JP2024022773A - 変位検出方法、変位検出装置、及び、工作機械 - Google Patents

変位検出方法、変位検出装置、及び、工作機械 Download PDF

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Abstract

【課題】フランジ部における外周形状を測定するセンサ方式、フランジ外周面の切り欠き数、形状精度、環境等に係らず、セットアップ時と加工時の変位データの位相を簡単、かつ高精度に合わせ、チャックミスの検出精度を向上する。【解決手段】セットアップ時は、チャックミスがない状態でツールホルダ11を主軸26へ装着し、工具9の回転を開始してからセンサ1の信号変化より、フランジ部11Bに形成された切り欠き11Cのカウントを開始し、ツールホルダ11を少なくとも1周した後、最後に検出した切り欠き11Cからセンサ1によるセットアップ時測定データを得るまでの時間Tとそれまでのカウント数Nを記憶し、加工時はセットアップ時と同じ手順でカウント数N及び時間Tを合わせて加工時測定データを得る。【選択図】図4

Description

本発明は、NC(数値制御)加工機やマシニングセンタをはじめとするワーク(加工対象物、測定対象物)の加工を行う工作機械に主として取り付けられ、特に、工具を適宜選択して着脱する自動工具交換装置(ATC)を備え、工具が取り付けられるツールホルダの基準状態からの変位を検出する変位検出方法、変位検出装置、及び、工作機械に関する。
マシニングセンタ(MC)は、加工工程に従って各種工具を自動的に選択し、主軸に自動で装着して多種類の加工を行う装置である。このMCにおいて、工具の交換は自動工具交換(ATC:オートツールホルダチェンジ)装置で行われる。ATC装置は工具が取り付けられたツールホルダを工具マガジンから自動で取り出し、主軸に自動で装着する。工具が取り付けられたツールホルダは、円錐状の嵌合部を有しており、この嵌合部が、MCの主軸に形成された円錐状の被嵌合部に嵌合されて装着される。しかしながら、ツールホルダは、嵌合部に切り屑などが付着すると、軸が曲がって装着されることがある。そして、この状態で加工を行うと、工具に振れ(基準状態からの変位)が発生し、ワークの加工精度が著しく低下する。
ツールホルダの異常な装着状態(チャックミス)等に起因しておこるツールホルダの基準状態からの変位を検出するための技術として、特許文献1には、「工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械において、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面の変位を測定する測定手段と、前記測定手段で得られた測定データから前記工作機械の異常を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする工作機械。」が記載され、更に、「前記主軸に装着されたツールホルダのフランジ外周面の変位の測定データを基本データとして記憶する基本データ記憶手段と、前記基本データと前記測定手段で測定された測定データとを比較して真の測定データを演算する真の測定データ演算手段と、を備え、前記判定手段は、前記真の測定データ演算手段で算出された真の測定データから前記工作機械の異常を判定する」ことが記載されている。
また、「ツールホルダ2に切欠きがある場合には、図10(b)に示すように、2つある切欠き2C、2Cのうち何れか一方の切欠き2Cの中央が0°になるように測定データを位相補正する」こと、及び、「算出した磁気的凹凸パターン(加工時磁気的パターン)と、メモリ20に記憶されたセットアップ時の磁気的凹凸パターン(セットアップ時磁気的パターン)とを比較し、算出した磁気的凹凸パターンのうち、どの位置が0°に位置するかを決定する。」ことも記載されている。
また、特許文献2は、フランジ外周面に近接して設けられる外周面検出手段として、渦電流センサを設け、ツールホルダのフランジ部に切り欠きがある場合、センサが所定周期で検出したフランジ外周面の表面位置の検出データを補間処理して、所定周期より短い補間周期で補間検出データを算出し、補間データを生成することが記載されている。
さらに、特許文献2の段落0026等には、渦電流センサなどの検出器は、検出距離が大きくなると検出精度、分解能が低下すること、及び、切り欠き部分は検出方向に距離が急激に変化するため、この部分の平均距離を検出すると検出信号は鈍ることが記載されている。そこで、特許文献2では、検出距離が大きいほど、切り欠き部分の検出データの値が小さくなるように補正を行うことが記載されている。
特開2002-200542号公報 特開2008-93750号公報
ツールホルダのフランジの外周面の変位を測定し、チャックミス等に起因して起こる基準状態からの変位を検出する方法では、測定データの相対差を求める必要がある。そのためには、それぞれの測定データの位相補正を行う必要がある。この位相補正について、特許文献1には、フランジの切り欠きに由来する信号を用いたり、特徴的な磁気的凹凸パターンを利用したりする方法が記載されている。
しかし、近年、ツールホルダの加工精度の向上に伴い、フランジ部分の形状のばらつきが従来よりも顕著に小さくなってきている。そのため、特許文献1に記載された方法のように、ツールホルダに固有の特徴的な磁気的凹凸パターンを見出すことが難しくなってきていることを本発明者は知見している。これは、特徴的な磁気的凹凸パターンが、各ツールホルダ(典型的にはフランジ部分)に固有の形状の不均一(ばらつき)に起因して得られるものだからである。
また、切り欠きに由来する信号を用いて位相補正を行おうとしても、例えば、フランジが切り欠きを二つ有し、この切り欠きが180度対称な位置に配置されている場合、180度の回転対称に近い磁気的凹凸パターンが発現し、加工時磁気的パターンとセットアップ時磁気的パターンの比較のみで位相を決めることができないことも、本発明者は知見している。
また、特許文献2は、補間データによって、フランジ部に切り欠きの影響による振れ測定の誤差を小さくできるが、サンプリング開始位置のずれや回転速度のムラがあると、フランジ外周面の表面位置の検出データが不正確となり、偏心量を高精度に算出することができない場合がある。
