JP2023535318A - エラストマー組成物のガス透過性を低減するための多孔質フィラーの使用 - Google Patents

エラストマー組成物のガス透過性を低減するための多孔質フィラーの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、エラストマー組成物のガス透過性を低減するための多孔質フィラーの使用、並びにこの多孔質フィラーを含むエラストマー組成物の製造方法及びこのエラストマー組成物自体に関する。この多孔質フィラーは、表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物から選択される。エラストマー組成物にこの多孔質フィラーを添加すると、エラストマー組成物の機械的特性を保持又は改善しながら、このエラストマー組成物のガス透過性を低減することができる。

Description

本発明は、エラストマー組成物のガス透過性を低減するための多孔質フィラーの使用、低減したガス透過性を有するエラストマー組成物の製造方法、低減したガス透過性を有するエラストマー組成物、及び低減したガス透過性を提供するエラストマー組成物を含む物品に関する。
ゴムとも一般的に呼ばれるエラストマーは、ゴム様弾性、すなわち、外部変形力の適用時に可逆的変形能力を有する架橋ポリマー材料である。エラストマーは、例えば、タイヤ、チューブレスタイヤ、O-リング、使い捨て手袋、自動車伝動ベルト、ホース、ガスケット、オイルシール、Vベルト、合成皮革、プリンターのフォームローラー、ケーブルジャケット、顔料バインダー、接着剤、シーラント、動的及び静的シール、コンベヤーベルト、又は衛生用途に広く適用されている。
チューブレスタイヤ、医療用途、靴底、又はO-リングなどの特定の用途では、エラストマーは、例えば、真空及び/又は不活性ガス雰囲気への酸素及び水分の侵入を防止するために、又は過剰な圧力下でのガス充填装置における圧力損失を防止又は遅延させるために、低いガス透過性を有することが望ましい。しかしながら、同時にエラストマーが良好な機械的特性を有し、そのような用途の困難な要求に耐えることを可能にすることがまた必要である。
例えば、機械的特性を改善するために、エラストマー組成物にある特定のフィラー(充填材)を添加することは、当技術分野において一般的である。一般に使用される強化用フィラーには、カーボンブラック、変性シリカ粒子、カオリン及び他のクレーが含まれる。しかしながら、これらのフィラーの使用は、しばしば、充填されたエラストマー組成物の高いガス透過性をもたらし、これは望ましくない。ガス透過性を低下させるために、タルク又はシラン化タルクをエラストマー組成物に添加することができる。しかしながら、これらのフィラーは、強化用フィラーとして作用しないか、又はエラストマー構造を弱めることさえある。ナノフィラーがまた、エラストマーのためのフィラーとして示唆されているが、健康上の安全性及び環境上の懸念のためにそれらの取り扱いは困難である。
エラストマー組成物における粉砕炭酸カルシウム及び沈降炭酸カルシウムの使用が報告されている。例えば、米国特許第3,374,198号明細書は、エチレン-プロピレンゴム及び強化用フィラーとしての炭酸カルシウムを含む組成物を開示している。Sobhyら(Egyptian Journal of Solids 2003、26、241-257)は、炭酸カルシウムを充填した天然ゴム及びニトリルゴムの硬化特性及び機械的特性について報告している。
欧州特許出願公開第3 192 837 A1号公報は、無水物又はその酸若しくは塩で表面処理した表面改質炭酸カルシウムに言及しており、とりわけ、ポリマー組成物、製紙、塗料、接着剤、シーラント、医薬用途、ゴムの架橋、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルにおける、不飽和ポリエステル及びアルキド樹脂における、その使用を示唆している。
しかしながら、いずれの先行技術も、エラストマー組成物中にフィラーが存在する場合に、例えば、好ましい高レベルの補強を維持し又は提供するために、その機械的特性を保持又は改善しながら、このエラストマー組成物のガス透過性を特異的に低減するために使用することができるフィラーを示唆していない。
このため、当該技術分野では、好ましくは、エラストマー組成物の機械的特性を保持又は改善しながら、フィラーを含有するガス透過性が低減されたエラストマー組成物が依然として必要とされている。
したがって、本発明の目的は、好ましくは、エラストマー組成物の機械的特性を保持又は改善しながら、このエラストマー組成物のガス透過性を低下させる、エラストマー組成物に使用するためのフィラーを提供することである。好ましくは、このフィラーは取り扱いが容易である。
本発明のこれらの及び他の目的は、エラストマー組成物における本発明の多孔質フィラーの使用、多孔質フィラーを含むエラストマー組成物の製造方法、並びに本発明として記載され、特許請求の範囲に規定される多孔質フィラーを含むエラストマー組成物によって解決することができる。
本発明の一態様によれば、エラストマーを含むエラストマー組成物のガス透過性を低減するための多孔質フィラーの使用が提供され、
ここで、この多孔質フィラーは、表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラー材料を含み、
この表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、この二酸化炭素が、上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の第1の態様による多孔質フィラーの使用によって、エラストマー組成物のガス透過性を減少させることができること、すなわち、一定時間の間にエラストマーを通って拡散するガス、例えば空気の量を減少させることができることを見出した。それに加えて、この多孔質フィラーを含むエラストマー組成物の機械的特性は、影響を受けないままであるか又は改善する。本発明によれば、ガス透過性の低下及び機械的特性の改善は、本発明の多孔質フィラーを含むエラストマー組成物を、本発明の多孔質フィラーの代わりに等容量のカーボンブラックを含むが、他の点では同一の組成物と比較することによって示すことができる。比較組成物のカーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定した統計的厚さ表面積(STSA)が39±5m/gである。本発明の多孔質フィラーを含むエラストマー組成物は、低減したガス透過性を有し、これは、代わりに、いかなるフィラーも含まない別の同一の組成物との比較によって示すことができることを理解されたい。したがって、いかなるフィラーも含まないエラストマー組成物に本発明のフィラーを添加することによって、又は従来からのフィラー(例えば、カーボンブラック)を含むエラストマー組成物中のこの従来からのフィラーの所定量を置き換えることによって、本発明のフィラーをエラストマー組成物のガス透過性を低下させるために使用することができる。
本発明の好ましい一実施形態によれば、このフィラー材料は以下を有する:
- 20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gのBET比表面積;及び/又は
- 0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmの体積メジアン粒径d50;及び/又は
- 0.2~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~80μm、さらにより好ましくは2.4~60μm、最も好ましくは3~30μmの体積トップカット粒径d98;及び/又は
- 水銀ポロシメトリー測定によって決定した、0.1~3.0cm/g、より好ましくは0.2~2.5cm/g、さらにより好ましくは0.4~2.0cm/g、最も好ましくは0.6~1.8cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積。
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、この多孔質フィラーは、フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層をさらに含み、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とフィラー材料とを接触させることによって、この表面処理層が形成される。
フィラー材料の表面に表面処理層が存在すると、エラストマー組成物内での多孔質フィラーの分散状態が改善し、かつ化学的相溶性が改善することが見出された。エラストマー組成物の機械的特性は、多孔質フィラーの改善された分散状態から恩恵を受けることができる。それに加えて、表面処理層は、エラストマー組成物の形成時、すなわち架橋工程中に、エラストマー前駆体と反応するように適応させることができ、これは、ガス透過性をさらに低下させ、かつ/又はエラストマー組成物中の多孔質フィラーの化学的相溶性及び/又は機械的特性を改善することができる。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、表面処理組成物は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含み、
好ましくは、下記からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含む:
(a)モノ-又はジ-置換コハク酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ストロンチウム、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び/又はアンモニウム塩、ここで、前記アミン塩は直鎖状又は環状であり、一方又は両方の酸基が塩の形態であることができ、好ましくは両方の酸基が塩の形態である;不飽和脂肪酸、好ましくはオレイン酸及び/又はリノール酸;リン酸の不飽和エステル;アビエチン酸;及び/又はこれらの混合物であり、好ましくは、完全に中和された表面処理剤;及び/又は
(b)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、以下を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩:
(i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
(ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
(iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
(iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
(v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
本発明者らは、驚くべきことに、不飽和炭素部分が、架橋工程、例えば、化学架橋工程においてエラストマー前駆体と反応し得ることを見出した。このようにして、多孔質フィラーをエラストマー組成物のエラストマーに共有結合させることができ、これにより、ガス透過性をさらに低下させることができ、かつ/又は化学的相溶性及び機械的特性を向上させることができる。
本発明のさらに別の実施形態によれば、表面処理組成物は、下記からなる群から選択される少なくとも1つの飽和表面処理剤を含むか、又はさらに含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
本発明者らは、表面処理層の有益な特性が、飽和表面処理剤を用いて、又は飽和表面処理剤と不飽和表面処理剤との組み合わせを用いても得られることを見出した。
本発明の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物は、例えば、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、イソブテン-イソプレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、ポリスルフィドゴム(多硫化ゴム)、熱可塑性ゴム及びこれらの混合物のような天然又は合成ゴムから選択されるエラストマー前駆体から形成されたエラストマーを含む。
本発明のさらに他の実施形態によれば、多孔質フィラーは、エラストマー組成物中に、エラストマー組成物中のエラストマー前駆体の総重量に基づいて、100部当たり5~175部(phr)、好ましくは100部当たり10~160部、より好ましくは100部当たり30~150部の範囲の量で含有される。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物は、顔料、染料、ワックス、潤滑剤、酸化-及び/又はUV-安定剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、相溶化剤、シラン、酸化防止剤、加工助剤、さらなるフィラー、及びそれらの混合物などの添加剤をさらに含む。
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物のShore A硬度は、多孔質フィラーを等容量のカーボンブラックで置き換えた同じエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも8%増加し、かつ/又は
空気透過率は、多孔質フィラーを等容量のカーボンブラックで置き換えた同じエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%減少し、
ここで、上記カーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有し、かつ
上記Shore A硬度をNF ISO 7619-1:2010に準拠して測定し、かつ上記空気透過率をNF ISO 2782-1:2018に準拠して測定する。
本発明の第2の態様によれば、低減したガス透過性を有するエラストマー組成物の調製方法が開示される。この方法は、以下の工程を含む:
(a)架橋性ポリマーを提供すること、
(b)表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラー材料を含む多孔質フィラーを提供すること、
ここで、前記表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、この二酸化炭素が、上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、
(c)任意に、好ましくは、カーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、ナノフィラー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるさらなるフィラーを提供すること、
(d)任意の順序で、工程(a)の架橋性ポリマー、工程(b)の多孔質フィラー、及び任意に工程(c)の第2のフィラーを混合して混合物を形成すること、及び
(e)工程(d)で得られた混合物を架橋して、低減したガス透過性を有するエラストマー組成物を形成すること。
本発明の好ましい一実施形態によれば、フィラー材料は以下を有する:
- 20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gのBET比表面積;及び/又は
- 0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmの体積メジアン粒径d50;及び/又は
- 0.2~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~80μm、さらにより好ましくは2.4~60μm、最も好ましくは3~30μmの体積トップカット粒径d98;及び/又は
- 水銀ポロシメトリー測定によって決定した、0.1~3.0cm/g、より好ましくは0.2~2.5cm/g、さらにより好ましくは0.4~2.0cm/g、最も好ましくは0.6~1.8cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積。
本発明の好ましい実施形態によれば、多孔質フィラーは、フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層をさらに含み、この表面処理層は、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とフィラー材料とを接触させることによって形成される。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、表面処理組成物は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含み、
好ましくは、下記からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含む:
(a)モノ-又はジ-置換コハク酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ストロンチウム、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び/又はアンモニウム塩、ここで、前記アミン塩は直鎖状又は環状であり、一方又は両方の酸基が塩の形態であることができ、好ましくは両方の酸基が塩の形態である;不飽和脂肪酸、好ましくはオレイン酸及び/又はリノール酸;リン酸の不飽和エステル;アビエチン酸;及び/又はこれらの混合物であり、好ましくは、完全に中和された表面処理剤;及び/又は
(b)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、以下を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩:
(i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
(ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
(iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
(iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
(v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
本発明のさらに別の実施形態によれば、表面処理組成物は、下記からなる群から選択される少なくとも1つの飽和表面処理剤を含むか、又はさらに含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
本発明の好ましい実施形態によれば、架橋性ポリマーは、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、イソブテン-イソプレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、ポリスルフィドゴム、熱可塑性ゴム及びこれらの混合物などの天然又は合成ゴムから選択される。
本発明のさらに別の実施形態によれば、架橋性ポリマーの総重量に基づいて、100部当たり5~175部(phr)、好ましくは100部当たり10~160部、より好ましくは100部当たり30~150部の範囲の量で、多孔質フィラーを混合工程(d)の間に架橋性ポリマーに添加する。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、さらなる添加剤、例えば、顔料、染料、ワックス、潤滑剤、酸化-及び/又はUV-安定剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、相溶化剤、シラン、酸化防止剤、加工助剤、さらなるフィラー、及びそれらの混合物などの添加剤を、混合工程(d)の間にエラストマー組成物に添加する。
本発明のさらなる実施形態によれば、混合工程(d)は、内部ミキサー及び/又は外部ミキサー中で行われ、ここで、外部ミキサーは、好ましくはシリンダーミキサーである。
本発明の好ましい実施形態によれば、架橋工程(e)を以下によって実施する:
(i)架橋剤及び架橋助剤の添加と、それに続く少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも180℃の温度での熱架橋であって、任意に、少なくとも10MPa(100bar)、好ましくは少なくとも15MPa(150bar)、より好ましくは少なくとも20MPa(200bar)の圧力での圧縮成形と組み合わせた熱架橋、及び/又は
(ii)紫外線放射、電子ビーム放射、核放射、ガンマ放射線、マイクロ波放射及び/又は超音波放射による硬化。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、架橋剤は、過酸化物架橋剤及び/又は硫黄系架橋剤からなる群から選択される。
本発明の第3の態様は、以下を含む組成物から形成した低減したガス透過性を有するエラストマー組成物に関する:
架橋性ポリマー、
表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択される多孔質フィラー、及び
好ましくは、カーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、ナノフィラー及びこれらの混合物からなる群から選択されるさらなるフィラー、
ここで、前記表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。
本発明の好ましい実施形態によれば、さらなるフィラーに対する多孔質フィラーの体積比(多孔質フィラー:さらなるフィラー)は、10:90~90:10、好ましくは25:75~75:25、及びより好ましくは40:60~60:40の範囲である。
本発明者らは、驚くべきことに、従来のフィラーが本発明の多孔質フィラーによって部分的に置き換えられる場合に、この多孔質フィラーが、エラストマー組成物に有利な特性を付与することも見出した。それによって、これらのフィラーのそれぞれの量を低減しながら、従来のフィラーの潜在的に有益な影響を実現することができる。
本発明の好ましい実施形態によれば、フィラー材料は以下を有する:
- 20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gのBET比表面積;及び/又は
- 0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmの体積メジアン粒径d50;及び/又は
- 0.2~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~80μm、さらにより好ましくは2.4~60μm、最も好ましくは3~30μmの体積トップカット粒径d98;及び/又は
- 水銀ポロシメトリー測定によって決定した、0.1~3.0cm/g、より好ましくは0.2~2.5cm/g、さらにより好ましくは0.4~2.0cm/g、最も好ましくは0.6~1.8cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、多孔質フィラーは、フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層をさらに含み、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とこのフィラー材料とを接触させることによって、この表面処理層が形成され、かつ
好ましくは、この表面処理組成物が、好ましくは、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される表面処理剤を含み、
より好ましくは、この表面処理組成物が、下記からなる群から選択される表面処理剤を含む:
