JP2024027836A - 被覆工具 - Google Patents

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【課題】耐久性に優れる被覆工具を提供する。【解決手段】本発明の被覆工具は、基材と、前記基材の上に硬質皮膜を有する被覆工具であって、前記硬質皮膜は、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、Alを65原子%以上90原子%以下で含有しており、Crを10原子%以上35原子%以下で含有しており、金属元素(半金属を含む)と非金属元素の総量に対して、アルゴン(Ar)を0.50原子%以下で含有している窒化物または炭窒化物であって面心立方格子構造であり、X線回折において面心立方格子構造の(111)面のピーク強度をIa、(200)面のピーク強度をIbとした場合、Ia/Ibが4以上8以下であることを特徴とする被覆工具。【選択図】図1

Description

本発明は、金型や切削工具等の工具に適用する被覆工具に関する。
AlCr窒化物は耐摩耗性と耐熱性に優れる膜種であり被覆金型や被覆切削工具として広く適用されている。近年、アークイオンプレーティング法でAlの含有比率が70原子%を超えるAlリッチなAlCr窒化物を被覆した被覆工具が提案され始めている(特許文献1~3)。
特開2016-032861号公報 特開2018-059146号公報 特開2020-040175号公報
工具径が2mm以下のような小径工具においては工具性能に与えるドロップレットの影響が大きくなり易い。本発明者は、アークイオンプレーティング法で被覆したAlリッチなAlCr窒化物はドロップレットが多くなり易く、工具の耐久性に改善の余地があることを確認した。
ドロップレットは、硬質皮膜の成膜にスパッタリング法を用いることで低減できる。しかし、単にスパッタリング法を用いて硬質皮膜を成膜した場合、アークイオンプレーティング法を用いて形成された硬質皮膜よりも耐摩耗性に劣る場合があった。
本発明は上記の事情に鑑み、スパッタリング法の適用によりドロップレットを低減しつつ、アークイオンプレーティング法を用いた場合と同等以上の耐久性を実現したAlリッチなAlCr窒化物または炭窒化物を設けた被覆工具を提供することを目的とする。
本発明の一態様の被覆工具は、基材と、前記基材の上に硬質皮膜を有する被覆工具であって、前記硬質皮膜は、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、Alを65原子%以上90原子%以下で含有しており、Crを10原子%以上35原子%以下で含有しており、金属元素(半金属を含む)と非金属元素の総量に対して、アルゴン(Ar)を0.50原子%以下で含有している窒化物または炭窒化物であって面心立方格子構造であり、
X線回折において面心立方格子構造の(111)面のピーク強度をIa、(200)面のピーク強度をIbとした場合、Ia/Ibが4以上8以下である。
本発明によれば、AlリッチのAlCr窒化物または炭窒化物のスパッタ皮膜を設けた耐久性に優れる被覆工具を得ることができる。
図1は、本実施例1のXRD測定結果の一例である。
本発明者は、スパッタリング法のAlリッチなAlCr窒化物または炭窒化物について、面心立方格子構造の結晶の配向を制御することで、被覆工具の耐久性が向上する傾向にあることを知見した。以下、本発明の実施形態の詳細について説明をする。
本実施形態の被覆工具は、基材の表面にAlリッチのAlとCrを主体とする窒化物またはAlリッチのAlとCrを主体とする炭窒化物を有する被覆工具である。本実施形態の被覆工具は、金型や切削工具に適用することができる。特に、工具径が5mm以下、更には3mm以下の小径エンドミルに適用することが好ましい。
本実施例において、基材は特段限定されるものではない。冷間工具鋼、熱間工具鋼、高速度鋼、超硬合金等を用途に応じて適宜適用すればよい。基材は予め窒化処理やボンバード処理等をしても良い。
本実施形態に係る硬質皮膜は、窒化物または炭窒化物であり、金属(半金属を含む。以下同様。)元素の総量に対して、Alを65原子%以上90原子%以下で含有しており、Crを10原子%以上35原子%以下で含有している。AlとCrを主体とする窒化物または炭窒化物は耐摩耗性と耐熱性のバランスに優れる膜種であり、基材との密着性にも優れ、特にAlの含有比率を大きくすることで硬質皮膜の耐熱性がより向上する。本実施形態に係る硬質皮膜は、耐熱性により優れる窒化物であることが好ましい。また、Alの含有比率を大きくすることで、工具表面に酸化保護皮膜が形成され易くなるとともに、皮膜組織が微細になるため、溶着による硬質皮膜の摩耗が抑制され易くなる。
