JP2024018969A - 液体組成物、積層構造体、積層構造体の製造方法、及び蓄電素子又は発電素子の製造方法 - Google Patents

液体組成物、積層構造体、積層構造体の製造方法、及び蓄電素子又は発電素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基材への密着性と物質透過性とに優れる多孔質樹脂を基材上に形成することができる液体組成物の提供。【解決手段】重合性化合物、及び液体を含む液体組成物であって、前記重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含み、前記液体組成物は、重合により多孔質樹脂を形成し、前記液体組成物を攪拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率が、30%以上であり、前記液体組成物を重合して前記多孔質樹脂としたときの、ヘイズ測定用素子の重合前後におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上である液体組成物。【選択図】図2

Description

本発明は、液体組成物、積層構造体、積層構造体の製造方法、及び蓄電素子又は発電素子の製造方法の製造方法に関する。
一般に、多孔質構造体は、様々な用途に活用できる。一例としては、多孔質構造体における空孔の形状や大きさ、骨格部分の表面特性等を適宜選択することで、特定の物質のみを透過又は遮断する分離層を提供できる。また、別の一例としては、多孔質構造体が有する広大な表面積や空隙容積を活用することで、外部から取り込んだ気体や液体の効率的な反応場や貯蔵場を提供できる。そのため、ハンドリング性がよく、多様な箇所に容易に塗布可能であり、多孔質構造体を形成可能な液体組成物があればアプリケーションの幅は大きく拡大する。
多孔質構造体を形成可能な液体組成物としては、例えば、光重合性モノマー(A)と、光重合性モノマー(A)とは非相溶の有機化合物(B)と、光重合性モノマー(A)と有機化合物(B)とに相溶する共通溶媒(C)及び光重合開始剤(D)を必須成分とする多孔質形成性光硬化型樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
多孔質構造体を形成可能な液体組成物を印刷基材上に形成する場合、多孔質構造体における孔の貫通性に加え、形成される多孔質構造体と基材との密着性が求められる。
多孔質構造体における孔の貫通性が低いと、例えば、物質透過機能を損ねてしまうという問題がある。また、一般に、基材等の対象物に層を積層させる場合、対象物と層の間には界面が存在するが、当該界面における密着性が弱いと、対象物と層の剥離が生じやすくなってしまうという問題がある。対象物と層との間で剥離が生じた場合、本来の基材の機能及び多孔質構造体の機能が阻害される。
密着性を向上させる方法として、基材内部に液体組成物を含浸させてアンカー層を設ける方法や、接着性を有する樹脂等の非多孔質性の密着層を設ける方法、或いは、多孔質構造体の空隙率を下げる等により多孔質構造体と基材の接点を増加させる方法などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明は、基材への密着性と物質透過性とに優れる多孔質樹脂を基材上に形成することができる液体組成物を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物は、重合性化合物、及び液体を含む液体組成物であって、前記重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含み、前記液体組成物は、重合により多孔質樹脂を形成し、前記液体組成物を攪拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率が、30%以上であり、前記液体組成物を重合して前記多孔質樹脂としたときの、ヘイズ測定用素子の重合前後におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上である。
本発明によれば、基材への密着性と物質透過性とに優れる多孔質樹脂を基材上に形成することができる液体組成物を提供することができる。
図1は、本実施形態の積層構造体の一例を示す模式図である。 図2は、本実施形態の積層構造体の他の一例を示す模式図である。 図3は、本実施形態の積層構造体の製造方法を実現するための積層構造体の製造装置の一例を示す模式図である。 図4は、図3の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。 図5は、本実施形態の積層構造体の製造装置である液体吐出装置の他の例を示す模式図である。 図6は、図5の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。 図7は、本実施形態の積層構造体の製造装置としてのドラム状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。 図8は、本実施形態の積層構造体の製造装置としての無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。 図9は、液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図である。 図10は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図である。 図11は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。 図12は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図である。 図13は、図12のヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。 図14は、マテリアルジェット方式の造形装置の一例を示す概略図である。
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、重合性化合物、及び液体を含む液体組成物であって、前記重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含み、前記液体組成物は、重合により多孔質樹脂を形成し、前記液体組成物を攪拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率が、30%以上であり、前記液体組成物を重合して前記多孔質樹脂としたときの、ヘイズ測定用素子の重合前後におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上である。
本発明の液体組成物は、従来技術における問題点、すなわち、密着性を向上させるために、基材内部に液体組成物を含浸させてアンカー層を設ける方法や、接着性を有する樹脂等の非多孔質性の密着層を設ける方法、或いは、多孔質構造体の空隙率を下げる等により多孔質構造体と基材の接点を増加させる方法により多孔質構造体を形成すると、多孔質構造体における孔の貫通性が低下してしまい、基材への密着性と物質透過性とを両立することが困難であることを見出したことに基づく発明である。
特に、電池等の蓄電素子、燃料電池等の発電素子などの電池用途において、従来技術の多孔質構造体を基材としての電極上に形成して絶縁層として用いる場合、多孔質構造体における孔の貫通性が低下して十分な物質透過性が得られず、イオン透過性の担保が困難となり電池性能の低下につながるという問題がある。一方、多孔質構造体と基材との密着性が低い又は十分ではないと、外部からの衝撃や素子内の圧力により変形する恐れや、金属片などの異物が貫通したときには多孔質構造体と基材との間にずれが生じて短絡が生じやすくなる恐れがあるという問題がある。
本実施形態の液体組成物は、重合性化合物、及び液体を含み、更に必要に応じて、重合開始剤などのその他の成分を含む。
前記液体組成物は、多孔質樹脂を形成する。すなわち、液体組成物における重合性化合物の重合及び硬化により樹脂を骨格とする多孔質構造を有する樹脂構造体(「多孔質樹脂」又は「多孔質構造体」とも称する)を形成する。
ここで、「液体組成物が多孔質樹脂を形成する」とは、液体組成物中において多孔質樹脂が形成される場合だけでなく、液体組成物中において多孔質樹脂の前駆体(例えば、多孔質樹脂の骨格部)が形成され、その後の工程(例えば、加熱工程等)で多孔質樹脂が形成される場合等も含む意味である。
<重合性化合物>
前記重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、液体組成物の組成及び特徴により多孔質樹脂を形成する。
前記重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含み、その他の重合性化合物を含むことが好ましい。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物である。
前記その他の重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有しない重合性化合物である。
以下に、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物、及びその他の重合性化合物を含む前記重合性化合物について、共通する事項を説明する。
前記重合性化合物は、重合することにより重合物(樹脂)を形成する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の重合性化合物を選択することができるが、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有することが好ましい。
前記重合性化合物としては、例えば、1官能、2官能、又は3官能以上のラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性オリゴマー等のラジカル重合性化合物;重合性官能基以外の官能基を更に有する機能性モノマー、機能性オリゴマーなどが好適に挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が好ましい。
前記重合性化合物の重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基の少なくともいずれかが好ましい。
前記重合性化合物が、熱又は光により重合反応を開始することが好ましい。
重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、液体組成物の組成及び特徴により多孔質樹脂を形成する。
重合性化合物により形成される樹脂は、活性エネルギー線の付与(例えば、光の照射や加熱)等で形成される網目状の構造体を有する樹脂であることが好ましく、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、エン-チオール反応により形成される樹脂などが好適に挙げられる。
これらの中でも、反応性の高いラジカル重合を利用して構造体を形成することが容易な点から、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂がより好ましく、また、生産性の観点から、ビニル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるビニルエステル樹脂がより好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、重合性化合の組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、柔軟性付与のため、ウレタンアクリレート樹脂を主成分として他の樹脂を混合することが好ましい。なお、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくともいずれかを有する重合性化合物を、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物と称する。
前記活性エネルギー線としては、液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも紫外線が好ましい。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
前記重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、5.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下が更に好ましい。
前記含有量が70.0質量%以下である場合、得られる多孔質体の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質体が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、前記含有量が5.0質量%以上である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
前記重合性化合物は、水酸基を有する重合性化合物を含むことが好ましい。前記重合性化合物が、水酸基を有する重合性化合物を含むと、空隙率に優れ、強度の高い多孔質樹脂を得ることができる。
強度の高い多孔質樹脂を得るためには、例えば、多孔質樹脂を形成するための液体組成物中の重合性化合物の含有量を増やす方法が挙げられる。しかしながら、このような場合、多孔質樹脂全体の架橋密度を向上させることができるが、多孔質樹脂の空隙率は低下し、液体や気体の透過性等は損なわれるという問題がある。特に、電池用のセパレータ層として用いた場合は、電池特性が低下する傾向がある。
一方、水酸基を有する重合性化合物を用いると、多孔質樹脂の樹脂骨格の内部又は表層において、水酸基と、水酸基と共有結合可能な官能基と、の間で共有結合が形成させることができるため、重合性化合物の含有量を増やすことなく、多孔質樹脂内部の空隙を塞ぐことなく、強度の高い多孔質樹脂を得ることができる。換言すると、重合性化合物の含有量を増やす必要がないため、空隙率に優れ、強度の高い多孔質樹脂を得ることができる。
特に、電池等の蓄電素子、燃料電池等の発電素子などの電池用途において、基材としての電極上に形成して絶縁層として用いる場合、絶縁層の薄膜化が可能となる。
一般に、多孔質樹脂を薄膜化すると、厚膜と比べて機械的強度が低下し、絶縁層においては、外部からの衝撃や素子内の圧力により変形しやすくなるため絶縁性の維持できず、本来のセパレータの機能が担保できないという問題がある。しかしながら、本実施形態によれば、十分な機械的強度の高い多孔質樹脂を得ることができるため、薄膜においても多孔質樹脂による機能を十分に得ることができる。
絶縁層の薄膜化により、電極間の距離が短くなるため、電池内の電気抵抗(内部抵抗)が低下し、入出力特性などの高い電池性能を得ることが可能となる。
また、絶縁層の薄膜化により、電池の大容量化や小型化が期待できる。
基材上に形成した多孔質樹脂の強度は、例えば、マンドレル屈曲試験にて評価することができる。
具体的には、直径4mmの円筒マンドレルを備えた円筒形マンドレル屈曲試験器(コーテック株式会社製)を用いて、20回曲げ試験に供し、その前後のクラックの有無及び絶縁性の変化を観察することで評価できる。クラックの有無は目視及び光学顕微鏡を用い、絶縁性は100mm四方の絶縁層を備えた負極又は正極上に80mm四方に切り出した負極をエッジ部が重ならないように押し当て、両電極基体間の直流抵抗値をテスターにて測定することで評価できる。
このとき、クラックが無く且つ、曲げ試験前後において直流抵抗値の変化がなく、40MΩ以上の値を示す場合が好ましい。
<<水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物>>
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有し、更に必要に応じてその他の官能基を有していてもよい。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物は、好ましくはその他の重合性化合物とともに、重合することにより樹脂を形成し、液体組成物の組成及び特徴により多孔質樹脂を形成する。
前記液体組成物が、前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含有することにより、基材上の水酸基と前記官能基とが反応して共有結合を形成することができ、基材と多孔質樹脂における層間密着性を高めることができる。
特に、電池等の蓄電素子、燃料電池等の発電素子などの電池用途において、基材としての電極上に形成して絶縁層として用いる場合、基材と多孔質樹脂の層間密着性を高めることにより、外部からの衝撃や素子内の圧力による変形を抑制できるとともに、金属片などの異物が貫通したときには多孔質構造体と基材との間にずれが生じて短絡が生じることを抑制できる。
基材と多孔質樹脂との層間密着性は、例えば、ピール強度を測定することにより評価することができ、具体的には、多孔質膜に粘着テープを貼り付けて引きはがしを実施した後に、断面のSEM観察により、引きはがしによって生じた剥離面の部位を確認することで評価できる。
このとき、剥離の少なくとも一部が多孔質樹脂層内の界面以外で発生する場合が好ましく、剥離の全面が多孔質樹脂層内の界面以外で発生する場合がより好ましい。
前記水酸基と共有結合可能な官能基は、水酸基と反応して共有結合を形成することができる官能基であり、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基、アルコキシシリル基、シラノール基及びオキサゾリン基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、イソシアネート基であることがより好ましい。
また、後述するように、ブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基も、ブロック剤が脱離することにより、水酸基と共有結合可能な官能基として機能するため、ブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基も水酸基と共有結合可能な官能基として好適に用いることができ、これらの中でも、ブロックされたイソシアネート基が好ましい。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物としては、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物が好ましく、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが好適に挙げられる。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物が、イソシアネート化合物であると、水酸基との反応性が良好となる点で好ましい。特に、前記液体組成物を電池用途として用いる場合には、イソシアネート基は反応性が高いため、少量添加でも効果を発現でき、電池特性への影響が及ぼしにくい点で好ましい。
