JP2023542049A - インターロイキン-2ムテイン及びその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、特に、自己免疫疾患を予防及び治療するための組成物及び方法を提供する。本発明は、部分的に、ヒトインターロイキン-2ムテインが制御性T細胞の増殖を活性化するという驚くべき知見に基づいている。一態様では、本発明は、制御性T細胞を増殖させるための組成物及び方法を提供する。別の態様では、野生型インターロイキン-2(IL-2)タンパク質と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むヒトIL-2ムテインであって、T111H、T37Y、E15T、M23L、P34F、E68F、及びE62Aからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有するIL-2ムテインについて記載される。【選択図】なし
Description
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年9月1日に出願された米国出願第63/073,208号及び2021年8月10日に出願された米国出願第63/231,471号の利益及び優先権を主張し、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
(発明の背景)
本出願は、2020年9月1日に出願された米国出願第63/073,208号及び2021年8月10日に出願された米国出願第63/231,471号の利益及び優先権を主張し、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
(発明の背景)
自己免疫疾患は、免疫系が自己組織と非自己組織とを区別することができず、それによって、身体の細胞及び組織を攻撃し、破壊することにより生じる。
制御性T細胞(Treg)の機能の1つは、免疫系の病的な活性化を抑制し、自己免疫疾患を予防することである。制御性T細胞(Treg)は、他の免疫細胞の活性を抑制するCD4+CD25+T細胞であり、自己抗原に対する寛容性の維持、外来抗原に対する応答の調節、及び免疫系の制御おいてに重要な役割を果たす。Tregの細胞数又は細胞機能は、例えば、1型糖尿病(T1D)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及び移植片対宿主病(GVHD)を含む幾つかの自己免疫疾患及び炎症性疾患で低下することが確認されている。
インターロイキン-2(IL-2)は、制御性T細胞(Treg)の成長を刺激することに加えて、T細胞、B細胞、及び単球を活性化する、免疫系の強力な刺激因子である。IL-2の治療的投与の結果、例えばNK細胞の非特異的活性化に起因して望ましくない毒性が生じる。
組織内に通常存在する低濃度のIL-2に応答するためには、T細胞がCD25を発現することが必要である。CD25を発現するT細胞は、両FOXP3+CD4+制御性T細胞(Treg細胞)を含み、これは自己免疫炎症の抑制に不可欠である。他方、FOXP3-Tエフェクター細胞は活性化されてCD25を発現し、CD4+又はCD8+のいずれかになり、炎症、自己免疫、臓器の移植片拒絶反応、又は移植片対宿主病の一因となる可能性がある。IL-2によって刺激されるSTAT5シグナル伝達は、正常なT-reg細胞の成長及び生存、並びにFOXP3の高発現にとって重要であると考えられる。
免疫系の制御のために、Treg細胞の産生及び/又は活性を選択的に刺激する治療法が必要とされている。本発明は、特に、制御性T細胞(Treg)を増殖させるための組成物及び方法を提供する。本発明は、特に、制御性T細胞の増殖を活性化するヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン及びそのIgG Fc融合タンパク質を提供する。本発明は、特に、自己免疫疾患を予防及び治療するための組成物及び方法を提供する。
自己免疫疾患を治療するための1つのアプローチは、エクスビボで増幅した自己Treg細胞の移植である。動物モデル及び初期のヒト臨床試験では成功しているが、このアプローチは、患者自身のT細胞を用いた個別化治療を必要とするため、技術的に複雑でありかつ侵襲性が高いので困難である。
組み換えIL-2であるProleukin(Prometheus Laboratories,San Diego)は、転移性黒色腫及び転移性腎癌の治療について承認されているが、毒性が高いため重篤な副作用を伴う。低用量IL-2による臨床治療は、慢性GVHD及びHCV関連自己免疫性血管炎で用いられており、Tregレベルの上昇が実証されている。しかし、低用量IL-2の臨床試験でさえも、安全性及び忍容性に問題が生じた。従って、ヒトを治療するための安全かつ忍容性である、Treg細胞を特異的に標的とし、活性化する自己免疫疾患を予防及び/又は治療するための治療剤が必要とされている。
IL-2受容体は、T細胞、NK細胞、好酸球、及び単球を含む多くの種類の免疫細胞で広く発現しており、その結果、IL-2投与に起因する多面的効果及び高い全身毒性が生じる。IL-2受容体は、α(アルファ)(IL-2Ra、CD25、又はTac抗原とも呼ばれる)、β(ベータ)(IL-2Rb又はCd122とも呼ばれる)、及びγ(ガンマ)の3つの形態で存在する。
ヒト患者に投与した場合、IL-2は、静脈内投与では85分間、皮下投与では3.3時間と短い半減期を有する(Kirchner,G.I.et al.,1998,Br J.Clin.Pharmacol.46:5-10)。インビトロにおける研究によって、T細胞の増殖を刺激するためには少なくとも5~6時間IL-2に曝露することが必要であると示されているので、一般に高用量が必要であると考えられている。
一態様では、本発明は、他の種類の免疫細胞と比べてTreg細胞に対して選択的であるIL-2バリアントを使用する、自己免疫疾患の改善された治療方法を特定する。
一態様では、循環IL-2の半減期を増加させるために、IL-2ムテインをIgGのFc領域に融合させる。
IL-2は多くの種類の免疫細胞を標的とするが、Treg細胞は、IL2Rα(CD25)、IL2Rβ(CD122)、及びIL2Rγ(CD132)の受容体で構成される高親和性受容体IL2Rαβγを高レベルで発現するので、多くの他の細胞種よりも低い濃度のIL-2に応答する。Tregの成長は、IL-2に対して応答性である。Treg細胞(CD4陽性細胞)は、IL2Rα(CD25としても知られている)を発現するが、CD8陽性である他の非Treg T細胞は、IL2Rβ(CD122)を発現する。
本発明は、部分的に、例示的なIL-2ムテインがTreg細胞を優先的に増幅又は刺激するという驚くべき知見に基づいている。本発明は、制御性T細胞の増殖を選択的に活性化することができる、野生型IL-2(配列番号1)に対してT111H、T37Y、E15T、M23L、P34F、E68F、及びE62Aからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含むヒトインターロイキン-2ムテインを提供する。
一態様では、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインであって、T111H、T37Y、E15T、M23L、P34F、E68F、及びE62Aからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有するIL-2ムテインを提供する。従って、幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111H置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T37Y置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E15T置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、M23L置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P34F置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E68F置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E62A置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上を含むアミノ酸置換の組み合わせを有する:T111H、T37Y、E15T、M23L、P34F、E68F、及びE62A。
幾つかの実施形態では、ヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインは、C125Aのアミノ酸置換を更に含む。
一実施形態では、本発明は、ヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインのアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を提供する。
幾つかの実施形態では、本発明は、ヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩を含む医薬を提供する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、IgG Fc融合パートナーと融合している。
幾つかの実施形態では、医薬は、Treg活性化因子である。
幾つかの実施形態では、医薬は、自己免疫疾患を予防又は治療するための剤である。
幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、患者に投与されたときにIL-2ムテインの血清半減期を増加させるための1つ以上の化合物を含んでいてもよい。このような半減期延長分子としては、可溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、低密度及び高密度リポタンパク質、抗体Fc(単量体又は二量体)、トランスサイレチン(TTR)、及びTGF-β潜伏関連ペプチド(LAP)が挙げられる。また、PEG化TTR(米国特許出願公開第2003/0195154号から)等の血清半減期延長分子の組み合わせを含むIL-2バリアントも企図される。
幾つかの実施形態では、本発明は、哺乳類において制御性T細胞(Treg細胞)を増殖させる方法であって、有効量のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩を該哺乳類に投与することを含む方法を提供する。
幾つかの実施形態では、本発明は、哺乳類における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、有効量のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩を該哺乳類に投与することを含む方法を提供する。
幾つかの実施形態では、本発明は、自己免疫疾患を治療する方法において使用するためのヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインを提供する。様々な自己免疫疾患が当技術分野において認識されており、例えば、乾癬及び皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患等の増強された炎症応答に関連する疾患;炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連する応答;皮膚炎;湿疹及び喘息等のアレルギー症状;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE)(ループス腎炎、皮膚ループスを含むがこれらに限定されない);真性糖尿病(例えば、1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症及び若年発症糖尿病が挙げられる。
幾つかの実施形態では、本発明は、自己免疫疾患を予防又は治療するための剤を生成するための、ヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩の使用を提供する。
幾つかの実施形態では、本発明は、制御性T細胞(Treg)を増殖させる方法であって、T細胞の集団を有効量の本明細書に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインと接触させることを含む方法を提供する。
本明細書に記載される任意の態様又は実施形態は、本明細書に開示される任意の他の態様又は実施形態と組み合わせてもよい。本開示をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を説明することを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。他の態様、利点、及び変形は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
本明細書に引用する全ての米国特許及び公開又は未公開の米国特許出願は、参照することにより組み込まれる。本明細書に引用する全ての公開外国特許及び特許出願は、参照することにより本明細書に組み込まれる。本明細書に引用する他の全ての公開文献、文書、原稿、及び科学文献は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
本発明の他の特徴及び利点は、後に続く詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲は、本発明の実施形態を説明すると同時に、例示のためだけに与えられており、限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内での様々な変更及び改変は、当業者に明らかになるであろう。
以下の図面は、説明目的のためだけのものであり、限定するものではない。
図1Aは、2つの例示的なIL-2ムテインと比較するための、IL-2Rα(CD25)に対するWT IL-2の結合親和性を示すグラフである。
図1Bは、IL-2ムテインK77AがWT IL-2と同様のIL-2Rαに対する結合親和性を有することを示す。
図1Cは、E96A変異体がIL-2Rαには結合しないことを示す。
図2Aは、CD25+CD4T細胞におけるpSTAT5誘導を定量するための蛍光強度の中央値を示すグラフである。図2Bは、CD8T細胞におけるpSTAT5レベルのグラフを示す。図2Cは、CD25-CD4T細胞におけるpSTAT5レベルのグラフを示す。図2Dは、CD25-NK細胞におけるpSTAT5レベルのグラフを示す。
図2Eは、野生型IL-2と比較した、IL-2ムテインM23L、T111H、E68F、E15T、P34F、T37Yを用いたpSTAT5a誘導を示す一連のグラフ及び関連する表を示す。
図3は、WT mIL-2-HLE、F906-hIL2、F906-E62A、及びIL-2-S4B6抗体と比較して、E96-HLEで処理した際のTreg細胞数の用量依存的増加(CD4+T細胞のfoxp3+%)の比較を示すグラフである。
図4Aは、図3にグラフ化した、フローサイトメトリーによって測定したビヒクル処理細胞における代表的なTreg集団を示す。
図4Bは、WT mIL-2 HLE細胞における例示的なTreg集団を示す。
図4Cは、E96-HLEによる例示的なTreg集団の用量依存的増加を示す。
図4Dは、E96-HLEによる例示的なTreg集団の用量依存的増加を示す。
図4Eは、E96-HLEによる例示的なTreg集団の用量依存的増加を示す。
図4Fは、IL2+SB46抗体による代表的な対照フローサイトメトリー結果を示す。
図5Aは、WT mIL-2-HLEに対する、マウスのE96-HLE処理におけるCD3+細胞のサブセットとしてのfoxp3+細胞の百分率の用量依存的増大の比較を示すグラフである。
図5Bは、WT mIL-2-HLEに対するE96-HLE処理マウスにおけるCD3+細胞を含む脾臓細胞の用量依存的増大の比較を示すグラフである。
図6Aは、1ラウンドの投与後のWTマウスにおいてE62A-HLE及びE96A-HLEの効果を試験するための実験デザインを示す模式図である。
図6Bは、WTマウスに対する、IL-2ムテインE62A-HLE及びE96A-HLEを投与したマウスにおける平均体重の百分率である。
図6Cは、低用量及び高用量の投与における、WT mIL-2-HLE又はWT hIL2-HLEに対する、E62A-HLE又はE96A-HLEでマウスを処理した際の脾臓細胞の総数をスコア化したグラフである。
図7Aは、2ラウンドの投与後のWTマウスにおいてE62A-HLE及びE96A-HLEの効果を試験するための実験デザインを示す模式図である。
図7Bは、WTマウスに対する、2ラウンドのIL-2ムテインE62A-HLE及びE96A-HLEを投与したマウスにおける平均体重の百分率を示すグラフである。
図7Cは、低用量及び高用量の投与における、WT mIL-2-HLE又はWT hIL2-HLEに対する、E62A-HLE又はE96A-HLEでマウスを処理した際の脾臓細胞の総数をスコア化したグラフである。
図8A及び図8Dは、WT又はIL-2 E62A-HLE又はE96A-HLEムテインでマウスを処理した後のCD4+細胞の比率としてTreg細胞の百分率を示すグラフである。図8B及び図8Eは、WT又はIL-2 E62A-HLE又はE96A-HLEムテインでマウスを処理した後のCD3+細胞の比率としてCD8+細胞の百分率を示すグラフである。図8C及び図8Fは、E62A-HLE又はE96A-HLEによるマウスの処理をWT IL-2と比較したCD8:Tregの比を示すグラフである。図8A~図8Cは、IL-2ムテイン又はWT IL-2の1ラウンドの投与に関する。図8D~図8Fは、IL-2ムテイン又はWT IL-2の2ラウンドの投与に関する。
図9Aは、2つの投与レジメンでIL-2ムテインを投与した際の30週目までモニタリングした体重の百分率のグラフである。
図9Bは、2つの投与レジメンにおいてIL-2ムテインで処理したマウスにおいて測定した血糖レベルのグラフである。
図9Cは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテインで処理したマウスの集団における糖尿病の発症率を示すグラフである。
図10Aは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメン後のNK細胞におけるPBMC及び脾臓細胞中のCD45+細胞の百分率のグラフである。図10Bは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメン後のB細胞におけるPBMC及び脾臓細胞中のCD45+細胞の百分率のグラフである。
図10Cは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメン後のCD4+T細胞におけるCD45+細胞の百分率のグラフである。図10Dは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメン後のCD8+T細胞におけるCD45+細胞の百分率のグラフである。
図11Aは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメン後のPBMC及び脾臓細胞におけるCD45+Tregのグラフである。図11Bは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメン後のPBMC及び脾臓細胞におけるTregを発現しているCD45+GITR(グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子)のグラフである。
図12A及び図12Bは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメンの96時間後におけるマウス末梢血中の免疫細胞の百分率のグラフである。
