JP2024014706A - 立体造形用の光硬化性樹脂組成物、及び、立体物の製造方法 - Google Patents

立体造形用の光硬化性樹脂組成物、及び、立体物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】摺動性の高い立体物の造形が可能であり、保存安定性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】ラジカル重合性成分(A)と、金属石鹸(B)と、硬化剤(C)とを含み、前記(A)成分が多官能ラジカル重合性化合物(A-1)、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)を含み、(A)成分のHSP値と(B)成分のHSP値との差を0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下とする。【選択図】なし

Description

本発明は、立体造形用の光硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた立体物の製造方法に関する。
光硬化性樹脂組成物に、三次元モデルの立体形状に基づいて選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより、当該硬化樹脂層が一体的に積層されてなる立体物を作製する光学的立体造形法(以下、光造形法と記述する)が知られている。
光造形法は、形状確認のための試作品の造形(ラピッドプロトタイピング)や、機能性検証のためのワーキングモデルの造形や型の造形(ラピッドツーリング)への応用が進んでいる。さらに、近年は、光造形法の用途は実製品の造形(ラピッドマニュファクチャリング)にも広がり始めている。
上記のような背景から、光硬化性樹脂組成物に対する要求は高度化してきている。要求の一例としては、汎用のエンジニアリングプラスチックに匹敵する、低い摩擦係数と高い耐摩耗性(以下、低摩擦特性と高耐摩耗性を総称して高摺動性と呼称することがある)を備えた立体物が得られる光硬化性樹脂組成物が求められている。一方、光造形法では硬化樹脂層を逐次形成し積層するため物品のサイズによっては造形が長時間となることがあり、また硬化前の光硬化性樹脂組成物が液体の状態で長期保管されることも多い。従って、液状の光造形用の光硬化性樹脂組成物では長時間にわたって分離や変質が起こらないこと(以下、保存安定性と呼称することがある)が同時に求められる。
耐摩擦性を付与した光硬化性樹脂組成物としては、(メタ)アクリロイル基を2乃至8有する化合物と、シリコーン微粒子及びシリカ微粒子からなるフィラーと、リン酸エステル基を持つ(メタ)アクリレートと、ポリエチレンワックスと、光重合開始剤と、を含有する光硬化性樹脂組成物が特許文献1に開示されている。また特許文献2には摺動部のシール部材に適用する樹脂組成物として、分子中に放射線硬化が可能な反応基を有するオルガノポリシロキサンと、球形のシリコーンフィラーと、噴霧質シリカと、重合開始剤と、を含有する光硬化性樹脂組成物が開示されている。
特開2018-141142号公報 特表2004-83822号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示された光硬化性樹脂組成物では、摺動性付与の目的で添加されるシリコーン微粒子及びシリカ微粒子が長期保存によって液中で分離し、硬化物特性に影響を与える懸念がある。このように、硬化物が優れた摺動性を有し、且つ保存安定性が良好で立体造形に適した光硬化性樹脂組成物は実現できていない。
本発明は、このような事情を鑑みて、摺動性の高い立体物の造形が可能であり、保存安定性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性成分(A)と、硬化剤(C)とを含み、前記(A)成分が多官能ラジカル重合性化合物(A-1)、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)を含む立体造形用の光硬化性樹脂組成物であって、
さらに、金属石鹸(B)を含み、
前記(A)成分のHSP値と前記(B)成分のHSP値との差が0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下であることを特徴とする。
また本発明の硬化物は、上記本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする。
さらに、本発明の立体物の製造方法は、光造形法を用いた立体物の製造方法であって、
光硬化性樹脂組成物を層状に配置する工程と、
造形モデルのスライスデータに基づいて、層状の前記光硬化性樹脂組成物に光エネルギーを照射して硬化させて造形物を造形する工程と、
を含み、
前記光硬化性樹脂組成物が、上記本発明の光硬化性樹脂組成物であることを特徴とする。
本発明によれば、摺動性の高い立体物の造形が可能であり、保存安定性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供することができる。
光造形装置の構成例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、以下に説明する実施形態は、あくまでも本発明の実施形態の一つであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性成分(A)と、金属石鹸(B)と、硬化剤(C)とを含み、上記ラジカル重合性成分(A)は、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)を含む。各成分について説明する。
<成分(A-1):多官能ラジカル重合性化合物>
本発明の立体造形用の光硬化性樹脂組成物(単に硬化性樹脂組成物或いは樹脂組成物と記述する場合がある)に含まれる多官能ラジカル重合性化合物(A-1)は、分子内に2個以上のラジカル重合性官能基を有する化合物である。ラジカル重合性官能基としては、エチレン性不飽和基が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基などが挙げられる。多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系化合物、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート系化合物、(メタ)アクリルアミド系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系化合物、ビニルエーテル系化合物、芳香族ビニル系化合物などが挙げられる。中でも、入手容易性と硬化性の観点から、(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬社製、KAYARAD HX-220、HX-620など)、ビスフェノールAのEO付加物のジ(メタ)アクリレート、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート、シロキサン構造を有する(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、などを挙げることができる。
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ビニロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート系化合物としては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系化合物としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N,N’,N’’-トリアクリロイルジエチレントリアミンなどが挙げられる。
マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンなどが挙げられる。
ビニルエーテル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と、多価イソシアネート系化合物との反応や、ポリオール系化合物とイソシアネート基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られるものが挙げられる。他に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と、多価イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物との反応によって得られるものが挙げられる。中でも特に、高い靱性を実現できる点から、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と、多価イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物とを反応させてなるものが好ましい。
前記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイル-オキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物は単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
