプライマー層を得た。
[シートの製作]
材質がPPラミネート紙であり、厚さが130μmである離型紙に、アクリルシリコーン系樹脂を含む塗料を塗工した。この塗料は、60質量部のアクリルシリコーン樹脂と、25質量部の二酸化チタンと、10質量部の酸化第二鉄と、5質量部のカーボンブラックとを含有するエマルジョン組成物であった。この塗料を乾燥させて、厚さが100μmである機能層を得た。
この機能層に、他の塗料を塗工した。この塗料は、45質量部のセメント混合物を含む水系のアクリルエマルジョンであった。セメント混合物は、ポルトランドセメント70±5質量部、二酸化ケイ素10±5質量部、酸化アルミニウム2±1質量部、及び酸化チタン1-2質量部を含んでいた。アクリルエマルジョンは、乳化剤にてアクリル酸エステルモノマーが乳化重合されたアクリル酸系重合物53±2質量部、及び水43±2質量部を含んでいた。この塗料を乾燥させ、中間層(ポリマーセメント硬化層)を得た。この中間層では、ポルトランドセメントがアクリル樹脂中に分散していた。ポルトランドセメントの含有率は、50質量%であった。
この中間層に、番手が520メッシュである寒冷紗(ユニチカトレーディング社の商品名「V520」、厚さ:220μm、材質:ビニロン、目付:32g/m)を積層した。中間層と寒冷紗との合計厚さは、300μmであった。
100質量部のアクリル系粘着剤(前述の商品名「オリバイン6574」)と、6質量部のイソシアネート系硬化剤(トーヨーケム社の商品名「BHS8515」)とを混合し、粘着剤用混合液を調製した。この粘着剤用混合液を、寒冷紗の表面に塗布した。この混合液を乾燥させて、厚さが200μmである粘着層を形成し、合計厚さが600μmであるシートを得た。
[初期接着性]
質量が2kgである圧着ロールで、プライマー層にシートを貼りつけた。このシートの機能層の表面に、両面粘着テープ(日東電工社の商品名「No.5015」)を貼りつけた。さらに、この粘着テープの表面に、厚さが100μmであり材質がPETであるフィルムを貼りつけて、積層体を得た。24時間後に、この積層体を、180°ピール試験に供した。試験条件は、以下の通りである。
試験片の幅:25mm
温度:23℃
湿度:50%
試験器:オートグラフ(島津製作所の商品名「AGX-V 10kN」)
剥離速度:300mm/min
この結果が、下記の表1及び2に示されている。
[長期接着性]
初期接着性の評価に使用した試験片と同じ方法で得られた試験片に、ウエザーメーターにて、キセノン光を照射した。照射の条件は、以下の通りである。
ウエザーメーター:スーパーキセノンウエザーメーター(スガ試験機株式会社の「SX-75」)
ブラックパネル温度:63℃
湿度:55%
放射照度:180W/m@300~400nm
照射時間:5000hr
この試験片を、180°ピール試験に供した。試験条件は、初期接着性のための180°ピール試験の条件と、同じであった。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
[目止め性]
プライマー層にシートを貼りつけた。30分後に、シートを下地から剥離させた。剥離の状態を目視で観察し、下記の基準に従って格付けした。
A:シートとプライマー層との界面での剥離である(凝集破壊)。
B:プライマー層と人造スレートとの界面での剥離である(界面破壊)。
この結果が、下記の表1及び2に示されている。
[作業性]
前述の、プライマー層の形成において、塗料組成物が乾燥するまでの時間を測定した。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
[ポットライフ]
プライマー層の塗料組成物を、23℃の温度下にて5時間保持した。1時間ごとにゲル化の有無を確認した。ゲル化が生じるまでの時間が、ポットライフである。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
[昆虫忌避性]
前述のプライマー層で覆われた人造スレートを、屋外にて2時間保持した。プライマー層の上に集まる昆虫(ミツバチ等)の数をカウントし、下記の基準に従って格付けした。
A:昆虫の数が9以下
B:昆虫の数が10以上
この結果が、下記の表1及び2に示されている。
Figure 2024035170000004
Figure 2024035170000005
表1及び2から明らかな通り、各実施例の塗料組成物は、諸性能に優れる。この評価結果から、この塗料組成物の優位性は明らかである。
[実験2 被覆構造]
[実施例6]
