JP2024031845A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層を含む積層体であって、ピラニア溶液洗浄に対する耐性に優れる積層体を提供する。【解決手段】互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層とシリコン原子含有層とを含み、シリコン原子含有層は第1表面を有し、X線光電子分光法によって測定される第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である積層体が提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、金属系粒子集合体層を含む積層体及びその製造方法に関する。
金属ナノ粒子の局在プラズモン共鳴を利用して蛍光を増強させる技術が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、複数の金属粒子から構成される島層(2)と該層を被覆するスペーサー層(5)とを含む積層体を光化学蛍光センサーに用いることが記載されている。
特開平08-271431号公報
上記のような積層体は、その表面修飾等の後工程に先立って、ピラニア溶液で洗浄されることがある。本発明の目的は、複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層を含む積層体であって、ピラニア溶液洗浄に対する耐性に優れる積層体及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、以下に示す積層体及びその製造方法を提供する。
[1] 互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層と、シリコン原子含有層とを含み、
前記シリコン原子含有層は、第1表面を有し、
X線光電子分光法によって測定される前記第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である、積層体。
[2] 基材と、前記基材の表面に配置される前記金属系粒子集合体層と、前記金属系粒子集合体層上に配置される前記シリコン原子含有層とを含み、
前記シリコン原子含有層は、前記金属系粒子集合体層における前記基材とは反対側の表面の全体を覆うように配置される、[1]に記載の積層体。
[3] 前記シリコン原子含有層がアモルファス層である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記シリコン原子含有層がウェットコーティング層である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] 前記シリコン原子含有層の平均厚みが10nm以上300nm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記金属系粒子が銀からなる、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 前記複数の金属系粒子は、その平均粒径が200nm以上1600nm以下の範囲内であり、平均高さが55nm以上500nm以下の範囲内であり、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下の範囲内であり、
前記金属系粒子集合体層において、前記複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上150nm以下の範囲内となるように配置されている、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] 前記アスペクト比が1より大きい、[7]に記載の積層体。
[9] JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記第1表面の算術平均粗さRaが10nm以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10] 98質量%濃度である濃硫酸と30質量%過酸化水素水とを4:1の体積比で混合してなる温度25℃の混合液に30分間浸漬した後のJIS B 0601:2001に準拠して測定される前記第1表面の算術平均粗さRaが15nm以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の積層体。
[11] 積層体の製造方法であって、
前記積層体は、互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層と、シリコン原子含有層とを含み、
前記シリコン原子含有層は、第1表面を有し、
X線光電子分光法によって測定される前記第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下であり、
前記製造方法は、
基材上に前記金属系粒子集合体層を形成する工程と、
前記金属系粒子集合体層が形成された基材上に、シリコン原子含有層形成用組成物を塗布して塗布層を形成する工程と、
前記塗布層を300℃以上800℃以下の温度で熱処理する工程と、
を含む、製造方法。
[12] 前記金属系粒子集合体層を形成する工程の前に、前記基材を脱脂洗浄する工程をさらに含む、[11]に記載の製造方法。
複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層を含む積層体であって、ピラニア溶液洗浄に対する耐性に優れる積層体及びその製造方法を提供することができる。
本発明に係る積層体の一例を模式的に示す断面図である。 実施例1で得られた金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍及び50000倍スケール)である。 実施例1で得られた金属系粒子集合体層のAFM画像である。 ピラニア溶液洗浄試験前の実施例1の積層体をシリコン原子含有層側から見たときのSEM画像(50000倍スケール)である。 ピラニア溶液洗浄試験後の実施例1の積層体をシリコン原子含有層側から見たときのSEM画像(50000倍スケール)である。 ピラニア溶液洗浄試験前の実施例1の積層体をシリコン原子含有層側から見たときの光学顕微鏡写真(700倍スケール)である。 ピラニア溶液洗浄試験後の実施例1の積層体をシリコン原子含有層側から見たときの光学顕微鏡写真(700倍スケール)である。 ピラニア溶液洗浄試験後の実施例2の積層体をシリコン原子含有層側から見たときの光学顕微鏡写真(700倍スケール)である。 ピラニア溶液洗浄試験後の実施例3の積層体をシリコン原子含有層側から見たときの光学顕微鏡写真(700倍スケール)である。 ピラニア溶液洗浄試験後の比較例1の積層体をシリコン原子含有層側から見たときの光学顕微鏡写真(700倍スケール)である。
<積層体>
(1)概要
本発明に係る積層体(以下、単に「積層体」ともいう。)は、互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層とシリコン原子含有層とを含み、シリコン原子含有層は第1表面を有し、X線光電子分光法によって測定される第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である積層体である。
図1は、積層体の一例を模式的に示す断面図である。図1に示される積層体は、基材10と、基材10の表面に配置される金属系粒子集合体層20と、金属系粒子集合体層20上に配置されるシリコン原子含有層30とを含む。金属系粒子集合体層20は、複数の金属系粒子21の集合であり、互いに離間して配置される複数の金属系粒子21から構成される層である。シリコン原子含有層30は第1表面31を有しており、X線光電子分光法によって測定される第1表面31の炭素原子のシグナル強度は、20.0原子%以下である。
本発明によれば、炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である第1表面を有するシリコン原子含有層が積層されているため、ピラニア溶液洗浄に対する耐性に優れる積層体を提供することができる。該積層体は、例えば、センサ素子等に適用することができる。センサ素子の好適な一例は、バイオセンサ素子である。
なお、積層体は、基材10、金属系粒子集合体層20及びシリコン原子含有層30以外の層を有し得る。該層としては、金属系粒子集合体層20とシリコン原子含有層30との間に介在する層、シリコン原子含有層30上に積層される層が挙げられる。
(2)金属系粒子集合体層
金属系粒子集合体層20は、互いに離間して配置される複数の金属系粒子21から構成される層であり、好ましくは、プラズモン構造体である。「プラズモン構造体」とは、局在プラズモン共鳴を示すことができる構造体をいう。プラズモンとは、構造体中の自由電子の集団的な振動によって生起する自由電子の粗密波のことである。金属系粒子集合体層20がプラズモン構造体であることにより、例えば積層体をセンサ素子に適用する場合において、被検出物質を標識する発光体からの発光(蛍光等)の強度を増強させることができる。したがって、積層体は、各種センサ素子用の発光増強要素として好適に用いることができる。積層体をセンサ素子に適用することによってセンサ素子の感度、定量精度及び/又は定量結果の再現性(安定性)を向上させ得る。
