JP2024023126A - マグネシウム二次電池用電解液、および、それを用いたマグネシウム二次電池 - Google Patents

マグネシウム二次電池用電解液、および、それを用いたマグネシウム二次電池 Download PDF

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佳尚 館山
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Abstract

【課題】 電気化学的なマグネシウムの析出溶解活性を有し、耐酸化性、および、非腐食性を備えたマグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池を提供すること。【解決手段】 本発明のマグネシウム二次電池用電解液は、少なくとも非水溶媒と支持塩とを含有し、非水溶媒は、少なくとも両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールを含有し、支持塩は、アルミニウム系マグネシウム塩である。【選択図】 図2

Description

本発明は、マグネシウム二次電池用電解液、および、それを用いたマグネシウム二次電池に関する。
マグネシウム金属は、高い理論容量密度、資源的に豊富で低コストであるため、次世代二次電池の1つとして研究が盛んである。
マグネシウム金属の電気化学的析出溶解は、エーテル溶媒中でのみ、高効率で進行する。しかし、エーテルは一般的に耐酸化性に乏しく、電池の高電圧化には耐酸化性を改善する必要がある。リチウム二次電池用電解液において、エーテル骨格の一部をフッ素化あるいはフッ化アルキル基を導入することで耐酸化性が向上することが報告されている(例えば、非特許文献1、2を参照)。
一方、マグネシウム二次電池において、エーテル骨格の一部をフッ素化あるいはフッ化アルキル基を導入した電解液を使用することが報告されている(例えば、特許文献1,2を参照)。しかしながら、耐酸化性の向上には至っておらず、改良が望まれている。実際、エーテルを部分フッ素化することでドナー性が低下するために各種金属塩の溶解度が下がる傾向にあるが、マグネシウム塩が溶解しないことが多く、電解液特性評価はおろか、電解液調製すら困難な場合が多い。
一方、電解液による集電体の腐食は、電池の実電池化において克服しなければならない必須課題である。リチウムイオン二次電池では、電解液に含まれるLiPFから自己解離(あるいは加水分解)によりHFが発生し、正極集電体であるアルミニウムと反応して、表面にフッ化アルミニウムを主成分とする被膜を形成することで腐食が抑制される。しかしながら、マグネシウム二次電池の電解液では、アルミニウム表面に安定な被膜を形成することができないため、高電圧化では常に集電体腐食の危険にさらされている(例えば、非特許文献3、4を参照)。
非特許文献4のInconel 625やHastelloy Bなどの合金は、ある種の電解液中で被膜を形成するために腐食を受けないが、これらは重い合金であるため、電池のエネルギー密度を上げることが困難であるため、好ましくない。
特開2012-074135号公報 特開2014-232719号公報
Chibueze V.Amanchukwuら,J.Am.Chem.Soc.2020,142,7393-7403 Zhiao Yuら,Nature Energy,VOL 5,526,July 2020,526-533 John Muldoonら,Energy Environ.Sci.,2013,6,482 Clemens Wall,ECS Electrochemistry Letters,4 (1),C8-C10,2015
以上から、本発明の課題は、電気化学的なマグネシウムの析出溶解活性を有し、耐酸化性、および、非腐食性を備えたマグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池を提供することである。
本発明による少なくとも非水溶媒と支持塩とを含有するマグネシウム二次電池用電解液は、前記非水溶媒は、両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールを含有し、前記支持塩は、アルミニウム系マグネシウム塩であり、これにより上記課題を解決する。
前記両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールは、R(OCORで表されてもよい。
(ここで、式中、Rは、*-CHCFを表し、nは、2以上10以下の整数を表し、*は結合位置を表す。)
前記nは、2以上5以下の整数であってもよい。
前記nは、2以上4以下の整数であってもよい。
前記両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールは、R(OCn1ORとR(OCn2ORとの混合物であってもよい。
(ここで、式中、Rは、*-CHCFを表し、n1は、2であり、n2は、3以上10以下の整数を表し、*は結合位置を表す。)
前記混合物中の前記R(OCn1ORの体積割合は、0.01以上0.99以下の範囲であってもよい。
前記アルミニウム系マグネシウム塩は、Mg[Al(ORで表されてもよい。
(ここで、式中、Rは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基を有する1価の炭化水素基を表し、Rのいずれか2つ以上が互いに連結して環を形成してもよい。ただし、分子内に4つあるRの全てが同一の基であるものを除く。)
前記Rで表される基の炭素数は、1個以上6個以下であってもよい。
前記Rで表される基の少なくとも1つは、*-L-C(R(CX3-nで表される基であってもよい。
(ここで、式中、Lは単結合、または、2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子、または、1価の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは0以上3以下の整数を表し、*は結合位置を表す。)
前記Rで表される基の少なくとも1つは、*-CH(CXで表される基であってもよい。
前記アルミニウム系マグネシウム塩は、Mg[Al(OCH(CXで表されてもよい。
前記Xは、フッ素原子であってもよい。
前記非水溶媒中の前記支持塩のモル濃度は、0.01moldm-3以上0.8moldm-3以下の範囲であってもよい。
前記非水溶媒中の前記支持塩のモル濃度は、0.05moldm-3以上0.55moldm-3以下の範囲であってもよい。
本発明による正極と負極と電解液とを備えたマグネシウム二次電池は、前記電解液は、上述の電解液であり、これにより上記課題を解決する。
前記正極は、集電体をさらに備え、前記集電体は、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、および、炭素系物質からなる群から選択されてもよい。
前記集電体は、アルミニウムであってもよい。
前記正極と前記負極との間にセパレータを有してもよい。
前記正極は、空気極であってもよい。
本発明のマグネシウム二次電池用電解液は、少なくとも両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールを含有する非水溶媒と、アルミニウム系マグネシウム塩である支持塩とを含有する。上述の特定のオリゴエチレングリコールであれば、アルミニウム系マグネシウム塩が溶解し、電気化学的なマグネシウムの析出溶解活性を示すことができる。さらに、優れた耐酸化性および非腐食性を有するので、このような電解液を用いれば、電池特性が向上したマグネシウム二次電池を提供できる。
本発明の電解液は非腐食性を備えるため、正極集電体として安価かつ軽量なアルミニウムを採用した場合であってもアルミニウムの腐食を抑制できるので、高エネルギー密度化したマグネシウム二次電池を提供でき、実用化に有利である。
