JP2023546217A - がん、自己免疫障害、及び炎症性障害の処置におけるn-ミリストイルトランスフェラーゼ(nmt)阻害剤の使用 - Google Patents

がん、自己免疫障害、及び炎症性障害の処置におけるn-ミリストイルトランスフェラーゼ(nmt)阻害剤の使用 Download PDF

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Abstract

がん、自己免疫障害、及び炎症性障害の処置におけるN-ミリストイル-トランスフェラーゼ(NMT)阻害剤の使用が開示される。がんに関して、処置される好ましいがんはB細胞リンパ腫であり、使用されるNMTはPCLX-001(DDD86481、CAS登録番号1215011-08-7)である。自己免疫障害及び炎症性障害を処置するための好ましいNMT阻害剤には、上記PCLX-001、PCLX-002(DDD85646、CAS登録番号1215010-55-10)、及びIMP-1088(CAS登録番号2059148-82-0)が含まれ、処置される障害には、関節リウマチ、喘息、胃炎、大腸炎、並びに他の消化器及び呼吸器病が含まれる。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、202年10月20日に出願された米国特許出願番号第63/093970号に基づく優先権を主張する。
分野
B細胞リンパ腫、自己免疫障害、及び/又は炎症性障害の治療のためのN-ミリストイル化の標的化。
背景
血液がん、例えばリンパ腫は、世界中の新たながん症例及びがん関連死のおよそ9%を占める1、2、3。侵攻性非ホジキンリンパ腫、例えばバーキットリンパ腫(BL)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する患者は現在の治療で初期寛解を頻繁に達成するが、これらは毒性であり、かなりの割合の患者が疾患再発及び夭折を経験する2、3。米国国立がん研究所(NCI)の監視、疫学、及び遠隔成績(SEER)からの近年のデータにより、年齢一致対照と比較してそれぞれわずか70%及び63%の非ホジキンリンパ腫及びDLBCLについての診断後5年生存率が示されている2。したがって、侵攻性リンパ腫のための新たな創薬可能な標的及びより忍容性が良好な処置の特定が大いに必要とされている。
B細胞受容体(BCR)シグナル伝達は正常なB細胞機能に必須であるが、BLとDLBCLの両方についてはこれがしばしば調節解除され、B細胞リンパ腫形成にとって重要な生存促進シグナルを提供する4、5、6、7、8。実際、重要なBCRエフェクターにおける自己抗原及び/又は突然変異の存在は、BCRの明確なシグナル伝達様式に影響を及ぼす。リガンド活性化BCRシグナル伝達様式に加えて、これらは、活性化B細胞様DLBCL(ABC-DLBCL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)における慢性活性BCRシグナル伝達並びにBLにおける持続性(抗原非依存性構成的ベースラインシグナル伝達)BCRシグナル伝達を含む4、5、6、7、8。典型的には、BCRの関与が、ミリストイル化Srcファミリーキナーゼ(SFK)Lynを含有する形質膜脂質ラフトへのこの受容体の転位をもたらす9、10、11。ミリストイル化Lynは、BCR会合CD79A-CD79Bヘテロ二量体の免疫受容体チロシンベースモチーフ(ITAM)の選択されたチロシン残基をリン酸化して12、13、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)の動員をもたらす。ヒト胚中心会合(HGAL)タンパク質は、脂質ラフトに局在化される別のミリストイル化タンパク質であり、BCR活性化でリン酸化される14、15。リン酸化HGALは、SYKの活性化及びリン酸化ITAMへの動員を増大させ、Tecファミリーメンバーであるブルトンチロシンキナーゼ(BTK)16、ホスホリパーゼCγ、及びプロテインキナーゼCβ(PKCβ)13のチロシンリン酸化を誘引することによってBCRシグナル伝達を増強する。活性化ホスホリパーゼCγ活性が、ジアシルグリセロール(DAG)及びイノシトール三リン酸(IP3)を産生し、これらがそれぞれ、PKCを活性化し、小胞体ストアからカルシウムイオンを動員する。今度は、これらの化学的メディエーターが様々なシグナル伝達経路を活性化する17。これらの早期シグナル伝達イベントの全てが、NFκB、PI3K、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、CREB及びNF-AT経路を介した転写の活性化を通して細胞生存及び増殖を促進する4、5、6、18。リンパ腫形成におけるBCRシグナル伝達の重要性は、様々なSFK(ダサチニブ)、BTK(イブルチニブ)、及びPI3Kδ(CAL-101)を含むBCRの下流のエフェクタータンパク質を標的化する多数の薬剤の開発を促進してきた4、5、19、20
ヒトでは、タンパク質ミリストイル化が、14炭素脂肪酸ミリステートを多数のタンパク質に付加する2つの普遍的に発現されるN-ミリストイル-トランスフェラーゼ、NMT1及びNMT2によって媒介される21、22。ミリストイル化は、細胞シグナル伝達において基本的な役割を果たし、タンパク質と細胞膜の動的相互作用を可能にする23、24。ミリストイル化は、開始剤メチオニンの除去後の翻訳と同時に、又はアポトーシス中のカスパーゼ切断後の翻訳後にタンパク質のN末端グリシン残基で起こる23。ヒトの最大600種のプロテオフォーム(proteoform)25がミリストイル化され、これらのタンパク質の適切な膜標的化及び機能はミリストイル化を要する23、24、26、27、28。SFK、Abl、Gαサブユニット、Arf GTPアーゼ、カスパーゼ切断型(ct-)Bid及びct-PAK2が、細胞成長及びアポトーシスを決定的に調節するミリストイル化タンパク質の例である23、29、30、31、32、33、34、35。近年、NMTは、Arf6 GTPアーゼのN末端に位置するリジン残基のミリストイル化を担い、それによって、細胞シグナル伝達にそれらの役割を追加することも示された36、37。NMTは寄生生物の生存性に必須であるので、低分子阻害剤、例えばDDD85646が、アフリカ睡眠病を処置するためのトリパノソーマ・ブルセイ(T.brucei)NMT阻害剤として開発された38。DDD85646はまた、IMP-366という名称でヒトNMTの本物の阻害剤として合成され、独立して検証された39。NMT発現レベル及び活性は一部のがんで上昇しているので40、41、42、43、44、45
伝統的に、自己免疫障害は、T細胞媒介型又は自己抗体媒介型として分類された。しかしながら、免疫系の複雑さの理解の改善が、自己免疫疾患及びそれらの病因(pathogeneses)の見方に有意に影響を及ぼした。適応免疫応答中B細胞のためのT細胞ヘルプ及びCD4+T細胞活性化におけるB細胞ヘルプの相互の役割がますます認識されている。伝統的自己抗体媒介疾患のほとんどの自己抗体がIgGアイソタイプのものであり、体細胞突然変異を有するという所見は、自己免疫B細胞応答におけるT細胞ヘルプを強力に示唆している。同様に、B細胞も、T細胞媒介型と伝統的にみなされる自己免疫疾患において重要な抗原提示細胞として機能する。ほとんどの自己免疫疾患は、B細胞、T細胞、及び他の免疫細胞からなる免疫ネットワークの機能障害によって駆動されると考えられる。
BCRを通したシグナル伝達は、抗体の産生、自己免疫、及び免疫寛容の確立において重要な役割を果たす。
関節リウマチの病因及び処置におけるB細胞の役割は、Marston, B.ら(2010) Curr Opin Rheumatol. 2010年5月; 22(3):307~315に論じられている。関節リウマチのための治療としてのB細胞阻害剤の役割:最新情報は、Kwan-Morley, J.、及びAlbert, D (2007) Current Rheumatology Reports. 9:401~406に論じられている。関節リウマチを有する患者の末梢血B細胞におけるSykの活性化は、Iwata, S.ら(2015) Arthritis & rheumatology. 第67巻. 第1号. 63~73頁に論じられている。B細胞抑制性受容体及び自己免疫の役割は、Pritchard, N. R., & Smith, K. G. C. (2003) Immunology. 108. 263~273に論じられている。関節リウマチにおけるB細胞キナーゼ阻害剤の役割は、Chu, A. & Chang, BY (2013) OA Arthritis. 10月27日;1(2): 17に論じられている。ヒト自己免疫におけるB細胞の病因論的役割:臨床からの洞察は、Martin, F.、及びChan, A.C. (2004) Immunity. 第20巻、517~527に論じられている。リガンド認識は、B細胞恒常性及び自己免疫の調節における抑制性B細胞共受容体の役割を決定し、これは、Tsubata, T (2018) Frontiers in Immunology. 第9巻. Article 2276に論じられている。自己免疫疾患におけるB細胞及び形質細胞の標的化は、Hofmann, K.ら(2018) Frontiers in Immunology. 第9巻. Article 835に論じられている。マクロファージ媒介炎症反応におけるSrcキナーゼの役割は、Byeon, S. E.ら(2012) Mediators of Inflammation. 第2013巻. 18頁に論じられている。経口的に利用可能な脾臓チロシンキナーゼ阻害剤であるR406は、Fc受容体シグナル伝達を遮断し、免疫複合体媒介炎症を低減し、これは、Braselmann, S.ら(2006) JPET. 319:998~1008に論じられている。3つのフェーズI試験における単回及び複数回経口投与後の健康なヒト対象における脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害剤であるホスタマチニブの薬物動態は、Bluom, M.ら(2012) Br J Clin Pharmacol. 76:1. 78~88に記載されている。ヒト疾患における調節性T細胞及びその治療的操作の可能性は、Taams, L. S.ら(2006) Immunology.118. 1~9に論じられている。γδT細胞の役割及び炎症性皮膚疾患は、Jee, M.H.ら(2020) Immunological Reviews.2020;00:1~13に論じられている。
抗B細胞受容体(BCR)複合体抗体は、自己免疫、がん、炎症性疾患、及び移植の処置における治療的用途を有する。
T細胞受容体(TCR)シグナルの阻害は、広範囲のヒトT細胞媒介自己免疫及び炎症性疾患の処置に有望である。
国際公開第2010/026365号
Marston, B.ら(2010) Curr Opin Rheumatol. 2010年5月; 22(3):307~315 Kwan-Morley, J.、及びAlbert, D (2007) Current Rheumatology Reports. 9:401~406 Iwata, S.ら(2015) Arthritis & rheumatology. 第67巻. 第1号. 63~73頁 Pritchard, N. R., & Smith, K. G. C. (2003) Immunology. 108. 263~273 Chu, A. & Chang, BY (2013) OA Arthritis. 10月27日;1(2): 17 Martin, F.、及びChan, A.C. (2004) Immunity. 第20巻、517~527 Tsubata, T (2018) Frontiers in Immunology. 第9巻. Article 2276 Hofmann, K.ら(2018) Frontiers in Immunology. 第9巻. Article 835 Byeon, S. E.ら(2012) Mediators of Inflammation. 第2013巻. 18頁 Braselmann, S.ら(2006) JPET. 319:998~1008 Bluom, M.ら(2012) Br J Clin Pharmacol. 76:1. 78~88 Taams, L. S.ら(2006) Immunology.118. 1~9 Jee, M.H.ら(2020) Immunological Reviews.2020;00:1~13 Siegers GM、Ribot EJ、Keating A、Foster PJ. Extensive expansion of primary human gamma delta T cells generates cytotoxic effector memory cells that can be labeled with Feraheme for cellular MRI. Cancer Immunol Immunother. (2013) 62:571-83. doi: 10.1007/s00262-012-1353-y Siegers GM、Dutta I、Kang EY、Huang J、Kobel M及びPostovit L-M (2020) Aberrantly Expressed Embryonic Protein NODAL Alters Breast Cancer Cell Susceptibility to γδ T Cell Cytotoxicity.Front.Immunol.11:1287.doi:10.3389/fimmu.2020.01287
自己免疫、がん、炎症性疾患、及び/又は移植の処置に使用するための、BCR及び/又はTCRの阻害剤が必要とされている。
概要
一態様では、がんを発症するリスクがあるか、又はがんに罹りやすい対象におけるがんを処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む方法が提供される。
本明細書に記載されるように、以下が提供される。
1.がんを発症するリスクがあるか、又はがんに罹りやすい対象におけるがんを処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む方法。
2.前記がんがリンパ腫である、項目1に記載の方法。
3.前記リンパ腫がB細胞リンパ腫である、項目2に記載の方法。
4.前記対象がヒトである、項目1から3のいずれか1つに記載の方法。
5.がんを発症するリスクがあるか、又はがんに罹りやすい対象におけるがんを処置するための、治療有効量のPCLX-001の使用。
6.がんを発症するリスクがあるか、又はがんに罹りやすい対象におけるがんを処置するための医薬の製造における、治療有効量のPCLX-001の使用。
7.前記がんがリンパ腫である、項目5又は6に記載の使用。
8.前記リンパ腫がB細胞リンパ腫である、項目7に記載の使用。
9.前記対象がヒトである、項目5から8のいずれか1つに記載の使用。
10.対象におけるリンパ腫において細胞死を誘導する方法であって、治療有効量のPCLX-001を前記対象に投与する工程を含む方法。
11.前記リンパ腫がB細胞リンパ腫である、項目10に記載の方法。
12.前記対象がヒトである、項目10又は11に記載の方法。
13.対象におけるリンパ腫を誘導するための治療有効量のPCLX-001の使用。
14.対象におけるリンパ腫を誘導するための医薬の製造における、治療有効量のPCLX-001の使用。
15.前記リンパ腫がB細胞リンパ腫である、項目13又は14に記載の使用。
16.前記対象がヒトである、項目13から15のいずれか1つに記載の使用。
17.対象の細胞におけるSFKタンパク質のレベル又は活性を低下させる方法であって、前記細胞をPCLX-001と接触させる工程を含む方法。
18.前記SFKタンパク質がSrcタンパク質、Lynタンパク質、又はSrcタンパク質とLynタンパク質の両方である、項目17に記載の方法。
19.前記細胞がリンパ腫細胞である、項目17又は18に記載の方法。
20.前記リンパ腫がB細胞リンパ腫細胞である、項目19に記載の方法。
21.前記対象がヒトである、項目17から20のいずれか1つに記載の方法。
22.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目17から21のいずれか1つに記載の方法。
23.複数の前記細胞を含む、項目17から22のいずれか1つに記載の方法。
24.対象の細胞におけるSFKタンパク質のレベル又は活性を低下させるためのPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
25.対象の細胞におけるSFKタンパク質のレベル又は活性を低下させるための医薬の製造におけるPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
26.前記SFKタンパク質がSrcタンパク質、Lynタンパク質、又はSrcタンパク質とLynタンパク質の両方である、項目24又は25に記載の使用。
27.前記細胞がリンパ腫細胞である、項目24から26のいずれか1つに記載の使用。
28.前記リンパ腫がB細胞リンパ腫細胞である、項目27に記載の使用。
29.前記対象がヒトである、項目24から28のいずれか1つに記載の使用。
30.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目24から29のいずれか1つに記載の使用。
31.複数の前記細胞を含む、項目24から30のいずれか1つに記載の使用。
32.対象の細胞におけるSrcタンパク質、Lynタンパク質、汎P-SFK(pan-P-SFK)タンパク質、ERKタンパク質、P-ERKタンパク質、NFκBタンパク質、c-Mycタンパク質、又はCREBタンパク質のレベル又は活性のうちの1つ又は複数を低下させる方法であって、前記細胞をPCLX-001と接触させる工程を含む方法。
33.前記細胞がリンパ腫細胞である、項目32に記載の方法。
34.前記リンパ腫細胞がB細胞リンパ腫である、項目33に記載の方法。
35.前記対象がヒトである、項目32から34のいずれか1つに記載の方法。
36.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目32から35のいずれか1つに記載の方法。
37.複数の前記細胞を含む、項目32から36のいずれか1つに記載の方法。
38.対象の細胞におけるSrcタンパク質、Lynタンパク質、汎P-SFKタンパク質、ERKタンパク質、P-ERKタンパク質、NFκBタンパク質、c-Mycタンパク質、又はCREBタンパク質のレベル又は活性のうちの1つ又は複数を低下させるためのPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
39.対象の細胞におけるSrcタンパク質、Lynタンパク質、汎P-SFKタンパク質、ERKタンパク質、P-ERKタンパク質、NFκBタンパク質、c-Mycタンパク質、又はCREBタンパク質のレベルのうちの1つ又は複数を低下させるための医薬の製造におけるPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
40.前記細胞がリンパ腫細胞である、項目38又は39に記載の使用。
41.前記リンパ腫がB細胞リンパ腫細胞である、項目40に記載の使用。
42.前記対象がヒトである、項目38から41のいずれか1つに記載の使用。
43.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目38から42のいずれか1つに記載の使用。
44.複数の前記細胞を含む、項目38から43のいずれか1つに記載の使用。
45.対象の自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む方法。
46.対象の自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のDDD85646を投与する工程を含む方法。
47.対象の自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のIMP 1008を投与する工程を含む方法。
48.対象の自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のNMT阻害剤を投与する工程を含む方法。
49.前記自己免疫障害が、関節リウマチ、喘息、多発性硬化症、重症筋無力症、エリテマトーデス、インスリン依存性糖尿病(1型)、胃炎、大腸炎、及びインスリン依存性自己免疫糖尿病、移植片移植/拒絶の阻害、乾癬、シェーグレン症候群又は移植片対宿主病である、項目45から48のいずれか1つに記載の方法。
50.前記対象がヒトである、項目45から49のいずれか1つに記載の方法。
51.対象の炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む方法。
52.対象の炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のDDD85646を投与する工程を含む方法。
53.対象の炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のIMP 1008を投与する工程を含む方法。
54.対象の炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のNMT阻害剤を投与する工程を含む方法。
55.前記炎症性障害が、急性、癒着性、萎縮性、カタル性、慢性、硬変性、びまん性、播種性、滲出性、線維性、線維化、限局性、肉芽腫性、過形成性、肥大性、間質性、転移性、壊死性、閉塞性、実質性、形成性、増殖性、繁殖性、偽膜性、化膿性(purulent)、硬化性、血清塑性(seroplastic)、漿液性、単純、特異的、亜急性、化膿性(suppurative)、毒性、外傷性、潰瘍性炎症、胃腸障害、消化性潰瘍、限局性腸炎、憩室炎、胃腸出血、好酸球性、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性大腸炎、胃炎、下痢、胃食道逆流症(GORD、又はGERD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎(diversion colitis)、ベーチェット症候群、分類不能大腸炎(indeterminate colitis)、炎症性腸症候群(IBS)、又は肋膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、喘息、特発性肺線維症(IPF)、及び嚢胞性線維症から選択される肺の障害である、項目51から54のいずれか1つに記載の方法。
56.前記対象がヒトである、項目51から55のいずれか1つに記載の方法。
57.対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させる方法であって、前記細胞をPCLX-001と接触させる工程を含む方法。
58.対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させる方法であって、前記細胞をDDD85646と接触させる工程を含む方法。
59.対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させる方法であって、前記細胞をNMT阻害剤と接触させる工程を含む方法。
60.前記対象がヒトである、項目57から59のいずれか1つに記載の方法。
61.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目57から60のいずれか1つに記載の方法。
62.複数の前記細胞を含む、項目57から61のいずれか1つに記載の方法。
63.対象の免疫細胞の活性を低下させる方法であって、前記T細胞及び/又は前記B細胞をNMT阻害剤と接触させる工程を含む方法。
64.対象のT細胞及び/又はB細胞の活性を低下させる方法であって、前記T細胞及び/又は前記B細胞をNMT阻害剤と接触させる工程を含む方法。
65.前記NMT阻害剤がPCLX-001である、項目63又は64に記載の方法。
66.前記NMT阻害剤がDDD85646である、項目63又は64に記載の方法。
67.前記NMT阻害剤がIMP 1088である、項目63又は64に記載の方法。
68.前記対象がヒトである、項目63から67のいずれか1つに記載の方法。
69.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目63から68のいずれか1つに記載の方法。
70.対象の自己免疫障害を処置するための、治療有効量のPCLX-001の使用。
71.対象の自己免疫障害を処置するための、治療有効量のDDD85646の使用。
72.対象の自己免疫障害を処置するための、治療有効量のIMP 1088の使用。
73.対象の自己免疫障害を処置するための、治療有効量のNMT阻害剤の使用。
74.前記自己免疫障害が、関節リウマチ、喘息、多発性硬化症、重症筋無力症、エリテマトーデス、インスリン依存性糖尿病(1型)、胃炎、大腸炎、及びインスリン依存性自己免疫糖尿病、移植片移植/拒絶の阻害、又は移植片対宿主病である、項目63から73のいずれか1つに記載の使用。
75.前記対象がヒトである、項目63から74のいずれか1つに記載の使用。
76.対象の炎症性障害を処置するための、治療有効量のPCLX-001の使用。
77.対象の炎症性障害を処置するための、治療有効量のDDD85646の使用。
78.対象の炎症性障害を処置するための、治療有効量のIMP 1088の使用。
79.対象の炎症性障害を処置するための、治療有効量のNMT阻害剤の使用。
80.前記炎症性障害が、急性、癒着性、萎縮性、カタル性、慢性、硬変性、びまん性、播種性、滲出性、線維性、線維化、限局性、肉芽腫性、過形成性、肥大性、間質性、転移性、壊死性、閉塞性、実質性、形成性、増殖性、繁殖性、偽膜性、化膿性、硬化性、血清塑性、漿液性、単純、特異的、亜急性、化膿性、毒性、外傷性、潰瘍性炎症、胃腸障害、消化性潰瘍、限局性腸炎、憩室炎、胃腸出血、好酸球性、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性大腸炎、胃炎、下痢、胃食道逆流症(GORD、又はGERD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎、ベーチェット症候群、分類不能大腸炎、炎症性腸症候群(IBS)、又は肋膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、喘息、特発性肺線維症(IPF)、シェーグレン症候群、及び嚢胞性線維症から選択される肺の障害である、項目76から79のいずれか1つに記載の使用。
81.前記対象がヒトである、項目76から80のいずれか1つに記載の使用。
82.対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させるための、治療有効量のPCLX-001の使用。