金属系粒子集合体層20は、好ましくは、下記を満たす。
金属系粒子集合体層20を構成する複数の金属系粒子21は、平均粒径が200nm以上1600nm以下の範囲内であり、平均高さが55nm以上500nm以下の範囲内であり、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下の範囲内であり、金属系粒子集合体層20において、複数の金属系粒子21は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上150nm以下の範囲内となるように配置されている。
上記を満たす所定の構造を有する金属系粒子集合体層20、ひいてはこれを備える積層体は、下記[a]及び[b]の特徴を示すことができる。これらの特徴は、金属系粒子集合体層20を構成する複数の金属系粒子21が示す局在プラズモン間の相互作用により発現すると考えられる。
[a]金属系粒子集合体層20が示すプラズモン共鳴の作用範囲が広い。これにより、例えば、プラズモンによる発光増強効果の及ぶ範囲を広くすることができるため、金属系粒子集合体層20の表面から例えば数百nm(例えば200nm)の範囲内にある発光体の発光をも増強し得る。
[b]金属系粒子集合体層20が強いプラズモン共鳴を示す。これにより、例えば強い発光増強効果を得ることができる。
上記[a]に関し、本発明に係る積層体によれば、金属系粒子集合体層20から例えば10nm以上、さらには数十nm(例えば20nm、30nm又は40nm)以上、なおさらには100nm以上又は200nm以上離れた位置に配置された発光体の発光を増強し得る。上記[b]に関し、積層体が示すプラズモン共鳴の強さは、特定波長における個々の金属系粒子が示す局在プラズモン共鳴の単なる総和ではなく、それ以上の強さである。積層体においては、個々の金属系粒子が相互作用して強いプラズモン共鳴が発現する。このような強いプラズモン共鳴は、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現すると考えられる。
一般的に、プラズモン構造体は、吸光光度法で吸光スペクトルを測定したとき、紫外~可視光領域における最も長波長側にあるピークとしてプラズモン共鳴ピーク(以下、「プラズモンピーク」ともいう。)が観測される。プラズモンピークの極大波長における吸光度の大小から、プラズモン構造体のプラズモン共鳴の強さを評価することができる。吸光度値が大きいほどプラズモン共鳴の強さも大きい傾向にある。上記所定の構造を有する金属系粒子集合体層20は、下記吸光光度法により吸光スペクトルを測定したとき、紫外~可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
プラズモン構造体の吸光スペクトルは、吸光光度法によって測定することができる。具体的には、吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層が積層されたガラス基板の裏面側(金属系粒子集合体層とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から紫外~可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、該測定サンプルの基板と同じ厚み及び同じ材質の基板であって、金属系粒子集合体層が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度Iとを、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することにより得られる。このとき、吸光スペクトルの縦軸である吸光度は、下記式:
吸光度=-log10(I/I
で表される。
吸光スペクトルは、一般の分光光度計を用いて測定することができる。
また、紫外~可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長やその吸光度を測定するにあたっては、対物レンズと分光光度計を用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行ってもよい。
金属系粒子集合体層20をプラズモン構造体とするために、金属系粒子21は、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料からなることが好ましい。紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料とは、ナノ粒子又はその集合体としたときに、吸光光度法による吸光スペクトル測定において紫外~可視光領域に現れるプラズモンピークを示す材料であることを意味する。
紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な金属系材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属;アルミニウム、タンタル等の貴金属以外の金属;該貴金属及び貴金属以外の金属から選択される金属を含有する合金;該貴金属及び貴金属以外の金属から選択される金属を含む金属化合物(金属酸化物や金属塩等)が挙げられる。中でも、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な金属系材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属が好ましく、安価で吸収が小さい(可視光波長において誘電関数の虚部が小さい)という観点からは銀であることがより好ましい。
金属系粒子集合体層20を構成する複数の金属系粒子21は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、平均粒径が、好ましくは200nm以上1600nm以下、より好ましくは200nm以上1200nm以下、さらに好ましくは250nm以上500nm以下、なおさらに好ましくは300nm以上500nm以下の範囲内である。金属系粒子21の平均粒径は、金属系粒子21を構成する金属系材料の種類に応じて適切に選択されることが好ましい。
上記複数の金属系粒子21の平均粒径とは、複数の金属系粒子21から構成される金属系粒子集合体層20の直上からのSEM観察画像において、無作為に金属系粒子を10個選択し、各金属系粒子像内に無作為に接線径を5本引き(ただし、接線径となる直線はいずれも金属系粒子像内部のみを通ることができ、このうち1本は金属系粒子内部のみ通り、最も長く引ける直線であるものとする)、その平均値(以下、この平均値を「接線径平均値」ともいう。)を各金属系粒子の粒径としたときの、選択した10個の金属系粒子についての粒径の平均値である。接線径とは、金属系粒子の輪郭(投影像)をこれに接する2本の平行線で挟んだときの間隔(日刊工業新聞社 「粒子計測技術」,1994,第5頁)を結ぶ垂線と定義する。
平均粒径の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「Excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1~1280から10個の乱数(x、x、x、x、x、x、x、x、x、x10)、1~960から10個の乱数(y、y、y、y、y、y、y、y、y、y10)をそれぞれ得る。得られた各10個の乱数から10組の乱数組み合わせ(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)及び(x10,y10)を得る。1~1280から発生させた乱数の数値をx座標、1~960から発生させた乱数の数値をy座標として、10組の座標点(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)及び(x10,y10)を得る。そして、当該座標点を含む合計10個の金属系粒子像のそれぞれについて上記の接線径平均値を得、次いで当該10個の接線径平均値の平均値として平均粒径を得る。10組の乱数組み合わせである10個の座標点の少なくともいずれか1つが金属系粒子像内に含まれない場合、あるいは同一金属系粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、10個の座標点がすべて異なる金属系粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
