JP2023541799A - C6~12飽和脂肪族カルボン酸の調製のための方法 - Google Patents

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Abstract

色安定性のC6~12飽和脂肪族カルボン酸を調製する方法であって、(1)対応するアルデヒドが酸素分子で酸化されて、液体混合物中の粗製の飽和脂肪族カルボン酸が得られ、(2)酸素分子が粗製の飽和脂肪族カルボン酸混合物から除去され、(3)飽和脂肪族カルボン酸が、酸素分子が激減した混合物から蒸留により色安定性の生成物として分離される、方法。【選択図】なし

Description

本発明は、6~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸を、対応するアルデヒドの酸素分子(分子状酵素)による酸化によって調製する方法であって、不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリング(temper)されて暗くなる(暗色化する(darken))傾向が非常に低い飽和脂肪族カルボン酸が高い純度で得られる、方法に関する。
さらに、本発明はまた、不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされて暗くなる傾向が非常に低い2-エチルヘキサン酸に関する。
飽和脂肪族カルボン酸は、広範な用途を有する、世界的に重要な中間体である。これらはそれ自体で使用することができるが、典型的には、金属塩、エステル、アミド、無水物、酸塩化物及び他の誘導体へとさらに加工される。概して、これらは、広範な化合物、例えば金属塩及び金属石けん、香料、芳香剤、医薬成分及び農薬成分、化粧用成分、可塑剤、塗料、コーティング添加剤、冷却剤、滑沢剤又はポリマー加工のための触媒の製造のための重要な中間体である。C6~12飽和脂肪族カルボン酸の非常に重要な代表物は、2-エチルヘキサン酸である。これは、アルキド樹脂及び塗料のための増粘剤及び乾燥剤として、ポリウレタン発泡体製造における触媒として、PVCの安定剤及び/若しくは可塑剤として、又は滑沢剤のための腐食防止剤及び摩耗防止剤としてのそれらの使用のために、例えばその金属塩又はエステルとして、その誘導体の形態で主に使用される。C6~12飽和脂肪族カルボン酸、例えばn-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、n-ノナン酸、又は3,5,5-トリメチルヘキサン酸のエステルはまた、滑沢剤として使用されることも多い。
6~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸の製造のための広く使用されている重要な方法は、触媒又は何らかの添加剤の有無を問わない、液相中での酸素分子を用いた対応するアルデヒドの酸化である。この一般的な合成経路は、例えば、J. Kubitschkeら、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry中の「Carboxylic acids, aliphatic」、2014年、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, DOI: 10.1002/14356007.a05_235.pub2、第4.2.1章「Aldehyde oxidation」に記載されている。上述した酸化により得られたC6~12飽和脂肪族カルボン酸は次いで、通常は蒸留により精製され、好ましくは純粋な形態のC6~12飽和脂肪族カルボン酸が得られる。
ほとんどの用途は高度に透明で無色の生成物を必要とするため、好ましくは99wt.-%(重量%)を大きく上回る高い化学的純度だけでなく、非常に低いAPHA色数も望まれる。
US 5,504,229は、選択性改善添加剤としての2-エチルヘキサン酸カリウムの存在下での2-エチルヘキサナールの酸化による2-エチルヘキサン酸の調製、及び精製2-エチルヘキサン酸を得るためのその後の蒸留を記載しており、その蒸留では2-エチルヘキサン酸カリウムは塔底生成物に豊富であり、酸化段階へと戻されてリサイクルされる。例1によれば、得られた2-エチルヘキサン酸は4という低いAPHA色数を示した。
CN 109438216は、多段階製造による2-エチルヘキサン酸の調製を記載しており、その製造ではn-ブチルアルデヒドをアルドール縮合に供して2-エチル-3-ヘキセナールが得られ、続いて2-エチルヘキサナールへと水素添加する。発明者らは、水素添加ステップ後に少量の2-エチル-3-ヘキセナールが残り、それは2-エチルヘキサナールとともに酸化ステップにおいて酸化されて、2-エチル-3-ヘキセン酸の混入した粗製の2-エチルヘキサン酸を生じさせると思われ、2-エチル-3-ヘキセン酸は続いて蒸留により2-エチルヘキサン酸から分離除去できないことを見出している。CN 109438216は、水素添加後に残った2-エチル-3-ヘキセナールを酸触媒の存在下、水により、酸化ステップにより2-エチル-3-ヒドロキシヘキサン酸に酸化でき続いて蒸留により2-エチルヘキサン酸から分離除去できる2-エチル-3-ヒドロキシヘキサナールへと変換することを教示している。例1~5によれば、99.91wt.-%までの純度及び3までの低いAPHA色数を有する2-エチルヘキサン酸を得ることができる。
本発明によれば、新たに蒸留されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸の低いAPHA色数は、そのような低いAPHA色数がより長い保存時にそのままであることを保証するものでも、それがそれぞれのカルボン酸を利用した色安定性の生成物を確保することを保証するものでもないことが認められた。C6~12飽和脂肪族カルボン酸は、通常、保存中に時間とともに、熱ストレスにさらされるときに、及び/又はこれらが通常適用される製品において、暗くなる傾向があることが理解された。さらに、本発明によれば、そのような暗化は過酸化物の存在により引き起こされ得ることが認められた。
酸素を用いたアルデヒドの酸化が、最初に過酸を形成し、これが次にアルデヒドをさらに酸化して、中間体過酸1モルあたり2モルのカルボン酸を生成することが、現在の技術水準から公知である。そのような機構は、例えば、J.H. Telesら、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry中の「Oxidation」、2015年、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, DOI: 10.1002/14356007.a18_261.pub2、第2.2.8章「Carboxylic acids, saturated」と組み合わせた第5.4.1章「Secondary reactions of radicals, peroxides, and other intermediates」に記載されている。したがって、過酸はまた、それぞれのアルデヒドの酸素によるそれぞれのC6~12飽和脂肪族カルボン酸への酸化の間に中間体として生じることが明白である。過酸は非常に反応性の高い分子である。これらの少量のみが酸化後に粗製のカルボン酸生成物中に残り適切に分離除去されなかったとしても、C6~12飽和脂肪族カルボン酸は、望ましくない特性、例えばより低い色安定性を引き起こすおそれがある。
CN 108047027は、3,5,5-トリメチルヘキサナールの3,5,5-トリメチルヘキサン酸(イソノナン酸)への酸化において形成されたこのような過酸化物の分解について取り上げている。そこでは、過酸化物の濃度はかなり低いが、精留カラム中では、過酸と他の成分との沸点の差異に起因して過酸化物がその中に蓄積し得るため、該濃度は依然として問題を引き起こすのに十分なほど高いことが判明した。さらに、該CN出願は、先行技術において、比較的低い濃度の均一系触媒が過酸化物を分解するために使用されることを記載している。しかし、そのような均一系触媒は分離除去するのが非常に困難であり、蒸留カラム中のスラッギング、詰まり及び爆発のリスクも引き起こす。そのような問題を回避するために、該CN出願は、精留カラムに入れる前に、金属有機構造(フレームワーク)触媒上で過酸化物の分解を不均一系触媒することを教示している。過酸化物を20~70℃の低温で分解することのみが重要であり、そうでなければ、副反応、例えば脱炭酸が起こり、収率及び純度を低下させるためであることが教示されている。その上、分解が非常に速く、したがって5~40h-1の高い空間速度で行うことができ、これは1.5~12分の短い滞留時間に関連することが強調されている。
しかしながら、金属有機フレームワーク触媒を過酸化物分解触媒として使用することは一般的に不利である。まず第1に、これらの金属有機フレームワーク触媒は、製造が非常に複雑である。第2に、フレームワークを構築する有機分子は、特に過酸及びこれらの分解において生成された反応性のラジカルの存在下で酸化を受けやすい。カルボン酸の存在下では、金属有機フレームワークは、抽気(bleeding)の結果として活性及び/又はフレームワーク金属を失うことが公知である。これらの浸出した金属は、次に精留カラム中で、均一系触媒として使用される金属と同じ問題を引き起こす。さらに、すべてのこれらの因子は、金属有機フレームワーク触媒の短い寿命の原因となり、よって、使用済みの触媒の廃棄及び新鮮なものの提供によるプロセス(工程)の複雑性のさらなる増大の原因となる。
PCT出願番号PCT/EP2020/087,952(EP出願番号20150845.4の優先権に基づく)においては、C3~5アルデヒドの酸化後にC3~5飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成物に残る過酸を、蒸留精製前の熱処理により大部分分解できたことが認められた。次いで、蒸留されたC3~5飽和脂肪族カルボン酸は、非常に低い含有量の活性酸素のみを示し、これはひいては非常に低い含有量の過酸化物、例えば過酸を示す。活性酸素の含有量は、容易に酸化可能な化合物を酸化することができる、例えばヨウ化物(1-)の塩からヨウ素(0)へと、又は鉄(II)から鉄(III)へと酸化することのできる反応性酸素の量の定量的尺度である。
本発明によれば、EP出願番号20150845.4において提案されたような、C3~5飽和脂肪族カルボン酸を対応するC3~5アルデヒドの酸化により製造するための熱処理は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸を対応するC6~12アルデヒドの酸化により製造することにおいては成功しないこと、少なくとも数時間のみという合理的な時間内では成功しないことが認められた。生じ得るC6~12過酸はそのような熱処理により分解され、蒸留されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸は低いAPHA色数を示す可能性があるが、これらの活性酸素の含有量は依然として高く、保存中に時間の経過により、熱ストレスにさらされるときに、及びこれらが通常適用される製品において、暗くなる傾向がある。