上述したAlの添加効果を十分に発揮するには、本実施形態に係る硬質皮膜は、金属元素全体を100原子%とした場合、Alの含有比率を65原子%以上とする。更にはAlの含有比率は70原子%以上であることが好ましい。更にはAlの含有比率は75原子%以上であることが好ましい。一方、Alの含有比率が大きくなり過ぎると硬質皮膜の結晶構造が変化して脆弱となる。そのため、本実施形態に係る硬質皮膜は、金属元素全体を100原子%とした場合、Alの含有比率を90原子%以下とする。更にはAlの含有比率は85原子%以下であることが好ましい。更にはAlの含有比率は78原子%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る硬質皮膜は、金属元素全体を100原子%とした場合、Crの含有比率を10原子%以上とする。これにより、加工中の工具表面に均一で緻密な酸化保護皮膜が形成され易くなり、工具損傷が抑制され易くなる。更にはCrの含有比率を15原子%以上とすることが好ましい。一方、硬質皮膜に含有されるCrの含有比率が大きくなり過ぎると、上述したAlの含有比率を大きくする効果が得られ難い。そのため、本実施形態に係る硬質皮膜は、金属元素全体を100原子%とした場合、Crの含有比率を35原子%以下とする。更にはCrの含有比率は30原子%以下であることが好ましい。更にはCrの含有比率は25原子%以下であることが好ましい。更にはCrの含有比率は22原子%以上であることが好ましい。
本実施形態に係る硬質皮膜は、金属元素全体を100原子%とした場合、AlとCrの含有比率の合計を90原子%以上とすることが好ましい。更にはAlとCrの含有比率の合計を95原子%以上とすることが好ましい。また、本実施形態に係る硬質皮膜は、AlとCrの窒化物または炭窒化物であってもよい。
本実施形態に係る硬質皮膜の金属元素の含有比率は、鏡面加工した硬質皮膜について、電子プローブマイクロアナライザー装置(EPMA)を用いて測定することができる。この場合、例えば、硬質皮膜表面の鏡面加工後、直径が約1μmの分析範囲を5点分析した平均から求めることができる。
本実施形態に係る硬質皮膜には、AlとCr以外の金属元素を含有しても良い。例えば、本実施形態に係る硬質皮膜は、耐摩耗性や耐熱性等の向上を目的として、周期律表の4a族、5a族、6a族の元素およびSi、B、Y、Yb、Cuから選択される1種または2種以上の元素を含有することもできる。これらの元素は被覆工具の皮膜特性を向上させるために一般的に含有されるものであり、被覆工具の耐久性を著しく低下させない範囲で添加可能である。但し、AlとCr以外の金属元素の含有比率が大きくなり過ぎると、被覆工具の耐久性が低下する場合がある。そのため、本実施形態に係る硬質皮膜が、AlとCr以外の金属元素を含有する場合、その合計の含有比率は、金属元素全体を100原子%とした場合に、10原子%以下であることが好ましい。更には、5原子%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る硬質皮膜は、金属元素と非金属元素の総量に対して、アルゴン(Ar)を0.50原子%以下で含有する。硬質皮膜の欠陥となるドロップレットは、スパッタリング法を適用することで発生頻度を低減させることができる。一方、スパッタリング法ではアルゴンイオンを用いてターゲット成分をスパッタリングするため、スパッタリング法で被覆した硬質皮膜はアルゴンを少なからず含有する。とりわけ、アルゴンは結晶粒界に濃化し易く、結晶粒径が微粒になるとアルゴンの含有比率が大きくなる傾向になる。但し、アルゴンの含有比率が大きくなると、結晶粒界において粒子同士の結合力が低下する。本実施形態に係る硬質皮膜のように、Alの含有比率が大きい硬質皮膜においては、過多に含まれるアルゴンは欠陥となりうるため、その含有比率を一定以下にすることが有効である。具体的には、本実施形態に係る硬質皮膜は、金属元素と非金属元素の総量に対して、アルゴンを0.50原子%以下で含有する。更には、アルゴンを0.40原子%以下とすることが好ましい。
なお、本実施形態に係る硬質皮膜は、アルゴン以外に他の希ガスを含有した混合ガスを用いてスパッタリングすれば、アルゴン以外の希ガスも含有しうる。
