JP2021102754A - 多孔質構造体、絶縁層、電極、蓄電素子、多孔質絶縁体の製造方法、多孔質構造体の製造装置、担持体、分離層、及び反応層 - Google Patents

多孔質構造体、絶縁層、電極、蓄電素子、多孔質絶縁体の製造方法、多孔質構造体の製造装置、担持体、分離層、及び反応層 Download PDF

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啓吾 鷹氏
Keigo Takauji
啓吾 鷹氏
後河内 透
Toru Gokochi
透 後河内
美玖 大木本
Miku Okimoto
美玖 大木本
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Naoki Sugihara
直樹 杉原
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Daisuke Nose
大輔 野勢
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Abstract

【課題】 2つ以上の多孔質構造体を積層して一体化させる場合、接合界面で剥離が生じやすくなる等の強度が低下する課題がある。また、接合界面において空隙の連通性が低下する課題がある。【解決手段】 連通する空孔を有する多孔質構造体であって、前記多孔質構造体は、樹脂Aにより形成される多孔質構造部Aと、樹脂Bにより形成される多孔質構造部Bと、を有し、前記多孔質構造部A及び前記多孔質構造部Bは、連続的に一体化しており、前記樹脂A及び前記樹脂Bは、構成成分が異なる多孔質構造体。【選択図】図2

Description

本発明は、多孔質構造体、絶縁層、電極、蓄電素子、多孔質絶縁体の製造方法、多孔質構造体の製造装置、担持体、分離層、及び反応層に関する。
一般に、多孔質構造体は様々な用途に活用できる。一例としては、多孔質構造体における空孔の形状や大きさ、骨格部分の表面特性等を適宜選択することで、特定の物質のみを透過または遮断する分離層を提供できる。また、別の一例としては、多孔質構造体が有する広大な表面積や空隙容積を活用することで、外部から取り込んだ気体や液体の効率的な反応場や貯蔵場を提供できる。
上記のような用途で多孔質構造体を用いる場合、多孔質構造体には、外部からの液体や気体を取り込みやすい構造であること、様々な環境下でも十分な強度を有すること等が求められる。また、高次な機能を有する分離層や反応場等を提供するために、空孔の形状、空孔の大きさ、骨格部分の表面特性、表面の濡れ性、耐熱性といった各種特性が異なる多孔質構造体を積層化する技術も求められている。
特許文献1には、少なくとも2層のポリエチレン微多孔質膜を積層した積層ポリエチレン微多孔質膜が開示されている。
しかしながら、2つ以上の多孔質構造体を積層して一体化させる場合、接合界面で剥離が生じやすくなる等の強度が低下する課題がある。また、接合界面において空隙の連通性が低下する課題がある。
請求項1に係る発明は、連通する空孔を有する多孔質構造体であって、前記多孔質構造体は、樹脂Aにより形成される多孔質構造部Aと、樹脂Bにより形成される多孔質構造部Bと、を有し、前記多孔質構造部A及び前記多孔質構造部Bは、連続的に一体化しており、前記樹脂A及び前記樹脂Bは、構成成分が異なる多孔質構造体である。
本発明は、構成成分が異なる樹脂により形成される多孔質構造部を複数有する多孔質構造体であっても、強度及び連通性に優れた効果を奏する。
図1は、本実施形態の多孔質構造体の製造方法を実現するための多孔質構造体の製造装置の一例を示す模式図である。 図2は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体の一例を示す断面模式図である。 図3は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体を有する電極の一例を示す断面模式図である。 図4は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体を有する蓄電素子の一例を示す断面模式図である。 図5は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体における形状維持機能及びシャットダウン機能の一例を説明する説明図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<<多孔質構造体>>
本実施形態の多孔質構造体は、空孔を複数有し、これら空孔が連通している(言い換えると、複数の空孔が連続して繋がっている)構造体である。このような構造は、共連続構造又はモノリス構造とも称する。多数の空孔を有し、一つの空孔が周囲の他の空孔と連結することで連通性を有し、連続する空孔が三次元的に広がっている。これにより、多孔質構造体において液体や気体の浸み込みが十分に起き、物質分離や反応場といった機能を効率的に発現させることができる。また、多孔質構造体を蓄電素子における絶縁層として用いた場合、正極及び負極の間を絶縁しつつ電解液の浸透性やイオンの透過性が向上し、蓄電素子内部の反応が効率的に進行する。
空孔が連通していることを確認する方法としては、例えば、多孔質構造体の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等により画像観察し、空孔同士の繋がりが連続していることを確認する方法が挙げられる。また、空孔が連通していることで得られる物性の一つとして透気度が挙げられる。多孔質構造体の透気度は、例えば、JIS P8117に準拠して測定され、1000秒/100mL以下である場合が好ましく、500秒/100mL以下である場合がより好ましく、300秒/100mL以下である場合が更に好ましい。このとき、透気度は、例えば、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)等を用いて測定される。従って、一例として、透気度が1000秒/100mL以下であることをもって空孔が連通していると判断してもよい。
空孔の断面形状は、特に制限されず、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状が挙げられる。また、空孔の大きさも特に制限されない。ここで、空孔の大きさとは、断面形状において引ける最も長い直線の長さを指すものとする。空孔の大きさは、走査電子顕微鏡(SEM)等で撮影した断面写真から求めることができる。多孔質構造体の有する空孔の大きさは、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましい。空孔の大きさが0.1μm以上10μm以下であることで、多孔質構造体において液体や気体の浸み込みが十分に起き、物質分離や反応場といった機能を効率的に発現させることができる。また、後述するように、多孔質構造体を蓄電素子の絶縁層として用いる場合、空孔の大きさが10μm以下であることで、蓄電素子の内部で発生するリチウムデンドライドによる正極と負極の間の短絡を防止することができ、安全性が向上する。多孔質構造体の空隙率としては、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、多孔質構造体の空隙率は、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。空隙率が30%以上であることで、多孔質構造体において液体や気体の浸み込みが十分に起き、物質分離や反応場といった機能を効率的に発現させることができる。また、多孔質構造体を蓄電素子における絶縁層として用いた場合、電解液の浸透性やイオンの透過性が向上し、蓄電素子内部の反応が効率的に進行する。また、空隙率が90%以下であることで、多孔質構造体の強度が向上する。なお、多孔質構造体の空隙率を測定する方法としては特に限定されないが、例えば、多孔質構造体に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後で、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて空隙率を測定する方法が挙げられる。
本実施形態の多孔質構造体は、多孔質構造部Aと、多孔質構造部Bと、を有する。多孔質構造部A及び多孔質構造部Bは、それぞれ、連通する空孔を有する多孔質構造体の一部を構成する領域である。従って、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bも、それぞれ、前述した連通する空孔を有する。また、多孔質構造部Aは樹脂Aにより形成され、多孔質構造部Bは樹脂Bにより形成される。言い換えると、多孔質構造部Aの骨格部分(空孔以外の部分)は樹脂Aを含み、必要に応じてその他材料を含む。また、多孔質構造部Bの骨格部分(空孔以外の部分)は樹脂Bを含み、必要に応じてその他材料を含む。なお、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bも、それぞれ、空隙率が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、それぞれ、空隙率が90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。
本実施形態の多孔質構造体において、多孔質構造部Aを形成する樹脂A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂Bは、構成成分が異なる。樹脂Aと樹脂Bの構成成分が異なることで、単一の構成成分からなる多孔質構造体では実現が困難な機能を実現することができる。ここで、構成成分が異なるとは、樹脂Aと樹脂Bの化学構造が異なることを表す。化学構造が異なる場合としては、例えば、樹脂A及び樹脂Bが異なる種類の重合性化合物を用いて合成された樹脂である場合、樹脂A及び樹脂Bが異なる種類の重合開始剤を用いて合成された樹脂である場合、樹脂A及び樹脂Bが異なる含有量の重合性化合物を用いて合成された樹脂である場合、樹脂A及び樹脂Bが異なる含有量の重合開始剤を用いて合成された樹脂である場合、樹脂A及び樹脂Bが異なる配合比の重合性化合物を用いて合成された樹脂である場合、樹脂A及び樹脂Bが異なる配合比の重合開始剤を用いて合成された樹脂である場合、及びこれらを組み合わせた場合などが挙げられる。すなわち、構成成分が異なることには、樹脂の構造単位における化学構造上の相違だけでなく、樹脂の重合度に基づく化学構造上の相違等も含まれる。また、重合開始剤の種類、含有量、又は配合比が異なる場合、樹脂の化学構造の一部に組み込まれる重合開始剤由来の構造の種類、含有量、又は配合比も異なることになるので、これらも構成成分が異なることに含まれる
なお、樹脂Aと樹脂Bの化学構造が異なる場合、一般に、樹脂Aと樹脂Bの物性も異なる。物性としては、例えば、ガラス転移点、融点、濡れ性、硬度、及び耐擦過性などが挙げられる。
なお、樹脂Aと樹脂Bの化学構造が異なる以上は、重合することで樹脂Aを形成する液体組成物Aの組成と、重合することで樹脂Bを形成する液体組成物Bの組成と、は異なる。
樹脂Aと樹脂Bの化学構造が異なることで、樹脂Aと樹脂Bの物性が異なる場合の一例として、樹脂Aと樹脂Bの硬度又は耐擦過性が異なる場合について説明する。例えば、多孔質構造体の形状が層状(言い換えると、フィルム状)であって、一方の表面が樹脂Aにより形成される多孔質構造部Aであり、他方の面の表面が樹脂Bにより形成される多孔質構造部Bである場合において、外部部材の接触等により、いずれかの表面において高い硬度又は耐擦過性が求められる用途が想定される。このような場合、樹脂A及び樹脂Bのうち、外部部材と接触し得る一方の樹脂の硬度又は耐擦過性が他方の樹脂の硬度又は耐擦過性より高いことが好ましい。言い換えると、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bのうち、外部部材と接触し得る一方の多孔質構造部の硬度又は耐擦過性が他方の多孔質構造部の硬度又は耐擦過性より高いことが好ましい。このような物性を有する多孔質構造体を用いることで、液体組成物Aと液体組成物Bの混合液を付与してから硬化させて得られた多孔質構造体に比べ、実質的に高い硬度又は耐擦過性を有する多孔質構造体を提供することができる。硬度の測定方法としては、例えば、薄膜硬度計(ナノインデンター)により押し込み硬度を測定する方法などが挙げられる。耐擦過性の測定方法としては、例えば、鉛筆硬度試験などが挙げられる。