さらに、例えば、切粉の噛み込み等により振れが発生した場合、切り欠きが二つありサンプリング開始位置が大きくずれた場合、及び、ノイズが多い場合等では、複雑な処理を必要とする。そのため、渦電流センサなどの検出器は、より安定した高精度な測定を確保するために、クーラントの影響を受けない位置に設置しなければならない。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、渦電流センサに限らないセンサ方式、ツールホルダのフランジ外周面の切り欠き数、回転方向の対称性、フランジ部11Bの形状(特に、測定部分の肉厚)の変化、磁化、焼き入れ深度、刻印、環境等に係らず、基準状態、及び、変位検出時における測定データの位相を簡単、かつ、高精度に合わせることを可能とし、ツールホルダの主軸へのチャックミス(装着異常)等に起因して起こるツールホルダの基準状態からの変位の検出精度を向上することにある。
上記目的を達成するため、本発明の構成は以下のとおりである。
[1] 主軸に取り付けられ、一体として回転するツールホルダの基準状態からの変位を、上記ツールホルダのフランジ部の外周形状を測定するセンサの測定データを上記基準状態における測定データと比較して検出する、変位検出方法であって、それぞれの上記測定データは、ツールホルダを所定角度で静止させた後に回転させ、上記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、上記ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した上記切り欠きから上記センサによるそれぞれの上記測定データを得るまでの時間Tと、それまでのカウント数Nとを一致させて取得されたものである、変位検出方法。
[2] 上記比較が、それぞれの上記測定データをフーリエ解析し、1山成分の振幅と位相とから算出したそれぞれの偏心ベクトルの比較により実施される、[1]に記載の変位検出方法。
[3] 主軸に取り付けられ、一体として回転するツールホルダの基準状態からの変位を検出する変位検出装置であって、上記ツールホルダのフランジ部の外周形状を測定するセンサの測定データを上記基準状態における測定データと比較して変位を検出する、データ比較部と、上記測定データの取得時機を調整する位相調整部と、を有し、上記位相調整部は、上記ツールホルダを所定角度で静止させた後に回転させ、上記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、上記ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した上記切り欠きから上記センサによるそれぞれの上記測定データを得るまでの時間Tと、それまでのカウント数Nとを一致させてそれぞれの上記測定データを前記センサに取得させる、変位検出装置。
[4] 上記データ比較部は、それぞれの上記測定データをフーリエ解析し、1山成分の振幅と位相とから偏心ベクトルを算出して比較する、[3]に記載の変位検出装置。
[5] [3]又は[4]に記載の変位検出装置を備える工作機械。
本発明の他の構成は、工具が取り付けられたツールホルダが主軸に正常に装着されたかを示すチャックミスの判定を行うツールホルダ装着状態検出方法であって、前記ツールホルダのフランジ部における外周形状を測定するセンサを設け、セットアップ時は、前記チャックミスがない状態で前記ツールホルダを前記主軸へ装着し、前記工具の回転を開始してから前記センサの信号変化より、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した前記切り欠きから前記センサによるセットアップ時測定データを得るまでの時間Tとそれまでのカウント数Nを記憶し、加工時は、前記工具の回転を開始してから前記センサの信号変化より、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記セットアップ時に記憶された前記カウント数N及び前記時間Tを合わせて前記センサによる加工時測定データを得て、前記セットアップ時測定データと前記加工時測定データとに基づいて前記チャックミスの判定を行うツールホルダ装着状態検出方法である。
また、上記のツールホルダ装着状態検出方法において、前記セットアップ時測定データをフーリエ解析し、1山成分の振幅と位相を算出した基本偏心ベクトルと、前記加工時測定データを前記フーリエ解析し、1山成分の加工時振幅と加工時位相を算出した測定偏心ベクトルと、に基づいて偏心量を求め、チャックミスの判定を行うことが望ましい。
さらに、上記のツールホルダ装着状態検出方法において、前記切り欠きを補間した前記セットアップ時測定データと加工時測定データとを前記フーリエ解析することが望ましい。
さらに、上記のツールホルダ装着状態検出方法において、前記セットアップ時測定データと前記加工時測定データとは、前記ツールホルダを少なくとも1周させて得ることが望ましい。
さらに、上記のツールホルダ装着状態検出方法において、前記センサは、前記主軸が取り付けられたヘッドに取り付けられた渦電流センサとしたことが望ましい。
さらに、上記のツールホルダ装着状態検出方法において、前記センサは、前記主軸が取り付けられたヘッド以外の位置に取り付けられた光学式あるいはレーザ式とされたことが望ましい。
さらに、上記のツールホルダ装着状態検出方法において、前記偏心量の測定を複数回実施し、平均値を真の測定偏心量とみなすことを特徴とすることが望ましい。
また、本発明は、ツールホルダが主軸に正常に装着されたかを示すチャックミスの判定を行うツールホルダ装着状態検出装置において、前記ツールホルダのフランジ部における外周形状を測定するセンサと、セットアップ時に、前記チャックミスがない状態で前記ツールホルダを前記主軸へ装着し、工具の回転を開始してから前記センサの信号変化より、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した前記切り欠きから前記センサによるセットアップ時測定データを得るまでの時間Tとそれまでのカウント数Nを記憶する手段と、加工時に、前記工具の回転を開始してから前記センサの信号変化より、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記セットアップ時に記憶された前記カウント数N及び前記時間Tを合わせて前記センサによる加工時測定データを得る手段と、前記セットアップ時測定データと前記加工時測定データとに基づいて前記チャックミスの判定を行うデータ処理装置と、を備えたものである。
