JP2024030907A - 回転電機 - Google Patents
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Abstract
【課題】掃除機やプロペラファンの動力源として使用可能な高出力密度な単相モータの放熱性を高め、かつ、コイル導体の抵抗値を低下させて発熱量を低減でき、かつ、人に耳障りに感じる振動・騒音を低減するために、振動周波数を高次にシフトさせて振動次数を高めることが可能な回転電機を実現する。【解決手段】単相で駆動される回転電機100において、回転子22と、複数の回転子磁石4と、シャフト5と、固定子鉄心1と、複数の固定子コイル2と、を有する。回転子磁石4の数と、固定子コイル2の数との比が3:1である単相モータを複数備え、複数の単相モータ100a、100b、100cが、シャフト5の軸方向に配置されている。【選択図】図4C
Description
本発明は、単相の回転電機に関する。
近年、回転電機(モータ)の出力密度を向上させるトレンドとして、回転電機の高速化が進められている。回転電機の出力は、回転数とトルクの積であり、トルクは電流に比例して増加する。電流を少なくして、すなわち、トルクを小さくして、代わりに回転数を高めることで小さな電流で同等の出力を得ることができる。
自動車駆動用の回転電機は、回転数を高め、ギヤの減速比率を大きくすることでモータを小型化して軽量化する方向で開発が進められている。
自動車のような移動体では、モータなどの駆動系自体の重量も燃費に寄与するため、小型軽量が求められている。同様に、ドローンや、航空機向けモータにおいても小型で軽量のものが必要である。ドローンや、航空機向けモータにおいては、モータの回転数を高めることによって、プロペラの仕事量を増やすような使われ方となっている。
移動体以外でも、高速化によるモータの小型軽量化が進んでいる。家庭で使用される掃除機は、スティック型やコードレス型が好まれるようになってきており、スティックタイプは使用者が扱える重量である必要があり、電池と電動送風機を併せて軽くする必要がある。
また、コードレスタイプの掃除機においても、電池を追加で搭載する必要があり、これまでの掃除機に使用していた電動送風機よりも軽量の駆動系が必要となってきている。
このため、モータを高速にして小型化する必要性が高まっており、掃除機では各メーカとも1分間あたり約10万回転超のモータが使用されるようになっている。
モータの高速化では、駆動周波数が高くなることから、軟磁性材料には、鉄損が低い材料の利用が望まれる。薄手の電磁鋼板や6.5%Siを含有した電磁鋼板、鉄基アモルファス材料、鉄基の高Bsナノ結晶材料などが候補となる。
また、小型にすることで、モータの放熱面積が低下するため、放熱性能の向上が必要となる。
掃除機用のモータでは、吸引する空気をモータの表面にあてることで放熱性を確保している設計がなされており、モータの内部に空気の流路を大きく取るような設計となっている。
特許文献1では、4極の単相ブラシレスモータの構造が示されている。送風機などのプロペラファンを有する用途では、単相モータが使用されることが多い。これは、同一方向の回転しかしないことと、ファンとして使用する回転数が概ね決まっているため、細かな制御を必要としないためである。
単相モータは、一般的に使用されている3相モータよりもスイッチの素子数が少なく、安価なシステムとできるなどの利点を有している。単相ブラシレスモータの極数とスロット数は、同一であり、特許文献1に示されている例では、固定子極が4極、回転子磁石極数が4となっている。
特許文献2では、固定子鉄心の外周側に空隙を設けることによって、固定子保持ケースと固定子鉄心の間に空気が流れるようにして、鉄心で発生する鉄損による熱を放熱する構成がとられている。
また、固定子が1極ごとに分割されたY型分割コアとすることで、ティースへの巻き線を容易にし、かつ、占積率の高い巻線ができるようにしている。これによって,銅損を低減できるため、モータの発熱を抑え、高速のモータを構成することができるとして提案されている。
特許文献3および特許文献4には掃除機に適用される単相モータが示されている。
特許文献3は、4極4スロットの単相モータが示されている。モータの内部を通風路とするために、モータの構造を長方形状にすることで、吸い込み風の流路を大きく構成している。
特許文献3は、4極4スロットの単相モータが示されている。モータの内部を通風路とするために、モータの構造を長方形状にすることで、吸い込み風の流路を大きく構成している。