アルミニウム-亜鉛合金メッキ鋼板(久宝金属製作所社の平板ガルバリウム鋼板)を、準備した。この鋼板のメッキ層は、55.0質量%のAl、43.4%のZn、及び6.0%のSiを含有していた。この鋼板の、接触角θ1は77.5°であり、接触角θ2は45.4°であり、γSV は33.1mJ/mであり、γSV は6.0mJ/mであり、表面自由エネルギーγは39.1mJ/mであった。この鋼板(被着体)に、実施例1の塗料組成物を塗工した。塗工量は、400g/mであった。この塗料組成物を、100℃の温度下で5分間保持し、乾燥させて、プライマー層を得た。一方、図1-3に示されるシートを準備した。このシートは、粘着層を有していた。この粘着層は、粘着剤組成物(前述の「オリバインBPS5565K」)から得られていた。この粘着層の、接触角θ1は108.6°であり、接触角θ2は60.5°であり、γSV は29.5mJ/mであり、γSV は0mJ/mであり、表面自由エネルギーγは29.5mJ/mであった。
[実施例7及び8並びに比較例4-6]
プライマー層のための組成物を下記の表3及び4に示される通りとした他は実施例6と同様にして、被覆構造を得た。組成物の詳細は、以下の通りである。
比較例4:アクリルシリコーン樹脂を基材とする塗料組成物(藤倉化成社の商品名「ベルアース 弾性黒」)
比較例5:アクリルシリコーン樹脂を基材とする塗料組成物(前述の「ベルアース 弾性黒」)と、アクリルシリコーン樹脂を基材とする他の塗料組成物(大日精化工業社の商品名「CL-CB1ブラック(P5))との、混合物(質量混合比:50/50)
実施例7:水系水酸化アルミニウム分散体(トクシキ社の商品名「9216AO」)と、エチレン-酢酸ビニル共重合体(住化ケムテックス社の商品名「スミカフレックスS-400HQ)との、混合物(質量混合比:50/50)
実施例8:水系水酸化アルミニウム分散体(前述の「9216AO」)と、実施例1の塗料組成物との、混合物(質量混合比:50/50)
比較例6:シリコーン樹脂を基材とする塗料組成物(エスケー化研社の商品名「エスケープレアムシリコン」)
[剥離試験]
被覆構造を、剥離試験に供した。剥離箇所を目視で観察し、剥離界面を判定した。この結果が、下記の表3及び4に示されている。
Figure 2024035170000006
Figure 2024035170000007
表3及び4から明らかな通り、各実施例の被覆構造では、プライマー層と粘着層との界面で、剥離が生じている。この評価結果から、この被覆構造の優位性は明らかである。
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
[項目1]
(1)その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体
並びに
(2)エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物
を備えた、塗料組成物。
[項目2]
上記部分反応生成物(2)において、上記エポキシ化合物と上記アミノシラン化合物との反応によるゲル化が生じていない、項目1に記載の塗料組成物。
[項目3]
100質量の上記重合体(1)に対する、上記部分反応生成物(2)の量が、1質量部以上150質量部以下である、項目1又は2に記載の塗料組成物。
[項目4]
上記混合物における、エポキシ化合物が有するエポキシ基の数(X)に対する、アミノシラン化合物の有するアミノ基及び/又はイミノ基の数(Y)の比(Y/X)が、0.2以上1.5以下である、項目1から3のいずれかに記載の塗料組成物。
[項目5]
上記混合物が、アルコキシシラン含有エポキシ化合物をさらに含む、項目1から4のいずれかに記載の塗料組成物。
[項目6]
上記混合物における、上記エポキシ化合物、上記アミノシラン化合物及び上記アルコキシシラン含有エポキシ化合物の合計量に対する、上記アルコキシシラン含有エポキシ化合物の量の比率が、10質量%以上40質量%以下である、項目5に記載の塗料組成物。
[項目7]
A:エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物を準備する工程、
B:上記混合物を反応させる工程、
C:上記エポキシ化合物と上記アミノシラン化合物との反応によるゲル化が生じる前に上記混合物の反応を停止させ、部分反応生成物を得る工程、
並びに
D:主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体と、上記部分反応生成物とを、混合する工程
を備えた、塗料組成物の製造方法。
[項目8]
A:その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体、並びにエポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物を含む塗料組成物を、構造物の表面に塗布し、プライマー層を得る工程、
並びに
B:機能層と粘着層とを有するシートを、この粘着層の粘着力により、上記プライマー層に貼り付ける工程
を備えた、構造物の保護方法。
[項目9]
上記工程Bにおいて、上記粘着層の材質が粘着剤組成物でありこの組成物の基材がアクリル樹脂であるシートが、上記プライマー層に貼り付けられる、項目8に記載の保護方法。