83.対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させるための、治療有効量のDDD85646の使用。
84.対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させるための、治療有効量のNMT阻害剤の使用。
85.前記対象がヒトである、項目82から84のいずれか1つに記載の使用。
86.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目82から85のいずれか1つに記載の使用。
87.複数の前記細胞を含む、項目82から86のいずれか1つに記載の使用。
88.対象由来の免疫細胞の活性を低下させるための、NMT阻害剤の使用。
89.対象由来のT細胞及び/又はB細胞の活性を低下させるための、NMT阻害剤の使用。
90.前記NMT阻害剤がPCLX-001である、項目87又は89に記載の使用。
91.前記NMT阻害剤がDDD85646である、項目87又は89に記載の使用。
92.前記NMT阻害剤がIMP 1088である、項目87又は89に記載の使用。
93.前記対象がヒトである、項目87から89のいずれか1つに記載の使用。
94.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目87から93のいずれか1つに記載の使用。
95.対象の単球細胞の活性を低下させる、又は対象の単球細胞の数を減少させる方法であって、前記単球をNMT阻害剤と接触させる工程を含む方法。
96.前記NMT阻害剤がPCLX-001である、項目95に記載の方法。
97.前記NMT阻害剤がDDD85646である、項目95に記載の方法。
98.前記NMT阻害剤がIMP 1088である、項目95に記載の方法。
99.前記対象がヒトである、項目95から98のいずれか1つに記載の方法。
100.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目95から99のいずれか1つに記載の方法。
101.対象の単球細胞の活性を低下させる、又は対象の単球細胞の数を減少させるための、NMT阻害剤の使用。
102.前記NMT阻害剤がPCLX-001である、項目101に記載の使用。
103.前記NMT阻害剤がDDD85646である、項目101に記載の使用。
104.前記NMT阻害剤がIMP 1088である、項目101に記載の使用。
105.前記対象がヒトである、項目101から104のいずれか1つに記載の使用。
106.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目101から105のいずれか1つに記載の使用。
107.対象のT細胞におけるサイトカイン分泌の量を減少させる方法であって、NMT阻害剤を投与する工程を含む方法。
108.前記サイトカインが、IL-6、IL-8及びIFN-ガンマ.IL-5、IL10、又はIL-13である、項目107に記載の方法。
109.前記NMT阻害剤がPCLX-001である、項目107又は108に記載の方法。
110.前記NMT阻害剤がDDD85646である、項目107又は108に記載の方法。
111.前記NMT阻害剤がIMP-1088である、項目107又は108に記載の方法。
112.前記対象がヒトである、項目107から111のいずれか1つに記載の方法。
113.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目107から112のいずれか1つに記載の方法。
114.対象のT細胞におけるサイトカイン分泌の量を減少させるための、NMT阻害剤の使用。
115.前記サイトカインが、IL-6、IL-8及びIFN-ガンマ.IL-5、IL10、又はIL-13である、項目114に記載の使用。
116.前記NMT阻害剤がPCLX-001である、項目114又は115に記載の使用。
117.前記NMT阻害剤がDDD85646である、項目114又は115に記載の使用。
118.前記NMT阻害剤がIMP-1088である、項目114又は115に記載の使用。
119.前記対象がヒトである、項目114から118のいずれか1つに記載の方法。
120.前記接触がインビトロ又はインビボである、項目114から119のいずれか1つに記載の方法。
図面の簡単な説明
本開示の実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例としてここで説明する。
PCLX-001が、他の起源のがん細胞株と比較して血液がん細胞株を選択的に殺傷することを示す図である。Horizon細胞株スクリーニング(A、B)を使用して決定される1.2μMのPCLX-001による96時間の処理後、又はOncolines(商標)細胞株スクリーニング(C、D)を使用した1μMのPCLX-001による72時間の処理後の様々な細胞株の最大成長阻害のパーセンテージ。細胞株は腫瘍細胞型に従って配置される。クロスハッチゾーンは細胞傷害性効果を表す。血液がん細胞株は灰色で描かれ、他の型のがん細胞株は全て白色で描かれる。対応するバイオリングラフは、Horizon(B)及びOncolines(商標)(D)細胞スクリーニングから計算される、血液がん細胞株と組み合わされた他の起源のがん細胞株に対する平均PCLX-001媒介成長阻害を比較する(対応のないt検定、両側P<0.0001)。四分位は点線によって分離される。エラーバーは各群内の標準偏差を表す。CellTiter Blue Viability Assayによって決定される、0.001~5μMのPCLX-001で96時間処理した不死化リンパ球(IM9、VDS)、BL(BL2、Ramous、BJAB)、及びDLBCL(DOHH2、WSU-DLCL2、SU-DHL-10)細胞株の正規化細胞生存率曲線(E)。Eでプロットされた細胞生存率曲線から誘導される絶対IC50値の対応するヒストグラム(F)。(***)は、IM9細胞と試験した他の全ての細胞株との間のIC50の有意差(P≦0.001)を示す(通常一元配置Anova、テューキーの多重比較検定、P<0.0001)。細胞数によって決定される、0~5μMのPCLX-001で96時間処理したIM9(G)及びBL2(H)細胞の正規化増殖。値は、3つの独立した実験の平均±s.e.m.である。 PCLX-001がインビトロでミリストイル化を選択的に阻害し、リンパ腫細胞株においてアポトーシスを誘導することを示す図である。クリックケミストリーをミリスチン酸アルキン標識細胞溶解物に使用して、0.01~1.0μMのPCLX-001で1時間処理したBL2細胞(A)及びIM9細胞(B)における全体的なタンパク質ミリストイル化レベル、COS-7細胞で発現されたWT-Src-EGFP構築物のミリストイル化レベル(C)、並びに1.0~10μMのPCLX-001による1時間の処理後のIM9細胞における免疫沈降内因性pp60-Srcのミリストイル化(D)を決定した。WT-Src-EGFP(左)、ミリストイル化可能でないG2A-Src-EGFP変異体(中央)、及び10μMのPCLX-001で24時間処理したWT-Src-EGFP構築物(右)でトランスフェクトしたCOS-7細胞の蛍光顕微鏡写真(E)。スケールバーは10μmに等しい。ウエスタンブロッティングによって測定された、1μMのPCLX-001で0~5日間処理したIM9及びBL2細胞内の内因性Srcタンパク質のレベル(F)。0~1.0μMのPCLX-001との72時間のインキュベーション後のIM9、BL2及びRamos細胞溶解物中の切断型PARPP-1及び切断型カスパーゼ-3のウエスタンブロッティング(コンポジットゲル)(G)。示される全てのデータは少なくとも3つの独立した実験を表す。GAPDHがローティング対照として働く。 PCLX-001処理が、リンパ腫細胞株においてSFK不安定性及びプロテアソームによる分解をもたらすことを示す図である。0.1μM又は1.0μMのPCLX-001による24~48時間の処理後の不死化リンパ球(IM9、VDS)、BL(BL2、Ramos、BJAB)、及びDLBCL(DOHH2、WSU-DLCL2、SU-DHL-10)細胞株溶解物中の全Src及びLynタンパク質についてのウエスタンブロット(A)。最後の6時間は10μMのプロテアソーム阻害剤MG132の存在下又は非存在下で、1μMのPCLX-001で24~48時間処理したBL2内の全Src、Lyn、Hck、Lck、Mcl-1、全ホスホ-チロシン(PY99)及び汎リン酸化SFK(P-SFK)タンパク質のレベルについてのウエスタンブロット(B)。GAPDHがローディング対照として働く。示される全てのウエスタンブロットは3つの独立した実験を表す。 PCLX-001処理がBL2リンパ腫細胞においてBCR下流シグナル伝達イベントを減弱することを示す図である。全チロシンリン酸化(P-Tyr)、Lyn、チロシン396若しくは507でリン酸化されたLyn、BTK、及びチロシン223若しくは551でリン酸化されたBTK(A)、HGAL、SYK、リン酸化SYK(P-SYK)(B)又はERK、リン酸化ERK(P-ERK)、NFκB、c-Myc、CREB、Arf-1、BIP及びPARP-1(C)を検出するために0.1μM又は1.0μMのダサチニブ、イブルチニブ又はPCLX-001で48時間処理したBL2細胞のウエスタンブロット。ウエスタンブロットは少なくとも3つの独立した実験を表す。GAPDHがローディング対照として働く。BL2細胞を25μg/mlのF(ab')2抗ヒトIgMで2分間活性化し、ウエスタンブロッティングのために処理した。示される全てのウエスタンブロットは3つの独立した実験を表す。 B細胞リンパ腫における提案されるPCLX-001作用機序を描くモデルを示す図である。(A)BCR活性化で、最初にミリストイル化SFK LynがBCRを含有する形質膜の脂質ラフトドメインに動員され、Y507での脱リン酸化LynがY396でのその活性化及び自己リン酸化をもたらす。これにより、Y551及びY223でのBTKのリン酸化及び活性化がもたらされる。第2に、ミリストイル化HGALも形質膜に動員され、リン酸化され、それによって、SYK、BTK及びイノシトール三リン酸イオンチャネル受容体(IP3R)を介した小胞体からのCa++イオンの放出を刺激することによってBCRシグナル伝達が増強される。まとめると、これらの初期シグナル伝達イベントが、c-Myc、P-ERK、NFκB、及びCREBによる転写活性化をもたらす。(B)NMT阻害剤PCLX-001は、Lyn-SFK(並びにこのモデルに示されていない他のSFK)、HGAL及びArflのミリストイル化を防ぎ、それによって、これらのタンパク質の適切な膜標的化及び機能を妨げる。PCLX-001処理は、一部はユビキチン-プロテアソーム経路を介して、ミリストイル化タンパク質(Lyn、HGAL、Arfl)と、驚くべきことに、非ミリストイル化タンパク質(NFκB、P-ERK、c-Myc及びCREB)の両方の分解を促進することに加えて、ERからのBCR媒介Ca++放出を減少させ、細胞内の基礎Ca++レベルを上昇させることによってカルシウム恒常性を妨げ、それによって、下流BCRシグナル伝達を更に抑止し、ERストレスを増加させて、アポトーシス及び細胞死をもたらす。 PCLX-001が、ダサチニブ及びイブルチニブと比較して、良性リンパ球に対して血液がん細胞を選択的に殺傷することを示す図である。0.001~5μMのダサチニブ、イブルチニブ、又はPCLX-001で48時間(A)又は96時間(B)処理したBL2(実線)及びIM9細胞(点線)の細胞生存率曲線。0.1μM又は1.0μMのダサチニブ、イブルチニブ又はPCLX-001で48時間(C)及び96時間(D)処理した不死化リンパ球(IM9、VDS)、BL(BL2、Ramos、BJAB)、及びDLBCL(DOHH2、WSU-DLCL2、SU-DHL-10)細胞株の正規化細胞生存率。全ての実験についての細胞生存率はカルセインアッセイを使用して測定し、3つの独立した実験の平均である。エラーバーはs.e.m.を示す。 PCLX-001処理がB細胞リンパ腫異種移植片モデルにおいて腫瘍体積を減少させ、完全な腫瘍退縮をもたらすことを示す図である。時間の関数としてDOHH2(A)及びBL2(B)腫瘍のサイズを測定する、細胞株から誘導されたマウス皮下異種移植片についての用量-反応曲線。エラーバーは平均腫瘍体積の標準偏差を表す。示される用量のPCLX-001、ドキソルビシン、又はビヒクル単独で処置したマウス由来のBL2腫瘍試料において以前記載された21ように評価した平均全NMT比活性。60mg/kg/日で処置したマウスから抽出された腫瘍は、ビヒクルと比較して低下したNMT比活性を有する(対応のあるt検定、P=0.0425)。エラーバーはs.e.m.を表す。(C)患者DLBCL3から誘導されたマウス異種移植片についての用量-反応曲線。データ点は全生存動物における平均腫瘍体積を表す。エラーバーは平均腫瘍体積の標準偏差を表す(D)。(***)は、20mg/kg/日のPCLX-001を受けた動物と50mg/kg/日のPCLX-001を受けた動物との間の奏効率の有意差を示す(P<0.0001)。患者由来DLBCL3異種移植片を有するマウスの代表的な腫瘍(E)。上記DLBCL3患者異種移植片腫瘍試料中の切断型カスパーゼ-3(F)及びKi-67(G)についての代表的なIHC染色。スケールバーは100μmに等しい。 組み合わせたHorizon及びOncoline細胞株スクリーニングデータが、他の全てのがん型から誘導される細胞株と比較して、血液がん細胞株に対する最大の成長阻害をPCLX-001が与えることを実証する図である。96時間の処理後のHorizonとOncoline細胞株スクリーニングの両方からの、他の全ての非血液細胞株と比較した血液細胞株に対するPCLX-001の組み合わせたパーセンテージ成長阻害を示すバイオリングラフ。四分位は点線によって分離される。(***)は成長阻害の有意差を示す(対応のないt検定、両側P<0.0001)。 有効性スクリーニングの幅が、PCLX-001が固形腫瘍に由来するものを含む様々な他のがん細胞株に対して活性であることを実証することを示す図である。0.0005~10μMのPCLX-001で3日間(A、B)又は6日間(C、D)処理した様々な細胞株の絶対IC50値。細胞株はがん型に従って配置される。個々のバーは、B細胞リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、乳房、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)に由来する単一がん細胞株を表す。ChemPartnerロボットプラットフォームは、CellTiter Blue生存率アッセイを使用して細胞生存率を決定した。0日目の細胞の生存率がChempartnerプラットフォームから入手不能であったので、成長阻害(GI)は計算されなかった。(対応のないt検定、両側、**P=0.0038、ns=有意でない)。 PCLX-001が不死化リンパ球と比較して血液がん細胞株を選択的に殺傷することを示す図である。(A)細胞の数にかかわらず生細胞のパーセンテージを測定するカルセインアッセイによって決定される、0.001~5μMのPCLX-001で96時間処理した不死化リンパ球(IM9、VDS)、BL(BL2、Ramos、BJAB)、及びDLBCL(DOHH2、WSU-DLCL2、SU-DHL-10)細胞株の正規化細胞生存率曲線。(B)(A)でプロットした細胞生存率曲線から誘導された絶対IC50値の対応するヒストグラム。値は3つの実験の平均±s.e.m.である。(通常一元配置Anova、テューキーの多重比較検定、***P<0.0001)。 PCLX-001処理が正規化リンパ腫細胞株増殖を減少させることを示す図である。(A)細胞数によって決定される、0~5μMのPCLX-001で96時間処理した不死化リンパ球(VDS)、BL(Ramos、BJAB)、及びDLBCL(DOHH2、WSU-DLCL2、SU-DHL-10)細胞株の正規化増殖。(B)最大96時間の0.1μMのPCLX-001処理後の様々な細胞株の正規化増殖の阻害。(C)細胞成長率の差を説明するために、データを、最大96時間の0.1μMのPCLX-001処理後の様々な細胞株の正規化増殖をそれぞれの未処理細胞株の正規化増殖で割った相対比に変換した。値は3つの実験の平均±s.e.m.である。 新たに単離したヒトリンパ球、PBMC及び初代臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の大部分がPCLX-001に耐性であることを示す図である。0.001~10μMのPCLX-001で96時間処理した2つの新たに単離したヒト末梢血単球(PBMC)及びリンパ球調製物の細胞生存率曲線。値は平均±s.e.m.(n=2)である。HUVECを0.001~5μMのPCLX-001で96時間処理し、Cell-Titer Blue Assayを使用して残存細胞生存率を決定した。値は平均±S.D.(n=4)である。 PCLX-001がRasのパルミトイル化を阻害せず、生理的レベルでいかなる有意なオフターゲットキナーゼ阻害剤活性も有さないことを示す図である。(A)パルミトイル化可能なEGFP-N-Ras又はパルミトイル化可能でないEGFP-K-Rasを48時間一過的に発現するCOS-7細胞を100μMの2-ブロモパルミテート(2-BP)、パルミトイル化阻害剤又は以下のNMT阻害剤:10μMのPCLX-001、100μMの2-ヒドロキシミリステート(HMA)若しくは10μMのトリス-DBAで1時間前処理した。次いで、阻害剤で前処理した細胞を100μMのアルキン-C16で4時間標識した。EGFPタグ付き構築物を記載されるように免疫沈降し、クリックケミストリーを使用してアジド-ビオチンと反応させた。ニュートラアビジン-HRPコンジュゲート及びECLを使用してビオチン化-パルミトイル化タンパク質を検出した。(B)TREEspot(商標)は、DiscoverX Corporation社、米国カリフォルニア州、によって開発された独自仕様データ可視化ソフトウェアツールである。scanMAX KINOMEscanの468種の予め構成されたヒトキナーゼを試験した。変異体及び脂質キナーゼは表されていない。PCLX-001を結合することが分かった考えられるキナーゼを赤丸でマークし、より大きな丸はより高い親和性結合を示す。BL2細胞についてPCLX-001 EC50よりも約400倍高い濃度に対応する最大10μMのPCLX-001と結合するキナーゼは見出されなかった。100μMのPCLX-001(BL2についてのEC50の約4000倍)では、3つのキナーゼ(赤色で示されるMRCKA、PIP5K2C及びSRPK1)のみがPCLX-001に弱く結合することが分かった(対照の35%未満のキナーゼ活性スコア)。示される全てのウエスタンブロットは3つの独立した実験を表す。 PCLX-001で最大5日間処理したBL2及びIM9細胞内のSrcタンパク質のレベル低下の定量化を示す図である。ウエスタンブロット(図2F)によって検出された全内因性Srcタンパク質のレベルの定量化。エラーバーは平均からの標準誤差を示す。(*)は、Srcタンパク質のレベルにおける有意差を示す(二元配置ANOVA、P=0.0174)(n=3)。 PCLX-001処理が、様々な正常B細胞株及び悪性B細胞株において基礎(持続性又は慢性)及び抗IgM活性化シグナル伝達におけるホスホ-チロシンレベルを低下させることを示す図である。(A)0.01~1μMのPCLX-001による24時間の処理後の正常IM9及びVDS細胞株、並びに悪性B細胞株BL2、Ramos、BJAB、DOHH2、WSU-DLCL2及びSU-DHL-10細胞における基礎(抗原非依存性持続性又は慢性)チロシンリン酸化レベル(PY99)を評価するウエスタンブロット。(B)0.1μM又は1μMのダサチニブ、イブルチニブ又はPCLX-001で24時間処理した非刺激(左)及び抗IgM連結BCR(右)BL2細胞のPY99ウエスタンブロット。BL2細胞を25μg/mlヤギ抗ヒトIgMで2分間示されるように活性化した。示されるウエスタンブロットは少なくとも3つの独立した実験を表す。 PCLX-001処理が、BL2細胞内の全ホスホ-チロシン、ホスホ-ERK(P-ERK)及びNFκBレベルを有意に低下させることを示す図である。0.1μM又は1.0μMのダサチニブ、イブルチニブ又はPCLX-001で48時間処理したBL2細胞におけるPY99抗体(A)、P-ERK(B)及びNFκB(C)を使用した全ホスホ-チロシンレベルについてのウエスタンブロット(図4A)の定量化(A及びCについてはn=4、Bについてはn=3)。BL2細胞は、示される場合、25μg/mlヤギ抗ヒトIgMで2分間活性化した。エラーバーは平均からの標準誤差を示す。(*)は、ホスホル-チロシンのレベルの有意差(P<0.05)を示す(通常一元配置Anova、テューキーの多重比較検定)。 PCLX-001処理が、様々なリンパ腫細胞株において抗IgM連結BCRシグナル伝達を減弱することを示す図である。全Src、Lyn、ERK、リン酸化SFK(P-SFK)及びリン酸化ERK(P-ERK)レベルを検出するために0.1μM又は1.0μMのダサチニブ、イブルチニブ又はPCLX-001で48時間処理した(A)BL(Ramos、BJAB)、及び(B)DLBCL(DOHH2、WSU-DLCL2、SUDHL-10)細胞株のウエスタンブロット。Src及びLynはDOHH2で検出されなかった。ウエスタンブロットは少なくとも3つの独立した実験を表す。GAPDHはローディング対照として働く。細胞株をウエスタンブロッティング前に25μg/mLヤギ抗ヒトIgMで2分間活性化した。示される全てのウエスタンブロットは3つの独立した実験を表す。 PCLX-001、ダサチニブ、イブルチニブによる48時間の処理後のBL2細胞内の様々なSFKレベルの比較を示す図である。0.1μM又は1.0μMのダサチニブ、イブルチニブ又はPCLX-001で48時間処理したBL2細胞内のLyn、Src、Lck、Hck、Fyn、及び全リン酸化SFK(P-SFKブロットは図4Aに示される)のタンパク質のレベルのウエスタンブロット(A)及び定量化(B)。BL2細胞は、示される場合、25μg/mlヤギ抗ヒトIgMで2分間活性化した。エラーバーは平均からの標準誤差を示す。(***)は、タンパク質又はリン酸化タンパク質のレベルの有意差(p<0.0001)を示す(通常一元配置ANOVA、テューキーの多重比較検定)。 PCLX-001が、BL2細胞において抗IgM刺激によって活性化されたBCR受容体依存性カルシウム放出を減少させることを示す図である。小胞体Ca++放出を、1μMのPCLX-001(A)、ダサチニブ(B)又はイブルチニブ(C)で24時間又は48時間処理したBL2細胞で測定した。蛍光Ca++指示薬Fura-2による細胞負荷後、細胞を10μg/mlヤギF(ab')2抗ヒトIgMで刺激して連結し、BCR受容体依存性Ca++放出を活性化し、次いで、タプシガルジン(300nM)処理すると、小胞体からのBCR受容体非依存性Ca++放出を示した。示される結果は、複数連の実験を表す(PCLX-001インキュベーションについてはn=6、ダサチニブ及びイブルチニブについてはn=3)。 ダサチニブ及びイブルチニブが、IM9及びBL2細胞におけるPCLX-001の細胞傷害性効果において協同しないことを示す図である。IM9(A)及びBL2(B)細胞を、0.1及び1μMのダサチニブ又はイブルチニブと組み合わせて0.01、0.1及び1μMのPCLX-001と96時間インキュベートした。ダサチニブ又はイブルチニブをPCLX-001に添加した場合に相加効果も相乗効果も観察されなかった。本発明者らの実験を通して分かるように、悪性BL2細胞は正常IM9 B細胞よりもPCLX-001に感受性である。細胞生存率はカルセインアッセイを使用して測定し、3つの独立した実験の平均を表す。エラーバーはs.e.m.を示す。 異種移植片モデルにおける体重及びパーセンテージ生存に対するPCLX-001及びドキソルビシンの影響を示す図である。DOHH2(A)、BL2(C)、及び(F)DLBCL3-患者由来異種移植片モデルにおける体重のパーセンテージ変化。黒色矢印は注射を表す。エラーバーは、各時点でのマウス1匹当たりの平均体重の標準偏差を表す。(B)DOHH2、(D)BL2、及び(G)DLBCL3-患者由来異種移植片モデルにおける経時的なパーセント生存を示す、生存イベントが毒性による死亡、がんによる死亡、又は毒性のための安楽死を含む、カプランマイヤー曲線。(D)PCLX-001及びドキソルビシンの示される投与による処置後の(E)BL2異種移植片動物のカプランマイヤー曲線分析から誘導された生存期間中央値推定。 NMT発現が血液がん細胞株で低下していることを示す図である。NMT1転写産物の平均数はNMT2転写産物より多い。しかしながら、NMT2転写産物数(灰色)は、がん細胞株においてNMT1転写産物数(黒色)よりも大きな変動を示す(A)。NMT2 mRNA発現は、他のがん型に由来する細胞株と比較して、血液がん細胞株で有意に低い(対応のないt検定;***P<0.0001)(最小~最大箱ひげ図、B)。NMT1の発現(C)は、乳がん及び白血病がん細胞株における発現のわずかであるが有意な低下を伴って、調査した1269種の細胞株にわたって比較的一定であるが、NMT2発現(D)は、様々ながんの中で、及びまた所与のがん型内で有意に変化する。データはまた、NMT2の発現がCNS、腎臓及び線維芽細胞起源のがん細胞株で高いが、血液がん、例えば白血病、リンパ腫及び骨髄腫でNMT2発現の選択的且つ有意な低下があることを示している。箱ひげ図は10~90パーセンタイルを示している(通常一元配置ANOVA、ダネットの多重比較検定、***P<0.0001)。NMT1発現は、考えられる代償機序として最低のNMT2を発現する100種の細胞株では増加しない(E)。全てのデータは20Q1公的RNA配列決定(Broad Institute、1269種の細胞株)から抽出し、がんの選択において選別した。 PCLX-001処理がJurkat T細胞においてTCR依存性P-ERK活性化を減弱することを示す図である。Jurkat T細胞をCD3/CD28抗体で最大60分間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、24/48時間インキュベートしたPCLX-001(1μM)がP-ERK活性化を阻害することを示す。 PCLX-001処理(24時間)がJurkat T細胞においてTCR依存性P-ERK及びP-SFK活性化を減弱することを示す図である。Jurkat T細胞をCD3/CD28抗体で最大4時間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、24時間インキュベートしたPCLX-001(0.1及び1μM)P-ERK活性化及びSrcファミリーキナーゼのリン酸化(P-SFK)を示す。 PCLX-001処理(48時間)がJurkat T細胞においてTCR依存性P-ERK及びP-SFK活性化を減弱することを示す図である。Jurkat T細胞をCD3/CD28抗体で最大4時間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、48時間インキュベートしたPCLX-001(0.1及び1μM)がP-ERK活性化及びSrcファミリーキナーゼのリン酸化(P-SFK)を阻害することを示す。 