JP2024000703A - ビール混濁性乳酸菌の培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法 - Google Patents

ビール混濁性乳酸菌の培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2024000703A
JP2024000703A JP2022099558A JP2022099558A JP2024000703A JP 2024000703 A JP2024000703 A JP 2024000703A JP 2022099558 A JP2022099558 A JP 2022099558A JP 2022099558 A JP2022099558 A JP 2022099558A JP 2024000703 A JP2024000703 A JP 2024000703A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
culture medium
beer
lactic acid
acid bacteria
medium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022099558A
Other languages
English (en)
Inventor
正貴 下川
Masaki Shimokawa
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Breweries Ltd
Original Assignee
Asahi Breweries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Breweries Ltd filed Critical Asahi Breweries Ltd
Priority to JP2022099558A priority Critical patent/JP2024000703A/ja
Publication of JP2024000703A publication Critical patent/JP2024000703A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、ビール様発泡性飲料の混濁の原因となる乳酸菌を培養して検出するために好適な培養用培地、及び当該培養用培地を用いて、ビール様発泡性飲料のビール混濁性乳酸菌を検出する方法を提供する。【解決手段】炭素源と窒素源と、メバロン酸と、オレイン酸エステル及びオレイン酸塩からなる群より選択される1種以上からなるオレイン酸類と、を含有し、ビール混濁性乳酸菌の検出に用いられることを特徴とする培養用培地、前記オレイン酸類が、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート及びポリオキシエチレンソルビタントリオレアートからなる群より選択される1種以上である、前記培養用培地、及び、ビール様発泡性飲料を、前記いずれかに記載の培養用培地に接種して培養し、ビール混濁性乳酸菌を検出する、ビール混濁性乳酸菌の検出方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ビール様発泡性飲料の混濁の原因となる乳酸菌の培養に好適な培養用培地、及び当該培養用培地を用いて、ビール様発泡性飲料のビール混濁性乳酸菌を検出する方法に関する。
加工飲食品においては、製造されてから一般消費者の口に入るまでの間、品質を保持する必要がある。特に、微生物は、品質低下だけではなく食中毒の原因となるため、微生物汚染の防止は、食の安全の点から極めて重要である。飲食品の微生物検査方法としては、一般的に、被験試料である飲食品から適切な平板培地で微生物を単離培養する培養法が用いられている。培養法により単離培養された微生物に対して、菌学的性質や遺伝子情報等を解析して、微生物種を同定することができる。
ビール等のビール様発泡性飲料においては、微生物汚染により混濁する場合があり、混濁を引き起こす原因となる微生物による汚染の有無をより精度よく検出する方法が求められている。当該微生物としては、主にビール混濁性乳酸菌が挙げられる。
乳酸菌は、ビール様発泡性飲料以外にも様々な飲食品を変敗する微生物の1つであるため、飲食品製造分野では、飲食品中の汚染原因乳酸菌の検出は、広く行われている。多くの乳酸菌は、MRS(de Man-Rogosa-Sharpe)培地等の一般的な乳酸菌検出用の培地で検出することが可能である。しかしながら、一部の乳酸菌は、特定の飲食品にのみ変敗性を有し、中には一般的な培地では検出できない菌種や株の存在が確認されている。ビール様発泡性飲料においては、近年、ビール混濁性乳酸菌の1つとして、乳酸菌ラクトバチルス・アセトトレランス(Lactobacillus acetotolerans)が報告されている(非特許文献1)。ラクトバチルス・アセトトレランスは、MRS培地に対して難培養性であり、培養のためには、カタラーゼを添加する必要があったり(非特許文献2)、トマトジュースを含有するBLB(Briggs liver broth)培地が必要である(非特許文献3)。
Riedl et al, BrewingScience, 2017, vol.70, p.39-50. Deng et al, Journal of the Institute of Brewing, 2014, vol.120, p.127-132. Entani et al, International Journal of Systematic Bacteriology, 1986, p.544-549.