なお、高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂及びこの樹脂により形成される多孔質構造部を得る方法としては、例えば、液体組成物全量に対する重合性化合物の含有量を多くする方法等が挙げられる。
本実施形態の多孔質構造体において、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bは、連続的に一体化している。多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化しているとは、多孔質構造部Aを形成する樹脂Aと多孔質構造部Bを形成する樹脂Bとが、中間層を介して一体化していることを表す。ここで中間層とは、「重合することで樹脂Aを形成する液体組成物Aと、重合することで樹脂Bを形成する液体組成物Bと、の混合液」が重合することで形成される樹脂からなる層である。言い換えると、中間層とは、「液体組成物Aに含まれる重合性化合物に由来する構造単位と、液体組成物Bに含まれる重合性化合物に由来する構造単位と、を有する樹脂」であり、樹脂A及び樹脂Bとは化学構造が異なる樹脂である。また、中間層を構成する樹脂の化学構造は、1種類に限定されない。例えば、中間層を構成する樹脂は、樹脂Aに類似する化学構造を有する樹脂から樹脂Bに類似する化学構造を有する樹脂に段階的に変化する化学構造を有していてもよい。また、複数の中間層を有していてもよい。なお、中間層も、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bと同様に連通する空孔を有する。また、多孔質構造部A及び中間層の間においても空孔は連続しており、かつ、多孔質構造部B及び中間層の間においても空孔は連続している。
多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化していることを確認する方法としては、特に限定されないが、例えば、多孔質構造体の断面を画像観察し、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの間に界面が観察されないことを確認する方法が挙げられる。多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化している場合、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの間に界面が形成されないため、界面において剥離が生じやすいことに基づく強度の低下を抑制することができる。また、中間層は連通する空孔を有するため、中間層において空孔の連通性が低下することが抑制され、気体、液体、イオン等の透過阻害が抑制される。なお、界面を画像観察すること以外に、連続的に一体化していることを確認する方法としては、多孔質構造部A、多孔質構造部B、及び中間層において成分分析を行う方法が挙げられる。
なお、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化していない場合とは、例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを積層又は接着させた場合、樹脂A及び樹脂Bが混在している領域(当該領域は、前述した混合液が重合することで形成される樹脂を含まないので中間層に相当しない)を介して多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを一体化させた場合などが挙げられる。
本実施形態の多孔質構造体の形状は、目的に応じて適宜選択されるが、例えば、層状(言い換えると、フィルム状)であることが好ましい。多孔質構造体が層状である場合、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの形状は、目的に応じて適宜選択されるが、例えば、多孔質構造体の面方向に対して略均一な厚さを有する層状であってもよいし、多孔質構造体の一部領域においてのみ層状であってもよい。また、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bは、中間層を介して繰り返し配置されてもよい。なお、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの形状は、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化していれば特に限定されない。例えば、多孔質構造体の面方向において、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが中間層を介して隣接している形状などであってもよい。
<樹脂>
多孔質構造部Aを形成する樹脂A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂B(以降、「樹脂」とも称する)について説明する。使用可能な樹脂としては、特に限定されないが、例えば、電離放射線、紫外線、及び赤外線(熱)等の活性エネルギー線を照射することによって形成可能な樹脂であるアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、及びエン-チオール反応を利用した樹脂等が挙げられるが、中でも、反応性が高いラジカル重合を利用して樹脂を形成可能なアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、及びビニルエステル樹脂が好ましく、アクリレート樹脂、及びメタアクリレート樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
なお、樹脂としては、電離放射線及び紫外線を照射することによって樹脂を形成可能なものが好ましい。電離放射線及び紫外線を照射することによって瞬時に樹脂を形成することができるため、液体組成物Aを液体組成物B上に付与してから活性エネルギー線を照射して樹脂を形成する場合又は液体組成物Bを液体組成物A上に付与してから活性エネルギー線を照射して樹脂を形成する場合において、液体組成物A及び液体組成物Bが接触することで生じる混合液に活性エネルギー線が照射されて形成される中間層の割合を低減することができる。これにより、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの割合を増加させることができ、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bそれぞれの存在により発揮される機能、言い換えると、単一の多孔質構造部では実現が困難な機能をより向上させることができる。
−液体組成物−
重合することで樹脂Aを形成する液体組成物A及び重合することで樹脂Bを形成する液体組成物B(以降、「液体組成物」とも称する)は、重合性化合物、溶媒、重合開始剤などを含むことが好ましい。
また、液体組成物は、硬化することで多孔質構造部を形成する。なお、本実施形態において、硬化することで多孔質構造部を形成するとは、液体組成物中において多孔質構造部が形成される場合だけでなく、液体組成物中において多孔質構造体前駆体が形成され、その後の工程(例えば、加熱工程等)で多孔質構造体が形成される場合等も含む意味である。また、液体組成物全体が硬化することで多孔質構造体を形成する場合だけでなく、液体組成物中の一部成分(重合性化合物等)が硬化(重合)することで多孔質構造体を形成し、液体組成物中のその他成分(溶媒等)が硬化せずに多孔質構造体を形成しない場合等も含む意味である。
−−重合性化合物−−
重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、液体組成物中において重合した場合に多孔質構造を形成する。また、重合性化合物は、活性エネルギー線が照射されることで樹脂を形成することが好ましい。また、重合性化合物により形成される樹脂は、2官能以上の重合性化合物を用いることで、分子内に架橋構造を有していることが好ましい。これにより多孔質構造部のガラス転移点又は融点を高めることができ、結果として強度が向上する。
なお、活性エネルギー線としては、液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中でも紫外線であることが好ましい。なお、特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
重合性化合物は、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有することが好ましい。その例としては、1官能、2官能、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、及びラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が好ましい。
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
液体組成物中における重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、5.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下が更に好ましい。重合性化合物の含有量が70.0質量%以下である場合、得られる多孔質構造部の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質構造部が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、重合性化合物の含有量が5.0質量%以上である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されることで多孔質構造が十分に形成され、得られる多孔質構造部の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
なお、高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂及びこの樹脂により形成される多孔質構造部を得たい場合、液体組成物中における重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、30.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、40.0質量%以上70.0質量%以下がより好ましく、50.0質量%以上70.0質量%以下が更に好ましい。液体組成物全量に対する重合性化合物の含有量を多くすることで高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂及びこの樹脂により形成される多孔質構造部を実現できるためである。なお、液体組成物A及び液体組成物Bから選ばれる少なくなる一方において液体組成物中における重合性化合物の含有量が上記範囲であればよい。
−−溶媒−−
溶媒(以降、「ポロジェン」とも称する)は、重合性化合物と相溶する液体である。また、溶媒は、液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。液体組成物中に溶媒が含まれることで、重合性化合物は、液体組成物中において重合した場合に多孔質構造部を形成する。また、光または熱によってラジカル又は酸を発生する化合物(後述する重合開始剤)を溶解可能であることが好ましい。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、溶媒は重合性を有さない。
ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、50℃以上250℃以下であることが好ましく、70℃以上200℃以下であることがより好ましい。沸点が50℃以上であることにより、室温付近におけるポロジェンの気化が抑制されて液体組成物の取扱が容易になり、液体組成物中におけるポロジェンの含有量の制御が容易になる。また、沸点が250℃以下であることにより、重合後のポロジェンを乾燥させる工程における時間が短縮されて、多孔質構造体の生産性が向上する。また、多孔質構造部の内部に残存するポロジェンの量を抑制することができるので、多孔質構造体を物質間の分離を行う分離層や反応場としての反応層などの機能層として利用する場合に品質が向上する。