本発明では、基板上に、前記液体組成物を重合してなる多孔質樹脂を形成した場合に、基材への密着性と物質透過性とに優れる多孔質樹脂を形成する。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物が、基材に含まれる水酸基と共有結合を形成することにより前記密着性が達成されるものと考えられる。すなわち、基材と多孔質樹脂を連結するような一連の架橋構造が形成されることによって、層間の密着が強固になるものと考えられる。
前記重合性化合物の含有量は、多孔質樹脂の骨格的な構造(強度、容量など)に寄与し、その中で、前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物の含有量、及び重合性化合物に対する比率は、多孔質樹脂の骨格的な構造に加え、基材上の水酸基との反応性、及び基材と多孔質樹脂との密着性に寄与する。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物の含有量、及び重合性化合物に対する比率としては、これらの特性を担保し得る限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、付与対象となる基材上の水酸基について、以下の方法により水酸基価を測定して、重合性化合物が有する、水酸基と共有結合可能な官能基と、付与対象となる基材上の水酸基との比率を適正な数値範囲に設定することができる。
具体的には、XPSもしくはFT-IRにより、水酸基価を測定することができ、基材上の水酸基の含有量の指標とすることができる。
前記水酸基と共有結合可能な官能基(A)と、基材上又は基材に含まれる水酸基(B)との比率(A/B、モル換算比)としては、0.1以上が好ましく、がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。
前記比率が0.1以上である場合、水酸基と共有結合可能な官能基(A)と水酸基(B)との間の結合を多く形成することが可能となり、積層体における層間密着性をより高めることができる。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。
前記含有量が0.05質量%以上である場合、水酸基と共有結合可能な官能基(A)と水酸基(B)との間の結合を多く形成することが可能な液体組成物とすることができ、積層体における層間密着性をより高めることができる。
また、前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物の比率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、重合性化合物全量に対して、100質量%であってもよいが、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。
液体組成物中で、水酸基と共有結合可能な官能基が多い場合は、液体組成物の組成や保管環境によっては液体組成物の保管寿命を著しく低下させる可能性がある。そのため液体組成物の保管寿命に影響せず、かつ、液体組成物重合後の多孔質形成を妨げない限りは水酸基と共有結合可能な官能基は過剰に含有していても構わない。
一方、前記含有比率が0.05質量%以上である場合、水酸基と共有結合可能な官能基(A)と水酸基(B)との間の結合を多く形成することが可能な液体組成物となり、積層体における層間密着性を高めることができる。
-ブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物-
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物は、その水酸基と共有結合可能な官能基が、ブロック剤によりブロック(保護)されていてもよい。これにより、水酸基と共有結合可能な官能基の反応性が不活性化され、次いで、外部刺激によりブロック剤が脱離した後に、水酸基と共有結合可能な官能基の反応性を発現させることができる。外部刺激の一例として例えば熱に由来する刺激が挙げられる。
前記ブロック剤の脱離の反応は、前記官能基の反応性が発現されればよい。例えば、エステル交換反応の平衡反応のように、外部刺激により平衡がずれ、目的となる脱離及び重合が順次進行してもよい。
前記ブロック剤としては、特に制限はなく、公知の保護基などを目的に応じて適宜選択することができるが、加熱によって脱離可能な熱解離性ブロック剤が好ましい。
前記ブロック剤によりブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物としては、例えば、イソシアネート化合物の末端イソシアネート基をブロック剤が保護するブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
前記水酸基と共有結合可能な官能基としてのイソシアネート基をブロック(保護)するブロック剤としては、例えば、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、活性メチレン類、ピラゾール類、メルカプタン類、イミダゾール類、アミン類、イミン類、トリアゾール類、ヒドロキシルアミン類、脂肪族、脂環式又は芳香族アルキルモノアルコール類などが挙げられる。
イソシアネート化合物の末端イソシアネート基は、反応性が高く、活性水酸基と容易に反応する。水酸基と共有結合可能な官能基をブロック剤が保護することにより、液体組成物中に存在する活性水酸基とイソシアネート化合物との反応を抑制できる。そのため、活性水酸基を有する液体を予め液体組成物に配合しておくことが可能となる。自己硬化するリスクも抑えることができるため、液体組成物の保存安定性も良好となる。
熱解離性ブロック剤を用いた場合、後述する重合誘起相分離による多孔質樹脂の形成プロセスにおいては、重合工程、及び加熱工程において、ブロック剤が熱解離し、基材表面に存在する活性水酸基と共有結合することで、基材との高い密着性が達成できると考えられる。
前記多孔質樹脂が、蓄電素子又は発電素子用の絶縁層としての用途などに用いられる場合、熱解離したブロック剤の沸点としては、160℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
前記沸点が160℃以下であると、例えば蓄電素子を製造する際の加熱脱水工程において熱解離したブロック剤を除去することができる。また、前記沸点が120℃以下であると、本実施形態に係る液体組成物が有する液体を除去するための加熱工程にて、熱解離したブロック剤を除去することができる。ブロック剤を除去することにより、蓄電素子内部のブロック剤の残存量が低下し、例えばブロック剤と電解液等の電極材料と反応することによる電池特性の低下が抑制できる。
液体を除去するための加熱工程後の蓄電素子内部のブロック剤の残存量としては、電池特性の低下が抑制できれば特に制限はないが、30μg/cm以下が好ましく、10μg/cm以下がより好ましく、5μg/cm以下が更に好ましく、0μg/cm(含まれないこと)が特に好ましい。
[ブロック剤の残存量測定方法]
前記ブロック剤の残存量は、以下の手順により測定することができる。
金属箔の両側にそれぞれ平均厚み20μmとなるように形成した前記多孔質樹脂を直径16mmのハンドパンチで打ち抜いたサンプルを5枚作製する。
サンプル5枚をエタノール等の抽出溶媒2mLに含浸させ、超音波洗浄機により1時間抽出を行う。抽出液を平均孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターでろ過し、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)により前記ブロック剤の定量分析を行う。ブロック剤の多孔質膜の面積当たりの含有量(単位;μg/cm)を算出し、5枚分のサンプルの平均値を前記ブロック剤の残存量として求める。
或いは、最終品である蓄電素子における多孔質樹脂について前記ブロック剤の残存量を測定する場合には、多孔質樹脂が積層された金属箔を直径16mmのハンドパンチで打ち抜いたサンプルを複数作製して、上記と同様にして前記ブロック剤の残存量を求めることができる。多孔質樹脂の平均厚みの合計が40μm(片面20μm)とは異なる場合には、平均厚みの合計40μmである場合に換算した値を前記ブロック剤の残存量として求めることができる。
<<その他の重合性化合物>>
前記その他の重合性化合物は、前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物以外の重合性化合物であり、水酸基と共有結合可能な官能基を有しない重合性化合物であり、更に必要に応じてその他の官能基を有していてもよい。
前記1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA、TMPTM)、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(PETTA、PETTM)、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(DTMPTA、DTMPTM)、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
<液体>
前記液体は、ポロジェンを含み、更に必要に応じて、ポロジェン以外のその他の液体を含む。
前記ポロジェンは、重合性化合物と相溶する液体であって、かつ、液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。液体組成物中にポロジェンが含まれることで、重合性化合物が重合した場合に、多孔質樹脂を形成する。また、光又は熱によってラジカル又は酸を発生する化合物(後述する重合開始剤)を溶解可能であることが好ましい。
液体又はポロジェンは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
なお、本実施形態において、液体は重合性を有さない。
ポロジェンの1種単独としての沸点又は2種類以上を併用した場合の沸点としては、常圧において、50℃以上250℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましく、120℃以上190℃以下が更に好ましい。沸点が50℃以上であることにより、室温付近におけるポロジェンの気化が抑制されて液体組成物の取扱が容易になり、液体組成物中におけるポロジェンの含有量の制御が容易になる。また、沸点が250℃以下であることにより、重合後のポロジェンを除去する工程における時間が短縮され、多孔質樹脂の生産性が向上する。また、多孔質樹脂の内部に残存するポロジェンの量を抑制することができるので、多孔質樹脂を物質間の分離を行う物質分離層や反応場としての反応層などの機能層として利用する場合に、品質が向上する。
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類;γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;などを挙げることができる。また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体も挙げることができる。また、アセトン、2-エチルヘキサノール、1-ブロモナフタレン等の液体も挙げることができる。
なお、上記の例示された液体であれば常にポロジェンに該当するわけではない。
ポロジェンとは、上記の通り、重合性化合物と相溶する液体であって、かつ液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。言い換えると、ある液体がポロジェンに該当するか否かは、重合性化合物及び重合物(重合性化合物が重合することにより形成される樹脂)との関係で決まる。
また、液体組成物は、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればよいため、液体組成物作製時の材料選択の幅が広がり、液体組成物の設計が容易になる。液体組成物作製時の材料選択の幅が広がることで、多孔質構造の形成以外の観点で液体組成物に求められる特性がある場合に、対応の幅が広がる。例えば、液体組成物をインクジェット方式で吐出する場合、多孔質形成以外の観点として、吐出安定性等を有する液体組成物であることが求められるが、材料選択の幅が広いため、液体組成物の設計が容易になる。
前記液体又はポロジェンの含有量としては、液体組成物全量に対して、30.0質量%以上95.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下が更に好ましい。
前記液体又はポロジェンの含有量が30.0質量%以上である場合、得られる多孔質体の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質体が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、前記液体又はポロジェンの含有量が95.0質量%以下である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
なお、液体組成物は、上記の通り、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればよいため、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さないその他の液体(ポロジェンではない液体)を追加的に含有していてもよい。
前記その他の液体の含有量としては、液体組成物全量に対して10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましく、0質量%(含まれないこと)が特に好ましい。
液体組成物中における重合性化合物の含有量とポロジェンの含有量の質量比(重合性化合物:ポロジェン)は、1.0:0.4~1.0:19.0が好ましく、1.0:1.0~1.0:9.0がより好ましく、1.0:1.5~1.0:4.0が更に好ましい。
前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物以外の液体組成物中の成分としては、前記水酸基と共有結合可能な官能基と反応しないことが好ましい。すなわち、水酸基を有しない成分であることが好ましい。これにより、重合性化合物と前記成分とを予め配合しておくことが可能となる。重合性化合物が自己硬化するリスクも抑えることができるため、液体組成物の保存安定性も良好となる。
前記水酸基と共有結合可能な官能基が、イソシアネート基である場合、前記成分は、イソシアネート基と反応するような官能基、すなわち、水酸基の他、カルボニル基、アミノ基などを有しないことが好ましい。
前記水酸基を有しない成分としては、例えば、溶媒として用いられるものとしては、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体;アセトン、1-ブロモナフタレン;などが挙げられる。
前記ブロック剤によりブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を用いる場合、前記液体又は成分については、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、水酸基を有する液体又は成分を用いることもできる。重合性化合物と液体又は成分とを予め配合しておくことが可能となる。重合性化合物が自己硬化するリスクも抑えることができるため、液体組成物の保存安定性も良好となる。
水酸基を含有する液体としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類;などが挙げられる。
<その他の成分>
<<重合開始剤>>
前記液体組成物は、重合開始剤などのその他の成分を含んでもよい。
前記重合開始剤は、光や熱等のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させることが可能な材料である。重合開始剤としては、例えば、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、塩基発生剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル発生剤を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、商品名イルガキュアやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、アセトフェノン誘導体などが挙げられる。
具体的な化合物としては、例えば、α-ヒドロキシ-アセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp’-ジクロロベンゾフェン、pp’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド;チタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン;キサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物;ジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。また、熱のみで重合させる場合は、通常のラジカル発生剤であるazobisisobutyronitrile(AIBN)等の熱重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤の含有量としては、十分な硬化速度が得られる点で、重合性化合物の総質量を100.0質量%とした場合に、0.05質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
前記液体組成物は、液体組成物中に分散物を含まない非分散系組成物であっても、液体組成物中に分散物を含む分散系組成物であってもよいが、非分散系組成物であることが好ましい。
[重合誘起相分離]
多孔質樹脂は、重合誘起相分離により形成される。重合誘起相分離は、重合性化合物とポロジェンは相溶するが、重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)とポロジェンは相溶しない(相分離を生じる)状態を表す。相分離により多孔質体を得る方法は他にも存在するが、重合誘起相分離の方法を用いることで、網目構造を有する多孔質体を形成できるために、薬品や熱に対する耐性の高い多孔質体が期待できる。また、他の方法と比較して、プロセス時間が短く、表面修飾が容易といったメリットも挙げられる。
次に、重合性化合物を含む液体組成物による、重合誘起相分離を用いた多孔質樹脂の形成プロセスについて説明する。重合性化合物は、光照射等により重合反応を生じて樹脂を形成する。このプロセスの間、成長中の樹脂におけるポロジェンに対する溶解度が減少し、樹脂とポロジェンの間における相分離が生じる。最終的に、樹脂は、ポロジェン等が孔を満たし、樹脂骨格による共連続構造を有する多孔質構造を形成する。これを乾燥すると、ポロジェン等は除去され、三次元網目構造の共連続構造を有する多孔質樹脂が残る。そのため、適切な空隙率を有する多孔質樹脂を形成するため、ポロジェンと重合性化合物との相溶性、及びポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性が検討される。
ここで、液体組成物が、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含むことにより、前記プロセスにおいて水酸基と共有結合可能な官能基を有する樹脂が形成されるとともに、水酸基と共有結合可能な官能基が水酸基と共有結合を形成する。なお、水酸基と共有結合可能な官能基は、基材が有する水酸基と共有結合を形成してもよく、重合性化合物が有する他の置換基と共有結合を形成してもよい。
