JP2023554048A - モノテルペンエステルの発酵生産のための酵素及び方法 - Google Patents

モノテルペンエステルの発酵生産のための酵素及び方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、好ましくは36時間、24時間、18時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、より好ましくは微生物細胞において、三級モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能なアルコールアシルトランスフェラーゼに関する。本発明はさらに、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列又はその相補的配列を含む核酸及び本発明の核酸を含むベクター又は遺伝子コンストラクトに関する。本発明により、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトを含む宿主細胞及び本発明の核酸を含むトランスジェニック非ヒト生物、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト又は本発明の宿主細胞がさらに提供される。本発明は、モノテルペンエステルを調製するための方法にも関し、この方法は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でモノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することを含む。具体的には、これは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でリナロールを酢酸リナリルへとエステル化することを含む、酢酸リナリルを調製するための方法を提供する。本発明はさらに、(i)テルペン生合成経路の異種再構成のための;(ii)工業製品、好ましくは香味料又は香料、バイオ燃料、燃料組成物、燃料化合物、例えばディーゼル燃料組成物のための発泡剤、駆除剤、昆虫忌避剤又は抗菌剤を生産するための;(iII)モノテルペンアルコールから、好ましくは三級モノテルペンアルコールから脂肪族及び/又は芳香族モノテルペンエステルを生成させるための;(iv)微生物においてモノテルペンアルコールを解毒し、それにより前記微生物でのモノテルペン産生を増加させるための;(v)GPPシンターゼ及び/又はS-又はR-リナロールシンターゼと組み合わせた;(vi)モノテルペンアルコールと比較した場合、疎水性酢酸分配が有機相により容易に行くことにおいてアセチル化の有益な効果を向上させるための;(vii)酢酸モノテルペンとモノテルペンアルコールとの比が5:1若しくは10:1より大きくなるように本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼを発現させるための又は(viii)モノテルペンエステルのための微生物産生系における、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞又は本発明のトランスジェニック非ヒト生物の使用に関する。本発明はまた、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞又は本発明のトランスジェニック非ヒト生物及び任意選択的に少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールを含むキットも提供する。最終的に、本発明は、燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物の作製のための方法に関し、この方法は、a)本発明の方法の何れか1つにより1つ以上のモノテルペンエステルを作製し;b)任意選択的に、段階a)で作製される1つ以上のモノテルペンエステルを精製し;及びc)段階a)の1つ以上のモノテルペンエステル又は段階b)の精製された1つ以上のモノテルペンエステルの一部又は全てを、好ましくは:テトラヒドロリナロール;2,6-ジメチルオクタン(DMO);飽和C20炭化水素二量体;飽和C30炭化水素三量体;水素付加メチルシクロペンタジエン二量体;発射体推進に適切な飽和高密度多環式炭化水素化合物;及びバイオ潤滑剤添加物を生産するのに適切な水素付加C40+オリゴマーからなる群から選択される1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物に変換し;d)任意選択的に1つ以上の燃料又はバイオ潤滑剤化合物を燃料及び/又はバイオ潤滑剤に適切なさらなる化合物と組み合わせる段階を含み;この燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物は、合計で、0.01%(w/w)~99.99%(w/w)の燃料又はバイオ潤滑剤化合物が本発明の方法の1つにより得ることが可能な1つ以上のモノテルペンエステルから生産される。【選択図】なし

Description

本発明は、好ましくは36時間、24時間、18時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、より好ましくは微生物細胞において、三級モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能であるアルコールアシルトランスフェラーゼに関する。本発明はさらに、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ又はその相補的配列をコードする核酸配列を含む核酸及び本発明の核酸を含むベクター又は遺伝子コンストラクトに関する。本発明によって、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクトを含む宿主細胞及び本発明の核酸、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト、又は本発明の宿主細胞を含むトランスジェニック非ヒト生物がさらに提供される。本発明は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でモノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することを含む、モノテルペンエステルを調製するための方法にも関する。具体的に、これは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でリナロールを酢酸リナリルへとエステル化することを含む、酢酸リナリルを調製するための方法を提供する。本発明はさらに、(i)テルペン生合成経路の異種再構成のための;(ii)工業製品、好ましくは香味料又は香料、バイオ燃料、燃料組成物、燃料化合物、例えばディーゼル燃料組成物のための発泡剤、駆除剤、昆虫忌避剤又は抗菌剤を作製するための;(iii)モノテルペンアルコールから、好ましくは三級モノテルペンアルコールからの脂肪族及び/又は芳香族モノテルペンエステルを作製するための;(iv)微生物においてモノテルペンアルコールを解毒し、それにより前記微生物におけるモノテルペン産生を増加させるための;(v)GPPシンターゼ及び/又はS-又はR-リナロールシンターゼと組み合わせた;(vi)モノテルペンアルコールと比較した場合、疎水性酢酸分配がより容易に有機相に行くことにおけるアセチル化の有益な効果を向上させるための;(vii)酢酸モノテルペンのモノテルペンアルコールに対する比が5:1又は10:1より大きくなるように本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼを発現させるための、又は(viii)モノテルペンエステルのための微生物産生系における、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞又は本発明のトランスジェニック非ヒト生物の使用に関する。本発明はまた、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞又は本発明のトランスジェニック非ヒト生物及び任意選択的に少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールを含むキットも提供する。最終的に、本発明は、燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物の作製のための方法に関し、この方法は、a)本発明の方法の何れか1つによって1つ以上のモノテルペンエステルを作製し;b)任意選択的に、段階a)で作製される1つ以上のモノテルペンエステルを精製し;及びc)段階a)の1つ以上のモノテルペンエステル又は段階b)の任意選択的に精製された1つ以上のモノテルペンエステルの一部又は全てを、好ましくは:テトラヒドロリナロール;2,6-ジメチルオクタン(DMO);飽和C20炭化水素二量体;飽和C30炭化水素三量体;水素付加メチルシクロペンタジエン二量体;発射体推進に適切な飽和高密度多環式炭化水素化合物;及びバイオ潤滑剤添加物を作製するのに適切な水素付加C40+オリゴマーからなる群から選択される1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物に変換し;d)任意選択的に、1つ以上の燃料又はバイオ潤滑剤化合物を燃料及び/又はバイオ潤滑剤に適切なさらなる化合物と組み合わせる段階を含み;燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物は、合計で0.01%(w/w)~99.99%(w/w)の、本発明の方法のうち1つにより得ることができる1つ以上のモノテルペンエステルから作製される燃料又はバイオ潤滑剤化合物を有する。
過去数十年の間、全ての生きている生物における最も大量にある二次代謝物、テルペンに焦点を当てた集中的な科学研究が行われてきた。55,000種類を超えるテルペノイド物質は、全ての生物界で見出される天然産物の様々なファミリーの間に広く分布している。
多くのテルペノイドは一般に、あらゆる生物の成長、発生又は再生に第一に必須なものではないので、二次代謝物である。しかし、この分類は、生態系の機能を維持するこれらの二次代謝物の広いさらなる効果に広がっていない。これらの物質は、重要な役割を果たし、匂いなどのそれらの別個の化学感受性特性に関して進化的な長所を有する植物を提供し得る。従って、とりわけこれらは、植物及び穀物を寄生虫及び病原体から保護する殺虫効果を発揮し得るか、又は生殖過程において花粉媒介者誘引物質として作用し得る。
多くのテルペノイドは、薬物、香味料、香料、顔料及び消毒薬の生産における基本構造部分として広く使用されているというその経済的重要性についてよく知られている。例えば、ローズウッド、アニバ・ロサエオドラ(Aniba rosaeodora)の主要な精油の成分であるモノテルペンアルコールリナロールは、とりわけ香水の生産において最も頻繁に使用される成分である。さらに、セスキテルペンラクトン、アルテミシニンは、低木アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)から抽出され、マラリアの第1選択治療において使用される。太平洋イチイ、タキサス・ブレビフォリア(Taxus brevifolia)の樹皮から単離される三環式ジテルペンであるタキソール及びその構造類似体は、抗癌剤として使用される。
テルペンは主に、一般的な生合成経路を介して植物において合成される。それらの多様な構造及び機能にかかわらず、全てのテルペンは、イソプレン規則に従い、イソプレン単位(5個の炭素原子)から構築される。頭尾付加を通じて連結されるそれらの構造中のイソプレン単位の数に従って、それぞれそれらの炭素原子又はセスキテルペノイド部分の数に従い、テルペンが分類される:モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、トリテルペン(C30)又は最大30,000個の連結されるイソプレン単位を有するポリテルペン。テルペンと同様に、テルペノイドは、イソプレン単位の数に従い同様に分類され、これらは、モノテルペノイド(C10)におけるか又はセスキテルペノイド(C15)におけるように構成され、接尾語-oids(~のようなもの)を伴いさらに名付けられる。
イソペンチルジホスフェート(IPP)及びその求電子異性体、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)は、テルペンの生合成において普遍的な前駆体である。これらの2つの構成要素から開始して、プレニルトランスフェラーゼに属する酵素の群により直鎖状プレニル二リン酸が合成される。IPP及びDMAPPは、プレニルトランスフェラーゼゲラニルジホスフェートシンターゼの触媒効果により縮合されて、モノテルペンの群に相当する環状又は直鎖状最終産物に変換され得る中間体である、C10ゲラニルジホスフェート(GPP)を与える。
同様に、セスキテルペンは、一般的なセスキテルペンの生合成的な前駆体であるC15ファルネシルジホスフェート(FPP)を形成するGPPへの第3のイソプレン単位の付加を介して生成される。IPP及びDMAPPのさらなる重合化によって、含有されるイソプレン単位の数に従い名付けられる異なるクラスのテルペンを形成するより長いプレニル二リン酸が生成される。
IPP及びDMAPP生合成は、2つの独立した経路:メバロン酸(MVA)経路及び2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸(MEP)経路を介して完遂される。MVA経路は、テルペンの合成における普遍的経路とみなされたものの、過去10年の間に、MEP 経路よりも植物二次代謝物において顕著なものではないことが分かった。MVAは、殆どの真核生物、古細菌、数種類の真正細菌並びに植物の細胞質及びミトコンドリアにおいて主要なものであり、細胞質内で、セスキテルペン(C15)及びトリテルペン(C30)などの多重類似体に対する前駆体を生成させる。一方で、MEP経路は、より高等な植物、藍藻、真正細菌及び藻類の葉緑体における主要経路である。色素体におけるその生合成の位置により、MEPは、モノテルペン(C10)、ジテルペン(C20)及びカロテノイド(C40)に至る。
メバロナート経路、イソプレノイド経路又は3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)レダクターゼ経路としても知られるメバロン酸経路(MVA)経路は、1950年代に酵母及び動物において発見された。MVA 経路は、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ酵素の触媒作用を通じた、アセトアセチルCoAを形成させるための2個のアセチルCoA分子のクライゼン縮合で開始する。アセトアセチルCoAは、別のアセチルCoAとのアルドール反応を介して、HMGシンターゼによりHMG-CoAへと変換される。次の2つの還元段階において、HMG-CoAレダクターゼを用いてHMG-CoAをメバロン酸(MVA)に変換するために、2個のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート分子が必要とされる。続くMVAのリン酸化は、それぞれメバロン酸キナーゼ(MK)及びホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)により触媒される2つの反応を介して、メバロン酸5-二リン酸(MVAPP)を与える。最後に、メバロン酸5-二リン酸デカルボキシラーゼ(MVD)により触媒されるATP共役脱炭酸反応によって、MVAPPの脱炭酸からIPPが生成される。IPP:DMAPPイソメラーゼ(IDI)は次にIPPとDMAPPとの間の相互変換を触媒する。
メチルエリスリトールリン酸経路(MEP)又はMVA非依存経路は、1990年代後半及び2000年代初期に、Rohmer、Arigoniらによって細菌及び緑藻及び高等植物の葉緑体において発見された。この経路は、2つの異なる前駆体、即ちピルビン酸及びD-グリセルアルデヒド3-リン酸(G3P)で開始する。両分子は、補因子としてチアミンピロリン酸を使用して、1-デオキシ-D-キシルロース5-ホスフェートシンターゼ(DXS)により触媒される縮合を受け、1-デオキシ-D-キシルロース5-ホスフェート(DXP)が生じる。次の段階において、DXPは、DXPレダクトイソメラーゼ(DXR)によってMEPに異性化される。4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトール(CDP-ME)シンターゼは、結果的に、MEPとシチジン三リン酸(CTP)との間のカップリングを触媒してメチルエリスリトールシチジル二リン酸(CDP-ME)を生成させる。ATP依存性の反応において、CDP-MEキナーゼは、CDP-MEを4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトール-2-ホスフェート(CDP-MEP)へとリン酸化する。その後に、後者は、MEcPPシンターゼにより触媒される反応において2-C-メチル-D-エリスリトール-2,4-シクロジホスフェート(MEcPP)への環化を受け、シチジン一リン酸(CMP)を放出する。この経路は、環状ピロリン酸の開環及びHMBPPシンターゼにより触媒されるMEcPPから4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル-ジホスフェート(HMBPP)への還元的脱水により終了する。HMBPPは最終的に、IPP及びDMAPPの混合物へとHMBPPレダクターゼにより変換される。
近年、植物起源由来のテルペンに対する代替物を提供するために、モノテルペン、セスキテルペン及びそれらのアルコールを含む多くのテルペンが微生物系において生産されてきた。殆どの市販のテルペンは、化学合成によるか又は植物材料からの抽出によって生産される。植物起源は、低濃度、収穫依存性、駆除剤の存在及び/又は植物種の絶滅リスクという欠点があることが多い。テルペンのバイオテクノロジー生産は、持続可能で、経済的に実行可能な、植物起源に対する代替物を提供し得る。このようなバイオテクノロジー生産方法の例は、バレンセン、アルテミシン酸及びスクラレオールを含む。
多くのテルペンは、微生物バイオテクノロジーにより生産され得る。酢酸エチルなどのエステルは、クリベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)などの酵母により生産され得る。これらの酵母は、エタノール及びアセチルCoAを酢酸エチルに変換するためにα/βヒドロラーゼファミリーからのEATタンパク質を使用する(例えば、Kruis et al.,(2019)Microbial production of short and medium chain esters:Enzymes,pathways,and applications.Biotechnology Advances,37(7),107407)。より複雑な分子におけるこれらのEATタンパク質の活性はそれほど詳細には調べられていない。
微生物におけるモノテルペンエステルの生産も明らかにされている。ゲラニオールがE.コリ(E.coli)において産生されたとき、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が酢酸ゲラニルの形成に介在したことが観察された(Liu et al.Biotechnol Biofuels(2016)9:58)。より特異的な酵素の使用は、長所をもたらすことが示されている:多くの植物の花の匂いにおいて見出される非環式モノテルペンであるゲラニオールだけでなくリナロールなどのモノテルペンアルコールが微生物に対して毒性である一方で、それらのエステルは毒性がかなり低いことが多い。モノテルペンアルコールの毒性は、成長及び/又は生産において抑制を導くことが多く、従って、非常に低い生産タイターしか達成されていない。Chacon et al.は、ゲラニオールを産生するように改変されたE.コリ(E.coli)におけるRhAATの発現が、RhAATなしで産生されるゲラニオールレベルと比較して実質的に上昇したレベルでの酢酸ゲラニルの形成につながることを示した(Chacon,M.G.,et al.Esterification of geraniol as a strategy for increasing product titre and specificity in engineered Escherichia coli.Microb Cell Fact 18,105(2019);https://doi.org/10.1186/s12934-019-1130-0;国際公開第2019/092388号パンフレット)。その理由のために、ゲラニオールなどのモノテルペンアルコールのインシトゥエステル化は、生成物を解毒し、従ってテルペン生産を向上させるための手段として促進されてきた。
植物において、エステルは、アルコールをアシル-CoAにカップリングするタンパク質のBAHDファミリーからのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)を使用することによって産生される。BAHDアシルトランスフェラーゼスーパーファミリーは、植物におけるこのファミリーの最初の4つの生化学的に特徴付けられる酵素:ベンジルアルコールO-アセチルトランスフェラーゼ(BEAT)、アントシアニンO-ヒドロキシ-シンナモイルトランスフェラーゼ(AHCT)、アントラニラートN-ヒドロキシ-シンナモイル/ベンゾイルトランスフェラーゼ(HCBT)及びデアセチルビンドリン4-O-アセチルトランスフェラーゼ(DAT)、に従い名付けられた。BAHDファミリーのメンバーは、2つの保存的なモチーフ:触媒に関与するHxxxDモチーフ及び役割が依然として不明であるDFGWGモチーフを共有する(Bayer A et al.(2004)Bioorg Med Chem 12,2787-2795)。
アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の周知の例は、一般的に、オクタノール、ヘキサノール又はイソアミルアルコールなどの脂肪族アルコールから果実エステルを産生するイチゴ及びバナナなどの果実由来のAATを含む(Aharoni et al.,2000 Identification of the SAAT gene.Plant Cell.2000 May;12(5):647-62.doi:10.1105/tpc.12.5.647.;Beekwilder et al.,(2004)Functional characterization of enzymes forming volatile esters from strawberry and banana.Plant Physiol.2004 135(4):1865-78.doi:10.1104/pp.104.042580)。
アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)はまた、より複雑な分子のエステル化にも介在する:例えば、一連の少なくとも17の酵素的段階の一部として、サルタリジノール7-O-アセチルトランスフェラーゼは、基質として複雑なイソキノリンアルカロイドを使用するモルヒネ生合成における段階に介在する(Grothe et al.,2001,DOI 10.1074/jbc.M102688200)。アセチル-CoA:デアセチルビンドリン4-O-アセチルトランスフェラーゼは、ビンドリン、インドールアルカロイドの生合成における最終段階を触媒する。
モノテルペンアルコールは、アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)に対する基質としても使用され得る。例えば、バラ(ロサ・ハイブリダ)からのRhAATは、酢酸ゲラニル形成に介在する(Shalit et al.,Volatile ester formation in roses.Identification of an acetyl-coenzyme A.Geraniol/Citronellol acetyltransferase in developing rose petals.Plant Physiol.2003 Apr;131(4):1868-76.doi:10.1104/pp.102.018572)。ラバンデュラ属(Lavandula)由来のAATは、酢酸ラバンズリル形成に介在することが記載されている(Sarker & Mahmoud(2015)Cloning and functional characterization of two monoterpene acetyltransferases from glandular trichomes of L.x intermedia.Planta 242,709-719)。
バラAAT(RhAAT)とそれだけでなく多くの他のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(例えばイチゴAAT SAAT)も、あまり選択的ではなく、フェニルエタノール、シンナモイルアルコール、ヘキサノール、イソアミルアルコール及びより長鎖のアルコールを含む一連のアルコール基質を受容する。しかし、リナロールは、これらの酵素の受容される基質ではない。これらのAATに対してそれを非基質として定めるリナロールの例外的な特性は、三級アルコールとしてみなされ得るリナロールにおけるアルコール基の位置により生じ得:アクセプターアルコール基が連結される炭素が、3個の炭素基に結合される。三級アルコールは、おそらくアルコール基の立体的な接近性のために、酵素活性部位ポケットにより接近することが困難であることが多い。
酢酸リナリル(CAS番号115-95-7)は、一般的にはリナロールから形成されるアセチルエステルである。今までのところ、酢酸リナリルは化学的に作製され、酢酸リナリルを作製するための発酵による大規模工程はまだ報告されておらず;例えばhttps://de.wikipedia.org/wiki/Linalylacetatを参照されたい。酢酸リナリルは、重要な香味及び香料分子である。しかし、経済的に意義のある量でリナロール又は他の三級モノテルペンアルコールをエステル化することが可能なアルコールアシルトランスフェラーゼはまだ同定されていない。最近の研究において、ニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana)において一過性に発現された場合、コモンタイム(タイムス・ブルガリス(Thymus vulgaris))からのBAHDアシルトランスフェラーゼについて、リナロールにおける微量の活性が報告されている(博士論文”Die Biosynthese von acetylierten Monoterpenen in Thymian(Thymus vulgaris)”by Natalie Wiese,June 2020;https://opendata.uni-halle.de/handle/1981185920/34248)。しかし、非常に特異的な実験設定における酢酸リナリルの少量の副生産を伴うこのような微量の活性は、工業スケールでの生体触媒又はバイオテクノロジー生産では、一般的な条件下で消失し得るか、又は大規模産生のために単純に不適であり得るか又はこのような使用に対しては非経済的であり得る。
結果的に、経済的に意義のある量で三級モノテルペンアルコール、例えばリナロールをエステル化することが可能であるアルコールアシルトランスフェラーゼがないことから、生体触媒によるか又はバイオテクノロジー的アプローチによる酢酸リナリルの生産が妨げられる。
従って、本発明の基礎にある技術的問題は、上述のニーズに適合する手段及び方法の提供であると考えられ得る。技術的問題は、特許請求の範囲、本明細書中以下及び実施例で特徴付けられる実施形態によって解決される。
本発明は、次のものからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアルコールアシルトランスフェラーゼに関する:
a)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号15又は配列番号16の配列の何れか1つで示されるようなアミノ酸配列;
b)アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号15又は配列番号16とアミノ酸レベルで少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及び
c)アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、a)又はb)のアミノ酸配列の断片。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、天然の酵素であり得る。別の実施形態では、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、合成(人工又は非天然と交換可能に使用される)酵素である。
一実施形態では、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、本明細書中で定められるように、好ましくは36時間以内に、より好ましくは微生物細胞において、モノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールをエステル化して、前記アルコールの少なくとも30質量%がエステル化されるようにすることが可能である。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、本明細書中で定められるように、36時間、24時間、18時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、微生物細胞内で、モノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールをエステル化して、前記アルコールの少なくとも30質量%がエステル化されるようにすることが可能である。
好ましい実施形態では、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、アミノ酸レベルで、配列番号2と少なくとも少なくとも(at least at least)89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はさらに100%の配列同一性を有するか、又は配列番号3、配列番号4、配列番号15又は配列番号16と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はさらに100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、酵素活性があるアルコールアシルトランスフェラーゼである。
発明者らは、アルコールアシルトランスフェラーゼの他の候補配列とともに配列番号2の配列を分析し、さらに配列番号2の重要な位置での重要なアミノ酸のタイプを決定するために、配列番号6及び8(不活性変異体)に対する実験結果を使用した。例えば、配列番号2の位置371はグリシン残基であることが分かった。対照的に、その不活性変異体AT9-1-a(配列番号6)の位置371は、トリプトファンで埋められる。配列番号2及び配列番号6が99.77%の同一性を共有するものの、位置371でのトリプトファンによるグリシン残基の置換の結果、アルコールアシルトランスフェラーゼの不活性化が起こる。さらに、Sarker et al.(Planta(2015)242:p.709-719)による刊行物において記載されるL.x インテルメディア(L.x intermedia)の腺毛状突起からのモノテルペンアセチルトランスフェラーゼLiAAT-3及びLi-AAT4は、配列番号2の位置371に対応する位置でトリプトファンを有する。