前記多価イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネート、或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物又は多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート等が挙げられる。これら多価イソシアネート系化合物は単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
前記ポリオール系化合物としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオール系化合物は、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などが挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。
前記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。
前記多価アルコールとしては、前記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示した多価アルコール等が挙げられる。前記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。
尚、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
前記イソシアネート基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-イソシアネートエチルメタクリレート、2-イソシアネートエチルアクリレートなどが挙げられる。
本発明にかかる多官能ラジカル重合性化合物(A-1)には、種々の化合物を用いることができるが、合成が容易であり入手し易く、得られる造形物の靭性が高いため、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物が特に好ましい。また、ポリエーテル構造を有する多官能ラジカル重合性化合物は、粘度が低く、造形時における液切れが良く、精度の高い硬化物が得られるため好ましい。また、ポリエステル構造、或いは、ポリカーボネート構造を有する多官能ラジカル重合性化合物は、靱性の高い硬化物が得られるため好ましい。
多官能ラジカル重合性化合物(A-1)は、これらの単一化合物であっても良いし、2種類以上を含有していても良い。本発明における多官能ラジカル重合性化合物(A-1)とは、光硬化性樹脂組成物に含まれる1種或いは複数種の多官能ラジカル重合性化合物を、まとめて指す呼称である。
本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれる多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の量は、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と後述する単官能ラジカル重合性化合物(A-2)との合計100質量部中に、20質量部以上75質量部以下が好ましい。多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量が20質量部以上で、良好な硬化性の光硬化性樹脂組成物が得られ、得られる硬化物において良好な靭性が得られる。また、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量が75質量部以下で、光硬化性樹脂組成物の粘度が適度に低くなり、立体造形用に適した粘度となる。光硬化性樹脂組成物に含まれる多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量は、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)との合計100質量部中に、好ましくは20質量部以上75質量部以下、より好ましくは30質量部以上75質量部以下である。多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量を上述の範囲にすることにより、適度な粘度で造形性に優れた光硬化性樹脂組成物が得られ、かつ硬化物において良好な機械物性が得られる。
<成分(A-2):単官能ラジカル重合性化合物>
本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれる単官能ラジカル重合性化合物(A-2)は、分子内に1つのラジカル重合性官能基を有する化合物である。光硬化性樹脂組成物が単官能ラジカル重合性化合物(A-2)を含有することで、立体造形に好適な粘度を実現することができる。また、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の添加量を調整したり種類を適切に選択したりすることで、光硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械特性を、所望の範囲に調整することができる。
単官能ラジカル重合性化合物(A-2)としては、アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、ビニルエステル系化合物、N-ビニルピロリドンなどの、N-ビニル系化合物、共役ジエン系化合物、ビニルケトン系化合物、ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でもアクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系モノマー、N-ビニル系化合物は、光硬化性樹脂組成物の硬化性、硬化物の機械特性が優れる点で、特に好ましい。
アクリルアミド系化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N-tert-オクチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
また、(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5-ジヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-イソプロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル-メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H,オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートエピクロロヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸(メタ)アクリレート、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(製品名:AO-MA、日本触媒社製)、イミド基を有する(メタ)アクリレート類(製品名:M-140、東亞合成社製)、シロキサン構造を有する単官能(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
マレイミド系モノマーとしては、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
その他の単官能ラジカル重合性化合物として、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、などのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルモルフォリン、N-ビニルアセトアミドなどのN-ビニル化合物などが挙げられる。
これらの単官能ラジカル重合性化合物は、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明の光硬化性樹脂組成物が含有する単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の量は、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と単官能ラジカル重合性化合物(A-2)との合計100質量部中、25質量部以上80質量部以下が好ましい。単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の割合が25質量部以上で、光硬化性樹脂組成物の粘度が適度に低くなり、立体造形に適した粘度となる。また、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の割合が80質量部以下で、光硬化性樹脂組成物の硬化性と、得られる硬化物の靭性が共に良好になり好ましい。より好ましくは25質量部以上70質量部以下である。単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の含有量を上述の範囲にすることにより、適度な粘度で造形性に優れ、且つ硬化物の機械物性が良好な光硬化性樹脂組成物が得られる。
