JP2024021122A - リードフレーム材、リードフレーム材の製造方法、および半導体パッケージ - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂のシェア強度およびワイヤボンディング性に加えて熱衝撃時における樹脂密着性が良好なリードフレーム材およびその製造方法、ならびにリードフレーム材を用いた半導体パッケージを提供する。【解決手段】リードフレーム材は、導電性基材と、前記導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部、および前記基部の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部を有する表面被膜とを備え、前記表面被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察して取得した画像において、前記複数の凸部の各々の面積は1μm2以上50μm2以下であり、前記複数の凸部の個数は1mm2当たり3万個以上9万個以下である。【選択図】図1

Description

本開示は、リードフレーム材、リードフレーム材の製造方法、および半導体パッケージに関する。
樹脂封止型半導体装置は、ボンディングワイヤなどによって互いに電気的に接続された半導体素子とリードフレームとがモールド樹脂で封止されてなるものである。このような樹脂封止型半導体装置において、リードフレームには、接合性、耐熱性、封止性などの機能付与のため、Au、Ag、Snなどの外装めっきが施されているのが主流である。
樹脂封止型半導体装置におけるリードフレームとモールド樹脂との密着性を高めるために、リードフレームのめっき表面を粗化する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、リードフレームにおける銀めっき層とモールド樹脂との密着性の向上を目的として、インナーリード部のワイヤボンディング部の表面に、銀の結晶核を析出する下地銀めっきと本銀めっきの2段階銀めっきによる表面が粗面化された銀めっき層が形成されて成るリードフレームが記載されている。
このようなめっき表面を粗化する技術は、リードフレームのめっき表面を粗化することによって、(1)リードフレームにおけるめっき膜とモールド樹脂との接着面積が大きくなる効果、(2)モールド樹脂が粗化されためっき膜の凹凸に食いつきやすくなる効果(つまり、アンカー効果)、などを期待するものである。
これらの効果により、リードフレームに対するモールド樹脂の密着性が向上し、リードフレームとモールド樹脂との間の剥離を抑制することが可能となり、樹脂封止型半導体装置の信頼性が向上している。
こうした粗化めっきは、確かに樹脂密着性を向上することができる。しかしながら、特許文献1のような従来のリードフレームでは、近年要求されている高信頼性の水準の一つである熱衝撃時における樹脂密着性、例えば温度-50℃で30分間保持させた後、温度105℃で30分間保持させるサイクルを50回繰り返す温度急変試験後の樹脂密着性について、リードフレームとモールド樹脂と間に剥離が生じることがあり、信頼性が不十分である。
特開2010-287741号公報
本開示の目的は、樹脂のシェア強度およびワイヤボンディング性に加えて熱衝撃時における樹脂密着性が良好なリードフレーム材およびその製造方法、ならびにリードフレーム材を用いた半導体パッケージを提供することである。
[1] 導電性基材と、前記導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部、および前記基部の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部を有する表面被膜とを備え、前記表面被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察して取得した画像において、前記複数の凸部の各々の面積は1μm以上50μm以下であり、前記複数の凸部の個数は1mm当たり3万個以上9万個以下である、リードフレーム材。
[2] 前記表面被膜の表面の最大高さSzは、4.0μm以上10.0μm以下である、上記[1]に記載のリードフレーム材。
[3] 前記画像において、前記複数の凸部の各々の面積の平均値は、3.5μm以上10.0μm以下である、上記[1]または[2]に記載のリードフレーム材。
[4] 前記表面被膜は、銀、銅、ニッケル、金、または錫からなる、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のリードフレーム材。
[5] 前記導電性基材は、銅、銅合金、鉄、鉄合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金からなる、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のリードフレーム材。
[6] 前記表面被膜は電気めっき被膜である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のリードフレーム材。
