JP2023546923A - 神経系障害を処置するためのスラミンの鼻腔内投与 - Google Patents

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Abstract

本発明は、認知、社会性または行動の能力障害、および神経発達障害などの神経系障害を鼻腔内(IN)処置するための方法および組成物を提供する。より具体的には、本発明は、スラミンの鼻腔内投与が、これらの能力障害および障害に関連する症状または症状発現のうちの1つまたは複数を回復するか、またはその改善を提供するのに有効であることを実証する。一部の実施形態では、本発明は、鼻粘膜で高いレベルの薬物を提供するための鼻腔内投与によって血液脳関門を通過するスラミンの送達を最大化するための手段を提供する。

Description

発明の分野
本発明は、認知、社会性または行動の能力障害、神経発達障害、精神障害、神経障害、および中枢神経系障害を含む神経系障害を処置するための方法および組成物を提供する。より具体的には、本発明は、これらの障害に関連する症状および症状発現を処置または回復させるための、治療有効量の抗プリン作動剤であるスラミンならびにその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグを鼻腔内(IN)送達するための鼻スプレー製品のための方法および組成物を提供する。
発明の背景
神経系障害は、それらの症状発現が軽症または重症かにかかわらず、米国および世界中で多くの個体に影響を及ぼしている。これらの障害は、個々の患者を超えて影響を有し、概して家族のメンバー、介護者、および社会に影響を及ぼす。
神経系障害としては、認知、社会性または行動の能力障害、神経発達障害、精神障害、神経障害、および中枢神経系(CNS)障害が挙げられる。これらの神経系障害としては、とりわけ、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病、アンジェルマン症候群(AS)、ならびにライム病および他のダニ媒介疾患に関連する場合が多いCNS障害の症状発現、ならびにそれらの長期的な影響を含む、COVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連する神経系および中枢神経系(CNS)障害が挙げられる。神経系障害のこのリストは例示的なものであり、本発明から利益を受け得る多くの他のものが存在することに留意されたい。これらの例示される障害のための現在の処置は、限定的であり、多くの場合、特異的な症状、例えば、発作、不安、うつ、注意欠陥/多動、睡眠障害、認知機能障害などを標的にしている。この領域において多くの研究があり、そのような処置のための新たなまたは公知の治療剤についての可能性が存在するが、これらの薬剤をどのようにして安全かつ効果的に投与するか、ならびに最適な用量および投薬レジメンがどのようなものであり得るかは必ずしも明らかではない。実施例に示されるように、抗プリン作動剤は、先験的に予測されないであろう薬物動態学的および薬力学的処置レジメンによりこれらの障害を処置するために投与することができることが本明細書において実証される。これらの薬剤は、科学文献で以前に開示または企図されていない投薬量および頻度で投与され、これが、経時的な薬剤の有効性と血中レベルとの間の動的な非線形相関の発見をもたらした。
自閉症は、遺伝的要因および環境要因の組合せに関連しており、米国における発生率が子供約60人に1人であることが報告されている。自閉症についての全世界の発生数は、約2,500万人と推定されている。自閉症は、社会的スキル、反復行動、発話、および非言語的コミュニケーションを伴う課題によって特徴付けられる広範囲の症状を含むので、自閉症スペクトラム障害(ASD)とも称される。2013年に、米国精神医学会は、4つの別個の自閉症の診断を自閉症スペクトラム障害という単一の診断に統合した。これらの診断には、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群が含まれる。自閉症の徴候および症状は、通常、2歳または3歳までに現れる。自閉症スペクトラム障害は、脳の発達に関する状態であり、どのように人が他者を認知し、社会化するかに影響を与え、社会的相互作用およびコミュニケーションにおける問題を引き起こす。この障害は、行動の限定的および反復的なパターンも含み得る。
研究は、以下の参考文献に記載されているように、早期の介入がポジティブな転帰をもたらし得ることを示している:Chaste P, Leboyer M (2012). "Autism risk factors: genes, environment, and gene-environment interactions". Dialogues in Clinical Neuroscience. 14 (3): 281-92. PMC 3513682. PMID 23226953;および Centers for Disease Control and Prevention Morbidity and Mortality Weekly Report, Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 8 Years - Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network, 11 Sites, United States, 2014 Surveillance Summaries / April 27, 2018 / 67(6);1-23。
現在、自閉症スペクトラム障害の治療法も、中核症状を処置するための米国FDAが承認した薬もない。米国精神医学会(APA)の精神疾患の分類と診断の手引(DSM-V)の診断基準によれば、自閉症スペクトラム障害の中核症状としては、関係性の発生、維持および理解の困難をもたらす社会的-情動的相互性の持続的な欠陥;言語的および非言語的な社会的コミュニケーションの欠陥;ならびに行動、興味または活動の制限的な反復パターンが挙げられる。ASDを有する人々は、環境の感覚的態様における感覚入力に対する高反応性もしくは低反応性または異常な興味、現在の機能の社会的、作業的または他の重要な領域における臨床的に大きな影響を与える機能障害、認知機能障害、衝動性、注意欠陥および多動症状、睡眠障害、胃腸の病気および食物/化学物質過敏症、異常な食習慣、うつ、気分障害、不安、発作、易刺激性、感情爆発、自己に対し得るまたは他者に対し得る、時には暴力的な行動を含む、多くの関連する(すなわち、非中核)症状を有する場合が多い。
これらの中核症状の有病率にもかかわらず、代わりに、現在の療法の中心は、さまざまな薬、例えば、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、興奮薬、または不眠症のための薬を用いる付随する非中核症状の一部を処置することである。しばしば現れる非中核症状としては、うつ、発作、不安、睡眠障害、多動、集中力の低下(trouble focusing)が挙げられる。また、行動療法、作業療法および言語療法、ならびに他の非薬理学的介入が用いられている。しかしながら、自閉症の正確な原因は、完全に理解されておらず、そのため、新たな薬物の開発プログラムの課題の一因になっている。
脆弱X症候群(FXS)は、米国のおよそ4,000人に1人に影響を及ぼすまれな遺伝性神経発達障害である。これは、非常に可変の認知的および行動的症状発現に関連し、多くのASDと重複する特性を有する。これは、遺伝的変異がX染色体上で起こることを意味する、X連鎖性障害である。FXSでは、FMR1遺伝子中にトリヌクレオチド反復伸長が存在する。トリヌクレオチド伸長は、3つのヌクレオチド塩基対の配列が、複数回、不適切にそれが繰り返される特定の遺伝子の変異である。FXSの場合では、繰り返されるトリヌクレオチド配列は、シトシン-グアニン-グアニン(CGG)である。通常、このDNAセグメントは、5~約40回繰り返される。FXSを有する人では、このセグメントは、200回超繰り返される。これは、典型的には、機能的なFMR1 mRNA転写物を産生しないという結果をもたらし、この転写物によって正常にコードされるタンパク質(脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP))も存在しない。
脆弱X関連振戦/運動失調(FXTAS)は、FXSと異なる障害であるが、FXSと遺伝的に関係している。これは、通常、50歳よりも上の男性に影響を及ぼす「成人発症」のまれな遺伝性神経変性障害である。女性は、FXTAS集団のごく一部を占めており、それらの症状は、あまり重症ではない傾向がある。FXTASは、神経系に影響を及ぼし、異なる個人においてさまざまな速度で進行する。
FXS患者は、FMR1遺伝子中に「完全な変異」(典型的には、200をはるかに超えるCGGトリヌクレオチド反復)を有するが、FXTASを有する患者は、55~200の範囲のCGGトリヌクレオチド反復数を有するので、FMR1遺伝子の前変異(premutation)の「保因者」と考えられる。FMR1遺伝子の機能は、脳の発達において重要でありならびにニューロン間のシナプス結合の維持および調節のためのタンパク質(FMRP)を作ることである。研究者は、(未知の理由で)前変異を有すると、FMR1 mRNA(伸長した反復を含む)の過剰産生をもたらすと考えている。研究者はまた、高レベルのmRNAがFXTASの徴候および症状を引き起こすものであると疑っているが、これらの仮説を確認するためにはより多くの研究を必要とする。
FXTASを有する個体は、通常、55歳以降で症状を経験する。前変異の保因者、特に男性が年をとるにつれて、症状を経験する可能性が上昇する。この可能性は、前変異の男性について75歳までに75パーセントに達する。記憶喪失、発話の減速、振戦、および引きずり歩行を含む症状の進行は、緩やかであり、振戦および転倒による日常活動の妨害は、最初の症状の開始からおおよそ10年後に起こる。杖または歩行器への依存は、最初に障害の症状を示してからおよそ15年後に起こる。FXTASを有する一部の人は、症状のより迅速な悪化を引き起こす急性疾病、大手術、または他の主要な生活のストレス要因による段階的な進行(すなわち、症状がある期間プラトーに達するが、次いで突然悪化する)を示す。
FXTASの有病率は不明であるが、現在の推定は、脆弱Xを有する者を有することが既に知られている家族内で、50歳超の男性のFMR1前変異保因者の約30%~40%が、最終的にFXTASの一部の特性を示すことを示唆している。FXTASのためのFDAが承認した療法はなく、現在使用されている処置は、病態生理学それ自体を標的にするのではなく、状態の症状を対処するのみである。
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、衰弱性であり得る。慢性疲労症候群はまた、筋痛性脳脊髄炎(ME)、または筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という組合せ用語で称され、これは、複雑で、可変の症状の疲労させる長期間の病状である。ME/CFSは、労作後倦怠感(PEM)と称される、身体活動または精神活動後の症状の悪化を引き起こし得る。ME/CFSを有する患者はまた、多くの場合、睡眠障害、関節痛および筋肉痛、認知機能障害、ならびに著しい起立効果を有する。ME/CFSを患っている患者は、多くの場合、日常生活の日常的な活動を完了するのに非常に低下した機能的能力を有する。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、不安障害として分類され、衰弱性でもあり得る。PTSDは、人が、衝撃的な出来事(traumatic event)、例えば、戦争、性的暴行、または他の重大な衝撃的な出来事に曝された後に発生し得る。PTSDの症状としては、過覚醒、易刺激性、怒り、うつ、心を乱す思考、感覚、夢、または他の衝撃的な出来事の侵入性想起(intrusive recollection)、およびまた心的外傷関連の合図に対する精神的または身体的苦痛が挙げられ得る。PTSDの症状は、長く続き、重大な機能障害をもたらし得る。
トゥレット症候群(TS)は、複数の動き、すなわち、運動性チック、および少なくとも1つの声に関するもの、すなわち、音声チック(phonic tic)によって特徴付けられる神経発達障害である。TSは、典型的には、小児期または青年期に開始する。チックは、典型的には、影響を受けた筋肉の望まない、制御できない衝動または感覚が先行する。これらのチックの例としては、まばたき、咳、咳払い、嗅ぐ動作、および顔面運動が挙げられる。正確な原因は知られていないが、TSが遺伝的要因および環境要因の組合せと関わると考えられている。より具体的には、基底核と脳の関係する構造との間の神経回路の機能不全の関与が存在し得る。現在のところ、TSのための治療法はない。ハロペリドール(Haldol)、ピモジド(Orap)、およびアリピプラゾール(Abilify)は、現在、チックを処置するための米国食品医薬品局(FDA)によって承認された唯一の薬であり、しかしながら、これらの薬はすべて、重大な急性の副作用および長期にわたる副作用を有する。
パーキンソン病(PD)は、運動系に影響を及ぼす神経系の変性障害である。この疾患の正確な原因は知られておらず、遺伝的要因および環境要因の両方と関わり得る。PDの運動症状としては、振戦、硬直、動作緩慢、および歩行困難が挙げられる。これらの運動症状は、パーキンソニズムまたはパーキンソン症候群としても公知である。また、うつ、不安、感情鈍麻、認知症、睡眠障害、および知覚障害を含む、認知、気分および行動の症状が存在し得る。PDに関連する物理的神経学的変化は、中脳の一領域である黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの死に関連している。この細胞死は、ドーパミン不足に関連する。
アンジェルマン症候群(Angelman’s syndrome)としても公知のアンジェルマン症候群(Angelman syndrome)(AS)は、神経系に影響を及ぼす遺伝性障害である。この症候群の身体的特徴としては、小頭症(すなわち、小さい頭部)、小さい頭部などの身体的特徴に加えて、眼角隔離症またはディストピア眼角(dystopia canthorum)(すなわち、眼瞼の内側角の間の距離の増加)、広い口、ならびに先細の指、異常なヒダ、および幅広い親指を伴う手が挙げられる。この症候群は、重度知的障害、発育障害(例えば、機能的発声の欠如)、発作(例えば、てんかん発作)、バランスおよび動作の問題、ならびに睡眠の問題に関連する。また、ASを有する個体の脳波(EEG)は、通常、異常である。しかしながら、ASを有する個体は、幸福な人格を有し、優しく、人的交流を求める。現在、ASのために利用可能な治療法はない。てんかんは、1種または複数種の抗けいれん薬の使用によって制御することができる。しかしながら、ASを有する人は複数の種類の発作を有する場合が多いので、制御を確立するために必要な抗けいれん薬のレベルおよび種類を突き止めることは困難である。
ライム病(LDと省略される場合がある)は、クロアシダニまたはシカダニによって主に運ばれる細菌のBorrelia burgdorferiおよびBorrelia mayoniiによって引き起こされる感染性疾患である。これは、感染したダニの咬みつきによって血流に伝播する。スピロヘータとして存在し得るグラム陰性細菌種のBorrelia burgdorferiは、疾患に対する主要な原因種である。ライム病感染の共通の徴候は、遊走性紅斑として公知の拡大する赤い円形の発疹であり、これは、ダニの咬みつきが起こった約1週間後にその部位に現れる。感染の初期症状としては、発熱、頭痛、および疲労が挙げられ得る。未処置の場合、感染は、より重症の神経障害の症状発現、例えば、顔の片側または両側を動かす能力の喪失、関節痛、頸部硬直を伴う重度の頭痛、心臓の動悸、チクチク感、電撃痛(shooting pain)、記憶喪失、および疲労に進行し得る。
COVID-19としても公知のコロナウイルス疾患2019は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる感染性疾患である。この疾患は、最初に、中華人民共和国湖北省武漢で2019年に特定された。コロナウイルス感染症の共通の症状としては、発熱、咳、疲労、息切れ、ならびに嗅覚および味覚の喪失が挙げられる。大部分の症例は軽度の症状をもたらし、2週間以内に消散するが、一部の症例は、ウイルス性肺炎、多臓器不全、サイトカインストーム、ならびに永続的な組織および臓器の損傷、例えば、肺損傷、心臓および腎臓損傷、ならびに死亡に進行し得る。この疾患は、最も高いリスクがある者について不良転帰を伴って、特に重篤であり得る。重症のCOVID-19疾病に対するより重篤なリスク因子の一部としては、喘息、慢性肺疾患、糖尿病、重篤な心臓状態、透析によって処置されている慢性腎疾患、重篤な肥満、65歳およびそれよりも年長の人、ナーシングホームまたは長期ケア施設の人、および免疫無防備状態の者(がんの化学療法、免疫学的処置を受けている患者、または移植レシピエントなど)が挙げられる。しかしながら、神経系(CNS)の関与、肺/心臓/腎臓機能障害、および以前のCOVID-19感染を有する患者における神経学的症状発現によって特徴付けられる長期間の疾病の証拠が増加している。最初のCOVID-19感染の重症度とその後の長期間の後遺症との間の直接の相関はない。Ali A Asadi-Pooya and Leila Simani, Central nervous system manifestations of COVID-19: A systematic review, J Neurol Sci, 2020 Jun 15;413:116832. doi: 10.1016/j.jns.2020.116832. Epub 2020 Apr 11を参照されたい。これらの症状の多くは、典型的な回復期後に現れるまたは持続する長期間の後遺症によって特徴付けられる状態である「ロングCOVID」として一般に公知のものに関連する。
抗プリン作動剤は、プリン受容体に拮抗する化合物のファミリーを構成する。これらの受容体は、生体内で最も豊富な受容体である。これらは、進化の初期に現れ、細胞機能の調節に関与する。P1、P2X、およびP2Y受容体として公知のプリン受容体の3つの公知の別個のクラスがある。また、プリン作動性シグナル伝達は、細胞外シグナル伝達の形態である。このシグナル伝達は、プリンヌクレオチド、ならびにアデノシンおよびアデノシン三リン酸(ATP)などのヌクレオシドによって媒介される。このシグナル伝達は、その細胞中および/または近くの細胞中のプリン受容体の活性化に関わり、それによって、細胞機能を調節する。中枢神経系のプリン受容体は、シナプスに関するプロセスにおいて重要な役割を果たし、アデノシン三リン酸(ATP)またはアデノシンの放出に対する応答として、ニューロンとグリア細胞との間の細胞間コミュニケーションを媒介する。
プリン受容体に影響を及ぼす化合物が公知である。これらのうちの1つは、1900年代初めに最初に合成され、抗プリン性活性を有することが見出された化合物であるスラミンである。スラミンは、Trypanosoma brucei種の原生動物によって引き起こされ、より一般には、アフリカ睡眠病として公知の寄生虫性疾患であるトリパノソーマ症を処置するために使用される薬である。この薬物は、河川盲目症として一般に公知のオンコセルカ症を処置するためにも使用される。スラミンは、経口での生物学的利用率が低いので、静脈への注射によって投与される。しかしながら、アフリカ睡眠病(トリパノソーマ症)の処置のために必要な用量で、スラミンは、いくつかの副作用を引き起こす。これらの副作用としては、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、および一般的な不快感が挙げられる。他の副作用としては、蟻走感またはチクチク感などの皮膚感覚、手のひらおよび足底の圧痛、四肢のしびれ感、涙目、発疹、および羞明が挙げられる。加えて、薬物が高用量で投与された場合、末梢神経障害のように、腎臓毒性が一般的である。その薬物動態に関して、スラミンは、血清中でおよそ99~98%タンパク質と結合し、50日の平均で41~78日の半減期を有する。また、スラミンは、広く代謝されず、腎臓によって排泄される。スラミンは、生理学的pHで6つの負電荷を有する、大きなポリアニオン性ナフチルウレア化合物である。これらの要因に起因して、スラミンは、生体膜を通過して容易に拡散することができず、これが血液脳関門または血液脳脊髄液関門を通過できないようにする。1%未満のスラミンが中枢神経系に入ると推定される。したがって、抗プリン性処置としてスラミンを効果的に利用する多くの課題がある。
前述から、神経系障害の処置に課題が残されていることは明らかである。一部の初期の動物およびヒト研究からの前途有望な結果にもかかわらず、スラミンなどの抗プリン作動剤についての投与の安全で効果的な手段を提供するために多くの研究が依然として必要であることが認識されている。血液中およびCNS外の他の身体組織における全身レベルも最小限にしながら、脳組織に適切なレベルの薬物を送達することが必要であり得るか、または望ましくあり得る。しかしながら、ヒトを含むほとんどの哺乳動物の天然の防御機構である血液脳関門(「BBB」)を通過して薬物を送達することは困難である。血液脳関門は、循環血液中の溶質がニューロンが存在する中枢神経系の細胞外液に非選択的に入ることを防止する内皮細胞の非常に選択的な半透性境界である。血液脳関門を通過するそのような送達は、高分子量または高電荷の化合物にとってさらに困難である。例えば、スラミンは、およそ1300g/molの分子量を有する。
驚くべきことに、抗プリン作動剤であるスラミンを、潜在的に、安全で効果的に鼻腔内投与して、ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、ならびにそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現などの障害に関連するいくつかの行動の欠陥の改善を達成することができることを本発明において見出した。具体的には、予想外にも、本明細書で用いたスラミンを投与する方法が、不安または不安様行動、環境を探索する意欲、社会的相互作用、空間学習および記憶、易刺激性、激越および/または泣き、嗜眠および/または社会的離脱、常同行動、多動および/または不服従、ならびに制限的および/または反復行動の行動の尺度の改善を実証したことを見出した。さらにまた、驚くべきことに、抗プリン作動剤であるスラミンを、潜在的に、安全で効果的に鼻腔内投与して、ある特定の透過増強剤が用いられた場合に脳組織中の薬物の適切なレベルを達成することができることを本発明において見出した。具体的には、驚くべきことに、メチルベータ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールなどの透過増強剤が、粘膜組織の改善された透過を有する鼻腔内スラミン製剤を調製するために特に有用であることを見出した。これらの組成物はまた、スラミン薬物活性体の全身の血中レベルを最小限にしながら脳組織を標的するというさらに予想外の利点を有する。したがって、これらの組成物は、神経系障害およびそれらに関連する症状発現を処置するための有用性を有するであろう。
Chaste P, Leboyer M (2012). "Autism risk factors: genes, environment, and gene-environment interactions". Dialogues in Clinical Neuroscience. 14 (3): 281-92. PMC 3513682. PMID Centers for Disease Control and Prevention Morbidity and Mortality Weekly Report, Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 8 Years - Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network, 11 Sites, United States, 2014 Surveillance Summaries / April 27, 2018 / 67(6);1-23 Ali A Asadi-Pooya and Leila Simani, Central nervous system manifestations of COVID-19: A systematic review, J Neurol Sci, 2020 Jun 15;413:116832.