スパッタリング法において、硬質皮膜に含まれるアルゴンの含有比率を限りなく0原子%に近づけようとすると、アルゴンの流量が小さくなり過ぎてスパッタリングが安定しない。また、仮にアルゴンの含有比率が0原子%に近づくとしても、靭性、耐熱性、耐摩耗性といった切削工具に適用する硬質皮膜としての基本的な特性が損なわれうる。本実施形態に係る硬質皮膜は、アルゴンの含有比率の下限は特段限定されないが、スパッタリング法を安定させて、被覆工具に適用する硬質皮膜としての基本的な皮膜特性を確保するために、アルゴンを0.02原子%以上で含有させることが好ましい。更には、アルゴンの含有比率を0.05原子%以上とすることが好ましい。更には、アルゴンの含有比率を0.10原子%以上とすることが好ましい。
本実施形態に係る硬質皮膜の窒素およびアルゴンの含有比率は、上述した金属元素の含有比率の測定と同様に、鏡面加工した硬質皮膜について、電子プローブマイクロアナライザー装置(EPMA)を用いて測定することができる。上述した金属元素の含有比率の測定と同様に、鏡面加工後、直径が約1μmの分析範囲を5点分析した平均から求めることができる。
本実施形態に係る硬質皮膜は、非金属元素としては窒素以外に微量のアルゴン、酸素、炭素が含まれうる。
<結晶構造>
本実施形態に係る硬質皮膜は面心立方格子構造である。本発明において硬質皮膜が面心立方格子構造であるとは、X線回折において硬質皮膜が面心立方格子構造のピーク強度のみを有し、六方最密充墳構造のAlNのピーク強度を有さないことである。そして、本実施形態に係る硬質皮膜は、X線回折において(111)面のピーク強度をIa、(200)面のピーク強度をIbとした場合、Ia/Ibが4以上8以下である。最密面である(111)面の相対強度が大きくなることで、硬質皮膜の耐摩耗性がさらに向上し、被覆工具の耐久性がより向上する。Ia/Ibは5以上であることが好ましい。Ia/Ibは6以上であることが好ましい。
X線回折は、市販のX線回折装置を用い、管電圧45kV、管電流40mA、X線源Cukα(λ=0.15405nm)、2θが20~80度の測定条件で測定すればよい。
<中間皮膜、上層>
本実施形態の被覆工具は、硬質皮膜の密着性をより向上させるため、必要に応じて、工具の基材と硬質皮膜との間に別途中間皮膜を設けてもよい。例えば、金属、窒化物、炭窒化物、炭化物のいずれかからなる層を工具の基材と硬質皮膜との間に設けてもよい。
また、本実施形態に係る硬質皮膜の上に、本実施形態に係る硬質皮膜と異なる成分比や異なる組成を有する硬質皮膜を別途形成させてもよい。さらには、本実施形態に係る硬質皮膜と、別途本実施形態に係る硬質皮膜と異なる組成比や異なる組成を有する硬質皮膜とを相互積層させてもよい。
<ドロップレット>
本実施形態に係る硬質皮膜は、断面観察において円相当径が1μm以上のドロップレットが100μm当たり5個以下であることが好ましい。本明細書における「ドロップレット」は、アークイオンプレーティング法では、カソードから飛び出す1~数十μm程度の溶融粒子に起因する硬質皮膜上の付着物である。本明細書における「ドロップレット」は、スパッタリング法では、ターゲットから突発的に飛散する1~数十μm程度の金属粒子に起因する硬質皮膜上の付着物である。
物理蒸着法で被覆する硬質皮膜では、ドロップレットが主な物理的な欠陥となりうる。とりわけ、円相当径が1μm以上の粗大なドロップレットは硬質皮膜の内部で破壊の起点となりうるため、その発生頻度を低減することで、硬質皮膜の靭性を高めることができる。本実施形態においては、硬質皮膜の断面観察において、円相当径が1μm以上のドロップレットを100μm当たり5個以下にすることが好ましい。より好ましくは、100μm当たり3個以下である。更に好ましくは、100μm当たり1個以下である。更には、円相当径が5μm以上のドロップレットを含有しないことが好ましい。
また、硬質皮膜の表面についても、円相当径が1μm以上のドロップレットが、100μm当たり5個以下であることが好ましい。より好ましくは、硬質皮膜の表面のドロップレットは100μm当たり3個以下である。更に好ましくは、硬質皮膜の表面のドロップレットは100μm当たり1個以下である。
硬質皮膜の断面観察においてドロップレットを評価するには、硬質皮膜を鏡面加工した後、収束イオンビーム法で加工し、透過型電子顕微鏡を用いて鏡面加工された面を5,000~10,000倍で複数の視野を観察する。また、硬質皮膜の表面のドロップレットの個数は、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて硬質皮膜の表面を観察することで求めることができる。
<製造方法>