さらに、上記のツールホルダ装着状態検出装置において、前記セットアップ時測定データをフーリエ解析し、1山成分の振幅と位相を算出した基本偏心ベクトルを求める手段と、前記加工時測定データを前記フーリエ解析し、1山成分の加工時振幅と加工時位相を算出した測定偏心ベクトルを求める手段と、前記基本偏心ベクトルと、前記測定偏心ベクトルと、に基づいて偏心量を求め、前記チャックミスの判定を行う手段と、を備えたことが望ましい。
また、本発明は、ツールホルダが主軸に正常に装着されたかを示すチャックミスの判定を行うツールホルダ装着状態検出装置が組み込まれた工作機械において、前記ツールホルダのフランジ部における外周面の形状を測定するセンサと、セットアップ時に、前記チャックミスがない状態で前記ツールホルダを前記主軸へ装着し、工具の回転を開始してから前記センサの信号変化より、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した前記切り欠きから前記センサによるセットアップ時測定データを得るまでの時間Tとそれまでのカウント数Nを記憶する手段と、加工時に、前記工具の回転を開始してから前記センサの信号変化より、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記セットアップ時に記憶された前記カウント数N及び前記時間Tを合わせて前記センサによる加工時測定データを得る手段と、前記セットアップ時測定データと前記加工時測定データとに基づいて前記チャックミスの判定を行うデータ処理装置と、を備えたものである。
本発明によれば、渦電流センサに限らないセンサ方式、ツールホルダのフランジ外周面の切り欠き数、回転方向の対称性、フランジ部11Bの形状(特に、測定部分の肉厚)の変化、磁化、焼き入れ深度、刻印、環境等に係らず、基準状態、及び、測定時における測定データの位相を簡単、かつ、高精度に合わせることが可能となり、ツールホルダの主軸へのチャックミス(装着異常)等に起因して起こるツールホルダの基準状態からの変位の検出精度が向上する。
例えば、基準状態をチャックミスが起こらない「セットアップ時」とすれば、チャックミスがない状態でツールホルダを主軸へ装着し、工具の回転を開始してからセンサの信号変化より、フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した切り欠きからセンサによるセットアップ時(基準状態における)測定データを得るまでの時間Tとそれまでのカウント数Nを記憶し、変位の検出時を「加工時」とすれば、セットアップ時と同じ手順でカウント数N及び時間Tを合わせて(一致させて)加工時(変位検出時)の測定データを得るので、これらの測定データの位相を、データ波形を比較せずとも、簡単に合わせることができる。
本発明の一実施の形態に係るツールホルダ装着状態検出装置のブロック図である。 図1のツールホルダとデータ処理装置との関係を示す平面図である。 一実施の形態におけるセットアップ時のフローチャートである。 一実施の形態におけるセットアップ時及び加工時のタイムチャートである。 一実施の形態における加工時のフローチャートである。 一実施の形態における1周分の測定データ(変位)を示すグラフである。 一実施の形態における偏心量を判定するフローチャート(図5の続き)である。 本発明の一実施形態に係る変位検出装置を含む工作機械の機能ブロック図である。 変位検出装置を用いて基準状態における測定データを得るためのフローチャートである。 変位検出方法のフローチャートである。
(用語の説明)
まず、本明細書において使用される用語について説明する。なお、以下に説明のない用語については、本願出願時における技術常識に基づいて普通に理解される意味で使用されるものとする。
本明細書において「基準状態」とは、変位検出のための相対的な基準となる状態を意味する。すなわち、本発明の変位検出方法は、この基準状態におけるツールホルダの位置からの相対的な変位を検出するものである。基準状態としては、特に限定されず、いかなる状態であってもよいが、検出したツールホルダの変位をチャックミスの判定に用いる場合には、基準状態はチャックミスが発生しない状態であることが好ましい。このような状態としては、工作機械のセットアップ時、すなわち、ワークの加工前の状態であることが好ましい。
しかし、本明細書における変位検出方法の基準状態は上記に限定されず、すでにワークの加工が始まった状態、及び、ツールホルダに工具が装着されていない状態(そのようなツールホルダを装着した状態)等であってもよい。
また、本明細書において「変位」とは、基準状態におけるツールホルダの回転位置からの相対的な位置の変化を意味し、典型的には、ツールホルダの回転軸が基準状態と比較して傾いたり、移動したりして、その回転に「振れ」が生じている状態を意味する。
また、本明細書において「測定データA」とは、基準状態における測定データを意味し、「測定データB」とは、変位検出時における測定データを意味する。測定データAと測定データBとを比較することで、ツールホルダの変位が検出できる。
(ツールホルダ装着状態検出方法、及び、その装置)
基準状態と比較してツールホルダが変位する典型例として、セットアップ時である基準状態に対して、加工時(変位検出時)にツールホルダのチャックミスが生じた状態が挙げられる。
以下では、基準状態をセットアップ時とし、加工時においてツールホルダに変位が発生したかどうかを検知し、これをツールホルダのチャックミス判定に用いるという、本発明の変位検出方法の応用例の1つ、及び、これを検出するための装置の構成について説明する。
マシニングセンタ(MC)は、ワークの取り付けを変えずに、フライス・穴あけ・中ぐり・ねじ立てなど種々の加工を行う数値制御工作機械である。工具マガジンは、多数の切削用の工具9を格納し、コンピュータ数値制御の指令によって工具9を自動的に交換して加工を行う。加工を主目的としているため、マシニングセンタ(MC)の設置された環境には、微粒子であるオイルミスト、粉塵があり、さらに、ワーク及びスピンドル周辺にはゴミ、切粉が存在する。