したがって、本発明の目的は、6個~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸を、対応するアルデヒドの酸素による酸化によって調製する方法であって、高い収量及び高い純度で、特に、保存中の時間の経過により、生成物が熱ストレスにさらされるときに、及び/又はその通常の適用、例えばポリマー製造における添加剤としての適用の後に、暗くなる傾向がないか又は少なくとも非常に低い、それぞれの飽和脂肪族カルボン酸を製造することができる方法を発見することであった。該方法はまた、操作が容易であり、その実施が安全であり、長い操作時間にわたり安定して機能し、飽和脂肪族カルボン酸を一定の高品質で製造するであろう。
本発明者らは、驚くべきことに、6個~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸を、対応するアルデヒドの酸素分子による酸化によって調製する方法であって、
(a)対応するアルデヒドを、酸素分子を用いて、0~120℃の温度及び0.02~2MPaの酸素分圧で変換して、飽和脂肪族カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸に対して2mol-%以下の対応するアルデヒド、及び酸素分子を含有する液体混合物を得るステップと、
(b)ステップ(a)において得られた液体混合物から酸素分子を液体混合物に対して10wt.-ppm以下の含有量まで除去するステップと、
(c)ステップ(b)において得られた混合物を、精製カラムを備えた蒸留装置中で蒸留し、そこから蒸留物に対して95wt.-%以上の飽和脂肪族カルボン酸を含有する精製蒸留物を取り出すステップと
を含む、方法を見出した。
6個~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸は、以下では簡単にC6~12飽和脂肪族カルボン酸と呼ばれ、見出された製造方法が非常に好適であるものであり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよい。置換されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸は、炭素及び水素に加えて1つ以上のヘテロ原子を含み、ハロゲンがその例示として挙げられる。非置換のC6~12飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。これらの炭素原子数で分けられた好ましい例は、次の通りである。
C6について ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、及び3,3-ジメチルブタン酸
C7について ヘプタン酸、及び2-メチルヘキサン酸
C8について オクタン酸、2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-エチル-4-メチルペンタン酸、及び2-プロピルペンタン酸
C9について ノナン酸、及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸
C10について デカン酸、2-プロピルヘプタン酸、及び2-プロピル-4-メチルヘキサン酸
C11について ウンデカン酸、及び2-メチルデカン酸
C12について ドデカン酸、及び2-ブチルオクタン酸
上述したリストからは、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸、及びドデカン酸がより好ましい。特に好ましいのはC8~12飽和脂肪族カルボン酸であり、このなかではオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸、及びドデカン酸である。2-エチルヘキサン酸が非常に特に好ましい。
ステップ(a)と称する本発明による方法の第1のステップでは、対応するアルデヒドが酸素を用いて酸化される。上述したより好ましいC6~12飽和脂肪族カルボン酸に関して、それらのアルデヒドは、ヘキサン酸についてn-ヘキサナール、2-メチルペンタン酸について2-メチルペンタナール、ヘプタン酸についてn-ヘプタナール、オクタン酸についてn-オクタナール、2-エチルヘキサン酸について2-エチルヘキサナール、ノナン酸についてn-ノナナール、3,5,5-トリメチルヘキサン酸について3,5,5-トリメチルヘキサナール、デカン酸についてn-デカナール、2-プロピルヘプタン酸について2-プロピルヘプタナール、及びドデカン酸についてn-ドデカナールである。
C6~12アルデヒドは、原料の入手可能性に応じて、多様な方法により通常容易に調製することができる。1つの典型的な調製方法は、所望されるアルデヒドよりも1つ炭素原子の少ない対応するアルケンのヒドロホルミル化である。例示として、1-ペンテンのn-ヘキサナールへのヒドロホルミル化が挙げられる。別の典型的な調製方法は、中間体としてのアルケナールへのアルドール縮合、及びその続いての所望されるアルデヒドへの水素添加である。例示として、n-ブタナールの2-エチル-2-ヘキセナールへのアルドール縮合、及びその続いての2-エチルヘキサナールへの水素添加が挙げられる。最後であるが大事なこととして、第3の典型的な調製方法は、対応するアルコールの脱水素化である。この方法としては、1-デカノールのn-デカナールへの脱水素化が例示として挙げられる。
酸化されることを意図されたアルデヒドは、希釈形態又は純粋形態で使用することができる。アルデヒドが希釈形態で使用される場合、希釈剤は好ましくは、酸素を用いた酸化に対して不活性であり、生成したカルボン酸に対して安定であり、蒸留によりカルボン酸から容易に分離する化合物であろう。前述した希釈剤をカルボン酸から分離する必要性は、対応するカルボン酸が希釈剤として使用される場合には回避することができる。しかしながら、希釈剤は反応体積を上昇させ、したがって空間時間収率を低下させ、さらに対応するカルボン酸以外の希釈剤が使用される場合には所望されるカルボン酸の汚染を引き起こすことがあるため、アルデヒドを意図的に希釈しないことが好ましい。好ましくは、アルデヒドは非常に濃縮された化合物として、好ましくは80~100wt.-%、より好ましくは80~100wt.-%、特に好ましくは95~100wt.-%、及び非常に特に好ましくは99~100wt.-%のアルデヒド含有量で適用される。
1種の特定の飽和脂肪族カルボン酸のみの調製に加えて、本発明の方法は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の混合物の調製にも適用することができる。そのような混合物が調製される場合には、特に、同様の炭素数を有するC6~12飽和脂肪族カルボン酸の混合物が好ましい。しかしながら、混合されていないC6~12飽和脂肪族カルボン酸を調製することが通常より好ましい。
2-エチルヘキサナールの酸化による2-エチルヘキサン酸の調製が特に好ましい。
アルデヒドの酸化は、酸素分子を用いて行われる。これは、純粋形態で、又は他のガスで希釈して、例えば空気、O2/N2混合物の形態又は他の不活性ガスとの混合物の形態で、使用することができる。
酸化反応は、酸化触媒の有無を問わずに、及び/又は選択性改善添加剤の有無を問わずに行うことができる。酸化触媒が使用される場合、これらは均一系触媒である。均一系酸化触媒の例として、元素の周期表の第6~11族の遷移金属の塩、好ましくはこれらの族の1列目の塩、最も好ましくはMn、Fe又はCoの塩が挙げられる。選択性改善添加剤が使用される場合、これらも均一系である。選択性改善添加剤の例として、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩及び元素の周期表の第12族の遷移金属の塩、好ましくはNa、K、Mg、Ca、Zn又はCdの塩、最も好ましくはK又はNaの塩、特に好ましくはKの塩が挙げられる。塩は、反応混合物中に可溶性の任意の塩から選択することができるが、カルボン酸塩、水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩が好ましい。均一系酸化触媒金属の濃度は広範な範囲で変動することができるが、反応混合物に対して0.0001~0.1wt.-%の金属含有量が、典型的な含有量である。均一系選択性改善金属の濃度も広範な範囲で変動することができるが、反応混合物に対して、0.01~5wt.-%、好ましくは≧0.02wt.-%(0.02wt.-%以上)、より好ましくは≧0.05wt.-%であって、好ましくは≦2wt.-%(2wt.-%以下)、より好ましくは≦1wt.-%、特に好ましくは≦0.5wt.-%の金属含有量が、典型的な含有量である。均一系触媒金属及び均一系選択性改善金属を同時に使用することも可能である。
アルデヒドの性質に依存して、酸化触媒の存在、特に選択性改善金属の存在は、副生成物の範囲及び種類に影響を与える。例えば、2-エチルヘキサナールのようなアルファ分岐鎖アルデヒドは、いかなる選択性改善金属も存在しない場合、副生成物としてより多くのホルメート(formate)を生成する傾向がある。しかし、選択性改善金属の存在下で、特にナトリウム又はカリウムの塩の存在下で、最も特にカリウム塩の存在下で、アルファ分岐鎖アルデヒドは、はるかにより少ない所望されないホルメートを生成する。よって、アルファ分岐鎖アルデヒドでは、選択性改善金属の存在下で、好ましくはナトリウム又はカリウムの塩の存在下で、特に好ましくはカリウム塩の存在下で酸化を行うことが好ましい。他方、n-ヘキサナール又はn-デカナールのような直鎖アルデヒドは、選択性改善金属の不在下でさえ極少量のみのホルメートを既に形成しており、そのため、選択性改善金属の添加は、選択性に関連しないか、又はわずかにのみ関連する。よって、直鎖アルデヒドでは、選択性改善金属の不在下で酸化を行うことが好ましい。
均一系触媒金属については、これらは反応速度を増大するが、選択性について有害な効果を有する。よって、均一系触媒金属の添加の不在下で酸化を行うことが好ましい。
酸化触媒の存在の有無にかかわらず、酸化反応は、0~120℃の温度及び0.02~2MPaの酸素分圧で行われる。≧10℃(10℃以上)、より好ましくは≧20℃、特に好ましくは≧30℃であって、好ましくは≦100℃(100℃以下)、より好ましくは≦80℃、特に好ましくは≦60℃の温度で行うことが好ましい。酸素分圧に関しては、≧0.05MPa(0.05MPa以上)、より好ましくは≧0.1MPa、特に好ましくは≧0.11MPaであって、好ましくは≦1.5MPa、より好ましくは≦1MPaの酸素分圧で行うことが好ましい。酸素分圧は、全圧を測定し、現在の技術水準において公知の任意の好適な方法により決定されたvol.-%でのO2の濃度を乗算することにより、容易に決定することができる。
酸素分圧は、酸素供給源の酸素含有量に対して広範な範囲で変動することができるが、ステップ(a)での全圧は、通常、0.01~5MPa absの範囲である。酸化反応は、好ましくは、0.1MPa abs以上の全圧、より好ましくは0.2MPa abs以上の全圧で行われる。これは、好ましくは、4MPa abs以下の全圧、より好ましくは3MPa abs以下の全圧で行われる。
これらの条件では、アルデヒドはほぼ完全に液相中にあり、酸化反応も液相中で行われる。
ステップ(a)におけるアルデヒドの酸化は、典型的に反応デバイス(反応装置)中で、バッチ式、半連続的又は連続的のいずれかで行われる。連続的操作では、アルデヒド及び酸素が反応デバイスへと連続的に供給され、十分な反応混合物の流れが連続的に取り出される。滞留時間を含む連続的操作の加工条件は、所望の変換が達成されるように選択される。バッチ操作では、反応デバイスはアルデヒド及び酸素の添加で充填され、必要とされる場合には補充される。所望の変換が達成された後、混合物は反応デバイスから取り出される。半連続的操作は、酸化反応が既に起こっている間に、アルデヒド及び酸素を一緒又は間欠的に、特定の時間にわたり反応デバイスへと添加することを特徴とする。しばらくして、例えば反応デバイスが多かれ少なかれ充填された場合、添加を停止し、所望の変換が達成された後に混合物は反応デバイスから取り出される。