図13A及び図13Bは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメンの96時間後におけるリンパ節中の免疫細胞の百分率のグラフである。
図14A及び図14Bは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメンの96時間後における脾臓中の免疫細胞の百分率のグラフである。
図15A及び図15Bは、ビヒクル対照に対するIL-2ムテイン処理レジメンの96時間後における腫瘍中の免疫細胞の百分率のグラフである。
図16Aは、WTヒトIL-2とヒトCD25(IL-2Rα)受容体との間の結合親和性のグラフである。
図16Bは、ヒトIL-2ムテインとヒトCD25(IL-2Rα)受容体との間の結合親和性のグラフである。
図17Aは、WT IL-2とCD122(IL-2Rβ)受容体との間の結合親和性のグラフである。
図17Bは、IL-2ムテインとCD25(IL-2Rβ)受容体との間の結合親和性のグラフである。
図18Aは、hCTLA4とIL-2 WT融合タンパク質との間の結合親和性のグラフである。
図18Bは、hCTLA4とIL-2ムテイン、E62Aとの間の結合親和性のグラフである。
図19Aは、複数ラウンドの投与後のカニクイザルにおける、M23L、T111H、及びWT hIL-2の効果を試験するための実験デザインを示す模式図である。
図19Bは、処理の0日目、1日目、4日目、7日目、8日目、11日目、及び14日目における、ビヒクル処理、WT hIL-2処理、及びIL-2ムテイン、M23L処理したカニクイザルにおけるCD4、メモリCD4、ナイーブCD4、CD4 Treg、メモリTreg、ナイーブTreg、CD8、NK、及びNKTのリンパ球細胞の細胞数の変化を示すグラフである。
図19Cは、処理の0日目、1日目、4日目、7日目、8日目、11日目、及び14日目における、ビヒクル処理、WT hIL-2処理、及びIL-2ムテイン、T111H処理したカニクイザルにおけるCD4、メモリCD4、ナイーブCD4、CD4 Treg、メモリTreg、ナイーブTreg、CD8、NK、及びNKTのリンパ球細胞の細胞数の変化を示すグラフである。
図20Aは、PBS、E62A-HLE、及びM23L-HLEで処理したマウスにおける血糖測定のグラフを示す。図20Bは、E62A-HLE、M23L-HLE、及びWT hIL-2-HLEで処理したマウスにおける経時的な高血糖症の発症率のグラフを示す。
[定義]
本発明をより容易に理解できるようにするために、まず、特定の用語を以下に定義する。以下の用語及びその他の用語についての追加の定義は、本明細書全体を通して記載される。
本発明をより容易に理解できるようにするために、まず、特定の用語を以下に定義する。以下の用語及びその他の用語についての追加の定義は、本明細書全体を通して記載される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
特に明記しない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用するとき、「又は」という用語は包括的であり、「又は」及び「及び」の両方を網羅すると理解される。
本明細書で使用するとき、「例えば」及び「すなわち」という用語は、限定を意図するものではなく単に例証として使用され、本明細書に明示的に列挙された項目のみを指すと解釈されるべきではない。
「又はそれ以上」、「少なくとも」、「超」等の用語、例えば、「少なくとも1つ」は、指定の値よりも少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、少なくとも100、少なくとも101、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも110、少なくとも111、少なくとも112、少なくとも113、少なくとも114、少なくとも115、少なくとも116、少なくとも117、少なくとも118、少なくとも119、少なくとも120、少なくとも121、少なくとも122、少なくとも123、少なくとも124、少なくとも125、少なくとも126、少なくとも127、少なくとも128、少なくとも129、少なくとも130、少なくとも131、少なくとも132、少なくとも133、少なくとも134、少なくとも135、少なくとも136、少なくとも137、少なくとも138、少なくとも139、少なくとも140、少なくとも141、少なくとも142、少なくとも143、少なくとも144、少なくとも145、少なくとも146、少なくとも147、少なくとも148、少なくとも149、若しくは少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、又はそれ以上大きな値を含むが、これらに限定されるものではないと理解される。任意のより大きな数字又はそれらの間にある分数も含まれる。
逆に、「以下」という用語は、指定の値よりも小さな各値を含む。例えば、「100ヌクレオチド以下」は、100ヌクレオチド、99ヌクレオチド、98ヌクレオチド、97ヌクレオチド、96ヌクレオチド、95ヌクレオチド、94ヌクレオチド、93ヌクレオチド、92ヌクレオチド、91ヌクレオチド、90ヌクレオチド、89ヌクレオチド、88ヌクレオチド、87ヌクレオチド、86ヌクレオチド、85ヌクレオチド、84ヌクレオチド、83ヌクレオチド、82ヌクレオチド、81ヌクレオチド、80ヌクレオチド、79ヌクレオチド、78ヌクレオチド、77ヌクレオチド、76ヌクレオチド、75ヌクレオチド、74ヌクレオチド、73ヌクレオチド、72ヌクレオチド、71ヌクレオチド、70ヌクレオチド、69ヌクレオチド、68ヌクレオチド、67ヌクレオチド、66ヌクレオチド、65ヌクレオチド、64ヌクレオチド、63ヌクレオチド、62ヌクレオチド、61ヌクレオチド、60ヌクレオチド、59ヌクレオチド、58ヌクレオチド、57ヌクレオチド、56ヌクレオチド、55ヌクレオチド、54ヌクレオチド、53ヌクレオチド、52ヌクレオチド、51ヌクレオチド、50ヌクレオチド、49ヌクレオチド、48ヌクレオチド、47ヌクレオチド、46ヌクレオチド、45ヌクレオチド、44ヌクレオチド、43ヌクレオチド、42ヌクレオチド、41ヌクレオチド、40ヌクレオチド、39ヌクレオチド、38ヌクレオチド、37ヌクレオチド、36ヌクレオチド、35ヌクレオチド、34ヌクレオチド、33ヌクレオチド、32ヌクレオチド、31ヌクレオチド、30ヌクレオチド、29ヌクレオチド、28ヌクレオチド、27ヌクレオチド、26ヌクレオチド、25ヌクレオチド、24ヌクレオチド、23ヌクレオチド、22ヌクレオチド、21ヌクレオチド、20ヌクレオチド、19ヌクレオチド、18ヌクレオチド、17ヌクレオチド、16ヌクレオチド、15ヌクレオチド、14ヌクレオチド、13ヌクレオチド、12ヌクレオチド、11ヌクレオチド、10ヌクレオチド、9ヌクレオチド、8ヌクレオチド、7ヌクレオチド、6ヌクレオチド、5ヌクレオチド、4ヌクレオチド、3ヌクレオチド、2ヌクレオチド、1ヌクレオチド、及び0ヌクレオチドを含む。任意のより小さな数字又はそれらの間にある分数も含まれる。
「複数の」、「少なくとも2つの」、「2つ以上の」、「少なくとも第2の」等の用語は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、少なくとも100、少なくとも101、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも110、少なくとも111、少なくとも112、少なくとも113、少なくとも114、少なくとも115、少なくとも116、少なくとも117、少なくとも118、少なくとも119、少なくとも120、少なくとも121、少なくとも122、少なくとも123、少なくとも124、少なくとも125、少なくとも126、少なくとも127、少なくとも128、少なくとも129、少なくとも130、少なくとも131、少なくとも132、少なくとも133、少なくとも134、少なくとも135、少なくとも136、少なくとも137、少なくとも138、少なくとも139、少なくとも140、少なくとも141、少なくとも142、少なくとも143、少なくとも144、少なくとも145、少なくとも146、少なくとも147、少なくとも148、少なくとも149、若しくは少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、又はそれ以上を含むが、これらに限定されるものではないと理解される。任意のより大きな数字又はそれらの間にある分数も含まれる。
明細書全体を通して、用語「含む(comprising)」又は「comprises」又は「comprising」等の変形は、指定のエレメント、整数、若しくは工程、又はエレメント、整数、若しくは工程の群を含むことを意味するが、任意の他のエレメント、整数、若しくは工程、又はエレメント、整数、若しくは工程の群を除外することを意味するものではないと理解される。
特に明記しない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用するとき、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差以内と理解される。「約」とは、指定の値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%以内と理解することができる。特に文脈から明らかでない限り、本明細書に提供される全ての数値は、当業者が理解できる通常の変動を反映する。
本明細書で使用するとき、融合タンパク質とは、一般に、免疫グロブリン分子とIL-2分子とを含む融合ポリペプチド分子であって、該融合タンパク質の構成要素が、直接又はペプチドリンカーを介してペプチド結合によって互いに連結されている融合ポリペプチド分子を指す。明確にするために、融合タンパク質の免疫グロブリン構成要素の個々のペプチド鎖は、例えばジスルフィド結合によって非共有結合的に連結され得る。
融合とは、構成要素が直接又は1つ以上のペプチドリンカーを介してペプチド結合によって連結されることを指す。
特異的結合とは、結合が、抗原に対して選択的であり、不所望の又は非特異的な相互作用とは区別できることを意味する。特定の抗原に結合する免疫グロブリンの能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は当業者によく知られている他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore装置で分析)及び従来の結合アッセイを通して測定することができる。一実施形態では、無関係のタンパク質に対する免疫グロブリンの結合の程度は、例えばSPRによって測定したとき、抗原に対する免疫グロブリンの結合の約10%未満である。特定の実施形態では、抗原に結合する免疫グロブリンは、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(D)を有する。
親和性又は結合親和性とは、分子の単一結合部位(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。特に指定しない限り、本明細書で使用するとき、結合親和性とは、結合ペア(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間での1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)によって表すことができ、該解離定数は、解離速度定数と会合速度定数(それぞれ、koff及びkon)との比である。従って、等価親和性は、速度定数の比が変化しない限り、異なる速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に記載するものを含む、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。親和性を測定するための具体的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
結合の減少、例えば、Fc受容体又はIL-2受容体に対する結合の減少とは、例えばSPRによって測定したときの、それぞれの相互作用についての親和性の低下を指す。明確にするために、この用語は、親和性のゼロ(又は分析方法の検出限界未満)への低下、すなわち、相互作用が完全になくなることも含む。逆に、結合の増加とは、それぞれの相互作用についての結合親和性の上昇を指す。
Fcドメイン又はFc領域は、本明細書では、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、ネイティブ配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。IgG Fc領域は、IgG CH2及びIgG CH3ドメインを含む。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基まで延在する。一実施形態では、炭水化物鎖は、CH2ドメインに結合する。本明細書におけるCH2ドメインは、ネイティブ配列CH2ドメインであってもバリアントCH2ドメインであってもよい。「CH3ドメイン」は、Fc領域におけるC末端からCH2ドメインまでの一続きの残基(すなわち、IgGの約341位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基まで)を含む。本明細書におけるCH3領域は、ネイティブ配列CH3ドメインであってもバリアントCH3ドメイン(例えば、その一方の鎖に「隆起」(「ノブ」)が導入され、他方の鎖に対応する「くぼみ」(「ホール」)が導入されたCH3ドメインであってもよい。このようなバリアントCH3ドメインは、本明細書に記載する通り、2本の非同一免疫グロブリン重鎖のヘテロ二量体化を促進するために用いることができる。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで延在する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していてもよく、存在していなくてもよい。本明細書において特に指定しない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されている、EUインデックスとも呼ばれるEU付番システムに従う。
エフェクター機能とは、免疫グロブリンのFc領域に起因する生物活性を指し、これは、免疫グロブリンのアイソタイプによって変化する。免疫グロブリンのエフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体介在性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞の活性化が挙げられる。
活性化Fc受容体は、免疫グロブリンのFc領域が会合した後に、受容体担持細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発してエフェクター機能を発揮させるFc受容体である。活性化Fc受容体は、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)を含む。具体的な活性化Fc受容体は、ヒトFcγRIIIaである(UniProtアクセッション番号P08637(バージョン141)を参照)。
インターロイキン-2又はIL-2は、本明細書で使用するとき、特に指定しない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳類を含む任意の脊椎動物起源の任意のネイティブIL-2を指す。この用語は、プロセシングされていないIL-2に加えて、細胞内でプロセシングにより生じる任意の形態のIL-2も包含する。この用語は、IL-2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライシングバリアント又はアレルバリアントも包含する。例示的なヒトIL-2のアミノ酸配列を配列番号1に示す。プロセシングされていないヒトIL-2は、N末端に20アミノ酸のシグナルペプチドを更に含むが、これは成熟IL-2分子には存在しない。
野生型IL-2又は野性型IL-2とも呼ばれるネイティブIL-2は、天然に存在するIL-2を意味する。ネイティブヒトIL-2分子の配列を配列番号1に示す。本発明の目的のために、野性型という用語は、例えば、ヒトIL-2の残基125に対応する位置のシステインをアラニンに置換する等、天然に存在するネイティブIL-2と比べてIL-2受容体の結合を変化させない1つ以上のアミノ酸変異を含むIL-2の形態も包含する。幾つかの実施態様では、本発明の目的のために、野性型IL-2は、アミノ酸置換C125Aを含む(配列番号3を参照)。
CD25又はIL-2受容体αは、本明細書で使用するとき、特に指定しない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳類を含む、任意の脊椎動物起源の任意のネイティブCD25を指す。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないCD25に加えて、細胞内でプロセシングにより生じる任意の形態のCD25も包含する。この用語は、CD25の天然に存在するバリアント、例えば、スプライシングバリアント又はアレルバリアントも包含する。特定の実施形態では、CD25はヒトCD25である。
高親和性IL-2受容体とは、本明細書で使用するとき、受容体γサブユニット(共通サイトカイン受容体γサブユニット、γc、又はCD132としても知られている)、受容体βサブユニット(CD122又はp70としても知られている)、及び受容体αサブユニット(CD25又はp55としても知られている)からなる、IL-2受容体のヘテロ三量体形態を指す。中親和性IL-2受容体又はIL-2受容体βγという用語は、対照的に、αサブユニットを含まず、γサブユニット及びβサブユニットのみを含むIL-2受容体を指す(総説については、例えば、Olejniczak and Kasprzak,Med Sci Monit 14,RA179-189(2008)を参照)。
制御性T細胞又はTreg細胞とは、他のT細胞(エフェクターT細胞)の応答を抑制することができる特殊な種類のCD4+T細胞を指す。Treg細胞は、CD4、IL-2受容体のαサブユニット(CD25)、及び転写因子forkhead box P3(FOXP3)の発現を特徴とし(Sakaguchi,Annu Rev Immunol 22,531-62(2004))、そして、腫瘍が発現するものを含む抗原に対する末梢自己寛容の誘導及び維持において重要な役割を果たす。
CD4+T細胞とは、制御性T細胞以外のCD4+T細胞を意味する。従来型CD4+メモリT細胞は、CD4、CD3を発現するが、FOXP3は発現しないことを特徴とする。従来型CD4+メモリT細胞は、CD45RAを発現する従来型CD4+ナイーブT細胞とは対照的に、CD45RAを発現しないことを更に特徴とする従来型CD4+T細胞のサブセットである。
Treg細胞の選択的活性化とは、本質的に他のT細胞サブセット(例えば、CD4+Tヘルパー細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、NK T細胞)又はナチュラルキラー(NK)細胞を同時に活性化することのないTreg細胞の活性化を意味する。これら細胞型を同定及び区別する方法については、実施例に記載する。活性化は、IL-2受容体のシグナル伝達の誘導(例えば、リン酸化STAT5aの検出によって測定したとき)、増殖の誘導(例えば、Ki-67の検出によって測定したとき)、及び/又は活性化マーカー(例えば、CD25等)の発現のアップレギュレーションを含み得る。
ペプチドリンカーという用語は、1つ以上のアミノ酸、典型的には約2~20アミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当技術分野において公知であるか又は本明細書に記載される。好適な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(G4S)n、(SG4)n、又はG4(SG4)”ペプチドリンカーを含み、「n」は、一般に、1~10、典型的には2~4の数字である。