発明の概要
認知、社会性または行動の能力障害などの神経系障害の処置のための方法および組成物を記載する。これらの障害としては、神経発達障害、例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病(PD)、アンジェルマン症候群(AS)、ならびにライム病および他のダニ媒介疾患に関連する場合が多いCNS障害の症状発現、ならびにそれらの長期的な影響を含む、COVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連する神経系および中枢神経系(CNS)障害が挙げられる。より具体的には、本発明は、治療有効量の抗プリン作動剤であるスラミンならびにその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグを含む鼻スプレーなどの鼻腔内投与、すなわち、経鼻経路を介した送達のための方法および組成物を提供する。有用な鼻腔内組成物の例は、治療有効量のスラミン、および神経系障害またはその症状もしくは行動の症状発現を処置するために治療有効レベルのスラミン活性体を脳に送達するための透過助剤(penetration aid)を含む。これらの組成物は、脳組織においてより高いレベルを標的にしながら、スラミンの全身レベルを最小限にし、それによって、潜在的な薬物の毒性および望ましくない副作用を最小限にするのを助けると考えられる。
一部の実施形態では、本発明は、鼻粘膜で高いレベルの薬物を提供するための鼻腔内投与によって血液脳関門を通過するスラミンの送達を最大化するための手段を提供する。本発明は、in vitroアッセイで決定されたスラミンの経粘膜透過が、メチルベータ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールなどのさまざまな透過増強剤を含む製剤から送達された場合に著しく高いことを実証する。本発明の組成物は、マウスに投与された場合に、スラミンを脳組織に送達するのに効果的であることが見出され、脳組織の血漿に対する分配比を実証した。これらの組成物は、全身レベルを約3マイクロモル濃度未満の血漿レベルおよび約0.5マイクロモル濃度未満に最小限にしながら、血液脳関門を通過して脳組織にスラミン活性体を送達するように設計される。本発明は、いくつかの動物モデルにおけるスラミンの鼻腔内投与が、これらの神経系障害に関連する研究エンドポイントまたは行動の症状発現の改善を送達する際に利益を提供するという発見にも基づく。
他の実施形態では、本発明の方法は、1用量または複数用量のスラミン活性成分の鼻腔内投与により達成することができる。1用量または複数用量は、さまざまな処置レジメンに従って投与することができる。
他の実施形態では、本発明は、抗プリン作動剤のエアゾールスプレー組成物を含有する鼻スプレー吸入器を含む、スラミン活性成分の患者投与または自己投与のためのデバイスを提供する。この組成物は、スラミン活性成分および薬学的に許容される分散剤または溶媒系を含むことができ、ここで、デバイスは、スラミン活性成分の用量を含有するスプレーを形成することによって、ある量のエアゾール製剤を分散させるように設計されている(または代替的に、計量されている)。他の実施形態では、吸入器は、スラミン活性成分を微粉末として、ならびにさらに、粒子状分散剤および希釈剤と組み合わせて、または代替的に、分散剤の粒子内に組み込むもしくは粒子状分散剤をコーティングするために組み合わされたスラミン活性成分を含むことができる。
他の実施形態では、本発明は、それを必要とするヒト患者における認知、社会性もしくは行動の能力障害、または神経発達障害などの神経系障害を処置する方法であって、有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を前記患者に鼻腔内投与することを含み、前記組成物が、
a)不安もしくは不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的相互作用、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越およびもしくは泣き、
g)嗜眠および/もしくは社会的離脱、
h)常同行動、
i)多動および/もしくは不服従、または
j)制限的および/もしくは反復行動
からなる群より選択される神経系障害の障害、症状または行動の症状発現のうちの少なくとも1つの前記患者における改善を提供する、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記組成物が、
a)不安もしくは不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的相互作用、
d)空間学習および記憶、または
e)学習および記憶
からなる群より選択される神経系障害の障害、症状または行動の症状発現のうちの少なくとも1つの前記患者における改善を提供する、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、スラミンの有効量が、治療有効量である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩から選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記塩が、ナトリウム塩である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記塩が、六ナトリウム塩である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、認知、社会性または行動の能力障害、および神経発達障害から選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病(PD)、アンジェルマン症候群(AS)、ならびにライム病および他のダニ媒介疾患に関連する場合が多いCNS障害の症状発現、ならびにそれらの長期的な影響を含む、COVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連する神経系および中枢神経系(CNS)障害からなる群より選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASから選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、自閉症スペクトラム障害である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害が、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群からなる群より選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害が、コミュニケーションの困難、他者との相互作用の困難、および反復行動から選択される1つまたは複数の症状または症状発現を示す、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、FXSである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、FXTASである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、ME/CFSである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、PTSDである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、TSである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、PDである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、ASである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、ライム病および他のダニ媒介疾患に関連する中枢神経系障害の症状発現である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、神経系障害が、それらの長期的な影響を含む、COVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連する神経系または中枢神経系(CNS)障害である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、1日に少なくとも1回、または1日に少なくとも2回、または1週間に少なくとも1回、または1週間に少なくとも2回、または隔週(すなわち、2週間ごと)に少なくとも1回、または1か月に少なくとも1回、または4週間ごとに少なくとも1回投与されるまたは送達される、すなわち、投薬される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、約41日~約78日ごとに少なくとも1回投与されるまたは送達される、すなわち、投薬される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、約50日ごとに少なくとも1回投与されるまたは送達される、すなわち、投薬される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミンの平均半減期に基づく時間間隔ごとに少なくとも1回投与されるまたは送達される、すなわち、投薬される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、培養ヒト気道組織を通して、スラミン活性体に基づいて、1時間あたり約1マイクログラム/cm~1時間あたり約200マイクログラム/cmのスラミンの透過速度を示す、すなわち、提供することができる、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者におけるスラミンの血漿レベルが、スラミン活性体に基づいて、約3マイクロモル濃度(μM)未満、または約2.75マイクロモル濃度未満、または約2.5マイクロモル濃度未満、または約2マイクロモル濃度未満、または約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満で維持される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者におけるスラミンの脳組織レベルが、約1ng/ml~約1000ng/mlである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者におけるスラミンの脳組織レベルが、少なくとも約1ng/ml、または少なくとも約10ng/ml、または少なくとも約50ng/ml、または少なくとも約100ng/ml、または少なくとも約250ng/ml、または少なくとも約500ng/mlである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、スラミンについての脳組織の血漿に対する分配比が、少なくとも約0.05、または少なくとも約0.1、または少なくとも約0.25、または少なくとも約0.50である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのAUCが、約80μg日/L未満であるか、または約75μg日/L未満であるか、または約50μg日/L未満であるか、または約25μg日/L未満であるか、または約10μg日/L未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのCmaxが、単一用量に基づいて、約75マイクロモル濃度未満であるか、または約7.5マイクロモル濃度未満であるか、または約0.1マイクロモル濃度未満であり、必要に応じて、少なくとも約0.01マイクロモル濃度である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASを処置することが、前記投与前の前記患者の症状または症状発現と比べて、前記患者の1つまたは複数の症状または症状発現を改善することを含み、前記1つまたは複数の症状または症状発現が、コミュニケーションの困難、他者との相互作用の困難、および反復行動から選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASを処置することが、前記投与前の前記患者からのスコアと比べて、前記患者の評価スコアを改善することを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記患者の前記評価スコアが、前記投与前の前記患者からのスコアと比べて、10%またはそれよりも大きく改善される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、評価スコアが、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI、およびSRSから選択される、方法を提供する。これらの評価スコアの頭字語は、下記の定義セクションにおいて定義する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、鼻スプレーである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、水性組成物である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、粉末組成物である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、粘膜付着性のスプレー可能な流体ゲルである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、それを必要とするヒト患者における認知、社会性もしくは行動の能力障害、または神経発達障害などの神経系障害を処置する方法であって、有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を前記患者に鼻腔内投与することを含み、前記組成物が、動物モデルで評価された場合に、
a)明/暗試験(LDT)、
b)自発運動試験、
c)社会的相互作用試験、
d)モリス水迷路試験(MWM)、または
e)ステップスルー型受動的回避試験
からなる群より選択される行動の症状発現のうちの少なくとも1つの改善を提供する、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記動物モデルが、トランスジェニックFMR-1マウスモデルである、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、それを必要とするヒト患者における認知、社会性もしくは行動の能力障害、または神経発達障害などの神経系障害を処置するための、有効量のスラミンの鼻腔内送達のための医薬の製造におけるスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用であって、前記組成物が、
a)不安もしくは不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的相互作用、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越および/もしくは泣き、
g)嗜眠および/もしくは社会的離脱、
h)常同行動、
i)多動および/もしくは不服従、または
j)制限的および/もしくは反復行動
からなる群より選択される神経系障害の障害、症状または行動の症状発現のうちの少なくとも1つの前記患者における改善を提供する、使用を提供する。
他の実施形態では、本発明は、本発明の方法を行うためのデバイスであって、前記医薬組成物を鼻腔内投与するための鼻スプレー吸入器を含む、デバイスを提供する。
他の実施形態では、本発明は、スラミンの量が、1297.26グラム/モル、またはおよそ1300グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を使用して、スラミン活性成分(すなわち、化学的実体)に基づく、方法および組成物を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体に基づいて、単位投薬量あたり約0.01mg~約200mgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体に基づいて、単位投薬量あたり約0.01mg~約100mgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体に基づいて、単位投薬量あたり約0.01mg~約50mgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体に基づいて、単位投薬量あたり約0.01mg~約25mgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体に基づいて、単位投薬量あたり約0.01mg~約10mgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重に基づいて、1週間あたり約0.1mg/kg~1週間あたり約20mg/kgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重に基づいて、単位投薬量あたり約0.025mg/kg~約10mg/kgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重に基づいて、単位投薬量あたり約0.05mg/kg~約6mg/kgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重(質量)に基づいて、単位投薬量あたり約0.0476mg/kg~約5.720mg/kgのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重に基づいて、単位投薬量あたり約1mg/kg未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重に基づいて、単位投薬量あたり約0.5mg/kg未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重に基づいて、単位投薬量あたり約0.25mg/kg未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体重に基づいて、単位投薬量あたり約0.1mg/kg未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投薬量あたり約400mg/m未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投薬量あたり約200mg/m未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投薬量あたり約100mg/m未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投薬量あたり約50mg/m未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投薬量あたり約25mg/m未満のスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、スラミン活性体および患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投薬量あたり約10mg/m~約300mg/mのスラミンを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのAUCが、約80μg日/L未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのAUCが、約75μg日/L未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのAUCが、約50μg日/L未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのAUCが、約25μg日/L未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのAUCが、約10μg日/L未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのCmaxが、薬物組成物の用量あたり約75マイクロモル濃度未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのCmaxが、薬物組成物の用量あたり約7.5マイクロモル濃度未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのCmaxが、約0.1マイクロモル濃度未満である、方法を提供する。最小Cmaxは存在しないが、その量は、一般に、薬物組成物の用量あたり約0.01マイクロモル濃度を上回り得る。
他の実施形態では、本発明は、各単位投薬量が、約0.01ml~約0.5mlの液体を含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、各単位投薬量が、約0.1mlの液体を含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、培養ヒト気道組織を通して、スラミン活性体に基づいて、1時間あたり約1マイクログラム/cm~1時間あたり約200マイクログラム/cmのスラミンの透過速度を示す、すなわち、提供することができる、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、浸透圧制御のために選択された薬剤をさらに含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、浸透圧制御のために選択された薬剤をさらに含み、前記薬剤が、例えば、塩化ナトリウムなどの塩から選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、組成物が、増粘剤をさらに含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害が、コミュニケーションの困難、他者との相互作用の困難、および反復行動から選択される1つまたは複数の症状を含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、またはそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6または7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を処置することが、前記投与前の前記患者の症状と比べて、1つまたは複数の症状を改善することを含み、前記1つまたは複数の症状が、コミュニケーションの困難、他者との相互作用の困難、および反復行動から選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、またはそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6または7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を処置することが、前記投与前の前記患者のスコアと比べて、前記患者の評価スコアを改善することを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記患者の評価スコアが、前記投与前の前記患者からのスコアと比べて、10%またはそれよりも大きく改善される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、評価スコアが、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI、およびSRSから選択される、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、患者のADOSスコアが、前記投与前のスコアと比べて、1.6もしくはそれよりも大きく改善されるか、または類似の試験において対応する成績の改善である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記ADOSスコアまたは類似の試験の改善のp値が、0.05またはそれ未満である、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記ADOSスコアまたは類似の試験の改善のサイズ効果が、約1またはそれよりも大きい、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、前記ADOSスコアまたは類似の試験の改善のサイズ効果が、約2.9またはそれよりも大きい、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、