ステップ(a)についての好ましい操作はバッチ操作及び連続的操作であり、連続的操作が特に好ましい。
ステップ(a)においてアルデヒドの酸化が行われる反応デバイスは、1つ以上の反応装置を包含してもよい。原理上、好適な反応装置には、発熱性の気液反応を行うのに好適なデバイス、及び不連続的に、半連続的に又は連続的に操作できるデバイスが挙げられる。不連続的工程については、撹拌オートクレーブ又はジェットループ型混合を伴うオートクレーブが、例えば好適である。半連続的工程については、撹拌容器、トリクルベッド反応器及びバブルカラム反応器が、可能な例として挙げられる。連続的工程については、撹拌容器、トリクルベッド反応器、バブルカラム反応器、ジェットループ型反応器及び上述の反応器のカスケードが、好適な例として挙げられる。好適な反応器の好ましい例は、WO2009/024,446及びWO2009/024,549において詳細に記載されている。反応器カスケードを使用する場合、例えば連続的工程において、2~5つ、好ましくは2~4つ及び特に好ましくは2~3つの反応器が順に連結される。
集中的な(激しい)気液混合及び液体反応混合物中の酸素の良好な分布を可能とする反応装置を使用することが好ましい。
酸化による相当な量の反応熱の形成のため、反応領域から熱を除去することが必要である。反応器中に供給されるアルデヒド及び酸素の濃度に依存して、連続的に行われる工程においては、反応混合物のみで熱を除去すること、及び低温の新鮮なアルデヒドを添加することにより反応器中の温度を制御することで十分であり得る。しかし、より高い濃度のアルデヒド及び空気と同等以上の酸素含有量では、通常、反応器中で反応液を冷却する必要がある。そのような冷却は、例えば反応器の外壁を外部から冷却することによるか、又は反応器内の冷却剤が流れる冷却管によるか、又は外部ループにおいて外部熱交換器を使用することにより、行うことができる。
全体の化学式
Figure 2023541799000001
(式中、Rは、C5~11アルデヒド及びC5~11カルボン酸のC5~11基を表す)
によると、0.5molの酸素O2が、アルデヒドをカルボン酸へと酸化するのに化学量論的に必要とされる。酸化を酸素不足で行い、結果として部分的に変換し、且つ反応混合物中に残留するアルデヒドを存在させることが可能ではあるが、化学量論量又は化学量論量を超える量で酸素を適用することが好ましい。一方で十分な変換を保証し、他方でガス負荷を制限するために、酸化反応は、好ましくは0.5~1の酸素とアルデヒドとのモル比で行われる。これは、より好ましくは0.51以上、特に好ましくは0.52以上であって、より好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.6以下、非常に特に好ましくは0.58以下の、酸素とアルデヒドとのモル比で行われる。
連続的酸化工程については、反応器カスケードの使用は、酸素の段階的な添加が可能となるために特に有利であることが示されている。そのような酸素の段階的な添加の大きな利点は、反応熱のより良好な制御、及び特にそれぞれのカスケード段階中の少ない量のガス画分である。したがって、そのような2~3つの反応器の反応器カスケードを使用することが特に好ましく、好ましくはアルデヒドの全量及び全酸素の約70~95%が第1の反応器に供給され、酸素の残りの5~30%は、全量が第2の反応器に供給されるか又は第2及び第3の反応器へと2部にさらに分けられて供給され、ここで第3の反応器についての画分は、好ましくはより小さな画分となるであろう。
酸素が化学量論量又は化学量論量を超える量で適用されたとしても、100%近くのアルデヒド変換を達成するには非常に長い時間がかかるであろう。これは、反応装置を不必要にブロックし、又は反応装置を極めて大きいものとするであろう。したがって、ステップ(a)では、アルデヒドを、飽和脂肪族カルボン酸に対して2mol-%以下の残留アルデヒド量が達成されるまで変換することが有利である。アルデヒドの性質、反応デバイスに提供される酸素含有気体の濃度、及び工程の条件に依存して、飽和脂肪族カルボン酸に対する2mol-%以下の残留アルデヒド量は、概して0.1~5時間の反応時間の後に達成される。
飽和脂肪族カルボン酸及び対応するアルデヒドの含有量に関するステップ(a)の反応混合物の組成は、通常ガスクロマトグラフィーにより決定することができる。
ステップ(a)において得られた混合物は、飽和脂肪族カルボン酸に対して、好ましくは1.5mol-%以下、より好ましくは1mol-%以下、特に好ましくは0.5mol-%以下、非常に好ましくは0.3mol-%以下であり、かつ好ましくは0.05mol-%以上、特に好ましくは0.1mol-%以上の対応するアルデヒドを含有する。
反応時間を考える場合、0.2時間以上の時間が好ましく、0.3時間以上がより好ましく、好ましくは0.5時間以上が好ましい。さらに、8時間以下の時間が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下が特に好ましい。
上述した飽和脂肪族カルボン酸及び飽和脂肪族カルボン酸に対して2mol-%以下の対応するアルデヒドを含有する混合物がステップ(a)において得られた後、次いで、反応液は、残留する酸素含有気相から好ましくは分離される。バッチ工程において、これは例えば、単に酸素含有気相を排出することにより達成することができる。連続工程においては、例えば、単に液体反応混合物を反応装置から取り出すことにより達成することができる。
分離された反応液の生じ得る副生成物については、酸素を用いたアルデヒドの酸化において過酸が最初に形成され、これが次にアルデヒドをさらに酸化して、中間体過酸1モルあたり2モルのカルボン酸を生成することが、現在の技術水準から公知である。反応ステップを以下に示す
Figure 2023541799000002
(式中、RはC5~11基を表す)。そのような酸はまた、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の調製の酸化ステップ(a)において形成されると考えられ、添加されたアルデヒドは通常完全には変換されないが、液体反応混合物にわずかに残留すると考えられる。過酸は高い酸化潜在力を有し、適切に分離除去されないと、保存中の時間の経過により、生成物が熱ストレスにさらされるときに、及び/又はこれらが通常適用される製品において、カルボン酸の暗化を引き起こし得る。しかしながら、過酸は、高い酸化潜在力を有する他の化合物とともに、反応性酸素の量の定量的尺度であるいわゆる「活性酸素」として容易に特徴付けすることができる。「活性酸素」という用語は現在の技術水準において既に公知で使用されており、例えばA. Uhlら、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry中の「Peroxy Compounds, Organic」、2017年、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, DOI: 10.1002/14356007.a19_199.pub2、第10章「Analytical Determination」において記載されている。試料の活性酸素の量は概して、一定量の容易に酸化可能な化合物、例えばヨウ化物(1-)又は鉄(II)の塩を一定量の試料に添加することにより決定される。存在する反応性酸素は酸化可能な化合物を酸化し、酸化された酸化可能な化合物の量は、その後、滴定により決定される。
過酸の沸点は通常、対応する酸の沸点から大きく外れることはなく、そのため通常、対応する酸から容易に分離除去できないことから、そして蒸留された酸における不純物としての過酸は、保存中に時間とともに、熱ストレスにさらされたときに、さらに酸が通常適用される製品において暗化を引き起こすだろうとの知見に基づけば、そのような過酸はまた、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の暗化の原因となることが当初は仮定された。技術水準についての導入部分の要約において既に述べた、C3~5飽和脂肪族カルボン酸の調製に関するEP出願番号20150845.4における教示に基づけば、過酸は、熱処理により容易に分解すると考えられ、この熱処理が蒸留精製前に実施されることが教示されている。しかしながら、本発明によれば、そのような熱処理は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の調製においては成功しないこと、少なくとも数時間のみという合理的な時間内では成功しないことが認められた。第1に、ステップ(a)にしたがって調製されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成物における活性酸素含有量は、そのような熱処理によってわずかのみ減少する。第2に、生じ得るC6~12過酸はそのような熱処理により分解され、蒸留されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸は低いAPHA色数を示す可能性があるが、これらの活性酸素の含有量は依然として高く、保存中の時間の経過により、熱ストレスにさらされるときに、及びこれらが通常適用される製品において、暗くなる傾向がある。
驚くべきことに、熱処理されていない生成物の蒸留だけでなく熱処理された生成物のその後の蒸留においても、活性酸素含有量の原因となる大部分の成分が、塔底画分中に豊富であり、ほんの小さな部分ではあるが、なお注目に値する部分が、蒸留されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸において発見されたことが見出された。両方の知見は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成物における活性酸素含有量は主に過酸以外の成分が原因となるという重要な結論につながった。これらの他の成分の性質についてのより詳細な研究により、これらの他の成分が主に一般式(4)のアルキルヒドロペルオキシドであることが明らかになった
Figure 2023541799000003
(式中、適用されるアルデヒドに応じて、R1はCOOH基を有するC1~11基を表し、R2はC1~10基又はHを表し、R3はC1~5基又はHを表し、ここでR1、R2及びR3の炭素原子の合計は5~11である)。ヒドロペルオキシ基は、炭素原子が1級炭素原子であるか、2級炭素原子であるか又は3級炭素原子であるかにかかわらず、COOH基を除けば、C6~12飽和脂肪族カルボン酸のいずれの炭素原子に配置されてもよい。しかしながら、3級炭素原子及びCOOH基に対してα位の炭素原子が、特に過酸化の傾向がある。
アルキルヒドロペルオキシドは、適切に分離除去されないと、保存中の時間経過により、熱ストレスにさらされるときに、及び/又はこれらが通常適用される製品において、カルボン酸の暗化を引き起こし得る。
飽和脂肪族カルボン酸のアルキルヒドロペルオキシドは、それぞれの飽和脂肪族カルボン酸よりも大幅に高い沸点を有することが知られている。以下のリストは、いくつかの2-ヒドロペルオキシ酸の沸点を、それぞれの酸の沸点と比較して示す。これらの大気圧での沸点は、米国化学会により提供される化学的及び書誌的情報の電子データベースであるSciFinderにより見積もったものであり、次の通りである。
