JP2024035042A - ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株およびその作出方法 - Google Patents

ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株およびその作出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株およびその作出方法を提供する。【解決手段】ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株は、受託番号がCGMCC No.40266であり、CCM_02059遺伝子、CCM_02060遺伝子又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子を含まない。CRISPR/Cas9遺伝子編集による前記サナギタケ菌株の作出方法は、標的遺伝子のsgRNAヌクレオチド配列を決定、合成するステップS1と、標的遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列を決定、合成するステップS2と、前記sgRNAヌクレオチド配列および前記相同アームヌクレオチド配列を、ベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合させ、ノックアウトベクターを構築するステップS3と、前記ノックアウトベクターをサナギタケのプロトプラストへPEG媒介で形質転換するステップS4とを含む。【選択図】なし

Description

本発明は、食用菌の遺伝育種の技術分野に関し、具体的には、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株、および、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるその菌株の作出方法に関する。
サナギタケ(Cordyceps militaris(L.) Fr.)は、ノムシタケ属(Cordyceps)のタイプ種であり、コルジセピン、虫草多糖、虫草酸、カロテノイドなどのさまざまな活性成分に富み、抗菌、抗疲労、抗腫瘍、免疫調節などさまざまな薬理活性を有し、食品と医薬品開発において良好な資源となる。現在、サナギタケは、子実体が製品として販売されるだけでなく、さまざまな食品、健康食品、化粧品などとして開発され、中国では、年間産出額が百億元規模の産業チェーンとなっている。
真菌の二次代謝産物は、多様な構造と生物活性を有する。本発明者らのグループは、高速液体クロマトグラフィー-高分解能質量分析により、サナギタケがウスチロキシンBを生成することを確認できた。ウスチロキシンBの含有量は、蚕蛹を栽培基質とした虫体と菌糸との混合物のなかで106.5μg/gとなり、小麦培地を栽培基質とした子実体のなかで66.9μg/gとなる。また、異なる原産地のものにより栽培されたサナギタケの子実体からいずれもウスチロキシンBが検出された(王安寧、光によって制御された2つのサナギタケの二次代謝産物合成遺伝子クラスターに関する研究、中国科学院大学修士論文、2022)。
ウスチロキシンは、稲こうじ病菌から生成されたマイコトキシンであり、水源やイネを汚染し得る。現在、ウスチロキシンBの毒性試験は報告されていないが、マウスを用いたウスチロキシンAの毒性試験によれば、400μg/kg体重の投与量で、ウスチロキシンAをマウスの腹腔内に連続投与したところ、10~12日間経過後、マウス肝臓および腎臓の病変が観察された。現在のマウス毒性試験におけるウスチロキシンAの投与量を参考にし、サナギタケの規定摂取量の範囲内(旧衛生部はサナギタケの摂取量を2g/日以下とした)であれば、ウスチロキシンの含有量によるサナギタケの食安全問題を起こさないが、ウスチロキシンBの毒性は現在不明であり、健康および亜健康の人に対するウスチロキシンの毒性研究も少ない。したがって、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出は重要な意義を持つことである。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、CRISPR/Cas9(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats/Cas9)遺伝子編集により、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株を作出し、サナギタケの安全生産に新たな菌株を提供し、その新品種の指向的改良のための遺伝物質を提供することを目的とした。
一局面において、本発明は、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株を提供した。その菌株は、現在、中国微生物菌種保藏管理委員会普通微生物中心に寄託された(住所:北京市朝▲よう▼区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所、郵便番号:100101、受託番号:CGMCC No.40266、受託日:2022年8月3日)。
他の局面において、本発明は、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出方法を提供し、その方法は以下のステップを含む。
ステップS1: 標的遺伝子のsgRNAヌクレオチド配列を決定、合成する。
ステップS2: 標的遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列を決定、合成する。
ステップS3: ステップS1で得られたsgRNAヌクレオチド配列およびステップS2で得られた相同アームヌクレオチド配列を、ベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合させ、ノックアウトベクターを構築する。
ステップS4: ステップS3で上述したノックアウトベクターをサナギタケのプロトプラストへPEG媒介で形質転換し、ノックアウトベクターを含有する形質転換体を得る。
本発明の実施形態において、標的遺伝子は、サナギタケのCCM_02059遺伝子、CCM_02060遺伝子又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子である。CCM_02059遺伝子とCCM_02060遺伝子のヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1と配列番号2に示す。