上記複数の金属系粒子21は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、平均高さが、好ましくは、55nm以上500nm以下、より好ましくは55nm以上300nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下の範囲内である。金属系粒子21の平均高さとは、金属系粒子集合体層20のAFM観察画像において、無作為に金属系粒子を10個選択し、これら10個の金属系粒子の高さを測定したときの、10個の測定値の平均値である。
上記複数の金属系粒子21は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、アスペクト比が、好ましくは1以上8以下、より好ましくは2以上8以下、さらに好ましくは2.5以上8以下の範囲内である。金属系粒子21のアスペクト比は、上記平均高さに対する上記平均粒径の比(平均粒径/平均高さ)で定義される。金属系粒子21は真球状であってもよいが、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、アスペクト比が1より大きい扁平形状を有していることが好ましい。
上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、金属系粒子集合体層20において、複数の金属系粒子21は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離(以下、「平均粒子間距離」ともいう。)が1nm以上150nm以下の範囲内となるように配置されていることが好ましい。このような平均粒子間距離で複数の金属系粒子21を配置することにより、強いプラズモン共鳴を得やすくすることができるとともにプラズモン共鳴の作用範囲の伸長の効果をより高めることができる。
平均粒子間距離は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは1nm以上50nm以下、なおさらに好ましくは1nm以上20nm以下である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
平均粒子間距離とは、複数の金属系粒子21から構成される金属系粒子集合体層20の直上からのSEM観察画像において、無作為に金属系粒子を10個選択し、選択したそれぞれの金属系粒子について、隣り合う金属系粒子との粒子間距離を求めたときの、これら10個の金属系粒子の粒子間距離の平均値である。隣り合う金属系粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う金属系粒子との距離(隣り合う金属系粒子の表面同士間の最小距離)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。
平均粒子間距離の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「Excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1~1280から10個の乱数(x~x10)、1~960から10個の乱数(y~y10)をそれぞれ得る。得られた各10個の乱数から10組の乱数組み合わせ(x,y)から(x10,y10)を得る。1~1280から発生させた乱数の数値をx座標、1~960から発生させた乱数の数値をy座標として、10組の座標点(x,y)~(x10,y10)を得る。そして、当該座標点を含む合計10個の金属系粒子像のそれぞれについて、当該金属系粒子と隣り合う金属系粒子との粒子間距離を得、次いで当該10個の隣り合う金属系粒子との粒子間距離の平均値として平均粒子間距離を得る。10組の乱数組み合わせである10個の座標点の少なくともいずれか1つが金属系粒子像内に含まれない場合、あるいは同一金属系粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、10個の座標点がすべて異なる金属系粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、金属系粒子集合体層20において、複数の金属系粒子21は、上記平均粒子間距離の標準偏差が35nm以下となるように配置されることが好ましい。平均粒子間距離の標準偏差は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、より好ましくは30nm以下であり、また、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.2nm以上、さらに好ましくは0.3nm以上である。
平均粒子間距離の標準偏差は、次のように定義される。複数の金属系粒子21から構成される金属系粒子集合体層20の直上からのSEM観察画像において、無作為に金属系粒子をまず1個選択し、その金属系粒子について、隣り合う金属系粒子との粒子間距離を求める。隣り合う金属系粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う金属系粒子との距離(表面同士間の最小距離である。)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。上記SEM観察画像において、上記1個とは異なる9個の金属系粒子を無作為に選択し、これらの9個の金属系粒子について、上記と同様にして隣り合う金属系粒子との粒子間距離を求める。このようにして得られた合計10個の金属系粒子についての隣り合う金属系粒子との粒子間距離の標準偏差を、平均粒子間距離の標準偏差と定義する。
平均粒子間距離の標準偏差の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「Excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1~1280から10個の乱数(x~x10)、1~960から10個の乱数(y~y10)をそれぞれ得る。得られた各10個の乱数から10組の乱数組み合わせ(x,y)から(x10,y10)を得る。1~1280から発生させた乱数の数値をx座標、1~960から発生させた乱数の数値をy座標として、10組の座標点(x,y)~(x10,y10)を得る。そして、当該座標点を含む合計10個の金属系粒子像のそれぞれについて、当該金属系粒子と隣り合う金属系粒子との粒子間距離を得、次いで当該10個の隣り合う金属系粒子との粒子間距離の標準偏差として平均粒子間距離の標準偏差を得る。10組の乱数組み合わせである10個の座標点の少なくともいずれか1つが金属系粒子像内に含まれない場合、あるいは同一金属系粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、10個の座標点がすべて異なる金属系粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
金属系粒子21は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
金属系粒子集合体層20に含まれる金属系粒子21の数は、通常10個以上であり、好ましくは30個以上である。金属系粒子を10個以上含む金属系粒子集合体層を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用によって強いプラズモン共鳴及びプラズモン共鳴の作用範囲の伸長が発現しやすい。金属系粒子集合体層20に含まれる金属系粒子21の数は、例えば50個以上、さらには1000個以上、なおさらには10000個以上であってもよい。金属系粒子集合体層20における金属系粒子21の数密度は、好ましくは7個/μm以上、より好ましくは15個/μm以上である。
金属系粒子集合体層20は、当該層として導電性を示さないものであることが好ましく、金属系粒子集合体層20を構成する金属系粒子21は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との間で非導電性であることがより好ましい。金属系粒子集合体層20において、金属系粒子21間で電子の授受が可能な箇所が存在すると、プラズモン共鳴効果が低減する傾向にある。従って、金属系粒子21間は確実に離間されており、金属系粒子21間には導電性物質が介在されないことが好ましい。金属系粒子21それ自体は導電性を有していてもよい。
金属系粒子集合体層20が層として導電性を示さないものであることは、例えば、金属系粒子集合体層20にマルチメーター〔テスター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」)〕の一対のテスタープローブを10mm~15mm離して接触させたとき、レンジ設定「30MΩ」のときに、当該測定条件にて抵抗値が30MΩ以上である結果、「オーバーロード」と表示されることによって確認することができる。
(3)金属系粒子集合体層の製造方法
金属系粒子集合体層20は、例えば次のような方法によって作製することができる。
[A]基材10上において微小な種(seed)から複数の金属系粒子21を成長させていくボトムアップ法、