本実施形態に係る硬質皮膜の被覆では、3個以上のAlCr系合金ターゲットを用いて、ターゲットに順次電力を印加して、電力が印加されるターゲットが切り替わる際に、電力の印加が終了するターゲットと電力の印加を開始するターゲットの両方のターゲットに同時に電力が印加されている時間を設けるスパッタリング法を適用することが好ましい。このようなスパッタリング法はターゲットのイオン化率が高い状態が被覆中に維持されて、ミクロレベルで緻密な硬質皮膜が得られるとともに、不可避的に含有されるアルゴンや酸素が少ない傾向にある。そして、スパッタリング装置の炉内温度を350℃~500℃、基材に印加する負圧のバイアス電圧を-200V~-70V、ArガスおよびNガスを導入して炉内圧力を0.1Pa~0.4Paとすることが好ましい。なお、炭窒化物を被覆する場合には、ターゲットに微量の炭素を添加するか、反応ガスの一部をメタンガスに置換すればよい。
電力パルスの最大電力密度は、0.1kW/cm以上とすることが好ましい。更には0.3kW/cm以上とすることが好ましい。また、本組成系においては成膜イオンのエネルギーが高くなり過ぎるとhcp構造を形成し易くなる。そのため、電力パルスの最大電力密度は、0.7kW/cm以下とすることが好ましい。更には0.6kW/cm以下とすることが好ましい。個々のターゲットに印加する電力パルスの時間は、30ミリ秒以下とすることが好ましい。また、電力の印加が終了する合金ターゲットと電力の印加を開始する合金ターゲットの両方の合金ターゲットに同時に電力が印加されている時間は20マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とすることが好ましい。
<基材>
基材として、組成がWC(bal.)-Co(8.0質量%)-VC(0.3質量%)-Cr(0.5質量%)、硬度94.0HRA(ロックウェル硬さ、JIS G 0202に準じて測定した値)からなる超硬合金製の2枚刃ボールエンドミルを準備した。
本実施例1と比較例3は、スパッタ蒸発源を6機搭載できるスパッタリング装置を使用した。これらの蒸着源のうち、硬質皮膜を被覆するためにAl75Cr25合金ターゲット(数値は原子比、以下同様。)6個を蒸着源として装置内に設置した。
比較例2は、スパッタ蒸発源を6機搭載できるスパッタリング装置を使用した。これらの蒸着源のうち、硬質皮膜を被覆するためにAl80Cr20合金ターゲット6個を蒸着源として装置内に設置した。
基材である工具をスパッタリング装置内のサンプルホルダーに固定し、工具にバイアス電源を接続した。なお、バイアス電源は、ターゲットとは独立して工具に負のバイアス電圧を印加する構造となっている。工具は、毎分2回転で自転しかつ、固定治具とサンプルホルダーを介して公転する。工具とターゲット表面との間の距離は100mmとした。
導入ガスは、Ar、およびNを用い、スパッタリング装置に設けられたガス供給ポートから導入した。
<ボンバード処理>
まず工具に硬質皮膜を被覆する前に、以下の手順で工具にボンバード処理を行った。スパッタリング装置内のヒーターにより炉内温度が400℃になった状態で30分間の加熱を行った。その後、スパッタリング装置の炉内を真空排気し、炉内圧力を5.0×10-3Pa以下とした。そして、Arガスをスパッタリング装置の炉内に導入し、炉内圧力を0.8Paに調整した。そして、工具に-170Vの直流バイアス電圧を印加して、Arイオンによる工具のクリーニング(ボンバード処理)を20分以上実施した。
<硬質皮膜の被覆>
本実施例1の被覆では、炉内温度を400℃にして、スパッタリング装置の炉内にArガス(0.2Pa)およびNガス(0.1Pa)を導入して炉内圧力を0.3Paにした。基材に直流バイアス電圧を印加して、ターゲットに印加する電力がオーバーラップする時間は50マイクロ秒とし、各ターゲットに印加される電力の1周期当りの放電時間を1ミリ秒とした。そして、基材に印加する負圧のバイアス電圧を-120V、最大電力を0.4kW/cmとして、6個のAl75Cr25合金ターゲットに連続的に電力を印加して、基材の表面に約3.0μmの硬質皮膜を被覆した。
比較例2の被覆では、炉内温度を400℃にして、スパッタリング装置の炉内にArガス(0.2Pa)およびNガス(0.1Pa)を導入して炉内圧力を0.3Paにした。基材に直流バイアス電圧を印加して、ターゲットに印加する電力がオーバーラップする時間は50マイクロ秒とし、各ターゲットに印加される電力の1周期当りの放電時間を1ミリ秒とした。そして、基材に印加する負圧のバイアス電圧を-120V、最大電力を0.8kW/cmとして、6個のAl80Cr20合金ターゲットに連続的に電力を印加して、基材の表面に約3.0μmの硬質皮膜を被覆した。