本発明のマグネシウム二次電池を示す模式図 例7の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例16の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例38の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例39の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例41の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例42の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例43の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例8の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例17の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例13の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例10の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図 例1、例7、例16および例38の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるLSVプロファイルを示す図 例7の電解液およびAl作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図 例7の電解液およびCNF作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図 例38の電解液およびAl作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図 例1の電解液およびAl作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図 例7の電解液およびAl作用極を用いた2極セルの実験後のAl作用極のSEM像を示す図 例1の電解液およびAl作用極を用いた2極セルの実験後のAl作用極のSEM像を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明のマグネシウム二次電池用電解液およびその製造方法を詳述する。
本発明のマグネシウム二次電池用電解液は、少なくとも、非水溶溶媒と支持塩とを含有する。非水溶媒は、両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールを含有し、支持塩は、アルミニウム系マグネシウム塩であることを特徴とする。本願発明者は、特定のオリゴエチレングリコールとアルミニウム系マグネシウム塩とを用いることにより、アルミニウム系マグネシウム塩が非水溶媒に溶解し、電気化学的なマグネシウムの析出溶解活性を示し、耐酸化性を向上させる電解液となることを見出した。また、本発明の電解液は、種々の金属に対して非腐食性を有する。各構成要素について詳細に説明する。
<両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコール>
本願明細書において、オリゴエチレングリコールは、オキシエチレンユニット(OC)を連続して2以上10以下有するものを意図する。オキシエチレンユニットが10を超えると、末端の2,2,2-トリフルオロエチル基の効果が得られない可能性がある。本発明の効果を阻害しない範囲で、オキシエチレンユニットが置換基を有していてもよい。このような置換基には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、トリアルキルシリル基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、これらの水素原子の一部または全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)に置換された基、ハロゲノ基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)等が挙げられる。
両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコール(以降では簡単のため両端置換オリゴエチレングリコールと称する)は、好ましくは、R(OCORで表される。ここで、式中、Rは、*-CHCFを表し、nは、2以上10以下の整数を表し、*は結合位置を表す。これにより、アルミニウム系マグネシウム塩の溶解を容易にし、電気化学的なマグネシウムの析出溶解活性を示し、耐酸化性を向上し得る。
上記一般式において、nは、好ましくは、2以上5以下の整数である。これにより、耐酸化性をさらに向上させる。nは、より好ましくは、2以上4以下の整数である。この範囲であれば、耐酸化性を維持しつつ、大きな電流密度および小さな過電圧を可能にし、良好な可逆性が得られ得る。
両端置換オリゴエチレングリコールは、1種であってもよいし、2種以上が混合されていてもよい。オキシエチレンユニットの繰り返し数が小さいほど、マグネシウムの析出溶解活性において大きな電流密度が得られる傾向にあり、オキシエチレンユニットの繰り返し数が大きいほど、過電圧が小さい傾向にあるため、これらを組み合わせることにより、大きな電流密度および小さな過電圧となる電解液を提供することができる。
例えば、両端置換オリゴエチレングリコールが2種からなる場合、R(OCn1ORと、R(OCn2ORとの混合物であり、Rは、*-CHCFを表し、n1は、2であり、n2は、3以上10以下の整数を表し、*は結合位置を表す。このような組み合わせにすることにより、n1=2を満たす両端置換オリゴエチレングリコールによる大きな電流密度、ならびに、n1=3~10を満たす両端置換オリゴエチレングリコールによる小さな過電圧の効果が得られる。過電圧の観点から、n2は、より好ましくは、3以上5以下の範囲を満たす整数である。
両端置換オリゴエチレングリコールがR(OCn1ORと、R(OCn2ORとの混合物である場合、これらの混合物中のR(OCn1ORの体積割合は、好ましくは、0.01以上0.99以下の範囲である。この範囲であれば大きな電流密度と小さな過電圧とを達成できる。混合物中のR(OCn1ORの体積割合は、より好ましくは、0.4以上0.6以下の範囲である。この範囲であればマグネシウムの析出溶解活性に優れ、より大きな電流密度およびより小さな過電圧を達成できる。
非水溶媒は、上述の両端置換オリゴエチレングリコール単体からなることが好ましいが、特性を阻害しない範囲で、オリゴエチレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキルスルホン、メトキシアミン等の非水溶媒をさらに含有してもよい。例えば、エチレングリコールジメチルエーテルを含有すれば、電流密度に有利である。なお、非水溶媒中の両端置換オリゴエチレングリコールは、少なくとも50体積%以上であれば、上記効果を奏する。
両端置換オリゴエチレングリコールは、市販品を入手してもよいし、合成してもよい。合成方法は、末端の水酸基を2,2,2-トリフルオロエタノールで置換される限り、特に制限はないが、例えば、次のようにして合成できる。
オリゴエチレングリコール(ただし、オキシエチレンユニットが連続して2以上10以下有するもの)の両末端の水酸基をスルホニル基のような良い脱離基で置換した後、2,2,2-トリフルオロエタノールで置換することにより合成される。当業者であれば、このような反応を理解し、実施できる。
<アルミニウム系マグネシウム塩>
本願明細書においてアルミニウム系マグネシウム塩は、アルミニウムに配位した有機錯イオンのマグネシウム塩であれば特に制限はないが、例示的には、Mg[Al(ORで表されるアルミニウム系マグネシウム塩が挙げらる。
ここで、Rは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基を有する1価の炭化水素基を表し、Rのいずれか2つ以上が互いに連結して環を形成してもよい。ただし、分子内にある4つのRの全てが同一の基であるものを除く。
は、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基を有する1価の炭化水素基である。このハロゲン原子としては特に制限されず、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、および、ヨウ素原子(I)等が挙げられ、より優れた本発明の効果が得られる点で、フッ素原子が好ましい。