(a)モノ-又はジ-置換コハク酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ストロンチウム、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び/又はアンモニウム塩、ここで、前記アミン塩は直鎖状又は環状であり、一方又は両方の酸基が塩の形態であることができ、好ましくは両方の酸基が塩の形態である;不飽和脂肪酸、好ましくはオレイン酸及び/又はリノール酸;リン酸の不飽和エステル;アビエチン酸;及び/又はこれらの混合物であり、好ましくは、完全に中和された表面処理剤;及び/又は
(b)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、以下を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩:
(i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
(ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
(iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
(iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
(v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
本発明のさらに別の実施形態によれば、表面処理組成物は、下記からなる群から選択される少なくとも1つの飽和表面処理剤を含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
本発明者らは、驚くべきことに、飽和表面処理剤、及び/又は飽和表面処理剤と不飽和表面処理剤との組み合わせによって、表面処理層の有益な特性がまた得られることを見出した。
本発明の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物は、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、イソブテン-イソプレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、ポリスルフィドゴム、熱可塑性ゴム及びこれらの混合物などの天然又は合成ゴムから選択される架橋性ポリマーから形成されたエラストマーを含む。
本発明のさらに他の実施形態によれば、多孔質フィラーは、エラストマー組成物中の架橋性ポリマーの総重量に基づいて、100部当たり5~175部(phr)、好ましくは100部当たり10~160部、より好ましくは100部当たり30~150部の範囲の量でエラストマー組成物中に含まれる。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物は、顔料、染料、ワックス、潤滑剤、酸化-及び/又はUV-安定剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、相溶化剤、シラン、酸化防止剤、加工助剤、さらなるフィラー、及びそれらの混合物などの添加剤をさらに含む。
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物のShore A硬度は、この多孔質フィラーを等容量のカーボンブラックで置き換えた同じエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも8%増加し、かつ/又は空気透過率は、この多孔質フィラーを等容量のカーボンブラックで置き換えた同じエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%減少し、
ここで、上記カーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有し、かつ
上記Shore A硬度をNF ISO 7619-1:2010に準拠して測定し、かつ上記空気透過率をNF ISO 2782-1:2018に準拠して測定する。
本発明の第4の態様は、本発明のエラストマー組成物から形成される物品に関し、この物品は、好ましくは、チューブレス物品、メンブラン、シーリング、O-リング、グローブ、パイプ、ケーブル、電気コネクター、オイルホース、及び靴底を含む群から選択される。
本発明の目的のために、以下の用語は、以下の意味を有することを理解されたい。
本明細書全体を通して忠実に順守しているIUPACによる定義によれば、「エラストマー」とは、ゴム様弾性を示し、かつ架橋、好ましくは永久架橋を含むポリマーである。用語「エラストマー」は、あらゆる種類の合成ゴム及び天然ゴムを包含することを理解されたい。
本発明の目的のために、「エラストマー前駆体」とは、架橋性部位、例えば、炭素多重結合、ハロゲン官能基、又は炭化水素部分を含み、かつ架橋時に本発明の意味においてエラストマーを形成するポリマーである。この用語は、「架橋性ポリマー」という用語と同義で使用される。
本発明に係る「表面反応炭酸カルシウム」は、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)を、二酸化炭素及び1つ又複数のHイオン供与体で処理した反応生成物であって、ここで、この二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。本発明の文脈におけるHイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
本明細書における表面反応炭酸カルシウムの「粒径」は、特に明記しない場合、体積基準の粒径分布d(vol)、又はdとして記載される。ここで、d(vol)値は、粒子のx体積%がd(vol)未満の直径を有することに関する直径を表す。これは、例えば、d20(vol)値が、全粒子の20体積%がその粒径よりも小さい粒径であることを意味する。したがって、d50(vol)値は、平均粒径とも呼ばれる体積メジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子の50体積%がその粒径よりも小さく、かつd98(vol)値は、体積基準のトップカット粒径と呼ばれ、すべての粒子の98体積%がその粒径よりも小さい粒径である。粒径が重量基準の粒径として本明細書に与えられている場合、例えば、d20(wt)値は、すべての粒子の20重量%がその粒径よりも小さい粒径である。したがって、d50(wt)値は、重量メジアン粒径とも呼ばれるメジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子の50重量%がその粒径よりも小さく、d98(wt)値は、重量基準のトップカット粒径と呼ばれ、すべての粒子の98重量%がその粒径よりも小さい粒径である。
本発明の目的のために、「気孔率」又は「細孔容積」は、粒子内圧入比細孔容積を指す。
本発明の文脈において、用語「細孔」は、粒子間及び/又は粒子内に見出される空間であり、すなわち、粉末又は成形体などのように、粒子が最近接接触下に一緒に詰め込まれる際にこれらの粒子によって形成される空間(粒子間細孔)、及び/又は多孔質粒子内の空隙(粒子内細孔)であって、液体によって飽和した場合に圧力下で液体の通過を可能にし、かつ/又は表面湿潤液体の吸収を支持する空間を記載するものとして理解されるべきである。
本明細書全体を通して、表面反応炭酸カルシウム又は他の物質を定義するために使用される「比表面積」(m/gで表される)という用語は、ISO 9277:2010に準拠して、(吸着ガスとして窒素を使用する)BET法を使用することによって決定される比表面積を指す。
本明細書及び特許請求の範囲において用語「含む(comprising)」を使用する場合、これは、機能的に重要な主要な又は主要でない他の要素を排除しない。本発明の目的のため、用語「からなる(consisting of)は、用語「含む(comprising)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下において、ある群が少なくとも特定の数の実施形態を含むように定義されている場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も開示しているということが理解されるべきである。
用語「含む(including)」又は「有する(having)」が使用される場合、これらの用語は、上記で定義される「含む(comprising)」と等価であることを意味する。
単数名詞に言及するときに、不定冠詞又は定冠詞、例えば、「a」、「an」又は「the」を使用する場合、これには、特に明記されていない限り、その名詞の複数を含む。
「得られる、得ることのできる(obtainable)」又は「定義される、定義可能な(definable)」及び「得られた(obtained)」又は「定義された(defined)」などの用語は、互換的に使用される。例えば、このことは、文脈上明白に他の指示がなされているのでないかぎり、「得られた」なる用語は、例えばある実施形態が、例えば「得られた」なる用語の後に続く工程の順番によって得られなければならないということを示すことを意味するものではないが、このような限定された理解は、好ましい実施形態として、「得られた」又は「定義された」なる用語の中に常に含まれる、ということを意味する。
以下で、架橋したエラストマー組成物のガス透過性を低下させるための多孔質フィラーの本発明による使用の好ましい実施形態又は技術的詳細について言及する場合に、これらの好ましい実施形態又は技術的詳細は、本発明の方法(プロセス)、本発明の組成物及び本発明の物品にも(適用可能な限り)言及するものであることを理解されたい。
多孔質フィラー
本発明による使用、本発明による方法、本発明による組成物、及び本発明による物品は、多孔質フィラーを使用する。本発明の目的のために、用語「多孔質」フィラーは、ISO 9277:2010に準拠して測定して、少なくとも20m/g、例えば少なくとも40m/g、又は少なくとも70m/gのBET表面積、及び少なくとも0.1cm/gの粒子内圧入比細孔容積を有するフィラー材料を指す。
比細孔容積は、0.004μm(~nm)のラプラス喉部直径と等価の、水銀の最大印加圧力414MPa(60000psi)を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを使用し、水銀圧入ポロシメトリー測定法を用いて測定する。各加圧工程で使用される平衡時間は20秒である。試料材料を、分析のために、3cmの貫通度計中に密封する。データは、ソフトウェアPore-Compを使用して、水銀の圧縮、貫通度計の膨張、及び試料材料の圧縮について補正する(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,pp.1753-1764)。
積算圧入データ内に見られる全細孔容積は、214μmから約1~4μmに至るまでの圧入データを有する2つの領域に分離することができ、任意の凝集体構造間の試料の粗い充填が強く寄与していることを示している。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内細孔をも有している場合には、この領域は二峰性であり、モードの転換地点よりも細い、すなわち二峰性の変曲点よりも細い細孔内に水銀が圧入した比細孔容積をもってして、粒子内比細孔容積が定義される。これら3つの領域の総和は、粉末の合計の総細孔容積を与えるが、もともとの試料の圧縮/分布の粗い細孔末端における粉末の沈殿によって大きく左右される。
積算圧入曲線の一次導関数を取り上げることにより、必然的に細孔遮へいを含めた等価ラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。その微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間細孔領域、及び存在する場合には粒子内細孔領域を明らかに示す。粒子内細孔径範囲がわかれば、合計細孔容積から残りの粒子間細孔容積及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量当たりの細孔容積として(比細孔容積として)、内部細孔の所望の細孔容積だけを得ることが可能である。当然のことながら同じ差し引きの原理は、興味ある任意のその他の細孔径領域を分離する場合にも当てはまる。
本発明の多孔質フィラーは、表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラー材料を含む。
表面反応炭酸カルシウム
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、フィラー材料は表面反応炭酸カルシウムである。表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。
本発明の文脈におけるHイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
本発明の好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られる:
(a)天然又は沈降炭酸カルシウムの懸濁液を提供すること、
(b)20℃において0又はこれ未満のpK値を有するか、又は20℃において0~2.5のpK値を有する少なくとも1つの酸を工程(a)の懸濁液に添加すること、及び
(c)工程(b)の前、間、又は後に、工程(a)の懸濁液を二酸化炭素で処理すること。
別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られる:
(A)天然又は沈降炭酸カルシウムを提供すること、
(B)少なくとも1つの水溶性酸を提供すること、
(C)COガスを提供すること、
(D)工程(A)の上記天然又は沈降炭酸カルシウムを、工程(B)の少なくとも1つの酸及び工程(C)のCOと接触させること、
ここで、この方法は以下を特徴とする:
(i)工程(B)の少なくとも1つの酸が、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、20℃において2.5を超え、かつ7又はこれ未満のpKを有し、かつ対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を生成することができるこの第一の利用可能な水素の損失時に形成されること、及び
(ii)少なくとも1つの酸と天然又は沈降炭酸カルシウムとの接触後に、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、水素含有塩が20℃において7を超えるpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を形成することができる場合には、少なくとも1つの水溶性塩を付加的に提供すること。
「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、好ましくは、大理石、チョーク、石灰石、及びそれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択される。天然炭酸カルシウムは、さらに、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などの天然に存在する成分を含んでもよい。
一般的に、天然粉砕炭酸カルシウムの粉砕は、乾式又は湿式粉砕工程であってよく、例えば、粉砕が二次物体との衝撃の結果として主に得られるような条件下で、任意の従来からの粉砕装置で行うことができ、すなわち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃式ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、又は当業者に既知の他のこのような装置のうちの1つ又は複数において行うことができる。炭酸カルシウム含有鉱物物質が湿式粉砕炭酸カルシウム含有鉱物物質を含む場合、自生粉砕が起こるような条件下で、及び/又は水平及び/又は垂直型ボールミル粉砕によって、及び/又は当業者に公知の他のこのような方法によって、粉砕工程を行うことができる。このように得られた湿式加工した粉砕炭酸カルシウム含有鉱物物質を、洗浄し、かつ周知の方法によって、例えば、乾燥前に、凝集、ろ過、又は強制蒸発によって脱水することができる。その後の乾燥工程(必要な場合)を、噴霧乾燥などの一段階工程、又は少なくとも二段階工程で行うことができる。このような鉱物物質は、選鉱工程(浮遊選鉱、ブリーチング、又は磁気選鉱工程)を経て、不純物を除去することも一般的である。
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性、半乾燥又は湿潤環境での二酸化炭素と石灰との反応に続く沈殿によって、又は水中でのカルシウム及び炭酸イオン源の沈殿によって得られる合成原料である。PCCは、バテライト、カルサイト、又はアラゴナイトの結晶形であり得る。PCCは、例えば、欧州特許出願公開第2 447 213 A1号公報、欧州特許出願公開第2 524 898 A1号公報、欧州特許出願公開第2 371 766 A1号公報、欧州特許出願公開第1 712 597 A1号公報、欧州特許出願公開第1 712 523 A1号公報、又は国際公開第2013/142473 A1号に記載されている。
本発明の一実施形態によれば、沈降炭酸カルシウムは、好ましくは、アラゴナイト、バテライト若しくはカルサイトの鉱物学的結晶形を含む沈降炭酸カルシウム、又はこれらの混合物である。
沈降炭酸カルシウムは、上記のような天然炭酸カルシウムを粉砕するために使用されるのと同じ手段によって、二酸化炭素及び少なくとも1つのHイオン供与体での処理の前に粉砕されてもよい。
本発明の一実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.05~10.0μm、好ましくは0.2~5.0μm、より好ましくは0.4~3.0μm、最も好ましくは0.6~1.2μm、とりわけ0.7μmの重量メジアン粒径d50を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.15~55μm、好ましくは1~40μm、より好ましくは2~25μm、最も好ましくは3~15μm、とりわけ4μmの重量基準のトップカット粒径d98を有する粒子の形態である。
天然及び/又は沈降炭酸カルシウムは、乾燥して使用するか、又は水に懸濁して使用することができる。好ましくは、対応するスラリーは、スラリーの重量に基づいて、1重量%~90重量%、より好ましくは3重量%~60重量%、さらにより好ましくは5重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~25重量%の範囲内の天然又は沈降炭酸カルシウムの含有量を有する。
表面反応炭酸カルシウムの調製のために使用される1つ又は複数のHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する、任意の強酸、中強酸若しくは弱酸、又はそれらの混合物であってよい。本発明によれば、この少なくとも1つのHイオン供与体はまた、調製条件下でHイオンを生成する酸性塩であってもよい。
一実施形態によれば、この少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0又はこれ未満のpKを有する強酸である。
別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃において0~2.5のpK値を有する中強酸である。20℃におけるpKが0又はこれ未満である場合、この酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、又はこれらの混合物から選択される。20℃におけるpKが0~2.5である場合、Hイオン供与体は、好ましくは、HSO、HPO、シュウ酸、又はこれらの混合物から選択される。また、少なくとも1つのHイオン供与体は、酸性塩、例えば、Li、Na若しくはKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHSO 若しくはHPO 、又はLi、Na、K、Mg2+若しくはCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-であり得る。少なくとも1つのHイオン供与体は、1つ又は複数の酸、及び1つ又は複数の酸性塩の混合物であってもよい。
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で測定したときに、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、2.5を超えかつ7又はこれ未満のpK値を有し、かつ水溶性のカルシウム塩を生成することができる対応するアニオンを有する弱酸である。続いて、20℃で測定したときに、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、水素含有塩が7を超えるpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を生成することができる場合に、少なくとも1つの水溶性塩を追加的に提供する。好ましい実施形態によれば、弱酸は、20℃において2.5超~5のpK値を有し、より好ましくは、この弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。上記水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、上記のカチオンは、ナトリウム又はカリウムである。上記の水溶性塩の例示的なアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、シュウ酸アニオン、ケイ酸アニオン、これらの混合物、及びこれらの水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、上記のアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、これらの混合物、及びこれらの水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、上記のアニオンは、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、これらの混合物、及びこれらの水和物からなる群から選択される。滴下又は一段階で水溶性塩の添加を行うことができる。滴下添加の場合、この添加を好ましくは10分の時間内に行う。上記の塩を一段階で添加することがより好ましい。
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸;Li、Na又はKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO ;Li、Na、K、Mg2+又はCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-;及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは少なくとも1つのHイオン供与体は、リン酸である。
1つ又は複数のHイオン供与体を、高濃度溶液又はより希釈された溶液として懸濁液に添加することができる。好ましくは、天然又は沈降炭酸カルシウムに対するHイオン供与体のモル比は、0.01~4であり、より好ましくは0.02~2、さらにより好ましくは0.05~1、最も好ましくは0.1~0.58である。
代わりとして、天然又は沈降炭酸カルシウムを懸濁させる前に、Hイオン供与体を水に添加することも可能である。
次の段階では、天然又は沈降炭酸カルシウムを、二酸化炭素で処理する。硫酸又は塩酸などの強酸を、天然又は沈降炭酸カルシウムのHイオン供与体での処理のために使用する場合、二酸化炭素が自動的に生成する。あるいは又はこれに加えて、二酸化炭素を外部供給源から供給することができる。