本発明は、ビール様発泡性飲料の混濁の原因となる乳酸菌を培養して検出するために好適な培養用培地、及び当該培養用培地を用いて、ビール様発泡性飲料のビール混濁性乳酸菌を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、培養用培地に、メバロン酸と、オレイン酸エステル又はオレイン酸塩とを十分量ずつ含有させることにより、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能となることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に係る培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法は、下記の通りである。
[1] 炭素源と、窒素源と、メバロン酸と、オレイン酸エステル及びオレイン酸塩からなる群より選択される1種以上からなるオレイン酸類と、を含有し、ビール混濁性乳酸菌の検出に用いられることを特徴とする、培養用培地。
[2] メバロン酸濃度が、0.1質量ppm以上である、前記[1]の培養用培地。
[3] メバロン酸濃度が、0.4質量ppm以上である、前記[2]の培養用培地。
[4] 前記オレイン酸類が、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート及びポリオキシエチレンソルビタントリオレアートからなる群より選択される1種以上である、前記[1]~[3]のいずれかの培養用培地。
[5] 前記オレイン酸類の濃度が、0.5g/L以上である、前記[1]~[4]のいずれかの培養用培地。
[6] pHが7.5以下である、前記[1]~[5]のいずれかの培養用培地。
[7] 前記ビール混濁性乳酸菌が、ラクトバチルス・アセトトレランスである、前記[1]~[6]のいずれかの培養用培地。
[8] 平板培地である、前記[1]~[7]のいずれかの培養用培地。
[9] ビール様発泡性飲料を、前記[8]の培養用培地に接種して培養し、ビール混濁性乳酸菌を検出する、ビール混濁性乳酸菌の検出方法。
[10] 前記ビール混濁性乳酸菌が、ラクトバチルス・アセトトレランスである、前記[9]のビール混濁性乳酸菌の検出方法。
本発明に係る培養用培地は、従来の乳酸菌培養用培地であるMRS培地で培養可能なビール混濁性乳酸菌に加えて、MRS培地に難培養性であるラクトバチルス・アセトトレランスも培養可能な培地である。このため、当該培養培地を用いた培養法により、ビール様発泡性飲料中のラクトバチルス・アセトトレランスを含むビール混濁性乳酸菌を精度よく検出することができる。
本発明及び本願明細書においては、「ビール様発泡性飲料」とは、ビールらしさを有する、炭酸ガスを含有する飲料を意味する。また、「ビールらしさ」とは、製品名称・表示にかかわらず、香味上ビールを想起させる呈味のことを意味する。つまり、ビール様発泡性飲料とは、発泡性飲料のうち、アルコール含有量、麦芽及びホップの使用の有無、発酵の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する飲料を意味する。
本発明におけるビール様発泡性飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。また、麦芽を原料とする飲料であってもよく、麦芽を原料としない飲料であってもよく、発酵工程を経て製造される飲料であってもよく、発酵工程を経ずに製造される飲料であってもよい。具体的には、ビール、麦芽を原料とする発泡酒、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等が挙げられる。その他、麦芽を原料とし、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類又はスピリッツであってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、例えば、原料用アルコールであってもよく、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等の蒸留酒等を用いることができる。
本発明に係る培養用培地は、炭素源と、窒素源と、メバロン酸と、オレイン酸エステル及びオレイン酸塩からなる群より選択される1種以上からなるオレイン酸類とを含有し、ビール混濁性乳酸菌の検出に用いられることを特徴とする。ビール混濁性乳酸菌のうちラクトバチルス・アセトトレランスの培養には、メバロン酸とオレイン酸類の両方を必須とするため、ビール混濁性乳酸菌を培養法で検出する際に本発明に係る培養用培地を用いることにより、被験試料中に含まれているラクトバチルス・アセトトレランスを増殖させてコロニーとして検出することができる。
本発明に係る培養用培地の培地全体に対するメバロン酸濃度は、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能になるほど充分な濃度であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る培養用培地のメバロン酸濃度としては、0.1質量ppm以上が好ましく、0.4質量ppm以上がより好ましく、5質量ppm以上がさらに好ましい。また、本発明に係る培養用培地のメバロン酸濃度としては、100質量ppm以下とすることが好ましい。
