JP2024027406A - MgO系コンポジットセラミックス - Google Patents

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Abstract

【課題】高い熱伝導率と高い発光効率とを兼ね備えた蛍光体を提供する。【解決手段】MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むセラミックスであって、(1)前記蛍光体がセラミックス中5~25重量%含有し、(2)前記セラミックスの密度が理論密度の98%以上である、ことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスに係る。【選択図】なし

Description

本発明は、新規なMgO系コンポジットセラミックスに関する。さらに、本発明は、前記MgO系コンポジットセラミックスを含むデバイスに関する。
近年では、窒化ガリウム(GaN)系のLED((Light Emitted Diode)発光ダイオード)、LD((Laser Diode)レーザーダイオード)等が開発され、これらの光源と無機系コンバーターを使って白色化することにより照明等への応用が始まっている。
従来の照明では、これまで白熱球又は蛍光灯が主として用いられてきたが、これらの照明技術は、電気→光への変換効率が低く、特に白熱球にあってはほとんどが熱エネルギーとなることから、照明技術として終焉を迎えようとしている。
GaNによる青紫色発光では、電気→光の変換効率が飛躍的に改善されたが、短波長の単色光であるために照明には直接利用することができない。このため、GaN半導体からの短波長光は、CeがドーピングされたYAGであるCe:YAG(Ce:YAl12)粉末(蛍光体)をシリコーンレジン(マトリックス)に分散させた無機-有機コンポジット材を適用することで白色光として利用される。これは、一般家庭用の照明、パソコン表示画面のバックライト等に実用化されている。
これに対し、比較的ハイパワーが必要とされるプロジェクター等では、前記のような無機-有機コンポジットは利用できない。その理由は、GaN半導体から放出される光の波長が400~450nm付近であるので、シリコーンレジンの“焼け”(短波長光照射に伴う有機物の黒色化)があることに加え、比較的高い光エネルギーを照射したときのCe:YAGからの放熱でマトリックス材である有機物の耐熱性の問題があるためである。
これに関しては、有機物を含まないCe:YAG焼結体を用いることにより、短波長の励起光による劣化と耐熱性の問題を解決することができる。しかし、近年では、プロジェクター画像の高輝度化・大面積化の要請、自動車、列車、航空機等の長距離照明の要請、スタジアム、空港等の大規模照明の要請等があるところ、このような用途に従来のCe:YAG焼結体を用いる場合は、励起パワーの増大に伴う蛍光体の発熱問題(150℃以上の温度下における蛍光体の発光効率の低下)が指摘されている。このため、Ce:YAG焼結体を超えるような性能をもつ新たな蛍光体の開発が切望されている。
上記のような発熱の問題を解決する手段の一つとして、Alからなるマトリックス中にCe:YAGを分散させる方法がある(非特許文献1)。Al-Y系状態図からわかるように、このコンポジットは双方が反応しないことから合成自体は容易であるが、Al自体の熱伝導率が30W/mk程度であり、コンポジット化しても熱伝導率は最大25W/mk程度に留まる。また、ベース材料(マトリックス)であるAlの結晶構造が六方晶であり、複屈折性が大きいので、遠距離の白色光源には不向きである。
ここで、Ce:YAGを高熱伝導性の窒化アルミニウムに分散させることにより、ハイパワー用の酸化物-窒化物コンポジットセラミックスを合成する方法も考えられる。しかし、Ce:YAG-AlN系高密度焼結体は、熱伝導性は低く、蛍光特性も十分でない。実際、比較的蛍光特性に優れるとされるCe:YAG-AlNコンポジットセラミックスの報告がある(非特許文献2)。このコンポジットセラミックスも、AlNとCe:YAG-AlNの反応が抑制されて焼結体密度も理論値付近に達しているものの、Ce:YAG(20%)-AlN(80%)組成のセラミックスであっても熱伝導率は最大で39W/mk程度と極めて低い。この焼結体の場合、理論的には熱伝導率250W/mk程度に達しなければならないのに対し、上記のように実際に得られたコンポジットセラミックスの熱伝導率はあまりにも低く、当該報告に記載されていない重大な技術課題が存在していると推察される。また、マトリックスが立方晶でないので、長距離用の光源に適さないことに加え、YAG系以外の有望な蛍光体との組み合わせが不可能であるという欠点も存在する。
また、Ce:YAG焼結体は、白色光に変換できる有効な材料であるが、2種以上の蛍光物質を同時に焼結することで、例えばCe:YAG中にEu添加サイアロンを分散させた複合焼結体を作製できれば、白色+赤色添加等の色調調整を行えることが期待できる。ところが、実際に緻密な焼結体を作製しようとすると、相互が反応してYAG又はサイアロン相がほとんど消滅してしまうため、結果として蛍光体としての機能及び高熱伝導性が失われる。
特許文献1には、無機蛍光体をMgOをマトリックスの一部又は全てとした材料中に分散させたセラミックスが記述されている。マトリックスを構成する候補材料は、Al、MgO、TiO、Nb、ZnO、Y等の酸化物、AlN、BN等の窒化物、SiC等の炭化物等であると記載されている。
しかし、これらの酸化物の焼結温度は非常に高く、緻密化する温度域で焼結を行えば蛍光体と容易に反応するだけでなく、そもそもそれらマトリックスを構成できる候補材料としての酸化物の熱伝導率は高くはないので熱放散性にも問題がある。また、窒化物に関しては、AlNは、非特許文献1に記述されたような問題がある。BNは、超高温焼結+高圧でなければ焼結は困難であるうえ、蛍光体と容易に反応して蛍光体の発光が著しく低下する。炭化物については、特にSiCは高い熱伝導性を有するが、本材料の焼結温度は極めて高くかつ蛍光体と反応しやすい。しかも、ほとんどのSiCは、黒色の焼結体となるので、仮に焼結体中に蛍光体が残存できたとしてもその蛍光体の発光をほとんど吸収してしまう。従って、SiCはマトリックスとして致命的な問題を残す。
また、仮に、本発明と同一のMgOだけをマトリックスとした場合であっても、特定の焼結助剤なしでは98%以上の相対密度を得ることはできない。実際、特許文献1の段落0030に記載された宇部マテリアルズ製の50A、2000A等の市販の原料を1200℃で焼結しても60%程度の相対密度しか得られない。特許文献1の明細書には“緻密に焼結することができる”と記載されてはいるものの、そもそも「緻密」の程度が明確ではないので、少なくとも成形体を焼結できる限りにおいての「緻密な焼結」という意味で解釈できる。これらの原料を使って相対密度98%以上の焼結体を作製するためには、実質的に1600℃以上の焼結温度が必要である。特に、特許文献1ではナノサイズである5~200nm(商品名:宇部マテリアルズMgO(50A,2000A)等の出発原料を使って蛍光体と混合すれば、MgO単独の焼結よりさらに緻密化は困難となる。
加えて、特許文献1では、焼結助剤としてリン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、酸化マンガン、酸化バリウム等を添加して焼結することでマトリックスであるマグネシアの平均粒子径を0.01~10μmにする方法が述べられているが、これらの焼結助剤では原理的にみても低温での緻密化は困難である。事実、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム等の焼結助剤を使えば、比較的低温から焼成収縮が起こるが、不均一な緻密化及び異常粒成長が起こりやすく、たとえ焼結したとしても焼結途上の不均一な組織構造及び過度な粒成長のため、MgO粒子内部に気孔が残留しやすくなる結果、たとえ高温焼結しても相対密度85%以上の焼結体を得ることは困難である。この点だけをみても、1200℃以下という比較的低温で98%以上という極めて高い相対密度を有する焼結体を得ることは事実上不可能であるといえる。
その他にも、特許文献1で焼結助剤として記載されている酸化マンガンは、着色の原因となり、蛍光特性の劣化の原因となる。酸化バリウム及び酸化イットリウムは、焼結のインヒビター(inhibiter)となり、かえって焼結を阻害する成分となる。酸化ケイ素は、焼結助剤としての効果は1600℃程度という高温域でないと発揮されない。酸化バリウムは、焼結体の水和反応が顕著になり、製造された焼結体の安定性に乏しく、短時間で崩壊に至ることになる。また、前記リン酸系の焼結助剤、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素等では相対密度98%以上の緻密化が困難であるだけでなく、MgO-MgO粒子間に第二相(反応相)を形成しやすく、理論的にも技術的に見ても熱伝導率を著しく低下させることが窺い知ることができる。
特許文献1では、焼結助剤の選択肢としての可能性が単に述べられているだけであり、どの程度緻密化が促進されたのかの具体例も記載されていない。また、作製されたマグネシア焼結体の具体的な密度の記載がないだけでなく、密度上昇に伴う熱伝導率測定の具体例も示されていない。加えて、特許文献1には、低温でマトリックスを緻密化させる一方で蛍光体と反応させないという課題及びそれを解決するための具体的手段は記載されていない。
特許文献2は、マトリックスがMgOとMg(OH)とを主成分とする点が本発明と根本的に異なる。MgOは高熱伝導物質であるが、緻密なMgO焼結体でなければ高熱伝導性を発揮することはできない。また、緻密なMgO焼結体は、一般的には1500℃以上の高温焼結でしか合成できないため、マトリックスであるMgOと蛍光体の反応が顕著となる。このため、両者の反応により目的相以外の物質が形成され、緻密化が阻害されるだけでなく、その反応により熱伝導性及び蛍光特性の大幅な低下を伴うことが容易に予想できる。