特許文献4は、磁石極数8、固定子極ティースが8の単相モータが示されている。固定子の巻き線を集中させることによって固定子極間に大きな通風路を設けている構造としている。
このように、回転数で出力を確保する出力密度の高い送風機用モータは、モータの軸方向に風を流すことで冷却性能を得る構造となっている。
特許文献1や特許文献2に示されている単相モータは、固定子のティースに巻線を巻き付ける構造となっており、スロットと呼ばれる巻線スペースに巻線が配置される構造となる。
このため、軸方向に風を通して冷却しようとしても、通風路の断面積が小さく、冷却性能を高くすることができないといった課題がある。
特許文献2では、その課題を克服するために、コアの外側に通風路を設けているが、コイルのジュール損失によって発生する熱を、コアへの熱伝導を経て、コアの表面から放熱させなければならないために、放熱性能を高くできない構造となっている。
一方、特許文献3および特許文献4は、モータを構成する断面に大きな通風流路を設けているため、吸い込み風をスムーズに流せる構造となっている。また、通風路にコイル部分も露出しているため、冷却効果も高くなる構成となっている。
しかし、特許文献3および特許文献4に示されるモータ構造では,固定子鉄心で囲まれた部分の導体以外の導体は,コイルエンドと呼ばれる必須胴体部分同士をつなぐ部分であり、抵抗の増加を招く構造となっている。
このため、導体コイルの抵抗値に比例して、ジュール損失を発生させるため発熱自体が大きくなってしまう問題がある。
また、特許文献4に示された構造では、メインの通風路にコイルの表面は露出していないためにコイル表面からの放熱性が低下するという課題がある。
上述した単相モータはいずれも、高速回転、かつ、導体断面積の増加によってモータの出力密度を高めることを目的としている。
しかし、単相モータは、その駆動原理より、極数に応じたギャップ部での電磁加振力が発生し、耳障りな低次の振動・騒音が問題となる。
本発明の目的は、掃除機やプロペラファンの動力源として使用可能な高出力密度な単相モータの放熱性を高め、かつ、コイル導体の抵抗値を低下させて発熱量を低減でき、かつ、人に耳障りに感じる振動・騒音を低減するために、その振動の周波数を高次にシフトさせて振動次数を高めることが可能な回転電機を実現することである。
本発明は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
単相で駆動される回転電機において、回転子と、複数の回転子磁石と、シャフトと、固定子鉄心と、複数の固定子コイルと、を有し、前記回転子磁石の数と、前記固定子コイルの数との比が3:1である単相モータを複数備え、複数の前記単相モータが、前記シャフトの軸方向に配置されている。
本発明によれば、掃除機やプロペラファンの動力源として使用可能な高出力密度な単相モータの放熱性を高め、かつ、コイル導体の抵抗値を低下させて発熱量を低減でき、かつ、人に耳障りに感じる振動・騒音を低減するために、その振動の周波数を高次にシフトさせて振動次数を高めることが可能な回転電機を実現することができる。
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。
以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。
また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
(実施例1)
図1Aは、本発明の実施例1に係る単相ブラシレス回転電機(単相モータ)100の断面構造を説明する断面図であり、図1Bは、単相ブラシレス回転電機100の軸方向において各部品の位置関係を示す斜視図である。
図1Aは、本発明の実施例1に係る単相ブラシレス回転電機(単相モータ)100の断面構造を説明する断面図であり、図1Bは、単相ブラシレス回転電機100の軸方向において各部品の位置関係を示す斜視図である。
図1Aは、固定子鉄心1と、複数の固定子コイル2と、複数の回転子磁石4と、の位置関係を示す断面図を示している。本実施例1の単相ブラシレス回転電機100においては、回転子磁石4は12極で、周方向均一な角度で、極が構成された単相モータとなっている。このときの回転子磁石4の配向は、ラジアル配向、極異方性配向、極ごとの平行着磁など様々な配向が構成可能である。