また、ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、120℃以上であることが好ましい。
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体も挙げることができる。また、アセトン、2−エチルヘキサノール、1−ブロモナフタレン等の液体も挙げることができる。
なお、上記の例示された液体であれば常にポロジェンに該当するわけではない。ポロジェンとは、上記の通り、重合性化合物と相溶する液体であって、且つ液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。言い換えると、ある液体がポロジェンに該当するか否かは、重合性化合物および重合物(重合性化合物が重合することにより形成される樹脂)との関係で決まる。
なお、液体組成物は、上記の通り、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればいいため、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)を追加的に含有していてもよい。但し、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)の含有量は、液体組成物全量に対して10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、含まれないことが特に好ましい。
液体組成物中におけるポロジェンの含有量は、液体組成物全量に対して、30.0質量%以上95.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下が更に好ましい。ポロジェンの含有量が30.0質量%以上である場合、得られる多孔質構造部の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質構造部が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、ポロジェンの含有量が95.0質量%以下である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されることで多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造部の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
なお、高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂及びこの樹脂により形成される多孔質構造部を得たい場合、液体組成物中における重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、30.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以上50.0質量%以下が更に好ましい。液体組成物全量に対する重合性化合物の含有量を多くし、それに伴って液体組成物全量に対するポロジェンの含有量を少なくすることで、高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂及びこの樹脂により形成される多孔質構造部を実現できるためである。なお、液体組成物A及び液体組成物Bから選ばれる少なくなる一方において液体組成物中におけるポロジェンの含有量が上記範囲であればよい。
液体組成物中における重合性化合物の含有量とポロジェンの含有量の質量比(重合性化合物:ポロジェン)は、1.0:0.4〜1.0:19.0が好ましく、1.0:1.0〜1.0:9.0がより好ましく、1.0:1.5〜1.0:4.0が更に好ましい。
なお、高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂及びこの樹脂により形成される多孔質構造部を得たい場合、液体組成物中における重合性化合物の含有量とポロジェンの含有量の質量比(重合性化合物:ポロジェン)は、1.0:0.4〜1.0:0.9が好ましく、1.0:0.4〜1.0:0.8がより好ましく、1.0:0.4〜1.0:0.7が更に好ましい。ポロジェンの含有量に対する重合性化合物の含有量を多くすることで高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂及びこの樹脂により形成される多孔質構造部を実現できるためである。なお、液体組成物A及び液体組成物Bから選ばれる少なくなる一方において重合性化合物の含有量とポロジェンの含有量の質量比が上記範囲であればよい。
−−重合開始剤−−
重合開始剤は、光や熱等のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させることが可能な材料である。重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、商品名イルガキュアーやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、より具体的な化合物としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα−ヒドロキシ−もしくは、α−アミノセトフェノン、4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインn−プロピル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物、等が好適に使用される。
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。又、熱のみで重合させる場合は通常のラジカル発生剤であるazobisisobutyronitrile(AIBN)等の熱重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤の含有量は、十分な硬化速度を得るために、重合性化合物の総質量を100.0質量%とした場合に、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
−液体組成物の物性−
液体組成物の粘度は、液体組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上200.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下が更に好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が特に好ましい。液体組成物の粘度が1.0mPa・s以上200.0mPa・s以下であることにより、液体組成物をインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE−550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
<<多孔質構造体の製造装置、多孔質構造体の製造方法>>
図1は、本実施形態の多孔質構造体の製造方法を実現するための多孔質構造体の製造装置の一例を示す模式図である。
<多孔質構造体の製造装置>
多孔質構造体の製造装置100は、上記の液体組成物を用いて多孔質構造体を製造する装置である。多孔質構造体の製造装置100は、基材4上に液体組成物を付与する工程を実行する付与工程部10と、基材4上に液体組成物が付与されることで形成された液体組成物層が含む重合性化合物を重合させることで多孔質構造体の前駆体6を得る重合工程を実行する重合工程部20と、多孔質構造体の前駆体6を加熱して多孔質構造体を得る加熱工程を含む加熱工程部30を備える。多孔質構造体の製造装置100は、基材4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、付与工程部10、重合工程部20、加熱工程部30の順に基材4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
−付与工程部−
付与工程部10は、基材4上に液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段の一例である付与装置1aと、液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を付与装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。ここで、液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段は、液体組成物Aを付与する付与工程Aを実現する付与手段Aと、液体組成物Bを付与する付与工程Bを実現する付与手段Bと、を有する。また、液体組成物A及び液体組成物Bは、それぞれ、別の収容容器1bに収容され、別の供給チューブ1cを介して、別の付与装置1aに供給される。
収容容器1bは液体組成物7を収容し、付与工程部10は、付与装置1aから基材4の方向に液体組成物7を吐出することで液体組成物7を付与し、液体組成物層を薄膜状に形成する。このとき、付与工程A及び付与工程Bの順番は限定されず、付与工程Aが先に実行される場合、付与工程Bが先に実行される場合、及び付与工程Aと付与工程Bとが同時に実行される場合のいずれであってもよい。但し、付与された液体組成物A及び付与された液体組成物Bが互いに未硬化の状態で接触していることが好ましい。すなわち、付与工程Aが先に実行される場合、付与工程Bにおいて、液体組成物Bは、付与された液体組成物Aの領域と少なくとも一部が重複するように付与されることが好ましい。また、付与工程Bが先に実行される場合、付与工程Aにおいて、液体組成物Aは、付与された液体組成物Bの領域と少なくとも一部が重複するように付与されることが好ましい。更に、付与工程Aと付与工程Bとが同時に実行される場合、付与工程A及び付与工程Bにおいて、液体組成物A及び液体組成物Bの付与される場所が近接していることが好ましい。
なお、収容容器1bは、多孔質構造体の製造装置100と一体化した構成であってもよいが、多孔質構造体の製造装置100から取り外し可能な構成であってもよい。また、多孔質構造体の製造装置100と一体化した収容容器や多孔質構造体の製造装置100から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
付与装置1aは、液体組成物7を付与できるものであれば、特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に応じた任意の付与装置を用いることができる。
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。収容容器1bや供給チューブ1cを構成する材料は、紫外および可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、液体組成物7が外光により重合開始されることが防止される。
−重合工程部−
重合工程部20は、図1に示すように、熱、光などの活性エネルギー線を液体組成物に照射することにより硬化させる硬化工程を実現する硬化手段の一例である光照射装置2aと、重合不活性気体を循環させる重合不活性気体循環装置2bを有する。光照射装置2aは、付与工程部10により形成された液体組成物層に重合不活性気体存在下において光を照射し、光重合させて多孔質構造体の前駆体6を得る。ここで、硬化工程において使用される硬化手段は、互いに接触している付与された液体組成物A及び液体組成物Bを同時に硬化させる。同時に硬化させるとは、液体組成物Aにおける硬化工程及び液体組成物Bにおける硬化工程の少なくとも一部が重複していればよく、例えば、硬化の開始のタイミングが同時である必要はないが、硬化の開始のタイミングが実質的に同時であることが好ましい。
光照射装置2aは、液体組成物層に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択され、液体組成物層中の化合物の重合を開始および進行させられるものならば特に限定はなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等の紫外線光源が挙げられる。ただし、短波長の光ほど一般に深部に到達しやすい傾向を持つため、形成する多孔質膜の厚みに応じて光源を選択することが好ましい。
