JP2024027731A - マグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物及びマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法 - Google Patents

マグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物及びマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温で焼成しなくても耐スポーリング性に優れるマグネシア・クロム質耐火れんがの製造と、エネルギーと温室効果ガス排出量の低減が可能なマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物を提供すること。【解決手段】マグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物は、ヘルシナイトを含み、前記ヘルシナイトの含有量が1~15質量%であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本開示は、鉄鋼用二次精錬炉やセメントロータリーキルン等に使用されるマグネシア・クロム質耐火れんが(マグクロれんが)の原料配合物及びマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法に関する。
鉄鋼用二次精錬炉やセメントロータリーキルン等において、使用条件が厳しい部位には、ダイレクトボンド(直接結合)の高温焼成マグクロれんがが使用されている。これは、電融高純度の原料を使用し、1700℃以上の高温で焼成してれんがの結合組織を発達させ、熱間強度を向上させたものである。
例えば、特許文献1は、耐火原料配合物を混練し、成形後、1700℃以上の温度で焼成して得られるマグクロれんがであって、前記耐火原料配合物が、B含有量が0.2~1.0質量%、CaO含有量が0.8質量%以下、及びかさ密度が3.20g/cm以上であるマグネシアクリンカ20~80質量%と、クロム鉱20~60質量%とからなり、かつ前記耐火原料配合物中のCaO含有量が0.8質量%以下でSiO含有量が2.5質量%以下であるマグクロれんがを開示する。
特許文献2は、CaOが1.5~3.0重量%でFeが0.5重量%未満のCaO含有マグネシアクリンカ-を15~70重量%と、Feが20~30重量%の高Feクロム鉱を25~45重量%とを使用し、残部が一般のマグネシアクリンカ-、クロム鉱、酸化クロム、電融又は焼結マグクロクリンカー、れんが屑などからなるマグクロ質れんがであって、該れんが中にSiOが0.8重量%未満、CaOが0.8~1.6重量%、Feが7~11重量%、Crが15~25重量%含有する高温焼成マグクロ質れんがを開示する。また、特許文献2は、1650~1900℃での焼成を開示する。
特開2010-195617号公報 特開平10-203862号公報
特許文献1、2のマグクロれんがは耐スポーリング性に優れるものの、高温焼成には多くのエネルギーが必要であり、また、それに伴い温室効果ガスの排出量が多い。
本開示は上記実状を鑑みてなされたものであり、高温で焼成しなくても耐スポーリング性に優れるマグクロれんがの製造と、エネルギーと温室効果ガス排出量の低減が可能なマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物及びマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法を提供することを目的とする。
(1)本開示の一の態様は、ヘルシナイトを含むことを特徴とするマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物に関する。
本開示の一の態様のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物は、ヘルシナイトを含むことにより、高温で焼成しなくても耐スポーリング性に優れるマグクロれんがを製造することができるとともに、エネルギーと温室効果ガス排出量を低減することができる。
(2)本開示の一の態様では、
前記ヘルシナイトの含有量が1~15質量%であることが好ましい。
焼成温度を抑制しつつ、より耐スポーリング性に優れるマグクロれんがを製造することができる。
(3)本開示の一の態様では、
化学組成がMgO:58~87質量%、Cr:8~30質量%、Fe:5~12質量%であり、
前記Feは、前記ヘルシナイト由来のものが5%以上であることが好ましい。
マグネシア・クロム質耐火れんがの容積安定性が優れるとともに、耐スポーリング性が良好となる。
(4)本開示の他の態様は、本開示の一の態様のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物を用いることを特徴とするマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法に関する。