<成分(A)のエチレン性不飽和基当量について>
硬化物の機械物性の観点からは、本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性成分(A)のエチレン性不飽和基当量は500g/eq以上2500g/eq以下であることが好ましい。より好ましくは、500g/eq以上2000g/eq以下である。ラジカル重合性成分(A)のエチレン性不飽和基当量を上述の範囲にすることにより、硬化物中の架橋密度が適切な範囲となり、本発明の主要な効果である摺動性に加えて、靭性と耐熱性・弾性率のバランスに優れた硬化物が得られる。
尚、本発明におけるエチレン性不飽和基当量の定義とは、ラジカル重合性化合物の重量平均分子量を一分子中のエチレン性不飽和基の数で除した値である。エチレン性不飽和基当量が大きいほど、光硬化後の硬化物中の架橋密度が小さくなり、良好な靭性を持った硬化物が得られる。光硬化性樹脂組成物が複数種類のラジカル重合性化合物を含む場合は、それぞれのラジカル重合性化合物のエチレン性不飽和基当量を光硬化性樹脂組成物に含有される質量比で加重平均した値を、ラジカル重合性成分(A)のエチレン性不飽和基当量とする。
本発明におけるラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量である。重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、高速GPC装置「HLC-8220GPC」)に、カラム:Shodex GPCLF-804(排除限界分子量:2×106、分離範囲:300~2×106)2本を直列に接続して、測定することができる。
<成分(B):金属石鹸>
本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれる金属石鹸(B)は長鎖脂肪酸と金属イオンが結合してなるものであり、脂肪酸部位に基づく疎水的部分と、金属イオンとの結合部位に基づく親水的部分を同時に有するものである。長鎖脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。この内、潤滑性付与の観点からは炭素数12以上の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が好ましく、特に炭素数12以上30以下の飽和脂肪酸が特に好ましい。金属イオンとしては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、マンガン等が挙げられる。
金属石鹸の具体例としては、ステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、オレイン酸リチウム、2-エチルヘキサン酸リチウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、12-ヒドロキシステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、ベヘン酸カリウム、モンタン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、2-エチルヘキサン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、12-ヒドロキシステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、ベヘン酸バリウム、モンタン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、12-ヒドロキシステアリン酸鉛、ベヘン酸鉛、モンタン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸マンガン、リシノール酸バリウム、ベヘン酸アルミニウム、モンタン酸アルミニウムなどが挙げられる。
上記の具体例のうち、好ましくは、長鎖脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、べへン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、ナフテン酸、オレイン酸、リシノール酸からなる群より選択され、金属イオンが亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択される金属石鹸が挙げられる。
さらに、入手性、及びその潤滑性の高さから長鎖脂肪酸がラウリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、べへン酸、モンタン酸からなる群から選択され、金属イオンが亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択されるものが好ましく、経済性と潤滑性能のバランスからはステアリン酸亜鉛がより好ましい。これらは単独で使用しうる他、2種以上を併用することもできる。
本発明にかかる金属石鹸(B)の平均粒子径の上限については特に規定はないが、50μm以下であることが好ましい。光造形法では、200μm以下の層厚単位で積層されることが多く、特に100μm以下の層厚単位で積層されることが多いため、平均粒子径を50μm以下とすることで、層内の金属石鹸(B)の均一性が高い硬化物を得ることができる。さらに好ましくは、金属石鹸(B)の平均粒子径は4μm以下であることが好ましい。平均粒子径が4μm以下である場合には、光硬化性樹脂組成物中での金属石鹸(B)の分離速度が十分に抑えられ、保存安定性の高い光硬化性樹脂組成物を得ることができる。金属石鹸(B)平均粒子径の下限については特に規定はないが、入手性の観点から0.1μm以上が好ましい。
尚、本発明に係る金属石鹸(B)の平均粒子径は、大きさに応じて、動的光散乱法による体積平均粒子径又はSEM(走査電子顕微鏡)像から算出される中央値とすることができる。一般に、動的光散乱法に適した粒子径は数μmであるため、動的光散乱法による測定が難しい大きさの粒子の場合はSEM像から平均粒子径を算出するとよい。動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製、NanotracWave II EX150が挙げられる。SEM像から平均粒子径を算出する場合は、複数(100以上)の粒子について、SEM像から粒子の占める面積を計測し、面積の円相当径を算出し、その中央値を粒子の平均粒子径とする。
本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれる金属石鹸(B)の量は特に規定はないが、ラジカル重合性成分(A)100質量部に対して0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01質量部以上7.5質量部以下である。さらに好ましくは、0.05質量部以上5.0質量部以下である。金属石鹸(B)の添加量を上述の範囲とすることで、光硬化性樹脂組成物を立体造形法に適用可能な粘度とした上で、硬化物の摺動性についても高い性能が期待できる。
<ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)間のHSP値の差について>
本発明の光硬化性樹脂組成物においては、ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)の親和性が高いことが好ましい。ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)の親和性が高いことにより、ラジカル重合性成分(A)中における金属石鹸(B)の分散安定性を高めることができ、保存安定性に優れた光硬化性樹脂組成物を得ることができる。さらにはラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)の間に大きな相互作用が得られ、硬化物の耐衝撃性を高めることにも寄与する。
ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)間の親和性を定量化する評価手法の一つとしてHSP値(ハンセン溶解度パラメータ)がある。HSP値はチャールズハンセン(Charles M.Hansen)によって提案されたパラメータであり、化合物間の相溶性を予測するのに有用な手段としてよく知られている。HSP値は理論的或いは実験的に誘導することが可能な指標であり、δD、δP、及びδHからなる3つのパラメータを有する。ある物質のHSP値は(δD,δP,δH)のように3つのパラメータを座標軸とする3次元空間(HSP空間)中のある座標として捉えることができる。本発明においてはδD,δP,δHの各パラメータの単位として[MPa1/2]を採用する。尚、各パラメータが物理的に意味するところを以下に記述する。
δD:ロンドン分散力に由来するエネルギー
δP:双極子相互作用に由来するエネルギー
δH:水素結合力に由来するエネルギー
ここで、本発明におけるラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)間のHSP値の差について定義を示す。ラジカル重合性成分(A)のHSP値を(δD(A),δP(A),δH(A))とし、金属石鹸(B)のHSP値を(δD(B),δP(B),δH(B))と表記し、ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)間のHSP値の差をDiff(HSP(A),HSP(B))と表記した時、Diff(HSP(A),HSP(B))は以下のように定義される。
