JP2024000309A - 蛍光を検出するための方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】解析対象分子の存在下で、蛍光物質及び消光物質を有する蛍光プローブから発せられる蛍光強度がより高められる検出方法を提供する。【解決手段】蛍光物質と消光物質と基体本体とを有する基体から蛍光を検出するための方法を採用する。この方法は、基体における蛍光物質と消光物質とを離間させることにより、蛍光物質から蛍光を発光させる工程を含み、蛍光物質は、消光物質の空間的近傍にある場合に、蛍光物質からの蛍光発光は、消光物質により抑制されており、消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して短波長側である、方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、蛍光を検出するための方法に関する。
微量な解析対象分子の検出方法として、FRET(Fluorescence resonance energy transfer、蛍光共鳴エネルギー移動)を応用した方法が知られている。
例えば、遺伝子診断において、標的核酸を正確かつ迅速に検出、定量する手法は数多く存在する。その中でも、Invasive Cleavage Assay (ICA)は、5’-Nuclease等の核酸切断酵素を用いるインベーダ反応、及びFRETを適用した手法であり、操作性及び反応安定性が優れている(例えば、非特許文献1)。
ここで、図1Aを参照しながらICAについて説明する。図1Aは、ICAの一例を説明する模式図である。図1Aの例では、標的核酸100中のT(チミン)塩基101の存在を検出する。まず、標的核酸100に相補的なフラッププローブ110及び侵入プローブ120をハイブリダイズさせる。その結果、侵入プローブ120は、標的核酸100の、フラッププローブ110がハイブリダイズする位置に隣接する部位にハイブリダイズする。そして、侵入プローブ120の3’末端の少なくとも1塩基は、フラッププローブ110と標的核酸100がハイブリダイズしている領域141の5’末端の位置に侵入し、第1の三重鎖構造130が形成される。
続いて、第1の三重鎖構造130にフラップエンドヌクレアーゼを反応させると、第1の三重鎖構造130のフラップ部位140が切断され、核酸断片140が生成される。続いて、核酸断片140は、核酸断片150にハイブリダイズして第2の三重鎖構造160を形成する。
図1Aの例では、核酸断片150の5’末端には蛍光物質Fが結合されており、核酸断片150の5’末端から数塩基3’側に消光物質Qが結合されている(核酸断片150を蛍光基質という場合がある)。蛍光物質Fと消光物質Qは空間的近傍に位置する。このため、蛍光物質Fが発する蛍光は、消光物質Qにより消光される。
続いて、第2の三重鎖構造160にフラップエンドヌクレアーゼを反応させると、第2の三重鎖構造160のフラップ部位170が切断され、核酸断片170が生成される。その結果、蛍光物質Fが消光物質Qから遊離し、励起光の照射により蛍光を発する。この蛍光を検出することにより、標的核酸100中のT(チミン)塩基101の存在を検出することができる。
本明細書において、フラッププローブは、アレルプローブという場合がある。
本明細書において、侵入プローブは、インベーダオリゴという場合がある。
非特許文献1に記載のICAでは、蛍光物質と消光物質とを有するFRETカセットを用いる。反応系に標的核酸が存在しない場合、蛍光物質は消光物質の空間的近傍にある。これにより、蛍光物質からの蛍光発光は、前記消光物質により抑制されている。反応系に標的核酸が存在する場合、核酸切断酵素によりインベーダ反応が進行して、蛍光物質と消光物質とが離間する。これにより、蛍光物質から蛍光が発光する。
ICAにおいては、複数種類の標的核酸に対応させた、蛍光波長の異なる複数種類のプローブを用いることにより、複数種類の標的核酸を同時に検出することも可能である。例えば、蛍光が、青色、緑色、黄色、橙色、赤色の5色である場合、5種類の異なる標的核酸を一回の測定で同時に検出することが可能である。
また、微小ウェル等の微小空間でICAを行う場合、見かけ上、反応系における解析対象分子の濃度を濃縮することができる。これにより、微小空間において、検出シグナルが十分な強度になるまでの時間を短縮することができる。例えば、特許文献1には、1pl以下の容積の微小空間内で酵素反応を行うことで遺伝子検査が可能であることが記載されている。
特開2004-309405号公報
Eis et al, An invasive cleavage assay for direct quantitation of specific RNAs, Nature Biotechnology, Vol. 19, 673-676 (2001).
しかしながら、例えば、多種類の蛍光プローブを用いる場合、蛍光分子の特性上、青色及び赤色の蛍光の強度は弱いため、蛍光の検出が困難である。
そこで本発明は、解析対象分子の存在下で、蛍光物質及び消光物質を有する蛍光プローブから発せられる蛍光強度がより高められる検出方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]蛍光物質と消光物質と基体本体とを有する基体から蛍光を検出するための方法であって、前記基体における前記蛍光物質と前記消光物質とを離間させることにより、前記蛍光物質から蛍光を発光させる工程を含み、前記蛍光物質は、前記消光物質の空間的近傍にある場合に、前記蛍光物質からの蛍光発光は、前記消光物質により抑制されており、前記消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、前記蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して短波長側である、方法。
[2]前記蛍光物質から蛍光発光させる工程は、標的物質の存在下で行われる。[1]に記載の方法。
[3]前記消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、前記蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して50~100nm短い、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記基体本体は核酸である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長は、600~700nmであり、前記消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、550~640nmである、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記蛍光物質から蛍光発光させる工程において、核酸切断酵素の作用により、前記基体における前記蛍光物質と前記消光物質とが離間される、[4]に記載の方法。
[7]前記蛍光物質から蛍光発光させる工程は、微小空間内で行われる、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記標的物質は、核酸である、[2]に記載の方法。
[9]更に、前記蛍光を蛍光顕微鏡で観察する、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、解析対象分子の存在下で、蛍光物質及び消光物質を有する蛍光プローブから発せられる蛍光強度がより高められる検出方法を提供することができる。
