JP2024020548A - 通信ケーブル及びそれを用いたワイヤーハーネス - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性が高く、通信特性に優れ、長期間の高温雰囲気下においても他部材からの可塑剤の移行を抑制することで、伝送特性が劣化しにくい通信ケーブル、及びこれを用いたワイヤーハーネスを提供すること。【解決手段】通信ケーブル100は、導体11と、導体を被覆し、絶縁体により構成された被覆層12と、を含む絶縁電線10と、絶縁電線の外周を被覆し、結晶性ポリオレフィンを含む樹脂組成物からなるシース20と、を備える。絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂を含有し、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計に対するポリプロピレンの含有率は、51質量%以上85質量%以下であり、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対して、15~60質量部の酸化チタンと、10~80質量部の臭素系難燃剤とを含む。通信ケーブルの特性インピーダンスが100±10Ωである。【選択図】図1

Description

本発明は、通信ケーブル及びそれを用いたワイヤーハーネスに関する。
自動車用の通信ケーブルに用いられる2芯の差動伝送ケーブル、例えばイーサネット通信に用いられるケーブルにおいては、特性インピーダンスを厳しく管理することが求められている。特許文献1にはポリプロピレン樹脂からなるシースで絶縁電線を被覆した通信ケーブルが開示されている。
特開2017-188436号公報
通信ケーブルの周囲に収束される一般電線の絶縁体にはポリ塩化ビニル樹脂(PVC)が多く使用されており、長期間高温雰囲気下に曝されるとPVCに含まれる可塑剤がブリードアウトし、通信ケーブルのシースに移行しやすい。そのため、可塑剤が通信ケーブルのシースを介して侵入し、線心を被覆する絶縁体樹脂の耐熱性を向上させる添加剤と吸着することにより、絶縁体樹脂の劣化が促進され、通信ケーブルの通信速度が低下するおそれがある。
そのため、一般的にシース材料に結晶性の高い材料を用いることで可塑剤の移行を抑制することが知られている。しかしながら、このような樹脂組成物では、通信ケーブルが硬くなり、柔軟性が低くなる傾向にある。車両においては、絶縁電線の束をコンパクトにし、狭い場所に配索するため、高い柔軟性を有し、かつ、通信特性に優れる通信ケーブルが求められている。
一方、ワイヤーハーネスを配索したり、車両に組み付けしたりする際に加わる引張応力に対して破断しにくい通信ケーブルが求められている。細いケーブルの場合、ケーブル自体が破断する、又はコネクタからケーブルが抜けてしまうことが課題である。そのため、破断強度の高い導体を用いることが対策として挙げられる。ただ、ケーブルとしては硬くなる傾向になるため、柔軟性のあるシース材を用いることが有効である。
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、柔軟性が高く、通信特性に優れ、長期間の高温雰囲気下においても他部材からの可塑剤の移行を抑制することで、伝送特性が劣化しにくい通信ケーブル、及びこれを用いたワイヤーハーネスを提供することにある。
本発明の態様に係る通信ケーブルは、導体と、導体を被覆し、絶縁体により構成された被覆層と、を含む絶縁電線と、絶縁電線の外周を被覆し、結晶性ポリオレフィンを含む樹脂組成物からなるシースと、を備える。絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂を含有し、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計に対するポリプロピレンの含有率は、51質量%以上85質量%以下であり、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対して、15~60質量部の酸化チタンと、10~80質量部の臭素系難燃剤とを含む。通信ケーブルの特性インピーダンスが100±10Ωである。
本発明の態様に係るワイヤーハーネスは、上述の通信ケーブルと、ポリ塩化ビニル電線と、を備え、前記通信ケーブルと前記ポリ塩化ビニル電線とが束ねられている。
本発明によれば、柔軟性が高く、通信特性に優れ、長期間の高温雰囲気下においても他部材からの可塑剤の移行を抑制することで、伝送特性が劣化しにくい通信ケーブル、及びこれを用いたワイヤーハーネスを提供することができる。
本実施形態に係る通信ケーブル(円形圧縮導体)の一例を示す模式的な断面図である。 本実施形態に係る通信ケーブル(円形導体)の一例を示す模式的な断面図である。 本実施形態に係るワイヤーハーネスの一例を示す模式的な斜視図である。 本実施形態に係る通信ケーブルの一例を示す模式的な側面図である。 本実施形態に係る絶縁電線の撚り合わせの一例を示す模式的な側面図である。 ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いて、特性インピーダンス及び挿入損失を測定する状態を示す模式図である。 実施例1に係る通信ケーブルの、特性インピーダンスを示すグラフである。 比較例1に係る通信ケーブルの、特性インピーダンスを示すグラフである。 試験サンプルを示す模式的な断面図である。 実施例1に係る通信ケーブルの、可塑剤移行試験前後の周波数と挿入損失の関係を示すグラフである。 比較例1に係る通信ケーブルの、可塑剤移行試験前後の周波数と挿入損失の関係を示すグラフである。 通信ケーブルの柔軟性の測定方法を説明するための概略図である。 シースの引張弾性率に対する、通信ケーブルの柔軟性及びDINP吸収量の関係を示すグラフである。
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る通信ケーブル及びこれを用いたワイヤーハーネスについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
[通信ケーブル]
図1及び図2に示すように、通信ケーブル100は、絶縁電線10と、絶縁電線10の外周を被覆するシース20と、を備えている。絶縁電線10の外表面がシース20で直接覆われている。シース20は絶縁電線10の軸方向に沿って伸長している。シース20の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1mm~1mmであってもよい。本実施形態では、2本の絶縁電線10がツイストペアを形成しているが、絶縁電線10の数は、少なくとも一本あればよい。また、本実施形態では、絶縁電線10とシース20との間には空隙が設けられていてもよい。
シース20は、樹脂組成物を含んでいる。ここで、上述の通り、ポリ塩化ビニルに添加されている可塑剤は、長期間使用していると、材料の表面にブリードアウトし、可塑剤がシース20に移行するおそれがある。可塑剤の誘電正接は、一般的に大きく、特に、フタル酸系可塑剤やトリメリット酸系可塑剤の誘電正接は大きい。誘電正接が大きくなると、通信ケーブル100の挿入損失が増加し、通信ケーブル100による高速通信の妨げとなってしまう。そのため、シース20を構成する樹脂組成物に、可塑剤が含まれている場合だけでなく、可塑剤が移行した場合にも、シース20の誘電特性が低下し、高速通信の妨げとなってしまうおそれがある。
そこで、本実施形態に係る通信ケーブル100とポリ塩化ビニル電線110とを束ねて、大気中、105℃、3000時間放置させた可塑剤移行試験における、シース20の質量増加率は50質量%未満である。シース20の質量増加率が50質量%未満であることで、図3に示すように、通信ケーブル100とポリ塩化ビニル電線110とを束ねてワイヤーハーネス200を形成しても、シース20への可塑剤の移行を抑制できる。シース20に移行する可塑剤の量が少ないことから、通信ケーブル100の伝送特性が劣化しにくくなる。