従って、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは好ましくは、配列番号2の位置371及び372に対応する位置で、トリプトファン、チロシン又はフェニルアラニンではない、より好ましくはトリプトファンではない、アミノ酸残基を有する。配列番号2の指示される位置371及び372は好ましくは、配列リスト又は図1を参照する。
一実施形態では、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、表1で示される配列番号2の位置に対応する位置で、表1の第1のカラムで与えられる位置に対して表1で挙げられるアミノ酸の何れかをさらに含む。例えば、これに限定されないが、配列番号2の位置62に対応する位置は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼにおいてセリン又はスレオニンの何れかで埋められる。
例を提供するために、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、アミノ酸レベルで配列番号2と60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素活性があるアルコールアシルトランスフェラーゼであり得、配列番号2の位置62に対応する位置はセリンであり、配列番号2の位置113に対応する位置はグリシンであり、配列番号2の位置158に対応する位置はスレオニンであり、配列番号2の位置371に対応する位置はグリシンであり、配列番号2の位置372に対応する位置はロイシンであり、配列番号2の位置415に対応する位置はアスパラギン酸である。
好ましい実施形態では、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、表2で示される配列番号2の位置に対応する位置で、表2で挙げられるアミノ酸を含む。例えば、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼにおいて配列番号2のアミノ酸位置197に対応する位置は、プロリンで埋められる。
またさらに好ましい実施形態では、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、図5で示される保存的なアミノ酸残基、即ち黒い背景に白文字で示されるアミノ酸残基をさらに含む。
さらに、実施例4は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)における、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の相同体の同定を示す。
一態様では、本発明の前記アルコールアシルトランスフェラーゼは、アミノ酸レベルで、配列番号15又は16と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はさらに100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む酵素活性があるアルコールアシルトランスフェラーゼである合成アルコールアシルトランスフェラーゼである。別の態様では、この合成アルコールアシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、連続アミノ酸残基メチオニン、グルタミン酸、イソロイシン及びグルタミン酸を伴う「MEIE」モチーフを含む。さらなる態様では、前記合成アミノ酸配列は、図5で示される保存的アミノ酸残基、即ち黒い背景に白文字で示されるアミノ酸残基をさらに含む。
本発明のまた別の実施形態は、
a)配列番号3(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-10056)又は配列番号4(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-1461)の配列で示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号3(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-10056)又は配列番号4(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-1461)とアミノ酸レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及び
c)酵素活性があるa)又はb)のアミノ酸配列の断片
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアルコールアシルトランスフェラーゼに対する。
好ましい実施形態は、リナロールアシルトランスフェラーゼに関し、このリナロールアシルトランスフェラーゼは、配列番号3及び4のアミノ酸配列を除き、本明細書中で上で定められるようなアルコールアシルトランスフェラーゼであり、リナロールをリナロールエステル、好ましくは酢酸リナリルへとエステル化することが可能である。
本明細書に対して言及されるような配列同一性は好ましくは、対応する配列番号により示されるアミノ酸配列の全長にわたり決定される。
配列番号2は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-1-c)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号3は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(内部名称「10056」)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号4は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(内部名称「1461」)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号15は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ(内部名称「10056a」)の人工アミノ酸配列に対応する。
配列番号16は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ(内部名称「1461a」の人工アミノ酸配列に対応する。
これらの酵素のクローニング及び機能的な特徴付けを次の実施例で示す。
指示される最小パーセンテージの配列同一性を有する本発明のこのようなアルコールアシルトランスフェラーゼは、本明細書中で定められるようなアルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有し、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の例えば相同体、変異体、誘導体又はペプチド模倣物であり得る。指示される最小パーセンテージ配列同一性を有する本発明のこのようなアルコールアシルトランスフェラーゼの同定、クローニング及び機能的特徴付けのための方法は、当技術分野で公知であり、本明細書中の他の箇所並びに続く実施例で記載する。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)は、本明細書中で定められるようなアシルトランスフェラーゼ活性を有する。
「微生物細胞」は、本明細書中の他の箇所で定められる。好ましくは、微生物細胞は、E.コリ(E.coli)細胞である。
好ましい三級モノテルペンアルコールは、リナロール、アルファテルピネオール、ガンマテルピネオール、p-シメン-8-オール、p-メント-3-エン-1-オール、p-メント-8-エン-1-オール、4-カルボメントール及び/又は4‐ツヤノールを含むが限定されず;例えば、Marnett et al.2014,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1750-3841.12407を参照されたい。
好ましくは、三級モノテルペンアルコールは、リナロール及びアルファテルピネオールを含む。つまり、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは有利に、当技術分野に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼと比較して、リナロール及びアルファテルピネオールの両方をエステル化することが可能である。
例えば、リナロールが本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼによりエステル化される場合、酢酸リナリルが産生される。アルファテルピネオールが本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼによりエステル化される場合、アルファ酢酸テルピニルが作製される。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、好ましくは36時間、24時間、18時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、三級モノテルペンアルコールリナロールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールリナロールが酢酸リナリルへとエステル化されるようにすることが可能である。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、好ましくは36時間、24時間、18時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、三級モノテルペンアルコールアルファテルピネオールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールアルファテルピネオールがアルファ酢酸テルピニルへとエステル化されるようにすることが可能である。より好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、好ましくは36時間、24時間、18時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、三級モノテルペンアルコールリナロールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールリナロールが酢酸リナリルへとエステル化されるようにすることが可能であり、さらに三級モノテルペンアルコールアルファテルピネオールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールアルファテルピネオールがアルファ酢酸テルピニルへとエステル化されるようにすることが可能である。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、指定される好ましい時間内に、細菌細胞又は真菌細胞などの微生物細胞において、三級モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能である。例えば、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、実施例で示されるように細菌において異種発現される場合、三級モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能である。より好ましくは、細菌は、グラム陰性細菌であり、さらにより好ましくは細菌は、エシェリキア属(genus Escherichia)(例えばE.コリ(E.coli))又はロドバクター属(Rhodobacter)(例えばロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)又はロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus))の細菌である。
好ましくは、少なくとも40質量%、50質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、78質量%、80質量%、90質量%又はさらに100%の前記三級モノテルペンアルコール、例えばリナロール及び/又はアルファテルピネオールが、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼによってエステル化される。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼにより産生されるモノテルペンエステルの含量の決定のために、当技術分野で公知であるガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)、ガスクロマトグラフィー-質量選択検出器(GC-MSD)、高速液体クロマトグラフィー-蒸発光散乱検出器(HPLC-ELSD)、高速液体クロマトグラフィー-示差屈折率検出器(HPLC-RID)、高速液体クロマトグラフィー-可変波長検出器(HPLC-VWD)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)、核磁気共鳴(NMR)、テルモグラビメトリック(termogravimetric)分析(TGA)及び赤外分光法(IR)などのいくつかの役立つ技術を使用し得;例えばJiang et al,Curr Protoc Plant Biol.2016;1:345-358.doi:10.1002/cppb.20024による概説を参照されたい。好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼにより産生されるモノテルペンエステルの含量の決定のために、さらなる特徴付けのためのNMRとともに、GC-FID及びGC-MSDが使用される。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼはまた、三級モノテルペンアルコールに加えて、一級及び/又は二級モノテルペンアルコールをエステル化することも可能であり得る。モノテルペンアルコールは、本明細書中、以下で定められる。例えば、(i)本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、一級及び二級及び三級モノテルペンアルコールをエステル化することが可能であるか、(ii)本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、一級及び三級モノテルペンアルコールをエステル化することが可能であるか、又は(iii)本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、二級及び三級モノテルペンアルコールをエステル化することが可能である。一級アルコールは、例えばゲラニオール、シトロネロール、ラバンデュロール、ペリリルアルコール又はチモールを含み;二級アルコールは、例えばボルネオール、イソボルネオール、フェンコール、ベルベノール、カルベオール又はメントールを含む。
有利に、発明者らは、モノテルペンアルコールリナロール又はアルファテルピネオールにおいて存在するものなどの三級アルコールを基質として受容するシトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)から単離される新規アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)を同定し得た。具体的に、変異体AAT9-1-c(配列番号2)により例示されるような本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼが発現された場合、リナロールが酢酸リナリルに変換された。これは、実施例2及び図3において示される。おそらく三級アルコールがアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の酵素活性部位ポケットにより接近することが困難であることが多いがゆえに、先行技術で記載されるアルコールアシルトランスフェラーゼ酵素の中では基質としてリナロールを使用することが分かっているものはないという観点において、この知見は予想され得なかった。発明者らが知る限り、唯一の報告されている例外は、ニコチアナ・ベンサミアーナ(Nicotiana benthamiana)において一過性に発現された場合に副活性としてリナロールに対する非常に低い触媒活性を示した、コモンタイム(タイムス・ブルガリス(Thymus vulgaris))からのアシルトランスフェラーゼである(Natalie Wieseによる博士論文“Die Biosynthese von acetylierten Monoterpenen in Thymian(Thymus vulgaris)”,June 2020;https://opendata.uni-halle.de/handle/1981185920/34248;http://dx.doi.org/10.25673/34053)。この酵素を以下でさらに論じる。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼがリナロールにおいて活性であることが確立されているので、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は対照としての空のベクターpACYCDUET-1を発現する宿主細胞の存在下で、一連のモノテルペンアルコール及びセスキテルペンアルコールを試験した。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの活性は、驚くべきことに、三級モノテルペンアルコールアルファテルピネオールでも観察された。さらに、一級モノテルペンアルコールゲラニオール及び二級モノテルペンアルコールベルベノールは、基質として受容されており、対応するエステルが観察され得た。対照的に、セスキテルペンアルコールネロリドール、パチョロール、(-)-アルファ-ビサボロール及びセドロールは、それらの対応するエステルへの変換が観察されなかった。
別の試験において、Larkov et al.(Phytochemistry 69(2008),p.2565-2571)は、オレガノ属(Origanum)、メンタ属(Mentha)及びサルビア属(Salvia)の種属における、エンタンチオ選択的な(entantioselective)モノテルペンアルコールアセチル化を記載する。
AAT9-1-c(配列番号2)により例示されるような本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、モノテルペンアルコール特異的なアシルトランスフェラーゼであると思われる:これは、基質として、モノテルペン中に存在する一級、二級及び三級アルコールを受容するが、セスキテルペンアルコールネロリドール、パチョロール、(-)-アルファ-ビサボロール及びセドロールは受容しない。
一実施形態では、モノテルペンアルコールは、リナロール、ゲラニオール、アルファテルピネオール、ガンマテルピネオール、ラバンデュロール、フェンコール、ペリリルアルコール、メントール又はベルベノール、好ましくはリナロール、アルファテルピネオール又はペリリルアルコール、より好ましくはリナロール又はアルファテルピネオールである。
有利に、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、経済的に意義のある量で、三級モノテルペンアルコール、例えばリナロール及びアルファテルピネオールをエステル化することが可能であり、従って、工業スケールで、モノテルペンエステル、例えば酢酸リナリル及びアルファ酢酸テルピニルを生産することが可能になる。
本発明は、基質が限定されていない条件下で、30℃にて、及び6.0~8.5の範囲のpH、好ましくは、pH7.0前後のpH値で、少なくとも50μg、好ましくは少なくとも100μg、より好ましくは少なくとも500μg、さらにより好ましくは少なくとも1000μg、またさらにより好ましくは少なくとも1500μg及び最も好ましくは少なくとも2000μgのモノテルペンエステル、好ましくは三級モノテルペンアルコールからのモノテルペンエステル/分及びアルコールアシルトランスフェラーゼ/gを産生可能である、アルコールアシルトランスフェラーゼに関する。基質は、本明細書中で定められるような、アシル-CoA及びモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールである。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、少なくとも60μM、好ましくは少なくとも100μMの、リナロールに対するKm値を有する。
より有利には、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、ゲラニオールを上回って好ましくはリナロール及び/又はアルファテルピネオールをエステル化することが可能であり、これは、ゲラニオール以外のモノテルペンアルコール及び好ましくは三級モノテルペンアルコールが、本発明の酵素の好ましい基質であることを意味する。本発明の酵素は好ましくは、ゲラニオールに対してよりも、リナオール(linaool)及び/又はアルファテルピネオールに対してより高い親和性を有する。
故に本発明はさらに、ゲラニオールに対する同じ酵素の特異的な活性よりも少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍又は少なくとも1000倍高い、少なくとも1つの三級モノテルペンアルコール、好ましくはリナロール及び/又はアルファテルピネオールに対する特異的な活性を有するアルコールアシルトランスフェラーゼに関する。好ましくは、リナロールに対する本発明の酵素の特異的活性は、少なくとも0.01μmol、0.05μmol、0.1μmol、0.5μmol、1.0μmol、2.0μmol、3.0μmol、4.0μmol、5.0μmol、10μmol、50μmol又は100μmol/ナノグラム酵素及び/時間である。
これは、ニコチアナ・ベンサミアーナ(Nicotiana benthamiana)において一過性発現されたときに、立体障害ゆえに三級モノテルペンアルコールをエステル化することが全く可能ではないか又はコモンタイム(タイムス・ブルガリス(Thymus vulgaris))からのTvAAT3と名付けられるBAHDアシルトランスフェラーゼとして三級モノテルペンアルコールリナロールにおいてほんの僅かしか活性を示さないかの何れかである、当技術分野で記載されるアルコールアシルトランスフェラーゼとの比較におけるものである(Natalie Wieseによる博士論文“Die Biosynthese von acetylierten Monoterpenen in Thymian(Thymus vulgaris”,June 2020;https://opendata.uni-halle.de/handle/1981185920/34248)。著者自身、この特定の一過性発現系において、リナロールについてBAHDアシルトランスフェラーゼTvAAT3の「検出可能であるが、非常に低い触媒活性」に言及している。実際に、リナロールの10%未満しか変換されなかったため、リナロールの変換は非常に低かった。この著者は、E.コリ(E.coli)においてTvAAT3を著者が発現させた場合にリナロールの変換を全く見出し得なかったので、ニコチアナ・ベンサミアーナ(Nicotiana benthamiana)における推定される酢酸リナリルを生成させるためにさらなる酵素の作用が必要とされると仮定しており;言及される博士論文の73頁第2段落を参照されたい。さらに、この特異的な一過性発現系でのリナロールにおけるこの非常に低い触媒活性は、GC-MS(質量及び保持指数)によってしか確認されておらず、正式な構造割り当てを行って酢酸リナリルの存在を確認してはいない。上で示されるように、BAHDアシルトランスフェラーゼTvAAT3は、E.コリ(E.coli)で発現された場合、リナロールにおいて活性を示さなかったが(Natalie Wieseによる博士論文のセクション3.4.2、51頁、最後の文)、これは本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼとは反対であり;実施例2を参照されたい。さらに、アルファテルピネオールは、E.コリ(E.coli)でも(Natalie Wieseによる博士論文のセクション3.4.2、51頁、最後の文)ニコチアナ(Nicotiana)でも(Natalie Wieseによる博士論文のセクション3.4.3、53頁、最後の段落)、BAHDアシルトランスフェラーゼTvAAT3によってエステル化され得なかった。TvAAT3(Natalie Wiese,loc.citによる博士論文)と本願のAAT9-1-c(配列番号2)との間のアミノ酸配列同一性は37.2%である。
報告されたBAHDアシルトランスフェラーゼTvAAT3とは対照的に、本発明の新規アルコールアシルトランスフェラーゼは、インビトロ及びインビボで三級モノテルペンアルコールに関してより高い親和性、活性及び代謝回転数改善を示し、E.コリ(E.coli)及びロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)などであるが限定されない、大規模工業生産に適している宿主細胞又は非ヒト生物においてモノテルペンエステルを生成させる。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)は、当技術分野で記載されているアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)と比較すると、モノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールに関しては、改善されたアルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有する。
好ましくは、モノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールに関する前記アルコールアシルトランスフェラーゼ活性は、同一の試験条件下で、前記モノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールに関して、当技術分野で公知のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)のアルコールアシルトランスフェラーゼ活性よりも、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍又はさらに少なくとも10倍高い。
より好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、同一の試験条件下で、既知のアルコールアシルトランスフェラーゼによる前記三級モノテルペンの代謝回転数よりも少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍又はさらに少なくとも10倍高い三級モノテルペンアルコールに対する代謝回転数を有する。
好ましくは、代謝回転数は、酵素代謝回転数、kcatがインビボで推定されることを意味するインビボ代謝回転数であり;例えば、Heckmann et al.,PNAS September 15,2020 117(37)23182-23190;https://doi.org/10.1073/pnas.2001562117を参照されたい。
好ましくは、三級モノテルペンアルコールは、リナロール又はアルファテルペニオール又はリナロール及びアルファテルピネオールである。
好ましくは、当技術分野で公知のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)は、TvAAT3と名付けられるコモンタイム(タイムス・ブルガリス(Thymus vulgaris))からのBAHDアシルトランスフェラーゼであり(Natalie Wieseによる博士論文“Die Biosynthese von acetylierten Monoterpenen in Thymian(Thymus vulgaris)”,June 2020;https://opendata.uni-halle.de/handle/1981185920/34248)、比較されたアルコールアシルトランスフェラーゼ活性は、同一の試験条件下での三級モノテルペンアルコールリナロールに対するものである。
本発明の新規アルコールアシルトランスフェラーゼは、実施例で示されるように、モノテルペンエステルの生産のために、特にモノテルペンエステルが三級モノテルペンアルコール由来である場合、特に有用である。例えば、これらは、酢酸リナリル又は本明細書中で指示される他のモノテルペンエステルの生産のために使用され得る。
特徴付けられるタンパク質のSWISSPROTデータベースに対する変異体AAT9-1-c配列(配列番号2)のBLASTP分析から、最も近縁の特徴付けられるタンパク質がビノリンシンターゼファミリーのメンバーであることが明らかになった;実施例4参照。リナロールなどの三級モノテルペンアルコールをエステル化することが可能な本発明のこの新規アルコールアシルトランスフェラーゼ酵素が、非常に複雑なフェノール物質、例えばサルタリジノールにおいて作用するアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)のファミリーと最も近縁であることは予想し得なかった。発明者らは、ラバンデュラ属(Lavandula)においても、ベルガモットにおけるように、ビノリンシンターゼファミリーのメンバーがリナロールアセチルトランスフェラーゼに対する候補であると判断した。実際に、これらは、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)においてアルコールアシルトランスフェラーゼ相同体を同定することが可能であり、そのアミノ酸配列が配列番号3(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-10056)及び配列番号4(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-1461)で示される;実施例4を参照されたい。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、基質としてセスキテルペンアルコールよりもモノテルペンアルコールを好んでいる。例えば、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの活性は、モノテルペンアルコールゲラニオール、アルファテルピネオール及びベルベノールにおいて見出され、対応するエステルが観察され得た。対照的に、セスキテルペンアルコールネロリドール、パチョロール、(-)-アルファ-ビサボロール及びセドロールは、本発明の酵素によってそれらの対応するエステルに変換されることは観察されなかった。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、他のセスキテルペンアルコールにおいて活性を示すが、基質としてセスキテルペンアルコールよりも依然としてモノテルペンアルコールを好むと想定される。同様に、候補には、例えばネロリドール、パチョロール、ビサボロール、ゲルマクレンD-オール、ヘディカリオール、サンタロール、クベボールが含まれる。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、実施例1で示されるように、当業者にとって周知の化学合成又は組み換え分子生物学的技術により製造され得る。これは、宿主細胞又は上清からの本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの単離に対して、変更すべきことは変更して適用され;例えば、Sambrook et al.,Molecular cloning:a laboratory manual/Sambrook,Joseph;Russell,David W.--.3rd ed.--New York:Cold Spring Harbor Laboratory,2001;Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)を参照されたい。