Invasive Cleavage Assay(ICA)の一例を説明する模式図である。 流体デバイスへ試薬液を送液する方法を説明する模式断面図である。 第1開裂構造体を模式的に示した図である。 第2α開裂構造体を模式的に示した図である。 第2β開裂構造体を模式的に示した図である。 実験例1における、ICAの反応機構を模式的に示した図である。 実験例1における、FRETカセット4-1を用いた場合の蛍光を撮影した写真である。 実験例1における、FRETカセット4-2を用いた場合の蛍光を撮影した写真である。 実験例1における、FRETカセット4-3を用いた場合の蛍光を撮影した写真である。 実験例1における、FRETカセット4-1を用いた場合のシグナル強度のヒストグラムである。 実験例1における、FRETカセット4-2を用いた場合のシグナル強度のヒストグラムである。 実験例1における、FRETカセット4-3を用いた場合のシグナル強度のヒストグラムである。 実験例1における、S/N値を示すグラフである。 実験例1における、S-N値を示すグラフである。 実験例1において、蛍光物質が塩基に結合している蛍光基質を用いた場合の結果を示すグラフである。 実験例1において、蛍光物質が塩基以外の部分に結合している蛍光基質を用いた場合の結果を示すグラフである。
[方法]
第1の態様にかかる方法は、蛍光物質と消光物質と基体本体とを有する基体から蛍光を検出するための方法である。第1の態様にかかる方法は、基体における蛍光物質と消光物質とを離間させることにより、蛍光物質から蛍光を発光させる工程を含む。
(基体)
基体は、基体本体、蛍光物質、及び消光物質を有する。蛍光物質及び消光物質は、それぞれ、基体本体に結合している。
蛍光物質と基体本体との結合は、本発明効果が奏される限り特に限定されないが、化学結合であってもよい。消光物質と基体本体との結合は、本発明効果が奏される限り特に限定されないが、化学結合であってもよい。
基体本体は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、天然のものであってもよいし、合成されたものであってもよい。基体本体としては、例えば、ポリマー等が挙げられる。ポリマーとしては、特に限定されないが、核酸、核酸類縁体、ポリアミノ酸、タンパク質、オリゴアミノ酸等が挙げられる。
天然の核酸としては、例えば、ゲノムDNA、mRNA、rRNA、hnRNA、miRNA、tRNA等が挙げられる。天然の核酸は、生体から回収されたものであってもよいし、生体と接触した水、有機物等から回収されたものであってもよい。天然の核酸の回収方法としては、フェノール/クロロホルム法等の公知の手法が挙げられる。
合成された核酸としては、例えば、合成DNA、合成RNA、cDNA、Bridged Nucleic Acid(BNA)、Locked Nucleic Acid(LNA)等が挙げられる。
合成された核酸の合成方法は特に限定されず、β-シアノエチルホスフォロアミダイト法、DNA固相合成法等の公知の化学的合成法、公知の核酸増幅方法、逆転写反応等が挙げられる。核酸増幅方法としては、例えば、例えば、PCR法、LAMP法、SMAP法、NASBA法、RCA法等が挙げられる。
(蛍光物質)
蛍光物質としては、例えば、ATTO643、ATTO633、Alexa Fluour647、Cy5、HiLyte Fluor 647、ATTO663等の赤色蛍光物質が挙げられる。
蛍光物質の蛍光スペクトルのピーク波長は、600~700nmであることが好ましく、610~690nmであることがより好ましく、620~680nmであることが更に好ましく、630~670nmであることが特に好ましく、640~660nmであることが最も好ましい。
(消光物質)
消光物質としては、例えば、BHQ-1(登録商標)、BHQ-2(登録商標)、BHQ-3(登録商標)、Tide Quencher 1(TQ1、登録商標)、Tide Quencher 2(TQ2、登録商標)、Tide Quencher 2WS(TQ2WS、登録商標)、Tide Quencher 3(TQ3、登録商標)、Tide Quencher 3WS(TQ3WS、登録商標)、Tide Quencher 4(TQ4、登録商標)、Tide Quencher 4WS(TQ4WS、登録商標)、Tide Quencher 5(TQ5、登録商標)、Tide Quencher 5WS(TQ5WS、登録商標)、Tide Quencher 6WS(TQ6WS、登録商標)、Tide Quencher 7WS(TQ7WS、登録商標)、QSY35(登録商標)、QSY7(登録商標)、QSY9(登録商標)、QSY21(登録商標)、Iowa Black FQ(登録商標)、Iowa Black RQ(登録商標)等が挙げられ、BHQ-2、TQ4、TQ4WS、TQ5、TQ5WS、QSY21及びIowa Black RQからなる群より選択される一種以上が好ましく、BHQ-2がより好ましい。
消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、550~640nmであることが好ましく、560~630nmであることがより好ましく、570~620nmであることが更に好ましく、570~600nmであることが特に好ましい。
消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して短波長側である。
消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して50~100nm短いことが好ましく、55~80nm短いことがより好ましく、60~70nm短いことが更に好ましい。
基体において、蛍光物質が消光物質の空間的近傍にある場合、蛍光物質からの蛍光発光は消光物質により抑制される。
ここで、「蛍光発光が抑制される」とは、次のような意味である。
消光物質が存在しない場合において、励起光を蛍光物質に対して照射したときの、蛍光物質から発光する蛍光の強度をAとする。
消光物質が蛍光物質の空間的近傍に存在する場合において、励起光を蛍光物質に対して照射したときの、蛍光物質から発光する蛍光の強度をBとする。
「蛍光発光が抑制される」とは、B/Aの値が、40%以下であることを意味する。
蛍光物質が消光物質の空間的近傍にある状態における、蛍光物質と消光物質距離との距離は、蛍光物質からの蛍光発光が消光物質により抑制される限り特に限定されないが、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、2nm以下であることが更に好ましい。
基体における蛍光物質と消光物質とを離間させる方法としては、蛍光物質から蛍光を発光させられる限り特に限定されないが、例えば、蛍光物資と消光物質とを有する基体に対し、剪断、加熱、冷却、電磁波照射等の物理的作用を与えるものであってもよいし、化学物質に暴露する等の化学的作用を与えるものであってもよいし、酵素反応等の生物学的作用を与えるものであってもよい。
蛍光物質と消光物質とを離間された状態における、蛍光物質と消光物質距離との距離は、蛍光物質から蛍光が発光する限り限定されないが、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが更に好ましい。
蛍光物質から蛍光発光させる工程は、標的物質の存在下で行われてもよい。
(標的物質)
標的物質としては、直接的又は間接的に、蛍光物質と消光物質とを離間させるものである限り特に限定されないが、核酸、酵素、抗体等のタンパク質等が挙げられ、核酸が好ましい。
標的物質が核酸である場合、蛍光物質から蛍光発光させる工程において、核酸切断酵素の作用により、基体における蛍光物質と消光物質とが離間されてもよい。
(微小空間)
第1の態様にかかる方法において、蛍光物質から蛍光を発光させる工程は、微小空間内で行われることが好ましい。具体的には、微小な複数のウェルを有するウェルアレイを有するデバイスを用いることが好ましい。デバイスとしては、例えば、次に挙げるようなものを用いることができるが、これに限定されない。
ウェルの形状、寸法、及び配置は特に限定されないが、本発明の方法において用いられる標的核酸を含む液体、及び、検出工程で使用する一定量の試薬液等を収容可能なウェルから成るウェルアレイを使用することが好ましい。ウェルは、無処理でそのまま使用してもよいし、目的に応じて、予めウェル内壁に抽出試薬、抗体等の検出試薬、特異的結合物質等を固定化したり、ウェル開口部を脂質二重膜で覆ったりする等の前処理を施してもよい。