の炭化水素基の全体の炭素数としては特に制限されないが、一般に、1個以上、20個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下が更に好ましく、6個以下が特に好ましく、4個以下が最も好ましい。例えば、炭素数は1個以上6個以下を採用できる。
また、Rの炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよいが、上述の両端置換オリゴエチレングリコールへの溶解の観点から、直鎖状、又は、分岐鎖状が好ましく、直鎖状、又は、分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
の炭化水素基は、全体として炭素数が1個以上10個以下の直鎖状、又は、分岐鎖状であって、水素原子の少なくとも1つ以上がハロゲン原子(フッ素原子が好ましい)で置換されたアルキル基を有することが好ましく;全体として炭素数が1個以上8個以下の直鎖状、又は、分岐鎖状であって、水素原子の少なくとも1つ以上がハロゲン原子(フッ素原子が好ましい)で置換されたアルキル基を有することがより好ましく;全体として炭素数が1個以上5個以下の直鎖状、又は、分岐鎖状であって、水素原子の少なくとも1つ以上がハロゲン原子(フッ素原子が好ましい)で置換されたアルキル基を有することが更に好ましく;全体として炭素数が1個以上4個以下の直鎖状、又は、分岐鎖状であって、ハロゲン原子(フッ素原子が好ましい)で置換されたアルキル基そのものであることが特に好ましい。
の炭素数が2個以上4個以下であると、アルミニウム系マグネシウム塩のアニオンのサイズがより小さく、カチオンの運動性がより向上する点で好ましい。
の炭化水素基がハロゲン原子で置換されたアルキル基(ハロゲン化アルキル基)を有している場合、ハロゲン原子の電子を引き寄せる性質により、アルミニウム系マグネシウム塩のアニオン中の電子をより非局在化させ、酸化耐性がより向上する。
の炭化水素基が有するハロゲン化アルキル基の数は特に制限されず、1個以上が好ましく、炭素原子に結合した水素原子のすべてがハロゲン化アルキル基で置換されていることがより好ましい。
炭素数が1個以上10個以下の直鎖状、又は、分岐鎖状のアルキル基としては、以下の基が挙げられる。
炭素数が1個のメチル基;
炭素数が2個のエチル基;
炭素数が3個のプロピル基、イソプロピル基;
炭素数が4個のブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基;
炭素数が5個のペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基;
炭素数が6個のヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチル-2-メチル-プロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基;
炭素数が7個のヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基;
炭素数が8個のオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、3-エチル-3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルブチル基、2,2-ジエチルブチル基、1,1,2,2-テトラメチルブチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基、1,1-ジメチル-2-エチルブチル基;
炭素数が9個のノニル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2,3-ジメチルヘプチル基、2,4-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチルヘプチル基、3,3-ジメチルヘプチル基、3,4-ジメチルヘプチル基、3,5-ジメチルヘプチル基、4,4-ジメチルヘプチル基、3-エチルヘプチル基、4-エチルヘプチル基、2,2,3-トリメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルヘキシル基、2,2,5-トリメチルヘキシル基、2,3,3-トリメチルヘキシル基、2,3,4-トリメチルヘキシル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、2,4,4-トリメチルヘキシル基、3,3,4-トリメチルヘキシル基、2メチル-3-エチルヘキシル基、3-メチル-3-エチルヘキシル基、3-エチル-4-メチルヘキシル基、3-エチル-5-メチルヘキシル基、2,2,3,3-テトラメチルペンチル基、2,2,3,4-テトラメチルペンチル基、2,2,4,4-テトラメチルペンチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、2,2-ジメチル-3-エチルペンチル基、2,3-ジメチル-3-エチルペンチル基、2,4-ジメチル-3-エチルペンチル基、3,3-ジエチルペンチル基;
炭素数が10個のデシル基、イソデシル基;等が挙げられる。
が有してもよいハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、上記のアルキル基が有する水素原子の少なくとも1つ以上がハロゲン原子(フッ素原子が好ましい)で置換された基が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数が1個以上4個以下のパーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
で表される基の少なくとも1つは、*-L-C(R(CX3-nで表される基が好ましい。式中、Lは単結合、又は、2価の炭化水素基(好ましくは炭素数が1個以上4個以下のアルキレン基)を表し、Rは水素原子、又は、1価の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を表し、nは0以上3以下の整数を表す。なお、*は結合位置を表す。
式中、Lは単結合が好ましい。また、Rの1価の炭化水素基としては炭素数が1個以上10個以下のアルキル基、炭素数が2個以上10個以下のアルケニル基、炭素数が3個以上10個以下のアリール基、及び、炭素数が7個以上10個以下のアラルキル基等が挙げられ、いずれもハロゲン原子で置換されていないことが好ましい。
の炭素数が1個以上10個以下のアルキル基は、例えば、Rの説明で例示した直鎖状、又は、分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。Rは環状のアルキル基であってもよく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[3.3.1]ノニル基、ビシクロ[3.2.2]ノニル基、及び、アダマンチル基等であってもよい。
の炭素数が1個以上10個以下のアルケニル基としては、例えば、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-3-ブチニル基、2-メチル-3-ブチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、2-ヘプチニル基、3-ヘプチニル基、4-ヘプチニル基、5-ヘプチニル基、6-ヘプチニル基、2-オクチニル基、3-オクチニル基、4-オクチニル基、5-オクチニル基、6-オクチニル基、7-オクチニル基、2-ノニニル基、8-ノニニル基、2-デシニル基、及び、9-デシニル基等が挙げられる。
の炭素数が3個以上10個以下のアリール基としては、例えば、フェニル、o-トリル、m-トリル、及び、p-トリル等が挙げられる。
の炭素数が7~10個のアラルキル基としては、ベンジル基、1-フェネチル基、2-フェネチル、1-メチル-2-フェネチル、1-メチル-1-フェネチル、1,1-ジメチル-2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-メチル-2-フェニルプロピル、2-メチル-2-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチル、及び、4-フェニルブチル等が挙げられる。
で表される基の少なくとも1つは、好ましくは、*-CH(CXで表される基である。ここで、Xはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を表す。これにより、両端置換オリゴエチレングリコールへの溶解、ならびに、マグネシウムの電気化学的な析出溶解活性の発現を促進し得る。