シース20の樹脂組成物のような誘電体では、誘電率及び誘電正接の値が大きく、かつ、高周波であるほど、通信ケーブルでの高周波信号の減衰が大きくなる。本実施形態では、可塑剤移行試験における、シース20の質量増加率を50質量%未満とすることで、誘電正接を小さくして減衰を抑制し、高周波帯での通信を可能にしている。本実施形態の通信ケーブル100において、好ましい伝送速度は1Gbps以下である。また、本実施形態では、シース20の質量増加率が小さいため、車両のような環境で使用された場合であっても、減衰のような通信ケーブル100の通信品質の低下を長期間抑制することができる。シース20の質量増加率は、40質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがさらに好ましい。シース20の質量増加率の値は小さい程好ましいため、シース20の質量増加率の下限は0質量%以上であってもよい。シース20の質量増加率は、後述のような樹脂組成物の組成などにより調節することができる。
シース20の質量増加率を上記のようにするためには、ホモポリプロピレンなどのように、結晶性が高い材料をシース20の樹脂組成物に用いることが有効である。しかしながら、このようなシース20の引張弾性率は高く、通信ケーブル100が折り曲がりにくくなるため、狭小領域での通信ケーブル100の配索が困難になるおそれがある。
したがって、本実施形態では、シース20の引張弾性率は500MPa以下である。シース20の引張弾性率を500MPa以下とすることにより、通信ケーブル100を容易に湾曲させることができることから、狭小領域での通信ケーブル100の配索が容易になる。シース20の引張弾性率は、後述のような樹脂組成物の組成などにより調節することができる。
引張弾性率は、JIS K7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則)の規定に準じて測定することができる。具体的には、シース20を20℃の室温で50mm/分の引張速度で引っ張り、下記の計算式(1)から算出することができる。
=(σ-σ)/(ε-ε) (1)
なお、上記数式において、Eは引張弾性率(Pa)、σはひずみε=0.0005における応力(Pa)、σはひずみε=0.0025における応力(Pa)を表す。
シース20の樹脂組成物は、結晶性ポリオレフィンと熱可塑性エラストマーとを含有している。結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計に対する結晶性ポリオレフィンの含有率は、55質量%以上70質量%以下であることが好ましい。結晶性ポリオレフィンの含有率が55質量%以上であると、シース20の質量増加率がより小さくなり、シース20に可塑剤が移行しにくくなり、長期間において通信ケーブル100の通信信頼性を維持することができる。結晶性ポリオレフィンの含有率が70質量%以下であると、シース20の引張弾性率がより小さくなり、通信ケーブル100の配索の作業性が向上する。結晶性ポリオレフィンの含有率は、65質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計に対する熱可塑性エラストマーの含有率は30質量%以上45質量%未満であることが好ましい。熱可塑性エラストマーの含有率が30質量%以上であると、シース20の引張弾性率がより小さくなり、通信ケーブル100の配索の作業性が向上する。熱可塑性エラストマーの含有率が45質量%未満であると、シース20の質量増加率がより小さくなり、シース20に可塑剤が移行しにくくなり、長期間において通信ケーブル100の通信信頼性を維持することができる。熱可塑性エラストマーの含有率は、30質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。
シース20の樹脂組成物の比誘電率は6以下であることが好ましい。自動車に搭載される通信ケーブルでは、高速通信を可能とするために、所定の特性インピーダンスを満たす必要がある。特性インピーダンスは、樹脂組成物のような誘電体の比誘電率だけでなく、通信ケーブルの構造にも依存している。自動車に搭載される通信ケーブルには、軽量化及び小型化が求められているが、比誘電率が大きいと、絶縁電線の仕上外径を大きくすることが必要となる。樹脂組成物の比誘電率が6以下であれば、ISO21111-8で規定される断面積0.13sq(mm)という最も細径の導体を有する通信ケーブルにも適用することができる。そして、通信ケーブルに要求される特性インピーダンス100±10Ωという規格を満たすことができる。比誘電率は、空洞共振器法によって、30℃雰囲気下において、10GHzの周波数で測定することができる。
比誘電率は、後述するように、シース20の樹脂組成物に含まれる無機フィラーの含有量によって適宜調節することもできる。シース20の樹脂組成物の比誘電率は、2.5以上4.0以下であることがより好ましい。比誘電率を2.5以上とすることで、ISO21111-8の規格を満たしつつも、シース20の製造が容易な厚さとすることができることから、通信ケーブル100の生産効率を向上させることができる。また、樹脂組成物の比誘電率を4.0以下とすることにより、シース20を薄くすることができ、通信ケーブル100の外径が大きくなりすぎたり、重量が大きくなりすぎたりするのを抑制することができる。樹脂組成物の比誘電率は、3.0以上3.5以下であることがさらに好ましい。
シース20の樹脂組成物の誘電正接は5×10-2以下であることが好ましい。樹脂組成物の誘電正接が5×10-2以下であることにより、通信ケーブル100の挿入損失の増加を抑制することができる。誘電正接は、8.0×10-3未満であることが好ましい。誘電正接の値は小さい程好ましいため、誘電正接の下限は0である。誘電正接は、空洞共振器法によって、30℃雰囲気下において、10GHzの周波数で測定することができる。
シース20の樹脂組成物の比誘電率は2.5以上4.0以下であり、樹脂組成物の誘電正接は5×10-2以下であり、導体11はISO21111-8で規定された0.13sq(mm)の導体であってもよい。上記のような通信ケーブル100は、径が細く、通信特性も良好であるため、高速で通信可能な通信ケーブル100として車両に搭載して好適に用いることができる。
(結晶性ポリオレフィン)
結晶性ポリオレフィンは、オレフィンを含むモノマーの重合体である。ポリオレフィンは、オレフィン単独の重合体であってもよく、オレフィンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA))であってもよい。オレフィン単独の重合体は、一種のオレフィンの重合体であってもよく、二種以上のオレフィンの重合体であってもよい。ポリオレフィンは、マレイン酸などで変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。
オレフィンは、α-オレフィン、β-オレフィン、及びγ-オレフィンなどを含んでいてもよい。α-オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン及び1-デセンなどからなる群より選択される少なくとも一つのモノマーを含んでいてもよい。
オレフィン以外のモノマーは、炭素-炭素二重結合を有するモノマーであってもよい。オレフィン以外のモノマーは、スチレン及びアクリレートの少なくともいずれか一方などを含んでいてもよい。
結晶性ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ホモポリプロピレン(ホモPP)、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体などからなる群より選択される少なくとも一つであってもよい。