[7] 上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のリードフレーム材を用いたリードフレームを備える半導体パッケージ。
[8] 繊維を含むめっき液を用いた分散めっきにより、導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部、および前記基部の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部を有する表面被膜を形成する表面被膜形成工程を有し、前記表面被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察して取得した画像において、前記複数の凸部の各々の面積は1μm以上50μm以下であり、前記複数の凸部の個数は1mm当たり3万個以上9万個以下である、リードフレーム材の製造方法。
本開示によれば、樹脂のシェア強度およびワイヤボンディング性に加えて熱衝撃時における樹脂密着性が良好なリードフレーム材およびその製造方法、ならびにリードフレーム材を用いた半導体パッケージを提供することができる。
図1は、実施形態のリードフレーム材の一例を示す概略図である。 図2は、実施形態のリードフレーム材の他の例を示す概略図である。 図3は、実施例2のリードフレーム材を構成する表面被膜の表面をSEMで観察したSEM画像である。 図4は、図3のSEM画像を二値化処理して得られた処理画像である。 図5は、実施例3のリードフレーム材を構成する表面被膜の表面をSEMで観察したSEM画像である。 図6は、図5のSEM画像を二値化処理して得られた処理画像である。
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、リードフレーム材の表面を構成する表面被膜の表面状態について、基部の表面に複数の凸部を有する海島構造とし、表面被膜の表面を観察したときの各々の凸部の観察面積および凸部の個数密度を制御することで、アンカー効果によりリードフレーム材とモールド樹脂との密着性およびワイヤボンディング性が良好となり、さらに、熱衝撃時のリードフレーム材とモールド樹脂との膨張収縮の差を緩和し、リードフレーム材とモールド樹脂との密着状態が良好に保たれることに着目した。そして、複数の凸部の各々の面積および1mm当たりの凸部の個数を所定範囲内に制御することで、リードフレーム材における、熱衝撃時における樹脂密着性、樹脂のシェア強度、およびワイヤボンディング性が優れていることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて完成させるに至ったものである。
実施形態のリードフレーム材は、導電性基材と、導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部、および基部の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部を有する表面被膜とを備え、表面被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察して取得した画像において、複数の凸部の各々の面積は1μm以上50μm以下であり、複数の凸部の個数は1mm当たり3万個以上9万個以下である。
実施形態のリードフレーム材の製造方法は、繊維を含むめっき液を用いた分散めっきにより、導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部、および基部の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部を有する表面被膜を形成する表面被膜形成工程を有し、表面被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察して取得した画像において、複数の凸部の各々の面積は1μm以上50μm以下であり、複数の凸部の個数は1mm当たり3万個以上9万個以下である。
図1は、実施形態のリードフレーム材の一例を示す概略図である。図1に示すように、実施形態のリードフレーム材1は、導電性基材10と表面被膜20とを備える。
リードフレーム材1を構成する導電性基材10は、導電性を有する。導電性と強度のバランスの観点から、導電性基材10は、銅、銅合金、鉄、鉄合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金からなることが好ましい。
導電性基材10の形状は、リードフレーム材1の用途に応じて適宜選択され、板状、条状、または線状であることが好ましい。
リードフレーム材1を構成する表面被膜20は、基部21および複数の凸部22を有し、導電性基材10の表面の少なくとも一部に設けられる。表面被膜20は、金属被膜である。