これに対し、固定子ティース18に巻き回された集中巻き固定子コイル2は4つとなっており、回転子磁石4の極数と固定子コイル2の数との比率は3:1となっている。固定子ティース18は、その先端が2つに分かれており、回転子磁極4の1極分の周方向幅を空けてティース先端が配置される構造としている。
これにより、図1Aに示すように、ティース先端中央部には、空隙3が設けられた構造となる。固定子の集中巻きコイルは、固定子ティース18の根本部分にコンパクトに集中巻きされた固定子コイル2となっている。
このため、この固定子コイル2の両脇には、大きなコイル間空隙6が存在し、通風路を形成する構造となっている。回転子22は、回転磁石4と、シャフト5とを備えている。
図1Bは、図1Aで示した単相ブラシレス回転電機100の斜視図を示している。回転子22の中心には、シャフト(軸)5が配置されており、その周囲に、多極の回転子磁石4が実装されて回転子22を構成していることがわかる。
本実施例1では、回転子磁石4の軸方向長と、固定子鉄心1の軸方向長とは同一の寸法として図示しているが、回転子磁石4の強さや固定子鉄心1の材質などによっては、これらの軸長が異なる場合も本発明は適用される。
また、図1Aおよび図1Bでは、固定子コイル2と固定子鉄心1との関係を示しているが、実際には、エナメル被覆電線などで構成された固定子コイル2と固定子鉄心1は、樹脂や絶縁紙などの絶縁物で電気的に絶縁された状態で保持される構造となる。
本発明の実施例1は、図面上では、絶縁ボビンなどの構成材を省略して示している。図1Aおよび図1Bより、軸方向を貫く通風路であるティース先端部空隙3およびコイル間空隙6が形成されており、コイル鉄心の冷却に効果がある構造となっている。
図2A~図2Dは、本発明とは異なる一般的なモータの断面構造を示す図であり、図2A~図2Dを参照して図1Aおよび図1Bで示した本発明の実施例1の構造との違いを説明する。
図2Aは、一般的な3相永久磁石同期モータの断面構造を示している。回転子磁石極が8極、固定子極が12極の構造である。固定子は、3相モータなので、3の倍数の極数で構成される。
また、回転子磁石極数は、回転子磁石4はN極とS極で1対なので、2の倍数極となる。回転子22が2極に対して固定子が3極となるのが、集中巻きの永久磁石同期モータの基本形である。集中巻きは、固定子ティースに巻線19を巻き回す構造であり、図2Aのようにティースに巻き付けた巻線19が、固定子鉄心1のスロットの中に配置される構造となる。
図2Aに示す例では、磁石極数とコイル数の比率は、2:3となる。3相モータの場合、この図2Aを見るとわかるとおり、固定子の中を風が通ることはかなり困難ということが予想できる。
図2Bは、一般的な単相同期電動機の断面図を示している。図2Bに示す例は、単相なので、固定子極の数は極数と一致する数となる。図2Bに示す例では回転子磁石8極、固定子磁極8の場合を図示している。このときの磁石極数とコイル数の比率は、1:1となる。図2Bに示す例も、図2Aに示した例と同様に、集中巻きとなるため、ティースに巻き付けたコイル導体が、スロットに配置されて固定子断面の中に空気のり大きな流路をとることが困難であることが理解できる。
図2Cは、特許文献1に示された分割コアで、かつ、固定子鉄心の外周側に空気の流路を設けた構造を示している。回転子磁石が4極で、固定子磁極が4の事例である。固定子鉄心1は、磁極ごとに分割されているため、コイル19をティースに巻き付けやすい構造となっている。このことから、ティースにしっかり高占積率にコイル19を巻くことで、スロット内に隙間を設ける構造となっている。また、鉄心の外側にも空気が流れる流路を設けている。
しかし、コアの外側に設けられた外側の流路20は狭く、通風損失が大きくなるといった欠点があると思われる。また、通風路を通る冷却風は、固定子コアの表面を冷却するので、コイルの冷却が弱いと考えられる。
図2Dは、特許文献4の磁石極数8極、固定子鉄心極数8の単相モータ構造を示す。こちらでは、図2A、図2Bおよび図2Cに示した3例と同様の領域に鉄心とコイル19を構成しているが、周方向の4か所にかなり大きめの空気の流路が構成できていることがわかる。コイル19を固定子極2極ごとにまとめることで、その配置を周方向の4か所として、残りの4か所に大きなスペースを確保した構造となっている。
図2Dに示した例の構造の場合の磁石極数とコイル数の比率は、2:1となる。この構造では、空気の流路が大きいために、その流路に接する部品の冷却性能が向上できると思われる。