特許文献2では、低温では緻密なMgO焼結体の作製が困難であるため、Mg(OH)と蛍光体を混合し、さらに水を含侵させ、さらに250℃以下の熱処理が施されている。ところが、この方法では、蛍光体を含むMgO+Mg(OH)を含むマトリックスのコンポジットは形成できるが、焼結はなされていないことから、機械的強度が弱く、加工が困難となる。また、当該材料を構成する原料間の結合が水又はOH基を介しているだけなので、その結合は非常に弱く、高い熱伝導率は期待できない。実施例にある熱処理後(実施例には焼結後と記載されているが、物質移動を伴わない温度領域であるので焼結の定義から外れるため、“熱処理”の表現が正しい。)の相対密度も80~96%程度にとどまり、相対密度が最高の97%に達した蛍光体を含まない試料の熱伝導が僅か10.1W/mKであり、10%蛍光体を含むものでは相対密度が92%まで低下し、その熱伝導率は6.5W/mKとさらに低くなる。
このように、特許文献2では、マトリックスと蛍光体の反応を抑制しようとする思想はあるものの、マトリックスの緻密化手段が適切でないために十分な密度にはなり得ない。すなわち、得られた材料は、焼結により緻密化されたものではなく、MgO焼結体を構成するMgO-MgO粒子間の格子振動が生じにくい組織構造であるため、熱伝導はかなり低くなっている。
特開2018-180271 国際公開 WO2021/150261
上記のように、従来技術では、白色光源の励起源であるGaN-LED又はGaN-LDのハイパワーに十分に耐えられるような高熱伝導性を発揮できる材料の開発が求められているものの、そのような材料の開発には未だ至っていないのが現状である。すなわち、高い熱伝導率を実現するためには発光効率が犠牲になり、逆に発光効率を優先させると熱伝導率が低くなることから、従来技術においては高熱導電率と発光効率とはいわばトレードオフに関係にあるとされているのが実際である。
従って、本発明の主な目的は、高い熱伝導率と高い発光効率とを兼ね備えた蛍光体を提供することにある。
本発明者は、これまでの問題について鋭意検討を重ねた結果、コンポジットを構成するマトリックス材料は、熱伝導性が高い立方晶系材料が好ましく、その物質は酸化マグネシウム(MgO)であることを確認した。
MgOは、毒性のない安全な物質であり、酸化物中で熱伝導の最も高い物質(50W/mK)の一つであり、海水から無尽蔵に採取できるので原料も安価で経済性に優れた特徴もある。このため、一見すれば、MgOをマトリックスとして前記蛍光体を分散させた焼結体が熱伝導の高いコンポジット型蛍光セラミックスとなり得ることが期待できるが、前述したAlN-蛍光体コンポジット以上の致命的問題を生じることが予測される。蛍光体が酸化物又はその他の場合であっても、高密度MgO焼結体を作製するには比較的高温(例えば1500℃以上)の焼結が不可欠となり、焼結時には蛍光体との化学反応を伴うので、MgOに蛍光体が分散された組織構造ではなく、MgOと蛍光体が反応して第二相(反応生成物による反応相)が大量に形成されてしまう。すなわち、高温での焼結を実施する限り、A(マトリックス)+B(蛍光体)→C(第二相)の反応は避けることはできなくなる。このため、これまで焼結時に化学反応を伴う組み合わせのコンポジットは、原理上合成が不可能とされている。
そこで、本発明では、自然に起こりうる化学反応を如何にして最小限にとどめるかについて検討し、その課題を解決したことにこれまでの報告等との違いがある。すなわち、実現したいことは、A+B(低密度圧粉体)→(焼結)→A+B(高密度(高熱伝導)+透光性焼結体)であり、それを具体的にどのようなて実現させるかである。
本発明では、特定の製造プロセスを採用することによって、これまでにない高熱伝導かつ蛍光特性に優れたMgO+蛍光体コンポジットセラミックスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のMgO系コンポジットセラミックスとその材料を利用した白色発光デバイスに係る。
1. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むセラミックスであって、
(1)前記蛍光体がセラミックス中5~25重量%含有し、
(2)前記セラミックスの密度が理論密度の98%以上である、
ことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックス。
2. 蛍光体が、(a)窒素を含有しない酸化物系蛍光体、(b)酸素を含有しない窒化物系蛍光体及び(c)酸窒化物系蛍光体の少なくとも1種である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
3. 前記マトリックス中にLiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を合計で0~1.0重量%含有する、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
4. 熱伝導率が30W/mK以上である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
5. 当該MgO系コンポジットセラミックス表面を鏡面研磨した厚さ0.2mmの試料において、波長633nmにおける直線透過率が15%以下であり、かつ、全透過率が30~70%である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
6. マトリックスと蛍光体との反応相の含有量が、X線回折分析において、Σ反応相/Σ(マトリックス+蛍光体+反応相)の回折ピーク比が5%以下となる量である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
7. 当該MgO系コンポジットセラミックスをGaN系LED又はGaN系LDで励起したときの発光効率が50%以上である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
8. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
(1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程、及び
(2)前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにて1200℃以下でホットプレス法又は放電プラズマ焼結法により焼成することにより焼結体を得る工程
を含むことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスの製造方法。
9. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
(1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程、
(2)前記混合物を圧力10~30MPaにて一軸加圧成形することにより成形体を得る工程、
(3)前記成形体を圧力98~396MPaにてCIP成形することによりCIP成形体を得る工程、及び
(4)前記CIP成形体を理論密度の91~99%となるように焼成することにより予備焼結体を得る工程、
(5)前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP処理する工程
を含むことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスの製造方法。
10. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
(1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程、
(2)前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにてホットプレス法又は放電プラズマ焼結法により焼成することにより予備焼結体を得る工程、及び
(3)前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP処理する工程
を含むことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスの製造方法。
11. 前記項1~7のいずれか1項に記載されたMgO系コンポジットセラミックスを波長変換材料として含むGaN系LED又はGaN系LDを励起源とする白色発光デバイス。
本発明によれば、より高い熱伝導率を発揮できるがゆえに白色光源のハイパワーにも適用可能な蛍光体を含むコンポジットセラミックス(光学材料)を提供することができる。特に、本発明では、酸化物中で最も熱伝導の高い物質の一つであるMgOをマトリックスとして用い、このマトリックスに前述したCe又はEuが添加されたYAG(YAl12)、SiAlON(Si6-zAl8-z)、LSN(LaSi11)、CASN(CaAlSiN)等の蛍光体(粒子)を分散させることで、蛍光体から放出される熱エネルギーをMgOを介して媒質外に放出することでハイパワーの要求に耐えることができるコンポジットセラミックスを提供することができる。そのほかにも、例えば互いに結晶構造又は発光元素が異なる蛍光体を2種以上添加することで色調を制御できるコンポジットセラミックスを提供することも可能となる。
一般に、GaN系発光ダイオードの発光波長帯は400~450nmであり、この光を照明等の白色光に変換する最も代表的な蛍光体(波長変換媒体)はCe:YAGである。この材料は、前記ダイオードから発生する青紫光を吸収し、520nm付近を発光中心とした幅広い波長帯で発光することに加え、変換効率が非常に高いことから、シリコーンレジンに当該蛍光体の粉末を添加し、分散させた形態で家庭用の照明に応用したり、あるいはCe:YAG焼結体を白色コンバーターとして比較的パワーの高い領域のプロジェクター光源等として利用されている。最近では、蛍光体として、Ce又はEu添加のサイアロン、窒化物(LSN,CASN)等が報告され、その一部は工業化されている。
近年においては、さらなるハイパワー光源の必要性が高まっているが、従来のCe:YAG焼結体をハイパワーGaN系のLED又はLDで励起すると、Ce:YAG焼結体の発熱が著しくなり、光(励起光)―光(蛍光体からの発光)変換効率の低下に留まらず、最悪の場合はCe:YAG焼結体の異常発熱又は溶融に至る事態に陥る。Ce:YAG焼結体を薄肉のリング状かつ金属をヒートシンクにし、さらにリングを回転させながら励起スポットを連続的に変える試みもなされているが、Ce:YAG焼結体からの放熱が十分でないために発光効率の低下は避けられない。