本発明の実施形態において、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出方法はさらに以下のステップを含む。
ステップS5: ゲノムDNAレベルで、PCRを用いてステップS4で得られた形質転換体から、前記標的遺伝子をノックアウトした形質転換体、すなわち陽性形質転換体を同定する。
ステップS6: cDNAレベルで、ステップS5で得られた陽性形質転換体を半定量的RT-PCR(Reverse transcription PCR)で検証し、陽性形質転換体の標的遺伝子が転写レベルで発現しないことを確認する。
ステップS7: ステップS6で得られた陽性形質転換体を継代培養し、ベクターが削除された外来遺伝子挿入のないサナギタケ菌株を得る。
ステップS8: ステップS7で確認されたサナギタケ菌株の子実体のウスチロキシン含有量を検出する。
第3局面において、本発明は、pAMA1-Cas9-hygをバックボーンベクターとして、さらに標的遺伝子のsgRNAヌクレオチド配列および標的遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列を含み、前記標的遺伝子がCCM_02059遺伝子(配列番号1)、CCM_02060遺伝子(配列番号2)又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子であるCRISPR/Cas9遺伝子編集ベクターを提供する。
第4局面において、本発明は、配列番号1又は配列番号2に示すサナギタケウのスチロキシン合成の制御に関与するヌクレオチド配列を提供する。
本発明は、従来の工場で生産されたサナギタケ菌株と比べて、明らかに有益な効果を有する。本発明は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術により、サナギタケゲノムにおけるCCM_02059遺伝子、CCM_02060遺伝子又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子をノックアウトすることで、子実体の生長に影響せず、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株を作出した。サナギタケの大量摂取による潜在的な健康被害を回避することができ、ゲノムへの遺伝子組換えによる食品の安全問題も回避できるため、サナギタケの指向的育種にアイデアおよび実験的根拠を提供した。
本発明に係るベクターのpAMA1-Cas9-hygの構造を示す図である。 本発明の実施形態による遺伝子ノックアウト戦略を示す図である。 形質転換体のゲノムDNAおよびcDNAのPCR検証のアガロースゲル電気泳動のグラフであり、そのうち、A.ゲノムDNAのPCR検証において、33が陽性形質転換体、34が陰性対照、WTが野生株であり、B.半定量的RT-PCR検証において、CCM_02059半定量的プライマーの増幅、WTcがcDNA、WTgが野生株のゲノムDNAである。 ウスチロキシンの高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析のグラフである。 蚕蛹および小麦培地における子実体の生長状況を示す図であり、Aが小麦培地、Bが蚕蛹培地である。
以下、具体的な実施形態を参照しながら、本発明の技術案を明瞭且つ完全に説明し、以下で説明される実施形態が本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではないことが無論である。本発明の実施形態をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得た全ての他の実施形態も、本発明の保護範囲に属する。
本発明者は、サナギタケゲノムにおける1つの遺伝子クラスター(CCM_02054~CCM_02066)がウスチロキシンBの合成に関連していることを見出し、さらにウスチロキシンB合成遺伝子クラスターのコア遺伝子であるCCM_02059およびCCM_02060がコードする遺伝子産物であるタンパク質に、いずれも同一の酸化酵素の保存ドメインであるDUF3328が含まれることを確認できた。そのドメインは、ウスチロキシンの初期環状ペプチド骨格の形成に重要な役割を持っている。したがって、サナギタケゲノムにおけるCCM_02059およびCCM_02060遺伝子をノックアウトし、ウスチロキシン合成遺伝子クラスターを破壊すれば、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株を得ることができる。
CRISPR/Cas9編集技術は、ゲノムへの指向的編集により菌株改良を実現可能であり、交雑、変異、家畜化などの従来の育種法と比べ、目的性が明確、操作時間が短い、簡便且つ効率的、外来DNA断片の挿入がないなどのメリットを有する。さらに、ベクター要素AMA1(糸状菌の自己複製ヌクレオチド配列)は、ベクターが染色体と独立して複製することを維持できるため、ベクターが真菌のゲノムにほとんど挿入されない。抗菌薬の選択圧がない条件下で、形質転換体のなかでベクターの削除を容易に実現できるため、真の外来遺伝子挿入のない遺伝子編集を実現でき、遺伝子導入の安全性の問題を回避することが可能である。
したがって、CRISPR/Cas9編集技術を用いてサナギタケゲノムにおけるCCM_02059およびCCM_02060遺伝子をノックアウトし、ウスチロキシン合成遺伝子クラスターを破壊し、すなわちウスチロキシンを合成する能力を失わせることができれば、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株を得ることが可能となり、本発明の実現に至る。
一局面において、本発明は、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株を提供する。その菌株のゲノムは、CCM_02059遺伝子、CCM_02060遺伝子又はその両方、すなわちCCM_02059~CCM_02060遺伝子が欠失する。本発明に係るサナギタケの遺伝子欠失菌株の平板培地における菌糸は、生長速度および光による変色(カロテノイドの蓄積)の程度が野生株と大きな差がなく、小麦培地および蚕蛹で子実体まで正常に発育できる。よって、遺伝子欠失によるサナギタケの栽培性状への悪影響がない。
本発明の実施形態において、CCM_02059遺伝子のヌクレオチド配列は配列番号1に示し、CCM_02060遺伝子のヌクレオチド配列は配列番号2に示す。
他の局面において、本発明は、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出方法を提供し、その方法は、以下のステップを含む。