次に、光照射装置2aの光源の照射強度に関して、照射強度が強すぎると相分離が十分に起きる前に急激に重合が進行する為、多孔質構造が得られにくい傾向がある。また、照射強度が弱すぎる場合は、相分離がミクロスケール以上に進行し多孔質のばらつきや粗大化が起きやすい。また、照射時間も長くなり、生産性が低下する傾向にある。そのため、照射強度としては10mW/cm以上1W/cm以下が好ましく、30mW/cm以上300mW/cm以下がより好ましい。
次に、重合不活性気体循環装置2bは、大気中に含まれる重合活性な酸素濃度を低下させ、液体組成物層の表面近傍の重合性化合物の重合反応を阻害されることなく進行させる役割を担う。そのため、用いられる重合不活性気体は上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えば窒素や二酸化炭素やアルゴンなどが挙げられる。
また、その流量としては阻害低減効果が効果的に得られる事を考慮して、O濃度が20%未満(大気よりも酸素濃度が低い環境)であることが好ましく、0%以上15%以下であることがより好ましく、0%以上5%以下であることが更に好ましい。また、重合不活性気体循環装置2bは安定した重合進行条件を実現させる為に、温度を調節できる温調手段が設けられていることが好ましい。
−加熱工程部−
加熱工程部30は、図1に示すように、加熱装置3aを有し、重合工程部20により形成した多孔質構造体の前駆体6に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより多孔質構造体を形成することができる。加熱工程部30は、溶媒除去工程を減圧下で実施しても良い。
また、加熱工程部30は、多孔質構造体の前駆体6を加熱装置3aにより加熱して、重合工程部20で実施した重合反応を更に促進させる重合促進工程、および多孔質構造体の前駆体6に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する開始剤除去工程も含む。なお、これらの重合促進工程および開始剤除去工程は、溶媒除去工程と同時ではなく、溶媒除去工程の前または後に実施されても良い。
さらに、加熱工程部30は、溶媒除去工程後に、多孔質構造体を減圧下で加熱する重合完了工程を含む。加熱装置3aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒーターや温風ヒーターなどが挙げられる。
また、加熱温度や時間に関しては、多孔質構造体の前駆体6に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
−基材−
基材4の材料としては透明、不透明を問わずあらゆる材料を用いることができる。すなわち、透明基材として、ガラス基材や各種プラスチックフィルム等の樹脂フィルム基材やまたその複合基板などが、また不透明な基材としてはシリコン基材、ステンレス等の金属基材、又はこれらを積層したものなど、種々の基材を用いることができる。
なお、基材4は、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などの記録媒体であってもよい。また、記録媒体としては、低浸透性基材(低吸収性基材)であってもよい。低浸透性基材とは、水透過性、吸収性、又は吸着性が低い表面を有する基材を意味し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。低浸透性基材としては、商業印刷に用いられるコート紙や、古紙パルプを中層、裏層に配合して表面にコーティングを施した板紙のような記録媒体等が挙げられる。
また、形状に関しても曲面であっても凹凸形状を有するものであっても、付与工程部10、重合工程部20に適用可能な基材ならば使用することができる。
<<多孔質構造体の用途>>
本実施形態の多孔質構造体は、多様な用途に展開できる。以下、展開可能な用途の一例について説明するが、これら用途に限定されない。
<蓄電素子用途又は発電素子用途>
本実施形態の多孔質構造体は、例えば、蓄電素子用又は発電素子用の絶縁層(セパレーター)として用いることができる。ここで、絶縁層とは、正極と負極とを隔離し、かつ正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。また、本願で絶縁層と表す場合、層状の形状に限られず、他の形状であってもよい。
本実施形態の多孔質構造体を絶縁層用途として用いる場合、多孔質構造体を形成する場所としては電極基体上や電極合材部上など、電極を形成する部材上であれば特に限定されないが、例えば、電極基体上に予め形成された電極合材部上へ液体組成物を付与し、硬化させることで絶縁層としての多孔質構造体を形成することが安全性向上の観点から好ましい。なお、電極合材部とは活物質を含む部材である。電極合材部上に絶縁層としての多孔質構造体を形成することで短絡の発生を効率よく抑制することができる。
まず、本実施形態の多孔質構造体を絶縁層として用いる場合について図2〜図4を用いて説明する。
図2は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体の一例を示す断面模式図である。多孔質構造体200は、多孔質構造部201(多孔質構造部A)、中間層202、多孔質構造部203(多孔質構造部B)を有する。また、図2に示す通り、多孔質構造部201(多孔質構造部A)及び多孔質構造部203(多孔質構造部B)は、中間層202により連続的に一体化している。
図3は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体を有する電極の一例を示す断面模式図である。電極300は、多孔質構造部201(多孔質構造部A)、中間層202、多孔質構造部203(多孔質構造部B)、負極の電極合材部204、負極の電極基体205を有する。また、負極の電極合材部204は、負極の活物質206を含む。ここで、図3における多孔質構造体は、図2における多孔質構造体と異なり、負極の電極合材部204上に形成されている。上述したように電極基体上に予め形成された電極合材部上へ液体組成物を付与し硬化させることで絶縁層としての多孔質構造体を形成する場合、図3に示す通り、多孔質構造体の一部領域及び電極合材部の一部領域が重複する。これは、付与された硬化前の液体組成物が電極合材部内部に侵入し、その後硬化して多孔質構造体を形成するためである。上記の重複する領域の侵入深さ(層厚方向の長さ)は、電極合材部の領域の層厚方向の長さに対して、5%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。硬化前の液体組成物を電極合材部内部に侵入させる方法としては、特に限定されないが、液体組成物の粘度を調整する方法等が挙げられる。例えば、液体組成物の粘度は、25℃において、1.0mPa・s以上200.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下が更に好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が特に好ましい。また、粘度を調整する方法としては、特に限定されないが、液体組成物中における重合性化合物の含有量を調整する方法等が挙げられる。例えば、重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、5.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下が更に好ましい。
図4は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体を有する蓄電素子の一例を示す断面模式図である。蓄電素子400は、多孔質構造部201(多孔質構造部A)、中間層202、多孔質構造部203(多孔質構造部B)、負極の電極合材部204、負極の電極基体205、正極の電極合材部207、正極の電極基体208を有する。また、正極の電極合材部207は、正極の活物質209を含む。
なお、図2〜図4を用いて説明した絶縁層としての多孔質構造体は、いずれも、層状の多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが用いられているが、これら形状に限定されない。例えば、多孔質構造体の面方向において、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが中間層を介して隣接している形状などであってもよい。
次に、本実施形態の多孔質構造体を蓄電素子及び発電素子における絶縁層用途に用いることが好ましい理由について説明する。
近年、蓄電素子及び発電素子に関する技術分野において、高出力化、高容量化、及び高寿命化等の要請が急速に高まっている。しかし、これら要請の実現に際して蓄電素子及び発電素子の安全性に関わる様々な課題が存在する。安全性向上が求められる部材の一例としては、多孔質構造を有する絶縁層(セパレーター)が挙げられる。一般的に、絶縁層に求められる安全性の機能としては、シャットダウン機能が挙げられる。シャットダウン機能とは、蓄電素子等が発熱したときに絶縁層が溶融し、絶縁層の開孔部を目詰まりさせることで蓄電素子等における反応を抑制する機能である。この機能は、例えば、汎用的なポリプロピレン樹脂(PP樹脂)やポリエチレン樹脂(PE樹脂)等の材料を用いて多孔質構造を有する絶縁層を作製することで実現できる。しかしながら、PP樹脂やPE樹脂のような高温時に溶融する材料を用いて作製された絶縁層は、シャットダウン機能を発現しやすい半面、更なる高温状態において絶縁層の形状維持が困難となり、電極間の短絡が発生しやすくなる特徴を持つ。そのため、更なる高温時においても、形状が維持されつつシャットダウン機能を発現できる絶縁層が求められている。すなわち、形状維持機能とシャットダウン機能を両立可能な絶縁層が求められているということであるが、本実施形態の多孔質構造体を用いれば、例えば、多孔質構造部Aに形状維持機能を持たせ、多孔質構造部Bにシャットダウン機能を持たせることで実現できる。更に、本実施形態の多孔質構造体は、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化しており、界面を有さないため、剥離が抑制されて強度に優れ、かつ空隙の連通性低下が抑制されてイオン透過性にも優れる。なお、多孔質構造体を絶縁層として用いた場合に実現可能な機能は、形状維持機能とシャットダウン機能に限定されず、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bに割り振ることが可能な2以上の機能であればよい。
なお、上記の形状維持機能を有する多孔質構造部は、例えば、高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂により形成される多孔質構造部で形成される。高い硬度又は耐擦過性を有する樹脂により形成される多孔質構造部を得る方法としては、例えば、上記の通り、液体組成物全量に対する重合性化合物の含有量を多くする方法等が挙げられる。
次に、本実施形態の多孔質構造体において、多孔質構造部Aに形状維持機能を持たせ、多孔質構造部Bにシャットダウン機能を持たせる場合について図5を用いて詳細に説明する。
図5は、絶縁層として用いられる本実施形態の多孔質構造体における形状維持機能及びシャットダウン機能の一例を説明する説明図である。図5(a)に示す多孔質構造体200は、多孔質構造部201(多孔質構造部A)、中間層202、多孔質構造部203(多孔質構造部B)を有する。ここで、多孔質構造部201(多孔質構造部A)は形状維持機能を有し、多孔質構造部203(多孔質構造部B)はシャットダウン機能を有する。
このような多孔質構造体を有する蓄電素子において、異常充放電等により過剰な電流が流れ、蓄電素子が異常発熱した場合、図5(b)に示すようにシャットダウン機能を有する多孔質構造部203(多孔質構造部B)が層厚方向に収縮し、多孔質構造部203(多孔質構造部B)内部の空孔が閉塞する。結果、電解液内のイオンの多孔質構造体内における移動が妨げられ、蓄電素子内における電気化学反応の進行が抑制される。これにより、電流の流れが遮断され、温度上昇が抑制される。