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、単数及び複数の両方の参照物を含む。例として、「1つの一級モノテルペンアルコール」は、1つ又は複数の一級モノテルペンアルコールを指し、「1つの二級モノテルペンアルコール」は、1つ又は複数の二級モノテルペンアルコールを指し、「1つの三級モノテルペンアルコール」は、1つ又は複数の三級モノテルペンアルコールを指し、又は「1つの細胞」は、1つ又は複数の細胞を指す。
本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、言及される項目、数、パーセンテージ又は用語の値を定量する場合、言及される項目、数、パーセンテージ又は用語の値のプラスマイナス10パーセント、9パーセント、8パーセント、7パーセント、6パーセント、5パーセント、4パーセント、3パーセント、2パーセント又は1パーセントの範囲を指す。プラスマイナス10パーセントの範囲が好ましい。
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又は無制限であり、追加の、列挙されていない部材、要素又は方法の段階を除外しない。明らかに、「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語を包含する。より具体的には、「含む(comprise)」という用語は、本明細書中で使用される場合、請求は、列挙される要素又は方法の段階全てを包含するが、さらなる不特定の要素又は方法の段階も含み得ることを意味する。例えば、段階a)、b)及びc)を含む方法は、最も狭い意味で、段階a)、b)及びc)からなる方法を包含する。「からなる(consisting of)」という句は、本組成物(又は装置又は方法)が引用される要素(又は段階)を有し、それ以外のものはないことを意味する。対照的に、「含む(comprises)」という用語は、さらなる段階、例えば段階a)、b)及びc)に加えて段階d)及びe)を含む方法も包含し得る。
念のため、数値範囲は、「1~5マイクロモル濃度の濃度」など、本明細書中で使用され、その範囲は、1及び5マイクロモル濃度だけでなく、1~5マイクロモル濃度の間のあらゆる数値、例えば2、3及び4マイクロモル濃度をも含む。
「インビトロ」という用語は、本明細書中で使用される場合、動物又はヒトの体の外側又は外部を指す。「インビトロ」という用語は、本明細書中で使用される場合、「エクスビボ」を含むことが理解されるべきである。「エクスビボ」という用語は、一般的には、動物又はヒトの体から取り出され、例えば培養容器中で体外で維持されるか又は増殖させられる組織又は細胞を指す。「インビボ」という用語は、本明細書中で使用される場合、動物又はヒトの体の内側又は内部を指す。
「アルコールアシルトランスフェラーゼ」(AAT)という用語は、本明細書中で使用される場合、アルコールO-アセチルトランスフェラーゼを意味する。アルコールO-アセチルトランスフェラーゼは、アセチル-CoA+アルコール=CoA+アセチルエステルの反応を触媒する。つまり、前記酵素は、アシル-CoAをアルコールに転移させるエステル化段階を触媒する(例えばEC2.3.1.84参照)。従って、「アルコールアシルトランスフェラーゼ活性」という用語は、本明細書中で使用される場合、アシル-CoAをアルコール基に転移させるエステル化段階を触媒することを意味する。アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)は、異なるアルコール及びアシル-CoAを合わせることが可能であり、その結果、果実から発せられるモノテルペンエステルを含む多岐にわたるエステルが合成される。アルコールアシルトランスフェラーゼは、エステル生合成において重要な役割を果たす。揮発性エステルの多様性は、異なる特異的な基質選択性を伴うアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の多様性から生じる(Lucchetta et al.,(2007)J Agric Food Chem 55,5213-5220;D’Auria JC(2006),Curr Opin Plant Biol 9,331-340)。
当業者にとって周知であるように、酵素は、それらの基質に結合し、基質を生成物へと変換する。基質濃度に対する初期反応速度のプロットは、直角双曲線を示す。反応速度(v)は、ミカエリス-メンテンの式により述べられるような(Vmax[A])/(Km+[A])に等しく、ここでVmaxは最大速度であり、[A]は基質濃度であり、Kmは、ミカエリス定数又は半最大速度での基質濃度である。基質に対するKm値、酵素に対するVmax値及び薬物を含む様々な阻害剤に対するKi値を決定するために定常状態酵素動態が使用される。
酵素の「代謝回転数」(kcat又は触媒速度定数)は、いくつかの異なる基質から異なる生成物への、生成物に変換される基質の最大分子数/活性部位/単位時間である。様々な基質のkcat/Km値又は特異性定数を比較し得る。最大値を有する基質は酵素に対する最良の基質であり、特異性定数という名称を説明する。何れの反応の速度も、反応物質分子が衝突する速度により制限される。生体分子反応に対する拡散制限速度は、10~10-1-1である。kcat/Kmの比は、一次速度定数である。kcat/Km及び基質濃度(亜飽和レベルで)の積は、酵素触媒反応の速度をもたらす。この比は、基質濃度に比例し、従って一次で指定される。10~10-1-1付近(拡散速度により可能となる最大値に近い)のkcat/Kmの比を有する酵素は、完全触媒を達成している。例えば、解糖系経路の酵素であるトリオースホスフェートイソメラーゼ(EC5.3.1.1)は、この特性を有する酵素である。しかし、殆どの酵素は、この値を下回る特異性定数のオーダーを有する。酵素の代謝回転数を決定するための方法は、当技術分野で周知であり;例えばhttps://doi.org/10.1016/B978-0-12-801238-3.05143-6又はHeckmann et al.,PNAS September 15,2020 117(37)23182-23190;https://doi.org/10.1073/pnas.2001562117を参照。
「リナロールアセチルトランスフェラーゼ」という用語は、本明細書中で使用される場合、アセチル-CoA+リナロール=CoA+酢酸リナリルの反応を触媒するアルコールO-アセチルトランスフェラーゼを意味する。
本明細書中で定められるようなアルコールアシルトランスフェラーゼの活性を決定するための試験は、文献において周知である(例えば、Chacon,M.G.,et al.Esterification of geraniol as a strategy for increasing product titre and specificity in engineered Escherichia coli.Microb Cell Fact 18,105(2019);https://doi.org/10.1186/s12934-019-1130-0;国際公開第2019/092388号パンフレット;Aharoni et al.,Identification of the SAAT gene.Plant Cell.2000 May;12(5):647-62.doi:10.1105/tpc.12.5.647.;Beekwilder et al.,(2004)Functional characterization of enzymes forming volatile esters from strawberry and banana.Plant Physiol.2004 135(4):1865-78.doi:10.1104/pp.104.042580;(Shalit et al.,Volatile ester formation in roses.Identification of an acetyl-coenzyme A.Geraniol/Citronellol acetyltransferase in developing rose petals.Plant Physiol.2003 Apr;131(4):1868-76.doi:10.1104/pp.102.018572;Sarker & Mahmoud(2015)Cloning and functional characterization of two monoterpene acetyltransferases from glandular trichomes of L.x intermedia.Planta 242,709-719を参照)。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの活性を決定するための適切な試験も実施例2で示す。
定義によれば、「テルペン」という用語は、炭素及び水素から構成される炭化水素のみを含む。対照的に、「テルペノイド」という用語は、アルコール、アルデヒド、ケトン及び酸などの誘導体を生じさせる、さらなる官能基を含有するテルペンを指し;例えばFlavours and Fragrances:Chemistry,Bioprocessing and Sustainability RG Berger;Black et al.,Terpenoids and their role in wine flavour: recent advances.Australian Journal of Grape and Wine Research 21,582-600,2015;Zhou & Pichersky,More is better:the diversity of terpene metabolism in plants.Current Opinion in Plant Biology 2020,55:1-10;Degenhardt J,Kollner TG,Gershenzon J(2009)Monoterpene and sesquiterpene synthases and the origin of terpene skeletal diversity in plants.Phytochemistry 70(15):1621-1637を参照)。科学文献において、テルペンという用語は、異なる意味を有するものの、テルペノイドという用語と交換可能に使用されることが多い。本明細書中で使用される場合、「テルペン」という用語は、炭化水素及びそれらの官能性誘導体の両方を含む。
「モノテルペン」は、本明細書中で使用される場合、植物中の二次代謝物及び精油の主な成分であり;例えば、DH Grayson.Monoterpenoids.Nat Prod Rep 1996 Jun;13(3):195-225.doi:10.1039/np9961300195を参照されたい。それにより、これらは、植物の特異的な匂いの特徴に寄与する。モノテルペンは、その親油性、低分子量及び揮発性を特徴とする。植物組織において、これらは、主に、油腺、腺毛及び葉の毛状突起において貯蔵される。本明細書中の他所で言及されるように、C10ゲラニルジホスフェート(GPP)は、加水分解、環化及び酸化還元を含む一連の連続反応を含むモノテルペンの形成における直接的な前駆体である。
モノテルペンには2種類の主要なタイプ:非環式(又は直鎖状)及び単環式又は二環式であり得る環式がある。シス-アルファ-オシメン及びベータ-ミルセンなどの非環式モノテルペンは、2,6-ジメチルオクタン誘導体である。リモネン及びシメンのような典型的な単環式モノテルペンは、主に、可変の二重結合部分を一般的には含有する、イソプロピル置換基を有するシクロヘキサン誘導体である。アルファ-ピネン及びベータ-ピネンは、一方で、二環式モノテルペンの一般的なタイプである。
モノテルペン構造の酸化又は再編成は、所謂モノテルペノイドを生成させる生化学的修飾である。これらは、アルデヒド、ケトン、エステル又はアルコールベース構造を持つ物質につながるさらなる官能基を保持し得る。
殆どの二次代謝物のように、モノテルペンは、植物の進化に重大である。とりわけ、これらは、見返りとしてこれらの草食動物の天敵を誘引するモノテルペン放出を介した草食動物、細菌及び真菌に対する植物の防御において、植物における生態学的な役割を果たす。さらに、これらは、花粉媒介者誘引物質又は他感作用剤として作用する場合、植物とそれらの環境との間の相互作用に介在する。
芳香植物において、イソプレン及び特にモノテルペンは、それらの植物に対する熱耐性を提供し得る。従って、これらのテルペンを分泌する植物は、非テルペン放出植物よりも、日光の短い高温期間に対する優れた耐性を持ち得る。それにより、これらの放出植物は、非放出植物と比較して、高い光合成速度を維持する。揮発されたモノテルペンはさらに、大気からの酸化剤との反応能力ゆえに、酸化ダメージから植物を保護し得る。モノテルペンは、含油樹脂においても見られる。ジテルペン樹脂酸及びセスキテルペンと一緒に、これらは、化学的及び物理的防御化合物として作用する。植物により合成されるこの複雑な混合物は、中毒及びクエンチング(quenching)を介して昆虫を追い払う。さらに、これらは、一時的な堅牢な層を形成することによって、植物の損傷を治癒させる。
モノテルペンは、香味料、香料及び化粧料の成分として工業的に使用される。香料及び芳香剤は、食品及び飲料の、並びにボディーケア及び他の衛生製品の最終的な品質を促進する重要な添加物として使用される。しかし、最近、天然由来の製品への需要が高まっている。従って、これらの製品の感覚的アピールを向上させ得る天然の香味化合物の価値が高まり、その人工的同等物よりも高価になった。植物起源の精油及びそれらのモノテルペン成分は、工業で使用される香味料及び香料の主要な供給源である。化粧料中で使用される第1の既知の植物の1つは、ペパーミント植物又はメンタ・ピペリタ(Mentha piperita)であり、これは、その主要な精油の成分としてメントールを含有する。これは主にその抗ストレス、緊張緩和及び冷却効果のために適用される。最も有名な単環式モノテルペンの1つであるメントールは、洗口剤、石鹸、歯磨きペースト及び他の清浄処方物において使用される。別の周知の非環式モノテルペンアルコールであるリナロールは、とりわけ、香水及び家庭用洗浄剤において添加される一般的に使用される成分である。これは、その柑橘系の爽やかで甘い匂いのために、加工食品及び飲料において香味促進剤として適用される。非環式モノテルペンアルデヒドであるシトラールは、レモン油の主要な匂い物質である。爽やかさ及び清潔感の主観的印象に強く連結されるその柑橘系及びレモン様の匂いのため、シトラールは家庭用製品でも広く使用される。ターペンタインで見出される2つの二環式モノテルペンであるアルファ-及びベータ-ピネンは、工業製品の匂いを改善するために使用される香料物質である。さらに、これらは、シトロネロール、ゲラニオール、メントール及びベルベノールなどのいくつかの香味化合物の前駆体である。
精油の芳香ゆえに精油の使用は主に食品の香味料、化粧料及び香料と関連しているが、研究から、ヒト疾患を治癒させ、予防するための揮発性モノテルペン成分の使用の高い可能性が明らかである。天然モノテルペン及びそれらの合成誘導体は、その様々な薬理学的効果に関して繰り返し記載されてきた:研究から、モノテルペンが抗菌、抗炎症、鎮痙、鎮痛及び麻酔効果を有することが示された。さらに、この数年間、いくつかのモノテルペンが、潜在的な化学療法剤であることが示されている。それらの中で、単環式モノテルペンリモネンは、肝臓、皮膚及び肺癌などのいくつかのタイプの癌の発生を阻害することが分かった。レモングラス中で見出されるゲラニオール、モノテルペンアルコールは、肝細胞腫、白血病及び結腸癌細胞の増殖を阻害することが明らかになった。モノテルペンはまた、その血管拡張及び血圧低下効果のため、心血管系疾患の予防及び処置においても試験されてきた。カルバクロール、リモネン、シトロネロール、ミルテノール及びリナロールは、これらの中でも、ヒト及び動物の両方でインビボ及びインビトロ心血管系効果を示すモノテルペンである。それとは別に、チモール及びテルピネオールのような他のモノテルペノイドは、強力な抗酸化及びフリーラジカル除去活性を発揮した。モノテルペンは、抗炎症性であり、いくつかの呼吸器障害に良い影響を与えることも示されている。特に、1,8-シネオール及びメントールは、気管支肺障害を緩和するための最も効果的な化合物の1つである。最近の研究から、リナロール及び酢酸リナリルの両方が、抗炎症性化合物として、全身投与の後、カラギーナン誘発性の肢浮腫ラットモデルにおいて浮腫を軽減することが可能であったことが示された。
本明細書中の他の箇所で言及されるように、モノテルペンは、有効な抗微生物剤である。具体的に、チモール又はメントールなどのいくつかのモノテルペノイドは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)などのいくつかのグラム陽性細菌及びエシェリキア・コリ(Escherichia coli)などのグラム陰性細菌に対して効果的である。他のモノテルペン、即ちゲラニオール及びシトラールは、通常肺又は中枢神経系に感染するクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)と呼ばれるヒト真菌病原体に対する抗真菌活性を発揮する。さらに、シトラールは、抗真菌剤であるだけでなく、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染性を低下させることが可能でもあり、従って顕著な抗HSV活性も示す。
「モノテルペンアルコール」は、本明細書中で使用される場合、官能基としてアルコール基を含むモノテルペン(C10)を意味する。モノテルペンアルコールは、当技術分野で詳細に記載されている;例えば、DH Grayson.Monoterpenoids.Nat Prod Rep 1996 Jun;13(3):195-225.doi:10.1039/np9961300195を参照。定義によれば、一級アルコールは、ヒドロキシル基が一級炭素原子に結合しているアルコールである。これは、「-CHOH」基を含有する分子としても定義され得る。対照的に、二級アルコールは、式「-CHROH」を有し、三級アルコールは、式「-CROH」(式中、「R」は炭素含有基を示す)を有する。
モノテルペン中に存在する一級アルコールは、本明細書中で「一級モノテルペンアルコール」と呼ぶ:アクセプターアルコール基が連結される炭素が、1個の炭素基に結合する。モノテルペン中に存在する一級アルコールは、例えば、ゲラニオール、シトロネロール及びラバンデュロールである。
モノテルペン中に存在する二級アルコールは、本明細書中で「二級モノテルペンアルコール」と呼ばれ:アクセプターアルコール基が連結される炭素が、2個の炭素基に結合させられる。モノテルペン中に存在する二級アルコールは、例えばボルネオール、イソボルネオール、フェンコール、ベルベノール、カルベオール及びメントールである。
モノテルペン中に存在する三級アルコールは、本明細書中で「三級モノテルペンアルコール」と呼ばれる:アクセプターアルコール基が連結される炭素が、3個の炭素基に結合させられる。モノテルペン中に存在する三級アルコールは、例えば、S-リナロール、R-リナロール、アルファテルピネオール、ガンマテルピネオール、フェンコール、p-シメン-8-オール、p-メント-3-エン-1-オール、p-メント-8-エン-1-オール、4-カルボメントール、及び4‐ツヤノールであり;例えば、doi:10.1111/1750-3841.12407を参照されたい。
文献において時折言及される非環式モノテルペンアルコール又はモノテルペノールは、可変の二重結合部分及びヒドロキシル官能基を含有する2,6-ジメチルオクタン誘導体である。このクラスの最も重要な物質は、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール及びジヒドロミルセノールである。これらは、心地よい嗅覚的特性のため、古代から香料中で使用される。
定義によれば、エステルは、少なくとも1つの-OH(ヒドロキシル)基が-O-アルキル(アルコキシ)基により置き換えられる酸(有機又は無機)由来の化学的化合物である。
「モノテルペンエステル」は、本明細書中で使用される場合、モノテルペンアルコールからのエステルを意味する。この用語は、本明細書中で定められるような、一級モノテルペンアルコール、二級モノテルペンアルコール又は三級モノテルペンアルコールからのエステルを含む。好ましくは、「モノテルペンエステル」という用語は、本明細書中で使用される場合、「モノテルペンアセチルエステル」である。別段の指示がない限り、前記用語は本明細書中で交換可能に使用される。
「セスキテルペンアルコール」は、本明細書中で使用される場合、官能基としてアルコール基を含むセスキテルペン(C15)を意味する。セスキテルペンアルコールは当技術分野で周知であり;例えばFraga 2012,Natural sesquiterpenoids.Nat.Prod.Rep.,2013,30,1226を参照。
モノテルペンにおける一級、二級及び三級アルコールの定義は、変更すべきところは変更して、セスキテルペンアルコールに対して適用される。
「セスキテルペンエステル」は、本明細書中で使用される場合、セスキテルペンアルコールからのエステルを意味する。この用語は、本明細書中で定められるような、一級セスキテルペンアルコール、二級セスキテルペンアルコール又は三級セスキテルペンアルコールからのエステルを意味する。
「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「(ポリ)ペプチド」又は「ペプチド」という用語(全ての用語は、別段指示されない場合、交換可能に使用される)は、本明細書中で使用される場合、他の宿主細胞ポリペプチドを基本的に含まない単離及び/又は精製及び/又は組み換え(ポリ)ペプチドを包含する。「ペプチド」という用語は、本明細書中で指す場合、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300又はさらにより多くのアミノ酸残基を含み、ある1つのアミノ酸残基のアルファカルボキシル基は、別のアミノ酸残基のアルファアミノ基に結合される。本明細書中で使用され、想定されるようなタンパク質又はペプチドの翻訳後修飾は、新たに形成されるタンパク質又はペプチドの修飾であり、ある特定のアミノ酸への、アミノ酸の欠失、置換又は付加、ある特定のアミノ酸の化学的修飾、例えばアミド化、アセチル化、リン酸化、グリコシル化、ピログルタミン酸の形成、メチオニンにおけるスルファ基の酸化/還元又は類似の低分子の付加を含み得る。
「相同体」は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの細菌、真菌、植物又は動物相同体、好ましくは植物相同体を意味するが、コード及び非コードDNA配列の短縮配列、単鎖DNA又はRNAも含む。
実施例4で明らかにされるように、発明者らは、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)においてアルコールアシルトランスフェラーゼ相同体を同定することが可能であり、そのアミノ酸配列は、配列番号3(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-10056)及び配列番号4(ラバンデュラ属(Lavandula)AAT-1461)で示される。
配列同一性、相同性又は類似性は、本明細書中で、これらの配列を比較することにより決定した場合の、2つ以上のアミノ酸配列又は2つ以上の核酸配列間の関係として定義される。通常、配列同一性又は類似性は、配列の全長にわたり比較されるが、また互いとの配列の整列の一部に対してのみ比較され得る。好ましくは、配列同一性又は類似性は、本明細書中で、配列の全長にわたり比較される。当技術分野において、「同一性」又は「類似性」は、場合によっては、このような配列間の一致により決定した場合の、ポリペプチド配列又は核酸配列間の配列の関連性の度合いも意味する。
配列アライメントは、次のものなどのいくつかのソフトウェアツールを用いて生成され得る:
-Needleman及びWunschアルゴリズム-Needleman,Saul B.&Wunsch,Christian D.(1970)。“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins”.Journal of Molecular Biology 48(3):443-453。
このアルゴリズムは、例えば、2つの配列の網羅的なアライメントを行う「NEEDLE」プログラムに組み込まれる。NEEDLEプログラムは、例えばEuropean Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS)内に含有される。
-EMBOSS-様々なプログラムの一群:The European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS),Trends in Genetics 16(6),276(2000)。
-BLOSUM(BLOcks SUbstitution Matrix)-一般的に例えばタンパク質ドメインの保存的領域のアライメントに基づいて生成される(Henikoff S,Henikoff JG:Amino acid substitution matrices from protein blocks.Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA.1992 Nov 15;89(22):10915-9)。多くのBLOSUMのうち1つは、「BLOSUM62」であり、これは、タンパク質配列をアラインする際、しばしば多くのプログラムに対する「デフォルト」設定である。
-BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)-大きな配列データベースにおいて類似の配列について検索するために主に使用されるいくつかの個々のプログラム(BlastP、BlastN)からなる。BLASTプログラムは、局所アライメントも作成する。改良バージョン(「BLAST2」)である、NCBI(National Center for Biotechnology Information)により提供される「BLAST」インターフェースが通常は使用される。「元の」BLAST:Altschul,S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W. & Lipman,D.J.(1990)“Basic local alignment search tool.”J.Mol.Biol.215:403-410;BLAST2:Altschul,Stephen F.,Thomas L.Madden,Alejandro A.Schaffer,Jinghui Zhang,Zheng Zhang,Webb Miller, and David J.Lipman(1997),“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402。
配列同一性は、本明細書中で使用される場、好ましくは、EMBOSSペアワイズアライメントアルゴリズム「Needle」により決定される場合の値である。特に、「最長の同一性」を計算するNOBRIEFオプション(‘Brief identity and similarity’to NO)を使用して、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムを使用し得る(バージョン2.8.0以降、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite-Rice,P.,et al.Trends in Genetics(2000)16:276-277;http://emboss.bioinformatics.nl)。アラインされた2つの配列間の同一性、相同性又は類似性は次のように計算される:両配列において同一のアミノ酸を示すアライメントにおける対応する位置の数を、アライメントにおけるギャップの総数の減算後のアライメントの全長により除する。アミノ酸配列のアライメントに対して、デフォルトパラメータは、マトリクス=Blosum62;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。核酸配列のアライメントに対して、デフォルトパラメータは、マトリクス=DNAfull;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。
例えば、酵素変異体は、配列番号2、15又は16で示されるアミノ酸配列を伴う本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼなどの親酵素と比較した場合のそれらの配列同一性により定義され得る。配列同一性は通常、「%配列同一性」又は「%同一性」として提供される。第1段階で2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定するために、これらの2つの配列間でペアワイズ配列アライメントを作成し、この2つの配列をそれらの完全、全体又は全長にわたりアラインする(即ち、ペアワイズ網羅的アライメント)。アライメントは、本明細書中に記載のプログラム又はソフトウェアを用いて生成される。本発明の目的のための好ましいアライメントは、最大配列同一性が決定され得るアライメントである。
本発明の特異的な配列に従うアミノ酸配列又は核酸に従うアルコールアシルトランスフェラーゼと前記酵素又は核酸の機能的相同体との間の食い違いは、特に、例えば分子進化若しくは合理的設計などの当業者にとって公知である生物学的技術によるか又は当技術分野で公知であり、本明細書中に他の箇所に記載の突然変異誘発技術を使用することによって、酵素又は核酸の特性を改善(例えば、酵素の発現上昇又は酵素の酵素活性の上昇)するために行われる修飾の結果であり得る(ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、定向進化、遺伝子組み換えなど)。
酵素の又は核酸の配列は、1つ以上の天然のバリエーションの結果として変更され得る。このような天然の修飾又はバリエーションの例は、グリコシル化の相違(より広義には、「翻訳後修飾」として定義される)、オルタナティブスプライシングによる相違及び一核酸多型(SNP)である。少なくとも1つのアミノ酸又は2、3、4、5、6又はさらにそれを超えるアミノ酸が異なるポリペプチドをコードするように核酸が修飾され得、これが1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を含むポリペプチドをコードするようになり、このポリペプチドは、本明細書中で定められるように、アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を依然として有する。さらに、例えば国際公開第2008/000632号パンフレットに記載のような又はDNA2.0,Geneart及びGenScriptのような商業的なDNA合成会社により提供されるような方法に基づき、人工遺伝子合成(合成DNA)、コドン最適化又はコドン対最適化が使用され得る。