[B]複数の金属系粒子21を所定の厚みを有する両親媒性材料からなる保護膜で被覆した後、LB(Langmuir Blodgett)膜法により、これを基材10上にフィルム化する方法、
[C]その他、蒸着又はスパッタリングにより作製した薄膜を後処理する方法、レジスト加工、エッチング加工、金属系粒子が分散された分散液を用いたキャスト法等。
上記方法[A]においては、所定温度に調整された基材10上に、極めて低速で金属系粒子を成長させる工程(以下、「粒子成長工程」ともいう。)を含むことが好ましい。かかる粒子成長工程を含む製造方法によれば、上述の好ましい平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離及び平均粒子間距離の標準偏差を有する金属系粒子集合体層20を制御良く得ることができる。
粒子成長工程において、基材10上に金属系粒子を成長させる速度は、平均高さ成長速度で1nm/分未満であることが好ましく、0.5nm/分以下であることがより好ましい。ここでいう平均高さ成長速度は、平均堆積速度又は金属系粒子の平均厚み成長速度とも呼ぶことができ、下記式:
金属系粒子の平均高さ/金属系粒子成長時間
で定義される。「金属系粒子の平均高さ」の定義は上述のとおりである。
金属系粒子成長時間とは、金属系粒子の成長開始から終了までの時間をいい、具体的には、金属系材料の供給時間をいう。金属系粒子集合体層20を膜と捉えたとき、金属系粒子成長時間は、成膜時間と言い換えることもできる。金属系粒子を成長させる方法がスパッタリング法であるとき、金属系粒子成長時間はスパッタリング時間である。
粒子成長工程における基材10の温度は、好ましくは100℃以上450℃以下であり、より好ましくは200℃以上450℃以下であり、さらに好ましくは250℃以上350℃以下であり、なおさらに好ましくは300℃又はその近傍(300℃±10℃程度)である。
平均高さ成長速度、基材温度及び/又は金属系粒子成長時間等の調整によって、基材10上に成長される複数の金属系粒子21の平均粒子間距離及びその標準偏差、平均粒径、平均高さ、アスペクト比を制御することが可能である。
金属系粒子を成長させる際の圧力(装置チャンバ内の圧力)は、粒子成長可能な圧力である限り特に制限されないが、通常、大気圧未満である。圧力の下限は特に制限されないが、平均高さ成長速度を上記範囲内に調整し易いことから、好ましくは0.5Pa以上、より好ましくは6Pa以上、さらに好ましくは10Pa以上である。
基材10上に金属系粒子を成長させる具体的方法は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長できる方法である限り特に制限されないが、スパッタリング法、真空蒸着等の蒸着法を挙げることができる。スパッタリング法のなかでも、比較的簡便に金属系粒子集合体層を成長させることができ、かつ、1nm/分未満の平均高さ成長速度を維持しやすいことから、直流(DC)スパッタリング法を用いることが好ましい。
スパッタンリング方式は特に制限されず、イオンガンやプラズマ放電で発生したアルゴンイオンを電界で加速してターゲットに照射する直流アルゴンイオンスパッタリング法等を用いることができる。スパッタリング法における電流値、電圧値、基材・ターゲット間距離等の他の諸条件は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長がなされるよう適宜調整される。
なお、上述の好ましい平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離及び平均粒子間距離の標準偏差を有する金属系粒子集合体層20を制御良く得るためには、粒子成長工程において平均高さ成長速度を1nm/分未満とすることに加えて、平均粒径成長速度を5nm未満とすることが好ましいが、平均高さ成長速度が1nm/分未満である場合、通常、平均粒径成長速度は5nm未満となる。平均粒径成長速度は、より好ましくは1nm/分以下である。平均粒径成長速度とは、下記式:
金属系粒子の平均粒径/金属系粒子成長時間
で定義される。「金属系粒子の平均粒径」及び「金属系粒子成長時間」の定義は上述のとおりである。
上述の好ましい平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離及び平均粒子間距離の標準偏差を有する金属系粒子集合体層20を得るためには、上述した好ましい製造条件を考慮しつつ、粒子成長工程における金属系粒子成長時間を適切に調整することが好ましい。
(4)基材
基材10は、非導電性材料からなることが好ましい。基材10が導電性材料からなる場合、その上に形成される金属系粒子間で電子の授受が可能になるため、プラズモン共鳴効果が低減する傾向にあるためである。基材10を構成する非導電性材料としては、マイカ、SiO、ZrO、ガラス等の無機絶縁材料、熱可塑性樹脂等が挙げられる。基材10を有する積層体において、金属系粒子集合体層20は、基材10上に直接積層されることが好ましい。
基材10は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。基材10の形状は、例えば、板状が挙げられるが、曲面を有するもの(例えば、粒状等)であってもよい。板状の基材10(基板)は、その表面が平滑であることが好ましいが、表面凹凸を有していたり、曲面を有していてもよい。基材10は、透光性を有するか又は光学的に透明な基材であってもよいし、非透光性(光吸収性)であってもよい。
基材10の厚みは特に制限されず、例えば10μm以上10mm以下、好ましくは20μm以上5mm以下、さらに好ましくは30μm以上1mm以下である。
(5)シリコン原子含有層
積層体が備えるシリコン原子含有層30は第1表面を有する層である。ここでいう第1表面とは、シリコン原子含有層30の外縁を規定する表面の少なくとも一部であり、基材10を含む積層体においては、好ましくは、基材10側とは反対側の表面の少なくとも一部である。
図1に示される積層体の例において、シリコン原子含有層30は、金属系粒子集合体層20を基準に基材10とは反対側に、かつ、金属系粒子集合体層20における基材10とは反対側の表面の全体を覆うように配置されている。このように、シリコン原子含有層30は、金属系粒子集合体層20を保護する等の観点から、金属系粒子集合体層20における基材10とは反対側の表面の全体を覆うように配置されること、すなわち、積層体における基材10とは反対側の表面の一部が金属系粒子集合体層20の表面によって構成されていないことが好ましい。図1に示される積層体は、シリコン原子含有層30における基材10側とは反対側の表面が第1表面31であり、積層体における基材10とは反対側の表面全体がシリコン原子含有層30の表面(第1表面)で構成されている。また、シリコン原子含有層30は、金属系粒子21間の間隙を埋めるように、形成されることが好ましい。
シリコン原子含有層30の第1表面31は、X線光電子分光法によって測定される炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である。これにより、積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性を優れたものとすることができる。上記炭素原子のシグナル強度は、該耐性を高める観点から、好ましくは18.0原子%以下、より好ましくは15.0原子%以下、さらに好ましくは12.0原子%以下、なおさらに好ましくは10.0原子%以下である。
上記炭素原子のシグナル強度は、好ましくは0.2原子%以上、より好ましくは0.5原子%以上、さらに好ましくは1原子%以上であり、5原子%以上であってもよい。上記炭素原子のシグナル強度が低すぎるシリコン原子含有層30を形成する場合には、形成プロセス選定上、その形成過程において金属系粒子集合体層20に損傷を与えるおそれがある。具体的には、例えば、金属系粒子集合体層20に損傷を与えるおそれのある水準の酸素導入と加熱が必要なプロセスを取らざるを得ないおそれがある。また、上記炭素原子のシグナル強度が低すぎないシリコン原子含有層30を形成する場合には、後述するシリコン原子含有層形成用組成物として、比較的高い炭素原子のシグナル強度を有する組成物を用いることができる。このような組成物を用いてシリコン原子含有層30を形成することにより、該組成物の塗工性、ひいては積層体の量産性を高めることができるとともに、シリコン原子含有層30の表面(基材10側とは反対側の表面、第1表面)の平滑性を高めることができる。
第1表面の炭素原子のシグナル強度は、X線光電子分光法により、後述する[実施例]の項に記載される条件に従って測定することができる。炭素原子のシグナル強度は、X線光電子分光法によって取得されるスペクトルが有する全シグナルの合計面積に占める炭素原子のシグナルの面積の割合(%)として定義される。