一方、蓄電素子の周囲が高温環境となり、これにより蓄電素子の内部温度が160℃以上の温度になった場合、SEI被膜の分解が生じることに起因して、負極と電解液の間における電気化学反応が進行する。その後、蓄電素子の内部温度が180℃以上の温度になると、正極と電解液の間における電気化学反応が進行する。このような電気化学反応に基づく熱暴走反応が進行すると、蓄電素子の内部温度が急激に上昇し、200℃以上の温度になる。しかしながら、多孔質構造部201(多孔質構造部A)が形状維持機能を有している場合、高温環境下においても多孔質構造部201(多孔質構造部A)が層厚方向に収縮せず、形状を維持する。これにより、正極と負極の間の短絡を抑制することができる。
以上のように、多孔質構造部Aに形状維持機能を持たせる場合、多孔質構造部Aを構成する樹脂Aのガラス転移点又は融点は高いことが好ましい。具体的には、樹脂Aのガラス転移点又は融点は、160℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。
一方で、多孔質構造部Bにシャットダウン機能を持たせる場合、多孔質構造部Bを構成する樹脂Bのガラス転移点又は融点は低いことが好ましい。具体的には、樹脂Aのガラス転移点又は融点は、160℃未満であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが更に好ましく、30℃以下であることが特に好ましい。
次に、多孔質構造部Aに形状維持機能を持たせ、多孔質構造部Bにシャットダウン機能を持たせる場合において、樹脂Aのガラス転移点又は融点と、樹脂Bのガラス転移点又は融点と、の関係について説明する。
異常充放電等により過剰な電流が流れ、蓄電素子が発熱する場合、上記の通り、シャットダウン機能を有する多孔質構造部203(多孔質構造部B)が層厚方向に収縮し、多孔質構造部203(多孔質構造部B)内部の空孔が閉塞する。結果、電解液内のイオンの多孔質構造体内における移動が妨げられ、蓄電素子内における電気化学反応の進行が抑制される。これにより、電流の流れが遮断され、温度上昇が抑制される。しかし、多孔質構造部203(多孔質構造部B)が層厚方向に収縮した後も、蓄電素子の内部温度は一定時間緩やかに上昇する。そのため、電流の流れが遮断された後の温度上昇範囲において、多孔質構造部Aが形状維持機能を発揮し、正極と負極の間の短絡を防止することが好ましい。そのためには、樹脂Aのガラス転移点又は融点が樹脂Bのガラス転移点又は融点より高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高いことが更に好ましく、100℃以上高いことが特に好ましい。
次に、蓄電素子及び発電素子が有する絶縁層以外の構成について説明する。蓄電素子及び発電素子は、絶縁層以外に、電極基体及び電極合材部を有する。また、電極合材部は活物質を含む。
電極基体としては、導電性を有する基体であれば特に制限はなく、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、これらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔、リチウムイオンキャパシターに用いられる穴あき電極基体などを用いることができる。このような電極基体は、一般的な蓄電素子である2次電池、キャパシター等に好適に用いることができ、なかでもリチウムイオン二次電池により好適に用いることができる。
また、別の電極基体としては、カーボンペーパー等の繊維状の電極を不織状又は織状の形態で平面化したもの、上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものなどを用いることができる。このような電極基体は、燃料電池等の発電素子において好適に用いることができる。
更に、別の電極基体としては、ガラスやプラスチックスなどの平面基体上にインジウム・チタン系の酸化物や亜鉛酸化物のような透明な半導体薄膜を形成したもの、導電性電極膜を薄く蒸着したものなどを用いることができる。このような電極基体は、太陽電池等の発電素子において好適に用いることができる。
活物質は、電極合材部(活物質層とも称する)に含まれる。活物質層は、粉体状の活物質や触媒組成物を液体中に分散し、かかる液を電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されており、通常はスプレー、ディスペンサー、ダイコーター、引き上げ塗工等により塗布される。
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極用活物質として使用できる。例えばリチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePOなどのオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物、二酸化マンガンなどが挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物または該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bなどが挙げられ、なかでもMn、Al、Co、NiおよびMgが好ましい。異種元素は1種でもよくまたは2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケルなどが挙げられる。
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料として、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。また、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、AB2系あるいはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。
正極または負極の結着剤には、例えばPVDF、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。また電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体などの有機導電性材料などが用いられる。
燃料電池での活物質は一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウムあるいは白金合金などの金属微粒子をカーボンなどの触媒担体に担持させたものが用いられる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体(塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅などの合金成分を含むもの)を添加し、懸濁液中に溶解させ、アルカリを加えて金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極上に塗布し、水素雰囲気下などで還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極を得る。
太陽電池等の場合、活物質は、酸化タングステン粉末や酸化チタン粉末のほかSnO、ZnO、ZrO、Nb、CeO、SiO、Alといった酸化物半導体層があげられ、半導体層には、色素が担持させられており、例えば、ルテニウム・トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム−ビス型の遷移金属錯体、オスミウム−トリス型の遷移金属錯体、オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、フタロシアニン及びポルフィリン、有機−無機のペロブスカイト結晶などの化合物を挙げることができる。
次に、蓄電素子として用いられる場合に充填される電解液について説明する。電解液は、以下説明する溶媒及び電解質を含む液体である。
溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)、エチルメチルカーボネート(炭酸エチルメチル)、ジメチルカーボネート(炭酸ジメチル)、エチレンカーボネート(炭酸エチレン)、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、及びこれらを混合したもの等を用いることができる。
電解質としては、溶媒に溶解可能な固体電解質およびイオン液体等の液体電解質などが挙げられる。
固体電解質としては、溶媒に溶解可能である限り特に制限されず、例えば、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、酸類の支持塩、並びにアルカリ類の支持塩などを用いることができる、より具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BFなどが挙げられる。
液体電解質としては、カチオン成分とアニオン成分を含有する各種イオン液体を挙げることができる。イオン液体は、室温を含む幅広い温度領域において液体状態を維持できるものであることが好ましい。カチオン成分としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体等の芳香族系の塩;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム等の脂肪族4級アンモニウム系化合物などが挙げられる。アニオン成分としては、例えば、大気中の安定性の面でフッ素を含んだ化合物が好ましく、BF 、CFSO 、PF 、(CFSO、B(CNなどが挙げられる。
電解質の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電解液中において0.7mol/L以上4.0mol/L以下が好ましく、1.0mol/L以上3.0mol/L以下がより好ましく、蓄電素子の容量と出力の両立の点から、1.0mol/L以上2.5mol/L以下がより好ましい。
<担持体用途>
本実施形態の多孔質構造体は、多孔質構造部の表面に機能性物質を担持させることで担持体として用いることができる。ここで、多孔質構造部の表面とは、多孔質構造部の外部表面だけでなく外部と連通する内部表面も含む意味である。このように、外部と連通する空隙に機能性物質を担持させることができるので、機能性物質を担持可能な表面積が増加する。
また、本実施形態の多孔質構造体は、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化しており、界面を有さないため、剥離が抑制されて強度に優れた担持体を提供でき、かつ空隙の連通性低下が抑制されるため、外部と連通する空隙に機能性物質を担持させた担持体を提供できる。
ここで、本実施形態の担持体は、構成成分が異なる樹脂により形成される多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを有する。これにより、担持体が単一の多孔質構造部からなる場合に比べて、担持体の性能面における設計自由度を向上させることができる。例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂の構成成分の相違点が、これら樹脂を合成するために用いられる液体組成物に含まれる重合性化合物が有する官能基の種類や数の違いに起因する場合、結果として多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの有する官能基の種類や数に違いが生じる。すると、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bは、それぞれの多孔質構造部が有する官能基と、それぞれの多孔質構造部が担持する機能性物質と、の相互作用に基づき、機能性物質により発揮される機能を制御することができる。例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが同一又は類似する機能性物質を担持していた場合であっても、それぞれの多孔質構造部が有する官能基の種類や数の違いに基づいて、多孔質構造部内で発揮される機能性物質の機能量や多孔質構造部内から多孔質構造部外に放出される機能性物質の放出速さに差を設けることができる。
また、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂の構成成分の相違点が、これら樹脂を合成するために用いられる液体組成物に含まれる重合開始剤の種類や量(濃度)の違いに起因する場合、重合速度に差が生じ、結果として多孔質構造部A及び多孔質構造部Bにおける空孔の大きさに違いを生じさせる。すると、これを利用し、例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bのそれぞれにおいて目的とする機能性物質の機能量や機能性物質の放出速さに応じて空孔の大きさが調整された担持体を提供することができる。
