JP2024026323A - リン酸化AMP活性化タンパクキナーゼ発現増強用又はリン酸化アセチルCoAカルボキシラーゼ発現増強用食品組成物、リン酸化AMP活性化タンパクキナーゼ発現増強剤、及びリン酸化アセチルCoAカルボキシラーゼ発現増強剤 - Google Patents

リン酸化AMP活性化タンパクキナーゼ発現増強用又はリン酸化アセチルCoAカルボキシラーゼ発現増強用食品組成物、リン酸化AMP活性化タンパクキナーゼ発現増強剤、及びリン酸化アセチルCoAカルボキシラーゼ発現増強剤 Download PDF

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Abstract

【課題】
エゾウコギ抽出物を有効成分として含有するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)発現抑制用食品組成物の提供。
【解決手段】
エゾウコギ抽出物を使用することでPPAR、特にPPARγの発現を抑制できることを見出し、その結果、エゾウコギ抽出物を含有するPPAR発現抑制用食品組成物を完成した。当該組成物はサルコペニア又はフレイルの予防又は改善に有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(以下、PPARとも称する)の発現を抑制するための食品組成物に関する。
PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体ガンマ)は、前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化を促進し、更に小型脂肪細胞から肥大化脂肪細胞への肥大化を促進する。肥大脂肪細胞は肥満ホルモンであるレプチンの分泌を増大し、脂肪燃焼を促進するアディポネクチンの分泌を抑止し、その結果、中性脂肪の上昇、遊離脂肪酸の上昇、コレステロールの上昇を引き起こす。
加えて、肥大化脂肪細胞は、インスリン抵抗性を示すと共に、炎症性サイトカインであるTNFαを分泌する。TNFαは、さらに周辺の正常小型細胞にも働きかけ、小型細胞がインスリン抵抗性となる。
脂肪組織で生成されたTNFα等のサイトカインは、骨格筋に存在する各受容体を介してNFκBを活性化し、骨格筋の主要なタンパク分解系であるユビキノン・プロテオソーム系のユビキチンリガーゼを増加させることにより筋分解を促進し、サルコペニアを促進する。
エゾウコギはウコギ科の植物であり、根皮は五加皮として抗炎症、鎮痛作用が知られ、葉は茶として抗ストレス作用が知られている。
特開2003-277282号公報
本発明はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体発現抑制用食品組成物の提供を目的とする。
本発明者らはエゾウコギ抽出物がPPARの発現を抑制することを見出した。本発明者らはかかる知見に基づいて、エゾウコギ抽出物を使用することでPPARの発現を抑制でき、その結果、エゾウコギ抽出物を含有するPPAR発現抑制用食品組成物を完成した。
本発明は、例えば下記の主題を包含する。
項1.
エゾウコギ抽出物を有効成分として含有するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)発現抑制用食品組成物。
項2.
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)がペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)である項1に記載の組成物。
項3.
抽出物が、水、アルコール又はこれらの混合物により抽出される、項1又は2に記載の組成物。
項4.
抽出物がエゾウコギの根部の抽出物である項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の発現の亢進に基づく症状の予防又は改善用である項1~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
症状がサルコペニア又はフレイルである項5に記載の組成物。
本発明は下記の主題を含んでもよい。
項A.