イオン供与体での処理及び二酸化炭素による処理を、強酸又は中強酸を使用する場合には同時に行うことができる。例えば、20℃において0~2.5の範囲のpKを有する中強酸を用いて、最初にHイオン供与体での処理を行うことも可能であり、ここで、二酸化炭素がその場で形成され、したがって、二酸化炭素での処理が、Hイオン供与体での処理と同時に自動的に行われ、次いで、外部供給源から供給された二酸化炭素で追加の処理が行われる。
好ましい実施形態では、Hイオン供与体処理工程及び/又は二酸化炭素処理工程を、少なくとも1回、より好ましくは複数回反復する。一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体を、少なくとも約5分、好ましくは少なくとも約10分、典型的には約10分~約20分、より好ましくは約30分、さらにより好ましくは約45分、時には約1時間又はそれを超える時間にわたって添加する。
イオン供与体での処理及び二酸化炭素による処理の後、20℃において測定された水性懸濁液のpHは、自然に6.0を超える値に、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し、これによって、6.0を超え、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として表面反応天然炭酸カルシウム又は表面反応沈降炭酸カルシウムを製造する。
表面反応天然炭酸カルシウムの製造についてのさらなる詳細は、国際公開第00/39222 A1号、国際公開第2004/083316 A1号、国際公開第2005/121257 A2号、国際公開第2009/074492 A1号、欧州特許出願公開第2 264 108 A1号公報、欧州特許出願公開第2 264 109 A1号公報、及び米国特許出願公開第2004/0020410 A1号公報に開示されており、これらの参考文献の内容は本願に援用される。
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムを得る。国際公開第2009/074492 A1号から詳細に理解することができるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを、Hイオンと、及び水性媒体中で可溶化されかつ水不溶性のカルシウム塩を生成することができるアニオンと、水性媒体中で接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、ここで、この表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面に形成された不溶性であり少なくとも部分的に結晶性の上記アニオンのカルシウム塩を含む。
上記の可溶化されたカルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解によって自然に生成する可溶化されたカルシウムイオンと比較して、過剰な可溶化されたカルシウムイオンに相当し、ここで、このHイオンは、アニオンに対する対イオンの形態でもっぱら提供され、すなわち、酸又は非カルシウム酸塩の形態のアニオンの添加を介して、及び任意のさらなるカルシウムイオン又はカルシウムイオン生成源の非存在下で、もっぱら提供される。
上記の過剰な可溶化されたカルシウムイオンは、好ましくは、可溶性の中性若しくは酸性のカルシウム塩の添加によって、又は可溶性の中性若しくは酸性のカルシウム塩をその場で生成する酸又は中性若しくは酸性の非カルシウム塩の添加によって提供される。
上記Hイオンを、上記アニオンの酸若しくは酸性塩の添加、又は上記の過剰な可溶化されたカルシウムイオンのすべて若しくは一部を提供するように同時に働く酸若しくは酸性塩の添加によって提供してもよい。
表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの製造のさらなる好ましい実施形態では、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム若しくはカリウムなどのアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、天然又は沈降炭酸カルシウムを、1つ又は複数のHイオン供与体及び/又は二酸化炭素と反応させる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はアルカリ土類金属のケイ酸塩から選択される。これらの成分を、1つ又は複数のHイオン供与体及び/又は二酸化炭素の添加前に、天然又は沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
あるいは、天然又は沈降炭酸カルシウムと1つ又は複数のHイオン供与体及び二酸化炭素との反応を既に開始させながら、ケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩及び/又は酸化マグネシウムの1つ又は複数の成分を、天然又は沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。ケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩の1つ又は複数の成分の少なくとも1つの存在下における表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの製造についてのさらなる詳細は、国際公開第2004/083316 A1号に開示されており、この参考文献の内容は本願に援用される。
表面反応炭酸カルシウムを、懸濁液中に保持し、任意に分散剤によってさらに安定化することができる。当業者に既知の通常の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸及び/又はカルボキシメチルセルロース及びそれらの塩からなる。
あるいは、上記水性懸濁液を乾燥させ、それによって、固体の(すなわち、乾燥しているか又は流体形態ではない水をほとんど含まない)表面反応天然又は表面反応沈降炭酸カルシウムを、顆粒又は粉末の形態で得ることができる。
表面反応炭酸カルシウムは、1種類の表面反応炭酸カルシウム又は異なる種類の複数の表面反応炭酸カルシウムの混合物であってよいことが理解される。本発明の一実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、1種類の表面反応炭酸カルシウムを含むか、好ましくは1種類の表面反応炭酸カルシウムからなる。あるいは、表面反応炭酸カルシウムは、2種類又はこれを超える表面反応炭酸カルシウムを含むか、好ましくは、2種類又はこれを超える表面反応炭酸カルシウムからなる。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、2種類又は3種類の表面反応炭酸カルシウムを含むか、好ましくは、2種類又は3種類の表面反応炭酸カルシウムからなる。好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、1種類の表面反応炭酸カルシウムを含み、より好ましくは、1種類の表面反応炭酸カルシウムからなる。
沈降ハイドロマグネサイト
本発明の異なる態様の別の実施形態では、フィラー材料は、沈降ハイドロマグネサイトである。ハイドロマグネサイト又は塩基性炭酸マグネシウムは、ハイドロマグネサイトの標準的な産業上の名称であり、蛇紋岩及び変質したマグネシウムに富む火成岩のようなマグネシウムに富む鉱物中に見出される天然に存在する鉱物であるが、ペリクレース大理石中のブルサイトの変質生成物としても見出される。ハイドロマグネサイトは、次の式:Mg(CO(OH)・4HOを有するものとして記述される。
ハイドロマグネサイトは、炭酸マグネシウムの非常に特異的な鉱物形態であり、小さな針状結晶又は針状若しくは翼状結晶のクラストとして天然に存在することが理解されるべきである。それに加えて、ハイドロマグネサイトは、炭酸マグネシウムの独特かつ特有の形態であり、かつ炭酸マグネシウムの他の形態とは化学的、物理的及び構造的に異なることに留意されたい。ハイドロマグネサイトはX線回折分析、熱重量分析又は元素分析によって他の炭酸マグネシウムと容易に区別することができる。ハイドロマグネサイトとして具体的に記述していない限り、他のすべての形態の炭酸マグネシウム(例えば、アルチナイト(Mg(CO)(OH)・3HO)、ジピンガイト(Mg(CO(OH)・5HO)、ギオルギオサイト(Mg(CO(OH)・5HO)、ポロブスカイト(Mg(CO)(OH)・0.5HO))、マグネサイト(MgCO)、バリントナイト(MgCO・2HO)、ランスフォルダイト(MgCO・5HO)及びネスケホナイト(MgCO・3HO))は、本発明の意味内のハイドロマネサイトではなく、上述の式には化学的に対応していない。
天然ハイドロマグネサイトの他に、沈降ハイドロマグネサイト(又は合成炭酸マグネシウム)を調製することができる。例えば、米国特許第1,361,324号明細書、米国特許第935,418号明細書、英国特許第548,197号明細書及び英国特許第544,907号明細書は、一般的に、重炭酸マグネシウム(典型的には「Mg(HCO」として記載されている)の水溶液の形成を記載しており、これは、次いで、塩基、例えば水酸化マグネシウムの作用によって変換され、ハイドロマグネサイトを形成する。当技術分野で記載されている他のプロセスは、ハイドロマグネサイトと水酸化マグネシウムとの両方を含有する組成物を調製することを示唆しており、ここで、水酸化マグネシウムを水と混合して懸濁液を形成し、この懸濁液を二酸化炭素及び塩基性水溶液とさらに接触させて、対応する混合物を形成する;例えば、米国特許第5,979,461号明細書を参照されたい。国際公開第2011/054831 A1号は、水性環境中で沈降ハイドロマグネサイトを調製する方法に関する。
本発明のこの実施形態は、沈降ハイドロマグネサイトに関する。沈降ハイドロマグネサイトは、1種類の沈降ハイドロマグネサイト又は異なる種類の複数の沈降ハイドロマグネサイトの混合物であってよいことが理解される。本発明の一実施形態では、沈降ハイドロマグネサイトは、1種類の沈降ハイドロマグネサイトを含むか、好ましくは1種類の沈降ハイドロマグネサイトからなる。あるいは、沈降ハイドロマグネサイトは、2種類又はこれを超える沈降ハイドロマグネサイトを含むか、好ましくは、2種類又はこれを超える沈降ハイドロマグネサイトからなる。例えば、沈降ハイドロマグネサイトは、2種類又は3種類の沈降ハイドロマグネサイトを含むか、好ましくは、2種類又は3種類の沈降ハイドロマグネサイトからなる。好ましくは、沈降ハイドロマグネサイトは、1種類の沈降ハイドロマグネサイトを含み、より好ましくは、1種類の沈降ハイドロマグネサイトからなる。
さらなる実施形態では、本発明の多孔質フィラーは、上述の表面反応炭酸カルシウムと上述の沈降ハイドロマグネサイトとの混合物からなるフィラー材料を含む。好ましくは、このフィラー材料は、表面反応炭酸カルシウムからなる。多孔質フィラーが、フィラー材料及び表面処理層からなるか、又は多孔質フィラーがフィラー材料からなることが好ましい。
好ましい実施形態において、フィラー材料は、BET法を用いて測定した、20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gのBET比表面積を有する。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の表面積を粒子の質量で割ったものとして定義される。本明細書では、比表面積は、窒素ガスを用いたBET等温線(ISO 9277:2010)を用いた吸着により測定され、m/gで特定される。
さらに、フィラー材料は、0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有することが好ましい。
さらに、フィラー材料は、0.2~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~80μm、さらにより好ましくは2.4~60μm、最も好ましくは3~30μmの体積トップカット粒径d98(vol)を有することが好ましい場合がある。
好ましくは、フィラー材料は、水銀ポロシメトリー測定によって決定した、0.1~3.0cm/g、より好ましくは0.2~2.5cm/g、さらにより好ましくは0.4~2.0cm/g、最も好ましくは0.6~1.8cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積を有する。
例示的な実施形態では、フィラー材料は、20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gのBET比表面積を有し、かつ0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmの体積メジアン粒径d50を有する。例えば、フィラー材料は、20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gのBET比表面積を有し、かつ0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmの体積メジアン粒径d50を有する表面反応炭酸カルシウムからなることができる。
表面処理層
好ましい実施形態によれば、多孔質フィラーは、フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層をさらに含み、この表面処理層は、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とフィラー材料とを接触させることによって形成される。
本発明の意味における「表面処理剤」は、フィラー材料の表面と、反応しかつ/又は付加物を形成することができ、それによってこのフィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層を形成し、好ましくはフィラー表面をより疎水性にする任意の材料である。本発明について任意の特定の表面処理剤に限定されないことを理解されたい。当業者は、表面処理剤として使用するための適切な材料をどのように選択するかを知っている。しかしながら、表面処理剤は、不飽和及び/又は飽和表面処理剤から選択されることが好ましい。
好ましい実施形態によれば、表面処理組成物は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される不飽和表面処理剤を含む。好ましくは、この不飽和表面処理剤は、下記からなる群から選択される:
(a)モノ-又はジ-置換コハク酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ストロンチウム、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び/又はアンモニウム塩、ここで、前記アミン塩は直鎖状又は環状であり、一方又は両方の酸基が塩の形態であることができ、好ましくは両方の酸基が塩の形態である;不飽和脂肪酸、好ましくはオレイン酸及び/又はリノール酸;リン酸の不飽和エステル;アビエチン酸;及び/又はこれらの混合物であり、好ましくは、完全に中和された表面処理剤;及び/又は
(b)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、以下を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩:
(i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
(ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
(iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
(iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
(v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
「不飽和炭素部分を含む」という表現は、それぞれの化合物が、炭素-炭素二重結合などの少なくとも1つの不飽和炭素部分を含むということを理解されたい。例えば、それぞれの化合物は、1つの不飽和炭素部分を含むことができる。しかしながら、それぞれの化合物はまた、1つを超える不飽和炭素部分を含むことができる。
本発明の目的のために、「不飽和炭素部分」は、二重又は三重結合、例えば、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合又は炭素-ヘテロ原子多重結合を指す。好ましくは、不飽和炭素部分は炭素-炭素二重結合である。不飽和炭素部分は、化学的に架橋可能であるべきであり、すなわち、芳香族系の一部を形成していないということが理解される。
別の実施形態では、表面処理組成物は、下記からなる群から選択される飽和表面処理剤を含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
さらに別の好ましい実施形態では、表面処理組成物は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される不飽和表面処理剤を含み、かつ
下記からなる群から選択される飽和表面処理剤をさらに含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
以下に、飽和及び不飽和の表面処理剤について、より詳細に説明する。
一実施形態によれば、不飽和表面処理剤は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、又は不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物であってよい。好ましくは、不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸含有化合物、又は不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸塩含有化合物である。
用語「無水コハク酸含有化合物」は、無水コハク酸を含有する化合物を指す。「無水コハク酸」という用語は、ジヒドロ-2,5-フランジオン、コハク酸無水物又はコハク酸酸化物とも呼ばれ、分子式Cを有し、コハク酸の酸無水物である。
本発明の意味における「モノ置換」無水コハク酸含有化合物という用語は、1つの水素原子が別の置換基によって置換されている無水コハク酸を指す。
本発明の意味における「ジ置換」無水コハク酸含有化合物という用語は、2つの水素原子が別の置換基によって置換されている無水コハク酸を指す。
「コハク酸含有化合物」という用語は、コハク酸を含有する化合物を指す。「コハク酸」は分子式Cを有する。
本発明の意味における「モノ置換」コハク酸という用語は、1つの水素原子が別の置換基によって置換されているコハク酸を指す。
本発明の意味における「ジ置換」コハク酸含有化合物という用語は、2つの水素原子が別の置換基によって置換されているコハク酸を指す。
用語「コハク酸塩含有化合物」は、活性酸基が部分的に又は完全に中和されているコハク酸を含有する化合物を指す。用語「部分的に中和された」コハク酸塩含有化合物は、40~95モル%、好ましくは50~95モル%、より好ましくは60~95%、最も好ましくは70~95%の範囲の活性酸基の中和度を指す。用語「完全に中和された」コハク酸塩含有化合物は、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸基の中和度を指す。好ましくは、活性酸基は、部分的に又は完全に中和されている。
不飽和炭素部分を含むコハク酸塩含有化合物は、好ましくは、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、このアミン塩は、直鎖状又は環状である。一方又は両方の酸基が塩の形態であってよく、好ましくは両方の酸基が塩の形態であることが理解される。
本発明の意味における「モノ置換」コハク酸塩という用語は、1つの水素原子が別の置換基によって置換されているコハク酸塩を指す。
本発明の意味における「ジ置換」コハク酸塩含有化合物という用語は、2つの水素原子が別の置換基によって置換されているコハク酸塩を指す。
したがって、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、又は不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物は、不飽和炭素部分を含む1つ又は複数の置換基R及び/又はRを含む。不飽和炭素部分は、末端に、及び/又は置換基R及び/又はRの側鎖に位置する。
炭素-炭素二重結合を含む1つ又は複数の置換基R及び/又はRは、好ましくは、イソブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブタジエン-スチレンコポリマー、アクリロイル、メタクリロイル基又はそれらの混合物から選択される。例えば、表面処理剤は、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩であってよい。
無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーは、好ましくは、以下を有する:
(i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
(ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
(iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
(iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
(v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
用語「無水マレイン酸をグラフトした」は、無水マレイン酸の二重結合と、炭素-炭素二重結合を含む1つ又は複数の置換基R及び/又はRとの反応後に、無水コハク酸が得られることを意味する。したがって、用語「無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー」及び「無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー」は、それぞれ、無水マレイン酸の二重結合と炭素-炭素二重結合との反応から形成される無水コハク酸部分を各々有するポリブタジエンホモポリマー及びポリブタジエン-スチレンコポリマーを指す。
用語「無水物当量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された数平均分子量Mを、1鎖当たりの無水物基の数で割ったものをいう。
例えば、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーは、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された数平均分子量M;ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり20~200meq KOH、好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価;及び10~60mol%、好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量を有することができる。別の実施形態では、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーは、2000~5000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された数平均分子量M;ASTM D974-14に準拠して測定された、30~100meq KOH/gの範囲の酸価;及び10~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量を有することができる。