なお、本実施形態の担持体は、液体組成物Aにのみ機能性物質を含有させて多孔質構造部を作製することで、多孔質構造部Aには機能性物質が担持されているが多孔質構造部Bには機能性物質が担持されていない担持体を作製することができる。また、同様にして、多孔質構造部Bには機能性物質が担持されているが多孔質構造部Aには機能性物質が担持されていない担持体を作製することができる。これにより、担持体の性能面における設計自由度をより向上させることができる。
機能性物質は、直接的又は間接的に所定の機能を発揮する物質であって、多孔質構造体に担持される面積の増加に伴って当該機能も増加又は向上する物質であることが好ましく、担持される機能性物質が外部表面及び/又は外部と連通する内部表面に位置することで当該機能が発揮される物質であること(言い換えると、外部と連通しない内部表面に位置した場合に当該機能の発揮が抑制される物質)がより好ましい。機能性物質の一例としては、特に制限されないが、光触媒、生理活性物質などが挙げられる。
光触媒は、特定の波長域にある光(光触媒の価電子帯と導電帯の間のバンドギャップ以上のエネルギーを有する励起光)を照射されることにより光触媒活性を示す物質である。光触媒は、当該光触媒活性を示すことにより、抗菌作用、消臭・脱臭作用、揮発性有機化合物(VOC)等の有害物質分解作用等の種々の作用を発揮することができる。
光触媒としては、例えば、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン(IV)(TiO)、酸化タングステン(III)(W)、酸化タングステン(IV)(WO)、酸化タングステン(VI)(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(III)(Fe)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化ビスマス(III)(Bi)、バナジン酸ビスマス(BiVO)、酸化スズ(II)(SnO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化スズ(VI)(SnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化セリウム(II)(CeO)、酸化セリウム(IV)(CeO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化インジウム(III)(In)、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、タンタル酸カリウム(KTaO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)などの金属酸化物;硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化インジウム(InS)などの金属硫化物;セレン酸カドミウム(CdSeO)、セレン化亜鉛(ZnSe)などの金属セレン化物;窒化ガリウム(GaN)などの金属窒化物などが挙げられるが、酸化チタン(IV)(TiO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化タングステン(III)(W)、酸化タングステン(IV)(WO)、及び酸化タングステン(VI)(WO)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アナターゼ型の酸化チタン(IV)(TiO)を含むことがより好ましい。
生理活性物質は、生理的効果の発現に寄与する有効成分であり、例えば、低分子医薬品、食品、化粧料などに用いられる低分子化合物の他、バイオ医薬品に用いられる抗体、酵素等のタンパク質及びDNA、RNA等の核酸などの高分子化合物などが挙げられる。また、「生理的効果」とは、生理活性物質が目的部位で作用することにより生じる効果であり、例えば、生体、組織、細胞、タンパク質、DNA、RNA等に量的及び/又は質的な変化、影響をもたらすことである。また、「生理活性物質が目的部位で作用する」とは、例えば、生理活性物質が標的組織等に変化、影響を与えることである。目的部位としては、例えば、細胞表面又は細胞内に存在する受容体を構成するタンパク質等であることが好ましい。この場合は、生理活性物質が特定の高次構造をとるタンパク質に結合することで、細胞内におけるシグナル伝達が生じ、結果として生理的効果が発現される。生理活性物質は、生体内の酵素により活性型に変性した上で特定の結合部位に結合し、生理的効果に寄与する物質であってもよい。この場合、本願では、活性型に変性する前の物質も生理活性物質に含まれるものとする。なお、生理活性物質は、生物(ヒト又はヒト以外の生物)が作り出す物質であってもよいし、人工的に合成された物質であってもよい。
<分離層用途又は反応層用途>
本実施形態の多孔質構造体が液体や気体などの流体を透過可能である場合、当該多孔質構造体を流体の流路として用いることができる。多孔質構造体を流体の流路として用いることができる場合、多孔質構造体は、流体から所定の物質を分離する分離層としての用途や流体に微小な反応場を提供する反応層(マイクロリアクター)としての用途等に用いることができる。これら用途に用いられる多孔質構造体は、多孔質構造体内部において流体を均一かつ効率的に透過可能であることが好ましい。この点、本実施形態の多孔質構造体は、連通する空孔を有するため、流体を均一かつ効率的に透過可能な構造を有している。
なお、多孔質構造体が液体や気体などの流体を透過可能である場合とは、特に限定されないが、例えば、JIS P8117に準拠して測定される透気度が500秒/100mL以下である場合が好ましく、300秒/100mL以下である場合がより好ましい。このとき、透気度は、例えば、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)等を用いて測定される。
なお、分離とは、流体である混合物に含まれる所定の物質を除去または濃縮できることをいう。また、除去は、流体である混合物から所定の物質が完全に取り除かれる場合に限られず、一部量が取り除かれる場合であってもよい。
なお、反応場とは、流体に含まれる所定の物質が通過することで所定の化学反応が進行する場所をいう。
なお、本願で分離層及び反応層と表す場合、層状の形状に限られず、他の形状であってもよい。
また、本実施形態の分離層及び反応層は、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bが連続的に一体化しており、界面を有さないため、剥離が抑制されて強度に優れた分離層及び反応層を提供でき、かつ空隙の連通性低下が抑制されるため、流体を均一かつ効率的に透過可能な担持体を提供できる。
分離層用途に用いる場合、本実施形態の多孔質構造体は、流体に含まれる所定の物質と相互作用可能な官能基を有することが好ましい。具体的には、多孔質構造部の表面(内部表面及び外部表面)に所定の物質と相互作用可能な官能基が配されることで、効果的に所定の物質の分離を行うことができる。
ここで、本実施形態の分離層は、構成成分が異なる樹脂により形成される多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを有する。これにより、分離層が単一の多孔質構造部からなる場合に比べて、分離層の性能面における設計自由度を向上させることができる。例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂の構成成分の相違点が、これら樹脂を合成するために用いられる液体組成物に含まれる重合性化合物が有する官能基の種類の違いに起因する場合、結果として多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの有する官能基の種類に違いが生じる。すると、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bで異なる種類の物質を分離可能な分離層を提供することができる。
また、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂の構成成分の相違点が、これら樹脂を合成するために用いられる液体組成物に含まれる重合開始剤の種類や量(濃度)の違いに起因する場合、重合速度に差が生じ、結果として多孔質構造部A及び多孔質構造部Bにおける空孔の大きさに違いを生じさせる。すると、これを利用し、例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの有する官能基の種類の違いに合わせて、物質の分離を行う上で適切な大きさの空孔の大きさに調整された分離層を提供することができる。
反応層用途に用いる場合、本実施形態の多孔質構造体は、流体に反応場を提供する官能基を有することが好ましい。具体的には、多孔質構造部の表面(内部表面及び外部表面)に流体に反応場を提供する官能基が配され、効果的に反応場を提供することができる。
ここで、本実施形態の反応層は、構成成分が異なる樹脂により形成される多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを有する。これにより、反応層が単一の多孔質構造部からなる場合に比べて、反応層の性能面における設計自由度を向上させることができる。例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂の構成成分の相違点が、これら樹脂を合成するために用いられる液体組成物に含まれる重合性化合物が有する官能基の種類の違いに起因する場合、結果として多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの有する官能基の種類に違いが生じる。すると、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bで異なる反応を促進する反応層を提供することができる。
また、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを形成する樹脂の構成成分の相違点が、これら樹脂を合成するために用いられる液体組成物に含まれる重合開始剤の種類や量(濃度)の違いに起因する場合、重合速度に差が生じ、結果として多孔質構造部A及び多孔質構造部Bにおける空孔の大きさに違いを生じさせる。すると、これを利用し、例えば、多孔質構造部A及び多孔質構造部Bの有する官能基の種類の違いに合わせて、反応を促進する上で適切な大きさの空孔の大きさに調整された反応層を提供することができる。
上記分離層及び反応層は、例えば、ガラス管等の流体流入部及び流体流出部を形成可能な容器に液体組成物を充填して硬化させることで形成する。また、液体組成物をインクジェット方式などで基材に対して印刷することにより、多孔質構造体で形成される所望の形状の流路を有する分離層及び反応層を作製(描画)することもできる。分離層及び反応層の流路が印刷可能であることにより、目的に応じて流路を適宜変更可能な分離層及び反応層を提供することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<液体組成物の調整例>
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物を調製した。なお、後述する多孔質構造体の作製において、先に付与される液体組成物を先塗り液とし、後で付与される液体組成物を後塗り液とした。
(先塗り液E1の調整例)
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):29.0質量%
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製):70.0質量%
・Irgacure184(BASF社製):1.0質量%
(後塗り液E1の調整例)
・トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(アルケマ(サートマー)社製):29.0質量%
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製):70.0
質量%