本発明に係る培養用培地が含有するオレイン酸類は、オレイン酸エステル及びオレイン酸塩からなる群より選択される1種以上からなる。本発明に係る培養用培地が含有するオレイン酸類としては、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて含有させてもよい。例えば、本発明に係る培養用培地は、1種類のオレイン酸エステルと1種類のオレイン酸塩の両方を含有していてもよい。
本発明に係る培養用培地が含有するオレイン酸エステルとしては、特に限定されるものではなく、例えば、乳化剤(界面活性剤)として汎用されている各種のオレイン酸エステルの中から適宜選択して用いることができる。当該オレイン酸エステルとしては、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養性が良好である点から、ポリオキシエチレンソルビタンのオレイン酸エステルであることが好ましく、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80)及びポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(Tween 85)からなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。本発明に係る培養用培地が含有するオレイン酸エステルとしては、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明に係る培養用培地が含有するオレイン酸塩としては、無機塩であってもよく、有機塩であってもよい。無機塩としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムが挙げられる。有機塩としては、オレイン酸モノエタノールアミン塩、オレイン酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。本発明に係る培養用培地が含有するオレイン酸塩としては、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明に係る培養用培地の培地全体に対するオレイン酸類濃度は、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能になるほど充分な濃度であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る培養用培地のオレイン酸類濃度としては、0.1g/L以上が好ましく、0.5g/L以上がより好ましい。また、本発明に係る培養用培地のオレイン酸類濃度としては、5g/L以下が好ましく、2.5g/L以下がより好ましく、1.5g/L以下がさらに好ましい。
本発明に係る培養用培地に含まれているオレイン酸エステルがTween 80の場合、本発明に係る培養用培地の培地全体に対するTween 80濃度は、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能になるほど充分な濃度であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る培養用培地のTween 80濃度としては、0.1g/L以上が好ましく、0.5g/L以上がより好ましい。また、本発明に係る培養用培地のTween 80濃度としては、5g/L以下が好ましく、2.5g/L以下がより好ましく、1.5g/L以下がさらに好ましい。
本発明に係る培養用培地に含まれているオレイン酸エステルがTween 85の場合、本発明に係る培養用培地の培地全体に対するTween 85濃度は、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能になるほど充分な濃度であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る培養用培地のTween 85濃度としては、0.1g/L以上が好ましく、0.5g/L以上がより好ましい。また、本発明に係る培養用培地のTween 80濃度としては、5g/L以下が好ましく、2.5g/L以下がより好ましく、1.5g/L以下がさらに好ましい。
本発明に係る培養用培地は、Tween 80とTween 85の両方を含有していてもよい。Tween 80とTween 85を含有している場合には、本発明に係る培養用培地のTween 80とTween 85の濃度は、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能になるほど充分な濃度であればよく、例えば、培地全体に対するTween 80とTween 85の合計濃度が0.1g/L以上とすることが好ましく、0.5g/L以上がより好ましい。また、本発明に係る培養用培地のTween 80とTween 85の合計濃度としては、5g/L以下が好ましく、2.5g/L以下がより好ましく、1.5g/L以下がさらに好ましい。