本発明の一実施形態では、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマーの塩は、それらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩及び/又はアンモニウム塩を含む群から選択することができ、好ましくは、それらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施形態では、表面処理剤は、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択され、好ましくは、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩からなる群から選択される、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの塩である。より好ましくは、この無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの塩は、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された数平均分子量M;ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり20~200meq KOH、好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価;及び10~60mol%、好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量を有する。
無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマーの塩は、対応する無水物からの加水分解及び部分的な又は完全な中和によって得ることができ、例えば、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸を、塩基、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化ナトリウムの水溶液で処理することによって、得ることができる。
したがって、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの酸又は塩は、好ましくは、以下を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーからの加水分解によって誘導することが可能であると理解される:
(i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
(ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
(iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
(iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
(v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
表面処理組成物は、好ましくは、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩を含むことができ、好ましくはそれらからなることができる。したがって、多孔質フィラーの表面処理層は、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とフィラー材料とを接触させることによって形成することができる。
例えば、フィラー材料の表面の少なくとも一部にある表面処理層は、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーと、又は1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された数平均分子量M;ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり20~200meq KOH、好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価;及び10~60mol%、好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩と、フィラー材料とを、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量で接触させることによって形成することができる。
本発明の別の実施形態では、不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物は、不飽和炭素部分を含む少なくとも1つの直鎖又は分岐アルケニルモノ置換コハク酸無水物化合物である。例えば、少なくとも1つのアルケニルモノ置換無水コハク酸は、エテニルコハク酸無水物、プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、トリイソブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、及びそれらの混合物を含む群から選択される。
したがって、例えば、用語「ヘキサデセニルコハク酸無水物」は、直鎖状及び分岐状の1つ又は複数のヘキサデセニルコハク酸無水物を含むことが理解される。直鎖状ヘキサデセニル無水コハク酸の1つの具体的な例は、14-ヘキサデセニル無水コハク酸、13-ヘキサデセニル無水コハク酸、12-ヘキサデセニル無水コハク酸、11-ヘキサデセニル無水コハク酸、10-ヘキサデセニル無水コハク酸、9-ヘキサデセニル無水コハク酸、8-ヘキサデセニル無水コハク酸、7-ヘキサデセニル無水コハク酸、6-ヘキサデセニル無水コハク酸、5-ヘキサデセニル無水コハク酸、4-ヘキサデセニル無水コハク酸、3-ヘキサデセニル無水コハク酸及び/又は2-ヘキサデセニル無水コハク酸などのn-ヘキサデセニル無水コハク酸である。分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物の具体例は、14-メチル-9-ペンタデセニル無水コハク酸、14-メチル-2-ペンタデセニル無水コハク酸、1-ヘキシル-2-デセニル無水コハク酸及び/又はイソヘキサデセニル無水コハク酸である。
さらに、例えば、用語「オクタデセニルコハク酸無水物」は、直線状及び分岐状の1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物を含むことが理解される。直鎖状オクタデセニルコハク酸無水物の1つの具体例は、16-オクタデセニル無水コハク酸、15-オクタデセニル無水コハク酸、14-オクタデセニル無水コハク酸、13-オクタデセニル無水コハク酸、12-オクタデセニル無水コハク酸、11-オクタデセニル無水コハク酸、10-オクタデセニル無水コハク酸、9-オクタデセニル無水コハク酸、8-オクタデセニル無水コハク酸、7-オクタデセニル無水コハク酸、6-オクタデセニル無水コハク酸、5-オクタデセニル無水コハク酸、4-オクタデセニル無水コハク酸、3-オクタデセニル無水コハク酸及び/又は2-オクタデセニル無水コハク酸などのn-オクタデセニル無水コハク酸である。分岐状オクタデセニルコハク酸無水物の具体例は、16-メチル-9-ヘプタデセニル無水コハク酸、16-メチル-7-ヘプタデセニル無水コハク酸、1-オクチル-2-デセニル無水コハク酸及び/又はイソオクタデセニル無水コハク酸である。
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、ヘキセニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、及びそれらの混合物を含む群から選択される。
本発明の一実施形態において、不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物は、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物である。例えば、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、ヘキセニル無水コハク酸である。あるいは、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、オクテニル無水コハク酸である。あるいは、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、ヘキサデセニル無水コハク酸である。例えば、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、n-ヘキサデセニル無水コハク酸のような直鎖状ヘキサデセニルコハク酸無水物又は1-ヘキシル-2-デセニル無水コハク酸のような分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物である。あるいは、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、オクタデセニル無水コハク酸である。例えば、1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、n-オクタデセニル無水コハク酸のような直鎖状オクタデセニルコハク酸無水物、あるいはイソオクタデセニル無水コハク酸又は1-オクチル-2-デセニル無水コハク酸のような分岐状オクタデセニルコハク酸無水物である。
本発明の一実施形態では、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、n-オクタデセニル無水コハク酸などの直鎖状オクタデセニルコハク酸無水物である。本発明の別の実施形態では、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、n-オクテニル無水コハク酸などの直鎖状オクテニルコハク酸無水物である。
本発明の一実施形態において、不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸無水物化合物は、2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸無水物化合物は、2種類又は3種類のアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である。
不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸無水物化合物が2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である場合、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は直鎖状又は分岐状オクタデセニルコハク酸無水物であり、一方、各々のさらなるアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、エテニルコハク酸無水物、プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物及びそれらの混合物から選択される。例えば、不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸無水物は、2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物であり、ここで、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、直鎖状オクタデセニルコハク酸無水物であり、かつ各々のさらなるアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、エテニルコハク酸無水物、プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物及びそれらの混合物から選択される。あるいは、不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸無水物は、2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物であり、ここで、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、分岐状オクタデセニルコハク酸無水物であり、かつ各々のさらなるアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、エテニルコハク酸無水物、プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物及びそれらの混合物から選択される。
例えば、不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物は、直鎖状又は分岐状の1つ又は複数のヘキサデセニルコハク酸無水物のような1つ又は複数のヘキサデセニルコハク酸無水物と、直鎖状又は分岐状の1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物のような1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物とを含む、2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である。
本発明の一実施形態において、不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物は、直鎖状の1つ又は複数のヘキサデセニルコハク酸無水物と、直鎖状の1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物とを含む2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である。あるいは、不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物は、分岐状の1つ又は複数のヘキサデセニルコハク酸無水物と、分岐状の1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物とを含む2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、1つ又は複数のヘキサデセニルコハク酸無水物は、n-ヘキサデセニル無水コハク酸のような直鎖状ヘキサデセニルコハク酸無水物及び/又は1-ヘキシル-2-デセニル無水コハク酸のような分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物である。さらに、又は代わりに、1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物は、n-オクタデセニルコハク酸無水物のような直鎖状オクタデセニルコハク酸無水物、及び/又はイソオクタデセニル無水コハク酸及び/又は1-オクチル-2-デセニル無水コハク酸のような分岐状オクタデセニルコハク酸無水物である。
不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物が、2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である場合、1つのアルケニルモノ置換コハク酸無水物は、提供されるモノ置換コハク酸無水物の総重量に基づいて、20~60重量%、好ましくは30~50重量%の量で存在するということが理解される。
例えば、不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物が、1つ又は複数の直鎖状又は分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物のような1つ又は複数のヘキサデセニルコハク酸無水物と、1つ又は複数の直鎖状又は分岐状オクタデセニルコハク酸無水物のような1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物とを含む2種類又はそれを超えるアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物である場合、1つ又は複数のオクタデセニルコハク酸無水物は、モノ置換コハク酸無水物の総重量に基づいて、20~60重量%及び好ましくは30~50重量%の量で存在することが好ましい。
不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物は、アルキルモノ置換コハク酸無水物及びアルケニルモノ置換コハク酸無水物の混合物であり得ることもまた理解される。
別の実施形態では、表面処理剤は、不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸化合物、又は不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸塩化合物であってよく、ここで、不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸化合物、又は不飽和炭素部分を含むモノ置換コハク酸塩化合物は、上述した不飽和炭素部分を含むモノ置換無水コハク酸化合物から誘導される。
さらに、又は代わりに、少なくとも1つの不飽和表面処理剤は、不飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸の塩から選択される。
本発明の意味における「不飽和脂肪酸」という用語は、炭素及び水素から構成される直鎖又は分岐鎖の不飽和有機化合物を指す。この有機化合物は、炭素骨格の端部に配置されたカルボキシル基をさらに含む。
不飽和脂肪酸は、好ましくは、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、不飽和脂肪酸である表面処理剤は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、α-リノレン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、不飽和脂肪酸である表面処理剤は、オレイン酸及び/又はリノール酸であり、好ましくはオレイン酸又はリノール酸であり、最も好ましくはリノール酸である。
さらに、又は代わりに、表面処理剤は、不飽和脂肪酸の塩である。
用語「不飽和脂肪酸の塩」は、活性酸基が部分的に又は完全に中和されている不飽和脂肪酸を指す。用語「部分的に中和された」不飽和脂肪酸は、40~95モル%好ましくは50~95モル%、より好ましくは60~95モル%、最も好ましくは70~95モル%の範囲の活性酸基の中和度を指す。用語「完全に中和された」不飽和脂肪酸は、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸基の中和度を指す。好ましくは、活性酸基は、部分的に又は完全に中和されている。
不飽和脂肪酸の塩は、好ましくは、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、このアミン塩は、直鎖状又は環状である。例えば、表面処理剤は、オレイン酸及び/又はリノール酸の塩であり、好ましくはオレイン酸又はリノール酸であり、最も好ましくはリノール酸である。
さらに、又は代わりに、少なくとも1つの表面処理剤は、リン酸の不飽和エステル及び/又は不飽和リン酸エステルの塩である。
したがって、リン酸の不飽和エステルは、1つ又は複数のリン酸モノエステル及び1つ又は複数のリン酸ジエステル及び任意に1つ又は複数のリン酸トリエステルのブレンドであってもよい。一実施形態では、このブレンドは、リン酸をさらに含む。
例えば、リン酸の不飽和エステルは、1つ又は複数のリン酸モノエステル及び1つ又は複数のリン酸ジエステルのブレンドである。あるいは、リン酸の不飽和エステルは、1つ又は複数のリン酸モノエステル及び1つ又は複数のリン酸ジエステル及びリン酸のブレンドである。あるいは、リン酸の不飽和エステルは、1つ又は複数のリン酸モノエステル及び1つ又は複数のリン酸ジエステル及び1つ又は複数のリン酸トリエステルのブレンドである。あるいは、リン酸の不飽和エステルは、1つ又は複数のリン酸モノエステルと、1つ又は複数のリン酸ジエステルと、1つ又は複数のリン酸トリエステルと、リン酸とのブレンドである。
例えば、このブレンドは、ブレンド中の化合物のモル合計量に基づいて、≦8モル%、好ましくは≦6モル%、より好ましくは≦4モル%、例えば0.1~4モル%の量のリン酸を含む。
本発明の意味における「リン酸モノエステル」なる用語は、アルコール置換基中にCからC30、好ましくはCからC22、より好ましくはCからC20、最も好ましくはCからC18までの総炭素原子数を有する、不飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo-リン酸分子を指す。
本発明の意味における「リン酸ジエステル」なる用語は、アルコール置換基中にCからC30、好ましくはCからC22、より好ましくはCからC20、最も好ましくはCからC18までの総炭素原子数を有する、同一又は異なる、不飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo-リン酸分子を指す。
本発明の意味における「リン酸トリエステル」なる用語は、アルコール置換基中にCからC30、好ましくはCからC22、より好ましくはCからC20、最も好ましくはCからC18までの総炭素原子数を有する、同一又は異なる、不飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される3つのアルコール分子でトリエステル化されたo-リン酸分子を指す。
さらに、又は代わりに、表面処理剤は、不飽和リン酸エステルの塩である。一実施形態では、不飽和リン酸エステルの塩は、少量のリン酸の塩をさらに含むことができる。
用語「不飽和リン酸エステルの塩」は、活性酸基が部分的に又は完全に中和されている、不飽和リン酸エステルを指す。用語「部分的に中和された」不飽和リン酸エステルは、40~95モル%、好ましくは50~95モル%、より好ましくは60~95モル%、最も好ましくは70~95モル%の範囲の活性酸基の中和度を指す。用語「完全に中和された」不飽和リン酸エステルは、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸基の中和度を指す。好ましくは、活性酸基は、部分的に又は完全に中和されている。
不飽和リン酸エステルの塩は、好ましくは、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、このアミン塩は、直鎖状又は環状である。
さらに、又は代わりに、少なくとも1つの表面処理剤は、アビエチン酸(アビエタ-7,13-ジエン-18-酸とも呼ばれる、CAS-No.:514-10-3)である。
さらに、又は代わりに、表面処理剤は、アビエチン酸の塩である。
用語「アビエチン酸の塩」は、活性酸基が部分的に又は完全に中和されているアビエチン酸を指す。用語「部分的に中和された」アビエチン酸は、40~95モル%、好ましくは50~95モル%、より好ましくは60~95モル%、最も好ましくは70~95モル%の範囲の活性酸基の中和度を指す。用語「完全に中和された」アビエチン酸は、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸基の中和度を指す。好ましくは、活性酸基は部分的に又は完全に中和され、より好ましくは完全に中和されている。
アビエチン酸の塩は、好ましくは、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、このアミン塩は、直鎖状又は環状である。