デバイスは、流路を有していてもよく、流路を介して標的核酸が分散した液体を送液してもよい。流路の形状、構造、容量等は特に限定されないが、構造体が分散した液体を送液した際にウェルアレイの各ウェルに構造体が導入され、かつ封止液を挿入した際に各ウェルが個別に封止され微小液滴を形成することができるような流路を有するデバイスを使用することが好ましい。
図1Bは、デバイスの模式断面図である。図1Bに示すように、デバイス100は、基材104と蓋材101とを備えている。
基材104は、光透過性樹脂から形成されていてよい。基材104は、実質的に透明であってもよい。
基材104は、複数のウェル105を有する。基材104のウェル105は、基材104の表面に開口している。ウェル105の形状、寸法、および配置は特に限定されない。
図1Bに示す例では、デバイス100において、試薬液107(標的核酸が分散した液体)を収容可能な同形同大の複数のウェル105が基材104に形成されている。また、第1の態様にかかる検出方法において粒子が使用される場合には、粒子を1つ以上収容可能な形状及び寸法を有し、粒子を含んだ一定量の試薬液107を収容可能な同形同大のウェル105が基材104に形成されていてもよい。
デバイス100では、ウェル105の直径は例えば3μm程度であってもよく、ウェル105の深さは例えば4.5μm程度であってもよい。また、ウェル105は、三角格子状又は正方格子状を形成するように整列して基材104に形成されていてもよい。
基材104の、複数のウェル105を含んだ領域は、分析対象となる試薬液107が充填される領域となっている。この領域の内側では、基材104と蓋材101との間に流路106が設けられている。
蓋材101は、基材104に対して溶着または接着されていてもよい。例えば、蓋材101は、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
基材104は、例えば樹脂を用いて形成される。樹脂の種類は特に限定されないが、試薬及び液滴を形成する際の封止液に対し耐性のあるものを用いることが好ましい。また、シグナルを蛍光観察する場合には、自家蛍光の少ない樹脂を選ぶことが好ましい。例えば、シクロオレフィンポリマーや、シクロオレフィンコポリマー、シリコーン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、アモルファスフッ素樹脂などが挙げられる。なお、基材104の例として示されたこれらの材質はあくまでも例であり、材質はこれらには限られない。
基材104に対しては、板厚方向の一方の面に複数のウェル105が形成されていてもよい。樹脂を用いた形成方法としては、射出成形のほか、熱インプリントや、光インプリントなどによってもよい。また、フッ素樹脂を用いる場合には、例えば、基材104の上にCYTOP(登録商標)(旭硝子)の層を有し、CYTOP(登録商標)に形成された微小な孔がウェル105となっていてもよい。
蓋材101は、組立時に基材104に向けられる面に凸部を有するように成形される。例えば熱可塑性樹脂の流動体を、成形型を用いて成形することで、凸部を有する板状に成形してもよい。また、蓋材101には送液ポート102および廃液ポート103が形成されてもよい。
蓋材101および基材104が上記のように成形されたら、基材104においてウェル105が開口する側の面に蓋材の凸部が接するように、蓋材101と基材104とが重ねられる。さらに、蓋材101と基材104とが上記のように重ねられた状態で、レーザー溶着等により溶着される。
デバイスが有するウェルの個数は、10万個~600万個であることが好ましい。また、ウェルの総容量は0.1~10μLであることが好ましい。
(ICA)
第1の態様にかかる方法は、例えば、インベーダ法を応用したICA(Invasive Cleavage Assay、インベーシブ・クリベージ・アッセイ)に適用することが可能である(例えば、非特許文献1を参照)。
第1の態様に係る方法における標的物質は、ICAにおける標的核酸であってもよい。
ICAにおいては、標的核酸にハイブリダイズし得る2種類のオリゴヌクレオチドを用いて、特異的な重なりあった構造を有する開裂構造体を形成させる。次いで、5’ヌクレアーゼ活性を有する酵素により、得られた開裂構造体を切断し、この切断断片を検出することにより、標的核酸を検出する。
より具体的には、ICAは、次のような方法である。まず、標的核酸上の隣接する異なる部位に、2種類のオリゴヌクレオチドを、それぞれアニーリングさせたときに、一方のオリゴヌクレオチドの5’側を、標的核酸にアニーリングしている他方のオリゴヌクレオチドにオーバーラップさせるようにアニーリングさせ、特異的な重なりあった構造を有する開裂構造体を構成させる。
この開裂構造体は、一方のオリゴヌクレオチドの下方に、他方のオリゴヌクレオチドの一部が侵入していることから、インベーダ反応と呼ばれており、この侵入するオリゴヌクレオチドをインベーダオリゴ、オーバーラップしているオリゴヌクレオチドをアレルプローブという。
開裂構造体中のこの侵入構造を、5’ヌクレアーゼ活性を有する酵素が認識し、アレルプローブの5’側のオーバーラップしている部位を切断する。この切断されるアレルオリプローブを、5’ヌクレアーゼ活性による切断反応温度に近い融点を持つように設計することにより、切断後に残された標的核酸とアニーリングしていた部位も標的核酸から解離する。そして、切断前のアレルプローブが新たにアニーリングすることにより、再び開裂構造体が構成され、切断反応が繰り返され、切断された断片(フラップ断片)が増幅されていく。このため、このフラップ断片を測定することにより、標的核酸を検出することができる。
フラップ断片の測定方法として、様々な方法が開示されている。例えば、二次反応として、標的核酸とは異なる検出用核酸に対して、フラップ断片をインベーダオリゴ、他のオリゴヌクレオチドをアレルプローブとして、それぞれアニーリングさせることにより開裂構造体を構成し、一次反応と同様にしてアレルプローブを切断し、第2次フラップ断片を増幅し、この第2次フラップ断片を検出することもできる(例えば、非特許文献1を参照。)。
二次反応において、FRET(Fluorescence resonance energy transfer、蛍光共鳴エネルギー移動)反応を利用して測定することも可能である(例えば、非特許文献1参照。)。具体的には、FRETカセット(蛍光物質と消光物質を有するプローブ)に、該フラップ断片がインベーダオリゴとして働くことにより開裂構造体を構成し、FRETカセットを切断して蛍光物質と消光物質を分離させ、生じた蛍光シグナルを測定することにより、高感度にフラップ断片を測定することができる。これらのフラップ断片の測定反応は、フラップ断片の産生反応と同じ反応溶液中で同時に進行させることができる。
上述のデバイスの各ウェルにおいてICAを行う場合、デバイスが有する各ウェルにおいて、標的物質を1個以下とすることが好ましい。
本態様に係る方法は、更に、前記蛍光を蛍光顕微鏡で観察する工程を含んでもよい。
以上説明した第1の態様にかかる方法によれば、解析対象分子の存在下で、蛍光物質及び消光物質を有する蛍光プローブから発せられる蛍光強度がより高められる。
第1の態様にかかる方法の一実施形態としては、例えば、以下の実施形態が挙げられる。本実施形態にかかる方法は、第1の態様において上述した基体を、図1Aに例示されるICA反応に適用したものである。
本実施形態にかかる方法において、第1の態様にかかる方法における「前記基体における前記蛍光物質と前記消光物質とを離間させることにより、前記蛍光物質から蛍光を発光させる工程」は、蛍光物質及び消光物質で標識された第1の一本鎖オリゴヌクレオチド、及び、前記第1の一本鎖オリゴヌクレオチドの3’側に相補的な塩基配列を有する第2の一本鎖オリゴヌクレオチドを接触させる工程を含むものである。