基部21は、膜状であり、導電性基材10の表面の少なくとも一部に設けられる。導電性基材10の表面に設けられる基部21は、導電性基材10の表面を連続的に覆う。連続膜である基部21の厚さは、導電性基材10の厚さよりも小さく、下限値は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、上限値は、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは8.0μm以下である。
基部21の表面には、複数の凸部22が設けられている。凸部22は、1つ以上の金属粒状物23から構成され、基部21の表面から突出している。図1に示すように、凸部22は、1つの金属粒状物23から構成されてもよいし、複数の金属粒状物23から構成されてもよい。基部21における、複数の凸部22が設けられていない部分の表面は、例えば平滑である。
このように、表面被膜20の表面、すなわちリードフレーム材1の表面の状態は、複数の凸部22で構成される島部、および複数の凸部22が設けられていない部分で構成される海部からなる海島構造を有する。
また、表面被膜20の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して取得した画像(以下、処理画像ともいう)において、複数の凸部22の各々の面積は1μm以上50μm以下であり、複数の凸部22の個数は1mm当たり3万個以上9万個以下である。
表面被膜20の表面の処理画像において、各々の凸部22の測定面積が1μm以上であると、表面被膜20の表面に設けられる凸部22の凹凸度合いに起因するアンカー効果が発揮されやすくなり、表面被膜20の表面に対する樹脂密着性が向上するため、リードフレーム材1に対する樹脂のシェア強度を増加できる。また、処理画像における各々の凸部22の測定面積が50μm以下であると、熱衝撃時における表面被膜20表面とモールド樹脂との膨張収縮の差を低下でき、表面被膜20表面とモールド樹脂との間の隙間の発生を抑制できるため、リードフレーム材1の熱衝撃時における樹脂密着性を増加できる。このような観点から、上記処理画像における複数の凸部22の各々の面積について、下限値は、1μm以上であり、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、上限値は、50μm以下であり、好ましくは45μm以下、より好ましくは40μm以下である。
表面被膜20の表面の処理画像において、1mm当たりに観察される凸部22の個数が3万個以上であると、表面被膜20の表面に設けられる凸部22の個数増加に起因するアンカー効果が発揮されやすくなり、表面被膜20の表面に対する樹脂密着性が向上するため、リードフレーム材1に対する樹脂のシェア強度を増加できる。また、処理画像において、1mm当たりの凸部22の個数が9万個以下であると、熱衝撃時における表面被膜20表面とモールド樹脂との膨張収縮の差を低下でき、表面被膜20表面とモールド樹脂との間の隙間の発生を抑制できるため、リードフレーム材1の熱衝撃時における樹脂密着性を増加できる。このような観点から、上記処理画像における1mm当たりの凸部22の個数について、下限値は、3万個以上であり、好ましくは4万個以上、より好ましくは4.5万個以上であり、上限値は、9万個以下であり、好ましくは8.5万個以下、より好ましくは8万個以下である。
表面被膜20の表面状態が海島構造であって、表面被膜20の表面をSEMで観察して得られる処理画像における、各々の凸部22の面積および1mm当たりの凸部22の存在個数を上記範囲内に容易に制御する観点から、表面被膜20は分散めっきで形成される電気めっき被膜であることが好ましい。
また、表面被膜20の表面の処理画像において、複数の凸部22の各々の面積の平均値は、3.5μm以上10.0μm以下であることが好ましい。処理画像において、各々の凸部22の測定面積の平均値が3.5μm以上であると、表面被膜20の表面に設けられる凸部22の凹凸度合いの増加に起因するアンカー効果が発揮されやすくなり、表面被膜20の表面に対する樹脂密着性が向上するため、リードフレーム材1に対する樹脂のシェア強度を増加できる。また、処理画像における各々の凸部22の測定面積の平均値が10.0μm以下であると、熱衝撃時における表面被膜20表面とモールド樹脂との膨張収縮の差を低下でき、表面被膜20表面とモールド樹脂との間の隙間の発生を抑制できるため、リードフレーム材1の熱衝撃時における樹脂密着性を増加できる。このような観点から、上記処理画像における複数の凸部22の各々の面積の平均値について、下限値は、好ましくは3.5μm以上、より好ましくは4.5μm以上、さらに好ましくは5.0μm以上であり、上限値は、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは7.5μm以下、さらに好ましくは7.0μm以下である。
処理画像における凸部の個数および各々の凸部の面積の平均値は、以下のようにして得られる。SEMを用いて、表面被膜が設けられているリードフレーム材の表面、すなわち表面被膜の表面に対して、測定倍率2000倍の観察(観察範囲48μm×64μm)を複数視野で行う。続いて、各観察像について、画像処理ソフトImageJを用いて、下限閾値を128、上限閾値を255にそれぞれ設定し、二値化の設定にて、分離点は除く一方で内部は塗りつぶしを行う二値化処理を行い、画像処理後の画像、すなわち処理画像を得る。この処理での黒塗り部を凸部とする。