酵素の配列又は核酸の配列は、遺伝子編集により改変され得る。遺伝子編集又はゲノム編集は、DNAが挿入される、置換される又はゲノムから除去される、及びDNAシャッフリングの反復とそれに続く、生物学的活性が修飾されているタンパク質をコードする核酸又はその一部の変異体を生成させるための適切なスクリーニング及び/又は選択からなる「遺伝子シャッフリング」又は「定向進化」などの様々な技術を使用すること(Castle et al.,(2004)Science 304(5674):1151-4;米国特許第5,811,238号明細書及び同第6,395,547号明細書)によって、又は「T-DNA活性化」タグ付加(Hayashi et al.Science(1992)1350-1353)(得られるトランスジェニック生物は、導入されるプロモーターに近い遺伝子の発現の修飾ゆえに優性の表現型を示す)によって、又は「TILLING」(Targeted Induced Local Lesions In Genomes)により得られ得る、遺伝子改変の一タイプであり、発現及び/又は活性が変更されたタンパク質をコードする核酸を作製し及び/又は同定するために有用な突然変異誘発技術を指す。TILLINGはまた、このような突然変異体バリアントを保有する生物の選択も可能にする。TILLINGのための方法は、当技術分野で周知である(McCallum et al.,(2000)Nat Biotechnol 18:455-457;Stemple(2004)Nat Rev Genet 5(2):145-50により概説)。別の技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas系及び改変されたメガヌクレアーゼ、例えば再改変ホーミングエンドヌクレアーゼのような人工的に改変されたヌクレアーゼを使用する(Esvelt,KM.;Wang,HH.(2013),Mol Syst Biol 9(1):641;Tan,WS.et al.(2012),Adv Genet 80:37-97;Puchta,H.;Fauser,F.(2013),Int.J.Dev.Biol 57:629-637)。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの誘導体は、アミノ酸配列から/アミノ酸配列への、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換により得られ得る、機能的、即ち酵素活性がある変異体を含む。修飾又は突然変異は、異なる1つによるアミノ酸残基の置換、アミノ酸残基の欠失又はアミノ酸残基の挿入であり得る。例えば、基質結合に関与するアミノ酸残基は、修飾され得るか又は突然変異させられ得る。修飾又は突然変異が導入されたアミノ酸配列は、配列番号2の野生型アミノ酸配列又は配列番号15若しくは16の人工アミノ酸配列と比較して、アルコールアシルトランスフェラーゼ活性が好ましくは改善されている、例えば上昇している。別の例を提供するために、修飾又は突然変異が導入されたアミノ酸配列は、基質特異性が変化したアルコールアシルトランスフェラーゼであり得、例えば、即ち、これは、好ましくはモノテルペンアルコールの特異的な異性体をエステル化するか、又はアルコールアシルトランスフェラーゼは、一級、二級及び/又は三級モノテルペンアルコールのエステル化に加えて、特異的なセスキテルペンアルコールをエステル化することが可能である。さらなる例を提供するために、修飾又は突然変異が導入されたアミノ酸配列は、アルコール、例えばコニフェリル又は2-フェニルエタノールのアセチル化を通じて、他の非テルペン化合物、例えばフェノール性化合物のエステル化が可能であるか又はテルペンのノル化合物を生成することが可能であるアルコールアシルトランスフェラーゼであり得る。
DNA及びそれらがコードするタンパク質は、新しい特性又は特性の変化を伴う変異タンパク質又は酵素を作製するための分子生物学において公知の様々な技術を使用して修飾され得る(例えば、本明細書中の他の箇所で引用しているSambrook;Ausubelを参照)。
ランダムPCR突然変異誘発は、例えば、Rice(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5467-5471において記載され、コンビナトリアル多重カセット突然変異誘発は、例えばCrameri(1995)Biotechniques 18:194-196で記載されている。
或いは、核酸、例えば遺伝子は、ランダム又は「確率的」断片化後に再構成され得、例えば米国特許第6,291,242号明細書;同第6,287,862号明細書;同第6,287,861号明細書;同第5,955,358号明細書;同第5,830,721号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,811,238号明細書;同第5,605,793号明細書を参照されたい。
或いは、エラープローンPCR、シャッフリング、部位特異的突然変異誘発、アセンブリPCR、セクシャルPCR突然変異誘発、インビボ突然変異誘発(ファージ支援型連続進化、インビボ連続進化)、カセット突然変異誘発、再帰的アンサンブル突然変異誘発、指数関数的アンサンブル突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、遺伝子リアセンブリ、遺伝子部位飽和突然変異誘発(GSSM)、合成ライゲーションリアセンブリ(SLR)、組み換え、再帰的配列組み換え、ホスホチオエート(phosphothioate)修飾DNA突然変異誘発、ウラシル含有鋳型突然変異誘発、ギャップドデュプレックス(gapped duplex)突然変異誘発、点ミスマッチ修飾突然変異誘発、修飾欠失宿主株突然変異誘発、化学的突然変異誘発、放射起源の突然変異誘発、欠失突然変異誘発、制限-選択突然変異誘発、制限-精製突然変異誘発、人工遺伝子合成、アンサンブル突然変異誘発、キメラ核酸マルチマー生成及び/又はこれらの組み合わせ及び他の方法によって、修飾、付加又は欠失が導入される。
或いは、「遺伝子部位飽和突然変異誘発」又は「GSSM」は、米国特許第6,171,820号明細書及び同第6,764,835号明細書で詳述されるような、ポリヌクレオチドに点突然変異を導入するために縮重オリゴヌクレオチドプライマーを使用する方法を含む。
或いは、合成ライゲーションリアセンブリ(SLR)は、例えば米国特許第6,537,776号明細書で開示されるような、オリゴヌクレオチド構成要素を非確率的に一緒に連結する方法を含む。或いは、目的に合わせられた複数部位コンビナトリアルアセンブリ(「TMSCA」)は、1つの反応において少なくとも2つの突然変異誘発非重複オリゴヌクレオチドプライマーを使用することによって複数部位での様々な突然変異の異なる組み合わせを有する複数の子孫ポリヌクレオチドを作製する方法である。前記方法は、例えば国際公開第2009/018449号パンフレットに記載されている。
「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「ペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼのペプチド模倣物を包含する。当技術分野で知られるように、ペプチド模倣物は、必須要素(ファーマコフォア)が3D空間で天然のペプチド又はタンパク質を模倣し、生物学的標的(酵素基質など)と相互作用する能力を保持し、同じ生物学的効果(例えばアルコールアシルトランスフェラーゼ活性)を生じさせる化合物であり、例えばVagner et al.2008,Current Opinion in Chemical Biology 12,Pages 292-296による概説を参照されたい。ペプチド模倣物は、天然ポリペプチドに付随するいくつかの問題、例えばタンパク質分解に対する安定性(生物学的活性の持続期間)及び乏しいバイオアベイラビリティを回避するために設計される。上述のような生物学的標的に対する選択制又は上述の生物学的活性などの生物学的活性の効力などのある特定の他の特性が実質的に改善され得ることが多い。
好ましくは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の前記相同体、変異体、誘導体又はペプチド模倣物は、配列番号2、15又は16の非修飾又は非突然変異アルコールアシルトランスフェラーゼアミノ酸配列のアルコールアシルトランスフェラーゼ活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又はさらに100%を有する。例を提供するために、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、三級モノテルペンアルコール(例えばリナロール)をエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能である。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の相同体、変異体、誘導体又はペプチド模倣物は、それが、少なくとも15質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるように前記三級モノテルペンアルコールをエステル化することが可能である場合、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼのアルコールアシルトランスフェラーゼ活性の50%を有する。前記相同体、変異体、誘導体又はペプチド模倣物は好ましくは、配列番号2、15又は16のアルコールアシルトランスフェラーゼの所望の基質特異性及び/又は基質の優先性も維持する。例えば、相同体、変異体、誘導体又はペプチド模倣物は、本明細書中の他の箇所で定義されるような、一級、二級及び/又は三級モノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールをエステル化することが可能である。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼによるエステル生合成に関与する分子機序を理解するために、及び特異的なアミノ酸残基の重要性を明らかにするために、比較モデリング法によってアルコールアシルトランスフェラーゼに対する構造モデルが構築され得る。その後、タンパク質といくつかのリガンド、アルコール及びアシル-CoAとの間の立体構造の相互作用を分子ドッキング及び分子ダイナミクスシミュレーションによって探索し得る。このような方法は、当技術分野で公知であり、記載されている(例えばGalaz et al.,FEBS Journal 280(2013)1344-1357を参照)。
好ましい実施形態では、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、融合タンパク質により含まれる。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、融合タンパク質でもあり得る。「融合タンパク質」という用語は、本明細書中で使用される場合、元来個別のタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子の連結を通じて作製されるキメラタンパク質(文字通り、異なる起源由来の部分から作られる)を示す。この融合遺伝子の翻訳の結果、起源のタンパク質のそれぞれに由来する機能的特性を有する単一又は複数ポリペプチドが得られる。例えば、本明細書中で定められるような融合タンパク質は、タンパク質精製のための親和性タグ(Hisタグ、FLAGタグなど、例えばKimple et al.,2015,Curr Protoc Protein Sci.;73:Unit-9.9.doi:10.1002/0471140864.ps0909s73を参照)又は検出のための標識を含み得る。本明細書中で言及されるような「標識」は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼなどの別の分子に直接又は間接的に複合化して、その分子の検出を促進する、検出可能な化合物又は組成物である。標識の特異的な非限定例としては、当技術分野で周知の、蛍光タグ、酵素連結及び放射活性同位体が挙げられる。一実施形態では、プロテアーゼ切断部位及び/又はリンカー(即ちプロテアーゼ切断部位;又はリンカー;又はプロテアーゼ切断部位及びリンカーの両方;又はリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含む)は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼと標識又は精製タグとの間に存在し得る。例えば、プロテアーゼ切断部位は、必要に応じてエンテロキナーゼ又はトロンビンなどのプロテアーゼでの処理により精製タグを切断するために使用され得る。例えば、Hisタグは、発現及び精製のためのタグとして使用され得、一方で本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼは、プロテアーゼでの切断後に単離され得る。当業者により周知のように、(可動性及び剛直なリンカーにおける場合)機能的ドメインを一緒に連結することにおける基本的役割以外に、リンカーは、生物学的活性の改善、発現量上昇及び所望の薬物動態学的プロファイルの達成など、融合タンパク質の生産のための多くの他の長所をもたらし得る。リンカーは、例えば、ポリグリシンリンカー又は当技術分野で公知の他のリンカーなどのタンパク質/ペプチドリンカーであり得る(例えばChen et al.,Adv Drug Deliv Rev.2013;65(10):1357-1369を参照)。明らかに、本リンカーは、プロテアーゼ切断部位をそれが含むように設計され得る。別の態様では、融合タンパク質は、本明細書中の他の箇所で説明されるような、発現されるポリペプチドを標的化するための、例えば特異的な小器官に対する、シグナルペプチドを保有し得る。
本明細書中で定められるような融合タンパク質は、当業者にとって周知の化学合成又は組み換え分子生物学技術により製造され得る。これは、変更すべきところは変更して、宿主細胞又は上清からの融合タンパク質の単離に適用され;例えばSambrook et al.,Molecular cloning:a laboratory manual/Sambrook,Joseph;Russell,David W.--.3rd ed.--New York:Cold Spring Harbor Laboratory,2001;Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)を参照。
本発明はまた、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼに特異的に結合する抗体にも関する。
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の抗原に応答して作製された、その抗原に特異的に結合する、免疫系により生成される分子を指し、天然の抗体及び非天然の抗体の両方を含む。「抗体」は、本明細書中で使用される場合、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼに特異的に結合する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、二量体又はマルチマー、キメラ化抗体、二特異性抗体、二特異性単鎖抗体、多特異性抗体、合成抗体、二機能性抗体、Ig受容体のような細胞結合型抗体、直鎖状抗体、ダイアボディ、ミニボディ又は前記抗体の何れかの断片を包含する。前記抗体の断片は、例えばFab、Fv又はscFv断片又はこれらの断片の何れかの化学的に修飾された誘導体を含む。抗体は、当技術分野で記載される方法を使用することによって製造され得、例えばHarlow and Lane“Antibodies,A Laboratory Manual”,CSH Press,Cold Spring Harbor,1988を参照。モノクローナル抗体は、Kohler 1975,Nature 256,495及びGalfre 1981,Meth.Enzymol.73,3により最初に記載された技術によって調製され得る。前記技術は、マウス骨髄腫細胞を免疫付与した哺乳動物由来の脾臓細胞と融合することを含む。Biacoreシステムにより使用される表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象は、標識を使用せずに、リアルタイムでのタンパク質-タンパク質相互作用の検出及び測定を可能にする。例えば、Biacore技術の応用は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ、その断片又はエピトープなどの抗体及びその抗原を使用してタンパク質-タンパク質相互作用を測定するために使用され得る。抗体のその抗原に対する親和性は、相互作用の結合動態を測定することによって決定される。抗体は、当技術分野で周知の技術によってさらに改善され得る。Biacoreシステムで使用されるような表面プラズモン共鳴は、エピトープに結合するファージ抗体の効率を向上させるためにも使用され得;例えば、Schier 1996,Human Antibodies Hybridomas 7,97;Malmborg 1995,J.Immunol.Methods 183,7を参照されたい。
本発明はさらに、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ又はその相補的配列をコードする核酸配列を含む核酸に関する。好ましくは、本発明の核酸は、本明細書中で定められるような微生物において、本発明の酵素活性があるアルコールアシルトランスフェラーゼをコードし、産生させるために適切である。
本発明の核酸(又はポリヌクレオチド)は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列は、好ましくは、組み換え及び/又は単離及び/又は精製核酸配列である。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列は、公知の分子生物学的な標準的技術、本明細書中で提供される配列情報及び生物を使用して、作製され、単離され得る。
例えば、相同配列ストレッチ又は相同な保存的配列領域は、比較アルゴリズム及び配列アライメントによって、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ配列及び他のビノリンシンターゼファミリーメンバーの配列又はビノリンシンターゼ様配列(実施例3参照)においてDNA又はアミノ酸レベルで同定され得る。次に、同定された配列は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列のクローニングのために、例えばSambrook et al.(本明細書中の他の箇所で引用)に記載のものなどの標準的なハイブリッド形成技術においてハイブリッド形成プローブとして使用され得る。或いは、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列は、適切な特異的プライマーを使用して、当技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応によって作製され得る。次に、本明細書中で記載のような適切なベクターに単離又は産生される核酸配列をクローニングし、DNA配列分析によって特徴を調べ得る。コードされるタンパク質のアルコールアシルトランスフェラーゼ活性は、本明細書中の他の箇所及び実施例2に記載のような、適切な宿主細胞における核酸配列の発現後に決定され得る。
例えば、本発明の核酸配列は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)から又はラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)から単離され得る。
実施例1は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列のクローニングを示す。配列番号1は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-1-c)のヌクレオチド配列に対応する。さらに、実施例4は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)におけるシトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の相同体の同定を示す。
「核酸」という用語は、本明細書中で使用される場合、1本鎖又は2本鎖形態の何れかの、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマー、即ちポリヌクレオチドへの言及を含み、別段限定されない限り、それらが天然のヌクレオチド(例えばペプチド核酸)と同様に1本鎖核酸とハイブリッド形成するという点において天然ヌクレオチドの基本的性質を有する既知の類似物を包含する。ポリヌクレオチドは、ネイティブ又は異種構造又は制御遺伝子の全長又はサブ配列であり得る。別段示されない限り、この用語は、指定される配列並びにその相補配列への言及を含む。従って、安定性のため又は他の理由のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAは、その用語が本明細書中で意図されるような「ポリヌクレオチド」である。さらに、2つ例を挙げると、イノシンなどの通常のものではない塩基又はトリチル化塩基などの修飾された塩基を含むDNA又はRNAは、この用語が本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」である。当業者にとって公知の多くの有用な目的に役立つDNA及びRNAに対して、多岐にわたる修飾がなされてきたことが認められよう。「ポリヌクレオチド」という用語は、それが本明細書中で使用される場合、このような化学的に、酵素的に又は代謝的に修飾されるポリヌクレオチドの形態並びにとりわけ単純及び複雑な細胞を含む、ウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴の化学的形態を包含する。遺伝コードを参照することによってまた本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼなどのポリペプチドをコードする本明細書中の全ての核酸配列は、核酸の全ての可能なサイレントなバリエーションを記載する。「保存的に修飾された変異体」という用語は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾された変異体」という用語は、遺伝コードの縮重による同一である又は保存的に修飾されたアミノ酸配列の変異体をコードする核酸を指す。「遺伝コードの縮重」という用語は、多数の機能的に同一である核酸がある特定のタンパク質をコードするという事実を指す。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンにより指定される全ての位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに記載される対応するコドンの何れかに対してコドンが変更され得る。このような核酸バリエーションは、「サイレントバリエーション」であり、保存的に修飾されたバリエーションの1種に相当する。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書中で交換可能に使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの「アミノ酸配列の酵素活性がある断片」は、本明細書中で定められるようなアルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有する少なくとも30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200又は250アミノ酸残基のストレッチを意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも、並びに天然アミノ酸ポリマーにも適用される。天然アミノ酸のこのような類似体の必要な性質は、タンパク質に組み込まれる場合、そのタンパク質が、同じタンパク質であるが完全に天然アミノ酸からなるタンパク質に対して誘発される抗体と特異的に反応性があるということである。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化を含むが限定されない修飾も含む。本願の文脈内で、オリゴマー(オリゴヌクレオチド、オリゴペプチドなど)は、ポリマーの基の一種と考えられる。オリゴマーは、例えば、実施例において本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼのクローニングのために使用されるなどのプライマー配列を含め、一般的に2~100、特に6~100の単量体単位の比較的少数を有する。
「異種」という用語は、本発明の核酸(DNA又はRNA)又はタンパク質と関連して使用される場合、それが存在する生物、細胞、ゲノム若しくはDNA若しくはRNA配列の一部として天然には生じない、又は、それが天然で見出されるものとは異なる細胞又はゲノム若しくはDNA若しくはRNA配列中の1つ又は複数の位置(単数又は複数)において見出される、核酸又はタンパク質を指す。本発明の異種核酸又はタンパク質は、それらが導入される細胞に対して内因性ではないが、別の細胞から得られているか又は合成若しくは組み換えにより産生されている。一般に、必ずではないが、このような核酸は、DNAが発現される細胞によって普通は産生されないタンパク質をコードする。特定の宿主細胞に対して内因性であるが、例えばDNAシャッフリングの使用を通じて、その天然の形態から修飾されている遺伝子も異種と呼ばれる。「異種」という用語は、非天然の複数コピーの天然DNA配列も含む。従って、「異種」という用語は、細胞にとって外来若しくは異種であるか、又は細胞にとって相同性であるがセグメントが通常では見出されない宿主細胞核酸内の位置及び/又は数である、DNAセグメントを指し得る。外来性DNAセグメントは、外来性ポリペプチドを生じさせるために発現される。
本発明の「相同な」DNA配列は、それが導入される宿主細胞と天然で関連しているDNA配列である。それが発現される細胞に対して異種又は外来として当業者が認識する何れの核酸又はタンパク質も、異種核酸又はタンパク質という用語によって本明細書において包含される。
「修飾される(modified)」、「修飾(modification)」、「突然変異させられる(mutated)」又は「突然変異(mutation)」という用語は、別のタンパク質又はポリペプチドと比較して(特に配列番号2、3又は4のアミノ酸配列を含むか又はそれらからなる本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼと比較して)タンパク質又はポリペプチドに関して本明細書中で使用される場合、変更すべきところは変更して、ヌクレオチド又は核酸配列に適用される。言及される用語は、修飾されたヌクレオチド又はアルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸配列が、それが例えば配列番号2、15又は16のアミノ酸配列と比較されるタンパク質又はポリペプチドのヌクレオチド又は核酸配列と比較して、ヌクレオチド又は核酸配列の少なくとも1つの相違を有することを示すために使用される。この用語は、修飾されたか又は突然変異が導入されたタンパク質が、実際にはこれらのアミノ酸をコードする核酸の突然変異誘発又はポリペプチド若しくはタンパク質の修飾によって、又は別の方法で、例えば人工遺伝子合成方法を使用して得られているかにかかわらず、使用される。突然変異誘発は、当技術分野で周知の方法であり、例えば、Sambrook,J.,and Russell,D.W.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(2001)に記載のような、PCRによるか又はオリゴヌクレオチド介在性の突然変異誘発を介した部位特異的突然変異誘発を含む。「修飾される(modified)」、「修飾(modification)」、「突然変異させられる(mutated)」又は「突然変異(mutation)」という用語は、遺伝子に関して本明細書中で使用される場合、その遺伝子又はその調節配列のヌクレオチド配列中の少なくとも1つのヌクレオチドが、それが比較されるヌクレオチド配列、例えば配列番号2、15又は16のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、とは異なることを示すために使用される。修飾又は突然変異は、特に、異なる1つによるヌクレオチドの置換、ヌクレオチドの欠失又はヌクレオチドの挿入であり得る。
本発明はまた、本発明の核酸を含むベクター又は遺伝子コンストラクトにも関する。
好ましくは、本ベクター又は遺伝子コンストラクトは、本明細書中で定められるような微生物細胞において酵素活性がある本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードし、産生させるために適切である。
本発明の核酸は、ベクター又は遺伝子コンストラクトにおいて原核又は真核宿主細胞又はその単離分画での発現を可能にする発現制御配列に操作可能に連結される。従って、一態様では、ベクターは発現ベクターである。本発明の核酸の発現は、翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。原核又は真核宿主細胞での発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野で周知である。一態様では、これらは、転写の開始を確実にする調節配列及び/又は転写終結及び転写の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。さらなる調節エレメントは、転写並びに翻訳エンハンサーを含み得る。原核宿主細胞における発現を可能にする可能な調節エレメンは、例えばE.コリ(E.coli)におけるlac-、trp-又はtac-プロモーター又はロドバクタープロモーター(https://doi.org/10.1073/pnas.2010087117)を含み、真核宿主細胞における発現を可能にする調節エレメントに対する例は、酵母におけるAOX1-又はGAL1-プロモーター又はCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー又は哺乳動物及び他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。植物プロモーターは、例えばPlant Biotechnology:Principles and Applications,pp117-172,2017に記載されている。さらに、誘導性発現制御配列は、発現ベクターにおいて使用され得る。このような誘導性ベクターは、tet又はlacオペレーター配列又は熱ショック若しくは他の環境因子により誘導性である配列を含み得る。適切な発現制御配列は、当技術分野で周知である。転写開始に関与するエレメントの他に、このような制御エレメントは、ポリヌクレオチドの下流で、転写終結シグナル、例えばSV40-ポリ-A部位又はtk-ポリ-A部位なども含み得る。この文脈において、適切な発現ベクターは、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pBluescript(Stratagene)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)又はpSPORT1(Invitrogen)など、当技術分野で公知である。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス又はウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターは、標的化された細胞集団へのポリヌクレオチド又はベクターの送達のために使用され得る。