また、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基をブロック剤と反応させることにより、水酸基と共有結合可能な官能基の反応性を不活性化した化合物であってもよい。
ブロック剤は重合性化合物と結合した後に、例えば熱に由来する外部刺激により当該重合性化合物から脱離可能な性質を有している。ブロック剤と反応した重合性化合物は、加熱などの脱離工程を加えることで水酸基と共有結合可能な官能基を再び活性化させることが可能となるため、重合による樹脂形成過程では水酸基と共有結合可能な官能基の反応性をブロックし、重合後に、基材上の水酸基又は液体組成物中に含まれる水酸基との共有結合を形成させることができる。
[光透過率]
前記液体組成物を攪拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率は、30%以上である。
ポロジェンと重合性化合物との相溶性は、前記光透過率により判断することができる。
前記光透過率が30%以上である場合を、液体がポロジェンを含み、重合性化合物とポロジェンとが相溶の状態、30%未満である場合を、重合性化合物と液体とが非相溶の状態であると判断する。
前記光透過率は、具体的には以下の方法により測定することができる。
まず、液体組成物を石英セルに注入し、攪拌子を用いて300rpmで攪拌させながら、以下の条件により、液体組成物の波長550nmにおける光(可視光)の透過率を測定する。
・石英セル:スクリューキャップ付き特殊ミクロセル(商品名:M25-UV-2、ジーエルサイエンス株式会社製)
・透過率測定装置:Ocean Optics社製USB4000
・攪拌速度:300rpm
・測定波長:550nm
・リファレンス:石英セル内が空気の状態で、波長550nmにおける光の透過率を測定して取得する(透過率:100%)
[ヘイズ値の上昇率]
前記液体組成物を重合して作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上である。
ポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性は、前記ヘイズ値の上昇率により判断することができる。
前記ヘイズ値の上昇率が1.0%以上である場合を、液体がポロジェンを含み、樹脂とポロジェンとが非相溶の状態、1.0%未満である場合を、樹脂と液体とが相溶の状態であると判断する。
ヘイズ測定用素子におけるヘイズ値は、重合性化合物が重合することにより形成される樹脂とポロジェンとの相溶性が低いほど高くなり、相溶性が高いほど低くなる。また、ヘイズ値が高いほど重合性化合物が重合することにより形成される樹脂が多孔質構造を形成しやすくなることを示す。
前記ヘイズ値の上昇率は、具体的には、前記液体組成物を重合して前記多孔質樹脂としたときの、作製した平均厚み100μmのヘイズ測定用素子の重合前後におけるヘイズ値の上昇率であり、以下の方法により測定する。
-ヘイズ測定用素子の作製-
まず、無アルカリガラス基板上に、スピンコートによりギャップ剤としての樹脂微粒子を基板上に均一分散させる。続いて、ギャップ剤を塗布した基板を、ギャップ剤を塗布していない無アルカリガラス基板と、ギャップ剤を塗布した面を挟むようにして互いに貼り合わせる。次に、液体組成物を、貼り合わせた基板間に毛細管現象を利用して充填し、「UV照射前ヘイズ測定用素子」を作製する。続いて、UV照射前ヘイズ測定用素子にUV照射して液体組成物を硬化させる。最後に基板の周囲を封止剤で封止することで「UV照射後ヘイズ測定用素子」を作製する。ギャップ剤のサイズ(平均粒子径100μm)がヘイズ測定用素子の平均厚みに相当する。作製時の諸条件の例を以下に示す。
・無アルカリガラス基板:日本電気硝子製、40mm、t=0.7mm、OA-10G
・ギャップ剤:積水化学製、樹脂微粒子ミクロパールGS-L100、平均粒子径100μm
・スピンコート条件:分散液滴下量150μL、回転数1000rpm、回転時間30s
・充填した液体組成物量:160μL
・UV照射条件:光源としてUV-LEDを使用、光源波長365nm、照射強度30mW/cm、照射時間20s
・封止剤:TB3035B(Three Bond社製)
-ヘイズ値(曇り度)の測定-
次に、作製したUV照射前ヘイズ測定用素子とヘイズ測定用素子を用いてヘイズ値(曇り度)を測定する。UV照射前ヘイズ測定用素子における測定値をリファレンス(ヘイズ値0)とし、ヘイズ測定用素子における測定値(ヘイズ値)のUV照射前ヘイズ測定用素子における測定値に対する上昇率を算出する。
なお、測定に用いる装置を以下に示す。
・ヘイズ測定装置:Haze meter NDH5000 日本電色工業製
[粘度]
液体組成物の粘度としては、液体組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が特に好ましい。液体組成物の粘度が1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であることにより、液体組成物をインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
[ハンセン溶解度パラメータ(HSP)]
上記のポロジェンと重合性化合物との相溶性、及びポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性は、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を通じて予測することができる。
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)とは、2種の物質の相溶性を予測するのに有用なツールであって、チャールズハンセン(Charles M.Hansen)によって発見されたパラメータである。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、実験的及び理論的に誘導された下記3つのパラメータ(δD、δP、及びδH)を組み合わせることにより表される。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)の単位は、MPa0.5又は(J/cm0.5が用いられる。本実施形態では(J/cm0.5を用いた。
・δD:ロンドン分散力に由来するエネルギー。
・δP:双極子相互作用に由来するエネルギー。
・δH:水素結合力に由来するエネルギー。
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、(δD,δP,δH)のように表されるベクトル量であり、3つのパラメータを座標軸とする3次元空間(ハンセン空間)上にプロットして表される。一般的に使用される物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、データベース等の公知の情報源があるため、例えば、データベースを参照することによって、所望の物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を入手することができる。データベースにハンセン溶解度パラメータ(HSP)が登録されていない物質は、例えばHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)等のコンピュータソフトウェアを用いることによって、物質の化学構造や、後述するハンセン溶解球法からハンセン溶解度パラメータ(HSP)を計算することができる。2種以上の物質を含む混合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、各物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に、混合物全体に対する各物質の体積比を乗じた値のベクトル和として算出される。なお、本実施形態では、データベース等の公知の情報源に基づいて入手される液体(ポロジェン)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を「液体のハンセン溶解度パラメータ」と表す。
また、溶質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)と溶液のハンセン溶解度パラメータ
(HSP)とに基づく相対的エネルギー差(RED)は、下記式で表される。
上記式中、Raは、溶質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)と溶液のハンセン溶解度パラメータ(HSP)との相互作用間距離を示し、Roは、溶質の相互作用半径を示す。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)間の相互作用間距離(Ra)は2種の物質の距離を示す。その値が小さいほど、3次元空間(ハンセン空間)内で、2種の物質がより接近することを意味し、互いに溶解する(相溶する)可能性がより高くなることを示す。
2種の物質(溶質A及び溶液B)に対するそれぞれのハンセン溶解度パラメータ(HSP)が下記のようであると仮定すれば、Raは下記のように計算することができる。
・HSP=(δD、δP、δH
・HSP=(δD、δP、δH
・Ra=[4×(δD-δD+(δP-δP+(δH-δH1/2
Ro(溶質の相互作用半径)は、例えば、次に説明するハンセン溶解球法により決定することができる。
-ハンセン溶解球法-
最初に、Roを求めたい物質と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体(上記の「液体(ポロジェン)」とは意味が区別される液体)とを準備し、各評価用液体に対する対象の物質の相溶性試験を行う。相溶性試験において、相溶性を示した評価用液体のハンセン溶解度パラメータ(HSP)と相溶性を示さなかった評価用液体のハンセン溶解度パラメータ(HSP)とを、ハンセン空間上に各々プロットする。プロットされた各評価用液体のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づいて、相溶性を示した評価用液体群のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を包含し、相溶性を示さなかった評価用液体群のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を包含しないような仮想の球体(ハンセン球)をハンセン空間上に作成する。ハンセン球の半径が物質の相互作用半径R、中心が物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)となる。なお、相互作用半径R及びハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい物質と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の評価用液体との間における相溶性の評価基準(相溶したか否かの判断基準)は評価者自身が設定する。本実施形態における評価基準は後述する。
-重合性化合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)及び相互作用半径-
本実施形態における重合性化合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)、及び重合性化合物の相互作用半径を、ハンセン溶解球法により決定する。なお、上記の通り、ハンセン溶解球法における相溶性の評価基準は評価者自身が設定するものであるため、下記基準により求められる本実施形態における重合性化合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を「重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC」と表し、重合性化合物の相互作用半径を「重合性化合物の相互作用半径D」と表す。言い換えると、「重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC」及び「重合性化合物の相互作用半径D」は、データベース等の公知の情報源に基づいて入手される「液体のハンセン溶解度パラメータ」と異なり、評価者自身が設定した相溶性の評価基準を含むハンセン溶解球法に基づいて入手される。
重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC及び重合性化合物の相互作用半径Dは、下記[1-1]及び上記した光透過率の測定方法に従い、重合性化合物の評価用液体に対する相溶性の評価(「重合性化合物、及び評価用液体を含む透過率測定用組成物を攪拌しながら測定した透過率測定用組成物の波長550nmにおける光の透過率」に基づく評価)により求められる。
[1-1]透過率測定用組成物の調製
まず、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい重合性化合物と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体を準備し、重合性化合物、各評価用液体、及び重合開始剤を以下に示した比率で混合し、透過率測定用組成物を調製する。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体は、下記記載の21種類の評価用液体を用いる。
~透過率測定用組成物比率~
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい重合性化合物:28.0質量%
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の評価用液体:70.0質量%
・重合開始剤(Irgacure819、BASF社製):2.0質量%
~評価用液体群(21種類)~
エタノール、2-プロパノール、メシチレン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、炭酸プロピレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、n-テトラデカン、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-エチルヘキサノール、ジイソブチルケトン、ベンジルアルコール、1-ブロモナフタレン
-重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP)及び相互作用半径-
重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP)、及び重合性化合物が重合することにより形成される樹脂の相互作用半径はハンセン溶解球法により決定する。なお、上記の通り、ハンセン溶解球法における相溶性の評価基準は評価者自身が設定するものであるため、下記基準により求められる本実施形態における重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を「樹脂のハンセン溶解度パラメータA」と表し、重合性化合物が重合することにより形成される樹脂の相互作用半径を「樹脂の相互作用半径B」と表す。言い換えると、「樹脂のハンセン溶解度パラメータA」及び「樹脂の相互作用半径B」は、データベース等の公知の情報源に基づいて入手される「液体のハンセン溶解度パラメータ」と異なり、評価者自身が設定した相溶性の評価基準を含むハンセン溶解球法に基づいて入手される。
樹脂のハンセン溶解度パラメータA及び樹脂の相互作用半径Bは、下記[2-1]、及び上記したヘイズ値の上昇率の測定方法に従い、樹脂の評価用液体に対する相溶性の評価(「重合性化合物、及び評価用液体を含むヘイズ測定用組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値(曇り度)の上昇率」に基づく評価)により求められる。
[2-1]ヘイズ測定用組成物の調製
まず、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい樹脂の前駆体(重合性化合物)と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体を準備し、重合性化合物、各評価用液体、及び重合開始剤を以下に示した比率で混合し、ヘイズ測定用組成物を調製する。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体は、下記記載の21種類の評価用液体を用いる。
~ヘイズ測定用組成物比率~
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい樹脂の前駆体(重合性化合物):28.0質量%
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の評価用液体:70.0質量%
・重合開始剤(Irgacure819、BASF社製):2.0質量%
~評価用液体群(21種類)~
エタノール、2-プロパノール、メシチレン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、炭酸プロピレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、n-テトラデカン、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-エチルヘキサノール、ジイソブチルケトン、ベンジルアルコール、1-ブロモナフタレン
-樹脂と液体(ポロジェン)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)-
上記の通り、重合性化合物及び評価用液体を含むヘイズ測定用組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値(曇り度)の上昇率に基づいて決定される重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータA、当該樹脂の相互作用半径B、並びにポロジェンのハンセン溶解度パラメータ、から下記式1に基づいて算出される相対的エネルギー差(RED)は、1.00以上であることが好ましく、1.10以上がより好ましく、1.20以上が更に好ましく、1.30以上が特に好ましい。
樹脂とポロジェンのハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)が1.00以上である場合、重合性化合物が液体組成物中において重合して形成される樹脂とポロジェンが相分離を起こしやすくなり、多孔質樹脂がより形成されやすくなるため好ましい。
-重合性化合物と液体(ポロジェン)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)-
上記の通り、重合性化合物及び評価用液体を含む透過率測定用組成物を攪拌しながら測定した透過率測定用組成物の波長550nmにおける光の透過率に基づいて決定される重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC、当該重合性化合物と評価用液体の相溶性に基づいて決定される重合性化合物の相互作用半径D、並びに液体のハンセン溶解度パラメータ、から下記式2に基づいて算出される相対的エネルギー差(RED)は、1.05以下であることが好ましく、0.90以下がより好ましく、0.80以下が更に好ましく、0.70以下が特に好ましい。