本実施形態にかかる方法において、前記第1の一本鎖オリゴヌクレオチドは、自己ハイブリダイゼーションにより5’側がヘアピン構造を形成し、前記第2の一本鎖オリゴヌクレオチドがハイブリダイズすると、5’末端部分に三重鎖構造が形成され、核酸切断酵素により切断されて、前記蛍光物質と前記消光物質とが遊離し、励起光の照射により蛍光を発するものである。
本実施形態にかかる方法において、前記蛍光物質は、前記消光物質の空間的近傍にある場合に、前記蛍光物質からの蛍光発光は、前記消光物質により抑制されている。
本実施形態にかかる方法において、前記消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、前記蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して短波長側である。
本実施形態にかかる方法は、蛍光を検出する工程を有していてもよい。蛍光は、蛍光顕微鏡により検出してもよい。
5’側に自己ハイブリダイゼーションによるヘアピン構造を有し、蛍光物質及び消光物質で標識された第1の一本鎖オリゴヌクレオチドは、図1Aにおける核酸断片150に対応する。前記第1の一本鎖オリゴヌクレオチドの3’側に相補的な塩基配列を有する第2の一本鎖オリゴヌクレオチドは、図1Aにおけるフラップ部位140に由来する核酸断片140に対応する。5’末端部分に形成される三重鎖構造は、図1Aにおける第2の三重鎖構造160に対応する。
実施例において後述するように、蛍光基質の蛍光物質が、塩基以外の部分に結合していることにより、三重鎖構造を効率よく形成することができ、ICAの反応性を向上させることができる。蛍光物質が塩基以外の部分に結合しているとは、蛍光物質が、蛍光基質を形成するオリゴヌクレオチドの、糖残基、リン酸基、塩基のうちの、糖残基又はリン酸基に結合していることを意味する。なかでも、蛍光物質が、蛍光基質のリン酸基に結合していることが好ましい。
本明細書において、ICAの反応性が向上するとは、ICAの結果検出される蛍光シグナルが、より短時間に所定の値に到達することであってもよい。あるいは、ICAの結果検出される蛍光シグナル強度が、より高い値に到達することであってもよい。あるいは、ICAの結果検出されるバックグラウンドの蛍光シグナルがより低い値に維持されることであってもよい。
本実施形態の一本鎖オリゴヌクレオチドは、20~150塩基程度の長さを有していることが好ましい。また、ヘアピン構造を形成する塩基対の数は5~50個程度であることが好ましい。
蛍光物質及び消光物質で標識された一本鎖オリゴヌクレオチドにおいて、蛍光物質が結合している核酸と消光物質が結合している核酸との間の塩基数としては、11塩基以上30塩基以下が好ましく、4塩基以上10塩基以下がより好ましく、1塩基以上3塩基以下が更に好ましい。
核酸切断酵素としては、5’ヌクレアーゼ活性を有する酵素が好ましく、5’ヌクレアーゼ活性を有するがポリメラーゼ活性を欠く修飾DNAポリメラーゼがより好ましく、フラップエンドヌクレアーゼが更に好ましい。
フラップエンドヌクレアーゼとしては、例えば、フラップエンドヌクレアーゼ1(NCBIアクセッション番号:WP_011012561.1、Holliday junction 5’ flap endonuclease(GEN1)(NCBIアクセッション番号:NP_001123481.3)、excision repair protein(NCBIアクセッション番号:AAC37533.1等が挙げられる。
蛍光物質及び消光物質で標識された一本鎖オリゴヌクレオチド(これを蛍光基質という場合がある)は、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合していることが好ましい。
実施例において後述するように、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合している蛍光基質は、蛍光物質が塩基に結合している蛍光基質と比較して、ICAの反応性が向上しており、三重鎖構造を効率よく形成することができる。
下記式(1)は、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合している蛍光基質の一例を示す化学式である。下記式(1)に示すように、蛍光物質は、炭素数1~100程度の炭化水素基からなるリンカーを介して、5’末端に付加されたリン酸基に結合していてもよい。
リンカーの炭素数としては、1~30個程度が好ましく、1~10個程度がより好ましい。
リンカーの炭素数が前記下限値以上であることにより、蛍光物質と、核酸切断酵素による切断箇所との距離を適度に保つことが可能である。その結果、核酸切断酵素による切断反応は蛍光物質により阻害されにくくなり、核酸切断酵素による反応効率は向上する。
リンカーの炭素数が前記上限値以下であることにより、蛍光物質と消光物質との距離がより短くなる。その結果、消光物質による消光の効果が向上する。
Figure 2024000309000001
下記式(2)は、蛍光物質が塩基に結合している蛍光基質の一例を示す化学式である。
Figure 2024000309000002
あるいは、第1の態様にかかる方法の一実施形態としては、例えば、以下の第1実施形態が挙げられる。第1実施形態は、標的核酸を検出するための方法である。第1実施形態にかかる方法は、第1の態様において上述した基体を、上述のICA反応に適用したものである。
(第1実施形態)
第1実施形態の方法は、以下の工程(a)~(e)を有する。以下、第1実施形態について、適宜、図面を用いつつ、詳述する。
以下の工程において、第1オリゴヌクレオチドは上述のアレルプローブに対応し、第2オリゴヌクレオチドは上述のインベーダオリゴに対応する。検出用核酸は上述のFRETカセットに対応する。
工程(a):標的核酸と第1オリゴヌクレオチドと第2オリゴヌクレオチドとで、第1開裂構造体を形成させる工程
工程(b):5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤により、第1開裂構造体を構成している第1オリゴヌクレオチドを開裂させ、前記第1オリゴヌクレオチド由来の5’側部分からなる第3オリゴヌクレオチドを生成させる工程
工程(c):第3オリゴヌクレオチドと第4オリゴヌクレオチドと検出用核酸とで、第2α開裂構造体を形成させる工程
工程(d):5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤により、第2α開裂構造体を構成している第4オリゴヌクレオチドを開裂させ、第4オリゴヌクレオチド由来の5’側部分からなる第5オリゴヌクレオチドを生成させる工程
工程(e):第5オリゴヌクレオチドを検出する工程
以下、工程(a)~(e)について、詳細に説明する。
<工程(a)>
図2に例示するように、工程(a)では、標的核酸1と第1オリゴヌクレオチドと第2オリゴヌクレオチドとで、第1開裂構造体を形成させる。
標的核酸1は、第1領域(以下、T1領域、ということがある。)、第2領域(以下、T2領域、ということがある。)、及び、第3領域(以下、T3領域、ということがある。)を含む。T1領域はT2領域に隣接してその下流に位置し、T2領域はT3領域に隣接してその下流に位置する。
第1オリゴヌクレオチドは、3’側部分にT3領域に完全に相補的なヌクレオチド配列を有するものであり、第2オリゴヌクレオチドは、3’側部分にT2領域に完全に相補的なヌクレオチド配列を有し、5’側部分にT1領域に完全に相補的なヌクレオチド配列を有するものである。
つまり、第1オリゴヌクレオチドは、標的核酸のT3領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドであり、第2オリゴヌクレオチドは、標的核酸のT1領域およびT2領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドである。このため、反応溶液中に、標的核酸と第1オリゴヌクレオチドと第2オリゴヌクレオチドとを添加し混合することにより、第2オリゴヌクレオチドがT1領域およびT2領域にアニーリングし、かつ第1オリゴヌクレオチドがT3領域にアニーリングした時に、第1オリゴヌクレオチドのうち、T3領域にアニーリングした領域の5’側部分が、T2領域にアニーリングした第2オリゴヌクレオチドの3’側部分中の1以上のヌクレオチド配列とオーバーラップするように形成された第1開裂構造体を得ることができる。