本開示の一の態様のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物を用いることにより、焼成温度を抑制することができ、エネルギーと温室効果ガス排出量を低減することができる。
(5)本開示の他の態様では、焼成温度が1300~1600℃であることが好ましい。
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
本実施形態のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物はヘルシナイトを含むことを特徴とする。他の原料は特に限定されず、マグネシア原料、マグクロ原料、クロム原料等、マグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物として一般に使用されているものを含むことができる。
<ヘルシナイト(hercynite)>
ヘルシナイトは、xFeO・yAlからなる鉱物原料である。天然原料、合成原料のいずれでもよいが、不純物が少ない合成原料が好ましい。FeOとAlの比は化学量論比1:1(質量比41.3:58.7)に限定されず、質量比で30:70~50:50の範囲であればよい。ヘルシナイトの含有量:1~15質量%で曲げ強さと、耐スポーリング性に優れ、10~12質量%で動弾性率(E)に対する曲げ強さ(S)の比率(S/E)が向上し、耐スポーリング性に特に優れる。また、本実施形態のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物は、化学組成がMgO:58~87質量%、Cr:8~30質量%、Fe:5~12質量%であり、Feは、ヘルシナイト由来のものが5%以上となるように配合することで、マグクロれんがの容積安定性に優れるとともに、耐スポーリング性が良好となる。
<マグネシア原料>
マグネシア原料は、例えば、焼結マグネシア、電融マグネシア、マグネシアクリンカー等、マグクロれんがに使用される一般的なマグネシア原料を使用することができる。
<マグネシア・クロム(マグクロ)原料>
マグクロ原料は、例えば、マグクロクリンカーを使用することができる。マグクロクリンカーは、例えば、マグネシアと、酸化クロム及び/又はクロム鉱との混合物に、必要に応じてアルミナを添加し、アーク炉で溶融又は高温で焼成して得られ、前者を電融マグクロ、後者を焼結マグクロという。
<クロム原料>
クロム原料は、酸化クロムを使用することができる。クロム原料として酸化クロムを使用する場合の含有量は10質量%以下とすることが好ましい。また、マグクロれんが用原料配合物の化学組成がCr:8~30質量%となるように配合を調整する。
<その他の原料>
本開示のマグクロれんがの特性を逸脱しない範囲で、Feの微粉、クロム鉄鉱等を配合することもできる。その場合、マグクロれんが用原料配合物の化学組成が、Cr:8~30質量%、Fe:5~12質量%となるように配合を調整する。
<製造方法>
本実施形態のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物に、一般的な耐火れんがの製造に使用されるバインダーを添加し、混練、成形する。マグクロれんがを緻密にするためにプレス圧を高くしたり、プレス回数を増やしたり等、必要な特性に応じて成形条件を適宜変更してもよい。焼成温度は1300~1600℃が好ましい。ヘルシナイトを含むことで、低い温度で焼成しても、耐スポーリング性が良好なマグクロれんがを得ることができる。このため、エネルギーと温室効果ガス排出量を低減することができる。
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。
バインダーとして外掛け2.5質量%のトウミツを添加した原料配合物をタイヤミキサーで混練し、混練物を得た。混練物を230mm×114mm×65mmに1.8tでプレス成形し、トンネルキルンを用いて大気雰囲気(酸化雰囲気)で焼成し、耐火れんがを得た。耐火れんがを所定の形状に加工し、試験片とした。
試験1の試験片について、原料の配合(質量%)と、原料配合物の主要成分:MgO、Cr、Feの化学組成(質量%)と、Feのうちのヘルシナイト由来のものの割合と、焼成温度を表1に示す。
Figure 2024027731000001
実施例1、実施例2はヘルシナイトを含み、焼成温度をそれぞれ1450℃と、1600℃とした。比較例1~3はヘルシナイトを含まず、比較例3はベンガラ(Fe)を含み、比較例1、比較例2~3は焼成温度をそれぞれ1700℃超、1450℃とした。
試験2の試験片について、原料の配合(質量%)と、原料配合物の主要成分:MgO、Cr、Feの化学組成(質量%)と、Feのうちのヘルシナイト由来のものの割合と、焼成温度を表2に示す。