得られた処理画像における黒塗り部の各領域の面積を算出し、面積が1μm以上50μm以下である箇所の個数(凸部の個数)を数える。そして、1mm当たりの凸部の個数を算出し、複数視野分の平均値を算出して、凸部の個数を得ることができる。また、面積が1μm以上50μm以下である箇所の合計面積と測定した箇所の個数から、各々の凸部の面積の平均値を算出することができる。
また、表面被膜20の表面の最大高さSzは、4.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。表面被膜20の最大高さSzが4.0μm以上であると、表面被膜20の表面に設けられる凸部22に起因する凹凸の度合いが大きくなり、アンカー効果が向上するため、リードフレーム材1に対する樹脂のシェア強度を増加できる。また、表面被膜20の最大高さSzが10.0μm以下であると、表面被膜20表面の凹凸度合いが大きいことに起因する、ボンディングワイヤの海部への入り込みにくさが抑制され、表面被膜20に対するワイヤボンディング強度が増加するため、リードフレーム材1におけるワイヤボンディング性が向上する。このような観点から、上記最大高さSzについて、下限値は、好ましくは4.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、さらに好ましくは6.0μm以上であり、上限値は、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは9.0μm以下、さらに好ましくは8.5μm以下である。
表面被膜の表面の最大高さSzは、以下のようにして得られる。形状解析レーザ顕微鏡(KEYENCE社製、型番:VK-X1000)を用い、表面被膜の表面に対して、測定倍率50倍、複数回測定の条件で測定して、表面被膜の最大高さSzを得ることができる。
また、実装性の観点から、表面被膜20は、銀、銅、ニッケル、金、または錫からなることが好ましく、銀であることがより好ましい。
また、熱衝撃時における樹脂密着性、樹脂のシェア強度、およびワイヤボンディング性を低下させなければ、表面被膜20の表面には、凸部22以外の凸部が設けられてもよい。凸部22以外の凸部は、表面被膜20の表面をSEMで観察して得られる処理画像において、面積が1μm以上50μm以下の範囲外、および1mm当たりの個数が3万個以上9万個以下の範囲外の少なくとも一方に該当する。
また、熱衝撃時における樹脂密着性、樹脂のシェア強度、およびワイヤボンディング性を低下させなければ、表面被膜20の内部および表面の少なくとも一方には、表面被膜20の成膜に用いられるめっき液中の繊維が含まれてもよい。
図2は、実施形態のリードフレーム材の他の例を示す概略図である。図2に示すように、リードフレーム材は、導電性基材10と表面被膜20との間に下地層30をさらに備えてもよい。下地層30はめっきで形成される、すなわち下地層30はめっき被膜であることが好ましい。下地層30が導電性基材10と表面被膜20との間に設けられると、導電性基材10と表面被膜20との密着性を向上できる。
導電性基材10と表面被膜20との密着性をさらに向上する観点から、下地層30は、ニッケル、ニッケル合金、または銅からなることが好ましい。ニッケル合金は、好ましくはニッケルリンである。
下地層30の厚さについて、下限値は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.50μm以上であり、上限値は、好ましくは10.00μm以下、より好ましくは2.00μm以下である。下地層30の厚さが0.01μm以上であると、導電性基材10と表面被膜20との密着性を十分に高めることができる。また、下地層30の厚さが10.00μm以下であると、材料コストを抑制できる。
上記のように、リードフレーム材1は、熱衝撃時における樹脂密着性、樹脂のシェア強度、およびワイヤボンディング性が良好であることから、リードフレーム材1を用いたリードフレームを備える半導体パッケージに好適に用いることができる。半導体パッケージは、リードフレーム材1を用いたリードフレームの表面被膜と半導体素子とをボンディングワイヤを介して互いに電気的に接続し、これらをモールド樹脂で封止してなる。
次に、実施形態のリードフレーム材の製造方法について説明する。
実施形態のリードフレーム材1の製造方法は、表面被膜形成工程を有する。表面被膜形成工程では、繊維を含むめっき液を用いた分散めっきにより、導電性基材10の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部21、および基部21の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部22を有する表面被膜20を形成する。こうして、導電性基材10、および導電性基材10の表面に設けられた表面被膜20を備えるリードフレーム材1を得る。