改変という用語は、ポリペプチドのペプチド骨格(例えば、アミノ酸配列)の任意の操作又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)を指す。
ノブ・イントゥ・ホール改変とは、i)一方の重鎖のCH3ドメインでは、あるアミノ酸残基がより大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換されて、一方の重鎖のCH3ドメインにおける界面内に、他方の重鎖のCH3ドメインにおける界面内のくぼみ(「ホール」)に配置可能な隆起(「ノブ」)が作製され、そして、ii)他方の重鎖のCH3ドメインでは、あるアミノ酸残基がより小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換されて、第2のCH3ドメインにおける界面内に、第1のCH3ドメインにおける界面内に隆起(「ノブ」)を配置可能なくぼみ(「ホール」)が作製される、CH3ドメインにおける2本の免疫グロブリン重鎖間の界面内の改変を指す。一実施形態では、「ノブ・イントゥ・ホール改変」は、抗体重鎖の一方にアミノ酸置換T366W及び任意でアミノ酸置換S354Cを含み、そして、抗体重鎖の他方にアミノ酸置換T366S、L368A、Y407V、及び任意でY349Cを含む。ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号;米国特許第7,695,936号;Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)、及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面に隆起(「ノブ」)、そして、第2のポリペプチドの界面に対応するくぼみ(「ホール」)を導入することを含み、その結果、ヘテロ二量体の形成を促進し、ホモ二量体の形成を妨げるために隆起をくぼみ内に配置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置換することによって構築される。大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)で置換することによって、隆起と同一又は同様のサイズの代償性くぼみが第2のポリペプチドの界面に作製される。それぞれS354位及びY349位に2つのシステイン残基を導入することにより、Fc領域における2本の抗体重鎖間にジスルフィド架橋が形成されて、二量体が更に安定化される(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
アミノ酸置換とは、ポリペプチドにおいてあるアミノ酸を別のアミノ酸で置換することを指す。一実施形態では、アミノ酸は、例えば保存的アミノ酸置換等、類似の構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換される。
保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含み;極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンを含み;正荷電(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含み;負荷電(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。非保存的置換は、これらクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。例えば、ある群(例えば、極性)のアミノ酸が異なる群(例えば、塩基性)の別のアミノ酸で置換される等、アミノ酸置換によって、あるアミノ酸が異なる構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換される場合もある。アミノ酸置換は、当技術分野において周知の遺伝学的又は化学的方法を用いて作製することができる。遺伝学的方法は、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成等を含み得る。化学的修飾等の遺伝子操作以外の方法によってアミノ酸の側鎖基を変化させる方法が有用である場合もあると考えられる。同じアミノ酸置換を表すために本明細書では様々な表記を用いる場合がある。例えば、免疫グロブリン重鎖の329位におけるプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G、又はPro329Glyと表すことができる。
参照ポリペプチド配列に関するアミノ酸配列同一性パーセント(%)は、配列をアラインメントし、配列同一性パーセントを最も高くするために必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の百分率として定義され、そして、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とはみなさない。アミノ酸配列同一性パーセントを求めるためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当技術分野における技能の範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最高のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかし、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて求められる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはGenentech,Inc.によって作成され、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)にユーザ文書と共に申請され、米国著作権登録第TXU510087号として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であるか、又はソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムにおいて用いるためにコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変化しない。アミノ酸配列を比較するためにALIGN-2を使用する状況では、所与のアミノ酸配列Aの所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して特定のアミノ酸配列同一性%を有するか又は含む所与のアミノ酸配列Aと表すこともできる)は、以下の通り計算される:100×分数X/Y(式中、Xは、このプログラムによるA及びBのアラインメントにおける、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって完全一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の合計数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくはならないことが理解される。特に具体的に指定しない限り、本明細書で用いられる全てのアミノ酸配列同一性%の値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて直前の段落に記載の通り得られる。本明細書で互換的に使用するとき、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、若しくは塩基、及び/又はこれらの類似体、あるいは、DNA若しくはRNAポリメラーゼによって又は合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であってよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びその類似体等の修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、標識へのコンジュゲーション等、合成後に行われる修飾(複数可)を含んでいてもよい。
本発明の参照ヌクレオチド配列に対して例えば少なくとも95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸又はポリペプチドとは、ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチド当たり5個以下の点変異を含んでいてもよいことを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意図する。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列におけるヌクレオチドの5%以下を欠失させたり別のヌクレオチドで置換したりしてもよく、又は参照配列における全ヌクレオチドの5%以下の数のヌクレオチドを参照配列に挿入してもよい。参照配列のこれら変化は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置又はこれら末端位置間のどこに生じてもよく、参照配列又は参照配列内の1つ以上の連続する基において残基間に個々に散在していてもよい。実際問題として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が本発明のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるかどうかは、ポリペプチドについて上で論じたもの(例えば、ALIGN-2)等の公知のコンピュータプログラムを用いて従来通り決定することができる。
ベクターとは、本明細書で使用するとき、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターに加えて、ベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれているベクターも含む。特定のベクターは、動作可能に連結されている核酸の発現を導くことができる。このようなベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、このような細胞の後代も含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、これらは、一次形質転換細胞及び継代回数にかかわらず該一次形質転換細胞に由来する後代を含む。後代は、核酸含量が親細胞と完全には同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。本明細書では、最初に形質転換した細胞においてスクリーニング又は選別したのと同じ機能又は生物活性を有する変異体後代が含まれる。宿主細胞は、本発明の融合タンパク質を作製するために用いることができる任意の種類の細胞系である。宿主細胞は、ほんの数例を挙げると、培養細胞、例えば、CHO細胞、BH細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、又はハイブリドーマ細胞等の哺乳類培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び植物細胞を含むが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は植物若しくは動物の培養組織内に含まれる細胞も含む。
剤の有効量とは、投与される細胞又は組織において生理学的変化をもたらすのに必要な量を指す。
剤、例えば医薬組成物の治療上有効な量とは、所望の治療的又は予防的結果を達成するのに必要な投与量で必要な期間有効な量を指す。例えば、治療上有効な量の剤は、疾患の有害作用を排除、低減、遅延、最小化、又は予防する。
個体又は対象は、哺乳類である。哺乳類は、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない。特に、個体又は対象は、ヒトである。
医薬組成物とは、含有される活性成分の生物活性を有効にすることができるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に対して許容不可能なほどの毒性を有する追加成分を含有しない調製品を指す。
薬学的に許容し得る担体とは、対象に対して非毒性である、医薬組成物中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容し得る担体は、バッファ、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含むが、これらに限定されない。
治療(及び「治療する」又は「治療している」等の文法上の変形)とは、治療される個体における疾患の自然経過を変化させようとする試みにおける臨床的介入を指し、そして、予防のために実施してもよく、臨床病理の経過中に実施してもよい。治療の望ましい効果は、疾患の発症又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の減弱、転移の予防、疾患増悪率の低減、疾患状態の寛解又は緩和、及び緩解又は予後の改善を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施態様では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を減速させるために用いられる。
自己免疫疾患とは、個体自身の組織から発生し、そして、個体自身の組織に対する非悪性の疾患又は障害を指す。自己免疫疾患又は障害の例は、乾癬及び皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患等の炎症応答;炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連する応答;皮膚炎;湿疹及び喘息等のアレルギー症状;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE)(ループス腎炎、皮膚ループスを含むがこれらに限定されない);糖尿病(例えば、1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症及び若年発症糖尿病を含むが、これらに限定されない。自己免疫疾患の追加の例としては、例えば、多発性硬化症(MS)、ループス、強直性脊椎炎、関節炎、大腸炎、1型糖尿病、クローン病、心臓病、移植片対宿主病、妊娠中の免疫応答による合併症、アレルギー、細胞又は固形臓器移植の拒絶反応、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び重症筋無力症が挙げられる。
実質的にとは、対象となる特徴又は特性の全体又はほぼ全体の範囲又は程度を示す質的な状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的及び化学的な現象が完結すること及び/若しくは完全性に向かって進行すること、又は絶対的な結果を達成若しくは回避することは、たとえあったとしても稀であることを理解するであろう。従って、多くの生物学的及び化学的な現象に固有の潜在的な完全性の欠如を捉えるために、本明細書では実質的という用語を使用する。
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解され、そして、本出願が属する技術分野で一般的に使用されるのと同じ意味を有し、このような技術は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
[実施形態の説明]
本発明は、特に、自己免疫疾患を予防及び治療するための組成物及び方法を提供する。本発明は、制御性T細胞を増殖させるための組成物及び方法を提供する。一態様では、本発明は、制御性T細胞の増殖を活性化する方法においてヒトインターロイキン-2ムテインを使用する。
本発明は、特に、自己免疫疾患を予防及び治療するための組成物及び方法を提供する。本発明は、制御性T細胞を増殖させるための組成物及び方法を提供する。一態様では、本発明は、制御性T細胞の増殖を活性化する方法においてヒトインターロイキン-2ムテインを使用する。
本発明の種々の態様について以下の章で詳細に説明する。章の使用は、本発明を限定することを意味するものではない。各章は、本発明のいずれの態様にも適用可能である。本願では、特に指定しない限り、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。
IL-2ムテイン
Treg細胞の存在及び/又は活性を増強するために用いることができる様々なIL-2ムテインについて、本明細書において記載する。本明細書に記載されるIL-2ムテインは、自己免疫疾患を治療するために用いることができる。
Treg細胞の存在及び/又は活性を増強するために用いることができる様々なIL-2ムテインについて、本明細書において記載する。本明細書に記載されるIL-2ムテインは、自己免疫疾患を治療するために用いることができる。
IL-2バリアント(本明細書では「IL-2ムテイン」とも称する)は、野生型IL-2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。IL-2バリアントは、野生型IL-2の機能的断片と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸の配列を更に含む。本明細書で使用するとき、「野生型IL-2」は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味するものとする(表1を参照)。
バリアントは、野生型IL-2のアミノ酸配列内に1つ以上の置換、欠失、又は挿入を含有していてよい。本明細書では、アミノ酸の1文字表記に続いてIL-2のアミノ酸位置によって残基を表記する。本明細書では、アミノ酸の1文字表記に続いてIL-2のアミノ酸位置、続いて置き換わるアミノ酸の1文字表記によって置換を表記する。
一態様では、本発明は、制御性T細胞の増殖を選択的に活性化し得る、T111H、T37Y、E15T、M23L、P34F、E68F、及びE62Aからなる群から選択される野生型IL-2に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含むヒトインターロイキン-2ムテインを提供する。従って、幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111H置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T37Y置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E15T置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、M23L置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P34F置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E68F置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E62A置換を特徴とする少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。