PCLX-001及びダサチニブ処理が初代培養T細胞においてTCR下流シグナル伝達イベントを減弱し、ERストレスを誘導することを示す図である。90%のαβ初代T細胞をCD3/CD28抗体で30分間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、PCLX-001及びダサチニブがP-チロシンリン酸化(PY99)、P-ERK活性化、Srcファミリーキナーゼのリン酸化(P-SFK)を阻害することを示す。更に、PCLX-001は、Src及びLynのタンパク質のレベルを有意に低下させ、Bipタンパク質含有量(ERストレスマーカー)を増加させた。 PCLX-001がPBMC、B細胞及び単球の生存率を低下させるが、T細胞の生存率は低下させないことを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。フローサイトメトリーを使用して、細胞サブセットの生存率及び存在量を試験した。PBMCの生存率は著しく低下した(A)。しかし、CD4+及びCD8+T細胞の頻度は薬物処理によって変化しなかった(B及びC)。しかしながら、B細胞(D)及び単球CD14+(E)数は96時間のPCLX-001処理後に有意に低下した。 PCLX-001がT細胞においてLyn及びHGALの発現を低下させることを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。フローサイトメトリーを通した細胞内染色を使用して、T細胞サブセットにおけるLyn及びHGALの発現を試験した。CD4+T細胞におけるLyn(A)及びHGAL(B)の発現は共に低下した。更に、PCLX-001はまた、CD8+T細胞においてもLyn(C)とHGAL(D)の両方の発現を低下させた。 PCLX-001が単球においてLyn及びHGALの発現を低下させるが、B細胞では低下させないことを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。フローサイトメトリーを通した細胞内染色を使用して、B細胞及び単球サブセットにおけるLyn及びHGALの発現を試験した。PCLX-001はB細胞においてLyn(A)及びHGAL(B)の発現を低下させることができなかったが、両タンパク質マーカーは単球で有意に低下した(C及びD)。 PCLX-001が炎症性サイトカインの産生を誘導することを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて炎症性サイトカインIL-6(A)、TNF-α(B)、IL-8(C)、IFN-γ(D)、及びIL-17a(E)の産生を誘導する。 PCLX-001が産生抗炎症性サイトカインを誘導することを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて抗炎症性サイトカインIL-1RA(A)、IL-10(B)、IL-13(C)、及びIL-16(D)の産生を誘導する。 PCLX-001が炎症性ケモカインの産生を誘導することを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて炎症性ケモカインMIP-lα(A)、MCP-2(B)、TARC(C)、及びGRO-α(D)の産生を誘導する。 PCLX-001が炎症性ケモカインの産生を誘導することを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、炎症性ケモカインRATES(A)、MIP-1β(B)、MCP-4(C)、及びMDC(D)生PB<Cの産生を誘導する。 PCLX-001がTヘルパー2媒介ケモカイン及びGM-CSFの産生を誘導することを示す図である。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて顆粒球-単球コロニー刺激因子I-309(A)、Tヘルパー2媒介ケモカインとしてのエオタキシン-2(B)及びGM-CSF(C)の産生を誘導する。 NMT阻害剤(PCLX-001、PCLX-002、IMP-1088)が炎症誘発性サイトカイン;IL-6(A)、IL-8(B)、TNF-α(C)、及びIFN-γ(D)の正規化分泌を減少させることを示す図である。T細胞を増加する濃度のNMT阻害剤と48時間インキュベートし、次いで、薬物の存在下でT細胞活性化因子(STEMCELLS社)によって更に2日間誘導した。NMT阻害剤は、IL-6、IL-8及びIFN-ガンマのレベルを有意に低下させた(二元配置ANOVA、未処理に対するP値:*<0.05~0.01 **<0.01~0.001 ***<0.001~0.0001)。サイトカイン分泌の減少がPCLX-002よりもより強力なNMT阻害剤であるPCLX-001で強く、4日間の処理後の細胞の生存が未処理試料の10%以内であったことが特筆すべきことである。 NMT阻害剤(PCLX-001、PCLX-002、IMP-1088)が抗炎症性サイトカイン;IL-4(A)、IL-5(B)、IL-10(C)、及びIL-13(D)の正規化分泌を減少させることを示す図である。T細胞を増加する濃度のNMT阻害剤と48時間インキュベートし、次いで、薬物の存在下でT細胞活性化因子(STEMCELLS社)によって更に2日間誘導した。NMT阻害剤は、IL-5、IL-10及びIL-13のレベルを有意に低下させた(二元配置ANOVA、未処理に対するP値:*<0.05~0.01 **<0.01~0.001 ***<0.001~0.0001)。サイトカイン分泌の減少がPCLX-002よりもより強力なNMT阻害剤であるPCLX-001で強く、4日間の処理後の細胞の生存が未処理試料の10%以内であったことが特筆すべきことである。
詳細な説明
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の言及を含む。
本明細書で使用される「含む」という用語は、続くリストが包括的ではなく、必要に応じて、任意の他の追加の適切な項目、例えば1つ又は複数の更なる特徴、成分(component)及び/又は成分(ingredient)を含んでも含まなくてもよいことを意味すると理解される。
本明細書に記載される一態様では、本発明者らは、3つの独立したスクリーニングでPCLX-001によるNMT阻害に対する全ての主要ながん型を包含する300種のがん細胞株の感受性を試験した。PCLX-001は、NMT阻害剤DDD85646の経口投与可能な(orally bioavailable)誘導体であり、ヒトNMTに対してより選択的且つ強力である(Table 1(表1))38。本発明者らは、PCLX-001が、他のがん細胞型又は選択された正常細胞の生存性及び成長の阻害よりも有効にインビトロで血液がん細胞の生存性及び成長を阻害することを実証する。PCLX-001は、いくつかのB細胞リンパ腫細胞株で早期BCR媒介生存シグナル伝達を破壊し、多数のミリストイル化及び非ミリストイル化BCRエフェクターの分解を促進して、アポトーシスを誘引する。より重要なことには、PCLX-001は、用量依存的腫瘍退縮及び3つのリンパ腫マウス異種移植片モデルのうちの2つでの完全な腫瘍退縮をもたらす。
DDD86-481としても知られるPCLX-001の構造は以下の通りである。
DDD85646(PCLX-002)の構造は以下の通りである。
本明細書に記載される別の態様では、PCLX-001が抗炎症剤として使用され得る。
本明細書に記載される別の態様では、PCLX-001が抗自己免疫剤として使用され得る。
一態様では、がんを有するか、又はがんを有する疑いがある対象を処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む方法が提供される。具体的な例では、がんがリンパ腫である。より具体的な例では、がんがB細胞リンパ腫である。
一態様では、炎症性疾患若しくは障害を有するか、又は炎症性疾患若しくは障害を有する疑いがある対象を処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む方法が提供される。よって、一部の例では、PCLX-001が抗炎症剤として使用され得る。
一態様では、自己免疫疾患若しくは障害を有するか、又は自己免疫疾患若しくは障害を有する疑いがある対象を処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む方法が提供される。よって、一部の例では、PCLX-001が抗自己免疫剤として使用され得る。
本明細書で使用される「がん」という用語は、細胞の異常な制御されない増殖によって引き起こされる様々な状態を指す。「がん細胞」と呼ばれる、がんを引き起こすことができる細胞は、特徴的な特性、例えば制御されない増殖、不死性、転移能、急速な成長及び増殖速度、並びに/又はある特定の典型的な形態的特徴を有する。がん細胞は、腫瘍の形態であり得るが、対象内に単独でも存在し得る、又は非腫瘍化がん細胞であり得る。がんは、それだけに限らないが、1つ又は複数の腫瘍の存在の検出(例えば、臨床的又は放射線手段による)、腫瘍内又は別の生体試料由来(例えば、組織生検由来)の細胞の検査、がんを示す血中マーカーの測定、及びがんを示す遺伝子型の検出を含むいくつかの方法のいずれかで検出することができる。しかしながら、上記検出方法の1つ又は複数における陰性結果が必ずしもがんの非存在を示すわけではなく、例えば、がん処置に対する完全な応答を示した患者は、その後の再発によって証明されるように、がんを依然として有し得る。
一般に、疾患の重症度の決定は、ある特定の疾患の特徴、例えば、がんが前転移又は転移性であるかどうか、がんのステージ及び/又はグレード等の特定を要することが認識されよう。
ステージ分類は、がんが対象においてどれほど進行しているかを説明するために使用されるプロセスである。ステージ分類は、予後判定、処置の計画及びこのような処置の結果の評価において重要となり得る。異なるがん型には異なるがんステージ分類システムを使用する必要があり得るが、ほとんどのステージ分類システムは、一般に、がんが解剖学的にどこまで広がっているかを説明することを伴い、同様の予後及び処置を有する対象を同じステージ分類群に入れようと試みる。
ほとんどの固形腫瘍、一部の白血病及びリンパ腫に使用される一般的なステージ分類システムの例は、Overall Stage Groupingシステム及びTMNシステムである。Overall Stage Groupingシステムでは、ローマ数字I~IVを利用してがんの4つのステージを示す。一般的に、がんがリンパ節に広がることなく原発巣の領域でのみ検出可能である場合、I期と呼ばれる。II期及びIII期がんは、一般に局所的に進行している、及び/又は局所リンパ節に広がっている。例えば、がんが局所的に進行し、最も近いリンパ節のみに広がっている場合、II期と呼ばれる。III期では、がんが局所的に進行しており、一般的に原発巣部位にごく近接しているリンパ節に広がっている。原発腫瘍から体の遠隔部分、例えば肝臓、骨、脳又は別の部位に転移したがんが、最も進行したステージであるIV期と呼ばれる。したがって、I期がんは一般的に治療可能な小さな限局性がんであり、IV期がんは通常、手術不能がん又は転移がんを表す。他のステージ分類システムと同様に、所与のステージ及び処置についての予後は通常、がん型に依存する。一部のがんについては、4つの予後群への分類は不十分であり、全体的なステージ分類がサブグループに更に分けられる。対照的に、一部のがんは、4つ未満のステージグループ分けを有し得る。
全ての目に見える腫瘍が根絶された後に再発するがんは再発性疾患と呼ばれ、局所的再発は原発腫瘍の位置で起こり、遠隔再発は遠隔転移を表す。
ステージ分類システムのバリエーションはがん型に依存し得る。更に、ある特定のがん型。個々のがんのためのステージ分類システムは、新たな情報によって修正され得、その後、得られたステージが具体的ながんについての予後及び処置を変化させ得る。
がんの「グレード」は、腫瘍がどれほど同じ型の正常組織に似ているかを説明するために使用され得る。腫瘍の顕微鏡的外観に基づいて、病理学者は、パラメータ、例えば細胞形態、細胞構成、及び分化の他のマーカーに基づいて腫瘍のグレードを特定する。原則として、腫瘍のグレードは、その成長速度又は侵攻性に相当し、典型的には最も侵攻性でない(グレードI)~最も侵攻性(グレードIV)に分類される。
したがって、グレードが高いほど、がんがより侵攻性で、より速く成長する。腫瘍グレードについての情報は、処置の計画及び予後予測に有用である。
一部の例では、リンパ腫の場合、I期が1つのリンパ節群のみのリンパ腫を指す。II期は、2つ以上のリンパ節群が罹患しているが、全て横隔膜の上又は下のいずれかにあり、全て胸部又は全て腹部にあることを指す。III期は、2つ以上のリンパ節群が胸部と腹部の両方で罹患していることを指す。IV期は、リンパ腫が少なくとも1つの臓器(例えば、骨髄、肝臓又は肺)並びにリンパ節にあることを指す。追加の指定が前記ステージに加えられ得る。例えば、「A」は、一般的に、患者がいずれの厄介な症状も経験しないことを意味する。「B」は、患者がB症状(例えば、発熱、寝汗、体重減少)を経験していることを意味する。Xは、患者が巨大腫瘤病変(例えば、サイズが10cmより大きな大型腫瘍)を有することを意味する。Eは、患者が節外疾患(例えば、リンパ節の外側の疾患)を有することを意味する。
具体的な例では、がんがリンパ腫である。
「リンパ腫」という用語は、一般的に、リンパ系のがんを含むリンパ系の悪性新生物を指す。リンパ腫の2つの主要な型はホジキン病(HD又はHL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)である。異常な細胞が、リンパ節を腫大させる、体内で固形腫瘍を形成する、又はまれには、白血病のように、血液中を循環する集合として現れる。ホジキン病リンパ腫には、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫;古典的ホジキンリンパ腫;結節硬化型ホジキンリンパ腫;リンパ球豊富型古典的ホジキンリンパ腫;混合細胞型ホジキンリンパ腫;リンパ球減少型ホジキンリンパ腫が含まれる。非ホジキンリンパ腫には、小リンパ球性NHL、濾胞性NHL;マントル細胞NHL;粘膜関連リンパ組織型(MALT)NHL;びまん性大細胞型B細胞NHL;縦隔大細胞型B細胞NHL;前駆Tリンパ芽球性NHL;皮膚T細胞NHL;T細胞及びナチュラルキラー細胞NHL;成熟(末梢)T細胞NHL;バーキットリンパ腫;菌状息肉腫;セザリー症候群;前駆Bリンパ芽球性リンパ腫;B細胞小リンパ球性リンパ腫;リンパ形質細胞性リンパ腫;脾辺縁帯B細胞リンパ腫(spenic marginal zome B-cell lymphoma);節性辺縁帯リンパ腫(nodal marginal zome lymphoma);形質細胞骨髄腫/形質細胞腫;血管内大細胞型B細胞NHL;原発性滲出性リンパ腫;芽球性ナチュラルキラー細胞リンパ腫;腸管症型T細胞リンパ腫;肝脾ガンマデルタT細胞リンパ腫;皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫;血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;及び原発性全身性未分化大細胞型T/ヌル細胞リンパ腫が含まれる。
具体的な例では、リンパ腫がB細胞リンパ腫である。
一部の例では、本明細書に記載される組成物及び/又は組成物(例えば、PCLX-001)を使用して、様々なステージ及びグレードのがんの発症及び進行を処置することができる。一部の例では、PCLX-001が、例えば、疾患を治癒する又はがんの退縮を引き起こすことを意図して、小さい、成長が遅い、限局性及び/又は非侵攻性であり得る早期新生物を含む早期がんの処置に、並びに中間期の処置に、並びに進行した及び/又は転移性及び/又は侵攻性新生物を含む末期がんの処置に、例えば、疾患の進行を遅延させるため、転移を減少させるため、又は患者の生存を増加させるために使用され得る。同様に、PCLX-001は、低グレードがん、中グレードがん及び/又は高グレードがんの処置に使用され得る。
一部の例では、PCLX-001が、緩慢性がん、局所再発、遠隔再発及び/又は難治性がん(すなわち、処置に応答しないがん)を含む再発がん、転移がん、局所進行がん並びに侵攻性がんの処置に使用され得ることが企図される。
一部の例では、PCLX-001が、単独で又は一次療法若しくは補助療法の一部として1つ若しくは複数の治療剤と組み合わせて使用され得る。「一次療法」又は「第一選択療法」は、対象のがんの初期診断時の処置を指す。例示的な一次療法は、外科手術、広範囲の化学療法、免疫療法及び/又は放射線療法を伴い得る。第一選択又は一次療法が全身化学療法でも免疫療法でもない場合、その後の化学療法又は免疫療法が「第一選択全身療法」とみなされ得る。一例では、PCLX-001が第一選択全身療法に使用され得る。
「補助療法」という用語は、再発するリスクがある対象に投与される、一次療法後に続く療法を指す。補助全身療法は、典型的には、再発を遅延させる、生存を延長する又は対象を治癒するために一次療法のすぐ後に開始される。難治性がんの処置は「第二選択療法」と呼ばれ得、第一選択療法に加えて、本発明の企図した使用である。
本明細書で使用される「試料」という用語は、それだけに限らないが、遺伝子発現レベル、タンパク質のレベル、酵素活性レベル等をアッセイすることができる、1個又は複数の細胞を含む体液、細胞又は組織試料を含む、対象由来の任意の試料を指す。試料には、例えば、血液試料、分画血液試料、骨髄試料、生検、凍結組織試料、新鮮な組織標本、細胞試料、及び/又はパラフィン包埋切片、相対mRNAレベルの測定を可能にするのに十分な量及び十分な品質でRNAを抽出することができる材料、又は相対ポリペプチドレベルの測定を可能にするのに十分な量及び十分な品質でポリペプチドを抽出することができる材料が含まれ得る。
本発明の一実施形態では、組合せが早期がんの処置に使用される。別の実施形態では、組合せが早期がんのための第一選択全身療法として使用される。
代わりの例では、PCLX-001が末期及び/又は進行及び/又は転移がんの処置に使用され得る。更なる実施形態では、PCLX-001が、末期及び/又は進行及び/又は転移がんを処置するための第一選択全身療法として投与され得る。
具体的な例では、PCLX-001がリンパ腫の処置に使用され得る。より具体的な例では、PCLX-001がB細胞リンパ腫の処置に使用され得る。
本明細書に示されるように、PCLX-001はBCRを阻害し、よって、抗炎症剤として使用され得る、及び/又は抗自己免疫剤として使用され得る。
「免疫細胞」という用語は、一般的に、免疫応答において役割を果たす造血幹細胞に由来する任意の細胞を包含する。この用語は、自然免疫系又は適応免疫系の両方の免疫細胞を包含することを意図している。本明細書で言及される免疫細胞は、任意の分化段階(例えば、幹細胞、前駆細胞、成熟細胞)又は任意の活性化段階の白血球であり得る。免疫細胞には、リンパ球(例えば、ナチュラルキラー細胞、T細胞(例えば、胸腺細胞、Th若しくはTc;Thl、Th2、Thl7、
、CD4+、CD8+、エフェクターTh、メモリーTh、調節性Th、CD4+/CD8+胸腺細胞、CD4-/CD8-胸腺細胞、γδT細胞等を含む)又はB細胞(例えば、プロB細胞、初期プロB細胞、後期プロB細胞、プレB細胞、大型プレB細胞、小型プレB細胞、未熟若しくは成熟B細胞、任意のアイソタイプの産生抗体、T1 B細胞、T2、B細胞、ナイーブB細胞、GC B細胞、形質芽細胞、メモリーB細胞、形質細胞、濾胞B細胞、辺縁帯B細胞、B-l細胞、B-2細胞、調節性B細胞等を含む)、例えば様々なサブタイプ、成熟、分化、又は活性化段階を含む、単球(例えば、古典的、非古典的、若しくは中間単球)、(分葉核若しくは桿状核)好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、組織球、ミクログリア、例えば、造血幹細胞、骨髄前駆細胞、リンパ球前駆細胞、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、単芽球、前単球、リンパ芽球、前リンパ球、小リンパ球、マクロファージ(例えば、クッパ―細胞、星マクロファージ(stellate macrophage)、M1若しくはM2マクロファージを含む)、(骨髄系若しくはリンパ系)樹状細胞(例えば、ランゲルハンス細胞、従来型若しくは骨髄系樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、mDC-1、mDC-2、Mo-DC、HP-DC、ベール細胞を含む)、顆粒球、多形核細胞、抗原提示細胞(APC)等が含まれる。
「B細胞」という用語は、適応免疫系の液性免疫のリンパ球の型を指す。B細胞は主に、抗体を作り、抗原提示細胞として働き、サイトカインを放出し、抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞を発達させるように機能する。B細胞は、細胞表面上のB細胞受容体の存在によって、他のリンパ球、例えばT細胞から区別される。
「T細胞」という用語は、胸腺で成熟するリンパ球の型を指す。T細胞は、細胞性免疫において重要な役割を果たし、細胞表面上のT細胞受容体の存在によって、他のリンパ球、例えばB細胞から区別される。
B細胞受容体(BCR)及びBCR複合体B細胞は、抗体の産生を担う免疫系細胞である。抗原に対するB細胞応答は、正常な免疫系の必須成分である。B細胞は、特殊化細胞表面受容体(B細胞受容体;「BCR」)を有する。B細胞が、その細胞のBCRに結合することができる抗原に遭遇すると、B細胞が刺激されて、増殖し、結合した抗原に特異的な抗体を産生する。抗原に対する十分な応答を生成するために、BCR関連タンパク質及びT細胞の援助も必要である。
BCRを通したシグナル伝達が、抗体の産生、自己免疫、及び免疫寛容の確立において重要な役割を果たす。
抗BCR複合体抗体は、自己免疫、がん、炎症性疾患、及び移植の処置における治療的用途を有する。
よって、本明細書に示されるように、PCLX-001はBCRを阻害し、よって、抗炎症剤として使用され得る、及び/又は抗自己免疫剤として使用され得る。
補足図面16~18に示されるように、PCLX-001はTCRを阻害し、よって、抗炎症剤として使用され得る、及び/又は抗自己免疫剤として使用され得る。「T細胞受容体」(TCR)という用語は、α鎖及びβ鎖又はγ鎖及びδ鎖を含むT細胞の表面上に見られるヘテロ二量体を指す。T細胞受容体は、MHC分子と会合した処理された抗原を認識する。
T細胞受容体(TCR)シグナルの阻害は、広範囲のヒトT細胞媒介自己免疫及び炎症性疾患の処置に有望である。
他の例では、NMT阻害剤がBCR及びTCRを阻害し得る。
更に他の例では、DDD85646を使用してBCR及びTCRを阻害することができる。
他の例では、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2010/026365号に記載されるNMT阻害剤を使用してBCR及びTCRを阻害することができる。
本明細書で使用される「阻害する」又は「阻害剤」という用語は、タンパク質合成、レベル、活性、若しくは機能を阻害する任意の方法若しくは技術、並びに目的のタンパク質の合成、レベル、活性、若しくは機能の誘導若しくは刺激を阻害する方法を指す。一部の例では、この用語はまた、目的のタンパク質の合成、レベル、活性、又は機能を調節することができる、任意の代謝経路又は調節経路を指す。この用語は、他の分子との結合及び複合体形成を含む。したがって、「阻害剤」という用語は、その適用によりタンパク質機能又はタンパク質経路機能の阻害がもたらされる薬剤又は化合物を指す。しかしながら、この用語は、これらの機能の各々及びどれもが同時に阻害されなければならないことを意味するわけではない。
したがって、一部の例では、本明細書の化合物及び組成物が、炎症性障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。具体的な例では、PCLX-001が、炎症性障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。よって、一部の例では、PCLX-001が抗炎症剤として使用され得る。
他の例では、DDD85646が、炎症性障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。よって、一部の例では、DDD85646が抗炎症剤として使用され得る。
更に他の例では、国際公開第2010/026365号に記載されるNMT阻害剤が、炎症性障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。よって、一部の例では、国際公開第2010/026365号に記載されるNMT阻害剤が抗炎症剤として使用され得る。
抗炎症性という用語は、炎症を予防又は低減する物質又は処置の特性を指す。
本明細書で使用される場合、「障害」及び「疾患」という用語は、対象の状態を指すために互換的に使用される。特に、「炎症性疾患」という用語は、「炎症性障害」という用語と互換的に使用される。
本明細書で使用される「炎症」、「炎症状態」又は「炎症反応」という用語は、有害な刺激、例えば病原体、損傷細胞、又は刺激物質に対する個体の血管組織の複雑な生物学的反応を示し、サイトカイン、特に炎症誘発性サイトカイン、すなわち、主に活性化免疫細胞、例えばミクログリアによって産生され、炎症反応の増幅に関与するサイトカインの分泌を含む。一部の例では、炎症が急性炎症及び慢性炎症を含む。
本明細書で使用される「急性炎症」という用語は、血漿及び白血球による組織の浸潤による、古典的な炎症徴候(腫脹、発赤、疼痛、発熱、及び機能喪失)を特徴とする短期プロセスを示す。急性炎症は、典型的には、有害な刺激が存在する限り起こり、刺激が取り除かれる、破壊される、又は瘢痕化によって仕切られる(線維症)と止む。
本明細書で使用される「慢性炎症」という用語は、同時発生的な活動性炎症、組織破壊、及び修復の試みを特徴とする状態を示す。慢性炎症は、上に列挙される急性炎症の古典的徴候を特徴としない。代わりに、慢性炎症組織は、単核免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、及び形質細胞)の浸潤、組織破壊、並びに血管新生及び線維化を含む治癒の試みを特徴とする。
一部の例では、炎症性障害が、急性、癒着性、萎縮性、カタル性、慢性、硬変性、びまん性、播種性、滲出性、線維性、線維化、限局性、肉芽腫性、過形成性、肥大性、間質性、転移性、壊死性、閉塞性、実質性、形成性、増殖性、繁殖性、偽膜性、化膿性、硬化性、血清塑性、漿液性、単純、特異的、亜急性、化膿性、毒性、外傷性、及び/又は潰瘍性炎症である。
一部の例では、炎症性障害が、胃腸障害(例えば、消化性潰瘍、限局性腸炎、憩室炎、胃腸出血、好酸球性)、胃腸障害(例えば、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性大腸炎)、胃炎、下痢、胃食道逆流症(GORD、又はGERD)、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎、ベーチェット症候群、分類不能大腸炎)及び炎症性腸症候群(IBS))からである。