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーは、結晶性ポリオレフィンに比べ結晶性が低い樹脂である。熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)及びスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)からなる群より選択される少なくとも一つのエラストマーを含んでいてもよい。熱可塑性エラストマーは、マレイン酸などで変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、ポリオレフィンとゴムとの混合物であり、かつ、混合されたゴムには架橋点がないか、又はほとんどないものである。ポリオレフィンは、上述したものを使用することができる。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)に用いられるゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、及びエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などを用いることができる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、株式会社プライムポリマーから提供されている「プライムTPO(登録商標)」などが挙げられる。
熱可塑性ゴム架橋体は、ポリオレフィンとゴムとの混合物であり、かつ、混合されたゴムは、動的加硫によって架橋しているものである。ゴムは、上述したオレフィン系熱可塑性エラストマーに用いられるゴムを使用することができる。熱可塑性ゴム架橋体は、エチレン及びホモポリプロピレンのような高結晶性樹脂の可塑剤によって膨張しにくいという特徴と、ゴムのような柔軟性を兼ね備えている。
熱可塑性ゴム架橋体としては、例えば、三菱ケミカル株式会社から提供されている「サーモラン(登録商標)」、三井化学株式会社から提供されている「ミラストマー(登録商標)」、JSR株式会社から提供されている「EXCELINK(登録商標)」、住友化学株式会社から提供されている「エスポレックス(登録商標)TPEシリーズ」、及びエクソンモービル社から提供されている「サントプレーン(登録商標)」などが挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)は、芳香族ビニル系重合体ブロック(ハードセグメント)とジエン系重合体ブロック(ソフトセグメント)を有するブロック共重合体又はランダム共重合体であってもよい。芳香族ビニル系重合体を構成するモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等のα位置換スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、o-t-ブチルスチレン、及びp-t-ブチルスチレン等であってもよい。ジエン系重合体ブロックは、ブタジエン及びイソプレンの少なくともいずれか一方の共重合体、並びにこの共重合体の一部を水素化したものであってもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン-ポリイソブチレン-ポリスチレン(SIBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-結晶ポリオレフィン(SEBC)、及びポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)からなる群より選択される少なくとも1種のブロック共重合体であってもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社から提供されている「テファブロック(登録商標)」、住友化学株式会社から提供されている「エスポレックス(登録商標)SBシリーズ」、株式会社クラレから提供されている「セプトン(登録商標)」、JSR株式会社から提供されている「ダイナロン(登録商標)」、及び株式会社クラレから提供されている「ハイブラー(登録商標)」などが挙げられる。
シース20の樹脂組成物は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの他、本実施形態の効果を妨げない範囲で種々の添加剤を適量配合することができる。添加剤としては、難燃剤、無機フィラー、難燃助剤、酸化防止剤、加工助剤、架橋剤、金属不活性化剤(銅害防止剤)、老化防止剤、充填剤、補強剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤等が挙げられる。
(難燃剤)
難燃剤は、シース20の難燃性を向上させる。シース20の難燃性を向上させることにより、車両で火災が発生した場合であっても、シース20で延焼を抑制することができる。そのため、絶縁電線10の被覆層12に難燃性を必ずしも付与する必要はない。ただし、難燃性を向上させる観点からは、被覆層12にも難燃剤を添加することが好ましい。
難燃剤は、例えば、有機系難燃剤及び無機系難燃剤の少なくともいずれか一方であってもよい。有機系難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤及び塩素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤、並びに、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、環状リン化合物、及び赤リンなどのリン系難燃剤などを用いることができる。無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属水酸化物などを用いることができる。これらの難燃剤は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。難燃剤は、例えば、有機系難燃剤と無機系難燃剤とを含んでいてもよい。
シース20の樹脂組成物に含まれる難燃剤の含有量は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、5質量部~200質量部であることが好ましく、50質量部~160質量部であることがより好ましい。難燃剤の含有量を上記のような範囲とすることにより、樹脂組成物の機械的特性を維持しつつ、難燃性を良好に向上させることができる。
有機系難燃剤としては、少なくともハロゲン系難燃剤を含むことが好ましい。ハロゲン系難燃剤は、シース20の樹脂組成物の燃焼を促進するヒドロキシルラジカルを捕捉し、樹脂組成物の燃焼を抑制することができる。ハロゲン系難燃剤は、例えば、有機化合物に少なくとも1つ以上のハロゲンが置換した化合物であってもよい。ハロゲン系難燃剤としては、例えば、フッ素系難燃剤、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、及びヨウ素系難燃剤が挙げられる。ハロゲン系難燃剤は、臭素系難燃剤であることが好ましい。
臭素系難燃剤には、例えば、1,2-ビス(ブロモフェニル)エタン、1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビス-ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビス-テトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールS、トリス(2,3-ジブロモプロピル-1)イソシアヌレート、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、オクタブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、TBAエポキシオリゴマー又はポリマー、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、デカブロモジフェニルオキシド、ポリジブロモフェニレンオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス-ペンタブロモベンゼン、ジブロモエチル-ジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモフェノール、トリブロモフェノールアリルエーテル、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N-メチルヘキサブロモフェニルアミン等が含まれる。難燃剤は、1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン及びテトラブロモビスフェノールAを含んでいることが好ましい。このような難燃剤は、比誘電率が低いことから、樹脂組成物の粘度及び比誘電率の上昇を抑えながら難燃性を付与することができる。