一態様では、IL-2変異は、V91I、V91L、V91W、E95Q、E95S、E95N、L12Y、L19V、D84E、L19F、E95D、I92Y、E95T、I92V、L12V、I92W、D84T、D84S、M23L、I92F、M23I、H16Y、E15D、L12I、E15S、L12M、D20N、H16R、E15T、D20T、N88S、S87T、V91F、V91M、H16K、L19M、L19I、T111W、F42R、T111F、D109H、P34Q、P34W、D109W、T111N、T41Y、Y45W、L72W、L72F、E68Q、P34F、P65R、P65E、P65Q、E61W、T111H、F42M、T37Y、K43W、T111M、E68F、T111Y、N71W、L72R、E68W、K35T、E106W、K48V、P34Y、D109K、T111Q、E68R、K48S、K48H、P65N、E68Y、D109R、M104H、T41H、M104I、K48I、又はS87Eからなる群から選択される。従って、幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、V91Iアミノ酸置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、V91L置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、V91W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E95Q置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E95N置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L12Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L19V置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D84E置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L19F置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E95D置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、I92Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E95T置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、I92V置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L12V置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、I92W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D84T置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D84S置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、M23L置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、I92F置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、M23I置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、H16Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E15D置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L12I置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E15S置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L12M置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D20N置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、H16R置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E15T置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D20T置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、N88S置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、S87T置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、V91F置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、V91M置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、H16K置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L19M置換を含む。L19I置換。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、F42R置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111F置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D109H置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P34Q置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P34W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D109W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111N置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T41Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、Y45W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L72W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L72F置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E68Q置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P34F置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P65R置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P65E置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P65Q置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E61W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111H置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、F42M置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T37Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、K43W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111M置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E68F置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、N71W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、L72R置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E68W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、K35T置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E106W置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、K48V置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P34Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D109K置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T111Q置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E68R置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、K48S置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、K48H置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、P65N置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、E68Y置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、D109R置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、M104H置換(substation)を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、T41H置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、M104I置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、K48I置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、S87E置換を含む。幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、V91I、V91L、V91W、E95Q、E95S、E95N、L12Y、L19V、D84E、L19F、E95D、I92Y、E95T、I92V、L12V、I92W、D84T、D84S、M23L、I92F、M23I、H16Y、E15D、L12I、E15S、L12M、D20N、H16R、E15T、D20T、N88S、S87T、V91F、V91M、H16K、L19M、L19I、T111W、F42R、T111F、D109H、P34Q、P34W、D109W、T111N、T41Y、Y45W、L72W、L72F、E68Q、P34F、P65R、P65E、P65Q、E61W、T111H、F42M、T37Y、K43W、T111M、E68F、T111Y、N71W、L72R、E68W、K35T、E106W、K48V、P34Y、D109K、T111Q、E68R、K48S、K48H、P65N、E68Y、D109R、M104H、T41H、M104I、K48I、及びS87Eから選択されるより多くの置換を含む。
一態様では、本発明は、野生型IL-2よりもIL-2Rαに対して高い親和性を有する免疫抑制性IL-2バリアントを提供する。例えば、幾つかの実施形態では、IL-2Rαに対してより高い親和性を有するIL-2ムテインは、T111H、T37Y、P34F、及びE68Fから選択されるアミノ酸置換を有するIL-2ムテインを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のIL-2バリアントは、約4.35×10-6(M)~約7.62×10-11(M)の結合親和性を有する。従って、幾つかの実施形態では、本明細書に記載のIL-2バリアントは、約4×10-6(M)、約5×10-6(M)、約6×10-6(M)、約7×10-6(M)、又は約8×10-6(M)の結合親和性を有する。
幾つかの実施形態では、IL-2バリアントは、IL-2Rαに接触するか又はIL-2Rαに接触する他の位置の配向を変化させるIL-2配列の位置に1つ以上の変異を含有し、その結果、IL-2Rαに対する親和性がより高くなる。変異は、公開されている結晶構造に基づいて予測された、IL-2Rαに近接していることが知られている領域内又はその近傍に存在し得る。設計され、インビトロ結合アッセイ及びインビボアッセイにおいて機能的特性について試験された特定のIL-2ムテインを本明細書に記載する。
別の態様では、本発明は、野生型IL-2よりもIL-2Rβに対して低い親和性を有する免疫抑制性IL-2バリアントを提供する。例えば、幾つかの実施形態では、IL-2Rβに対してより低い親和性を有するIL-2ムテインは、E15T及びM23Lから選択されるアミノ酸置換を有するIL-2ムテインを含む。幾つかの実施形態では、IL-2バリアントは、1.6×10-6(M)超のIL-2Rβに対する親和性を有する。
更に別の態様では、本発明は、IL-2Rαに対してより低い親和性を有する免疫抑制性IL-2ムテインを提供する。一実施形態では、IL-2Rαに対してより低い親和性を有するIL-2ムテインは、E62A置換を含む。
一態様では、IL-2ムテインは、WT IL-2よりもIL-2Rβに対して高い結合親和性を有する。
免疫抑制性IL-2バリアントは、IL-2Rを介して野生型IL-2によって活性化される特定の経路を通じたシグナル伝達の変化を示し、その結果、T-regが優先的に増殖/生存/活性化されるバリアントも含む。IL-2Rが活性化された際にリン酸化されることが知られている分子としては、STAT5、p38、ERK、SYK、LCK、AKT、及びmTORが挙げられる。野生型IL-2と比較して、免疫抑制性IL-2バリアントは、FOXP3 T細胞におけるPI3Kシグナル伝達能が低下する場合があり、これは、野生型IL-2と比較したAKT及び/又はmTORのリン酸化の減少によって測定することができる。そのようなバリアントは、IL-2Rβ若しくはIL-2Rγに接触するか又はIL-2Rβ若しくはIL-2Rγに接触する他の位置の配向を変化させる位置に変異を含み得る。
特定の実施形態では、IL-2バリアントは、IL-2Rα若しくはIL-2Rβ又はこれら両方への結合を増加又は減少させる変異を併せ持つ変異の組み合わせを含む。好ましい実施形態では、IL-2バリアントは、FOXP3陽性制御性T細胞ではSTAT5のリン酸化を刺激するが、野生型IL-2と比較して、FOXP3陰性T細胞でSTAT5及びAKTのリン酸化を誘導する能力が低下している。
幾つかの実施形態では、IL-2バリアントは、IL-2Rβ又はIL-2Rγに対する親和性に影響を及ぼさない野生型IL-2配列と比較して1つ以上の変異を更に含んでいてもよいが、ただし、IL-2バリアントが、FOXP3を発現しない他のT細胞を超えてFOXP3+T-regの優先的な増殖、生存、活性化、又は機能を促進することを条件とする。好ましい実施形態では、そのような変異は保存的変異である。
幾つかの実施形態では、本明細書で使用するとき、本発明に好適なIL-2ムテインは、実質的なIL-2生物活性を保持している任意の野生型及び改変型のIL-2バリアント(例えば、アミノ酸の変異、欠失、挿入を有するIL-2タンパク質、及び/又は融合タンパク質)を含む。通常、組み換えIL-2タンパク質は、組み換え技術を使用して生成される。しかし、天然資源から精製したか又は化学的に合成したIL-2タンパク質(野生型又は改変型)を本発明に従って使用することもできる。
幾つかの実施形態では、好適な組み換えIL-2ムテインは、約1分間、約2分間、約10分間、約15分間、約30分間、約60分間、約70分間、約80分間、約90分間、約100分間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、若しくは約24時間、又はそれよりも長いインビボ半減期を有する。幾つかの実施形態では、好適な組み換えIL-2ムテイン又は組み換えIL-2融合タンパク質は、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、約54時間、若しくは約60時間、又はそれよりも長いインビボ半減期を有する。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインは、0.5~24時間、1日間~10日間、1日間~9日間、1日間~8日間、1日間~7日間、1日間~6日間、又は1日間~5日間のインビボ半減期を有する。
幾つかの実施形態では、遺伝子操作された組み換えIL-2バリアントが本明細書に提示される。幾つかの実施形態では、遺伝子操作された組み換えバリアントは、IgG Fcに融合している。幾つかの実施形態では、遺伝子操作された組み換えIL-2バリアントは、ヒトIgG1 Fcに融合している。
当業者には理解されるように、任意のそのような重鎖CDR配列は、例えば分子生物学の技術によってIL-2と、本明細書に開示されるか又はそうでなければ当技術分野において公知の任意のフォーマットの抗体又は結合分子に存在し得る場合、本明細書に開示されるか又はそうでなければ当技術分野において公知の任意のフレームワーク領域、CDR、若しくは定常ドメイン、又はそれらの一部を含む、本明細書に提供されるか又はそうでなければ当技術分野において公知の任意の他の抗体の配列又はドメインと容易に組み合わせることができる。
自己免疫疾患
自己免疫性の疾患、障害、又は病態は、対象におけるTregの増殖及び/又は活性を促進するIL-2ムテインの投与による治療を受け入れやすいか又は該投与によって予防される可能性がある。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のIL-2ムテインは、自己免疫性の疾患、障害、又は病態を治療するために使用される。
自己免疫性の疾患、障害、又は病態は、対象におけるTregの増殖及び/又は活性を促進するIL-2ムテインの投与による治療を受け入れやすいか又は該投与によって予防される可能性がある。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のIL-2ムテインは、自己免疫性の疾患、障害、又は病態を治療するために使用される。
発症及び/又は重症度が低下し得るそのような疾患、障害、及び病態としては、炎症、自己免疫疾患、腫瘍随伴性自己免疫疾患、軟骨炎症、線維性疾患及び/又は骨分解、関節炎、関節リウマチ、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、少関節型若年性関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、全身型若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性腸炎性関節炎、若年性反応性関節炎、若年性レーター症候群、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性強皮症、若年性全身性エリテマトーデス、若年性血管炎、少関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身型関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸炎性関節炎、反応性関節炎、レーター症候群、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、血管炎、筋炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、変形性関節症、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛、サルコイドーシス、強皮症、硬化症、原発性胆道硬化症、硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、乾癬、尋常性乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、動脈硬化症、ループス、スチル病、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、多発性硬化症(MS)、喘息、COPD、ギランバレー病、I型糖尿病、甲状腺炎(例えば、グレーブス病)、アジソン病、レイノー現象、自己免疫性肝炎、GVHD、移植拒絶反応等が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、治療上有効な量のT-reg選択的IL-2バリアントを含む医薬組成物が提供される。