図1は、工作機械に組み込まれたツールホルダ装着状態検出装置50の一実施の形態を示すブロック図であり、ツールホルダ11は側面図を表している。ツールホルダ装着状態検出装置50は、(図示しない)ATC装置で主軸26に装着されたツールホルダ11のチャックミス(装着異常)を自動で検出する装置であり、主として測定手段であるセンサ1と装着状態判定手段であるデータ処理装置3とで構成されている。
工具9は、ATC装置によって、主軸26に自動で着脱される。着脱は、マシニングセンタ(MC)の制御装置22がプログラムを実行することによって行われる。工具9は、ツールホルダ11に一体的に装着可能とされる。ツールホルダ11の嵌合部11Aは、主軸26の円錐状の被嵌合部26Aに押し付けられる。これにより、嵌合部11Aが被嵌合部26Aと密着して装着(チャッキング)がなされ、工具9が主軸26に固定される。
センサ1は、ツールホルダ11のフランジ部11Bの外周面までの距離dを電気信号として測定する測定手段である。センサ1は、渦電流センサであってよい。センサ1は、ある特定の測定点からツールホルダ11の外周面までの距離dを測定できるセンサ1であれば渦電流センサに限らず、他のセンサ方式を用いてもよい。この場合、センサ1は、非接触式のセンサに限らず、接触式のセンサを用いてもよい。また、マシニングセンタ(MC)は、多数の工具9を加工内容に応じて使用する。そのため、工具9の品数に応じてツールホルダ11も増加し、センサ1は、それら多数のツールホルダ11に対応できることが求められる。
渦電流センサは高周波磁界を利用し、距離dを測定するセンサであり、内部のコイルに高周波電流を流して、高周波磁界を発生させる。そして、渦電流センサの特徴は、リニアライズ回路で直線性の補正が必要とされ、距離dが短い必要あるが、水・油などの飛散する悪環境下に強いことにある。
光学式は、可視光線、赤外線などを投光部から発射し、検出物体によって反射する光の変化を受光部で検出し出力信号を得る。レーザ式は、可視光線、赤外線に代えてレーザ光を用いる。そして、光学式、レーザ式の特徴は、距離dを長くすることができるが、水・油などの飛散する悪環境下に弱いことにある。接触式は、水・油などの飛散する悪環境下に強いが、任意の位置に設置することが困難である。したがって、センサ1は、水・油などの飛散する悪環境下であってもツールホルダ11の主軸26へのチャックミス(装着異常)が確実に検出できれば、設置位置が比較的に自由な光学式、レーザ式を用いることができる。
センサ1として渦電流センサを使用した場合は、測定距離が短いので、主軸26が取り付けられたヘッド27取り付けることが望ましい。
渦電流センサを用いる場合、フランジ部11Bの外周面を測定すると、磁化や測定部分の肉厚(面積)の影響などにより、測定される形状、すなわち、距離dの変化から推測されるフランジ部11Bの外周形状が、真円とならない場合がある。したがって、センサ1として渦電流センサを使用した場合は、単に、加工時にのみフランジ部11Bの外周面を測定するだけでは、偏心量を算出する際に誤差を含んでしまうことがあり、検出精度が低下するおそれがある。
データ処理装置3は、センサ1で測定された距離dに基づき、ツールホルダ11の装着状態を検出するもので、A/Dコンバータ4、CPU6、メモリ5、入出力回路7等を備えている。A/Dコンバータ4は、センサ1から出力された距離dを示す電気信号を、ディジタル信号に変換してCPU6に出力する。CPU6は、このディジタル信号に変換されたセンサ1の測定データに基づいて、偏心量を求める。そして、その算出した偏心量と許容値とを比較し、偏心量が許容値を超えている場合にチャックミス(装着異常)と判定する。そして、データ処理装置3は、入出力回路7を介してマシニングセンタ(MC)を制御する制御装置22にその結果を出力する。
図2は、フランジ部11Bに切欠きを有するツールホルダ11の平面図である。
ツールホルダ11の形状は、嵌合部11Aのみならず、フランジ部11Bの外周形状も規格化されて、略同一となっている。したがって、フランジ部11Bの外周形状を測定することにより、ツールホルダ11の装着状態が分かる。外周形状は、ツールホルダ11を1回転させて距離dを測定することにより求められる。一般的に、ツールホルダ11のフランジ部11Bの外周面は、図2に示されるようにチャックのための切り欠き11Cが二つ形成されていることが多い。
CPU6は、チャックミス(装着異常)がない状態で装着されたツールホルダ11のセットアップ時測定データからツールホルダ固有の基本偏心ベクトルを求め、記憶しておく。そして、CPU6は、基本偏心ベクトルと加工時測定データから測定偏心ベクトルを求め、セットアップ時測定データとを比較して真の偏心ベクトルを算出する。そして、CPU6は、真の偏心ベクトルから偏心量を求め、チャックミス(装着異常)の判定を行う。上記の様にすることで、センサ1が渦電流センサである場合でも、磁化や肉厚等に起因する上述のような誤差を生じさせにくくなる。
ところで、セットアップ時測定データと、加工時測定データとを比較するためには、これらの位相(比較の開始点となるツールホルダの角度)を揃える必要がある。ツールホルダ11に切り欠き11Cがある場合、この切り欠き11Cによる検出信号をもとに位相を補正する(具体的には0度の位置を決める)こともできる。
しかし、切り欠き11Cが2つ以上ある場合、2つある切り欠き11Cのうちいずれをもとに位相を補正する(いずれが0度に位置する)かを決定する必要がある。しかしながら、センサ1による測定は、ゆらぎやタイミングのずれが生じる恐れがある。また、切り欠き11Cが180度対称な位置にあった場合は、180度の回転対称に近い測定データが発現し、単に、セットアップ時測定データと加工時測定データの比較のみで位相を決めることは困難である。
図3は、セットアップ時のフローチャートであり、図4はセットアップ時及び加工時のタイムチャートである。加工時は、セットアップが行われた後にATC装置で工具9が取り付けられたツールホルダ11が主軸26に装着されて開始される。図4において、横軸は時間であり、上段はセンサ1による測定データの概念的な変化、下段はツールホルダ11の回転角度及び切り欠き11Cの向きを示している。また、S32等は、図3のフローチャートのステップとの対応関係を示している。