本発明に係る培養用培地が含有する炭素源としては、一般的に乳酸菌培養において用いられる各種炭素源の中から適宜選択して用いることができる。当該炭素源としては、例えば、糖類、炭水化物、発酵性糖アルコール等が挙げられる。糖類としては、グルコース、ガラクトース、フルクトース等の単糖;スクロース(ショ糖)、ラクトース、マルトース、セロビオース、トレハロース等の二糖;マルトトリオース、セロトリオース、フコシルラクトース、シアリルラクトース、ゲンチアノース、ラフィノース等の3~10個程度の糖からなるオリゴ糖等が挙げられる。炭水化物としては、デキストリン、デンプン、セルロース等が挙げられる。発酵性糖アルコールとしては、グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等が挙げられる。本発明に係る培養用培地が含有する炭素源としては、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。様々な乳酸菌が資化可能であることから、本発明に係る培養用培地が含有する炭素源としては、グルコースやスクロースが特に好ましい。
本発明に係る培養用培地の炭素源濃度は、乳酸菌の増殖が可能な程度に十分量であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る培養用培地の培地全体に対する炭素源濃度としては、1~100g/Lとすることができ、5~50g/Lが好ましく、10~30g/Lがより好ましい。
本発明に係る培養用培地が含有する窒素源としては、一般的に乳酸菌培養において用いられる各種窒素源の中から適宜選択して用いることができる。当該窒素源としては、例えば、アミノ酸、タンパク質分解物(ペプトン)、エキス、尿素、アンモニア、アンモニウム塩、硝酸塩等が挙げられる。アミノ酸としては、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、ピロリシン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、セレノシステイン、バリン、トリプトファン、チロシン等が挙げられる。ペプトンとしては、カゼインペプトン、大豆ペプトン、獣肉ペプトン等が挙げられる。エキスとしては、酵母エキス、獣肉エキス、麦芽エキス、ポテトエキス等が挙げられる。アンモニウム塩としては、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及びこれらの水和物等が挙げられる。硝酸塩としては、硝酸ナトリウム及びその水和物等が挙げられる。本発明に係る培養用培地が含有する窒素源としては、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。様々な乳酸菌が資化可能であること、及びビタミンやミネラル等も供給できることから、本発明に係る培養用培地が含有する窒素源としては、ペプトンやエキスが好ましい。
本発明に係る培養用培地の窒素源濃度は、乳酸菌の増殖が可能な程度に十分量であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る培養用培地の培地全体に対する窒素源濃度としては、1~100g/Lとすることができ、5~50g/Lが好ましく、10~30g/Lがより好ましい。
本発明に係る培養用培地は、炭素源と窒素源とメバロン酸とポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート又はポリオキシエチレンソルビタントリオレアートとに加えて、さらに、ビタミンやミネラルを含有していることが好ましい。ビタミンやミネラルにより、ビール混濁性乳酸菌をより効率よく培養することができる。
ビタミンとしては、ビオチン、コリン、シアノコバラミン、葉酸、イノシトール、ニコチン酸、4-アミノ安息香酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、チミジン等が挙げられる。これらのビタミンは、塩として含有されていてもよい。本発明に係る培養用培地がビタミンを含有する場合、当該培養用培地中のビタミンは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
ミネラルとしては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、硫黄、塩素、ヨウ素、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅、セレン、クロム、モリブデン等が挙げられる。これらは、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、塩化物、リン酸塩、硫酸塩等の塩やこれらの水和物として含有されていてもよい。本発明に係る培養用培地がミネラルを含有する場合、当該培養用培地中のミネラルは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明に係る培養用培地は、乳酸菌の培養に使用されている公知の培地やその改変培地に、メバロン酸とオレイン酸類とを含有させることによって調製することもできる。乳酸菌の培養に使用されている公知の培地としては、例えば、MRS培地、M17培地、ロゴサ寒天培地、MSE(MAYEUX SANDINE ELLIKER)寒天培地等が挙げられる。
本発明に係る培養用培地は、液体培地であってもよく、平板培地であってもよい。平板培地の場合には、本発明に係る培養用培地は、炭素源等に加えてさらに、寒天を含有させる。本発明に係る培養用培地の寒天濃度は、一般的な微生物培養に用いられる平板培地と同程度にすることができ、例えば、0.5~3質量%とすることができる。