当業者にとって周知の方法は、本発明の核酸を含むベクター又は遺伝子コンストラクトを構築するために使用され得;例えばSambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(2001)N.Y.及びAusubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)において記載される技術を参照されたい。
「遺伝子」という用語は、本明細書中で使用される場合、本発明の核酸など、生物学的機能と関連する核酸の何れかのセグメントを指すために広く使用される。従って、遺伝子は、それらの発現に必要とされるコード配列及び/又は調節配列を含む。例えば、遺伝子は、mRNA又は機能的RNAを発現するか又は特異的なタンパク質をコードする核酸断片を指し、これは、調節配列を含む。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質に対する認識配列を形成する、発現されないDNAセグメントも含む。遺伝子は、関心対象の起源からのクローニング又は既知の若しくは予想される配列情報からの合成を含む様々な起源から得られ得、所望のパラメーターを有するように設計される配列を含み得る。
「キメラ遺伝子」という用語は、本明細書中で使用される場合、1)天然では一緒に見られない調節配列及びコード配列を含むDNA配列又は2)天然には隣接しないタンパク質の一部をコードする配列又は3)天然には隣接しないプロモーターの一部を含有するあらゆる遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列及びコード配列を含み得るか、又は同じ起源由来であるが天然で見出されるものとは異なるように編成される、調節配列及びコード配列を含み得る。
「遺伝子コンストラクト」は、本明細書中で使用される場合、関心対象の挿入に従い、複雑さが変動し得る。本コンストラクトは、付加による遺伝子組み換えと呼ばれる、生物のゲノムにランダムに挿入されるように設計され得るか、又は相同組み換えによる遺伝子組み換えと呼ばれる、決定された染色体の適正な位置に特異的な標的とされる部位でゲノムに挿入されるように設計され得る。両ケースにおいて、コンストラクトは、プロモーター、転写開始部位、ポリアデニル化部位及び転写終結部位などの遺伝子発現を制御するための構造を有する、完璧なものでなければならない。即ち、受容体ゲノムに挿入されている情報は、最初、中間及び最後を有し、従って宿主細胞又は生物における無制御の発現の問題を回避する。
「オープンリーディングフレーム」及び「ORF」という用語は、本明細書中で使用される場合、コード配列の翻訳開始コドンと終結コドンとの間でコードされるアミノ酸配列を指す。「開始コドン」及び「終結コドン」という用語は、タンパク質合成(mRNA翻訳)の開始及び鎖の終結をそれぞれ特定するコード配列における3つの隣接するヌクレオチド(「コドン」)の単位を指す。
「コード配列」は、本明細書中で使用される場合、特異的なアミノ酸配列をコードし、非コード配列を除外するDNA又はRNA配列を指す。これは、「中断されていないコード配列」を構成し得、即ち、cDNAにおいてなど、イントロンを欠くか、又はこれは、適切なスプライスジャンクションにより結合される1つ以上のイントロンを含み得る。「イントロン」は、一次転写物において含有されるが、タンパク質に翻訳され得る成熟mRNAを作製するための細胞内でのRNAの切断及び再連結を通じて除去される、RNAの配列である
「調節配列」は、本明細書中で使用される場合、コード配列の上流に(5’非コード配列)、又はコード配列内若しくは下流に(3’非コード配列)配置されるヌクレオチド配列を指し、これは、転写、RNAプロセシング又は安定性又は関連するコード配列の翻訳に影響を与える。調節配列は、エンハンサー、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン及びポリアデニル化シグナル配列を含む。これらは、天然及び合成配列並びに合成及び天然配列の組み合わせであり得る配列を含む。上記のように、「適切な調節配列」という用語は、プロモーターに限定されない。調節配列の例としては、プロモーター(転写プロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーター)、オペレーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位及び転写及び翻訳開始及び終結を制御する適切な配列が挙げられる。核酸配列は、制御配列が機能的に本発明のDNA又はcDNA配列に関連する場合、「操作可能に連結される」。本明細書中で使用される場合、「操作可能に連結される」又は「操作的に連結される」という用語は、そのように記載される構成成分がそれらの意図される方法でそれらが機能することを可能にする関係にある近位を指す。別の制御配列に及び/又はコード配列に「操作可能に連結される」制御配列は、制御配列と適合する条件下で、コード配列の転写及び/又は発現が達成されるように連結される。一般に、操作可能に連結されるとは、連結されている核酸配列が近接しており、2つのタンパク質コード領域を連結するために必要な場合、近接し、同じ読み枠であることを意味する。調節配列のそれぞれは、独立に異種及び相同調節配列から選択され得る。
「プロモーター」は、本明細書中で使用される場合、そのコード配列に対して通常は上流(5’)にあり、RNAポリメラーゼに対する認識及び適正な転写に必要とされる他の因子を提供することによって、前記コード配列の発現を制御する、ヌクレオチド配列を指す。「プロモーター」は、TATAボックス及び転写開始部位を指定するために働く他の配列から構成される短いDNA配列である最小プロモーターを含み、これに、発現の制御のための制御エレメントが付加される。「プロモーター」はまた、コード配列又は機能的RNAの発現を制御可能である最小プロモーター+制御エレメントを含むヌクレオチド配列も指す。このタイプのプロモーター配列は、近接及びより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーと呼ばれることが多い。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激し得、プロモーター又はプロモーターのレベル若しくは組織特異性を促進するために挿入される異種エレメントの固有のエレメントであり得るDNA配列である。これは、両方向(ノーマル又はフリップ)で操作可能であり、プロモーターから上流又は下流の何れかに動かされる場合でも機能することが可能である。エンハンサー及び他の上流プロモーターエレメントの両方が、それらの効果に介在する配列特異的なDNA結合タンパク質に結合する。プロモーターは、それらの全体においてネイティブ遺伝子に由来し得るか、又は天然で見られる異なるプロモーター由来の異なるエレメントから構成され得るか、又は合成DNAセグメントからさえも構成され得る。プロモーターは、生理学的又は発生の状態に反応して転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列も含有し得る。
「発現カセット」は、本明細書中で使用される場合、終結シグナルに操作可能に連結される関心対象のヌクレオチド配列に操作可能に連結されるプロモーターを含む、本明細書中で定められるような適切な宿主細胞において、特定のヌクレオチド配列、例えば本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列の発現を指示可能なDNA配列を意味する。これはまた一般的に、ヌクレオチド配列の的確な翻訳に必要とされる配列も含む。コード領域は通常、関心対象のタンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向で、関心対象の機能的RNA、例えばアンチセンスRNA又は非翻訳RNAもコードし得る。関心対象のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであり得、これは、その構成成分の少なくとも1つがそれの他の構成成分のうち少なくとも1つに対して異種であることを意味する。発現カセットは、天然であるが、異種発現のために有用な組み換え形態で得られているものでもあり得る。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター又はいくつかの特定の外部刺激に宿主細胞が曝露されたときのみ転写を開始させる誘導性プロモーターの制御下であり得る。多細胞生物の場合、プロモーターは、特定の組織若しくは器官又は例えば植物の発生における発生段階に特異的でもあり得る。
「ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、標的とされた細胞の形質転換を指示するために設計された遺伝物質から構成される構築物を指す。ベクターは、核酸カセット中の核酸が転写され得、及び必要な場合は形質転換された細胞において翻訳され得るように、位置的に及び連続的に方向付けられる、即ち他の必要なエレメントと操作可能に連結される多重遺伝エレメントを含有する。特に、本ベクターは、ウイルスベクター、(バクテリオ)ファージ、コスミド又はプラスミドの群から選択され得る。本ベクターは、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はアグロバクテリウムバイナリーベクターでもあり得る。このベクターは、自己伝染性若しくは可動性であってもよいし又はそうでなくてもよく、細胞ゲノムへの組み込みによるか又は染色体外に存在する(例えば複製起点を有する自律増殖するプラスミド)かの何れかにより、例えばロドバクター属(Rhodobacter)などの宿主生物を形質転換し得る2本鎖又は1本鎖の直鎖状又は環状形態であり得る。具体的に、本明細書中で定められるような2つの異なる宿主生物において天然に又は計画的に複製可能なDNAビヒクルを意味するシャトルベクターが含まれる。好ましくは、本ベクター中の核酸は、本明細書中で指定されるような宿主細胞での転写に適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下にあり、それに操作可能に連結される。本ベクターは、複数の宿主において機能する二機能性発現ベクターであり得る。ゲノムDNAの場合、これは、それ自身のプロモーター又は他の調節エレメントを含有し得、cDNAの場合、これは、宿主細胞での発現に適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下であり得る。核酸を含有するベクターは、当技術分野で公知の方法に基づいて調製され得る。例えば、転写又は翻訳調節核酸配列などの適切な調節エレメントに操作可能に連結される本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードするcDNA配列が使用され得る。
「ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、標準的なクローニング作業のためのベクター(「クローニングベクター」)に対する、並びに、宿主細胞の染色体への組み込みのために使用される(常染色体)発現ベクター及びクローニングベクター(「組み込みベクター」)のようなより特別なタイプのベクターに対する言及を含む。
「クローニングベクター」は一般的に、本ベクターの必須の生物学的機能を欠失させずに決定可能な方式で外来DNA配列が挿入され得る1つ又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位並びに、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定及び選択での使用に適切であるマーカー遺伝子を含有する。
「発現ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、その転写をもたらすさらなる核酸セグメントの制御下(即ち操作可能に連結される)で関心対象のポリペプチドをコードするセグメントを含む、直鎖状又は環状のDNA分子を指す。このようなさらなるセグメントは、プロモーター及び終結配列を含み得、任意選択的に1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含み得る。発現ベクターは一般に、プラスミド又はウイルスDNAに由来するか、又は両方のエレメントを含有し得る。特に、発現ベクターは、5’から3’方向で、(a)宿主生物により認識される転写及び翻訳開始領域、(b)関心対象のポリペプチドに対するコード配列及び(c)宿主生物により認識される転写及び翻訳終結領域を含み、操作可能に連結されるヌクレオチド配列を含む。「プラスミド」は、微生物のゲノムに組み込まれず、通常は天然では環状である、自律的に複製する染色体外DNAを指す。
「組み込みベクター」は、例えば微生物のゲノム、例えば細菌のゲノムに組み込まれ得る直鎖状又は環状であるDNA分子を指し、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼなどの関心対象のポリペプチドをコードする遺伝子の安定な遺伝的形質をもたらす。組み込みベクターは一般に、その転写をもたらすさらなる核酸セグメントの制御下で(即ちこれに操作可能に連結される)関心対象のポリペプチドをコードする遺伝子配列を含む1つ以上のセグメントを含む。
このようなさらなるセグメントは、通常は相同組み換えの過程による、プロモーター及び終結配列及び標的細胞のゲノムへの関心対象の遺伝子の組み込みを推進する1つ以上のセグメントを含み得る。一般的には、組み込みベクターは、標的細胞に移され得るが、その生物において非機能的なレプリコンを有するものである。関心対象の遺伝子を含むセグメントの組み込みは、そのセグメント内で適切なマーカーが含まれる場合、選択され得る。本発明の宿主細胞において発現させようとするポリペプチドに天然には付随しない適切なシグナルペプチドをコードする1つ以上の核酸配列が(発現)ベクターに組み込まれ得る。例えば、シグナルペプチドリーダーに対するDNA配列は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼが、シグナルペプチドを含む融合タンパク質として最初に翻訳されるように、本発明の核酸にインフレームで融合され得る。シグナルペプチドの性質に依存して、発現されるポリペプチドは、異なって標的化される。意図される宿主細胞において機能的である分泌シグナルペプチドは例えば、発現されたポリペプチドの細胞外分泌を促進する。他のシグナルペプチドは、発現されたポリペプチドを葉緑体、ミトコンドリア及びペルオキシソームのようなある特定の細胞小器官に向ける。シグナルペプチドは、意図される細胞小器官への又は細胞からの輸送時にポリペプチドから切断され得る。ポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端でさらなるペプチド配列の融合を提供することが可能である。
さらに、本発明は、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトを含む宿主細胞に関する。
本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトを用いて宿主細胞を形質転換する。当業者は、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトを含有する宿主細胞を上手く形質転換し、選択し、増殖させるために遺伝コンストラクト上に存在しなければならない遺伝因子をよく承知している。本発明の宿主細胞は、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトにおいて含まれる、アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドを発現可能である。
「形質転換(Transformation)」及び「形質転換すること(transforming)」は、本明細書中で使用される場合、挿入のために使用される方法、例えば、直接取り込み、形質導入、抱合反応、f-接合又はエレクトロポレーション、に関係なく、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列などの異種ヌクレオチド配列の宿主細胞への導入を指す。外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター、例えばプラスミド、として維持され得るか、又は或いは宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。
本発明による宿主細胞は、例えばSambrook,J.,and Russell,D.W.“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(2001);及びF.M.Ausubel et al,eds.,“Current protocols in molecular biology”,John Wiley and Sons,Inc.,New York(1987)及びそれへの後日の追補に記載のような、一般に当技術分野で公知の標準的な遺伝学的及び分子生物学技術に基づいて作製され得る。
宿主細胞は、微生物細胞、例えば細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、例えば酵母細胞など及び原生生物細胞から選択される何れかの細胞であり得る。宿主細胞は、藻類細胞又は藍藻細胞、非ヒト動物細胞又は哺乳動物細胞又は植物細胞でもあり得る。
具体的に、宿主細胞は、次の生物の何れか1つから選択され得る:
細菌:
細菌宿主細胞は、例えばエシェリキア属(genera Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、パラコッカス属(Paracoccus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンシファー属(Ensifer)又はパントエア属(Pantoea)からなる群から選択され得る。
グラム陽性:バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces):有用なグラム陽性細菌宿主細胞としては、バチルス属(Bacillus)細胞、例えば、バチルス・アルカロフィウス(Bacillus alkalophius)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ジャウツス(Bacillus Jautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)が挙げられるが限定されない。最も好ましい原核生物は、バチルス属(Bacillus)細胞、好ましくは、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・レンツス(Bacillus lentus)のバチルス属(Bacillus)細胞である。
いくつかの他の好ましい細菌としては、放線菌目(Actinomycetales)、好ましくはストレプトマイセス属(Streptomyces)、好ましくはストレプトマイセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATTC23965)、ストレプトマイセス・サーモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)(IFO12382)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)又はストレプトベルティシリウム・ベルティシリウムssp.ベルティシリウム(Streptoverticillum verticillium ssp.verticillium)の菌種が挙げられる。他の好ましい細菌としては、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(Rhodomonas palustri)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)が挙げられる。さらなる好ましい細菌としては、ミキソコッカス属(Myxococcus)に属する菌種、例えばM.ビレスセンス(M.virescens)が挙げられる。
グラム陰性:エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、パラコッカス属(Paracoccus)、エンシファー属(Ensifer)又はパントエア属(Pantoea)の菌種:好ましいグラム陰性細菌は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)sp.、好ましくはシュードモナス・プロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC15958)又はシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(NRRL B-11)又はシュードモナス・デニトリフィカンス(Pseudomonas denitrificans)、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)又はロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、パラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)、パントエア・アナナチス(Pantoea ananatis)又はエンシファー・メリロチ(Ensifer meliloti)としても知られるシノリゾビウム・メリロチ(Sinorhizobium meliloti)である。
真菌
アスペルギルス属(Aspergillus)、フサリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Trichoderma)
宿主細胞は、真菌細胞であり得る。「真菌」は、本明細書中で使用される場合、子嚢菌門(phyla Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)及び接合菌門(Zygomycota)並びに卵菌門(Oomycota)及び不完全菌亜門(Deuteromycotina)及び全ての栄養胞子形成真菌を含む。子嚢菌門(Ascomycota)の代表的な群としては、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ユーペニシリウム属(Eupenicillium)(=ペニシリウム属(Penicillium))、エメリセラ属(Emericella)(=アスペルギルス属(Aspergillus))、ユーロチウム属(Eurotium)(=アスペルギルス属(Aspergillus))及び以下で挙げられる真正酵母が挙げられる。担子菌門(Basidiomycota)の例としては、キノコ、さび病及び黒穂病が挙げられる。ツボカビ門(Chytridiomycota)の代表的な群としては、例えば、カワリミズカビ属(Allomyces)、ブラストクラジエラ属(Blastocladiella)、ボウフラキン属(Coelomomyces)及び水生真菌が挙げられる。卵菌門(Oomycota)の代表的な群としては、例えばアクリャ属(Achlya)などのサプロレグニオミセトス(Saprolegniomycetous)水生真菌(ミズカビ)が挙げられる。栄養胞子形成真菌の例としては、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、カンジダ属(Candida)及びアルテルナリア属(Alternaria)が挙げられる。接合菌門(Zygomycota)の代表的な群としては、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)が挙げられる。
いくつかの好ましい真菌としては、ジューテロミコチナ亜門(Deuteromycotina)に属する菌種、糸状不完全菌類(Hyphomycetes)のクラス、例えば、フサリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、トリコデルマ属(Tricoderma)、ミロセシウム属(Myrothecium)、ベルティシリウム属(Verticillum)、アルスロマイセス属(Arthromyces)、カルダリオミセス属(Caldariomyces)、ウロクラジウム属(Ulocladium)、エムべリシア属(Embellisia)、クラドスポリウム属(Cladosporium)又はドレスクレラ属(Dreschlera)、特にフサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)(DSM2672)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・レシイ(Trichoderma resii)、ミロテシウム・ベルカナ(Myrothecium verrucana)(IFO6113)、ベルティシリウム・アルボアツルム(Verticillum alboatrum)、ベルティシリウム・ダーリイ(Verticillum dahlie)、アルスロマイセス・ラモサス(Arthromyces ramosus)(FERM P-7754)、カルダリオミセス・フマゴ(Caldariomyces fumago)、ウロクラジウム・チャルタルム(Ulocladium chartarum)、エムべリシア・アリ(Embellisia alli)又はドレスクレラ・ハロデス(Dreschlera halodes)が挙げられる。他の好ましい真菌としては、バシジオミコチナ亜門(Basidiomycotina)に属する菌種、担子菌(Basidiomycetes)のクラス、例えばコプリナス属(Coprinus)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、コリオルス属(Coriolus)又はトラメテス属(Trametes)、特にコプリヌス・シネレウス f.ミクロスポルス(Coprinus cinereus f.microsporus)(IFO8371)、コプリヌス・マクロリズス(Coprinus macrorhizus)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)(例えばNA-12)又はトラメテス属(Trametes)(ポリポルス属(Polyporus)と以前呼ばれる)、例えばT.ベルシカラー(T.versicolor)(例えばPR4 28-A)が挙げられる。さらなる好ましい真菌としては、接合菌亜門(Zygomycotina)に属する菌種、マイコラセア(Mycoraceae)のクラス、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)、特にムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)が挙げられる。
酵母
ピキア属(Pichia)
サッカロミセス属(Saccharomyces)
真菌宿主細胞は、酵母細胞であり得る。酵母は、本明細書中で使用される場合、有子嚢胞子(ascosporogenous)酵母(エンドミセタレス(Endomycetales))、担子胞子(basidiosporogenous)酵母)及び不完全真菌(ブラストミセス属(Blastomycetes))に属する酵母を含む。有子嚢胞子(ascosporogenous)酵母は、スペルモフトラ科(Spermophthoraceae)及びサッカロミケス科(Saccharomycetaceae)に分けられる。後者は、4つの亜科、シゾサッカロミコイデア(Schizosaccharomycoideae)(例えばシゾサッカロミセス属(genus Schizosaccharomyces))、ナドソニオイデア(Nadsonioideae)、リポミコイデア(Lipomycoideae)及びサッカロミコイデア(Saccharomycoideae)(例えばクリベロミセス属(genera Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)及びサッカロミセス属(Saccharomyces))から構成される。担子胞子(basidiosporogenous)酵母としては、ロイコスポリジム属(genera Leucosporidim)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、スポリジオボルス属(Sporidiobolus)、フィロバシジウム属(Filobasidium)及びフィロバシジエラ属(Filobasidiella)が挙げられる。不完全真菌に属する酵母は、2つの科、スポロボロミセタセア(Sporobolomycetaceae)(例えばスポロボロミセス属(Sporobolomyces)及びブレラ属(Bullera))及びクリプトコッカセア(Cryptococcaceae)(例えばカンジダ属(Candida))に分けられる。
真核生物
真核宿主細胞としては、さらに非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、鳥類細胞、爬虫類細胞、昆虫細胞又は植物細胞が挙げられるが限定されない。
好ましい実施形態では、宿主細胞は、次のものから選択される宿主細胞である:
a)グラム陰性細菌の群の細菌細胞、例えばロドバクター属(Rhodobacter)(例えばロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)又はロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)、パラコッカス属(Paracoccus)(例えばP.カロチニファシエンス(P.carotinifaciens)、P.ゼアキサンチニファシエンス(P.zeaxanthinifaciens))、エシェリキア属(Escherichia)又はシュードモナス属(Pseudomonas);
b)グラム陽性細菌の群から選択される細菌細胞、例えばバチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、アミコラトピス属(Amycolatopis)など;
c)アスペルギルス属(Aspergillus)、ブラケスレア属(Blakeslea)、ペニシリウム属(Peniciliium)、ファフィア属(Phaffia)(キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces))、ピキア(Pichia)、サッカラモイセス属(Saccharamoyces)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ヤロウィア属(Yarrowia)及びハンゼヌラ属(Hansenula)の群から選択される真菌細胞;
d)トランスジェニック植物細胞又はトランスジェニック植物細胞を含む培養物(この細胞は、アラビドプシス(Arabidopsis)spp.、ニコチアナ(Nicotiana)spp、シコルム・インチブス(Cichorum intybus)、ラクカ・サチバ(lacuca sativa)、メンタ(Mentha)spp、アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)、塊茎形成植物、油料穀物、例えばブラシカ(Brassica)spp.又はブラシカ・ナピュス(Brassica napus)、果実を産生する顕花植物(被子植物)及び樹木から選択されるトランスジェニック植物のものである);又は