幾つかの実施形態では、疾患は、MS、ループス、強直性脊椎炎、関節炎、大腸炎、I型糖尿病、炎症性疾患の重症度の軽減、クローン病、心臓病、妊娠中の免疫応答に起因する合併症の軽減、移植片対宿主病(GVHD)に起因する合併症の軽減、アレルギーの重症度の軽減、HSC又は同種固形臓器移植の拒絶反応の低減、うつ、ALS、及び/又は重症筋無力症からなる群から選択される。
「治療」という用語は、障害の少なくとも1つの症状若しくは他の局面の緩和若しくは予防、又は疾患の重症度の低下等を包含する。T-reg選択的IL-2バリアントは、実現可能な治療剤を構成するために完全な治癒をもたらす必要はなく、疾患の全ての症状又は徴候を消失させる必要もない。関連分野で認識されているように、治療剤として使用される薬物は、所与の疾患状態の重症度を低下させることができるが、有用な治療剤であるとみなされるには疾患の全ての徴候を消失させる必要はない。同様に、予防的に施される治療は、実現可能な予防剤を構成するために病態の発症を完全に防止する必要はない。(例えば、その症状の数又は重症度を低減するによって、又は別の治療の有効性を高めることによって、又は別の有益な効果をもたらすことによって)単に疾患の影響を低減したり、対象において疾患が発症又は悪化する可能性を低減したりことで十分である。本発明の一実施形態は、特定の障害の重症度を反映している指標のベースラインを超えて予防又は治療する、すなわち持続的な改善を誘導するのに十分な量及び時間で、患者にT-reg-選択的IL-2バリアントを投与することを含む方法に関する。
自己免疫炎症の抑制における制御性T細胞(Treg)
制御性T細胞(Treg)細胞は、自己寛容及び正常な免疫ホメオスタシスの維持、並びに自己免疫炎症の抑制において重要な役割を果たすFOXP3+CD4+細胞である。現在の免疫抑制療法は、一般に、個々の炎症促進性経路を標的とするので、部分的な効力しか示さないか又は特定の疾患にしか適用することができない場合が多い。本発明は、天然型サプレッサー細胞の選択的産生及び活性化の増加を含む、自己免疫疾患を抑制する方法を提供する。
制御性T細胞(Treg)細胞は、自己寛容及び正常な免疫ホメオスタシスの維持、並びに自己免疫炎症の抑制において重要な役割を果たすFOXP3+CD4+細胞である。現在の免疫抑制療法は、一般に、個々の炎症促進性経路を標的とするので、部分的な効力しか示さないか又は特定の疾患にしか適用することができない場合が多い。本発明は、天然型サプレッサー細胞の選択的産生及び活性化の増加を含む、自己免疫疾患を抑制する方法を提供する。
T-reg細胞の増殖、生存、活性化、及び/又は機能を選択的に促進する治療剤について、本明細書に記載する。「選択的に促進する」とは、治療剤がT-reg細胞における活性は促進するが、非制御性T細胞における活性を促進する能力は限定的であるか又は欠如していることを意味する。
特定の実施形態では、剤は、IL-2バリアントである。具体的には、IL-2バリアントは、T-reg細胞の成長/生存のこれら活性を促進するが、野生型IL-2と比較して非制御性T細胞(FOXP3 CD25-)及びNK細胞の増殖、生存、活性化、及び/又は機能を促進する能力が低下しているので、副作用を最小限に抑えられる。
特定の実施形態では、そのようなIL-2バリアントは、IL-2RサブユニットIL-2Rα(CD25)に対する親和性の上昇と、シグナル伝達サブユニットIL-2Rβ及び/又はIL-2Rγに対する親和性の低下との組み合わせを通して機能する。IL-2及びそのバリアントは、当技術分野では免疫賦活剤として、例えば癌又は感染性疾患を治療する方法において使用されているが、本明細書に記載のIL-2バリアントは、免疫抑制剤として、例えば炎症性障害を治療する方法において特に有用である。
IL-2融合タンパク質
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の好適なIL-2ムテインを別のペプチドに融合させてもよい。例えば、組み換えIL-2ムテインは、例えば、IL-2タンパク質の安定性、効力、及び/若しくは送達を増強若しくは増加させる、又は免疫原性を低下若しくは消失させる、又はクリアランスすることによってIL-2の治療効果を促進することができる別のドメイン又は部分とIL-2ドメインとの融合タンパク質であり得る。IL-2融合タンパク質のためのそのような好適なドメイン又は部分としては、Fcドメイン、XTENドメイン、又はヒトアルブミン融合体が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、IL-2融合タンパク質のためのそのような好適なドメイン又は部分としては、抗体のVHドメインが挙げられる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の好適なIL-2ムテインを別のペプチドに融合させてもよい。例えば、組み換えIL-2ムテインは、例えば、IL-2タンパク質の安定性、効力、及び/若しくは送達を増強若しくは増加させる、又は免疫原性を低下若しくは消失させる、又はクリアランスすることによってIL-2の治療効果を促進することができる別のドメイン又は部分とIL-2ドメインとの融合タンパク質であり得る。IL-2融合タンパク質のためのそのような好適なドメイン又は部分としては、Fcドメイン、XTENドメイン、又はヒトアルブミン融合体が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、IL-2融合タンパク質のためのそのような好適なドメイン又は部分としては、抗体のVHドメインが挙げられる。
Fcドメイン
幾つかの実施形態では、好適な組み換えIL-2タンパク質は、FcRn受容体に結合するFcドメイン又はその一部を含む。非限定的な例として、好適なFcドメインは、IgG等の免疫グロブリンサブクラスに由来していてよい。幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来する。幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、IgM、IgA、IgD、又はIgEに由来する。特に好適なFcドメインとしては、ヒト又はヒト化の抗体に由来するものが挙げられる。幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、改変型ヒトFc部分等の改変型Fc部分である。
幾つかの実施形態では、好適な組み換えIL-2タンパク質は、FcRn受容体に結合するFcドメイン又はその一部を含む。非限定的な例として、好適なFcドメインは、IgG等の免疫グロブリンサブクラスに由来していてよい。幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来する。幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、IgM、IgA、IgD、又はIgEに由来する。特に好適なFcドメインとしては、ヒト又はヒト化の抗体に由来するものが挙げられる。幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、改変型ヒトFc部分等の改変型Fc部分である。
幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、表1に提供されるようなアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、表1に開示されるFcドメイン配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上相同又は同一のアミノ酸配列を含む。
FcドメインとFcRn受容体との結合が改善された結果、組み換えタンパク質の血清半減期が延長されることが企図される。従って、幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、FcRnへの結合を改善する1つ以上のアミノ酸変異を含む。FcRnへの結合を改善する効果を有するFcドメイン内の様々な変異は、当技術分野において公知であり、本発明の実施に適合させることができる。幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、EU付番に従って、ヒトIgG1のThr250、Met252、Ser254、Thr256、Thr307、Glu380、Met428、His433、及び/又はAsn434に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を含む。
幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、EU付番に従って、ヒトIgG1のL234、L235、H433、及びN434に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を含む。
組み換え融合タンパク質のFc部分は、炎症促進作用をもたらすFc受容体を発現する細胞のターゲティングにつながり得る。Fcドメインにおける幾つかの変異によって、組み換えタンパク質のFcガンマ受容体への結合が減少し、それによって、エフェクター機能が阻害される。一実施形態では、エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である。例えば、好適なFcドメインは、L234A(Leu234Ala)及び/又はL235A(Leu235Ala)(EU付番)の変異を含有し得る。幾つかの実施形態では、L234A及びL235Aの変異はLALA変異とも称される。非限定的な例として、好適なFcドメインは、変異L234A及びL235A(EU付番)を含有し得る。
幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、H433K(His433Lys)及び/又はN434F(Asn434Phe)(EU付番)の変異を含有し得る。非限定的な例として、好適なFcドメインは、変異H433K及びN434F(EU付番)を含有し得る。幾つかの実施形態では、H433K及びN434Fの変異はNHance変異とも称される。
幾つかの実施形態では、好適なFcドメインは、L234A(Leu234Ala)、L235A(Leu235Ala)、H433K(His433Lys)、及び/又はN434F(Asn434Phe)(EU付番)の変異を含有し得る。非限定的な例として、好適なFcドメインは、変異L234A、L235A、H433K、及びN434F(EU付番)を含有し得る。Fcドメインに含めることができる追加のアミノ酸置換としては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,277,375号、同第8,012,476号、及び同第8,163,881号に記載されているものが挙げられる。
例示的なIL-2融合タンパク質
本発明は、例えばTeff又はNK細胞よりもTregを優先的に増殖させるIL-2ムテインを提供する。本明細書に提供されるIL-2ムテインは、ムテインの血清半減期を延長することによって患者における副作用又は有害事象の可能性又は強度が増加するリスクを増大させることなく、そのような半減期を延長する分子を含むか又はそれに融合するように変更してよい。このように血清半減期が延長されたムテインを皮下投与することにより、より低い全身最大曝露(Cmax)で標的を長時間にわたってカバーすることができるようになる。血清半減期の延長により、ムテインの投薬レジメンを少なくしたり、頻度を減らしたりすることが可能になる。
本発明は、例えばTeff又はNK細胞よりもTregを優先的に増殖させるIL-2ムテインを提供する。本明細書に提供されるIL-2ムテインは、ムテインの血清半減期を延長することによって患者における副作用又は有害事象の可能性又は強度が増加するリスクを増大させることなく、そのような半減期を延長する分子を含むか又はそれに融合するように変更してよい。このように血清半減期が延長されたムテインを皮下投与することにより、より低い全身最大曝露(Cmax)で標的を長時間にわたってカバーすることができるようになる。血清半減期の延長により、ムテインの投薬レジメンを少なくしたり、頻度を減らしたりすることが可能になる。
IL-2バリアントは、患者に投与されたときにIL-2バリアントの血清半減期を増加させるための1つ以上の化合物を含んでいてもよい。このような半減期延長分子としては、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、低密度及び高密度リポタンパク質、抗体Fc(単量体又は二量体)、トランスサイレチン(TTR)、及びTGF-β潜伏関連ペプチド(LAP)が挙げられる。また、PEG化TTR(米国特許出願公開第2003/0195154号)等の血清半減期延長分子の組み合わせを含むIL-2バリアントも企図される。
本明細書に提供されるIL-2ムテインの血清半減期は、本質的に当技術分野において公知の任意の方法によって延長することができる。そのような方法としては、新生児Fey受容体に結合するか又は血清半減期が延長されたタンパク質、例えばIgG若しくはヒト血清アルブミンに結合するペプチドを含むようにIL-2ムテインの配列を変更することが挙げられる。他の実施形態では、IL-2ムテインは、延長された半減期を融合分子に付与するポリペプチドに融合される。このようなポリペプチドとしては、IgG Fc若しくは新生児Fey受容体に結合する他のポリペプチド、ヒト血清アルブミン、又は血清半減期が延長されたタンパク質に結合するポリペプチドが挙げられる。
幾つかの実施形態では、IL-2ムテインは、IgG Fc分子と融合している。IL-2ムテインは、IgG Fc領域のN末端に融合させてもよく、C末端に融合させてもよい。
本発明の一実施形態は、IL-2ムテインを抗体のFc領域に融合させることによって創出された2つのFc融合ポリペプチドを含む二量体に関する。二量体は、例えば、融合タンパク質をコードしている遺伝子融合体を適切な発現ベクターに挿入し、組み換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞において該遺伝子融合体を発現させ、発現した融合タンパク質を抗体分子に酷似するようにアセンブリさせ、その際にFc部位間に鎖間結合を形成させて二量体を得ることによって作製することができる。
本明細書で使用するとき、「Fcポリペプチド」又は「Fc領域」という用語は、抗体のFc領域に由来するポリペプチドのネイティブ型及びムテイン型を含み、本発明のIL-2ムテイン融合タンパク質又は抗IL-2抗体のいずれかの一部であり得る。二量体化を促進するヒンジ領域を含有するこのようなポリペプチドの切断型も含まれる。特定の実施形態では、Fc領域は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含む。血清半減期が長いことに加えて、Fc部分(及びそれから形成されるオリゴマー)を含む融合タンパク質は、プロテインA又はプロテインGのカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって容易に精製できるという利点がある。好ましいFc領域は、IgGl、lgG2、lgG3、及びlgG4を含むヒトIgGに由来する。本明細書では、Fc内の特定の残基を位置によって同定する。Fcの位置は全て、EU付番スキームに基づく。
抗体のFc部分の機能の1つは、抗体がその標的に結合したときに免疫系に情報を伝達することである。これが「エフェクター機能」であると考えられる。情報伝達によって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)が引き起こされる。ADCC及びADCPは、免疫系の細胞の表面上にあるFc受容体にFcが結合することを通して媒介される。CDCは、Fcが補体系のタンパク質、例えばClqと結合することを通して媒介される。
IgGのサブクラスは、エフェクター機能を媒介する能力にばらつきがある。例えば、IgGlは、IgG2及びlgG4よりもADCC及びCDCの媒介に優れている。抗体のエフェクター機能は、Fcに1つ以上の変異を導入することによって増加又は減少させることができる。本発明の実施形態は、エフェクター機能を高めるために遺伝子操作されたFcを有するIL-2ムテインFc融合タンパク質を含む(米国特許第7,317,091号及びStrohl,Curr.Opin.Biotech.,20:685-691,2009;これらはいずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
製造方法
本明細書に記載のIL-2バリアントは、当技術分野で公知の任意の好適な方法を用いて生成することができる。そのような方法は、例えば、IL-2バリアントをコードしているDNA配列を構築し、その配列を好適に形質転換された宿主で発現させることを含む。この方法により、本発明の組み換えバリアントが生成される。しかし、化学合成、又は化学合成と組み換えDNA技術との組み合わせによってバリアントを生成することもできる。バッチ式生成又は灌流式生成の方法が、当技術分野において公知である。Freshey,R.I.( ed),3“Animal Cell Culture:A Practical Approach,”2nd ed.,1992,IRL Press.Oxford,England;Mather,J.P.“Laboratory Scaleup of Cell Cultures(0.5-50 liters),“Methods Cell Biolog 57:219-527(1998);Hu,W.S.,and Aunins,J.G.,“Large-scale Mammalian Cell Culture,”Curr Opin Biotechnol 8:148-153(1997);Konstantinov,K.B.,Tsai,Y.,Moles,D.,Matanguihan,R.,“Control of long-term perfusion Chinese hamster ovary cell culture by glucose auxostat.,”Biotechnol Prag 12:100-109(1996)を参照。
本明細書に記載のIL-2バリアントは、当技術分野で公知の任意の好適な方法を用いて生成することができる。そのような方法は、例えば、IL-2バリアントをコードしているDNA配列を構築し、その配列を好適に形質転換された宿主で発現させることを含む。この方法により、本発明の組み換えバリアントが生成される。しかし、化学合成、又は化学合成と組み換えDNA技術との組み合わせによってバリアントを生成することもできる。バッチ式生成又は灌流式生成の方法が、当技術分野において公知である。Freshey,R.I.( ed),3“Animal Cell Culture:A Practical Approach,”2nd ed.,1992,IRL Press.Oxford,England;Mather,J.P.“Laboratory Scaleup of Cell Cultures(0.5-50 liters),“Methods Cell Biolog 57:219-527(1998);Hu,W.S.,and Aunins,J.G.,“Large-scale Mammalian Cell Culture,”Curr Opin Biotechnol 8:148-153(1997);Konstantinov,K.B.,Tsai,Y.,Moles,D.,Matanguihan,R.,“Control of long-term perfusion Chinese hamster ovary cell culture by glucose auxostat.,”Biotechnol Prag 12:100-109(1996)を参照。