ただし、コイル19をスロット外に巻き回しており、コイル19の利用率を低下させる構造となっているため、モータの効率向上を図るためには少々改善の余地がある。
図3A、図3B、図3Cおよび図3Dは、3相モータと単相モータの駆動回路とその通電方式の違いを説明する図面である。図2Aに示した3相永久磁石同期モータは、図3Aに示す回路で駆動される。図3Aの左側に示した直流電源を6個のスイッチを切り替えることによって、UVW各相の電流を、120度ごとに切り替えて通電することによって、電流と誘起電圧を重ねたトルク波形が得られる。
図3Bに示すように、3相の誘起電圧と電流の積でトルクは電気角1周期当たりのトルクの脈動は、6次となり平均トルクに6次の脈動が重畳されたトルク波形で駆動される。モータ鉄心の形状設計や通電電流制御などでトルク脈動を小さくすることが可能である。
図3Cは、単相モータの駆動回路を示す図である。図3Cに示す駆動回路は、4個のスイッチによって駆動される。図3Dに示すように、一つの相の誘起電圧E0に電流を印加することによって2つの大きなトルク脈動を持つトルクが正の方向に発生し回転が可能となる。トルクは最大値とゼロトルクを電気角1周期に2回繰り返すトルク波形となる。高速で駆動される送風機用途では、このトルク脈動が問題にならないことが多いために、スイッチの素子数が少なくて良いことや、ホール素子21で磁極位置を検出するだけで制御できる手軽さなどで単相モータが使用されることが多い。
次いで、図4A~図4Cを参照して本発明の回転電機である単相ブラシレス回転電機100の構成について説明する。図4Aは、図1で示した本発明の実施例1における単相モータを軸方向に2段重ねて配置したモータを軸方向から投影して見た図である。
本発明の単相モータは、磁石極12極に対して、固定子集中巻きコイル数が4の単相モータであり、磁石極数とコイル数の比率は、3:1とコイル数が、図2A~図2Cで説明した各種モータよりも少ないモータとなっている。
図4Aに示した例では、固定子コイル2の周方向の開き角度を45度とした場合を示している。4つのコイル2を有する固定子で、一つのコイル開き角度が45度であることは、残りの部分が180度分あることが理解できる。
すなわち、周方向に45度ずらして重ねることで、軸方向に見たときに周方向すべての部分にコイル2が配置できる構成となる。回転子磁極数が12極の場合、電気角1周期は、機械角の60度(磁石1極対の角度)に相当する。ずらし角や、コイルの周方向開き角度である45度の機械角は、電気角の270度(-90度)に相当する。
図4Bは、2つの同じ単相モータ100aおよび100bを、軸方向に重ねた構造の単相ブラシレス回転電機100の斜視図を示す。本実施例1では、単相モータ100aの固定子鉄心1と、単相モータ100bの固定子鉄心1とは、磁気的に絶縁するための磁気絶縁板7を介して配置した構造としている。
図4Cは、固定子コアの一部を切り取って内部のコイル配置が見えるように図示した斜視図を示す。
図4Bおよび図4Cにおいて、上部の単相モータのコイル2aのコイルエンド部は、下部の単相モータのコイル2bの脇の通風路6に入り込むことで、固定子コアや、固定子コイル2と干渉しないで軸方向に重ねることが可能となっている。
また、複数の単相モータ100aおよび100bのそれぞれは、互いに隣接する固定子コイル2のコイル間空隙6により通風路が形成されている。
図5A~図5Cは、図4A~図4Cに示した単相モータの回転子22の構成例を示す。
図5Aは、12極の回転子磁石4が軸方向に一体となっている構造を示す図である。図5Aに示した例では、磁石4が1極ごとに30度の開き角を持った扇形として示されているが、リング状の磁石として、それに着磁配向で12極の磁極を構成することも可能である。磁石極の配向は、極異方性配向やラジアル配向、平行配向などの配向が考えられる。
磁石4の軸方向長は、固定子に合わせた軸方向長とすることが望ましいが、固定子鉄心1の軸方向長と磁気絶縁板7の厚み分を足した軸方向長とすることや、更にオーバーハングさせて、固定子の軸方向長よりも長めに設定する設計も考えられる。
図5Bは、軸方向で回転子磁石4を分割して構成した例を示す図である。固定子鉄心1を軸方向に重ねて実装する場合に、磁気的な磁気絶縁板7を実装しているが、その位置に対応する箇所に回転子側磁気絶縁板8を構成して、軸方向にそれぞれの単相モータの磁気回路を独立させる設計が考えられる。このとき、回転子磁石4の軸方向長は、図5Cの斜視図に示すように、固定子鉄心1の軸方向長と併せた設計とすることができる。互いに隣接する単相モータの一方の単相モータの回転子22は、他方の単相モータの回転子22と磁気絶縁部材8を介して配置されている。