ステップS1: 標的遺伝子のsgRNAヌクレオチド配列を決定、合成する。
ステップS2: 標的遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列を決定、合成する。
ステップS3: ステップS1で得られたsgRNAヌクレオチド配列およびステップS2で得られた相同アームヌクレオチド配列を、ベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合させ、ノックアウトベクターを構築する。
ステップS4: ステップS3で上述したノックアウトベクターをサナギタケのプロトプラストへPEG媒介で形質転換し、ノックアウトベクターを含有する形質転換体を得る。
本発明の実施形態において、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出方法は、さらに以下のステップを含む。
ステップS5: ゲノムDNAレベルでは、PCRを用いてステップS4で得られた形質転換体から、標的遺伝子をノックアウトした形質転換体、すなわち陽性形質転換体を同定する。
ステップS6: cDNAレベルでは、ステップS5で得られた陽性形質転換体を半定量的RT-PCRで検証し、陽性形質転換体の標的遺伝子が転写レベルで発現しないことを確認する。
ステップS7: ステップS6で得られた陽性形質転換体を継代培養し、ベクターが削除された外来遺伝子挿入のないサナギタケ菌株を得る。
ステップS8: ステップS7で確認されたサナギタケ菌株の子実体のウスチロキシン含有量を検出する。
本発明の実施形態において、標的遺伝子は、サナギタケゲノムにおけるCCM_02059、CCM_02060又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子である。
本発明の実施形態において、sgRNAヌクレオチド配列は、標的遺伝子のプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer-associated motif。PAM)の上流20bp塩基、すなわち5′-N20-NGG-3′であり、NGGはPAMヌクレオチド配列であり、N20は20bp塩基の認識ヌクレオチド配列である。CRISPR/Cas9技術を用いて標的遺伝子に二本鎖切断部位(Double-strand break、DSB)を形成させ、真菌自身のDSBの修復メカニズムにより、両端に相同アームヌクレオチド配列を導入し、相同組換え修復を開始する。また、上流の相同アームヌクレオチド配列は、標的遺伝子のコーディング領域の上流に位置し、下流の相同アームヌクレオチド配列は、標的遺伝子のコーディング領域の下流に位置する。上流および下流の相同アームヌクレオチド配列を強固に結合することで、抵抗性遺伝子挿入のない状態で標的遺伝子を完全に欠失させる。
本発明の具体的な実施形態において、CCM_02059遺伝子について、つまりCCM_02059遺伝子のみをノックアウトする場合、sgRNAヌクレオチド配列はTarget1であり、そのヌクレオチド配列は配列番号3に示し、合成されたTarget1発現カセットの配列は配列番号4に示す。
本発明の具体的な実施形態において、CCM_02059遺伝子について、つまりCCM_02059遺伝子のみをノックアウトする場合、その上流の相同アームヌクレオチド配列は配列番号5に示し、下流の相同アームヌクレオチド配列は配列番号6に示す。上流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーはup 1-F(配列番号7)/up 1-R(配列番号8)であり、下流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーはdown 1-F(配列番号9)/down 1-R(配列番号10)である。
本発明の具体的な実施形態において、CCM_02060遺伝子について、つまりCCM_02060遺伝子のみをノックアウトする場合、sgRNAヌクレオチド配列はTarget2であり、そのヌクレオチド配列は配列番号11に示す。合成されたTarget2発現カセットの配列は配列番号12に示す。
本発明の具体的な実施形態において、CCM_02060遺伝子について、つまりCCM_02060遺伝子のみをノックアウトする場合、その上流の相同アームヌクレオチド配列は配列番号13に示し、下流の相同アームヌクレオチド配列は配列番号14に示す。上流および下流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーは、それぞれup 2-F(配列番号15)/up 2-R(配列番号16)およびdown 1-F(配列番号17)/down 1-R(配列番号18)である。
CCM_02059遺伝子がCCM_02060遺伝子と隣接するため、遺伝子間のスペーサーヌクレオチド配列にsgRNAを導入し、上流の相同アームヌクレオチド配列をCCM_02059遺伝子のコーディング領域の上流に位置させ、下流の相同アームヌクレオチド配列をCCM_02060遺伝子のコーディング領域の下流に位置させれば、CCM_02059遺伝子と、CCM_02060遺伝子と、そのスペーサー配列とを同時にノックアウトすることができる。すなわち、CCM_02059~CCM_02060遺伝子を同時にノックアウトすることができる。
したがって、本発明の他の実施形態において、本発明は、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出方法を提供し、その方法は以下のステップを含む。
ステップS1: CCM_02059遺伝子とCCM_02060遺伝子との間のスペーサー配列のsgRNAヌクレオチド配列を決定、合成する。
ステップS2: CCM_02059~CCM_02060遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列を決定、合成する。
ステップS3: ステップS1で得られたsgRNAヌクレオチド配列およびステップS2で得られた相同アームヌクレオチド配列を、ベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合させ、ノックアウトベクターを構築する。
ステップS4: ステップS3で上述したノックアウトベクターをサナギタケのプロトプラストへPEG媒介で形質転換し、ノックアウトベクターを含有する形質転換体を得る。
具体的な実施形態において、CCM_02059遺伝子とCCM_02060遺伝子との間のスペーサー配列は配列番号19に示す。