(a)治療有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ、および
(b)透過増強剤
を含む神経系障害を処置するための鼻腔内送達医薬組成物を提供する。
他の実施形態では、本発明は、(c)水をさらに含む組成物を提供する。
他の実施形態では、本発明は、スラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む組成物を投与するための鼻スプレー吸入器を含む、自己投与および患者以外の個体による患者への投与から選択される投与を含む、患者投与のためのデバイスであって、デバイスが、それを必要とする患者における神経系障害を処置するためにある量のスラミンを分散させるように設計されている(または代替的に、計量されている)、デバイスを提供する。
他の実施形態では、本発明は、抗プリン作動剤が、溶液、エマルジョン、または粉末から選択される組成物を含む、デバイスを提供する。
本発明のこれらのおよび他の実施形態は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
図1は、透過増強剤を有さない対照組成物に対する3つの異なる透過増強剤を有する水性スラミン組成物についての、時間(時間)に対する累積薬物透過(mg)のプロットを示す。
図2は、透過増強剤を有さない対照組成物に対する5つの異なる透過増強剤を有する水性スラミン組成物についての、時間(時間)に対する累積薬物透過(mg)のプロットを示す。
図3は、マウスに毎週20mg/kgの腹腔内(IP)注射によって、9週齢で開始して4週間継続して投与した場合(すなわち、9、10、11および12週齢に与えられる)の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)のプロットを示す。
図4は、28日間毎日鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較するプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
図5は、28日間1日おきに鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較するプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日おきに、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
図6は、1週間に1回、4週間鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較するプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1週間に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
図7は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスの血漿中のスラミンの総パーセンテージを比較するプロットを示す。
図8は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスの脳組織中のスラミンの総パーセンテージを比較するプロットを示す。
図9は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総パーセンテージを比較するプロットを示す。
図10は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスにおけるスラミンの脳組織の血漿に対する分配比を比較するプロットを示す。
図11は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの明/暗嗜好性試験についての暗ゾーンの進入までの時間を比較するプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図12Aおよび12Bは、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの明/暗嗜好性試験についての明ゾーンで過ごした時間のプロットを示す。図12Aは、分で測定された時間を示す。図12Bは、パーセンテージとして表された時間を示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図13は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの明/暗嗜好性試験についての明ゾーン進入数のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図14は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの自発運動試験についての1時間あたりの活動時間(分)のプロットを示す。プロットの灰色の領域は、動物が模擬「暗」期間または夜の期間にある場合の期間を示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図15は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの自発運動試験についての1時間あたりの移動距離(センチメートル)のプロットを示す。プロットの灰色の領域は、動物が模擬「暗」期間または夜の期間にある場合の期間を示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図16は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの自発運動試験についての1時間あたりの立ち上がりカウント(後ろ足で立っている)のプロットを示す。プロットの灰色の領域は、動物が模擬「暗」期間または夜の期間にある場合の期間を示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図17は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの社会的相互作用試験についての0~5分の馴化および0~5分の占有時間のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。棒グラフは、左から右に、IPスラミン、IP生理食塩水、INスラミン-毎日、INスラミン-2日ごと、INスラミン-毎週、およびWT-C57BL/6+生理食塩水である。
図18は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの社会的相互作用試験についての初対面区画(stranger compartment)1および2の占有時間(分)を表す社交性分析(0~5分)のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。棒グラフは、左から右に、IPスラミン、IP生理食塩水、INスラミン-毎日、INスラミン-2日ごと、INスラミン-毎週、およびWT-C57BL/6+生理食塩水である。
図19は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスの社会的相互作用試験についての新たなマウスの導入後の各区画で測定された占有時間(分)による社会的新規のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。棒グラフは、左から右に、IPスラミン、IP生理食塩水、INスラミン-毎日、INスラミン-2日ごと、INスラミン-毎週、およびWT-C57BL/6+生理食塩水である。
図20は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスのモリス水迷路試験における獲得試験(acquisition test)の脱出潜時(秒)のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。グラフは、グラフの最初のエントリー(1日目)に上から下に、IP生理食塩水、WT、INスラミン-2日ごと、IPスラミン、INスラミン-毎週、およびINスラミン-毎日で並べる。
図21は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンで処置された場合のマウスのモリス水迷路試験における脱出プラットフォームを見つけるための探査試験(秒)のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図22は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンを評価する、ステップスルー型受動的回避試験におけるマウスの学習および記憶を試験する訓練日および24時間後の試験日の暗ゾーン潜時(秒)のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。棒グラフは、左から右に、IPスラミン、IP生理食塩水、INスラミン-毎日、INスラミン-2日ごと、INスラミン-毎週、およびWT-C57BL/6+生理食塩水である。
図23Aおよび23Bは、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンを評価するマウスのステップスルー型受動的回避試験における明ゾーンで過ごした時間のプロットを示す。図23Aは、分で測定された時間を示す。図23Bは、パーセンテージとして表された時間を示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図24は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンを評価するマウスのステップスルー型受動的回避試験における暗ゾーン進入数のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
図25は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、スラミンを評価するマウスのステップスルー型受動的回避試験における明ゾーン進入数のプロットを示す。また、生理食塩水および野生型対照についてのデータを示す。
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される場合、以下の用語および略語は、それとは反対が明示的に述べられていない限り、示された意味を有する。
「ABC」という用語は、本明細書で使用される場合、「異常行動チェックリスト」としても公知であり、自閉症を評価するための評定尺度である。
「ADOS」という用語は、本明細書で使用される場合、「自閉症診断観察スケジュール」としても公知であり、自閉症を診断および評価するための手段である。プロトコールは、試験者と評価下にある者との間の社会的相互作用を含む一連の構造化および半構造化されたタスクからなる。
「AS」という用語は、本明細書で使用される場合、アンジェルマン症候群としても公知である。
「ASD」という用語は、本明細書で使用される場合、自閉症スペクトラム障害としても公知である。
「ATEC」という用語は、本明細書で使用される場合、「自閉症治療評価チェックリスト」としても公知であり、自閉症研究所(Autism Research Institute)で開発された77項目の診断評価ツールである。ATECは、元々は自閉症処置の有効性を評価するために設計されたものであったが、スクリーニングツールとしても使用されている。
「曲線下面積」としても公知の「AUC」という用語は、本明細書で使用される場合、薬理学、特に、薬物動態学における標準的な用語である。この用語は、血漿中の薬物濃度の変動を時間の関数として記載する曲線の定積分を指す。実際には、薬物濃度は、ある特定の別個の時点で測定され、台形公式を使用して、AUCが推定される。AUCは、生物学的利用率の尺度を与え、全身的に吸収された薬物の割合を指す。これを知ることで、薬物についてのクリアランスを決定することもできる。AUCは、ある用量の薬物の投与後の薬物への実際の身体の曝露を反映し、通常、mgh/Lまたはμgh/Lで表される(ここで、「h」は時間を表す)。あるいは、AUCは、mg日/Lまたはμg日/Lで表すことができる。AUCについての単位中のアスタリスク「」は、乗算を表し、代替の表記法では、ドット「・」または乗算記号「×」が使用されることに留意されたい。
「スラミン活性体に基づいて」という用語は、本明細書で使用される場合、1297.26グラム/モルのスラミン分子量(すなわち、モル質量)に基づいてスラミンの量を決定または算出するための基準を提供することを意味する。これは、スラミンが、例えば1429.15グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を有する六ナトリウム塩などの異なる総分子量を有する塩または他の形態として送達される場合のスラミンの量を決定するための重要な考慮事項である。
「CARS」という用語は、本明細書で使用される場合、「小児自閉症評定尺度」としても公知であり、自閉症の診断および評価を助けることを意図する行動評定尺度である。
「CGI」という用語は、本明細書で使用される場合、「臨床全般印象度」評定尺度としても公知であり、精神的障害を有する患者の処置研究における症状の重症度、処置応答および処置の有効性の尺度である。
「Cmax」という用語は、本明細書で使用される場合、薬物が投与された後および2回目の用量の投与前の、身体の特定の区画または試験領域で薬物が達成する最大(またはピーク)血清濃度を定義するための薬理学、特に、薬物動態学における標準的な専門用語である。
「FXS」という用語は、本明細書で使用される場合、脆弱X症候群を意味する。
「FXTAS」という用語は、本明細書で使用される場合、脆弱X関連振戦/運動失調症候群を意味する。
「IN」という用語は、本明細書で使用される場合、鼻腔内を意味する。
「ロングCOVID症候群」という用語は、本明細書で使用される場合、初感染から約12週間を超えて持続するCOVID-19感染後の持続的症候群を意味する。
「ME/CFS」という用語は、本明細書で使用される場合、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)としても公知である。
「鼻スプレー」という用語は、本明細書で使用される場合、スプレーまたはエアロゾル化デバイスから送達されることを意図する製品を意味し、これは、例えば、液体、粉末、ゲル、フォーム、クリーム、軟膏、または他のスプレー可能な組成物の形態であり得る。
「PD」という用語は、本明細書で使用される場合、パーキンソン病としても公知である。
「薬学的に許容される」という用語は、本発明の組成物、言い換えれば、製剤に関して、また、スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグに関して、本明細書で使用される。本発明の医薬組成物は、治療有効量のスラミン、および薬学的に許容される担体を含む。これらの担体は、広範囲の賦形剤を含有することができる。薬学的に許容される担体は、許容される安全性プロファイルを有する従来の公知の担体である。組成物は、一般的な製剤技法を使用して作製される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th edition, edited by Alfonso R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA, 17th edition, 1985を参照されたい。薬学的に許容される塩に関して、これらを下記に記載する。
「PTSD」という用語は、本明細書で使用される場合、「心的外傷後ストレス障害または症候群」としても公知である。
「SRS」という用語は、本明細書で使用される場合、「対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale)」としても公知であり、本明細書で使用されるものは、自閉症スペクトラム障害の尺度である。
「対象」という用語は、神経系障害のための処置または介入を必要とするヒト患者または動物を意味する。
「治療的に有効」という用語は、処置を必要とする対象、例えば、ヒト患者に、医師によって理解される、有意義なまたは実証可能な利益を提供するために必要なスラミンの量を意味する。処置されることが意図される状態としては、例えば、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群が挙げられる。例えば、有意義なまたは実証可能な利益は、さまざまな臨床パラメーターを使用して評価または定量化することができる。利益の実証には、限定されるものではないが、in vitroモデル、in vivoモデル、および動物モデルを含むモデルによって提供されるものも含まれ得る。そのようなin vitroモデルの例は、鼻粘膜を通過する透過をシミュレートするための培養ヒト気道組織(EpiAirway AIR-100)を使用して研究された薬物活性体の透過である。
「TS」という用語は、本明細書で使用される場合、「トゥレット症候群」としても公知である。
「鼻腔内」(「IN」)という用語は、医薬組成物およびその中の活性体に関して本明細書において使用される場合、鼻腔内部の粘膜を通過する送達のために、鼻にまたは鼻を経由することによって投与される組成物を意味する。この膜は、十分に血管形成された薄い粘膜である。さらにまた、この粘膜は、脳に非常に近接しており、一部の場合では、嗅神経および三叉神経を含む、異なる神経によっておよびそれらの神経鞘に沿って、血液脳関門を通過する薬物の輸送を最大化する手段を提供する。血液脳関門は、脳からの循環血液および中枢神経系の細胞外液を分離する、高度に選択的な半透性境界である。治療剤を脳の特定の領域に送達することは、多くの脳障害の処置に対して課題を提示する。経粘膜投与は、局所投与および経皮投与とは異なることに留意すべきである。米国食品医薬品局は、薬物のための広範囲の投与経路、すなわち、「投与経路」についての基準を提供している。以下の定義が、例えば、副鼻腔内(endosinusial)、大脳内、鼻腔内、経鼻、局所、経皮、および経粘膜の薬物投与経路について、FDAによって提供されている。本発明において有用な投与経路は、副鼻腔内、鼻腔内、および経鼻を含み、鼻粘膜を通じた経粘膜送達も意図されることを認識する。これらの投与経路は、肺および気管支に薬物を送達することを意図する吸入とは区別される。例えば、2014年7月22日に発行されたCharneyらに対する米国特許第8,785,500号を参照されたく、これは、薬物活性体を鼻腔内投与するための方法および組成物の例を開示している。
*国立がん研究所
www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/FormsSubmissionRequirements/ElectronicSubmissions/DataStandardsManualmonographs/ucm071667.htmを参照されたい。
「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、予防的および/または治療的のいずれかの、状態、例えば、自閉症および他の神経系障害を軽減すること、減弱することもしくは回復させること、または状態に罹患するリスクもしくは状態の症状を示すリスクを防止することまたは低減すること、症状の根本原因を回復させることまたは防止すること、状態を阻害すること、状態の発生を阻止すること、状態を緩和すること、状態の退行を引き起こすこと、あるいは状態の症状を停止することを含む。
「WT」という略語は、野生型を意味し、これは、変異体形態のものとは対照的に天然集団において優位である表現型、遺伝子型または遺伝子である。
本発明のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは医薬組成物を使用する処置の方法は、さまざまな実施形態では、所望の処置のための、例えば、神経系障害のための医薬の製造における、スラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用も含む。
スラミン
本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動剤であるスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。一部の実施形態は、透過増強剤、およびまた鼻腔内投与を提供するための薬学的に許容される担体も含む。
スラミンは、スルホン酸薬物化合物であり、CAS登録番号145-63-1およびChemSpider ID 5168に対応する。スラミンに対する化学名の1つは、1,3,5-ナフタレントリスルホン酸、8,8’-[カルボニルビス[イミノ-3,1-フェニレンカルボニルイミノ(4-メチル-3,1-フェニレン)カルボニルイミノ]]ビス-である。この化合物は、アフリカ睡眠病(トリパノソーマ症)および河川盲目症(オンコセルカ症)を処置するために使用されている薬であり、Antrypol、309F、309Fourneau、Bayer 205、Germanin、Moranyl、Naganin、およびNaganineという商品名によって公知である。しかしながら、この薬物は、米国FDAによって承認されていない。この薬物は、静脈注射によって投与される。スラミンは、自閉症のマウスモデル、およびフェーズI/IIヒト試験において研究されたことが報告されている。Naviaux, J.C. et al., "Reversal of autism-like behaviors and metabolism in adult mice with single-dose antipurinergic therapy". Translational Psychiatry. 4 (6): e400 (2014)を参照されたい。また、Naviaux, R.K. et al., "Low-dose suramin in autism spectrum disorder: a small, phase I/II, randomized clinical trial", Annals of Clinical and Translational Neurology, 2017 May 26:4(7):491-505も参照されたい。
スラミンは、50日の平均で、約41日~78日の間の半減期を有することが報告されている。Phillips, Margaret A.; Stanley, Jr, Samuel L. (2011). "Chapter 50: Chemotherapy of Protozoal Infections: Amebiasis, Giardiasis, Trichomoniasis, Trypanosomiasis, Leishmaniasis, and Other Protozoal Infections". In Brunton, Laurence L. Chabner, Bruce A.;Knollmann, Bjorn Christian (eds.). Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics (12th ed.). McGraw Hill. pp. 1437-1438を参照されたい。
スラミンの化学式は、C514023である。したがって、スラミンは、1297.26グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を有する。スラミンは、通常、分子量(すなわち、モル質量)が1429.15グラム/モルである六ナトリウム塩などのスルホン酸ナトリウム塩として送達される。これらの分子量値が、どの原子量値を算出に使用するかに応じてわずかに変動することに留意されたい。スラミンについての化学構造を直下に示す。
スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、本発明の方法および組成物のために有用である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグ」は、スラミンの誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、およびカリウムの塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩の例としては、カルシウムおよびマグネシウムの塩が挙げられる。アンモニウム塩であるNH4+それ自体を調製することができるだけでなく、さまざまなモノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、およびテトラアルキルアンモニウム塩を調製することができる。また、そのようなアンモニウム塩の1つまたは複数のアルキル基を、ヒドロキシ基などの基でさらに置換して、アルカノールアミンのアンモニウム塩を提供することができる。1,2-ジアミノエタンなどのジアミンに由来するアンモニウム塩が、本明細書で企図される。スラミンの六ナトリウム塩が、本明細書で有用である。
スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、従来の化学的方法によって親化合物から調製することができる。一般に、塩は、化合物の遊離酸形態を化学量論的量の適切な塩基と、水中もしくは有機溶媒中、またはその2つの混合物中で反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。スラミンのエステルは、親化合物をアルコールと反応させ、反応から形成された水を除去することによって調製することができる。あるいは、他の方法を使用することができる。スラミンのスルホネート基の1つから最大で6つすべてのいずれかをエステル化して、モノエステルスルホネートから最大でヘキサエステルスルホネートを形成することができる。
スラミンの溶媒和物は、1つまたは複数の溶媒分子が、1つまたは複数のスラミン分子と会合していることを意味し、例えば、0.5溶媒和物および2.5溶媒和物などの部分溶媒和物を含む。溶媒は、水、エタノール、イソプロパノールなどを含む広範囲の溶媒から選択することができる。スラミンのプロドラッグは、選択されたプロドラッグに応じて、従来の化学的方法を使用して調製することができる。プロドラッグは、投与後に、薬理学的に活性な薬物に代謝される(すなわち、身体内で変換される)薬または化合物である。プロドラッグは、薬物自体が胃腸管からあまり吸収されない場合に、生物学的利用率を改善するために設計することができる。プロドラッグは、そのようなプロドラッグが投与されると、in vivoで本発明の活性な親薬物を放出する、共有結合した担体を含むことを意図する。一部の分類では、エステルは、本明細書に記載されるスラミンのエステルなどのプロドラッグと見なされる。他の種類のプロドラッグとしては、スルホンアミド誘導体および無水物が挙げられ得る。
さらにまた、さまざまなエステルおよびプロドラッグは、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)誘導体、ならびに混合誘導体を作製するためのさらなる誘導体化を含むことができ、その例は、ペグ化誘導体であろう。
トランスジェニックマウスモデルの関連性
脆弱X症候群および自閉症スペクトラム障害などの神経系障害を研究するためのトランスジェニックマウスモデルの使用は、十分に確立されている。
脆弱X症候群(FXS)は、男性4000人に1人、女性8000人に1人の有病率の神経発達障害である。FXSは、X染色体上の脆弱X精神遅滞1(Fmr1)遺伝子内のCGGトリプレット反復の伸長によって引き起こされる。この鎖は、脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)をコードする。>200のCGGの反復が存在する場合、これは、Fmr1 mRNAの過剰メチル化、および低減されたFMRP発現をもたらし、多種多様な認知および行動の問題、ならびに異常な身体的特性をもたらす。FXSは、典型的には、軽度から中等度の知的障害、不安、多動、発作、社会恐怖症、および自閉症の特性によって特徴付けられる。身体的特性としては、細長い顔、大きなまたは突き出た耳、アーチが高い口蓋、柔軟な指関節、ならびに肥大した精巣(男性)および早期卵巣機能不全(女性)が挙げられ得る。FXSは、自閉症スペクトラム障害の主な遺伝子的原因の1つである。
脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)は、FXSに関係するまれな遺伝性神経変性障害である。FXTASの有病率は不明であるが、これは、通常、50歳よりも上の男性が影響を受け、女性は、FXTAS集団の小パーセンテージのみを構成する。FXTASを有する個体は、Fmr1遺伝子のCGGトリプレット反復に変異を有する。通常、このCGGトリプレットは、5~約40回繰り返される。しかしながら、FXTASを有する人では、CGGセグメントは、55~200回繰り返される。この変異は、FMR1遺伝子前変異として公知である。FXTASは、神経系に影響を及ぼし、進行は、可変である。症状としては、記憶喪失、発話の減速、振戦、および引きずり歩行が挙げられ得る。FXTASを有する一部の人は、症状のより急速な悪化を引き起こす急性疾病、大手術、または他の主要な生活のストレス要因による段階的な進行(すなわち、症状がある期間プラトーに達するが、次いで突然悪化する)を示す。
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、多種多様な症状を伴う神経発達障害の群である。ASDは、世界的におよそ1%の有病率の、最も一般的な広汎性発達障害の1つである。ASDは、強い遺伝要素を有するが、1~2%超の症例について原因となる単一遺伝子の変異がない非常に不均一な障害である。これは、社会的相互作用および複数の文脈にわたるコミュニケーションの機能障害、ならびに行動の限定的および反復的なパターンによって特徴付けられる。感覚および運動の異常、睡眠障害、不安、注意欠陥多動障害(ADHD)、知的障害、ならびに攻撃性が付随する場合が多い。
1994年に、オランダおよびベルギーの科学者のコンソーシアムが、Fmr1遺伝子が不活性化されたFXSのためのマウスモデルを開発した。これらのFmr1ノックアウトマウスは、正常なFmr1 RNA、および正常なCNS発達のために重要な正常レベルのFMRPを欠いていた。このマウスは、学習の問題(特に、空間学習および連想的学習)、異常な社会的行動、増加した自発運動を含む損なわれた認知機能を示し、雄マウスは、肥大した精巣を有する。Fmr1ノックアウトマウスは、FXSおよびASDの診断を有する人と、多くの表現型的および解剖学的類似性を示す。FXSおよびASDを有する人およびFmr1ノックアウトマウスはすべて、高レベルの不安様行動、認知および学習機能障害、感覚ゲーティングの欠陥、および発作に対する感受性の増加、ならびに睡眠の問題を示す。FMRPは、概日期間の長さを調節することが示唆されており、異常な睡眠パターンが、Fmr1ノックアウトマウスならびにFXSおよびASDを有する人において観察される。加えて、雄Fmr1ノックアウトマウスは、FXSを有する男性において観察される場合が多い肥大した精巣を示す。最後に、FXSを有するヒトにおいて観察されるものと同様に、マウスのニューロンの樹状突起棘形態に異常も存在する。
Fmr1ノックアウトマウスモデルは、FXSおよびASDにおいて一般的に観察される、多くの同じ認知および行動表現型、ならびに一部の解剖学的特性を実証する。このマウスモデルの開発は、異常な樹状突起棘形態、タンパク質調節不全および神経伝達を含む、FXSの根底にあるいくつかの分子およびシナプスの欠陥の本発明者らの理解を前進させた。これは、FXSおよびASDの病因および根底にある機構のより良い理解のための優れたモデルであり、新たな薬理学的処置を試験するための価値あるツールである。すべての動物モデルは、いくつかの制限を有するが、これは、FXSおよびASD両方についての認知、行動、および一部の場合では、解剖学的表現型を厳密に再現する。これは、神経発達障害を研究している研究者および科学者にとって、十分に確立され、十分に受け入れられているモデルである。
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投薬量
神経系障害を処置するための本発明について、投与される組成物中のスラミンの投薬量は、スラミン活性体に基づいて、1用量あたり約0.01mg~約200mgの範囲、または1用量あたり約0.01mg~約100mg、例えば、鼻スプレーの用量であり、ここで、投与される各スプレー用量は、約0.1mlの液体を含むであろう。
組成物は、重量基準で決定することもできる。一実施形態では、ここで有用な組成物は、スラミン活性体の重量に基づいて、約0.01重量%~約60重量%のスラミンまたはその薬学的な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態では、これらの組成物は、ここで、スラミン活性体の重量に基づいて、約0.1重量%~約25重量%のスラミンまたはその薬学的な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む。
指定された量または重量パーセンテージのスラミンを含むこれらの前述の組成物について、スラミンは、スラミン部分の実際の量に基づいて決定または算出され、これは、1297.26グラム/モルのモル質量を有し、スラミンの塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグが使用される場合に、任意の対イオンもしくはエステル、溶媒和物またはプロドラッグ部分によって提供される追加の重量を含まない。言い換えれば、組成物は、スラミン化学部分の量または重量パーセンテージに基づく。
さらにまた、本発明は、鼻腔内送達組成物に関係するので、そして全身曝露を制限することが非常に望ましいので、単位投薬量は、スラミンの全身血漿レベルを制限するように製剤化され得る。一般に、スラミン血漿レベルを約3マイクロモル濃度の濃度を下回って維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿レベルを約2マイクロモル濃度の濃度を下回って維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿レベルを約1マイクロモル濃度の濃度を下回って維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿レベルを約0.1マイクロモル濃度の濃度を下回って維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿レベルを約0.05マイクロモル濃度の濃度を下回って維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿レベルを約0.01マイクロモル濃度の濃度を下回って維持することが望ましいであろう。適切な脳の血液および組織レベルが維持される場合、スラミンの最小の全身血漿レベルは必要ではないことがあるが、一般に、スラミン血漿レベルが約1ナノモル濃度超であることが望ましくあり得る。
さらにまた、本発明は鼻腔内組成物および処置の方法に関係するので、薬物の毒性および望ましくない副作用に対する可能性を最小限にし、適切な安全域を維持するために、スラミンの全身曝露を制限することが非常に望ましい。全身レベルのこの制限は、PK/PDプロファイルを制御することによって達成することができる。一部の実施形態では、単位投薬量は、その単位投薬量の送達について、以下の血漿薬物動態パラメーターのうちの少なくとも1つを実証しなければならない:約75マイクロモル濃度(すなわち、μM)未満、もしくは約7.5マイクロモル濃度未満、もしくは約0.1マイクロモル濃度未満のCmax、または約80μg日/L未満、もしくは約75μg日/L未満、もしくは約50μg日/L未満、もしくは約25μg日/L未満、もしくは約10μg*日/L未満のAUC。Cmaxは、少なくとも約0.01マイクロモル濃度を上回り得る。Cmax値は、マイクロモル濃度からng/mlに変換することができ(1297.26グラム/モルの分子量を使用して、スラミン活性体に基づいて)、これは、1マイクロモル濃度が1297.26ng/mlと同等であることを意味する。六ナトリウム塩に基づく量を有することを求める場合は、1429.15グラム/モルの値を変換算出のために使用することができる。
処置の方法および投薬レジメン
本発明は、神経系障害、例えば、ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、またはそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6または7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を処置するために、スラミンを鼻腔内投与するための治療有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を利用する。
この方法は、治療有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを、それを必要とするヒト患者に鼻腔内投与することを含む。
医師または他の実施者の技能および知識に基づいて、さまざまな投薬レジメンを処方および使用することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の単位投薬量は、1日に少なくとも1回適用することができる。他の実施形態では、組成物の単位投薬量は、1日に少なくとも2回、または1週間に少なくとも1回、または1週間に少なくとも2回適用することができる。スラミンの薬物動態学的および薬力学的パラメーターに基づいて、投薬の量および投薬レジメンを適切に変更することができる。スラミンは、血清中でおよそ99~98%タンパク質と結合し、50日の平均で、41~78日の半減期を有する。
治療は、所望の治療利益を達成するまで、医師または実施者の判断で継続することができる。一部の場合では、長期または維持治療を継続することが望ましくあり得る。
処置の評価
本発明は、神経系障害、例えば、ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、またはそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6または7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現が、コミュニケーションの困難、他者との相互作用の困難、破壊的および反復行動、運動性チック、ならびに音声チックから選択される1つまたは複数の症状を含む、方法を提供する。これらの障害では、患者は、多くの場合、
a)不安もしくは不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的相互作用、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越およびもしくは泣き、
g)嗜眠および/もしくは社会的離脱、
h)常同行動、
i)多動および/もしくは不服従、または
j)制限的および/もしくは反復行動
からなる群より選択される1つもしくは複数の症状もしくは行動の症状発現、または研究エンドポイントを示し得る。
ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、またはそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6または7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を有する患者は、それらの障害の重症度のレベル、および処置の投与における任意の改善または変化を決定するために、各種の評定尺度を使用して評価することができる。
例えば、本発明は、ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、またはそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6または7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を処置することが、治療前の症状と比べて、患者の1つまたは複数の症状を改善することを含む、方法を提供する。改善は、患者の症状の評価スコアを、前記投与前の患者の症状からのスコアに対して比較することによって決定することができる。処置の投与の前の患者からのスコアと比べて改善を提供することが望ましい。一部の実施形態では、処置の投与の前の患者からのスコアと比べて10%またはそれよりも大きい改善を提供することが望ましい。
自閉症スペクトラム障害を評価するための評価尺度の例としては、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI、およびSRSから選択されるものが挙げられる。
「ABC」という用語は、「異常行動チェックリスト」としても公知であり、自閉症を評価するための評定尺度である。「ADOS」という用語は、「自閉症診断観察スケジュール」としても公知である。プロトコールは、試験者と評価下にある者との間の社会的相互作用を含む一連の構造化および半構造化されたタスクからなる。「ATEC」という用語は、「自閉症治療評価尺度」としても公知であり、自閉症研究所で開発された77項目の診断評価ツールである。ATECは、元々は自閉症処置の有効性を評価するために設計されたものであったが、スクリーニングツールとしても使用されている。「CARS」という用語は、「小児自閉症評定尺度」としても公知であり、自閉症の診断および評価を助けることを意図する行動評定尺度である。「CGI」という用語は、「臨床全般印象度」評定尺度としても公知であり、精神的障害を有する患者の処置研究における症状の重症度、処置応答および処置の有効性の尺度である。「SRS」という用語は、「対人応答性尺度」としても公知であり、本明細書で使用されるものは、自閉症スペクトラム障害の尺度である。
例えば、本発明は、患者のADOSスコアが、処置の投与前のスコアと比べて、1.6もしくはそれよりも大きく改善されるか、または類似の試験において対応する成績の改善である、方法を提供する。さらにまた、本発明は、ADOSスコアまたは類似の試験の改善のp値が、0.05またはそれ未満である、方法を提供する。別の態様では、本発明は、ADOSスコアまたは類似の試験の改善のサイズ効果が、約1もしくはそれよりも大きい、または最大で約2.9もしくはそれよりも大きい、方法を提供する。
鼻腔内投与のための製剤および透過増強剤
本発明の組成物の標的適応症は、神経系障害、例えば、ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、AS、またはそれらの長期的な影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6または7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現である。そのため、血液脳関門を通過することによって脳領域に容易に達することができる製剤を提供するために努力がなされている。実現可能な投与経路は、経鼻薬物送達システム、すなわち鼻腔内(IN)製剤による鼻腔を介した送達である。
鼻腔内送達のために有用な組成物は、他の可能性の中でも、鼻スプレー、液体、粉末、ゲル、軟膏、クリーム、フォーム、エアロゾル、および噴霧器の形態であり得る。これらの組成物は、水性組成物の形態で活性を有し得る。他の実施形態では、活性薬剤は、微粉末であり得、ならびにさらに、粒子状分散剤および希釈剤と組み合わせてであり得るか、または代替的に、粒子状分散剤を形成またはコーティングするように組み合わされ得る。これらの組成物は、一般に、組成物が液体鼻スプレーの形態である場合、1スプレーあたり約0.1mlの標的体積で、約0.01ml~約0.5mlのオーダーである。1~2スプレーを適用して、単位投薬量を提供することができる。
本明細書の医薬組成物は、透過増強剤を含むことができる。驚くべきことに、以下の透過増強剤が、スラミンの経粘膜組織透過を増加させることを見出した:メチルベータ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノール。材料のメチルベータ-シクロデキストリン(メチル-ベータ-シクロデキストリン)は、CAS登録番号128446-36-6および商品名methyl betadexによっても公知である。材料のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドは、CAS登録番号85536-07-8、および商品名Labrasol(登録商標)によって、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドおよびPEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドとしても公知である。材料の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールは、CAS登録番号111-90-0によって、および商品名Carbitol(商標)およびTranscutol(登録商標)Pによって、ジエチレングリコールエチルエーテルとしても公知である。
透過増強剤は、一般に、組成物の約40重量%で使用される。他の有用な範囲は、組成物の約0.1重量%~約90重量%、または組成物の約1重量%~約80重量%、または組成物の約10重量%~約75重量%、または組成物の約25重量%~約50重量%である。
組成物中の水は、通常、Q.S.である。QSという略語は、Quantum Satisを表し、所望の結果を達成する成分、この場合では、水をちょうどそれだけ添加するが、それより多く添加しないことを意味する。
他の成分としては、浸透圧制御のためのさまざまな塩、および増粘剤が挙げられ得る。
一部の実施形態では、組成物は、以下の機能性成分を含むことができる:
1.活性成分:スラミン、10~200mg/mLの濃度
2.溶媒/担体、例えば、水
3.組織透過増強剤
4.保存剤
5.スプレー溶液の粘度を改変するための増粘剤、および
6.緩衝化剤(pH調整剤)または浸透圧剤(osmolarity agent)。
これらの製剤は、医薬品および製剤の分野の当業者が精通している標準的な製剤および混合の技法を使用して作製することができる。
一実施形態では、本発明の組成物または製剤は、スラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ、および薬学的に許容される担体を含む。これらの製剤は、医薬品および製剤の分野の当業者が精通している標準的な製剤および混合の技法を使用して作製することができる。
一態様では、医薬組成物は、スプレーまたはエアロゾルとしての投与のための溶液、懸濁物、または分散物から選択される。他の態様では、製剤は、鼻スポイト(nose dropper)によって液滴として送達され得るか、または鼻腔に直接適用され得る。他の医薬組成物は、鼻腔に適用される、ゲル、軟膏、ローション、エマルジョン、クリーム、フォーム、ムース、液体、ペースト、ゼリー、またはテープからなる群より選択される。
薬学的に許容される担体が、水、または水と他の水混和性構成成分の混合物から選択される組成物が、本明細書において有用である。エマルジョンの場合では、構成成分は、水と混和性である必要はない。
他の実施形態では、組成物は、薬物製剤のpHを維持するための緩衝液、薬学的に許容される増粘剤、保水剤および界面活性剤を含むことができる。本発明における使用に好適な緩衝液としては、例えば、塩酸塩、酢酸、クエン酸、炭酸およびリン酸緩衝液が挙げられる。
本発明の組成物の粘度は、薬学的に許容される増粘剤を使用して所望のレベルで維持することができる。本発明に従って使用することができる増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、アカシア、キトサン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(Na CMC)、およびそれらの混合物が挙げられる。増粘剤の濃度は、選択される薬剤および所望の粘度に依存する。
他の実施形態では、組成物は、粘膜付着性のスプレー可能なゲルの形態であり得る。鼻粘膜は、スラミンの投与のための優れた経路を表すが、粘液性分泌物の保護特性が、送達を困難にし得る。したがって、スプレーされる製剤として適用され得る粘膜付着性ゲルは、送達の手段を提供することが分かる。しかしながら、ゲルは、例えば、ずり減粘を実証するために、スプレーデバイスに包装し、それから送達されるように適切な流体特徴を有していなければならない。得られたゲルはまた、適切な粘度およびゲル化能を保有していなければならない。適切なスプレー特徴を送達するために特に有用なものは、高アシルジェランガムである。ジェランガムは、細菌Sphingomonas elodeaによって産生される水溶性のアニオン性多糖であり、CAS登録番号71010-52-1によって特定される。他のゲル化剤材料を、それらが所望のレオロジー性を提供するという条件で、用いることもできる。高アシルジェランガムは、Modernist Pantry製のGellan Gum LT100、Cinogel Biotech製のGellan Gum E418高アシル(HA)、およびCP Kelco(USA)製のKelcogel(商標)として市販されている。
本発明の組成物は、粘膜(保水剤)の乾燥を低減または防止し、その刺激を防止するための耐性増強剤も含む。本発明において使用することができる好適な耐性増強剤としては、例えば、保水剤、ソルビトール、プロピレングリコール、鉱油、植物油およびグリセロール、無痛化剤(soothing agent)、膜調整剤、甘味料、およびそれらの混合物が挙げられる。本組成物中の耐性増強剤の濃度はまた、選択される薬剤とともに変動する。