本発明に係る培養用培地は、炭素源等の構成成分を全て原料水に溶解させることにより調製できる。乳酸菌の増殖が良好であることから、本発明に係る培養用培地のpHは、7.5以下が好ましく、7.0以下がより好ましく、6.5以下がさらに好ましく、6.0以下がよりさらに好ましい。また、乳酸菌の増殖により産生される乳酸によってpHが低下するため、本発明に係る培養用培地の乳酸菌培養前のpHは、5.0以上が好ましく、5.5以上がより好ましい。本発明に係る培養用培地は、pHを所望の範囲内に調整するために、緩衝剤やpH調整剤を含有していてもよい。
本発明に係る培養用培地は、炭素源等の構成成分を全て原料水に溶解させた後、各種方法により滅菌処理を施すことが好ましい。当該滅菌処理は、培地の滅菌に一般的に用いられる各種の方法で行うことができる。本発明に係る培養用培地の滅菌処理としては、高圧蒸気滅菌処理、滅菌フィルターを用いた濾過滅菌処理が好ましい。
本発明に係る培養用培地は、培養法により乳酸菌を検出するための培養用培地として用いることができる。具体的には、乳酸菌の有無を調べる対象の被験試料を、本発明に係る培養用培地に接種して、培養する。培養条件は特に限定されるものではなく、一般的な乳酸菌培養と同様の培養温度、培養時間で行うことができる。例えば、培養温度は、15~45℃とすることができ、20~40℃が好ましく、20~38℃がより好ましい。また、培養時間は、例えば、72~360時間とすることができ、96~300時間が好ましく、96~288時間がより好ましく、120~240時間がさらに好ましい。
被験試料中に乳酸菌が含まれていた場合には、本発明に係る培養用培地に接種して所定時間培養した後の培養物には、増殖した乳酸菌が含まれている。乳酸菌の増殖の有無は、液体培地の場合には、培養後の培地の吸光度(例えば、OD600)により検出でき、平板培地の場合には、コロニーの形成の有無で検出できる。被験試料中の乳酸菌を容易に単離培養できることから、培養に使用する本発明に係る培養用培地は、平板培地であることが好ましい。
本発明に係る培養用培地は、難培養性であるラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能であることから、ビール様発泡性飲料を被験試料として、当該ビール様発泡性飲料中のビール混濁性乳酸菌を検出することが好ましい。ビール様発泡性飲料を、本発明に係る培養用培地の平板培地に塗抹して接種させ、所定時間培養することによって、当該ビール様発泡性飲料中のラクトバチルス・アセトトレランスを含むビール混濁性乳酸菌を検出することができる。培養用培地に接種させるビール様発泡性飲料は、予め、乳酸菌を損なわない方法により濃縮させてもよい。また、ビール様発泡性飲料をフィルター濾過し、当該飲料中に含まれている微生物をフィルター上に回収し、当該フィルターを本発明に係る培養用培地の平板培地に貼り付けることによって、当該ビール様発泡性飲料中の微生物を接種させてもよい。
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)ラクトバチルス・アセトトレランスの培養に必須の成分の同定
MRS培地を改変して、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養に必要な成分を調べた。MRS培地としては、メルク社製のMRS培地「GranuCult(登録商標) MRS broth (de MAN, ROGOSA and SHARPE) acc. ISO 15214」を用いた。当該MRS培地の組成を表1に示す。平板培地の際には寒天を1.5質量%となるように添加した。
Figure 2024000703000001
MRS培地、MRS培地からTween 80を除いた培地(MRSw/oTW80培地)、MRSw/oTW80培地に5質量ppmのメバロン酸を添加した培地(MRSw/oTW80+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に1g/LのTween 80を添加した培地(MRSw/oTW80+TW80(1)+MVA(5)培地)、及びMRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 80を添加した培地(MRSw/oTW80+TW80(0.5)+MVA(5)培地)を用いて、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養の可否を調べた。ラクトバチルス・アセトトレランスとして、ラクトバチルス・アセトトレランスABBC671株とラクトバチルス・アセトトレランスHC146株とを用いた。
<乳酸菌の前培養と菌液調製>
各ラクトバチルス・アセトトレランスは、メバロン酸を5質量ppmとなるように添加したMRS液体培地(MRS平板培地から寒天を除いた培地)に接種し、それぞれ30℃で7日間培養した。
前培養した菌体を、1mL当たりの菌数が約10個となるように滅菌生理食塩水に懸濁させたものを、菌液とした。
<乳酸菌の培養>
10cmディッシュに調製した平板培地に、各菌液を100μLずつ塗抹して接種し、嫌気条件下、30℃で10日間培養した。その後、平板培地に形成されたコロニー数を計数した。コロニー数の計数結果(n=3)を表2に示す。
Figure 2024000703000002