具体的な実施形態において、CCM_02059~CCM_02060遺伝子について、つまりCCM_02059遺伝子およびCCM_02060遺伝子を同時にノックアウトする場合、sgRNAヌクレオチド配列はTarget3であり、そのヌクレオチド配列を配列番号20に示す。合成されたTarget3発現カセットの配列は配列番号21に示す。
具体的な実施形態において、CCM_02059~CCM_02060遺伝子の上流の相同アームヌクレオチド配列は配列番号22に示し、下流の相同アームヌクレオチド配列は配列番号23に示す。上流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーはup 3-F(配列番号24)/up 3-R(配列番号25)であり、下流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーはdown 3-F(配列番号26)/down 3-R(配列番号27)である。
したがって、CCM_02059~CCM_02060遺伝子をノックアウトしたサナギタケ菌株を得る実施形態において、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出方法は、具体的に以下のステップを含む。
ステップS1: Target3のヌクレオチド配列(配列番号20)を設計し、Target3発現カセットの配列を合成する。
そのうち、合成されたTarget3発現カセットのヌクレオチド配列は配列番号21である。
ステップS2: CCM_02059~CCM_02060遺伝子の上流および下流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーを設計し、PCRにより上流および下流の相同アームヌクレオチド配列を増幅する。
そのうち、上流および下流の相同アームヌクレオチド配列に基づいて、プライマーであるup 3-F/up 3-Rおよびdown 3-Fとdown 3-Rを設計する。野生株のサナギタケ菌株のゲノムDNAを鋳型として、上流の相同アームヌクレオチド配列(配列番号22)および下流の相同アームヌクレオチド配列(配列番号23)をそれぞれ増幅する。PCR増幅産物を回収し、前記プライマーヌクレオチド配列は以下である。
up 3-F:
5′-ACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTgtcgacaagagaggtggtcc-3′(配列番号24)、
up 3-R:5′-AGATTCGCAGcctggacaatctactccgattca-3′(配列番号25)、
down 3-F:5′-agattgtccaggCTGCGAATCTGAGTGGTTGG-3′(配列番号26)、
down 3-R:
5′-ACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTCAGCGCCCTGTATCCTTTGA-3′(配列番号27)。
ステップS3: ステップS1で得られたTarget3およびステップS2で得られた相同アームヌクレオチド配列を、ベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合し、ノックアウトベクターを構築する。
ステップS3では、まず、ステップS1で合成されたTarget3発現カセットの配列をベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合し、結合に成功したベクターをpAMA1-Cas9-hyg-Target3と名づける。結合に成功したか否かは、以下のように検証できる。結合されたベクターを、例えばE. coli DH5αコンピテントセルに形質転換し、E. coliコロニーを選別して、ステップS1で得られえたTarget3がベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合されたか否かをPCRにより検証する。PCRに使用したプライマーのヌクレオチド配列は配列番号28と配列番号29に示す。PCRにより正しく同定されたコロニーを増幅し、ベクターを抽出して配列を決定し、その結果をステップS1で得られたTarget3発現カセットの配列と比較する。
次に、ステップS2で得られた上流および下流の相同アームヌクレオチド配列をベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3に結合し、結合に成功したベクターをpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRと名づけ、すなわちノックアウトベクターになる。結合に成功したか否かは、以下のように検証できる。結合されたベクターを、例えばE. coli DH5αコンピテントセルに形質転換し、E. coliコロニーを選別して、ステップS2で得られた上流および下流の相同アームヌクレオチド配列がpAMA1-Cas9-hyg-Target3ベクターに結合されたか否かをPCRにより検証する。PCRに使用したプライマーのヌクレオチド配列は配列番号30と配列番号31に示す。PCRにより正しく同定されたコロニーを増幅し、ベクターを抽出して配列を決定し、その結果をステップS2で得られた上流および下流の相同アームヌクレオチド配列と比較する。
ステップS4: ステップS3で得られたノックアウトベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRを、サナギタケのプロトプラストへPEG媒介で形質転換し、ノックアウトベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRを含む形質転換体を得る。
そのうち、例えば、ノックアウトベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRを含む形質転換体は、500μg/mLのハイグロマイシンを加えたプロトプラスト再生培地プレートでスクリーニングすることにより得ることができる。
2つの遺伝子をノックアウトする(すなわちCCM_02059~CCM_02060遺伝子をノックアウトする)更なる実施形態において、前記方法はステップS5をさらに含んでもよい。つまり、ゲノムDNAレベルでは、PCRを用いてステップS4で得られた形質転換体から、標的遺伝子をノックアウトした形質転換体、すなわち陽性形質転換体を同定する。また、CCM_02059~CCM_02060遺伝子をノックアウトした形質転換体、すなわち陽性形質転換体を同定するために、ステップS4で得られた形質転換体のゲノムDNAを抽出し、これを鋳型として、プライマーの配列番号32および配列番号33を用いて形質転換体に対してPCRを行う。