鼻粘膜を通した薬物の吸収を増強するために、治療的に許容される界面活性剤が、鼻腔内製剤に添加されてもよい。本発明に従って使用することができる好適な界面活性剤としては、例えば、ソルビトール無水物の脂肪酸部分エステルのポリオキシエチレン誘導体、例えば、Tween(登録商標)80、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、フシデート、胆汁酸塩、およびオクトキシノールなどが挙げられる。好適な界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性およびカチオン性の界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、約0.001重量%~約20重量%の範囲の濃度で鼻腔内製剤中に存在することができる。
本発明では、他の必要に応じた成分が、それらが、薬物の作用を妨げないか、または鼻粘膜を通過する薬物の吸収を著しく減少させないという条件で、経鼻送達システムに組み込まれてもよい。そのような成分としては、例えば、薬学的に許容される賦形剤および保存剤が挙げられ得る。本発明に従って使用することができる賦形剤としては、例えば、生体接着剤および/または膨潤剤/増粘剤が挙げられる。
本発明では、当技術分野において公知の任意の他の好適な吸収増強剤も使用され得る。
保存剤を、本組成物に添加することもできる。本組成物とともに使用することができる好適な保存剤としては、例えば、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノールおよびベンザルコニウムが挙げられ、塩化ベンザルコニウムが好ましい。典型的には、保存剤は、本組成物中に最大で約2重量%の濃度で存在する。しかしながら、保存剤の正確な濃度は、意図される使用に応じて変わり、当業者によって容易に突き止めることができる。
吸収増強剤としては、(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウムを含む);(iii)リン脂質添加物、混合ミセル、またはリポソーム;(iv)アルコール(上記で議論したポリオール、例えば、プロピレングリコールまたはPEG3000などのポリエチレングリコールなどを含む);(v)エナミン;(vi)一酸化窒素供与化合物;(vii)長鎖両親媒性分子;(viii)小型疎水性取込み増強剤;(ix)ナトリウムまたはサリチル酸誘導体;(x)アセト酢酸のグリセロールエステル;(xi)シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体;(xii)中鎖または短鎖(例えばC1~C12)脂肪酸;および(xiii)キレート化剤;(xiv)アミノ酸またはその塩;および(xv)N-アセチルアミノ酸またはその塩が挙げられる。
溶解度増強剤は、製剤中の薬物またはその薬学的に許容される塩の濃度を増加させ得る。有用な溶解度増強剤としては、例えば、アルコールおよびポリアルコールが挙げられる。
等張化剤は、鼻腔における製剤の耐性を改善し得る。一般的な等張化剤は、NaClである。好ましくは、製剤が等張の鼻腔内投薬製剤である場合、それは、液体担体の水性部分中に約0.9%のNaCl(v/v)を含む。
増粘剤は、組成物の全体的な粘度を、好ましくは、鼻粘膜のものに近い値に改善し得る。好適な増粘剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(polyvinypyrrolidone)、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびキトサンが挙げられる。
保水剤または抗刺激剤は、反復適用における組成物の耐容性を改善する。好適な化合物としては、例えば、グリセロール、トコフェロール、鉱油、およびキトサンが挙げられる。
さまざまな追加の成分を、本発明の組成物において使用することができる。組成物は、保存剤、抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤もしくは湿潤剤、緩和薬、膜形成剤、または粘度改変剤から選択される1つまたは複数のさらなる成分を含むことができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で90重量パーセント、またはさらに99重量パーセントを超える範囲であり得る。
一態様では、保存剤を含めることができる。別の態様では、抗酸化剤を含めることができる。別の態様では、乳化剤を含めることができる。別の態様では、緩和薬を含めることができる。別の態様では、粘度改変剤を含めることができる。別の態様では、界面活性剤または湿潤剤を含めることができる。別の態様では、膜形成剤を含めることができる。別の態様では、医薬組成物は、ゲル、軟膏、ローション、エマルジョン、クリーム、液体、スプレー、懸濁物、ゼリー、フォーム、ムース、ペースト、テープ、分散物、エアロゾルからなる群より選択される形態である。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。
驚くべきことに、メチルベータ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールなどの透過増強剤が、粘膜組織の改善された透過を有する鼻腔内スラミン製剤を調製するために特に有用であることが分かった。
別の態様では、少なくとも1つの保存剤は、パラベン(ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを含む)、アセトン亜硫酸水素ナトリウム、アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エデト酸、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、イソプロピルアルコール、モノチオグリセロール、ペンテト酸、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、硝酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、プロピレングリコール、プロピルパラベンナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、チメロサール、酸化亜鉛、およびN-アセチルシステイン、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で30重量パーセントの範囲であり得る。
別の態様では、少なくとも1つの抗酸化剤は、アセトン亜硫酸水素ナトリウム、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸一水和物、没食子酸ドデシル、エリソルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、マンニトール、ソルビトール、モノチオグリセロール、没食子酸オクチル、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、チモール、ビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、およびN-アセチルシステイン、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で30重量パーセントの範囲であり得る。
別の態様では、少なくとも1つの乳化剤は、アカシア、寒天、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヘクトライト、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒプロメロース、ラノリン、ラノリンアルコール、ラウリン酸、レシチン、リノール酸、酸化マグネシウム、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱油、モノエタノールアミン、ミリスチン酸、オクチルドデカノール、オレイン酸、オレイルアルコール、パーム油、パルミチン酸、ペクチン、リン脂質、ポロクサマー、ポリカルボフィル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン(polyoxyehtylene)ソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシル15ヒドロキシステアレート、ポリオキシグリセリド、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、サポナイト、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム脱水物、乳酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンエステル、デンプン、ステアリン酸、ステアリン酸スクロース、トラガカント、トリエタノールアミン、トロメタミン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、ワックス、およびキサンタンガム、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で30重量パーセントの範囲であり得る。
別の態様では、少なくとも1つの緩和薬は、アーモンド油、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ブチル、キャノーラ油、ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、パルミチン酸セチル、コレステロール、ココナツ油、シクロメチコン、オレイン酸デシル、セバシン酸ジエチル、ジメチコン、ステアリン酸エチレングリコール、グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、ラノリンアルコール、レシチン、鉱油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、パーム核油、パーム油、ワセリン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、サフラワー油、スクアレン、ヒマワリ油、トリカプリリン、トリオレイン、ワックス、キシリトール、酢酸亜鉛、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で60重量パーセントの範囲であり得る。
別の態様では、少なくとも1つの粘度改変剤は、アカシア、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、アルギン酸アンモニウム、アタパルジャイト、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、乳酸カルシウム、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、セルロース、セラトニア、セレシン、セトステアリルアルコール、パルミチン酸セチル、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、コーンシロップ固形物、シクロメチコン、エチルセルロース、ゼラチン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、ヘクトライト、疎水性コロイド状シリカ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒプロメロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、パーム油、ペクチン、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、プルラン、サポナイト、アルギン酸ナトリウム、デンプン、スクロース、糖、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、トラガカント、トレハロース、およびキサンタンガム、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で60パーセントの範囲であり得る。
別の態様では、少なくとも1つの膜形成剤は、アルギン酸アンモニウム、キトサン、コロフォニー、コポビドン、エチレングリコールおよびビニルアルコールのグラフトコポリマー、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリ酢酸ビニル分散物、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、ポビドン、プルラン、ピロキシリン、およびセラック、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で約90重量パーセント、またはさらに99重量パーセントを超える範囲であり得る。
別の態様では、少なくとも1つの界面活性剤または湿潤剤は、ドクサートナトリウム、リン脂質、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、アルファトコフェロール、モノオレイン酸グリセリル、ミリスチルアルコール、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシル15ヒドロキシステアレート、ポリオキシグリセリド、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステル、ステアリン酸スクロース、トリカプリリン、およびビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で30重量パーセントの範囲であり得る。
別の態様では、緩衝化剤を含めることができる。別の態様では、緩和薬を含めることができる。別の態様では、乳化剤を含めることができる。別の態様では、エマルジョン安定剤を含めることができる。別の態様では、ゲル化剤を含めることができる。別の態様では、保水剤を含めることができる。別の態様では、軟膏基剤または油性ビヒクルを含めることができる。別の態様では、懸濁化剤を含めることができる。別の態様では、酸味剤を含めることができる。別の態様では、アルカリ化剤を含めることができる。別の態様では、生体接着材料を含めることができる。別の態様では、着色剤を含めることができる。別の態様では、マイクロカプセル化剤を含めることができる。別の態様では、硬化剤を含めることができる。これらの構成成分は、医薬品および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切なレベルで用い、使用することができる。この量は、1重量パーセント未満~最大で90重量パーセント、またはさらに99重量パーセントを超える範囲であり得る。
活性成分が粉末として送達される場合、粉末状材料は、多くの場合、粉末状分散剤と組み合わされる。他の実施形態では、活性体は、分散剤と組み合わせて、活性体および分散剤の両方を含有する粒子を形成することができる。また他の実施形態では、活性体は、分散剤の表面上にコーティングすることができる。分散剤の例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖を含む幅広い成分が挙げられる。
医薬品および製剤分野の当業者は、本発明の組成物の必須のおよび必要に応じた構成成分の適切なレベルを決定することができる。
スラミン組成物を調製する方法はまた、本発明の一部として意図されており、標準的な製剤および混合の技法を使用して、医薬品および製剤分野の当業者には明らかであろう。
本発明では、抗プリン作動剤のエアゾールスプレー製剤および薬学的に許容される分散剤または溶媒系を含有する鼻スプレー吸入器を含む、抗プリン作動剤の患者投与または自己投与のためのデバイスであって、デバイスが、抗プリン作動剤の用量を含有するスプレーを形成することによってある量のエアゾール製剤を分散させるように設計されている(または代替的に、計量されている)、デバイスも提供される。他の実施形態では、吸入器は、抗プリン作動剤を微粉末として、およびさらに、粒子状の分散剤および希釈剤と組み合わせて含み得るか、または代替的に、粒子状分散剤を形成またはコーティングするように組み合わせ得る。
以下の実施例は、本発明の範囲内の実施形態をさらに記載および実証する。実施例は、説明の目的のためだけに示され、本発明の精神および範囲から逸脱することなくその多くの変形形態が可能であるので、本発明の限定として解釈されるべきではない。
(実施例1)
鼻腔内送達のための組成物
以下の組成物を、標準的な混合装置および手順を使用して調製する。
成分 量
スラミン六ナトリウム塩 10~200mg/ml
メチルベータ-シクロデキストリン(methyl betadex) 40重量%
水 指定された成分のレベルを達成するQS
1429.15グラム/モルの分子量を有するスラミン六ナトリウム塩に基づく
スラミンナトリウム塩を、穏やかに混合しながら水に溶解する。シクロデキストリンを、溶解するまで混合しながら添加する。得られた溶液を、使用する前に2時間静置する。
組成物は、鼻腔内投与のためのスプレーボトルに包装することができる。
あるいは、組成物を、メチルベータ-シクロデキストリンを等重量のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドまたはおよび2-(2-エトキシエトキシ)エタノールで置き換えて調製する。
組成物は、神経系障害を処置するために有用である。
(実施例2)
鼻腔内送達のための組成物
以下の組成物を、標準的な混合装置および手順を使用して調製する。
成分 量
スラミン六ナトリウム塩 10~200mg/ml
メチルベータ-シクロデキストリン(methyl betadex) 40重量%
塩化ナトリウム 0.75重量%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1重量%
水 指定された成分のレベルを達成するQS
1429.15グラム/モルの分子量を有するスラミン六ナトリウム塩に基づく
スラミンナトリウム塩を、穏やかに混合しながら水に溶解する。塩化ナトリウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを混合しながら添加する。シクロデキストリンを、溶解するまで混合しながら添加する。得られた溶液を、使用する前に2時間静置する。
組成物は、鼻腔内投与のためのスプレーボトルに包装することができる。
あるいは、組成物を、メチルベータ-シクロデキストリンを等重量のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドまたはおよび2-(2-エトキシエトキシ)エタノールで置き換えて調製する。
組成物は、神経系障害を処置するために有用である。
(実施例3)
粘膜付着性のスプレー可能なゲル製剤
以下の組成物を、標準的な混合装置および手順を使用して調製する。
成分 量
スラミン六ナトリウム塩 10~200mg/ml
高アシルジェランガム 0.1~1重量%
水 指定された成分のレベルを達成するQS
1429.15グラム/モルの分子量を有するスラミン六ナトリウム塩に基づく
スラミンナトリウム塩を、穏やかに混合しながら水に溶解する。混合物を約40~90℃に加熱し、穏やかに混合しながら、高アシルジェランガムを添加する。次いで、混合物を、室温に冷却し、鼻腔内投与のためのスプレーボトルに包装することができる。
組成物は、神経系障害を処置するために有用である。
(実施例4)
スラミンの組織透過
4つの製剤A~Dを、実施例1および2の方法を使用して調製し、それが、25℃で少なくとも4週間、および相対湿度60%で3か月間、安定であることが分かった。
製剤A - 水中の100mg/mLのスラミン六ナトリウム塩(賦形剤なし)
製剤B - 水中の100mg/mLのスラミン六ナトリウム塩と40%のメチルβ-シクロデキストリン(methyl betadex)
製剤C - 水中の100mg/mLのスラミン六ナトリウム塩と40%のHP(ヒドロキシルプロピル)-シクロデキストリン
製剤D - 水中の160mg/mLのスラミン六ナトリウム塩(賦形剤なし)
製剤は、溶液増粘剤として0.1%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(すなわち、Dow Chemicals製のHPMC E5)および浸透圧剤として0.75%の塩化ナトリウムも含有していた。
これらの4つの製剤を、確立された薬物透過性プロトコール(EpiAirway(商標)薬物透過プロトコール、MatTek Corporation、2014)に従って、培養ヒト気道組織(EpiAirway AIR-100、MatTek Corporationから購入)を使用して、in vitro透過研究において評価した。EpiAirwayは、気管から主気管支まで伸びている上気道を代表し、したがって、これは、経鼻製剤からの薬物送達を測定するために使用される。
レシーバー液の調製のために、EpiAirwayアッセイ培地を37℃に予め温める。滅菌技法を使用して、0.3mLの培地を、滅菌24ウェルプレートの各ウェルにピペッティングする。ウェルにラベル付けする。組織に対して0.2mLのドナー溶液を使用する。
透過性実験:終夜の平衡化後、細胞培養インサートを1時間のウェルに移し、ドナー溶液を組織上にピペッティングする。プレートをインキュベーターに戻す。30分の透過時間が経過した後、組織を2時間のウェルに移す。同様に、2.0、3.0、4.0および6.0時間の合計経過時間後に組織を移す。ドナー溶液を補給する必要はない。あるいは、適切な時にレシーバー溶液を完全に除去し、新鮮な予め温めたレシーバー液と交換することができる。溶液を、HPLCおよび238nmの検出を使用して分析した。
以下の表1は、透過したスラミンの平均蓄積量(mg)を時間の関数として提供する。
研究の結果はまた、透過した薬物の累積量(mg)が時間(時間)に対してプロットされた図1にグラフで示す。
これらのデータは、メチルβ-シクロデキストリン(methyl betadex)を含有する製剤Bが、組織透過アッセイにおいて、製剤A、C、およびDに対して、顕著に良好な透過を提供することを実証する。また、製剤AおよびDの比較から分かるように、より高い薬物濃度を有することは、透過を増加させるために有利であり得る。
(実施例5)
スラミンの組織透過
6つの製剤A~Fを、実施例1および2の方法を使用して調製し、それが、周囲条件で少なくとも4週間安定であることが分かった。
製剤A - 水中の200mg/mLのスラミン(賦形剤なし)
製剤B - 水中の140mg/mLのスラミンと40%のポリソルベート80(Tween(登録商標)80)
製剤C - 水中の140mg/mLのスラミンと40%のメチルベータ-シクロデキストリン(methyl betadex)
製剤D - 水中の140mg/mLのスラミンと40%のスルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン(Captisol)
製剤E - 水中の140mg/mLのスラミンと40%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(Transcutol P)
製剤F - 水中の140mg/mLのスラミン(Labrasol)
組織透過性研究を、実施例3の方法を使用して実施した。
以下の表2は、透過したスラミンの平均蓄積量(mg)を時間の関数として提供する。
研究の結果はまた、透過した薬物の累積量(mg)が時間(時間)に対してプロットされた図2にグラフで示している。これらのデータは、メチルベータ-シクロデキストリン(methyl betadex)を含有する製剤C、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(Transcutol P)を含有する製剤E、およびカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(Labrasol)を含有する製剤Fが、組織透過アッセイにおいて、製剤A、B、およびDに対して、顕著に良好な透過を提供することを実証する。
さらにまた、実施例3および4からの結果は驚くべきものである。
シクロデキストリンは、さまざまなサイズの環で一緒に結合した糖分子である。具体的には、糖単位は、ピラノース(6員)環構成で存在するグルコース分子である、グルコピラノシドと呼ばれる。6、8、または10個のグルコピラノシドが、互いと結合して、それぞれ、α-、β-、およびγ-シクロデキストリンを形成する。シクロデキストリンは、両端に複数のヒドロキシル基を有するトロイド(円錐台)構成を形成する。これが、疎水性化合物を、それらの水への溶解度を失うことなく、それらに封入することを可能にする。他の適用の中でも、シクロデキストリンは、組織透過増強剤として、疎水性薬物分子を生体系に運ぶために使用することができる。シクロデキストリンは、各種の疎水性薬物と包接複合体を形成し、それによって組織膜におけるそれらの分配および溶解度を増加させることが報告されている。メチルベータ-シクロデキストリン(ベタデックス)は、シクロデキストリンの一種である。methyl betadexは、少なくとも1つの市販の鼻腔内製品であるエストラジオール(Aerodiol)中で使用されて、薬物分子であるエストラジオール(MW=272.4)の経組織透過を増強している。その小さなサイズのために(MW=272.4)、エストラジオール分子は、シクロデキストリン環に容易に封入することができ、このようにして、生体組織への送達の増強が達成される。