[項目10]
上記工程Bにおいて、上記機能層と上記粘着層との間に位置する中間層を有しておりこの中間層がポリマーとこのポリマーのマトリックスに分散するセメントとを含むシートが、上記プライマー層に貼り付けられる、項目8又は9に記載の保護方法。
[項目11]
構造物の上に位置するプライマー層、このプライマー層の上に位置する粘着層、及びこの粘着層の上に位置する機能層を備えており、
上記プライマー層と上記粘着層との接着仕事量W2が、上記構造物と上記プライマー層との接着仕事量W1よりも小さく、上記接着仕事量W1と上記接着仕事量W2との比(W1/W2)が1.20以上である、構造物の被覆構造。
[項目12]
上記プライマー層と上記粘着層との、JIS Z0237(2022)の規定に準拠して測定された180°ピール力が、1.51N/25mm以上である、項目11に記載の被覆構造。
以上説明された塗料組成物は、種々の構造物のためのプライマーとして使用されうる。
2・・・屋根
4・・・被覆構造
6・・・プライマー層
8・・・シート
10・・・機能層
12・・・中間層
14・・・粘着層
16・・・補強体
18・・・糸
18a・・・縦糸
18b・・・横糸
20・・・目

Claims (12)

  1. 構造物の上に位置するプライマー層、このプライマー層の上に位置する粘着層、及びこの粘着層の上に位置する機能層を備えており、
    上記プライマー層と上記粘着層との接着仕事量W2が、上記構造物と上記プライマー層との接着仕事量W1よりも小さく、上記接着仕事量W1と上記接着仕事量W2との比(W1/W2)が1.20以上である、構造物の被覆構造。
  2. 上記プライマー層と上記粘着層との、JIS Z0237(2022)の規定に準拠して測定された180°ピール力が、1.51N/25mm以上である、請求項1に記載の被覆構造。
  3. (1)その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体
    並びに
    (2)エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物
    を備えた、塗料組成物。
  4. 上記部分反応生成物(2)において、上記エポキシ化合物と上記アミノシラン化合物との反応によるゲル化が生じていない、請求項3に記載の塗料組成物。
  5. 100質量の上記重合体(1)に対する、上記部分反応生成物(2)の量が、1質量部以上150質量部以下である、請求項3又は4に記載の塗料組成物。
  6. 上記混合物における、エポキシ化合物が有するエポキシ基の数(X)に対する、アミノシラン化合物の有するアミノ基及び/又はイミノ基の数(Y)の比(Y/X)が、0.2以上1.5以下である、請求項3又は4に記載の塗料組成物。
  7. 上記混合物が、アルコキシシラン含有エポキシ化合物をさらに含む、請求項3又は4に記載の塗料組成物。
  8. 上記混合物における、上記エポキシ化合物、上記アミノシラン化合物及び上記アルコキシシラン含有エポキシ化合物の合計量に対する、上記アルコキシシラン含有エポキシ化合物の量の比率が、10質量%以上40質量%以下である、請求項7に記載の塗料組成物。
  9. A:エポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物を準備する工程、
    B:上記混合物を反応させる工程、
    C:上記エポキシ化合物と上記アミノシラン化合物との反応によるゲル化が生じる前に上記混合物の反応を停止させ、部分反応生成物を得る工程、
    並びに
    D:主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体と、上記部分反応生成物とを、混合する工程
    を備えた、塗料組成物の製造方法。
  10. A:その主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体、並びにエポキシ化合物及びアミノシラン化合物を含む混合物の部分反応生成物を含む塗料組成物を、構造物の表面に塗布し、プライマー層を得る工程、
    並びに
    B:機能層と粘着層とを有するシートを、この粘着層の粘着力により、上記プライマー層に貼り付ける工程
    を備えた、構造物の保護方法。
  11. 上記工程Bにおいて、上記粘着層の材質が粘着剤組成物でありこの組成物の基材がアクリル樹脂であるシートが、上記プライマー層に貼り付けられる、請求項10に記載の保護方法。
  12. 上記工程Bにおいて、上記機能層と上記粘着層との間に位置する中間層を有しておりこの中間層がポリマーとこのポリマーのマトリックスに分散するセメントとを含むシートが、上記プライマー層に貼り付けられる、請求項10又は11に記載の保護方法。
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