始めに基本偏心ベクトルを求めるためにセットアップを行う(ステップS30)。セットアップは、マシニングセンタ(MC)による加工開始前に行われる。まず、ツールホルダ11が主軸26に装着される(ステップS31)。加工開始前であることから、切り粉は、嵌合部11Aと被嵌合部26Aの間に挟み込まれることはなく、ツールホルダ11は主軸26にチャックミス(装着異常)なく装着される。制御装置22は、この状態でツールホルダ11を回転させ、工具9を所定角度で静止させる(ステップS32)。
次に、制御装置22は、切り欠き11Cのカウントを開始するためのトリガー信号をデータ処理装置3へと出力し(ステップS33)、ツールホルダ11及び工具9の回転を開始する(ステップS34)。センサ1による測定データは、図4に示すように、センサ方式に関らず、切り欠き11Cの位置で図4に示すようにONからOFFに変化する。データ処理装置3は、センサ1の信号変化より、切り欠き11Cのカウントを開始する(ステップS35)。なお、チャックミス判定のための距離dの測定はツールホルダ11及び工具9の回転が安定した時点から開始する。
データ処理装置3は、ツールホルダ11を少なくとも1周した後、最後に検出した切り欠き11Cからセンサ1によるセットアップ時測定データを得るまでの時間Tとそれまでのカウント数Nを記憶する(ステップS36)。言い換えれば、セットアップ時の測定を開始した位置における切り欠きカウント数N、及び、最後に切り欠きを検出してから経過した時間Tを記憶する。
セットアップ時測定データは、ステップS36後のセンサ1の測定データである。この測定データは、ツールホルダ11を少なくとも1周又は精度を向上させるために複数周回転させて平均して得ることでも良い。
工具9を所定角度で静止させて、ツールホルダ11の回転を開始しても、チャックミス判定のための測定は、回転が安定してから行う。そのため、セットアップ時測定データと加工時測定データとの比較を行うためには、回転が安定した状態で、つまり、ツールホルダ11が回転した状態において、測定開始位置を把握し、これを揃える必要がある。
本検出方法では、この測定開始位置の決定に、切欠き11Cのカウント数Nと、最後に切り欠きを検出してから経過した時間Tを利用する。このようにすることで、正確に測定開始位置を把握できる。
なお、上記に加えて、セットアップ測定時の波形と、加工時測定データの波形とを比較して、その形状から、例えば、図3に記載されたような切り欠き11Cによる検出信号をもとに位相を微調整してもよい。切り欠き11Cのカウント数Nと、最後に切り欠きを検出してから経過した時間Tを利用することで、ツールホルダ11に切り欠き11Cが複数あったとしても、最終的な微調整に使用すべき、切り欠き由来の検出信号が決定できるため、波形を比較することで、容易に位相の補正を行うことができる。
時間Tは、最後に切り欠きを検出してから経過した時間であるため、そもそも短時間であり、かつ、ほぼ回転が安定した状態であるため、セットアップ時、及び、後述する加工時におけるばらつきは殆どない。また、回転が安定するまでのカウント数Nも同様に、セットアップ時、及び、後述する加工時における差はない。
上記のように測定開始位置を決定することで、例えば、単に回転開始から測定開始までの時間T(より長く、かつ、よりばらつきが発生する可能性が高い)により測定開始の位置を決定するよりも、より精度が向上する。
図6は、1周分の測定データの例を示すグラフであり、横軸は位相、縦軸はセンサ1によって測定された変位を示している。ツールホルダ11のフランジ部11Bに切り欠き11Cが2箇所ある場合、1周分の測定データは、グラフ表示すると、例えば図6(a)に示されるようになる。同図に示されるように、測定データは二つの切り欠き11Cの部分で急激に変化する。図中で、略矩形状に凹んでいる部分が切り欠き11Cに由来する信号である。
図3に戻って説明すると、データ処理装置3は、切り欠き11Cがある場合、ステップS36で得られたセットアップ時測定データから補間手段により正弦波を復元し、記憶する(ステップS37)。図6(b)は、切り欠き11Cの部分をCPU6における補間手段によって直線補間した後の測定データをグラフ表示したものである。なお、測定データの補間は、スプライン補間、ラグランジュ補間、多項式補間、ニュートン補間、ネヴィル補間、及び、連分数補間などの補間方法に基づいて算出しても良い。
次に、データ処理装置3は、補間されたセットアップ時測定データに対してフーリエ解析(FFT解析)を行い、それぞれの1山成分の振幅と位相を算出して記憶する(ステップS38)。得られた振幅と位相は、基本偏心量、位相は基本偏心方向とする基本偏心ベクトルとされ(ステップS39)、記憶してセットアップを終了する。
図5は、加工時のフローチャートであり、ステップS40からステップS45までは、図3で示したセットアップ時のフローチャートと同じ手順で行うので説明を省略する。データ処理装置3は、セットアップ時にカウントして記憶されたカウント数N及び時間Tを一致させてセンサ1による加工時測定データを得る(ステップS46)。加工時測定データは、セットアップ時測定データと同様にツールホルダ11を1周又は精度を向上させるために複数周回転させて平均しても良い。
なお、上記に加えて、セットアップ時測定データ、及び、加工時測定データ(いずれも補間前)のデータをそれぞれ用いて、切り欠き11Cの検出信号をもとに、位相を補正(0度の位置を補正)してもよい。
次に、セットアップ時と同様に、データ処理装置3は、切り欠き11Cがある場合、ステップS46で得られた加工時測定データから補間手段により正弦波を復元し、記憶する(ステップS47)。次に、データ処理装置3は、補間された加工時測定データに対してフーリエ解析(FFT解析)を行い、それぞれの1山成分の加工時振幅と加工時位相を算出して記憶する(ステップS48)。得られた加工時振幅と加工時位相は、測定偏心量、測定偏心方向とする測定偏心ベクトルとして求める(ステップS49)。
図7は、偏心量を判定するフローチャートであり、図5のフローチャートに続いて行われる。チャックミス(装着異常)は、図3に示すようにチャックミスがない状態で装着されたツールホルダ11の偏心量を示す基本偏心ベクトルと、図5の加工時測定データから得られた測定偏心ベクトルとに基づいて行う。偏心量は、基本偏心ベクトルと、測定偏心ベクトルと、の差をベクトル演算により真の偏心ベクトルを算出し、この大きさとして求められる(ステップS50)。