この問題を解決するために、前出の非特許文献で示したように、熱伝導率の高い物質との組み合わせであるAl-Ce:YAGコンポジット又は極めて高熱伝導性を有するAlNセラミックス中にCe:YAG蛍光体を分散添加した報告があるが、前者は熱伝導向上効果が低く、後者はAlNとCe:YAGを緻密化させる温度が1700℃程度と高く、高密度焼結体は得られるものの、熱伝導性は期待したほど向上しない。また、双方ともに、添加可能な蛍光体はCe:YAGに代表されるガーネットに限定され、その他の蛍光体との組み合わせの可能性はないので、演色性を制御することは不可能に近く、技術の柔軟性が乏しい。また、マトリックスが複屈折を有する非立方晶系材料であるので、近距離用の光源に限定される問題点を残す。
これに対し、本発明では、上記のように、熱伝導性の高いMgOをマトリックスの主成分として用いたうえで、これに蛍光体粒子を分散させるに際し、比較的低温で焼結させることができる方法を開発できた結果として、焼結体の緻密化を促進しつつ、焼成時に起こり得るMgOと蛍光体との反応を効果的に抑制することによって、緻密であるがゆえに高い熱伝導率を発揮できるととともに、MgOと蛍光体との反応相の生成を抑制することで良好な発光効率を実現できる複合セラミックスを提供することに成功したものである。
そして、本発明の製造方法では、上記のような複合セラミックスをより確実かつ効率的に製造することができる。例えば、乾燥した混合粉末は、(1) 金型成形→CIP→脱脂→仮焼結→HIPの工程を得る方法と(2) 粉末を直接モールドに充填した後、HP又はSPS装置を用いて加圧と加熱を行いながら緻密化させる。さらに、(3)前記(2)の方法で作製した焼結体をより高圧でHIP処理することにより緻密な焼結体を作製する方法から構成される。この場合、MgO原料サイズと助剤量が適正であれば、マトリックス部の焼結(緻密化)は促進され、1200℃以下の温度で密度98%以上の焼結体が得られる。MgOに比べて粒子サイズの十分大きな蛍光体を用いれば、MgO-MgO間の焼結が優先されるのでMgO-蛍光体間の反応は非常に軽微又は皆無に近い状態となる。しかし、加圧を伴わない焼結である場合は、蛍光体とマトリックス間に空隙ができやすい状況となり、その空隙部を埋め高密度化し、高い熱伝導を得るためにも加圧プロセスは不可欠となる。
2種以上の物質を焼結して高密度焼結体を得ようとすると複数物質の相互反応が生じ、反応相(出発物質とは異なる第二相)が形成されるのが一般的である。すなわち、A+B→C、具体例としてAl(5モル)+Y(3モル)→YAG(YAl12(ガーネット)となることが自然科学の常識であり、Al+Y(低密度圧粉体)→(焼成)→Al+Y(高密度焼結体)を形成する技術に関するレポートは見られない。無論、Al+YAG(圧粉体)→(焼成)→Al+YAG(高密度焼結体)のような状態図上第二相が形成できないものも存在するが、本発明は前者に相当する。GaN系LEDの一般的な白色コンバーター(波長変換媒体)として利用しているCe:YAGはその熱伝導率が約10W/mK程度であるので、今後のハイパワー用途の要求に応えることが難しい。また、蛍光体が窒化物又は酸窒化物の場合、焼結温度が極めて高く、同材料の高密度焼結体を作製することは容易でなく、経済的な問題も残される。この観点においても透光性マトリックス中に蛍光体(粒子)を分散させた高密度コンポジット焼結体を作製することが好ましいが、マトリックスと蛍光体との化学反応を伴って高密度化も難しく、所望の蛍光特性を得ることができない。さらに、蛍光特性の異なる2種類以上の蛍光体をマトリックスに分散させたコンポジットができれば、蛍光特性を反映した高機能蛍光体も形成できるのであるが、高密度焼結体を形成する時の共通課題である“蛍光体とマトリックスの反応”が起こってしまう。
蛍光体を添加したコンポジットセラミックスの飛躍的な特性の向上のためには、“反応を極力低減した緻密化”が必要条件になるが、このような提案又は報告は見られない。本発明では、このような問題を解決するために鋭意検討した結果、焼結条件の選択幅が大きく安価で安定的な物質をマトリックス(酸化物)に選択すべきであると考え、マトリックスが立方晶構造で熱伝導率が高い物質であるMgOが最良と判断した。これまで開発された高純度MgO原料の一次粒子は、数μm~数nm程度であるが、市販原料を焼結すると粒子サイズが焼結温度に及ぼす影響は小さく、常圧焼結の場合は1500~1700℃程度で焼結しないと高密度焼結体は得られない。また、MgO原料にCe:YAG等の蛍光体を添加し、焼結させると焼結途上にMgOとCe:YAG間での顕著な反応が起こり、MgOとCe:YAGからのみ構成される高密度焼結体を得ることができないことが確認されている。
MgO粒子どうしの焼結を活性化させ、MgO-蛍光体の反応を抑制する手段について鋭意検討したところ、LiF、AlF、MgF 、CaF等の特定のフッ化物を添加したMgO原料はMgO-MgO間の焼結(緻密化)を優先させるのに極めて有効であり、焼結温度も低下させることができることを見出した。これらのフッ化物のカチオンは、軽元素で構成され、またマトリックスであるMgOのMg2+とのイオン半径も近いことから、母材に固溶しやすく、規定量以下であれば熱伝導率の低下も生じ難いという特徴をもつ。
また、蛍光体のサイズ(平均粒径)を3μm以上、好ましくは5μm以上とすることにより、MgO-MgOの優先反応の観点で優位となる。すなわち、焼結のために試料温度を上昇させると粒子サイズの小さなMgOどうしの緻密化が起こるため、MgO-蛍光体の反応は顕著に抑制される。焼結が進むとMgO-MgO間の緻密化は進むが、蛍光体周辺の密度変化が大きいために空隙が生じ安いので、蛍光体と緻密化したマトリックス(MgO)の空隙を埋めなければ高熱伝導が不十分となり、蛍光体からの放熱が空隙部に蓄熱される。この問題を解決するには空隙の縮小ないしは除去が不可欠となり、この目的達成のためにはHIP、HP、SPS等の加圧焼結法の導入が有効となる。なお、蛍光体のサイズの上限は、限定的ではないが、通常は50μm程度とすれば良い。50μm以下に設定することにより、より効果的な励起が得られるうえ、コンポジットセラミックスを作製するときにクラック等に伴う歩留まり低下等の問題を未然に回避することができる。
このように、本発明の製造方法によって、上記のような諸問題(特に、MgO-蛍光体の反応、焼結体中の空隙の形成等)を解消し、その結果として、高い熱伝導率と高い発光効率を兼ね備えたMgO系コンポジットセラミックスをはじめて提供することが可能となる。
本発明のMgO系コンポジットセラミックスのサンプルの外観を示す図である。図1(a)は厚さ0.2mmに鏡面研磨したCe:YAG(10%)-MgO(90%)焼結体の外観を示す。また、図1(b)において、AはCe:YAGを添加したMgO焼結体の外観写真、BはEu:サイアロンを添加したMgO焼結体の外観写真、CはCe:YAG+Eu:サイアロン共添加したMgO焼結体の外観写真をそれぞれ示す。 透光性を有する7%Ce:YAG-MgOセラミックスの反射顕微鏡写真を示す。 透光性を有する7%Ce:YAG-MgOセラミックスの透過顕微鏡写真を示す。 多角形Ce:YAGを10%添加した透光性MgOセラミックスの透過顕微鏡写真を示す。 透光性を有する7%Ce:YAG-MgOセラミックスのXRDパターンを示す。 図6(a)は、球状のCe:YAGを10%添加したMgOセラミックスの直線透過及び全透過スペクトルを示す。図6(b)は、多角形のCe:YAGを10%添加したMgOセラミックスの直線透過及び全透過スペクトルを示す。 蛍光スペクトル測定のセットアップ例(概略図)を示す。 10%Ce:YAG添加MgOコンポジットセラミックス及び8%Ce:YAG+6%Eu:サイアロン共添加したMgOコンポジットセラミックスから発生する蛍光スペクトルをそれぞれ示す(Ce:YAGの発光中心が520nm付近であるのに対し、赤色発光するEu:サイアロンを共添加すると発光中心が580nm付近にシフトして色調制御できている。)。 波長445nmのレーザーを用い励起密度に対して蛍光体から発した蛍光パワーの比較を示す。(a)はCe:YAG、(b)は10%Ce:YAG-MgO、(c)は20%Ce:YAG-80%AlNをそれぞれ示す。 本発明のMgO系コンポジットセラミックスを波長変換用素子として用いた発光デバイス(発光素子:透過型)の模式図を示す。 発光効率測定の測定方法のイメージ図を示す。 反射型の発光デバイスの原理図を示す。
1.MgO系コンポジットセラミックス
本発明のMgO系コンポジットセラミックス(本発明セラミックス)は、MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むセラミックスであって、
(1)前記蛍光体がセラミックス中5~25重量%含有し、
(2)前記セラミックスの密度が理論密度の98%以上である、
ことを特徴とする。
本発明セラミックスは、基本的には、MgO多結晶を含むマトリックス(以下、単に「マトリックス」ともいう。)と、そのマトリックス中に含まれる蛍光体とを有する。蛍光体(粒子)は、マトリックス中に分散しており、マトリックス(母材)は蛍光体を支持・固定する機能も有する。
マトリックスは、MgO多結晶が主要な構成材料をなしている。従って、マトリックス中のMgO多結晶の含有量は、例えば95~100重量%とすることができ、特に95~99重量%と設定することができる。また、本発明セラミックス全体に占めるMgO多結晶の割合は、通常は75~95重量%程度とし、特に85~95重量%とすることが好ましい。これによって、より高い熱伝導性を発揮することができる。
上記のように、マトリッス中のMgO多結晶の含有量は100重量%である場合のほか、本発明の効果を妨げない限りにおいて、マトリックス中にMgO多結晶以外の成分が含まれていても良い。他の成分としては、例えば後記に示すフッ化物等が挙げられるが、これに限定されない。なお、本発明セラミックスでは、Mg(OH)を実質的に含まないことが好ましい。
MgO多結晶を構成するMgO結晶粒子の平均結晶粒径は、限定的ではないが、通常は1~50μmであることが好ましく、特に5~30μmであることがより好ましい。これによって、より高い熱伝導性を発揮することができる。