中でも、Mg[Al(ORで表されるアルミニウム系マグネシウム塩としては、両端置換オリゴエチレングリコールへの溶解、マグネシウムの析出溶解活性の発現、耐酸化性および非腐食性の観点からは、以下に示される化合物が好ましい。
これらのうち、Mg[Al(OCH(CX]で表されるアルミニウム系マグネシウム塩は、非水溶媒への溶解性、マグネシウムの電気化学的な析出溶解活性の発現、ならびに、耐酸化性に優れるため、好ましい。
が連結して形成される環は、脂肪族環が好ましく、飽和又は不飽和のいずれでもよく、更に、環の骨格に含まれる炭素の数は、2個以上6個以下が好ましい。Rが連結して形成される環は、例えば以下の式で表されるものが挙げられる。
アルミニウム系マグネシウム塩は、市販品を入手してもよいし、合成してもよい。合成方法に特に制限はないが、例えば、次のようにして合成できる。
Mg(Rで表される化合物と、ROHで表される化合物とを反応させたマグネシウム源化合物と、AlR で表されるアルミニウム源化合物とを反応させて合成される。ここで、Rは、上述のRと同一の基を表し、Rは、それぞれ同一または異なるアルキル基(好ましくは、炭素数が1個以上10個以下のアルキル基)を表す。
Mg(Rで表される化合物と、ROHで表される化合物とを反応させると、以下の反応式により、Mg(ORで表されるマグネシウム源化合物が得られる。
Mg(R+2ROH→Mg(OR+2HR
このようにして得られたマグネシウム源化合物とアルミニウム源化合物とを反応させればよい。
本発明の電解液において、非水溶媒中の支持塩のモル濃度に特に制限はないが、好ましくは、0.01moldm-3以上0.8moldm-3以下の範囲である。この範囲であれば、上述のアルミニウム系マグネシウム塩が容易に溶解し得、少ない支持塩にて、マグネシウムの電気化学的な析出溶解活性の発現を促進し得る。
非水溶媒中の支持塩のモル濃度は、より好ましくは、0.05moldm-3以上0.55moldm-3以下の範囲であり、なおさらに好ましくは、0.25moldm-3以上0.35moldm-3以下の範囲である。この範囲であれば、マグネシウムの析出溶解活性の発現が特に促進され、耐酸化性および非腐食性に優れる。
本発明の電解液は、上述の両端置換オリゴエチレングリコール、および、アルミニウム系マグネシウム塩以外の成分を必要に応じて含有してもよい。このような他の化合物としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン、2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール、亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、及び、ジピリジニウムジスルフィド等が挙げられる。
例えば、亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン等を含む場合、高温での分解を防ぎ、ガスの発生を抑制できる。例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等を含む場合、過充電が抑制され得る。
電解液中の上記成分の含有量は特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られる点で、電解液の全質量を100質量%としたとき、0.01~5質量%が好ましい。なお、上記成分は一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。上記成分を二種以上併用する場合には、その合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
本発明の電解液は、少なくとも、上述の両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールと、アルミニウム系マグネシウム塩とを混合することによって調製され、特別の技術を要しないため、実用化に有利である。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した本発明のマグネシウム二次電池用電解液を用いたマグネシウム二次電池について説明する。
図1は、本発明のマグネシウム二次電池を示す模式図である。
本発明のマグネシウム二次電池1は、正極11と、負極12と、電解液13とを備え、容器14にこれらが収容されている。電解液13は、実施の形態1で詳述した本発明の電解液であるため、説明を省略する。
正極11は、図示しないが、正極集電体と、上記正極集電体に保持された正極活物質とにより構成されている。正極集電体として使用される物質は、特に制限されないが、例示的には、アルミニウム、銅、ステンレス(SUS)、ニッケル、カーボンナノファイバ等の炭素系物質等が好ましい。中でも、本発明の電解液はアルミニウムに対しても高い非腐食性を有しているため、安価かつ軽量な二次電池を提供できる。なお、正極活物質として空気中の酸素を用いるようにしてもよい。この場合、正極11は空気極として機能し、マグネシウム空気電池を提供できる。

正極活物質として使用される物質は、特に制限されないが、典型的には、マグネシウムイオンを挿入および脱離可能なものが好ましく、MgFeSiO、MgMn、V等が挙げられる。
負極12は、マグネシウム金属を溶解および析出させるものであれば特に制限はなく、例示的には、マグネシウム金属、または、マグネシウム合金である。マグネシウム合金は、好ましくは、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)およびアンチモン(Sb)からなる群から少なくとも1種選択される金属とマグネシウム(Mg)との合金である。負極12は、正極集電体と同様に負極集電体を備えてもよい。
マグネシウム二次電池1は、正極11と負極12との間に位置するセパレータ(図示せず)をさらに有していてもよい。セパレータの材質は、特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等などのポリオレフィン樹脂;ガラス;セラミックス等が挙げられる。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[支持塩]
支持塩として、以下の3種類を用意した。
・Mg[Al(HFIP)(マグネシウムテトラキス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシル)アルミネート)
・Mg[B(HFIP)(マグネシウムテトラキス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシル)ボレート)
・Mg[TFSI](マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)
Mg[Al(HFIP)およびMg[B(HFIP)は、後述するように合成し、Mg[TFSI]は、キシダ化学株式会社より入手した。それぞれの構造式を示す。
<Mg[Al(HFIP)の合成>
Ar(アルゴン)雰囲気のグローブボックス中にて、容量200mLのナスフラスコ底に長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、シリンジを用いてジ-n-ブチルマグネシウムヘプタン溶液1.0M(シグマアルドリッチ製)を5mL(5mmol)入れた。そこへ1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール1.04mL(10.0mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を10分かけて滴下し、その間25℃で溶液を撹拌し続けた。
滴下直後からブタンガスが発生し、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールの全量を滴下すると、白色固体が得られた。得られた白色固体をエチレングリコールジメチルエーテル(関東化学株式会社製)20mLに溶解させ、均一な溶液を調製した。調製した溶液にトリメチルアルミニウムのトルエン溶液1.8M(東京化成工業株式会社製)を5.5mL(10mmol)加え、25℃で30分撹拌した。