一部の例では、炎症性障害が、肋膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、喘息、特発性肺線維症(IPF)、及び嚢胞性線維症から選択される肺の障害である。
したがって、一部の例では、本明細書の化合物及び組成物が、自己免疫疾患若しくは障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。具体的な例では、PCLX-001が、自己免疫疾患若しくは障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。よって、一部の例では、PCLX-001が抗自己免疫剤として使用され得る。
他の例では、DDD85646が、自己免疫障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。よって、一部の例では、DDD85646が抗自己免疫剤として使用され得る。
更に他の例では、国際公開第2010/026365号に記載されるNMT阻害剤が、自己免疫障害を有するか、又は有する疑いがある対象を処置するために使用され得る。よって、一部の例では、国際公開第2010/026365号に記載されるNMT阻害剤が抗自己免疫剤として使用され得る。
本明細書で使用される場合、「障害」及び「疾患」という用語は、対象の状態を指すために互換的に使用される。特に、「自己免疫疾患」という用語は、「自己免疫障害」という用語と互換的に使用される。
本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患」という用語は、患者自身の細胞と反応して抗原-抗体複合体を形成する自己抗体の形成に関連する任意の疾患状況又は状態を指す。「自己免疫疾患」という用語は、それだけに限らないが、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、自己免疫性甲状腺炎及び自己免疫性溶血性貧血を含む、特定の外部因子によって通常は誘引されない状態、並びに特定の外部因子によって誘引される障害、例えば急性リウマチ熱を含む。
自己免疫疾患の他の例としては、それだけに限らないが、関節リウマチ、喘息、多発性硬化症、重症筋無力症、エリテマトーデス、及びインスリン依存性糖尿病(1型)が挙げられる。
自己免疫疾患の追加の例としては、それだけに限らないが、胃炎、大腸炎、及びインスリン依存性自己免疫糖尿病、移植片移植/拒絶の阻害、移植片対宿主病が挙げられる。
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物を指し、例えば、飼育動物、例えばネコ、イヌ等、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット等)、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、霊長類、非ヒト霊長類、げっ歯類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び任意の他の動物を含むことができる。
具体的な例では、対象がヒトである。
本明細書で使用される「処置」又は「処置する」という用語は、臨床結果を含む、有益な又は所望の結果を得ることを指す。有益な又は所望の臨床結果には、それだけに限らないが、検出可能であれ検出不能であれ、1つ又は複数の症状又は状態の軽減又は改善、疾患の程度の縮減、疾患の安定化(すなわち、悪化していない)状態、疾患の拡大の予防、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、疾患の再発の縮減、及び寛解(部分であれ完全であれ)が含まれ得る。「処置する」及び「処置」はまた、処置を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長させることも意味し得る。本明細書で使用される「処置する」及び「処置」はまた、予防的処置も含む。例えば、早期がん、例えば早期リンパ腫を有する対象を処置して進行を予防することができる、又は代わりに、寛解している対象を本明細書に記載される化合物若しくは組成物で処置して再発を予防することができる。
「予防する」又は「予防」という用語は、標的となる病的状態又は障害の発症を予防及び/又は減速する予防的又は防止的措置を指す。よって、予防を必要とする者には、障害を発症するリスクがあるか、又は発症しやすい者が含まれる。ある特定の実施形態では、患者が、一過的に又は永続的に、例えば、本発明の方法を受けていない患者よりも、疾患若しくは障害に関連する症状が軽い、又は疾患若しくは障害に関連する症状の発症が遅い場合、疾患又は障害が本明細書で提供される方法に従って首尾よく予防される。
一部の例では、処置が、対象の疾患の症状の発症の予防若しくは遅延又は改善或いは所望の生物学的転帰の達成をもたらす。
本明細書で使用される「診断」という用語は、分子及び/又は病的状態、疾患又は状態の特定、例えばリンパ腫、又は他のがん型の特定を指す。
本明細書で使用される「軽減する」という用語は、異常又は症状を含む、状態、疾患、障害、又は表現型の減少、低減又は排除を指す。
一部の例では、薬学的有効量のPCLX-001が使用される。一部の例では、治療有効量のPCLX-001が使用される。
本明細書で使用される「薬学的有効量」又は「有効量」という用語は、研究者又は臨床医によって求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する薬物又は医薬剤の量を指す。この量は「治療有効量」であることができる。これらの用語は、単回又は複数回用量投与で、疾患又は状態を有する対象を処置する本明細書に記載される化合物及び/又は組成物の量を指す。有効量は、公知の技術の使用によって、及び類似の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者としての主治診断医によって容易に決定され得る。有効量、用量の決定においては、それだけに限らないが、対象の種;そのサイズ、年齢、及び健康全般;関与する具体的な状態、障害、又は疾患;関与の程度又は状態、障害、若しくは疾患の重症度、個々の対象の応答;投与される特定の化合物;投与様式;投与される調製物のバイオアベイラビリティ特性;選択される投与レジメン;併用薬の使用;並びに他の関連する状況を含むいくつかの因子が主治診断医によって考慮される。
よって、本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、所望の結果を達成するのに必要な投与及び期間で有効な量を指す。有効量は、因子、例えば疾患状態、対象の年齢、性別及び/又は体重によって変化し得る。このような量に対応する所与の化合物又は組成物の量は、様々な因子、例えば所与の薬物又は化合物、医薬製剤、投与経路、処置される対象の素性等に応じて変化するが、それでも当業者によって日常的に決定され得る。
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、過度の毒性も、刺激も、アレルギー反応も、他の問題又は合併症もなく、対象の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形(例えば、単位投与量)を含む。各担体、賦形剤等も、製剤の他の成分と適合性であるという意味において「許容される」。
「賦形剤」という用語は、薬理学的に不活性な成分、例えば希釈剤、潤滑剤、界面活性剤、担体等を意味する。医薬組成物の調製において有効な賦形剤は一般的に安全で非毒性であり、ヒトの医薬使用に許容される。賦形剤への言及は、1つと2つ以上の両方のこのような賦形剤を含む。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、それだけに限らないが、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水型又は水/油型エマルジョン)、及び様々な種類の湿潤剤、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張剤及び吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム)、安定剤及び保存剤等を含む標準的な医薬担体のいずれかを指す。
本発明の医薬組成物は、慣用的な非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及びビヒクルを含有する投与単位製剤で、経口、局所、非経口、吸入若しくはスプレーにより、又は直腸投与され得る。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内(intrastemal)注射又は注入技術を含む。
医薬組成物は、経口使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルジョン、ハード若しくはソフトカプセル、又はシロップ若しくはエリキシルであり得る。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造について当技術分野で公知の方法に従って調製され得、薬学的に上品で美味な調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤の群から選択される1つ又は複数の薬剤を含有し得る。錠剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ(com starch)、又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア、及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクを含む適切な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混和した押型有効成分を含有する。錠剤はコーティングされていなくてもよいし、又は消化管内での崩壊及び吸収を遅延させ、それによって、長期間にわたり持続的作用を提供するために、公知の技術によってコーティングされてもよい。例えば、時間遅延材料、例えばモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルが使用され得る。
経口使用のための医薬組成物は、有効成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合されているハードゼラチンカプセルとして、又は有効成分が水若しくは油媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合されているソフトゼラチンカプセルとしても提供され得る。
水性懸濁液は、例えば、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム及びアラビアガム;分散剤又は湿潤剤、例えば天然に存在するホスファチド、例えば、レシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えば、ヘプタ-デカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートを含む適切な賦形剤と混和した活性化合物を含有する。水性懸濁液はまた、1つ若しくは複数の保存剤、1つ若しくは複数の着色剤、1つ若しくは複数の香味剤、又は1つ若しくは複数の甘味剤、例えばスクロース若しくはサッカリンを含有し得る。
油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油、又は鉱油、例えば流動パラフィンに懸濁することによって製剤化され得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、ビーズワックス、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有し得る。甘味剤、例えば上に示されるもの、及び/又は香味剤を添加して美味な経口調製物を得ることができる。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を添加することによって保存することができる。
水の添加によって水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤及び1つ又は複数の保存剤と混和した活性化合物を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤は、上で既に言及されたものによって例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤及び着色剤も存在し得る。
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。油相は植物油、例えば、オリーブ油若しくは落花生油、又は鉱油、例えば、流動パラフィンであり得るか、或いはこれらの油の混合物であり得る。
適切な乳化剤は、天然に存在するガム、例えば、アラビアガム若しくはトラガントガム;天然に存在するホスファチド、例えば、ダイズ、レシチン;又は脂肪酸及びヘキシトール、無水物から誘導されるエステル若しくは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、及び前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。エマルジョンはまた、甘味剤及び香味剤を含有し得る。
シロップ及びエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロースを用いて製剤化され得る。このような製剤はまた、粘滑薬、保存剤、並びに/又は香味剤及び着色剤を含有し得る。
医薬組成物は、無菌注射用水性又は油性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁化剤、例えば上に言及されるものを使用して、公知技術に従って製剤化され得る。無菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中溶液であり得る。使用され得る許容されるビヒクル及び溶媒には、それだけに限らないが、水、リンゲル液、乳酸加リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。他の例は、溶媒又は懸濁媒として慣用的に使用されている無菌不揮発性油、及び例えば、合成モノ-又はジグリセリドを含む様々な無刺激不揮発性油である。更に、脂肪酸、例えばオレイン酸は注射剤の調製での用途を見出している。
一部の例では、処置方法が、治療有効量の本明細書に記載される化合物又は組成物を対象に投与する工程を含み、場合により、単回投与又は適用からなる、或いは、一連の投与又は適用を含む。
一部の例では、製剤が、単位剤形で好都合に提供され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。このような方法は、活性化合物を、1つ又は複数の副成分を構成し得る担体と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性化合物を液体担体若しくは微細固体担体又は両方と均一且つ密接に会合させ、次いで、必要であれば、製品を成形することによって調製される。
化合物及び組成物は、それだけに限らないが、経口(例えば、摂取による);局所(例えば、経皮、鼻腔内、眼、頬側、及び舌下を含む);肺(例えば、口又は鼻を通して、例えばエアロゾルを使用した吸入又は吹送療法による);直腸;膣;例えば、皮下、腫瘍内、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、及び胸骨内を含む注射による非経口;デポーの植込みにより/例えば、皮下又は筋肉内を含む、全身/末梢であろうと所望の作用部位であろうと、任意の簡便な投与経路によって対象に投与され得る。
本明細書で使用される場合、「接触させる」という用語は、例えば、化合物が細胞に送達され得るプロセスを指す。化合物は、それだけに限らないが、細胞への直接導入(すなわち、細胞内)及び/又は生物の腔、間質空間、若しくは循環への細胞外導入を含むいくつかの方法で投与され得る。
よって、一部の例では、接触がインビボで行われる。他の例では、接触がインビトロで行われる。
「細胞」は、個々の細胞又は細胞培養物を指す。一例では、細胞が、対象から得られた又は対象に由来する細胞である。細胞の培養及び適切な培養培地は公知である。
(例えば、摂取による)経口投与に適した製剤は、それぞれ所定量の活性化合物を含有する、個別の単位、例えばカプセル剤、カシェ若しくは錠剤として;粉末若しくは顆粒として;水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして;ボーラスとして;舐剤として;又はペーストとして提供され得る。
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む注射による)に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤、及び製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性パイロジェンフリー無菌注射液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性無菌懸濁液、並びに化合物を血液成分又は1つ若しくは複数の臓器に標的化するよう設計されたリポソーム又は他の微粒子システムが含まれる。このような製剤に使用するのに適した等張性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射、リンゲル液、又は乳酸加リンゲル注射が挙げられる。
製剤は、単位用量又は複数回用量密封容器、例えば、アンプル及びバイアルで提供され得、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを要するフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵され得る。即時注射溶液及び懸濁液は、無菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。製剤は、活性化合物を血液成分又は1つ若しくは複数の臓器に標的化するよう設計されたリポソーム又は他の微粒子システムの形態であり得る。
本明細書に記載される化合物及び/又は組成物は、処置される状態に応じて、同時に(又は実質的に同時に)又は順次に投与され得、他の処置と組み合わせて投与され得る。他の処置は、同時に(又は実質的に同時に)又は順次に投与され得る。
本明細書で使用される「処置又は投与レジメン」は、第2の投薬を加えた又は加えない、投与の組合せ、投与の頻度、又は処置の持続時間を指す。
化合物又は組成物は、処置される状態に応じて、単独で、又は他の処置と組み合わせて同時に若しくは順次に投与され得る。
対象の処置においては、治療有効量が対象に投与され得る。
製剤は、単位剤形で好都合に提供され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。このような方法は、活性化合物を、1つ又は複数の副成分を構成し得る担体と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性化合物を液体担体若しくは微細固体担体又は両方と均一且つ密接に会合させ、次いで、必要であれば、製品を成形することによって調製される。
本明細書に開示される化合物及び/又は化合物を含む組成物は、当業者に知られているように、標準的な処置体制と組み合わせて本明細書に記載される方法に使用され得る。
一部の例では、本明細書に記載される化合物又は組成物を含む治療用製剤が、所望の純度を有する化合物又は組成物を、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって、水溶液、凍結乾燥又は他の乾燥製剤の形態で調製され得る。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、ヒスチジン及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル若しくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTween(商標)、Pluronics(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
治療用製剤はまた、処置される特定の適応症の必要に応じて2種以上の活性化合物、典型的には互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性成分を含むものを含有し得る。このような分子は、適切には、意図した目的に有効な量で組み合わせて存在する。
当業者であれば、ラベル上の説明書に従うことによって、個々の対象に適した用量を決定することができるだろう。本明細書に記載される化合物又は組成物と組み合わせて又は同時に投与される商業的に入手可能な第2の治療用化合物及び他の化合物についての調製及び投与スケジュールは製造業者の説明書に従って使用され得る、又は熟練した開業医によって経験的に決定され得る。
適切な投与量を決定する際に考慮され得る因子には、疾患状態の重症度、対象の健康全般、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、組合せの特定の成分、反応感受性、並びに治療に対する忍容性/反応が含まれる。
本発明の方法は、キットの形態でこのような方法に使用される化合物及び/又は組成物を提供することによって簡便に実施される。このようなキットは、好ましくは、組成物を含有する。このようなキットは、好ましくは、その使用のための説明書を含有する。
本明細書に記載される本発明のより良い理解を得るために、以下の実施例が示される。これらの実施例は例示目的のためのものにすぎないことが理解されるべきである。したがって、これらの実施例は本発明の範囲を決して限定しない。
要約
脂肪酸ミリステートによるタンパク質のN末端修飾であるミリストイル化は、膜標的化及び細胞シグナル伝達にとって重要である。がん細胞は通常、上昇したN-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)発現を有するので、NMTが抗がん標的として提案された。これを体系的に調査するために、本発明者らは、ロボットがん細胞株スクリーニングを実施し、強力な汎NMT阻害剤PCLX-001に対する、B細胞リンパ腫を含む血液がん細胞株の著しい感受性を発見した。PCLX-001処理は、リンパ腫細胞タンパク質の全体的なミリストイル化に影響を及ぼし、生存にとって重要な早期B細胞受容体(BCR)シグナル伝達イベントを阻害する。Srcファミリーキナーゼのミリストイル化の抑止に加えて、PCLX-001はまた、それらの分解、並びに予想外にも、c-Myc、NFkB及びP-ERKを含む多数の非ミリストイル化BCRエフェクターの分解も促進して、インビトロ及び異種移植片モデルにおいてがん細胞死をもたらす。一部の処置されたリンパ腫患者は再発を経験し、死亡するので、NMT阻害剤によるB細胞リンパ腫の標的化は、潜在的にリンパ腫のための追加の待望の処置選択肢を提供する。
結果
PCLX-001はインビトロで血液がん細胞を選択的に殺傷する。
がんにおけるNMT阻害の治療能を調査するために、本発明者らは、様々ながん細胞株で3つの独立したロボットスクリーニングを実施して、PCLX-001のパーセンテージ成長阻害(GI)を測定した。Horizon社(ミズーリ州セントルイス)プラットフォームで68種の細胞株を使用して、本発明者らは、PCLX-001が様々な細胞株の成長を阻害することを示している(図1A)。しかしながら、GIは、他のがん細胞株型よりも、リンパ腫、白血病、及び骨髄腫を含む血液(血液)がん細胞で有意に高い(P<0.0001)(図1B)。これらの結果は、101種の細胞株のOncolines(商標)(オランダのオス)スクリーニング(図1C、図1D、P=0.0001、図7)を使用して、並びに131種のがん細胞株をPCLX-001に3日間及び6日間暴露した第3のスクリーニング(Chempartner社、中国上海)で再現された(図9)。3日間のPCLX-001処理後の中央IC50は、乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)及び小細胞肺がん(SCLC)を含む固形腫瘍に由来する細胞株(10μM、試験した最高用量;P=0.0038)と比較して、血液がん細胞株(0.166μM)で有意に低い(図9A、図9B)。しかしながら、6日目までに、PCLX-001は、試験したほぼ全てのがん細胞株型を有効に殺傷する(図9C、図9D)。
スクリーニングを使用して得られたデータを確認するために、本発明者らは、BL細胞株BL2、Ramos、及びBJABを含むいくつかの一般的なB細胞リンパ腫細胞株、DLBCL細胞株DOHH2、WSU-DLCL2、及びSU-DHL-10、並びに対照としての不死化B細胞IM9及びVDS46に対するPCLX-001処理の効果を試験した。本発明者らは、これらの細胞で3種類のアッセイを実施した:1)生細胞の総数を評価するための、その読み取りが増殖(総細胞の数)と生存率(生細胞のパーセンテージ)の両方に依存するCellTiter Blueアッセイ、2)生細胞のパーセンテージを測定するだけであるので、その読み取りが増殖速度と独立したカルセインアッセイ、及び3)生存率と独立して、単に経時的な細胞の総数を数える細胞増殖アッセイ。悪性細胞株とPCLX-001のインキュベーションが、3つのアッセイ全てで時間及び濃度依存的にこれらの細胞を殺傷する。更に、PCLX-001処理は、CellTiter Blue(4~111倍少ないPCLX-001が必要とされる;図1E、図1F)アッセイとカルセイン(2~40倍少ないPCLX-001が必要とされる;図10)アッセイの両方によって測定されるように、良性IM9及びVDS B細胞を殺傷するのに必要とされるよりも有意に低い濃度で悪性細胞株を殺傷する。PCLX-001はまた、良性IM9及びVDS B細胞と比較して、6種の悪性Bリンパ腫細胞株の増殖及び生存を阻害するのに優れている(図1E~図1H、図10及び図11)。これを例示するために、本発明者らは、0.05及び0.1μMのPCLX-001による悪性BL2細胞の処理が経時的にこれらの増殖を完全に阻害し、これらの濃度では良性IM9細胞に対する効果はほとんどないことを示す(図1G、図1H)。重要なことに、新たに単離したヒトリンパ球及び末梢血単核細胞(PBMC)の96時間のPCLX-001処理はリンパ球生存にごくわずかな影響しか及ぼさないが、0.1μMのPCLX-001はPBMC生存の約50%の減少を引き起こす(図12)。しかしながら、生存しているPBMCは、インビトロでほとんどの血液がん細胞株について、IC50(約0.050~0.100μM)より約100倍高い用量である10μMの濃度までPCLX-001処理を耐える。同様の傾向が初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;図12B)で観察される。まとめると、これらのデータは、PCLX-001処理が、時間及び濃度依存的に様々ながん細胞株の増殖及び生存を選択的に阻害し、インビトロで悪性血液がん細胞を殺傷するのに特に効率的であることを示している。