Figure 2024014706000001
ラジカル重合性成分(A)及び/又は金属石鹸(B)が2種以上の物質を含む混合物である場合、各物質のHSP値に混合物全体に対する各物質の体積比を乗じ、それらの総和をとった値で計算される。例えば成分1と成分2からなる混合物を考える。成分1のHSP値、密度、質量比をそれぞれ(δD(1),δP(1),δH(1))、d1(g/mL)、w1(wt%)とし、成分2のHSP値、密度、質量比をそれぞれ(δD(2),δP(2),δH(2))、d2(g/mL)、w2(wt%)とし、混合物のHSP値を(δD(m),δP(m),δH(m))と表記した時、(δD(m),δP(m),δH(m))は以下のように定義される。
Figure 2024014706000002
ハンセン溶解度パラメータの取得方法としては様々な方法が挙げられるが、データベースや文献等の公知の情報に基づいて入手することが先ず挙げられる。公知の情報が存在しない物質については、計算的に求める方法と実験的に求める方法の二つが挙げられる。計算的に求める方法については分子の化学構造を入力としてHSP値を推定する公知のプロトコルが複数存在し、その具体例としてはHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)等の市販ソフトウェアを利用する方法や、Kreveren-Hoftyzer法、Hoy法、Stefanis&Panayiotou法、或いはACS Omega.2018 Dec 31;3(12):17049-17056.に記載の手法を用いて推定する方法が挙げられる。本発明では特に断りのない限り、ACS Omega.2018 Dec 31;3(12):17049-17056.に記載の手法をHSP値の推定方法として採用する。実験的に求める手法としては、ハンセン溶解球法から求める方法が挙げられる。ハンセン溶解球法の詳細は以下の通りである。
ある目的物質のHSP値を求めたいとする。この目的物質に対してHSP値が既知である種々の溶媒を使って、溶解性のテストを行う。各溶媒のHSP値をHSP空間上にプロットした時に、目的物質に対して良溶媒であったもののHSP値が内側に、貧溶媒であったものが外側に位置するようにHSP空間上で球を規定し、当該球の中心を目的物質のHSP値として採用する。以上のようにして決定された球は溶解球と呼ばれることが多い。また、物質によっては実験の結果、溶解球が二つ、ないしはそれ以上存在するようなケースがある。これは当該物質が疎水的な部位と親水的な部位を両方有している場合にみられることが多く、例えばイオン液体や、金属石鹸のような物質で現れることがある。本発明にかかる金属石鹸(B)についてハンセン溶解球法でHSP値を決定する場合において、上述のように複数の溶解球が存在する場合には、その内HSP空間中において最も疎水的領域に存在する溶解球の中心を以て、金属石鹸(B)のHSP値を規定するものとする。ここでより疎水的領域に存在するとは、よりδPが小さいか、δHが小さい領域に位置することを意味する。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上述に記載の方法により決定された、ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)のHSP値の差が0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下である。ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)のHSP値の差を8.0MPa1/2以下とすることで、ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)との良好な相溶性が得られる。その結果、ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)の密度差に駆動される形で生じる金属石鹸(B)の沈降ないしは浮上が抑制され、金属石鹸(B)がラジカル重合性成分(A)から分離しにくくなり、保存安定性に優れた光硬化性樹脂組成物が得られる。
HSP差が上述の条件を満たした光硬化性樹脂組成物が予想を超えて優れた分散安定性を示す理由の一つとしては、次のように考えられる。金属石鹸は界面活性剤分子の凝集体として成るものであり、分子同士が実質的に共有結合によって連結されていないため、光硬化性樹脂組成物への分散性が良好な場合には、仕込み時の粒子径よりもさらに微細化されて系中で安定化する事が挙げられる。この点はシリカ粒子のように粒子内部に結合のネットワークが存在し仕込みの粒子径以上に微細化することが実質的に困難な架橋粒子と比較して金属石鹸が大きく異なる点である。よって、分散安定性への寄与の他、散乱による造形精度への影響を低く抑えることができ、本発明の光硬化性樹脂組成物の光造形法への適用性を一層高めるものである。
<硬化剤(C)>
本発明において、硬化剤(C)としては、光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。光硬化性樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤に加えて熱ラジカル重合開始剤を含有してもよい。光硬化性樹脂組成物が熱ラジカル重合開始剤を含有することで、光照射による造形後に熱処理を施すことで、造形物の機械特性をより高めることができる。
[光ラジカル重合開始剤]
光ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引抜き型に分類される。分子内開裂型では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断され、その切断された部位にラジカルが発生し、それが重合開始剤となり多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の重合が始まる。水素引き抜き型では、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素引き抜き反応を起こし、ラジカルが発生する。そして、発生したラジカルが重合開始剤となって、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の重合が始まる。
分子内開裂型光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤が知られている。これらはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤等がある。具体的な化合物としては、例えば、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(OMNIRAD(登録商標)651、IGM RESINS B.V.社製)等があり、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(OMNIRAD(登録商標)1173、IGM RESINS B.V.社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(OMNIRAD(登録商標)184、IGM RESINS B.V.社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(OMNIRAD(登録商標)2959、IGM RESINS B.V.社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(OMNIRAD(登録商標)127、IGM RESINS B.V.社製)等があり、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(OMNIRAD(登録商標)907、IGM RESINS B.V.社製)或いは2-ベンジルメチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(OMNIRAD(登録商標)369、IGM RESINS B.V.社製)等があるが、これに限定されることはない。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリンTPO、BASF社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(OMNIRAD(登録商標)TPO H、IGM RESINS B.V.社製)等があるが、これに限定されることはない。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、(2E)-2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1-オン(イルガキュアOXE-01、BASF社製)等が挙げられるが、これに限定されることはない。尚、括弧内は商品名の一例である。