データ処理装置3は、求めた偏心量に基づきチャックミス(装着異常)の判定を行う(ステップS51)。この結果、正常にチャックされたと判定された場合(偏心量≦許容値)は(ステップS52)、そのまま加工を開始する(ステップS53)。偏心量>許容値と判定された場合は、チャックミス(装着異常)とする(ステップS54)。この場合、データ処理装置3は、制御装置22へツールホルダ11の装着やり直し、あるいは要確認を指示する(ステップS55)。
本実施の形態によれば、チャックミス(装着異常)の判定は、ツールホルダ11固有の偏心量を取り除いた真の偏心量に基づいて行われるので、より正確な検出を行うことができる。また、本実施の形態は、真の偏心ベクトルから、偏心方向が特定できるので、噛み込んだ切り粉等の位置も特定することができる。
なお、偏心量の測定は1回だけに限らず、偏心量の測定を複数回実施し、その平均値を真の偏心量とみなしてチャックミス(装着異常)の判定を行うようにしてもよい。これにより、信頼性が向上し、より正確に判定を行うことができる。
セットアップ時測定データと加工時測定データとは、元々フランジ部11Bの外周面をセンサ1で測定したデータに基づいていることより、元々、近似した波形である。したがって、セットアップ時と加工時とでカウント数N及び時間Tを合わせてそれぞれ測定データを得れば、それ以上複雑な処理をすることなく、両者の位相を補正することができる。
また、測定データは、切り欠き11Cが二つで180度対称な位置にあった場合、回転方向の対称となるパターンが発現する。しかしながら、データ処理装置3は、セットアップ時と加工時とで測定データを得るまでのカウント数Nを同じとするので、この場合でも区別が可能となり、セットアップ時測定データと加工時測定データとの比較のみで位相を決めることができる。さらに、セットアップ時と加工時とでカウント数Nを同じとすることは、切り欠き11Cが二つの場合でなく、回転方向の対称性が高い三つ以上の切り欠き11Cを持つ場合にも適用が可能となる。
測定データは、振れが発生するとフーリエ解析した基本波周波数成分(1次成分)が大きく変化する。また、図4及び図6に示すセンサ1による測定データの変化は、センサ方式によって緩慢となる。例えば、渦電流センサは、距離dが長くなると図4の測定データにおけるONとOFFの差(振幅)が小さくなり明確でなくなる。しかしながら、データ処理装置3は、センサ1の信号変化より、切り欠き11Cのカウントをするだけなので、振幅情報の影響は受けないので正確な位相を検出できる。同様に、センサ1を光学式、レーザ式とした場合は、悪環境下で測定データのONとOFFの差(振幅)が小さくなり明確でなくなるが、切り欠き11Cのカウントをする際に波形整形回路などによりパルス整形すれば正確なカウントができる。
また、本実施の形態では、ツールホルダ11の外周の変位を測定し、その測定データをフーリエ解析して1山成分を抽出し、その振幅値を求めることにより、偏心量を取得するようにしているが、偏心量を取得する方法は、この方法に限定されるものではない。例えば、偏心量は測定データの最大値と最小値とを求め、その差から偏心量を算出しても良い。
また、本実施の形態では、センサ1の測定点としてツールホルダ11のフランジ部11Bを使用しているが、センサ1の測定点は、これに限定されるものではなく、測定状況等に応じて適宜変更してもよい。例えば、測定点は工具9の刃先(被加工物を切削する個所)としても良い。工具9の刃先を測定点とすることは、直接加工を行う部分の偏心量を測定できることになるので、より確実にチャックミスを検出することができる。ここで最終的には、補間をしない元のセットアップ時測定データと補間をしない元の加工時測定データを基に工具の位置調整を行ってもよい。
また、センサ1を渦電流センサとした場合は、主軸26が取り付けられたヘッド27に取り付けることが測定距離を短くする上で望ましいが、センサ1の設置場所は、これに限定されるものではない。特に、本実施の形態によれば、水・油などの飛散する悪環境下に弱い光学式、レーザ式であっても、距離dを長くしてセンサ1をヘッド27以外の所定の位置に固定して取り付けることができる。したがって、センサ1を光学式、レーザ式とした場合は、任意の位置に設置することが可能となる。特に、センサ1は、より安定した高精度な測定を確保するためにクーラントの影響を受けない位置(クーラントが掛からない位置)に設置することが容易となる。
また、本実施の形態は、マシニングセンタ(MC)に適用したとして説明したが、ATC装置を用いる工作機械であれば、いかなる工作機械にも適用することができる。
(変位検出装置、及び、これを備える工作機械)
図8は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置を備える工作機械の機能ブロック図である。工作機械100は、変位検出装置101と、主軸が取り付けられたヘッド27と、センサ1とを有する。ヘッド27には、主軸に取り付けられたツールホルダ11と、ツールホルダ11に取り付けられた工具9とが備えられている。なお、センサ1、ヘッド27、ツールホルダ11、及び、工具9等の構造については、ツールホルダ装着状態検出装置50を備える工作機械と同様であるため、説明を省略する。
変位検出装置101は、制御部102と、記憶部103と、通信部104と、入出力部105と、位相調整部106と、データ比較部107とを有する。
制御部102は、ハードウェアとして、プロセッサを含み、後述する記憶部103の記憶デバイスに記憶されたプログラムをプロセッサに実行させ、変位検出装置101の各部の制御を行う。
制御部102が有するプロセッサは、マイクロプロセッサ、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC(application-specific integrated circuit)、FPGA(field programmable gate array)、及び、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)等である。
記憶部103は、ハードウェアとして、記憶デバイスを含み、プロセッサの作業エリアの提供、変位検出装置101の各部を制御するためのプログラムの記憶/読み出し、センサ1の測定データの記憶/読み出し、及び、時間T・カウント数Nの記憶/読み出し等を行う。
記憶部103が有する記憶デバイスは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、及び、SSD(Solid State Drive)等である。