しかしながら、本発明者らは、メチルベータ-シクロデキストリンが、一般に適合性であると考えられているよりもはるかに大きな分子であるスラミンを封入することもできる方法を発見した。methyl betadexが、スラミンに対して機能することを見出すことは驚くべきことである。当業者は、そのような大きな分子がシクロデキストリン環に封入され得るとは予想していなかったであろう。
別の有用な透過増強剤は、Transcutol P(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)である。これは、さまざまな局所/経皮製剤中の一部の小分子薬物化合物についての皮膚透過性を増強することが報告されている賦形剤である。それにもかかわらず、これは鼻腔内製品用の賦形剤として使用されていなかった。また、これは、スラミンなどの大型分子を増強するために一般に使用されていない。
別の有用な透過増強剤は、Labrasol(カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド)である。これは、一部の局所/経皮製剤中の一部の薬物化合物の皮膚透過性を増強することが報告されている賦形剤である。これは鼻腔内製品用の賦形剤として使用されていなかった。
(実施例6)
血漿および脳組織におけるスラミンの決定
以下の実施例は、異なる処置レジメンに従って腹腔内(IP)または鼻腔内(IN)に投与された場合の血漿および脳組織へのスラミンの送達を決定するために実施されたマウス研究を記載する。研究のために、雄Fmr1-ノックアウトB6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスを、Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineから購入した。これらのマウスは、およそ8週齢であった。これらのマウスは、脳の複数の領域で樹状突起棘の異常を示す。これらのマウスにおけるFMRPの非存在は、樹状突起形態およびシナプス機能において重要な役割を果たすRho GTPaseサブファミリーのタンパク質であるRAC1の過剰活性化を誘導する。これらのB6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスは、認知能力障害および神経発達障害のための動物モデルを提供する。
マウスは、群ケージ(処置群に基づいてケージあたり6匹のマウス)中、制御された環境(温度:21.5±4.5℃および相対湿度:35~55%)で、標準的な12時間明/12時間暗の照明サイクル(06:00に点灯)下で維持した。マウスは、研究施設におよそ1週間収容した。すべてのマウスの体重を、健康モニタリングの目的で記録した。
マウスを、群あたり6匹のマウスで以下の5つの試験群に分けた。
群1:スラミン20mg/kgの腹腔内(IP)注射を、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。スラミンは、通常の生理食塩水中で製剤化した。
群2:生理食塩水5mL/gの腹腔内(IP)注射を、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。これは対照群であった。
群3:スラミンの下記に記載される製剤の鼻腔内(IN)投与を、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
群4:スラミンの下記に記載される製剤の鼻腔内(IN)投与を、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日おきに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1日おきに1回与えられる)。
群5:スラミンの下記に記載される製剤の鼻腔内(IN)投与を、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1週間ごとに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1週間に1回与えられる)。
以下は、上記の群3、4、および5に投与されたスラミンの鼻腔内(IN)製剤である。
*HPMC E5は、DuPontから入手可能な水溶性のセルロースエーテルポリマー[ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)]である。
上記の製剤を、スラミンナトリウム塩を、穏やかに混合しながら水に溶解することによって作製する。シクロデキストリンを除く残りの成分を、混合しながら添加する。次いで、シクロデキストリンを、溶解するまで混合しながら添加する。得られた溶液を、使用する前に2時間静置する。
血液試料を、12週齢の終わりのすべてのマウスから収集した。脳組織を、13~14週齢で屠殺した際に、すべてのマウスから回収した。標準的な試料の調製および分析技法を使用して、データを得た。
この研究からの結果を表3に示す。データを、各動物群についての平均血漿濃度(ng/mlおよびμMの両方)および平均脳組織濃度(ng/gおよびmmol/gの両方)として表す。また、各群についての脳組織の血漿に対する平均分配比を示す。スラミンが脳組織中で検出されず、低い血漿レベルは本質的に分析方法からのノイズであるので、そのような算出は、生理食塩水対照を投与した群(群2)には適用できないことに注意されたい。
1 分配比は、表中に表された平均ではなく生データから直接算出する。
2 BQLは、定量化可能な限界を下回ることを意味する。
3 NAは、適用なしを意味する。
研究からの結果を、図3から10のプロットにも示す。
図3は、マウスに毎週20mg/kgの腹腔内(IP)注射によって、9週齢で開始して4週間継続して投与した場合(すなわち、9、10、11および12週齢に与えられる)の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)のプロットを示す。
図4は、28日間毎日鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較するプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
図5は、28日間1日おきに鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較するプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日おきに、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
図6は、1週間に1回、4週間鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較するプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1週間に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
図7は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスの血漿中のスラミンの総パーセンテージを比較するプロットを示す。
図8は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスの脳組織中のスラミンの総パーセンテージを比較するプロットを示す。
図9は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスの脳組織に対する血漿中のスラミンの総パーセンテージを比較するプロットを示す。
図10は、1週間に1回4週間(28日)の腹腔内(IP)注射によって、毎日28日間鼻腔内に(IN)、1日おきに28日間鼻腔内に(IN)、および1週間に1回4週間(28日)鼻腔内に(IN)投与された場合の、マウスにおけるスラミンの脳組織の血漿に対する分配比を比較するプロットを示す。
これらの結果は、スラミンなどの抗プリン作動剤を鼻腔内に送達して、血漿および脳組織レベルを達成することができること、ならびに脳組織の血漿に対する分配比の変動を観察することができることを実証する。したがって、これらの結果は、スラミンなどの抗プリン作動剤を、鼻腔内(IN)投与によって哺乳動物の脳に送達することができることを実証する。
(実施例7)
明/暗嗜好性試験(LDT)におけるスラミンの評価:不安様行動
目的
この明/暗研究の目的は、B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/Jトランスジェニック(TG)マウスにおいてさまざまなスラミン製剤ならびに処置の経路およびレジメンを試験して、対照として野生型マウスおよびIP生理食塩水で処置されたTGマウスと比較して、無条件の不安様行動を回復するのにこれらの薬剤の影響があるかどうかを決定することであった。
背景:
明/暗嗜好性試験(LDT)は、マウスにおける無条件の不安様行動を測定するために薬理学において最も広く使用されている試験の1つである。この試験は、明るい照明の領域へのマウスの自然の嫌悪、ならびに新規環境および光に応答するマウスの自発的な探索行動に基づく。Takao, K., et al., Light/dark Transition Test for Mice. J. Vis. Exp. (1), e104, doi:10.3791/104 (2006)を参照されたい。
この研究は、SmartCage(商標)システムを使用し、これは、げっ歯類のホームケージの活動および行動の一貫した正確なモニタリングにより、生物医学研究者が各種の神経行動学的アッセイを実施するのを可能にする自動の非侵襲性のげっ歯類の行動モニタリングシステムである。Xie X.S. et al. (2012) Rodent Behavioral Assessment in the Home Cage Using the SmartCageTM System. In: Chen J., Xu XM., Xu Z., Zhang J. (eds) Animal Models of Acute Neurological Injuries II. Springer Protocols Handbooks. Humana Press, Totowa, NJを参照されたい。
材料および方法:
実験アーム(処置群):
1.1群あたりN=6のマウス。
2.すべての行動試験は、未処置の野生型対照の群を含んでいた。
3.さまざまな群についての投薬は以下の通りであった。
a.群1:腹腔内(IP)スラミン、20mg/kgを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
b.群2:IP生理食塩水、5mL/gを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
c.群3:鼻腔内(IN)スラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
d.群4:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日おきに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1日おきに与えられる)。
e.群5:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1週間ごとに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1週間に1回与えられる)。
4.すべての群(群1~5)についての行動試験を、IN投薬の最終日後の翌日に開始した(13~14週齢)。
5.血液試料(PK試験)を、13週目の行動試験を開始する直前の12週齢の終わりにすべてのマウスから収集した。
6.脳組織(生化学試験用)を、13~14週齢の最後のすべての行動試験の終末での屠殺の際にすべてのマウスから回収した。
動物
雄B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスを、Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineから購入した。これらのマウスは、およそ8(±1)週齢であった。マウスを、群ケージ(処置群に基づいてケージあたり6匹のマウス)中、制御された環境(温度:21.5±4.5℃/相対湿度:35~55%)で、標準的な12時間明/12時間暗の照明サイクル(06:00に点灯)下で維持した。マウスを、週の残りの間、研究施設に収容した。投薬を次の月曜日に開始した。すべてのマウスの体重を、健康モニタリングの目的で記録した。
実験方法:
投薬を、研究スポンサーによって指示された通り、28日の過程にわたって行った。
1.明/暗試験を開始する前に、暗ボックス(マウスが進入するための開口部を有する赤色の透明な筐体)をSmartCage(商標)に設置する。
2.個々のマウスを、暗ボックスから離れた方向にその頭を向けて、開いた/暗くないボックスの側(「明ゾーン」)に置く。
3.次いで、マウスに、SmartCage(商標)を自由に探索させ、10分の期間にわたってその自身の裁量で暗ボックス「暗ゾーン」に進入させる。
4.不安様行動を、明ゾーンで過ごした時間、明ゾーン進入数、および明ゾーンで過ごした時間%のSmartCage(商標)モニタリングに基づいて評価する。
5.データを、処置群(IPスラミン、IP生理食塩水、INスラミン-毎日、INスラミン-1日おき、INスラミン-毎週)に基づいて一緒にグループ化する。
6.野生型対照データ(B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスの投薬を開始する前に別々に収集した)を、ナイーブ雄C57BL/6マウスに対する比較としての役割を果たすように、最終データ分析に加えた。
明-暗試験は、任意の事前訓練を必要としない。食餌または水は控えず、光などの自然ストレス要因のみを使用する。4つの同様に較正したSmartCage(商標)を使用して、4匹のマウスを同時に記録した(ケージの例を下記に示した)。すべての明/暗試験を1日で完了した。
明/暗試験の設定-暗ボックスを透明なホームケージ内に設置し、ホームケージをSmartCage(商標)モニタリングシステム内に設置した。
結果:
暗ゾーン進入潜時:
図11は、暗ゾーンの進入までの時間を示す(秒で測定)。マウスは、SmartCage(商標)をうろつくだけでなく、マウス自身の裁量で暗ボックスに出入りすることができた。マウスが暗ボックスに進入しなかった場合、そのマウスに、統計目的で600秒(実験が許容する10分のカットオフ)の進入潜時を割り当てた。
明ゾーン時間および明ゾーンで過ごした時間(%):
図12Aは、明ゾーンで過ごした総時間(分で測定)を示し、図12Bは、明ゾーンで過ごした時間(パーセンテージとして表す)を示す。図12Aでは、INスラミン-毎週で処置されたTGマウスが、最も長い明ゾーンの時間(約6.5分)を示した。明ゾーンで過ごした時間の総パーセンテージの評価において(図12B)、INスラミン-毎週で処置されたTGマウスは、より高い明ゾーンで過ごした時間のパーセンテージを示した。すべての他の処置群は、明ゾーンで過ごした総時間および時間のパーセンテージでWTマウスと同等であった(約5~6分および時間の約50~60%)。
明ゾーン進入:
図13は、明ゾーン進入数を示す。すべての処置群は、WTマウスと比較して、明ゾーン進入の同等のまたは増加した数を示した。
考察:
暗ゾーン進入潜時:
ナイーブWTマウスは、それらの環境のより明るい領域よりもより暗い領域を好む。しかしながら、新規環境を提示されると、WTマウスは探索する傾向がある。これらの2つの矛盾する性向は、観察可能な不安様症状をもたらす。図11における暗ゾーン進入潜時の評価において、WTマウスは、ほとんど直ぐに(7.5秒)暗ボックスに進入し、これは、新規の周囲においてさえ、暗い環境に対するWTマウスの嗜好性と一致する。
TG動物は、暗ゾーンへの進入の潜時を示し、明るい領域でより多くの時間を過ごし、これは、研究薬物処置からの不安の低減に起因し得る。すべてのINスラミン群は、同等の進入潜時(約60~65秒)を示したので、このことは、投薬の頻度が、TGマウスにおける不安様応答に顕著な影響を及ぼさないことを示唆する。しかしながら、INスラミン処置TGマウスは、IPスラミンおよびIP生理食塩水群の潜時(約30~40秒)のほぼ2倍の暗ゾーン進入潜時を示し、投与経路が結果に影響を与えていることを暗示した。
明ゾーン時間および明ゾーンで過ごした時間(%):
明-暗試験などの不安モデルにおいて、WTマウスは、明/暗機器の明ゾーンでより少ない時間を過ごす。しかしながら、抗不安薬処置で処置されたWTマウスは、典型的には、明ゾーンで過ごす時間の増加を示す。明ゾーンで過ごした総時間の評価において(図12A)、各種の処置で処置されたTGマウスはすべて、WT対照群と、同等の明ゾーンで過ごした総時間を有することが観察され、3つの群は、明ゾーンでの時間の増加を示した。INスラミン(毎週)で処置されたTGマウスは、明ゾーンでの著しく増加した時間量を示した(約6.5分)。
明ゾーン進入:明ゾーン進入の評価は、不安に関するので、リスク回避を測定する間接的な方法である。WTマウスの暗い筐体に対する嗜好性を考慮すると、マウスは、暗ボックスを出て明ゾーンに再び進入することによって、理想的ではない/快適ではない設定にマウス自身を付す「リスク」がある。一般に、TG処置マウスは、WTと比較して、明ゾーンに再進入する同等のまたはより高い意欲を示した。これは、明ゾーンにそれら自身を曝露する意欲を示唆するだけでなく、これらの2群が明ゾーンで過ごした総時間が5~6分であったことを考慮すると、チャンバー全体(暗ゾーンおよび明ゾーンの両方)を均等に探索する傾向も示す。
結論:
この研究では、スラミンで処置されたTG動物は、より長い暗ゾーン進入潜時を示したが、WTマウスにおいて観察されたものと類似の明ゾーンで過ごした時間の総時間およびパーセンテージ、ならびに明ゾーン進入数を示した。最も実質的で顕著な効果は、INスラミン(毎週)で処置されたTGマウスにおいて観察され、明ゾーンでの時間量の増加を示す。この研究における観察は、スラミンの鼻腔内投与が、不安様行動の低減および新規探索活動の回復をもたらし得ることを実証する。
(実施例8)
自発運動試験におけるスラミンの評価
目的
この自発運動研究の目的は、B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/Jトランスジェニック(TG)マウスにおいてさまざまなスラミン製剤ならびに処置の経路およびレジメンを試験して、対照として野生型マウスおよびIP生理食塩水で処置されたTGマウスと比較して、自発運動、覚醒および探索する意欲においてこれらの薬剤の影響があるかどうかを決定することであった。
背景:
自発運動試験は、げっ歯類における自発的な自発運動、覚醒および探索する意欲を確立する手段である。これは、野生型動物および遺伝子改変動物の両方における動物の行動に対するさまざまな薬の効果を試験するために使用することができる最も一般的なげっ歯類の試験の1つである。Seibenhener ML, Wooten MC. Use of the Open Field Maze to measure locomotor and anxiety-like behavior in mice. J Vis Exp. 2015;(96):e52434. Published 2015 Feb 6. doi:10.3791/52434を参照されたい。
この研究は、SmartCage(商標)システムを使用し、これは、げっ歯類のホームケージの活動および行動の一貫した正確なモニタリングにより、生物医学研究者が各種の神経行動学的アッセイを実施するのを可能にする自動の非侵襲性のげっ歯類の行動モニタリングシステムである。Xie et al, 2012,(同書)を参照されたい。
材料および方法:
実験アーム(処置群):
1.1群あたりN=6のマウス。
2.すべての行動試験は、未処置の野生型対照の群を含んでいた。
3.さまざまな群についての投薬は以下の通りであった。
a.群1:IPスラミン、20mg/kgを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
b.群2:IP生理食塩水、5mL/gを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
c.群3:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
d.群4:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日おきに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1日おきに1回与えられる)。
e.群5:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1週間ごとに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1週間に1回与えられる)。
4.すべての群(群1~5)についての行動試験を、IN投薬の最終日後の翌日に開始した(13~14週齢)。
5.血液試料(PK試験用)を、13週齢で行動試験を開始する直前の12週齢の終わりにすべてのマウスから収集した。
6.脳組織(生化学試験用)を、13~14週齢の最後のすべての行動試験の終末での屠殺の際にすべてのマウスから回収した。
動物:
雄B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TG(TG)マウスを、Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineから購入した。これらのマウスは、およそ8(±1)週齢であった。マウスを、群ケージ(処置群に基づいてケージあたり6匹のマウス)中、制御された環境(温度:21.5±4.5℃/相対湿度:35~55%)で、標準的な12時間明/12時間暗の照明サイクル(06:00に点灯)下で維持した。マウスを、週の残りの間、研究施設に収容した。投薬を次の月曜日に開始した。すべてのマウスの体重を、健康モニタリングの目的で記録した。
実験方法:
投薬を、研究スポンサーによって指示された通り、28日の過程にわたって行った。第2の行動試験であるSmartCage(商標)運動モニタリングを、第1の32匹のマウスにおいて、初日の12時間暗サイクルの開始(約5:00PM)から2日目の朝まで、および第2の32匹のマウスについて、2日目の12時間暗サイクルの開始から3日目の朝まで行った。
1.1日目~2日目:自発運動の記録を、SmartCage(商標)を使用して評価する。
2.B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスは、SmartCage(商標)に置かれるおよそ30分前にIP注射およびIN投薬を受けた。
3.マウスを4:00PM(12時間:12時間の暗/明サイクルの暗段階の開始の1時間前)にSmartCage(商標)に置いた。
4.SmartCage(商標)におけるマウスの自由な動きの約24時間の運動記録を取得した。
5.各グラフにおける最初の12時間(灰色影付きボックス)は、暗/明サイクルの暗段階を表す。
6.野生型(WT)対照データ(B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスの投薬を開始する前に別々に収集した)を、ナイーブ雄C57BL/6マウスに対する比較としての役割を果たすように、最終データ分析に加えた。
各マウスを、SmartCage(商標)内のきれいなプラスチックの透明なホームケージに置いた。各ホームケージは、薄い層の寝わら(Sani Chips、7090A;Envigo)から構成された。げっ歯類固形飼料(Teklab Diet 2018、Envigo)および水ゲル(Hydrogel、Teklab)をホームゲージに直接置いた。マウスは、SmartCage(商標)運動記録の全期間(約24時間)、それらのホームケージ内で自由にうろついた。活動時間、移動距離、および立ち上がり活動を各マウスについて評価した。データを処置群に基づいて分析した。
結果:
活動時間:図14は、1時間の時間ブロックごとのマウスの活動時間(分)を示す。すべての処置群からのマウスは、暗サイクルの間のより高い活動、および明サイクルの間のより低い活動レベルを示す。
すべてのINスラミン(毎日、毎週、および2日ごと)処置群は、WT対照群と比較して、より高い活動を示した。対照的に、IP生理食塩水群は、WT対照群と同等の、および一部の時間ブロックでは、WT対照群よりも少ない活動時間を示す。
移動距離:図15は、1時間の時間ブロックごとにプロットした移動距離(センチメートル)を示す。すべての薬物処置群からのマウスは、WTおよびIP生理食塩水対照群よりも優位に大きい移動距離を示した。この知見は、暗期間の間に特に明白であり、明期間の間はあまり一貫していなかった。