マトリックス中に含まれる蛍光体は、特に限定されず、公知又は市販の蛍光体を用いることができる。また、発光色の種類も限定されず、黄色、オレンジ色、赤色、緑色、白色、青色等のいずれであっても良い。本発明では、演色性を制御する目的で白色蛍光以外の発光をもつ蛍光体も同時に添加することも可能となる。特に、GaN-LED又はGaN-LDから発生した波長400~450nmの励起光を吸収し、可視域で効率的な発光特性を示す蛍光体でであることが望ましい。例えばCe:YAG蛍光体と共にEu:サイアロン蛍光体を添加すれば、蛍光に赤みを帯びさせることができ、例えば食品、衣料関係等の照明で高い演色を制御することができる。
発光体となる物質としては、例えば、(a)窒素を含有しない酸化物系蛍光体(以下、単に「酸化物系蛍光体」という。)、(b)酸素を含有しない窒化物系蛍光体(以下、単に「窒化物系蛍光体」という。)及び(c)酸窒化物系蛍光体の少なくとも1種を好適に用いることができる。
酸化物系蛍光体としては、例えばCe:YAl12(Ce:YAG)、Ce:LuAl12等のガーネット構造全般、Ce:CaSc、その他にもCe(白色)、Eu(赤)、Cr(赤)、Mn(赤)等を固溶できる酸化物で波長400~450nmのGaN系LED又はGaN系LD光を吸収し、発光できるもの(発光効率が通常50%以上)であれば良い。
窒化物系蛍光体としては、例えばLaSi11(LSN)、CaAlSiN(CASN)、Eu:CaAlSiN、Ce:(La,Y)Si11、Ce:LaSi11、Eu:(Sr,Ca)AlSiN等のほか、酸化物蛍光体と同様の特性をもつものであれば良く、結晶構造等は特に限定されない。
酸窒化物系蛍光体としては、例えばαサイアロン、βサイアロン、Eu:(Si,Al)(O,N)、Ce:LaSi11等のほか、酸化物蛍光体と同様の特性をもつものであれば良く、結晶構造等は特に限定されない。
本発明では、これらの蛍光体を用いることによって、マトリックスとの反応も効果的に抑制される結果、優れた発光特性をより確実に得ることができる。この点において、本発明セラミックスでは、マトリックスと蛍光体との反応相(以下「第二相」ともいう。)(すなわち、MgOと蛍光成分との反応相)が少ないことが望ましい。特に、マトリックスと蛍光体との反応相の含有量が、X線回折分析(XRD)において、Σ反応相/Σ(マトリックス+蛍光体+反応相)の回折ピーク比が5%以下となる量であることがより望ましい。すなわち、本発明では、MgO-蛍光体間の反応も非常に軽微に抑えることができるので、XRD分析において検出不能又は全体量に対して第二相の生成は全体量の5%以内となる量にとどめることができる。後記の試験例1で示すように、反応相の含有量は、Σ反応相/Σ(マトリックス+蛍光体+反応相)の回折ピーク比から求めることができる。
本発明セラミックスにおいて、蛍光体は、通常は粒子(粒状蛍光体)としてマトリックス中に分散している。その粒子の大きさは、通常は平均粒径3μm以上とし、好ましくは5~50μm程度の範囲内において、例えば用途、使用形態等に応じて適宜設定することができる。
本発明セラミックス中における蛍光体の含有量は、通常は5~25重量%程度とし、特に5~15重量%とすることが好ましい。蛍光体の含有量が少なすぎる場合は、励起光の吸収が不十分となり、蛍光体からの効率的な発光を生じるには媒質をより厚くする必要がある。逆に、蛍光体の含有量が多すぎる場合は、励起光の吸収は十分であるのでより薄くして利用することができるが、加工歩留まりが悪くなり、また実質的な熱伝導率が低下するおそれがある。従って、これらのバランスをとるため、上記含有量の範囲とすることが望ましい。
本発明セラミックスは、マトリックスと蛍光体の屈折率差Δnは、マトリックスが立方晶のMgOであるため、蛍光体が立方晶の場合は、母材と蛍光体の屈折率差(Δn)が0.08以上(特に0.1~0.3)であることが好ましい。例えば、立方晶構造の1%Ce:YAGを蛍光体とする場合、当該蛍光体の屈折率は1.83であり、マトリックスのMgOのそれは1.73であるのでΔnが0.1となる。マトリックスと蛍光体とがともに立方晶である場合、本発明セラミックスは、互いに屈折率の異なるマトリックスと蛍光体とから構成されている高密度焼結体となり、かつ、マトリックスが立方晶構造のMgOであることから特異な透光性を有する。この場合、マトリックスと蛍光体の屈折率差Δnが0.08未満であると、高密度化した焼結体中のマトリックスの透過率が高くなりすぎ、すなわち励起光を照射した場合のマトリックス内に存在する蛍光体の散乱(蛍光体による媒質内での多重散乱)が生じにくくなる。このため、励起光は媒質内をより直線的に通過できるため、熱放散の観点で有利な薄い媒質では、励起光を効率的に吸収できなくなり、結果的に光(励起光)-光(蛍光体からの発光)の変換効率が低下する。換言すれば、励起光(GaNのLED又はLDから放射される青紫光)が媒質内部に照射された場合、Δnが小さすぎると、直線透過率が高くなり、蛍光体に十分吸収されない状態で媒質外に放出されると蛍光体から変換された白色光量が少なくなる。このためマトリックスと蛍光体のΔnをある程度大きくしておき、励起光が媒質内で多重散乱する構成にする構成にしておかなければ、熱放散の観点で有利な薄い媒質からの効率的な白色光への変換が不利になるおそれがある。ここで、屈折率は、立方晶の場合は結晶方位により変動することはないが、温度及び波長により若干変動する。このため、本発明では、屈折率は、室温(20℃)及び波長633nmにおける値とする。
これに対し、他方、蛍光体が六方晶、正方晶、斜方晶等の非立方晶であれば母材との屈折率差は、特に限定的とはならない。すなわち、蛍光体が非立方晶構造の場合は、多重散乱は生じやすいので、特にマトリックスと蛍光体間のΔnは特に問題とならない。前述したβ-サイアロン、LSN,CASN等の結晶構造はそれぞれ六方晶、斜方晶、斜方晶系に属しているので、Δnに関する規定は除外され、またそれら酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体等の屈折率は2.2程度と非常に大きいので、励起光の多重散乱はより起こりやすい条件となる。このため、薄い媒質でも効率的に励起光を吸収できることから、より効果的な放熱を実現することができる。
本発明セラミックスでは、蛍光体以外の成分として、LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含むことが、焼結体の緻密化、反応相生成の抑制等の観点から望ましい。これらのフッ化物は、本発明セラミックスの合成時において焼結温度を低温化できる効果があるほか、良好な発光特性に貢献することができる。本発明セラミックス中では、フッ化物はできる限りMgO中に固溶していることが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲内で微量の析出は許容される。
これらのフッ化物の含有量(合計量)は、これらの効果が得られるのに十分な量とすれば良いが、特にマトリックス中10000重量ppm以下(好ましくは7000重量ppm以下)の範囲内で好適に設定することができる。その含有量の下限値は、限定的ではないが、通常は400重量ppm程度とすれば良く、例えば450重量ppmと設定することもできる。
本発明セラミックスの相対密度は、通常は98%以上であり、特に99%以上であることが好ましい。このような緻密な組織を有することにより、高い熱伝導率を達成することができる。本発明の範囲で合成されたコンポジットの密度は理論密度の98%以上となる結果、熱伝導率もマトリックス(MgO)と蛍光体のそれぞれの熱伝導率とそれらの比率から計算される理論上の熱伝導率の-20~0%の範囲内とすることができる。
本発明セラミックスの熱伝導率は、限定的ではないが、特に30W/mk以上であることが好ましく、特に30~48W/mKであることがより好ましい。熱放散が良好で、発光効率の高い媒質を開発するには、媒質(特にマトリックス)の熱伝導率を高くすること、薄い媒質で励起光の吸収効率を高くするために多重散乱の起きやすい構造にしておくこと、さらにマトリックス部は直線透過性の高い立方晶構造の物質を選択し、マトリックスからの複屈折による光拡散が大きくならないようにしておくこと等の工夫が必要となる。このような構造をもつコンポジットセラミックは低~高パワー領域の白色光変換フォスファーとして極めて有用であり、マトリックスが立方晶構造(立方晶MgO多結晶体)であるがゆえに遠距離照明にも適している。
また、本発明セラミックスは、通常は透明性(透光性)を有することが好ましいが、特に当該MgO系コンポジットセラミックス表面を鏡面研磨した厚さ0.2mmの試料において、波長633nmにおける直線透過率が15%以下であり、かつ、全透過率が30~70%であることがより好ましい。
媒質厚さは、上記のような直線透過率と全透過率の範囲内であれば良く、特に限定されない。ただし、蛍光体からの発熱を取り除くには、媒質厚さは薄い方が好ましいが、あまり薄いと励起光の吸収効率低下、さらには加工時の歩留まりが悪くなり、厚すぎると放熱と発光効率が低下するので、例えば蛍光体の種類、蛍光体中の発光元素濃度、蛍光体添加量、蛍光体のサイズと形状等を考慮して適宜調整することが好ましい。励起光が効率良く蛍光体に吸収されるためには、実用的な媒質厚さである例えば0.2mmの試料を基準として、直線透過率が15%以下であることが好ましく、特に10%以下であることがより好ましい。なお、直線透過率の下限値は、例えば1%とすることができるが、これに限定されない。
上記のように直線透過率が一定以下にすることが好ましい条件であるが、さら試料の全透過率が30~70%であり、特に35~70%であることが望ましい。透光性材料片面から励起され媒質の厚さ方向を通過し、対面から光透過していくとき、直線透過+拡散透過=全透過となる。蛍光物質として必要なことは、励起光を効率良く吸収するためには直線透過光をできるだけ低くし、全透過率を向上させなければならない。蛍光体を含有する立方晶マトリックスに光照射したとき直線透過率が低いことは、媒質内部での多重散乱が顕著であることを示唆している。励起光(入射光)が蛍光体に光吸収され、蛍光体から波長の異なる放射光が放出されれば、透明なマトリックス又は蛍光体(放射光は原理的に蛍光体に散乱されるが再吸収されることはない)を介して外部に拡散光として放出されるので、全透過率は一定以上高くなければならなず、これが十分条件となる。