シース20の樹脂組成物に含まれるハロゲン系難燃剤の含有量は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、5質量部~40質量部であることが好ましく、10質量部~30質量部であることがより好ましい。ハロゲン系難燃剤の含有量を10質量部以上とすることにより、樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。また、ハロゲン系難燃剤の含有量を30質量部以下とすることにより、機械的特性を維持しつつ、必要以上の難燃剤を用いずに済むことから、樹脂組成物の製造コストを低減させることができる。
シース20の樹脂組成物に含まれる無機系難燃剤の含有量は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、30質量部~200質量部であることが好ましく、40質量部~150質量部であることが好ましい。無機系難燃剤の含有量を40質量部以上とすることにより、樹脂組成物の比誘電率が低くなりすぎるのを抑制することができる。無機系難燃剤の含有量を150質量部以下とすることにより、比誘電率が高くなりすぎるのを抑制することができる。また、無機系難燃剤の含有量を150質量部以下とすることにより、樹脂組成物の粘度が低下することから樹脂組成物の加工性を向上させることができる。
無機系難燃剤としては、少なくとも金属水酸化物を含むことが好ましい。金属水酸化物は難燃剤として汎用的であり、臭素系難燃剤よりも比較的コストが安い。また、金属水酸化物は、誘電率が一般的なポリオレフィン系樹脂に対して高いため、誘電率調整剤として作用する。そのため、本実施形態のシース20の樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤に加えて金属水酸化物を含むことが好ましい。金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO・Mg(OH)・nHO)、水和珪酸アルミニウム(ケイ酸アルミニウム水和物,Al・3SiO・nHO)、水和珪酸マグネシウム(ケイ酸マグネシウム五水和物,MgSi・5HO)等の水酸基又は結晶水を有する金属化合物の一種又は複数を用いることができる。この中でも金属水酸化物としては、水酸化マグネシウムが特に好ましい。
シース20の樹脂組成物は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、40質量部~150質量部の金属水酸化物をさらに含むことが好ましい。金属水酸化物の含有量を40質量部以上とすることにより、樹脂組成物の比誘電率が低くなりすぎるのを抑制することができ、難燃性も向上させることができる。金属水酸化物の含有量を150質量部以下とすることにより、比誘電率が高くなりすぎるのを抑制し、かつ、樹脂組成物の柔軟性も向上させることができる。また、金属水酸化物の含有量を150質量部以下とすることにより、樹脂組成物の粘度が低下することから樹脂組成物の加工性を向上させることができる。樹脂組成物は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、80質量部以上の金属水酸化物をさらに含んでいてもよく、100質量部以下の金属水酸化物をさらに含んでいてもよい。
シース20の樹脂組成物の粘度が高い場合には、無機系難燃剤の含有量を減らし、有機系難燃剤の含有量を増やすことで、樹脂組成物の押出加工性を向上させることもできる。難燃剤が有機系難燃剤と無機系難燃剤とを含む場合、例えば、有機系難燃剤に対する無機系難燃剤の比は、0.75~40であってもよく、1~10であってもよい。
(無機フィラー)
シース20の樹脂組成物の誘電率を調節するため、樹脂組成物は無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーは、上述した無機系難燃剤を含んでいてもよい。無機フィラーは、例えば、上述した金属水酸化物、酸化アルミニウム、及び酸化チタンなどの金属酸化物、並びに、チタン酸バリウム、及びチタン酸ストロンチウムなどのチタン酸化合物などであってもよい。
シース20の樹脂組成物に含まれる無機フィラーの含有量は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、30質量部~200質量部であることが好ましく、40質量部~150質量部であることが好ましい。無機フィラーの含有量を30質量部以上とすることにより、樹脂組成物の比誘電率が低くなりすぎるのを抑制することができる。無機フィラーの含有量を150質量部以下とすることにより、比誘電率が高くなりすぎるのを抑制することができる。
(難燃助剤)
難燃助剤は、難燃剤とともにシース20の樹脂組成物の難燃性を向上させる。難燃助剤は、例えば、三酸化アンチモンであってもよい。三酸化アンチモンは、ハロゲン系難燃剤と併用することで樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。樹脂組成物に含まれる難燃助剤の含有量は、ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、例えば、シース20の樹脂組成物の酸化などを抑制する。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤などのラジカル連鎖防止剤、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤などの過酸化物分解剤、並びに、ヒドラジン系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤などの金属不活性化剤など、熱可塑性樹脂などに用いられる公知の酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
酸化防止剤は、酸化防止効果とブリードアウトによる不具合を考慮して、添加量を調製すればよい。シース20の樹脂組成物に含まれる酸化防止剤の含有量は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、0.5質量部~10質量部であることが好ましい。酸化防止剤の含有量を0.5質量部以上とすることにより耐熱性を向上させることができる。また、酸化防止剤の含有量を10質量部以下とすることによりブリードアウトを低減させることができる。
(加工助剤)
加工助剤は、押出成形の際に発生するメヤニや、押出成形物の形状を保持するために添加される。加工助剤は、金属石鹸及び高分子滑剤の少なくとも一方を含んでいてもよい。シース20の樹脂組成物に含まれる加工助剤の含有量は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~5質量部であることがより好ましい。
シース20の樹脂組成物は、結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、40質量部~150質量部の金属水酸化物と、10質量部~30質量部のハロゲン系難燃剤とをさらに含んでいてもよい。樹脂組成物の比誘電率は6以下であり、樹脂組成物の誘電正接は5×10-2以下であってもよい。このような樹脂組成物でシース20を形成すると、柔軟性がより高く、通信特性により優れ、長期間の高温雰囲気下においても他部材からの可塑剤の移行を抑制することで、伝送特性が劣化しにくい通信ケーブル100を提供することができる。