立ち上がりカウント:図16は、1時間の時間ブロックごとの立ち上がりカウントを示す。INおよびIP投与薬物処置群からの薬物処置マウスは、WT対照群およびIP生理食塩水群よりも大きく、より高頻度の立ち上がり活動を示す。INスラミンで2日ごとに処置されたTGマウスは、WT対照群と同等の立ち上がり活動を示した。
考察:
活動時間:活動時間は、歩く/走る、立ち上がる、および/または回転するのに費やした時間を含む、どのぐらいの時間マウスが活動的であるかを定量化する。すべての処置群からのマウスは、マウスの活動の天然パターンと一致するように、暗サイクルの間により高い活動、および明サイクルの間に最小限の活動を示す(図14)。マウスが夜行性げっ歯類であることを考慮すると、これは予想された。モニタリングを暗サイクルの最初に開始したので、ほとんどの活動は、運動記録の最初の12時間に起こった。一般に、さまざまな投与経路を介した投薬は、運動記録の開始の直前に行った場合、自発運動に影響を与え得る。活動の初期のスパイクは、最近の注射に起因して多動から起こり得るが、活動の突然の減少は、薬物投与経路が身体的不快感を引き起こす場合の、マウスの身体的機能障害に起因し得る。
すべてのINスラミン(毎日、毎週、および2日ごと)処置群は、WT対照群と比較して、より高い活動を示した。対照的に、IP生理食塩水群は、わずかに劣るとしても、WT対照群と同等の活動を示す。総合すれば、これらの結果は、実際の投薬自体が、自発運動の変化を直接引き起こさなかったことを示唆する。結果は、積極的処置介入が、増加した運動応答をもたらしていることを示唆する。
移動距離:移動距離は、マウスのそれぞれのホームケージをうろつき、探索しながら、マウスがx軸およびy軸をカバーする合計距離(cm)を定量化する。すべての薬物処置群からのマウスは、WTおよびIP生理食塩水対照群よりも優位に大きい移動距離を示した(図15)。すべての薬物処置群からのマウスが、薬物投与経路にかかわらず、移動距離の増加を示したことを考慮すると、これは、どの薬物処置も、自発運動を損なわず、また不安を増加させないことを示唆する。対照的に、薬物処置マウスは、それらのホームケージを探索する意欲の増加を示した。この知見は、明/暗試験において観察された不安の低減の徴候と一致する(不安様行動の明/暗試験の報告を参照されたい)。
立ち上がりカウント:立ち上がり活動は、そのホームケージの上部の方に達するために、マウスがその後肢から上向きに伸びた回数を測定する。立ち上がり活動は、SmartCage(商標)のZ軸のIRセンサーによって測定される。食餌および水(ヒドロゲル)の両方を各マウスのホームケージの床に直接置いたことを考慮すると、食餌および/または水のためにマウスが背伸びする必要はない。したがって、SmartCage(商標)によって測定される後ろ足で立つカウントは、マウスの一般的な活動および探索行動の指標としての役割を果たす。活動時間および移動距離のグラフにおいて観察されたように、INおよびIP投与群からの薬物処置マウスは、一般に、WT対照群およびIP生理食塩水群よりも高頻度の立ち上がり活動を示した。これらの結果を活動時間および移動距離のデータと組み合わせると、立ち上がり活動データは、すべてのスラミン処置群において、活動、覚醒および探索する意欲の増加を示すことにおいて一致する。
結論:
総合すれば、この自発運動からの知見は、研究薬で処置された雄B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスが、IP生理食塩水で処置されたTGマウスまたは野生型マウスと比較して、活動の増加、およびそれらの環境を探索するより高い意欲を示したことを示唆する。明/暗データと組み合わせて自発運動データを見ると、抗プリン作動薬による処置が、不安の低減に潜在的に起因して、暗段階における動物の環境のより多くの探索をもたらしたことを示唆することは妥当である。いずれの処置も、明段階の間のマウスの非活動状態(または総睡眠)を変化させなかった。
(実施例9)
社会的相互作用研究におけるスラミンの評価
目的
この社会的相互作用活動研究の目的は、B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/Jトランスジェニック(TG)マウスにおいてさまざまなスラミン製剤ならびに処置の経路およびレジメンを試験して、対照として野生型マウスおよびIP生理食塩水で処置されたTGマウスと比較して、社会的行動に対するこれらの薬剤の影響があるかどうかを決定することであった。
背景:
社会的相互作用は、マウスおよびラットを含む多数の種の生物学の基本的なおよび適応性の構成要素である。社会認識は、社会を定義するネットワークおよび関係の構造および安定性のために重要である。うつ、自閉症スペクトラム障害、双極性障害、強迫性障害、および統合失調症を含む各種の神経精神障害は、社会的行動および社会認知の破壊によって特徴付けられる。
クローリーズの社交性および社会的新規についての嗜好性プロトコールとして公知の3チャンバーパラダイム試験を用いたマウスの社会的相互作用研究は、いくつかの同系交配および変異体マウス系統における社会的所属および社会的記憶を研究するために成功裏に用いられている。この試験は、慣れていない1匹または2匹のマウスとの間接的接触を含む2つの実験セッションの間に3つのボックスの区画のいずれかで時間を過ごす対象マウスによる自由選択の原理に基づく。実験マウスの社会的傾向を定量化するために、主なタスクは、a)新規マウスと過ごす時間、およびb)新規マウス対慣れたマウスについての嗜好性を測定することである。したがって、この試験の実験設計は、2つの重要であるが区別可能な社会的行動の態様:社会的所属/動機付け、ならびに社会的記憶および新規の評価を可能にする。この場合における「社交性」は、同一であるが空のチャンバーで単独で過ごした時間と比較して、別のマウスと時間を過ごす性向として定義する。Moy SS, Nadler JJ, Perez A, Barbaro RP, Johns JM, Magnuson TR, Piven J, Crawley JN. Sociability and preference for social novelty in five inbred strains: an approach to assess autistic-like behavior in mice. Genes, brain, and behavior. 2004;3:287-302;およびKaidanovich-Beilin O, Lipina TV, Takao K, Eede Mvan, Hattori S, Laliberte C, Khan M, Okamoto K, Chambers JW, Fletcher PJ, Macaulay K, Doble BW, Henkelman M, Miyakawa T, Roder J, Woodgett JR. Abnormalities in brain structure and behavior in GSK-3alpha mutant mice. Molecular brain. 2009; 2:35-35を参照されたい。
この研究は、SmartCage(商標)システムを使用し、これは、げっ歯類のホームケージの活動および行動の一貫した正確なモニタリングにより、生物医学研究者が各種の神経行動学的アッセイを実施するのを可能にする自動の非侵襲性のげっ歯類の行動モニタリングシステムである。Xie et al, 2012(同書)を参照されたい。
材料および方法:
実験アーム(処置群):
1.1群あたりN=6のマウス。
2.すべての行動試験は、未処置の野生型対照の群を含んでいた。
3.さまざまな群についての投薬は以下の通りであった。
a.群1:IPスラミン、20mg/kgを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
b.群2:IP生理食塩水、5mL/gを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
c.群3:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
d.群4:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日おきに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1日おきに1回与えられる)。
e.群5:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1週間ごとに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1週間に1回与えられる)。
4.すべての群(群1~5)についての行動試験を、IN投薬の最終日後の翌日に開始した(13~14週齢)。
5.血液試料(PK試験用)を、13週齢で行動試験を開始する直前の12週齢の終わりにすべてのマウスから収集した。
6.脳組織(生化学試験用)を、13~14週齢の最後のすべての行動試験の終末での屠殺の際にすべてのマウスから回収した。
動物:
雄B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TG(TG)マウスを、Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineから購入した。これらのマウスは、およそ8(±1)週齢であった。マウスを、群ケージ(処置群に基づいてケージあたり6匹のマウス)中、制御された環境(温度:21.5±4.5℃/相対湿度:35~55%)で、標準的な12時間明/12時間暗の照明サイクル(06:00に点灯)下で維持した。マウスを、週の残りの間、研究施設に収容した。投薬を次の月曜日に開始した。すべてのマウスの体重を、健康モニタリングの目的で記録した。
実験方法:
投薬を、研究スポンサーによって指示された通り、28日の過程にわたって行った。第3の行動試験である社会的相互作用試験を行い、4日後に完了した。各対象マウスを、異なるホームケージからの初対面マウスと対にした。これは、各対象マウスが、初対面マウスとのいかなる以前の相互作用もなかったことを確実にし、このようにして潜在的なバイアスを最小限にした。
1.SmartCage(商標)を使用する社会的相互作用-マウスSmartCage(商標)チャンバーの遠端に社会的相互作用げっ歯類区画を取り付ける。
2.馴化-0~5分目の間、対象マウスを、両方の社会的相互作用区画を空にしたまま、チャンバーを自由にうろつかせる。
3.いずれかのゾーン(ゾーン1-初対面1区画;ゾーン3-初対面2区画)について大きな嗜好性を示すマウスを除くものとし、約50:50の探索を示すマウスは、偏りのない探索を実証する。
4.社交性-5~10分目、初対面1マウスをゾーン1の初対面1区画に置き、対象マウスに自由に探索させる。
5.社会的新規-10~15分目、初対面2マウスをゾーン4の初対面2区画に置き、マウスに自由に探索させる。
6.ゾーン1およびゾーン3の占有時間を分析し、これを使用して、もしあればどのぐらいの嗜好性を対象マウスがいずれかの初対面マウスに対して有しているかを評価する。
7.理想的には、初対面マウスは、同じホームケージからではないが、対象マウスと類似の年齢/体重および性別のものであるべきである。
8.野生型対照データ(B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスの投薬を開始する前に別々に収集した)を、ナイーブ雄C57BL/6マウスに対する比較としての役割を果たすように、最終データ分析に加えた。
社会的相互作用チャンバー全体および初対面区画を、各社会的相互作用試験間に、0.05%の漂白剤で濡らしたライトタオル(light towel)で十分に拭いた。これは、試験対象の行動に影響を与える以前の試験からの臭いについての可能性を低減した。加えて、社会的相互作用試験は、両社会的相互作用区画を含む社会的相互作用チャンバー全体に対して等しい照明を提供する蛍光シーリングライト下で行った。
結果:
馴化:
社会的相互作用試験の最初の5分(馴化段階)に、各対象マウスは、社会的相互作用チャンバーを自由に探索することができる。このポイントでは、2つの「初対面」区画は空である。一般に、ナイーブWTマウスは、両初対面区画を均等に探索および調査するであろう。占有時間のSmartCage(商標)評価は、どのぐらいの時間各対象マウスが各初対面区画を探索および調査するのに費やすかの直接測定を与える。
図17は、0~5分目の馴化および各初対面区画に対する占有時間(分)を示す。すべての薬物処置群およびWT対照群は、2つの初対面区画を探索して過ごす時間が等しいことを示した。この馴化段階は、WT対照マウスおよびTGマウスが、初対面マウスの導入前に、社会的相互作用チャンバーのいずれかの側に対する固有バイアスを示さないことを確実にした。
各区画に対するTG処置群のそれぞれについての活動レベルおよび占有時間は、WT対照群から観察されたものと同等である。
社交性:
図18は、初対面区画1および2に対する各処置群についての占有時間(分)を表す社交性分析(5~10分目)を示す。初対面1マウスの導入により、対象マウスの焦点は、初対面1区画に変わる。占有時間は、初対面2区画の占有時間よりも初対面1区画においてより長い。WTマウスは、TGマウスよりも初対面1区画でより多くの時間を過ごす。とりわけ、TGマウスはすべて、空であったとしても、WTマウスよりも初対面区画2でより長い占有時間を示す。
社会的新規:
図19は、初対面区画2における新たなマウスの導入後に各区画で測定された占有時間(分)による社会的新規を示す。初対面2マウスの導入により、対象マウスの焦点は、初対面2区画に変わる。すべての薬物処置TG群およびWT対照群からのマウスは、社会的新規段階(10~15分目)の間、初対面2区画におけるより長い占有時間を示し、WTマウスは、最も長い占有時間を示す。
考察:
社会的相互作用試験の馴化段階によって証拠付けられるように、すべてのTGマウス薬物処置群およびWT対照群は、十分に馴化し、2つの初対面区画を探索するのに過ごした等しい時間量を示した。
社交性段階では、WTマウスと比較した場合に、研究薬物で処置されたTGマウスは、初対面1マウスとより少ない時間を過ごし、明確な社交性を確立しなかった。
同様に、初対面2マウスを導入した場合、これらの同じ群はすべて、それらの注意が初対面2区画に顕著に移った。しかしながら、WTマウスは、依然として、初対面2マウスとの最も長い占有時間を示し、試験薬物で処置されたTGマウスと比較して、より高いレベルの社交性を示した。この相違に対する可能性のある説明は、WTマウスが、TGマウスほど長い間、同じ投薬パラダイムの対象ではなく、またそれらのケージメイトとともに収容されなかったことであり得る。したがって、WTマウスは、社会的相互作用の新奇性(originality)に起因して、より高い社交性を示した可能性がある。
TGマウスは、典型的には、WTマウスと比較して低い社交性を示す。明/暗試験データおよび自発運動試験データにおいて観察されたように、薬処置TGマウスは、社交性の増強をもたらし得る不安の低減および探索する傾向を示した。この試験は、初対面2マウスが導入された場合に、マウスが、初対面1マウスと以前に交流したことを思い出さなければならないので、無傷の短期記憶も必要とする。無傷の短期記憶は、社会的新規/社会的分化を可能にする。これらの知見は、薬物処置TGマウスが、社交性の改善および無傷の短期記憶を示したが、WTマウスにおいて観察されたこれらの能力の完全な回復ではないことを示唆する。
結論:
この研究における他の行動評価と一致して、B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスは、社交性および社会的新規に対する応答の欠陥を示す。この社会的相互作用研究からの知見は、研究薬で処置されたB6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスが、社会的活動の増加、不安の低減、およびそれらの環境を探索するより高い意欲を示したことを示唆する。総合すれば、抗プリン受容体薬が、典型的にはこのTGマウスモデルに存在しない正常な短期記憶および社会的活動を回復させ得ることも示唆する。
(実施例10)
空間学習および記憶研究におけるスラミンの評価
目的
モリス水迷路研究の目的は、B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/Jトランスジェニック(TG)マウスにおいてさまざまなスラミン製剤ならびに処置の経路およびレジメンを試験して、対照として野生型マウスおよびIP生理食塩水で処置されたTGマウスと比較して、空間学習および記憶に対するこれらの薬剤の影響があるかどうかを決定することであった。
背景:
モリス水迷路試験(MWM)は、空間学習および記憶の精神的プロセスならびに神経機構を研究するための行動神経科学において最も広く使用されているタスクの1つである。MWMは、水面下の脱出プラットフォームを見つけるために、オープンスイミングアリーナの外周の周囲の開始ポイントからナビゲートするための遠位のキューに依存する、空間学習のげっ歯類試験である。空間学習は、反復試験にわたって評価され、参照記憶は、プラットフォームが存在しない場合に、プラットフォーム領域に対する嗜好性によって決定される。空間記憶は、探査試験の間に評価され、ここで、プラットフォームが除去され、プラットフォームが以前に位置した空間的位置(標的象限)を調べるのに動物が費やした時間のパーセンテージを測定する。ヒトにおける空間学習は、陳述記憶の形態である。いくつかの研究が、仮想迷路およびナビゲーションタスクを用いるコンピューターシステムを使用して、ヒトの空間学習および記憶を評価している。
MWMは、海馬のシナプス可塑性およびNMDA受容体機能と強く相関する頑強で信頼性のある試験であると証明されている。Vorhees, C., Williams, M. Morris water maze: procedures for assessing spatial and related forms of learning and memory. Nat Protoc 1, 848-858 (2006)を参照されたい。
この研究は、SmartCage(商標)システムを使用し、これは、げっ歯類のホームケージの活動および行動の一貫した正確なモニタリングにより、生物医学研究者が各種の神経行動学的アッセイを実施するのを可能にする自動の非侵襲性のげっ歯類の行動モニタリングシステムである。Xie et al, 2012(同書)を参照されたい。
材料および方法:
実験アーム(処置群):
1.1群あたりN=6のマウス。
2.すべての行動試験は、未処置の野生型(WT)対照の群を含んでいた。
3.さまざまな群についての投薬は以下の通りであった。
a.群1:IPスラミン、20mg/kgを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
b.群2:IP生理食塩水、5mL/gを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
c.群3:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
d.群4:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日おきに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1日おきに与えられる)。
e.群5:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1週間ごとに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1週間に1回与えられる)。
4.すべての群(群1~5)についての行動試験を、IN投薬の最終日後の翌日に開始した(13~14週齢)。
5.血液試料(PK試験用)を、13週齢で行動試験を開始する直前の12週齢の終わりにすべてのマウスから収集した。
6.脳組織(生化学試験用)を、13~14週齢の最後のすべての行動試験の終末での屠殺の際にすべてのマウスから回収した。
動物:
雄B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TG(TG)マウスを、Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineから購入した。これらのマウスは、およそ8(±1)週齢であった。マウスを、群ケージ(処置群に基づいてケージあたり6匹のマウス)中、制御された環境(温度:21.5±4.5℃/相対湿度:35~55%)で、標準的な12時間明/12時間暗の照明サイクル(06:00に点灯)下で維持した。マウスを、週の残りの間、研究施設に収容した。投薬を次の月曜日に開始した。すべてのマウスの体重を、健康モニタリングの目的で記録した。
実験方法:
投薬を、研究スポンサーによって指示された通り、28日の過程にわたって行った。第4の行動試験であるモリス水迷路を、33日目から37日目に、5日にわたって行った。最初の4日間、各マウスをモリス水迷路における4回の試験に付した。各試験では、各マウスは、標的プラットフォームを見つけ、それ自身を位置づけるために60秒が与えられた。マウスが60秒後に標的プラットフォームを見つけなかった場合、試験者は、手作業でマウスをプラットフォームに置き、マウスを少なくとも20秒間プラットフォーム上に位置させた。5日目に、各マウスを、探査試験前に2回の試行に付した。2回の5日目の試行が完了した後、標的プラットフォームをモリス水迷路タンクから除去する。探査試験では、各マウスを水タンクに放し、タンクを自由にうろつかせる。標的プラットフォームが元々位置していたゾーンで過ごした時間量を、各マウスについて記録した。
1.モリス水迷路:水プールの直径は105cmであり、水は洗える白色ペイントで着色され、水温は摂氏21~22度であり、プラットフォームは8.5cm×13.5cmのサイズであり、水面下1.5cmの深さにある。
2.水迷路訓練の開始前に、各マウスをプラットフォームの上部に20秒間置く。
3.マウスを、タンクの異なる場所から放して、プラットフォームを見つけさせ、プラットフォームに達するためのマウスの潜時を、ANY-Maze Behavior Trackingソフトウェアを使用して自動的に記録する。
4.獲得:5日の訓練。最初の4日は、1日あたり4回の試験であり、5日目の訓練は、探査試験前に2回の試験である。マウスを、動物がプラットフォームを見つけることができない場合、プラットフォーム上に20秒間置く。
5.プラットフォームに達した後、マウスをプラットフォームからすぐに除去し、そのホームケージに戻し、このようにして、獲得訓練を完了する。
6.探査試験:訓練後、マウスを、水タンクの異なる場所から放して、水から除去されている元々のプラットフォームを見つけさせる。
7.マウスは、1分間プラットフォームを自由に探索し得、標的象限で過ごした時間を、Any-Maze Behavioral Trackingソフトウェアによって記録する。
8.空間学習および記憶行動を、標的象限で過ごした時間、標的象限進入数、および標的象限で過ごした時間%のソフトウェアモニタリングに基づいて評価する。
データを、処置群(野生型、IPスラミン、IP生理食塩水、INスラミン-毎日、INスラミン-1日おき、およびINスラミン-毎週)に基づいて一緒にグループ化する。モリス水迷路タンクを、乳白色の色相に染色した水で満たした。これは、MWMソフトウェアが、黒色のマウスをより高い分解能で追跡できるようにしながら、ビデオ再生においてマウスと水との間のより大きなコントラストを提供した。各試験後、各マウスを、手作業で水から除去し、柔らかいタオルで手で乾かす技法を使用して試験者によって軽く乾かした。次いで、対象マウスを、加熱ランプ下に置いて、低体温の可能性も低減しながら、乾燥を確実にした。毎日の複数の試行から任意の有害反応を示したマウスはなかった。
MWM試験を2つの段階:獲得および探査において実施した。獲得段階では、参照記憶プロトコールを使用し、ここで、プラットフォームは、数日にわたってルームキューに対して固定された場所にある。動物を、水中に、プールの側壁において、かつ側壁に面して、試験にわたって異なる開始位置に置く。それらは、脱出潜時を減少し、より直接的な泳ぎ経路で、正しい場所に泳ぐことをすぐに学習する。
追跡システムは、試験にわたって徐々に低減した脱出潜時、ならびに経路の長さ、泳ぐスピード、およびプラットフォームの場所に関する方向性などのパラメーターを測定する。動物の観察は、脱出プラットフォームに乗ると、それらが、多くの場合に、空間でそれらの場所を特定しようとしているかのように、立ち上がり、周りを見回すことを明らかにした。立ち上がりは試験にわたって馴化するが、次いで、隠されたプラットフォームが新しい場所に移動するか、または完全に除去されると(探査試験におけるように)、脱馴化する。
訓練の間または訓練が完了した後、実験者は、脱出プラットフォームをプールから除去し、動物を60秒間泳がせる探査試験を実施する。典型的には、十分に訓練されたマウスは、プールの標的象限に泳ぎ、次いで、プラットフォームの以前の場所を横断して繰り返し泳いだ後、他の場所を探し始める。さまざまな方法で測定されるこの空間的バイアスは、空間記憶についての証拠を構成する。海馬および歯状回、鉤状回の病変、または組み合わされた病変を有するマウスは、訓練後の探査試験において十分に行動しない。