本発明セラミックスの発光効率は、限定的ではないが、通常は本発明セラミックスをGaN系LED又はGaN系LDで励起したときの発光効率が50%以上であることが望ましい。発光効率の上限値は、例えば80%とすることもできるが、これに限定されない。
2.MgO系コンポジットセラミックスの製造方法
本発明セラミックスの製造方法は、限定的ではないが、例えば以下の第1~第3の方法によって好適に実施することができる。
本発明では第1~第3の方法によって、MgO多結晶体をマトリックスとする蛍光体とのコンポジットセラミックスを好適に合成することができるが、第1方法と第2方法又は第3方法とを組み合わせて合成することもできる。すなわち、ホットプレス法(HP)又は放電プラズマ焼結法(SPS)を使用して一旦前記コンポジットセラミックスを作製し、さらに圧力の高いHIPにより複数の試料を同時に加圧焼結して、より高密度化することによりさらに熱伝導の高いコンポジットセラミックスを得ることも本発明の製造方法に包含される。
A.第1方法
第1方法は、MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
(1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程(混合物調製工程)、及び
(2)前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにて1200℃以下でホットプレス法又は放電プラズマ焼結法により焼成することにより焼結体を得る工程(焼結工程)
を含むことを特徴とする。
混合物調製工程
混合物調製工程で用いるMgO粉末は、平均一次粒子径が1μm以下であり、特に0.005~0.5μmであることが好ましい。また、MgO粉末の純度は、一般的には高いほど望ましく、例えば99%以上とし、特に99.8%以上とし、さらには99.9%以上とすることができる。
蛍光体粉末は、前記で説明した各蛍光体の粉末を用いることができる。また、蛍光体粉末の平均一次粒子径は、通常は平均粒径3~50μmであり、特に3~30μmであることが好ましい。
フッ化物としては、LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を用いる。フッ化物は、通常は粉末の形態で好適に用いることができる。この場合のフッ化物の粉末の平均一次粒子径も、前記と同様、通常は平均粒径0.1~3μm程度の範囲内において、例えば用途、使用形態等に応じて適宜設定することができる。マトリックスとなるMgO原料をポットミル等で粉砕できるが、これだけでは焼結性が十分とは言えないことがある。仮に、ナノサイズのMgOを出発原料を採用したとしても、焼結温度の低下には限界がある。これに対し、特定のフッ化物を必要量添加することで焼結温度を格段に低下させることが可能となる。また、フッ化物は、MgO-MgO間の焼結を優先させるので、MgOと蛍光体の反応が抑制され、その反応をほとんど伴わないMgO-蛍光体から構成される高密度のコンポジットセラミックス作製に極めて有効である。
また、本発明では、必要に応じて有機バインダーを混合物に配合することもできるが、この第1方法では混合物中にバインダーを含まないことが好ましい。有機バインダーを用いる場合は、後記の第2方法によることが好ましい。
混合方法は、特に限定されず、また乾式又は湿式混合のいずれであっても良い。本発明では、特に、蛍光体をより均一に分散するという点から湿式混合を好適に採用することができる。
湿式混合で用いる溶媒(液体)としては、アルコール系溶媒を好適に用いることができる。アルコール系溶媒としてはエタノールを主成分とする工業用アルコール(例えば製品名「ソルミックス」(登録商標、日本アルコール販売(株)等)が経済的に有効であるが、特に限定されず、例えばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等を使用することができる。本発明では、100%アルコールを好ましく用いることができる。
この場合、アルコール系溶媒の使用量は、限定的でなく、通常は混合物の固形分100重量部に対して100~300重量部倍程度とすることができる。
また、湿式混合に際しては、必要に応じて粉砕用メディア(ボール)を用いることもできる。これにより、混合中の粒子どうしの凝集を効果的に抑制し、微細な粒子からなる混合物を調製することができる。また、必要に応じて混合物(乾燥混合粉末)を例えば分級、ふるい等による処理を施しても良い。
粉砕用メディアとしては、特に限定されず、例えば高純度アルミナ製ボール、高純度TYZ(イットリウム安定化ジルコニア)製ボール(いずれも粒径約1~5mm)等を好適に用いることができる。また、粉砕用メディアを用いる場合の容器は、フッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))の合成樹脂製容器を用いることが好ましい。粉砕用メディアを用いる場合、その使用量は、例えば混合物の固形分100重量部に対して500~2000重量部程度とすることができるが、これに限定されない。
各原料の混合順序は、特に限定されないが、例えばMgO粉末とフッ化物とを混合した後、蛍光体粉末を混合する方法を好適に採用することができる。より好ましくは、a)粉砕用メディアの存在下でMgO粉末とフッ化物とを湿式混合する工程、b)得られたスラリーから粉砕メディアを取り除く工程、c)前記スラリーに蛍光体粉末を入れる工程、d)粉砕を伴わない形態で混合し、蛍光体が均一に分散されたスラリーを得る工程を含む方法が好ましい。
具体的にはMgO粉末に1種以上かつ所定量のフッ化物を添加し、アルコール系溶媒等を添加し、アルミナ、ジルコニア等の粉砕用メディアで1~15時間程度(例えば8~12時間程度)予備混合と粉砕処理してスラリー(液状スラリー)を準備する。得られたスラリー中に所定量の蛍光体を添加し、実質的に粉砕を伴わない攪拌(例えば、攪拌羽又はマグネチックスターラーによって高速でスラリーと蛍光体を混合する方法)により蛍光体を分散させたMgO含有スラリーを得ることができる。
混合時間は、各成分が均一となるようにできれば良く、通常は1~10時間程度とすることができるが、これに限定されない。
混合工程を実施した後は、得られた混合物を回収すれば良い。この場合、得られたスラリーでは、比重と粒度の極端に異なる原料からなる混合物であるので、スラリーを攪拌又は振動させながら、加熱又は減圧して溶媒を除去することが好ましい。より具体的には、一般的なスプレードライヤー、減圧(真空)振動乾燥、攪拌を伴う加熱乾燥等の手段により蛍光体とMgO原料の分離(偏析)をできるだけ避けることが望ましい。
焼結工程
焼結工程では、前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにて1200℃以下でホットプレス法(HP)又は放電プラズマ焼結法(SPS)により焼成する。
前記混合物は、モールドに充填した後、9.8~147MPaの加圧下にて1200℃以下でHP又はSPS装置により加圧焼結を行う。前記モールドは、特に限定されないが、例えばWC製、カーボン製、SiC製、アルミナ製等の各種のモールドを好適に用いることができる。これらは市販品も使用することができる。
この場合の処理温度は、前記の通り、通常は1200℃以下とし、好ましくは1150℃以下とする。下限値は、限定されないが、通常は950℃程度とすれば良い。また、圧力範囲は9.8~147MPaの範囲とすれば良い。
処理時間は、特に限定されないが、通常は1時間以内とし、特に0.5時間以内とすることが、蛍光体とマトリックスの反応を抑制する観点でも好ましい。特に、SPS装置の場合、放電による焼結時間の短縮効果があり、本発明のマトリックスと蛍光体をできるだけ反応させずに緻密化する目的の観点からより好ましい。
このようにして、乾燥された混合物は、直接モールドに充填した後、HP又はSPS装置を用いて加圧と加熱を行いながら緻密化させる。MgO原料サイズとフッ化物量が適正であれば、マトリックス部の焼結(緻密化)は促進され、1200℃以下の温度でも密度98%以上の焼結体が得られる。粒子サイズの大きな蛍光体は、MgO-MgO間の焼結が優先されるので、MgO-蛍光体間の反応は非常に軽微又は皆無に近い状態となる。
B.第2方法
第2方法は、MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
(1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程(混合物調製工程)、
(2)前記混合物を圧力10~30MPaにて一軸加圧成形することにより成形体を得る工程(一軸加圧成形工程)、
(3)前記成形体を圧力98~396MPaにてCIP成形することによりCIP成形体を得る工程(CIP成形工程)、
(4)前記CIP成形体を酸素含有雰囲気下で温度500~700℃にて脱脂する工程(脱脂工程)(ただし、脱脂工程は任意工程である。)、
(5)脱脂後の前記CIP成形体の相対密度が91~99%となるように焼成することにより予備焼結体を得る工程(予備焼結工程)、
(6)前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP処理する工程(HIP処理工程)
を含むことを特徴とする。
混合物調製工程
混合物調製工程は、基本的には第1方法の混合物調製工程と同様にすれば良い。この場合、第2方法では、混合物に有機バインダーを配合することもできる。有機バインダーとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー等の合成樹脂バインダーを好適に用いることができる。有機バインダーの使用量は、混合物100重量部に対して1~5重量部程度とすることができるが、これに限定されない。