症状が、肥満症、脂質異常症、サルコペニア、筋肉量の減少又はフレイルである項5に記載の組成物。
本発明の組成物は、PPAR、特にPPARγの発現を抑制できるとともに、天然由来成分であるエゾウコギ抽出物を有効成分とするため生体に対する安全性が高い。
図1は、対照並びにエゾウコギ粉末濃度0.5及び1.0 mg/mlにおけるPPARγ発現量を示すグラフである。 図2は、対照及びエゾウコギ粉末濃度1.0 mg/mlにおける、AMP活性化タンパクキナーゼ(AMPK)発現量に対するリン酸化AMPK(P-AMPK)発現量を示すグラフである。 図3は、対照及びエゾウコギ粉末濃度0.5 mg/mlにおける、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)発現量に対するリン酸化ACC(P-ACC)発現量を示すグラフである。
本発明の食品組成物はエゾウコギ抽出物を有効成分として含有した、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)発現抑制用の組成物である。
エゾウコギは、北海道、サハリン、千島、朝鮮半島、中国北部、シベリアに分布し、ウコギ科に属する植物である。根部にサポニンのエレウテロシド(eleutheroside)A、クマリン配糖体としてのエレウテロシドB(別名syringin)、エレウテロシドE(別名liriodendrin、syringaresinol di-O-β-D-glucoside)、クロロゲン酸(chlorogenic acid)などを含む。
エゾウコギの抽出物はPPARγの発現を抑制する作用を有するものであれば特に制限されない。エゾウコギ抽出物はエゾウコギの地上部(葉、茎、幹)、根部等を公知の方法で抽出したものである。抽出されるエゾウコギはその地上部、根部、全体等のいずれであってもよく、抽出に適したサイズにしてから抽出することが好ましい。好ましくは根部である。エゾウコギの抽出は公知の方法で行えばよく、例えば適宜のサイズに裁断したエゾウコギを適宜の溶媒で抽出することで抽出液を得ることができる。エゾウコギの抽出物は、例えばエゾウコギの抽出液、これを濃縮した濃縮液、あるいは抽出液又は濃縮液を乾燥させて得られる粉末等である。取り扱いが容易である点で粉末が好ましい。
エゾウコギ抽出物は、エゾウコギを水、アルコール又は水とアルコールとの混合物で抽出して得られる抽出液、これを濃縮した濃縮液あるいは抽出液又は濃縮液を乾燥させて得られる粉末が好ましい。エゾウコギを抽出する溶媒としては、水、エタノール又は水とエタノールとの混合物(含水エタノール)が好ましい。エゾウコギを水で抽出し、液部(第1抽出液)と固形部(残渣)に例えばろ過で分け、残渣を含水エタノールで抽出し、例えばろ過により液部(第2抽出液)を得、第1抽出液と第2抽出液とをあわせ、これを必要
に応じて濃縮し、乾燥させて得られる粉末が、エレウテロシドB及びEの含量が高い点及び/又は乾燥操作時に乾燥装置内に液が付着し難い点で好ましい。水による抽出時の液温は例えば60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、含水エタノール又はエタノールによる抽出時の液温は、例えば10℃~60℃、好ましくは30℃~60℃、より好ましくは40℃~60℃、特に好ましくは50℃~60℃である。エタノール以外のアルコール又は水とアルコールとの混合物を使用するときは、前記温度範囲の上限温度をアルコールの沸点とすることができる。
含水エタノールは、水とエタノールとの混合物であり、エタノール濃度(容積%)が例えば10%~70%、好ましくは30%~70%、より好ましくは40%~60%である。含水エタノール以外の含水アルコールを使用する場合のアルコール濃度も同様である。
エゾウコギの抽出に使用する溶媒の量は、例えば、溶媒に対するエゾウコギ濃度が0.10g/ml~0.50g/mlとなる量とでき、抽出効率及び抽出後の濃縮を考慮すると好ましくは0.15g/ml~0.40g/ml、より好ましくは0.20g/ml~0.30g/mlとなる量である。
抽出溶媒として水を使用するときの溶媒の量は、例えば、溶媒に対するエゾウコギ濃度が0.10g/ml~0.40g/mlとなる量とでき、好ましくは0.15g/ml~0.30g/ml、より好ましくは0.20g/ml~0.25g/mlとなる量である。
抽出溶媒としてエタノール又は水とエタノールとの混合物を使用するときの溶媒の量は、例えば、溶媒に対するエゾウコギ濃度が0.15g/ml~0.45g/mlとなる量とでき、好ましくは0.20g/ml~0.30g/ml、より好ましくは0.22g/ml~0.27g/mlとなる量である。
抽出時間は抽出温度、抽出時の撹拌条件等に基づいて適宜設定できるが、例えば10分~24時間、好ましくは20分~4時間、より好ましくは20分~2時間、特に好ましくは30分~90分である。抽出溶媒の量及び抽出時間は公知の方法を参照して適宜変更できる。
エゾウコギ抽出物はエレウテロシドB及びEを0.1質量%~50質量%含むことがPPAR発現抑制作用の観点から好ましく、1質量%~30質量%がより好ましく、5質量%~20質量%が特に好ましい。
食品組成物としては哺乳動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる飲食品が含まれ、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト、チーズ等);飲料類(コーヒー、ジュース、ココア、