表面被膜形成工程で用いるめっき液は、表面被膜20を構成する原料と共に、金属粒状物23の析出点の制御のために繊維を含有する。表面被膜20を構成する原料の析出速度が遅くなると、繊維が基部21の表面に吸着し、基部21の成長が抑制され、金属粒状物23が析出される。繊維は、有機繊維または無機繊維であることが好ましく、有機繊維であることがより好ましい。また、分散めっき時の金属粒状物23の析出速度を制御するため、電流密度を1A/dm以上5A/dm以下に調整する。また、めっき液に含まれる繊維の含有割合、繊維径、分散めっき時のめっき液の攪拌速度などを適宜調整することによって、凸部22の析出間隔を制御することができる。
有機繊維としては、セルロース繊維、キチン繊維、およびキトサン繊維からなる群より選択される1種以上の繊維であることが好ましい。セルロース繊維、キチン繊維およびキトサン繊維は、炭素と酸素を有する有機物の繊維であり、単位構造の複数回の繰り返しによって得られる高分子材料であり、特に生体由来の高分子材料である。このような繊維の中でも、環境負荷が少なくかつ材料コストが安価であることから、セルロース繊維であることが好ましく、セルロースナノファイバーまたはその誘導体であることがより好ましい。セルロースナノファイバーは、セルロース分子鎖が数十本の束となって構成されている微細な繊維であり、セルロース繊維は、このセルロースナノファイバーがさらに複数本の束となって構成されている。セルロース繊維の直径は数十μm程度であるのに対し、セルロースナノファイバーの直径は数nm以上0.1μm以下程度である。セルロースナノファイバーまたはその誘導体は、分散性(親水性)、他物質との親和性、金属粒状物23の捕捉および吸着などに優れる特性を有している。また、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーは、金属粒状物23の吸着能に優れることに加えて、誘導体の形成により親水化処理を容易に行うことができる。有機繊維は、1種類の繊維を単独で用いてもよいし、2種類以上の繊維を混合または複合化して用いてもよい。
有機繊維は短繊維であることが好ましく、表面被膜20中に有機繊維の短繊維が分散状態、特に均一な分散状態で配置されていることがより好ましい。これにより、表面被膜20は、安定した高い強度を得ることができる。有機繊維の短繊維のサイズとしては、直径が4nm以上50nm以下、長さが5μm以上10μm以下であることが好ましい。
また、実施形態のリードフレーム材1の製造方法は、表面被膜形成工程の後に行う繊維除去工程をさらに有してもよい。繊維除去工程では、表面被膜形成工程で得られたリードフレーム材1を洗浄することで、表面被膜20の表面に付着している繊維を除去する。除去としては、好ましくは水中での超音波洗浄である。繊維の付着部分は、例えば、凸部22の表面、複数の金属粒状物23の間の空間、表面被膜20における凸部22が設けられていない表面などである。
また、リードフレーム材1が下地層30を備える場合、実施形態のリードフレーム材1の製造方法は、表面被膜形成工程の前に行う下地層形成工程をさらに有する。下地層形成工程では、下地層30を構成する原料を含むめっき液を用いて、めっきによってリードフレーム材1の表面に下地層30を形成する。続いて、表面被膜形成工程において、下地層30の表面に表面被膜20を形成する。こうして、リードフレーム材1を得る。
以上説明した実施形態によれば、リードフレーム材の表面を構成する表面被膜の表面状態について、SEM観察で取得した処理画像における、複数の凸部の各々の面積および1mm当たりの凸部の個数を所定範囲内に制御することで、リードフレーム材における、熱衝撃時における樹脂密着性、樹脂のシェア強度、およびワイヤボンディング性を向上することができる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
次に、実施例および比較例について説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1~11および比較例1~8)
表1に示す板状の導電性基材(サイズ40mm×40mm)に対して、カソード電解脱脂および酸洗の処理を行った。カソード電解脱脂では、60g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を脱脂液として電解槽に入れて加熱し、導電性基材を60℃に加熱した脱脂液に浸漬して電解槽の陽極に接続し、2.5A/dmの電流密度で60秒にわたり通電することで、処理を行った。また、酸洗では、室温の10質量%の硫酸に、カソード電解脱脂を行った後の導電性基材を30秒にわたり浸漬することで、処理を行った。
続いて、下地層を形成する場合には、電気めっきを行って、導電性基材の表面に下地層を形成した。
下地層がニッケルである場合、以下のようにして下地層を形成した。まず、めっき液として、500g/Lのスルファミン酸ニッケルと、30g/Lの塩化ニッケルと、30g/Lのホウ酸とを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、55℃の温度で、10A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表1に示すNi下地層を導電性基材の表面に形成した。