このようにして、調製された混合物(特に乾燥した混合粉末)は、例えば金型成形→CIP→脱脂→仮焼結→HIPの工程を得る方法により緻密化させる。第1方法と同様、MgO粉末サイズとフッ化物量が適正であれば、マトリックス部の焼結(緻密化)は促進され、1200℃以下の温度であっても密度98%以上の焼結体を得ることができる。粒子サイズの大きな蛍光体はMgO-MgO間の焼結が優先されるので、MgO-蛍光体間の反応は非常に軽微又は皆無に近い状態となる。しかし、加圧を伴わない焼結であため、蛍光体とマトリックス間に空隙ができやすい状況となり、その空隙部を埋め高密度化し、高い熱伝導を得るためにも加圧プロセスは採用することが望ましい。
一軸加圧成形工程
一軸加圧成形工程では、前記混合物を圧力10~30MPaにて一軸加圧成形することにより成形体を得る。成形は、特に限定されず、例えば一軸プレス成形等の公知の方法を採用することができる。また、成形温度も、限定的なく、通常は室温(例えば10~40℃)程度で実施すれば良い。
CIP成形工程
CIP成形工程では、前記成形体を圧力98~396MPaにてCIP成形(冷間等方圧プレス:Cold Isostatic Press)することによりCIP成形体を得る。成形方法としては、公知又は市販のCIP装置にて実施することができる。また、成形温度も、限定的なく、通常は室温(例えば10~40℃)程度で実施すれば良い。特に、本発明では、CIP成形後の密度は、一般的には得られる成形体の理論密度の40~65%程度の密度となるように加圧することが好ましい。
脱脂工程
第2方法では、CIP成形体に有機バインダーが含まれる場合は、必要に応じて脱脂工程を実施することもできる。脱脂工程では、前記CIP成形体を酸素含有雰囲気下で温度500~700℃にて脱脂すれば良い。熱処理雰囲気としては、酸素含有雰囲気下であれば限定的でなく、例えば大気中であっても良い。熱処理時間は、CIP成形体の形状、大きさ等に応じて適宜設定することができるが、通常はCIP成形体中に含まれる有機成分が焼失するのに十分な時間とすれば良い。
予備焼結工程
予備焼結工程では、脱脂後の前記CIP成形体を理論密度の91~99%となるように焼成することにより予備焼結体を得る。焼成温度は、通常1200℃以下とすれば良いが、好ましくは1150℃以下とする。下限値は、限定されないが、通常は950℃程度とすれば良い。焼成雰囲気は、限定的ではないが、特にCIP成形体中に含まれるフッ化物の酸化をなるべく抑制するために不活性ガス雰囲気(アルゴン、窒素等)又は真空雰囲気中とすることが望ましい。その真空度は、限定的ではないが、特に10-1~10-5Pa程度とすることが好ましい。また、用いるフッ化物の種類によっては酸素を含む雰囲気下でも予備焼結は可能である。また、焼成時間は、理論密度の91~99%となるのに十分な時間とすれば良く、例えば焼成温度等に応じて適宜設定でき、通常は2時間以内、特に1時間以内とすることが好ましいが、これに限定されない。
HIP処理工程
HIP処理工程では、前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP(熱間等方圧プレス:Hot Isostatic Press)にて処理する。これにより、予備焼結体のさらなる緻密化を図ることができる。処理温度は、通常1200℃以下とし、好ましくは1150℃以下とする。下限値は、限定されないが、通常は950℃程度とすれば良い。圧力は、通常は98~396MPa程度の範囲内で好適に設定することができる。HIP処理は、公知又は市販のHIP装置を用いて実施すれば良い。処理時間(特に最高温度と最高圧力の保持時間)は1時間以内とすることが好ましい。これによって、焼結体の緻密化を進めると同時に、蛍光体とMgOとの反応を最低限度にとどめることができる。
C.第3方法
第3方法は、MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
(1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程(混合物調製工程)、
(2)前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにてホットプレス法又は放電プラズマ焼結法により焼成することにより予備焼結体を得る工程(予備焼結工程)、
(3)前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP処理する工程(HIP処理工程)
を含むことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスの製造方法。
混合物調製工程
混合物調製工程は、基本的には第1方法の混合物調製工程と同様にすれば良い。従って、この場合、第3方法においても、混合物中に有機バインダーが含まれないことが好ましい。
予備焼結工程
予備焼結工程では、前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにてホットプレス法又は放電プラズマ焼結法により焼成することにより予備焼結体を得る。焼成温度は、1200℃以下とし、好ましくは1150℃以下とする。なお、焼成温度の下限値は、通常は950℃程度とすれば良いが、これに限定されない。焼成雰囲気は、限定的ではないが、特に予備焼成体中に含まれるフッ化物の酸化をなるべく抑制するために不活性ガス雰囲気(アルゴン、窒素等)又は真空雰囲気中とすることが望ましい。その真空度は、限定的ではないが、特に10-1~10-5Pa程度とすることが好ましい。また、用いるフッ化物の種類によっては酸素を含む雰囲気下でも焼結は可能である。また、焼成時間は、限定的でなく、例えば焼成温度等に応じて適宜設定できるが、通常は2時間以内、特に1時間以内とすることが好ましい。
HIP処理工程
HIP処理工程では、前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP処理する。これは、第2方法のHIP処理工程と同様にして実施することができる。
3.MgO系コンポジットセラミックスの使用
本発明セラミックスは、各種の光学材料(光学製品)として幅広く利用することができるが、特に波長変換用蛍光体材料(波長変換素子)として好適に用いることができる。例えば、光源としてGaN系LED又はLDを用いた波長変換用材料として利用することができる。従って、ハイパワーが要求されるプロジェクター等の投影機器の光源、照明用としては高速道路照明、街灯等のほか、スタジアム、空港等の大規模空間、列車(特に高速鉄道車両用の照明)、航空機、自動車等の長距離照明に非常に有効である。また、高い演色性の観点では、プロジェクターのほか、食品又はアパレル関連の演色性が重視される照明等への応用がある。
この場合の使用形態は、既存又は市販の波長変換用材料として同様にすれば良い。例えば、図10は透過型の発光デバイスの構成を示しているが、発光素子10は、窓部を有するハウジング14内に配置された光源15と、前記窓部に配置された波長変換素子11とを含み、波長変換素子11が前記光源15からの入射光(X)を受けて波長変換することで外部に波長の異なる放射光(Y)を放つことができる発光デバイスとして利用することができる。そして、波長変換素子11は、本発明セラミックスから構成されており、MgOマトリックス11a中に粒状蛍光体11bが分散した構成を有している。なお、図10では、電源等の表示は省略されている。
図11は、蛍光効率の測定方法の概要を示す。片面が反射鏡になる金属板に外径寸法は任意で厚さ0.2mm(両面は鏡面仕上げ)の試料を貼り付け、励起光を照射する試料表面にシリ―コーン樹脂をコーティングして反射ロスを極小化する。この状態で斜め方向から波長445nmのGaN-LD光を照射する。この時の励起密度は50W/mmとし、下記式:
蛍光効率(%)=(2)蛍光出力(W)x100/((1)投入励起光入力(W)―後方散乱反射励起出力(w)(3)+(4))(ここで、カッコ付き数字は、図11の対応する丸数字を示し、後方散乱出力は表面の反射ロスと非吸収光の和を示す。)に従って蛍光効率(発光効率)を求めることができる。
図12は、図10に示す透過型(励起光が本発明のコンポジットセラミックスを介して対面側に蛍光を発する方式)に対し、反射型の発光デバイスの原理図である。透過型は冷却構造をもたないが、反射型では熱伝導の高い金属、セラミックス等のヒートシンク材を本発明セラミックスと張り合わせて使用することができる。GaN-LED、GaN-LD等の光源から励起されたコンポジットセラミックスは、強い発光と同時に発熱も生じるので、前記ヒートシンク材を介して放熱される構造となる。反射型は、コンポジットセラミックスに対して励起方向と発光方向が同一面方向にあるデバイスであり、特に発熱が問題となって発光効率が低下しやすいとされているハイパワー用途に好適に用いられる。
<MgO系コンポジットセラミックスの実施の形態>
図1(a)は、本発明の10重量%Ce:YAG蛍光体-90重量%MgOから構成されるコンポジットセラミックスを研磨した厚さ0.2mmの試料ある。このYAG蛍光体中のCe濃度は1原子%であり、蛍光体の平均粒子サイズは20μmの球状粒子である。本品は、前述した粉末調整プロセスで調製された原料をSPS処理したものであり、その処理温度1100℃×処理時間10分、圧力49MPaである。サンプルは、外観上黄色に見えるが、透光性MgOマトリックスが形成されたため、内部に存在する黄色のCe:YAG蛍光体の呈色が認められ、透光性試料を研磨しているので下地の文字を透視することができる。前記のように、例えば蛍光体中のCe濃度は0.5~3原子%の範囲とすることができるが、これに限定されず、市販品で適用されている範囲内であっても良い。
図1(b)は、向かって左側よりA)Ce:YAG添加MgO焼結体、B)Eu:サイアロン添加MgO焼結体、C)Ce:YAG+Eu:サイアロン共添加したMgO焼結体である。研磨しない状態では外観上不透明に見えるが、LEDライトを照射すると、対面から光透過が確認できるので、いずれの試料も透光性である。
図2は、図1の試料の反射顕微鏡写真である。添加した球形に近い形状で添加した粒子サイズ約20μmのCe:YAGはマトリックスで固定保持され、研磨後もマトリックスから脱落することなく、試料表面に残存している。このことは、マトリックスと蛍光体が比較的強固に結合されていることを示唆し、GaN系LED等の青紫の励起光を吸収し、Ce:YAGからの白色発光と放熱が起こる際に両者を効率良く放射できる構造が形成されていることを意味する。