通信ケーブル100は、公知の方法により形成することができ、例えば一般的な押出成形法により作製することができる。具体的には、絶縁電線10を一本又は複数本束ねた後、絶縁電線10の外表面にシース20の材料を押し出して被覆することにより、シース20を形成することができる。
(絶縁電線)
図1及び図2に示すように、絶縁電線10は、導体11と、導体11を被覆し、絶縁体により構成された被覆層12とを含んでいる。導体11は、1本の素線のみで構成されていてもよく、複数本の素線を束ねて構成された集合撚り線であってもよい。また、導体11は、1本の撚り線のみで構成されていてもよく、複数本の集合撚り線を束ねて構成された複合撚り線であってもよい。さらに、導体11は、図1に示すような円形圧縮導体であってもよく、図2に示すような円形導体であってもよい。導体11を構成する材料は、特に限定されないが、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金などからなる群より選択される少なくとも1つの導電性金属材料であることが好ましい。
導体11の引張強さは、400MPa以上である。導体11の引張強さを400MPa以上とすることにより、ワイヤーハーネスを配索したり、車両に組み付けしたりする際に加わる引張応力に対して、通信ケーブル100が破断しにくくなる。引張強さは、JIS Z2241(金属材料引張試験方法)の規定に準じて測定することができる。
導体11の外径は、特に限定されないが、0.435mm以上であることが好ましく、0.440mm以上であることがより好ましい。導体11の径を上記のようにすることにより、導体11の抵抗を小さくすることができる。また、導体11の径は、特に限定されないが、0.465mm以下であることが好ましく、0.460mm以下であることがより好ましい。導体11の外径を上記のようにすることにより、狭くかつ短い経路内であっても絶縁電線10の配索を容易にすることができる。
導体11の断面積は0.22mm以下であることが好ましい。導体11の断面積を0.22mm以下にすることにより、狭くかつ短い経路内であっても絶縁電線10の配索を容易にすることができる。導体11は、ISO21111-8で規定された0.13sq(mm)の導体であることが好ましい。
なお、絶縁電線10が、図4に示すようにツイストペアを形成している場合、導体の強度は下記の計算式(2)により求めることができる。
導体の強度(N)=引張強度(MPa)×導体の断面積(mm)×2 (2)
導体11の強度は、品質の信頼性の面を考慮して、100N以上であることが好ましい。上記の計算式(2)により、導体11の引張強さが400MPa、導体11の断面積が0.13sq(mm)である場合は104Nとなる。
被覆層12の厚さは、特に限定されないが、0.15mm以上であることが好ましく、0.18mm以上であることがより好ましい。被覆層12の厚さを上記のようにすることにより、導体11を効果的に保護することができる。また、被覆層12の厚さは、特に限定されないが、0.32mm以下であることが好ましい。被覆層12の厚さを上記のようにすることにより、狭い経路内であっても絶縁電線10の配索を容易にすることができる。
なお、絶縁電線10が、図4に示すようにツイストペアを形成している場合、特性インピーダンスは、以下の数式(1)により算出することができる。
Figure 2024020548000002
上記数式(1)中、Zは特性インピーダンス(Ω)、εは実効比誘電率、kは導体外径係数を表す。また、図1に示すように、Dは導体11の中心の間の距離(mm)、dは導体11の直径(mm)を表す。
上記数式(1)により、例えば、通信ケーブルに要求される特性インピーダンス100Ωにするためには、導体11が0.13sq(mm)の導体である場合は被覆層12の厚さは0.20mmとなる。また、導体11が0.22sq(mm)の導体である場合は被覆層12の厚さは0.26mmとなる。すなわち、導体11の表面積が大きくなると、被覆層を厚くする必要がある。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂を含有している。ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計に対するポリプロピレンの含有率は、通信ケーブルの柔軟性及び通信ケーブルの配索の作業性の観点から、51質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン(ホモPP)、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)などからなる群より選択される少なくとも一つであってもよい。
ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計に対する柔軟樹脂の含有率は、通信ケーブルの柔軟性及び通信ケーブル100の配索の作業性の観点から、15質量%以上49質量%未満であることが好ましい。
柔軟樹脂は、上記の結晶性ポリオレフィンのうち、ポリプロピレンを除く樹脂を含んでいてもよい。また、柔軟樹脂は、上記の熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。
被覆層12を構成する絶縁体の比誘電率は2.25以上3.5以下であることが好ましい。比誘電率を2.25以上とすることで、ISO21111-8の規格を満たしつつも、絶縁電線10の製造が容易な厚さとすることができることから、通信ケーブル100の生産効率を向上させることができる。また、絶縁体の比誘電率を3.5以下とすることにより、ISO21111-8で規定される0.13sq(mm)という最も細径の導体を有する通信ケーブルにも適用することができる。さらに、絶縁体の比誘電率を3.5以下とすることにより、通信ケーブル100の外径が大きくなりすぎたり、重量が大きくなりすぎたりするのを抑制することができる。比誘電率は、空洞共振器法によって、30℃雰囲気下において、10GHzの周波数で測定することができる。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の他、本実施形態の効果を妨げない範囲で、上記のシース20の樹脂組成物に含まれる種々の添加剤を適量配合することができるが、通信特性の観点から、可塑剤を含んでいないことが好ましい。
被覆層12の誘電率を調節するため、被覆層12を構成する絶縁体は、無機フィラーとして酸化チタンを含むことが好ましい。絶縁体には、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対して、15~60質量部の酸化チタンを含んでいることが好ましい。酸化チタンの含有量を15質量部以上とすることにより、絶縁体の比誘電率が低くなりすぎるのを抑制することができる。酸化チタンの含有量を60質量部以下とすることにより、絶縁体の比誘電率が高くなりすぎるのを抑制させることができる。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対し、10~80質量部の臭素系難燃剤を含むことがより好ましい。臭素系難燃剤の含有量を10質量部以上とすることにより、絶縁体の難燃性を向上させることができる。また、臭素系難燃剤の含有量を80質量部以下とすることにより、機械的特性を維持しつつ、必要以上の難燃剤を用いずに済むことから、絶縁体の製造コストを低減させることができる。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部~30質量部の難燃助剤を含むことが好ましく、1質量部~15質量部の難燃助剤を含むことがより好ましい。難燃助剤は、例えば、三酸化アンチモンであってもよい。三酸化アンチモンは、臭素系難燃剤と併用することで絶縁体の難燃性を向上させることができる。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対し、45質量部未満の水酸化マグネシウムを含むことが好ましい。水酸化マグネシウムの含有量を45質量部未満とすることにより、比誘電率が高くなりすぎるのを抑制し、かつ、絶縁体の柔軟性も向上させることができる。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対し、0.5質量部~10質量部の酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤は、例えば、シース20の樹脂組成物で使用される酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部~10質量部の加工助剤を含むことが好ましく、0.1質量部~5質量部含むことがより好ましい。加工助剤は、例えば、シース20の樹脂組成物で使用される加工助剤を使用することができる。