下地層が銅である場合、以下のようにして下地層を形成した。まず、めっき液として、30g/Lの硫酸銅と、10g/L以上50g/L以下の硫酸と、0.1g/L以上1.0g/L以下の塩化ナトリウムとを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、40℃の温度で、5A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表1に示すCu下地層を導電性基材の表面に形成した。
下地層がニッケルリンである場合、以下のようにして下地層を形成した。まず、めっき液として、500g/Lのスルファミン酸ニッケルと、30g/Lの塩化ニッケルと、30g/Lのホウ酸と、16g/Lの亜リン酸とを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、55℃の温度で、10A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表1に示すNi-P下地層を導電性基材の表面に形成した。
続いて、繊維が分散しためっき液を用いた電気めっきを行って、表面被膜を形成した。具体的には、下地層を設けない場合には、導電性基材の表面に表面被膜を形成した。また、下地層を設ける場合には、下地層の表面に表面被膜を形成した。なお、比較例1では、表面被膜を形成しなかった。また、比較例2~3では、繊維を含有しないめっき液を用いた。
表面被膜が銀である場合、以下のようにして表面被膜を形成した。まず、めっき液として、10g/L以上50g/L以下の硝酸銀と、5g/L以上20g/L以下の硝酸カリウムと、0.1g/L以上5.0g/L以下のセルロースナノファイバー(実施例1~4、6~7、比較例4~8)またはキチンナノファイバー(実施例5)とを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、25℃の温度で、攪拌子の回転速度100rpm以上300rpm以下、1A/dm以上5A/dm以下の電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表面被膜を形成した。その後、純水中で表面被膜を超音波洗浄した。こうして、表1に示す基部の厚さ、処理画像における複数の凸部の個数および各々の凸部の面積の平均値、ならびに表面被膜の表面の最大高さSzを有するAg表面被膜を形成した。処理画像における複数の凸部の個数は、処理画像における測定面積が1μm以上50μm以下である凸部の個数である。
表面被膜が銅である場合(実施例8)、以下のようにして表面被膜を形成した。まず、めっき液として、50g/Lの硫酸銅と、10g/Lの硫酸と、0.5g/Lの塩化ナトリウムと、5.0g/Lのセルロースナノファイバーとを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、40℃の温度で、攪拌子の回転速度100rpm、3A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表面被膜を形成した。その後、純水中で表面被膜を超音波洗浄した。こうして、表1に示すCu表面被膜を形成した。
表面被膜がニッケルである場合(実施例9)、以下のようにして表面被膜を形成した。まず、めっき液として、40g/Lの硫酸ニッケルと、10g/Lのホウ酸と、100g/Lの塩化ナトリウムと、3.0g/Lのセルロースナノファイバーとを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、55℃の温度で、攪拌子の回転速度300rpm、1A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表面被膜を形成した。その後、純水中で表面被膜を超音波洗浄した。こうして、表1に示すNi表面被膜を形成した。
表面被膜がスズである場合(実施例10)、以下のようにして表面被膜を形成した。まず、めっき液として、80g/Lの硫酸錫と、50mL/Lの硫酸と、5mL/LのUTB513Y(石原ケミカル製)と、5.0g/Lのセルロースナノファイバーとを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、25℃の温度で、攪拌子の回転速度300rpm、3A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表面被膜を形成した。その後、純水中で表面被膜を超音波洗浄した。こうして、表1に示すSn表面被膜を形成した。