特に、本発明では、比較的硬度の低いマトリックスと硬い蛍光体の組み合わせを採用しているので、表面を研磨した場合には硬い蛍光体がマトリックスに対して凸面が形成されるが、この場合でも蛍光体がマトリックスから脱落せずに存在している。これは、焼結過程で蛍光体とマトリックスの境界部に空隙が形成されず、機械的に強固な結合が形成されていることを意味する。また、マトリックスと蛍光体境界部に反応相が形成された形跡も確認できない。
図3は、図1(b)のCe:YAG添加-MgO試料を厚さ1mmに調整し、両面鏡面研磨したときの透過顕微鏡写真である。研磨した本発明品は、マトリックス部が緻密かつ透光性を有するので、その材料の内部構造を観察することができる。本発明品の組成は10%Ce:YAG-90%MgOであり、前者(蛍光体)の理論密度は4.55g/cm、後者(マトリックス)は3.58g/cmであるので、試料の理論密度は4.55×0.1+3.58+0.9=3.27g/cmと計算できる。作製した試料をアルキメデス法で測定すると3.26g/cmとなり、理論密度の99.7%に達している。MgOとCe:YAGの屈折率差Δnは約0.13程度であるので、励起光が多重散乱しながら材料内部のCe:YAGを励起するので、媒質厚さは薄くても効率的に励起→発光が可能となり、Ce:YAGからの発生する熱を高熱伝導性を有するMgOで放出することができる。
図4は、粒子サイズ5μmで多角形を有するEu添加サイアロン蛍光体を12重量%添加したEu:サイアロン-MgOコンポジットセラミックスの透過顕微鏡写真である。両面を鏡面研磨した厚さは0.2mmのサンプルである。本材料は、Eu:サイアロン-MgO混合原料を調製した後、圧力98MPa及び温度1050℃で5分とSPS処理し、再度1000℃×0.5時間(Nガス中196MPa)HIP処理したものである。蛍光体間に存在するのがマトリックスのMgOであるが、透明性が極めて高く、焼結に伴うMgOと蛍光体との反応は効果的に抑制(確認できないレベルまでの抑制)されていることがわかる。
図5は、作製した本発明品のCe:YAG-MgOコンポジットセラミックスのXRDパターン(X-ray Diffraction Pattern)である。測定は5~70deg.(2θ)であり、検出される鉱物相は主成分であるMgOと蛍光体であるガーネットのみである。一般的にMgOとCe:YAGを混合して焼成した場合は、両者が反応して出発材料の大部分が消滅するほど反応が進むが、本図に見られるように出発原料としたMgOとCe:YAG蛍光体のみしか検出されない。マトリックス原料間の優先反応による緻密化という新しい焼結方法により、異なる組成と結晶構造をもつ複数の原料を反応を伴わずに緻密化できることがわかる。
図6(a)は、Ce:YAG(多角形かつ5μmの粒子サイズ)(10%)-MgO(90%)コンポジットセラミックスを厚さ0.2mmかつ両面を鏡面研磨した試料の直線透過及び全透過スペクトルを示す。屈折率の異なるCe:YAG蛍光体とMgOマトリックスから構成される本発明品は、内部で多重散乱が引き起こされるために直線透過率の波長依存性もなく、僅か0.5%前後の直線透過率となっている。一方、マトリックスであるMgOは、透光性を有するので、拡散透過は直線透過に比べて圧倒的に高い。波長633nmにおける直線透過率と全透過率はそれぞれ0.5%及び38.5%である。
図6(b)は、Ce:サイアロン(多角形、8μmの粒子サイズ)(10%)-MgO(90%)コンポジットセラミックスを同様に計測したものであるが、波長633nmにおける直線透過率と全透過率はそれぞれ5.5%及び45.2%となっている。
図7は、波長445nmのGaNレーザーを光源とする発光スペクトル測定のセットアップである。測定サンプルは積分球に挿入され、波長445nm、出力1WのGaNレーザーにより励起し、試料から放出される発光を光ファイバーを経由してスぺクトロメーターにて相対値を計測した。また、このセットアップを使って、図8に示した励起密度と蛍光体の出力特性の関係を測定した。
図8(a)はCe:YAG-MgOセラミックス、図8(b)はCe:YAG+Eu:サイアロン-MgOセラミックスの発光スペクトルをそれぞれ示す。図8(a)は発光中心が520nm付近であるのに対し、図8(b)は570nm付近にシフトしている。図8(a)は肉眼で白色光、図8(b)は橙色の蛍光(赤色成分の強い白色光)に見え、明らかに演色性を制御できていることがわかる。これらの蛍光強度は、これまで利用されてきたCe:YAG焼結体を波長変換媒体とした発光デバイスの光量に匹敵する照度である。
図9は、(a)Ce:YAG焼結体、(b)20%Ce:YAG-AlN焼結体及び(c)本発明の10%Ce:YAG-MgO焼結体をそれぞれ厚さ0.2mmに加工(表面は鏡面研磨)し、波長445nmのGaNレーザーで励起したときの励起密度に対し、出力特性の比較を行った結果を示す。(a)Ce:YAGは、本発明と同等の効率で発光量が向上するが、約10W/mmに達すると蛍光体の温度上昇により発光が急激に低下する。(b)20%Ce:YAG-AlN焼結体は、Ce:YAG焼結体に比べて入力に対する出力値、すなわちスロープ効率が低いので、効果的な励起を行うには媒質を厚くするか、入力値を大きくしなければならない。また、20%Ce:YAG-AlN焼結体は、理論的に240W/mK以上の熱伝導率を示すはずであるが、作製した試料は31W/mKの熱伝導であり、特許文献の結果と類似している。これは、高温焼成のため、Ce:YAG-AlN間で何らかの相互作用がありマトリックスであるAlNの熱特性と蛍光体としてのCe:YAGの発光特性に重大な問題を生じているものと考えられる。これに対し、低温で作製された本発明の緻密質のCe:YAG-MgO焼結体では、相互反応は検出されないため、スロープ効率は純粋なCe:YAG焼結体と同等であり、さらに熱伝導率が高い特徴から励起密度の向上に対して出力も向上する特徴がある。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
[実施例1]
出発原料として、市販のMgO粉末(純度>99.9%, 平均一次粒子径0.3μm)を用いた。この粉末にフッ化物として平均一次粒子径が0.5μmのLiF粉末を500ppmを加え、前記混合粉末合計100g対して粉砕用高純度TYZ(イットリウム安定化ジルコニア)製ボール(粒径約2mm)1kg及びエタノール200mlを合成樹脂製容器に入れ、20時間かけて湿式混合することによってスラリーを調製した。
回収されたスラリーにさらに平均粒径10μmの1%Ce:YAG粉末を5重量%となるように加え、マグネチックスータラーを用いて加熱・攪拌しながら溶媒を蒸発させることによって混合乾燥粉末を得た。
得られた粉末をナイロン製篩(150メッシュ)で篩いにかけた。次に、この混合原料をSPS装置にあるカーボンダイスに入れて1×10-1Paに減圧した状態で放電と98MPaの一軸プレスを掛けながら、1100℃まで1時間かけて昇温し、1100℃で15分保持した後、プログラム上1時間で室温まで冷却した。このようにして焼結体を得た。
[実施例2~10]
表1に示す条件としたほかは、実施例1と同様にしてSPS装置を用いて焼結体を作製した。
[実施例11]
混合原料は実施例1と同様の方法で調製した。この混合原料をHP装置にあるSiCダイスに入れ、Ar雰囲気中で29MPaの一軸プレスを掛けながら、1150℃までを1.5時間かけて昇温し、1150℃で30分保持した後、プログラム上1時間で室温まで冷却した。
[実施例12~20]
表2に示す条件としたほかは、実施例11と同様にHP装置を利用した焼結体を作製した。
[実施例21]
フッ化物としてMgFとCaFをそれぞれ1000及び500重量ppm用いたほかは、混合原料を実施例1と同様の方法で調製した。この混合原料をHP装置にあるカーボンダイスに入れ、1×10-1Paに減圧した状態で9.8MPaの一軸プレスを掛けながら、1000℃まで1時間かけて昇温し、1000℃で15分保持した後、プログラム上1時間で室温まで冷却した。得られた焼結体をさらにHIP装置に入れ、Arガスを圧力媒体とし、1000℃まで2時間かけて昇温し、1000℃で98MPaで60分維持した後、室温まで2時間かけて冷却した。
[実施例22~24,26~30]
表3に示すように、HPとHIPあるいはSPSとHIP、予備焼結+HIP装置を用い、実施例21と同様にして焼結体を作製した。
[実施例25]
フッ化物としてLiFとMgFをそれぞれ200及び800重量ppm用いたほかは、混合原料を実施例1と同様の方法で調製した。この混合原料を直径20mmの金型で一軸成形した後、196MPaでCIP成形した後、1×10-3Paの真空下1100℃で60分焼結し、相対密度94%の焼結体を得た。得られた焼結体をさらにHIP装置に入れ、Arガスを圧力媒体とし、1050℃まで2時間、1050℃で198MPaで30分保持した後、室温まで2時間で冷却した。
[比較例1]
従来のチョクラルスキー法で作製されたCe:YAG単結晶の特性を示す。
[比較例2]
Ce:YAG-AlN系の作製例を示す。
[比較例3]
焼結法のCe:YAGセラミックスの特性を示す。
[比較例4]
Ce:YAG-Alセラミックスの特性を示す。
[比較例5~10]
本発明の製造方法以外の条件で作製されたCe:YAG-MgOセラミックスの特性を示す。
[試験例1]
各実施例及び比較例で最終的に得られた焼結体等について、次に示すような物性をそれぞれ測定した。その結果を表1~表4に示す。
(a)蛍光体とMgOの比率
材料中に添加された蛍光体は、一般的な蛍光X線分析(XRF:X-ray Fluorescence)により容易にその比率を検出することができる。MgOに添加された蛍光体の種類は、XRDにより予め分析しておく。検出された蛍光体とMgOの比率を数段階変えた試料を予め作製しておき、その時XRF分析により得られた検量線を準備しておき、この検量線から目的物の組成(比率)を知ることができる。2種以上の蛍光体が含まれる場合も同様にMgOに対する検量線を作製しておけば分析可能である。
(b)MgO中のフッ化物の分析