e)トランスジェニックキノコ又はトランスジェニックキノコ細胞を含む培養物(この微生物は、シゾフィラム属(Schizophyllum)、アガリクス属(Agaricus)及びプレウロティシ属(Pleurotisi)から選択される)。
生物からのより好ましい宿主細胞は、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)又はパラコッカス属(Paracoccus)、(例えばパラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)に属する微生物及びさらにより好ましくはE.コリ(E.coli)、S.セレビサエ(S.cerevisae)、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)又はアミコラトピス(Amycolatopis)sp.の微生物からの宿主細胞である。
特に好ましいのは、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)及びロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)の群から選択されるロドバクター属(Rhodobacter)の宿主細胞である。
好ましい一実施形態では、宿主細胞は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの産生のために使用される。
本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼを産生させるための方法は、好ましくは次の段階:(a)適切な条件下で本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養し(b)段階(a)の宿主細胞から本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼタンパク質を得ることを含む。別の好ましい実施形態では、宿主細胞は、本発明の方法を行うために適切である。
例えば、宿主細胞は、次のものの存在下で、少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは少なくとも1つの三級モノテルペンアルコールを、少なくとも1つのモノテルペンエステル、好ましくは少なくとも1つの三級モノテルペンエステルへとエステル化することを含む、少なくとも1つのモノテルペンエステル、好ましくは少なくとも1つの三級モノテルペンエステルを調製するための方法において使用され得る:
(i)本明細書中の他の箇所で定義されるような本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は
(ii)データベース受入番号XP_006493396(配列番号13)又はUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列又は、データベース受入番号XP_006493396(配列番号13)又はUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアルコールアシルトランスフェラーゼであって、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することが可能であるもの、又は
(iii)上記(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼであって、配列番号2の位置371及び372のアミノ酸に対応するアミノ酸がトリプトファンではないもの、又は
(iv)表1で示される配列番号2の位置に対応する位置で、それらの位置に対する表1で列挙されるアミノ酸の何れかを、又は表2で示される配列番号2の位置に対応する位置で表2で列挙されるアミノ酸を、さらに含む、上記(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼであって、少なくとも1つのモノテルペンアルコールを少なくとも1つのモノテルペンエステルへと、より好ましくは少なくとも1つの三級モノテルペンアルコールを少なくとも1つのモノテルペンエステルへと、エステル化することが可能であるもの。
配列番号13は、データベース受入番号XP_006493396で示されるアミノ酸配列に対応する。
配列番号14は、データベース受入番号UNIPROTKB-A0A2H5PUP1で示されるアミノ酸配列に対応する。
少なくとも1つの少なくとも1つの(at least one at least one)モノテルペンエステル、好ましくは少なくとも1つの三級モノテルペンエステルを調製するために、宿主細胞は好ましくは上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼのうち何れか1つを異種的に発現する。
モノテルペンアルコールが、リナロール、ゲラニオール、アルファテルピネオール、ガンマテルピネオール、ラバンデュロール、フェンコール、ペリリルアルコール、メントール又はベルベノールであり、基質として使用されることが好ましい。モノテルペンアルコール基質は、宿主細胞により産生され得るか、又は宿主細胞に外から添加され得る。産生されるモノテルペンエステルは、本明細書中の他の箇所で示されるように、好ましくは、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、アルファ-テルピネオールエステル(アルファ-酢酸テルピニル)、ガンマテルピネオールエステル(ガンマ-酢酸テルピニル)、ラバンデュロールのエステル、フェンコールのエステル、ペリリルアルコールのエステル、メントールのエステル及びベルベノールのエステルからなる群から選択される、モノテルペンエステル又はアセチルエステルである。
具体例を提供するために、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でリナロールを酢酸リナリルへとエステル化することを含む、酢酸リナリルを調製するための方法において宿主細胞が使用され得る。宿主細胞は、この場合、基質としてリナロールを含有するか又は産生する。
また別の好ましい実施形態では、本発明による宿主細胞は、上記で例示されるようなモノテルペンエステルの発酵生産において工業的に使用され得る。このような発酵生産は、本明細書中の他の箇所で示される。
好ましくは、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼは、本発明の宿主細胞において1つ以上のさらなる酵素と組み合わせても使用され得る。
上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼに加えて使用され得るこのようなさらなる酵素に対する一例は、リナロールシンターゼである。リナロールシンターゼは、ゲラニルピロリン酸を基質として使用し、リナロールの形成を触媒する酵素である。例えば、S-リナロールシンターゼは立体選択的に、ユビキタスなC10中間体ゲラニルジホスフェート(GPP)をS-リナロールへと変換する(Pichersky et al.,Arch Biochem Biophys 1995 Feb 1;316(2):803-7.doi:10.1006/abbi.1995.1107)。R-リナロールシンターゼは、R-リナロールの産生を特異的に触媒する。次に、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼによってS-又はR-リナロールがエステル化されて酢酸リナリルとなる。この場合、宿主細胞は、リナロールシンターゼに対する基質としてゲラニルピロリン酸(GPP)を含有するか又は産生する。
リナロールシンターゼは(リモネンシンターゼ(LMS)により例示される1つの触媒機序を使用するものの、これは、LMS型のシンターゼ及び異なる機序を使用するテルペンシンターゼ(コパリルジホスフェートシンターゼ(CPS)により例示される)の両方を示す配列モチーフを有し、このことから、リナロールシンターゼが2つの異なるタイプのテルペンシンターゼの間で組み換え事象から進化し得る複合遺伝子であると思われることが示唆される(Cseke et al.,Mol.Biol.Evol.15(11):1491-1498.1998)。
リナロールシンターゼは、R-リナロールシンターゼ又はS-リナロールシンターゼであり得る。
R-リナロールシンターゼ(EC4.2.3.26)は、ゲラニルジホスフェート+H2O=(3S)-リナロール+ジホスフェートの反応を触媒する。
S-リナロールシンターゼ(EC4.2.3.25)は、ゲラニルジホスフェート+H2O=(3R)-リナロール+ジホスフェートの反応を触媒する。
リナロールシンターゼ及びそれらの対応する配列は、当技術分野で周知である。
例えば、UniProt Q2XSC5は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)(ラベンダー)からのR-リナロールシンターゼのアミノ酸配列を示す。UniProt Q8H2B4は、メンタ・アクアティク(Mentha aquatic)からのR-リナロールシンターゼのアミノ酸配列を示す。UniProt Q84UV0は、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)からのS-リナロールシンターゼのアミノ酸配列を示す。
リナロールシンターゼに対するさらなる受入番号、種及び参考文献を以下で示す。
R-リナロールシンターゼ:
メンタ・アクアティカ(Mentha aquatica)からのUniProt Q8H2B4:“Molecular cloning and characterization of a new linalool synthase.”Crowell A.L.,Williams D.C.,Davis E.M.,Wildung M.R.,Croteau R.Arch.Biochem.Biophys.405:112-121(2002)。
ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのUniProt Q2XSC5:“Cloning and functional characterization of three terpene synthases from lavender(Lavandula angustifolia).”
Landmann C.,Fink B.,Festner M.,Dregus M.,Engel K.H.,Schwab W.
Arch.Biochem.Biophys.465:417-429(2007)。
UniProt Q9SPN0;J W Jia 1,J Crock,S Lu,R Croteau,X Y Chen.“(3R)-Linalool synthase from Artemisia annua L.:cDNA isolation,characterization,and wound induction.”Arch Biochem Biophys.1999 Dec 1;372(1):143-9.doi:10.1006/abbi.1999.1466。
S-リナロールシンターゼ:
UniProt Q6ZH94;“Jasmonate induction of the monoterpene linalool confers resistance to rice bacterial blight and its biosynthesis is regulated by JAZ protein in rice.”Taniguchi S.,Hosokawa-Shinonaga Y.,Tamaoki D.,Yamada S.,Akimitsu K.,Gomi K.
Plant Cell Environ.37:451-461(2014)。
GenBank AFK09263;“Characterization of S-(+)-linalool synthase from several provenances of Cinnamomum osmophloeum.”Yan-Liang Lin,Yi-Ru Lee,Wen-Ke Huang,Shang-Tzen Chang & Fang-Hua Chu Tree Genetics & Genomes volume 10,pages 75-86(2014)。
UniProt Q96376;N Dudareva,L Cseke,V M Blanc,E Pichersky.“Evolution of floral scent in Clarkia:novel patterns of S-linalool synthase gene expression in the C.breweri flower.”The Plant Cell Jul 1996,8(7)1137-1148;DOI:10.1105/tpc.8.7.1137。
別の態様では、宿主細胞は、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ及びリナロールシンターゼに加えて、ゲラニルジホスフェート(GPP)シンターゼを含み得る。ゲラニルジホスフェートシンターゼは、ジメチルアリル二リン酸及びイソペンテニルジホスフェートのゲラニルジホスフェート(GPP)への縮合を触媒する。次に、リナロールシンターゼは、ユビキタスなC10中間体GPPをリナロールに変換し、次にそれが上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼによって酢酸リナリルへとエステル化される(Burke et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1999 Nov 9;96(23):13062-13067)。明らかに、宿主細胞は、この場合、ゲラニルジホスフェートシンターゼに対する基質を含有するか又は産生する。
GPPシンターゼに対する受入番号及び種についての非限定例を以下で示す:
GenBank CAC16849.1ゲラニルジホスフェートシンターゼ(アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana))。
GenBank CAC16851.1ゲラニルジホスフェートシンターゼ(シトラス・シネンシス(Citrus sinensis))
GenBank ACA21458.2 ゲラニルジホスフェートシンターゼ2(ピセア・アビエス(Picea abies))。
さらに、本発明の宿主細胞は、本明細書中で示されるような使用を遂行するのに適切である。
さらに、本発明は、本発明の核酸を含むトランスジェニック非ヒト生物、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクト又は本発明の宿主細胞に関する。
本発明のトランスジェニック非ヒト生物は、本発明の核酸、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト又は本発明の宿主細胞を含む。好ましい実施形態では、本発明のトランスジェニック非ヒト生物は、本明細書中で定められるように、本願の他の箇所で詳述されるような酢酸リナリルなどであるが限定されないモノテルペンエステルを調製するために使用される。モノテルペンエステルは、対応するモノテルペンアルコールをエステル化する上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼの作用によって調製される。前記対応するモノテルペンアルコールは、酢酸リナリルの場合はリナロールである。
好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト生物は、細菌、酵母、真菌、原生生物、藻類又は藍藻、非ヒト動物又は非ヒト哺乳動物又は植物である。具体的に、本発明の宿主細胞と関連して言及される生物は、本発明のトランスジェニック非ヒト生物の作製のためにも使用され得る。
細菌は、グラム陰性細菌、好ましくはロドバクター属(Rhodobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)又はパラコッカス属(Paracoccus)であることが好ましい。
トランスジェニック生物又はトランスジェニック細胞について「トランスジェニック」という用語は、本明細書中で使用される場合、その生物又は細胞において天然ではない核酸を含有する、及び当技術分野で公知の組み換えDNA技術を使用して核酸がその生物又は細胞に導入されている(即ち、生物又は細胞それ自身において又は生物の祖先若しくは細胞が単離された生物の祖先生物において導入されている)生物又は細胞(この細胞は生物それ自体であり得るか又はそれが単離された多細胞生物の細胞であり得る)を指す。別の言い方をするならば、核酸は、そのトランスジェニック生物又はトランスジェニック細胞に対して異種である。
「導入遺伝子」は、形質転換によりゲノムに導入されたアルコールアシルトランスフェラーゼ遺伝子などの遺伝子を指し、好ましくは安定的に維持される。好ましくは、導入遺伝子は、形質転換しようとする特定の細胞又は生物の遺伝子に対して異種である遺伝子を含む。さらに、導入遺伝子は、非ネイティブ生物又はキメラ遺伝子に挿入されるネイティブ遺伝子を含み得る。「内因性遺伝子」という用語は、生物のゲノムにおけるその天然の位置でのネイティブ遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、普通は宿主生物で見出されないが、遺伝子導入により導入される遺伝子を指す。
トランスジェニック非ヒト生物の産生のための方法は当技術分野で周知であり;例えば、Lee-Yoon Low et al.,Transgenic Plants:Gene constructs,vector and transformation method.2018.DOI.10.5772/intechopen.79369;Pinkert,C.A.(ed.)1994.Transgenic animal technology:A laboratory handbook.Academic Press,Inc.,San Diedo,Calif.;Monastersky G.M.and Robl,J.M.(ed.)(1995)Strategies in Transgenic Animal Science.ASM Press.Washington D.C);Sambrook,loc.cit,Ausubel,loc.cit)を参照されたい。
本発明はさらに、モノテルペンエステルを調製するための方法に関し、これは、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することが可能な上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でモノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することを含む。
本発明のこの方法において、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することが可能な上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼは、モノテルペンアルコールのその対応するモノテルペンエステルへのエステル化によるモノテルペンエステルの産生のために使用される。
一実施形態では、本発明のモノテルペンエステルを調製するための方法は、請求項8に記載される。
原理的に、モノテルペンエステルの産生は、先行技術で既知の方法に基づくように行われ得;例えばJongedijk et al.,Appl Microbiol Biotechnol(2016)100:2927-2938;Yee et al.,Metab Eng.2019 Sep;55:76-84.doi:10.1016/j.ymben.2019.06.004;Fromighieri et al.,Planta.2018 Oct;248(4):933-946.doi:10.1007/s00425-018-2948-0;Leferink et al.,Sci Rep.2019 Aug 15;9(1):11936.doi:10.1038/s41598-019-48452-2;Zhao et al.,Microb Cell Fact(2017)16:17 DOI 10.1186/s12934-017-0641-9;又は国際公開第2014/014339号パンフレットを参照されたい。
基質として、次のモノテルペンアルコールを使用し得る:
モノテルペンアルコールは、一級、二級又は三級モノテルペンアルコール、例えばリナロール、ゲラニオール、アルファテルピネオール、ガンマテルピネオール、ラバンデュロール、フェンコール、ペリリルアルコール、メントール又はベルベノールなどであり得る。
好ましくは、モノテルペンアルコールは、リナロール、ゲラニオール、アルファテルピネオール、ガンマテルピネオール、ラバンデュロール、フェンコール、ペリリルアルコール、メントール又はベルベノールである。
モノテルペンアルコールは、より好ましくは、三級モノテルペンアルコール、例えばリナロール又はアルファ-テルピネオールである。
本発明の方法で調製されるモノテルペンエステル生成物は、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、アルファ-テルピネオールエステル(アルファ-酢酸テルピニル)、ガンマ-テルピネオールエステル(ガンマ-酢酸テルピニル)、ラバンデュロールのエステル、フェンコールのエステル、ペリリルアルコールのエステル、メントールのエステル又はベルベノールのエステルであり得る。
好ましい実施形態では、モノテルペンエステルを調製するための方法は、好ましくは36時間、24時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、好ましくは本明細書中で定められるような微生物細胞において、三級モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能であるアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下で、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することを含む。
好ましくは、アルコールエステル、好ましくはモノテルペンエステルを調製するために本発明の方法で使用されるアルコールアシルトランスフェラーゼは、
(i)本明細書中の他の箇所で定義されるような本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は
(ii)データベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列、又はデータベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアルコールアシルトランスフェラーゼであって、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することが可能であるもの、又は
(iii)配列番号2の位置371及び372のアミノ酸に対応するアミノ酸がトリプトファンではない、(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は
(iv)表1で示される配列番号2の位置に対応する位置で、その位置に対する表1で挙げられるアミノ酸の何れかを、及び/又は、表2で示される配列番号2の位置に対応する位置で、表2で列挙されるアミノ酸及び/又は図5で示される保存的アミノ酸残基、即ち黒色の背景に白色の文字で示されるアミノ酸残基を、さらに含む、(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼであって、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することが可能であるもの。
別の実施形態では、本発明による宿主細胞は、上述のモノテルペンエステルの発酵生産において工業的に使用され得る。
例えば、本発明の宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物は、モノテルペンエステル、例えば酢酸リナリルの発酵生産において使用され得る。
好ましくは、少なくとも1つのモノテルペンエステルは、発酵工程において、即ち、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼが発現される条件下で培地中で例えばロドバクター属(Rhodobacter)宿主細胞などの微生物宿主細胞を培養することを含む方法において、産生される。本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼにより触媒される実際の反応は一般的に細胞内で行われる。「発酵」という用語は、適切な原材料(例えば、炭水化物、アミノ酸供給源、脂肪酸供給源)から化合物を合成するために生物の培養を使用する工程に対して広い意味で本明細書において使用されることに留意すべきである。従って、本明細書中で意味するような発酵工程は、嫌気的条件に限定されず、好気的条件下での工程に拡大される。適切な原材料は一般に、ロドバクター属(Rhodobacter)宿主細胞に対して知られる。適切な条件は、例えば国際公開第2011/074954号パンフレット又は国際公開第2014/014339号パンフレットに記載のようなロドバクター属(Rhodobacter)宿主細胞に対する既知の方法に基づき得る。
調製されるモノテルペンエステルは、当技術分野で公知の方法によって宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物から単離又は抽出され得る(植物については、例えばJiang et al.,Curr Protoc Plant Biol.2016;1:345-358.doi:10.1002/cppb.20024を参照;ロドバクター属(Rhodobacter)については、例えば国際公開第2014/014339号パンフレットを参照)。
一般に、本方法は、次の段階を含む:1)細胞を破壊して、それらの化学成分を放出させ;2)適切な溶媒を使用して(又は蒸留若しくは化合物のトラッピングを通じて)試料を抽出し;3)分析及び定量を混乱させる抽出物の他の望ましくない内容物から所望のモノテルペンエステルを分離し;4)適切な分析方法(例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)又は液体クロマトグラフィー(LC)又は本明細書中に記載のような別の方法)を使用する。
好ましくは、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼは、本発明のこれらの方法においてリナロールシンターゼ及び/又はゲラニルジホスフェート(GPP)シンターゼと組み合わせて使用される。リナロールシンターゼ及びゲラニルジホスフェート(GPP)シンターゼは、宿主細胞と関連して本明細書中に既に記載されている。後者の酵素に関する、定義、配列及び説明は、変更すべきところは変更して、本発明の方法に適用される。
本発明のこれらの方法に従い産生されるモノテルペンエステルは、例えば香味料又は香料として、昆虫忌避剤として、駆除剤として又は抗菌剤として使用され得;これはバイオ燃料、燃料組成物又は燃料化合物-ディーゼル燃料組成物用の発泡剤などであるが限定されない-を生産するためにも使用され得るか、又は別の化合物、例えば別の香味料若しくは香料若しくは燃料化合物に対する出発物質として使用され得る。
本発明はまた、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でリナロールを酢酸リナリルへとエステル化することを含む、酢酸リナリルを調製するための方法に関する。
この方法において、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼは、その対応するモノテルペンエステル、酢酸リナリルへのリナロールのエステル化による酢酸リナリルの産生のために使用される。
一実施形態では、本発明の酢酸リナリルを調製するための方法は、請求項10に記載される。
好ましい実施形態では、酢酸リナリルを調製するための方法は、好ましくは36時間、24時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分又は30分以内に、好ましくは本明細書中で定められるような微生物細胞において、リナロールをエステル化して、少なくとも30質量%のリナロールがエステル化されるようにすることが可能であるアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下で、リナロールを酢酸リナリルへとエステル化することを含む。
好ましくは、本発明の酢酸リナリルを調製するための方法で使用されるアルコールアシルトランスフェラーゼは、次のものである:
(i)本明細書中の他の箇所で定義されるような本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ、又は
(ii)データベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列、又はデータベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアルコールアシルトランスフェラーゼであって、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能であるもの、又は
(iii)配列番号2の位置371及び372でのアミノ酸に対応するアミノ酸がトリプトファンではない、(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼ、又は
(iv)表1で示される配列番号2の位置に対応する位置で、その位置に対する表1で挙げられるアミノ酸の何れかを、又は、表2で示される配列番号2の位置に対応する位置で、表2で列挙されるアミノ酸を、又は図5で示される保存的アミノ酸残基、即ち黒色の背景に白色の文字で示されるアミノ酸残基を、さらに含む(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼであって、リナロールを酢酸リナリルへとエステル化することが可能であるもの。
さらなる好ましい実施形態では、酢酸リナリルを調製するための方法は、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でリナロールを酢酸リナリルへとエステル化することを含む。一実施形態では、酢酸リナリルを調製するための方法は、配列番号3及び4のもの以外の本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼを使用する。
本発明のこの方法の別の好ましい実施形態では、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼを発現する宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物において酢酸リナリルが調製される。