図2は、第1開裂構造体を模式的に示した図である。図2中、「1」は標的核酸を、「T1」~「T3」はT1領域~T3領域を、「n1」は第1オリゴヌクレオチドを、「n2」は第2オリゴヌクレオチドを、それぞれ示している。このように、第1開裂構造体は、第2オリゴヌクレオチドが第1オリゴヌクレオチドの下に侵入し、第1オリゴヌクレオチドの5’側がその上にオーバーラップした分岐構造をとる。
<工程(b)>
5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤により、工程(a)において生成された第1開裂構造体を構成している第1オリゴヌクレオチドを開裂させ、第1オリゴヌクレオチド由来の5’側部分からなる第3オリゴヌクレオチドを生成させる。
ここで用いられる5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤は、第1開裂構造体中の分岐構造、すなわち、第1オリゴヌクレオチドの、T3領域とアニーリングしている3’側部分と、第2オリゴヌクレオチドにオーバーラップした5’側部分の境界部分(図2中、「▼」で示した部分)を認識して切断する。この切断により生成された第1オリゴヌクレオチドのT3領域にアニーリングした領域の5’側部分からなるオリゴヌクレオチドを、第3オリゴヌクレオチドとする。
工程(b)において、切断反応が生じた後、第1オリゴヌクレオチドのT3領域とアニーリングしている3’側部分が、標的核酸から解離すると、未切断の第1オリゴヌクレオチドが再びT3領域とアニーリングし、第1開裂構造体を形成する。これにより、熱変性等の操作を要することなく、インベーダ反応が繰り返され、微量な標的核酸も高感度に検出することができる。
第1オリゴヌクレオチドや第2オリゴヌクレオチドは、標的核酸のヌクレオチド配列、用いる開裂剤の種類、インベーダ反応における反応温度、反応溶液の種類等を考慮して、常法により設計し合成することができる。ここで、第2オリゴヌクレオチドのTm値が、反応温度よりも十分に高い場合には、第2オリゴヌクレオチドと標的核酸とのハイブリダイゼーションが強くなりすぎる恐れがある。一方、第2オリゴヌクレオチドのTm値が、反応温度よりも低すぎる場合には、標的核酸とのアニーリング効率が悪くなりすぎる。そこで、第2オリゴヌクレオチドのTm値は、反応温度程度であることが好ましい。
また、インベーダ反応が効率よく繰り返されるためには、切断反応後速やかに第1オリゴヌクレオチドの3’側部分が、T3領域から解離することが必要である。このため、第1オリゴヌクレオチドのT3領域とハイブリダイズする領域のTm値が、インベーダ反応の反応温度よりも十分に低いことが好ましい。
また、第2オリゴヌクレオチド中、T2領域に完全に相補的なヌクレオチド配列の3’端が、第2オリゴヌクレオチドの3’末端から2番目のヌクレオチドであることが好ましい。これにより、第2オリゴヌクレオチドの3’末端が、第1オリゴヌクレオチドのT3領域とアニーリングする部位の5’端のヌクレオチドとオーバーラップするため、効率よく、第1開裂構造体を得ることができる。この場合に、第2オリゴヌクレオチドの3’末端のヌクレオチドは、標的核酸の対応するヌクレオチドと相補的なヌクレオチドであってもよく、非相補的なヌクレオチドであってもよいが、非相補的なヌクレオチドであることがより好ましい。第1開裂構造体中の分岐構造部分がより不安定となり、インベーダ反応の効率がより改善されるためである。
標的核酸が、遺伝子多型等のヌクレオチド配列中の特定のヌクレオチド(標的塩基)を含むものである場合には、この標的塩基は、標的核酸中、T2領域又はT3領域にあることが好ましく、第1開裂構造体中の分岐構造付近にあることが好ましく、分岐構造付近のT2領域にあることがより好ましい。分岐構造付近に標的塩基がくるように、第1オリゴヌクレオチドや第2オリゴヌクレオチドを設計することにより、標的塩基の検出精度を向上させることができる。
工程(b)において用いられる5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤は、前記分岐構造を認識し得るものであって5’ヌクレアーゼ活性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、構造特異的酵素であることが好ましい。また、5’ヌクレアーゼ活性のみを有する酵素であってもよく、他の酵素活性を有する酵素であってもよい。また、このような構造特異的酵素は、いかなる生物種由来の酵素であってもよく、合成酵素であってもよい。
このような開裂剤として、5’ヌクレアーゼ活性を有する酵素が好ましく、5’ヌクレアーゼ活性を有するがポリメラーゼ活性を欠く修飾DNAポリメラーゼがより好ましく、フラップエンドヌクレアーゼが更に好ましい。
フラップエンドヌクレアーゼとしては、例えば、フラップエンドヌクレアーゼ1(NCBIアクセッション番号:WP_011012561.1、Holliday junction 5’ flap endonuclease(GEN1)(NCBIアクセッション番号:NP_001123481.3)、excision repair protein(NCBIアクセッション番号:AAC37533.1等が挙げられる。
5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤として、5’ヌクレアーゼ活性を有する耐熱性酵素であることが好ましい。耐熱性酵素を用いることにより、標的核酸を予めPCRにより増幅させたものを用いる場合に、同一の反応系を用いてPCRとインベーダ反応を行うことができる。
また、反応溶液に添加する第1オリゴヌクレオチドと第2オリゴヌクレオチドの量は、特に限定されるものではないが、第2オリゴヌクレオチドよりも第1オリゴヌクレオチドを多く添加することが好ましい。第1オリゴヌクレオチドの添加量が多い場合に、より効率よくインベーダ反応が繰り返されることが期待できるためである。例えば、第1オリゴヌクレオチドの添加量を、第2オリゴヌクレオチドの添加量の2倍以上にすることが好ましく、2~100倍程度にすることがより好ましく、5~50倍程度にすることがさらに好ましく、10倍程度にすることが特に好ましい。
なお、反応溶液の組成は、開裂構造体を形成し得るものであって、かつ用いる開裂剤の5’ヌクレアーゼ活性を阻害しない組成であれば、特に限定されるものではなく、標的核酸の種類、第1オリゴヌクレオチドや第2オリゴヌクレオチドの種類、使用する開裂剤の種類等を考慮して、適宜決定することができる。また、反応温度も、使用する開裂剤の種類、第1オリゴヌクレオチドや第2オリゴヌクレオチドのTm値等を考慮して、適宜決定することができる。
<工程(c)>
図3に例示されるように、工程(c)では、工程(b)において生成された第3オリゴヌクレオチドと第4オリゴヌクレオチドと検出用核酸2とで、第2α開裂構造体を形成させる。
検出用核酸は第1領域(以下、D1領域、ということがある。)、第2領域(以下、D2領域、ということがある。)および第3領域(以下、D3領域、ということがある。)を含み、D1領域はD2領域に隣接してその下流に位置し、D2領域はD3領域に隣接してその下流に位置する。また、第4オリゴヌクレオチドは、3’側部分に検出用核酸の前記第3領域に完全に相補的なヌクレオチド配列を有するものであり、第3オリゴヌクレオチドは、3’側部分に検出用核酸の前記第2領域に完全に相補的なヌクレオチド配列を有し、5’側部分に検出用核酸の前記第1領域に完全に相補的なヌクレオチド配列を有するものである。