積層体における基材10とは反対側の表面は、X線光電子分光法によって測定される金属系粒子21を構成する金属の原子のシグナル強度が、好ましくは7.0原子%以下、より好ましくは5.0原子%以下、さらに好ましくは3.0原子%以下、なおさらに好ましくは2.0原子%以下、特に好ましくは1.5原子%以下、なお特に好ましくは1.0原子%以下、さらになお特に好ましくは0.7原子%以下、最も好ましくは検出限界未満である。これにより、金属系粒子集合体層20をより確実に保護することができるとともに、積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性を優れたものとすることができる。上記金属の原子のシグナル強度は、上記表面から観測される金属原子シグナルの強度(原子%)として測定することができ、X線光電子分光法によって取得されるスペクトルが有する全シグナルの合計面積に占める該金属原子のシグナルの面積の割合(%)として定義される。
積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性を評価するための試験は、温度25℃のピラニア溶液に積層体を30分間浸漬するピラニア溶液洗浄試験である。該ピラニア溶液洗浄試験に用いられるピラニア溶液は、98質量%濃度である濃硫酸と30質量%過酸化水素水とを4:1の体積比で混合してなる混合液である。上記耐性に優れる積層体は、上記ピラニア溶液洗浄試験後において、金属系粒子集合体層20に穴状(ピンホール状)の溶解が生じている箇所が無いか、又は、該箇所が存在する場合でも、該穴の数が少ないか若しくは該穴の径が小さい。また、上記耐性に優れる積層体は、上記ピラニア溶液洗浄試験前後で、シリコン原子含有層30の表面(基材10側とは反対側の表面、第1表面)の表面粗さの変化が小さい傾向にある。なお、ピラニア溶液洗浄に対する耐性が極めて低い積層体について上記ピラニア溶液洗浄試験を実施すると、シリコン原子含有層30の下の金属系粒子集合体層20を貫通する程度にまで浸食されることがある。
シリコン原子含有層30は、X線光電子分光法によって同定可能な原子として、シリコン(Si)原子及び炭素(C)原子のほか、酸素(O)原子、窒素(N)原子等を含有していてもよい。シリコン原子含有層30の具体的な構成材料としては、例えば、Si、Si、Si、Si、Si、Si等が挙げられ、好ましくは、Si、Si、Siである。a~qは、各化合物における各原子の組成比を表す。シリコン原子含有層30は、2種以上の材料から構成されていてもよい。また、シリコン原子含有層30は、単層構造であってもよいし、異なる材料からなる多層構造であってもよい。
シリコン原子含有層30の第1表面31は、X線光電子分光法によって測定される酸素原子のシグナル強度が、例えば30原子%以上90原子%以下である。該酸素原子のシグナル強度は、積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性を高める観点から、好ましくは40原子%以上80原子%以下、より好ましくは50原子%以上70原子%以下、さらに好ましくは55原子%以上65原子%以下、特に好ましくは60原子%以上65原子%以下である。
シリコン原子含有層30の第1表面31は、X線光電子分光法によって測定されるシリコン原子のシグナル強度が、例えば5原子%以上50原子%以下である。該シリコン原子のシグナル強度は、積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性を高める観点から、好ましくは10原子%以上45原子%以下、より好ましくは20原子%以上40原子%以下、さらに好ましくは25原子%以上35原子%以下である。
シリコン原子含有層30は、アモルファス層であることが好ましい。後述する積層体の製造方法によれば、比較的高温で熱処理する工程を含むにもかかわらず、シリコン原子含有層30をアモルファス層とすることが可能である。シリコン原子含有層30がアモルファス層であることは、シリコン原子含有層30の原料として、塗工プロセスが適用可能なものを選択でき、工業的にスループットの高い生産が行える点で有利である。
シリコン原子含有層30がアモルファス層であることは、X線回折法により確認することができる。すなわち、シリコン原子含有層30について、X線回折法により、後述する[実施例]の項に記載される条件に従って測定を行ったときに、2θ=5°~85°の範囲(好ましくは、0°~90°の範囲)において、結晶に由来する半値全幅(FWHM)が5°以下のピークが存在しないことをもって、シリコン原子含有層30がアモルファス層であると判断することができる。
シリコン原子含有層30の平均厚みは、通常10nm以上300nm以下であり、好ましくは15nm以上250nm以下、より好ましくは20nm以上200nm以下である。シリコン原子含有層30の平均厚みは、30nm以上、40nm以上、50nm以上、55nm以上又は60nm以上であってもよい。シリコン原子含有層30の平均厚みが上記範囲であることにより、金属系粒子集合体層20を保護する機能及び積層体の耐久性を十分に付与することが可能となり、また、金属系粒子集合体層20の表面凹凸を平坦化し得る。
また、金属系粒子集合体層20として上記[a]及び[b]の特徴を示す金属系粒子集合体層を用いれば、平均厚みが10nm以上であるシリコン原子含有層30を積層する場合であっても、金属系粒子集合体層20を保護する機能及び積層体の耐久性を十分に付与しながら、金属系粒子集合体層20によるプラズモン共鳴の効果(例えば、発光体の発光増強効果)を得ることができる。
シリコン原子含有層30は、上記範囲の平均厚みを有し、かつ、金属系粒子集合体層20における基材10とは反対側の表面の全体を覆うような厚みを有していることが好ましい。シリコン原子含有層30が金属系粒子集合体層20における基材10とは反対側の表面の全体を覆っていることは、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて、積層体の表面像を取得することによって確認することができる。あるいは、第1表面の炭素原子のシグナル強度の測定と同様に、積層体における基材10とは反対側の表面をX線光電子分光法により測定し、金属系粒子21を構成する金属の原子のシグナル強度が2.0原子%以下であることによって確認することもできる。
シリコン原子含有層30が金属系粒子集合体層20における基材10とは反対側の表面の全体を覆っている場合において、積層体における基材10とは反対側の表面は、X線光電子分光法によって測定される金属系粒子21を構成する金属の原子のシグナル強度が、好ましくは1.5原子%以下、より好ましくは1.0原子%以下、さらに好ましくは0.7原子%以下、特に好ましくは検出限界以下である。
シリコン原子含有層30の平均厚みは、次の方法に従って測定される。日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて、積層体の断面像を取得する。得られた断面像において、金属系粒子集合体層20の表面であって、シリコン原子含有層30との界面を形成している表面上の点を無作為に10点選択する。ついで、当該10点のそれぞれからシリコン原子含有層30の外側表面(第1表面31)まで、最短となるように直線を引き、得られた10本の直線の長さの平均値をシリコン原子含有層30の平均厚みとする。
シリコン原子含有層30は、ウェットコーティング層であることが好ましい。ウェットコーティング層であるとは、塗布液(後述するシリコン原子含有層形成用組成物)を塗布する工程を経て形成される層をいう。シリコン原子含有層30がウェットコーティング層であることは、シリコン原子含有層30の表面(基材10側とは反対側の表面、第1表面)を平滑にするうえで有利である。シリコン原子含有層30がウェットコーティング層であることにより、表面(基材10側とは反対側の表面、第1表面)の粗さが小さいシリコン原子含有層30を備える積層体が得られやすい。シリコン原子含有層30の表面粗さが小さいと、該表面にコーティング等の後続加工を施す場合において、該後続加工の加工の均一性を向上させやすく、また、後続加工に伴う欠陥発生等による不良を低減させやすい。
なお、シリコン原子含有層30は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により形成されてもよいが、この場合、得られるシリコン原子含有層30は、金属系粒子集合体層20の表面凹凸に追随して表面凹凸を有する(表面粗さが大きい)層となりやすく、また、結晶性のシリコン原子含有層30となりやすい。
シリコン原子含有層30の表面(基材10側とは反対側の表面、第1表面)のJIS B 0601:2001に準拠して測定される算術平均粗さRa〔以下、「Ra(試験前)」ともいう。〕は、好ましくは10nm以下、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは5nm以下、なおさらに好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。Ra(試験前)は、0.1nm以上であってもよい。