リナロール又は3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オールは、両方とも植物で見出される2個のエナンチオマー:(3S)-(+)-リナロール及び(3R)-(-)-リナロールを含む非環式、不飽和、三級モノテルペンアルコールである。それにより、後者は天然でより一般的である。これは、植物ファミリーの50%超に属する200を超える植物種の精油の主要成分の1つである。中でもリナロールに富む最もよく知られる植物は、ローズウッド(アニバ・ロサエオドラ・デュック,ラウラセア(Aniba rosaeodora Ducke,Lauraceae)、ホーリーフ(シナモマム・カンフォラ・ニース,ラウラセア(Cinnamomum camphora Nees,Lauraceae)、コリアンダーの果実(コリアンドルムサチブム L.,アピアセア(Coriandrumsativum L.,Apiaceae)及びラベンダー(ラベンデュラ・オフィシナリス・チャイクス・シン(Lavendula officinalis Chaix sin.)の花頂、L.アングスチフォリア・ミル,ラミアセア(L.angustifolia Mill.,Lamiaceae)である。
導入部分で既に説明したように、酢酸リナリル、リナロールのモノテルペンエステルは、重要な香味及び香料分子である。酢酸リナリルは、琥珀、バブルガム、ショウガ、ラベンダー、オレンジ、ローズ、サンダルウッド、シェリー、ゲッカコウ、イランを含め、多くの香料で使用される。特に、これは、香料成分ラベンダー油及びベルガモット油の重要な構成成分である。香味剤において、これは、トマト、トロピカル及びアールグレイティーの香味のために使用される。
酢酸リナリルは、2つの光学的形態:R型(CAS No.115-95-7)及びS-型(CAS No.51685-40-6)で生じる。
ベルガモット、ラベンダー、メンタ・シトラタ(Mentha citrata)(ベルガモットミント)及び様々な他の植物において、(R)-酢酸リナリルがある。
カルダモン油において、(S)-酢酸リナリルがある。
殆どの場合においてR型である天然の酢酸リナリルは、甘い、グリーン系、シトラス系、スパイシーな匂い及びフローラル系、グリーン系、テルピー(terpy)、ワキシーな、シトラス系の、ウッディーな趣きを有することが記載されている。
現在市場にある殆どの酢酸リナリルは、合成化学により作製されている。この酢酸リナリルは、S-及びR-異性体の両方の混合物である。
エナンチオピュアなR-酢酸リナリルは、ベルガモット油、プチグレイン(葉及び小枝を含むビターオレンジ植物材料からの水蒸気蒸留物)、ネロリビガラード油及びベルガモットミント油を含む多くの供給源から抽出される。これは、中国からのホーウッド油(シナモマム・カンフォラ(Cinnamomum camphora))から入手可能であることも知られているが、不純物混入ゆえの難しさがある。
好ましくは、本発明の方法により調製される酢酸リナリルは、(i)R型(Cas No.115-95-7)、(ii)S型(Cas No.51685-40-6)又は(iii)R型(Cas No.115-95-7)及びS型(Cas No.51685-40-6)である。後者の実施形態(iii)は、酢酸リナリルのR型及びS型の混合物を含む。
好ましくは、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼは、本発明のこの方法において、リナロールシンターゼ及び/又はゲラニルジホスフェート(GPP)シンターゼと組み合わせて使用される。リナロールシンターゼ及びゲラニルジホスフェート(GPP)シンターゼは、宿主細胞と関連して、既に本明細書中に記載されている。後者の酵素に関する定義、配列及び説明は、変更すべきところは変更して、本発明の方法に適用される。
本発明は、
(i)テルペン生合成経路の異種再構成のための;
(ii)工業製品、好ましくは香味料又は香料、バイオ燃料、燃料組成物、燃料化合物、例えばディーゼル燃料組成物のための発泡剤、駆除剤、昆虫忌避剤又は抗菌剤を作製するための;
(iii)モノテルペンアルコールから、好ましくは三級モノテルペンアルコールから脂肪族及び/又は芳香族モノテルペンエステルを作製するための;
(iv)細菌又は真菌(例えば酵母)などの微生物においてモノテルペンアルコールを解毒し、それにより前記微生物でのモノテルペン産生を増加させるための;
(v)GPPシンターゼ及び/又はS-又はR-リナロールシンターゼと組み合わせた;
(vi)モノテルペンアルコールと比較した場合に疎水性酢酸分配がより容易に有機相に行くことにおいてアセチル化の有益な効果を向上させるための;
(vii)酢酸モノテルペンとモノテルペンアルコールとの比が5:1又は10:1より大きくなるように本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼを発現させるための;
(viii)モノテルペンエステルのための微生物産生系における、
上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞又は本発明のトランスジェニック非ヒト生物の使用にも関する。
一実施形態では、配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列のもの以外のアルコールアシルトランスフェラーゼが使用される。
疎水性の酢酸部分がより容易に有機相に行くという点でアセチル化の有益な効果を向上させるための本発明の使用は、(上記の項目vi)参照)モノテルペンアルコールと比較した場合、例えばモノテルペンアルコール及びモノテルペンエステルのlogP値の比較によって、試験され得る。
例えば、リナロールに対するlogP値は、2.970であり(http://www.thegoodscentscompany.com/data/rw1007872.html#tophyp)を参照)、酢酸リナリルの場合は3.930である(http://www.thegoodscentscompany.com/data/rw1007892.html#tophypを参照)。
例えば、発酵を使用して本明細書中に記載のモノテルペンエステルを作製するために、2相系を利用し得る。モノテルペンエステル生成物は、油層に抽出され、一方で微生物は水層に残る。疎水性の高い分子ほど、この第2の層へのより高いパーセンテージ(%)の分配となる。このパーセンテージは、水層において毒性閾値を超えるか又は超えないかの相違を生む場合、重要であり得る。有機化合物の生産のための2相の発酵工程は、例えば国際公開第2015/002528号パンフレットに記載されている。
本発明はまた、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ、好ましくは本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター及び/又は遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞及び/又は本発明のトランスジェニック非ヒト生物及び任意選択的に少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールを含むキットにも関する。好ましくは、前記キットは、少なくとも1つのモノテルペンエステル、好ましくは少なくとも1つの三級モノテルペンエステル、例えば酢酸リナリルなどを調製するために本発明の方法を遂行するためである。
「キット」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定められるような本発明の方法を行うための即時使用の個別又は共通バイアル中で提供される、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞及び/又は本発明のトランスジェニック非ヒト生物を含む手段の一群を指す。本キットは、任意選択的に、例えば、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼに対する基質として、少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールを含み得る。一態様では、本キットは、本明細書中で定められるような、さらなる酵素、例えばS-又はL-リナロールシンターゼ及び/又はGPPシンターゼなどの、前記方法を行うためのさらなる手段を含む。さらに、一態様では、本キットは、本発明の方法を行うための説明書を含む。これらの説明書は、マニュアルとして提供され得る。さらに、本発明は、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は本発明のモノテルペンエステルを調製するための方法により産生される、好ましくは三級モノテルペンアルコールから産生される、モノテルペンエステル、及び前記モノテルペンエステルを含む組成物に関する。任意選択的に、本組成物は、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ及び、さらに任意選択的に、少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールを含む。好ましくは、本組成物は、細胞不含であり、及び/又は組成物は天然では見られない。
本発明はまた、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ、好ましくは本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼにより産生される酢酸リナリル又は、好ましくはリナロールから産生される本発明の酢酸リナリルを調製するための方法、及び前記酢酸リナリルを含む組成物にも関する。任意選択的に、本組成物は、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ及び、さらに任意選択的にリナロールを含む。好ましくは、本組成物は、細胞不含であり、及び/又は天然で見られない組成物である。
さらに、本発明は、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ及び少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールを含む組成物に関する。アルコールアシルトランスフェラーゼは、活性のある状態であり得るか、又は例えばpH変化若しくは阻害剤の除去などによってその活性が活性化され得る状態であり得る。
本発明はまた、発酵ブロス、好ましくは二相性発酵系における発酵ブロスにも関し、発酵ブロスは、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ、本発明の核酸、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクト、本発明の宿主細胞、及び/又は本発明の非ヒトトランスジェニック生物及び1つ以上のモノテルペンアルコール及び/又は上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は本発明の方法により産生される1つ以上のモノテルペンエステルを含む。
本発明の方法の何れか1つにより産生されるモノテルペンエステルはそれ自体使用され得る。例えば、酢酸リナリルは、本明細書中の他の箇所で示されるように、添加物として又はディーゼル燃料組成物における発泡剤として使用され得る。
他の実施形態では、本発明の方法の何れか1つにより産生されるモノテルペンエステルは、別の化合物、例えば燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物又は組成物のための出発物質として使用され得る。例えば、前記モノテルペンエステルは、燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物に変換され得る。
従って、本発明はさらに、燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物の生産のための方法に関し、この方法は次の段階を含む:
a)本発明の方法の何れか1つにより1つ以上のモノテルペンエステルを産生させること;
b)任意選択的に、段階a)で産生される1つ以上のモノテルペンエステルを精製すること;及び
c)任意選択的に、段階a)の1つ以上のモノテルペンエステル又は段階b)の任意選択的に精製された1つ以上のモノテルペンエステルの一部又は全てを、段階a)で作製された1つ以上のモノテルペンエステルではない1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物に変換すること。
好ましくは、燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物は、次のものからなる群から選択される:
i.テトラヒドロリナロール;
ii.2,6-ジメチルオクタン(DMO);
iii.飽和C20炭化水素二量体;
iv.飽和C30炭化水素三量体;及び
v.水素付加メチルシクロペンタジエン二量体。
本発明は、燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物の生産のための方法をさらに提供し、この方法は、次の段階を含む:
a)本発明の方法の何れか1つによって1つ以上のモノテルペンエステルを産生させること;
b)任意選択的に、段階a)で産生された1つ以上のモノテルペンエステルを精製すること;及び
c)1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物へと、段階a)の1つ以上のモノテルペンエステルの一部又は全てを変換するか、又は段階b)の任意選択的に精製した1つ以上のモノテルペンエステルの一部若しくは全てを変換すること;及び
d)1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物を、燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物に適切なさらなる化合物と、及び任意選択的に段階a)で産生される1つ以上のモノテルペンエステルと組み合わせて、燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物を形成させること。
燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物に適切なこのようなさらなる化合物は、当技術分野で公知であり;例えば米国特許第9,816,043号明細書又は同第9,802,873号明細書を参照されたい。
好ましくは、少なくとも1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物は、次のものからなる群から選択される:
i.テトラヒドロリナロール;
ii.2,6-ジメチルオクタン(DMO);
iii.飽和C20炭化水素二量体;
iv.飽和C30炭化水素三量体;及び
v.水素付加メチルシクロペンタジエン二量体。
好ましくは、燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物は、合計で0.001%(w/w)~99.99%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)~99.9%(w/w)の、1つ以上のモノテルペンエステルから作製される、及び本発明の方法の何れか1つにより得ることが可能な1つ以上のモノテルペンエステルの、1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物を含む。
本発明は、燃料組成物の生産のための方法にも関し、この方法は、
a)本発明の方法の何れか1つにより酢酸リナリルを作製すること;
b)任意選択的に、段階a)で作製される酢酸リナリルを精製すること;及び
c)段階a)の酢酸リナリル又は段階b)の任意選択的に精製された酢酸リナリルを、燃料組成物に適切なさらなる化合物と組み合わせることによって燃料組成物を生成させること
の段階を含み;
この燃料組成物は、0.001%(w/w)~99.99%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)~99.9%(w/w)の酢酸リナリルを含む。
好ましくは、本燃料組成物はディーゼル燃料組成物であり、酢酸リナリルは、本明細書中の他の箇所に記載のような発泡剤として使用される。一般的には、少なくとも約0.5%(w/w)の酢酸リナリルは、本発明のこの方法によって調製される燃料組成物中に含まれる。
上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でモノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することを含む、モノテルペンエステルを調製するための方法は、本明細書中の他の箇所で記載されている。これは、変更すべきところは変更して、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼの存在下でリナロールを酢酸リナリルへとエステル化することを含む、酢酸リナリルを調製するための方法に適用される。この定義及び実施形態は、変更すべきところは変更して、本発明の、燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物又は組成物の生産のための方法に適用される。
好ましくは、1つ以上のモノテルペンエステルは、三級モノテルペンアルコールから、より好ましくはリナロール、ペリリルアルコール及び/又はアルファテルピネオールから、最も好ましくはリナロール及び/又はアルファテルピネオールから作製される。
本発明のこれらの方法の段階a)は、1つ以上のモノテルペンアルコールの提供のためのバイオベースの基質を使用する発酵系、好ましくは2相系で行われることが好ましい。バイオベースの基質は、生きている(又はかつて生きていた)生物由来の物質から意図的に作製される基質である。
好ましくは、本発明のこれらの方法の任意選択的な段階b)は、好ましくは次のものからなる群から選択される1つ以上の燃料又はバイオ潤滑剤化合物への変換前に発酵により産生されたモノテルペンエステルのさらなる精製のために必要な場合に使用される:
i.テトラヒドロリナロール;
ii.2,6-ジメチルオクタン(DMO);
iii.飽和C20炭化水素二量体;
iv.飽和C30炭化水素三量体;
v.水素付加メチルシクロペンタジエン二量体;
vi.発射体推進に適切な飽和高密度多環式炭化水素化合物;及び
vii.バイオ潤滑剤添加物を作製するために適切な水素付加C40+オリゴマー。
バイオベースの基質が発酵において使用され、次に発酵により産生されるモノテルペンエステルが前記燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物の生産のために使用される場合、前記燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物を含む、得られる燃料及び/又は潤滑剤組成物は、少なくとも一部、バイオベースの燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物であり、これは、輸送、交通及び航空の炭素フットプリントに関して有利である。
水素付加メチルシクロペンタジエン二量体の例として、RJ-4を図6で示す。
米国特許第9,816,043号明細書は、燃料及びバイオ潤滑剤添加物を製造するための方法を記載する。米国特許第9,802,873号明細書は、ラムジェット又は発射体推進に適切なドロップインの高密度燃料へのリナロールの変換のための方法を記載する。バイオ潤滑剤は、例えばhttps://www.sciencedirect.com/topics/agricultural-and-biological-sciences/biolubricantsに記載されている。
これは、例えばK.Belafi-Bako,in Handbook of Waste Management and Co-Product Recovery in Food Processing,Volume 1,2007;Ionic Liquids in the Production of Biodiesel and Other Oleochemicals by Bethala Lakshmi Anu Prabhavathi Devi,et al.,in Ionic Liquids in Lipid Processing and Analysis,2016;Production of fine chemicals from food wastes,V.Godvin Sharmila,et al.,in Food Waste to Valuable Resources,2020からのバイオ潤滑剤の編纂物及び総括にさらに言及される。
本発明の方法により生産される燃料及び/又はバイオ潤滑剤組成物は、ガソリン、ケロセン燃料、ジェット燃料、発射体燃料、重ディーゼル燃料、船舶燃料として及び/又は潤滑剤として使用され得る。本発明の方法により作製される燃料組成物の長所は、二酸化炭素フットプリントの改善、硫黄含量の減少、エンジンからの微粒子排出の減少及びディーゼル及びタービン適用の両方におけるより低いNox排出である。
本発明は、本発明の方法により作製されるモノテルペンエステルに大きく基づくガソリン、ケロセン燃料、ジェット燃料、発射体燃料、重ディーゼル燃料又は船舶燃料である燃料組成物に関する。
好ましくは、本燃料組成物はバイオ燃料組成物であり;例えば、https://doi.org/10.1016/B978-0-12-815162-4.00011-2;Second and Third Generation of Feedstocks;The Evolution of Biofuels;2019,Pages 291-320;Chapter 11-Physical properties and chemical composition of biofuels;Mohd Hafizil,MatYasin,Mohd Affandi Ali,Rizalman Mamat,Ahmad Fitri Yusop,Mohd HafizAliを参照のこと。
本発明の別の態様では、本発明の方法により作製される酢酸リナリルは、例えば国際公開第2019/201630号パンフレットで開示されるようなディーゼル燃料組成物中の発泡剤として使用され得る。酢酸リナリルの生成のための本明細書中に記載の発酵方法の使用は、例えば、ラベンダーのような価値が高い植物からそれを単離するか又は有害な炭素フットプリントを伴う化学合成を使用する必要なく、発酵産生が定められた量であり、天然リソースへの影響が少ないバイオベースの酢酸リナリルを供給するという長所を有する。
また、本発明は、好ましくは三級モノテルペンアルコールから、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は本発明の方法により作製されるモノテルペンエステルを含む、工業製品、好ましくは香味料又は香料、バイオ燃料、燃料組成物、燃料化合物、例えば、ディーゼル燃料組成物のための発泡剤、駆除剤、昆虫忌避剤又は抗菌剤に関する。このような工業製品は、少なくとも一部、上記(i)~(iv)のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は本発明の方法により発酵生産されるモノテルペンエステルが使用される場合、再生可能な資源に基づくとみなされ得る。さらに、天然又は天然様産生の物質は、多くの市場において石油に基づく合成代替物よりも魅力的であると考えられる。
本発明はさらに、1つ以上のモノテルペンエステルに対する微生物産生系に関し、この微生物産生系は、次のものを含む:
a.1つ以上の微生物の細胞;
b.上記(i)~(iv)の1つ以上のアルコールアシルトランスフェラーゼ;
c.少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコール;
d.(b)のアルコールアシルトランスフェラーゼが活性であるのに適切な量のアセチル-CoA;
e.(b)の1つ以上のアルコールアシルトランスフェラーゼが活性であるのに適切な水性媒体;及び
f.任意選択的に、(b)のアルコールアシルトランスフェラーゼにより産生される少なくとも1つのモノテルペンエステルが混和性となる非水性溶媒。
少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコール、及び/又はアセチル-CoAが添加され得、及び/又は1つ以上の微生物の細胞により産生され得る。
好ましくは、微生物は、本明細書中の他の箇所で示されるような細菌又は真菌であり、より好ましくは細菌はロドバクター属(Rhodobacter)である。
好ましくは、本発明の微生物産生系は、本明細書中の他の箇所で説明されるように、発酵系、好ましくは2相性の系で行われる。
有利に、本発明による微生物産生系は、本明細書中で定められるようなモノテルペンエステルの発酵生産において工業的に使用され得る。
本発明の宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物におけるモノテルペンエステルの発酵生産に関する定義及び実施形態は、変更すべきところは変更して、本発明の微生物産生系に適用される。
一実施形態では、微生物産生系は、少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコール、及び/又はアセチル-CoA及び/又は上記(i)~(iv)の1つ以上のアルコールアシルトランスフェラーゼの産生に対して誘導性である微生物細胞を含み得る。
好ましくは、微生物産生系は、少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコール、及び/又はアセチル-CoA及び/又は上記(i)~(iv)の1つ以上のアルコールアシルトランスフェラーゼ及び/又は1つ以上のモノテルペンエステルの十分な量が生成されたときに微生物を不活性化するか又は破壊する手段を含む。
モノテルペンに対する微生物産生系は当技術分野で公知であり;例えばZhang et al.,Biotechnol Adv.2017 Dec;35(8):1022-1031.doi:10.1016/j.biotechadv.2017.09.002.Epub 2017 Sep 6;Cao et al.,Appl Microbiol Biotechnol.2018 Feb;102(4):1535-1544.doi:10.1007/s00253-017-8695-5.Epub 2017 Dec 20)を参照されたい。
適切な発酵条件は、例えば国際公開第2011/074954号パンフレット又は同第2014/014339号パンフレットに記載されるロドバクター属(Rhodobacter)のための既知の方法に基づき得る。
配列
配列番号1は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(AAT9-1-c)のヌクレオチド配列に対応する。
配列番号2は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(AAT9-1-c)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号3は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(10056)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号4は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(1461)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号5は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(AAT9-1-a)のヌクレオチド配列に対応する対応する(corresponds to corresponds to)。
配列番号6は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(AAT9-1-a)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号7は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(AAT9-2-a)のヌクレオチド配列に対応する。
配列番号8は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(AAT9-2-a)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号9は、プライマーAAT9-1fwのヌクレオチド配列に対応する。
配列番号10は、プライマーAAT9-2fwのヌクレオチド配列に対応する。
配列番号11は、プライマーAAT9-1reのヌクレオチド配列に対応する。
配列番号12は、プライマーAAT9-2reのヌクレオチド配列に対応する。
配列番号13は、データベース受入番号XP_006493396で示されるアミノ酸配列に対応する。
配列番号14は、データベース受入番号UNIPROTKB-A0A2H5PUP1で示されるアミノ酸配列に対応する。
配列番号15は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの人工アミノ酸配列に対応する(内部名称「10056a」)。
配列番号16は、本発明のアルコールアシルトランスフェラーゼの人工アミノ酸配列に対応する(内部名称「1461a」)。
図1は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の変異体AAT9-1-c(配列番号2)、変異体AAT9-1-a(配列番号6)及び変異体AAT9-2-a(配列番号8)のアミノ酸配列の多重配列アライメントを示す。発明者らが重要であると判定した位置でこれらの配列において、太字及び斜字体を組み合わせることにより示した。 図2は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の変異体AAT9-1-cのヌクレオチド配列(配列番号1)及び変異体AAT9-1-cのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。 GC FIDクロマトグラムは、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)変異体AAT9-1-c(配列番号2)におけるリナロールから酢酸リナリルへの変換を示し、空のベクターpACYCDUET-1(対照)ではその変換を示さない。 図4は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)のアミノ酸配列(10056と呼ぶ)(配列番号3)及びラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(1461と呼ぶ)の他のアミノ酸配列(配列番号4)のアライメント(標準設定でNEEDLEアルゴリズムを使用)を示す。 図4-1の続き。 図5は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からの変異体AAT9-1-cのアミノ酸配列(配列番号2)、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(10056)のアミノ酸配列(配列番号3)及びラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(1461)のアミノ酸配列(配列番号4)の多重配列アライメントを示す。MEIEモチーフは、配列番号3及び4の始めで見られ得る。保存されるアミノ酸残基は、黒色の背景付きで示される。この図面における配列番号2に対する位置の番号付けは、図1におけるか又は配列リストにおける配列番号2の位置の番号付けと比較して異なる。配列番号3と4とのアライメントは、アライメントにおいて挿入が必要であり、その結果、この図面の配列番号2のタンパク質配列の末端に対する位置について見かけ上、より大きい数となった。 水素付加メチルシクロペンタジエン二量体の例としてRJ-4を示す。