ミリストイル化阻害はリンパ腫細胞アポトーシスを誘導する
PCLX-001が標的に作用することを検証するために、本発明者らは、記載されるように47クリックケミストリーを使用して、悪性BL2リンパ腫細胞及び良性IM9 B細胞における内因性タンパク質ミリストイル化の阻害を可視化した(図2A、図2B)。PCLX-001は、両細胞株において濃度依存的に全タンパク質ミリストイル化を阻害する。しかしながら、BL2ミリストイル化を減少させるためにわずか0.1μMのPCLX-001しか必要とされないのに対し、IM9細胞ではこの量の5倍が必要とされる(図2A、図2B)。これは、悪性BL2細胞におけるタンパク質ミリストイル化プロセスがどういうわけかPCLX-001阻害により感受性であり得ることを示唆している。PCLX-001(Table 1(表1))38はDDD85646/IMP-366及び一連の最近検証されたNMT阻害剤38、39の一部の密接に関連する類似体であるが、本発明者らは、パルミトイル化及びリン酸化に対するその効果を更に評価した。PCLX-001は、10μMの濃度まで、COS-7細胞で発現されるEGFP-N-Ras構築物のパルミトイル化を阻害せず(図13A)、予め構成されたscanMAX KINOMEscan(商標)(Eurofins DiscoverX社、米国サンディエゴ)の468種のヒトキナーゼのいずれも有意に阻害しない(図13B)。注目すべきことに、わずか3つの可能な陽性ヒットは、BL2細胞についてPCLX-001のEC50よりも約4000倍高い濃度である100μMのPCLX-001で見られた。よって、細胞機能及び生存率に対するPCLX-001の時間及び濃度依存的効果はNMT特異的であるように見える。
本発明者らは、次に、クリックケミストリー47及び蛍光顕微鏡法によって、COS-7細胞で発現される切断型Src-EGFP48構築物を使用して、既知のミリストイル化タンパク質であるSrcタンパク質チロシンキナーゼのミリストイル化及び局在化を監視することによってNMT機能のPCLX-001阻害を検証した。PCLX-001は、COS-7及びIM9細胞でそれぞれ濃度依存的にWT-Src-EGFP構築物と内因性Srcの両方のミリストイル化を阻害する(図2C、図2D)。特に、ミリストイル化阻害は、COS-7細胞においてWT-Src-EGFPを血漿及びエンドソーム膜から細胞質に再局在化させて、ミリストイル化可能でないGly2Ala-Src-EGFP突然変異構築物48に匹敵する分布パターンをもたらす(図2E)。内因性Srcミリストイル化の阻害はまた、最大5日間PCLX-001で処理したBL2及びIM9細胞においてSrcタンパク質のレベルの予想外の時間依存的低下をもたらし(図2F)、これはIM9対照と比較して悪性BL2細胞で加速される(P=0.0174;図14)。更に、PCLX-001処理は、PARP-1及びカスパーゼ-3切断によって測定されるように、BL細胞株BL2及びRamosでアポトーシスを選択的に誘導するが、不死化IM9 B細胞では誘導せず(図2G)、良性不死化B細胞がPCLX-001毒性について高い閾値を示すことと一致している(図1E、図1F、図10)。まとめると、これらのデータは、PCLX-001が、正常不死化B細胞と比較して悪性リンパ腫細胞でミリストイル化を優先的に抑止して選択的細胞死をもたらすことを示唆している。
PCLX-001はSFKレベル及びBCR下流シグナル伝達を低下させる
BCRシグナル伝達は、B細胞リンパ腫で重要な生存シグナルを提供し、SFK(特にLyn)は、正常B細胞とリンパ腫の両方でBCRシグナル伝達の開始において重要な役割を果たす5、6、11、49、50。PCLX-001処理は、良性IM9対照と比較して悪性BL2細胞で内因性Srcタンパク質のレベルを優先的に低下させるので(図2F)、本発明者らは、同様の効果が様々なリンパ腫細胞株において他のSFKで観察され得るかどうかを決定しようとした。本発明者らは、PCLX-001処理BL2、Ramos、BJAB、DOHH2、WSU-DLCL2及びSU-DHL-10リンパ腫細胞が全て、良性IM9及びVDS対照と比較して、Src及びLyn SFKタンパク質のレベルのより明白な用量及び時間依存的低下を示すことを見出した(図3A)。プロテアソーム分解機序が関与しているかどうかを調査するために、PCLX-001をBL2細胞に24又は48時間添加した後、本発明者らは、6時間、BL2細胞をプロテアソーム阻害剤MG132で処理した、又はしなかった後、細胞を収穫及び溶解し、Src及びLyn SFKだけでなく、共に同様にリンパ腫進行に関連づけられている50、造血細胞キナーゼ(Hck)及びリンパ球特異的キナーゼ(Lck)SFKの残留タンパク質のレベルを測定した。PCLX-001処理は、Src及びLynよりも少ない程度にHck及びLckタンパク質のレベルを低下させる(図3B)。しかしながら、MG132をPCLX-001処理細胞に添加することにより、特に24時間の時点で、対照と比較して4つのSFKタンパク質の部分的又は完全な回復が得られる(図3B)。これは、非ミリストイル化SFKの分解が、部分的にユビキチン-プロテアソーム系に起因し得ることを示している。MG132によるプロテアソーム阻害の有効性は、プロテアソームよって活発に分解されるタンパク質であるMcl-1レベル51を監視することによって確認された(図3B)。
抗原非依存性基礎BCRシグナル伝達は通常、リンパ腫細胞で上昇しているので6、49、本発明者らは、抗ホスホ-チロシン(P-Tyr)抗体(PY99)を使用して、上記細胞株における内因性チロシンリン酸化レベルを監視することによって、リガンド非依存性BCRシグナル伝達に対するPCLX-001処理の影響を評価した。PCLX-001による24時間の処理により、試験した全ての細胞株で抗原非依存的な全体的ホスホ-チロシンレベルが濃度依存的に低下する(図15A)。更に、1μMのPCLX-001は、抗IgMとのBCR連結後、BL2細胞においてほぼ全てのリガンド依存性BCR媒介ホスホ-チロシン及び汎ホスホ-SFKレベルを抑止する(図3B)。プロテアソーム阻害は、その上昇したタンパク質のレベルによって示唆されるように、SFKの安定化をもたらすが、BL2細胞においてリガンド非依存性チロシンリン酸化に対するPCLX-001の影響も全体的SFKリン酸化に対するPCLX-001の影響も逆転させず(図3B)、非ミリストイル化SFKが、その誤った局在化及びそれらの基質をリン酸化できないことにより、もはや機能的でないという確立された概念を裏付ける。まとめると、これらの結果は、SFKのミリストイル化がそれらの活性と安定性の両方に必須であり、リンパ腫細胞における下流BCRシグナル伝達に必要であることを示している。
PCLX-001はBCR生存シグナル伝達成分を強力に阻害する
PCLX-001はSFKタンパク質のレベル及びリガンド依存性BCR媒介チロシンリン酸化に影響を及ぼすので、本発明者らは次に、対照として2つの臨床的に承認されたBCRシグナル伝達阻害剤:ダサチニブ(広域チロシンキナーゼ阻害剤)及びイブルチニブ(BTK阻害剤)52を使用して、他のBCR媒介シグナル伝達中間体に対するその効果を評価した。BL2細胞は抗ヒトIgM BCR刺激に最も応答性であることが分かったので(図15B)、これらの細胞を、活性化BCRシグナル伝達に対するPCLX-001媒介効果を研究するためのモデルとして選択した。0.1又は1.0μMのPCLX-001で処理したBL2細胞は、抗IgM刺激BCR媒介チロシンリン酸化の濃度依存的な部分的(24時間で、図15B)及びほぼ完全な抑止(48時間で)を示す(図4A、図16で定量化)。チロシンリン酸化の全体的な減少は、同じ濃度のダサチニブ又はイブルチニブで処理したBL2細胞よりもPCLX-001で処理したBL2細胞で明白である。PCLX-001処理はまた、BL2細胞において全Lyn、活性化-リン酸化Lyn(Y396)のレベル、並びに全BTK及び活性化-リン酸化BTK(Y223)のレベルを低下させる、又は抑止する。これらの知見は、いくつかの他のリンパ腫細胞株で(図17)、並びにSrc、Lck、Hck、及びFynを含むいくつかの他のSFKについて、並びにBL2細胞内の活性化汎ホスホ-SFKについて(図4A、図18)確認された。ダサチニブ及びイブルチニブは、抗P-Lyn、抗P-SFK及び抗P-BTK抗体を使用して測定されるように、それぞれの標的を選択的に阻害した(図4A)。
PCLX-001処理はまた、BCRシグナル伝達増強タンパク質HGAL及びArf1 GTPアーゼを含む他のミリストイル化タンパク質のレベルの低下を媒介するが、ダサチニブ及びイブルチニブはこれらのタンパク質のいずれのレベルにも効果を及ぼさない(図4B、図4C)。注目すべきことに、HGALタンパク質の喪失はSFK及びArf1 GTPアーゼの喪失よりもはるかに速く、HGALタンパク質のレベルの喪失は、予想通り14、15リン酸化された活性型のSYKの減少に関連している(図4B)。ミリストイル化HGALとミリストイル化小型GTPアーゼArf1の両方のレベルもPCLX-001処理で低下するので、PCLX-001がミリストイル化タンパク質の分解を促進する能力はミリストイル化SFKに制限されない(図4)。
BCRシグナル伝達は、最終的に、ホスホ-ERK(P-ERK)、NFκB、c-Myc及びCREBを含むB細胞増殖及び生存に関与する転写因子に集中する4、5。よって、本発明者らは、BL2細胞において48時間、0.1及び1.0μMでこれらのエフェクターに対するPCLX-001、ダサチニブ及びイブルチニブの効果を評価した。注目すべきことに、これらの処理は、使用したいずれの濃度でも、48時間でPCLX-001については25%未満の細胞死並びにダサチニブ及びイブルチニブについては5%未満の細胞死をもたらした(図6A及び図6C)。BCRシグナル伝達の障害と一致して、PCLX-001は、濃度依存的にP-ERK、NFκB、c-Myc及びCREBのレベルを低下させ、ホスホ-ERK及びNFκBレベルでは統計学的に有意な低下(P<0.05)が検出された(図4C、図16で定量化)。また、これらの効果は、ダサチニブ又はイブルチニブで処理した細胞よりもPCLX-001処理細胞において顕著な傾向がある。Src、Lyn、汎P-SFK、ERK及びP-ERKのレベル低下を含むこれらの所見はまた、いくつかの他の悪性リンパ腫細胞株でも観察される(図17)。本発明者らはまた、PCLX-001処理がダサチニブ及びイブルチニブ処理よりもERストレスアポトーシス促進マーカーBipのレベルを上昇させて、カスパーゼ切断型PARP1によって測定されるアポトーシスの全体的増加をもたらすことを示している(図4C)。したがって、PCLX-001がタンパク質の分解を促進する能力は、ミリストイル化タンパク質、例えばSFK、HGAL及びArf1に対する効果に制限されず、BCRの下流の非ミリストイル化タンパク質、例えばホスホ-ERK及びNFκBシグナル伝達に対する効果も含む。
BCRシグナル伝達における早期イベントはまた、最後にサイトゾルのホスホリパーゼCγ及びカルシウム動員の活性化になる。本発明者らは、蛍光レシオメトリックFura-2 Ca++キレーターアッセイ53を使用して、48時間のBL2細胞のPCLX-001(1μM)処理が細胞内貯蔵からの抗IgM BCR誘導カルシウム動員を強力に阻害することを実証する(図19)。カルシウム放出ピークの強度を劇的に低下させることに加えて、ダサチニブ処理と同様に、PCLX-001はカルシウム放出プロセスを遅延させた。全体的に、PCLX-001は、同じ濃度で使用したダサチニブ及びイブルチニブよりもカルシウム動員を阻害した。注目すべきことに、48時間のPCLX-001によるBL2細胞の延長した処理は、カルシウム恒常性を妨害し、サイトゾルカルシウムの基礎レベル上昇をもたらし(図19)、もしかするとERカルシウム枯渇及びアポトーシスに寄与する。全体で、本発明者らのデータは、PCLX-001処理がBCR媒介生存促進シグナル伝達を有効に損ない、リンパ腫細胞においてアポトーシスを誘導することを示している(図5)。
PCLX-001、ダサチニブ及びイブルチニブは効力が異なり、下流BCRシグナル伝達に異なって影響を及ぼしたので、本発明者らは、次に、上記で試験したリンパ腫細胞株の全体的な生存率に対するこれらの薬物の効果を比較した。ダサチニブ及びイブルチニブ処理は48時間及び96時間の処理後にBL2(実線)及びIM9(点線)細胞に対して最小の効果を有するが、PCLX-001は、良性のIM9対照(点線)を殺傷するのに必要とされる濃度よりも実質的に低い濃度で悪性BL2細胞(実線)を殺傷する(図6A、図6B)。PCLX-001とダサチニブの両方に等しく感受性であるSU-DHL-10を除いて、他の全ての細胞株にわたって細胞生存率の同様の傾向が観察される(図6C、図6D)。重要なことに、0.1及び1.0μMの濃度のダサチニブ又はイブルチニブのいずれかと0.01、0.1及び1.0μMのPCLX-001の併用処理は生存率を更に低下させず、ダサチニブ及びイブルチニブ標的の上流でPCLX-001効果が媒介されることを示唆している(図20)。まとめると、PCLX-001は、ダサチニブ及びイブルチニブと比較して、48時間と96時間の両方で悪性リンパ腫細胞株に対する広範囲の効力を有し、良性の不死化IM9及びVDS B細胞対照の温存が得意であり、2つの臨床的に承認された薬物よりも優れたより高い選択性及びインビトロ治療濃度域を実証する。
NMT発現は血液がん細胞において変化する
なぜ血液がん細胞が他のがん細胞型よりもPCLX-001に易損性であるか依然として分からないが、本発明者らは、これが血液がん細胞におけるNMT1又はNMT2発現の変化に関連しているかもしれないと考えている。この可能性を実証するために、本発明者らは、Cancer Cell Line Encyclopedia54からの遺伝子発現データのインシリコ分析を実施した。本発明者らは、最初に、全ての細胞株において平均でNMT1転写産物数がNMT2転写産物数の約8倍(23)であることを見出し、第2に、他のがん細胞株型と比較して、多数の血液がん細胞株で、NMT2発現の不均一であるが有意な低下がある(図22A、図22B)ことを見出している。NMT1の発現は、乳がん及び白血病がん細胞株において発現のわずかであるが有意な低下を伴って、調査した1269種の細胞株にわたって比較的一定であるが、NMT2発現は様々ながんの中で、また所与のがん型内でも有意に変化する(図22C、図22D)。このデータはまた、NMT2の発現が、CNS、腎臓及び線維芽細胞起源のがん細胞株で高いが、血液がん、例えば白血病、リンパ腫及び骨髄腫においてNMT2発現の選択的且つ有意な低下があることを示している(図22D)。興味深いことに、リンパ腫、白血病及び他の細胞株で見られる低いNMT2発現レベルは、NMT1発現の増加によって相殺されなかった(図22E)。まとめると、本発明者らは、PCLX-001に対する感受性増加を説明し得る、血液がん細胞株におけるNMT2発現の低下を見出している。
PCLX-001処理はインビボで強力な抗腫瘍活性を有する
インビトロでのNMT阻害に対するリンパ腫細胞の感受性に基づいて、本発明者らは、PCLX-001が、2種のマウスリンパ腫細胞株由来皮下腫瘍異種移植片モデルにおいてインビボで腫瘍進行を軽減し得るかどうかを調査し、臨床的に承認された薬物参照としてドキソルビシンを使用した。DOHH2腫瘍を有するマウスでは、PCLX-001が、20mg/kg毎日又は50mg/kg隔日で与えられた場合に有意な殺腫瘍効果を実証する(P<0.001)(図7A)。50mg/kg毎日では、PCLX-001が7日目までに腫瘍サイズを最大70%減少させる(7日目の平均腫瘍サイズ=44.0±8.1mm3)が、これは有意な体重減少を伴い、5日目での処置中断を余儀なくさせた(図21A)。処置を再開すると、95%の平均腫瘍成長阻害(TGI)が16日目までに観察される。比較すると、ドキソルビシン処置は、57%のTGIを引き起こし、体重を最大8%減少させた(図21A)。重要なことに、PCLX-001による処置はいずれの用量でも死亡率を増加させない(図21B)。
BL2異種移植片を有するマウスでは、PCLX-001が、20mg/kg毎日の用量で部分的TGIを示し、9日目までに42.5%の腫瘍退縮に達する(P=0.016)(図7B)。更に、50又は60mg/kg 1日量のPCLX-001は、13日間投与した場合、それぞれ、9匹の生存マウスのうちの9匹及び7匹の生存マウスのうちの7匹で100%の腫瘍退縮を引き起こす。この異種移植片モデルのカプラン-マイヤー生存分析はまた、20~50mg/kg/日の間のPCLX-001用量が、未処置ビヒクル対照と比較して、BL2腫瘍保有マウスの生存期間を延長させることを示している(図21D、図21E)。対照的に、ドキソルビシンはBL2腫瘍成長に対する効果を有さず(図7B)、有害効果により11日目で処置が終了された(図21C)。処置の最後に、本発明者らは、BL2腫瘍溶解物におけるNMT活性21を測定し、これがPCLX-001濃度依存的に低下する(P=0.03;図7C)ことを見出し、PCLX-001がインビボで標的に作用することを示した。
細胞株由来異種移植片はヒト腫瘍の複雑性を欠くので、本発明者らは、そのがんがCHOP、RICE、髄腔内メトトレキサート/シタラビン、及びDHAP(Table 2(表2))を含む複数の化学療法に難治性である患者DLBCL3に由来するDLBCLリンパ腫を解剖及び増殖して、NODscidマウスで患者由来異種移植片モデルを確立した。処置をそれぞれ8匹のマウスの群で評価した。21日間の20mg/kg皮下1日量のPCLX-001処置は66%のTGIをもたらす(P<0.001;図7D)。次いで、この用量を、マウスが約15%の体重喪失から回復するのを可能にするための3日間の処置中断によって分けられる2つの9日間の期間にわたって、別のセットのマウスで50mg/kg毎日に増加させた(図21F)。このより高用量のレジメンに従って、PCLX-001投与は、13日目で7匹の生存マウスのうちの6匹に完全な腫瘍退縮をもたらし(図7D)、検出可能な腫瘍を有さない1匹のマウスが11日目で死亡した(図21G)。ビヒクル対照及びPCLX-001処置マウスから外科的に取り出した腫瘍により、アポトーシスの増加(切断型カスパーゼ-3の増加;図7F)及び細胞増殖の減少(Ki-67分析によって決定される;図7G)に付随した21日間のPCLX-001処置後の全体的な腫瘍サイズの濃度依存的減少(図7E)が確認される。よって、PCLX-001処置は、用量特異的にインビボで患者由来リンパ腫腫瘍におけるアポトーシス及び細胞周期停止を誘導する。ドキソルビシン処置の効果は、重篤な薬物毒性及び実験の最初の7日間以内の腫瘍保有マウスの大部分の死亡により評価することができなかった。
マウスは有効な用量レベルのPCLX-001に忍容性を示す
マウスは、具体的な終末器官毒性なしに有効な用量のPCLX-001に忍容性を示した。PCLX-001で処置した全てのマウスが最初の異種移植片試験を生き延びた(図7A)が、高用量レベルのPCLX-001で処置した一部のマウスは他の2つの試験で死亡した(図7B、図7D)。臨床病理学評価も解剖病理学評価も死因を特定しなかった。毒性を示唆する所見が2つの試験で見られた。BL2異種移植片を有し、短い処置休暇を用いて50mg/kg毎日でPCLX-001を与えられた3匹のマウスのうち、全てが投与期間の最後に正常より低い好中球数及びリンパ球数を有し、1匹は正常より低い単球数及び血小板数も有していた。DLBCLリンパ球異種移植片を有し、20、50、又は60mg/kg毎日でPCLX-001を与えられたマウスでは、健康障害の徴候(例えば、粗いみすぼらしい毛皮;立毛)が全ての用量レベルでほとんどのマウスにおいて認められ、脱水症状及び体重減少が50及び60mg/kg毎日で認められた(Table 3(表3)~Table 8(表11))。
DOHH-2 NODscid異種移植片(Charles River社)の毒物学要約
設計:以下の表に示される用量レベル及び投与レジメンを使用して、マウスの1つの群にビヒクルを与え、4つの群にPCLX-001を与えた。
マウスを毒性の臨床徴候及び体重に対する効果について毎日観察した。最後の投与後、3匹のマウス/群を安楽死させ、剖検した。安楽死の際に、血液試料を血液学分析用に、並びにAST及びCK活性とビリルビン及びクレアチニン濃度を測定するために採取した。剖検時に、大腿骨、両腎臓、肝臓、小腸、及び注射部位の試料の試料を採取し、固定した。これらは、病理学医Wei-feng Dong先生によって処理され、顕微鏡的に調べられた。
結果:PCLX-001に潜在的に関連する唯一の有害な所見は、50mg/kgのPCLX-001を与えられた群(5群及び6群)にあった。PCLX-001隔日では、RBC数が全3匹のマウスで正常より低く、網状赤血球数及び血小板数がこれらのうちの1匹で正常より高かった。PCLX-001毎日では、好中球数及び単球数が全3匹のマウスで正常より低く、単球数及び血小板数がこれらのうちの1匹で正常より低かった。これらのマウスのいずれの大腿骨髄にも病理組織学的所見はなかった。
これらのデータを以下の表に要約する。
投与期間の最後で、血清AST及びCK活性は、ビヒクル対照群を含む各群の1匹又は複数のマウスで正常より高かった。
補足議論/結論:マウスを拘束するため-例えば、腫瘍サイズを測定するため-に必要な取り扱いに起因するいくらかの筋損傷(打撲傷)又は肝損傷をマウスが被ることは珍しくはなく、このことが血清AST及び/又はCK活性の増加をもたらし得る。50mg/kgのPCLX-001を与えたマウスにおける血液学所見は比較的軽度であり、高用量レベルのPCLX-001を与えたラット及びイヌで見られた55造血毒性を反映し得る。
BL2 NODscid異種移植片(Jackson Lab社、JAX)の毒物学要約
設計:以下の表に示される用量レベル及び投与レジメンを使用して、マウスの1つの群にビヒクルを与え、3つの群にPCLX-001を与えた。
集めたデータはCharles River社の異種移植片試験と同じであった-臨床徴候、体重、腫瘍体積、血液学及び臨床化学(ALT、AST、BUN、クレアチニン、CK)用の3匹のマウス/群からの血液試料、並びに同じ3匹のマウスから回収し固定した組織試料。肝臓、腎臓、及び小腸も重さを量った。
結果:PCLX-001に潜在的に関連する有害所見は以下であった:
PCLX-001を与えた群のほとんどのマウスにおける健康障害の徴候(例えば、粗いみすぼらしい毛皮、立毛)。これらの徴候は、20mg/kg/日よりも50又は60mg/kg/日で早く発達した。
50又は60mg/kg/日のPCLX-001を与えた群における脱水症状及び体重減少。体重減少は、継続した投与にもかかわらず、約1週間後に停止したように見え、その後、マウスは体重が増え始めた。
議論/結論:PCLX-001に関連する臨床的病理学所見も解剖学的病理学所見もなかった。20mg/kg/日のPCLX-001ではより多い好中球数及びより少ないRBC数への傾向があったが、これは用量レベルに関連しないので、たまたまの可能性が高かった。1群(対照)及び4群の各々の1匹のマウスでより高い平均CK(並びにより少ない程度に、AST及びALT)活性が見られた。酵素活性のこの増加パターンは、PCLX-001に関連しない骨格筋傷害を強く示唆している。
DLBCL3患者由来NODscidマウス異種移植片の毒物学要約
設計:以下の表に示される用量レベル及び投与レジメンを使用して、マウスの1つの群にビヒクルを与え、2つの群にPCLX-001を与えた。
集めたデータは前の2つの試験と同じであった-臨床徴候、体重、腫瘍体積、血液学及び臨床化学(AST、CK、ビリルビン、クレアチニン)用の3匹のマウス/群からの血液試料、並びに同じ3匹のマウスから回収し固定した組織試料。
結果:PCLX-001に関連する毒性の臨床徴候も、臨床病理学パラメータに対する効果も、解剖学的病理学所見もなかった。
議論/結論:DoHH-2細胞を使用した試験において50mg/kg/日で血液学パラメータに対する効果があるように見えたので、有害効果がなかったことは幾分驚きである。なぜここに違いがあるのかは不明である。なぜマウスがこの試験では3週間50mg/kgの1日量に忍容性を示したが、全部の試験ではそうでなかったのかは不明である。NODscidクローン、固形試料の種類又は微生物叢を含む違いがこれを説明するかもしれない。
ラット及びイヌにおける用量範囲毒物学試験が実施され、報告されており55、これらの種での正式なGLP毒物学試験は、ヒト臨床試験のための規制当局の審査に向ける準備の完成に近づいている。
まとめると、本発明者らの結果は、PCLX-001処置が、他の臨床的に承認された処置に対して難治性の疾患の完全な退縮を含めて、インビボでリンパ腫の成長を阻害し、よって、がんにおける正真正銘のNMT阻害剤、例えばPCLX-001の使用を確立することを実証している。
議論
本明細書において、本発明者らは、血液がん細胞、特にB細胞リンパ腫が、新規な汎NMT阻害剤PCLX-001によるミリストイル化阻害に高度に感受性であるという発見を報告している。NMT阻害剤でがん細胞を殺傷する概念は提案されており、小規模で試験されているが39、43、56、57、58、59、本発明者らの知る限り、この研究が、数百のがん細胞株にわたるこのアプローチの有効性の幅の最初の調査となる。本発明者らは、がん細胞を、不死化細胞及び正常細胞を殺傷し、その増殖を阻害するのに必要とされる濃度よりも低い濃度のNMT阻害剤によって選択的に殺傷することができることを実証している(図1E~図1H、図10及び図11)。この治療適応症についてのベネフィット/リスクに基づく、より正常な細胞型での追加の細胞傷害性アッセイの非存在下では、一部の正常組織(例えば、PBMCを含む血球)が有効用量で影響を受けることは許容され、珍しくはない。これは、潜在的ながん処置としてのPCLX-001の開発を支持するのに重要な十分大きな治療濃度域を示す。Bリンパ腫細胞中の多数のミリストイル化タンパク質のミリストイル化を阻害する(図2A、図2B)ことに加えて、本発明者らは、PCLX-001が、これらの細胞における主なリンパ腫生存促進経路である4、5、6、7、8BCRシグナル伝達を阻害するのに特に効率的であることを実証している。更に、PCLX-001 BCRシグナル伝達阻害は、臨床的に承認されたSFK阻害剤ダサチニブ及びBTK阻害剤イブルチニブの阻害よりも優れている。このことが、なぜPCLX-001がまたインビトロで悪性リンパ腫細胞株に対する広範囲の効力を有するのかを部分的に説明し得る。本発明者らはまた、PCLX-001がSFK、HGAL及びArf1のミリストイル化を阻害し、それらの分解速度を増加させるが、予想外にも、P-ERK、NFκB、c-Myc、CREB及びもしかするとBTKさえも含む非ミリストイル化生存促進BCRメディエーターの分解も促進することを示している(図4A)。PCLX-001処理細胞は、細胞傷害性になっている濃度でも依然として少なくとも75%生存のままであった。より低い下流シグナル伝達タンパク質のレベルが瀕死の細胞での遺伝子転写の減少又はタンパク質分解の増加に対応するかどうかは不明である。更に、PCLX-001はまた、BCR媒介カルシウム動員を減少させて、B細胞リンパ腫細胞で選択的にアポトーシスを引き起こす(図5)。ミリストイル化の喪失をカルシウム恒常性の変化及びBCR媒介カルシウム放出の阻害に結び付ける機序は不明である。