2つの遺伝子をノックアウトする(すなわちCCM_02059遺伝子およびCCM_02060遺伝子をノックアウトする)更なる実施形態において、前記方法はステップS6をさらに含んでもよい。つまり、cDNAレベルでは、ステップS5で得られた陽性形質転換体を半定量的RT-PCRで検証し、陽性形質転換体が転写レベルで発現しないことを確認する。また、ステップS5で得られた陽性形質転換体のRNAを抽出してcDNAに逆転写し、これを鋳型として、半定量的プライマーの配列番号34および配列番号35を用いて半定量的RT-PCRを行い、ステップS5で得られた陽性形質転換体が転写レベルで発現しないことを確認する。転写レベルでは、CCM_02059~CCM_02060遺伝子をノックアウトしたことを検証する。
2つの遺伝子をノックアウトする更なる実施形態において、前記方法はステップS7をさらに含む。ウスチロキシンを合成しないことが確認された陽性形質転換体を、分生胞子の分離および継代により遊離ベクターの削除を実現し、蚕蛹又は小麦培地で培養し、ウスチロキシンを生成せずに子実体まで正常に発育するサナギタケ菌株を得る。
2つの遺伝子をノックアウトする更なる実施形態において、前記方法はステップS8をさらに含んでもよい。つまり、ステップS7で得られたウスチロキシン含有量を検出する。例えば、ステップS7で得られたサナギタケ菌株の子実体のウスチロキシンを抽出して精製し、高速液体クロマトグラフィーを用いてそのウスチロキシン含有量を検出する。
第3局面において、本発明は、pAMA1-Cas9-hygをバックボーンベクターとして、標的遺伝子のsgRNAヌクレオチド配列および標的遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列をさらに含み、前記標的遺伝子がCCM_02059遺伝子(配列番号1)、CCM_02060遺伝子(配列番号2)又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子であるCRISPR/Cas9遺伝子編集ベクターを提供する。
実施形態
以下、具体的な実施形態を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を制限するためのものではない。
以下の実施例において、特に説明のない限り、使用される実験方法は、いずれも常用方法であり、当該技術分野の文献に記載された技術又は条件、或いは製品説明書に従って実施される。以下の実施例において、特に説明のない限り、使用される材料、試薬などは、いずれも購入できるものである。
以下の実施例で使用された野生株のサナギタケ菌株はCGMCC 3.16323であり、使用されたベクターのpAMA1-Cas9-hygは中国科学院微生物研究所の劉鋼研究グループから提供され、2つの遺伝子をノックアウトすることを例として具体的な実施形態を説明する。
1.1 sgRNAの設計
標的ヌクレオチド配列として、サナギタケゲノムCCM_02059遺伝子とCCM_02060遺伝子との間のスペーサー配列を選択し、サナギタケのCM01(CGMCC 3.14242)ゲノム(Zheng et al.,genome sequence of the insectPathogenic fungus Cordycepsmilitaris,a valued traditional chinesemedicine.genomebiology,2012,r116)を参考ゲノムとして、EukaryoticPathogen CRISPRguiderNA/DNA Design Tool(http://grna.ctegd.uga.edu/)でsgRNAをオンラインで設計した。パラメータはいずれもデフォルトのパラメータを使用した。
1.2 中間ベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3の構築
a.Target3発現カセットの合成
合成されたTarget3発現カセットのヌクレオチド配列は配列番号21である。
b.ベクターのpAMA1-Cas9-hygの酵素切断および断片結合
pAMA1-Cas9-hygを出発ベクターとして、合成されたTarget3発現カセットおよびpAMA1-Cas9-hyg(制限酵素BstEIIの線形化)を、北京康潤誠業生物科技有限公司のゲル回収キット(D205-01)でゲルから回収して精製した。上記のDNA断片および線形化されたベクターのヌクレオチド濃度を、サーモフィッシャー(Thermo Scientific)社製のNanoDropLite分光光度計(ND-NDL-US-CAN)で測定し、Vazyme社製のワンステップクローニングキット(C115-02)を用いて説明書を参照しながら結合反応を行った。制限酵素BstEIIの酵素切断の反応系は以下である。
ベクター:2μg、
制限酵素:2μL、
10×buffer B:10μL、
Nuclease-free water:100μLまで、
最適な作業温度で5~12時間反応させる。
ベクターのpAMA1-Cas9-hygの構造は図1に示す。
c. コロニーのPCR検証および配列決定
上記の結合産物をヒートショック法および凍結融解法でコンピテントセルのE. coli DH5αに形質転換し、LB/Amp+(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L)のプレートでE. coliコロニーを選別した。配列番号28、配列番号29のプライマーヌクレオチド配列を用いてPCR同定を行い、PCRにより正しく同定されたコロニーをLB/Amp+液体培地に接種し、37℃、200rpmの条件で12時間培養して増幅させた。増幅された細菌菌液について、北京康潤誠業生物科技有限公司のプラスミド抽出キット(D201-04)を用いて説明書を参照しながらそのベクターを抽出した。さらに、そのベクターの配列を生工生物工程(上海)股▲ふん▼有限公司北京子公司で決定した。配列アライメントにより、配列決定の結果は、上記のTarget3発現カセットの配列に一致しており、つまり、ベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3の構築に成功した。
E. coli DH5αコロニーのPCR同定の反応系は以下である。
2×Rapid Taq master mix:5μL、
プライマーF(10μmol/L):0.2μL、
プライマーR(10μmol/L):0.2μL、
細菌懸濁液(LB/Amp+プレート上のコロニーを取り、10μLddHOに入れる):4.6μL。
PCR増幅反応の手順は以下である。
ステップ1:95℃、3分間、
ステップ2:95℃、30秒間、
ステップ3:58℃、30秒間、
ステップ4:72℃、5秒間、
ステップ5:ステップ2~4を35サイクル繰り返す、