195±8℃ 2-メチルペンタン酸について
295±23℃ 2-メチル-2-ヒドロペルオキシペンタン酸について
239±3℃ オクタン酸について
327±25℃ 2-ヒドロペルオキシオクタン酸について
306±10℃ 2-エチルデカン酸について
373±25℃ 2-エチル-2-ヒドロペルオキシデカン酸について
そのような大きな沸点の差異は、蒸留による簡単な分離を容易にするはずである。上述の研究により見出された塔底画分における活性酸素の高い含有量もまた、このことを強く示している。しかしながら、そのことに基づけば、活性酸素の小さい部分ではあるが注目に値する部分がまた、蒸留されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸においてなお見出されたことは、なおさら驚くべきことである。蒸留中のそれぞれのヒドロペルオキシ酸のずれ(slippage)は、これらの高い沸点のために非常に起こりにくいことである。
活性酸素含有量の情報価値に関してより正確であるために、その測定方法をより詳細に説明する。本発明によると、活性酸素の決定は、好ましくはヨウ化物(1-)の酸化により行われる。この分析方法はヨード滴定と呼ばれ、当業者に周知である。しかし、これを以下で概略的に説明する。
ヨード滴定では、一定量の酢酸中のヨウ化カリウム水溶液を一定量の試料に室温で添加し、ヨウ化物(1-)を元素状ヨウ素へと酸化するために撹拌する。添加するヨウ化カリウムの量は、予測される活性酸素の量に関連し、予備測定により推定することができる。ヨード滴定測定については、添加するヨウ化物(1-)の量は、元素状ヨウ素へと酸化される量よりもわずかに多いものでなければならない。元素状ヨウ素は、次に、前の酸化により形成された元素状ヨウ素の量を決定するために、チオ硫酸ナトリウムを用いて滴定される。指示薬としてデンプンが典型的に使用され、これは元素状ヨウ素が存在するかぎり紫色であり、すべての元素状ヨウ素がヨウ化物に還元されたときに無色となる。或いは、白金電極を使用することもできる。添加するヨウ化カリウムの量及び酸化により形成される元素状ヨウ素の量に基づき、酸化されたヨウ化物(1-)の量を算出することができる。形式的な式
Figure 2023541799000004
及び過酸及びアルキルヒドロペルオキシドについてのより詳細な式
Figure 2023541799000005
によると、2モルのヨウ化物(1-)は、酢酸の存在下で1モルの活性酸素原子と反応する。活性酸素は式(5)中で”O”と表され、式(6)及び(7)中のペルオキソ基の一部である。これは水に還元される。式(6)及び(7)中、「Ac」はアセチル基を表し、基R、R1、R2及びR3はそれぞれ式(2)/(3)及び(4)に記載された通りの意味を有する。試料の活性酸素含有量は、試料の重量に対する活性酸素原子の重量分率であり、wt.-%又はwt.-ppmで示される。
活性酸素の含有量は、活性酸素がヒドロペルオキシドとしてC6~12飽和脂肪族カルボン酸において単独で結合していると仮定して、等しい過酸化物化合物の含有量へと容易に変換することができる。変換は、測定された活性酸素含有量に、ヒドロペルオキシ酸のモル質量と酸素原子のモル質量との比を乗算することにより行うことができる。例えば、2-エチルヘキサン酸の場合、倍率は176.2/16.0=11.0125である。
完全性のために、カルボン酸含有試料中の活性酸素の量は、基本的には物理的方法、例えば13C-NMRにより決定することもできることがまた言及される。
しかし、本発明においては、活性酸素は、水性酢酸媒体中、室温及び大気圧でヨウ化物(1-)を元素状ヨウ素へと酸化することが可能な、試料中に存在する酸素の質量として理解される。
ステップ(a)において得られた混合物の活性酸素含有量は、典型的には、混合物に対して0.02~1wt.-%、好ましくは0.03wt.-%以上、より好ましくは0.05wt.-%以上であって、好ましくは0.8wt.-%以下、より好ましくは0.5wt.-%以下である。
C6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物の驚くべき挙動についての集中的な研究の後、驚くべきことに、粗製生成混合物における酸素分子の存在が、主に、蒸留されたC6~12飽和脂肪族カルボン酸における注目に値する活性酸素の含有量の原因となることが見出された。
酸化ステップ(a)において、酸素分子の一部は、その分圧、液体混合物の温度及び液体混合物の化学的組成に応じて、物理的に溶解した酸素分子として液体混合物において未反応のまま残る。ステップ(a)により得られた液体混合物におけるその濃度は、通常、液体混合物に対して10wt.-ppm超から1wt.-%以下である。少量の酸素分子は液体混合物において未反応のまま残ることから、液体混合物に対して10wt.-ppm以下の含有量は通常実現されず、1wt.-%超の含有量は、その限定された溶解性のために実際には実現されない。酸素分子の上述した濃度は、ステップ(a)において得られた液体混合物に関するものであることから、値は、液体混合物が反応装置を離れる直前の変換の終点の反応条件を参照する。したがって、液体混合物における酸素分子の濃度の測定は、好ましくは、液体混合物が反応装置を離れる直前の上述した条件下で実施される。しかしながら、それは別にまた、より低い圧力、例えば大気圧で測定されてもよく、測定値は、広く認められている法則、例えば圧力依存についてのヘンリーの法則を考慮して補正されてもよい。ステップ(a)により得られた液体混合物における酸素分子の濃度は、好ましくは20wt.-ppm以上、より好ましくは50wt.-ppm以上である。その上限値については、通常、1wt.-%以下(又はppmスケールで表すと10000wt.-ppm以下)、好ましくは5000wt.-ppm以下、より好ましくは2500wt.-ppm以下、特に好ましくは1000wt.-ppm以下、非常に特に好ましくは750wt.-ppm以下である。
ステップ(a)により得られた液体混合物における酸素分子の濃度は、容易に測定され得る。有益な装置は、例えば、水の分析において用いられることの多い、光学センサーである。可能性のある例示として、光学蛍光センサーが挙げられる。光学蛍光センサーは現在の技術水準であり、当業者であれば、これらの較正及び使用の仕方が分かる。そのようなセンサーは、酸素に対して非常に特異的で、酸素に対して非常に感受性が高い。これらは、0.01wt.-ppmまで下がる非常に低い濃度を測定することさえできる。そのような光学蛍光センサーは、ある程度熱及び圧力に耐性があることから、インライン測定に使用することもできる。
ステップ(a)により得られた液体のC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物が、ヒドロペルオキシド、及び多くても非常に少量のそれぞれの副生成物としてのもの、及び未変換の溶解した酸素分子を含有することを説明したことで、活性酸素という用語が酸素分子を包含しないことに言及することが重要である。これは、酸素分子が、ヒドロペルオキシドを含有する試料における活性酸素の測定のために使用する条件下で非常にゆっくりとのみ反応するという事実によるものであり、さらに、酸素分子によるあらゆる妨害を最小限に抑えるために、不活性ガス下で測定を実施することは良い慣行である。このことの有利な結果として、活性酸素及び酸素分子は、別々に測定及び評価され得る。
全ての上述した驚くべき知見に基づき、ステップ(a)により得られた液体のC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物に存在する酸素分子が、蒸留されてC6~12飽和脂肪族カルボン酸が単離される前に、ステップ(b)と称する続いてのステップにおいて液体混合物に対して10wt.-ppm以下の含有量にまで除去される場合、保存中の時間経過による、、熱ストレスにさらされるときの、及び/又はこれらが通常適用される製品における、カルボン酸の暗化が、回避され得る又は少なくとも大きく低減され得ることが次いで見出された。完全を期すために、ステップ(a)と(b)の間にさらなるステップがあり得ることが言及され、そのステップとして例えば、温度若しくは圧力の低下若しくは上昇、又は蒸留による低沸点物の除去が挙げられる。
液体粗製生成混合物における酸素分子を10wt.-ppm以下の含有量にまで除去するためにいくつかの可能性がある。1つの可能性は、混合物に長い時間を与えて、溶解した酸素分子をなお存在するアルデヒドと反応させることである。これは、例えば、そこを通って混合物が流れる、意図された滞留時間を可能にする管において、又は直列につながった1つ以上の滞留時間槽において実施され得る。そのような手順は、さらなる化合物の添加も特定の条件の調節、例えば温度上昇も必要としないが、典型的には10時間を大きく上回り、むしろ50時間超、又は100時間超もの長い時間を必要とするために好ましい方法ではない。
酸素分子を10wt.-ppm以下の含有量にまで除去するための好ましい可能性として、ステップ(a)において得られた液体粗製生成混合物の不活性ガスによるストリッピングが挙げられる。
基本的には、ストリッピングは、ストリッパーとも呼ばれる容器内で実施され得る。そこで液体粗製生成混合物は、溶解した酸素分子を不活性ガスの気相に移動させてそれを気相とともに除去するために、不活性ガスと接触され得る。連続的調製工程では、ステップ(a)において得られた液体粗製生成混合物はストリッパーに連続的に供給され、そこでは不活性ガスが混合物に通過され得る。基本的に、そのようなストリッパーは、基本的には気体と液相とを接触させるための技術水準において知られているいずれの種類の容器であっても使用できるように様々な形状からなり得るが、好ましくは、いわゆるストリッピング塔が好ましい。ストリッピング塔は、それらの長さの平均径に対する比が1超であることで特徴付けられ、好ましくは5以上、より好ましくは8以上であり、好ましくは15以下である。不活性ガスがストリッピング塔の下部域に供給されて上部域までバブリングする一方、液体粗製生成混合物は、下部域に供給されて並流を引き起こしてもよく、又は上部域に供給されて向流を引き起こしてもよい。向流でのステップ(b)におけるストリッピングを含む、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の連続的調製が好ましい。ストリッピングが並流で実施されるか向流で実施されるかにかかわらず、気体と液相の間の接触を改善することが好ましい。これは、ストリッパー内のランダムな又は構造化されたパッキング又はトレイにより容易に達成され得る。気体/液体の接触を促進させるためのそのような内部材は、当業者に公知であり、容易に選択され得る。
別の方法として、酸素分子はまた、液体粗製生成混合物を自由空間のある装置、例えば垂直塔の最上部に噴霧することにより除去され得、そこで不活性ガスは、塔底から向流で供給される。
不連続的又は半連続的調製方法については、液体粗製生成混合物は、例えば、ステップ(a)におけるアルデヒドの変換が行われ、かつ好ましくは酸素分子含有酸化ガスの気相が排出された後に、得られた液体粗製生成混合物に不活性ガスが通過される反応器中に、保持することができる。液体粗製生成混合物を、ステップ(a)の反応器から、ストリッパーとも呼ばれる、そこで不活性ガスが混合物に通過される別の容器へと移動させることもまた可能である。そのようなストリッパーとしては、液体粗製生成混合物が通常は固定相であることを除いて、連続的調製工程に関する上記の記載が同様に適用される。