表2に示すように、Tween 80とメバロン酸の両方を含有する培地では、コロニーが検出された。これらの結果から、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養には、メバロン酸とTween 80の両方が必要であることが示された。また、MRSw/oTW80+TW80(0.5)+MVA(5)培地とMRSw/oTW80+TW80(1)+MVA(5)培地のいずれにおいても、ラクトバチルス・アセトトレランスABBC671株のほうがラクトバチルス・アセトトレランスHC146株よりも、検出されたコロニー数が2.5~4倍程度多かった。
(2)メバロン酸の有効濃度
次いで、メバロン酸の有効濃度を確認するべく、MRS培地にX質量ppnのメバロン酸を添加した培地(MRS+MVA(x)培地)を調製し、同様にして、ラクトバチルス・アセトトレランスABBC671株とラクトバチルス・アセトトレランスHC146株をそれぞれ塗抹して接種し、その後、嫌気条件下30℃で10日間培養した。平板培地に形成されたコロニー数を計数した。コロニー数の計数結果(n=3)を表3に示す。
Figure 2024000703000003
メバロン酸を0.1質量ppm以上となるように添加したMRS培地では、メバロン酸の濃度依存的に計数されるコロニー数が増大していた。特に、メバロン酸濃度を0.4質量ppm以上とすることにより、十分量のコロニーが計数されていたことから、ラクトバチルス・アセトトレランスの検出精度の点から、培養用培地のメバロン酸濃度は、0.4質量ppm以上が好ましく、5質量ppmがより好ましい。
さらに、MRS培地に5~100質量ppnのメバロン酸を添加した培地を調製し、同様にラクトバチルス・アセトトレランスを接種させて培養し、平板培地に形成されたコロニー数を計数した。コロニー数の計数結果(n=3)を表4に示す。
Figure 2024000703000004
表4に示す結果から、メバロン酸濃度が5~100質量ppmであり、Tween 80と炭素源(グルコース)と窒素源(ペプトンとエキス)を含有する培地を用いることにより、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能になることが示された。
(3)各種脂肪酸エステルの評価
Tween 80の構造類似化合物であるTween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、Tween 40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート)、Tween 60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート)、Tween 85(ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート)、及びTriton 100(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)について、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養への影響を調べた。
具体的には、まず、MRS培地に加えて、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に1.0g/LのTween 80を添加した培地(MRSw/oTW80+TW80(1.0)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 20を添加した培地(MRSw/oTW80+TW20(0.5)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 20を添加した培地(MRSw/oTW80+TW20(1.0)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 40を添加した培地(MRSw/oTW80+TW40(0.5)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 40を添加した培地(MRSw/oTW80+TW40(1.0)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 60を添加した培地(MRSw/oTW80+TW60(0.5)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 60を添加した培地(MRSw/oTW80+TW60(1.0)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 85を添加した培地(MRSw/oTW80+TW85(0.5)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTween 85を添加した培地(MRSw/oTW80+TW85(1.0)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTriton 100を添加した培地(MRSw/oTW80+TRX100(0.5)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.5g/LのTriton 100を添加した培地(MRSw/oTW80+TRX100(1.0)+MVA(5)培地)を調製した。同様にして、ラクトバチルス・アセトトレランスABBC671株とラクトバチルス・アセトトレランスHC146株をそれぞれ塗抹して接種し、その後、嫌気条件下30℃で10日間培養した。培養後の各平板培地に形成されたコロニー数を計数した。コロニー数の計数結果(n=3)を表5に示す。