重合性化合物とポロジェンのハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)が1.05以下である場合、重合性化合物とポロジェンが相溶性を示しやすくなり、0に近づくに従ってより相溶性を示す。そのため、相対的エネルギー差(RED)が1.05以下であることで、重合性化合物をポロジェンに溶解させてから経時的に重合性化合物が析出しないような高い溶解安定性を示す液体組成物が得られる。重合性化合物がポロジェンに対する高い溶解性を有することで、液体組成物の吐出安定性を保つことができるため、例えば、インクジェット方式のような液体組成物を吐出する方式にも好適に本実施形態の液体組成物を適用することができる。また、相対的エネルギー差(RED)が1.05以下であることで、重合反応開始前の液体組成物の状態において重合性化合物とポロジェンの間における分離が抑制され、不規則又は不均一な多孔質樹脂の形成が抑制される。
[液体組成物の製造方法]
液体組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合開始剤を重合性化合物に溶解させる工程、ポロジェンや他の成分を更に溶解させる工程、及び均一な溶液とするために攪拌する工程などを経て作製することが好ましい。
(収容容器)
本発明の収容容器は、上記した本発明の液体組成物と、容器とを含み、前記容器に液体組成物が収容された収容容器である。
容器としては、例えば、ガラス瓶、プラスチック容器、プラスチックボトル、ステンレスボトル、一斗缶、ドラム缶などが挙げられる。
(積層構造体)
本発明の積層構造体は、基材と、前記基材上に、上記した本発明の液体組成物が重合してなる多孔質樹脂と、を有する。
<基材>
前記基材としては、その表面に水酸基を有するものであれば、透明、不透明を問わずあらゆる材料を目的に応じて適宜選択することができる。
透明基材としては、例えば、ガラス基材、各種プラスチックフィルム等の樹脂フィルム基材、これらの複合基板などが挙げられる。
不透明な基材としては、例えば、シリコン基材;ステンレス、アルミニウム、銅等の金属基材;記録媒体;これらを積層したものなどが挙げられる。
記録媒体としては、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などであってもよく、低浸透性基材(低吸収性基材)であってもよい。低浸透性基材とは、水透過性、吸収性、又は吸着性が低い表面を有する基材を意味し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。低浸透性基材としては、商業印刷に用いられるコート紙や、古紙パルプを中層、裏層に配合して表面にコーティングを施した板紙のような記録媒体等が挙げられる。
また、基材としては、その表面に水酸基を有するものであれば、蓄電素子用又は発電素子用の絶縁層として用いられる多孔質樹脂シートや、セルロース繊維を含む紙セパレータであってもよく、蓄電素子用又は発電素子用の電極基体や、電極基体上に設けられた活物質層であってもよい。
前記基材の形状としては、曲面であってもよく、凹凸形状を有するものであってもよく、積層構造体の製造装置の付与手段、及び重合手段に適用可能な基材を適宜選択して使用することができる。
前記基材としては、基材の材料自身が水酸基を有していなくても、表面にコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理が施された結果、水酸基を有するものであってもよい。
表面処理を施すことで、表面に水酸基が付与される。これにより、液体組成物との濡れ性や密着性が向上する。さらに、導入された基材表面の水酸基と、液体組成物中の水酸基と共有結合可能な官能基の反応が起き、共有結合を形成することによる密着性向上も可能となる。
これらの表面処理は公知の方法により実施できる。
なお、基材は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
<多孔質樹脂>
前記多孔質樹脂は、上記した本発明の液体組成物が重合してなる多孔質樹脂である。
前記多孔質樹脂の平均厚みとしては、特に限定はなく目的に応じて適宜選択することができるが、重合時の硬化均一性の点で、0.01μm以上500μm以下が好ましく、0.01μm以上100μm以下がより好ましく、1μm以上50μm以下が更に好ましく、10μm以上20μm以下が特に好ましい。平均厚みが0.01μm以上であることで、得られる多孔質樹脂の表面積が大きくなり、多孔質樹脂による機能を十分に得ることができる。また、平均厚みが500μm以下であることで、膜厚方向において重合時に用いる光や熱のムラが抑制され、膜厚方向において均一な多孔質樹脂を得ることができる。膜厚方向において均一な多孔質樹脂を作製することで多孔質樹脂の構造ムラを抑制し、液体や気体の透過性低下を抑制することができる。
なお、多孔質樹脂の平均厚みに関しては、多孔質樹脂が使用される用途に応じて適宜調整される。例えば、多孔質樹脂を蓄電素子又は発電素子用の絶縁層として用いる場合は、10μm以上20μm以下であることが好ましい。
前記平均厚みは、任意の3点以上の厚みを測定し、その平均を算出することにより求めることができる。
なお、このとき厚みとは多孔質樹脂層のみからなる厚みであり、例えば多孔質樹脂層の基材への染み込みが生じた場合は、多孔質樹脂層及び基材を含む層の厚みは含まれない。
前記多孔質樹脂は、複数の空孔が連続して連結している共連続構造を有することが好ましい。
共連続構造を有することで得られる物性の一つとして透気度が挙げられ、透気度により共連続構造を有することを判断することができる。
多孔質樹脂の透気度としては、500秒/100mL以下が好ましく、300秒/100mL以下がより好ましい。
前記透気度は、JIS P8117に準拠して測定される透気度であり、例えば、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)等を用いて測定することができる。
ここで、「共連続構造」とは、両相連続構造、すなわち2種以上の物質又は相が、それぞれ連続構造を有し、界面を形成しない構造を意味し、本実施形態においては、樹脂相と空孔相とが共に三次元分岐網目連続相となっている構造を意味する。このような構造は、例えば、前記液体組成物を重合誘起相分離法によって重合することにより形成することができる。
前記多孔質樹脂が有する孔の断面形状としては、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状及び様々な大きさであって構わない。ここで、孔の大きさとは、断面形状における最も長い部分の長さを指すものとする。孔の大きさは、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面写真から求めることができる。
前記多孔質樹脂の有する孔の大きさとしては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択できるが、液体や気体の浸透性の観点から、0.01μm以上10μm以下が好ましい。また、
前記多孔質樹脂の空隙率としては、30%以上が好ましく、60%以上であることがより好ましい。
多孔質樹脂の有する孔の大きさ及び空隙率をこれらの範囲にする方法としては、特に限定されないが、例えば、液体組成物中における重合性化合物の含有量を上記の範囲に調整する方法、液体組成物中におけるポロジェンの含有量を上記の範囲に調整する方法、及び活性エネルギー線の照射条件を調整する方法等が挙げられる。
前記多孔質樹脂が形成される基材の面としては、1つの面であってもよく、隣接する複数の面であってもよい。
基材が異なる2方向に水酸基を有する2つの面を有し、前記2つの面が隣接する場合、多孔質樹脂は当該異なる2方向の隣接する面に一連となるよう設けられることが好ましい。このような構成であると、多孔質樹脂は2方向から固定され、密着性が向上する。
なお、基材が異なる3方向以上に水酸基を有する面を有していてもよく、このとき多孔質樹脂は2つの隣接する面に一連となるよう設けられていることが好ましく、3方向以上の隣接する水酸基を有する面に一連となるよう設けられていることがより好ましい。
図1~2に、基材が、蓄電素子用又は発電素子用の電極基体上に設けられた活物質層であり、前記多孔質樹脂が蓄電素子用又は発電素子用の絶縁層である実施形態について、積層構造体の一例を示す。
図1の積層構造体100は、電極基体1と、電極基体1上に設けられた活物質層2と、多孔質樹脂3を有する。活物質層2が基材であり、多孔質樹脂3が蓄電素子用又は発電素子用の絶縁層として機能する。図1では、活物質層2の隣接する2つの面に多孔質樹脂3が一連となるよう設けられる。活物質層2は、少なくとも前記2つの面の表面に水酸基を有し、多孔質樹脂3が有する水酸基と共有結合可能な官能基と共有結合を形成することにより、優れた基材への密着性を有し、物質透過性に優れる多孔質樹脂3を有する積層構造体100を得ることができる。
図2の積層構造体100は、活物質層2の隣接する3つ以上の面に多孔質樹脂3が一連となるよう設けられること以外は、図1の積層構造体と同様の構成を有する。活物質層2は、少なくとも前記3つ以上の面の表面に水酸基を有する。
(積層構造体の製造方法、及び積層構造体の製造装置)
本発明の積層構造体の製造方法は、上記した本発明の収容容器と、前記収容容器に収容された上記した本発明の液体組成物を基材上に付与する付与手段と、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の積層構造体の製造装置は、上記した本発明の液体組成物を基材上に付与する付与工程と、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合工程と、を有し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
<付与手段、付与工程>
前記付与手段は、前記収容容器に収容された前記液体組成物を基材上に付与する手段である。
前記吐出工程は、前記液体組成物を基材上に付与する工程であり、前記付与手段により好適に実施できる。
前記付与手段及び付与工程としては、液体組成物を付与できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に応じた任意の印刷装置を用いることができる。
<重合手段、重合工程>
前記重合手段は、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる手段である。
前記重合工程は、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる工程であり、前記重合手段により好適に実施できる。
前記重合により、前記液体組成物中の前記重合性化合物が重合し、重合誘起相分離により、多孔質樹脂が形成され、基材と、基材上に多孔質樹脂とを有する積層構造体を製造することができる。
前記重合の手段及び方法としては、特に制限はなく、用いる重合開始剤や重合様式などの目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合の場合、波長365nmの紫外線を3秒間照射する光照射手段及び光照射方法、熱重合の場合、150℃真空乾燥で12時間加熱する加熱手段及び加熱方法などが挙げられる。
一般に、強靭な多孔質樹脂を得るためには、例えば、多孔質樹脂を形成するための液体組成物中の重合性化合物の含有量を増やす方法が挙げられる。しかしながら、その場合は多孔質樹脂全体の架橋密度を向上させることができるが、得られる多孔質樹脂の空隙率が低下し、液体や気体の透過性等は損なわれるという問題がある。特に、電池用のセパレータ層として用いた場合は、電池特性が低下する傾向がある。
空隙率を低下させずに多孔質樹脂の強度を高めるためには、多孔質樹脂内部の空隙の流路を塞がない領域で樹脂の架橋密度を向上させることが重要である。
そのような観点では、重合手段としては光を付与して重合させる手段であることがより好ましい。
これにより、まず光重合によって多孔質樹脂が形成され、その後に加熱等により重合及び架橋反応が進行することで、水酸基と結合可能な官能基と、水酸基との共有結合が形成されることにより、多孔質樹脂の架橋密度を向上させることができるので、多孔質樹脂内部の空隙の流路を塞がない領域で樹脂の架橋密度を向上させることが実現可能である。
つまり、光重合によって形成された多孔質樹脂では、その多孔質樹脂の内部又は表面で樹脂の架橋密度が向上することから、多孔質内部の空隙が塞がる可能性が著しく低下する。結果として、良好な空隙率を維持したまま強靭な多孔質樹脂を作製することができる。
<共有結合形成手段、共有結合形成工程>
前記共有結合形成手段は、液体組成物又は多孔質樹脂に熱などの外部エネルギーを付与して重合性化合物が有する水酸基と共有結合可能な官能基と、水酸基との間に共有結合を形成させる手段である。
前記共有結合形成工程は、液体組成物又は多孔質樹脂に外部エネルギーを付与して重合性化合物が有する水酸基と共有結合可能な官能基と、水酸基との間に共有結合を形成させる工程であり、前記共有結合形成手段により好適に実施できる。
塗布工程において塗布された液体組成物、又は重合工程において形成された多孔質樹脂に対して、加熱などの外部エネルギーの付与を行うことで、水酸基と共有結合可能な官能基と、水酸基との間に共有結合を形成させることから、形成される樹脂の架橋密度を向上させることができる。そのため、良好な空隙率を保ちつつ、多孔質樹脂の内部又は表面の領域での多孔質樹脂の架橋密度を向上させることができ、強度の高い多孔質樹脂を得ることができる。
前記共有結合形成工程は、重合工程と同時又は重合工程後に実施されてもよく、重合工程と後述する重合工程後に実施される加熱工程との間又は加熱工程と同時に実施されてもよく、加熱工程後に実施されてもよい。
具体的には、前記共有結合形成工程に要する温度をTa(℃)、加熱工程に要する温度をTb(℃)とした場合、前記共有結合形成工程が行われるタイミングとしては以下の(1)~(4)のタイミング、又は場合である。(1)重合工程と同時のタイミング、すなわち重合工程がTa以上で実施される場合、(2)加熱工程を更に含み、重合工程と加熱工程との間のタイミング、すなわち重合工程がTa未満で実施された後に、Tb以上で実施される加熱工程の前に、共有結合形成工程がTa以上Tb未満で実施される場合(ただし、Ta<Tb)、(3)加熱工程を更に含み、加熱工程と同時のタイミング、すなわち重合工程がTa未満で実施された後に、共有結合形成工程がTb以上で実施される場合(ただし、Ta<Tb)、また、(4)加熱工程を更に含み、加熱工程の後のタイミング、すなわち重合工程がTb未満で実施された後に、加熱工程がTb以上Ta未満で実施され、その後に共有結合形成工程がTa以上で実施される場合(ただし、Tb<Ta)である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、Taとは、前記共有結合形成工程における条件での、重合性化合物が有する水酸基と共有結合を形成可能な官能基と、水酸基と、が共有結合を形成する温度であり、Tbとは前記加熱工程における条件(例えば、雰囲気の圧力)での、後述する液体組成物に含有される液体の沸点である。
また、重合性化合物が有する水酸基と共有結合を形成可能な官能基と、水酸基と、共有結合を形成することは赤外分光法(IR)や核磁気共鳴(NMR)等を用いて確認することができる。
なお、共有結合形成工程において、液体組成物又は多孔質樹脂に付与する熱は、重合性化合物が有する水酸基と共有結合可能な官能基と、水酸基との間に共有結合が形成される温度Taであれば適宜設定することができるが、60℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。
また、共有結合形成工程は減圧下で熱を付与してもよい。減圧下で熱を付与することにより、重合性化合物が有する水酸基と共有結合可能な官能基と、水酸基との間での共有結合の形成を促進することができる。また共有結合形成工程において、液体組成物又は多孔質樹脂に付与する熱は、加熱工程よりも高い温度であることが好ましい。この場合、多孔質樹脂の空隙に含まれる液体を除去した後に、多孔質樹脂の骨格表面で前記水酸基と共有結合可能な官能基が反応して共有結合を形成させることができる。
<その他の構成、その他の工程>
前記積層構造体の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脱離手段、加熱手段などが挙げられる。
前記積層構造体の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脱離手段、加熱工程などが挙げられる。
<<加熱手段、加熱工程>>
前記加熱手段は、前記重合手段により液体組成物が重合してなる多孔質樹脂を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記重合工程で液体組成物が重合してなる多孔質樹脂を加熱する工程であり、前記加熱手段により好適に実施できる。
前記加熱により、前記多孔質樹脂の孔等に含まれる液体を乾燥又は除去することができる。
<<脱離手段、脱離工程>>
液体組成物が、ブロック剤によりブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含む場合は、前記ブロック剤の脱離を行うことが好ましい。
前記脱離手段は、前記ブロック剤によりブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物の前記ブロック剤を脱離する手段である。
前記脱離工程は、前記ブロック剤によりブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物の前記ブロック剤を脱離する工程であり、前記脱離手段により好適に実施できる。
前記脱離により、水酸基と共有結合可能な官能基を活性化させることが可能となるため、重合による樹脂形成過程では水酸基と共有結合可能な官能基の反応性をブロックし、重合後に、基材上の水酸基との共有結合を形成させることができる。
前記脱離の手段及び方法としては、特に制限はなく、用いるブロック剤などの目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ブロック剤が、熱解離性ブロック剤である場合には、加熱する手段及び方法を採用することができ、前記加熱手段及び加熱方法と同時に行うことができる。
[基材に液体組成物を直接的に付与することで積層構造体を形成する実施形態]
図3は、本実施形態の積層構造体の製造方法を実現するための積層構造体の製造装置(液体吐出装置)の一例を示す模式図である。
積層構造体の製造装置は、上記した液体組成物を用いて積層構造体を製造する装置である。積層構造体の製造装置は、印刷基材4上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する付与工程を実施する印刷部10と、液体組成物層に熱又は光を付与して重合させる重合工程を実施する重合部20と、多孔質樹脂前駆体6を加熱し、その孔内の溶媒を除去することで多孔質樹脂を得る加熱工程を実施する加熱部30を備える。積層構造体の製造装置は、印刷基材4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、印刷部10、重合部20、加熱部30の順に印刷基材4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