添加量の少ないフッ化物の添加に関しては、カチオン種の同定ができたとしてもアニオンの同定が出来なければ酸化物か、フッ化物かの判定はできない。当然、一般的なICP(Inductively Coupled Plasma)、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry)等では分析はぼ不可能である。質量分解能を3000程度に調整し、CAMECAの一般的タイプのSIMS(Secondaty Ion Mass Spectroscopy)又はNANO-SIMS50であれば容易に分析できる。注意しなければならない点は妨害イオンの存在となる。フッ素原子は主にマトリックスであるMgO中に存在しているが、マトリックスの表面は空気と接しているためその表層部には水和物や水が存在している。MgO中の酸素原子に関しても、16O、17O及び18Oの同位体が存在しており、この同位体と水分との反応により、残存フッ素の分析はより複雑かつ高度な技術が必要となる。フッ素原子(F)の質量は18.99840322であり、マトリックス表面に存在する妨害イオンとしてD17O(H2Oであるが、酸素が17Oの同位体である場合)、DH16O(Hで酸素が一般的な16Oの場合)、H18O(OHで酸素が18Oの同位体である場合)が考えられ、それぞれが19.01323348、19.01684143、19.00698603の質量をもっている。妨害イオンは、同じ19近傍であるので高質量分解能で分析する必要があるが、前記SIMSを使用すればこれら妨害イオンとフッ素の識別は可能である。
なお、分析に際しては、コンポジットがマトリックスのMgOと蛍光体から構成されているので、本SIMS分析ではマトリックス部であるMgO部分のみを分析してその内部に存在するフッ素とフッ化物を構成するカチオンを定量化することにより、MgO中に存在するフッ化物量を定量化できる。
(c)透過率の測定
両面鏡面研磨した厚さ0.2mmの試料を準備し、波長400~700nmの透過率を測定する。測定波長の代表として633nmを選択し、この波長で直線透過率が15%以下であることを確認する。また、分光器に積分球を装着し、同一材料を同一波長で全透過率が30~70%の範囲にあることを確認する。直線透過率が低く、全透過率が高ければ材料内部での拡散透過性が良い(すなわち、マトリックス部の透過率が高いが、マトリックスと蛍光体による多重散乱が大きい)ことを示唆しており、薄い媒質でも励起光が吸収されやすい媒質特性であることを意味する。
(d)密度の計測
アルキメデス法(乾燥重量、含水重量、水中重量の測定から算出)に従って測定した。
(e)蛍光特性の測定
材料を厚さ0.2mmに調整し、両面を鏡面研磨する。材料は研磨したステンレス板状に貼り付け、波長445nmのGaN-LD光を照射し、得られた蛍光を検出器で計測する。
(f)熱伝導率の測定
サンプルを直径10mm×1mm(両面は研削研磨)に加工し、レーザーフラッシュによる測定を行う。
(g)蛍光出力限界の測定
厚さ0.2mmに調整し、両面を鏡面研磨したサンプルを準備する。片面から波長445nmのGaN-LD光を照射し、対面から積分球を使って蛍光体から発光量を計測する。GaN-LD光の出力を上げていき、発光の出力特性を連続して計測するが、入力に対して出力が直線的に向上していくが、出力が飽和し最終的に発熱により出力ダウンするが、飽和点を見つける。
(h)第二相(反応相)の同定
一般的なXRD回折を行うが、X線源はCuKαであり測定角度(2θ)は5~70度の範囲とする。マトリックスのMgOと添加した蛍光体の回折ピークのみが検出されることを確認する。第二相が生成された場合でも、[Σ(第二相の最強ピーク)]/[Σ(MgOの最強ピーク+添加した蛍光体の最強ピーク+第二相の最強ピーク)]が5%以下であれば、特性低下は非常に軽微である。上記式のように、蛍光体が2種以上である場合は、それらの強度の総和とする。
[比較例11~17]
表5に示すMgO原料及び焼結助剤を用い、特許文献1の請求項12に準じて焼結体を作製した。より具体的には、原料粉末を圧力147MPaにてCIP成形した後、得られた成形体を表5に示す焼結温度で酸素含有雰囲気中2時間焼結することによって焼結体を得た。得られた焼結体は、試験例1と同様にとして各特性の評価を行った。その結果も、併せて表5示す。
表5に示すように、宇部50Aは宇部200Aよりも原料の粒子サイズが小さいので、やや焼結しやすいが、粒子サイズが5nmであるために成形時のパッキングが良くなく、原料表面が水和しやすいので実用サイズのサンプルを作製したときに焼結体にクラックが入る確率が高い。宇部200A原料に焼結助剤を添加しても最終的な密度向上は確認できないが、これは焼結途上の粒成長の問題に起因する。SiOのみがMgO焼結体の緻密化を促進させる作用があるものの、1600℃という高温が必要であるため、比較的低温では98%という密度には達しない。MgOに蛍光体を添加した場合は、焼結体の相対密度はさらに低下することも確認できた。
本発明は、GaN-LED又はLD用の白色蛍光体として汎用されるCe:YAGセラミックスとは異なり、蛍光特性がより高くさらに熱伝導率が高い特徴を有する。また、直線透過率と全透過率特性を制御できることから、薄い媒質でも励起光の吸収係数が高く、熱放散特性を飛躍的に向上でき、ハイパワーの照明あるいは長距離照明にも適する。また、マトリックスであるMgOの熱伝導率が高いので、蛍光体の発熱を放出することが容易となり、温度特性が不十分である蛍光体を添加することも可能である。また、焼結過程(緻密化過程)におけるマトリックスと蛍光体の反応が極小化されるため、1種以上の蛍光体の添加も可能となり、演色性に優れた蛍光を発することができ、応用の範囲はこれまで以上の拡がりが期待される。

Claims (11)

  1. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むセラミックスであって、
    (1)前記蛍光体がセラミックス中5~25重量%含有し、
    (2)前記セラミックスの密度が理論密度の98%以上である、
    ことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックス。
  2. 蛍光体が、(a)窒素を含有しない酸化物系蛍光体、(b)酸素を含有しない窒化物系蛍光体及び(c)酸窒化物系蛍光体の少なくとも1種である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
  3. 前記マトリックス中にLiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を合計で0~1.0重量%含有する、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
  4. 熱伝導率が30W/mK以上である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
  5. 当該MgO系コンポジットセラミックス表面を鏡面研磨した厚さ0.2mmの試料において、波長633nmにおける直線透過率が15%以下であり、かつ、全透過率が30~70%である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
  6. マトリックスと蛍光体との反応相の含有量が、X線回折分析において、Σ反応相/Σ(マトリックス+蛍光体+反応相)の回折ピーク比が5%以下となる量である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
  7. 当該MgO系コンポジットセラミックスをGaN系LED又はGaN系LDで励起したときの発光効率が50%以上である、請求項1に記載のMgO系コンポジットセラミックス。
  8. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
    (1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程、及び
    (2)前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにて1200℃以下でホットプレス法又は放電プラズマ焼結法により焼成することにより焼結体を得る工程
    を含むことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスの製造方法。
  9. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
    (1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程、
    (2)前記混合物を圧力10~30MPaにて一軸加圧成形することにより成形体を得る工程、
    (3)前記成形体を圧力98~396MPaにてCIP成形することによりCIP成形体を得る工程、及び
    (4)前記CIP成形体を理論密度の91~99%となるように焼成することにより予備焼結体を得る工程、
    (5)前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP処理する工程
    を含むことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスの製造方法。
  10. MgO多結晶を含むマトリックス中に蛍光体を含むMgO系コンポジットセラミックスを製造する方法であって、
    (1)(a)平均一次粒子径が1μm以下のMgO粉末、(b)平均一次粒子径が3~50μmの蛍光体粉末及び(c)LiF、AlF、MgF及びCaFの少なくとも1種のフッ化物を含む混合物を調製する工程、
    (2)前記混合物をモールドに充填し、温度1200℃以下及び圧力9.8~147MPaにてホットプレス法又は放電プラズマ焼結法により焼成することにより予備焼結体を得る工程、及び
    (3)前記予備焼結体を温度1200℃以下及び圧力98~396MPaにてHIP処理する工程
    を含むことを特徴とするMgO系コンポジットセラミックスの製造方法。
  11. 請求項1~7のいずれか1項に記載されたMgO系コンポジットセラミックスを波長変換材料として含むGaN系LED又はGaN系LDを励起源とする白色発光デバイス。
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