本発明に係る積層体は、ピラニア溶液洗浄に対する耐性に優れる。該積層体は、上記ピラニア溶液洗浄試験後のJIS B 0601:2001に準拠して測定される算術平均粗さRa〔以下、「Ra(試験後)」ともいう。〕が、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは8nm以下、なおさらに好ましくは5nm以下、特に好ましくは3nm以下、なお特に好ましくは2nm以下である。Ra(試験後)は、0.1nm以上であってもよい。
本発明に係る積層体は、Ra(試験前)が10nm以下、8nm以下、5nm以下、3nm以下又は2nm以下であり、かつ、Ra(試験後)が10nm以下、8nm以下、5nm以下、3nm以下又は2nm以下であり得る。また、本発明に係る積層体は、上記試験前後で、シリコン原子含有層30の表面(基材10側とは反対側の表面、第1表面)の表面粗さの変化が小さい傾向にある。
<センサ素子>
積層体は、被検出物質を検出するためのセンサ装置に搭載されるセンサ素子に用いることができる。例えば、積層体をピラニア溶液で洗浄した後、フォトリソグラフィ法等を用いて、シリコン原子含有層30の表面(基材10側とは反対側の表面、第1表面)の所定の位置に、被検出物質と特異的に結合する捕捉物質を導入することによりセンサ素子とすることができる。
上記センサ素子は、例えば、次のようにして被検出物質の検出を行うことができる。検出は、定性的又は定量的な検出であってよく、例えば被検出物質の同定又は定量等を指す。センサ素子が有する捕捉物質に特異的に結合した標識された被検出物質に向けて励起光を照射すると発光体である標識が励起される。そして、好ましくはプラズモン構造体であるセンサ素子の金属系粒子集合体層が励起された発光体と共鳴して、プラズモン発光増強が発現する。励起された発光体からの発光を検出器を用いて検出することにより被検出物質を定性的又は定量的に検出することができる。例えば、発光強度を測定することにより被検出物質の存在量を定性的又は定量的に測定することができる。
本発明に係る積層体を備えるセンサ素子によれば、積層体が好ましくはプラズモン構造体である金属系粒子集合体層を含んでおり、これによりプラズモン発光増強を発現させることができるため、検出感度及び検出精度を高めることができる。
被検出物質は、定性的又は定量的な検出を行う対象の物質であり、捕捉物質に対して特異的に結合する物質である。被検出物質としては特に制限されず、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、タンパク質、糖類、糖タンパク、レクチン、ウィルス、細胞、抗体、エクソソーム等が挙げられる。被検出物質が生体由来物質又は生体関連物質であるセンサ素子をバイオセンサ素子ともいう。
核酸は、プリン塩基又はピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルの重合体(ヌクレオチド鎖)を意味し、プローブDNAを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドが重合したDNA(全長あるいはその断片)、RNA、ポリアミドヌクレオチド誘導体(PNA)等を含む。また、ヌクレオシドは、塩基と糖がグリコシド結合した化合物であり、ヌクレオチドはヌクレオシドにリン酸が結合した化合物であり、ヌクレオシド及びヌクレオチドは、塩基を含む化合物である。
「特異的に結合」とは、物質間の非共有結合、共有結合、水素結合を含む化学結合を広く意味し、例えば、タンパク質分子間の相互作用、分子間の静電相互作用等が挙げられる。
捕捉された被検出物質の検出は、被検出物質をあらかじめ発光体である標識で標識しておき、この標識からの発光を検出することによって行うことができる。標識は、捕捉物質と被検出物質との特異的結合により得られる複合体に特異的に結合する標識物質であってもよい。発光体は、励起光による励起エネルギーの注入により発光する物質である。発光体における発光の原理は限定されることはなく、蛍光、りん光、化学発光等が挙げられる。発光体としては、従来公知のものを用いることができる。
捕捉物質は、被検出物質と特異的に結合して、これを捕捉するために機能する物質である。捕捉物質は、例えば、シリコン原子含有層30の表面に固定される。捕捉物質は、例えば、被検出物質と特異的に結合できる結合活性基を有する物質である。結合活性基としては、例えば、被検出物質と静電相互作用できる、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。捕捉物質としては特に制限されず、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、タンパク質、糖類、糖タンパク等が挙げられる。
センサ装置の例は、例えば、DNAシーケンサ、DNAマイクロアレイ、ウィルスセンサ、イオンセンサ、プレートリーダー(プロテインチップ、糖鎖チップ、レクチンチップ等)、顕微分光装置、グルコースセンサ等のバイオセンサ装置である。
<積層体の製造方法>
本発明は、積層体の製造方法を提供する。該積層体は、互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層とシリコン原子含有層とを含み、シリコン原子含有層は第1表面を有し、X線光電子分光法によって測定される第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である積層体である。ここで説明する製造方法によって得られる積層体の具体的な構造、基材、金属系粒子集合体層、金属系粒子及びシリコン原子含有層の材質等については、上記<積層体>の項での記載が引用される。本発明に係る積層体の製造方法は、上記<積層体>の項で説明した積層体の製造方法として好適である。
本発明に係る積層体の製造方法は、
基材上に前記金属系粒子集合体層を形成する工程と、
金属系粒子集合体層が形成された基材上に、シリコン原子含有層形成用組成物を塗布して塗布層を形成する工程と、
塗布層を300℃以上800℃以下の温度で熱処理する工程と、
を含む。
金属系粒子集合体層を形成する工程は、例えば、上記<積層体>の項で説明した金属系粒子集合体層の製造方法に従って実施することができる。
塗布層を形成する工程では、金属系粒子集合体層が形成された基材上に、シリコン原子含有層形成用組成物を塗布する。このようなコーティング法を用いることで、所望の平均厚みを有し、表面が平滑なシリコン原子含有層を形成しやすくすることができる。塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、スリットアンドスピンコート法等が挙げられる。
シリコン原子含有層形成用組成物は、塗布層を熱処理する工程によって、例えば上記で例示した材料からなるシリコン原子含有層を形成可能な物質(シリコン原子含有層形成成分)を含有する。該物質としては、例えば、スピンオングラス(SOG)、ポリシラザン、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)等のシリコン原子含有物質が挙げられる。スピンオングラス(SOG)は、シロキサン構造を有しており、例えば、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー等が挙げられる。
中でも、炭素原子のシグナル強度が上述の好ましい下限値以上であるシリコン原子含有層を形成する観点からは、シリコン原子含有層形成用組成物は、有機基や有機構造を有する有機SOG等の炭素原子を有するシリコン原子含有層形成成分を含有することが好ましい。有機SOGとしては、メチル基又はエチル基を有するSOGが挙げられる。有機SOGを用いることで、シリコン原子含有層形成用組成物の塗工性を向上させることもできる。
シリコン原子含有層形成用組成物は、シリコン原子含有層形成成分のほか、溶剤、反応触媒、水、界面活性剤等をさらに含むことができる。
塗布層を形成した後、該塗布層を300℃以上800℃以下の温度で熱処理する工程を実施する。熱処理の温度は、好ましくは350℃以上700℃以下、より好ましくは400℃以上650℃以下、さらに好ましくは450℃以上600℃以下、特に好ましくは500℃以上600℃以下である。熱処理温度が低すぎると、炭素原子を有するシリコン原子含有層形成成分を用いる場合において、シリコン原子含有層30の炭素原子のシグナル強度が好ましい範囲よりも大きくなりやすく、この場合、積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性が低いものとなる。熱処理温度が高すぎると、金属系粒子集合体層20の酸化が起こり、かつ酸化された金属系粒子の分解温度又は金属系粒子集合体層の溶融温度を超えることがあり、この場合、熱処理工程において金属系粒子集合体層20に損傷を与えるおそれがある。
熱処理の時間は、例えば1分以上720分以下であり、好ましくは2分以上480分以下、より好ましくは2分以上240分以下である。熱処理は、例えば、空気中又は不活性ガス(例えば窒素、アルゴン)雰囲気中で行うことができる。熱処理の圧力は、常圧であってよい。