-印刷部10-
印刷部10は、印刷基材4上に液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段の一例である印刷装置1aと、液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
収容容器1bは、液体組成物7を収容し、印刷部10は、印刷装置1aから液体組成物7を吐出して、印刷基材4上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、積層構造体の製造装置と一体化した構成であってもよいが、積層構造体の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、積層構造体の製造装置と一体化した収容容器や積層構造体の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。収容容器1bや供給チューブ1cを構成する材料は、紫外及び可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、液体組成物7が外光により重合開始されることが防止される。
-重合部30-
重合部30は、図3に示すように、光重合の場合、重合工程を実施する重合手段の一例である光照射装置2aと、重合不活性気体を循環させる重合不活性気体循環装置2bを有し、光照射装置2aは、印刷部10により形成された液体組成物層に重合不活性気体存在下において光を照射し、光重合させて多孔質樹脂前駆体6を得る。
光照射装置2aは、液体組成物層に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択され、液体組成物層中の化合物の重合を開始及び進行させられるものならば特に限定はなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等の紫外線光源などが挙げられる。ただし、短波長の光ほど一般に深部に到達しやすい傾向を持つため、形成する多孔質膜の厚みに応じて光源を選択することが好ましい。
次に、光照射装置2aの光源の照射強度に関して、照射強度が強すぎると相分離が十分に起きる前に急激に重合が進行するため、多孔質構造が得られにくい傾向がある。また、照射強度が弱すぎる場合は、相分離がミクロスケール以上に進行し、多孔質のばらつきや粗大化が起きやすい。また、照射時間も長くなり、生産性が低下する傾向にある。そのため、照射強度としては10mW/cm以上1W/cm以下が好ましく、30mW/cm以上300mW/cm以下がより好ましい。
重合不活性気体循環装置2bは、大気中に含まれる重合活性な酸素濃度を低下させ、液体組成物層の表面近傍の重合性化合物の重合反応を阻害されることなく進行させる役割を担う。そのため、用いられる重合不活性気体は上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えば窒素や二酸化炭素やアルゴンなどが挙げられる。
重合不活性気体のO濃度としては、阻害低減効果が効果的に得られることを考慮して、20%未満(大気よりも酸素濃度が低い環境)が好ましく、0%以上15%以下がより好ましく、0%以上5%以下が更に好ましい。また、重合不活性気体循環装置2bは安定した重合進行条件を実現させるために、温度を調節できる温調手段が設けられていることが好ましい。
重合部30は、熱重合の場合は、加熱装置であってもよい。加熱装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱(例えば、ホットプレート)、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
また、加熱温度や時間、又は光照射の条件に関しては、液体組成物7に含まれる重合性化合物や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
-加熱部30-
加熱部30は、図3に示すように、加熱装置3aを有し、重合部20により形成した多孔質樹脂前駆体6を加熱装置3aにより加熱して、残存する液体を乾燥させて除去する液体除去工程を行う。これにより多孔質樹脂を形成することができる。加熱部30は、液体除去を減圧下で実施してもよい。
また、加熱部30は、多孔質膜前駆体6を加熱装置3aにより加熱して、重合部20で実施した重合反応を更に促進させる重合促進工程、及び多孔質膜前駆体6に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する開始剤除去工程も行う。なお、これらの重合促進工程及び開始剤除去工程は、液体除去工程と同時ではなく、液体除去工程の前又は後に実施されてもよい。
さらに、加熱部30は、液体除去工程後に、多孔質を減圧下で加熱する重合完了工程を行う。加熱装置3aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒータや温風ヒータなどが挙げられる。
また、加熱温度や時間に関しては、多孔質膜前駆体6に含まれる液体の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
図4は、本実施形態の積層構造体の製造方法を実現するための積層構造体の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
前記積層構造体の製造装置を用いると、付与対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
本実施形態の積層構造体の製造方法の他の例を図5に示す。
基材上に多孔質樹脂が設けられた積層構造体210の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、基材211上に、液体組成物12Aを、順次吐出する工程を含む。
まず、細長状の基材211を準備する。そして、基材211を筒状の芯に巻き付け、多孔質樹脂212を形成する側が、図5中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、基材211は、図5中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の基材211の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、図3と同様にして、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される基材211上に吐出する。
なお、液体吐出ヘッド306は、基材211の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された基材211は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、重合部309に搬送される。その結果、多孔質樹脂212が形成され、基材上に多孔質樹脂が設けられた積層構造体210が得られる。その後、高分子電解質が設けられた電極210は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
重合部309は、基材211の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
重合部309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、熱重合の場合、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等;光重合の場合、紫外線照射装置などが挙げられる。なお、重合部309は、複数個設置されていてもよい。
加熱又は光照射の条件は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。重合により液体組成物12Aが重合されて多孔質樹脂が形成される。
また、図6のように、タンク307Aは、タンク307Aに接続されたタンク313Aから液体組成物を供給してもよく、液体吐出ヘッド306は、複数の液体吐出ヘッド306A、306Bを有してもよい。
[基材に液体組成物を間接的に付与することで電解質層を形成する実施形態]
図7~8は、本実施形態の積層構造体の製造装置としての、付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図7は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図8は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す構成図である。
図7に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物又は多孔質樹脂を転写することで基材上に多孔質樹脂を形成する、インクジェットプリンタである。
本実施形態においては、液体組成物が、ブロック剤によりブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含むことが好ましい。このような態様により、中間転写体上で、ブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する多孔質樹脂を形成し、基材に転写した後、基材上で、ブロック剤の脱離と、基材上の水酸基と活性化された水酸基と共有結合可能な官能基との共有結合の形成を実施することができる。
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004及び清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に液体組成物層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101による液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。液体組成物層を加熱することで、液体組成物を熱重合させて、多孔質樹脂を形成する。また、液体が除去され、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上の多孔質樹脂が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
図8に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物又は多孔質樹脂を転写することで基材上に多孔質樹脂を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101から液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体組成物層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体組成物層は、加熱ユニット4007によって加熱され、熱重合することで多孔質樹脂を形成し、中間転写ベルト4006上で膜化する。
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した多孔質樹脂は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、及び複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
以上、図7~8について「液体組成物」が、ブロック剤によりブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含む液体組成物であり、重合性化合物が熱重合性である実施形態について説明したが、その場合は、重合温度よりも、ブロック剤の脱離温度が高いことにより、好適に実施することができる。
また、重合性化合物が光重合性であり、ブロック剤が熱解離性ブロック剤である実施形態であってもよい。
重合前の液体組成物を転写する実施形態である場合、水酸基と共有結合可能な官能基はブロックされていなくてもよく、基材に液体組成物層を転写した後、重合及び、基材上の水酸基との共有結合の形成を実施すればよい。
次に、図9~11を用いて付与手段の一例としての液体吐出ヘッドの構成を説明する。図9は液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図、図10は液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図、図11は液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
ヘッド101は、ノズル板10、流路板(個別流路部材)20、振動板部材30、共通流路部材50、ダンパ部材60、フレーム部材80及び駆動回路104を実装した基板(フレキシブル配線基板)105などを備える。
ノズル板10は、インクを吐出する複数のノズル37を備え、複数のノズル37は、ノズル板短手方向及びこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
流路板20には、複数のノズル37に各々連通する複数の液室(個別圧力室)26と、複数の液室26に各々通じる複数の供給流路(個別供給流路)27及び回収流路(個別回収流路)28とが設けられている。なお、以降の説明では便宜上、1つの液室26と、当該液室26に通じる供給流路27及び回収流路28とを併せて個別流路25とも称する。
振動板部材30は、液室26の変形が可能な壁面である振動板35を形成し、振動板35には圧電素子36が一体に設けられている。振動板部材30には、供給流路27に通じる供給側開口32と、回収流路28に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子36は、振動板35を変形させて液室26内のインクを加圧する。
なお、流路板20と振動板部材30は、別部材であることに限定されるものではない。例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を使用して流路板20及び振動板部材30を同一部材で一体に形成することも可能である。
つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を流路板20とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜で振動板35を形成できる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は流路板20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
共通流路部材50は、2以上の供給流路27に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の回収流路28に通じる複数の共通回収流路支流53とを、ノズル板長手方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材50には、供給流路27の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、回収流路28の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。
共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1又は複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1又は複数の共通回収流路本流57を形成している。
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する回収側ダンパ63を備える。共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62又は回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜又は無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、及び共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面には、流路内を流れるインクに対して内壁面を保護するための保護膜が形成されている。例えば、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、及び共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面は、Si基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
フレーム部材80は、その上部に供給ポート81と排出ポート82を備える。供給ポート81は共通供給流路本流56にインクを供給し、排出ポート82は共通回収流路本流57より排出されるインクを排出する。
上述のようにヘッド101は、インクを吐出するノズル37、ノズル27に通じる液室26、液室26にインクを供給する供給流路27、及び液室26からインクを回収する回収流路28を有する。ここで、インクは「液体組成物」の一例、ヘッド101は「液体吐出ヘッド」の一例、液室26は「液室」の一例、供給流路27は「供給流路」の一例、回収流路28は「回収流路」の一例である。
なお、ヘッド101の構成として、ノズル板10のノズル面(ノズル37が形成された面)の形状は長方形に限らず、台形、ひし形、平行四辺形など、長方形以外の形状であってもよい。
その一例を、図12~13を用いて説明する。図12は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図、図13は、図12のヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。
ヘッド1Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1Rの液体吐出部101R及びノズル板10Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10Rを有し、ノズル板10Rには複数のノズル37Rが規則的に二次元状に配列されている。ノズル37Rの配列は、例えば、N個のノズル37Rによって1列のノズル列37Nが構成され、このノズル列37Nを、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
上記構成のヘッド1Rは、図13に示すように複数のヘッド1Ra,1Rbをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、これにより、使用する基材の記録幅に合わせて、所望の長さのラインヘッドを得ることができる。
[液体組成物及び積層構造体の用途]
<蓄電素子又は発電素子用途>
前記液体組成物及び積層構造体の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体組成物が蓄電素子又は発電素子用の絶縁層形成用の液体組成物であり、前記多孔質樹脂が、蓄電素子又は発電素子用の絶縁層であることが好ましい。
これら用途として用いる場合には、例えば、基材としての、電極基体上に予め形成された活物質層上へ液体組成物を付与することで絶縁層(セパレータ)を形成することが好ましい。