Figure 2024000703000005
表5に示す通り、Tween 20、Tween 40、Tween 60、及びTriton 100を含有させた培地では、Tween 80を含有させた培地とは異なり、コロニーが形成されず、これらの脂肪酸エステルはラクトバチルス・アセトトレランスの増殖に影響しないことが確認された。一方で、Tween 80と同じオレイン酸エステルであるTween 85を含有させた培地では、ラクトバチルス・アセトトレランスHC146株のコロニーは検出されなかったものの、より増殖性が良好なラクトバチルス・アセトトレランスABBC671株のコロニーは検出された。ラクトバチルス・アセトトレランスABBC671株において、MRSw/oTW80+TW80(1.0)+MVA(5)培地で検出されたコロニー数とMRSw/oTW80+TW85(1.0)+MVA(5)培地で検出されたコロニー数との比較から、接種する菌液(被験試料)の量をより多くすることによって、MRSw/oTW80+TW85(1.0)+MVA(5)培地とMRSw/oTW80+TW85TW85(0.5)+MVA(5)培地でもラクトバチルス・アセトトレランスHC146株のコロニーが検出されるようになることが示唆された。
(4)オレイン酸類の評価
オレイン酸エステルに代えて、オレイン酸塩又はオレイン酸を含有させた培地でもラクトバチルス・アセトトレランスの培養が可能かを調べた。具体的には、MRSw/oTW80+TW80(1)+MVA(5)培地、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.12g/Lのオレイン酸ナトリウムを添加した培地(MRSw/oTW80+OleNa(0.12)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.24g/Lのオレイン酸ナトリウムを添加した培地(MRSw/oTW80+OleNa(0.24)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.12g/Lのオレイン酸を添加した培地(MRSw/oTW80+OleA(0.12)+MVA(5)培地)、MRSw/oTW80+MVA(5)培地に0.24g/Lのオレイン酸を添加した培地(MRSw/oTW80+OleA(0.24)+MVA(5)培地)を用いて、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養の可否を調べた。
具体的には、前記と同様にして、各培養培地の平板培地に、ラクトバチルス・アセトトレランスABBC671株を塗抹して接種し、その後、嫌気条件下30℃で10日間培養した。培養後の各平板培地に形成されたコロニー数を計数した。コロニー数の計数結果(n=3)を表6に示す。
Figure 2024000703000006
表6に示すように、Tween 80に代えて、オレイン酸ナトリウムを含有させた培地では、コロニーが検出されたが、オレイン酸を含有させた培地では、コロニーは検出されなかった。これらの結果から、ラクトバチルス・アセトトレランスの培養には、メバロン酸と共に、オレイン酸エステル又はオレイン酸塩が必要であることが示された。

Claims (10)

  1. 炭素源と、窒素源と、メバロン酸と、オレイン酸エステル及びオレイン酸塩からなる群より選択される1種以上からなるオレイン酸類とを含有し、ビール混濁性乳酸菌の検出に用いられることを特徴とする、培養用培地。
  2. メバロン酸濃度が、0.1質量ppm以上である、請求項1に記載の培養用培地。
  3. メバロン酸濃度が、0.4質量ppm以上である、請求項2に記載の培養用培地。
  4. 前記オレイン酸類が、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート及びポリオキシエチレンソルビタントリオレアートからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の培養用培地。
  5. 前記オレイン酸類の濃度が、0.5g/L以上である、請求項1に記載の培養用培地。
  6. pHが6.0以下である、請求項1に記載の培養用培地。
  7. 平板培地である、請求項1に記載の培養用培地。
  8. 前記ビール混濁性乳酸菌が、ラクトバチルス・アセトトレランスである、請求項1に記載の培養用培地。
  9. ビール様発泡性飲料を、請求項1~7のいずれか一項に記載の培養用培地に接種して培養し、ビール混濁性乳酸菌を検出する、ビール混濁性乳酸菌の検出方法。
  10. ビール様発泡性飲料を、請求項1~7のいずれか一項に記載の培養用培地に接種して培養し、ラクトバチルス・アセトトレランスを検出する、ビール混濁性乳酸菌の検出方法。