本明細書に記載のIL-2バリアントを生成する幾つかの実施形態では、野生型IL-2をコードしているDNA配列を単離又は合成し、次いで、部位特異的変異誘発によって1つ以上のコドンを変化させることによってDNA配列を構築する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるMark et.al.,“Site-specific Mutagenesis Of The Human Fibroblast Interferon Gene”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,pp.5662-66(1984);及び米国特許第4,588,585号を参照。様々な変異及びその創出方法は当技術分野において公知であり、例えば、アミノ酸及び/又は核酸の欠失、挿入、置換、及び/又は融合を含む。
IL-2バリアントをコードしているDNA配列を構築する別の方法は、化学合成である。これは、例えば、本明細書に記載する特性を示すIL-2バリアントをコードしているタンパク質配列の、化学的手段によるペプチドの直接合成を含む。この方法では、天然のアミノ酸及び非天然のアミノ酸の両方を組み込むことができる。あるいは、オリゴヌクレオチド合成機を用いて化学的手段によって、所望のIL-2バリアントをコードしている遺伝子を合成することもできる。幾つかの実施形態では、そのようなオリゴヌクレオチドは、所望のIL-2バリアントのアミノ酸配列に基づいて設計され、組み換えバリアントが生成される宿主細胞において好都合なコドンが選択される。これに関して、遺伝コードは縮重しており、1つのアミノ酸が1つを超えるコドンによってコードされている場合があることはよく認識されている。例えば、Phe(F)は、TTC又はTTTの2つのコドンによってコードされており、Tyr(Y)は、TAC又はTATによってコードされており、His(H)は、CAC又はCATによってコードされている。Trp(W)は、1つのコドンTGGによってコードされている。従って、特定のIL-2バリアントをコードしている所与のDNA配列に対して、そのIL-2バリアントをコードしている多くのDNA縮重配列が存在することが理解されるであろう。
IL-2バリアントをコードしているDNA配列は、部位特異的変異誘発、化学合成、又は他の方法のいずれによって調製されたかにかかわらず、シグナル配列をコードしているDNA配列を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。幾つかの実施形態では、そのようなシグナル配列は、存在する場合、IL-2バリアントを発現させるために選択された細胞によって認識されるものである。原核生物、真核生物、又は2つの組み合わせであってよい。また、ネイティブIL-2のシグナル配列であってもよい。シグナル配列を含めるかどうかは、IL-2バリアントが作製された組み換え細胞からIL-2バリアントが分泌されることが望ましいかどうかに依存する。幾つかの実施形態では、選択された細胞が原核生物である場合、DNA配列はシグナル配列をコードしていない。幾つかの実施形態では、選択された細胞が真核生物である場合、シグナル配列がコードされ、野生型IL-2シグナル配列を有していてよい。
IL-2バリアントをコードしている遺伝子を合成するには、標準的な方法を適用することができる。例えば、完全なアミノ酸配列を用いて逆翻訳された遺伝子を構築してよい。IL-2バリアントをコードしているヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成してもよい。例えば、所望のポリペプチドの一部をコードしている幾つかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次いで、ライゲーションしてよい。個々のオリゴヌクレオチドは、相補的なアセンブリのために5’又は3’に突出を含んでいてもよい。
(合成、部位特異的変異誘発、又は他の方法によって)アセンブリしたら、IL-2バリアントをコードしているDNA配列を発現ベクターに挿入し、所望の形質転換宿主におけるIL-2バリアントの発現に適した発現制御配列に動作可能に連結する。ヌクレオチドのシーケンシング、制限酵素マッピング、及び好適な宿主における生物学的に活性のあるポリペプチドの発現によって、適切なアセンブリを確認することができる。当技術分野において公知であるように、宿主において高い発現レベルのトランスフェクトされた遺伝子を得るために、その遺伝子は、選択された発現宿主において機能する転写及び翻訳の発現制御配列に動作可能に連結される。発現制御配列及び発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを使用することができる。
IL-2バリアントを生成するために、細菌、真菌(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳類、又は他の適切な動物の細胞又は細胞株、並びにトランスジェニックの動物又は植物を含む任意の好適な宿主を使用してよい。これら宿主としては、大腸菌(E.coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)の株、真菌、酵母、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)等の昆虫細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、及びNS/0等のマウス細胞、COS1、COS7、BSC1、BSC40、及びBNT10等のアフリカミドリザル細胞、並びにヒト細胞等の動物細胞に加えて、組織培養中の植物細胞等の周知の真核生物及び原核生物の宿主を挙げることができる。幾つかの実施形態では、動物細胞で発現させるために、培養中のCHO細胞及びCOS7細胞、並びにCHO細胞株CHO(DHFR-)又はHKB株を使用してよい。
本明細書に記載されるDNA配列を発現させるために全てのベクター及び発現制御配列が等しく良好に機能するわけではないことが理解されるべきである。また、全ての宿主が同じ発現系で等しく良好に機能するわけでもない。しかし、当業者であれば、これらベクター、発現制御配列、及び宿主の中から、過度な実験を行うことなく選択することが可能である。例えば、ベクターを選択する際には、そのベクターが宿主細胞内で複製されなければならないので、宿主細胞が考慮される。ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、抗生物質マーカー等のベクターによってコードされている任意の他のタンパク質の発現も考慮される場合がある。例えば、幾つかの実施形態では、本発明で使用するためのベクターとしては、IL-2バリアントをコードしているDNAのコピー数を増幅させることができるものが挙げられる。そのような増幅可能なベクターは、当技術分野において周知である。例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufman、米国特許第4,470,461号、Kaufman and Sharp,“Construction Of A Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene:Analysis Of Signals Utilized For Efficient Expression”,Mol.Cell.Biol.,2,pp.1304-19(1982)を参照)又はグルタミン合成酵素(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号及び欧州出願公開第338,841号を参照)によって増幅することができるベクターが挙げられる。
IL-2バリアントは、バリアントの生成に使用される宿主生物に応じてグリコシル化されていてもよく、グリコシル化されていなくてもよい。幾つかの実施形態では、細菌を宿主として選択する場合、生成されるIL-2バリアントはグリコシル化されていないものになる。幾つかの実施形態では、真核生物細胞は、IL-2バリアントをグリコシル化する。形質転換宿主によって生成されるIL-2バリアントは、任意の好適な方法に従って精製することができる。IL-2の精製には様々な方法が知られている。例えば、Current Protocols in Protein Science,Vol.2.Eds:John E.Coligan,Ben M.Dunn,Hidde L.Ploehg,David W.Speicher,Paul T.Wingfield,Unit 6.5(Copyright 1997,John Wiley and Sons,Inc)を参照。
医薬組成物及び投与
本発明は更に、本発明に係る治療活性成分(例えば、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン融合タンパク質、又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質)を、1つ以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とともに含む薬学的組成物を提供する。そのような医薬組成物は、任意で、1つ以上の追加の治療活性物質を含んでいてもよい。
本発明は更に、本発明に係る治療活性成分(例えば、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン融合タンパク質、又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質)を、1つ以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とともに含む薬学的組成物を提供する。そのような医薬組成物は、任意で、1つ以上の追加の治療活性物質を含んでいてもよい。
本明細書に提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトに倫理的に投与するのに好適な医薬組成物を対象とするが、当業者であれば、このような組成物が一般にあらゆる動物に投与するのに好適であることを理解するであろう。医薬組成物を様々な動物に投与するのに好適なものにするためにヒトに投与するのに好適な医薬組成物を改変することは十分に理解されており、そして、通常の技能を有する家畜薬理学者は、仮に存在するとしても単なる日常的な実験のみを用いてこのような改変を設計及び/実施することができる。
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において公知であるか又は今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、このような調製方法は、活性成分を希釈剤若しくは別の賦形剤若しくは担体及び/又は1つ以上の他の副成分と関連付け、次いで、必要な場合及び/又は望ましい場合は生成物を所望の単一用量又は多用量の単位に成形及び/又は包装する工程を含む。
本発明に係る医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/又は複数の単一単位用量として調製、包装、及び/又は販売され得る。本明細書で使用するとき、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む医薬組成物の別個の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量、及び/又は例えばこのような投与量の半分又は三分の一等、このような投与量の便利な割合に等しい。
本発明に係る医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容し得る賦形剤若しくは担体、及び/又は任意の追加成分の相対量は、治療される対象のアイデンティティ、大きさ、及び/又は状態に応じて、更に、該組成物が投与される経路に応じて変動する。一例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
医薬製剤は、更に、薬学的に許容し得る賦形剤又は担体を含んでいてもよく、これらは、本明細書で使用するとき、望ましい特定の剤形に適した任意の及び全ての溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散若しくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘若しくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤等を含む。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro(Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006;参照により本明細書に組み込まれる)には、医薬組成物の製剤化に用いられる種々の賦形剤及びそれを調製するための公知の技術が開示されている。例えば何らかの望ましくない生物学的作用をもたらすことによって又はそうでなければ医薬組成物の任意の他の成分(複数可)と有害に相互作用することによって任意の従来の賦形剤媒体又は担体が物質又はその誘導体と不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内であることが企図される。
幾つかの実施形態では、薬学的に許容し得る賦形剤又は担体は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の純度を有する。幾つかの実施形態では、賦形剤又は担体は、ヒトでの使用及び獣医学的使用が承認されている。幾つかの実施形態では、賦形剤又は担体は、米国食品医薬品局によって承認されている。幾つかの実施形態では、賦形剤又は担体は、医薬等級である。幾つかの実施形態では、賦形剤又は担体は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の規格に準拠する。
医薬組成物の製造において用いられる薬学的に許容し得る賦形剤又は担体としては、不活性希釈剤、分散及び/若しくは造粒剤、表面活性剤及び/若しくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤、並びに/又は油等が挙げられるが、これらに限定されない。任意で、このような賦形剤又は担体を医薬製剤に含めてよい。処方者の判断に従って、カカオバター及び坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味、着香、及び/又は芳香剤等の賦形剤又は担体を組成物中に存在させてもよい。
好適な薬学的に許容し得る賦形剤又は担体としては、水、塩溶液(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン;ラクトース、アミロース、又はデンプン等の炭水化物;マンニトール、スクロース、又はその他等の糖類;デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。医薬製剤は、必要に応じて、活性化合物と有害に反応せず、その活性に干渉することもない補助剤(例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、バッファ、着色、着香、及び/又は芳香物質等)と混合してもよい。好ましい実施形態では、静脈内投与に好適な水溶性担体が使用される。
好適な医薬組成物又は医薬は、必要に応じて、微量の湿潤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤を含有していてもよい。組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、又は散剤であってよい。組成物はまた、トリグリセリド等の従来の結合剤及び担体を用いて坐剤として製剤化してもよい。経口製剤は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含んでいてよい。
医薬組成物又は医薬は、ルーチンな手順に従ってヒトへの投与に適合した医薬組成物として製剤化することができる。例えば、幾つかの実施形態では、静脈内投与用の組成物は、典型的には、滅菌等張水性バッファ溶液である。必要に応じて、組成物は、可溶化剤及び注射部位の痛みを和らげるための局所麻酔剤を含んでいてもよい。一般に、成分は、別々に又は一緒に混合されて単位剤形で、例えば活性剤の量を示すアンプル又はサシェ等の密閉容器内の乾燥凍結乾燥粉末又は水不含濃縮物として供給される。組成物が点滴によって投与される場合、医薬等級の滅菌水、生理食塩水、又はデキストロース/水を含有する点滴ボトルを使用して分注してよい。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを提供してもよい。
本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質は、中性又は塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容し得る塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するもの等の遊離アミノ基と形成されるもの、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するもの等の遊離カルボキシル基と形成されるもの等が挙げられる。
医薬品の製剤及び/又は製造における全般的な考察は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005(参照により本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。
投与経路
本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質(又は本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質を含有する組成物又は医薬)は、任意の適切な経路によって投与することができる。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、全身に投与される。全身投与は、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、眼内、筋肉内、皮下、筋肉内、経口、及び/又は経粘膜の投与であってよい。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、皮下投与される。本明細書で使用するとき、「皮下組織」という用語は、皮膚の直下にある緩く不規則な結合組織の層であると定義される。例えば、皮下投与は、大腿部、腹部、臀部、又は肩甲骨部を含むがこれらに限定されない領域に組成物を注射することによって実施してよい。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、静脈内投与される。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、経口投与される。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、筋肉内投与される。幾つかの実施形態では、1つを超える経路を同時に使用してもよい。