そこへ1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールを3.42mL(33.0mmol)、30分かけて滴下し、その間25℃で溶液を撹拌し続けた。1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールの全量を滴下した後、溶液を更に25℃で12時間撹拌した。
次に、反応溶液の入ったナスフラスコに3方コックを装着し、ナスフラスコ内部をAr雰囲気に保ったままグローブボックス外に持ち出した。油回転真空ポンプを用いてナスフラスコを減圧し、45℃で8時間乾燥、溶媒を除去した。乾燥処理により、目的の化合物Mg[Al(HFIP)を含む反応生成物を得た。なお、Mg[Al(HFIP)の構造は、核磁気共鳴スペクトルによって確認した。Mg[Al(HFIP)は、アルミニウム系マグネシウム塩に該当する。
<Mg[B(HFIP)の合成>
Ar(アルゴン)雰囲気のグローブボックス中にて、容量200mLのナスフラスコ底に長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、シリンジを用いてジ-n-ブチルマグネシウムヘプタン溶液1.0M(シグマアルドリッチ製)を5mL(5mmol)入れた。そこへ1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール1.04mL(10.0mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を10分かけて滴下し、その間25℃で溶液を撹拌し続けた。
滴下直後からブタンガスが発生し、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールの全量を滴下すると、白色固体が得られた。得られた白色固体をエチレングリコールジメチルエーテル(関東化学株式会社製)20mLに溶解させ、均一な溶液を調製した。調製した溶液にテトラヒドロフラン-ボラン錯体のテトラヒドロフラン溶液を12.2mL(11mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)加え、25℃で30分撹拌した。
そこへ1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールを3.42mL(33.0mmol)、30分かけて滴下し、その間25℃で溶液を撹拌し続けた。1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールの全量を滴下した後、溶液を更に25℃で12時間撹拌した。
次に、反応溶液の入ったナスフラスコに3方コックを装着し、ナスフラスコ内部をAr雰囲気に保ったままグローブボックス外に持ち出した。油回転真空ポンプを用いてナスフラスコを減圧し、50℃で8時間乾燥、溶媒を除去した。乾燥処理により、粗生成物としてMg[B(HFIP)と過剰のB(HFIP)を含む白色固体が得られた。
次に、白色固体の入ったナスフラスコを再度グローブボックスに導入し、3方コックを外し、白色固体を1,4-ジオキサン(脱水)(関東化学株式会社製)30mLを用いて3回洗浄した(計90mLの1,4-ジオキサンを使用)。ナスフラスコに再度3方コックを装着し、ナスフラスコ内部をAr雰囲気に保ったままグローブボックス外に持ち出した。油回転真空ポンプを用いて減圧し、50℃で24時間乾燥することで、目的の化合物Mg[B(HFIP)を含む反応生成物を得た。なお、Mg[B(HFIP)の構造は、核磁気共鳴スペクトルによって確認した。
[非水溶媒]
非水溶媒として、以下の12種類を用意した。
・G2(ジエチレングリコールジメチルエーテル;1-メトキシ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン)
・G2TFM(ジエチレングリコールbis(トリフルオロメチル)エーテル;1-(トリフルオロメトキシ)-2-[2-(トリフルオロメトキシ)エトキシ]エタン)
・G2TFE(ジエチレングリコールbis(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル;1,1,1-トリフルオロ-2-{2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エトキシ]エトキシ}エタン)
・G2TFP(ジエチレングリコールbis(3,3,3-トリフルオロプロピル)エーテル;1,1,1-トリフルオロ-3-{2-[2-(3,3,3-トリフルオロプロポキシ)エトキシ]エトキシ}プロパン)
・G3TFM(トリエチレングリコールbis(トリフルオロメチル)エーテル;1,1,1,12,12,12-ヘキサフルオロ-2,5,8,11-テトラオキサドデカン)
・G3TFE(トリエチレングリコールbis(2,2,2-トリフルオロメチル)エーテル;1,1,1,14,14,14-ヘキサフルオロ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン)
・G3TFP(トリエチレングリコールbis(3,3,3-トリフルオロプロピル)エーテル;1,1,1,16,16,16-ヘキサフルオロ-4,7,10,13-テトラオキサヘキサデカン)
・G4TFM(テトラエチレングリコールbis(トリフルオロメチル)エーテル;1,1,1,15,15,15-ヘキサフルオロ-2,5,8,11,14-ペンタオキサペンタデカン)
・G4TFE(テトラエチレングリコールbis(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル;1,1,1,17,17,17-ヘキサフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサヘプタデカン)
・G4TFP(テトラエチレングリコールbis(3,3,3-トリフルオロプロピル)エーテル;1,1,1,19,19,19-ヘキサフルオロ-4,7,10,13,16-ペンタオキサノナデカン)
・G5TFM(ペンタエチレングリコールbis(トリフルオロメチル)エーテル;1,1,1,18,18,18-ヘキサフルオロ-2,5,8,11,14,17-ヘキサオキサオクタデカン)
・2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン
G2は、関東化学株式会社より入手し、それ以外は、後述するように合成した。それぞれの構造式を示す。
<G2TFMの合成>
容量500mLの3口フラスコに長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、酢酸エチル175mL、フッ化カリウム8.36g(0.14mol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を入れ、室温下で撹拌した。
そこへ1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート)(東京化成工業株式会社製)を38.0g(0.11mol)、トリフルオロメタンスルホン酸銀27.7g(0.11mol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を加え、ジエチレングリコール1.9g(0.018mmol;東京化成工業株式会社製)を滴下した。さらに、2-フルオロピリジン10.5g(0.11mol;東京化成工業株式会社製)、トリメチルトリフルオロメチルシラン15.4g(0.11mol;東京化成工業株式会社製)滴下し、室温で3日間撹拌した。
反応液を濾過して固形成分を取り除き、ロータリーエバポレーターを用いてろ液を濃縮し、粗生成物を得た。その後、粗生成物をジクロロメタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)200mLに溶解し、100mLの蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)で乾燥し、濾過、濃縮した。シリカゲルを充填したカラムを用い、酢酸エチルを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーを行い、目的物のみを抽出、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、蒸留精製により目的物を得た。
<G2TFEの合成>