表面被膜が金である場合(実施例11)、以下のようにして表面被膜を形成した。まず、めっき液として、20g/Lのシアン化金カリウムと、150g/Lのクエン酸と、180g/Lのクエン酸カリウムと、0.3g/Lのキトサンナノファイバーとを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、25℃の温度で、攪拌子の回転速度100rpm、1A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表面被膜を形成した。その後、純水中で表面被膜を超音波洗浄した。こうして、表1に示すAu表面被膜を形成した。
表面被膜が粗化銀である場合(比較例2)、以下のようにして表面被膜を形成した。まず、めっき液として、60g/Lのシアン化銀と、20g/Lのシアン化カリウムと、100g/Lのチオ硫酸カリウムとを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、60℃の温度で、50A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表1に示す粗化Ag表面被膜を形成した。
表面被膜が粗化銅である場合(比較例3)、以下のようにして表面被膜を形成した。まず、めっき液として、50g/Lの硫酸銅と、90g/Lの硫酸と、0.5g/Lのモリブデン酸アンモニウムとを含む水溶液を調製した。続いて、内径80mmの筒状のめっき電解槽に1Lのめっき液を入れ、40℃の温度で、50A/dmの電流密度で導電性基材に通電することで、電気めっきにより表1に示す粗化Cu表面被膜を形成した。
[測定および評価]
上記実施例および比較例で得られたリードフレーム材について、下記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
[1] 凸部の個数、凸部の面積の平均値
SEMを用いて、表面被膜の表面に対して、測定倍率2000倍の観察(観察範囲48μm×64μm)を5視野で行った。続いて、各観察像について、画像処理ソフトImageJを用いて、下限閾値を128、上限閾値を255にそれぞれ設定し、二値化の設定にて、分離点は除く一方で内部は塗りつぶしを行う二値化処理を行い、処理画像を得た。
得られた処理画像における黒塗り部の各領域の面積を算出し、面積が1μm以上50μm以下である箇所の個数(凸部の個数)を数えた。そして、1mm当たりの凸部の個数を算出し、5視野分の平均値を算出して、凸部の個数を得た。また、面積が1μm以上50μm以下である箇所の合計面積と測定した箇所の個数から、各々の凸部の面積の平均値を算出した。
[2] 表面被膜の表面の最大高さSz
形状解析レーザ顕微鏡(KEYENCE社製、型番:VK-X1000)を用い、表面被膜の表面に対して、測定倍率50倍、測定回数5回(n=5)の条件で測定して、表面被膜の最大高さSzを測定した。
[3] 表面被膜の基部の厚さ
リードフレーム材の断面をミクロトーム加工し、SEMを用いて20000倍の倍率で断面を観察し、表面被膜の高さの平均値を測定して、表面被膜の基部の厚さを得た。
[4] 下地層の厚さ
下地層の厚さは、JIS H8501:1999に準拠した蛍光X線式試験方法によって測定した。具体的には、蛍光X線膜厚計(SFT9400、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、コリメータ径0.5mmとして、下地層の任意の10箇所を測定し、これらの測定値の平均値を算出することで、下地層の厚さを得た。
[5] ヒートサイクル前およびヒートサイクル後の樹脂のシェア強度
トランスファーモールド試験装置(コータキ精機社製、型番:Model FTS)を用いて、半導体封止用のエポキシ樹脂(スミコンG630L(商品名)、住友ベークライト社製)を表面被覆の表面に射出成形して、直径2.6mmの接触面を有する円錐台状試験片(モールド樹脂)を表面被覆の表面に密着させた。そして、ヒートサイクル前のシェア強度として、モールド樹脂に対するせん断力の測定を行った。
次に、円錐台状試験片を備えるリードフレーム材に対して、温度-50℃で30分間保持させた後、温度105℃で30分間保持させるサイクルを50回繰り返す温度急変試験を行った。その後、ヒートサイクル後のシェア強度として、モールド樹脂に対するせん断力の測定を行った。
せん断力の測定条件は、以下のとおりである。
測定装置:4000Plus(商品名、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製)
ロードセル:50KG
測定レンジ:10kg
テストスピード:100μm/s
テスト高さ:10μm
測定回数:4回
上記のヒートサイクル前後のシェア強度を基に、リードフレーム材の表面被膜と円錐台状試験片との密着性を次のように評価した。すなわち、ヒートサイクル前およびヒートサイクル後における円錐台状試験片のシェア強度のそれぞれについて、11.0kgf以上であった場合、樹脂との密着性が特に優れているとして「◎」と評価した。また、ヒートサイクル前およびヒートサイクル後における円錐台状試験片のシェア強度のそれぞれについて、7.0kgf以上11.0kgf未満であった場合、樹脂との密着性が優れているとして「〇」と評価した。また、ヒートサイクル前およびヒートサイクル後における円錐台状試験片のシェア強度のそれぞれについて、7.0kgf未満であった場合、樹脂との密着性が悪いとして「×」と評価した。