積層体の製造方法は、金属系粒子集合体層を形成する工程の前に、基材を脱脂洗浄する工程をさらに含むことができる。工程をさらに含むことにより、得られる積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性をさらに高めることができる。基材の脱脂洗浄としては、基材の材質に応じて適宜の方法を採用することができ、例えば有機溶剤及び水から選択される液体を用いた洗浄が挙げられる。洗浄方法としては、該液体に浸漬する方法、該液体に浸漬しながら超音波洗浄する方法、該液体を染み込ませた布(織布、不織布等)で拭く方法等が挙げられる。脱脂洗浄は、2種以上の液体を用いた洗浄工程の組み合わせであってもよい。例えば、基材がガラス基板である場合、脱脂洗浄は、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等)を用いた超音波洗浄、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等)を用いた超音波洗浄、及び超純水を用いた超音波洗浄をこの順で含むことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)ガラス基板の脱脂洗浄
一辺が5cmの正方形であり、厚みが0.7mmであるソーダガラス基板を用意した。このソーダガラス基板に対して、脱脂洗浄処理として、イソプロピルアルコール洗浄、アセトン洗浄、ついで超純水洗浄を行った。
(2)金属系粒子集合体層の形成
直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、下記の条件で、脱脂洗浄処理を施したソーダガラス基板上に銀粒子を極めてゆっくりと成長させることにより、基板表面の全面に金属系粒子集合体層を形成した。
使用ガス:アルゴン
チャンバ内圧力(スパッタガス圧):10Pa
基板・ターゲット間距離:100mm
スパッタ電力:4W
平均粒径成長速度(平均粒径/金属系粒子成長時間):0.9nm/分
平均高さ成長速度(=平均堆積速度=平均高さ/金属系粒子成長時間):0.25nm/分
基板温度:300℃
金属系粒子成長時間:360分
図2は、基板上に形成された金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図2(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図2(b)は50000倍スケールの拡大像である。SEM画像の取得には、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用いた。
図2に示されるSEM画像より、金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は335nm、平均粒子間距離は16.7nm、平均粒子間距離の標準偏差は27.8nmと求められた。SEM画像より、金属系粒子集合体層は、約6.25×1010個(約25個/μm)の銀粒子を有することがわかる。また、キーエンス社製「VN-8010」を用いたAFM像撮影の結果に基づき、銀粒子の平均高さは96.2nmと求められた。よって、銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.48と算出された。金属系粒子集合体層のAFM画像を図3に示す。図3に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
基板上に形成された金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
(3)シリコン原子含有層の形成
基板上に形成された金属系粒子集合体層の上にシリコン原子含有層形成用組成物をスピンコートして塗布層を形成した。次いで、基板/金属系粒子集合体層/塗布層からなる中間積層体を乾燥炉に導入して、常圧で空気中、550℃で30分間熱処理することにより、基板/金属系粒子集合体層/シリコン原子含有層からなる図1に示される構成の積層体を得た。シリコン原子含有層形成用組成物としては、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T-7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。
(4)シリコン原子含有層の分析及び積層体の評価
(4-1)シリコン原子含有層による金属系粒子集合体層の被覆状態及びシリコン原子含有層の平均厚み
積層体を層の積層方向と平行な面で切断し、切断部の断面像を日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用いて観察することにより、シリコン原子含有層が金属系粒子集合体層におけるガラス基板とは反対側の表面の全体を覆っていることを確認した。また、後述する装置及び測定条件により、積層体におけるガラス基板とは反対側の表面をX線光電子分光法により測定したところ、銀原子のシグナルは検出されなかったことから、この点からも、シリコン原子含有層が金属系粒子集合体層におけるガラス基板とは反対側の表面の全体を覆っていることが確認された。また、シリコン原子含有層は、金属系粒子集合体層の銀粒子表面上だけではなく、銀粒子間の隙間にも形成されていることが確認された。
また、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用いた上記測定方法に基づくシリコン原子含有層の平均厚みは、87.0nmであった。
(4-2)第1表面を構成する原子のシグナル強度
下記装置を用いた下記測定条件に従うX線光電子分光法によってシリコン原子含有層の第1表面(積層体におけるガラス基板とは反対側の表面)から観測される原子シグナルの強度(原子%)を求めた。各原子のシグナル強度は、X線光電子分光法によって取得されるスペクトルが有する全シグナルの合計面積に占める各原子のシグナルの面積の割合(%)として定義される。第1表面の任意の3箇所について上記各原子のシグナルの面積の割合(%)を測定し、これらの測定値の平均値をその原子シグナルの強度とした。X線光電子分光法によって同定された原子は、C、O及びSiであった。これらのシグナル強度を下記に示す。
C : 8.8原子%
O :61.9原子%
Si:29.3原子%
(装置及び測定条件)
・装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック製 K-Alpha X線光電子分光システム
・測定範囲:400×800mm
・測定元素(積算回数):O(4),C(4),Si(4)
・Dwell Time:50ms
・中和銃:有
・GCIB:有(表面の汚染除去のため)
(4-3)シリコン原子含有層の結晶状態
下記装置を用いた下記測定条件に従うX線回折法によってシリコン原子含有層の第1表面(積層体におけるガラス基板とは反対側の表面)のXRDスペクトルを取得した。2θの全範囲にわたって半値全幅(FWHM)が5°以下であるピークが存在しなかったことから、シリコン原子含有層がアモルファス層であることが確認された。
(装置及び測定条件)
・装置:リガク製 SmartLab
・測定方法:θ/2θ測定法
・測定範囲:2θ=5°~90°
・管電圧:45 kV
・管電流:200 mA
(4-4)第1表面の算術平均粗さRa(試験前)
得られた積層体におけるシリコン原子含有層の第1表面について、JIS B 0601:2001に準拠して測定される算術平均粗さRaを測定したところ、1.5nmであった。
(4-5)第1表面の算術平均粗さRa(試験後)
得られた積層体を、温度25℃のピラニア溶液に積層体を30分間浸漬するピラニア溶液洗浄試験に供した。用いたピラニア溶液は、98質量%濃度である濃硫酸と30質量%過酸化水素水とを4:1の体積比で混合してなる混合液である。該試験後、上記(4-4)と同様にしてJIS B 0601:2001に準拠して測定される第1表面の任意の1点について算術平均粗さRaを測定したところ、2.0nmであった。
(4-6)積層体のピラニア溶液洗浄に対する耐性の評価
上記(4-5)に記載のピラニア溶液洗浄試験後の積層体におけるシリコン原子含有層の第1表面を光学顕微鏡で観察したところ、その表面性状は、試験前と同等であった。
<実施例2>
シリコン原子含有層形成用組成物の塗布層を形成した後に実施する熱処理の温度を400℃としたこと以外は実施例1と同様にして、基板/金属系粒子集合体層/シリコン原子含有層からなる図1に示される構成の積層体を得た。得られた積層体について、実施例1(4)と同様にして、シリコン原子含有層の分析及び積層体の評価を行った。
本実施例においても、走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用いた断面像の観察及びX線光電子分光法による測定の双方から、シリコン原子含有層が金属系粒子集合体層におけるガラス基板とは反対側の表面の全体を覆っていることが確認された。シリコン原子含有層の平均厚みは、138.1nmであった。