本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質(又は本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質を含有する組成物又は医薬)は、任意の適切な経路によって投与することができる。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、全身に投与される。全身投与は、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、眼内、筋肉内、皮下、筋肉内、経口、及び/又は経粘膜の投与であってよい。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、皮下投与される。本明細書で使用するとき、「皮下組織」という用語は、皮膚の直下にある緩く不規則な結合組織の層であると定義される。例えば、皮下投与は、大腿部、腹部、臀部、又は肩甲骨部を含むがこれらに限定されない領域に組成物を注射することによって実施してよい。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、静脈内投与される。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、経口投与される。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質、組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質、又はそれを含有する医薬組成物は、筋肉内投与される。幾つかの実施形態では、1つを超える経路を同時に使用してもよい。
幾つかの実施形態では、投与は個体において局所的な効果しかもたらさないが、他の実施形態では、投与は個体の複数の部分全体にわたる効果、例えば全身的効果をもたらす。典型的には、投与の結果、組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質が全身に送達される。幾つかの実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質は、心臓、脳、脊髄、横紋筋(例えば、骨格筋)、平滑筋、腎臓、肝臓、肺、及び/又は脾臓を含むがこれらに限定されない1つ以上の標的組織に送達される。
剤形及び投与レジメン
幾つかの実施形態では、組成物は、治療上有効な量で及び/又は特定の所望の転帰(例えば、自己免疫疾患の治療又はリスクの低減)と相関する投与レジメンに従って投与される。
幾つかの実施形態では、組成物は、治療上有効な量で及び/又は特定の所望の転帰(例えば、自己免疫疾患の治療又はリスクの低減)と相関する投与レジメンに従って投与される。
本発明に従って投与される具体的な用量又は量は、例えば、所望の転帰の性質及び/若しくは程度、投与の経路及び/若しくはタイミングの特色、並びに/又は1つ以上の特徴(例えば、体重、年齢、個人歴、遺伝的特徴、ライフスタイルパラメータ等、又はそれらの組み合わせ)に応じて変動し得る。このような用量又は量は、当業者によって決定され得る。幾つかの実施形態では、適切な用量又は量は、標準的な臨床技術に従って決定される。あるいは又は更に、幾つかの実施形態では、適切な用量又は量は、投与される望ましい又は最適な投与量の範囲又は量を特定するのに役立つ1つ以上のインビトロ又はインビボのアッセイの使用を通して決定される。
様々な実施形態では、組み換えIL-2ムテインタンパク質は、治療上有効な量で投与される。一般に、治療上有効な量は、対象にとって有意義な利益(例えば、基礎疾患又は病態の治療、調節、治癒、予防、及び/又は寛解)を達成するのに十分である。
幾つかの実施形態では、提供される組成物は、医薬製剤として提供される。幾つかの実施形態では、医薬製剤は、自己免疫疾患の発症率又はリスクの低減の達成と相関する投与レジメンに従った投与のための単位用量であるか又はそれを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質を含む製剤は、単回投与として投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質を含む製剤は、一定の間隔で投与される。本明細書で使用するとき、ある「間隔」で投与されるとは、治療上有効な量が(1回限りの投与と区別して)周期的に投与されることを示す。この間隔は、標準的な臨床技術によって決定することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質を含む製剤は、隔月、毎月、月2回、3週間に1回、隔週、毎週、週2回、週3回、毎日、1日2回、又は6時間毎に投与される。1つの個体についての投与間隔は一定である必要はなく、個体のニーズに応じて経時的に変動させてもよい。
本明細書で使用するとき、「隔月」という用語は、2ヶ月あたり1回(すなわち、2ヶ月毎に1回)の投与を意味し;「毎月」という用語は、1ヶ月あたり1回の投与を意味し;「3週間に1回」という用語は、3週間あたり1回(すなわち、3週間毎に1回)の投与を意味し;「隔週」という用語は、2週間あたり1回(すなわち、2週間毎に1回)の投与を意味し;「毎週」という用語は、1週間あたり1回の投与を意味し;「毎日」という用語は、1日あたり1回の投与を意味する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質を含む製剤は、一定の間隔で無期限に投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組み換えIL-2ムテインタンパク質又は組み換えIL-2ムテイン-Fc融合タンパク質を含む製剤は、一定の間隔で規定の期間にわたって投与される。
本明細書に記載の通り、「治療上有効な量」という用語は、主として、本発明の医薬組成物に含有される治療剤の総量に基づいて決定される。治療上有効な量は、一般に、複数の単位用量を含み得る投与レジメンで投与される。任意の特定の組成物について、治療上有効な量(及び/又は有効な投与レジメン内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路又は他の医薬剤との組み合わせに応じて変動し得る。
幾つかの実施形態では、本発明は、治療上有効な量の本明細書に記載の1つ又は複数のIL-2ムテインを、薬学的に許容し得る希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤、及び/又はアジュバントと共に含む医薬組成物を提供する。
併用療法:更なる実施形態では、本明細書に記載のIL-2ムテインは、患者が罹患している病態を治療するのに有用な他の剤と組み合わせて投与される。このような剤の例としては、タンパク質性薬及び非タンパク質性薬の両方が挙げられる。複数の治療薬を共投与する場合、関連分野で認識されている通り、投与量は適宜調整してよい。「共投与」及び併用療法は、同時投与に限定されるのではなく、少なくとも1つの他の治療剤を患者に投与することを含む治療過程中に少なくとも1回T-reg選択的IL-2バリアントを投与する治療レジメンも含まれる。
特定の実施形態では、IL-2ムテインは、PI3-K/AKT/mTOR経路の阻害剤、例えば、ラパマイシン(ラパミューン、シロリムス)と組み合わせて投与される。この経路の阻害剤をIL-2と組み合わせることは、T-regの濃縮にとって好都合である。
本明細書に記載するものと類似又は等価な方法及び材料を本発明の実施又は試験で使用してもよいが、好適な方法及び材料について以下に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で引用する文献を、請求する発明の先行技術であると認めるものではない。更に、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、限定を意図するものではない。
実施例1.IL-2ムテインの設計及び構築
この実施例は、例示的なIL-2ムテインの設計及び構築について説明する。
この実施例は、例示的なIL-2ムテインの設計及び構築について説明する。
標準的な組み換えDNA技術を用いてDNAを操作し(Sambrook et al.,Molecular cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、重免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列を含有するコンストラクトを設計した(Kabat,E.A.et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Ed.,NIH Publication No 91-3242)。二本鎖DNAのシーケンシングを行って、コンストラクトのヌクレオチド配列を確認した。
WT IL-2タンパク質(配列番号1)の例示的なヌクレオチド残基を変異させて、例示的なIL-2ムテインを作製し(表2)、次いで、これをIL-2Rα、IL-2Rβ、CD25、又はCD122に対する結合親和性について特性評価した。例示的なIL-2ムテインは、T111H、T37Y、E15T、M23L、P34F、E68F、及びE62Aからなる群から選択される、野生型IL-2タンパク質(配列番号1)に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
更に、IgG融合IL-2ムテインを構築した。分子間ジスルフィド結合の形成を防ぐために、作製された全てのIL-2ムテインにC125A変異を導入した。従って、本発明の幾つかの実施形態では、IL-2ムテインはC125A変異を含む。アビディティ効果及びヘテロ二量体化を最小限に抑えるために、IgG Fc領域にノブ・イン・ホール変異を導入し、全てのIL-2ムテインをノブ変異が導入されたIgGのみと融合させた。
この実施例は、例示的なIL-2ムテインの設計及び構築を実証した(表2)。
実施例2.IgG融合IL-2ムテインの生成
この実施例は、例示的なIgG融合IL-2ムテインタンパク質の生成について説明する。
この実施例は、例示的なIgG融合IL-2ムテインタンパク質の生成について説明する。
まず、合成遺伝子の合成及び/又は好適なテンプレートからのPCRによって遺伝子断片を作製し、標準的な哺乳類発現ベクターにサブクローニングした。IgG IL-2ムテイン融合タンパク質を生成するために、ExpiFectamineトランスフェクション試薬を用いて、IgG軽鎖、ホール変異を有するIgG重鎖、及びIL-2ムテインに融合したノブ変異を有するIgG重鎖の哺乳類発現ベクターを、指数関数的に成長しているExpi293細胞にコトランスフェクトした。
その後、PBS中で平衡化したプロテインAビーズを用いた一段階アフィニティ精製により、上清から融合タンパク質を精製した。上清をロードした後、まず、PBSでカラムを洗浄した。融合タンパク質を0.1M グリシン-HCl/0.3M NaCl(pH3.0)で溶出させた。画分を1M Tris-HCl pH8.0(1:10)で中和し、透析によりPBSにバッファ交換した。アミノ酸配列に基づいて計算したモル吸光係数を用いて280nmにおける光学密度(OD)を測定することによって、精製タンパク質サンプルのタンパク質濃度を求めた。その結果、精製IgG融合IL-2ムテインが作製された。
実施例3.IL-2ムテイン融合タンパク質のIL-2受容体に対する結合親和性
この実施例では、例示的なIL-2ムテイン融合タンパク質のIL-2受容体に対する結合親和性を測定する。以下の条件下で組み換えのIL-2Rα及びIL-2Rβを用いて、ヒトのIL-2Rα及びIL-2Rβの受容体について、Octet Red96e(Forte Bio)におけるバイオレイヤーインターフェロメトリー(BLI)によって、融合タンパク質のIL-2受容体に対する親和性を求めた:リガンドは、SAチップ上に固定化されたビオチン化ヒトIL-2Rα又はIL-2Rβを含んでおり、アナライトは、PBSバッファ中25℃の温度の単一用量IgG融合IL-2ムテインを含んでいた、会合:120s、解離:600s、フィッティング:1:1ラングミュア結合モデル。運動速度定数kon及びkoffに基づいて、親和性を求めた(表3)。
この実施例では、例示的なIL-2ムテイン融合タンパク質のIL-2受容体に対する結合親和性を測定する。以下の条件下で組み換えのIL-2Rα及びIL-2Rβを用いて、ヒトのIL-2Rα及びIL-2Rβの受容体について、Octet Red96e(Forte Bio)におけるバイオレイヤーインターフェロメトリー(BLI)によって、融合タンパク質のIL-2受容体に対する親和性を求めた:リガンドは、SAチップ上に固定化されたビオチン化ヒトIL-2Rα又はIL-2Rβを含んでおり、アナライトは、PBSバッファ中25℃の温度の単一用量IgG融合IL-2ムテインを含んでいた、会合:120s、解離:600s、フィッティング:1:1ラングミュア結合モデル。運動速度定数kon及びkoffに基づいて、親和性を求めた(表3)。
例えば、K77A IL-2ムテインは、WT IL-2と同様のIL-2Rαに対する結合親和性を示した(図1A及び図1B)。一方、マウスE96A変異体IL-2は、IL-2Rα(CD25)への結合減少を示した(図1C)。
この実施例は、例示的なIL-2ムテインのIL-2受容体に対する結合親和性を示す。
実施例4.ヒト末梢血細胞サブセットにおけるpSTAT5aの誘導
この実施例は、ヒトのCD4+T細胞及びCD8+T細胞におけるSTAT5aリン酸化に対する例示的なIL-2ムテインの機能的効果を示す。
この実施例は、ヒトのCD4+T細胞及びCD8+T細胞におけるSTAT5aリン酸化に対する例示的なIL-2ムテインの機能的効果を示す。
IL-2が細胞表面上のIL-2受容体に結合すると、STAT5aのリン酸化が誘導され、幾つかのシグナル伝達経路が活性化され、その結果、IL-2/IL-2R経路に関連する様々な機能に寄与する標的遺伝子が転写される。従って、高親和性受容体と中親和性受容体との様々な組み合わせによって媒介されるIL-2に対する統合されたシグナル伝達応答を求めるために、フローサイトメトリーによって個々の細胞内のpSTAT5aレベルを測定した。
ヒトのCD4+T細胞及びCD8+T細胞における、STAT5aリン酸化の誘導に対するIgG融合IL-2ムテイン(10pM)の単回投与の効果を評価した。簡潔に説明すると、健常ヒト成人由来の凍結PBMCを37℃で2時間インキュベートした。IgG融合IL-2ムテイン(10pM)を100μLのPBMCに50万細胞/ウェルで添加し、37℃でインキュベートした。2時間後、PBMCを固定し、予め加温しておいた溶解/固定バッファを用いて37℃で10分間透過処理し、0.2%BSAを含有するPBSで2回洗浄し、続いて、氷上で20分間-20℃の予冷メタノールで透過処理した。次いで、0.2%BSAを含有するPBSで細胞を広範囲にわたって4回洗浄した後、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びこれら細胞におけるpSTAT5aのリン酸化状態を区別するために蛍光抗体のパネルを用いてFACS染色を実施した。使用した抗体は、抗CD4-Alexa Fluor(登録商標)700(クローンRPA-T4)、CD3-PerCP/Cy5.5(UCHT1)、CD8-Brilliant Violet 605(RPA-T8)、及びpSTAT5a-Alexa Fluor(登録商標)488(pY694)(Becton Dickinson)であった。LSRFortessa細胞分析機(Becton Dickinson)を用いてサンプルを取得し、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC)を用いてデータを解析した。2つの細胞サブセットにおいて細胞内pSTAT5aレベルを定量し、CD4+細胞及びCD8+細胞における結果を示す(表4)。
IL-2受容体に対する親和性の測定及びヒトPBMCにおけるpSTAT5aの誘導の結果に基づいて、更なる解析のために6つのクローン(M23L、E15T、P34F、T111H、T37Y、及びE68F)を選択した。
pSTAT5aアッセイにおける選択されたムテインの用量応答解析を行った。簡潔に説明すると、健常ヒト成人由来の凍結PBMCを37℃で2時間インキュベートした。100μLのPBMCに様々な濃度(10nM~0.01pM)のIgG融合IL-2ムテインを1ウェルあたり50万細胞添加し、37℃でインキュベートした。2時間後、PBMCを固定し、前述の通りpSTAT5aレベルを測定した。
結果は、試験した6つのムテインが全て、野生型IL-2による誘導と同等以上のCD4+細胞におけるpSTAT5a誘導活性を示すことを示した。
更に、例示的なE62A変異は、CD25+CD4T細胞においてpSTAT5を誘導するヒトIL-2変異体の活性を阻害したが、CD8T細胞では阻害しなかった(図2A及び図2B、表5)。E62A変異は、CD25-CD4T細胞及びNK細胞においてpSTAT5を誘導するヒトIL-2変異体の活性を阻害しなかった(図2C及び図2D)。F906は、抗CTLA-4抗体のVHドメインである。野生型ヒトIL-2又はペプチドリンカーを介してF906と結合しているヒトIL-2ムテインは、Tregに特異的に送達される。
図2Eは、野生型IL-2と比較した、IL-2ムテインM23L、T111H、E68F、E15T、P34F、T37Yを用いたpSTAT5a誘導を示す一連のグラフと、関連するEC50及びEmaxの値の表とを示す。
この実施例は、IL-2ムテインによる例示的なpSTAT5a誘導を示す。
実施例5.複数回投与後のWTマウスにおけるE96A-HLEの効果
この実施例は、複数回投与した後のマウスにおけるE96A-HLEムテインのインビボでの効果を示す。
この実施例は、複数回投与した後のマウスにおけるE96A-HLEムテインのインビボでの効果を示す。
WT mIL-2-HLE(野生型マウスIL-2半減期延長、wild-type mouse IL-2-half-life extended)と比較したE96A-HLEの生物活性を理解するために、マウスをこれらサイトカインで処理した。Tregを含むCD8及びCD4T細胞を、免疫細胞サブセットの成長の変化について調べた。
各生物製剤を1×PBSで希釈した。各条件ごとに、20g/マウスの概算に基づいて100μLの体積をマウスに腹腔内投与した。6~8週齢の非担がん雌C57BL/6マウスを5日間にわたって毎日処理し、2日間の休止後、再び4日間処理した。最終投与の24時間後にマウスを安楽死させ、PD解析のために脾臓を摘出した。各群3頭のマウスを試験した。
脾臓を、RP10中で70μmのセルストレーナーを通してすり潰した。細胞をRBC溶解バッファでRBC溶解させ、ViCell(Beckman Coulter)によって生存脾臓細胞をカウントした。製造業者の指示に従って、live/dead e780、抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD25、及び抗foxp3の抗体で脾臓を染色した。脾臓細胞を洗浄し、染色バッファ中で抗体と共にインキュベートし、foxp3染色用バッファセットを用いて細胞内染色を行った。細胞をLSRFortessa FACS機(BD)で分析し、FloJoソフトウェア(TreeStar)を用いてデータを解析した。
リンパ球をFSC/SSCに基づいてゲーティングし、ダブレットを除外した。ナイーブT細胞は、CD3+CD4+foxp3+であると同定された(図4)。
結果は、WT mIL-2-HLEでマウスを処理したところ、CD4+foxp3+T細胞が若干増幅するのに対して、E96A-HLEでは、CD4+foxp3+T細胞がより大きく用量依存的に増幅することを示した(図3及び図4A~図4F)。
WT mIL-2-HLEでマウスを処理したところ、CD3+細胞のサブセットとしてfoxp3+細胞が増幅されたが、E96A-HLEでマウスを処理したところ、CD3+細胞のサブセットとしてfoxp3+細胞の割合がより大きく用量依存的に増幅された(図5A)。
E96A-HLEでマウスを処理したところ、CD3+細胞を含む脾臓細胞が用量依存的に増幅された(図5B)。