本発明の他の実施形態によれば、この少なくとも1つの表面処理剤は、式:R-Si(ORで表される不飽和トリアルコキシシランである。その場合、置換基Rは、任意の種類の不飽和置換基、すなわち、例えばビニル、アリル、プロパルギル、ブテニル、クロチル、プレニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル又はビニルフェニル部分のような、C2からC30までの総炭素原子数を有する任意の分岐、直鎖又は環状のアルケン部分を表す。ORは加水分解性基であり、ここで、置換基Rは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ブテニル基、フェニル基又はベンジル基のような、C1~C30の総炭素原子数を有する任意の飽和又は不飽和の、分岐、直鎖、環状又は芳香族の部分を表す。好ましい実施形態によれば、Rは、C1~C15、好ましくはC1~C8、最も好ましくはC1~C2の総炭素原子数を有する直鎖アルキル基である。本発明の例示された実施形態によれば、加水分解性アルコキシ基はメトキシ又はエトキシ基である。したがって、本発明での使用に適した不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシランの具体的又は好ましい例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン又はアリルトリエトキシシランが挙げられる。より好ましくは、トリアルコキシシランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
本発明の一実施形態によれば、表面処理組成物は、飽和表面処理剤を含み、この表面処理剤は、1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれら塩のリン酸エステルブレンドである。
本発明の一実施形態では、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の総炭素原子数を有する飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
リン酸のアルキルエステルは、特に、界面活性剤、潤滑剤及び帯電防止剤として、産業界においてよく知られている(Die Tenside; Kosswig und Stache、Carl Hanser Verlag Munchen、1993)。
異なる方法によるリン酸のアルキルエステルの合成及びリン酸のアルキルエステルを用いた鉱物の表面処理は、例えば以下の文献から当業者に周知である:Pesticide Formulations and Application Systems:17th Volume;Collins HM、Holl FR、Hopkinson M、STP1268;Published:1996;米国特許第3,897,519 A号明細書、米国特許第4,921,990 A号明細書、米国特許第4,350,645 A号明細書、米国特許第6,710,199 B2号明細書、米国特許第4,126,650 A号明細書、米国特許第5,554,781 A号明細書、欧州特許第1 092 000 B1号明細書及び国際公開第2008/023076 A1号。
本発明の一実施形態では、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6からC30までの総炭素原子数を有する飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18総炭素原子数を有する飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
本発明の一実施形態において、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する飽和の直鎖脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する飽和の分岐脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
本発明の一実施形態において、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、ヘキシルリン酸モノエステル、ヘプチルリン酸モノエステル、オクチルリン酸モノエステル、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
例えば、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態では、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルである。
「1つ又は複数の」リン酸ジエステルという表現は、1つ又は複数の種類のリン酸ジエステルが、表面処理材料生成物の処理層中に及び/又はリン酸エステルブレンド中に存在し得ることを意味することが理解される。
したがって、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、1種類のリン酸ジエステルであってもよいことに留意されたい。あるいは、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、2つ又はそれを超える種類のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。例えば、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、例えば2種類のリン酸ジエステルのような、2種類又は3種類のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。
本発明の一実施形態では、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の総炭素原子数を有する、飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される2つの脂肪アルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
リン酸をエステル化するために使用される2つのアルコールは、アルコール置換基中にC6~C30の総炭素原子数を有する、同一又は異なる、飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族のアルコールから独立して選択することができることが理解される。換言すれば、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、同じアルコールから誘導される2つの置換基を含んでいてもよく、又はリン酸ジエステル分子は、異なるアルコールから誘導される2つの置換基を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態において、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の総炭素原子数を有する、同一又は異なる、飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同一又は異なる、飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
本発明の一実施形態において、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同一又は異なる、飽和の直鎖脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同一又は異なる、飽和の分岐脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
本発明の一実施形態において、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、ヘキシルリン酸ジエステル、ヘプチルリン酸ジエステル、オクチルリン酸ジエステル、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ノニルリン酸ジエステル、デシルリン酸ジエステル、ウンデシルリン酸ジエステル、ドデシルリン酸ジエステル、テトラデシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
例えば、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態において、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルである。
本発明の一実施形態において、1つ又は複数のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択され、1つ又は複数のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
本発明の別の実施形態によれば、表面処理組成物は、飽和表面処理剤を含み、この飽和表面処理剤は、少なくとも1つの飽和脂肪族の、直鎖又は分岐のカルボン酸及び/又はそれらの塩であり、好ましくはC4~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩である。
本発明の意味における脂肪族カルボン酸は、1つ又は複数の直鎖の、分岐鎖の、飽和の、及び/又は脂環式のカルボン酸から選択することができる。好ましくは、脂肪族カルボン酸はモノカルボン酸であり、すなわち、脂肪族カルボン酸は、ただ1つのカルボキシル基が存在することを特徴とする。このカルボキシル基は、炭素骨格の末端に配置される。
本発明の一実施形態では、脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及び/又はその塩は、飽和非分岐カルボン酸から選択され、好ましくは、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、それらの塩、それらの無水物及びこれらの混合物からなるカルボン酸の群から選択される。
本発明の別の実施形態では、脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及び/又はその塩は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、脂肪族カルボン酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、それらの塩、それらの無水物、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
好ましくは、脂肪族カルボン酸及び/又はその塩若しくは無水物は、ステアリン酸及び/又はステアリン酸塩又は無水ステアリン酸である。
本発明の別の実施形態によれば、表面処理組成物は、飽和表面処理剤を含み、この飽和表面処理剤は、置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩である。
したがって、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、1種類のモノ置換コハク酸無水物であってもよいことに留意されたい。あるいは、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、2種類又はこれを超える種類のモノ置換コハク酸無水物の混合物であってもよい。例えば、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、2種類又は3種類のモノ置換コハク酸無水物の混合物、例えば2種類のモノ置換コハク酸無水物であってもよい。
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、1種類のモノ置換コハク酸無水物である。
少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、表面処理剤に相当し、かつ置換基中にC2~C30の総炭素原子数を有する任意の直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換されたコハク酸無水物からなることが理解される。
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、置換基中にC3~C20の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換されたコハク酸無水物からなる。例えば、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、置換基中にC4~C18の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換されたコハク酸無水物からなる。
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、置換基中にC2~C30、好ましくはC3~C20、最も好ましくはC4~C18の総炭素原子数を有する直鎖状でありかつ脂肪族基である1つの基でモノ置換されたコハク酸無水物からなる。さらに、又は代わりに、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、置換基中にC2~C30、好ましくはC3~C20、最も好ましくはC4~C18の総炭素原子数を有する分岐状でありかつ脂肪族基である1つの基でモノ置換されたコハク酸無水物からなる。
したがって、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、置換基中にC2~C30、好ましくはC3~C20、最も好ましくはC4~C18の総炭素原子数を有する直鎖又は分岐のアルキル基である1つの基でモノ置換されたコハク酸無水物からなることが好ましい。
例えば、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、置換基中にC2~C30、好ましくはC3~C20、最も好ましくはC4~C18の総炭素原子数を有する直鎖アルキル基である1つの基でモノ置換されたコハク酸無水物からなる。さらに、又は代わりに、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、置換基中にC2~C30、好ましくはC3~C20、最も好ましくはC4~C18の総炭素原子数を有する分岐アルキル基である1つの基でモノ置換されたコハク酸無水物からなる。
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、少なくとも1つの直鎖又は分岐鎖状のアルキルモノ置換コハク酸無水物である。例えば、少なくとも1つのアルキルモノ置換無水コハク酸は、エチルコハク酸無水物、プロピルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、トリイソブチルコハク酸無水物、ペンチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ノニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ヘキサデカニルコハク酸無水物、オクタデカニルコハク酸無水物、及びそれらの混合物を含む群から選択される。
したがって、例えば、用語「ブチルコハク酸無水物」は、1つ又は複数の、直鎖及び分岐ブチルコハク酸無水物を含むことが理解される。1つ又は複数の直鎖ブチルコハク酸無水物の1つの具体例は、n-ブチルコハク酸無水物である。1つ又は複数の分岐ブチルコハク酸無水物の具体例は、イソブチルコハク酸無水物、sec-ブチルコハク酸無水物及び/又はtert-ブチルコハク酸無水物である。
さらに、例えば、用語「ヘキサデカニルコハク酸無水物」は、1つ又は複数の、直鎖及び分岐ヘキサデカニルコハク酸無水物を含むことが理解される。1つ又は複数の直鎖ヘキサデカニルコハク酸無水物の1つの具体例は、n-ヘキサデカニル無水コハク酸である。1つ又は複数の分岐ヘキサデカニル無水コハク酸の具体例は、14-メチルペンタデカニル無水コハク酸、13-メチルペンタデカニル無水コハク酸、12-メチルペンタデカニル無水コハク酸、11-メチルペンタデカニル無水コハク酸、10-メチルペンタデカニル無水コハク酸、9-メチルペンタデカニル無水コハク酸、8-メチルペンタデカニル無水コハク酸、7-メチルペンタデカニル無水コハク酸、6-メチルペンタデカニル無水コハク酸、5-メチルペンタデカニル無水コハク酸、4-メチルペンタデカニル無水コハク酸、3-メチルペンタデカニル無水コハク酸、2-メチルペンタデカニル無水コハク酸、1-メチルペンタデカニル無水コハク酸、13-エチルブタデカニル無水コハク酸、12-エチルブタデカニル無水コハク酸、11-エチルブタデカニル無水コハク酸、10-エチルブタデカニル無水コハク酸、9-エチルブタデカニル無水コハク酸、8-エチルブタデカニル無水コハク酸、7-エチルブタデカニル無水コハク酸、6-エチルブタデカニル無水コハク酸、5-エチルブタデカニル無水コハク酸、4-エチルブタデカニル無水コハク酸、3-エチルブタデカニル無水コハク酸、2-エチルブタデカニル無水コハク酸、1-エチルブタデカニル無水コハク酸、2-ブチルドデカニル無水コハク酸、1-ヘキシルデカニル無水コハク酸、1-ヘキシル-2-デカニル無水コハク酸、2-ヘキシルデカニル無水コハク酸、6,12-ジメチルブタデカニル無水コハク酸、2,2-ジエチルドデカニル無水コハク酸、4,8,12-トリメチルトリデカニル無水コハク酸、2,2,4,6,8-ペンタメチルウンデカニル無水コハク酸、2-エチル-4-メチル-2-(2-メチルペンチル)-ヘプチル無水コハク酸及び/又は2-エチル-4,6-ジメチル-2-プロピルノニル無水コハク酸である。
さらに、例えば、用語「オクタデカニルコハク酸無水物」は、1つ又は複数の直鎖及び分岐のオクタデカニルコハク酸無水物を含むことが理解される。1つ又は複数の直鎖オクタデカニルコハク酸無水物の1つの具体例は、n-オクタデカニル無水コハク酸である。1つ又は複数の分岐オクタデカニルコハク酸無水物の具体例は、16-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、15-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、14-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、13-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、12-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、11-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、10-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、9-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、8-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、7-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、6-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、5-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、4-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、3-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、2-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、1-メチルヘプタデカニル無水コハク酸、14-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、13-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、12-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、11-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、10-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、9-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、8-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、7-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、6-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、5-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、4-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、3-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、2-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、1-エチルヘキサデカニル無水コハク酸、2-ヘキシルドデカニル無水コハク酸、2-ヘプチルウンデカニル無水コハク酸、イソオクタデカニル無水コハク酸及び/又は1-オクチル-2-デカニルコハク酸無水物である。
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ヘキサデカニルコハク酸無水物、オクタデカニルコハク酸無水物及びそれらの混合物を含む群から選択される。
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、1種類のアルキルモノ置換コハク酸無水物である。例えば、この1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、ブチル無水コハク酸である。あるいは、この1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、ヘキシル無水コハク酸である。あるいは、この1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、ヘプチル無水コハク酸又はオクチル無水コハク酸である。あるいは、1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、ヘキサデカニル無水コハク酸である。例えば、この1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、n-ヘキサデカニル無水コハク酸のような直鎖ヘキサデカニルコハク酸無水物、又は1-ヘキシル-2-デカニル無水コハク酸のような分岐ヘキサデカニルコハク酸無水物である。あるいは、この1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、オクタデカニル無水コハク酸である。例えば、この1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、n-オクタデカニルコハク酸無水物のような直鎖オクタデカニルコハク酸無水物、又はイソオクタデカニル無水コハク酸若しくは1-オクチル-2-デカニル無水コハク酸のような分岐オクタデカニルコハク酸無水物である。
本発明の一実施形態では、この1つのアルキルモノ置換コハク酸無水物は、n-ブチル無水コハク酸のようなブチルコハク酸無水物である。
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物は、2種類又はこれを超える種類のアルキルモノ置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つモノ置換コハク酸無水物は、2種類又は3種類のアルキルモノ置換コハク酸無水物の混合物である。