通信部104は、通信インタフェースを含んで構成され、制御部102の制御のもと、変位検出装置101と外部ネットワーク・外部機器との間で各種データの送受信を行う。また、入出力部105は、入出力インタフェースを含んで構成され、変位検出装置101への指示の入力を受け付けたり、変位検出結果を出力したりする。
入出力部105に接続される入力デバイスは、キーボード、マウス、スキャナ、及び、タッチパネル等でよい。また、入出力部105に接続される表示デバイスは、液晶ディスプレイ、及び、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等でよい。また、表示デバイスは、入力デバイスと一体として構成されていてもよい。この場合、表示デバイスがタッチパネルディスプレイであって、GUI(Graphical User Interface)を提供する形態が挙げられる。
なお、変位検出装置101は、通信部104、及び、入出力部105を有していなくてもよい。
プロセッサ、記憶デバイス、通信インタフェース、及び、入出力インタフェースを備える変位検出装置101は、典型的にはコンピュータである。変位検出装置101は、工作機械100を制御するコンピュータ(図示せず)とは別に設けられているが、上記に限定されず、本発明の工作機械100を制御する機能を更に有していてもよい。言い換えれば、工作機械100を制御するコンピュータが、変位検出装置101としての機能を有していてもよい。
次に、位相調整部106は、記憶部103の記憶デバイスに記憶されたプログラムを制御部102のプロセッサが実行して実現される機能である。
位相調整部106は、ツールホルダ11のフランジ部の外周形状を測定するセンサ1を制御して、測定データ(測定データA、B)の取得の時機を調整する。なお、センサ1の構造・機能は、ツールホルダ装着状態検出装置50が有するセンサと同様であり、説明を省略する。
位相調整部106は、基準状態(例えば、「セットアップ時」)において、ツールホルダを所定角度で静止させた後に回転させ、フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、ツールホルダを少なくとも1周した後、回転が安定した状態で測定データ(測定データA)をセンサに取得させる。位相調整部106は、このときの最後に検出した切り欠きから測定データAを得るまでの時間T(T)と、それまでのカウント数N(N)とを併せて検出させ、記憶部103に記憶させる。
そして、変位の検出時(例えば「加工時」)において、ツールホルダを所定角度で静止させた後に回転させ、フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、ツールホルダを少なくとも1周した後、センサに測定データBを取得させる。この際、最後に検出した切り欠きからセンサによる測定データを得るまでの時間Tと、それまでのカウント数Nとを、時間T、及び、カウント数Nと一致させる。
言い換えれば、時間T・カウント数Nを、時間T・カウント数Nと一致させて、測定データBをセンサに取得させる。
位相調整部106は、測定データA、Bの取得に際し、ツールホルダを所定角度(同一角度)で静止させた後に回転させ、フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した切り欠きからセンサによるそれぞれの測定データを得るまでの時間Tと、それまでのカウント数Nとを一致させる。これにより、得られる測定データの位相合わせが不要になる。なお、上記位相合わせの詳細については、すでに説明したツールホルダ装着状態検出装置50における位相合わせと同様のため、説明を省略する。
ツールホルダ11の変位は、外周形状を測定するセンサ1の測定データの変化(ずれ)を測定することで検出できる。しかし、測定データのずれを測定するためには、これらの測定データの位相を揃える必要がある。
変位検出装置101は、位相調整部106を有しているため、相互に変化が生じているかもしれず、どこを基準に比較すべきか不明確な測定データであったとしても、波形をもとにした困難な位相合わせを行う必要がなく、位相が揃った測定データを簡単に取得できる。
データ比較部107は、記憶部103の記憶デバイスに記憶されたプログラムを制御部102のプロセッサが実行して実現される機能である。データ比較部107は、測定データAと測定データBとを比較して変位を検出する。
データ比較部107により検出される変位としては、一形態として、すでに説明した真の偏心量であることが好ましい。測定データA、Bから真の偏心量を計算することで、ツールホルダ11に固有の偏心をキャンセルしたうえで、相対的な変位を検出できる。
測定データA、Bから真の偏心量を計算する方法はすでに説明したとおりであるが、その一例を、再度概略的に説明する。データ比較部107は基準状態(例えば、「セットアップ時」)における測定データAを必要に応じて補完し、FFT解析によって、1山成分の振幅と位相とを算出する。更に、データ比較部107は、例えば1山成分の振幅と位相とから、偏心ベクトル、及び、その大きさである偏心量を算出する。
次に、データ比較部107は、変位検出時(例えば、「加工時」)における測定データBを必要に応じて補完し、FFT解析によって、1山成分の振幅と位相とを算出する。更に、データ比較部107は、測定データAの処理と同様の方法で、偏心ベクトル、及び、偏心量を算出する。
データ比較部107は、上記それぞれの偏心ベクトルとの差をベクトル演算により算出し、真の偏心量(相対的な偏心量)を算出する。上記真の偏心量は、ツールホルダ11の基準状態からの変位を反映しており、例えば、真の偏心量を予め定めた閾値と比較することによって、ツールホルダ11の変位の有無を判定できる。
(変位検出方法)
次に、変位検出装置101を用いた変位検出方法について説明する。図9、及び、図10は、変位検出方法のフロー図である。
まず、図9は、変位検出のための準備として、基準状態における測定データAを得るためのフロー図である。
測定データAの取得方法は、すでに説明した「セットアップ時」における測定データの取得方法と同様である。
まず、ステップS70として、ツールホルダ11を所定角度で静止させる。静止させる角度はいずれであってもよく、測定データBの取得前の静止角度と同じであればよい。