水素引き抜き型ラジカル重合開始剤としては、2-エチル-9,10-アントラキノン、2-t-ブチル-9,10-アントラキノン等のアントラキノン誘導体、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体が挙げられるが、これに限定されることはない。
本発明では、光ラジカル重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、熱ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。
本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれる光ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。係る範囲内で用いることにより、良好な光透過性の光硬化性樹脂組成物が得られ、十分で均一な重合が可能となる。
[熱ラジカル重合開始剤]
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生するものであれば特に制限されず従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、アゾ系化合物、過酸化物及び過硫酸塩等を好ましいものとして例示することができる。アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等が挙げられる。過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート及びジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。係る範囲で用いることにより、硬化物の分子量が伸びて、良好な物性が得られる。
<その他の成分>
本発明の光硬化性樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤の例としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエステル、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、ポリシロキサン、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂などの樹脂、或いはポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのエンジニアリングプラスチック、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、フッ素含有モノマー、シロキサン構造含有モノマーなど反応性モノマー、金、銀、鉛などの軟質金属、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、メラニンシアヌレート、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、窒化ケイ素、セレン化モリブデンなどの層状結晶構造物質、シリカ粒子、PTFE粒子、エラストマー粒子、ポリシルセスキオキサン粒子、シリコーンゴム粒子、アクリル粒子、ナイロン粒子、エラストマー粒子の表面が異種のポリマーによって被覆されたコアシェル型エラストマー粒子等(例えばシリコーンゴム粒子をシリコーンレジンで被覆したシリコーン複合粒子等)の固体粒子、フェノチアジン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の重合禁止剤、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などの光増感剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、潤滑性付与剤等を挙げることができる。
この内、金属石鹸(B)との組み合わせに適しているものとしては、特にポリシロキサン骨格を主成分とするシリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルの添加によって、造形時の泡立ちが抑えられる他、系全体が疎水方向にシフトすることにより金属石鹸(B)との親和性が高くなり高度な分散安定性が期待できる。さらにシリコーンオイル自体も潤滑成分として機能し硬化物の摺動性を高める点でも有用である。
シリコーンオイルとしては、例えば、直鎖状のジメチルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルや、非反応性の変性シリコーンオイル等の1種または2種以上を用いることができるが、特に、直鎖状のジメチルシリコーンオイルが好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれるシリコーンオイルの含有量はラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)の合計100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下が好ましい。シリコーンオイルの含有量を上記範囲にすることで、光硬化性樹脂組成物の保存安定性が高く、機械物性と摺動性を両立した硬化物が得られる。
<光硬化性樹脂組成物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須成分であるラジカル重合性成分(A)、金属石鹸(B)、及び硬化剤(C)に、必要に応じてその他の任意成分を適量添加して製造される。具体的には、これらの成分を攪拌容器に仕込み、通常、30℃以上120℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下で攪拌することにより製造することができる。その際の攪拌時間は、通常1分以上6時間以下、好ましくは10分以上2時間以下である。ラジカル重合性成分(A)、金属石鹸(B)の合計の含有量は、硬化剤(C)を除いた硬化性樹脂組成物100質量部中、25質量部以上100質量部以下が好ましい。さらに好ましくは75質量部以上100質量部以下である。尚、光硬化性樹脂組成物100質量部のうち、ラジカル重合性成分(A)、及び金属石鹸(B)を除いた残りの質量部は、硬化剤(C)やその他の成分によって占められる。
本発明の光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、好ましくは50mPa・s以上30,000mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以上10,000mPa・s以下である。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光造形法の造形用材料として好適に使用される。即ち、本発明の光硬化性樹脂組成物に、造形する物品(造形モデル)の三次元形状データから生成されたスライスデータに応じて光エネルギー線を照射し、硬化に必要なエネルギーを供給することにより、所望の形状の物品(立体物)を製造することができる。
<硬化物>
本発明の硬化物は、前述の光硬化性樹脂組成物を、光エネルギー線照射を用いて硬化せしめることで得ることができる。光エネルギー線としては、紫外線・赤外線などを挙げることができる。中でも、汎用性があるため入手が容易で、光ラジカル重合開始剤にエネルギーが吸収され易いことから、300nm以上450nm以下の波長を有する光線を好ましく用いることができる。光エネルギー線の光源として、紫外線又は赤外線レーザー(例えばArレーザー、He-Cdレーザーなど)、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯などを使用することができる。中でも、レーザー光源が、エネルギーレベルを高めることで造形時間を短縮することができ、しかも集光性に優れるため、照射径を小さくして高い造形精度を得ることができるため、好ましく採用される。光エネルギー線は、光硬化性樹脂組成物が含有するラジカル重合開始剤の種類に合わせて適宜選択することができ、複数組み合わせて用いることもできる。
<立体物の製造方法>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化剤(C)として光ラジカル重合開始剤等の光重合開始剤を含有することで、光造形法に用いる造形用材料として好適である。言い換えると、本発明の光硬化性樹脂組成物からなる立体物は、公知の光造形法を使用して製造することができる。光造形法を用いた立体物の製造方法は、光硬化性樹脂組成物を所定の厚さに配置する工程と、造形モデルのスライスデータに基づいて、前記光硬化性樹脂組成物に光エネルギーを照射して硬化させる工程とを含む。光造形法を用いた立体物の製造方法は、光エネルギーの照射によって得られた立体物に、熱処理を施す工程をさらに含むことが好ましい。照射に用いる光エネルギーは、レーザー光又はプロジェクターから照射される光が好ましい。好ましい光造形法の代表例には、大きく分けて自由液面法と規制液面法の2種類がある。
図1に、自由液面法を用いた光造形装置100の構成例を示す。光造形装置100は、液状の光硬化性樹脂組成物10を満たした槽11を有している。槽11の内側には、造形ステージ12が、駆動軸13によって鉛直方向に駆動可能に設けられている。光源14から射出された光エネルギー線15は、スライスデータに従って制御部18によって制御されるガルバノミラー16で照射位置が変更され、槽11の表面を走査することが可能である。図1では、光エネルギー線15の走査範囲を太い破線で示している。