[6] ワイヤボンディング性
下記のワイヤボンディング条件にて、表面被膜の表面にボンディングワイヤを固着させ、10点テスト後のプル強度を測定した。そして、ボンディングワイヤのプル強度を基に、表面被膜のワイヤボンディング性を次のように評価した。すなわち、プル強度が8.5gf以上であった場合、ワイヤボンディング性が特に優れているとして「◎」と評価した。また、プル強度が7.0gf以上8.5gf未満であった場合、ワイヤボンディング性が優れているとして「〇」と評価した。また、プル強度が7.0gf未満であった場合、ワイヤボンディング性が悪いとして「×」と評価した。
ワイヤボンディング条件は、以下の通りである。
ワイヤボンダ:SWB-FA-CUB-10(商品名、株式会社新川製)
ワイヤ:25μm 金ワイヤ
ボンディング温度:150℃
キャピラリ:1820-15-437GM、(型番名、Coorstek、Inc社製)
1st条件:10msec.、45Bit、45g
2nd条件:10msec.、100Bit、130g
[7] 総合判定
上記の[5]で評価したヒートサイクル前のシェア強度およびヒートサイクル後のシェア強度、ならびに上記の[6]で評価したワイヤボンディング性の判定結果を基に、以下のランク付けを行った。
◎:全ての判定結果が◎であった。
○:全ての判定結果で×がなく、かつ、1つ以上の判定結果が○であった。
×:1つ以上の判定結果が×であった。
Figure 2024021122000002
図3は、実施例2のリードフレーム材を構成する表面被膜の表面をSEMで観察したSEM画像であり、図4は、図3のSEM画像を二値化処理して得られた処理画像である。また、図5は、実施例3のリードフレーム材を構成する表面被膜の表面をSEMで観察したSEM画像であり、図6は、図5のSEM画像を二値化処理して得られた処理画像である。
表1に示すように、実施例1~11のリードフレーム材は、1μm以上50μm以下の面積を有する凸部の個数が1mm当たり3万個以上9万個以下である表面被膜を有するため、熱衝撃時における樹脂密着性、樹脂のシェア強度、およびワイヤボンディング性が優れていた。一方、比較例1~3のリードフレーム材は、表面被膜を具備せず、比較例4~8のリードフレーム材は、凸部の個数が1mm当たり3万個未満または9万個超であったため、熱衝撃時における樹脂密着性、樹脂のシェア強度、およびワイヤボンディング性の少なくとも1つが不良であった。
1 リードフレーム材
10 導電性基材
20 表面被膜
21 基部
22 凸部
23 金属粒状物
30 下地層

Claims (8)

  1. 導電性基材と、
    前記導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部、および前記基部の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部を有する表面被膜と
    を備え、
    前記表面被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察して取得した画像において、前記複数の凸部の各々の面積は1μm以上50μm以下であり、前記複数の凸部の個数は1mm当たり3万個以上9万個以下である、
    リードフレーム材。
  2. 前記表面被膜の表面の最大高さSzは、4.0μm以上10.0μm以下である、請求項1に記載のリードフレーム材。
  3. 前記画像において、前記複数の凸部の各々の面積の平均値は、3.5μm以上10.0μm以下である、請求項1に記載のリードフレーム材。
  4. 前記表面被膜は、銀、銅、ニッケル、金、または錫からなる、請求項1に記載のリードフレーム材。
  5. 前記導電性基材は、銅、銅合金、鉄、鉄合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金からなる、請求項1に記載のリードフレーム材。
  6. 前記表面被膜は電気めっき被膜である、請求項1に記載のリードフレーム材。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のリードフレーム材を用いたリードフレームを備える半導体パッケージ。
  8. 繊維を含むめっき液を用いた分散めっきにより、導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられる膜状の基部、および前記基部の表面に設けられ、1つ以上の金属粒状物から構成される複数の凸部を有する表面被膜を形成する表面被膜形成工程を有し、
    前記表面被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察して取得した画像において、前記複数の凸部の各々の面積は1μm以上50μm以下であり、前記複数の凸部の個数は1mm当たり3万個以上9万個以下である、
    リードフレーム材の製造方法。
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