X線光電子分光法によってシリコン原子含有層の第1表面を測定したところ、同定された原子は、C、O、Si及びAgであった。これらのシグナル強度を下記に示す。
C :11.7原子%
O :58.4原子%
Si:29.1原子%
Ag: 0.8原子%
シリコン原子含有層の第1表面のXRDスペクトルから、シリコン原子含有層がアモルファス層であることが確認された。
シリコン原子含有層の第1表面について算術平均粗さRa(試験前)を測定したところ、2.1nmであった。また、第1表面について算術平均粗さRa(試験後)を測定したところ、4.0nmであった。ピラニア溶液洗浄試験後の積層体におけるシリコン原子含有層の第1表面を光学顕微鏡で観察したところ、ごく小さな穴状の溶解を生じている箇所がわずかに認められた。
<実施例3>
ガラス基板の脱脂洗浄を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、基板/金属系粒子集合体層/シリコン原子含有層からなる図1に示される構成の積層体を得た。得られた積層体について、実施例1(4)と同様にして、シリコン原子含有層の分析及び積層体の評価を行った。
本実施例においても、走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用いた断面像の観察及びX線光電子分光法による測定の双方から、シリコン原子含有層が金属系粒子集合体層におけるガラス基板とは反対側の表面の全体を覆っていることが確認された。シリコン原子含有層の平均厚みは、138.1nmであった。
X線光電子分光法によってシリコン原子含有層の第1表面を測定したところ、同定された原子は、C、O、Si及びAgであった。これらのシグナル強度を下記に示す。
C :10.1原子%
O :59.6原子%
Si:29.2原子%
Ag: 1.1原子%
シリコン原子含有層の第1表面のXRDスペクトルから、シリコン原子含有層がアモルファス層であることが確認された。
シリコン原子含有層の第1表面について算術平均粗さRa(試験前)を測定したところ、2.1nmであった。また、第1表面について算術平均粗さRa(試験後)を測定したところ、13.3nmであった。ピラニア溶液洗浄試験後の積層体におけるシリコン原子含有層の第1表面を光学顕微鏡で観察したところ、小さな穴状の溶解を生じている箇所がわずかに認められた。
<比較例1>
ガラス基板の脱脂洗浄を行わなかったこと、及び、シリコン原子含有層形成用組成物の塗布層を形成した後に実施する熱処理の温度を200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、基板/金属系粒子集合体層/シリコン原子含有層からなる図1に示される構成の積層体を得た。得られた積層体について、実施例1(4)と同様にして、シリコン原子含有層の分析及び積層体の評価を行った。
本比較例においても、走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用いた断面像の観察及びX線光電子分光法による測定の双方から、シリコン原子含有層が金属系粒子集合体層におけるガラス基板とは反対側の表面の全体を覆っていることが確認された。シリコン原子含有層の平均厚みは、142.2nmであった。
X線光電子分光法によってシリコン原子含有層の第1表面を測定したところ、同定された原子はC、O及びSiであり、これらのシグナル強度は下記のとおりであった。
C :20.7原子%
O :51.5原子%
Si:27.8原子%
シリコン原子含有層の第1表面のXRDスペクトルから、シリコン原子含有層がアモルファス層であることが確認された。
シリコン原子含有層の第1表面について算術平均粗さRa(試験前)を測定したところ、1.5nmであった。ピラニア溶液洗浄試験後の積層体におけるシリコン原子含有層の第1表面を光学顕微鏡で観察したところ、シリコン原子含有層が溶解により消失し、さらには、その下の金属系粒子集合体層も溶解により消失している箇所が存在した。
図4はピラニア溶液洗浄試験前の実施例1の積層体をシリコン原子含有層側から見たときのSEM画像であり、図5はピラニア溶液洗浄試験後の実施例1の積層体をシリコン原子含有層側から見たときのSEM画像である。いずれも50000倍スケールの拡大像である。SEM画像の取得には、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用いた。ピラニア溶液洗浄試験前後で、表面性状におよそ変化がないことを確認できる。
また、図6~図10はそれぞれ、下記積層体をシリコン原子含有層側から見たときの光学顕微鏡写真(700倍)である。
図6:ピラニア溶液洗浄試験前の実施例1の積層体
図7:ピラニア溶液洗浄試験後の実施例1の積層体
図8:ピラニア溶液洗浄試験後の実施例2の積層体
図9:ピラニア溶液洗浄試験後の実施例3の積層体
図10:ピラニア溶液洗浄試験後の比較例1の積層体
10 基材、20 金属系粒子集合体層、21 金属系粒子、30 シリコン原子含有層、31 第1表面。

Claims (12)

  1. 互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層と、シリコン原子含有層とを含み、
    前記シリコン原子含有層は、第1表面を有し、
    X線光電子分光法によって測定される前記第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である、積層体。
  2. 基材と、前記基材の表面に配置される前記金属系粒子集合体層と、前記金属系粒子集合体層上に配置される前記シリコン原子含有層とを含み、
    前記シリコン原子含有層は、前記金属系粒子集合体層における前記基材とは反対側の表面の全体を覆うように配置される、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記シリコン原子含有層がアモルファス層である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記シリコン原子含有層がウェットコーティング層である、請求項1又は2に記載の積層体。
  5. 前記シリコン原子含有層の平均厚みが10nm以上300nm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
  6. 前記金属系粒子が銀からなる、請求項1又は2に記載の積層体。
  7. 前記複数の金属系粒子は、その平均粒径が200nm以上1600nm以下の範囲内であり、平均高さが55nm以上500nm以下の範囲内であり、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下の範囲内であり、
    前記金属系粒子集合体層において、前記複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上150nm以下の範囲内となるように配置されている、請求項1又は2に記載の積層体。
  8. 前記アスペクト比が1より大きい、請求項7に記載の積層体。
  9. JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記第1表面の算術平均粗さRaが10nm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
  10. 98質量%濃度である濃硫酸と30質量%過酸化水素水とを4:1の体積比で混合してなる温度25℃の混合液に30分間浸漬した後のJIS B 0601:2001に準拠して測定される前記第1表面の算術平均粗さRaが15nm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
  11. 積層体の製造方法であって、
    前記積層体は、互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体層と、シリコン原子含有層とを含み、
    前記シリコン原子含有層は、第1表面を有し、
    X線光電子分光法によって測定される前記第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下であり、
    前記製造方法は、
    基材上に前記金属系粒子集合体層を形成する工程と、
    前記金属系粒子集合体層が形成された基材上に、シリコン原子含有層形成用組成物を塗布して塗布層を形成する工程と、
    前記塗布層を300℃以上800℃以下の温度で熱処理する工程と、
    を含む、製造方法。
  12. 前記金属系粒子集合体層を形成する工程の前に、前記基材を脱脂洗浄する工程をさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
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