光エネルギー線15によって硬化される光硬化性樹脂組成物10の厚さdは、スライスデータの生成時の設定に基づいて決まる値で、得られる立体物17の精度(造形する物品の三次元形状データの再現性)に影響を与える。厚さdは、制御部18が駆動軸13の駆動量を制御することによって達成される。
先ず、制御部18が設定に基づいて駆動軸13を制御し、造形ステージ12の上に厚さdの光硬化性樹脂組成物が供給される。造形ステージ12上の液状の光硬化性樹脂組成物に、スライスデータに基づいて光エネルギー線が選択的に照射され、所望のパターンを有する硬化層が形成される。次いで、造形ステージ12を白抜きの矢印の方向に移動させることによって、硬化層の表面に厚さdの未硬化の光硬化性樹脂組成物が供給される。そして、スライスデータに基づいて光エネルギー線15が照射され、先に形成した硬化層と一体化した硬化物が形成される。このように所定の厚さdで硬化された硬化層を積層する工程を繰り返すことによって立体的な立体物17を得ることができる。
このようにして得られた立体物17を槽11から取り出し、その表面に残存する未反応の光硬化性樹脂組成物を除去した後、必要に応じて洗浄や後加工が施される。洗浄に用いられる洗浄剤には、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤を用いることができる。他に、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤や、テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤を用いても良い。洗浄剤で洗浄した後に、必要に応じて後加工が行われる。例えば、光照射及び/又は熱照射によるポストキュアを行っても良い。ポストキュアは、立体物の表面及び内部に残存する未反応の光硬化性樹脂組成物を硬化させることができ、立体物の表面のべたつきを抑えることができる他、立体物の初期強度を向上させることができる。後加工として、サポート体の除去、表面の研磨、ねじ穴を設けるなどの形状加工などを行っても良い。
製造に用いる光エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線などを挙げることができる。中でも、300nm以上450nm以下の波長を有する紫外線は汎用性が高く比較的安価に入手が可能であるため、好ましく用いられる。紫外線を発生させる光源としては、紫外線レーザー(例えばArレーザー、He-Cdレーザーなど)、UV-LED、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯などを使用することができる。
所定の厚みになるように配置された光硬化性樹脂組成物に光エネルギー線を照射するに当たっては、前述したように、点状或いは線状に絞られた光エネルギー線を使用して、点描方式又は線描方式で樹脂を硬化させることができる。他に、液晶シャッター又はデジタルマイクロミラーシャッターなどのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して、光エネルギー線を面状に照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させてもよい。
自由液面法と同様に、規制液面法による造形も好ましい。規制液面法を用いる光造形装置は、図1の光造形装置100の造形ステージ12に相当する支持ステージが立体物を液面の上方に引き上げるように設けられ、光照射手段が槽11の下方に設けられた構成となる。規制液面法の代表的な造形例は、次の通りである。先ず、昇降自在に設けられた支持ステージの支持面と光硬化性樹脂組成物を収容した槽の底面とが所定の距離となるように設置され、支持ステージの支持面と槽の底面との間に所定の厚さdで光硬化性樹脂組成物が供給される。次いで、光硬化性樹脂組成物を収容した槽の底面側から、レーザー光源或いは、プロジェクターによって、ステージ支持面と槽の底面との間の光硬化性樹脂組成物のスライスデータに応じた領域に、選択的に光が照射される。光の照射により、ステージ支持面と槽の底面との間の光硬化性樹脂組成物が硬化し、光硬化性樹脂組成物の硬化層が形成される。その後、支持ステージを上昇させて、硬化層を槽の底面から引き剥がす。
次いで、支持ステージの上に形成された硬化層と槽の底面との間が所定の距離dとなるように支持ステージの高さを調整して、支持ステージの支持面と槽の底面との間に所定の厚さdで光硬化性樹脂組成物を供給する。そして、先ほどと同様に選択的に光を照射することによって、硬化層と槽の底面との間に、先に形成した硬化層と接合した硬化層を新たに形成する。そして、光照射されるパターンをスライスデータに応じて変化させながら或いは変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化層が一体的に積層されてなる立体物が形成される。
<用途>
本発明の光硬化性樹脂組成物は立体造形用として好適に使用でき、その硬化物は用途を問わず幅広い分野で利用可能である。例えば、光硬化性樹脂組成物は光造形法の3Dプリンターの造形用材料として、硬化物はスポーツ用品、医療・介護用品、義肢・義歯・義骨などの特注品、産業用機械・機器、精密機器、電気・電子機器、電気・電子部品、建材用品等の様々な製品に利用可能である。
<含まれる構成>
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
ラジカル重合性成分(A)と、硬化剤(C)とを含み、前記(A)成分が多官能ラジカル重合性化合物(A-1)、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)を含む立体造形用の光硬化性樹脂組成物であって、
さらに、金属石鹸(B)を含み、
前記(A)成分のHSP値と前記(B)成分のHSP値との差が0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(構成2)
前記ラジカル重合性成分(A)のエチレン性不飽和基当量が500g/eq以上2,500g/eq以下であることを特徴とする構成1に記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成3)
前記金属石鹸(B)の含有量が、前記ラジカル重合性成分(A)100質量部に対して0.01質量部以上15質量部以下であることを特徴とする構成1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成4)
前記金属石鹸(B)の平均粒子径が50μm以下であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成5)
前記金属石鹸(B)の平均粒子径が4μm以下であることを特徴とする構成4に記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成6)
前記金属石鹸(B)が炭素数12以上の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸と、金属イオンとからなる化合物であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成7)
前記飽和脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、べへン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、ナフテン酸からなる群より選択され、前記不飽和脂肪酸がオレイン酸、リシノール酸からなる群より選択され、前記金属イオンが亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択されることを特徴とする構成6に記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成8)
前記飽和脂肪酸がラウリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、べへン酸、モンタン酸からなる群より選択され、前記金属イオンが亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択されることを特徴とする構成6に記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成9)
前記金属石鹸(B)がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする構成6に記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成10)
前記単官能ラジカル重合性化合物(A-2)は、アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系化合物、N-ビニル化合物の中から選ばれることを特徴とする構成1乃至9のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成11)