結果:
獲得試験
図20は、1~5日目の処置群のそれぞれについての獲得試験の脱出潜時(秒)を示す。すべてのマウスは、1日目から5日目に、脱出潜時の減少を示し、したがって、モリス水迷路タンクの空間的パラメーターの着実であるが段階的な学習を示した。すべてのTGマウスは、処置群にかかわらず、WTマウスと同等の空間認知獲得プロセスを示した。WT対照群は、標的プラットフォームを獲得するのに17秒が必要であった。すべての他のTGマウス処置群は、訓練の最終日までに、20~27秒以内にプラットフォームを見つけた。
探査試験:
探査試験からの図21は、脱出プラットフォームを見つけようと試みて標的象限で過ごした時間(秒)を示す。WT対照群は、およそ52.53%の最も長い標的象限での占有時間を示した。すべてのTGマウスは、WT対照群よりも、標的象限で顕著に少ない時間を過ごした。スラミンの一部の形態で処置されたすべてのTGマウスは、標的象限において、それらの探査試験時間の28%~32%を過ごした。
考察:
獲得段階:WTマウスおよびTGマウスは、処置群にかかわらず、同等の学習、空間認知(spatial awareness)、および空間認識を示した。
探査段階:処置TGマウスはいずれも、WTマウスほど標的象限で多くの時間を過ごさなかった。
結論:
WTマウスおよび処置TGマウスは、モリス水迷路タンクの空間的パラメーターの着実であるが段階的な学習を示す、経時的な脱出潜時の一定の減少を示した。標的象限における全体的な占有時間は、探査段階の間、TGマウスと比較して、WTにおいてより長かった。これは、TGマウスにおける研究処置が、正常な認知機能または空間学習および記憶に対して任意の負のまたは悪化させる効果を有していなかったことを示唆する。
(実施例11)
学習および記憶についての文脈的条件付け記憶試験におけるスラミンの評価
目的
ステップスルー型受動的回避試験の目的は、B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/Jトランスジェニック(TG)マウスにおいてさまざまなスラミン製剤ならびに処置の経路およびレジメンを試験して、対照として野生型マウスおよびIP生理食塩水で処置されたTGマウスと比較して、学習および記憶に対するこれらの薬剤の影響があるかどうかを決定することであった。
背景:
受動的回避タスクは、学習および記憶に対する新規化学的実体の効果を評価するため、ならびにCNS障害のげっ歯類モデルに関与する機構を研究するために有用である。この試験では、試験チャンバーを、照明がついた区画と暗区画との間にゲートを有する2つの区画に分ける。試験動物は、初日に、両区画を探索した。翌日、それらに、暗区画において軽度の足ショックを与え、それらは、暗区画を足ショックと関連付けるように学習する。それらの学習および記憶を試験するために、次いで、マウスを、照明がついた区画に戻した。げっ歯類の受動的回避行動は、暗区画に対するそれらの生得的な嗜好性の抑制として定義される。正常な学習および記憶を有するマウスは、暗チャンバーに進入するのを回避する。前日からの学習および記憶を、2つの区画間のゲートを通過する潜時を記録することによって測定する。J. David Sweatt, Chapter 4: Rodent Behavioral Learning and Memory Models, Editor: J. David Sweatt. Mechanisms of Memory (Second Edition), Academic Press, 2010,Pages 76-103, ISBN 9780123749512を参照されたい。
この研究は、SmartCage(商標)システムを使用し、これは、げっ歯類のホームケージの活動および行動の一貫した正確なモニタリングにより、生物医学研究者が各種の神経行動学的アッセイを実施するのを可能にする自動の非侵襲性のげっ歯類の行動モニタリングシステムである。Xie et al, 2012を参照されたい。
材料および方法:
実験アーム(処置群):
1.1群あたりN=6のマウス。
2.すべての行動試験は、未処置の野生型(WT)対照の群を含んでいた。
3.さまざまな群についての投薬は以下の通りであった。
a.群1:IPスラミン、20mg/kgを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
b.群2:IP生理食塩水、5mL/gを、動物に9週齢で開始して4週間継続して、毎週投与した(すなわち、9、10、11、および12週齢に与えられる)。
c.群3:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日に1回、鼻孔あたり1スプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするためにおおよそ2分である)、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計56スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、毎日与えられる)。
d.群4:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1日おきに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して28日間(28日の期間にわたって合計28スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1日おきに1回与えられる)。
e.群5:INスラミンの製剤を、スプレーあたり100mg/mL×6μLの濃度で、1週間ごとに1回、鼻孔あたり1スプレーとして、9週齢で開始して4週間(28日)(28日の期間にわたって合計8スプレー)、投与した(すなわち、9、10、11および12週齢の間、1週間に1回与えられる)。
4.すべての群(群1~5)についての行動試験を、IN投薬の最終日後の翌日に開始した(13~14週齢)。
5.血液試料(PK試験用)を、13週齢で行動試験を開始する直前の12週齢の終わりにすべてのマウスから収集した。
6.脳組織(生化学試験用)を、13~14週齢の最後のすべての行動試験の終末での屠殺の際にすべてのマウスから回収した。
動物:
雄B6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TG(TG)マウスを、Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineから購入した。これらのマウスは、およそ8(±1)週齢であった。マウスを、群ケージ(処置群に基づいてケージあたり6匹のマウス)中、制御された環境(温度:21.5±4.5℃/相対湿度:35~55%)で、標準的な12時間明/12時間暗の照明サイクル(06:00に点灯)下で維持した。マウスを、週の残りの間、研究施設に収容した。投薬を次の月曜日に開始した。すべてのマウスの体重を、健康モニタリングの目的で記録した。
実験方法:
投薬を、研究スポンサーによって指示された通り、28日の過程にわたって行った。第5のおよび最終の行動試験であるステップスルー(ST)型受動的回避試験を、初日の訓練日および2日目の試験日で、2日(38日目および39日目)にわたって行った。受動的回避は、げっ歯類における短期記憶または長期記憶を評価するために伝統的に使用されている恐怖動機付け試験である。受動的回避パラダイムは、対象が、暗領域の嗜好性および明領域の回避というそれらの生来の傾向に反して行動することを必要とする。ST試験において使用された暗ボックス(マウスが進入するための開口部を有する赤色の透明な筐体)は、「明-暗」試験において使用された同じ暗ボックスであり、ST試験では、暗ボックスを、マウスが暗ボックスに進入したらすぐにマウスに電気ショックを送る金属足ショックグリッドの上に設置する。各マウスを、1度に1匹ずつ個々に訓練した。マウスが暗ボックスに進入したらすぐに、マウスはその後足に直接的な電気ショックを受けた。足ショックを受けた後、実験者は、手作業でマウスをSmartCage(商標)から除去し、そのホームケージに戻した。各訓練セッションの間に、金属グリッドおよび暗ボックスを、0.05%の漂白剤でやさしく拭いた。これは、以前の訓練セッションからの残った臭いまたは残屑(毛、寝わら、食餌粒子)に起因して起こり得るいかなる潜在的バイアスも最小限にした。
1.ステップスルー(ST)訓練を開始する前に、暗ボックス(マウスが進入するための開口部を有する赤色の透明な筐体)をSmartCage(商標)内の金属足ショックグリッドの上に設置する。
2.個々のマウスを、暗ボックスから離れた方向にその頭を向けて、開いた/暗くないボックスの側(「明ゾーン」)に置く。
3.次いで、マウスを、SmartCage(商標)を自由に探索させ、その自身の裁量で暗ボックス「暗ゾーン」に進入させ、暗ボックス進入潜時を自動的に記録する。
4.マウスが暗ボックスに進入し、暗筐体に少なくとも1秒間位置したらすぐに、マウスは、2秒間持続する足ショック(金属グリッドを介した)を受ける。
5.足ショックを受けた後、マウスをSmartCage(商標)からすぐに除去し、そのホームケージに戻し、このようにして、ステップスルー訓練を完了する。
6.ST訓練の24時間後、マウスを、前日からの同じSmartCage(商標)設定に置き、マウスを、開いた/暗くないボックス側に置く。
7.マウスは、5分間SmartCage(商標)を自由に探索し得、文脈的恐怖関連付けに起因する暗ボックスの回避を評価する。
8.文脈的恐怖条件付け行動を、明ゾーンで過ごした時間、明ゾーン進入数、および明ゾーンで過ごした時間%のSmartCage(商標)モニタリングに基づいて評価する。
9.加えて、訓練日(足ショック前)と訓練24時間後(試験日)との間の暗ボックス進入潜時の比較を行う。
10.データを、処置群(IPスラミン、IP生理食塩水、INスラミン-毎日、INスラミン-1日おき、INスラミン-毎週)に基づいて一緒にグループ化する。
結果:
図22は、各処置群に対する訓練日および24時間後の試験日についての暗ゾーン進入潜時(秒)を示す。暗ボックスの進入までの各マウスについての潜時を、訓練日と試験日(足ショックの24時間後)との間で比較した。すべての処置群は、訓練日において、50秒未満で暗区画に進入した。試験日において、24時間後、すべての処置群は、軽度の足ショックの記憶を維持し、訓練日におけるよりも長い時間にわたり暗区画への進入を回避した。IPスラミン群は、暗区画進入についての最も短い潜時を有しており、すべての他の処置群は、WTマウスにおいて観察されたものと類似のより長い潜時を有していた。
図23Aは、総明ゾーン時間(分)を示し、図23Bは、試験日に明ゾーンで過ごした時間のパーセンテージを示す。WTマウスならびにINスラミンおよびIN生理食塩水で処置されたTGマウスは、類似する明ゾーンで過ごした総時間、および70%超の明ゾーンで過ごした時間を示す。IPスラミンは、より短い総時間、およびおよそ50%のそれらの明ゾーンでの時間を示した。
図24は、処置群ごとの暗ゾーン進入の総数を示す。IP生理食塩水TGマウスは、最も多い進入数を示したが、WTマウスおよびスラミン処置TGマウスのほとんどは、類似の進入数を示した。
図25は、処置群ごとの明ゾーン進入の総数を示す。
考察:
暗ゾーン進入潜時:WTマウスおよびTGマウス処置群の両方において、訓練日と試験日との間で暗ゾーン進入潜時の実質的な顕著な差があった。これは、すべての実験群が、足ショック誘発恐怖応答を学習し、記憶にとどめることができることを示唆する。
明ゾーン総時間および明ゾーンでの時間のパーセンテージ:明ゾーンで過ごした時間量である総時間(分)、および暗ゾーンで過ごした時間に対する明ゾーンで過ごした時間のパーセンテージ(%)の両方が、各処置群の一般的な行動活動および活動レベルに関するデータを提供し、潜在的な偽陽性の影響を除外する。
ほとんどのTGマウス処置群は、WT対照群と類似の行動を示した。これは、これらのTGマウスにおける処置が、それらの学習および連想記憶に対して顕著な負の効果を有していなかったことを示唆する。
暗ゾーン進入数:暗ゾーン進入数は、暗ゾーンに関連する軽度の足ショックのマウスの条件付け恐怖を反映する。それらが暗ボックスに進入すると、暗ゾーンに戻る再進入数は、どの程度それらが暗ボックスに進入する恐怖を維持していたかの指標である。スラミンおよび他の対応物によるWTおよびTG処置群は、IP生理食塩水TGマウスと比較して、より少ない暗ゾーン進入を示し、それらが前日の条件付けからの改善された記憶を有することを示唆する。
結論:
ステップスルー型受動的回避試験からの結果は、すべての処置群が、無傷の短期記憶を有し、暗ゾーンに関連する負の刺激を回避することを学習し、少なくとも24時間この条件付け記憶を維持することができることを示唆する。
参照による組み込み
本明細書で言及される、補正書、特許出願文書、科学論文、政府報告書、ウェブサイト、および他の参考文献を含む、特許文書のそれぞれの開示全体が、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。専門用語に矛盾がある場合は、本明細書が支配する。
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明の限定ではなく、すべてに関して例示的であると考えられるべきである。本発明の方法および組成物のさまざまな実施形態では、含むという用語が、列挙された方法のステップまたは組成物の構成成分に関して使用される場合、方法および組成物が、列挙されたステップまたは構成成分から本質的になるか、またはそれからなることも企図する。さらにまた、本発明が動作可能のままである限り、ステップの順序またはある特定の行為を行うための順序は重要ではない。また、2つまたはそれよりも多くのステップまたは行為を同時に実施することができる。
本明細書では、単数形は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形も含む。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、本明細書が支配する。
さらにまた、混合の際に、ある特定の構成成分がさらに反応するか、または追加の材料に変換され得るので、ある特定の例では、組成物は混合する前の構成成分から構成されていると記載することができることが認識されるべきである。
本明細書で使用されるすべてのパーセンテージおよび比は、他に指示されない限り、重量による。物体の質量は、多くの場合、日常的な用法において、および最も一般的な科学目的では、その重量として称されるが、その質量は、技術的には、物体の物質の量を指す一方で、重量は、物体が重力に起因して受ける力を指すことが認識される。また、一般的な用法では、物体の「重量」(質量)は、秤または天秤で物体を「重量を量る」(質量を量る)場合に決定されるものである。

Claims (42)

  1. 神経系障害の処置を必要とするヒト患者における神経系障害を処置する方法であって、有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を前記患者に鼻腔内投与することを含み、前記組成物が、
    a)不安もしくは不安様行動、
    b)環境を探索する意欲、
    c)社会的相互作用、
    d)空間学習および記憶、
    e)学習および記憶、
    f)易刺激性、激越およびもしくは泣き、
    g)嗜眠および/もしくは社会的離脱、
    h)常同行動、
    i)多動および/もしくは不服従、または
    j)制限的および/もしくは反復行動
    からなる群より選択される前記神経系障害の障害、症状または行動の症状発現のうちの少なくとも1つの前記患者における改善を提供する、方法。
  2. 前記組成物が、
    a)不安もしくは不安様行動、
    b)環境を探索する意欲、
    c)社会的相互作用、
    d)空間学習および記憶、または
    e)学習および記憶
    からなる群より選択される前記神経系障害の障害、症状または行動の症状発現のうちの少なくとも1つの前記患者における改善を提供する、請求項1に記載の方法。
  3. スラミンの前記有効量が、治療有効量である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記薬学的に許容される塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記塩が、ナトリウム塩である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記塩が、六ナトリウム塩である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記神経系障害が、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病、アンジェルマン症候群(AS)、ならびにライム病および他のダニ媒介疾患に関連する場合が多いCNS障害の症状発現、ならびにそれらの長期的な影響を含む、COVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタインバーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連する神経系および中枢神経系(CNS)障害からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記神経系障害が、自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASから選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記神経系障害が、自閉症スペクトラム障害である、請求項7に記載の方法。
  10. 前記自閉症スペクトラム障害が、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記自閉症スペクトラム障害が、コミュニケーションの困難、他者との相互作用の困難、および反復行動から選択される1つまたは複数の症状を示す、請求項9に記載の方法。
  12. 前記神経系障害が、FXSである、請求項8に記載の方法。
  13. 前記神経系障害が、FXTASである、請求項8に記載の方法。
  14. 前記神経系障害が、ME/CFSである、請求項7に記載の方法。
  15. 前記神経系障害が、PTSDである、請求項7に記載の方法。
  16. 前記神経系障害が、TSである、請求項7に記載の方法。
  17. 前記神経系障害が、PDである、請求項7に記載の方法。
  18. 前記神経系障害が、ASである、請求項7に記載の方法。
  19. 前記神経系障害が、ライム病および他のダニ媒介疾患に関連する中枢神経系障害の症状発現である、請求項7に記載の方法。
  20. 前記神経系障害が、後述されるもののそれらの長期的な影響を含む、COVID-19、またはエプスタインバーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、ならびにサイトメガロウイルスから選択されるウイルスに関連する中枢神経系障害の症状発現である、請求項7に記載の方法。
  21. 前記組成物が、1日に少なくとも1回、または1日に少なくとも2回、または1週間に少なくとも1回、または1週間に少なくとも2回、または隔週(すなわち、2週間ごと)に少なくとも1回、または1か月に少なくとも1回、または4週間ごとに少なくとも1回投与される(すなわち、送達されるまたは投薬される)、請求項1に記載の方法。
  22. 前記組成物が、約41日~約78日ごとに少なくとも1回投与される、請求項1に記載の方法。
  23. 前記組成物が、約50日ごとに少なくとも1回投与される、請求項1に記載の方法。
  24. 前記組成物が、スラミンの平均半減期に基づく時間間隔ごとに少なくとも1回投与される、請求項1に記載の方法。
  25. 前記組成物が、培養ヒト気道組織を通して、スラミン活性体に基づいて、1時間あたり約1マイクログラム/cm~1時間あたり約200マイクログラム/cmのスラミンの透過速度を示す、すなわち、提供することができる、請求項1に記載の方法。
  26. 前記患者における前記スラミンの血漿レベルが、スラミン活性体に基づいて、約3マイクロモル濃度(μM)未満、または約2.75マイクロモル濃度未満、または約2.5マイクロモル濃度未満、または約2マイクロモル濃度未満、または約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満で維持される、請求項1に記載の方法。
  27. 前記患者における前記スラミンの脳組織レベルが、約1ng/ml~約1000ng/mlである、請求項1に記載の方法。
  28. 前記患者における前記スラミンの脳組織レベルが、少なくとも約1ng/ml、または少なくとも約10ng/ml、または少なくとも約50ng/ml、または少なくとも約100ng/ml、または少なくとも約250ng/ml、または少なくとも約500ng/mlである、請求項1に記載の方法。
  29. 前記スラミンについての脳組織の血漿に対する分配比が、少なくとも約0.05、または少なくとも約0.1、または少なくとも約0.25、または少なくとも約0.50である、請求項1に記載の方法。
  30. 前記患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのAUCが、約80μg日/L未満であるか、または約75μg日/L未満であるか、または約50μg日/L未満であるか、または約25μg日/L未満であるか、または約10μg日/L未満である、請求項1に記載の方法。
  31. 前記患者についてのスラミン活性体の血漿レベルのCmaxが、単一用量に基づいて、約75マイクロモル濃度未満であるか、または約7.5マイクロモル濃度未満であるか、または約0.1マイクロモル濃度未満であり、必要に応じて、少なくとも約0.01マイクロモル濃度である、請求項1に記載の方法。
  32. 前記自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASを処置することが、前記投与前の前記患者の症状と比べて、前記患者の1つまたは複数の症状を改善することを含み、前記1つまたは複数の症状が、コミュニケーションの困難、他者との相互作用の困難、および反復行動から選択される、請求項8に記載の方法。
  33. 前記自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASを処置することが、前記投与前の前記患者からのスコアと比べて、前記患者の評価スコアを改善することを含む、請求項8に記載の方法。
  34. 前記評価スコアが、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI、およびSRSから選択される、請求項33に記載の方法。
  35. 前記組成物が、鼻スプレーである、請求項1に記載の方法。
  36. 前記組成物が、水性組成物である、請求項35に記載の方法。
  37. 前記組成物が、粉末組成物である、請求項35に記載の方法。
  38. 前記組成物が、粘膜付着性のスプレー可能な流体ゲルである、請求項35に記載の方法。
  39. 神経系障害の処置を必要とするヒト患者における神経系障害を処置する方法であって、有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を前記患者に鼻腔内投与することを含み、前記組成物が、動物モデルで評価された場合に、
    a)明/暗試験(LDT)、
    b)自発運動試験、
    c)社会的相互作用試験、
    d)モリス水迷路試験(MWM)、または
    e)ステップスルー型受動的回避試験
    からなる群より選択される行動の症状発現のうちの少なくとも1つの改善を提供する、方法。
  40. 前記動物モデルが、トランスジェニックFMR-1マウスモデルである、請求項39に記載の方法。
  41. 神経系障害の処置を必要とするヒト患者における神経系障害を処置するための、有効量のスラミンの鼻腔内送達のための医薬の製造におけるスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用であって、前記組成物が、
    a)不安もしくは不安様行動、
    b)環境を探索する意欲、
    c)社会的相互作用、
    d)空間学習および記憶、
    e)学習および記憶、
    f)易刺激性、激越およびもしくは泣き、
    g)嗜眠および/もしくは社会的離脱、
    h)常同行動、
    i)多動および/もしくは不服従、または
    j)制限的および/もしくは反復行動
    からなる群より選択される前記神経系障害の障害、症状または行動の症状発現のうちの少なくとも1つの前記患者における改善を提供する、使用。
  42. 請求項1に記載の方法を行うためのデバイスであって、前記医薬組成物を鼻腔内投与するための鼻スプレー吸入器を含む、デバイス。
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