図6A~図6Cは、本発明の実施例1による単相モータ軸方向実装構造のモータの動作原理を示す図である。
図6Aは、図4A~図4C、図5A~図5Cに示したように、軸方向に本発明による、極数とコイル数の比が3:1の単相モータを軸方向に2段構成としたモータの誘起電圧と、コイル電流と、出力トルクとを示す。
図6Bに示す固定子Aが1段構成の場合には、図6Aに示す固定子Aのようなそれぞれの波形(実線)が得られる。
誘起電圧は、電気角1周期あたりに1周期の誘起電圧波形が得られ、その誘起電圧と同位相の電流をコイルに通電することによって、トルクは細い実線で示されるトルクAのような全波整流波形のようなトルクが発生する。駆動周波数は回転数を10で除した値(80000r/minであれば8000Hz)となり、トルクの振動周波数は、その2次の振動数の16kHzとなる。このときの円環モード変形は、周方向に4次となるような変形モード(図6Bに示す)となる。
本発明の実施例1の様に2段構成とした場合には、図4A~図4Cで示したとおり、固定子Aと固定子Bが機械角度で45度ずれて実装されるため、電気角では、-90度の差が発生して動作することになる。このため、図6Aに示すように、固定子Bには電気角で固定子Aから90度ずれた位置に誘起電圧(点線)が発生し、その誘起電圧に合わせて電流を印加することで、トルク波形も、固定子Aから電気角で90度ずれた位置に固定子B部分で発生するトルク(点線)が現れることになる。
この固定子Aと固定子Bのトルクの和が合成トルクになり、太い実線で示すような4次の周期をもつトルク波形となる。振動周波数は、32kHzと高周波となり、人の聴感では聞き取れない領域へと振動周波数をシフトさせることができる。図6Cに示すように、円環モード変形の次数も見かけ上、8次と1段構成の場合の2倍に大きくできる。円環次数の増大は、振動の振幅を次数の-4乗で小さくすることが出来るので振動騒音の低減に寄与できる。
以上のように、本発明の実施例1によれば、単相ブラシレスモータの磁石極数と集中巻き固定子コイル数の比を3:1として構成し、磁石極3極に対して1つの固定子コイルを持つ単相モータを構成し、磁石極1極分の固定子側には、固定子冷却用の空隙が構成されるような固定子鉄心形状とする。
また、集中巻き固定子コイルは、すべてのコイルの配置領域は周方向領域360度の半分(180度)以下として構成し、軸方向に固定子冷却用の通風路が形成される構造とする。
そして、このように構成した単相モータを周方向に一定の角度をずらして軸方向に重ねて配置する。
よって、単相モータの放熱性を高め、かつ、コイル導体の抵抗値を低下させて発熱量を低減でき、かつ、人に耳障りに感じる振動・騒音を低減するために、その振動の周波数を高次にシフトさせて振動次数を高めることが可能な回転電機を実現することができる。
なお、実施例1において、固定子コイル2の周方向の開き角度は、45度(電気角270度)以下であり、40度(電気角で240度)を超える角度であれば適用可能である。
そして、2個の単相モータの一方の単相モータの固定子コイル2の周方向位置と、他方の単相モータの固定子コイル2の周方向位置とが、周方向開き角度だけずれて配置されている。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
次に、本発明の実施例2について説明する。
図7A~図7Cは、軸方向に、極数とコイル数の比が3:1の単相モータを軸方向に2段構成とする場合の実施例2を示す図である。
図7Aは、軸方向2段の回転子磁石4の磁極位置を回転方向に、1段目と2段目とを互いに、機械角度で15度(電気角90度)ずらした構造の回転子22を示す図である。磁石中央部には、回転子側磁気絶縁板8を配置し、磁石磁束の漏れが無いようにしている。その他の構成は実施例1と同様となっている。
この構造の回転子22を、図4A~図4C、図5A~図5Cで示した固定子に組立てた場合、固定子コイル2にはそれぞれ、図7Bに示すように、固定子Aと固定子Bに同一の誘起電圧が現れる(固定子Aを実線で示し、固定子Bを点線で示すが、互いに同一の誘起電圧となっているため、実線のみ表示となる)。
この固定子コイル2に電流を通電すると、それぞれの固定子Aおよび固定子Bには、同一形状のトルク波形が現れ、合成トルクは、図7Cの太い実線に示すようなトルク波形となる。この場合、トルクの振動周波数は、2次となるので、16kHzであるが、固定子の変形モード次数は、8次となるので、振動周波数を高められ、かつ、前述したようにその振幅を低減することができる。