基準状態は、変位検出の基準となるべき状態であり、一形態として加工前、すなわち、工作機械のセットアップ時に行われることが好ましいが、加工開始後であってもよい。
次に、ステップS71として、ツールホルダ11の回転を開始する。ツールホルダ11の回転が開始すると切り欠きの通過に伴いセンサ1の出力がオンからオフに変化するために、切り欠きのカウントが可能になる。ツールホルダ11の回転が開始されると、切り欠きのカウントも開始される(ステップS72)。
次に、ステップS73として、ツールホルダ11の回転が安定すると、測定データAが取得される。このとき、最後に検出された切り欠きの検出後、測定データの取得までの時間Tも取得される。また、測定データ取得までの切り欠きのカウント数Nも取得される。すなわち、本ステップでは、測定データA、時間T(T)、及び、カウント数N(N)が取得される。
ここまで、測定データAの取得フローについて説明したが、本発明の実施形態に係る変位検出方法は、上記の測定データAの取得手順を含んでいなくてもよい。すなわち、測定データA、時間T、及び、カウント数Nは、予め取得され記憶されていてもよい。この場合、測定データAを新たに取得せず、予め取得された測定データA、時間T、及び、カウント数Nを変位検出に使用すればよい。なお、測定データA、及び、測定データBの取得に用いられるツールホルダ11は同一である。
また、ステップS73の後に、測定データをフーリエ解析(FFT解析)し1山成分の振幅と位相を算出してもよい。また、この振幅と位相とから、偏心量、偏心ベクトルを求めてもよい。
図10は、ツールホルダの変位を検出する変位検出方法のフロー図である。
まず、ステップS80として、ツールホルダを所定角度で静止させる。この角度は、測定データAの取得の際と同じ角度である。
変位検出の時機の一形態は、測定データAがセットアップ時に取得されたものである場合、ワークの加工中、又は、加工後である。すでに説明したとおり、マシニングセンタ等の工作機械では、工具を交換しながらワークの加工が行われる。そうすると、加工時、又は、加工後にはチャック部分に切屑等が挟まったりしてチャック不良が生じ、ツールホルダ11が偏心することがある。本変位検出方法は、上記のようなツールホルダ11の基準状態からの相対的な偏心(変位)を高精度かつ簡単に検出できる。
次に、ステップS81として、ツールホルダの回転を開始し、それに伴い、切り欠きのカウントも開始する(ステップS82)。
次に、ステップS83として、測定データBが取得される。
測定データBは、時間T、及び、カウント数Nを、時間T、及び、カウント数Nと一致させて取得される。すなわち、ツールホルダ11を所定角度で静止した後、回転を開始し、カウント数Nに達するまで回転し、カウント数Nに達したら、そこから時間Tが経過したときに、測定データBが取得される。
本変位検出方法は、ステップS83を有しているために、取得される測定データA、及び、測定データBの位相が揃った状態となる。基準状態と検出時との間に、チャックミス等によってツールホルダ11の変位が生じ、測定データの波形に変化が生じている場合、これらの波形を比較して位相を揃えるのは困難なことが多いが、本変位検出方法では、波形を直接比較する必要なしに、位相合わせが行える(すでに位相が揃った測定データが取得される)。
次に、ステップS84として、測定データA、Bから真の偏心量が計算される。真の偏心量の計算方法はすでに説明したとおりである。これにより、ツールホルダ11の変位を検出することができる。検出された変位(真の偏心量)はすでに説明したツールホルダの装着状態の判定等に使用することができる。
なお、すでに説明したとおり、偏心量は種々の計算方法を採用することもでき、例えば、測定データの最大値と最小値とを求め、その差から偏心量を算出しても良い。
1…センサ
3…データ処理装置
4…A/Dコンバータ
5…メモリ
6…CPU
7…入出力回路
9…工具
11…ツールホルダ
11A…嵌合部
11B…フランジ部
11C…切り欠き
22…制御装置
26…主軸
26A…被嵌合部
27…ヘッド
50…ツールホルダ装着状態検出装置
100…工作機械
101…変位検出装置
102…制御部
103…記憶部
104…通信部
105…入出力部
106…位相調整部
107…データ比較部
N…カウント
d…距離

Claims (5)

  1. 主軸に取り付けられ、一体として回転するツールホルダの基準状態からの変位を、
    前記ツールホルダのフランジ部の外周形状を測定するセンサの測定データを前記基準状態における測定データと比較して検出する、変位検出方法であって、
    それぞれの前記測定データは、ツールホルダを所定角度で静止させた後に回転させ、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した前記切り欠きから前記センサによるそれぞれの前記測定データを得るまでの時間Tと、それまでのカウント数Nとを一致させて取得されたものである、変位検出方法。
  2. 前記比較が、それぞれの前記測定データをフーリエ解析し、1山成分の振幅と位相とから算出したそれぞれの偏心ベクトルの比較により実施される、請求項1に記載の変位検出方法。
  3. 主軸に取り付けられ、一体として回転するツールホルダの基準状態からの変位を検出する変位検出装置であって、
    前記ツールホルダのフランジ部の外周形状を測定するセンサの測定データを前記基準状態における測定データと比較して変位を検出する、データ比較部と、
    前記測定データの取得時機を調整する位相調整部と、を有し、
    前記位相調整部は、前記ツールホルダを所定角度で静止させた後に回転させ、前記フランジ部に形成された切り欠きのカウントを開始し、前記ツールホルダを少なくとも1周した後、最後に検出した前記切り欠きから前記センサによるそれぞれの前記測定データを得るまでの時間Tと、それまでのカウント数Nとを一致させてそれぞれの前記測定データを前記センサに取得させる、変位検出装置。
  4. 前記データ比較部は、それぞれの前記測定データをフーリエ解析し、1山成分の振幅と位相とから偏心ベクトルを算出して比較する、請求項3に記載の変位検出装置。
  5. 請求項3又は4に記載の変位検出装置を備える工作機械。
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