ERストレス増加は、別のNMT阻害剤で処理した細胞で以前示されたアポトーシス促進現象である59。本発明者らは、N末端グリシン残基であれリジン残基の近くであれ36、37、Arf1 GTPアーゼのミリストイル化の阻害が、その膜標的化を妨害し、小胞輸送を損ない、それによって、慢性/持続性又は抗原依存性BCRシグナル伝達に悪影響を及ぼすと仮定している。ERでの適切なArf1機能性の喪失はまた、PCLX-001処理時のERストレスマーカーBip60の増加を部分的に説明し得る(図4C)。
PCLX-001処理細胞中の脂質ラフト局在化ミリストイル化Lyn(及び他のSFK)及びHGALタンパク質の喪失は、適切なBCRシグナル伝達におけるこれらの膜ドメインの重要性を更に強調する9、10、12、13、14、15(図5)。更に、MG132処理がSFKレベルのほぼ完全な回復をもたらしたので(図3B)、SFKのPCLX-001媒介ミリストイル化阻害は、それらの膜標的化を抑止するだけでなく、ユビキチン-プロテアソーム系を介してそれらの分解も促進する。E3ユビキチンリガーゼのCasitas B系統リンパ腫(Cbl)ファミリーによるタンパク質チロシンキナーゼのユビキチン化及び分解61、62はB細胞におけるシグナル減衰の正常な部分であるが、N末端グリシン残基もタンパク質の不安定因子であることが近年示されており、高度に選択的な新規なクラスのN-デグロン63となっている。実際、それらの報告では、Timmsら(2019)が、N末端グリシン残基を露出している、Lyn、Fyn及びYesを含む非ミリストイル化タンパク質が、N末端グリシン特異的Cullin RINGリガーゼ2(CRL2)-ZYG11B/ZER1 N-デグロン-ユビキチン-プロテアソーム系63によって選択的に分解されることを実証している。任意の他のアミノ酸をグリシンで置換すると、得られたタンパク質が実質的に安定化したので63、この系はN末端グリシンを有するタンパク質に高度に選択的である。したがって、この新たに記載されたN-デグロン系63、64は、PCLX-001で処理した悪性リンパ腫細胞株に見られる非ミリストイル化タンパク質、例えばSFK、HGAL及びArf1のより速い分解に寄与し得る(図4)。人工N末端アラニン(Ala)残基はグリシン(Gly)残基特異的CRL2-ZYG11B又はCRL2-ZER1 N-デグロンによる分解の促進を妨げるので、これはまた、なぜミリストイル化可能でないGly2Ala-Srcチロシンキナーゼ変異体及びGly2Ala-HGALがそれらのミリストイル化対応物タンパク質よりも安定である65、66と以前示されたかを部分的に説明するかもしれない。よって、本発明者らは、SFK(又はHGAL及びArf1を含む他のタンパク質)のミリストイル化の阻害が、ユビキチン-プロテアソーム系を介して、膜標的化の喪失だけでなく、それらのタンパク質のレベル、よって機能の喪失ももたらし(図3B)、それによって、BCRシグナルの伝播を弱める(図5)、B細胞リンパ腫におけるPCLX-001の作用様式のモデルを提案する。興味深いことに、NMT1は、Lyn、Fyn及びLck SFKによってリン酸化されることが分かり、リン酸化可能でないY100F-NMT1変異体はその触媒活性の98%を喪失したので67、NMT1のそのリン酸化がミリストイル化活性に必要であった。したがって、SFKのPCLX-001媒介喪失はBリンパ腫細胞におけるNMT1活性を更に低下させ、それによって、生存促進シグナルの喪失及びアポトーシスを増強する。
ミリストイル化SFK、HGAL及びArf1タンパク質に応じた効果に加えて、数百の既知のミリストイル化タンパク質が存在することを考えると、リンパ腫細胞生存率に対するPCLX-001媒介効果は、他のミリストイル化タンパク質の機能性の喪失を介しても起こる可能性が高い。本発明者らはなぜ血液がん細胞が他のがん細胞型よりもPCLX-001に易損性であるか依然として分からないが、これはおそらくNMT1又はNMT2のいずれかの変化した発現に関連すると考えている。CCLE NMT1又はNMT2発現データ(図22)の分析は、一部のがんで過剰発現されること(別名、現在の定説)に加えて、NMT発現レベルが、その多くが血液学的起源のものである他のがんで実際に低いことを明らかにしている。まとめると、これらの知見は、血液がん細胞中のNMT酵素標的の数の減少とこれらの細胞のPCLX-001に対する感受性との間の考えられるつながりを示唆している。変化したNMTレベルが、単独で又はおそらくは血液がん細胞の個々のミリストイル化プロテオームのバリエーション、及び生存のための様々なミリストイル化タンパク質に対するこれらの細胞の細胞特異的依存と組み合わせて血液がん細胞の感受性に影響を及ぼすかどうかは不明である。これらの可能性は、現在、本発明者らの実験室で更なる調査中であるが、リンパ腫細胞生存にとってのNMT活性の潜在的な重要性は、NMT1がリンパ腫細胞株における最も重要な生存因子にランク付けされたゲノムワイドCas9-Crisprスクリーニングで確認された68。更に、本発明者らのがん細胞株スクリーニング結果は、PCLX-001の白血病及び骨髄腫、並びにある特定の固形腫瘍、例えば乳がん及び肺がんの処置への広範な適用の可能性を示唆している。
PCLX-001は20mpkの耐用量でわずかにしか有効でない[約66%の腫瘍減少(図7)]が、本発明者らは、これがインビボで腫瘍細胞成長を有効に阻害し、CHOP、リツキシマブ及び他の救済療法に対して難治性のリンパ腫での完全奏効を含めて、50mpk有効用量で3つのヒトリンパ腫異種移植片モデルにおいて疾患の大きな又は完全な退縮をもたらすことを示している。
結論
本発明者らは、低分子NMT阻害剤であるPCLX-001が、インビトロで広範囲の培養がん細胞の成長を強力且つ選択的に阻害し、細胞における特に明白な効果が、生存促進シグナルの主な供給源であるBCR媒介シグナル伝達イベントの喪失により、B細胞リンパ腫を含む血液がんから得られることを確立した4、5、6、7、8。インビボでのB細胞リンパ腫の前臨床モデルにおけるPCLX-001の著しい有効性と合わせて、これらの所見は、B細胞リンパ腫及びおそらくは他のがんのための療法としてのPCLX-001及び関連するNMT阻害剤の進行中の開発及び潜在的な臨床試験を支持する。
方法
ウサギ抗PARP-1(1:5000、アフィニティー精製ポリクローナル番号EU2005、ロット1)、抗GAPDH(1:5000、アフィニティー精製ポリクローナル、番号EU1000、ロット1)及び抗GFP(1:10000、アフィニティー精製、番号EU1、ロットB3-1)は実験室在庫からのものであり、Eusera社(www.eusera.com)を通して入手可能である。本発明者らのアフィニティー精製ウサギ抗GFPはまたAbcam社(マサチューセッツ州ケンブリッジ)からAb6556として入手可能である。ウサギモノクローナル抗Src(1:2000、クローン32G6、番号2123、ロット5)、Lyn(1:2000、クローンC13F9、番号2796、ロット4)、P-Lyn Y507(1:5000、ポリクローナル、番号2731、ロット5)、Fyn(1:2000、ポリクローナル、番号4023、ロット3)、Lck(1:2000、クローンD88、番号2984、ロット4)、Hck(1:2000、クローンE1I7F、番号14643、ロット1)、c-Myc(1:10000、クローンD3N8F、番号13987、ロット5)、ERK(1:2000、クローン4695、番号9102、ロット27)、P-ERK(1:5000、クローン3510、番号9101、ロット30)、P-SFK(1:10000、クローンD49G4、番号6943、ロット4)、BTK(1:2000、クローンD3H5、番号8547、ロット13)、P-BTK Y223(1:5000、クローンD9T6H、番号87141、ロット1)、SYK(1:2000、クローンD3Z1E、番号13198、ロット5)、P-SYK Y525/526(1:5000、クローンC87C1、ロット18)及び抗切断型カスパーゼ-3(1:1000、クローン5A1E、番号9664、ロット20)はCell Signaling Technologies社から購入した。ウサギモノクローナル抗BIP(1:2000、ポリクローナル、ADI-SPA-826)はEnzo Life Sciences社から購入した。ウサギ抗Mcl-1(1:2000、クローンY37、番号32087、ロットGR119342-5)、NFκB(1:2000、クローンE379、番号32536、ロットGR3199609-2)、P-Lyn Y396(1:5000、ポリクローナル、番号226778、ロットGR3195652-5)はAbcam社(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から購入した。マウスモノクローナル抗p-Tyr(1:10000、PY99、sc-7020、ロットI2118)抗体はSanta Cruz Biotechnology社から購入した。マウス抗ヒトHGALはeBioscience社(1:10000、クローン1H1-A7、番号14-9758-82、ロットE24839-101)から購入した。ウサギポリクローナル抗ARF-1抗体(1:2000、ポリクローナル、番号PA1-127、ロットTK279638)はThermoFisher Scientific社から購入した。増強化学発光(ECL)Primeウエスタンブロッティング検出キットはGE Healthcare社から購入した。Clarity ECLウエスタンブロッティング基質はBio-Rad社製であった。ヤギ抗ヒトIgM(μ鎖)(70-8028-M002、ロットS728028002001)はTonbo biosciences社から購入した。ヤギF(ab')2抗ヒトIgMはBioRad社(STAR146、ロット152684)から購入した。Sigma-Aldrich社製のウサギ抗ヒトSrc抗体(ポリクローナル、Ab-529、ロット871521168)を免疫沈降に使用した。ドキソルビシン塩酸塩はPfizer社製であった。ダサチニブ及びイブルチニブはApexBio Technology社製であった。PCLX-001は、David Gray博士及びPaul Wyatt博士(英国スコットランドのダンディー大学)によってDDD86481として特定された38、69。特に指示しない限り、全ての化学物質は入手可能な最高純度のものとし、Sigma-Aldrich社から購入した。
細胞培養
IM9、Ramos、SU-DHL-10及びCOS-7はATCCから購入した。BL2、DOHH2、WSU-DLCL2及びBJABはDSMZ社(ドイツ)から購入した。Ramos及びBL2はアルバータ大学のJim Stone博士及びRobert Ingham博士の親切な贈り物であった。VDS単離はTosato Gら(参考文献47)に記載されていた。VDS、BJAB及びSU-DHL-10はブリティッシュコロンビア大学のMichael Gold博士の親切な贈り物であった。HUVEC細胞(最大4つの臍帯からプールした)はPromoCell社から購入した。全ての細胞株の素性はThe Genetic Analysis Facility, The Centre for Applied Genomics, The Hospital for Sick Children, Peter Gilgan Centre for Research and Learning、686 Bay St., Toronto, ON, Canada M5G 0A4(www.tcag.ca)でのSTRプロファイリングによって確認した。細胞株を、MycoAlert Plus Mycoplasma Detection Kit(米国メイン州のLonza)を使用してマイコプラズマ汚染について定期的に試験した。全ての細胞株はマイコプラズマ汚染について陰性であると試験された。全ての細胞株を、5~10%のウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、及び2mMのL-グルタミンを補充したRPMI又はDMEM培地で維持した。HUVEC細胞(最大4つの臍帯からプールした)をPromoCell社から購入し、インスリン様増殖因子(Long R3 IGF)及び血管内皮増殖因子(VEGF)を含む内皮細胞増殖培地で培養し、7未満の継代数で維持した。全ての細胞株を加湿インキュベーター中37℃及び5%のCO2で維持し、汚染マイコプラズマの存在について常にチェックした。細胞株名、型及び組織学については補足表3を参照されたい。トランスフェクションについては、製造業者の説明書に従って、X-tremeGENE9 DNA(Roche社)トランスフェクション試薬を使用して、接着細胞COS-7をトランスフェクトした。BCR活性化実験については、細胞を25μg/mlのヤギF(ab')2抗ヒトIgM(又は同一のBCR活性化特性を示す抗ヒトIgM(μ鎖))と2分間インキュベートし、PBS中1mMのバナジン酸(Bio Basic社)溶液を添加することによって、活性化を停止した。
細胞の溶解
細胞を収穫し、冷PBS中で洗浄し、4℃で15分間揺動することによって、0.1%のSDS-RIPA緩衝液(1×完全プロテアーゼ阻害剤を含む、50mMのトリス-HCl pH8.0、150mMのNaCl、1%のIgepal CA-630、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、2mMのMgCl2、2mMのEDTA;(Roche Diagnostics社))に溶解した。溶解物を4℃で10分間、16000gで遠心分離し、核除去後上清(post-nuclear supernatant)を回収した。
免疫ブロット、免疫沈降及びミリスチン酸アルキンによる細胞の代謝標識
タンパク質濃度を、製造業者の説明書に従ってBCAアッセイ(Thermo Scientific社)によって決定した。5×ローディング緩衝液を添加することによって試料を電気泳動用に調製し、5分間沸騰させた。特に明言しない場合、1レーン当たり30μgの総タンパク質を12.5%のアクリルアミドゲルにロードする。電気泳動後、ゲルを0.2μMのニトロセルロース膜(Bio-Rad社)に転写し、その後、材料の節に記載されるように抗体でプローブする。ECL Primeウエスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare社、米国ペンシルバニア州)について提供される手順に従って、ペルオキシダーゼ活性を明らかにする。
免疫沈降をYapらに以前記載されたように47実施した。手短に言えば、細胞を冷PBSで洗浄し、収穫し、4℃で15分間揺動することによって、冷EDTAフリーRIPA緩衝液(0.1%のSDS、50mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、1%のIgepal CA-630、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、2mMのMgCl2、EDTAフリー完全プロテアーゼ阻害剤(Roche社))で溶解した。細胞溶解物を4℃で10分間、16000gで遠心分離し、核除去後上清を回収する。EGFP融合タンパク質又は内因性c-Src非受容体チロシンキナーゼ(Src)を、4℃で一晩揺動することによって、アフィニティー精製したヤギ抗GFP(www.eusera.com)又はウサギ抗Src抗体(Sigma社、Ab-529、ロット871521168)によりおよそ1mgのタンパク質溶解物から免疫沈降させた。純粋なプロテオームプロテインG磁気ビーズ(Millipore社)を免疫沈降したタンパク質と2時間インキュベートし、0.1%のSDS-RIPAで大規模に洗浄し、50mMのHEPES、pH7.4中1%のSDSに再懸濁し、80℃で15分間加熱した。免疫沈降したタンパク質を含有する上清をウエスタンブロット分析又はクリックケミストリーのために回収した。
IM9、BL2及びCOS-7細胞をPCLX-001で1時間処理し、次いで、各時点で収穫30分前に25μMのω-アルキニルミリスチン酸で標識した。得られた細胞溶解物からのタンパク質を、クリックケミストリーを使用して100μMのアジド-ビオチンと反応させ、Yapら47及びPerinpanayagamら33に記載されるように処理した。
PCLX-001、ダサチニブ及びイブルチニブで処理した細胞の生存率
IM9、VDS、BL2、Ramos、BJAB、DOHH2、WSU-DLCL2、及びSU-DHL-10細胞(1×105細胞)を4mlの培地/ウェルにおいて6ウェルプレート中で増殖させ、増加する濃度のPCLX-001、ダサチニブ及びイブルチニブと最大96時間インキュベートした。PCLX-001で処理した細胞の生存率を、CellTiter-Blue Cell Viability Assay(Promega社)によって、又はCytation 5プレートリーダー(Biotek社、バーモント州ウィヌースキー)上で製造業者の説明書に従ってカルセインAM染色(Life Technologies社)を用いて測定した。カルセインアッセイは、細胞生存率比(生細胞/全細胞及び%生存率として表される)を測定することからなる。細胞をNuclear-ID Blue/Red細胞生存率試薬(GFP認証、Enzo Life Sciences社)で染色して全細胞及び死細胞を特定し、生細胞を製造業者の説明書に従ってカルセインAM(Life Technologies社)で染色した。細胞計数を、Cytation 5 Cell Imaging Multi-Mode Reader(Biotek Instruments社)を使用して実施し、Biotek Gen5データ分析ソフトウェア(バージョン2.09)によって分析した。
細胞生存率を、Horizon社(ミズーリ州セントルイス)のプラットフォームを使用しても測定した。細胞を、500細胞/ウェルで、黒色384ウェル組織培養処理プレート中増殖培地に播種した。細胞を、遠心分離を介してアッセイプレート中で平衡化し、37℃のインキュベーターに処理24時間前に入れる。処理時に、アッセイプレート(処理を受けていない)のセットを回収し、ATPLite(著作権)(Perkin Elmer社、マサチューセッツ州ウォルサム)を添加することによってATPレベルを測定する。Envisionプレートリーダーで超高感度発光を使用して、これらのTゼロ(T0)プレートを読み取る。アッセイプレートを化合物と96時間インキュベートし(分析装置に記載される場合を除く)、次いで、ATPLite(著作権)を使用して分析する。全てのデータ点を、自動プロセスを介して回収し、品質管理を受けさせ、Horizon社のChalice Analyzerプロプライエタリソフトウェア(1.5)を使用して分析する。アッセイプレートを、以下の品質管理基準に合格したら許容した:相対的生の値が実験全体を通して一貫性があり、Z値スコアが0.6より大きく、未処理/ビヒクル対照がプレート上で一貫して挙動した。Horizonは、細胞成長の尺度として成長阻害(GI)を利用する。GIパーセンテージは以下の試験及び式を適用することによって計算される:
(式中、Tは試験品のシグナル測定であり、Vは未処理/ビヒクル処理対照測定であり、V0は時間ゼロでの未処理/ビヒクル対照測定(口語的にT0プレートとも呼ばれる)である)。この式は、米国国立がん研究所のNCI-60ハイスループットスクリーニングで使用される成長阻害計算から誘導される。したがって、100%GIは完全成長阻害(細胞分裂停止)を表し、200%GIは完全細胞死を表す。
Oncolines(Netherlands Translational Research Center B.V.社)プラットフォームを使用しても細胞生存率を測定した。細胞を対応するATCC推奨培地に希釈し、使用する細胞株に応じて、45μl培地中1ウェル当たり200~6400細胞の密度で384ウェルプレートに分注した。各使用細胞株について、最適な細胞密度を使用する。プレートの周縁部をリン酸緩衝生理食塩水で満たした。蒔いた細胞を37℃、5%のCO2の加湿雰囲気中でインキュベートした。24時間後、5μLの化合物希釈物を添加し、プレートを更にインキュベートした。t=最後で、24μLのATPlite 1Step(商標)(PerkinElmer社)溶液を各ウェルに添加し、その後、2分間振盪した。暗所中で10分間のインキュベーション後、発光をEnvisionマルチモードリーダー(PerkinElmer社)で記録した。
最後に、ChemPartner社のプラットフォーム(中国上海)を使用して、第3の幅のPCLX-001効率スクリーニング(図9)を実施した。131種の細胞株を、黒色壁、組織培養処理96ウェルプレート(Corning社製、カタログ3904)に播種し、ATCC配合に従って培養した。Cell Titer Blue Viability Assay(Promega社製、カタログG8081、ロット番号0000190181)を使用して、72時間後及び144時間後の細胞生存率を測定し、Enspire(PerkinElmer社)を用いて560/590nmでの蛍光を記録した。XLfitソフトウェア(5.5)を使用してEC50を計算した。
細胞増殖アッセイ
より高い精度のためにデジタル位相コントラスト写真変換後に画像化及び計数することによって細胞の増殖を測定した。2×105細胞を4mlの培養培地中6ウェルプレートで培養し、増加する濃度のPCLX-001とインキュベートした。ホモジナイゼーション後、50μlの培養物を高結合クリアガラス底1/2面積96ウェルプレート(Greiner bio-one社)に移した。Cytation 5 Cell Imaging Multi-Mode Reader(Biotek Instruments社)を使用して全ウェル面積を明視野で画像化し(12ステッチ写真)、単一デジタル位相コントラスト写真に変換した。全細胞計数を最大4日間毎日実施した(Biotek Gen5 Data Analysisソフトウェア2.09)。
細胞内カルシウム測定:
適合させた、以前記載されたプロトコル53を使用して、PTI蛍光光度計(Photon Technology International社)を使用して、1μMのPCLX-001、ダサチニブ又はイブルチニブと24又は48時間インキュベートしたBL2リンパ腫細胞において、サイトゾル遊離カルシウム濃度測定を実施した。10.106細胞を、8μMのFura-2 AM(Molecular Probes社)及び1mMのCaCl2を含む新鮮な培地に30分間懸濁し、洗浄し、カルシウムを補充した培地に更に15分間再懸濁する。次いで、細胞を洗浄し、温クレブスリンゲル液(10mMのHEPES pH7.0、140mMのNaCl、4mMのKCl、1mMのMgCl2及び10mMのグルコース)に再懸濁し、四辺形透明キュベットに入れる。活性化前に、遊離細胞質カルシウムを0.5mMのEGTAで1分間キレートした。10μg/mlヤギF(ab')2抗ヒトIgM(BioRad社)を添加することによって、BCR受容体依存性カルシウム放出を活性化する。続いて、タプシガルジン(300nM)を使用して小胞体からのBCR非依存性及び不可逆性Ca2+放出を示した。Ca2+濃度は以下の式で計算した:
[Ca++]=Kd(R-Rmin)/(Rmax-R)
(式中、R=340nmでの蛍光強度÷380nmでの蛍光強度、Rmax=イオノマイシン(7.5μM)及びCaCl2(12mM)添加後に測定した蛍光、Rmin=EGTA(32mM)、トリス(24mM)及びTriton(商標)X-100(0.4%)後に測定した蛍光、並びにKd=224(Fura-2 AMについては37Cで))。
示される結果は、複数連の実験(PCLX-001インキュベーションについてはn=6、ダサチニブ及びイブルチニブについてはn=3)を表す。
PBMC及びリンパ球の単離並びに細胞生存率アッセイ
2人の健康なヒト研究ボランティアを、20ml採血からのPBMC及びリンパ球単離のために募集した(患者番号1:男性、34歳、診断なし、処置なし;患者番号2:男性、54歳、診断なし、処置なし)。試験プロトコルは、アルバータがん委員会の健康研究倫理委員会によって承認された(試験タイトル:新鮮な血液及び造血細胞における脂肪酸アシルトランスフェラーゼ(FAT)の評価;HREBA.CC-17-0624)。
単核細胞はFicoll-Paque(GE Healthcare社、米国ペンシルバニア州)を使用して密度勾配遠心分離によって末梢血から単離した。リンパ球は、製造業者の説明書によりEasySep(商標)リンパ球単離キット(Stemcell Technologies社、カナダブリティッシュコロンビア州バンクーバー)を使用して全血試料から単離した。PBMC及びリンパ球を、10%のFBS、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI培地で培養した。細胞を2×106細胞/mlの濃度で蒔いた。0.001~10μMのPCLX-001と96時間インキュベートした後、CellTiter-Fluor(商標)生存率アッセイ(Promega社、米国ウィスコンシン州マディソン)を使用することによって、細胞生存率を測定した。
免疫組織化学
COS-7細胞を培養し、ポリ-d-リジンコーティング35mmガラス底皿(MatTek社、米国マサチューセッツ州アシュランド)に蒔き、供給業者によって推奨されるようにX-tremeGENE9 DNA(Roche社)を使用して示される蛍光タグ付きタンパク質で一過的にトランスフェクトした。Zeiss Observer Z1顕微鏡及びAxiovisionソフトウェア(Axiovision社、バージョン4.8)を使用して画像を取得した。B細胞リンパ腫をホルマリンに固定し、パラフィンに包埋し、ミクロトームで5mm切片に切断し、Superfrost Plusスライド(Fisher Scientific社)に取り付け、キシレンで脱パラフィンし(3回それぞれ10分間)、段階的系列のエタノール(100%、80%及び50%)中で脱水し、冷流水中で10分間洗浄した。