実施例2においては、互いに隣接する単相モータ100a、100bの一方の単相モータ100aの複数の回転子磁石4aの周方向位置と、他方の単相モータ100bの複数の回転子磁石4bの周方向位置とは、互いに電気角で90度ずれて配置され、一方の単相モータ100aの固定子コイル2と、他方の単相モータ100bの固定子コイル2とに同一の位相の電流が印加される。
実施例2によれば、実施例と同様な効果を得ることができる他、単相モータの構成をとりつつも、円環変形モード次数を高められる構成も採用することができる。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。
次に、本発明の実施例3について説明する。
本発明の実施例3として、単相モータを軸方向に3段重ねする構造について説明する。
図8Aおよび図8Bは、図1Aおよび図1Bに示したのと同様の固定子鉄心極を持った単相モータの構造を示す、斜視図および軸方向投影図である。図1A、図1B、図4A、図4Bおよび図4Cに示した実施例1と実施例3との異なる点は、集中巻きコイルの周方向開き角度である。図4A~図4Cに示した実施例1では、コイルの開き角度は45度に設定したが、図8Bに示す実施例3におけるコイルの開き角度は機械角度で40度としている。この機械角度40度は、電気角では、240度(-120度)に相当する。その他の構成は、実施例1と同様となっている。
図9A、図9Bおよび図9Cは、図8Aおよび図8Bに示した構造の単相モータ100a、100bおよび100cを軸方向に3段重ねて構成した例を示す図である。
図9Aは、斜視図であり、上から順に固定子U相、V相、W相を構成している例を示した。コイルは、U相の上部とW相の下部コイルエンドしか見えていないが、図9Bおよび図9Cでコイルの重なりを説明する。
図9Bは、U相とV相の重なりを、U相の上部より投影した図を示している(この図9BではW相は図示範囲から外している)。コイルの開き角が周方向40度であるため、周方向に40度ずらして配置すればコイルエンド部分を干渉しないで重ねることが出来る。
図9Bでは、軸方向中央に配置されたV相の固定子コイルに対して、時計回りで40度ずらした位置にU相の固定子コイルが配置されるように実装されている。このとき、固定子コイル間の空隙6は、開き角度で10度分の空隙部が残ることになる。
図9Cは、U相の固定子を消去して、V相とW相の固定子をV相側から投影した図を示している。V相のコイル位置は、図9Bに示した位置と同一となっている。これに対して、W相のコイルが、反時計周り方向に40度ずらした位置にW相の固定子コイルが配置されるように実装されている。
これによって、電気角240度ずれた位置にコイルが配置されることになる。この場合も、コイルエンドの干渉無く軸方向に組立が出来る構成とできるので、軸方向に無駄なスペースを作ることなく実装が可能となる。
図10A、図10Bおよび図10Cは、図9A、図9Bおよび図9Cで示した3相構成のモータの誘起電圧波形、通電電流波形、トルク波形を示す図である。1段当たりの誘起電圧から、右方向と左方向に240度ずつずれた波形となるので、結果として、図10Aに示すような120度ずつずれた3相交流状の誘起電圧波形が得られることとなる。それぞれのコイルに位相を合せて正弦波の電流を流すと、それぞれのトルクは図10Cに示すように、3つの全波整流トルク波形となり、それらの合成トルク波形は6次の次数を持ったトルク波形となる。これによってトルクの振動数は48kHzとすることができ、高い周波数域に振動を持っていくことができる。
本発明の実施例3によれば、実施例1と同様な効果を得ることができる他、より高い周波数域に振動を持っていくことができる。
なお、実施例3において、固定子コイル2の周方向の開き角度は、40度(電気角で240度)以下であり、35度(電気角で210度)を超える角度であれば適用可能である。
実施例3においては、3つの単相モータ100a、100bおよび100cを備え、3つの単相モータ100a、100bおよび100cの固定子コイル2の周方向開き角度は、電気角で210度を超え、240度以下であり、3つの単相モータ100a、100bおよび100cのうち、互いに隣接する単相モータ(100aと100b、100bと100c)の一方の単相モータ100a、100bまたは100cの固定子コイル2の周方向位置と、他方の単相モータ100a、100bまたは100cの固定子コイル2の周方向位置とが、周方向開き角度だけずれて配置されている。