Figure 2024027731000002
実施例3~6、実施例1、実施例7~8、実施例10はヘルシナイトの含有量を変化させ、焼成温度は1450℃で一定とした。実施例9は実施例8と同配合で、焼成温度を1300℃とした。
得られた試験片について、以下の評価を行った。
<曲げ強さ:S>
曲げ強さ:S(MPa)はJIS R2213:2005(耐火れんがの曲げ強さの試験方法)に従って測定した。
<動弾性率:E>
動弾性率:E(GPa)はASTM C1259-08e1で規格化されている打撃共振法に従って測定した。
<耐スポーリング性>
耐スポーリング性はJIS R2657:1995(耐火れんが及び耐火断熱れんがのスポーリング試験方法)に従って試験し、試験面の剥落までの回数を、70回以上:優、50~69回:良、30~49回:可、29回以下:不可と評価した。
試験1の評価結果を表3に示す。
Figure 2024027731000003
比較例1はヘルシナイトを含まず、高温焼成した従来技術のマグクロれんがである。比較例2、比較例3はヘルシナイトを含まず、それぞれマグクロ原料(電融マグクロ)由来のFe、ベンガラ由来のFeを含み、焼成温度を1450℃とし、耐スポーリング性に劣る結果となった。また、比較例3は焼成後の寸法が収縮し、使用に適さない結果となった。これは、ベンガラ由来のFe微粉がれんが中に分散し、MgOとの焼結が過剰に促進されたためと考えられる。比較例に対し、ヘルシナイトを含み、焼成温度をそれぞれ1450℃、1600℃とした実施例1、実施例2は、いずれも耐スポーリング性が1700℃以上の高温で焼成した比較例1と同等の結果となり、ヘルシナイトを添加したことで、焼成温度を低くしても良好な特性が得られた。これは、ヘルシナイト中のFeが焼成過程で溶出してMgOとの焼結が促進されたため、低温焼成しても動弾性率が過剰に高くならず、かつ、曲げ強さは十分に高くなり、耐スポーリング性に優れる結果となったと考えられる。
試験2の評価結果を表4に示す。
Figure 2024027731000004
ヘルシナイトを含む実施例3~6、実施例1、実施例7~10は、いずれも曲げ強さや耐スポーリング性に優れる結果となった。中でも、ヘルシナイトの含有量が1~15質量%の実施例4~6、実施例1、実施例7~9は、曲げ強さや耐スポーリング性に特に優れる結果となった。また、原料配合物の化学組成はMgO:58~87質量%、Cr:8~30質量%、Fe:5~12質量%であり、Feは、ヘルシナイト由来のものが5%以上となるように配合することで、マグクロれんがの容積安定性に優れるとともに、耐スポーリング性に優れる結果となった。ヘルシナイトの含有量が10~12質量%の実施例1、実施例7は、動弾性率(E)に対する曲げ強さ(S)の比率(S/E)がさらに向上し、耐スポーリング性に特に優れる結果となった。また、実施例9は、ヘルシナイトを含むため、焼成温度が低くても、曲げ強さや耐スポーリング性に優れる結果となった。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。また、本実施形態の製造装置等の構成及び動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。

Claims (5)

  1. ヘルシナイトを含むことを特徴とするマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物。
  2. 請求項1に記載のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物において、
    前記ヘルシナイトの含有量が1~15質量%であることを特徴とするマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物。
  3. 請求項2に記載のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物において、
    化学組成がMgO:58~87質量%、Cr:8~30質量%、Fe:5~12質量%であり、
    前記Feは、前記ヘルシナイト由来のものが5%以上であることを特徴とするマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマグネシア・クロム質耐火れんが用原料配合物を用いることを特徴とするマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法。
  5. 請求項4に記載のマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法において、
    焼成温度が1300~1600℃であることを特徴とするマグネシア・クロム質耐火れんがの製造方法。
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