茶飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンクのような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレ
ッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレ
ート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、グミ、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン、ビスケット等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ハム、ソーセージ、ベーコン等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素、味噌、醤油、ソース、ケチャップ、オイスターソース等)などが挙げら
れる。
食品組成物の製法も特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。
食品組成物としては、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健用食
品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品なども挙げられる。サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
また、食品組成物は、PPAR、特にPPARγの発現の抑制作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。当該作用は、例えばPPAR、特にPPARγ発現の亢進に基づく症状の予防又は改善作用、好ましくは肥満症、脂質異常症、サルコペニア、筋肉量の減少又はフレイルの予防又は改善作用、より好ましくはサルコペニア、筋肉量の減少又はフレイルの予防又は改善作用、特に好ましくはサルコペニア又はフレイルの予防又は改善作用である。
PPARγは、前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化を促進し、更に小型脂肪細胞から肥大化脂肪細胞への肥大化を促進する。このため、PPARγの発現を抑制することによって、肥大化脂肪細胞の生成を抑制できる。
肥大脂肪細胞は肥満ホルモンであるレプチンの分泌を増大し、脂肪燃焼を促進するアディポネクチンの分泌を抑止し、その結果、中性脂肪の上昇、遊離脂肪酸の上昇、コレステロールの上昇を引き起こす。さらに、肥大化脂肪細胞は、インスリン抵抗性を示すと共に、炎症性サイトカインであるTNFαを分泌する。TNFαは、さらに周辺の正常小型細胞にも働きかけ、小型細胞がインスリン抵抗性となる。加えて、脂肪組織で生成されたTNFα等
のサイトカインは、骨格筋に存在する各受容体を介してNFκBを活性化し、骨格筋の主要
なタンパク分解系であるユビキノン・プロテオソーム系のユビキチンリガーゼを増加させることにより筋分解を促進し、その結果、サルコペニアを促進する。
食品組成物は、PPARγの発現を抑制する作用を有するエゾウコギ抽出物を含有するため、小型脂肪細胞の肥大化を抑制できる。このため、食品組成物は、肥大化脂肪細胞によってもたらされる症状、例えば肥満症、脂質異常症、サルコペニア、筋肉量の減少、フレイル等を予防又は改善できる。
食品組成物は、エゾウコギ抽出物の有するPPAR、特にPPARγの発現の抑制作用、AMPK活性化作用及びACCの活性化作用に基づき、脂肪細胞の肥大化を抑制する作用(例えば抗肥
満作用)、及び、中性脂肪、遊離脂肪酸、コレステロール等の上昇を抑制する作用(例えば、脂質異常症抑制作用)を有する。また、食品組成物は、PPAR、特にPPARγの発現の抑制作用に基づき、筋肉量減少抑制作用、サルコペニア抑制作用及びフレイル抑制作用を有する。したがって、食品組成物は、肥満症、脂質異常症、サルコペニア、筋肉量の減少、フレイル等の予防又は改善用途において有用である。
肥満症は、BMI(体格指数)25以上を指す。
脂質異常症は血中の、LDL-コレステロールが140mg/dL以上、HDL-コレステロールが40mg/dL未満、トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dL以上のいずれかに該当することをい
う。
サルコペニアは、European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)において規定されており、加齢による骨格筋量の低下と、骨格筋力の低下又は身体機能の低下とが見られる症状をいい、本明細書ではこれらの症状に加え、加齢による骨格筋量の低下、骨格筋力の低下及び身体機能の低下が見られる症状をも含む。
フレイルは、加齢に伴う様々な機能変化や生理的な予備能力の低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態である(例えば日本老年医学会雑誌51巻6号(2014:11))
。食品組成物は、上記のとおり、抗肥満作用を有するため摂取者の体重増加を抑制又は体重減少を促進でき、その結果、生活習慣病を抑制できる。また、筋肉量の減少を抑制できる。肥満抑制及び筋肉量減少抑制によって、摂取者の外出が容易となり、外出することにより社会と接触する機会が増加し、これによってストレスを軽減でき、フレイルの予防又
は改善に有用である。