比較例3の被覆では、炉内温度を400℃にして、スパッタリング装置の炉内にArガス(0.2Pa)およびNガス(0.1Pa)を導入して炉内圧力を0.3Paにした。基材に直流バイアス電圧を印加して、ターゲットに印加する電力がオーバーラップする時間は50マイクロ秒とし、各ターゲットに印加される電力の1周期当りの放電時間を1ミリ秒とした。そして、基材に印加する負圧のバイアス電圧を-120V、最大電力を0.8kW/cmとして、6個のAl75Cr25合金ターゲットに連続的に電力を印加して、基材の表面に約3.0μmの硬質皮膜を被覆した。
比較例1はアークイオンプレーティング装置を使用した。Al60Cr40合金ターゲットを蒸着源として装置内に設置した。まず、Arイオンによる工具のクリーニング(ボンバード処理)を実施した。次いで、アークイオンプレーティング装置の炉内圧力を5.0×10-3Pa以下に真空排気して、炉内温度を500℃とし、炉内圧力が3.2PaになるようにN2ガスを導入した。次いで、工具に-100Vの直流バイアス電圧を印加して、Al60Cr40合金ターゲットに150Aの電流を供給して、工具の表面に約3.0μmの硬質皮膜を被覆した。比較例1は市場で一般的に使用されている組成である。
硬質皮膜の皮膜組成は、電子プローブマイクロアナライザー装置(株式会社日本電子製 JXA-8500F)に付属する波長分散型電子プローブ微小分析(WDS-EPMA)で測定した。物性評価用のボールエンドミルを鏡面加工して、加速電圧10kV、照射電流5×10-8A、取り込み時間10秒とし、分析領域が直径1μmの範囲を5点測定してその平均値から硬質皮膜の金属含有比率および金属成分と非金属成分の合計におけるArの含有比率を求めた。
X線回折装置(株式会社PaNalytical製 EMPYREA)を用い、管電圧45kV、管電流40mA、X線源Cukα(λ=0.15405nm)、2θが20~80度の測定条件で結晶構造の確認を行った。
硬質皮膜の皮膜硬さおよび弾性係数は、ナノインデンテーションテスター(株式会社エリオニクス社製ENT-2100)を用いて分析した。分析は、皮膜の最表面に対し試験片を5度傾けた皮膜断面を鏡面研磨後、皮膜の研磨面内で最大押し込み深さが膜厚の略1/10未満となる領域を選定した。押し込み荷重9.807mNの測定条件で15点測定し、値の大きい側の5点と値の小さい側の5点を除いた5点の平均値から求めた。
皮膜組成および物性評価の結果を表1に示す。
Figure 2024027836000002
X線回折の結果、本実施例1と比較例1は面心立方格子構造(fcc構造)であったが、比較例2と比較例3は稠密六方格子構造(hcp構造)となった。
(条件)乾式加工
工具:2枚刃超硬ボールエンドミル
型番:EPDBE2010-6、ボール半径0.5mm
切削方法:底面切削
被削材:STAVAX(52HRC)(ボーラー・ウッデホルム株式会社製)
切り込み:軸方向、0.03mm、径方向、0.03mm
切削速度:67.8m/min
一刃送り量:0.0135mm/刃
切削距離:15m
評価方法:切削加工後、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察し、工具逃げ面において工具と被削材が擦過した幅を測定し、そのうちの擦過幅が最も大きかった部分を逃げ面最大摩耗幅とした。
Figure 2024027836000003
本実施例1は、X線回折において面心立方格子構造の(111)面のピーク強度をIa、(200)面のピーク強度をIbとした場合、Ia/Ibが6.7であり、Ia/Ibが4以上8以下の範囲内である。比較例1は、Ia/Ibが0.5であり、比較例2,3はhcp構造の硬質皮膜であった。本実施例1は比較例1~3と比較して、逃げ面最大摩耗幅が小さく、耐久性に優れることが確認された。

Claims (1)

  1. 基材と、前記基材の上に硬質皮膜を有する被覆工具であって、
    前記硬質皮膜は、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、Alを65原子%以上90原子%以下で含有しており、Crを10原子%以上35原子%以下で含有しており、金属元素(半金属を含む)と非金属元素の総量に対して、アルゴン(Ar)を0.50原子%以下で含有している窒化物または炭窒化物であって面心立方格子構造であり、
    X線回折において面心立方格子構造の(111)面のピーク強度をIa、(200)面のピーク強度をIbとした場合、Ia/Ibが4以上8以下であることを特徴とする被覆工具。
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