図11Aは、本発明の実施例1、実施例2または実施例3による多段構成された回転電機100の外観を示す図であり、図11Bは、本発明のモータの回転子22と、固定子との組立構造であり、固定子や回転子22を保持するためのベリング9、ハウジング10、エンドブラケット11、反出力軸側エンドブラケット12の基本構成を示す斜視図である。
モータの内部に風が通るようにするために、出力軸側のエンドブラケット11には通風路11Aが形成され、反出力軸側エンドブラケット12にも通風路12Aが形成されていることがわかる。
本発明のモータ構成を外転型のモータに適用した例を示す。図12(a)は外転型の磁石極12極、固定子コイル数4個の例を示している。外転型においても内転型同様にコイルの開き角度を45度に設定することで、2段構成が実現でき、コイルの開き角度を40度とすることで、3段構成が可能であることがわかる。
図12は、本発明の構造をアウターロータ型単相回転電機として構成した場合の固定子、回転子22の構造を説明する構造断面図である。つまり、図12に示した例は、固定子鉄心1が回転子磁石4の内側に配置された外転型の単相回転電機である。
本発明の実施例1~3は、インナーロータ型単相回転電機のみならず、アウターロータ型単相回転電機にも適用することができる。
図13A、図13Bおよび図13Cは、本発明の単相モータの応用例を示す図である。
スティックタイプ掃除機14の電動送風機のモータや、多翼ファン17を有するドローン(電動航空機)15などの電動航空機用プロペラファン駆動用の単相モータ13などに使用する事例である。これらのモータはモータを風で冷却することができることと、高速化によって小型としなければならない点で本発明のモータの利用が適している分野であると考えられる。
図13Bでは、モータの次数増加に加えて、羽根の枚数を増加させた例を示している。回転翼の枚数を磁極数と同数に増加させる例である。羽根の翼通過周波数を増加させることで可聴音を低減できる構成となっており、本発明のモータ構成と併せて効果が高い。
以上のように、本発明においては、単相ブラシレスモータの磁石極数と集中巻き固定子コイル数の比を3:1として構成し、磁石極3極に対して1つの固定子コイルを持つ単相モータを構成し、磁石極1極分の固定子側には、固定子冷却用の空隙が構成されるような固定子鉄心形状とする。また、集中巻き固定子コイルは、すべてのコイルの配置領域は周方向領域360度の半分(180度)以下として構成し、軸方向に固定子冷却用の通風路が形成される構造とする。
このように構成した単相モータを周方向に一定の角度をずらして軸方向に重ねて配置することで、円環振動次数を見かけ上、2倍3倍に高めることができる。
2段重ねとする場合には、電気角で周方向に270度ずらして重ね、その時の集中巻きコイルの周方向開き角度を電気角で270度以下とする。3段重ねる場合には、電気角で周方向に240度ずらして重ね、その時のコイルの周方向開き角度は電気角で240度以下となる構造にする。
なお、磁気絶縁板7や回転子側磁気絶縁板8は、非磁性、非導電性部材、ゴム、合成樹脂等の磁気絶縁材で形成することができる。よって、磁気絶縁板7や回転子側磁気絶縁板8を磁気絶縁部材と総称することができる。
1・・・固定子鉄心、2・・・固定子コイル、3・・・ティース先端部空隙、4・・・回転子磁石、5・・・シャフト、6・・・コイル間空隙(通風路)、7・・・固定子側磁気絶縁板、8・・・回転子側磁気絶縁板、9・・・ベアリング、10・・・モータハウジング、11・・・出力軸側エンドブラケット、11A、12A・・・通風路、12・・・反出力軸側エンドブラケット、13・・・単相モータ、14・・・スティックタイプ掃除機、15・・・ドローン(電動航空機)、16・・・プロペラファン、17・・・多翼ファン、18・・・固定子ティース、19・・・コイル、20・・・流路、21・・・ホール素子、22・・・回転子、100・・・回転電機、100a、100b、100c・・・単相モータ
Claims (11)
- 単相で駆動される回転電機において、
回転子と、
複数の回転子磁石と、
シャフトと、
固定子鉄心と、
複数の固定子コイルと、
を有し、前記回転子磁石の数と、前記固定子コイルの数との比が3:1である単相モータを複数備え、複数の前記単相モータが、前記シャフトの軸方向に配置されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1に記載の回転電機において、