ストリッピングに適した不活性ガスは、ストリッピングが実施される条件下で気体であり、液体粗製生成混合物と反応せず、本質的に酸素分子を含まない物質である。不活性ガスにおける酸素分子の許容濃度は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の性質、及び液体粗製生成混合物がストリッピングされる条件に依存し得るが、不活性ガスの酸素分子の含有量は、好ましくは5vol.-ppm以下、より好ましくは2vol.-ppm以下、特に好ましくは1vol.-ppm以下である。少量の酸素分子は、例えば、それらの調製又は精製のそれぞれに由来する不純物として不活性ガス中に存在し得る。可能性のある不活性ガスとして、窒素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、亜酸化窒素、及び希ガス、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、及びクリプトンが挙げられる。不活性ガスは、純粋形態で提供されてもよく、2つ以上の異なる不活性ガスの混合物として提供されてもよい。その入手可能性のために、窒素が好ましい。
ステップ(b)におけるストリッピングは、幅広い温度及び圧力範囲で実施され得る。それは好ましくは0~150℃の温度及び0.0001~10MPa absの圧力で実施される。より好ましくは、ストリッピングは、ステップ(a)において液体粗製生成混合物が反応装置を離れる温度、及びストリッピングされた混合物がステップ(c)において蒸留装置に供給される温度の範囲内の温度で実施される。ストリッピングは、特に好ましくは25℃以上で、特に好ましくは100℃以下、非常に特に好ましくは60℃以下で実施され、これは、酸素分子と、液体混合物及び特に既に形成されたカルボン酸との間の望ましくない反応を回避する又は少なくとも最小化する観点から、液体のC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物にとって特に有利である。圧力については、ストリッピングは、より好ましくは、ステップ(a)において液体粗製生成混合物が反応装置を離れる圧力、及びストリッピングされた混合物がステップ(c)において蒸留装置に供給される圧力の範囲内の圧力で実施される。上述した幅広い圧力範囲は既に、圧力の選択における優れた適応性を示す。工場建設地で入手可能な施設及び設備に応じて、真空条件下又は大気圧以上でのストリッピングの利点が有効となり得る。十分な真空にする力がある場合、必要量のストリッピングガスが少なくストリッピングが高度に効率的であることから、0.0001から<0.1MPa absの真空条件下でのストリッピングが通常好ましい。別の方法として、0.1MPa abs以上のストリッピングは、真空にする力が必要でないという利点を有する。しかしながら、不活性ガスの体積が液体混合物を通って特に有利にバブリングするのに十分なほどなお大きいことから、大気圧以上でのストリッピングは、好ましくは0.2MPa abs以下で実施される。
ストリッピングにより特定量の酸素分子を除去するために適用される不活性ガスの量は、幅広い範囲で変化し得る。驚くべきことに、ストリッピングは高度に効率的であり、除去される酸素分子1モル量に対して少ないモル量の不活性ガスで既に十分であることが見出された。したがって、ステップ(b)におけるストリッピングは、0.25mol/mol以上のストリッパーに供給される不活性ガスと除去される酸素分子との間のモル比で好ましくは実施される。しかしながら、ストリッパーに供給される不活性ガスと除去される酸素分子との間のモル比は、好ましくは1mol/mol以下、より好ましくは4mol/mol以下である。単位時間あたりの不活性ガスの量については、ストリッパーのフラッディング点を超えないほどに十分に低いだろう。ストリッパーの形状、連続的操作の場合のストリッパーに供給される液体粗製生成混合物の量、工程条件、例えば温度及び圧力、並びに混合物の物性に基づき、当業者であれば、それぞれの場合についての単位時間あたりの不活性ガスの最大許容量を計算するか又は別に実験的に測定することができる。
上述したストリッパーに供給される不活性ガスと除去される酸素分子との間の低いモル比に基づき、連続的に操作されるストリッピング塔におけるストリッピングは、通常1~10分以内、好ましくは2分以上、好ましくは5分以下で実施され得る。液体粗製生成混合物が、次いで不活性ガスによりストリッピングされる装置中に既に入れられているバッチ操作におけるストリッピングは、通常はより時間を必要とする。例えば、バッチ操作される気泡カラムにおけるストリッピングは、通常、所望される酸素分子の除去を達成するために数分から数時間まで必要とするだろう。
ステップ(a)において得られた液体混合物からの本発明の酸素分子の除去によれば、酸素分子の含有量は、ステップ(b)において10wt.-ppm以下、好ましくは5wt.-ppm以下、より好ましくは2wt.-ppm以下、特に好ましくは1wt.-ppm以下、非常に特に好ましくは0.5wt.-ppm以下まで減少される。酸素分子の含有量は、その検出限界の下までにも減少され得るが、0.05wt.-ppm以上という少量は典型的には残る。ステップ(b)において得られた液体混合物における酸素分子の濃度は、ステップ(a)について既に記載したのと同様の方法で容易に測定され得る。
ステップ(b)において得られた液体の、酸素分子が激減したC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物は、次いで、ステップ(c)へと移動させられる。完全を期すために、移動がステップ(b)と(c)の間にさらなるステップを含み得ることが言及され、そのステップとして例えば、温度又は圧力の低下又は上昇が挙げられる。
ステップ(c)においては、ステップ(b)において得られた混合物が、精製カラムを備えた蒸留装置中で蒸留され、そこから95wt.-%以上の飽和脂肪族カルボン酸を含有する精製蒸留物を取り出す。精製カラムという用語は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の精製蒸留物が得られる蒸留カラムをいう。精製カラムに加えて、蒸留装置はまた、さらなる蒸留カラム、例えば軽沸騰成分の除去のための蒸留カラム、高沸点物のワークアップのためのカラムを含むことができる。蒸留カラムの総数は限定されないが、通常1~5個であり、好ましくは1~4個であり、より好ましくは1~3個であり、特に好ましくは1~2個の蒸留カラムが使用される。蒸留カラムそれ自体及びこれらの内部材に加えて、蒸留装置という用語はまた、これらの周辺、例えば導管、熱交換器、再沸器、凝縮器、還流ドラム等を包含する。
C6~12飽和脂肪族カルボン酸の蒸留分離は、通常、連続的又は不連続的に実施され得る。
ステップ(a)において不連続的又は半連続的酸化方法の場合、ステップ(b)及び(c)もまた不連続的に実施することが通常は有利である。そのような不連続的な蒸留として、蒸留装置は、好ましくは、同時に精製カラムを構成するただ1つの蒸留カラムを含む。その中で、低沸点物がまず塔頂で留去され、C6~12飽和脂肪族カルボン酸が続いてさらなる画分として得られる。必要とされる装置の数を最小限に抑え、方法を簡潔にするために、1つの同じ蒸留装置において、酸素分子の除去、及び続いての蒸留を実施することもまた好ましいことがある。
ステップ(a)において連続的酸化方法の場合、連続的及び不連続的な、ステップ(b)における酸素分子の除去及びステップ(c)における蒸留が有利であり得、これら両方が基本的に同等に好ましい。しかしながら、連続的な蒸留の利点は、通常、より大きい生産量に有効となり、不連続的な蒸留の利点は、より小さい生産量に有効となる。通常、連続的な蒸留は、1年あたり1000トン超のC6~12飽和脂肪族カルボン酸の生産量の工場にとって好ましく、一方で不連続的な蒸留は、1年あたり1000トン以下のそれぞれの生産量の工場にとって好ましい。不連続的な蒸留について、蒸留装置は好ましくはただ単一の蒸留カラムを含む一方で、連続的な蒸留は、通常、単一の蒸留カラムで、又は複数の蒸留カラムの相互接続でのいずれかで実施される。不連続的な蒸留については、前述の段落の説明が結果として適用される。連続的な蒸留については、例えば、同時に精製カラムを構成する1つの蒸留カラムにおいて行われ得、その中で、低沸点物が塔頂で留去され、C6~12飽和脂肪族カルボン酸が側流として取り出される。高沸点物は、塔底の流れとして取り出される。連続的な蒸留はまた、2つ以上の相互接続した蒸留カラムにおいて実施され得る。2つの相互接続した蒸留カラムが使用される場合、低沸点物は、通常、第1の蒸留カラム中で分離除去され、C6~12飽和脂肪族カルボン酸及び高沸点物を含有する塔底残留物は、精製カラムを構成する第2の蒸留カラム中へと移され、ここでC6~12飽和脂肪族カルボン酸は塔頂で取り出され、高沸点物は塔底生成物として残る。2つの相互接続した蒸留カラムを有するさらなる好ましくない変形態様では、飽和脂肪族カルボン酸は、低沸点物と一緒に第1の蒸留カラムの塔頂で取り出され、よって、第1の蒸留カラム中で高沸点物から既に分離されるが、次に第2の蒸留カラム中で精製しなければならず、さらなる飽和脂肪族カルボン酸のエネルギー集中的な蒸発を必要とするであろう。2つの相互接続した蒸留カラムを使用する代わりに、分割壁型カラム又は同等のPetlyuk構造もまた、使用され得る。完全を期するために、例えば軽沸点物を異なる画分へと分離するためにも、3つ以上の蒸留カラムの使用がまた言及される。2つ以上の異なるC6~12飽和脂肪族カルボン酸がともに調製される場合、これは通常、それぞれのC6~12飽和脂肪族カルボン酸のために1つの分離した精製カラムを必要とすることから、3つ以上の蒸留カラムの使用はまた、興味深いものであり得る。
1つのみの蒸留カラムが使用されるか又は2つ以上の蒸留カラムの相互接続が使用されるかどうかにかかわらず、これらは分離効率補助内部材、例えば構造化パッキング、ランダムパッキング又はトレイを備え得るか、好ましくは備える。必要とされる分離段階の数は、分離タスク、特に低沸点物及び高沸点物の沸点に関連する飽和脂肪族カルボン酸の沸点の差異、並びに目標とする飽和脂肪族カルボン酸の純度に、主に依存する。
ステップ(c)における操作条件については、本発明によれば、より高い温度が、望ましくない副生成物の形成、例えば無水物の形成をますます容易にすることが認められたことから、C6~12飽和脂肪族カルボン酸を、170℃を超える温度にさらさないことが推奨される。したがって、C6~12飽和脂肪族カルボン酸が処理される蒸留カラムの温度は、好ましくは170℃以下であり、特に精製カラムの温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、特に好ましくは130℃以下である。これは、適切な圧力を選択することにより容易に実現され得る。最も低い沸点のC6~12飽和脂肪族カルボン酸でさえ190℃超の大気圧での沸点を有することから、ステップ(c)の蒸留は、好ましくは0.1~99kPa absで実施され、このことはC6~12飽和脂肪族カルボン酸が処理される全ての蒸留カラムに関連する。蒸留は、より好ましくは0.5kPa abs以上の圧力、特に好ましくは1kPa abs以上の圧力であって、より好ましくは50kPa abs以下、特に好ましくは20kPa abs以下で実施される。2以上の蒸留カラムが用いられる場合、それぞれの蒸留カラムは、異なる圧力で操作され得る。上述した圧力範囲を考慮すると、ステップ(c)における蒸留は、通常0℃以上の温度、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上で行われる。