・Irgacure184(BASF製):1.0質量%
(先塗り液E2〜E16、先塗り液C1〜8の調整例)
先塗り液E1の調整例において、表1〜3の組成に変更した以外は、先塗り液E1の調整例と同様にして、先塗り液E2〜E16、先塗り液C1〜8を得た。なお、表1〜3における組成の各数字の単位は「質量%」である。
(後塗り液E2〜E16、後塗り液C1〜8の調整例)
後塗り液E1の調整例において、表1〜3の組成に変更した以外は、後塗り液E1の調整例と同様にして、後塗り液E2〜E16、後塗り液C1〜8を得た。なお、表1〜3における組成の各数字の単位は「質量%」である。
また、先塗り液E1〜E16、先塗り液C1〜8、後塗り液E1〜E16、後塗り液C1〜8の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE−550L、東機産業株式会社製)を用いて測定し、次の評価基準に従って表1〜3に示す。
(評価基準)
a:液体組成物の粘度が30.0mPa・s以下である
b:液体組成物の粘度が30.0mPa・sより大きい
なお、表1〜3において、次の材料の商品名及び製造元は以下の通りである。
・EBECRYL4101(ダイセル・オルネクス株式会社製)
・EBECRYL4201(ダイセル・オルネクス株式会社製)
・IrgacureTPO(BASF製)
<多孔質構造体の作製例>
(実施例1)
先塗り液E1及び後塗り液E1をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、ガラス基材に対し、先塗り液E1を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。次に、直ちに、ガラス基材上の当該塗布領域に対し重なるように、後塗り液E1を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、先塗り液E1及び後塗り液E1の塗布領域に対してUV照射(光源:UV−LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、これらを同時に硬化させた。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、多孔質構造体を得た。
(実施例2〜4、15〜16)
実施例1において、先塗り液E1及び後塗り液E1を、表1の先塗り液及び後塗り液に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4、15〜16の多孔質構造体を得た。
(比較例1)
先塗り液C1及び後塗り液C1をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、ガラス基材に対し、先塗り液E1を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。次に、直ちに、N雰囲気下において、先塗り液C1の塗布領域に対してUV照射(光源:UV−LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、これを硬化させた。次に、ガラス基材上の硬化領域に対し重なるように、後塗り液C1を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。次に、直ちに、N雰囲気下において、後塗り液C1の塗布領域に対してUV照射(光源:UV−LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、これを硬化させた。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、多孔質構造体を得た。
(比較例2〜4)
比較例1において、先塗り液C1及び後塗り液C1を、表1の先塗り液及び後塗り液に変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例2〜4の多孔質構造体を得た。
次に、得られた実施例1〜4、15〜16、比較例1〜4の多孔質構造体について、空孔の大きさ、界面の有無、空隙率、強度、及び連通性の評価を行った。
[空孔の大きさの評価]
多孔質構造体の断面を作成してSEMにより断面を観察した。結果、実施例1〜4、15〜16、比較例1〜4の多孔質構造体全てにおいて、大きさが0.1〜1.0μm程度の空孔が多孔質構造体全体に渡って観察された。また、先塗り液の硬化領域内における各空孔は連通しており、後塗り液の硬化領域内における各空孔も連通していた。
[界面の有無の評価]
多孔質構造体の断面を作成し、先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における界面の有無をSEMにより観察した。結果を次の評価基準に従って表1に示す。
(評価基準)
a:界面が観察されない
b:界面が観察される
[空隙率の評価]
多孔質構造体に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後に、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて多孔質構造体中の空隙率を測定した。なお、空隙率は、先塗り液の硬化領域及び後塗り液の硬化領域のそれぞれで測定した。空隙率の結果を次の評価基準に従って表1に表す。
(評価基準)
a:空隙率が30%以上である
b:空隙率が30%未満である
[強度の評価]
多孔質構造体の表面に粘着テープを貼付けてから引き剥がす試験を実施した。その後、多孔質構造体の断面を作成し、本試験により生じた剥離面の位置をSEMにより観察した。結果を次の評価基準に従って表1に示す。
(評価基準)
a:剥離が生じていない、又は剥離が先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間(界面を含む)以外の位置で生じている
b:剥離が先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間(界面を含む)で生じている
[連通性の評価]
多孔質構造体の断面を作成し、先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における空孔の連通性をSEMにより観察した。結果を次の評価基準に従って表1に示す。
(評価基準)
a:先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における空孔が連続して繋がっている
b:先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における空孔が連続して繋がっていない
<負極の作製例>
負極活物質であるグラファイト粒子(平均粒径10μm)97.0質量部と、増粘剤であるセルロース1.0質量部と、バインダーであるアクリル樹脂2.0質量部と、を水中で均一に分散させて負極活物質分散体を得た。この分散体を負極電極基体である厚み8μmの銅箔に塗布し、得られた塗膜を120℃で10分乾燥後、プレスし、厚みが60μmの電極合材部を得た。次に、これを50mm×33mmに切り出して負極を作製した。
<正極の作製例>
正極活物質であるニッケル、コバルト、及びアルミの混合粒子94.0質量部と、導電助剤であるケッチェンブラック3.0質量部と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン樹脂3.0質量部と、を溶媒としてのN−メチルピロリドン中で均一に分散させて正極活物質分散体を得た。この分散体を電極基体である厚み15μmのアルミ箔にダイコートで塗布し、得られた塗膜を120℃で10分乾燥後、プレスし、厚みが50μmの電極合材部を得た。次に、これを43mm×29mmに切り出して正極を作製した。
<多孔質構造体、電極、蓄電素子の作製例>
(実施例5)
先塗り液E5及び後塗り液E5をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、上記の通り作製した負極に対し、先塗り液E5を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。次に、直ちに、負極上の当該塗布領域に対し重なるように、後塗り液E5を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、先塗り液E5及び後塗り液E5の塗布領域に対してUV照射(光源:UV−LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、これらを同時に硬化させた。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、多孔質構造体と一体化した負極を得た。
次に、多孔質構造体と一体化した負極と上記の通り作製した正極とを対向させ、電解液を注入し、外装としてラミネート外装材を用いて封止し、蓄電素子を作製した。なお、電解液としては、炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)の混合物(質量比が「EC:DMC=1:1」の混合物)に対し、電解質であるLiPFが濃度1.5mol/Lとなるように添加されている溶液を用いた。
(実施例6〜14)
実施例5において、先塗り液E5及び後塗り液E5を、表2〜3の先塗り液及び後塗り液に変更した以外は、実施例5と同様にして、実施例6〜14の蓄電素子を得た。
(比較例5)
先塗り液C5をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、上記の通り作製した負極に対し、先塗り液C5を吐出してベタ画像状の塗布領域を形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、先塗り液C5の塗布領域に対してUV照射(光源:UV−LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、これを硬化させた。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、多孔質構造体と一体化した負極を得た。
次に、多孔質構造体と一体化した負極と上記の通り作製した正極とを対向させ、電解液を注入し、外装としてラミネート外装材を用いて封止し、蓄電素子を作製した。なお、電解液としては、炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)の混合物(質量比が「EC:DMC=1:1」の混合物)に対し、電解質であるLiPFが濃度1.5mol/Lとなるように添加されている溶液を用いた。
(比較例6〜8)
比較例5において、先塗り液C5を、表3の先塗り液に変更した以外は、比較例5と同様にして、比較例6〜8の蓄電素子を得た。
(比較例9)
上記の通り作製した負極上に厚さ25μmのポリプロピレン樹脂からなる微多孔膜を絶縁層として配置し、絶縁層が配置された負極を得た。
次に、絶縁層が配置された負極と上記の通り作製した正極とを対向させ、電解液を注入し、外装としてラミネート外装材を用いて封止し、蓄電素子を作製した。なお、電解液としては、炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)の混合物(質量比が「EC:DMC=1:1」の混合物)に対し、電解質であるLiPFが濃度1.5mol/Lとなるように添加されている溶液を用いた。
次に、得られた実施例5〜14、比較例5〜9の蓄電素子中の多孔質構造体において、先塗り液の硬化領域におけるガラス転移点又は融点、後塗り液の硬化領域におけるガラス転移点又は融点を示差走査熱量計(DSC)によって測定した。但し、後塗り液を用いなかった例に関しては、後塗り液の硬化領域におけるガラス転移点又は融点を測定しなかったので表3において「−」と表示した。また、比較例9については、ポリプロピレン樹脂からなる微多孔膜におけるガラス転移点又は融点を測定した。なお、ガラス転移点及び融点は、示差走査熱量計(DSC)によって測定した。結果を表2〜3に示す。
次に、得られた実施例5〜14、比較例5〜9の蓄電素子について、空孔の大きさ、界面の有無、空隙率、強度、連通性、高温時の絶縁性、インピーダンスの評価を行った。
[空孔の大きさの評価]
多孔質構造体の断面を作成してSEMにより断面を観察した。結果、実施例5〜14、比較例5〜9の蓄電素子中の多孔質構造体全てにおいて、大きさが0.1〜1.0μm程度の空孔が多孔質構造体全体に渡って観察された。また、先塗り液の硬化領域内における各空孔は連通しており、後塗り液の硬化領域内における各空孔も連通していた。