前記多官能ラジカル重合性化合物(A-1)は、ポリエーテル構造、ポリエステル構造、ポリカーボネート構造のいずれかを有する、(メタ)アクリレート系化合物又はウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする構成1乃至10のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成12)
前記多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と、前記単官能ラジカル重合性化合物(A-2)との合計100質量部中、前記多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量が、20質量部以上75質量部以下であることを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成13)
さらにシリコーンオイルを含むことを特徴とする構成1乃至12のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
(構成14)
構成1乃至13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
(構成15)
光造形法を用いた立体物の製造方法であって、
光硬化性樹脂組成物を層状に配置する工程と、
造形モデルのスライスデータに基づいて、層状の前記光硬化性樹脂組成物に光エネルギーを照射して硬化させて造形物を造形する工程と、
を含み、
前記光硬化性樹脂組成物が、構成1乃至13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物であることを特徴とする立体物の製造方法。
(構成16)
前記光エネルギーが、レーザー光源又はプロジェクターから照射される光であることを特徴とする構成15に記載の立体物の製造方法。
以下に本発明を詳しく説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[多官能ラジカル重合性化合物(A-1)]
実施例、比較例で用いた多官能ラジカル重合性化合物(A-1)を表1に示す。
Figure 2024014706000003
[単官能ラジカル重合性化合物(A-2)]
実施例、比較例で用いた単官能ラジカル重合性化合物(A-2)を表2に示す。
Figure 2024014706000004
[金属石鹸(B)]
実施例で用いた金属石鹸(B)を表3に示す。尚、表3におけるHSP値は、それぞれ以下のように決定した。
・B-1:DNTコーティング技報 No.20 報文-1「溶融亜鉛めっき高力ボルトの塗装品質向上に関する検討」より引用。
・B-2:ACS Omega.2018 Dec 31;3(12):17049-17056.に記載の手法を利用して算出。
・B-3:B-2と同様の手法で算出。
Figure 2024014706000005
[硬化剤(C)]
C-1:Omnirad819(IGM Resins社製、光ラジカル重合開始剤、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)
[その他の成分]
実施例、比較例で用いたラジカル重合性成分(A)、金属石鹸(B)、硬化剤(C)以外の成分について表4に示す。
Figure 2024014706000006
[光硬化性樹脂組成物の調製]
表5、表6に示す処方に従い各成分を配合し、70℃に加熱して1時間撹拌装置で撹拌し、光硬化性樹脂組成物を調製した。
[試験片の作製]
調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、3Dプリンター(3D Systems社製Figure4 Modular、規制液面法に基づく光造形装置)を用い、30mm×30mm×4mm、及び80mm×10mm×4mmの2種類の大きさの直方体を三次元形状に基づくスライスデータに従って造形した。30mm×30mm×4mmの直方体については、30mm×4mm×厚さ50μmの硬化層を30mmの高さになるまで積層して造形し、80mm×10mm×4mmの直方体については、10mm×4mm×厚さ50μmの硬化層を80mmの高さになるまで積層して造形した。得られた造形物を、3D Systems社製、LC-3DPrint Box UVポストキュアユニットを用いて90分間紫外光を照射して、試験片を作製した。このようにして得られた試験片は後述する造形性、摩擦係数、比摩耗量、シャルピー衝撃試験の評価に使用した。
[評価]
(造形性)
造形性の成否は、前記した試験片の寸法誤差として、30mm×30mm×4mmの形状に対する誤差を評価した。評価基準は下記の通りである。評価基準Bを満たしていれば良好な造形性が得られており、評価基準Aを満たしていれば優れた造形性が得られていると判断する。尚、各辺の寸法測定は、3Dプリンターで造形後、紫外線によるポストキュアをする前に行った。結果を表5に示す。
A:寸法誤差が±3%以内。
B:寸法誤差が±3%より大きく±20%以内。
C:造形ができない。
ここでいう「造形できない」とは、試験片の造形中に立体物が造形ステージから脱落するなど、顕著な欠損が生じることを指す。
(摩擦係数と比摩耗量)
摩擦係数としては、動摩擦係数をその指標とした。動摩擦係数の測定は、下記に示す条件で行った。
測定装置:新東科学社製 HEIDON Type20
試験片:30mm×30mm×4mm
相手材:SUS304製、直径10mm球
荷重:100g
摺動速度:53.9mm/s
試験時間:20分
30mm×30mm×4mmの試験片を30mm×30mmの面が摺動面となるように回転ステージに固定し、摺動半径が5mmとなるように、相手材のステンレス球を当接させた。球に所定の垂直荷重をかけ、所定の速度でステージを回転させ、摺動面とSUS304製の球との間にかかる力を測定した。測定した力を荷重で除することにより動摩擦係数を算出した。測定毎にサンプルを変えながら、合計4回の測定を行い、各測定においては測定開始から15分後の値を採用した。このようにして得た4回分の測定の平均をもって、最終的な動摩擦係数の値とした。動摩擦係数による摺動性の基準を以下に示す。評価基準Aを満たしていれば優れた摺動性、評価基準Bを満たしていれば良好な摺動性、評価基準Cであると摺動性に欠けると判断した。
A:0.5未満。
B:0.5以上1.0未満。
C:1.0以上。
比摩耗量は、前述した動摩擦係数測定後の摺動面に形成された摺動痕から、下記の方法により算出した。先ず、前記摺動痕の表面プロファイルを共焦点顕微鏡(レーザーテック製、OPTELICS C130)で測定することにより、摩耗体積を得た。次に、得られた摩耗体積を荷重と摺動距離で除した値を比摩耗量とした。比摩耗量による耐摩耗性の基準を以下に示す。評価基準Aを満たしていれば優れた耐摩耗性、評価基準Bを満たしていれば良好な耐摩耗性、評価基準Cであると耐摩耗性に欠けると判断した。
A:0.5mm3・N-1・km-1未満。
B:0.5mm3・N-1・km-1以上1.0mm3・N-1・km-1未満。
C:1.0mm3・N-1・km-1以上。
(シャルピー衝撃試験)
JIS K 7111に準じて、80mm×10mm×4mmの試験片について切欠き形成機(東洋精機製作所製、商品名「ノッチングツール A-4」)にて試験片中央部に深さ2mm、45°の切欠き(ノッチ)を入れた。衝撃試験機(東洋精機製作所製、商品名「IMPACT TESTER IT」)を用い、試験片の切欠きの背面から0.5Jのエネルギーで破壊する。150°まで振り上げたハンマーが試験片破壊後に振りあがる角度から破壊に要したエネルギーを算出し、それをシャルピー衝撃強さとし靱性の指標とした。靱性の評価基準を以下に示す。評価基準Aを満たしていれば優れた耐衝撃性、評価基準Bを満たしていれば良好な耐衝撃性、評価基準Cであると耐衝撃性に欠けると判断した。
A:2.0kJ/m2以上。
B:1.0kJ/m2以上2.0kJ/m2未満。
C:1.0kJ/m2未満。
(分散安定性)
光硬化性樹脂組成物の分散安定性の評価はLUMiSizer(ルフト社製)を用いて評価した。光硬化性樹脂組成物を光路長が10mmのポリアミド製セルにセル底面から22mmの高さまで入れ、温度25℃、回転数4000rpm、測定インターバル30秒の条件で255点測定した。当該セルの底面から0mm乃至25mmの範囲で、セルを通過する光強度を測定し、各位置での入射光強度で除することにより、各位置での透過率が算出される。このようにして得られた位置ごとの透過率をプロットしたものを以下、透過率プロファイルと呼称する。各時間での透過率プロファイルについて、液面及びセル底面による光のケラレの影響を取り除くため、当該セルの底面から5mm乃至20mmの範囲をROI(関心領域)とし、当該範囲において沈降(又は浮上)による分離境界を、透過率20%を閾値として決定した。当該分離境界が単位時間当たりに移動する距離を分離速度として算出し、得られた分離速度を相対遠心力で除することにより自然分離速度を算出した。尚、前述のROIにおいて測定中に分離境界が定義されなかった場合、当該試料の分離速度は「測定下限」として規定される。自然分離速度の評価基準を以下に示す。評価基準Aを満たしていれば優れた分散安定性、評価基準Bを満たしていれば良好な分散安定性、評価基準Cであると分散安定性に欠けると判断した。