容量1Lの3口フラスコに長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、ジエチレングリコール25.1g(0.24mol)、トリエチルアミン100mL(0.72mol;富士フイルム和光純薬株式会社製)、ジクロロメタン100mLを入れ、氷冷下で撹拌した。
そこへパラトルエンスルホニルクロリド99.6g(0.52mol;東京化成工業株式会社)を溶解したジクロロメタン溶液350mLを滴下し、終夜室温で撹拌した。その後、2M HCl(富士フィルム和光純薬株式会社製)を200mL加え、室温で1時間撹拌し、二層に分離した反応液の水層をジクロロメタン100mLで2回抽出した(100mL×2)。抽出分と有機層を合わせ、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)、純水、飽和食塩水で洗浄後(それぞれ100mL×3)、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮した。得られた固体をエタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)で再結晶、濾過、乾燥し、中間体としてジエチレングリコールビス(p-トルエンスルホナート)を得た。
続いて容量1Lの3口フラスコに長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、水素化ナトリウム(60%,dispersion in Paraffin Liquid;東京化成工業株式会社製)20.8g(0.52mol)を入れ、50mLのヘキサン(富士フイルム和光純薬株式会社製)で3回洗浄した。そこへテトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)80mLを加え、氷冷下で撹拌し、2,2,2-トリフルオロエタノール37mL(0.51mol;東京化成工業株式会社製)のテトラヒドロフラン溶液80mLを滴下後、室温で2時間撹拌した。再び氷冷し、先ほど合成したジエチレングリコールビス(p-トルエンスルホナート)53.3g(0.13mol)のテトラヒドロフラン溶液350mL溶液を滴下後、終夜還流撹拌した。
反応液を室温に戻し、塩化アンモニウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加え室温撹拌後、二層に分離した反応液の水層を酢酸エチル100mLで3回抽出し、抽出分と有機層を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。得られた粗生成物を蒸留し、目的物を得た。
<G2TFPの合成>
G2TFEと同様の方法で合成した。詳細には、G2TFEにおける2,2,2-トリフルオロエタノールに代えて、3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール45mL(0.51mol;東京化成工業株式会社製)を反応させ、蒸留精製により目的物を得た。
<G3TFMの合成>
G2TFMと同様の方法で合成した。詳細には、G2TFMにおけるジエチレングリコールに代えて、トリエチレングリコール(東京化成工業株式会社製)2.7gを反応させ、蒸留精製により目的物を得た。
<G3TFEの合成>
容量1Lの3口フラスコに長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、トリエチレングリコール25.1g(0.17mol)およびトリエチルアミン70mL(0.51mol)のジクロロメタン溶液125mLを入れ、氷冷下で撹拌した。
そこへパラトルエンスルホニルクロリド70.3g(0.37mol)のジクロロメタン溶液260mLを滴下し、終夜室温で撹拌した。2M HClを加え室温撹拌した後、二層分離した水層をジクロロメタン50mLで2回抽出(50mL×2)した。抽出分と有機層を合わせ、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄後(それぞれ50mL×3)、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をエタノールで再結晶、濾過、乾燥し、中間体としてトリエチレングリコールビス(p-トルエンスルホナート)を得た。
続いて容量1Lの3口フラスコに長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、水素化ナトリウム(60%,dispersion in Paraffin Liquid)26.9g(0.67mol)を入れ、ヘキサン50mLで3回洗浄した。テトラヒドロフラン100mLを加え、氷冷下で撹拌し、2,2,2-トリフルオロエタノール48mL(0.67mol)のTHF溶液100mLを滴下後、室温で2時間撹拌した。
再び氷冷し、トリエチレングリコールビス(p-トルエンスルホナート)78.6g(0.17mol)のテトラヒドロフラン溶液380mLを滴下後、終夜還流撹拌した。反応液を室温に戻し、塩化アンモニウム水溶液を200mL加え室温撹拌後、二層分離した水層を酢酸エチル100mLで3回抽出し、抽出分と有機層を合わせ水、飽和食塩水で洗浄した(それぞれ100mL×3)。硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物を蒸留で精製し、目的物を得た。
<G3TFPの合成>
G3TFEと同様の方法で合成した。G3TFEにおける2,2,2-トリフルオロエタノールに代えて、3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール59mL(0.67mol)を反応させ、蒸留精製により目的物を得た。
<G4TFMの合成>
G2TFMと同様の方法で合成した。G2TFMにおけるジエチレングリコールに代えて、テトラエチレングリコール3.5g(0.018mol;東京化成工業株式会社製)を反応させ、蒸留精製により目的物を得た。
<G4TFEの合成>
容量1Lの3口フラスコに長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、水素化ナトリウム(60%oil dispersion)15.7g(0.39mol)を入れ、ヘキサン50mLで3回洗浄した。テトラヒドロフラン60mLを加え、氷冷下で撹拌し、2,2,2-トリフルオロエタノール28mL(0.39mol)のテトラヒドロフラン溶液60mLを滴下後、室温で2時間撹拌した。
再び氷冷し、テトラエチレングリコールビス(p-トルエンスルホナート)50.6g(0.10mol;東京化成工業株式会社製)のテトラヒドロフラン溶液200mLを滴下後、終夜還流撹拌した。反応液を室温に戻し、塩化アンモニウム水溶液100mLを加え、室温撹拌後、二層分離した水層を酢酸エチル100mLで3回抽出し、抽出分と有機層を合わせ水、飽和食塩水で洗浄した(それぞれ100mL×3)。硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物を蒸留で精製し、目的物を得た。
<G4TFPの合成>
G4TFEと同様の方法で合成した。詳細には、G4TFEにおける2,2,2-トリフルオロエタノールに代えて、3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール34mL(0.39mol)を反応させ、蒸留精製により目的物を得た。
<G5TFMの合成>
G2TFMと同様の方法で合成した。詳細には、G2TFMにおけるジエチレングリコールに代えて、ペンタエチレングリコール4.3g(0.018mol;東京化成工業株式会社製)を反応させ、蒸留精製により目的物を得た。
<2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタンの合成>
容量1Lの3口フラスコに長さ2cmの磁気撹拌子を設置し、水素化ナトリウム(60%oil dispersion)5.23g(0.13mol)を入れ、ヘキサン30mLで3回洗浄した。テトラヒドロフラン50mLを加え、氷冷下で撹拌し、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオール21.1g(0.13mol)のテトラヒドロフラン溶液50mLを滴下後、室温で2時間撹拌した。