JP2022099558A 2022-06-21 2022-06-21 ビール混濁性乳酸菌の培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法 Pending JP2024000703A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022099558A JP2024000703A (ja) 2022-06-21 2022-06-21 ビール混濁性乳酸菌の培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022099558A JP2024000703A (ja) 2022-06-21 2022-06-21 ビール混濁性乳酸菌の培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024000703A true JP2024000703A (ja) 2024-01-09

Family

ID=89451558

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022099558A Pending JP2024000703A (ja) 2022-06-21 2022-06-21 ビール混濁性乳酸菌の培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024000703A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Balikci et al. Influence of Lachancea thermotolerans on cv. Emir wine fermentation
Wibowo et al. Occurrence and growth of lactic acid bacteria in wine: a review
Poveda et al. Occurrence of biogenic amine-forming lactic acid bacteria during a craft brewing process
Henick-Kling et al. Evaluation of malolactic bacteria isolated from Oregon wines
Hammond et al. The control of microbial spoilage of beer
Yu et al. Beer‐spoilage characteristics of Staphylococcus xylosus newly isolated from craft beer and its potential to influence beer quality
US4906573A (en) Culture medium for detection of beer spoilage microorganisms
JP2019088212A (ja) 飲料用風味改善剤
JP2010524446A (ja) マンノプロテイン液状配合物
CN113943665B (zh) 两株降解生物胺的野生酵母及其在果酒酿造中的应用
US20110256584A1 (en) Culture medium for cultivation and identification of bacteria of genus pectinatus and method for taking swab samples
Champagne et al. Production of Leuconostoc oenos biomass under pH control
EP1012225B1 (en) Beer spoilage reducing methods and compositions
JP7148921B2 (ja) 新規乳酸菌、及びそれを用いた醤油の製造方法
Izquierdo-Pulido et al. Biogenic amine changes related to lactic acid bacteria during brewing
JPS61293372A (ja) 非アルコ−ル性穀物飲料、その製造方法およびその製造に用いる微生物
JP2024000703A (ja) ビール混濁性乳酸菌の培養用培地、及びビール混濁性乳酸菌の検出方法
JP7009196B2 (ja) 流加培養した醸造酵母の香味特性改善方法
JP5519960B2 (ja) 乳酸菌検出用培地及び検出法
US20130330757A1 (en) Cultivation Plate System And Method For The Improved Detection Of Microorganisms Which Contaminate Food Products
Izquierdo-Pulido et al. Tyramine formation by Pediococcus spp. during beer fermentation
CN109929906B (zh) 一种食醋中产气嗜酸菌的检测方法
RU2450050C1 (ru) ШТАММ ДРОЖЖЕЙ Saccharomyces cerevisiae "ВИШНЕВЫЙ ДАГЕСТАНСКИЙ" ДЛЯ ПРОИЗВОДСТВА ПЛОДОВО-ЯГОДНЫХ ВИН
Lonvaud-Funel Lactic acid bacteria in winemaking: influence on sensorial and hygienic quality
Williamson Selective media in the enumeration of bacteria in pitching yeasts