電池等の蓄電素子、燃料電池等の発電素子などに用いる電極を基材とした際に、多孔質構造体である絶縁層と基材の密着性が低いと、外部からの衝撃により構造体が変形する場合や、金属片などの異物が貫通した際などには多孔質構造体と基材間にずれが生じ、短絡が生じる懸念がある。
本実施形態の液体組成物及び積層構造体によれば、基材への密着性と物質透過性とに優れる多孔質樹脂を基材上に形成することができ、短絡の発生を低減でき、優れたイオン伝導性を確保することができる。
蓄電素子用又は発電素子用の絶縁層としては、例えば、所定の大きさの空孔や空隙率を有するフィルム状の多孔質絶縁層等を用いることが知られている。一方で、上記の液体組成物を用いた場合、重合性化合物の含有量、ポロジェンの含有量、活性エネルギー線の照射条件等を適宜調整することで空孔や空隙率を適宜変更することができ、蓄電素子及び発電素子の性能面における設計自由度を向上させることができる。また、上記の液体組成物は、多様な付与方法に展開可能であるため、例えば、インクジェット方式で付与することができ、蓄電素子及び発電素子の形状面における設計自由度を向上させることができる。
なお、絶縁層は、正極と負極を隔離し、かつ正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。また、本開示において絶縁層と表す場合、層状の形状に限られない。
前記基材は、蓄電素子用又は発電素子用の絶縁層(フィルムセパレータ)であってもよく、前記液体組成物は、基材としての、蓄電素子用又は発電素子用の絶縁層(第一の絶縁層)上に付与されることで、追加的に、多孔質樹脂層からなる絶縁層(第二の絶縁層)を形成することができる。第一の絶縁層上に第二の絶縁層を形成することで、絶縁層全体としての耐熱性、耐衝撃性、耐高温収縮性などの諸機能を追加又は向上させることができる。
前記電極基体としては、導電性を有する基材であれば、特に制限はなく、一般に蓄電デバイスである2次電池、キャパシタ、なかでもリチウムイオン2次電池に好適に用いることができる基材が挙げられ、例えば、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、及びそれらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシタに用いられる穴あき電極基体などが用いられる。また、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパー繊維状の電極を不織又は織状で平面にしたものや上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものも使用できる。更に、太陽光デバイスの場合、上記電極に加えてガラスやプラスチックスなどの平面基材上に、インジウム・チタン系の酸化物や亜鉛酸化物のような、透明な半導体薄膜を形成したものや、導電性電極膜を薄く蒸着したものを用いることができる。
活物質層は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散し、かかる液を電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されており、通常は、スプレー、ディスペンサー、ダイコーターや引き上げ塗工を用いた印刷が用いられ、塗布後に乾燥して形成される。
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極用活物質として使用できる。リチウム含有遷移金属化合物として、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePOなどのオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物、二酸化マンガンなどが挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bなどが挙げられ、これらの中でも、Mn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は1種でもよく、又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケルなどが挙げられる。
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料として、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。また、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、AB2系あるいはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。
正極又は負極の結着剤としては、例えば、PVDF、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、及びヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。また電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体などの有機導電性材料などが用いられる。
燃料電池での活物質は一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウムあるいは白金合金などの金属微粒子をカーボンなどの触媒担体に担持させたものが用いられる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体(塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅などの合金成分を含むもの)を添加し、懸濁液中に溶解させ、アルカリを加えて金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極上に塗布し、水素雰囲気下などで還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極を得る。
太陽電池等の場合、活物質は、酸化タングステン粉末や酸化チタン粉末のほかSnO、ZnO、ZrO、Nb、CeO、SiO、Alといった酸化物半導体層があげられ、半導体層には、色素が担持させられており、例えば、ルテニウム・トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム-ビス型の遷移金属錯体、オスミウム-トリス型の遷移金属錯体、オスミウム-ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、フタロシアニン及びポルフィリン、有機-無機のペロブスカイト結晶などの化合物を挙げることができる。
(積層電極又は積層セパレータの製造方法、及び積層電極又は積層セパレータの製造装置)
本実施形態に係る積層構造体の製造装置は、基材を電極基体上に設けられた活物質層とすることで積層電極の製造装置とすることができる。
また、本実施形態に係る積層構造体の製造装置は、基材をフィルムセパレータとすることで、積層セパレータの製造装置とすることができる。
(蓄電素子又は発電素子の製造方法、及び蓄電素子又は発電素子の製造装置)
本発明の蓄電素子又は発電素子の製造装置は、上述した本発明の積層構造体の製造装置により積層電極を製造する電極製造部と、前記積層電極を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する素子化部と、を有し、必要に応じて、更にその他の手段を有する。
本発明の蓄電素子又は発電素子の製造方法は、上述した本発明の積層構造体の製造装置により積層電極を製造する電極製造工程と、前記積層電極を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する素子化工程と、を含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
<電極製造部、及び電極製造工程>
前記電極製造部は、上記した本発明の収容容器と、前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物としての電極基体上に設けられた活物質層上に付与する付与手段と、を含み、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合手段を含むことが好ましく、更に必要に応じて、電極加工手段などのその他の手段を有する。
前記電極製造工程は、上記した本発明の液体組成物を付与対象物としての電極基体上に設けられた活物質層上に付与する付与工程を含み、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合工程を含むことが好ましく、更に必要に応じて、電極加工工程などのその他の手段を有する。
前記電極製造部、及び前記電極製造工程により、電極基体上に設けられた活物質層と、その上に本発明の多孔質樹脂からなる絶縁層とを有する積層電極を製造することができる。電解質層を有する積層電極は、電極基体上に設けられた活物質層と、前記多孔質樹脂と、が一体化された電解質層一体型の積層電極であってもよい。
前記付与手段、及び付与工程としては、積層構造体の製造装置、及び積層構造体の製造方法において説明した事項を適宜選択することができる。
前記重合手段、及び重合工程としては、積層構造体の製造装置、及び積層構造体の製造方法において説明した事項を適宜選択することができる。
<素子化部、及び素子化工程>
前記素子化部は、前記積層電池を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する手段である。
前記素子化工程は、前記積層電池を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する工程である。
電池を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の蓄電素子又は発電素子の製造方法を選択することができ、例えば、対向電極の設置、巻回又は積層、容器への収容の少なくともいずれかを行い蓄電素子とする方法が挙げられる。
なお、素子化工程としては、素子化の全行程を備える必要はなく、素子化の一部の工程を含むものであってもよい。
<電極加工部、及び電極加工工程>
電極加工部は、付与部よりも下流において、樹脂層が形成された積層電極を加工する。電極加工部は、裁断、折り畳み、及び貼り合わせの少なくとも1つを実施してもよい。積層電極加工部は、例えば、樹脂層が形成された積層電極を裁断し、積層電極の積層体を作製することができる。電極加工部は、樹脂層が形成された積層電極を巻回又は積層することができる。
電極加工部は、例えば、電極加工装置を有し、多孔質樹脂層が形成された積層電極の裁断やつづら折り、積層や巻回を目的の電池形態に応じて実施する。
電極加工部によって行われる電極加工工程は、例えば、付与工程よりも下流において、樹脂層が形成された積層電極を加工する工程である。電極加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、及び貼り合わせ工程の少なくとも1つを含んでもよい。
<白色インク用途>
前記液体組成物は、多孔質樹脂を形成させてからポロジェンを除去することで白色化するので、例えば、記録媒体上に付与する白色インクとして用いられることが好ましい。なお、本開示において白色インクとは、白色の画像を形成することができるインクであれば特に制限はなく、インク時に白色以外のもの(例えば、透明であるものや白色以外の色のもの)も含まれる。
白色インクとしては、酸化チタン等の無機顔料を色材として含有することで白色を呈するものが一般に知られている。しかし、このような白色インクは、色材の比重が大きいために沈降物が生じやすく、保存安定性及び吐出安定性に劣る課題がある。その点、上記の液体組成物により構成される白色インクは、液体組成物以外の成分として顔料や染料等の白色の色材を含有しなくても白色を呈することができるため、保存安定性及び吐出安定性を向上させることができる。なお、本実施形態の白色インクは、白色の色材を含有してもよいが、実質的に白色の色材を含有しないことが好ましい。
実質的に白色の色材を含有しない場合とは、白色の色材の含有量が、白色インクの質量に対して0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、検出限界以下であることがより更に好ましく、含有されていないことが特に好ましい。このように、白色インクが実質的に白色の色材を含有しないことで、白色インクにより形成される白色画像を軽量化することができ、例えば、航空機塗装用白色インク、自動車塗装用白色インク等として好適に用いることができる。
また、白色インクとしては、複数種類の重合性化合物を含有し、硬化の際にこれらの重合体が相分離することにより白濁するものも知られている。しかし、このような白色インクは、重合体同士の相分離により白色を呈し、空気層により白色を呈するわけではないので白色度に劣る課題がある。この点、本実施形態の液体組成物を白色インクとして用いた場合、空気層としての空孔を有する多孔質樹脂により白色を呈するため、高い白色度を発揮することができる。なお、白色とは社会通念上「白」と呼称される色であり、白色度は、例えば、X-Rite939等の分光測色濃度計により明度(L*)を測定することにより評価することができ、例えば、100%duty以上又は記録媒体の表面が十分に被覆される量で付与された場合に、明度(L*)及び色度(a*、b*)が、70≦L*≦100、-4.5≦a*≦2、-6≦b*≦2.5の範囲を示すことが好ましい。
また、本実施形態の白色インクは、記録媒体上に付与されると多孔質樹脂で構成される層を形成するため、その後付与される別のインク(色材を含有するインク等)の定着性を向上させる下地層(プライマー層)を作製するプライマーインクとして用いられてもよい。
一般に、記録媒体として、コート紙、ガラス基材、樹脂フィルム基材、金属基材等の低浸透性基材又は非浸透性基材を用いる場合、当該基材に対するインクの定着性が低下する課題がある。この点、本実施形態の白色インク(プライマーインク)を用いた場合、白色インク(プライマーインク)の低浸透性基材又は非浸透性基材に対する定着性が高いため、下地層上に後から付与される別のインクの定着性を向上させることができる。また、後から付与される別のインク(色材を含有するインク等)が、低浸透性基材又は非浸透性基材に用いるのが困難な浸透性のインク(水性インク等)であったとしても、多孔質樹脂中にインク成分を浸透拡散させつつ色材を多孔質樹脂表面に定着させることができる。
また、白色インク(プライマーインク)は白色の受容層を形成するため、記録媒体の色や透明性を隠蔽し、後から付与される別のインク(色材を含有するインク等)の画像濃度を向上させることもできる。
<立体造形用途>
前記液体組成物は、高さ方向の層厚みを有する多孔質樹脂層を形成できるので、当該多孔質樹脂層を複数層積層することで立体造形物を造形することができる。一般に、立体造形においては、硬化収縮に起因する立体造形物のゆがみが課題としてある。この点、本実施形態の液体組成物を含む立体造形用組成物は、重合誘起相分離に伴って網目構造を有する多孔質体を形成するため、当該網目構造により重合時の内部応力が緩和され、硬化収縮による造形物のゆがみが抑制される。
次に、立体造形物を造形する造形装置及び造形方法について、図14を用いて説明する。図14は、マテリアルジェット方式の造形装置の一例を示す概略図である。
図14の造形装置は、液体組成物をインクジェット方式等で吐出する吐出手段(付与手段の一例)と、吐出された液体組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段(第一の照射手段及び第二の照射手段の一例)と、を有し、当該吐出手段による吐出及び当該硬化手段による硬化を順次繰り返すことにより立体造形物を造形する装置である。また、図14の造形装置で実現される造形方法は、液体組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程(吐出工程の一例)と、吐出された液体組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程(第一の照射工程及び第二の照射工程の一例)と、を有し、当該吐出工程及び当該硬化工程を順次繰り返すことにより立体造形物を造形する方法である。
この造形装置及び造形方法について具体的に説明する。図14の造形装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の立体造形用組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の立体造形用組成物とは組成が異なる第二の立体造形用組成物を吐出し、隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各立体造形用組成物を硬化しながら積層するものである。より具体的には、例えば、造形物支持基板37上に、第二の立体造形用組成物を支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の立体造形用組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、図14では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
<担持体用途>
前記液体組成物を機能性物質と混合して多孔質樹脂を形成させた場合、多孔質樹脂の表面に機能性物質が担持された担持体を作製することができる。ここで、多孔質樹脂の表面とは、多孔質樹脂の外部表面だけでなく外部と連通する内部表面も含む意味である。このように、外部と連通する空隙に機能性物質を担持させることができるので、機能性物質を担持可能な表面積が増加する。
本実施形態の担持体形成用液体組成物を用いた場合、重合性化合物の含有量、ポロジェンの含有量、活性エネルギー線の照射条件等を適宜調整することで空孔や空隙率を変更することができ、担持体の性能面における設計自由度を向上させることができる。また、本実施形態の担持体形成用液体組成物は、多様な付与方法に展開可能であるため、例えば、インクジェット方式で付与することができ、担持体の形状面における設計自由度を向上させることができる。具体的には、平面だけでなく曲面に対しても担持体を均一に形成することができ、対象の形状に合わせて担持体を切削等して形状調整する手間も省略することができる。また、インクジェット方式で吐出することで液滴を形成し、飛翔中の液滴又は基材上に付着した独立した液滴に対して活性エネルギー線を照射することで、粒子の形状を有する担持体を形成することもできる。
機能性物質は、直接的又は間接的に所定の機能を発揮する物質であって、多孔質樹脂に担持される面積の増加に伴って当該機能も増加又は向上する物質であることが好ましく、担持される機能性物質が外部表面及び/又は外部と連通する内部表面に位置することで当該機能が発揮される物質であること(言い換えると、外部と連通しない内部表面に位置した場合に当該機能の発揮が抑制される物質)がより好ましい。また、機能性物質は、液体組成物に溶解する物質でも分散する物質でもよいが、分散する物質であることが好ましい。機能性物質の一例としては、特に制限されないが、光触媒、生理活性物質などが挙げられる。