ここで、次の実施例により本発明を例示するが、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。
実施例
実施例1:シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼのクローニング
直径約5cmの成熟段階前のシトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)の果実は、イタリアのカラブリアの果樹園で得られた。ゼスターを使用して、果実の皮の外側(フラべド)を回収した。予め冷却したガラスチューブ中で0.5gの植物材料の重量を測定し、2mLのジクロロメタンを添加した。懸濁液を1分間ボルテックス処理し、超音波浴中で5分間超音波処理し、室温にて1500gで5分間遠心分離した。上清を回収し、1g硫酸ナトリウムのカラムでろ過した。約2μLをCankar et al.(Biotechnol J.2015 Jan;10(1):180-9.doi:10.1002/biot.201400288.Epub 2014 Sep 18)により詳細に記載されるように、ガスクロマトグラフを使用してGC/MSによって分析した。ラセミ酢酸リナリル(Sigma-Aldrich)のオリジナル標準のものとの保持時間及び質量スペクトルの比較によって、酢酸リナリルを同定した。RNAの抽出のためにこの組織をさらに採取した。
シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)の根の物質のRNAを次のように単離した:約15mLの抽出緩衝液(2%ヘキサデシル-トリメチルアンモニウムブロミド、2%ポリビニルピロリドンK30、100mM Tris-HCl(pH8.0)、25mM EDTA、2.0M NaCl、0.5g/Lスペルミジン及び2%β-メルカプトエタノール)を65℃に温め、その後、3gの破砕組織を添加し、混合した。等体積のクロロホルム:イソアミルアルコール(1:24)で混合物を2回抽出し、10M LiClの四分の一の体積を上清に添加し、混合した。RNAを4℃で一晩沈殿させ、10000gで20分間の遠心分離によって回収した。500μLのSSTE[1.0M NaCl、0.5%SDS、10mM Tris-HC1(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0)]中でペレットを溶解し、等量のクロロホルム:イソアミルアルコールで1回抽出した。2体積のエタノールを上清に添加し、-20℃で少なくとも2h温置し、13000gで遠心分離し、上清を除去した。ペレットを風乾し、水中で再懸濁した。全RNA(60μg)をVertis Biotechnology AG(Freising,Germany)に送った。PolyA+RNAを単離し、ランダム化N6アダプタープライマー及びM-MLV H-逆転写酵素を使用してランダムプライムドcDNAを合成した。cDNAをせん断し、断片化し、さらなる分析のために500bpのサイズの断片を使用した。cDNAは、Illuminaにより定められるように、その5’-及び3’-末端に連結されるアダプター配列A及びBを保有した。次にその物質をIllumina HiSeqシーケンシング装置上で分析した。全部で93,001,205個の配列をHiSeqにより読んだ。Trimmomatic-0.32を使用してIlluminaシーケンシングアダプターからの配列を整え、Seqprepを使用して、対形成された末端配列を重複させ、bowtie2(バージョン2.2.1)を使用してphiX混入を除去した(phiX DNAは、通常<1%で存在するスパイクイン対照として使用される)。Trinityアセンブリ(trinityrnaseq-2.0.2)において、対形成された末端の読み取り及び単一読み取りを使用した。総数191,426個のコンティグがTrinityにより構築された。
アルコールアシルトランスフェラーゼを同定するために、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)コンティグを使用して、cDNA配列のデータベースを作成した。このデータベースにおいて、TBLASTNプログラムを展開して、特にロサ・ハイブリダ(Rosa hybrida)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(AAW31948.1)のタンパク質配列と同一性を示すタンパク質をコードするcDNA配列を同定した。アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)に対する顕著な相同性を有し、全長タンパク質をコードする、C.ベルガメア(C.bergamea)における全部で14個のコンティグが同定された。これらの14個のコンティグについて、UniProtデータベース(2019年8月28日ダウンロード)に存在するタンパク質配列とそれらをアラインするためにBLASTXプログラムを使用してそれらを分析することによって、特徴をさらに調べた。
シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)のcDNAから全長オープンリーディングフレームを増幅させた。表3で示されるようなフォワード及びリバースプライマーを設計し、これを使用して、プラスミドpACYC-DUET-1(Novagen)においてHis-6タグのC-末端に読み枠が融合されるように全翻訳領域を増幅させた。アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)挿入物をシーケンシングすることによって、クローニングされた変異体を分析した。全部で37個の異なるアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)オープンリーディングフレーム(ORF)をクローニングした。プライマーAAT9-1fw(配列番号9)及びAAT9-1re(配列番号11)及びプライマーAAT9-2fw(配列番号10)及びAAT9-2re(配列番号12)(表1参照)を使用して、3種類の異なる近縁関係のcDNAを得た。
シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのプライマー対AAT9-1fw(配列番号9)及びAAT9-1re(配列番号11)を用いて得られる3つの異なるアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)変異体は次の配列を示す:
配列番号1は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-1-c)のヌクレオチド配列に対応する。配列番号2は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-1-c AAT9-1-c)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号5は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-1-a)のヌクレオチド配列に対応する。配列番号6は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-1-a)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号7は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-2-a)のヌクレオチド配列に対応する。配列番号8は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(変異体AAT9-2-a)のアミノ酸配列に対応する。
図1は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の変異体AAT9-1-c(配列番号2)、変異体AAT9-1-a(配列番号6)及び変異体AAT9-2-a(配列番号8)のアミノ酸配列の多重配列アライメントを示す。太字及び斜字体により示されるこれらの位置において、配列番号2で見られるようなアミノ酸が本発明のAAT酵素において好ましい。
図2は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)の変異体AAT9-1-cのヌクレオチド配列(配列番号1)及び変異体AAT9-1-cのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
実施例2:シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ変異体AAT9-1-c(配列番号2)の活性
その後、配列番号2、6及び8を有するシトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのプライマー対AAT9-1fw(配列番号9)及びAAT9-1re(配列番号11)を用いて得られた3種類の異なるアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)変異体に対して、それらがリナロールを酢酸リナリルへと変換する能力について試験した。この目的のために、3種類の異なる変異体及び空のpACYC-DUET-1を熱ショック形質転換によって化学コンピーテントE.コリ(E.coli)BL21-RIL(Stratagene)に導入し、1%グルコース及び50ul/mlクロラムフェニコールが入っているLB寒天上で選択した。1%グルコース及び50ug/mlクロラムフェニコールが入っている5mlのLB液体培地に形質転換体を移し、37℃にて250rpmで一晩増殖させた。
200μLのこれらの培養物を100mLエーレンマイヤーフラスコ中の適切な抗生物質が入った20mLのLB培地に移し、A600が0.4~0.6になるまで37℃にて250rpmで温置した。その後、5mMリナロール(ラセミ)が補充された1mM IPTG及び2mlドデカンを添加し、培養物を18℃及び250rpmで一晩温置した。翌日、遠心分離(8000xgで10分)によってドデカン層を回収し、酢酸エチル中で希釈し、GC FIDにより分析した。
興味深いことに、アルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)変異体AAT9-1-c(配列番号2)は、リナロールの顕著な減少(Rt=11.15分)及び酢酸リナリルに対応するピークの出現(15.45分)を示した(図3)。明らかに、AAT9-1-cが発現されたときにリナロールが酢酸リナリルに変換された。1つの実験において、リナロールの約65質量%がエステル化され、別の実験では、発明者らによる予備的な推測によれば、約78質量%のリナロールがエステル化された。
このような変換は、空のベクターが発現されたとき又はAAT9-1-a(配列番号6)若しくはAAT9-2-a(配列番号8)が発現されたときには観察できず、AAT酵素の重要な位置での変化によって機能が低下し得ることが明らかになった。本発明のAAT酵素の重要な位置での好ましいタイプのアミノ酸を表1及び表2で与える。
AAT9-1-c(配列番号2)がリナロールに対して活性であることは確立されているので、AAT9-1-c又は空のpACYCDUET-1を発現するE.コリ(E.coli)細胞の存在下でモノテルペンアルコール及びセスキテルペンアルコールのセットを試験した。AAT9-1-c(配列番号2)の活性がモノテルペンアルコールゲラニオール、アルファテルピネオール及びベルベノールに対して観察され、対応するエステルを観察することができた。
セスキテルペンアルコールネロリドール、パチョロール、(-)-アルファ-ビサボロール及びセドロールは、それらの対応するエステルへの変換が観察されなかった。
従って、AAT9-1-c(配列番号2)は、一級、二級及び三級アルコールを受容するモノテルペンアルコール特異的なアシルトランスフェラーゼであると思われる。例えばリナロールは当技術分野で記載されるAAT酵素の一般に認められる基質ではないので、この結果は特に驚くべきことである。これらのAATに対する非基質としてそれを定めているリナロールの例外的な特性は、三級アルコールとみなされ得るリナロールにおけるアルコール基の位置により生じ得:アクセプターアルコール基が連結される炭素が、3個の炭素基に結合されている。三級アルコールは、おそらくアルコール基の立体的な接近可能性のため、酵素活性部位ポケットにより接近困難であることが多い。有利に、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ変異体AAT9-1-c(配列番号2)は、図3で示されるように、リナロールを酢酸リナリルへとエステル化することが可能である。
実施例3:シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ変異体AAT9-1-c(配列番号2)との配列比較
シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ変異体AAT9-1-c(配列番号2)とその不活性変異体AAT9-1-a(配列番号6)とAAT9-2-a(配列番号8)との間でタンパク質配列アライメントを行った(図1)。AAT9-1-c(配列番号2)及びAT9-1-a(配列番号6)は、位置371のアミノ酸1つのみが異なり、従って99.77%の同一性を共有する。AT9-1-aの位置371(配列番号6)は、トリプトファンで埋められる。トランスフェラーゼに対する他の候補も配列番号2の位置371又は372に対応する位置でトリプトファンを有するので、これは興味深い。BAHD酵素スーパーファミリーに対して、DFGWGモチーフが当技術分野で記載されており(Ma et al.(2005),Journal of Biological Chemistry,Vol 280,pages13576-13583)、AAT9-1-c(配列番号2)及びAT9-1-a(配列番号6)の位置371前後は、このDFGWGモチーフが予想される領域である。AAT9-1c(配列番号2)は、AAT9-2-a(配列番号8)と81.60%同一である。
特徴付けられるタンパク質のSWISSPROTデータベース(2020/09/15にアップデート)に対するAAT9-1-c配列(配列番号2)のBLASTP分析から、最も近縁に特徴付けられるタンパク質が、カタランサス・ロセウス(Catharanthus roseus)からのステマデニンO-アセチルトランスフェラーゼ(CrSAT)(A0A2P1GIW7.1;34.3%同一)、ラウボルフィア・セルペンチン(Rauvolfia serpentine)からのビノリンシンターゼ(Q70PR7.2;35.7%)、カタランサス・ロセウス(Catharanthus roseus)からのミノビンシニン19-ヒドロキシ-O-アセチルトランスフェラーゼ(Q8GZU0.1;35.4%)及びパパベル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)からのサルタリジノール7-O-アセチルトランスフェラーゼ(salAT)(Q94FT4.1;34.5%)をコードすることが明らかになる。これらの酵素のそれぞれは、(リナロールと比較して)非常に複雑なアルカロイド分子のアセチル化に関与し、発明者らは、ビノリンシンターゼファミリーの一部としてそれらを定める。本発明の新規アルコールアシルトランスフェラーゼ酵素はサルタリジノールなどの非常に複雑なフェノール性物質において作用するアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)のファミリーと最も近縁関係であるので、この知見は予想され得なかった。
GenBankデータベース(2020/09/14にアップデート)に対するAAT9-1-c配列(配列番号2)のBLASTP分析から、最も近縁関係の配列が、シトラス・シネンシス(Citrus sinensis)からのビノリンシンターゼ様のもの(XP_006493396.1;88.5%)、シトラス・ウンシュウ(Citrus unshiu)からの仮説的なタンパク質CUMW_168950(GAY56063.1;88.3%)、シトラス・シネンシス(Citrus sinensis)からの仮説的なタンパク質CISIN_1g044243mg(KDO41287.1;82.16%)及びシトラス・クレメンチナ(Citrus clementina)からのビノリンシンターゼ(XP_006423966.1;81.9%)として注釈を付けられるものなど、柑橘種からのタンパク質をコードすることが明らかになる。明確に、これらのタンパク質に対する機能は、アルコールアシルトランスフェラーゼに対するそれらの相同性による以外、まだ同定されていない。
実施例4:ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)におけるアルコールアシルトランスフェラーゼの同定
発明者らは、ラバンデュラ属(Lavandula)においても、ベルガモットと同じように、ビノリンシンターゼファミリーのメンバーがアルコールアシルトランスフェラーゼに対する候補であると判断した。従って、RhAATタンパク質配列(AAW31948.1)を使用してTBLASTNによりTranscriptome Shotgun Assembly of BioProject PRJNA391145(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/bioproject/?term=txid1196215[Organism:noexp])において存在する配列データを検索し、16種類のタンパク質のセットが明らかとなった。これらの間で、2つのタンパク質配列は、ctg1461(41.9%同一)及びctg10056(35.3%)によりコードされるAAT9-1-c(配列番号2)に対して顕著な相同性を有した。予想される、不完全なタンパク質配列の手作業での編集の結果、候補リナロールアルコールアシルトランスフェラーゼとみなされる配列が得られた。配列番号3は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(10056)のアミノ酸配列を示す。配列番号4は、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(1461)のアミノ酸配列を示す。言及される配列を図4で示す。しかし、最初の試験は、配列番号3及び4の2種類のアルコールアシルトランスフェラーゼが基質としてリナロールを好み得ないが、他のアルコールと作用し得ることを示した。
図5は、シトラス・ベルガミア(Citrus bergamia)からのリナロールアセチルトランスフェラーゼ変異体AAT9-1-cのアミノ酸配列(配列番号2)、ラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(10056)のアミノ酸配列(配列番号3)及びラバンデュラ・アングスチフォリア(Lavandula angustifolia)からのアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)(1461)のアミノ酸配列(配列番号4)の多重配列アライメントを示す。
それぞれ配列番号3及び4と比較して突然変異がある合成配列を作製した(それぞれ配列番号15及び16)。リナロールアセチルトランスフェラーゼAAT9-1-c(配列番号2)及び配列番号13及び14の他の配列とのアライメントに基づいて、発明者らは、配列番号3及び4のトリプトファンを配列番号2の対応する位置で見られるアミノ酸で意図的に置換した。
リナオール(linaool)から酢酸リナリルへの変換及び他のアルコールアシルトランスフェラーゼ作用について配列番号15及び16を試験する。

Claims (15)

  1. a)配列番号2、配列番号15又は配列番号16の配列の何れか1つで示されるようなアミノ酸配列;
    b)i)配列番号2とアミノ酸レベルで少なくとも89%の配列同一性を有するアルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列又はii)アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、配列番号15又は配列番号16と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及び
    c)a)又はb)のアミノ酸配列の断片
    からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、アルコールアシルトランスフェラーゼ。
  2. 好ましくは36時間以内に、より好ましくは微生物細胞において、三級モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記三級モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能である、請求項1に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼ。
  3. 30℃で及び6.0~8.5の範囲のpHで、及び基質が限定されていない条件下で、三級モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも50μgのモノテルペンエステル/分及びアルコールアシルトランスフェラーゼ/gが生成されるようにすることが可能である、請求項1又は2に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼ。
  4. 請求項1、2若しくは3に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼ又はその相補的配列をコードする核酸配列を含む、核酸。
  5. 請求項4に記載の核酸を含む、ベクター又は遺伝子コンストラクト。
  6. 好ましくは細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞又は藍藻細胞、非ヒト動物細胞又は非ヒト哺乳動物細胞又は植物細胞、より好ましくは細菌細胞、酵母細胞又は真菌細胞である、請求項5に記載のベクター又は遺伝子コンストラクトを含む宿主細胞。
  7. 請求項4に記載の核酸、請求項5に記載のベクター若しくは遺伝子コンストラクト又は請求項6に記載の宿主細胞を含む、トランスジェニック非ヒト生物。
  8. モノテルペンエステルを調製するための方法であって、次のもの:
    (i)
    a)配列番号2、配列番号15若しくは配列番号16の配列の何れか1つで示されるようなアミノ酸配列を有する;又は
    b)アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、配列番号2、配列番号15若しくは配列番号16とアミノ酸レベルで少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、
    アシルアルコールトランスフェラーゼ;又は
    c)アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、a)若しくはb)のアミノ酸配列の断片又は、
    (ii)データベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列、又はデータベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルにエステル化することが可能である、アルコールアシルトランスフェラーゼ、又は
    (iii)配列番号2の位置371及び372のアミノ酸に対応するアミノ酸がトリプトファンではない、(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼ、又は
    (iv)表1で示される配列番号2の位置に対応する位置でその位置に対する表1で列挙されるアミノ酸の何れかを、若しくは表2で示される配列番号2の位置に対応する位置で表2で列挙されるアミノ酸を、さらに含み、モノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することが可能である、(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼ;
    (v)好ましくは36時間以内に、より好ましくは微生物細胞において、モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記モノテルペンアルコールがエステル化されるようにすることが可能である、i)~iv)の何れかのアルコールアシルトランスフェラーゼ;又は
    (vi)30℃及び6.0~8.5の範囲のpH及び基質が限定されていない条件下で、モノテルペンアルコールをエステル化して、少なくとも50μgのモノテルペンエステル/分及びアルコールアシルトランスフェラーゼ/gが生成されるようにすることが可能である、i)~v)の何れかのアルコールアシルトランスフェラーゼ
    の存在下でモノテルペンアルコールをモノテルペンエステルへとエステル化することを含む、方法。
  9. 前記モノテルペンアルコールが、一級、二級又は三級モノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールである、請求項8に記載の方法。
  10. 酢酸リナリルを調製するための方法であって、次のもの
    (i)
    a)配列番号2、配列番号15又は配列番号16の配列の何れか1つで示されるようなアミノ酸配列を有する;又は
    b)リナロールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、配列番号2、配列番号15又は配列番号16とアミノ酸レベルで少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、
    アルコールアシルトランスフェラーゼ;又は
    c)リナロールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、a)若しくはb)のアミノ酸配列の断片;
    又は
    (ii)データベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列又はデータベース受入番号XP_006493396(配列番号13)若しくはUNIPROTKB-A0A2H5PUP1(配列番号14)で示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である、アルコールアシルトランスフェラーゼ、又は
    (iii)配列番号2の位置371及び372のアミノ酸に対応するアミノ酸がトリプトファンではない、(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼ又は、
    (iv)表1で示される配列番号2の位置に対応する位置でそれらの位置に対する表1で列挙されるアミノ酸の何れかを、若しくは表2で示される配列番号2の位置に対応する位置で表2で列挙されるアミノ酸を、さらに含み、リナロールを酢酸リナリルにエステル化することが可能である、(i)若しくは(ii)のアルコールアシルトランスフェラーゼ;又は
    (v)好ましくは36時間以内に、より好ましくは微生物細胞において、リナロールをエステル化して、少なくとも30質量%の前記リナロールがエステル化されるようにすることが可能であるi)~iv)の何れかのアルコールアシルトランスフェラーゼ;又は
    (vi)30℃及び6.0~8.5の範囲のpH及び基質が限定されていない条件下で、リナロールをエステル化して、少なくとも50μgモノテルペンエステル/分及びアルコールアシルトランスフェラーゼ/gが生成されるようにすることが可能である、i)~v)の何れかのアルコールアシルトランスフェラーゼ
    の存在下でリナロールを酢酸リナリルにエステル化することを含む、方法。
  11. 前記アルコールアシルトランスフェラーゼが、GPPシンターゼ及び/又はS-又はR-リナロールシンターゼと組み合わせて使用される、請求項8、9又は10に記載の方法。
  12. 請求項8に記載のモノテルペンエステル又は請求項10に記載の酢酸リナリルが、前記アルコールアシルトランスフェラーゼを発現する、請求項6に記載の宿主細胞又は請求項7に記載の非ヒトトランスジェニック生物において調製される、請求項8、9又は10に記載の方法。
  13. (i)テルペン生合成経路の異種再構成のための;
    (ii)工業製品、好ましくは香味料又は香料、バイオ燃料、燃料組成物、燃料化合物、駆除剤、昆虫忌避剤又は抗菌剤を作製するための;
    (iii)モノテルペンアルコールから、好ましくは三級モノテルペンアルコールから、脂肪族及び/又は芳香族モノテルペンエステルを作製するための;
    (iv)好ましくは細菌又は真菌である微生物においてモノテルペンアルコールを解毒し、それにより前記微生物におけるモノテルペン産生を増加させるための;
    (v)GPPシンターゼ及び/又はS-又はR-リナロールシンターゼと組み合わせた;
    (vi)前記モノテルペンアルコールと比較して、疎水性酢酸分配が有機相へとより容易に行くという点においてアセチル化の有益な効果を増強するための;
    (vii)請求項1、2若しくは3に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼを発現させて、酢酸モノテルペンとモノテルペンアルコールとの比が5:1若しくは10:1より大きくなるようにするための;又は
    (viii)モノテルペンエステルを産生させるための微生物産生系における、
    請求項8又は10に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼ、請求項4に記載の核酸、請求項5に記載のベクター若しくは遺伝子コンストラクト、請求項6に記載の宿主細胞又は請求項7に記載のトランスジェニック非ヒト生物の使用。
  14. 請求項8又は10に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼ、好ましくは請求項1、2又は3に記載のアルコールアシルトランスフェラーゼ、請求項4に記載の核酸、請求項5に記載のベクター及び/又は遺伝子コンストラクト、請求項6に記載の宿主細胞及び/又は請求項7に記載のトランスジェニック非ヒト生物、及び任意選択的に少なくとも1つのモノテルペンアルコール、好ましくは三級モノテルペンアルコールを含む、キット。
  15. 燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物の作製のための方法であって、
    a)請求項8~12に記載の方法の何れか1つによって1つ以上のモノテルペンエステルを作製し;
    b)任意選択的に、段階a)で作製された1つ以上のモノテルペンエステルを精製し;
    c)燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物として、段階a)の1つ以上のモノテルペンエステル又は段階b)の任意選択的に精製された1つ以上のモノテルペンエステルの一部若しくは全てを使用し;及び/又は段階a)の1つ以上のモノテルペンエステル又は任意選択的に精製された段階b)の1つ以上のモノテルペンエステルの一部又は全てを、1つ以上の燃料及び/又はバイオ潤滑剤化合物へと変換する、
    段階を含む、方法。
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