前記固定子コイルの周方向開き角度は、電気角で240度を超え、270度以下であり、複数の前記単相モータのうち、互いに隣接する前記単相モータの一方の前記単相モータの前記固定子コイルの周方向位置と、他方の前記単相モータの前記固定子コイルの周方向位置とが前記周方向開き角度だけずれて配置されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1または2に記載の回転電機において、
複数の前記単相モータのうち、互いに隣接する前記単相モータの一方の前記単相モータの前記固定子鉄心は、他方の前記単相モータの前記固定子鉄心と磁気絶縁部材を介して配置されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1または2に記載の回転電機において、
複数の前記単相モータのうち、互いに隣接する前記単相モータの一方の前記単相モータの前記回転子は、他方の前記単相モータの前記回転子と磁気絶縁部材を介して配置されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1または2に記載の回転電機において、
複数の前記単相モータのうち、互いに隣接する前記単相モータの一方の前記単相モータの前記複数の回転子磁石の周方向位置と、他方の前記単相モータの前記複数の回転子磁石の周方向位置とは、互いに電気角で90度ずれて配置され、一方の前記単相モータの前記固定子コイルと、他方の前記単相モータの前記固定子コイルとに同一の位相の電流が印加されることを特徴とする回転電機。 - 請求項1に記載の回転電機において、
3つの前記単相モータを備え、3つの前記単相モータの前記固定子コイルの周方向開き角度は、電気角で210度を超え、240度以下であり、3つの前記単相モータのうち、互いに隣接する前記単相モータの一方の前記単相モータの前記固定子コイルの周方向位置と、他方の前記単相モータの前記固定子コイルの周方向位置とが、前記周方向開き角度だけずれて配置されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1または6に記載の回転電機において、
複数の前記単相モータのそれぞれは、互いに隣接する固定子コイルの間に通風路が形成されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1、2または6のうちのいずれか一項に記載の回転電機において、
通風路が形成された出力軸側エンドブラケットと、通風路が形成された反出力軸側エンドブラケットと、を備えること特徴とする回転電機。 - 請求項1に記載の回転電機において、
前記固定子鉄心が前記回転子磁石の内側に配置された外転型の単相回転電機であることを特徴とする回転電機。 - 請求項1、2または6のうちのいずれか一項に記載の回転電機において、
掃除機および電動航空機に用いられることを特徴とする回転電機。 - 請求項10に記載の回転電機において、
回転翼を有し、前記回転翼の枚数が、前記回転子磁石の数と同数であることを特徴とする回転電機。
Priority Applications (1)
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JP2022134137A JP2024030907A (ja) | 2022-08-25 | 2022-08-25 | 回転電機 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2024030907A true JP2024030907A (ja) | 2024-03-07 |
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JP2022134137A Pending JP2024030907A (ja) | 2022-08-25 | 2022-08-25 | 回転電機 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2024030907A (ja) |
-
2022
- 2022-08-25 JP JP2022134137A patent/JP2024030907A/ja active Pending
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