光触媒は、特定の波長域にある光(光触媒の価電子帯と導電帯の間のバンドギャップ以上のエネルギーを有する励起光)を照射されることにより光触媒活性を示す物質である。光触媒は、当該光触媒活性を示すことにより、抗菌作用、消臭・脱臭作用、揮発性有機化合物(VOC)等の有害物質分解作用等の種々の作用を発揮することができる。
光触媒としては、例えば、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン(IV)(TiO)、酸化タングステン(III)(W)、酸化タングステン(IV)(WO)、酸化タングステン(VI)(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(III)(Fe)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化ビスマス(III)(Bi)、バナジン酸ビスマス(BiVO)、酸化スズ(II)(SnO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化スズ(VI)(SnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化セリウム(II)(CeO)、酸化セリウム(IV)(CeO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化インジウム(III)(In)、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、タンタル酸カリウム(KTaO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)などの金属酸化物;硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化インジウム(InS)などの金属硫化物;セレン酸カドミウム(CdSeO)、セレン化亜鉛(ZnSe)などの金属セレン化物;窒化ガリウム(GaN)などの金属窒化物などが挙げられる。これらの中でも、酸化チタン(IV)(TiO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化タングステン(III)(W)、酸化タングステン(IV)(WO)、及び酸化タングステン(VI)(WO)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アナターゼ型の酸化チタン(IV)(TiO)を含むことがより好ましい。
生理活性物質は、生体に生理的効果を発揮させるために用いられる有効成分であり、例えば、医薬化合物、食品化合物、化粧料化合物などを含む低分子化合物の他、抗体、酵素等のタンパク質及びDNA、RNA等の核酸などの生体高分子を含む高分子化合物などが挙げられる。また、「生理的効果」とは、生理活性物質が目的部位で生理活性を発揮することにより生じる効果であり、例えば、生体、組織、細胞、タンパク質、DNA、RNA等に量的及び/又は質的な変化、影響をもたらすことである。また、「生理活性」とは、生理活性物質が目的部位(例えば、標的組織等)に作用して変化、影響を与えることである。目的部位としては、例えば、細胞表面又は細胞内に存在する受容体等であることが好ましい。この場合は、生理活性物質が特定の受容体に結合する生理活性によって細胞にシグナルが伝わり、結果として生理的効果が発揮される。生理活性物質は、生体内の酵素により成熟型に変換された上で特定の受容体に結合し、生理的効果が発揮される物質であってもよい。この場合、本願では、成熟型に変換される前の物質も生理活性物質に含まれるものとする。なお、生理活性物質は、生物(ヒト又はヒト以外の生物)が作り出す物質であってもよいし、人工的に合成された物質であってもよい。このような生理活性物質を含有する液体組成物を用いて粒子状の担持体を形成した場合、所望の生理的効果を発揮するために、生理活性物質を目的部位に送達する粒子、すなわちドラッグデリバリーシステム(DDS)に用いられる粒子や、長期的に薬剤を放出し続ける徐放性粒子として用いることができる。また、生理活性物質を含有する液体組成物を用いてシート状の担持体を形成した場合、長期的に薬剤を放出し続ける徐放性シートとして用いることができる。
<表面改質用途>
前記液体組成物により形成される多孔質樹脂の外部表面は、多孔質に由来する微細な凹凸が形成されており、これにより濡れ性を制御することができる。具体的には、多孔質樹脂を構成する樹脂が親水性である場合、多孔質樹脂の外部表面に、当該樹脂により形成される平面状表面における親水性より高い親水性を機能付与することができる。また、多孔質樹脂を構成する樹脂が撥水性である場合、多孔質樹脂の外部表面に、当該樹脂により形成される平面状表面における撥水性より高い撥水性を機能付与することができる。従って、対象物表面に対し、本実施形態の液体組成物を含む表面改質液を付与することで表面改質層を形成させ、対象物表面の濡れ性を容易に改変することができる。
また、本実施形態の液体組成物を用いた場合、重合性化合物の含有量、ポロジェンの含有量、活性エネルギー線の照射条件等を適宜調整することで多孔質の外部表面における凹凸(空孔や空隙率に由来する凹凸)を変更することができ、表面改質層の性能面における設計自由度を向上させることができる。また、本実施形態の液体組成物は、多様な付与方法に展開可能であるため、例えば、インクジェット方式で付与することができ、表面改質層の形状面における設計自由度を向上させることができる。具体的には、平面だけでなく曲面に対しても表面改質層を均一に形成することができる。
<分離用途又は反応層用途>
前記液体組成物により形成される多孔質樹脂が液体や気体などの流体を透過可能である場合、当該多孔質樹脂を流体の流路として用いることができる。多孔質樹脂を流体の流路として用いることができる場合、多孔質樹脂は、流体から所定の物質を分離する分離層としての用途や流体に微小な反応場を提供する反応層(マイクロリアクター)としての用途等に用いることができる。言い換えると、本実施形態の液体組成物は、分離層形成用組成物又は反応層形成用組成物に含まれることが好ましい。これら用途に用いられる多孔質樹脂は、多孔質樹脂内部において流体を均一かつ効率的に透過可能であることが好ましい。この点、本実施形態の液体組成物により形成される多孔質樹脂は、多孔質が相分離により形成されることから、空隙同士が連続して接続されており、流体を均一かつ効率的に透過可能な構造を有している。
なお、多孔質樹脂が液体や気体などの流体を透過可能である場合とは、特に限定されないが、例えば、JIS P8117に準拠して測定される透気度が500秒/100mL以下である場合が好ましく、300秒/100mL以下である場合がより好ましい。このとき、透気度は、例えば、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)等を用いて測定される。
なお、分離とは、流体である混合物に含まれる所定の物質を除去又は濃縮できることをいう。また、除去は、流体である混合物から所定の物質が完全に取り除かれる場合に限られず、一部量が取り除かれる場合であってもよい。
なお、反応場とは、流体に含まれる所定の物質が通過することで所定の化学反応が進行する場所をいう。
分離層用途に用いる場合、前記液体組成物は、流体に含まれる所定の物質と相互作用可能な官能基を有する重合性化合物を含有することが好ましい。当該液体組成物を用いて多孔質樹脂を形成すると、多孔質樹脂の表面(内部表面及び外部表面)に所定の物質と相互作用可能な官能基が配され、効果的に所定の物質の分離を行うことができる。流体に含まれる所定の物質と相互作用可能な官能基を有する重合性化合物は、液体組成物に含まれる重合性化合物の一部であってもよく、全部であってもよい。なお、「所定の物質と相互作用可能な官能基」とは、当該官能基自体が所定の物質と相互作用可能である場合に加え、追加的にグラフト重合がなされることにより所定の物質と相互作用可能となる場合も含む。
反応層用途に用いる場合、前記液体組成物は、流体に反応場を提供する官能基を有する重合性化合物を含有することが好ましい。当該液体組成物を用いて多孔質樹脂を形成すると、多孔質樹脂の表面(内部表面及び外部表面)に流体に反応場を提供する官能基が配され、効果的に反応場を提供することができる。流体に反応場を提供する官能基を有する重合性化合物は、液体組成物に含まれる重合性化合物の一部であってもよく、全部であってもよい。なお、「流体に反応場を提供する官能基」とは、当該官能基自体が反応場を提供可能である場合に加え、追加的にグラフト重合がなされることにより反応場を提供可能となる場合も含む。
前記分離層及び反応層は、例えば、ガラス管等の流体流入部及び流体流出部を形成可能な容器に液体組成物を充填して硬化させることで形成する。また、液体組成物をインクジェット方式などで基材に対して印刷することにより、多孔質樹脂で形成される所望の形状の流路を有する分離層及び反応層を作製(描画)することもできる。分離層及び反応層の流路が印刷可能であることにより、目的に応じて流路を適宜変更可能な分離層及び反応層を提供することができる。
また、本実施形態の分離層形成用組成物及び反応層形成用組成物を用いた場合、重合性化合物の含有量、ポロジェンの含有量、活性エネルギー線の照射条件等を適宜調整することで多孔質樹脂の空孔や空隙率を変更することができ、分離層及び反応層の性能面における設計自由度を向上させることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
<液体組成物の調整>
以下に示す割合で材料を混合し、実施例1の液体組成物1を調製した。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社):25.2質量%
・EBECRYL4396(水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物;ダイセル・オルネクス株式会社製):2.8質量%
・テトラデカン(関東化学工業株式会社製):70.0質量%
・Omnirad819(BASF製):2.0質量%
調整した液体組成物1において、攪拌しながら波長550nmにおける光透過率を下記の方法で測定したところ30%以上であった。また、調整した液体組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を下記の方法で測定したところ1.0%以上であった。
また、調整した液体組成物の25℃における粘度を下記の方法で測定したところ1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であった。
[光透過率の測定方法]
前記光透過率は、具体的には以下の方法により測定した。
まず、液体組成物を石英セルに注入し、攪拌子を用いて300rpmで攪拌させながら、以下の条件により、液体組成物の波長550nmにおける光(可視光)の透過率を測定し、以下の評価基準により評価した。
・石英セル:スクリューキャップ付き特殊ミクロセル(商品名:M25-UV-2、ジーエルサイエンス株式会社製)
・透過率測定装置:Ocean Optics社製USB4000
・攪拌速度:300rpm
・測定波長:550nm
・リファレンス:石英セル内が空気の状態で、波長550nmにおける光の透過率を測定して取得した(透過率:100%)
(評価基準)
a:光透過率が30%以上である(重合性化合物とポロジェンとが相溶の状態である)
b:光透過率が30%未満である(重合性化合物と液体とが非相溶の状態である)
[ヘイズ値の上昇率の測定方法]
前記ヘイズ値の上昇率は、具体的には以下の方法により測定した。
-ヘイズ測定用素子の作製-
まず、無アルカリガラス基板上に、スピンコートにより樹脂微粒子を基板上に均一分散させ、ギャップ剤とした。続いて、ギャップ剤を塗布した基板を、ギャップ剤を塗布していない無アルカリガラス基板と、ギャップ剤を塗布した面を挟むようにして互いに貼り合わせた。次に、液体組成物を、貼り合わせた基板間に毛細管現象を利用して充填し、「UV照射前ヘイズ測定用素子」を作製した。続いて、UV照射前ヘイズ測定用素子にUV照射して液体組成物を硬化させた。最後に基板の周囲を封止剤で封止することで「ヘイズ測定用素子」を作製した。作製時の諸条件を以下に示す。
・無アルカリガラス基板:日本電気硝子製、40mm、t=0.7mm、OA-10G
・ギャップ剤:積水化学製、樹脂微粒子ミクロパールGS-L100、平均粒子径100μm
・スピンコート条件:分散液滴下量150μL、回転数1000rpm、回転時間30s
・充填した液体組成物量:160μL
・UV照射条件:光源としてUV-LEDを使用、光源波長365nm、照射強度30mW/cm、照射時間20s
・封止剤:TB3035B(Three Bond社製)
-ヘイズ値(曇り度)の測定-
次に、作製したUV照射前ヘイズ測定用素子とヘイズ測定用素子を用いてヘイズ値(曇り度)を測定した。UV照射前ヘイズ測定用素子における測定値をリファレンス(ヘイズ値0)とし、ヘイズ測定用素子における測定値(ヘイズ値)のUV照射前ヘイズ測定用素子における測定値に対する上昇率を算出し、以下の評価基準により評価した。
なお、測定に用いる装置を以下に示す。
・ヘイズ測定装置:Haze meter NDH5000 日本電色工業製
(評価基準)
a:ヘイズ値の上昇率が1.0%以上である(樹脂とポロジェンとが非相溶の状態である)
b:ヘイズ値の上昇率が1.0%未満である(樹脂と液体とが相溶の状態である)
[粘度の測定方法]
液体組成物の粘度は、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を使用して、25℃において測定した。
(評価基準)
a:粘度が1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下である(インクジェット方式にて良好な吐出性が得られる)
b:粘度が1.0mPa・s未満、又は30.0mPa・s超である
<積層構造体の製造>
-付与工程-
まず、調整した液体組成物1を、図3に示す多孔質樹脂の製造装置に充填し、印刷部10において、搬送される印刷基材4上に印刷装置1aから液体組成物を付与して、連続膜を形成した。液体組成物の液量は、印刷基材が銅箔などの非多孔質基材上に付与した際に、形成される連続膜の厚みが約20μmとなるように設定した。
印刷装置1aとしてはインクジェットヘッド(GEN5ヘッド、リコープリンティングシステムズ株式会社製)を用い、印刷基材4として以下の手順で作製した孔あき銅箔上に活物質層が形成された基材を用いた。
なお、インクジェットヘッドからの液体組成物の吐出は安定しており、不吐出ノズルや吐出曲がり等は観察されなかった。
-孔あき銅箔上に活物質層が形成された基材の作製-
活物質であるグラファイト粒子(平均粒径10μm)97.0質量部と、増粘剤であるセルロース1.0質量部と、バインダーであるアクリル樹脂2.0質量部と、を水中で均一に分散させて活物質分散体を得た。この分散体を電極基体である厚み8μmの孔あき銅箔に塗布し、得られた塗膜を120℃で10分乾燥後、プレスし、厚み60μmの活物質層が形成された電極基体を得た。
-照射工程-
次に、重合不活性気体循環装置2bにより、窒素が充填されることで酸素濃度が0%になっている重合部20の内部に、付与工程後の印刷基材4を搬送し、光照射装置2aから30mW/cmの照射強度で3秒UV照射を行った。光照射装置2aはUV-LEDであり、ピーク波長は365nmであった。
なお、浸み込み膜厚が0μm、すなわち基材上に形成される膜厚が20μmとなるように、液体組成物の付与工程から照射工程までの時間を調整した。
-除去工程-
更に、加熱装置3aにより120℃に加熱された加熱部30の内部に、照射工程後の印刷基材4を搬送し、残存する液体等を大気中において除去し、共連続構造を有し、平均厚みが約20μmの白色の多孔質樹脂が基材上に形成された実施例1の積層構造体を製造した。
(実施例1-2)
実施例1において、印刷基材4を発電素子用の絶縁層として用いられるポリエチレン多孔質樹脂シートに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例1-2の積層構造体を製造した。
(実施例2)
実施例1において、液体組成物の材料の割合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の液体組成物2、及び積層構造体を製造した。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):27.7質量%
・EBECRYL4396(水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物;ダイセル・オルネクス株式会社製):0.3質量%
・テトラデカン(関東化学工業株式会社製):70.0質量%
・Omnirad819(BASF製):2.0質量%
調整した液体組成物において、攪拌しながら波長550nmにおける光透過率を上記の方法で測定したところ30%以上であった。また、調整した液体組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を上記の方法で測定したところ1.0%以上であった。
また、調整した液体組成物の25℃における粘度を上記の方法で測定したところ1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であった。
(実施例3)
実施例1において、液体組成物の材料の割合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の液体組成物3、及び積層構造体を製造した。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):25.2質量%
・EBECRYL4396(水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物;ダイセル・オルネクス株式会社製):1.4質量%
・テトラデカン(関東化学工業株式会社製):70.0質量%
・Omnirad819(BASF製):2.0質量%
・デュラノールT5652(ポリカーボネートジオール(水酸基を有する成分);旭化成株式会社製):1.4質量%
調整した液体組成物において、攪拌しながら波長550nmにおける光透過率を上記の方法で測定したところ30%以上であった。また、調整した液体組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を上記の方法で測定したところ1.0%以上であった。
また、調整した液体組成物の25℃における粘度を上記の方法で測定したところ1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であった。
(実施例4)
実施例1において、液体組成物の材料の割合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4の液体組成物4、及び積層構造体を製造した。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):25.2質量%
・カレンズ(登録商標)MOI-DEM(ブロックされた水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物;昭和電工株式会社製):1.4質量%
・テトラデカン(関東化学工業株式会社製):70.0質量%
・Omnirad819(BASF製):2.0質量%
・デュラノールT5652(ポリカーボネートジオール(水酸基を有する成分);旭化成株式会社製):1.4質量%