[界面の有無の評価]
多孔質構造体の断面を作成し、先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における界面の有無をSEMにより観察した。結果を次の評価基準に従って表2〜3に示す。なお、後塗り液を使用していない比較例5〜8については観察を行わなかったので表3において「−」と表示した。また、先塗り液及び後塗り液を使用して絶縁層を形成していない比較例9については、ポリプロピレン樹脂からなる微多孔膜における界面の有無を観察した。
(評価基準)
a:界面が観察されない
b:界面が観察される
[空隙率の評価]
多孔質構造体に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後に、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて多孔質構造体中の空隙率を測定した。なお、空隙率は、先塗り液の硬化領域及び後塗り液の硬化領域のそれぞれで測定した。空隙率の結果を次の評価基準に従って表2〜3に表す。なお、後塗り液を使用していない比較例5〜8については、後塗り液の硬化領域が存在しないため、表3において「−」と表示した。また、先塗り液及び後塗り液を使用して絶縁層を形成していない比較例9については、ポリプロピレン樹脂からなる微多孔膜における空隙率を測定した。
(評価基準)
a:空隙率が30%以上である
b:空隙率が30%未満である
[強度の評価]
多孔質構造体の表面に粘着テープを貼付けてから引き剥がす試験を実施した。その後、多孔質構造体の断面を作成し、本試験により生じた剥離面の位置をSEMにより観察した。結果を次の評価基準に従って表2〜3に示す。なお、本評価は、先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間(界面を含む)における強度を判断するための評価であるため、比較例5〜8、9においては実施しなかった。そのため、比較例5〜8、9に関しては表3において「−」と表示した。
(評価基準)
a:剥離が生じていない、又は剥離が先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間(界面を含む)以外の位置で生じている
b:剥離が先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間(界面を含む)で生じている
[連通性の評価]
多孔質構造体の断面を作成し、先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における空孔の連通性をSEMにより観察した。結果を次の評価基準に従って表2〜3に示す。なお、本評価は、先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間(界面を含む)における連通性を判断するための評価であるため、比較例5〜8、9においては実施しなかった。そのため、比較例5〜8、9に関しては表3において「−」と表示した。
(評価基準)
a:先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における空孔が連続して繋がっている
b:先塗り液の硬化領域と後塗り液の硬化領域との間における空孔が連続して繋がっていない
[高温時の絶縁性の評価]
上記の多孔質構造体と一体化した負極(実施例5〜14、比較例5〜8)及び絶縁層が配置された負極(比較例9)の絶縁層側に銅箔を押しあて、200℃で15分間加熱した。その後、銅箔及び負極の間(電極間)における直流抵抗値を測定することで、多孔質構造体の高温時における形状維持機能を評価した。結果を次の評価基準に従って表2〜3に示す。
(評価基準)
a:電極間の直流抵抗値が1MΩ以上である
b:電極間の直流抵抗値が1KΩ以上1MΩ未満である
c:電極間の直流抵抗値が1KΩ未満である
[インピーダンスの評価]
まず、作製した蓄電素子の25℃におけるインピーダンスを測定した。次に、蓄電素子を200℃で15分間加熱した後、25℃まで冷やし、25℃におけるインピーダンスを再び測定することで、多孔質構造体の高温時におけるシャットダウン機能を評価した。結果を次の評価基準に従って表2〜3に示す。
(評価基準)
a:加熱後のインピーダンス値が加熱前に対して10倍以上である
b:加熱後のインピーダンス値が加熱前に対して10倍未満である
Figure 2021102754
Figure 2021102754
Figure 2021102754
表1によれば、実施例1〜4、15〜16の多孔質構造体は、強度および連通性に優れる。これら効果は、液体組成物A及び液体組成物Bに相当する前塗り液及び後塗り液が、硬化される前に接触しており、かつこれらが同時に硬化し、界面が観察されない連続的に一体化した多孔質構造体を形成することで実現されると考えられる。
また、比較例1〜4は、実施例1〜4、15〜16と同様の材料により構成される前塗り液及び後塗り液を用いているが、強度および連通性に劣る。これは、前塗り液及び後塗り液をそれぞれ別のタイミングで硬化させて積層させたことで、界面が観察される連続的に一体化していない多孔質構造体が形成されたことに起因すると考えられる。
表2〜3によれば、実施例5〜14の蓄電素子が有する多孔質構造体は、強度および連通性に優れる。これら効果は、液体組成物A及び液体組成物Bに相当する前塗り液及び後塗り液が、硬化される前に接触しており、かつこれらが同時に硬化し、界面が観察されない連続的に一体化した多孔質構造体を形成することで実現されると考えられる。
表2によれば、実施例5〜12の蓄電素子は、高温時の絶縁性及びインピーダンスに優れる。高温時の絶縁性が優れることは、多孔質構造体の高温時における形状維持機能が優れていることを表す。これは、多孔質構造体の少なくとも一部が、ガラス転移点又は融点の高い樹脂により形成されていることにより、高温時においても多孔質構造体の変形が抑制されたためと考えられる。また、インピーダンスが優れることは、多孔質構造体の高温時におけるシャットダウン機能が優れていることを表す。これは、多孔質構造体の少なくとも一部が、ガラス転移点又は融点の低い樹脂により形成されていることにより、高温時に多孔質構造体内部の空孔が溶融した樹脂で閉鎖されたためと考えられる。
表3によれば、比較例5〜8の蓄電素子は、後塗り液を用いて作製されておらず、そもそも構成成分が異なる樹脂により形成される多孔質構造部を複数有する多孔質構造体ではない。そのため、高温時の絶縁性又はインピーダンスに劣る。これは、多孔質構造体が、ガラス転移点又は融点の高い樹脂及び低い樹脂のうち一方の樹脂しか含まない構成であることに起因すると考えられる。
1a:付与装置
1b:容器
1c:供給チューブ
2a:光照射装置
2b:重合不活性気体循環装置
3a:加熱装置
4:基材
5:搬送部
6:多孔質構造体の前駆体
7:液体組成物
10:付与工程部
20:重合工程部
30:加熱工程部
200:多孔質構造体
201:多孔質構造部(多孔質構造部A)
202:中間層
203:多孔質構造部(多孔質構造部B)
204:負極の電極合材部
205:負極の電極基体
206:負極の活物質
207:正極の電極合材部
208:正極の電極基体
209:正極の活物質
300:電極
400:蓄電素子
WO2015/190264号

Claims (19)

  1. 連通する空孔を有する多孔質構造体であって、
    前記多孔質構造体は、樹脂Aにより形成される多孔質構造部Aと、樹脂Bにより形成される多孔質構造部Bと、を有し、
    前記多孔質構造部A及び前記多孔質構造部Bは、連続的に一体化しており、
    前記樹脂A及び前記樹脂Bは、構成成分が異なる多孔質構造体。
  2. 前記樹脂A及び前記樹脂Bから選ばれる少なくとも1つは、分子内に架橋構造を有する請求項1に記載の多孔質構造体。
  3. 前記樹脂Aのガラス転移点又は融点は、前記樹脂Bのガラス転移点又は融点より高い請求項1又は2に記載の多孔質構造体。
  4. 前記樹脂Aのガラス転移点又は融点は、前記樹脂Bのガラス転移点又は融点より20℃以上高い請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
  5. 前記樹脂Aのガラス転移点又は融点は、160℃以上であり、
    前記樹脂Bのガラス転移点又は融点は、160℃未満である請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
  6. 前記樹脂Aは、(メタ)アクリル系樹脂である請求項1から5のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔質構造体を有する絶縁層。
  8. 電極基体上に、活物質を含む電極合材部が形成されており、
    請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔質構造体が前記電極合材部上に形成されている電極。
  9. 前記多孔質構造体の一部領域及び前記電極合材部の一部領域は、重複している請求項8に記載の電極。
  10. 請求項8又は9に記載の電極を有する蓄電素子。
  11. 多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを有する多孔質構造体の製造方法であって、
    硬化することで前記多孔質構造部Aを形成する液体組成物Aを付与する付与工程Aと、
    硬化することで前記多孔質構造部Bを形成する液体組成物Bを付与する付与工程Bと、
    互いに接触している付与された前記液体組成物A及び前記液体組成物Bを同時に硬化させる硬化工程と、を有し、
    前記液体組成物A及び前記液体組成物Bは、組成が異なる多孔質構造体の製造方法。
  12. 前記付与工程Aは、前記液体組成物Aをインクジェット方式で吐出する工程であり、
    前記付与工程Bは、前記液体組成物Bをインクジェット方式で吐出する工程である請求項11に記載の多孔質構造体の製造方法。
  13. 前記液体組成物A及び前記液体組成物Bは、25℃における粘度が1mPa・s以上200mPa・s以下である請求項11又は12に記載の多孔質構造体の製造方法。
  14. 多孔質構造部A及び多孔質構造部Bを有する多孔質構造体の製造装置であって、
    硬化することで前記多孔質構造部Aを形成する液体組成物Aを付与する付与手段Aと、
    硬化することで前記多孔質構造部Bを形成する液体組成物Bを付与する付与手段Bと、
    互いに接触している付与された前記液体組成物A及び前記液体組成物Bを同時に硬化させる硬化手段と、を有し、
    前記液体組成物A及び前記液体組成物Bは、組成が異なる多孔質構造体の製造装置。
  15. 前記付与手段Aは、前記液体組成物Aをインクジェット方式で吐出する手段であり、
    前記付与手段Bは、前記液体組成物Bをインクジェット方式で吐出する手段である請求項14に記載の多孔質構造体の製造装置。
  16. 前記液体組成物A及び前記液体組成物Bは、25℃における粘度が1mPa・s以上200mPa・s以下である請求項14又は15に記載の多孔質構造体の製造装置。
  17. 請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔質構造体及び機能性物質を有する担持体であって、
    前記機能性物質は、前記多孔質構造部A及び前記多孔質構造部Bから選ばれる少なくとも一方において担持されている担持体。
  18. 請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔質構造体を有する分離層であって、
    前記分離層は、流体が透過可能であり、
    前記多孔質構造部A及び前記多孔質構造部Bから選ばれる少なくとも一方は、前記流体が透過するときに前記流体に含有される所定の物質を分離する分離層。
  19. 請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔質構造体を有する反応層であって、
    前記反応層は、流体が透過可能であり、
    前記多孔質構造部A及び前記多孔質構造部Bから選ばれる少なくとも一方は、前記流体が透過するときに前記流体に反応場を提供する反応層。
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