つまり、第4オリゴヌクレオチドは、検出用核酸のD3領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドであり、第3オリゴヌクレオチドは、検出用核酸のD1領域およびD2領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドである。このため、反応溶液中に、検出用核酸と第3オリゴヌクレオチドと第4オリゴヌクレオチドとを添加し混合することにより、第3オリゴヌクレオチドがD1領域およびD2領域にアニーリングし、かつ第4オリゴヌクレオチドがD3領域にアニーリングした時に、第4オリゴヌクレオチドのうち、D3領域とアニーリングした領域の5’側部分が、D2領域にアニーリングした第3オリゴヌクレオチドの3’側部分中の1以上のヌクレオチド配列とオーバーラップするように形成された第2α開裂構造体を得ることができる。
図3は、第2α開裂構造体を模式的に示した図である。図3中、「2」は検出用核酸を、「D1」~「D3」はD1領域~D3領域を、「n3」は第3オリゴヌクレオチドを、「n4」は第4オリゴヌクレオチドを、それぞれ示している。このように、第3オリゴヌクレオチドが第4オリゴヌクレオチドの下に侵入し、第4オリゴヌクレオチドの5’側がその上にオーバーラップした分岐構造をとっており、この第2α開裂構造体においては、第4オリゴヌクレオチドがアレルプローブ、第3オリゴヌクレオチドがインベーダオリゴとして働く。
<工程(d)>
工程(d)では、5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤により、工程(c)において生成された第2α開裂構造体を構成している第4オリゴヌクレオチドを開裂させ、第4オリゴヌクレオチド由来の5’側部分からなる第5オリゴヌクレオチドを生成させる。
具体的には、工程(b)と同様にして、図3中、「▼」で示されている、第4オリゴヌクレオチドの、D3領域とアニーリングしている3’側部分と、第3オリゴヌクレオチドにオーバーラップした5’側部分の境界部分が、5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤により切断される。この切断により生成された第4オリゴヌクレオチドのD3領域とアニーリングした領域の5’側部分からなるオリゴヌクレオチドを、第5オリゴヌクレオチドとする。
第4オリゴヌクレオチドは、第1の態様において上述した基体であってもよい。
第4オリゴヌクレオチドとしては、例えば、5’側部分(第5オリゴヌクレオチドとなる部分)に蛍光物質として機能する蛍光分子を、D3領域とアニーリングする部位に消光物質として機能する蛍光分子を、それぞれ標識したものを用いてもよい。
すなわち、第4オリゴヌクレオチドにおいて、蛍光物質は、消光物質の空間的近傍にあり、前記蛍光物質からの蛍光発光は、前記消光物質により抑制されている。消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して短波長側である。
第4オリゴヌクレオチドが蛍光物質及び消光物質で標識されている場合、蛍光物質が結合している核酸と消光物質が結合している核酸との間の塩基数としては、11塩基以上30塩基以下が好ましく、4塩基以上10塩基以下がより好ましく、1塩基以上3塩基以下が更に好ましい。
第4オリゴヌクレオチドの蛍光物質が、塩基以外の部分に結合していることにより、三重鎖構造を効率よく形成することができ、ICAの反応性を向上させることができる。蛍光物質が塩基以外の部分に結合しているとは、蛍光物質が、蛍光基質を形成するオリゴヌクレオチドの、糖残基、リン酸基、塩基のうちの、糖残基又はリン酸基に結合していることを意味する。なかでも、蛍光物質が、蛍光基質のリン酸基に結合していることが好ましい。
第4オリゴヌクレオチド(これを蛍光基質という場合がある)は、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合していることが好ましい。
実施例において後述するように、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合している蛍光基質は、蛍光物質が塩基に結合している蛍光基質と比較して、ICAの反応性が向上しており、三重鎖構造を効率よく形成することができる。
上記式(1)は、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合している蛍光基質の一例を示す化学式である。上記式(1)に示すように、蛍光物質は、炭素数1~100程度の炭化水素基からなるリンカーを介して、5’末端に付加されたリン酸基に結合していてもよい。
リンカーの炭素数としては、1~30個程度が好ましく、1~10個程度がより好ましい。
リンカーの炭素数が前記下限値以上であることにより、蛍光物質と、5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤による切断箇所との距離を適度に保つことが可能である。その結果、開裂剤による切断反応は蛍光物質により阻害されにくくなり、開裂剤による反応効率は向上する。
リンカーの炭素数が前記上限値以下であることにより、蛍光物質と消光物質との距離がより短くなる。その結果、消光物質による消光の効果が向上する。
工程(d)における切断反応により、第4オリゴヌクレオチドにおける蛍光物質と消光物質とが離間し、蛍光物質から蛍光が発光する。
<工程(e)>
工程(e)では、工程(d)において生成した第5オリゴヌクレオチドの蛍光物質から発光した蛍光を検出する。蛍光は、蛍光顕微鏡で観察してもよい。
あるいは、第1の態様にかかる方法の一実施形態としては、例えば、以下の第2実施形態が挙げられる。第2実施形態は、標的核酸を検出するための方法である。第2実施形態にかかる方法は、第1の態様において上述した基体を、上述のICA反応に適用したものである。
(第2実施形態)
第2実施形態は、上述の工程(a)~(b)の後に、工程(c)~(e)に替えて、工程(f)~(h)を含むものである。
以下の工程において、第1オリゴヌクレオチドは上述のアレルプローブに対応し、第2オリゴヌクレオチドは上述のインベーダオリゴに対応する。第6オリゴヌクレオチドは上述のFRETカセットに対応する。
<工程(f)>
図4に例示されるように、工程(f)では、工程(b)において生成された第3オリゴヌクレオチドと第6オリゴヌクレオチドとで、第2β開裂構造体を形成させる。
第6オリゴヌクレオチドは、第1領域(以下、P6-1領域、ということがある。)、第2領域(以下、P6-2領域、ということがある。)および第3領域(以下、P6-3領域、ということがある。)を含み、P6-1領域はP6-2領域に隣接してその下流に位置し、P6-2領域はP6-3領域に隣接してその下流に位置するものであり、P6-1領域は第3オリゴヌクレオチドに完全に相補的なヌクレオチド配列を有するものであり、P6-2領域は分子内ヘアピン構造を形成し得るヌクレオチド配列を有するものである。
図4は、第2β開裂構造体を模式的に示した図である。図4中、「n3」は第3オリゴヌクレオチドを、「n6」は第6オリゴヌクレオチドを、「P6-1」~「P6-3」はP6-1領域~P6-3領域を、それぞれ示している。このように、第3オリゴヌクレオチドが第6オリゴヌクレオチドの下に侵入し、第6オリゴヌクレオチドのP6-3領域がその上にオーバーラップした分岐構造をとっており、この第2β開裂構造体においては、第6オリゴヌクレオチドがアレルプローブ、第3オリゴヌクレオチドがインベーダオリゴとして働く。
<工程(g)>
工程(g)では、5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤により、工程(f)において生成された第2β開裂構造体を構成している第6オリゴヌクレオチドを開裂させ、第6オリゴヌクレオチド由来の5’側部分(すなわち、P6-3領域)からなる第7オリゴヌクレオチドを生成させる。
具体的には、工程(b)と同様にして、図4中、「▼」で示されている、第6オリゴヌクレオチドの、P6-2領域と、第3オリゴヌクレオチドにオーバーラップした5’側部分のP6-3領域との境界部分が、5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤により切断される。この切断により生成された第6オリゴヌクレオチドのP6-2領域の5’側部分からなるオリゴヌクレオチドを、第7オリゴヌクレオチドとする。