抗原賦活化のために、スライドをスライドホルダーに搭載し、Nordicware社電子レンジ圧力鍋に入れた。800mlの10mMのクエン酸緩衝液pH6.0を添加し、圧力鍋をしっかり閉めて、高温で20分間電子レンジにかけた。スライドを冷流水中で10分間洗浄し、メタノール中3%のH2O2に10分間浸漬し、温流水で10分間及びPBSで3分間洗浄した。過剰なPBSを除去し、PAPペン(Sigma-Aldrich社、ミズーリ州セントルイス)を用いて試料の周りに疎水性円を描いた。抗切断型カスパーゼ3又は抗Ki-67をDako抗体希釈緩衝液(1:50、スライド1つ当たり約400μml)で希釈し、湿度室中4℃で一晩インキュベートした。スライドをPBS中で2回それぞれ5分間洗浄し、約4滴のEnVision+System-HRP標識ポリマー(抗ウサギ)(Dako、Agilent Technologies社、カリフォルニア州サンタクララ)を各スライドに添加し、室温で30分間インキュベートした。スライドを再度PBS中で2回それぞれ5分間洗浄し、4滴の液体ジアミノベンジジン+基質色素原(製造業者の説明書に従って調製した;Dako、Agilent Technologies社)を添加した。スライドを5分間展開し、冷流水下で10分間すすいだ。次いで、スライドを1%のCuSO4に5分間浸漬し、冷流水で短時間すすぎ、ヘマトキシリンで60秒間対比染色し、冷流水ですすいだ。次に、スライドを炭酸リチウムに3回浸漬し、すすぎ、段階的系列のエタノール中で脱水した。カバーガラスを添加し、スライドをNikon Eclipse 80i顕微鏡で調べ、QImagingカメラで撮影した。
倫理審査による承認
本発明者らは、ヒト、動物試験及び研究のための全ての関連する倫理規制を遵守している。この試験の全ての関連する実験が適切な倫理的承認を受けている。試験プロトコルを承認した委員会及び/又は機関の名称を以下に記載する。
Charles River Discovery Services North Carolina(CR Discovery Services)は、拘束、飼育、外科処置、給餌及び体液調整、並びに獣医医療に関して実験動物の管理と使用に関する指針を遵守している。CR Discovery Servicesでの動物の管理と使用のプログラムは、実験動物の管理と使用についての許容される基準の遵守を保証する、国際実験動物管理公認協会によって認可されている。
The Jackson Laboratory社-サクラメント施設、OLAWによって保証され、AAALACによって認定された組織のIn Vivo Servicesが、DOHH2マウス異種移植片試験を行った。この試験は、IACUC認証プロトコルに従って、実験動物の管理と使用に関する指針(全米研究評議会、2011)を遵守して実施された。
DLBCLリンパ球を使用した試験については、全ての手順がシンガポール総合病院(SGH)の治験審査委員会の指針となる倫理原則に従って承認され、行われた。特定の研究目的のみのためのこれらの試料の使用について、書面によるインフォームドコンセントを得た。実験プロトコル(番号130812)は、生物資源センター(BRC)、A* STARの動物実験委員会(IACUC)によって承認された。ヒト試料を伴う全ての手順は、Sing Health中央治験審査員会によって承認され、その倫理原則に従って実施された。特定の研究目的のみのためのこれらの試料の使用について、書面によるインフォームドコンセントを得た。
マウスにおける異種移植片試験
Charles River社の施設でのDOHH2異種移植片試験:雌重症複合免疫不全マウス(Fox Chase SCID(登録商標)、C.B-17/Icr-Prkdcscid/IcrIcoCrl、Charles River社)は、試験の1日目で9週齢であり、17.8~22.9gのBW範囲を有していた。動物に自由に水(逆浸透、1ppm Cl)、並びに18.0%の粗タンパク質、5.0%の粗脂肪、及び5.0%の粗繊維からなるNIH 31修正及び照射Lab Diet(登録商標)を与えた。試験の1日目に、動物に、試験の投与期間中の脱水症状を低減するための努力の一環として、補水液を自由に与えた。補水液は、滅菌水中0.45%のNaCl:2.5%のグルコース:及び0.075%のKClからなっていた。マウスを、20~22℃(68~72°F)及び湿度40~60%で、12時間光サイクルで静的マイクロアイソレーター中照射Enrich-o'cobs(商標)床に収容した。
Jackson Laboratory社でのBL2異種移植片試験:百五(105)匹の6週齢雌NOD.CB17-Prkdc scid/J(NOD scid、品番001303)マウスをカリフォルニア州サクラメントのインビボ研究実験室に移した。マウスを個体識別のために耳切りし、1ケージ当たり5匹のマウスの密度でHEPA濾過空気を含む個別に且つ積極的に換気したポリスルホンケージに収容した。最初に、ケージを2週間毎に交換した。動物室を、制御された12時間明/暗サイクル(午前6時~午後6時明)で、完全に人工蛍光照明により照らした。動物室の標準温度及び相対湿度範囲はそれぞれ20~26℃及び30~70%であった。動物室を1時間当たり最大15回の空気交換を有するよう設定した。pH2.5~3.0に酸性化した、濾過水道水、及び標準的な実験室飼料を自由に与えた。
BL2又はDOHH-2細胞(1×107)及び同意した患者DLBCL3の胸水から単離した新生物DLBCLリンパ球を含有する細胞懸濁液を、Jackson Laboratory社の施設、Charles River社の施設、及びシンガポール総合病院の施設でそれぞれ免疫不全、雌、NODsicdマウスの側腹部に皮下注射した。腫瘍が形成した後、マウスをおよそ10匹の群に分け、各図に示されるように、ビヒクル毎日、10~60mg/kgのPCLX-001毎日、又は3mg/kgのドキソルビシン毎週70の皮下注射を与えた。投与量は10mL/kgとした。2週間~3週間の投与期間の最後に、マウスを安楽死させ、3匹/群を剖検した。死亡した、又は人道的な理由で早期に安楽死させたマウスも剖検した。生存中、マウスを定期的に監視し、毎日体重を量り、隔日でデジタルノギス(株式会社ミツトヨ)により腫瘍を測定した。腫瘍体積を長さ(mm)×幅(mm)2/2として計算し;長さ及び幅はそれぞれ最長寸法及び最短寸法とした。安楽死時、投与期間の最後で、AST及びCK活性並びにビリルビン及びクレアチニン濃度(+Jackson Laboratory社の試験におけるALT活性及びCUN濃度)を含む血液学分析並びに臨床化学分析のために、血液試料を採取した。剖検時に、大腿骨、両腎臓、肝臓、小腸、及び注射部位の試料を回収し、固定した。その後、これらを処理し、組織病理学的所見のために光学顕微鏡法によって調べた。同様に剖検時に、腫瘍を取り出し、2つに分けた。一方の片を10%の中性緩衝ホルマリンに室温で24時間固定し、パラフィンに包埋した;他方をRNA及びタンパク質分析のために瞬間凍結した。全ての異種移植片実験についての腫瘍成長阻害(TGI)を以下の式に従って計算した:
TGI(%)=(V対照-V処置)/(V対照-V初期)*100。
患者由来異種移植片マウス試験:
i)患者データ
患者DLBCL3は、完全寛解をもたらしたシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロン(CHOP)により43歳でI期びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のために処置された58歳男性であった(補足表2)。その後、患者DLBCL3は後に骨髄及び軟膜の再発性疾患並びに胸水を示してシンガポール総合病院に10年間通院した。彼は2クールのリツキシマブ、イホスファミド、カルボプラチン、及びエトポシド並びに髄腔内メトトレキサート/シタラビン、引き続いて4クールのデキサメタゾン、シタラビン、及びシスプラチン並びに髄腔内メトトレキサートを受けた。彼の組織をこの時にPDX増殖のために収穫した。彼の疾患は進行し続け、彼は1年後に死亡した。
ii)病理学
胸水の細胞学的検査は、小胞状クロマチン及び目立つ核小体を有する大型細胞を特徴とする密着しないリンパ腫集団を示した。腫瘍性細胞は汎Bマーカー(PAX5、CD20、CD22、CD79a)を発現し、CD5の異常な発現、bcl2の強力な発現、及び高い増殖率(70~80%)を有した。腫瘍性リンパ球は、非胚中心表現型(CD10については陰性、bcl6、MUM1、FOXP1については陽性)を有していたが、c-Mycについての染色は低かった(20%)。間期蛍光インサイチューハイブリダイゼーションは、BCL2の獲得並びにBCL6及びIGHの再配列を示し;C-MYCについては通常のパターンが見られた。RNAインサイチューハイブリダイゼーションは、NMT2発現の欠如を示した。
iii)異種移植片構築及び処置
胸水を冷滅菌20%のRPMI1640培地に回収し、腫瘍性細胞をFicoll-Paque Plus(GE Healthcare社)で単離し、20%のウシ胎児血清(Life Technologies社、カリフォルニア州カールスバッド)を含むRPMI160培地(Life Technologies社)に再懸濁した。腫瘍試料の代表的な部分を10%の中性緩衝ホルマリンに固定し;他の部分を異種移植に使用した。細胞懸濁液を4~6週齢NODscidマウスの側腹部に皮下注射した。腫瘍が最大1000mm3に達したら、マウスを屠殺し、腫瘍を収穫し、剖検を実施した。異種移植腫瘍を直ちに凍結し、ホルマリンに固定し、90%のウシ胎児血清、及び10%のジメチルスルホキシド中に保存したか、又はRPMI1640培地に入れた。このプロセスを繰り返してその後の世代の患者由来異種移植片モデル(P2、P3、P4、...)を作製した。起源の腫瘍の形態及び主な特徴の維持を評価するために、患者腫瘍試料及び全ての確立した患者由来異種移植片モデルの異種移植片からのホルマリン固定パラフィン包埋組織切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。また、これらの切片を免疫染色して様々なマーカーの発現を測定した。臨床病理学者が全てのスライドを調査した。今回の試験のために、腫瘍断片(約50mg、P4)を4~6週齢雌NODscidマウスの側腹部に皮下移植し、200~300mm3まで成長させた。次いで、マウスを群(1群当たりn=8)に無作為化し、ビヒクル(10mg/kg);PCLX-001、21日間毎日20mg/kg;又はPCLX-001、9日後に3日間の休薬を含む、18日間毎日50mg/kgを皮下注射した。腫瘍測定及び成長阻害計算を上記のように実施した。
DLBCL3 PDX試験のために、NODscidマウスをシンガポールのInVivos社から購入し、標準的な実験飼料及び蒸留水を自由に与えた。これらの動物をBRC、A*STAR中22±2℃で12時間明/暗サイクルに保ち、施設ガイドラインに従って維持した。
NMT活性アッセイ
NMT活性アッセイはPerinpanayagamら33に記載された。手短に言えば、細胞をスクロース緩衝液(50mMのNaH2PO4、pH7.4、及び0.25Mのスクロース)中で溶解及び超音波処理(10秒)した。腫瘍試料を小片に切断し、スクロース緩衝液中でガラスダウンスホモジナイゼーション(12フルストローク)によって抽出し、超音波処理(10秒)した。タンパク質溶解物を、25μlの反応でNMTアッセイ緩衝液(0.26Mのトリス-HCl pH7.4、3.25mMのEGTA、2.92mMのEDTA及び29.25mMの2-メルカプトエタノール、1%のTriton X-100)中p60-SrcのN末端配列に対応する0.1mMのミリストイル化可能な又はミリストイル化可能でないデカペプチド及び12pMの[3H]-ミリストイル-CoA(Perkin Elmer社、マサチューセッツ州ウォルサム)とインキュベートし、30℃で15分間インキュベートした。15μlの反応混合物をP81ホスホセルロースペーパーディスク(Whatman社、英国メードストン)上にスポットすることによって反応を終了し、洗浄し、シンチレーション計数のために処理した。
統計法
データを、Prism 8ソフトウェア(GraphPad社、バージョン8.4.1)を使用して分析し、一般的に平均±s.e.m.として表した。該当する場合、スチューデントt検定又は一元配置ANOVAを使用して統計学的有意性を決定した。腫瘍体積に対する薬物処置の有意性の分析は二元配置ANOVAによって評価した。0.05より高いP値は統計学的に有意とみなさなかった。(***)P≦0.001、(**)P≦0.01及び(*)P≦0.05。
NMT1及びNMT2発現の統計分析:NMT1及びNMT2 mRNA発現データは、Broad Institute CCLEデータベース54(https://portals.broadinstitute.org/ccle)から2020年3月26日に抽出し、1269種のがん細胞株についてのmRNA発現データを含んでいた。RNAseq TPM遺伝子発現データ(Expression Public 20Q1)を、RSEMを使用してタンパク質コード遺伝子について分析し、疑似カウント(pseudo-count)1を使用してLog2変換値として提示する(図22)。
T細胞受容体(TCR)活性化
Jurkat T細胞はATCCから購入した。細胞を、加湿インキュベーター中37℃及び5%のCO2で、5%のウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で維持し、汚染マイコプラズマの存在について日常的にチェックした。TCR活性化実験のために、PCLX-001前処理細胞を2μg/mlのCD3及びCD28モノクローナル抗体(ThermoFisher Scientific社、それぞれカタログ番号14-0037-82及び番号14-0281-82)と様々な時間(15~60分後の最適な活性化)インキュベートし、PBS中1mMのバナジン酸(Bio Basic社)溶液を添加することによって活性化を停止した。細胞を収穫し、冷PBS中で洗浄し、4Cで15分間揺動することによって、0.1%のSDS-RIPA緩衝液(1×完全プロテアーゼ阻害剤を含む50mMのトリス-HCl pH8.0、150mMのNaCl、1%のIgepal CA-630、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、2mMのMgCl2、2mMのEDTA;(Roche Diagnostics社))に溶解した。溶解物を4℃で10分間、16000gで遠心分離し、核除去後上清を回収し、免疫ブロットによって分析した。
(実施例2)
図23 PCLX-001処理はJurkat T細胞においてTCR依存性P-ERK活性化を減弱する。Jurkat T細胞をCD3/CD28抗体で最大60分間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、24/48時間インキュベートしたPCLX-001(1μM)がP-ERK活性化を阻害することを示す。
図24 PCLX-001処理(24時間)はJurkat T細胞においてTCR依存性P-ERK及びP-SFK活性化を減弱する。Jurkat T細胞をCD3/CD28抗体で最大4時間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、24時間インキュベートしたPCLX-001(0.1及び1μM)P-ERK活性化及びSrcファミリーキナーゼのリン酸化(P-SFK)を示す。
図25 PCLX-001処理(48時間)はJurkat T細胞においてTCR依存性P-ERK及びP-SFK活性化を減弱する。Jurkat T細胞をCD3/CD28抗体で最大4時間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、48時間インキュベートしたPCLX-001(0.1及び1μM)がP-ERK活性化及びSrcファミリーキナーゼのリン酸化(P-SFK)を阻害することを示す。
図26 PCLX-001及びダサチニブ処理は初代培養T細胞においてTCR下流シグナル伝達イベントを減弱し、ERストレスを誘導する。90%のαb初代T細胞をCD3/CD28抗体で30分間活性化した(2ug/ml)。免疫ブロット分析は、PCLX-001及びダサチニブがP-チロシンリン酸化(PY99)、P-ERK活性化、Srcファミリーキナーゼのリン酸化(P-SFK)を阻害することを示す。更に、PCLX-001は、Src及びLynのタンパク質のレベルを有意に低下させ、Bipタンパク質含有量(ERストレスマーカー)を増加させた。
図27A-図27E PCLX-001はPBMC、B細胞及び単球の生存率を低下させるが、T細胞の生存率は低下させない。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。フローサイトメトリーを使用して、細胞サブセットの生存率及び存在量を試験した。PBMCの生存率は著しく低下した(A)。しかし、CD4+及びCD8+T細胞の頻度は薬物処理によって変化しなかった(B及びC)。しかしながら、B細胞(D)及び単球CD14+(E)数は96時間のPCLX-001処理後に有意に低下した。
図28A-図28D PCLX-001はT細胞においてLyn及びHGALの発現を低下させる。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。フローサイトメトリーを通した細胞内染色を使用して、T細胞サブセットにおけるLyn及びHGALの発現を試験した。CD4+T細胞におけるLyn(A)及びHGAL(B)の発現は共に低下した。更に、PCLX-001はまた、CD8+T細胞においてもLyn(C)とHGAL(D)の両方の発現を低下させた。
図29A-図29D PCLX-001は単球においてLyn及びHGALの発現を低下させるが、B細胞では低下させない。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。フローサイトメトリーを通した細胞内染色を使用して、B細胞及び単球サブセットにおけるLyn及びHGALの発現を試験した。PCLX-001はB細胞においてLyn(A)及びHGAL(B)の発現を低下させることができなかったが、両タンパク質マーカーは単球で有意に低下した(C及びD)。
図30A-図30E PCLX-001は炎症性サイトカインの産生を誘導する。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて炎症性サイトカインIL-6(A)、TNF-α(B)、IL-8(C)、IFN-γ(D)、及びIL-17a(E)の産生を誘導する。
図31A-図31D PCLX-001は産生抗炎症性サイトカインを誘導する。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて抗炎症性サイトカインIL-1RA(A)、IL-10(B)、IL-13(C)、及びIL-16(D)の産生を誘導する。
図32A-図32D PCLX-001は炎症性ケモカインの産生を誘導する。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて炎症性ケモカインMIP-lα(A)、MCP-2(B)、TARC(C)、及びGRO-α(D)の産生を誘導する。
図33A-図33D PCLX-001は炎症性ケモカインの産生を誘導する。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、炎症性ケモカインRATES(A)、MIP-1β(B)、MCP-4(C)、及びMDC(D)生PB<Cの産生を誘導する。
図34A-図34C PCLX-001はTヘルパー2媒介ケモカイン及びGM-CSFの産生を誘導する。PBMCを、増加する濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)の存在下で4日間培養した。4日後、細胞培養物上清を、マルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)ヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。PCLX-001は、生PBMCにおいて顆粒球-単球コロニー刺激因子I-309(A)、Tヘルパー2媒介ケモカインとしてのエオタキシン-2(B)及びGM-CSF(C)の産生を誘導する。
図35A-図35D NMT阻害剤(PCLX-001、PCLX-002、IMP-1088)は炎症誘発性サイトカイン;IL-6(A)、IL-8(B)、TNF-α(C)、及びIFN-γ(D)の正規化分泌を減少させる。T細胞を増加する濃度のNMT阻害剤と48時間インキュベートし、次いで、薬物の存在下でT細胞活性化因子(STEMCELLS社)によって更に2日間誘導した。NMT阻害剤は、IL-6、IL-8及びIFN-ガンマのレベルを有意に低下させた(二元配置ANOVA、未処理に対するP値:*<0.05~0.01 **<0.01~0.001 ***<0.001~0.0001)。サイトカイン分泌の減少がPCLX-002よりもより強力なNMT阻害剤であるPCLX-001で強く、4日間の処理後の細胞の生存が未処理試料の10%以内であったことが特筆すべきことである。
図36A-図36D NMT阻害剤(PCLX-001、PCLX-002、IMP-1088)は抗炎症性サイトカイン;IL-4(A)、IL-5(B)、IL-10(C)、及びIL-13(D)の正規化分泌を減少させる。T細胞を増加する濃度のNMT阻害剤と48時間インキュベートし、次いで、薬物の存在下でT細胞活性化因子(STEMCELLS社)によって更に2日間誘導した。NMT阻害剤は、IL-5、IL-10及びIL-13のレベルを有意に低下させた(二元配置ANOVA、未処理に対するP値:*<0.05~0.01 **<0.01~0.001 ***<0.001~0.0001)。サイトカイン分泌の減少がPCLX-002よりもより強力なNMT阻害剤であるPCLX-001で強く、4日間の処理後の細胞の生存が未処理試料の10%以内であったことが特筆すべきことである。
図23~図25は、CD3/CD28抗体で30分間活性化した(2ug/ml)Jurkat T細胞におけるTCR経路に対するPCLX-001及びダサチニブの効果を示している。
図26は、CD3/CD28抗体で30分間活性化した(2ug/ml)90%のαb初代T細胞におけるTCR経路に対するPCLX-001及びダサチニブの効果を示している。
図27は、増加する量のPCLX-001の存在下での様々な血液細胞サブセットの生存率を示している。
図28~図29は、増加する量のPCLX-001の存在下での様々な血液細胞サブセット中のミリストイル化タンパク質Lyn及びHGALの量を示している。
図30~図34は、増加する量のPCLX-001の存在下で培養したPBMCにおけるサイトカイン及びケモカイン産生を示している。
図35~図36は、増加する量のPCLX-001の存在下で培養したT細胞における炎症誘発性及び抗炎症性サイトカイン産生を示している。
以下の表はケモカイン及びケモカイン受容体を列挙している。
図35及び図36は、-001又は-002で処理した細胞におけるT細胞からの炎症誘発性サイトカイン分泌の深い減少を示している。これらの効果は、使用したPCLX-001対PCLX-002の効力に比例している。IMP-1088も、分泌を増加させているTNFa以外の全体でサイトカイン分泌に対する有意な阻害効果を有する。
NMT阻害剤がサイトカイン分泌を阻害し、おそらくは自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、ループス、シェーグレン症候群、I型糖尿病、乾癬、及び抗炎症性疾患(以下のリスト参照)に関与するTCRの阻害を介して、T細胞の活性を低下させるための免疫調節剤として使用され得ることが本明細書に示される。
図35 NMT阻害剤(PCLX-001、PCLX-002、IMP-1088)は炎症誘発性サイトカイン;IL-6(A)、IL-8(B)、TNF-α(C)、及びIFN-γ(D)の正規化分泌を減少させる。T細胞(n=3、3人の独立したドナーから)を増加する濃度のNMT阻害剤と48時間インキュベートし、次いで、薬物の存在下でT細胞活性化因子(STEMCELLS社)によって更に2日間誘導した。(二元配置ANOVA、未処理に対するP値:*<0.05~0.01 **<0.01~0.001 ***<0.001~0.0001)。サイトカイン分泌の減少は、PCLX-002よりもより強力なNMT阻害剤であるPCLX-001で強く、4日間の処理後の細胞の生存は、未処理試料の10%以内であった。
図36 NMT阻害剤(PCLX-001、PCLX-002、IMP-1088)は抗炎症性サイトカイン;IL-4(A)、IL-5(B)、IL-10(C)、及びIL13(D)の正規化分泌を減少させる。T細胞(n=3、3人の独立したドナーから)を増加する濃度のNMT阻害剤と48時間インキュベートし、次いで、薬物の存在下でT細胞活性化因子(STEMCELLS社)によって更に2日間誘導した。(二元配置ANOVA、未処理に対するP値:*<0.05~0.01 **<0.01~0.001 ***<0.001~0.0001)。サイトカイン分泌の減少は、PCLX-002よりもより強力なNMT阻害剤であるPCLX-001で強く、4日間の処理後の細胞の生存は、未処理試料の10%以内であった。
材料及び方法
Jurkat T細胞培養
Jurkat T細胞は最初にATCC(https://www.atcc.org/products/tib-152)から購入した。細胞株を、MycoAlert Plus Mycoplasma Detection Kit(Lonza社、米国メイン州)を使用してマイコプラズマ汚染について定期的に試験した。Jurkat T細胞はマイコプラズマ汚染について陰性であると試験された。Jurkat T細胞を、5%のウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、及び2mMのL-グルタミンを補充したRPMI培地中で維持した。
初代細胞培養
初代ヒトT αβT細胞は、記載されるように健康なドナー血液から得た(Siegers GM、Ribot EJ、Keating A、Foster PJ. Extensive expansion of primary human gamma delta T cells generates cytotoxic effector memory cells that can be labeled with Feraheme for cellular MRI. Cancer Immunol Immunother. (2013) 62:571-83. doi: 10.1007/s00262-012-1353-y)。手短に言えば、末梢血単核細胞を単離し、1μg/mlのコンカナバリンA並びに10ng/mlのIL-2及びIL-4を含有する培地で培養した。T細胞を6~8日間まとめて増殖させ、次いで、従来のαβTcを磁気細胞分離によって枯渇させた。トリパンブルー排除及び細胞計数を介して生存率及び増殖率を常に評価した。栄養を与えたら、細胞を、10ng/mlのIL-2及びIL-4を補充した完全培地(10%のFBS、熱不活性化、1×MEM NEAA、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、50U/mlのペニシリン-ストレプトマイシン、及び2mMのL-グルタミンを含むRPMI1640-全てInvitrogen(商標)、Thermo Fisher Scientific社、米国マサチューセッツ州ウォルサム製)で100万個細胞/mlに希釈した(Siegers GM、Dutta I、Kang EY、Huang J、Kobel M及びPostovit L-M (2020) Aberrantly Expressed Embryonic Protein NODAL Alters Breast Cancer Cell Susceptibility to γδ T Cell Cytotoxicity.Front.Immunol.11:1287.doi:10.3389/fimmu.2020.01287)。