A:測定下限乃至20μm/day未満。
B:20μm/day以上50μm/day未満。
C:50μm/day以上。
Figure 2024014706000007
表5に記載の多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量は、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と単官能ラジカル重合性化合物(A-2)との合計100質量部中の、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量を質量部で示している。同様に、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の含有量は、多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と単官能ラジカル重合性化合物(A-2)との合計100質量部中の、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の含有量を質量部で示している。また、金属石鹸(B)、及びその他の成分(EX-1乃至EX-3)の含有量は多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と単官能ラジカル重合性化合物(A-2)の合計100質量部に対する当該成分の含有量を質量部で示している。また、硬化剤(C)の含有量は多官能ラジカル重合性化合物(A-1)、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)、金属石鹸(B)、その他の成分(EX-1乃至EX-3)の合計100質量部に対する当該成分の含有量を質量部で示している。表6に記載の金属石鹸(B)の含有量、及び硬化剤(C)の含有量は、ラジカル重合性成分(A)100質量部に対する、当該成分の含有量を質量部で示している。
Figure 2024014706000008
表5、及び表6を用いて、本発明の有効性を実施例と比較例を参照しながら説明する。
[金属石鹸(B)の有効性]
実施例1乃至8と比較例1乃至3を比べることにより、金属石鹸(B)を含有する系ではいずれも分散安定性、摩擦係数、比摩耗量の評価がそれぞれB以上であり、優れた分散安定性と高い摺動性(低摩擦係数、及び耐摩耗性)を両立していることが確認できる。一方、金属石鹸を含有しない系では、分散安定性、摩擦係数、比摩耗量の評価のいずれかがCとなり、本発明と同等の効果を発現しえない事が確認できる。
[ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)のHSP値の差を0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下とすることの有効性]
実施例7乃至9と比較例4乃至6を比べることで、ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)のHSP値の差を0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下である場合には、金属石鹸(B)の分散安定性が極めて良好であることが確認できる。一方、当該HSP値の差が8.0MPa1/2よりも大きい場合には、分散安定性が不十分となることが確認できる。
また、実施例7乃至9については、摩擦係数、比摩耗量、シャルピー衝撃強度においても、良好な結果が得られた。
[ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)のHSP値の差を0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下とすることの有効性]
実施例乃至13と比較例4乃至6を比べることで、ラジカル重合性成分(A)と金属石鹸(B)のHSP値の差を0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下である場合には、金属石鹸(B)の分散安定性が極めて良好であることが確認できる。一方、当該HSP値の差が8.0MPa1/2よりも大きい場合には、分散安定性が不十分となることが確認できる。
また、実施例乃至13については、摩擦係数、比摩耗量、シャルピー衝撃強度においても、良好な結果が得られた。

Claims (16)

  1. ラジカル重合性成分(A)と、硬化剤(C)とを含み、前記(A)成分が多官能ラジカル重合性化合物(A-1)、単官能ラジカル重合性化合物(A-2)を含む立体造形用の光硬化性樹脂組成物であって、
    さらに、金属石鹸(B)を含み、
    前記(A)成分のHSP値と前記(B)成分のHSP値との差が0MPa1/2以上8.0MPa1/2以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
  2. 前記ラジカル重合性成分(A)のエチレン性不飽和基当量が500g/eq以上2,500g/eq以下であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  3. 前記金属石鹸(B)の含有量が、前記ラジカル重合性成分(A)100質量部に対して0.01質量部以上15質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  4. 前記金属石鹸(B)の平均粒子径が50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  5. 前記金属石鹸(B)の平均粒子径が4μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の光硬化性樹脂組成物。
  6. 前記金属石鹸(B)が炭素数12以上の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸と、金属イオンとからなる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  7. 前記飽和脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、べへン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、ナフテン酸からなる群より選択され、前記不飽和脂肪酸がオレイン酸、リシノール酸からなる群より選択され、前記金属イオンが亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項6に記載の光硬化性樹脂組成物。
  8. 前記飽和脂肪酸がラウリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、べへン酸、モンタン酸からなる群より選択され、前記金属イオンが亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項6に記載の光硬化性樹脂組成物。
  9. 前記金属石鹸(B)がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項6に記載の光硬化性樹脂組成物。
  10. 前記単官能ラジカル重合性化合物(A-2)は、アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系化合物、N-ビニル化合物の中から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  11. 前記多官能ラジカル重合性化合物(A-1)は、ポリエーテル構造、ポリエステル構造、ポリカーボネート構造のいずれかを有する、(メタ)アクリレート系化合物又はウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  12. 前記多官能ラジカル重合性化合物(A-1)と、前記単官能ラジカル重合性化合物(A-2)との合計100質量部中、前記多官能ラジカル重合性化合物(A-1)の含有量が、20質量部以上75質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  13. さらにシリコーンオイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  14. 請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
  15. 光造形法を用いた立体物の製造方法であって、
    光硬化性樹脂組成物を層状に配置する工程と、
    造形モデルのスライスデータに基づいて、層状の前記光硬化性樹脂組成物に光エネルギーを照射して硬化させて造形物を造形する工程と、
    を含み、
    前記光硬化性樹脂組成物が、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物であることを特徴とする立体物の製造方法。
  16. 前記光エネルギーが、レーザー光源又はプロジェクターから照射される光であることを特徴とする請求項15に記載の立体物の製造方法。
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