被覆層12を構成する絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂の合計100質量部に対し、0.5~10質量部の金属不活性化剤(銅害防止剤)を含むことが好ましい。絶縁体に金属不活性化剤を使用することにより、金属イオンをキレート化し、金属イオンを捕捉し安定化を図ることにより、絶縁体の樹脂の酸化劣化を防ぐことができる。金属不活性化剤としては、シュウ酸化合物、サリチル酸などのアミド化合物、ヒドラジド化合物を使用することができる。また、金属不活性化剤自体には安定化効果がないため、熱安定性を付与するために、フェノール系などの酸化防止剤と併用することが好ましい。
図5に示すように、ツイストペアを形成している2本の絶縁電線10の撚りピッチ151が、絶縁電線10の外径の15倍以上45倍以下であることが好ましく、絶縁電線10の外径の15倍以上40倍以下であることがより好ましい。撚りピッチ151を15倍以上とすることにより、撚りの中心側へ加わる応力が大きくなり過ぎず、被覆層12を構成する絶縁体が潰れて特性インピーダンスが乱れることを防ぐことができる。また、撚りピッチ151を45倍以下とすることにより、撚りピッチ151は安定し、電気ノイズの放射又は耐性に関わるモード変換の特性が劣化することを防ぐことができる。
撚りピッチ151とは、図5に示すように、撚りの中心152を螺旋状に周回する絶縁電線10の一周分であって、絶縁電線10の長手方向の長さを意味する。また、絶縁電線10の外径とは、絶縁電線10の長手方向に垂直な断面の円相当径を意味する。
さらに、2本の絶縁電線10は、1m当たりの長さの違いが3mm以下であることが好ましい。1m当たりの長さの違いが3mm以下とすることにより、電気ノイズの放射又は耐性に関わるモード変換の特性が劣化することを防ぐことができる。
絶縁電線10は、公知の方法により形成することができ、例えば一般的な押出成形法により作製することができる。具体的には、一本又は複数本の素線からなる導体11の外表面に被覆層12の材料を押し出して被覆することにより、被覆層12を形成することができる。
以上のように、通信ケーブル100は、引張強さが400MPa以上であり、断面積が0.22mm以下である導体11と、導体11を被覆し、絶縁体により構成された被覆層12とを含む絶縁電線10と、を備える。さらに、通信ケーブル100は、絶縁電線10の外周を被覆し、結晶性ポリオレフィンを含む樹脂組成物からなるシース20を備える。シース20の引張弾性率は500MPa以下であり、通信ケーブル100とポリ塩化ビニル電線110とを束ねて、大気中、105℃、3000時間放置させた可塑剤移行試験における、シース20の質量増加率は50質量%未満である。そして、通信ケーブル100の特性インピーダンスが100±10Ωである。したがって、柔軟性がより高く、通信特性により優れ、長期間の高温雰囲気下においても他部材からの可塑剤の移行を抑制することで、伝送特性が劣化しにくい通信ケーブル100を提供することができる。
[ワイヤーハーネス]
本実施形態に係るワイヤーハーネス200は、図3に示すように、通信ケーブル100と、ポリ塩化ビニル電線110と、を備え、通信ケーブル100とポリ塩化ビニル電線110とが束ねられている。通信ケーブル100とポリ塩化ビニル電線110は、コネクタ120と電気的に接続されている。上述したシース20には、可塑剤が移行しにくいため、ポリ塩化ビニル電線110の絶縁体に可塑剤が含まれていても、シース20及び絶縁電線10の被覆層12に可塑剤が移行することを抑制することができる。したがって、ワイヤーハーネス200に、通信ケーブル100と、安価で柔軟性が高いポリ塩化ビニル電線110とを束ねることができる。
ポリ塩化ビニル電線110は、導体と、被覆層を有していてもよい。ポリ塩化ビニル電線110の導体は、上述した絶縁電線10の導体11と同様の形状及び材料を適用することができる。ポリ塩化ビニル電線110の被覆層は、上述した絶縁電線10の被覆層12と同様の形状を適用することができる。ポリ塩化ビニル電線110の被覆層は、ポリ塩化ビニルに加え、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤は、ポリ塩化ビニルに添加される公知の可塑剤を使用することができる。可塑剤は、トリメリット酸系可塑剤、脂肪族二塩基酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、フタル酸系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤及びエーテルエステル系可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
フタル酸系可塑剤は、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジ-n-オクチル(DNOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジノニル(DNP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、及びフタル酸ジトリデシルからなる群より選択される少なくとも一種のフタル酸エステルであってもよい。
トリメリット酸系可塑剤は、例えば、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)、及びトリメリット酸トリイソデシルからなる群より選択される少なくとも一種のトリメリット酸エステルであってもよい。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1として、導体の作製方法は以下の通りとした。まず、連続鋳造機を用いて純銅に錫0.3質量%を添加した固溶強化を施し、伸線加工による加工歪を付与することにより加工硬化を施し、素線径0.168±0.03mmまで伸線を行った。その後、得られた素線を7本用いて、撚りピッチ16mmにて撚線加工を行うとともに、圧縮成形を行い、円形圧縮導体とした。得られた導体は、導体の断面積が0.13mm、外径が0.46mmであった。
このようにして得られた銅合金導体に対して、JIS Z2241に従って、引張強さ及び破断伸びを評価した。この際、評点間距離を250mmとし、引張速度を50mm/minとした。評価の結果、引張強さは760MPaであり、破断伸びは3%であった。
一方、比較例1として、導体の作製方法は以下の通りとした。比較例1では圧縮成形を行わず、円形導体とした以外は、実施例1と同様の方法で銅合金導体を作製した。導体の断面積が0.13mm、外径が0.48mmであった。また、実施例1と同様に評価した結果、導体の引張強さは790MPaであり、破断伸びは3%であった。
実施例1及び比較例1の被覆層を構成する絶縁体について、表1に示す樹脂組成の配合割合(質量部)にしたがって、上述の調製用原料を混合し、バッチ式、連続式混錬機で混錬することで樹脂ペレットを作製した。その後、実施例1又は比較例1の銅合金導体をセットした押出機に樹脂ペレットを投入して押出成形により被覆層で被覆し、ISO21111-8で規定された絶縁電線を2本作製した。