この実験用の初代混合T細胞のバイアルを解凍し、解凍5日後、細胞をフローサイトメトリーのために染色し、次いで、解凍7日後に獲得した。
ダサチニブ及びPCLX-001とのインキュベーション
ダサチニブはApex Bio Technology社製であった。PCLX-001はDavid Gray博士及びPaul Wyatt博士(ダンディー大学、英国スコットランド)によってDDD86481として特定され、Pacylex Pharmaceuticals社によって提供された。Jurkat T細胞を4ml培地/ウェルにおいて6ウェルプレート中で増殖させ、増加する濃度のPCLX-001、ダサチニブと最大48時間インキュベートした。
T細胞受容体の活性化
TCR活性化実験のために、細胞を2μg/mlのヒトCD3モノクローナル抗体(OKT3)、eBioscience(商標)及びマウスCD28モノクローナル抗体(37.51)、eBioscience(商標)(ThermoFisher Scientific社から購入した)の混合物と最大4時間2分間インキュベートし、PBS中1mMのバナジン酸(Bio Basic社)溶液を添加することによって活性化を停止した。
免疫ブロット
ウサギ抗GAPDH(1:5000、アフィニティー精製ポリクローナル、番号EU1000、ロット1)は実験室在庫からのものであり、Eusera社(www.eusera.com)を通して入手可能である。ウサギモノクローナル抗Src(1:2000、クローン32G6、番号2123、ロット5)、Lck(1:2000、クローンD88、番号2984、ロット4)、ERK(1:2000、クローン4695、番号9102、ロット27)、P-ERK(1:5000、クローン3510、番号9101、ロット30)、P-SFK(1:10000、クローンD49G4、番号6943、ロット4)はCell Signaling. echnologies社から購入した。ウサギモノクローナル抗BIP(1:2000、ポリクローナル、ADI-SPA-826)はEnzo Life Sciences社から購入した。マウスモノクローナル抗p-Tyr(1:10000、PY99、sc-7020、ロットI2118)抗体をSanta Cruz Biotechnology社から購入した。増強化学発光(ECL)Primeウエスタンブロッティング検出キットはGE Healthcare社から購入した。Clarity ECLウエスタンブロッティング基質はBio-Rad社製であった。ヤギ抗ヒトIgM(μ鎖)(70-8028-M002、ロットS728028002001)はTonbo biosciences社から購入した。
細胞を収穫し、冷PBS中で洗浄し、4℃で15分間揺動することによって、0.1%のSDSRIPA緩衝液(1×完全プロテアーゼ阻害剤を含む50mMのトリス-HCl pH8.0、150mMのNaCl、1%のIgepal CA-630、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、2mMのMgC12、2mMのEDTA;(Roche Diagnostics社))に溶解した。溶解物を4℃で10分間、16000gで遠心分離し、核除去後上清を回収した。
タンパク質濃度を、製造業者の説明書に従ってBCAアッセイ(Thermo Scientific社)によって決定した。5×ローディング緩衝液を添加することによって試料を電気泳動用に調製し、5分間沸騰させた。特に明言しない場合、1レーン当たり30μgの総タンパク質を12.5%のアクリルアミドゲルにロードする。電気泳動後、ゲルを0.2μMのニトロセルロース膜(Bio-Rad社)に転写し、その後、材料の節に記載されるように抗体でプローブする。ECL Primeウエスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare社、米国ペンシルバニア州)について提供される手順に従って、ペルオキシダーゼ活性を明らかにする。
ヒト細胞培養
健康なドナー由来のヒト末梢血単核細胞(PBMC)及び精製T細胞はSTEMCELL Technologies社(カリフォルニア州)から購入した。細胞(7.5×106/ml)を、100IU/mlのインターロイキン2(STEMCELL Technologies社)又はHIV試薬プログラム(ATCCによって管理される)の存在下、24ウェルプレート中で、10%の熱不活性化ウシ胎児血清(vWR)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(SigmaMillipore社)、1%のピルビン酸ナトリウム、及び1%の非必須アミノ酸(Gibco社)を補充したRPMI中で培養した。
PBMC試料については、細胞を様々な濃度のPCLX-001(0~10ug/ml)で2及び/又は4日間処理した。収穫した細胞を最初にZombie aquaを使用して生存について染色し、ヒトTrustain FcX Fc受容体ブロッキング溶液を使用して、FC受容体をブロッキングし、それぞれ全てBiolegend社製のフルオロフォアコンジュゲートモノクローナル抗体(CD3、CD4、CD8、CD19、及びCD14)で標識した。次いで、細胞をfix/perm緩衝液キット(eBiosciences社)で透過処理し、抗Lyn及びHGAL抗体で細胞内染色した。LSRFortessa X20(BD Biosciences社)を使用して試料を獲得し、FlowJoソフトウェアによって分析した。
精製T細胞については、PCLX-001、PCLX-002(PACYLEX社)、及びIMP-1088(?)を様々な濃度(0~500nM)で2日間添加した。次いで、細胞を薬物の存在下、T細胞活性化因子(STEMCELLS社)で更に2日間誘導した。4日後、フローサイトメトリーを使用して、処理T細胞の生存率を分析した。PBMCとT細胞の両方についての上清を更なる分析のために回収した。
マルチプレックスアレイアッセイ
回収した上清を、PBMCについてはヒトサイトカイン/ケモカイン71-Plex(HD71)又はT細胞試料についてはヒト炎症誘発性集中15-Plex(HDF15)のマルチプレックスサイトカインアレイ(Eve Technologies社のDiscovery assay、カナダカルガリー)を使用して様々なバイオマーカーについて分析した。
本明細書に記載される実施形態は、単なる例であることを意図している。当業者によって、変更、修正及びバリエーションが特定の実施形態に行われ得る。特許請求の範囲は、本明細書に示される特定の実施形態によって限定されるべきではなく、全体として本明細書と一致して解釈されるべきである。
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者の技能レベルを示し、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個別的に示されているのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
本発明はこのように記載されているが、多くの方法で変化し得ることが自明である。このようなバリエーションは、本発明の精神及び範囲からの逸脱とみなされるべきでなく、当業者に自明であるような全てのこのような修正が以下の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。

Claims (120)

  1. がんを発症するリスクがあるか、又はがんに罹りやすい対象におけるがんを処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む、方法。
  2. 前記がんが、リンパ腫である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記リンパ腫が、B細胞リンパ腫である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記対象が、ヒトである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. がんを発症するリスクがあるか、又はがんに罹りやすい対象におけるがんを処置するための、治療有効量のPCLX-001の使用。
  6. がんを発症するリスクがあるか、又はがんに罹りやすい対象におけるがんを処置するための医薬の製造における、治療有効量のPCLX-001の使用。
  7. 前記がんが、リンパ腫である、請求項5又は6に記載の使用。
  8. 前記リンパ腫が、B細胞リンパ腫である、請求項7に記載の使用。
  9. 前記対象が、ヒトである、請求項5から8のいずれか一項に記載の使用。
  10. 対象におけるリンパ腫において細胞死を誘導する方法であって、治療有効量のPCLX-001を前記対象に投与する工程を含む、方法。
  11. 前記リンパ腫が、B細胞リンパ腫である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記対象が、ヒトである、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 対象におけるリンパ腫を誘導するための治療有効量のPCLX-001の使用。
  14. 対象におけるリンパ腫を誘導するための医薬の製造における、治療有効量のPCLX-001の使用。
  15. 前記リンパ腫が、B細胞リンパ腫である、請求項13又は14に記載の使用。
  16. 前記対象が、ヒトである、請求項13から15のいずれか一項に記載の使用。
  17. 対象の細胞におけるSFKタンパク質のレベル又は活性を低下させる方法であって、前記細胞をPCLX-001と接触させる工程を含む、方法。
  18. 前記SFKタンパク質が、Srcタンパク質、Lynタンパク質、又はSrcタンパク質とLynタンパク質の両方である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記細胞が、リンパ腫細胞である、請求項17又は18に記載の方法。
  20. 前記リンパ腫が、B細胞リンパ腫細胞である、請求項19に記載の方法。
  21. 前記対象が、ヒトである、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 複数の前記細胞を含む、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 対象の細胞におけるSFKタンパク質のレベル又は活性を低下させるためのPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が、前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
  25. 対象の細胞におけるSFKタンパク質のレベル又は活性を低下させるための医薬の製造におけるPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が、前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
  26. 前記SFKタンパク質が、Srcタンパク質、Lynタンパク質、又はSrcタンパク質とLynタンパク質の両方である、請求項24又は25に記載の使用。
  27. 前記細胞が、リンパ腫細胞である、請求項24から26のいずれか一項に記載の使用。
  28. 前記リンパ腫が、B細胞リンパ腫細胞である、請求項27に記載の使用。
  29. 前記対象が、ヒトである、請求項24から28のいずれか一項に記載の使用。
  30. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項24から29のいずれか一項に記載の使用。
  31. 複数の前記細胞を含む、請求項24から30のいずれか一項に記載の使用。
  32. 対象の細胞におけるSrcタンパク質、Lynタンパク質、汎P-SFKタンパク質、ERKタンパク質、P-ERKタンパク質、NFκBタンパク質、c-Mycタンパク質、又はCREBタンパク質のレベル又は活性のうちの1つ又は複数を低下させる方法であって、前記細胞をPCLX-001と接触させる工程を含む、方法。
  33. 前記細胞が、リンパ腫細胞である、請求項32に記載の方法。
  34. 前記リンパ腫細胞が、B細胞リンパ腫である、請求項33に記載の方法。
  35. 前記対象が、ヒトである、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
  37. 複数の前記細胞を含む、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
  38. 対象の細胞におけるSrcタンパク質、Lynタンパク質、汎P-SFKタンパク質、ERKタンパク質、P-ERKタンパク質、NFκBタンパク質、c-Mycタンパク質、又はCREBタンパク質のレベル又は活性のうちの1つ又は複数を低下させるためのPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が、前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
  39. 対象の細胞におけるSrcタンパク質、Lynタンパク質、汎P-SFKタンパク質、ERKタンパク質、P-ERKタンパク質、NFκBタンパク質、c-Mycタンパク質、又はCREBタンパク質のレベルのうちの1つ又は複数を低下させるための医薬の製造におけるPCLX-001の使用であって、前記PCLX-001が、前記細胞との接触のために製剤化される、使用。
  40. 前記細胞が、リンパ腫細胞である、請求項38又は39に記載の使用。
  41. 前記リンパ腫が、B細胞リンパ腫細胞である、請求項40に記載の使用。
  42. 前記対象が、ヒトである、請求項38から41のいずれか一項に記載の使用。
  43. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項38から42のいずれか一項に記載の使用。
  44. 複数の前記細胞を含む、請求項38から43のいずれか一項に記載の使用。
  45. 対象における自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む、方法。
  46. 対象における自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のDDD85646を投与する工程を含む、方法。
  47. 対象における自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のIMP1008を投与する工程を含む、方法。
  48. 対象における自己免疫障害を処置する方法であって、治療有効量のNMT阻害剤を投与する工程を含む、方法。
  49. 前記自己免疫障害が、関節リウマチ、喘息、多発性硬化症、重症筋無力症、エリテマトーデス、インスリン依存性糖尿病(1型)、胃炎、大腸炎、及びインスリン依存性自己免疫糖尿病、移植片移植/拒絶の阻害、乾癬、シェーグレン症候群又は移植片対宿主病である、請求項45から48のいずれか一項に記載の方法。
  50. 前記対象が、ヒトである、請求項45から49のいずれか一項に記載の方法。
  51. 対象における炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のPCLX-001を投与する工程を含む、方法。
  52. 対象における炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のDDD85646を投与する工程を含む、方法。
  53. 対象における炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のIMP 1008を投与する工程を含む、方法。
  54. 対象における炎症性障害を処置する方法であって、治療有効量のNMT阻害剤を投与する工程を含む、方法。
  55. 前記炎症性障害が、急性、癒着性、萎縮性、カタル性、慢性、硬変性、びまん性、播種性、滲出性、線維性、線維化、限局性、肉芽腫性、過形成性、肥大性、間質性、転移性、壊死性、閉塞性、実質性、形成性、増殖性、繁殖性、偽膜性、化膿性、硬化性、血清塑性(seroplastic)、漿液性、単純、特異的、亜急性、化膿性、毒性、外傷性、潰瘍性炎症、胃腸障害、消化性潰瘍、限局性腸炎、憩室炎、胃腸出血、好酸球性、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性大腸炎、胃炎、下痢、胃食道逆流症(GORD、又はGERD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎(diversion colitis)、ベーチェット症候群、分類不能大腸炎(indeterminate colitis)、炎症性腸症候群(IBS)、又は肋膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、喘息、特発性肺線維症(IPF)、及び嚢胞性線維症から選択される肺の障害である、請求項51から54のいずれか一項に記載の方法。
  56. 前記対象が、ヒトである、請求項51から55のいずれか一項に記載の方法。
  57. 対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させる方法であって、前記細胞をPCLX-001と接触させる工程を含む、方法。
  58. 対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させる方法であって、前記細胞をDDD85646と接触させる工程を含む、方法。
  59. 対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させる方法であって、前記細胞をNMT阻害剤と接触させる工程を含む、方法。
  60. 前記対象が、ヒトである、請求項57から59のいずれか一項に記載の方法。
  61. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項57から60のいずれか一項に記載の方法。
  62. 複数の前記細胞を含む、請求項57から61のいずれか一項に記載の方法。
  63. 対象由来の免疫細胞の活性を低下させる方法であって、前記T細胞及び/又は前記B細胞をNMT阻害剤と接触させる工程を含む、方法。
  64. 対象由来のT細胞及び/又はB細胞の活性を低下させる方法であって、前記T細胞及び/又は前記B細胞をNMT阻害剤と接触させる工程を含む、方法。
  65. 前記NMT阻害剤が、PCLX-001である、請求項63又は64に記載の方法。
  66. 前記NMT阻害剤が、DDD85646である、請求項63又は64に記載の方法。
  67. 前記NMT阻害剤が、IMP 1088である、請求項63又は64に記載の方法。
  68. 前記対象が、ヒトである、請求項63から67のいずれか一項に記載の方法。
  69. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項63から68のいずれか一項に記載の方法。
  70. 対象における自己免疫障害を処置するための、治療有効量のPCLX-001の使用。
  71. 対象における自己免疫障害を処置するための、治療有効量のDDD85646の使用。
  72. 対象における自己免疫障害を処置するための、治療有効量のIMP 1088の使用。
  73. 対象における自己免疫障害を処置するための、治療有効量のNMT阻害剤の使用。
  74. 前記自己免疫障害が、関節リウマチ、喘息、多発性硬化症、重症筋無力症、エリテマトーデス、インスリン依存性糖尿病(1型)、胃炎、大腸炎、及びインスリン依存性自己免疫糖尿病、移植片移植/拒絶の阻害、又は移植片対宿主病である、請求項63から73のいずれか一項に記載の使用。
  75. 前記対象が、ヒトである、請求項63から74のいずれか一項に記載の使用。
  76. 対象における炎症性障害を処置するための、治療有効量のPCLX-001の使用。
  77. 対象における炎症性障害を処置するための、治療有効量のDDD85646の使用。
  78. 対象における炎症性障害を処置するための、治療有効量のIMP 1088の使用。
  79. 対象における炎症性障害を処置するための、治療有効量のNMT阻害剤の使用。
  80. 前記炎症性障害が、急性、癒着性、萎縮性、カタル性、慢性、硬変性、びまん性、播種性、滲出性、線維性、線維化、限局性、肉芽腫性、過形成性、肥大性、間質性、転移性、壊死性、閉塞性、実質性、形成性、増殖性、繁殖性、偽膜性、化膿性、硬化性、血清塑性、漿液性、単純、特異的、亜急性、化膿性、毒性、外傷性、潰瘍性炎症、胃腸障害、消化性潰瘍、限局性腸炎、憩室炎、胃腸出血、好酸球性、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性大腸炎、胃炎、下痢、胃食道逆流症(GORD、又はGERD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎、ベーチェット症候群、分類不能大腸炎、炎症性腸症候群(IBS)、又は肋膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、喘息、特発性肺線維症(IPF)、シェーグレン症候群、及び嚢胞性線維症から選択される肺の障害である、請求項76から79のいずれか一項に記載の使用。
  81. 前記対象が、ヒトである、請求項76から80のいずれか一項に記載の使用。
  82. 対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させるための、治療有効量のPCLX-001の使用。
  83. 対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させるための、治療有効量のDDD85646の使用。
  84. 対象の細胞におけるBCRタンパク質のレベル若しくは活性及び/又はTCRタンパク質のレベル若しくは活性を低下させるための、治療有効量のNMT阻害剤の使用。
  85. 前記対象が、ヒトである、請求項82から84のいずれか一項に記載の使用。
  86. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項82から85のいずれか一項に記載の使用。
  87. 複数の前記細胞を含む、請求項82から86のいずれか一項に記載の使用。
  88. 対象由来の免疫細胞の活性を低下させるための、NMT阻害剤の使用。
  89. 対象由来のT細胞及び/又はB細胞の活性を低下させるための、NMT阻害剤の使用。
  90. 前記NMT阻害剤が、PCLX-001である、請求項87又は89に記載の使用。
  91. 前記NMT阻害剤が、DDD85646である、請求項87又は89に記載の使用。
  92. 前記NMT阻害剤が、IMP 1088である、請求項87又は89に記載の使用。
  93. 前記対象が、ヒトである、請求項87から89のいずれか一項に記載の使用。
  94. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項87から93のいずれか一項に記載の使用。
  95. 対象における単球細胞の活性を低下させる、又は対象における単球細胞の数を減少させる方法であって、前記単球をNMT阻害剤と接触させる工程を含む、方法。
  96. 前記NMT阻害剤が、PCLX-001である、請求項95に記載の方法。
  97. 前記NMT阻害剤が、DDD85646である、請求項95に記載の方法。
  98. 前記NMT阻害剤が、IMP 1088である、請求項95に記載の方法。
  99. 前記対象が、ヒトである、請求項95から98のいずれか一項に記載の方法。
  100. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項95から99のいずれか一項に記載の方法。
  101. 対象における単球細胞の活性を低下させる、又は対象における単球細胞の数を減少させるための、NMT阻害剤の使用。
  102. 前記NMT阻害剤が、PCLX-001である、請求項101に記載の使用。
  103. 前記NMT阻害剤が、DDD85646である、請求項101に記載の使用。
  104. 前記NMT阻害剤が、IMP 1088である、請求項101に記載の使用。
  105. 前記対象が、ヒトである、請求項101から104のいずれか一項に記載の使用。
  106. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項101から105のいずれか一項に記載の使用。
  107. 対象におけるT細胞におけるサイトカイン分泌の量を減少させる方法であって、NMT阻害剤を投与する工程を含む、方法。
  108. 前記サイトカインが、IL-6、IL-8及びIFN-ガンマ.IL-5、IL-10、又はIL-13である、請求項107に記載の方法。
  109. 前記NMT阻害剤が、PCLX-001である、請求項107又は108に記載の方法。
  110. 前記NMT阻害剤が、DDD85646である、請求項107又は108に記載の方法。
  111. 前記NMT阻害剤が、IMP-1088である、請求項107又は108に記載の方法。
  112. 前記対象が、ヒトである、請求項107から111のいずれか一項に記載の方法。
  113. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項107から112のいずれか一項に記載の方法。
  114. 対象におけるT細胞におけるサイトカイン分泌の量を減少させるための、NMT阻害剤の使用。
  115. 前記サイトカインが、IL-6、IL-8及びIFN-ガンマ.IL-5、IL-10、又はIL-13である、請求項114に記載の使用。
  116. 前記NMT阻害剤が、PCLX-001である、請求項114又は115に記載の使用。
  117. 前記NMT阻害剤が、DDD85646である、請求項114又は115に記載の使用。
  118. 前記NMT阻害剤が、IMP-1088である、請求項114又は115に記載の使用。
  119. 前記対象が、ヒトである、請求項114から118のいずれか一項に記載の方法。
  120. 前記接触が、インビトロ又はインビボである、請求項114から119のいずれか一項に記載の方法。
JP2023524184A 2020-10-20 2021-10-20 がん、自己免疫障害、及び炎症性障害の処置におけるn-ミリストイルトランスフェラーゼ(nmt)阻害剤の使用 Pending JP2023546217A (ja)

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