再び氷冷し、パラトルエンスルホン酸2,2,2-トリフルオロエチル8.47g(0.03mol;東京化成工業株式会社)のテトラヒドロフラン溶液100mLを滴下後、終夜還流撹拌した。反応液を室温に戻し、塩化アンモニウム水溶液を100mL加え室温撹拌後、二層分離した水層を酢酸エチル50mLで3回抽出し、抽出分と有機層を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄した(それぞれ100mL×3)。硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物を蒸留で精製し、目的物を得た。
[例1~例36]
例1~例36では、表1~表4に基づいて、種々の非水溶媒と支持塩とを混合した組成物を調製した。
得られた例1~例36の組成物を観察し、支持塩の溶解性を目視にて確認した。表1~表4に目視にて支持塩が確認されないものに「〇」を、確認されるものに「×」を付した。
[例37~例39]
例37~例39では、表5に示すように、非水溶媒としてG2TFEとG3TFEとの組み合わせと、支持塩としてMg[Al(HFIP)とを混合した組成物を調製した。例37~例39では、G2TFE/(G2TFE+G3TFE)の体積比が0.1、0.5、および、0.9となるようにG2TFEとG3TFEとを混合し、支持塩の濃度は、いずれも、0.3mol/cmであった。例37~例39の組成物において、支持塩はすべて非水溶媒に溶解していることを確認した。
[例40~例41]
例40~例41では、表5に示すように、非水溶媒としてG2TFEと、支持塩としてMg[Al(HFIP)とを、支持塩濃度がそれぞれ0.1mol/dmおよび0.5mol/dmとなるように混合した組成物を調製した。例40~例41の組成物において、支持塩はすべて非水溶媒に溶解していることを確認した。
[例42]
例42では、表5に示すように、非水溶媒としてG3TFEと、支持塩としてMg[Al(HFIP)とを、支持塩濃度が0.5mol/dmとなるように混合した組成物を調製した。例42の組成物において、支持塩はすべて非水溶媒に溶解していることを確認した。
[例43]
例43では、表5に示すように、非水溶媒としてG2TFEとG3TFEとの組み合わせと、支持塩としてMg[Al(HFIP)とを混合した別の組成物を調製した。例43では、G2TFE/(G2TFE+G3TFE)の体積比が0.5となるようにG2TFEとG3TFEとを混合し、支持塩の濃度は0.5mol/dmであった。例43の組成物において、支持塩はすべて非水溶媒に溶解していることを確認した。
例1~例43のうち、支持塩が溶解した組成物をマグネシウム二次電池の電解液として、電気化学活性を評価した。詳細には、0.6mLの電解液を入れ、作用極に白金板を、対電極にマグネシウムリボンを、参照電極に銀線を用い、3極式ビーカーセルを組み立てた。サイクリックボルタンメトリ(CV)により電気化学的溶解析出活性を、リニアスウィープボルタンメトリ(LSV)により耐酸化性を評価した。これらの結果を図2~図13に示す。
次に、0.6mLの電解液を入れ、作用極にアルミニウム(Al)箔集電体、カーボンナノファイバ(CNF)をそれぞれ用い、対電極および参照電極にマグネシウム箔を用い、2極セルを組み立てた。定電位分極試験を行い、電位-電流特性を測定した。結果を図14~図17に示す。定電位分極試験後の作用極の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図18および図19に示す。
以上の結果をまとめて説明する。
表4の例34~例36に示すように、非特許文献2に示される2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタンのような一部がフッ素化されたエーテルには、いずれのマグネシウム塩も溶解しなかった。表1~表4によれば、フッ素化された非水溶媒と、マグネシウム塩とを適切に選択しなければ溶解した組成物が得られないことが分かり、例7、例16、例25に示すように、両末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールは、アルミニウム系マグネシウム塩を溶解することが確認された。
図2は、例7の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図3は、例16の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図4は、例38の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図5は、例39の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図6は、例41の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図7は、例42の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図8は、例43の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図9は、例8の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図10は、例17の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図11は、例13の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図12は、例10の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるCVプロファイルを示す図である。
図2に代表的に示すように、電位は、(1)~(6)の数字および矢印で示した順に変化させた。図2~図8に示すように、例7、例16、例38および例41~43の電解液を用いた場合、Mgの酸化還元電位(0Vvs.Mg2+/Mg)に対して、卑(マイナス)に電位を走査すると、Mgの析出に対応する還元電流が観測された。また、反転させて貴(プラス)に電位を走査すると、Mgの溶解に対応する酸化電流が観測された。図示しないが、例25、例37および例40の電解液を用いた場合も同様のプロファイルを示した。このことから、例7、例16および例37~例43の電解液は、マグネシウムの析出溶解活性を発現し、マグネシウム二次電池の電解液として機能することが示された。
一方、図9~図12に示すように、例8、例10、例13および例17の電解液を用いた場合、Mgの酸化還元電位(0Vvs.Mg2+/Mg)に対して、卑に電位を走査する前から還元電流が観測された。このような還元電流は、マグネシウム析出とは異なる副反応に起因している。また、反転させて貴に電位を走査しても、Mgの溶解に対応する酸化電流は観測されなかった。
例7と例8と例10との比較、ならびに、例13と例16と例17との比較から、両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールとアルミニウム系マグネシウム塩との組み合わせが必須であることが示された。
なお、例1~例3、例11、例14、例19、例20、例22、例26、例28、例29、例31、例32の電解液を用いた場合も、図9~図12と同様のプロファイルを示し、析出溶解活性を発現しなかった。
再度図2~図8を参照する。図2と図3とを比較すると、例7の電解液のようにオキシエチレンユニットの繰り返し数が小さい方(繰り返し数は2)が、マグネシウムの析出溶解活性において大きな電流密度が得られ、例16の電解液のようにオキシエチレンユニットの繰り返し数が大きい方(繰り返し数は3)が、過電圧が小さいことが分かった。
図2および図6、ならびに、図3および図7に示すように、電解液中の支持塩のモル濃度を変化させることにより、大きな電流密度および小さな過電圧の両方を達成できることが示された。より詳細には、例7、例40および例41の電解液のCVプロファイル、ならびに、例16および例42の電解液のCVプロファイルを比較したところ、支持塩のモル濃度が0.3moldm-3である例7および例16の電解液を用いた場合に、もっとも析出溶解活性が促進されることが分かった。このことから、非水溶媒中の支持塩のモル濃度は、より好ましくは、0.25moldm-3以上0.35moldm-3の範囲であることが示された。