次に、実施例1及び比較例1の絶縁電線について、撚りピッチ30mmにてツイストペアを形成した。その後、絶縁電線の作製方法と同様に押出成形により、表2に示す樹脂組成の配合量(質量部)のシースで被覆し、シースと絶縁電線との間には空隙が生じないように通信ケーブルを作製した。なお、被覆層の厚さ、絶縁電線の仕上外径、シースの厚さ及び通信ケーブルの仕上外径は、表3の通りである。絶縁電線の撚りピッチは、実施例1の場合、絶縁電線の外径の35倍となり、比較例1の場合、絶縁電線の外径の33倍となった。
Figure 2024020548000003
Figure 2024020548000004
Figure 2024020548000005
[樹脂]
・ブロックポリプロピレン(ブロックPP):(株)プライムポリマー製 商品名:プライムポリプロ(登録商標)E150GK
・低密度ポリエチレン(LDPE):三井・ダウポリケミカル(株)製 商品名:ミラソン(登録商標)3530
・ポリプロピレン(PP)/EVA(60wt%/40wt%)の混合物
・架橋ポリエチレン
・熱可塑性ゴム架橋体:JSR(株)製 商品名:EXCELINK(登録商標)1200B
・無水マレイン酸変性ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(変性SEBS):旭化成(株)製 商品名:タフテック(登録商標)M1943
[難燃剤]
(金属水酸化物)
・水酸化マグネシウム(Mg(OH)):神島化学工業(株)製 商品名:YG-O(ハロゲン系難燃剤)
・臭素系難燃剤(1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン):Albemarle Corporation製 商品名:SAYTEX(登録商標)8010
[難燃助剤]
・三酸化アンチモン(Sb):日本精鉱(株)製 商品名:PATOX(登録商標)M
[酸化防止剤]
・フェノール系酸化防止剤:(株)ADEKA製 商品名:アデカスタブ(登録商標)AO-20
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤:BASF(株)製 商品名:イルガノックス(登録商標)1010
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤:BASF(株)製 商品名:イルガノックス1076
・リン系酸化防止剤:BASF(株)製 商品名:イルガフォス(登録商標)168
[加工助剤]
・金属石鹸:勝田化工(株)製 商品名:EMS-6P
・アクリル系高分子滑剤:三菱ケミカル(株)製 商品名:メタブレン(登録商標)P-1050
[無機フィラー]
・酸化チタン:石原産業(株)製 商品名:タイペーク(登録商標)CR-63
[金属不活性化剤]
・サリチル酸系アミド化合物:(株)ADEKA製 商品名:アデカスタブ(登録商標)CDA-1
[評価]
(特性インピーダンス)
上記のようにして作製した、実施例1及び比較例1に係る通信ケーブルについて、図6に示すように、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)(キーサイト・テクノロジー社製E5071C)500を用いて特性インピーダンスを測定した。実施例1及び比較例1に係る通信ケーブルについて、長さ10mの試験サンプルを用意した。金属板501の上に比誘電率1.4以下の誘電体(発泡材)502の板を置き、その上に試験サンプルを置いた。試験サンプルは、試験サンプル同士の間隔を30mm以上離し、金属板501の端から30mm以上内側に設置した。そして、試験サンプルを100Ωに整合された測定基板に接続し、立ち上げ時間700psの矩形波を印加して、特性インピーダンスを測定した。
図7は、実施例1に係る通信ケーブルの、特性インピーダンスを示すグラフである。図8は、比較例1に係る通信ケーブルの、特性インピーダンスを示すグラフである。実施例1及び比較例1ともに、特性インピーダンスの規格値(100±10Ω)の範囲内に含まれることが分かる。
通信ケーブル300は、図9に示すように、2本の絶縁電線210の外表面とシース220との間には空隙が生じるように形成した。その他の条件は実施例1及び比較例1の通信ケーブルの作製方法と同様とした。絶縁電線210では、断面積0.13mmの導体201が、被覆層202で被覆されている。一方、ポリ塩化ビニル電線310は、複数の導体301と、導体301の周囲を被覆する被覆層302とを含んでいる。被覆層302は、ポリ塩化ビニルと可塑剤とを含んでいる。
図9に示すように、実施例1又は比較例1に係る通信ケーブル300を中心として、通信ケーブル300の周囲を囲うように6本のポリ塩化ビニル電線310を配置した。そして、ポリ塩化ビニル電線310の周囲に、ポリ塩化ビニルテープ320を巻き付けて試験サンプル400を作製した。
(可塑剤移行試験)
可塑剤移行試験により、ポリ塩化ビニル電線310に添加されている可塑剤がシース220に移行することによる、通信ケーブル300への影響を調べた。上記のようにして作製した、実施例1又は比較例1に係る試験サンプル400を、それぞれ3000時間オーブン内で105℃に加温した後、オーブンから取り出し、室温でしばらく放置した。
(挿入損失)
可塑剤移行試験前後の、通信ケーブル300の挿入損失への影響を調査した。図6に示すようにVNAを用いて、測定周波数を300kHz~1000MHz、測定帯域幅を100Hzとする条件により、可塑剤移行試験前後の、実施例1及び比較例1に係る通信ケーブル300の挿入損失をそれぞれ測定した。
図10は、実施例1に係る通信ケーブルにおける、可塑剤移行試験前後の挿入損失を示すグラフである。図11は、比較例1に係る通信ケーブルにおける、可塑剤移行試験前後の挿入損失を示すグラフである。図10及び図11に示すように、可塑剤移行試験前(初期)においては、実施例1及び比較例1ともに、挿入損失の規格値を上回っているが、周波数が高くなるのに伴い、挿入損失は低下している。そして、可塑剤移行試験後においては、周波数が高くなるのに伴い、初期に比べてさらに大きく挿入損失が低下している。しかしながら、実施例1に係る通信ケーブルは、比較例1に係る通信ケーブルと比較し、挿入損失の低下が抑制され、規格値を満足しており、十分な通信特性を有していると考えられる。一方、比較例1に係る通信ケーブルは規格値を満足しておらず、車両のような高温下で長時間使用された場合、高周波領域における通信特性が低下し、要望する挿入損失が十分に満たされないおそれがある。
(誘電特性)
表4には、可塑剤移行試験前後における、シースの樹脂組成物の比誘電率及び誘電正接を測定した結果を示す。また、表4には、可塑剤移行試験前(初期)における、被覆層を構成する絶縁体の比誘電率及び誘電正接を測定した結果を示す。具体的には、可塑剤移行試験前後の試験サンプルについて、通信ケーブルの長手方向に対して垂直に、長さ150mmになるように切り出し、その切り出したケーブルから導体及び被覆層を取り除いたシースのみのサンプルを用意した。そして、その試験サンプルの比誘電率及び誘電正接を、比誘電率測定装置((株)エーイーティー製ADMS01Nc)を用い、空洞共振器法によって測定した。比誘電率及び誘電正接は、30℃雰囲気下において、10GHzの周波数で測定した。表4に示すように、実施例1及び比較例1ともに、可塑剤移行試験後における、シースの樹脂組成物の比誘電率及び誘電正接は、可塑剤移行試験前(初期)よりも増加する傾向がみられた。
Figure 2024020548000006
(質量増加率)
実施例1及び比較例1に係る通信ケーブルにおいて、ポリ塩化ビニル電線に添加されている可塑剤がシースへ移行する様子を確認した。表4には、可塑剤移行試験前後のシースの質量と、可塑剤移行試験後のシースの質量増加率を測定した結果を示す。
質量増加率を算出するため、上記のようにして作製した通信ケーブルから、シースを剥ぎ取り、DINPを満たした容器に浸漬させた。オーブンでシースを105℃で3000時間、それぞれ浸漬させた後、シースを容器から取り出し、シースの表面に付着したDINPをふき取った。DINP浸漬前後のシースの質量を測定し、以下のようにして質量増加率を算出した。DINPは、(株)ジェイ・プラス製のDINPを使用した。