調整した液体組成物において、攪拌しながら波長550nmにおける光透過率を上記の方法で測定したところ30%以上であった。また、調整した液体組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を上記の方法で測定したところ1.0%以上であった。
また、調整した液体組成物の25℃における粘度を上記の方法で測定したところ1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であった。
(比較例1)
実施例1において、液体組成物の材料の割合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして液体組成物a、及び積層構造体を製造した。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):28.0質量%
・テトラデカン(関東化学工業株式会社製):70.0質量%
・Omnirad819(BASF製):2.0質量%
調整した液体組成物において、攪拌しながら波長550nmにおける光透過率を上記の方法で測定したところ30%以上であった。また、調整した液体組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を上記の方法で測定したところ1.0%以上であった。
また、調整した液体組成物の25℃における粘度を上記の方法で測定したところ1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であった。
(比較例2)
実施例1において、液体組成物の材料の割合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして液体組成物b、及び積層構造体を製造した。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):27.7質量%
・EBECRYL4396(水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物;ダイセル・オルネクス株式会社製):0.3質量%
・シクロヘキサノン(関東化学工業株式会社製):70.0質量%
・Omnirad819(BASF製):2.0質量%
調整した液体組成物において、攪拌しながら波長550nmにおける光の透過率を上記の方法で測定したところ30%以上であった。また、調整した液体組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を上記の方法で測定したところ1.0%以上ではなかった。
また、調整した液体組成物の25℃における粘度を上記の方法で測定したところ1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であった。
次に、製造した多孔質樹脂におけるピール強度、通気度の評価を下記方法により行った。評価結果を表2に示す。
[ピール強度]
印刷基材4に作製した多孔質樹脂におけるピール強度を評価した。具体的には多孔質膜に粘着テープを貼付け引きはがしを実施した後に、断面のSEM観察により引きはがしによって生じた剥離面の部位を確認した。多孔質樹脂のピール強度の結果を次の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
a+:剥離の全面が多孔質膜内の界面以外で発生
a:剥離の一部が多孔質膜内の界面以外で発生
b:剥離が多孔質膜内の界面で発生
[通気度]
印刷基材4に作製した多孔質樹脂における通気度をJIS P8117に準拠して測定した。装置は、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)を用いた。多孔質樹脂の通気度の測定結果を次の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
a:通気度が300秒/100mL未満である
b:通気度が300秒/100mL以上である
表1~2に結果を示す。
比較例1の結果より、水酸基と共有結合を形成する官能基を有する重合性化合物を含まない場合、ピール強度の高い多孔質樹脂を製造することが困難であることが分かる。
比較例2の結果より、液体組成物が前記混合物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値(曇り度)の上昇率が1.0%以上でない場合、通気度の高い多孔質樹脂を製造することが困難であることが分かる。
(実施例5)
<液体組成物を用いた蓄電素子の作製例>
-負極の作製-
負極活物質であるグラファイト粒子(平均粒径10μm)97.0質量部と、増粘剤であるセルロース1.0質量部と、バインダーであるアクリル樹脂2.0質量部と、を水中で均一に分散させて負極活物質分散体を得た。この分散体を負極電極基体である厚み8μmの銅箔に塗布し、得られた塗膜を120℃で10分乾燥後、プレスし、厚みが60μmの電極合材部を得た。次に、これを50mm×33mmに切り出して負極を作製した。
-正極の作製-
正極活物質であるニッケル、コバルト、及びアルミの混合粒子94.0質量部と、導電助剤であるケッチェンブラック3.0質量部と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン樹脂3.0質量部と、を液体としてのN-メチルピロリドン中で均一に分散させて正極活物質分散体を得た。この分散体を電極基体である厚み15μmのアルミ箔にダイコートで塗布し、得られた塗膜を120℃で10分乾燥後、プレスし、厚みが50μmの電極合材部を得た。次に、これを43mm×29mmに切り出して正極を作製した。
-セパレータの作製-
実施例1の液体組成物1をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、上記の通り作製した負極に対し、液体組成物を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化物を得た。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することで液体を除去し、セパレータとして機能する多孔質樹脂と一体化した負極(積層構造体)を得た。
-蓄電素子の作製-
多孔質樹脂と一体化した負極と上記の通り作製した正極とを対向させ、電解液を注入し、外装としてラミネート外装材を用いて封止し、蓄電素子を作製した。なお、電解液としては、炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)の混合物(質量比が「EC:DMC=1:1」の混合物)に対し、電解質であるLiPFが濃度1.5mol/Lとなるように添加されている溶液を用いた。
作製した蓄電素子について蓄電素子としての機能が備わっているか試験したところ、蓄電素子としての機能、例えば充放電が行われていることが確認された。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 重合性化合物、及び液体を含む液体組成物であって、
前記重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含み、
前記液体組成物は、重合により多孔質樹脂を形成し、
前記液体組成物を攪拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率が、30%以上であり、
前記液体組成物を重合して前記多孔質樹脂としたときの、ヘイズ測定用素子の重合前後におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上であることを特徴とする液体組成物である。
<2> 蓄電素子又は発電素子用の絶縁層形成用の液体組成物であり、
前記多孔質樹脂が、蓄電素子又は発電素子用の絶縁層である前記<1>に記載の液体組成物である。
<3> 前記重合性化合物の重合性基が、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基の少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体組成物である。
<4> 前記水酸基と共有結合可能な官能基が、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基、アルコキシシリル基、シラノール基、及びオキサゾリン基から選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体組成物である。
<5> 前記水酸基と共有結合可能な官能基が、イソシアネート基である前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体組成物である。
<6> 前記重合性化合物が、水酸基を有する重合性化合物を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体組成物である。
<7> 前記重合性化合物の含有量が、前記液体組成物に対して10.0質量%以上50.0質量%以下であり、
前記液体の含有量が、前記液体組成物に対して50.0質量%以上90.0質量%以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体組成物である。
<8> 前記液体の沸点が、50℃以上250℃以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物である。
<9> 前記液体組成物中の前記重合性化合物が、熱又は光により重合反応を開始する前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物である。
<10> 25℃における粘度が、1mPa・s以上150mPa・s以下である前記<1>から<9>のいずれかに記載の液体組成物である。
<11> 25℃における粘度が、1mPa・s以上30mPa・s以下である前記<1>から<10>のいずれかに記載の液体組成物である。
<12> 前記多孔質樹脂が、孔径が0.01μm以上10μm以下の空孔を有する前記<1>から<11>のいずれかに記載の液体組成物である。
<13> 前記多孔質樹脂の空隙率が、30%以上である前記<1>から<12>のいずれかに記載の液体組成物である。
<14> 前記多孔質樹脂が、複数の空孔が連続して連結している共連続構造を有する前記<1>から<13>のいずれかに記載の液体組成物である。
<15> 基材と、
前記基材上に、前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物が重合してなる多孔質樹脂と、を有することを特徴とする積層構造体である。
<16> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器である。
<17> 前記<16>に記載の収容容器と、
前記収容容器に収容された前記液体組成物を基材上に付与する付与手段と、
前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合手段と、
を有することを特徴とする積層構造体の製造装置である。
<18> 前記基材が電極基体上に設けられた活物質層であり、前記積層構造体が積層電極である、又は
前記基材がフィルムセパレータであり、前記積層構造体が積層セパレータである前記<17>に記載の積層構造体の製造装置である。
<19> 前記<18>に記載の積層構造体の製造装置により積層電極を製造する電極製造部と、
前記積層電極を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する素子化部と、を有することを特徴とする蓄電素子又は発電素子の製造装置である。
<20> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物を基材上に付与する付与工程と、
前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合工程と、
を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法である。
<21> 前記液体組成物における前記重合性化合物が、水酸基を有する重合性化合物を含み、
前記液体組成物又は前記多孔質樹脂に外部エネルギーを付与し、前記水酸基を有する重合性化合物における水酸基と、前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物における水酸基と共有結合可能な官能基との間に共有結合を形成させる共有結合形成工程を更に含み、
前記共有結合形成工程は、前記重合工程と同時又は前記重合工程の実施後に実施される前記<20>に記載の積層構造体の製造方法である。
<22> 前記共有結合形成工程が、前記重合工程と同時に実施される前記<21>に記載の積層構造体の製造方法である。
<23> 前記重合工程後に実施される加熱工程を更に含み、
前記共有結合形成工程が、前記重合工程の実施後かつ前記加熱工程の実施前に実施される前記<21>に記載の積層構造体の製造方法である。
<24> 前記重合工程後に実施される加熱工程を更に含み、
前記共有結合形成工程が、前記加熱工程と同時に実施される前記<21>に記載の積層構造体の製造方法である。
<25> 前記重合工程後に実施される加熱工程を更に含み、
前記共有結合形成工程が、前記加熱工程の実施後に実施される前記<21>に記載の積層構造体の製造方法である。
<26> 前記基材が電極基体上に予め形成された活物質層であり、前記積層構造体が積層電極である、又は
前記基材がフィルムセパレータであり、前記積層構造体が積層セパレータである前記<20>から<25>のいずれかに記載の積層構造体の製造方法である。
<27> 前記<26>に記載の積層構造体の製造方法により積層電極を製造する電極製造工程と、
前記積層電極を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する素子化工程と、を含むことを特徴とする蓄電素子又は発電素子の製造方法である。
前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物、前記<15>に記載の積層構造体、前記<16>に記載の収容容器、前記<17>から<18>のいずれかに記載の積層構造体の製造装置、前記<19>に記載の蓄電素子又は発電素子の製造装置、前記<20>から<26>のいずれかに記載の積層構造体の製造方法、及び前記<27>に記載の蓄電素子又は発電素子の製造方法は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
1 電極基体
2 活物質層
3 多孔質樹脂
100 積層構造体
300、300’ 液体吐出装置(積層構造体の製造装置)
306 液体吐出ヘッド
307 タンク(収容容器)
特開2004-051783号公報 特開2016-104551号公報

Claims (20)

  1. 重合性化合物、及び液体を含む液体組成物であって、
    前記重合性化合物は、水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物を含み、
    前記液体組成物は、重合により多孔質樹脂を形成し、
    前記液体組成物を攪拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率が、30%以上であり、
    前記液体組成物を重合して前記多孔質樹脂としたときの、ヘイズ測定用素子の重合前後におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上であることを特徴とする液体組成物。
  2. 蓄電素子又は発電素子用の絶縁層形成用の液体組成物であり、
    前記多孔質樹脂が、蓄電素子又は発電素子用の絶縁層である請求項1に記載の液体組成物。
  3. 前記重合性化合物の重合性基が、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基の少なくともいずれかである請求項1に記載の液体組成物。
  4. 前記水酸基と共有結合可能な官能基が、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基、アルコキシシリル基、シラノール基、及びオキサゾリン基から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の液体組成物。
  5. 前記水酸基と共有結合可能な官能基が、イソシアネート基である請求項1に記載の液体組成物。
  6. 前記重合性化合物が、水酸基を有する重合性化合物を含む請求項1に記載の液体組成物。
  7. 前記重合性化合物の含有量が、10.0質量%以上50.0質量%以下であり、
    前記液体の含有量が、50.0質量%以上90.0質量%以下である請求項1に記載の液体組成物。
  8. 前記液体の沸点が、50℃以上250℃以下である請求項1に記載の液体組成物。
  9. 前記重合性化合物が、熱又は光により重合反応を開始する請求項1に記載の液体組成物。
  10. 25℃における粘度が、1mPa・s以上150mPa・s以下である請求項1に記載の液体組成物。
  11. 25℃における粘度が、1mPa・s以上30mPa・s以下である請求項1に記載の液体組成物。
  12. 前記多孔質樹脂が、孔径が0.01μm以上10μm以下の空孔を有する請求項1に記載の液体組成物。
  13. 前記多孔質樹脂の空隙率が、30%以上である請求項1に記載の液体組成物。
  14. 前記多孔質樹脂が、複数の空孔が連続して連結している共連続構造を有する請求項1に記載の液体組成物。
  15. 基材と、
    前記基材上に、請求項1から14のいずれかに記載の液体組成物が重合してなる多孔質樹脂と、を有することを特徴とする積層構造体。
  16. 請求項1から14のいずれかに記載の液体組成物を基材上に付与する付与工程と、
    前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合工程と、
    を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
  17. 前記液体組成物における前記重合性化合物が、水酸基を有する重合性化合物を含み、
    前記液体組成物又は前記多孔質樹脂に外部エネルギーを付与し、前記水酸基を有する重合性化合物における水酸基と、前記水酸基と共有結合可能な官能基を有する重合性化合物における水酸基と共有結合可能な官能基との間に共有結合を形成させる共有結合形成工程を更に含み、
    前記共有結合形成工程は、前記重合工程と同時又は前記重合工程の実施後に実施される請求項16に記載の積層構造体の製造方法。
  18. 前記重合工程後に実施される加熱工程を更に含む請求項17に記載の積層構造体の製造方法。
  19. 前記基材が電極基体上に予め形成された活物質層であり、前記積層構造体が積層電極である、又は
    前記基材がフィルムセパレータであり、前記積層構造体が積層セパレータである請求項16に記載の積層構造体の製造方法。
  20. 請求項19に記載の積層構造体の製造方法により積層電極を製造する電極製造工程と、
    前記積層電極を用いて蓄電素子又は発電素子を製造する素子化工程と、を含むことを特徴とする蓄電素子又は発電素子の製造方法。

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