1kPa abs以下の非常に低い圧力は、通常100℃以下の低い蒸留温度につながり、かつそのような低い蒸留温度は、酸素分子の有害な効果を大きく減少させることから、非常に低い圧力での蒸留は、特に純粋なC6~12飽和脂肪族カルボン酸を得るための特定の選択肢であり得、又は別に、わずかに高い含有量の酸素分子を許容するための選択肢でもあり得る。しかしながら、そのような非常に低い圧力の変形態様は、これらの非常に低い圧力では蒸留速度が低下し、非常に低い処理量又は望ましくない大きい塔の直径の必要性のいずれかを迅速に引き起こすことから、好ましくない選択肢である。
上述した知見及び関係に基づけば、精製カラムは、好ましくは、0.1~99kPa absの圧力及び0~170℃の温度で操作される。
ステップ(a)により得られた液体のC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物に存在する酸素分子が、蒸留されてC6~12飽和脂肪族カルボン酸が単離される前にステップ(b)において液体混合物に対して10wt.-%以下の含有量にまで除去される場合、保存中の時間の経過による、熱ストレスにさらされるときの及び/又はこれらが通常適用される製品におけるカルボン酸の暗化が、回避され得る又は少なくとも大きく低減され得るという驚くべき知見の理論的帰結として、ステップ(c)への移動も含めたステップ(b)における酸素分子の除去後、ステップ(c)における蒸留中、及びその後に、酸素分子を侵入させることが望む結果をもたらさないであろうことは自明である。C6~12飽和脂肪族カルボン酸が処理される装置が、操作条件下で密閉される又は少なくとも大部分が密閉される場合、酸素分子の侵入は回避され得るか又は少なくともに非常に低い程度まで低減され得る。これは、真空下で機能する部分、とりわけ蒸留カラム、特にとりわけ精製カラムにとって特に得策である。使用したカラム、特に真空蒸留カラム、それだけでなく減圧で操作される場合はストリッパーの高度な密閉は、当業者に知られている様々な技術手段により実現され得る。そのような手段は、例えば、低い漏れ率の高品質シール又は溶接ジョイントまでもの使用、不活性ガス流出フランジ保護材の使用、又はフランジ数の最小化である。一般則では、そのような手段が実施されるほど、蒸留カラムの漏れ率は低下するだろう。
ステップ(c)においては酸素分子のいずれの侵入も回避することが望ましいが、ステップ(c)における酸素分子が激減したC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物の量に関して少量の侵入した酸素分子は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸蒸留物の純度を大きく損なわず、通常はなお、ステップ(c)に規定されるテンパリング手順後に規定される範囲内の低いAPHA色数を得ることを可能にする。結果としては、例えば1時間あたり1000kg又はそれより多い蒸留のために設計された産業技術サイズの大きな蒸留カラムは、例えば1時間あたり1kgのみ又はそれより少ない少量のみを扱う実験室サイズの小さい蒸留カラムよりも、単位時間あたりより大きな絶対量の侵入した酸素分子を、通常、許容できる。さらに、封止剤の表面と蒸留カラムの内部体積の間の比率は、小さいスケールの実験室カラムよりも産業サイズの大きいカラムの場合によりずっと小さい。本発明によれば、ステップ(b)の酸素分子が激減したC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物によって蒸留装置に供給された酸素分子の量の範囲の、ステップ(c)の蒸留装置に侵入した酸素分子の量は、許容され得ることが認められた。
C6~12飽和脂肪族カルボン酸が処理されるステップ(c)の蒸留装置の全ての部分が、有利には合理的に可能性のあるほどに密閉されるが、特に、精製カラムの密閉は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸蒸留物の純度においてより繊細である。このことは、真空条件下で操作される精製カラムに特に適用される。蒸留カラムの密閉、又は即ち漏れ率は、蒸留中に侵入した酸素分子の量を測定すること、及びこれらの値を、供給の流れにより蒸留カラムに供給された酸素分子の量と比較することにより決定され得る。真空カラムについては、このことは、真空ユニットのオフガスの量及びその中の酸素分子の濃度を測定することにより行われ得る。
0.1~99kPa absの圧力及び0~170℃の温度で操作される精製カラムは、少なくとも、その真空ユニットのオフガスにより取り出された酸素分子の量が、ステップ(b)において得られた混合物により蒸留装置に供給された酸素分子の量の2倍以下であるように密閉されていることが好ましい。より好ましくは、その真空ユニットのオフガスにより取り出された酸素分子の量がステップ(b)において得られた混合物により蒸留装置に供給された酸素分子の量の、1.8倍以下、特に好ましくは1.5倍以下であり、下限については1倍以上である。不連続的な蒸留については、量という用語は不連続的な蒸留中の絶対量を表し、一方で連続的な蒸留については、量という用語は単位時間あたりの量に関する。蒸留装置に供給された酸素分子が激減したC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物の酸素分子の量は、既に上述したように酸素分子の濃度を測定すること、例えば光学酸素分子感受性センサーを使用し、不連続的な蒸留の場合は生成混合物の全量を考慮し、又は連続的な蒸留の場合はそれを単位時間あたりの精製カラムに供給される生成混合物の量と関連付けることにより、容易に測定され得る。精製カラムの真空ユニットのオフガスにより取り出された酸素分子の量は、好ましくは圧力側の、真空ユニットのオフガスの酸素分子の濃度を測定し、例えばフローメーターを使用することでオフガスの量を決定することにより、容易に測定され得る。不連続的な蒸留については全量、連続的な蒸留については単位時間あたりの相対量が計算される。
真空カラムの密閉又は漏れ率を決定するための上述した方法は、カラムのオフガスにおける酸素分子の濃度に加えてまたオフガスの量も必要とすることから、その量は非常に少ないことがありそれにより測定することが難しいため、オフガスの量の信頼性のある値を得ることは難しいことがある。したがって、カラムのオフガスの量を必要としない別の測定方法が開発された。この別の方法は、完全には密閉されていない真空カラムがいくらかの周囲の空気をカラム中に引き込むことを考慮している。空気は、酸素分子に対して固定比でアルゴンを含有することから、カラムのオフガスにおけるアルゴンの濃度が、空気の侵入に基づいた酸素分子の濃度についての間接的な測定として使用され得る。空気中の酸素分子の濃度は20.95vol.-%、アルゴンの濃度は0.93vol.-%であり、これは0.0444のAr/O2のモル比に対応する。アルゴンを含まず酸素分子が激減したC6~12飽和脂肪族カルボン酸の粗製生成混合物が供給された、完全に密閉されたカラムは、カラムのオフガスにアルゴンが存在しないことから、Ar/O2モル比が0(ゼロ)となる。反対に、アルゴン及び酸素分子を含まない生成混合物が供給された漏れやすいカラムは、Ar/O2モル比が空気の理論値である0.0444となる。生成混合物とともに蒸留カラムに供給された酸素の量に応じて、漏れやすいカラムのAr/O2モル比は純粋な空気の値より低くなるだろう。侵入した酸素分子の量が、酸素分子が激減した生成混合物とともに蒸留カラムに供給された酸素分子の量と同じ場合、Ar/O2モル比は0.0222となるだろう。カラムがより密閉されるほどAr/O2モル比はより低くなり、逆もまた同様であり、一方で0vol.-%のカラムのオフガスにおける酸素分子の濃度は、定義を通して完全に密閉された蒸留カラムに関連する。
この別の測定方法によれば、0.1~99kPa absの圧力及び0~170℃の温度で操作される精製カラムは、少なくとも、精製カラムの真空ユニットのオフガス中のモル比n(Arオフガス)/n(O2オフガス)が0~0.0222となるよう密閉されていることが好ましく、ここで、n(Arオフガス)は、ステップ(b)において得られた混合物によりステップ(c)に供給された可能性があるアルゴンの分子の量により補正された、オフガス中のアルゴンの分子の量であり、n(O2オフガス)は、オフガス中の酸素分子の分子の量である。より好ましくは、モル比n(Arオフガス)/n(O2オフガス)は0.0197以下であり、特に好ましくは0.0148以下である。不連続的な蒸留については、量という用語は不連続的な蒸留中の絶対量を表し、一方で連続的な蒸留については、量という用語は単位時間あたりの量に関する。真空ユニットのオフガス中の酸素分子の測定については、上記で説明した測定方法が適用され得る。真空ユニットのオフガス中のアルゴンの分子の量は、例えば、圧力側のオフガスのガスクロマトグラフィー分析により容易に測定される。例えば、携帯型ガスクロマトグラフが使用され得る。ステップ(b)において得られた混合物が既にアルゴンを含む場合、その理由が何であれ、その量もまたガスクロマトグラフィー分析により測定されて、n(Arオフガス)値の補正に用いられ得る。
さらに、本発明によれば、特に蒸留カラムが分割壁型カラムでない場合に、C6~12飽和脂肪族カルボン酸が取り出されるサンプリング点の位置に関する、供給物が精製カラムに添加される供給点の位置もまた、C6~12飽和脂肪族カルボン酸のテンパリング安定性に影響を与えることが認められた。分割壁型カラムでない蒸留カラムの供給点の位置が、サンプリング点の位置より上にある場合、C6~12飽和脂肪族カルボン酸は通常、その逆よりもテンパリング安定性が低い。したがって、ステップ(c)において分割壁型カラムではない精製カラムへの供給物が、精製蒸留物が取り出される位置よりも低い位置で添加されることが好ましい。精製カラムの外側の全高を100%とすると、供給点の水平レベルと、供給点よりも高いレベルのサンプリング点の水平レベルの間の距離は、精製カラムの外側の高さに対して好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、特に好ましくは3%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。精製カラムとしての分割壁型カラムについては、供給点とサンプリング点の相対的な位置は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸のテンパリング安定性に対して少しの影響(minor influence)を有する。
蒸留装置及びその操作についての上記の記載に基づき、当業者であれば、C6~12飽和脂肪族カルボン酸の特性に応じて、蒸留装置を設計し、適切な操作条件を決定することができる。