なお、質量増加率は下記の計算式(3)により求めることができる。
質量増加率(質量%)=((浸漬後の質量)/(浸漬前の質量)-1)×100 (3)
表4に示すように、可塑剤移行試験後のシースの質量増加率は、実施例1に比べ、比較例1の方が大幅に高くなっていることが分かる。よって、比較例1に係る通信ケーブルは、車両のような高温下で長時間使用された場合、ポリ塩化ビニル電線に添加されている可塑剤がシースへ移行しやすいことが分かる。
これらの結果から、挿入損失の低下は、ポリ塩化ビニル電線の被覆層に含まれる可塑剤に起因すると考えられる。そのため、可塑剤が移行しにくいシースの開発を進めたところ、実施例1に係る通信ケーブルでは、可塑剤が移行しにくく、挿入損失の低下も抑制することができた。
(引張弾性率)
上記のようにして作製した、実施例1及び比較例1に係る通信ケーブルから、シースを剥ぎ取った。剥ぎ取ったシースを、JIS K7161-1の規定に準じ、20℃の室温で50mm/minの引張速度で引っ張った。そして、シースが0.00005における応力と0.0025における応力から引張弾性率を算出した。
表4に示すように、可塑剤移行試験前(初期)におけるシースの引張弾性率は、実施例1及び比較例1ともに、500MPa以下であり、通信ケーブルの配索の作業性に優れていることが分かる。
実施例1に係る通信ケーブルでは、シースの引張弾性率及び質量増加率が所定の値以下であり、柔軟性がより高く、長期間の高温雰囲気下においても他部材からの可塑剤の移行を抑制できることが分かる。一方、比較例1に係る通信ケーブルは、シースの引張弾性率は所定の値以下であるものの、質量増加率が所定の値以下ではないことから、長期間の高温雰囲気下において他部材からの可塑剤の移行を抑制することができないと考えられる。
比較例2として、導体の作製方法は以下の通りとした。比較例2では、実施例1と同様の方法で銅合金導体を作製した。導体の断面積が0.13mm、外径が0.48mmであった。また、実施例1と同様に評価した結果、導体の引張強さは750MPaであり、破断伸びは3%であった。
比較例2の導体に対して、押出成形によりオレフィン系樹脂の被覆層で被覆し、ISO21111-8で規定された絶縁電線を2本作製した。その後、押出成形によりオレフィン系樹脂のシースで被覆し、通信ケーブルを作製した。なお、被覆層の厚さ、絶縁電線の仕上外径、シースの厚さ及び通信ケーブルの仕上外径は、表3の通りである。
(通信ケーブルの柔軟性)
上記のようにして作製した、実施例1、比較例1及び比較例2に係る通信ケーブルについて、通信ケーブルの長手方向に対して垂直に、長さが100mmとなるように切断し、試験サンプルを作製した。次に、図12に示すように、長さLが100mmの試験サンプル600の両端を支持台601の上に載置した。そして、試験サンプル600の中央を速度100mm/分の速度で上から荷重をかけ、電線が落ちるまでの最大荷重を、フォースゲージを用いて測定した。通信ケーブルの柔軟性の目標範囲をフォースゲージの値2.0N以下として評価した。
(DINP吸収量)
上記のようにして作製した、実施例1、比較例1及び比較例2に係る通信ケーブルから、シースを剥ぎ取り、DINP((株)ジェイ・プラス製)を満たした容器に浸漬させた。オーブンでシースを100℃で72時間浸漬させた後、シースを容器から取り出し、シースの表面に付着したDINPをふき取った。DINP浸漬前後のシースの質量を測定し、以下のようにしてDINP吸収量を算出した。シースのDINP吸収量の目標範囲を20質量%以下として評価した。
なお、DINP吸収量は下記の計算式(4)により求めることができる。
DINP吸収量(質量%)=(浸漬後のシースの質量-浸漬前のシースの質量)/浸漬前のシースの質量×100 (4)
図13及び表5は、実施例1、比較例1及び比較例2の通信ケーブルについて、シースの引張弾性率に対する、通信ケーブルの柔軟性及びシースのDINP吸収量の関係を示したものである。実施例1の通信ケーブルは、シースの引張弾性率が500MPa以下であり、通信ケーブルの柔軟性が2.0N以下であり、かつ、DINP吸収量が20質量%以下である。よって、柔軟性に優れ、可塑剤の吸収量が低い通信ケーブルが得られた。
Figure 2024020548000007
一方、比較例1の通信ケーブルは、シースの引張弾性率が500MPa以下であり、通信ケーブルの柔軟性が2.0N以下であるものの、DINP吸収量が20質量%よりも大きいことから、柔軟性に優れるが、可塑剤の吸収量は高いと考えられる。また、比較例2の通信ケーブルは、DINP吸収量が20質量%以下であるが、シースの引張弾性率が500MPaよりも大きく、通信ケーブルの柔軟性が2.0Nよりも大きいことから、可塑剤の吸収量は低いが、柔軟性及び配索の作業性が劣ると考えられる。
一般的に硬い材料は樹脂の結晶性が高いため、可塑剤の吸収量は低い。それに対して、柔らかい材料は結晶性が低く、又は、柔軟成分を配合するため、可塑剤の吸収量は高い。実施例1の通信ケーブルは、柔軟性を高めつつ、可塑剤の吸収量を低く抑えることができる。以上のことより、実施例1の通信ケーブルは、柔軟性が高く、通信特性に優れ、長期間の高温雰囲気下においても他部材からの可塑剤の移行を抑制することで、伝送特性が劣化しにくい通信ケーブルである。なお、可塑剤の吸収量の評価で使用したDINPは代表的な可塑剤であり、他のポリ塩化ビニルに用いられる可塑剤も同様の傾向が観察されると考えられる。
以上、本実施形態を実施例によって説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
10 絶縁電線
11 導体
12 被覆層
20 シース
100 通信ケーブル
110 ポリ塩化ビニル電線
200 ワイヤーハーネス

Claims (6)

  1. 導体と、前記導体を被覆し、絶縁体により構成された被覆層とを含む絶縁電線と、
    前記絶縁電線の外周を被覆し、結晶性ポリオレフィンを含む樹脂組成物からなるシースと、
    を備え、
    前記絶縁体は、ポリプロピレン及び柔軟樹脂を含有し、前記ポリプロピレン及び前記柔軟樹脂の合計に対する前記ポリプロピレンの含有率は、51質量%以上85質量%以下であり、前記ポリプロピレン及び前記柔軟樹脂の合計100質量部に対して、15~60質量部の酸化チタンと、10~80質量部の臭素系難燃剤とを含み、
    特性インピーダンスが100±10Ωである、通信ケーブル。
  2. 前記樹脂組成物は、前記結晶性ポリオレフィン及び熱可塑性エラストマーを含有し、前記結晶性ポリオレフィン及び前記熱可塑性エラストマーの合計に対する前記結晶性ポリオレフィンの含有率は、55質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の通信ケーブル。
  3. 前記樹脂組成物は、前記結晶性ポリオレフィン及び前記熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対し、40質量部~150質量部の金属水酸化物と、10質量部~30質量部のハロゲン系難燃剤とを含む、請求項2に記載の通信ケーブル。
  4. 前記絶縁体の比誘電率は2.25以上3.5以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の通信ケーブル。
  5. 前記絶縁電線の撚りピッチは、前記絶縁電線の外径の15倍以上45倍以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の通信ケーブル。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の通信ケーブルと、
    ポリ塩化ビニル電線と、
    を備え、
    前記通信ケーブルと前記ポリ塩化ビニル電線とが束ねられた、ワイヤーハーネス。
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