本発明の別の実施形態によれば、表面処理組成物は、少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンである飽和表面処理剤を含む。
好ましいポリジアルキルシロキサンは、例えば、米国特許出願公開第2004/0097616 A1号公報に記載されている。最も好ましいのは、ポリジメチルシロキサン、好ましくはジメチコン、ポリジエチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサン及び/又はそれらの混合物からなる群から選択されるポリジアルキルシロキサンである。
例えば、少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンは、好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
本発明のさらに別の実施形態によれば、表面処理組成物は、少なくとも1つのトリアルコキシシランである飽和表面処理剤を含む。トリアルコキシシランは、式:R-Si(ORで表される。ここで、置換基Rは、任意の種類の飽和置換基、すなわち、任意にさらなる置換基を含む、メチル、エチル、プロピル、アリル、ブチル、ブテニル、フェニル又はベンジル基部分などの、C1~C30の総炭素原子数を有する任意の分岐の、直鎖の又は環状のアルカン部分を表す。さらなる置換基は、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、エタクリルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ハロゲン基、ホスホネート基、ホスフィン基、硫黄含有基、イソシアネート基又はマスクされたイソシアネート基、フェニル基、ベンジル基、及びベンゾイル基からなる群から選択することができ、好ましくはアミノ基及び硫黄含有基からなる群から選択される。
ORは加水分解性基であり、ここで置換基Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ブテニル基、フェニル基又はベンジル基などの、C1~C30の総炭素原子数を有するものからの任意の飽和又は不飽和の、分岐、直鎖、環状又は芳香族の部分を表す。好ましい実施形態によれば、Rは、C1~C15、好ましくはC1~C8、最も好ましくはC1~C2の総炭素原子数を有する直鎖アルキル基である。本発明の例示的な実施形態によれば、加水分解性アルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基である。したがって、トリアルコキシシランの具体的又は好ましい例としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
好ましくは、トリアルコキシシランは、硫黄含有トリアルコキシシランであり、すなわち、置換基Rは、スルホネート基、スルフィド基、ジスルフィド基、テトラスルフィド基又はチオール基などの少なくとも1つの硫黄含有官能基を含む。したがって、具体的かつ好ましい例としては、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTS)、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(TESPD)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及びそれらの混合物が挙げられる。硫黄含有トリアルコキシシランは、架橋反応に関与することができ、すなわち、エラストマー組成物のエラストマーと架橋することができることを理解されたい。
別の好ましい実施形態では、トリアルコキシシランはアミノ含有トリアルコキシシランであり、すなわち、置換基Rは、少なくとも1つの第1級、第2級又は第3級アミノ基、好ましくは少なくとも1つの第1級アミノ基-NHを含む。より好ましくは、トリアルコキシシランは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施形態では、表面処理組成物は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン、硫黄含有トリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される表面処理剤を含み、かつ任意に、以下からなる群から選択される飽和表面処理剤をさらに含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)硫黄含有トリアルコキシシラン以外の少なくとも1つのトリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
本発明のさらに別の実施形態では、表面処理組成物は、硫黄含有トリアルコキシシランを含み、かつ任意に、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択される不飽和表面処理剤、又は以下からなる群から選択される飽和表面処理剤をさらに含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)硫黄含有トリアルコキシシラン以外の少なくとも1つのトリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
処理層の形成
多孔質フィラーの少なくとも一部にある表面処理層は、フィラー材料を上述した表面処理剤と接触させることによって形成されるということが理解される。多孔質フィラーを、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物に接触させる。すなわち、炭酸カルシウム含有フィラー材料と表面処理剤との間に化学反応を起こすことができる。言い換えれば、表面処理層は、表面処理剤及び/又はそれらの塩含有反応生成物を含んでいてもよい。
表面処理剤の「塩含有反応生成物」という用語は、フィラー材料と、表面処理剤を含む表面処理組成物とを接触させることによって得られる生成物を指す。この反応生成物は、適用した表面処理剤の少なくとも一部と、フィラー材料の表面に位置する反応性分子との間で形成される。
例えば、表面処理層が、フィラー材料と、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物とを接触させることによって形成される場合、この表面処理層は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物と、フィラー材料との反応から形成される塩をさらに含むことができる。同様に、表面処理層が、フィラー材料とステアリン酸とを接触させることによって形成される場合、この表面処理層は、ステアリン酸と炭酸カルシウム含有フィラー材料との反応から形成される塩をさらに含むことができる。本発明による代替の表面処理剤を使用する場合に、類似の反応が起こり得る。
一実施形態によれば、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物の1つ又は複数の塩含有反応生成物は、それらの1つ又は複数のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩である。
一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部に形成された不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物の1つ又は複数の塩含有反応生成物は、それらの1つ又は複数のカルシウム塩及び/又は1つ又は複数のマグネシウム塩である。
一実施形態によれば、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物の、それらの1つ又は複数の塩含有反応生成物に対するモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
本発明の一実施形態によれば、多孔質フィラーは、フィラー材料と、不飽和炭素部分を含む化合物を含むモノ置換又はジ置換無水コハク酸含有化合物及び/又はそれらの塩反応生成物を含む処理層とを含み、好ましくはそれらからなる。処理層は、このフィラー材料の表面の少なくとも一部、好ましくは全面に形成される。
本発明の一実施形態では、フィラー材料の表面に形成される処理層は、フィラー材料と不飽和炭素部分を含む少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物とを接触させることから得られる不飽和炭素部分を含む少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物及び/又はそれらの塩含有反応生成物を含む。例えば、フィラー材料の表面に形成される処理層は、フィラー材料と、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩とを接触させることから得られる無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩及び/又はそれらの塩含有反応生成物を含む。
少なくとも1つのリン酸エステルブレンドで処理した表面処理されたフィラー材料生成物を調製する方法及びコーティングに適した化合物は、例えば、欧州特許出願公開第2 770 017 A1号公報に記載されており、したがって、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
置換基中に少なくともC2~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1つのモノ置換コハク酸無水物で処理された表面処理されたフィラー材料生成物を調製するための方法及びコーティングに適した化合物は、例えば、国際公開第2016/023937A1号に記載されており、したがって、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
多孔質フィラーと2種類又はそれを超える表面処理剤を含む表面処理組成物とを接触させて表面処理層を形成する場合には、多孔質フィラーと表面処理組成物とを接触させる前に、2種類又はそれを超える表面処理剤を混合物として提供することができることを理解されたい。あるいは、多孔質フィラーを、第1の表面処理剤を含む表面処理組成物と接触させ、かつ続いて第2の表面処理剤を添加し、すなわち、多孔質フィラーと第1の表面処理剤との混合物を第2の表面処理剤と接触させることにより、表面処理組成物を形成することができる。
本発明の一実施形態では、表面処理を湿潤状態で実施し、すなわち、表面処理を水性溶媒、好ましくは水の存在下で実施する。
したがって、フィラー材料は、水性懸濁液の総重量に基づいて、5~80重量%の範囲の固形分を有する水性懸濁液の形態で提供することができる。好ましい実施形態によれば、水性懸濁液の固形分は、水性懸濁液の総重量に基づいて、10~70重量%、より好ましくは15~60重量%、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
用語「水性」懸濁液は、液相が水を含み、好ましくは水からなる系を指す。しかしながら、この用語は、水性懸濁液の液相が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物を含む群から選択される少量の少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含むことを排除しない。水性懸濁液が少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含む場合、水性懸濁液の液相は、水性懸濁液の液相の総重量に基づいて、0.1~40.0重量%、好ましくは0.1~30.0重量%、より好ましくは0.1~20.0重量%、最も好ましくは0.1~10.0重量%の量の少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含む。例えば、水性懸濁液の液相は水からなる。適切な湿式表面処理プロセスは、当業者に知られており、例えば、欧州特許出願公開第3 192 837 A1号公報に教示されている。
別の実施形態では、表面改質は、乾燥状態で行われる、すなわち、表面処理は、溶媒の非存在下で行われる。この実施形態では、例えば10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満の水分残留量を含有し得るフィラー材料を表面処理組成物と接触させ、続いて混合する。適切な乾燥表面処理プロセスは、当業者に公知である。
好ましい実施形態において、多孔質フィラーは、BET比表面積が20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gであり、かつ体積メジアン粒径d50(vol)が0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmである表面反応炭酸カルシウムを、フィラー材料表面1m当たりの0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物と接触させることから形成され、ここで、好ましくは、この表面処理組成物は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、好ましくは、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、より好ましくは、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含む。
別の好ましい実施形態では、多孔質フィラーは、BET比表面積が20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gであり、かつ体積メジアン粒径d50(vol)が0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmである沈降ハイドロマグネサイトを、フィラー材料表面1m当たりの0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物と接触させることから形成され、ここで、好ましくは、この表面処理組成物は、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、好ましくは、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、より好ましくは、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含む。
さらに別の特に好ましい実施形態では、フィラー材料は、表面処理層を含まない。すなわち、未処理のフィラー材料を、それぞれ、本発明の使用、本発明の方法、本発明の組成物又は本発明の物品に使用する。フィラー材料が表面処理層を含まない場合、多孔質フィラーは、好ましくはフィラー材料からなる。例えば、多孔質フィラーは、BET比表面積が20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gであり、かつ体積メジアン粒径d50(vol)が0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらに好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmである表面反応炭酸カルシウムからなることができる。あるいは、多孔質フィラーは、BET比表面積が20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gであり、かつ体積メジアン粒径d50(vol)が0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらに好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmである沈降ハイドロマグネサイトからなることができる。あるいは、多孔質フィラーは、BET比表面積が20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gであり、かつ体積メジアン粒径d50(vol)が0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmである表面反応炭酸カルシウムと、BET比表面積が20~200m/g、好ましくは40~150m/g、さらに好ましくは70~120m/gであり、かつ体積メジアン粒径d50(vol)が0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらに好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmである沈降ハイドロマグネサイトとの混合物からなることができる。
エラストマー
本発明の使用、本発明の方法、本発明の組成物及び本発明の物品は、エラストマー組成物に関する。エラストマー組成物は、エラストマー及びさらなる化合物、例えば上述した多孔質フィラー及び任意の他の添加剤などを含む組成物であることが理解される。したがって、エラストマー組成物がエラストマーを含むことは、本発明の使用、本発明の方法、本発明の組成物及び本発明の物品の必要条件である。
本発明のエラストマーは、ゴム状の弾性を示す架橋ポリマーである。したがって、本発明のエラストマーは、エラストマー前駆体としても呼ばれる架橋性ポリマーの架橋によって形成されることが理解される。架橋剤、加硫による化学架橋、紫外線放射、電子ビーム放射、核放射、ガンマ線放射、マイクロ波放射及び/又は超音波放射による架橋などの任意の架橋方法が、本発明の目的に適している。
本発明のエラストマー前駆体は、任意の種類の天然又は合成ゴムを含むことができる。例えば、エラストマーは、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、イソブテン-イソプレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、ポリスルフィドゴム、熱可塑性ゴム及びそれらの混合物を含むことができる。これらのタイプのゴムは、当業者に周知である(Winnacker/Kuechler、「Chemische Technik。Prozesse und Produkte」、5thvol.、5thEd.、Wiley-VCH 2005、4章、821~896頁を参照されたい)。一般に、ゴムは、DIN ISO-R 1629:2015-03又はASTM D1418-17に準拠して略式で示される。本発明によるエラストマーは、以下に記載する適切なエラストマー前駆体又は「ゴム」の架橋によって得られる。
本発明の意味における天然ゴム(NR)は、ポリイソプレンを含むポリマー材料であり、ここで、ポリイソプレンは、ゴムノキ(Hevea Brasiliensis)、スパージ(Euphorbia spp.)、ダンデライオン(Taxacum Officinale及びTaxacum Kok-saghyz)、パラキウムグッタ、ゴムフィグ(Ficus Elastica)、バレットウッド(Manilkara Bidentata)又はグアユール(Parthenium Argentatum)などの天然源から得られ得る。天然ゴムの供給源に応じて、ゴムは、例えば、カウチュク(シス-1,4-ポリイソプレン)、ガタ-パーチャ(トランス-1,4-ポリイソプレン)、又はチクル(一般に、シス-1,4-ポリイソプレン及びトランス-1,4-ポリイソプレンの混合物)として存在し得る。
合成ゴムは、一般に、合成モノマーからのラジカル、アニオン重合、カチオン重合又は配位重合、及びその後の架橋から製造される。重合反応は、例えば、エマルジョン、溶液、又は懸濁液中での重合として行うことができる。
例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPR)は、典型的には、エチレンとプロピレンとのラジカル共重合によって形成される。場合により、少量(例えば、モノマーの総量に対して10モル%未満、好ましくは5モル%未満)のジエンモノマー、例えばブタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデン、ノルボルネン又はノルボルナジエンが存在していてもよい。共重合中にジエンモノマーが存在する場合、形成されたエチレン-プロピレンゴムは、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)として示され、得られたゴムの架橋を容易にし得る不飽和炭素部分を含む。あるいは、EPDMは、VCl又はVOClなどのバナジウム系触媒を使用する配位重合によって合成することができる。
ブタジエンゴム(BR)は、通常、チーグラー・ナッタ触媒の存在下でのブタジエンの配位重合から形成され、かつアニオン重合によっても形成される。このようにして得られたブタジエンゴムは、シス-1,4-、トランス-1,4-及び1,2-ブタジエン構造単位などの異なる構造単位を有していてもよく、1,2-ブタジエン構造単位は、シンジオタクチック、アイソタクチック及び/又はアタクチック形態で存在していてもよい。
スチレンブタジエンゴム(SBR)はスチレンとブタジエンの共重合体であり、ランダム共重合体又はブロック共重合体として存在することができる。具体的には、E-SBR(すなわち、乳化重合により得られるSBR)、L-SBR(すなわち、溶液中でアニオン重合により得られるSBR)等が挙げられる。
アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)は、典型的には、アクリロニトリルとブタジエンとの統計的共重合体であり、様々な量のシス-1,4-、トランス-1,4-及び1,2-ブタジエンとアクリロニトリルの構造単位を含み得る。当業者は、これらの構造単位の適切な分布を得るために、乳化共重合における重合条件、例えば、モノマー比、反応時間、反応温度、乳化剤、促進剤(例えば、チウラム、ジチオカルバメート、スルホンアミド、ベンゾチアゾールジスルフィド)及び連鎖停止剤(ジメチルジチオカルバメート及びジエチルヒドロキシルアミンなど)の使用をどのように調整するかを知っている。NBRは、1500g/mol~1500kg/mol、例えば3000g/mol~1000kg/mol、又は5000g/mol~500kg/molの広い範囲の数平均分子量Mを有することができる。アクリロニトリル含量は、モノマー単位の合計量に対して10モル%~75モル%、好ましくは15~60モル%の範囲であり得る。NBRは、油、燃料及び他の非極性化学薬品に対して耐性を有し、したがって、燃料及びオイルを取り扱うホース、シール、グロメット、及び自己密封式燃料タンク、保護グローブ、履物、スポンジ、膨張発泡体、マット、及び航空用途において一般的に適用されている。NBRと他のゴム、例えばEPDM又は熱可塑性ポリマー、例えばPVCとの混合物も使用することができる。
水素化ニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)は、コバルト-、ロジウム-、ルテニウム-、イリジウム-、又はパラジウム系システムなどの水素化触媒の存在下でのNBRの水素化によって得ることができる。
本発明の別の実施形態では、カルボキシル化NBR(XNBR)を使用することができ、これは、ブタジエン及びアクリロニトリルと、少量(例えば、モノマーの総量に対して10モル%未満、好ましくは5モル%未満)のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合によって得ることができる。XNBRは、以下に記載される架橋方法に加えて、又はその代わりに、金属塩、好ましくは多価金属塩、例えばカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、ジルコニウム塩、又はアルミニウム塩を添加することによって架橋することができる。