一方、図4、図5および図8に示すように、例7の電解液と例16の電解液とを組み合わせた例38~例39および例43の電解液とすることにより、大きな電流密度および小さな過電圧の両方を達成できることが示された。より詳細には、例37~例39の電解液のCVプロファイルを比較したところ、例38の電解液を用いた方が、より大きな電流密度および小さな過電圧の両方を達成できることが分かった。このことから、電解液を組み合わせて用いる場合、混合物中のG2TFEの体積割合は、より好ましくは、0.4以上0.6以下の範囲であることが示された。
また、例38および例43の電解液のCVプロファイルを比較したところ、例38の電解液を用いた方が、より大きな電流密度および小さな過電圧の両方を達成できることが分かった。このことからも、非水溶媒中の支持塩のモル濃度は、より好ましくは、0.25moldm-3以上0.35moldm-3の範囲であることが示された。
図13は、例1、例7、例16および例38の電解液を用いた3極ビーカーセルにおけるLSVプロファイルを示す図である。
図13によれば、0.1mA/cmの酸化電流が観測された電位を電解液の酸化端(耐酸化性の尺度)と定義すると、例7、例16および例38の電解液の耐酸化性は、例1の電解液のそれに比べて、0.5V以上向上したことが分かった。
図示しないが、例2、例3、例8、例10、例11、例13、例14、例17、例19、例20、例22、例26、例28、例29、例31、例32の電解液の耐酸化性は、例1の電解液のそれと同じであった。一方、例25、例37、例39~例43の電解液を用いた場合の耐酸化性は、例7、例16および例38の電解液のそれと同様に0.5V以上向上した。このことからも、両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールと、アルミニウム系マグネシウム塩とを含有する本発明の電解液は、マグネシウム二次電池において耐酸化性の向上に有利であることが示された。
図14は、例7の電解液およびAl作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図である。
図15は、例7の電解液およびCNF作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図である。
図16は、例38の電解液およびAl作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図である。
図17は、例1の電解液およびAl作用極を用いた2極セルにおける電位-電流応答プロファイルを示す図である。
図14~図16によれば、例7および例38の電解液を用いた場合、作用極の種類によらず、3.5Vvs.Mg以上の電位を長時間印加しても、電流応答(酸化電流)は一切観測されなかった。このことは、例7および例38の電解液は、分解したり、作用極を腐食したりすることはなく、安定であることが分かった。図示しないが、例16、例25、例37、例39~例43の電解液も同様のプロファイルを示した。
一方、図17によれば、例1の電解液を用いた場合、3.0Vvs.Mg以上の電位を長時間印加すると、酸化電流が観測された。特に、電位が上昇するにつれて、酸化電流も大きくなり、電解液の分解や作用極の腐食が生じた。図示しないが、例2、例3、例8、例10、例11、例13、例14、例17、例19、例20、例22、例26、例28、例29、例31、例32の電解液の電位-電流応答プロファイルは、例1の電解液のそれと同じであり、安定性に乏しかった。
図18は、例7の電解液およびAl作用極を用いた2極セルの実験後のAl作用極のSEM像を示す図である。
図19は、例1の電解液およびAl作用極を用いた2極セルの実験後のAl作用極のSEM像を示す図である。
図18によれば、例7の電解液を用いた場合、Al作用極には孔食は認められなかった。一方、図19によれば、例1の電解液を用いた場合、Al作用極には多数の孔食が認められた。これらの結果は、図14および図17の結果に整合した。
以上より、本発明の両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールと、アルミニウム系マグネシウム塩とを含有する電解液は、マグネシウム二次電池の電解液として機能し得、耐酸化性および非腐食性に優れていることが示された。
本発明のマグネシウム二次電池用電界液は、特定の非水溶媒を用いることによりアルミニウム系マグネシウム塩が溶解し、耐酸化性を向上し、非腐食性を有するため、優れた特性を有するマグネシウム二次電池を提供できる。
1 マグネシウム二次電池
11 正極
12 負極
13 電解液
14 容器

Claims (19)

  1. 少なくとも非水溶媒と支持塩とを含有するマグネシウム二次電池用電解液であって、
    前記非水溶媒は、両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールを含有し、
    前記支持塩は、アルミニウム系マグネシウム塩である、マグネシウム二次電池用電解液。
  2. 前記両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールは、R(OCORで表される、請求項1に記載の電解液。
    (ここで、式中、Rは、*-CHCFを表し、nは、2以上10以下の整数を表し、*は結合位置を表す。)
  3. 前記nは、2以上5以下の整数である、請求項2に記載の電解液。
  4. 前記nは、2以上4以下の整数である、請求項3に記載の電解液。
  5. 前記両方の末端が2,2,2-トリフルオロエチル基で置換されたオリゴエチレングリコールは、R(OCn1ORとR(OCn2ORとの混合物である、請求項1に記載の電解液。
    (ここで、式中、Rは、*-CHCFを表し、n1は、2であり、n2は、3以上10以下の整数を表し、*は結合位置を表す。)
  6. 前記混合物中の前記R(OCn1ORの体積割合は、0.01以上0.99以下の範囲である、請求項5に記載の電解液。
  7. 前記アルミニウム系マグネシウム塩は、Mg[Al(ORで表される、請求項1~6のいずれかに記載の電解液。
    (ここで、式中、Rは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基を有する1価の炭化水素基を表し、Rのいずれか2つ以上が互いに連結して環を形成してもよい。ただし、分子内に4つあるRの全てが同一の基であるものを除く。)
  8. 前記Rで表される基の炭素数は、1個以上6個以下である、請求項7に記載の電解液。
  9. 前記Rで表される基の少なくとも1つは、*-L-C(R(CX3-nで表される基である、請求項8に記載の電解液。
    (ここで、式中、Lは単結合、または、2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子、または、1価の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは0以上3以下の整数を表し、*は結合位置を表す。)
  10. 前記Rで表される基の少なくとも1つは、*-CH(CXで表される基である、請求項9に記載の電解液。
  11. 前記アルミニウム系マグネシウム塩は、Mg[Al(OCH(CXで表される、請求項10に記載の電解液。
  12. 前記Xは、フッ素原子である、請求項9~11のいずれかに記載の電解液。
  13. 前記非水溶媒中の前記支持塩のモル濃度は、0.01moldm-3以上0.8moldm-3以下の範囲である、請求項1~12のいずれかに記載の電解液。
  14. 前記非水溶媒中の前記支持塩のモル濃度は、0.05moldm-3以上0.55moldm-3以下の範囲である、請求項13に記載の電解液。
  15. 正極と負極と電解液とを備えたマグネシウム二次電池であって、
    前記電解液は、請求項1~14のいずれかに記載の電解液である、マグネシウム二次電池。
  16. 前記正極は、集電体をさらに備え、
    前記集電体は、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、および、炭素系物質からなる群から選択される、請求項15に記載のマグネシウム二次電池。
  17. 前記集電体は、アルミニウムである、請求項16に記載のマグネシウム二次電池。
  18. 前記正極と前記負極との間にセパレータを有する、請求項15~17のいずれかに記載のマグネシウム二次電池。
  19. 前記正極は、空気極である、請求項15~18のいずれかに記載のマグネシウム二次電池。
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