上述した方法は、蒸留物に対してC6~12飽和脂肪族カルボン酸の95wt.-%以上の含有量を有する高い純度の、かつ不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされた後でも非常に低いAPHA色数を有する、C6~12飽和脂肪族カルボン酸を調製することを可能にする。数多く表されているように、蒸留物に対して95wt.-%以上の飽和脂肪族カルボン酸を含有する精製された蒸留物は、不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされた後に0~10のAPHA色数を有する。C6~12飽和脂肪族カルボン酸の含有量は、蒸留物に対して、好ましくは98wt.-%以上、より好ましくは99wt.-%以上、特に好ましくは99.5wt.-%以上、非常に特に好ましくは99.8wt.-%以上である。典型的な副生成物として、ホルメート、炭素原子数の低いカルボン酸、アルコール、ケトン及び水が挙げられる。明確性の目的のために、APHA色数が、DIN EN ISO 6271及びASTM D1209のそれぞれに準拠した、確立された周知のHazenスケールを参照することが言及される。
上述したテンパリング手順後の低いAPHA色数によれば、新たに蒸留された非テンパリングC6~12飽和脂肪族カルボン酸のAPHA色数もまた、非常に低く、通常0~10であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。
上述したテンパリング手順は、C6~12飽和脂肪族カルボン酸が、不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされるものであり、規定の再現性ある条件下で熱ストレス状況をシミュレーションし、それ自体が、保存中、熱ストレスにさらされるときに、及び/又は製品(product)の製造におけるこれらの通常の適用後に、色安定性の多かれ少なかれ信頼できる表示である。
より詳細には、いわゆるテンパリング試験は、以下のように実施される。40.0~60.0gのC6~12飽和脂肪族カルボン酸含有試料を、マグネチックスターラー、凝縮器、及び試料中に不活性ガス(約0.2Nl/分、好ましくはアルゴン5.0)をバブリングするためのガラスフリットを備えた3つ口丸底フラスコに入れる。周囲温度において、試料を撹拌下で30分間、不活性ガスでスパージする。次いで、スパージを最小値まで弱め、フラスコを225℃に保持された予熱されたオイルバスへと下げる。4時間後、スパージ速度をわずかに上昇させ、加熱バスを取り除く。スパージ速度は、冷却中に空気がフラスコに吸い込まれるのを防ぐのに十分なほど速いことが重要である。フラスコが周囲温度にまで冷却されたら、試料を取り出し、APHA色数を測定する。測定は、例えば、HachのLICO(登録商標) 620比色計で10mLキュベットを使用して行われ得る。装置は蒸留水に対して予め較正する。
上述したテンパリング試験によりテンパリングされた後の精製C6~12飽和脂肪族カルボン酸蒸留物のAPHA色数は、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。0というAPHA色数も実現され得るが、1以上であることが多い。
ステップ(c)において得られたC6~12飽和脂肪族カルボン酸蒸留物のテンパリング試験中の変色は、主に少量の過酸化物の存在により引き起こされることから、非テンパリングC6~12飽和脂肪族カルボン酸蒸留物における活性酸素の含有量は、その色安定性についてのさらなる指標となる。本発明によれば、ステップ(c)において得られた精製蒸留物は、蒸留物に対して好ましくは0~100wt.-ppm、より好ましくは50wt.-ppm以下、特に好ましくは10wt.-ppm以下であり、かつ好ましくは1wt.-ppm以上の活性酸素含有量を有する。
前に既に言及したように、ステップ(a)~(c)の各ステップは連続的又は不連続的に行うことができ、一方でステップ(a)については半連続的操作がさらなる選択肢となる。そのような不連続的又は半連続的な工程は、生産量(production volume)が小さい場合、通常適応性がより高く、操作することがより容易であるため、生産量がより小さい場合には、C6~12飽和脂肪族カルボン酸を不連続的又は半連続的な工程で製造することが有利であり得る。他方、ステップ(a)~(c)が連続的に行われる連続的な工程は、工程が開始されるとすぐに効率的となり、安定して実行されるという利点を有する。したがって、これは、1年あたり1000トン超のより大きい生産量でC6~12飽和脂肪族カルボン酸を連続的に調製するために好ましい選択肢である。これは、例えばオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸及びドデカン酸のような大量に製造される飽和脂肪族カルボン酸に特に当てはまる。
2-エチルヘキサン酸の連続的調製のための一般的な実施形態では、液体の2-エチルヘキサナール、選択性改善添加剤としての水酸化カリウム水溶液、及び気体の酸素を、30~60℃の範囲の温度及び0.11~1MPa absの範囲の酸素分圧で操作されるジェットループ型反応器中へと連続的に供給する。発熱酸化反応により生成された熱を除去するために、反応器を外部の熱交換器により外部から冷却する。上述のステップ(a)により得られた反応混合物はなお、未変換2-エチルヘキサナールを2-エチルヘキサン酸に対して0.1~2mol-%の量で含有し、酸素分圧、温度及び変換速度に応じて、酸素分子を液体混合物に対して20~500wt.-ppmの濃度で含有する。それをストリッピング塔に供給し、酸素分子1molあたり0.5~4molの窒素量の窒素気流で40~60℃及びほぼ大気圧又は真空条件下でストリッピングし、液体混合物に対して10wt.-ppm以下を含有する酸素分子が激減した混合物を得る。次いで、酸素分子が激減した混合物を、低沸点物、例えば水、残留する2-エチルヘキサナール、及び他の低沸騰副生成物を分離除去するための低沸点物カラムと、低沸点物カラムの塔底の流れが供給され、精製2-エチルヘキサン酸が側流として取り出される精製カラムとを備えた、真空条件で操作される蒸留装置中へと連続的に供給する。任意に、2つのカラムはまた、1つの単一の分割壁型カラムへと一体化されてもよい。上述した蒸留ステップ(c)により得られた2-エチルヘキサン酸は純度が高く、99.5wt.-%以上の2-エチルヘキサン酸を含有する。不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされた後、それはたった10以下のAPHA色数を示す。
2-エチルヘキサン酸の不連続的な調製のための一般的な実施形態では、希釈溶媒としての2-エチルヘキサン酸及び選択性改善添加剤としての水酸化カリウムを温度制御された撹拌槽に入れ、2-エチルヘキサナール及び酸素分子又は酸素分子含有ガス混合物を、25~60℃に温度を制御しながら、0.1~10MPa absの全圧で0.1~5時間、撹拌槽に同時に供給する。撹拌槽において所望される液体レベルが得られた後、2-エチルヘキサナールの添加を停止し、酸素分子を補給して分圧を保持するとともに変換率を所望される値までもっていく。所望される変換率に達した後、酸素分子の添加も停止し、槽における撹拌はなお続けながら、40~60℃及びほぼ大気圧又は真空条件下でのストリッピングのために窒素の添加で置き換える。典型的には、溶解した酸素分子1molあたり0.5~100molの窒素の窒素気流を、10分~2時間の時間にわたり供給して、液体混合物に対して10wt.-ppm以下を含有する酸素分子が激減した混合物を得る。次いで、酸素分子が激減した混合物を、バッチ真空蒸留カラムに入れ、低沸点物の除去後に精製2-エチルヘキサン酸を含有する画分を得るか、又は連続的に操作される蒸留装置に連続的に供給し、精製2-エチルヘキサン酸をそこから取り出す。得られた精製2-エチルヘキサン酸は純度が高く、99.5wt.-%以上の2-エチルヘキサン酸を含有する。不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされた後、それはたった10以下のAPHA色数を示す。
上述した方法に加え、不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされた後に0~10のAPHA色数を有する2-エチルヘキサン酸が見出された。このことは、酸化方法以外の方法、例えば2-エチルヘキサノールをNaOHで脱水素化して2-エチルヘキサン酸ナトリウムとし、続いてH2SO4で酸性化することによる、技術水準において記載の方法で製造された2-エチルヘキサン酸でさえ、この方法では過酸化物が形成されないと考えられるにもかかわらず、結果として上述したテンパリング試験を全うするテンパリング安定性の2-エチルヘキサン酸が得られないという限りにおいて、驚くべきことであった。
本発明の方法は、高い収量及び高い純度で、特に、不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力での4時間のテンパリング手順の後であってもAPHA色数が非常に低いままであるような高い色安定性で、6~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸を、対応するアルデヒドの酸素による酸化によって調製することを可能にする。C6~12飽和脂肪族カルボン酸はまた、活性酸素の含有量が非常に低く、そのため、過酸化物、例えば過酸、ヒドロペルオキシド、及び他の過酸化物の含有量が非常に低い。該方法はまた、操作が容易であり、長い操作時間にわたり安定して機能し、飽和脂肪族カルボン酸を一定の高品質で製造することができる。C6~12飽和脂肪族カルボン酸は、暗くなる傾向がないか又は少なくとも非常に低い傾向で、長期にわたり保存でき、さらなる製品(生成物)の製造において熱にさらしたり、適用したりできる。
さらに、該方法は、純度が高くテンパリング安定性の2-エチルヘキサン酸を利用することを可能にする。
ヨード滴定による活性酸素の測定
試料中の活性酸素の含有量をヨード滴定により測定した。以下に測定をどのように実施したかについての一般的な説明を示す。
およそ5gの試料を最も近い0.1mgまで秤量し、反応バイアル中に入れ、アルゴンでフラッシュし、40mlの1:1酢酸/クロロホルム混合物を添加して試料を溶解する。反応バイアルに冷却器を備え付け、それを、既に80℃に予熱された撹拌加熱ブロック中に入れる。弱いアルゴン流を冷却器に通過させ、空気の侵入を防ぐ。温度が平衡に達した後、5.0mLの飽和ヨウ化カリウム溶液(100mLの脱イオン水中に溶解したおよそ60.0gのヨウ化カリウム)を、冷却器を通して添加し、混合物を還流下で10分間沸騰させる。次のステップでは、40.0mLの脱イオン水を添加し、試料溶液を、終点測定器として白金電極を使用しながら0.01Mチオスルフェート溶液で滴定する。
酸素分子の測定
試料中の酸素分子の含有量を、カルボン酸中の酸素分子を測定するのに適した高精度でO2感受性の高い光学蛍光センサーにより測定した。例では、WTWのFDO(登録商標) 925との名称の光学センサーを用いた。測定データを、Hersch電池としても知られるガルバニ電池式酸素分析計を用いたさらなる測定により照合した。
APHA色数の測定
試料のAPHA色数を、蒸留水に対して予め較正した比色計により測定した。例では、HachのLico(登録商標) 620との名称の比色計を10mLキュベットとともに用いた。
テンパリング試験の説明
いわゆるテンパリング試験は、規定の再現性ある条件下で熱ストレス状況をシミュレーションし、保存中、熱ストレス時及び/又は製品の製造における通常の適用後の、試料の色安定性を示す。以下にテンパリング試験をどのように実施したかについての説明を示す。