食品組成物には、必要に応じて、賦形剤、ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、光沢剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
本発明の食品組成物は、エゾウコギ抽出物を含有する食品組成物であり、通常、エゾウコギに由来する成分、例えばエレウテロシドB及び/又はEを含有する。食品組成物に含まれるエゾウコギ抽出物の量は、特に制限されず、好ましくは1質量%~100質量%、より好ましくは25質量%~100質量%、特に好ましくは50質量%~100質量%である。
食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
以下、試験例等によって本発明の一実施態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、水とエタノールの混合物(含水エタノール)中のエタノール濃度は容積%(v/v)である。なお、以下の例で使用された材料、装置等は次のとおりである

エゾウコギ乾燥物:5mm~12mmサイズに裁断された中国産エゾウコギの根部の乾燥物
濾紙:No.5A(東洋濾紙株式会社)
噴霧乾燥装置:CNK-P-SDD-O型(ダルトン社)
FBS:ウシ胎児血清(シグマアルドリッチ社)
ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液:ペニシリン及びストレプトマイシンを各10,000μg/ml含有(ナカライテスク社)
DMEM培地:ダルベッコ変法イーグル培地(ナカライテスク社)
培養培地:FBSを10%(v/v)濃度で含み、且つ、ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液が1%(v/v)で添加されたDMEM培地
分化誘導培地1:FBSを10%(v/v)濃度で含み、且つ、ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液が1%(v/v)で添加され、且つ、分化誘導剤としてデキサメタゾン(和光純薬
工業社)、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(和光純薬工業社)及び5μMインスリン(
シグマアルドリッチ社)を各々、1μM、0.5mM及び5μM濃度で含んだDMEM培地
分化誘導培地2:FBSを10%(v/v)濃度で含み、且つ、ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液が1%(v/v)で添加され、且つ、分化誘導剤としてインスリン(シグマアルド
リッチ社)を5μM濃度で含んだDMEM培地
DMSO:ジメチルスルホキシド
PPARγ抗体含有液:sc-7273(Santa Cruz社)
AMPK抗体及びACC抗体含有液:AMPK and ACC Antibody Sampler Kit#9957(Cell Signaling Technology社)
製造例1:エゾウコギ抽出物の製造
エゾウコギ乾燥物を、水、エタノールの順で抽出した。2.5kgのエゾウコギ乾燥物に11.25Lの水を加え90℃まで加熱した。水温が90℃に到達してから60分間その温度を維持した後、濾紙で濾過し、9.7Lの濾液(第1抽出液)と濾紙上に残った4.1kgの残渣とを回収した。
次に、当該残渣を乾燥させることなく全量をエタノール抽出に供した。残渣重量からエゾウコギ乾燥物重量の2.5kgを控除することにより、残渣の含水量を算出した。残渣の含水量も考慮したエタノール抽出濃度が50%となるように、残渣に10Lの含水エタ
ノールを加え、液温が60℃になるまで加熱した。液温が60℃に到達してから60分間その温度を維持した後、濾紙で濾過し、10.3Lの濾液(第2抽出液)を回収した。
第1抽出液全量と第2抽出液全量とを混合し、混合液を回転式減圧濃縮装置(ロータリーエバポレーター)でBrix値が30%になるまで濃縮した。濃縮液を噴霧乾燥装置で粉末化(熱風温度140℃、アトマイザー回転数15,000rpm、流速50mL/分、試料温度40℃)し
、101gの粉末を得た。
本粉末中のエレウテロシドB及びEの含量をHPLCで測定したところ各々0.65g及び0.61gであった。測定は、市販の試薬であるエレウテロシドB及びE(ChromaDex社)を
用いて検量線を作成し、次に、この検量線に基づいて粉末中のエレウテロシド含量を定量することにより行った。
試験例1:脂肪細胞におけるPPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)発現量
(細胞培養)
12ウェルプレートの各ウェルに、培養培地を加え、3T3-L1マウス由来脂肪前駆細胞(ATCC)を各ウェルに播種し、37℃、5% CO2の環境のインキュベーター内で培養した。各ウ
ェルの細胞がコンフルエントになってから1日後に、培養培地を分化誘導培地1に交換す
ることにより、3T3-L1細胞の分化誘導を行った。その後、培地を2日おきに交換しながら
、最初の分化誘導から8日間培養した。なお、交換培地としては分化誘導培地2を使用した。
製造例1で製造したエゾウコギ粉末をDMSOに添加して試料液を調製した。培養された3T3-L1細胞に試料液を添加してエゾウコギ粉末濃度を0.5又は1.0 mg/mLに調整し、37℃で48時間培養を行った。対照として、DMSOのみを細胞に添加して同様に培養を行った。ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)にて細胞を洗浄した後に、各ウェルの細胞に1mM EDTA、10mM トリス-塩酸(pH 7.4)、0.1% トリトン X-100を100μL加え、ウェルからかきとりながら細胞を回収した。