第6オリゴヌクレオチドは、第1の態様において上述した基体であってもよい。
第6オリゴヌクレオチドとしては、例えば、P6-3領域中(第7オリゴヌクレオチドとなる部分)に蛍光物質として機能する蛍光分子を、P6-2領域中に消光物質(Q)として機能する蛍光分子を、それぞれ標識したものを用いてもよい。
すなわち、第6オリゴヌクレオチドにおいて、蛍光物質は、消光物質の空間的近傍にあり、前記蛍光物質からの蛍光発光は、前記消光物質により抑制されている。消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して短波長側である。
本実施形態の第6オリゴヌクレオチドは、20~150塩基程度の長さを有していることが好ましい。また、ヘアピン構造を形成する塩基対の数は5~50個程度であることが好ましい。
第6オリゴヌクレオチドが蛍光物質及び消光物質で標識されている場合、蛍光物質が結合している核酸と消光物質が結合している核酸との間の塩基数としては、11塩基以上30塩基以下が好ましく、4塩基以上10塩基以下がより好ましく、1塩基以上3塩基以下が更に好ましい。
第6オリゴヌクレオチドの蛍光物質が、塩基以外の部分に結合していることにより、三重鎖構造を効率よく形成することができ、ICAの反応性を向上させることができる。蛍光物質が塩基以外の部分に結合しているとは、蛍光物質が、蛍光基質を形成するオリゴヌクレオチドの、糖残基、リン酸基、塩基のうちの、糖残基又はリン酸基に結合していることを意味する。なかでも、蛍光物質が、蛍光基質のリン酸基に結合していることが好ましい。
第6オリゴヌクレオチド(これを蛍光基質という場合がある)は、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合していることが好ましい。
実施例において後述するように、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合している蛍光基質は、蛍光物質が塩基に結合している蛍光基質と比較して、ICAの反応性が向上しており、三重鎖構造を効率よく形成することができる。
上記式(1)は、5’末端にリン酸基が付加されており、蛍光物質が、5’末端に付加されたリン酸基に結合している蛍光基質の一例を示す化学式である。上記式(1)に示すように、蛍光物質は、炭素数1~100程度の炭化水素基からなるリンカーを介して、5’末端に付加されたリン酸基に結合していてもよい。
リンカーの炭素数としては、1~30個程度が好ましく、1~10個程度がより好ましい。
リンカーの炭素数が前記下限値以上であることにより、蛍光物質と、5’ヌクレアーゼ活性を有する開裂剤による切断箇所との距離を適度に保つことが可能である。その結果、開裂剤による切断反応は蛍光物質により阻害されにくくなり、開裂剤による反応効率は向上する。
リンカーの炭素数が前記上限値以下であることにより、蛍光物質と消光物質との距離がより短くなる。その結果、消光物質による消光の効果が向上する。
工程(g)における切断反応により、第7オリゴヌクレオチドにおける蛍光物質と消光物質(Q)とが離間し、蛍光物質から蛍光が発光する。
<工程(h)>
工程(h)では、工程(g)において生成した第7オリゴヌクレオチドの蛍光物質から発光した蛍光を検出する。蛍光は、蛍光顕微鏡で観察してもよい。
上述の第1開裂構造体、第2α開裂構造体及び第2β開裂構造体を形成する反応溶液の温度、pH、塩濃度、緩衝液等について特に制限はなく、当業者が適宜設定することができる。
反応溶液のpHとしては、6.5~10.0が好ましく、7.5~9.0がより好ましい。緩衝作用のある塩の濃度としては、5~250mMが好ましく、10~100mMがより好ましい。緩衝作用のある塩としては特に限定されないが、例えば、カコジル酸塩、リン酸塩、トリス塩等が挙げられる。
反応溶液は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を含むことが好ましく、塩化ナトリウム及び/又は塩化マグネシウムを含むことがより好ましい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
複数種の標的核酸、アレルプローブ、インベーダオリゴ、FRETカセットを含む反応液を調製し、ICAを行い、赤色蛍光を検出した。
以下の表1に示す標的核酸、アレルプローブ、インベーダオリゴ、FRETカセットを準備した。
Figure 2024000309000003
標的核酸1と標的核酸2とは、下線部の一塩基以外は同じ塩基配列からなる標的核酸である。標的核酸3と標的核酸4とは、下線部の一塩基以外は同じ塩基配列からなる標的核酸である。
標的核酸1は、標的核酸1とハイブリダイズし得るアレルプローブ1、インベーダオリゴ1、及びFRETカセット1により検出される。標的核酸1及びアレルプローブ1における小文字の塩基は、互いにハイブリダイズし得る塩基対である。
標的核酸2は、標的核酸2とハイブリダイズし得るアレルプローブ2、インベーダオリゴ1、及びFRETカセット3により検出される。標的核酸2及びアレルプローブ2における小文字の塩基は、互いにハイブリダイズし得る塩基対である。
標的核酸3は、標的核酸3とハイブリダイズし得るアレルプローブ3、インベーダオリゴ2、及びFRETカセット2により検出される。標的核酸3及びアレルプローブ3における小文字の塩基は、互いにハイブリダイズし得る塩基対である。
標的核酸4は、標的核酸4とハイブリダイズし得るアレルプローブ4、インベーダオリゴ2、並びに、FRETカセット4-1、4-2又は4-3により検出される。標的核酸4及びアレルプローブ4における小文字の塩基は、互いにハイブリダイズし得る塩基対である。
各FRETカセットにおける、蛍光物質及び消光物質は以下の通りである。
FRETカセット1:Alexa Fluor 488、BHQ-1
FRETカセット2:ATTO542、BHQ-1
FRETカセット3:Alexa Fluor 568、BHQ-2
FRETカセット4-1:ATTO643、BHQ-2
FRETカセット4-2:ATTO643、BHQ-1
FRETカセット4-3:ATTO643、BHQ-3
以下の表2に示すように、試薬類を混合して、反応液1~3を調製した。
Figure 2024000309000004
反応液1~3は、それぞれ、FRETカセット1、FRETカセット2、及びFRETカセット3、並びに、FRETカセット4-1、FRETカセット4-2、及びFRETカセット4-3から選択される一種を含む。
反応液1はFRETカセット4-1を含み、反応液2はFRETカセット4-2を含み、反応液3はFRETカセット4-3を含む。
(測定デバイス)
多数の微小のウェルを設けた基材をCOP(シクロオレフィンポリマー)で作製し、COP製の蓋材を貼合することで測定デバイスを作製した。1cmあたりのウェルの総体積は0.93μLであった。計測に用いられた総ウェル数は、1000000個であった。
(反応混合溶液の送液)
デバイスに、反応液1を8μl送液し、各ウェルに導入した。続いて、封止液としてFC-40(Sigma社)を200μl送液し、各ウェルを封止した。
これにより、1ウェル当たり1分子以下の標的核酸がウェル内に封止される。すなわち、各ウェルは、標的核酸を含むか、又は、標的核酸を含まないか、のいずれかである。
(核酸検出反応)
反応混合溶液の送液後の上記デバイスをホットプレート上にセットし、66℃で25分間、反応させた。これにより、アレルプローブ及びインベーダオリゴによる標的核酸の認識、FEN-1によるアレルプローブの切断、放出されたアレルプローブ断片のFRET カセットへの結合、FEN-1によるFRET カセットの切断が進行し、蛍光シグナルが発せられた。この反応過程の模式図を図5に示す。
(蛍光強度測定)