40.0g~60.0gの試料を、マグネチックスターラー、凝縮器、及び試料中に不活性ガス(約0.2Nl/分のアルゴン5.0)をバブリングするためのガラスフリットを備えた3つ口丸底フラスコに入れる。周囲温度において、試料を撹拌下で30分間、不活性ガスでスパージする。次いで、ちょうど空気がフラスコに吸い込まれるのを防ぐようにスパージを最小値まで弱め、フラスコを225℃に保持された予熱されたオイルバスへと下げる。4時間後、スパージ速度をわずかに上昇させ、加熱バスを取り除く。わずかに上昇したスパージ速度は、冷却中に空気がフラスコに吸い込まれるのを防ぐのに十分なほど速い必要がある。フラスコが周囲温度にまで冷却されたら、試料を取り出し、APHA色数を上述のように測定する。
[例1]
(粗製の2-エチルヘキサン酸の調製)
粗製の2-エチルヘキサン酸を本発明のステップ(a)にしたがって製造した。粗製の2-エチルヘキサン酸を、1時間あたり3.75トン前後の2-エチルヘキサン酸の製造能力を有する技術工場において、30~60℃の温度及び0.25MPa absの圧力で、反応混合物中0.4wt-%のカリウムイオン存在下、純酸素で2-エチルヘキサナールを連続的に酸化することにより製造した。技術工場は直列につながった3つの反応器を備えており、酸素供給物の添加をそれらの3つの反応器に分けた。2-エチルヘキサナール及びカリウム塩を第1の反応器に添加した。
第3の反応器の出口で得られた粗製の2-エチルヘキサン酸は、92.4wt.-%の2-エチルヘキサン酸及び281wt.-ppmの活性酸素を含んでいた。APHA色指数を測定したところ1000より大きかった。第3の反応器の出口での減圧前の酸素分子の含有量は600wt.-ppmであった。周囲温度への冷却及び周囲圧力への減圧後も、粗製の2-エチルヘキサン酸は依然として210wt.-ppmの酸素分子を含んでいた。測定値を表1に要約する。
[例2]
(比較例)
1kgの例1の粗製の2-エチルヘキサン酸の試料を、メッシュリングを充填した2mのカラムを含有するパイロットプラントの大きさのバッチ蒸留装置中で蒸留した。カラムを1kPa absの最高圧で操作し、2-エチルヘキサン酸を塔頂で留去し、102.5±0.5℃で沸騰する画分を収集した。回収された2-エチルヘキサン酸は、ガスクロマトグラフィーにより分析したときに99.38wt.-%の2-エチルヘキサン酸含有量を有し、11wt.-ppmの活性酸素を含んでいた。そのAPHA色数は2であった。測定値を表1に要約する。
次いで、蒸留された試料を上述したテンパリング試験の条件下でテンパリングし、APHA色数を測定した。テンパリング試験後のAPHA色数は40であった。この高い値は、技術水準により処理された2-エチルヘキサン酸の色安定性が全く十分ではなかったことを示す。
[例3]
(本発明による実施例)
1kgの例1の粗製の2-エチルヘキサン酸の別の試料をまず、酸素分子の含有量が2wt.-ppmのみになるまで、周囲温度及び周囲圧力において高純度窒素(純度グレート5.0)でストリッピングした。この手順は、本発明のステップ(b)に関連する。次いで、この試料を、全てのガラスジョイントに高真空シリコーングリースを注意深く塗ることにより特別な手入れがなされてカラムへの空気の漏れを最小限に抑えた、メッシュリングを充填した2mのカラムを含有する例2において用いたのと同様のバッチ蒸留装置中で蒸留した。カラムを1kPa absの最高圧で操作し、2-エチルヘキサン酸を塔頂で留去し、102.5±0.5℃で沸騰する画分を収集した。回収された2-エチルヘキサン酸は、ガスクロマトグラフィーにより分析したときに99.99wt.-%の2-エチルヘキサン酸含有量を有し、2wt.-ppmの活性酸素のみを含んでいた。そのAPHA色数は0であり、活性酸素の含有量は検出限界(1ppm未満)を下回った。測定値を表1に要約する。
次いで、蒸留された試料を上述したテンパリング試験の条件下でテンパリングし、APHA色数を測定した。テンパリング試験後のAPHA色数は、ステップ(c)にしたがって、わずか7であった。この低い値は、本発明のステップ(b)における10wt.-ppm以下までの酸素分子の除去が、色安定性の高い2-エチルヘキサン酸の調製を可能にすることを示す。
[例4]
(テンパリング試験後のAPHA色数に与える酸素分子の効果)
例3において得られた精製2-エチルヘキサン酸の500mlの試料を1リットルフラスコに充填し、空気との接触を除外するいずれの予防措置も講ずることなく、40℃のテンパリングバスに浸した。時間「0」から開始し、空気の10NL/hの流れをガラスフリットにより試料中にバブリングした。試料を一定間隔で取り出し、それらの活性酸素、酸素分子の含有量、並びにテンパリング試験前後のそのAPHA色数について分析した。結果を表2に要約する。
例3の試料を例4の実験の配置に移動するためにいくらかの時間がかかったことから、酸素分子の含有量は、時間「0」で示される例4の開始時に1wt.-ppm未満から14wt.-ppmに上昇した。進行時間とともに、酸素分子の含有量は5時間後に54wt.-ppmまで上昇した(試料番号3)。その上昇とともに、活性酸素含有量及びテンパリング手順後のAPHA色数もまた上昇し、一方で非テンパリング試料のAPHA色数は値0のままであった。酸素分子それ自体はヨード滴定により測定できないことから、活性酸素含有量の上昇は、酸素分子の一部が活性酸素に変換されたことを示す。5時間後(試料番号3)、酸素分子の含有量は一定値54wt.-ppmのままであり、これは2-エチルヘキサン酸における酸素分子の飽和濃度と考えられる。それにもかかわらず、活性酸素の含有量及びテンパリング試験後のAPHA色数はなお、試料中に空気をバブリングする時間とともに上昇した。このことは、酸素分子が連続的に活性酸素に変換され、酸素分子とともにテンパリング手順後の高いAPHA色数の原因となったことを示す。
[例5]
(テンパリング試験後のAPHA色数に与える酸素分子が激減することの効果)
例4の後、空気スパージを24時間後(即ち、試料番号5を取り出した後)に停止し、24時間の10NL/hの窒素(純度グレード5.0)でのスパージで置き換えた。窒素スパージの24時間後、試料番号6と称する試料を取り出し、例4のように分析した。
窒素でのスパージでは、活性酸素の含有量に与える効果は少ししかない、ないしほとんどなく、これは、試料番号5の31wt.-ppmから試料番号6の28wt.-ppmへとわずかのみ減少した。しかしながら、酸素分子の量は、試料番号5の64wt.-%から試料番号6のわずか14wt.-ppmへと大きく減少した。これは4倍ほどの減少であった。それとともに、テンパリング試験後のAPHA色数もまた、試料番号5の112から試料番号6の71へと減少した。このことは、テンパリング試験後のAPHA色数が酸素分子の含有量及び活性酸素の含有量の両方に依存することを実証する。試料番号6の酸素分子の含有量の大きな減少に伴い、テンパリング試験後のAPHA色数もまた減少した。
Figure 2023541799000006
Figure 2023541799000007

Claims (16)

  1. 6個~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸を、対応するアルデヒドの酸素分子による酸化によって調製する方法であって、
    (a)対応するアルデヒドを、酸素分子を用いて、0~120℃の温度及び0.02~2MPaの酸素分圧で変換して、飽和脂肪族カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸に対して2mol-%以下の対応するアルデヒド、及び酸素分子を含有する液体混合物を得るステップと、
    (b)ステップ(a)において得られた液体混合物から酸素分子を液体混合物に対して10wt.-ppm以下の含有量まで除去するステップと、
    (c)ステップ(b)において得られた混合物を、精製カラムを備えた蒸留装置中で蒸留し、そこから蒸留物に対して95wt.-%以上の飽和脂肪族カルボン酸を含有する精製蒸留物を取り出すステップと
    を含む、方法。
  2. 飽和脂肪族カルボン酸が2-エチルヘキサン酸であり、アルデヒドが2-エチルヘキサナールである、請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(a)において得られた液体混合物における酸素分子の含有量が、液体混合物に対して10wt.-ppm超~1wt.-%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. ステップ(b)において酸素分子が、不活性ガスでストリッピングすることにより除去される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 飽和脂肪族カルボン酸の調製が連続的に実施され、ストリッピングが向流で実施される、請求項4に記載の方法。
  6. 不活性ガスの酸素分子の含有量が5vol.-ppm以下である、請求項4又は5に記載の方法。
  7. ステップ(b)において酸素分子の除去が0~150℃の温度及び0.0001~10MPa absの圧力で実施される、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. ステップ(b)において酸素分子がステップ(b)において2wt.-ppm以下まで除去される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. ステップ(c)において精製カラムが0.1~99kPa absの圧力及び0~170℃の温度で操作される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 精製カラムの真空ユニットのオフガスにより取り出された酸素分子の量が、ステップ(b)において得られた混合物により蒸留装置に供給された酸素分子の量の2倍以下である、請求項9に記載の方法。
  11. 精製カラムの真空ユニットのオフガス中のモル比n(Arオフガス)/n(O2オフガス)が0~0.0222であり、ここで、n(Arオフガス)は、ステップ(b)において得られた混合物によりステップ(c)に供給された可能性があるアルゴンの分子の量により補正された、オフガス中のアルゴンの分子の量であり、n(O2オフガス)は、オフガス中の酸素分子の分子の量である、請求項9に記載の方法。
  12. ステップ(c)において分割壁型カラムではない精製カラムへの供給物が、精製蒸留物が取り出される位置よりも低い位置で添加される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. ステップ(c)において得られた精製蒸留物が、99.5wt.-%以上の飽和脂肪族カルボン酸を含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 精製蒸留物が、不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされた後に0~10のAPHA色数を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. ステップ(c)において得られた精製蒸留物の活性酸素含有量が、蒸留物に対して0~100wt.-ppmである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 不活性ガス条件下で225℃の温度及び0.1MPaの圧力で4時間テンパリングされた後に0~10のAPHA色数を有する2-エチルヘキサン酸。
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