イソプレンゴム(IR)とも呼ばれるポリイソプレンは、イソプレンのアニオン重合又はチーグラー・ナッタ重合によって合成することができ、シス-1,4-、トランス-1,4-、1,2-、及び3,4-イソプレン構造単位を含むことができる。当業者は、この基礎単位の適切なモル分布を得るために、反応条件を調整する方法を知っている。
ブチルゴムとも呼ばれるイソブテン-イソプレンゴム(IIR)は、典型的には、三塩化アルミニウム又は塩化ジアルキルアルミニウムなどの触媒の存在下で、イソブテン及びイソプレンモノマー単位から出発するカチオン重合によって合成される。塩素化IIR(CIIR)又は臭素化IIR(BIIR)などのハロゲン化IIRは、IIRの後重合修飾、例えば、塩素を使用する塩素化又は臭素を使用する臭素化によって適切に得ることができ、これは、典型的には、光の排除下及び40~60℃の範囲の温度下で行われる。ハロゲン化IIRのハロゲン含有量は、ハロゲン化IIRの総重量を基準として、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは1.0~2.5重量%の範囲である。
クロロプレンゴム(CR)としても示されるポリクロロプレンは、クロロプレン(2-クロロブタジエン)のラジカル乳化重合によって製造することができる。このポリマーは、重合条件に依存して、様々な量のトランス-1,4-クロロプレン及び1,2-クロロプレン単位を主に含むことができ、これは、当業者によって適切に適合され得る。以下に記載する架橋方法に加えて、又はその代わりに、CRは、任意に金属酸化物若しくは水酸化物、好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、又はそれらの組み合わせのような酸受容体の存在下で、塩酸の噴出に起因してより高い温度で架橋することができる。この酸受容体は、既に重合中に、又はエラストマー前駆体とエラストマー組成物の残りの化合物との混合中に、エラストマーに導入されてもよい。
アクリルゴム(ACM)は、エマルジョン又は懸濁ラジカル重合によって合成することができる。典型的なモノマーは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐基を好ましくは含むアクリル酸エステルモノマーを含む。適切なACMは、例えば、Noxtite(登録商標)ACM又はNipol(登録商標)ARの商品名で市販されている。
エピクロロヒドリンゴムは、典型的にはトリアルキルアルミニウムのような触媒の存在下で、任意にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びアリルグリシジルエーテルを含む群から選択されるモノマーをさらに含むエピクロロヒドリンの開環重合によって得ることができる。
シリコーンゴムは、典型的には、ポリ(ジオルガニル)シロキサンであり、例えば、ジオルガニルジハロゲニドシロキサンの加水分解-縮合によって形成することができる。オルガニル基は、アルキル基、アリール基、及びアルケニル基を含む群から選択することができる。
ポリウレタンゴムは、イソシアネート(すなわち、ジイソシアネート及びポリイソシアネート)とアルコール(すなわち、ジオール、トリオール、ポリオール)との反応から形成されるウレタン構造基礎単位を含む。
ポリスルフィドゴムは、ジハロゲン化物(X-R-X)とポリスルフィドナトリウム(Na-S-Na、x≧2)との重縮合反応から形成することができる。代表的なものには、Thiokol(登録商標) A、Thiokol(登録商標) FA、Thiokol(登録商標) STなどがある。
本発明の意味における熱可塑性ゴム(TPR又はTPE)は、熱可塑性材料の弾性特性、及び加工特性を示す材料である。TPRは、スチレン-ジエンブロックコポリマーなどのブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレンゴム、ポリエステルTPE、ポリウレタンTPE又はポリアミドTPE、EPDMとPP及び/又はPEとの混合物などのエラストマーと非エラストマーとの混合物、NRとポリオレフィンとの混合物、又はIIRとポリオレフィンとの混合物、並びにイオノマーポリマー、例えばスルホン化及びマレイン化EPDMの亜鉛塩を含む群から選択することができる。
本発明の意味における「フッ化炭素ゴム」は、低いTg値、例えば、0℃未満、好ましくは-5℃未満、より好ましくは-10℃未満、最も好ましくは-15℃未満のTg値を有し、ゴム様弾性を示すフッ素含有ポリマーである(IUPAC、Compendium of Chemical Terminology、2nd Ed.(「ゴールドブック」)、1997年、「エラストマー」を参照されたい)。フルオロカーボンゴムは、ASTM D1418-「Standard Practice for Rubber and Rubber Latices-Nomenclature」に従って分類することができる。ASTM D1418は、以下の3つのクラスのフルオロカーボンゴムを規定している:
FKMフルオロカーボンゴム:フッ化ビニリデンをコモノマーとして用い、かつポリマー鎖中に置換基としてのフルオロ、アルキル、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシ基を有し、硬化部位(キュアサイト)モノマーを含むか又は含まないポリメチレンタイプのフルオロゴム;
FFKMフルオロカーボンゴム:ポリマー鎖上にフルオロ、ペルフルオロアルキル、又はペルフルオロアルコキシ基のいずれかのすべての置換基を有するポリメチレンタイプのペルフルオロゴム;
FEPMフルオロカーボンゴム:1つ又は複数のモノマーとしてのアルキル基、パーフルオロアルキル基、及び/又はパーフルオロアルコキシ基を含有し、(反応性ペンダント基を有する)硬化部位(キュアサイト)モノマーを含むか又は含まないポリメチレンタイプのフルオロゴム。
最も好ましくは、架橋性フルオロカーボンゴムは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレンの共重合体である。
架橋性フッ素含有ポリマーの製造方法は、当技術分野において公知である。あるいは、架橋性フッ素含有ポリマーが市販されている。市販のフルオロカーボンゴムの例は、デュポン社のViton(登録商標)、Viton(登録商標)Extreme(登録商標)、及びKalrez(登録商標)フルオロカーボンゴム、3M社のDyneon(登録商標)フルオロカーボンゴム、ダイキン工業社のDAI-EL(登録商標)フルオロカーボンゴム、Solvay S.AのTechnoflon(登録商標)、及び旭硝子社のAflas(登録商標)である。当業者は、その必要性に応じて、これらのフルオロカーボンゴムブランドのうちの適切なグレードを選択する。
本発明による好ましいゴムは、NBR、EPDM、NR、SBR、CIIR、BIIR及びCRであり、ここで、NBR及びEPDMが特に好ましい。
エラストマー組成物のさらなる成分
本発明の態様、すなわち、本発明の使用、本発明の方法、本発明の生成物、及び本発明の物品の各々において、エラストマー組成物は、顔料、染料、ワックス、潤滑剤、酸化-及び/又はUV-安定剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、相溶化剤、シラン、酸化防止剤、加工助剤、さらなるフィラー、及びそれらの混合物などの添加剤をさらに含んでもよい。
一実施形態によると、エラストマー組成物は、さらなるフィラーを含む。好ましくは、さらなるフィラーは、カーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ナノフィラー、グラファイト、クレー、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、二酸化チタン、珪灰石、及びそれらの混合物、好ましくは、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、及び/又は珪灰石を含む群から選択される。好ましくは、さらなるフィラーは、エラストマー組成物中に、多孔質フィラーとの体積比が10:90~90:10、好ましくは25:75~75:25、より好ましくは40:60~60:40の範囲で、例えば50:50で存在する。
本発明の意味において、用語「ナノフィラー」は、エラストマー樹脂中の本質的に不溶性の材料に関し、ここで、この材料は、0.5μm未満の体積メジアン粒径d50を有する。
好ましい実施形態では、エラストマー組成物は、架橋剤及び/又は架橋助剤をさらに含み、この架橋剤は、好ましくは、過酸化物架橋剤及び/又は硫黄系架橋剤からなる群から選択される。
架橋剤が過酸化物である場合、架橋剤は、ペルエステル、ペルケタール、ハイドロペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、及びケトンペルオキシドを含む非常に広い範囲から選択することができる。このような過酸化物の例としては、t-ブチルペルオクタノエート、ペルベンゾエート、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ビス-(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス-(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン、又はα,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、1,1-ビス(tert-ヘキシルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシマレエート又はtert-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネートなどが含まれる。必要に応じて、2種類又はそれを超える過酸化物の混合物を使用することができる。
好ましくは、過酸化物架橋剤は、架橋助剤と組み合わせて使用することができる。適切な助剤の例は、1,2-ポリブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、m-フェニレンジアミン-ビス-マレイミド又はトリアリルシアヌレートである。
硫黄系架橋剤は、元素硫黄又は硫黄含有システムを使用することができ、チオ尿素、例えば、エチレンチオ尿素、N,N-ジブチルチオ尿素、N,N-ジエチルチオ尿素など;チウラムモノスルフィド及びジスルフィド、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTMS)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTDS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTDS)、テトラエチルチウラムモノスルフィド(TETMS)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド(DPTH)など;ベンゾチアゾールスルフェンアミド、例えば、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)など;2-メルカプトイミダゾリン、N,N-ジフェニルグアナジン、N,N-ジ-(2-メチルフェニル)グアナジン;チアゾール促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛など;ジチオカルバメート促進剤、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジエチルジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛など;を使用することができる。必要に応じて、2種類又はそれを超える硫黄系架橋剤の混合物を使用することができる。
あるいは、架橋剤は、ビスフェノール系架橋剤、又はアミン系若しくはジアミン系架橋剤から選択することができる。適切なアミン架橋剤の例は、ブチルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、トリメチルアミン、又はジエチルシクロヘキシルアミンである。適切なジアミン架橋剤の例は、ビス-シンナミリデンヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、ビス-ペルオキシカルバメート、例えば、ヘキサメチレン-N,N’-ビス(tert-ブチルペルオキシカルバメート)又はメチレンビス-4-シクロヘキシル-N,N’-(tert-ブチルペルオキシカルバメート)、ピペラジン、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチルジアミン、又はジエチレントリアミンである。
適切なビスフェノール架橋剤の例は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、置換ハイドロキノン、4,4’-二置換ビスフェノール、又はヘキサフルオロ-ビスフェノールAである。
架橋剤及び架橋助剤は、架橋工程中にエラストマー前駆体と反応し、したがって、エラストマー組成物中にエラストマーの一部を形成し得ることを理解されたい。さらに、エラストマー組成物は、架橋剤及び/又は架橋助剤の反応生成物を含み得る。
本発明の使用
本発明の第1の態様によれば、架橋エラストマー組成物のガス透過性を低減するための多孔質フィラーの使用が提供される。多孔質フィラーは、表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラーを含み、ここで、この表面反応炭酸カルシウムは、水性媒体中の天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。
多孔質フィラー及びエラストマー組成物については、上述したとおりであることが理解される。
本発明において、多孔質フィラーは、架橋前にエラストマー組成物に組み込むことが好ましい。例えば、多孔質フィラーは、以下に記載するような方法によってエラストマー組成物に組み込むことができる。したがって、多孔質フィラーは、エラストマー組成物中に均一に分布していることが好ましい。このため、多孔質フィラーは、上述したような表面処理層を含むことが好ましい場合がある。多孔質フィラーが、不飽和炭素部分を有する表面処理剤を含む表面処理組成物から形成された表面処理層を含む場合、架橋時にこの炭素部分は、エラストマー前駆体と同様に反応することができ、したがって、多孔質フィラーはエラストマー前駆体と架橋して、エラストマー組成物を形成することができる。エラストマー内の多孔質フィラーの架橋は、エラストマー組成物のガス透過性及び機械的特性に良い影響を与えることができる。
しかしながら、フィラーが表面処理層を含むことは、本発明の必要条件ではない。本発明のエラストマー前駆体などの、ポリマー中のコーティングされていない多孔質フィラーの均一な分布のための方法は、例えば、国際公開第2015/097031 A1号に記載されている。
本発明者らは、驚くべきことに、エラストマー組成物に組み込まれる本発明による多孔質フィラーが、このエラストマー組成物のガス透過性を低減することを見出した。
エラストマー組成物のガス透過性の「低減」は、本発明の多孔質フィラーを含むエラストマー組成物のガス透過性が、多孔質フィラーを等容量のカーボンブラックで置き換えた同じエラストマー組成物のガス透過性よりも低いということをもって示すか、又は試験することができ、ここで、カーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有する。本発明の目的のために、ガス透過性は、NF ISO 2782-1:2018に準拠して測定される空気透過性によって表される。本発明の多孔質フィラーを含むエラストマー組成物は、低減したガス透過性を有し、これは、別法として、いかなるフィラーも含まない別の同一の組成物との比較によって示すことができることを理解されたい。
「同じエラストマー組成物」とは、本発明の多孔質フィラーの代わりに等容量のカーボンブラックを含むエラストマー組成物が、その他はすべて本発明のエラストマー組成物と同じ方法で、すなわち、その製造のための同じ方法工程に従い、かつ置換された多孔質フィラー以外の同じ残りの化合物を使用して製造されることを意味する。しかしながら、多孔質フィラーを完全に置き換える必要はないことを理解されたい。例えば、本発明の組成物中の多孔質フィラーの合計量に基づいて、多孔質フィラーの80重量%、60重量%、50重量%、40重量%又は20重量%のみが、等容量のカーボンブラックで置き換えられていればよい。したがって、多孔質フィラー及びカーボンブラックは、10:90~90:10、好ましくは25:75~75:25、より好ましくは40:60~60:40、例えば50:50の範囲の体積比で存在してもよい。
用語「等容量」は、多孔質フィラーの量が、置換される多孔質フィラーと同じ容積のカーボンブラックの量によって置換され、それによって、両方のエラストマー組成物の最終容積が同一であるようなっていることを示す。
カーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有することが理解される。このようなカーボンブラックは、例えば「N550」の名称で市販されている。好ましい実施形態では、本発明のエラストマー組成物のガス透過性は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックN550によって置き換えられている同じエラストマー組成物と比較して低下している。
本発明の好ましい実施形態では、エラストマー組成物の空気透過率は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックで置き換えられている同じエラストマー組成物と比較して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%減少しており、ここで、このカーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有する。
いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、その固体材料が気体に対して本質的に不透過性である多孔質フィラーの多孔質構造は、エラストマー組成物を通って突出する気体のための道をそれぞれ長くし、この気体に対してより曲がりくねった道を作り出すと考えられる。低い多孔性を有するフィラーと比較して、多孔質フィラーは、典型的にはその細孔内により多量の気体を受け入れることができるので、これは特に驚くべきことである。
さらに、本発明の使用は、好ましくは同時に、Shore A硬度、引裂抵抗性、引張強度又は耐摩耗性などの機械的特性の保持又は改善を可能にする。したがって、好ましくは、エラストマー組成物のShore A硬度は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックで置き換えられている同一のエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも8%、最も好ましくは少なくとも10%増加し、ここで、このカーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有する。Shore A硬度は、NF ISO 7619-1:2010に準拠して測定される。
好ましくは、エラストマー組成物の引裂抵抗性は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックで置き換えられている同一のエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%増加し、ここで、このカーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有する。引裂抵抗性は、NF ISO 34-2:2015に準拠して測定される。
好ましくは、エラストマー組成物の引張強度は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックで置き換えられている同じエラストマー組成物と比較して、本質的に維持又は増加され、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%増加し、ここで、このカーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有する。引張強度は、NF ISO 37:2017に準拠して測定される。
好ましくは、エラストマー組成物の摩耗は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックで置き換えられている同一のエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%減少し、ここで、このカーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有する。摩耗は、NF ISO 4649:2017に準拠して測定される。
驚くべきことに、本発明による多孔質フィラーの使用は、エラストマー組成物のガス透過性の低減を可能にしながら、同時に、Shore A硬度、引裂抵抗性又は引張弾性率などの機械的特性は、最小限にしか影響されないか又は改善される。これとは反対に、ガス透過性を低下させるための従来のフィラーは、Shore A硬度、引張強度又は耐摩耗性などのエラストマー組成物の機械的特性を弱める傾向がある。
好ましい実施形態では、多孔質フィラーは、エラストマー組成物中のエラストマー前駆体の総重量に基づいて、100部当たり5~175部(phr)、好ましくは100部当たり10~160部、より好ましくは100部当たり30~150部の範囲の量でエラストマー組成物中に含有される。加えて、又は代わりに、多孔質フィラーは、エラストマー組成物中に、エラストマー組成物の総重量に基づいて、100部当たり5~250部(phr)、好ましくは100部当たり15~200部の範囲の量で含有される。
本発明の方法
本発明の第2の態様によれば、ガス透過性が低減したエラストマー組成物の調製方法であって、以下の工程を含む、製造方法が提供される:
(a)架橋性ポリマーを提供すること、
(b)表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラー材料を含む多孔質フィラーを提供すること、
ここで、この表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、この二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される、
(c)任意に、好ましくは、カーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、ナノフィラー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるさらなるフィラーを提供すること、
(d)任意の順序で、工程(a)の架橋性ポリマー、工程(b)の多孔質フィラー、及び任意に工程(c)の第2のフィラーを混合して混合物を形成すること、及び
(e)工程(d)で得られた混合物を架橋して、低減したガス透過性を有するエラストマー組成物を形成すること。
本発明の方法の工程(a)によれば、架橋性ポリマーが提供される。架橋性ポリマーは、任意の種類のエラストマー前駆体であり、これは、上述したようなエラストマーを製造するために使用され得る。
本発明の方法の工程(b)によれば、表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラー材料を含む多孔質フィラーが、上述したように提供される。
多孔質フィラーは、フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層を含んでいてもよく、この表面処理層は、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とフィラー材料とを接触させることによって形成され、かつ