反応液1を収容したデバイス1を、66℃で25分間加熱した後、蛍光顕微鏡(BZ-700、KEYENCE社)で4倍の対物レンズ、蛍光フィルター(励起:607mn/70nm、ダイクロイックミラー:665nm、蛍光:700nm/75nm)を用いて、露光時間を2秒間に設定し、デバイスにおける各ウェルの蛍光シグナル画像を撮影した。結果を図6に示す。
同様に、反応液2、反応液3を用いた以外は同様にして、取得した蛍光シグナル画像をそれぞれ、図7、図8に示す。
各反応液の蛍光強度の測定結果を図9~11に示す。図9は、反応液1の蛍光強度の測定結果であり、図10は、反応液2の蛍光強度の測定結果であり、図11は、反応液3の蛍光強度の測定結果である。
図9中、蛍光強度が3000~12000のものはノイズ(N)であり、蛍光強度が15000~45000のものは蛍光シグナル(S)であると判定した。
図10中、蛍光強度が1500~9000のものはノイズ(N)であり、蛍光強度が12000~42000のものは蛍光シグナル(S)であると判定した。
図11中、蛍光強度が1000~3000のものはノイズ(N)であり、蛍光強度が30000~12000のものは蛍光シグナル(S)であると判定した。
上述の判定基準に従って、ノイズ(N)及び蛍光シグナル(S)について、平均値、標準偏差を算出した。また、S/N値(すなわち、Sの平均値をNの平均値で除したもの)及びS-N値(すなわち、Sの平均値とNの平均値との差)を算出した。結果を表3に示す。S/N値のグラフを図12に示し、S-N値を図13に示す。
Figure 2024000309000005
FRETカセット4-1、4-2、4-3のうち、4-1を用いた場合に、S/N値及びS-N値はいずれも最も高かった。
ATTO643に対しては、消光物質としてBHQ-3が推奨されている。しかしながら、上述したように、予想外にも、BHQ-2は、BHQ-3よりも、S/N値及びS-N値が高かった。したがって、ノイズとシグナルとをより正確に判別する観点から、蛍光物質としてATTO643を用いる場合には、消光物質としてBHQ-2を用いる方がより好ましいことが示された。
[実験例2]
(蛍光基質の検討)
蛍光物質が塩基に結合している蛍光基質と、蛍光物質が塩基以外の部分に結合している蛍光基質を用いてICAを行い、反応性を比較した。
下記表4及び表5に示す核酸断片を用いてICAを行った。表4中の標的核酸(配列番号17)は検出対象となる核酸である。本実験例のICAでは標的核酸中の小文字で示したg(グアニン)の存在を検出する。フラッププローブ(配列番号18)及び侵入プローブ(配列番号19)は、それぞれ、標的核酸(配列番号17)に相補的な塩基配列を有している。
標的核酸(配列番号17)に、フラッププローブ(配列番号18)及び侵入プローブ(配列番号19)がそれぞれハイブリダイズすると、三重鎖構造が形成される。ここで、フラッププローブ(配列番号18)の小文字部分「5’-cgcgccgaggc-3’」(配列番号20)は塩基対形成せず、フラップ部位を形成する。
フラップエンドヌクレアーゼは、上記三重鎖構造を認識して、フラッププローブ(配列番号18)を切断し、核酸断片(配列番号20)が切り出される。
Figure 2024000309000006
Figure 2024000309000007
蛍光基質は、上述のFRETカセットに対応する。上記表5に示す蛍光基質1(配列番号21)は、蛍光物質が塩基に結合している蛍光基質であり、具体的には下記式(5)のような構造を有する。蛍光基質1におけるFはフルオレセインを表し、QはBHQ(登録商標)-1を表す。
Figure 2024000309000008
上記表5に示す蛍光基質2(配列番号22)は、蛍光物質が塩基以外の部分に結合している蛍光基質であり、具体的には下記式(6)のような構造を有する。蛍光基質2におけるFはフルオレセインを表し、QはBHQ(登録商標)-1を表す。
Figure 2024000309000009
蛍光基質1又は蛍光基質2に、切り出された核酸断片(配列番号20)がハイブリダイズした場合、上記表5において、蛍光基質1又は蛍光基質2の太文字で表すT(チミン)残基は三重鎖構造を形成し、フラップエンドヌクレアーゼの基質となり、切断される。その結果、蛍光物質が消光物質から離れて、励起光の照射により蛍光シグナルが検出される。
まず、下記表6に示す組成で反応溶液を調製し微量試験チューブに入れた。続いて、チューブをリアルタイムPCR装置にセットし、66℃で60分間加熱したときの蛍光強度変化(励起波長490nm、蛍光波長520nm)を経時的に測定した。また、比較のために、標的核酸の代わりに滅菌水を添加した反応溶液を調製し、同様の測定を行った。
Figure 2024000309000010
図14Aは、蛍光基質1を用いた場合の蛍光強度変化を測定した結果を示すグラフである。また、図14Bは、蛍光基質2を用いた場合の蛍光強度変化を測定した結果を示すグラフである。図14A及び図14B中、横軸は反応開始からの経過時間(秒)を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。
その結果、蛍光物質が塩基以外の部分に結合している蛍光基質2を用いた方が、ICAの反応性が高いことが明らかとなった。
本発明によれば、解析対象分子の存在下で、蛍光物質及び消光物質を有する蛍光プローブから発せられる蛍光強度がより高められる検出方法を提供することができる。この検出方法は、ICAを用いたデジタル計測に好適に用いられる。
100…標的核酸、101…塩基、110…フラッププローブ、120…侵入プローブ、130…第1の三重鎖構造、140,170…フラップ部位(核酸断片)、141…領域、150…核酸断片、151…ミスマッチ部位、160…第2の三重鎖構造、F…蛍光物質、Q…消光物質。

Claims (9)

  1. 蛍光物質と消光物質と基体本体とを有する基体から蛍光を検出するための方法であって、
    前記基体における前記蛍光物質と前記消光物質とを離間させることにより、前記蛍光物質から蛍光を発光させる工程を含み、
    前記蛍光物質は、前記消光物質の空間的近傍にある場合に、前記蛍光物質からの蛍光発光は、前記消光物質により抑制されており、
    前記消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、前記蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して短波長側である、方法。
  2. 前記蛍光物質から蛍光発光させる工程は、標的物質の存在下で行われる。請求項1に記載の方法。
  3. 前記消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、前記蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長に対して50~100nm短い、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記基体本体は核酸である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記蛍光物質の発光スペクトルのピーク波長は、600~700nmであり、
    前記消光物質の吸収スペクトルのピーク波長は、550~640nmである、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 前記蛍光物質から蛍光発光させる工程において、核酸切断酵素の作用により、前記基体における前記蛍光物質と前記消光物質とが離間される、請求項4に記載の方法。
  7. 前記蛍光物質から蛍光発光させる工程は、微小空間内で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
  8. 前記標的物質は、核酸である、請求項2に記載の方法。
  9. 更に、前記蛍光を蛍光顕微鏡で観察する、請求項1又は2に記載の方法。
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