ステップ6:72℃、10分間。
1.3 ベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRの構築
プライマーのup 3-F/up 3-Rおよびdown 3-F/down 3-Rを用いて、野生株のサナギタケ菌株のゲノムDNAを鋳型として、CCM_02059~CCM_02060遺伝子の上流および下流の相同アームヌクレオチド配列をそれぞれ増幅した。上記のプライマーのヌクレオチド配列は以下である。
up 3-F:
5′-ACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTgtcgacaagagaggtggtcc-3′ (配列番号24)、
up 3-R:5′-AGATTCGCAGCCTGGACAATCTACTCCGATTCA-3′ (配列番号25)、
down 3-F:5′-AGATTGTCCAGGCTGCGAATCTGAGTGGTTGG-3′ (配列番号26)、
down 3-R:
5′-ACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTCAGCGCCCTGTATCCTTTGA-3′ (配列番号27)である ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
増幅された上流および下流の相同アームヌクレオチド配列およびpAMA1-Cas9-hyg-Target3(制限酵素SspIの線形化)を、北京康潤誠業生物科技有限公司のゲル回収キット(D205-01)でゲルから回収して精製した。また、制限酵素SspIの線形化反応系は1.2に記載した方法を参照する。上記のDNA断片および線形化されたベクターのヌクレオチド濃度を、サーモフィッシャー(Thermo Scientific)社製のNanoDropLite分光光度計(ND-NDL-US-CAN)で測定し、Vazyme社製のワンステップクローニングキット(C115-02)を用いて説明書を参照しながら結合反応を行った。上記の結合産物をヒートショック法および凍結融解法でコンピテントセルのE. coli DH5αに形質転換し、LB/Amp+プレートでE. coliコロニーを選別した。配列番号30、配列番号31プライマーヌクレオチド配列を用いてPCR同定を行い、PCRにより正しく同定されたコロニーをLB/Amp+液体培地に接種し、増幅させた。増幅された細菌菌液について、北京康潤誠業生物科技有限公司のプラスミド抽出キット(D201-04)を用いて説明書を参照しながらそのベクターを抽出した。さらに、そのベクターの配列を生工生物工程(上海)股▲ふん▼有限公司北京子公司で決定した。配列アライメントにより、配列決定の結果は、上記の相同アームヌクレオチド配列に一致しており、つまり、ベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRの構築に成功した。
1.4 pAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRから野生株のサナギタケのプロトプラストへ形質転換
野生株のサナギタケ菌糸を採取し、2%細胞壁溶解酵素(広東省微生物研究所製、細胞壁溶解酵素の粉末を0.8mol/L KClに溶解、pH=6.5)を1mL加え、32℃、90rpmの条件下で3時間酵素分解した。酵素分解された菌糸を4層のガーゼでろ過し、下部のろ液1mLを1.5mL遠沈管に入れ、3000rpm、室温で10分間遠心分離した後、上清を捨てた。その後、100-200μLSTC緩衝液(ソルビトール:18.2g、Tris:0.121g、CaCl:0.368g、ddHOで100mLまで定容した)を入れ、プロトプラストの濃度が1×10個/mLになるように、ピペットで繰り返して軽く吸ったり吹いたりして再懸濁した。
ベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HR 2μgを100μLの上記のサナギタケのプロトプラストに入れ、氷上に5分間放置した。そして、プロトプラストとベクターの混合液に50μLのPEG緩衝液(PEG4000:25g、Tris:0.121g、CaCl:0.368g、ddHOで100mLまで定容した)を加え、氷上に30分間放置した。その後、上記系に0.5mLのPEG緩衝液を加え、軽く吹いて均一に混ぜ、28℃の金属浴中で20分間静置した。最後に1mLのSTC緩衝液を加え、軽く吹いて均一に混ぜ、3000rpmで10分間遠心分離して上清を廃棄した。遠沈管の底のプロトプラストの沈殿物をSTC緩衝液で再懸濁し、500μg/mLのハイグロマイシンを添加したプロトプラスト再生培地(剥皮して茹でてろ過したジャガイモ200g、グルコース20g、トリプトン10g、マンニトール0.6m、ddHOで1Lまで定容した)のプレートに塗りつけた。形質転換体の菌糸が発芽してコロニーになるまで、25℃の暗所で5~7日間培養し、PCR同定を行うために形質転換体のゲノムDNAを抽出した。
1.5 形質転換体のPCR検証
上記の形質転換体のゲノムDNAをCTAB法(閻慶祥ら、改良されたCTAB法によるキャッサバ芋のゲノムDNAの抽出、中国農学通報、2010、(4):30-32)で抽出し、プライマーの配列番号32、配列番号33を用いて形質転換体に対しPCRで1次スクリーニングを行う。図3Aに示すように、33号の形質転換体の増幅産物のバンドサイズは1197bpであり、野生株のサナギタケ菌株の増幅産物のバンドサイズは3544bpである。33号の形質転換体は遺伝子のノックアウトに成功し、陽性形質転換体(M33)であることが示された。上記の33号の形質転換体に対して遺伝子の転写レベルでのノックアウト検証を行った。OMEGA社製のRNAPlantKitキット(R6827-02)で33号の形質転換体および野生株のサナギタケ菌株のRNAを抽出した。VazymehiScript(登録商標)II QrT SuperMix for qPCR(+gDNA wiper)キット(R223-01)で、説明書を参照しながらRNAをcDNAに逆転写し、これを鋳型として、半定量的プライマーの配列番号34、配列番号35、およびrpb1-F/R(Lian et al.,Variations of SSUrDNAgroupI introns in different isolates of Cordycepsmilitaris and theLoss of an intron during cross-mating. Journal ofmicrobiology. 2014 52(8):659-666)の2ペアのプライマーを用いて、半定量的RT-PCRにより、さらに遺伝子の転写レベルでCCM_02059~CCM_02060遺伝子がノックアウトされたか否かを検証した。図3Bに示すように、33号の形質転換体においてCCM_02059遺伝子の転写レベルでの発現は見られず、33号の形質転換体(M33)は陽性の形質転換(CGMCC No.40266)であり、すなわちCCM_02059~CCM_02060遺伝子の欠失が実現されたことが示された。