結果は、IL-2-HLEのインビボ活性及びE96A-HLEの投与による用量依存的なTregの増加を示した。
実施例6.単回投与後のWTマウスにおけるE62A-HLE及びE96A-HLEの効果
この実施例は、単回投与後のWT hIL2-HLE及びWT mIL2-HLEと比較したE62A-HLE及びE96A-HLEのインビボにおける効果を示す。
この実施例は、単回投与後のWT hIL2-HLE及びWT mIL2-HLEと比較したE62A-HLE及びE96A-HLEのインビボにおける効果を示す。
WT hIL2-HLE(野生型ヒトIL-2半減期延長、wild-type human IL-2-half-life extended)及びWT mIL-2-HLEと比較したE62A-HLE及びE96A-HLEの生物活性を理解するために、マウスをこれらサイトカインで処理した。Tregを含むCD8及びCD4 T細胞を、免疫細胞サブセットの成長の変化について調べた。各生物製剤を1×PBSで希釈した。各生物製剤ごとに、20g/マウスの概算に基づいて100μLの体積をマウスに腹腔内投与した(図6A)。
各群ごとに、4頭の6~8週齢の非担がん雌C57BL/6に、低用量(0.45mg/kg/マウス)又は高用量(2mg/kg/マウス)のマウス又はヒトのWT IL2又はIL2ムテインによる単回処理を施し、7日後にマウスを安楽死させた。肺の湿重量を測定し、血漿サイトカイン解析のために心臓穿刺を行い、PD解析のために脾臓を摘出した。
平均体重変化率を、熱重量法(TG)によって測定した(図6B)。
脾臓を、RP10中で70μmのセルストレーナーを通してすり潰した。細胞をRBC溶解バッファでRBC溶解させ、ViCellによって生存脾臓細胞をカウントした。live/dead e780、抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD25、及び抗foxp3によって脾臓を染色し、全て製造業者の指示に従って染色した。脾臓細胞を洗浄し、染色バッファ中で抗体と共にインキュベートし、foxp3染色用バッファセットを用いて細胞内染色を行った。細胞をLSRFortessa FACS機で分析し、FloJoソフトウェアを用いてデータを解析した。リンパ球をFSC/SSCに基づいてゲーティングし、ダブレットを除外した。ナイーブT細胞は、CD3+CD4+foxp3+であると同定された。
WT mIL-2-HLE又はWT hIL2-HLEでマウスを処理すると脾臓細胞の数が増加したが、E62A-HLE又はE96A-HLEでマウスを処理したところ、より大きく用量依存的に脾臓細胞が増幅された(図6C)。E96A-HLE又はE62A-HLEでマウスを処理したところ、CD4+foxp3+T細胞が用量依存的に増幅された。WT hIL2-HLE又はWT mIL-2-HLEでマウスを処理したところ、CD8:Tregの比が低下したが、E62A-HLE又はE96A-HLEでマウスを処理したところ、Tregが優先的に増幅された結果、CD8:Tregの比がより大きく低下した(図8A~図8C)。
実施例7.2回投与後のWTマウスにおけるE62A-HLE及びE96A-HLEの効果
この実施例は、2回投与後のWT hIL2-HLE及びWT mIL2-HLEと比較したE62A-HLE及びE96A-HLEのインビボにおける効果を示す。
この実施例は、2回投与後のWT hIL2-HLE及びWT mIL2-HLEと比較したE62A-HLE及びE96A-HLEのインビボにおける効果を示す。
WT hIL2-HLE及びWT mIL-2-HLEと比較したE62A-HLE及びE96A-HLEの生物活性を理解するために、マウスをこれらサイトカインで処理した。Tregを含むCD8及びCD4 T細胞を、免疫細胞サブセットの成長の変化について調べた。各生物製剤を1×PBSで希釈した。各生物製剤ごとに、20g/マウスの概算に基づいて100μLの体積をマウスに腹腔内投与した(図7A)。
各群ごとに、4頭の6~8週齢の非担がん雌C57BL/6に、0.45mg/kg/マウスの低用量又は2mg/kg/マウスの高用量で0日目に単回処理を施し、次いで、7日後に再度処理し、次いで、4日後に安楽死させた。肺の湿重量を測定し、血漿サイトカイン解析のために心臓穿刺を行い、PD解析のために脾臓を摘出した。
高用量のWT又は変異型IL-2を投与した結果、体重が一過的に減少した(図7B)。
脾臓を、RP10中で70μmのセルストレーナーを通してすり潰した。細胞をRBC溶解バッファでRBC溶解させ、ViCellによって生存脾臓細胞をカウントした。live/dead e780、抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD25、及び抗foxp3によって脾臓を染色し、全て製造業者の指示に従って染色した。脾臓細胞を洗浄し、染色バッファ中で抗体と共にインキュベートし、foxp3染色用バッファセットを用いて細胞内染色を行った。細胞をLSRFortessa FACS機で分析し、FloJoソフトウェア(TreeStar)を用いてデータを解析した。リンパ球をFSC/SSCに基づいてゲーティングし、ダブレットを除外した。ナイーブT細胞は、CD3+CD4+foxp3+であると同定された。WT mIL-2-HLE又はWT hIL2-HLEでマウスを2回処理すると脾臓細胞の数が増加したが、E62A-HLEでマウスを2回処理したところ、より大きく用量依存的に脾臓細胞が増幅された(図7C)。
E96A-HLE又はE62A-HLEでマウスを処理したところ、CD4+foxp3+T細胞がより大きく用量依存的に増幅された。WT hIL2-HLE又はWT mIL-2-HLEでマウスを処理したところ、CD8:Tregの比が上昇したが、E62A-HLE又はE96A-HLEでマウスを処理したところ、Tregが優先的に増幅された結果、CD8:Tregの比がより大きく低下した(図8D~8F)。
実施例8.E62A-HLEの投与により 自己免疫性高血糖症からマウスが保護された
この実施例では、E62A-HLEを投与した結果、インビボにおいてTreg増殖が増加することに加えて、処理したマウスの例示的な自己免疫病態である自己免疫性高血糖症からの保護が増大することを実証する。
この実施例では、E62A-HLEを投与した結果、インビボにおいてTreg増殖が増加することに加えて、処理したマウスの例示的な自己免疫病態である自己免疫性高血糖症からの保護が増大することを実証する。
7週齢のマウスを非空腹時血糖値に基づいて処理群に割り付け、表6に従って100μL/マウスを腹腔内(IP)注射により投与した。体重、臨床所見、及び非空腹時血糖値を試験期間中毎週記録した。2日間連続して非空腹時血糖値が250mg/dLを超えた動物は全て、人道的に安楽死させた。
10週齢で、処理群1及び2から3頭のマウスを人道的に安楽死させ、脾臓細胞を標準的なT細胞及びNK細胞のパネルを用いたフローサイトメトリーにより評価した。
30週齢で、試験中の残りのマウスを人道的に安楽死させ、標準的なT細胞及びNK細胞のパネルを用いたフローサイトメトリーのために組織を採取した。
E62A-HLEのいずれの投与レジメンでも、体重は減少しなかった(図9A)。
血糖値を測定した(図9B)。結果は、対照マウスでは20週齢までに60%が高血糖症を発症した(n=10)のとは対照的に、E62A-HLEで処理したマウスはいずれも30週齢までに高血糖症を発症しなかった(n=19)ことを示し、これは、Tregの増幅が自己免疫性高血糖症からマウスを保護することを示唆している(図9C)。
E62A-HLEで処理したマウスの脾臓細胞では、Tregが増幅していた(図11A及び図11B)。NK細胞(図10A)及びCD8+T細胞(図10D)もE62A処理マウスで増幅された。E62A処理マウス由来の脾臓細胞においてB細胞は増加した(図10B)が、CD4+T細胞は増幅されなかった(図10C)。
実施例9.複数の時点及び複数の組織におけるE62A-HLEの単回投与後のPD
この実施例では、複数の時点及び複数の組織におけるE62A-HLEの単回投与後のPDを示す。
この実施例では、複数の時点及び複数の組織におけるE62A-HLEの単回投与後のPDを示す。
WT hIL-2-HLE(図中Cyto5(2124-T60)と表記)と比較したE62A-HLEの生物活性を理解するために、マウスをこれらサイトカインで処理した。Tregを含むCD8及びCD4 T細胞を、免疫細胞サブセットの成長の変化について調べた。雌C57BL/6に、0.1mLの体積のB16F10腫瘍(8×104細胞懸濁液)を皮下接種した。E62A-HLEの単回処理を腹腔内に施した。E62A-HLEで処理した後、注射の96時間、168時間、及び240時間後にマウスを安楽死させ、分析のために全血、リンパ節、脾臓、及び腫瘍を採取した。フロー抗体には、抗CD45、抗CD8、抗CD4、抗ICOS、live/dead、抗hCTLA-4、Ki67、抗NKp46、抗CD19、抗Ly6G、抗CD25、抗CD62L、抗foxp3、抗CD44、抗TCRbが含まれており、全て製造業者の指示に従って染色した。抗体を洗浄し、染色バッファで染色し、foxp3染色用バッファセットを用いて細胞内染色を行った。細胞をLSRFortessa FACS機(BD)で分析し、FloJoソフトウェア(TreeStar)を用いてデータを解析した。リンパ球をFSC/SSCに基づいてゲーティングし、ダブレットを除外した。ナイーブT細胞は、CD3+CD4+foxp3+であると同定された。
血液では、注射後96時間において、E62A-HLE(図中Cyto6(2124-T61)と表記)の単回投与により、造血系CD45+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。血液では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、TCRb+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。血液では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、造血系CD4+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された(図12A及び図12B)。
リンパ節では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、造血系CD45+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。リンパ節では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、TCRb+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。リンパ節では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、造血系CD4+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。リンパ節では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、Ki67+Tregが増幅された(図13A及び図13B)。
脾臓では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、造血系CD45+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。脾臓では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、TCRb+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。脾臓では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、造血系CD4+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。脾臓では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、Ki67+Tregが増幅された。脾臓では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、CD44+CD62L-neg Tregが増幅された(図14A及び図14B)。
腫瘍では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、造血系CD45+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。腫瘍では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、TCRb+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された。腫瘍では、注射後96時間において、E62A-HLEの単回投与により、造血系CD4+細胞の比率としてCD4+foxp3+が増幅された(図15A及び図15B)。
結合アッセイの結果は、WT IL-2がIL-2Rα(CD25)と結合することを示した(図16A)が、この能力はE62A IL-2ムテインでは失われた(図16B)。結合アッセイでは、WT IL-2だけでなくE62A IL-2RαムテインがIL-2Rβ CD122に結合することも示された(図17A及び図17B)。
結合アッセイの結果は、WT IL-2だけでなく、E62A IL-2変異体融合タンパク質もhCTLA-4に結合することを示した(図18A及び図18B)。
実施例10.複数回投与後のカニクイザルにおけるM23L及びT111Hの効果
この実施例は、サルに複数回投与した後にWT hIL-2と比較した例示的なM23L及びT111Hムテインのインビボにおける効果を示す。
この実施例は、サルに複数回投与した後にWT hIL-2と比較した例示的なM23L及びT111Hムテインのインビボにおける効果を示す。
M23L、T111H、及びWT hIL-2の生物活性を理解するために、サルをこれらサイトカインで処理した。Tregを含むCD8及びCD4 T細胞を、免疫細胞サブセットの成長の変化について調べた。各生物製剤を1×PBSで希釈した。各生物製剤ごとに、0日目、2日目、4日目、7日目、9日目、及び11日目に、800pmol/kgのサイトカインを各群n=6でサルに皮下投与した(図19A)。
各群ごとに、4頭のサルに複数回処理を施し、0日目、1日目、4日目、7日目、8日目、11日目、及び14日目に採血を行った。血球を抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD25、抗CD45RA、抗CD56、抗CD16、及び抗Foxp3により染色し、全て製造業者の指示に従って染色した。リンパ球を洗浄し、染色バッファ中で抗体と共にインキュベートし、foxp3染色用バッファセットを用いて細胞内染色を行った。細胞をLSRFortessa FACS機で分析し、FloJoソフトウェアを用いてデータを解析した。リンパ球をFSC/SSCに基づいてゲーティングし、ダブレットを除外した。CD4 T細胞、メモリCD4、ナイーブCD4、CD4 Treg、メモリTreg、ナイーブTreg、CD8 T、NK、及びNKTの細胞を同定するために、リンパ球をゲーティングした。
結果は、WT hIL-2でサルを処理したところ、メモリCD4細胞及びCD4 Treg細胞の数が増加することを示した。グラフ中変異体#19と表記されるM23Lムテインでサルを処理したところ、CD4 Treg細胞の数は増加したが、メモリCD4細胞の数は増加しなかった(図19B)。グラフ中変異体#57と表記されるT111Hでサルを処理したところ、メモリCD4細胞の数は増加したが、CD4 Treg細胞の数は増加しなかった(図19C)。
実施例11.自己免疫性高血糖症マウスにおけるM23L-HLEの効果
この実施例では、M23L-HLEを投与した結果、処理したマウスの例示的な自己免疫病態である自己免疫性高血糖症からの保護が増大することを実証する。
この実施例では、M23L-HLEを投与した結果、処理したマウスの例示的な自己免疫病態である自己免疫性高血糖症からの保護が増大することを実証する。
7週齢で、マウスを非空腹時血糖値に基づいて処理群に割り付け、表7に従って100μL/マウスを腹腔内(IP)注射により投与した。体重、臨床所見、及び非空腹時血糖値を試験期間中毎週記録した。2日間連続して非空腹時血糖値が250mg/dLを超えた動物は全て、人道的に安楽死させた。
血糖値を測定した(図20A)。結果は、PBS処理マウスでは20週齢までに75%が高血糖症を発症した(n=16)のとは対照的に、E62A-HLE処理マウスはいずれも20週齢までに高血糖症を発症せず(n=16)、M23L-HLE処理マウスでは30%、IL-2-HLE処理マウスでは18%しか高血糖症を発症しなかったことを示し、これは、M23L-HLEは自己免疫性高血糖症からマウスを保護することを示唆している(図20B)。
[等価物]
当業者は、単なるルーチンな実験を用いて、本明細書に記載する本発明の特定の実施態様に対する多くの等価物を認識するか又は解明することができる。本発明の範囲は、上記説明に限定されることを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲に規定される通りである。
当業者は、単なるルーチンな実験を用いて、本明細書に記載する本発明の特定の実施態様に対する多くの等価物を認識するか又は解明することができる。本発明の範囲は、上記説明に限定されることを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲に規定される通りである。
Claims (11)
- 配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインであって、T111H、T37Y、E15T、M23L、P34F、E68F、及びE62Aからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有するIL-2ムテイン。
- C125Aのアミノ酸置換を更に含む、請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン。
- 請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインのアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド。
- 請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩を含む医薬。
- Treg活性化因子である、請求項4に記載の医薬。
- 自己免疫疾患を予防又は治療するための剤である、請求項4に記載の医薬。
- 哺乳類において制御性T細胞(Treg細胞)を増殖させる方法であって、有効量の請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
- 哺乳類における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、有効量の請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
- 自己免疫疾患の治療方法において使用するための、請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン。
- 自己免疫疾患を予防又は治療するための剤を生成するための、請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はその塩の使用。
- 制御性T細胞(Treg)を増殖させる方法であって、T細胞の集団を有効量の請求項1に記載のヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインと接触させることを含む方法。
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