(ウエスタンブロッティング)
回収した各サンプルに、800μLのドデシル硫酸ナトリウム緩衝液(100mM トリス-塩酸(pH.6.8)、2%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム、20% グリセリン、12% β-メルカプト
エタノール)を加え、95℃で10分間煮沸した。得られたサンプルをSDS-PAGEで電気泳動を行い、電気泳動終了後トランスファー装置を用いて、ゲル上のタンパク質をポリフッ化ビニリデン膜(PVDF膜)に転写した。得られた膜を1次抗体(PPARγ抗体)希釈液に浸漬し
、4℃で一晩放置した。当該希釈液は、ウシ血清アルブミンを5%(w/v)で溶解したTBST(Tween 20(0.05M)及び塩化ナトリウム(0.15M)を含むトリス-塩酸緩衝液(pH 7.6))でPPARγ抗体含有液を1,000倍(容量比)希釈した液である。次いで、PVDF膜をTBSTで10
分間の洗浄を3度行った後、抗マウスIgG-ワサビ由来パーオキシダーゼ抗体(2次抗体)希釈液に浸し、室温で1時間振盪した。その後、PVDF膜をTBSTで洗浄(10分間×3回)した後、検出試薬(Luminata Forte Western HRP Subluminate Luminata;ミリポア社)をTBS(塩化ナトリウム(0.138M)及び塩化カリウム(0.0027M)を含むトリス-塩酸緩衝液(pH 7.6))で5倍希釈した発色液をPVDF膜に1分間浸透させ、画像解析装置(LAS4000;GEヘルスケア社)を用いてPVDF膜に表れたバンドを画像解析することによりPPARγ発現量を測定した。
PPARγの発現量を図1に示した。図1では対照のPPARγ発現量(n=3の平均値)を1と
し、エゾウコギ粉末試験群のPPARγ発現量(n=3の平均値)を相対値で示した。エゾウコ
ギ粉末試験群のPPARγ発現量を相対値で示した。エゾウコギ粉末濃度0.5及び1.0 mg/mlのPPARγ相対発現量は、各々、対照の約46%、約19%であった。エゾウコギ粉末によってPPARγ発現量が低下することが確認された。
試験例2:脂肪細胞におけるAMPK(AMP活性化タンパクキナーゼ)発現量
エゾウコギ粉末濃度が1.0 mg/mlの場合のAMPK発現量とP-AMPK発現量を測定した。具体
的には、エゾウコギ粉末濃度を1.0 mg/mlのみとし1次抗体としてのPPARγ抗体含有液をAMPK抗体及びACC抗体含有液に代えた他は実施例1と同じ操作を行ってAMPK発現量及びP-AMPK発現量を測定した。
対照群及びエゾウコギ粉末添加群のおのおのについてAMPK発現量に対するP-AMPK発現量(相対発現量)を算出した。AMPK発現量に対するP-AMPK発現量(相対発現量)を図2に示した(いずれの発現量もn=3の平均値)。図2では対照群の相対発現量を1とし、エゾウ
コギ粉末添加群の相対発現量を示した。エゾウコギ粉末添加群の相対発現量は対照の約20倍であった。エゾウコギ粉末によってP-AMPK発現量が上昇することが確認された。
試験例3:脂肪細胞におけるACC(アセチルCoAカルボキシラーゼ)発現量
エゾウコギ粉末濃度が0.5 mg/mlの場合のACC発現量とP-ACC発現量を測定した。具体的
には、エゾウコギ粉末濃度を0.5 mg/mlのみとし1次抗体としてのPPARγ抗体含有液をAMPK抗体及びACC抗体含有液に代えた他は実施例1と同じ操作を行ってACC発現量及びP-ACC発
現量を測定した。
対照群及びエゾウコギ粉末添加群のおのおのについてACC発現量に対するP-ACC発現量(相対発現量)を算出した。ACC発現量に対するP-ACC発現量(相対発現量)を図3に示した(いずれの発現量もn=3の平均値)。図3では対照群の相対発現量を1とし、エゾウコギ粉末添加群の相対発現量を示した。エゾウコギ粉末添加群の相対発現量は対照の約2.6倍であった。エゾウコギ粉末によってP-ACC発現量が上昇することが確認された。

Claims (6)

  1. エゾウコギ抽出物を有効成分として含有するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)発現抑制用食品組成物。
  2. ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)がペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)である請求項1に記載の組成物。
  3. 抽出物が、水、アルコール又はこれらの混合物により抽出される、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 抽出物がエゾウコギの根部の抽出物である請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
  5. ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の発現の亢進に基づく症状の予防又は改善用である請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
  6. 症状がサルコペニア又はフレイルである請求項5に記載の組成物。
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