半定量的RT-PCRの反応系は以下である。
2×Rapid Taq master mix:5μL、
プライマーF(10μmol/L):0.2μL、
プライマーR(10μmol/L):0.2μL、
ddHO:3.6μL、
鋳型:1μL。
PCRの増幅反応の手順は上記と同様である。
1.6 ウスチロキシンの抽出、精製、検出
ウスチロキシンの抽出および精製のステップは、先行文献(Cao et al.,Analysis of ustiloxins inrice usingPolymer cation exchange cleanupfollowedbyLiquid chromatography-tandemmass spectrometry. Journal of Chromatography A,2016,1476:46-52)を参照した上で、適宜調整した。具体的なステップは以下である。
野生株のサナギタケ菌糸体と上記の形質転換体M33(CGMCC No.40266)菌糸体を凍結乾燥機で凍結乾燥し、各サンプルについて3つの生物学的複製をとった。凍結乾燥したサンプルを乳鉢でよく粉砕しておいた。凍結乾燥サンプル粉末100mgを秤量して2mL遠沈管に入れ、さらに1mLddHOとセラミックビーズを入れ、組織粉砕機で十分に粉砕した。粉砕機で得られたホモジネートを4.5mL遠沈管に移し、ddHOで3mLまで定容し、超音波抽出器に置いて1時間処理した後、12000rpm、室温で6分間遠心分離し、得られた上清を10mL遠沈管に移した。その後、上清にジクロロメタン2mLを加えて十分に混合し、12000rpmで6分間遠心分離した。上清を吸い取り5%ギ酸含有の液に調整し、0.22μmの水系膜でろ過し、メタノール3mL(クロマトグラフィー的純度)でPCX固相抽出カラムに対して前処理をし、5%ギ酸3mLで平衡化させた。上記の酸性にしたサンプルを、液面がカラムの吸着層に達した時点で添加し、5%ギ酸3mL、メタノール3mLで順次カラムを洗い、5%アンモニア水(NH・HO 25%-28%)含有のメタノール3mLで目的物質を溶出した。上記の溶出液を減圧下45℃でほぼ乾固に濃縮した後、15%メタノール1mLを加え、超音波装置で15分間処理して再溶解させ、再溶解液を0.22μm水系膜で濾過した。
島津LC-20AhPLCシステムによりウスチロキシンの検出を行った。カラムはLuna OmegaPolar C18カラム(4.6mm × 250mm、5μm)、移動相は0.01%トリフルオロ酢酸水溶液(A)-メタノール(B)、検出波長は190-400nmである。
HPLCの検出結果は図4に示す。図4からわかるように、野生株のサンプルにおいてウスチロキシンの保持時間は22~23分間であったのに対し、形質転換体M33(CGMCC No.40266)に対応する化合物は保持時間で検出されず、ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株を得たことが示された。
1.7 ベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRの削除
形質転換体M33(CGMCC No.40266)の分生胞子を滅菌された爪楊枝に浸し、ハイグロマイシンを含まない上記の蘇生培地プレートにスポットし、ハイグロマイシン耐性を有するベクターのpAMA1-Cas9-hyg-Target3-HRが削除されるまで継代培養した。つまり、耐性スクリーニングラベルを持たないノックアウト菌株を得た。
1.8 蚕蛹および小麦培地における子実体の形成実験
野生株および形質転換体M33(CGMCC No.40266)をPDAプレートに接種し、20℃で16日間培養した。培地プレートにおける菌糸体を滅菌水で洗浄後、4層のガーゼでろ過した。ろ液1mLを1.5mL遠沈管に入れ、8000rpm、6分間遠心し、野生株および形質転換体M33(CGMCC No.40266)の分生胞子を採取した。濃度が1×10個/mLの懸濁液を調製し、滅菌注射器を用いて各蚕蛹に100μLずつ注射した。その後、蚕蛹を食用菌知能結実箱(北京知態康興生物科技有限公司)内で20℃で培養し、子実体の発育状態を観察した。
野生株および形質転換体M33(CGMCC No.40266)のPDAプレートにおける菌株を、種菌培地(剥皮して茹でたジャガイモ200g、グルコース20g、トリプトン3g、KHPO1gおよびMgSO・7HO0.5g、水道水で1Lまで定容した)に接種し、150rpmで3日間培養して液体種菌を得た。上記の液体種菌5mLを小麦培地(小麦:20g、栄養液:グルコース20g、トリプトン10g、KHPO 2g、MgSO・7HO 1g、クエン酸アンモニウム1g、ビタミンB120mg、水道水で1Lまで定容した)に接種し、食用菌知能結実箱(北京知態康興生物科技有限公司)内で20℃で培養し、小麦培地における子実体の発育状態を観察した。
その結果、形質転換体M33(CGMCC No.40266)は、蚕蛹および小麦培地でいずれも子実体まで正常に発育できる。その子実体は、図5に示すように、整然かつ均一で、まっすぐに伸び、色が鮮やかである。また、小麦培地における野生株の子実体よりも生長速度が速い。

Claims (10)

  1. ウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株であって、受託番号がCGMCC No.40266であることを特徴とするサナギタケ菌株。
  2. 標的遺伝子のsgRNAヌクレオチド配列を決定、合成するステップS1と、
    標的遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列を決定、合成するステップS2と、
    ステップS1で得られたsgRNAヌクレオチド配列およびS2で得られた相同アームヌクレオチド配列を、ベクターのpAMA1-Cas9-hygに結合させ、ノックアウトベクターを構築するステップS3と、
    ステップS3で得られたノックアウトベクターをサナギタケのプロトプラストへPEG媒介で形質転換し、前記ノックアウトベクターを含有する形質転換体を得るステップS4と、
    を含むCRISPR/Cas9遺伝子編集によるウスチロキシンを生成しないサナギタケ菌株の作出方法。
  3. 前記標的遺伝子は、CCM_02059遺伝子(配列番号1)、CCM_02060遺伝子(配列番号2)又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記sgRNAヌクレオチド配列はTarget1、2又は3であり、そのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号3、配列番号11又は配列番号20に示すことを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 合成されたTarget1、2又は3発現カセットのヌクレオチド配列は、配列番号4、配列番号12又は配列番号21に示すことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記CCM_02059遺伝子について、上流の相同アームのヌクレオチド配列が配列番号5であり、下流の相同アームのヌクレオチド配列が配列番号6であり、前記CCM_02060遺伝子について、上流の相同アームのヌクレオチド配列が配列番号13であり、下流の相同アームのヌクレオチド配列が配列番号14であり、前記CCM_02059~CCM_02060遺伝子について、上流の相同アームのヌクレオチド配列が配列番号22であり、下流の相同アームのヌクレオチド配列が配列番号23であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  7. 前記CCM_02059遺伝子について、上流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーがup 1-F/up 1-Rであり、下流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーがdown 1-F/down 1-Rであり、前記CCM_02060遺伝子について、上流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーがup 2-F/up 2-Rであり、下流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーがdown 2-F/down 2-Rであり、前記CCM_02059~CCM_02060遺伝子について、上流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーがup 3-F/up 3-Rであり、下流の相同アームヌクレオチド配列を合成するためのプライマーがdown 3-F/down 3-Rであり、前記プライマーのヌクレオチド配列は、
    up 1-F:
    5′-ACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTcaagagcagattcgtcaag-3′ (配列番号7)、
    up 1-R:
    5′-GCCAACCTCGTCAACGGCCagctagttggcaataccgcta-3′ (配列番号8)、
    down 1-F:
    5′-caactagctGGCCGTTGACGAGGTTGGCAAAGAAGCAG-3′ (配列番号9)、
    down 1-R:
    5′-ACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTAAGACGGAGCACACCACGG-3′ (配列番号10)、
    up 2-F:
    5′-ACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTgtcgacaagagaggtgg-3′ (配列番号15)、
    up 2-R:
    5′-CCCTGGTTGATCAGCGTCcctggacaatctactccgattc-3′ (配列番号16)、
    down 2-F:
    5′-aggGACGCTGATCAACCAGGGCGCGGTCAATCGGAAG-3′ (配列番号17)、
    down 2-R:
    5′-ACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATCACCATGTGGACCACTGT-3′ (配列番号18)、
    up 3-F:
    5′-ACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTgtcgacaagagaggtggtcc-3′ (配列番号24)、
    up 3-R:5′-AGATTCGCAGCCTGGACAATCTACTCCGATTCA-3′ (配列番号25)、
    down 3-F:5′-AGATTGTCCAGGCTGCGAATCTGAGTGGTTGG-3′ (配列番号26)、
    down 3-R:
    5′-ACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTCAGCGCCCTGTATCCTTTGA-3′ (配列番号27)であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. ゲノムDNAレベルで、PCRを用いてステップS4で得られた形質転換体から、前記標的遺伝子をノックアウトした形質転換体、すなわち陽性形質転換体を同定するステップS5と、
    cDNAレベルで、ステップS5で得られた陽性形質転換体を半定量的RT-PCRで検証し、陽性形質転換体の標的遺伝子が転写レベルで発現しないことを確認するステップS6と、
    ステップS6で得られた陽性形質転換体を継代培養し、ベクターが削除された外来遺伝子挿入のないサナギタケ菌株を得るステップS7と、
    ステップS7で得られたサナギタケ菌株の子実体のウスチロキシン含有量を検出するステップS8と、
    をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  9. pAMA1-Cas9-hygをバックボーンベクターとして、さらに標的遺伝子のsgRNAヌクレオチド配列および標的遺伝子の上流および下流の相同アームのヌクレオチド配列を含み、前記標的遺伝子がCCM_02059遺伝子(配列番号1)、CCM_02060遺伝子(配列番号2)又はCCM_02059~CCM_02060遺伝子であることを特徴とするCRISPR/Cas9遺伝子編集ベクター。
  10. 配列番号1又は配列番号2に示すことを特徴とするサナギタケウのスチロキシン合成の制御に関与するヌクレオチド配列。
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