ここで、この表面処理組成物は、好ましくは、上述した、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される表面処理剤を含み、かつ/又はこの表面処理組成物は、以下からなる群から選択される上述した少なくとも1つの飽和表面処理剤を含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
多孔質フィラーは、エラストマー組成物中のエラストマーの総重量に基づいて、100部当たり5~175部(phr)、好ましくは100部当たり10~160部、より好ましくは100部当たり30~150部の範囲の量でエラストマー組成物に添加することができる。
本発明の方法の工程(c)によれば、任意に、さらなるフィラーが提供される。なお、さらなるフィラーは、当業者に一般的に知られている任意の種類のフィラーであってよい。好ましくは、さらなるフィラーは、カーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、シラン化タルク、クレー、カオリン、ナノフィラー及びそれらの混合物からなる群から選択される。
好ましい実施形態によれば、多孔質フィラーのさらなるフィラーに対する体積比は、10:90~90:10、好ましくは25:75~75:25、及びより好ましくは40:60~60:40の範囲である。
本発明による方法の工程(d)に従い、工程(a)の架橋性ポリマー、工程(b)の多孔質フィラー、及び任意に工程(c)の第2のフィラーを任意の順序で混合して混合物を形成する。
混合工程(d)は、当業者に公知の任意の手段によって実施することができ、この手段にはブレンド、押出、混練、及び高速混合を含むが、これらに限定されない。
好ましくは、混合工程(d)は、内部ミキサー及び/又は外部ミキサー中で行われ、ここで、外部ミキサーは、好ましくはシリンダーミキサーである。
混合工程(d)の間に、当業者に周知である1つ又は複数の添加剤を、任意に、上述したように混合物に添加することができる。このような添加剤は、限定されるものではないが、顔料、染料、ワックス、潤滑剤、酸化-及び/又はUV-安定剤、可塑剤、相溶化剤、シラン、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、加工助剤及び/又はこれらの混合物を含む。好ましい顔料は、白色顔料としての二酸化チタン、及び青色、緑色及び赤色顔料などの着色顔料である。
本発明による方法の工程(e)によれば、工程(d)の混合物は架橋されてエラストマー組成物を形成する。架橋工程は、当業者に公知の任意の方法により行うことができる。
好ましくは、架橋工程(e)は、架橋剤及び架橋助剤の添加及びその後の熱架橋によって行われる。混合物は、架橋剤が架橋性ポリマーと反応するのを可能にするのに十分に高い温度に、例えば、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも180℃に加熱される。任意に、熱架橋工程は、圧縮成形と組み合わせて実施されてもよい。圧縮成形の間に圧力が加えられ、混合物は型の所定の形状になって、混合物が型のすべての領域と接触するようになり、かつ混合物が型内で架橋して、エラストマー組成物が所望の形状を保持するようになっている。好ましくは、圧縮成形は、少なくとも10MPa(100バール)、好ましくは少なくとも15MPa(150バール)、より好ましくは少なくとも20MPa(200バール)の圧力で行われる。
適切な架橋剤は、上記で言及した架橋剤である。
本発明の別の好ましい実施形態では、架橋は、紫外光放射、電子ビーム放射、核放射、ガンマ線放射、マイクロ波放射及び/又は超音波放射などのエネルギー強度放射線によって行われる。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、さらに、フィラー材料と、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とを接触させることによって、多孔質フィラーの少なくとも一部に表面処理層を形成する工程(b1)を含む。工程(b1)は、上述した混合工程(d)の前に実施することができる。あるいは、工程(b1)は、混合工程(d)の間に、多孔質フィラー及び表面処理組成物を、工程(a)の架橋性ポリマー、任意に工程(c)の第2のフィラー、及び任意に1つ又は複数の上述した添加剤と、任意の順序で工程(d)において混合することによって実施することができる。この実施形態では、表面処理層は、混合工程(d)の間にその場で形成される。
本発明のエラストマー組成物
本発明の第3の態様は、架橋性ポリマーと、表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択される多孔質フィラーと、好ましくはカーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、ナノフィラー、及びそれらの混合物からなる群から選択されるさらなるフィラーとを含む組成物から形成される低減したガス透過性を有するエラストマー組成物に関する。
架橋性ポリマー、多孔質フィラー及びさらなるフィラーについては、上述したとおりである。特に、多孔質フィラーは、上述したような表面処理層を含むことができる。
本態様のエラストマー組成物は、上記で定義した化合物を含む組成物から形成されることを理解されたい。したがって、本態様のエラストマー組成物は、さらなる化合物の存在下で組成物中の架橋性ポリマーを架橋することによって得られる。
本発明のエラストマー組成物は、上述したような方法によって得ることができる。
好ましい実施形態において、多孔質フィラーのさらなるフィラーに対する体積比は、10:90~90:10、好ましくは25:75~75:25、より好ましくは40:60~60:40、例えば50:50の範囲である。驚くべきことに、出願人は、さらなるフィラーのような従来のフィラーの部分的な置換は、エラストマー組成物のガス透過性を低減することができるが、その一方、同時に、機械的特性は影響を受けないままであるか、又は改善されることを見出した。
別の好ましい実施形態によれば、多孔質フィラーは、フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層をさらに含み、この表面処理層は、フィラー材料と、フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物とを接触させることによって形成され、かつ
この表面処理組成物は、好ましくは、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される表面処理剤を含み、
より好ましくは、下記からなる群から選択される表面処理剤を含む:
(a)モノ-又はジ-置換コハク酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ストロンチウム、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び/又はアンモニウム塩、ここで、前記アミン塩は直鎖状又は環状であり、一方又は両方の酸基が塩の形態であることができ、好ましくは両方の酸基が塩の形態である;不飽和脂肪酸、好ましくはオレイン酸及び/又はリノール酸;リン酸の不飽和エステル;アビエチン酸;及び/又はこれらの混合物であり、好ましくは、完全に中和された表面処理剤;及び/又は
(b)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、以下を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩:
(i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
(ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
(iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
(iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
(v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
さらに別の実施形態によれば、表面処理組成物は、下記からなる群から選択される少なくとも1つの飽和表面処理剤を含む:
(I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
(II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
(III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
(IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
(V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
(VI)(I)~(V)による材料の混合物。
本発明者らは、驚くべきことに、表面処理層の有益な特性が、飽和表面処理剤、及び/又は飽和表面処理剤と不飽和表面処理剤との組み合わせによっても得ることができることを見出した。
さらに別の実施形態によれば、多孔質フィラーは、エラストマー組成物中の架橋性ポリマーの総重量に基づいて、100部当たり5~175部(phr)、好ましくは10~160部、より好ましくは30~150部の範囲の量でエラストマー組成物中に含有される。
好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物は、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、イソブテン-イソプレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、ポリスルフィドゴム、熱可塑性ゴム及びそれらの混合物などの天然又は合成ゴムから選択される架橋性ポリマーから形成されるエラストマーを含む。
別の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物は、顔料、染料、ワックス、潤滑剤、酸化-及び/又はUV-安定剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、相溶化剤、シラン、酸化防止剤、加工助剤及びそれらの混合物などの添加剤をさらに含む。
さらに別の好ましい実施形態によれば、エラストマー組成物のShore A硬度は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックで置き換えられている同じエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも8%増加し、かつ/又は空気透過率は、多孔質フィラーが等容量のカーボンブラックで置き換えられている同じエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%減少し、ここで、このカーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定される統計的厚さ表面積(STSA)39±5m/gを有し、Shore A硬度は、NF ISO 7619-1:2010に準拠して測定され、かつ空気透過率は、NF ISO 2782-1:2018に準拠して測定される。
一実施形態によれば、エラストマー組成物のShore A硬度は、いかなるフィラーも含まない同じエラストマー組成物と比較して、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも8%増加し、かつ/又は空気透過率は、いかなるフィラーも含まない他は同一の組成物と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%減少し、及び/又は透気度は、いかなる充填剤も含まない他は同一の組成物と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%減少する。
本発明の物品
本発明の第4の態様によれば、本発明のエラストマー組成物を含む物品が提供される。この物品は、好ましくは、チューブレス物品、メンブラン、シーリング、O-リング、グローブ、パイプ、ケーブル、電気コネクター、オイルホース、ボール(例えば、サッカーボール、バスケットボール、野球のボール、ゴルフボール又はラグビーボール)及び靴底を含む群から選択される。
測定方法
数平均分子量Mは、ISO 16014-1:2019及びISO 16014-2/2019に従って、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
ブルックフィールド粘度は、ブルックフィールドRV-スピンドルセットの適切なスピンドルを使用して、100rpmで24℃±3℃でブルックフィールドDV-III Ultra粘度計によって測定され、mPa・sで規定される。スピンドルが試料に挿入されると、100rpmの一定の回転速度で測定が開始される。報告されているブルックフィールド粘度値は、測定開始から60秒後に表示される値である。当業者は、その技術的知識に基づいて、測定される粘度範囲に適したBrookfield RV-spindleセットからスピンドルを選択する。例えば、粘度範囲が200~800mPa・sでは、スピンドル番号3を使用することができ、粘度範囲が400~1600mPa・sではスピンドル番号4を使用することができ、粘度範囲が800~3200mPa・sではスピンドル番号5を使用することができ、粘度範囲が1000~2000000mPa・sではスピンドル番号6を使用することができ、粘度範囲が4000~8000000mPa・sではスピンドル番号7を使用することができる。
酸価はASTM D974-14に従って測定される。
比表面積(m/g)は、当業者に周知のBET法(吸着ガスとして窒素を使用)を使用して決定される(ISO 9277:2010)。次いで、フィラー材料の総表面積(m)は、この比表面積と対応する試料の質量(g)との乗算によって得られる。
ヨウ素価はDIN 53241/1に従って測定される。
体積メジアン粒径d50は、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを使用して評価する。Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを使用して測定されたd50又はd98値は、粒子の50体積%又は98体積%が、それぞれ、この値より小さい直径を有するような直径の値を示す。粒子屈折率1.57、吸収係数0.005として、測定により得られた生データを、Mie理論を用いて解析する。
重量メジアン粒径は、重量場における沈降挙動の分析である沈降法によって決定される。測定は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(登録商標)5100又は5120を用いて行う。この方法及び器具は、当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。0.1重量%のNaの水溶液中で測定を行う。高速撹拌機を用いて試料を分散し、かつ超音波処理した。
これらの方法及び器具は、当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。
比細孔容積は、0.004μm(~nm)のラプラス喉部直径と等価の、水銀の最大印加圧力414MPa(60000psi)を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを使用し、水銀圧入ポロシメトリー測定法を用いて測定する。各加圧工程で使用される平衡時間は20秒である。試料材料を、分析のために、3cmの貫通度計中に密封する。データは、ソフトウェアPore-Compを使用して、水銀の圧縮、貫通度計の膨張、及び試料材料の圧縮について補正する(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,pp.1753-1764)。
積算圧入データ内に見られる全細孔容積は、214μmから約1~4μmに至るまでの圧入データを有する2つの領域に分離することができ、任意の凝集体構造間の試料の粗い充填が強く寄与していることを示している。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内細孔をも有している場合には、この領域は二峰性であり、モードの転換地点よりも細い、すなわち二峰性の変曲点よりも細い細孔内に水銀が圧入した比細孔容積をもってして、粒子内比細孔容積が定義される。これら3つの領域の総和は、粉末の合計の総細孔容積を与えるが、もともとの試料の圧縮/分布の粗い細孔末端における粉末の沈殿によって大きく左右される。
積算圧入曲線の一次導関数を取り上げることにより、必然的に細孔遮へいを含めた等価ラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。その微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間細孔領域、及び存在する場合には粒子内細孔領域を明らかに示す。粒子内細孔径範囲がわかれば、合計細孔容積から残りの粒子間細孔容積及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量当たりの細孔容積として(比細孔容積として)、内部細孔の所望の細孔容積だけを得ることが可能である。当然のことながら同じ差し引きの原理は、興味ある任意のその他の細孔径領域を分離する場合にも当てはまる。
エラストマー試料の分析:
エラストマー組成物に関するすべての試験について、ゴム試料の成形と試験との間に最低16時間を保った。試料は制御された環境(温度:23±2℃、相対湿度(RH):50±5%)に保った。
耐引裂性
耐引裂性(DELFT)は、表1に概説したパラメータを使用して、Zwick Z005又はZ100装置で、NF ISO 34-2:2015に従って測定した。
Figure 2023535318000001
Shore A硬度
硬度(Shore A)は、表2に概説したパラメータを用いてBareiss Digitest II装置で、NF ISO 7619-1に従って測定した。
Figure 2023535318000002
ガス透過性
NF ISO 2782-1によって示されるように、ゴムフィルムのガス透過性は、ある特定のガスが貫通する速度として定義することができる。透過性は、24時間当たりの、ゴム1平方メートル当たりのガスのリットルで表すことができる。試験は、密閉チャンバー内に丸いゴム試料を導入することによって行った。圧力はチャンバーの両側で測定し、絶対圧力4barの空気をチャンバーの片側に導入した。透過性は、空気がゴムを通過するのに必要な時間によって決定した。試験は、空気(79%窒素及び21%酸素ガス)を使用して、60℃及び50%相対湿度で行った。各試験の前に、試料を30分間加熱した。すべての試験は、下部チャンバー内の圧力が少なくとも0.3バール増加するまで保持した。空気透過率は(mPa-1-1)で与えられる。
引張試験及びモジュラスM50
M50測定を含む引張試験は、Zwick Roell Z005でNF ISO 37:2017-11に従って、表3に概説したパラメータを使用して測定した。
Figure 2023535318000003
材料
処理剤A
処理剤Aは、RICON(登録商標)130MA8の商品名で市販されている、無水マレイン酸で官能化した低分子量ポリブタジエン(M=3100Da、ブルックフィールド粘度:6500cps±3500(25℃)、酸価:40.1~51.5meq KOH/g、全酸:7~9重量%;微細構造(ブタジエンのモル%):20~35%の1,2-ビニル官能基)である。
粉末1
粉末1は、XRD分析により測定して、80%ヒドロキシアパタイト及び20%カルサイトから構成される表面反応炭酸カルシウムであり(BET=85m/g、d50(vol)=6.1μm、d98(vol)=13.8μm、総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.43μm=1.28cm/g)、以下の手法で調製した:
沈降によって測定して、2μm未満が90重量%の粒径分布を有するノルウェーのHustadmarmorからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分が得られるようにして調整することによって、混合容器中で350リットルの天然粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製した。
懸濁液を混合しながら、62kgの30%濃リン酸を、70℃の温度で10分間にわたってこの懸濁液に添加した。最後に、リン酸を添加した後、スラリーをさらに5分間撹拌し、その後容器から取り出して乾燥させた。
粉末2
粉末2は、表面反応炭酸カルシウムであり(BET=139m/g、d50(vol)=6.1μm、d98(vol)=14.2μm、総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.31μm=1.00cm/g)、以下の方法で調製した:
沈降によって測定して、2μm未満が90重量%の粒径分布を有するノルウェーのHustadmarmorからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分が得られるようにして調整することによって、混合容器中で350リットルの天然粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製した。
懸濁液を混合しながら、62kgの30%濃リン酸を、70℃の温度で10分間にわたってこの懸濁液に添加した。さらに、リン酸添加の間、1.9kgのクエン酸をスラリーに急速に(約30秒)添加した。最後に、リン酸を添加した後、スラリーをさらに5分間撹拌し、その後容器から取り出して、乾燥させた。
粉末3
粉末3は、粉末1を5重量%の処理剤Aで表面処理して調製したものである。この処理を行うために、まず、処理剤(35g)を脱イオン水300mLに分散させ、60℃に加熱し、NaOH溶液でpH10に中和した。
粉末1の懸濁液(6L脱イオン水中700g)を10LのESCOバッチ反応器中で調製し、85℃に加熱した。Ca(OH)でpHを10に調整し、次いで、激しく撹拌しながら中和された処理剤を添加した。85℃で45分間混合を続け、次いで懸濁液をブフナー漏斗でろ過し、オーブン(110℃)中で一晩乾燥させた。次いで、乾燥したフィルターケーキを、Retsch SR300ロータービーターミルを使用して解凝集させた(総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.43μm=1.06cm/g)。
粉末4
粉末4は、粉末1を7.5重量%の処理剤Aで表面処理して調製したものである。この処理を行うために、まず、処理剤(37.5g)を脱イオン水200mLに分散させ、60℃に加熱し、NaOH溶液でpH10に中和した。
粉末1の懸濁液(6L脱イオン水中500g)を10LのESCOバッチ反応器中で調製し、85℃に加熱した。Ca(OH)でpHを10に調整し、次いで、中和された処理剤を激しく撹拌しながら添加した。85℃で45分間混合を続け、次いで懸濁液をブフナー漏斗でろ過し、オーブン(110℃)中で一晩乾燥させた。次いで、乾燥したフィルターケーキを、Retsch SR300ロータービーターミルを使用して解凝集させた(総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.43μm=1.07cm/g)。
粉末5
粉末5は、粉末2を5重量%の処理剤Aで表面処理して調製したものである。この処理を行うために、まず、処理剤(35g)を脱イオン水300mLに分散させ、60℃に加熱し、NaOH溶液でpH10に中和した。
粉末2の懸濁液(7L脱イオン水中700g)を10LのESCOバッチ反応器中で調製し、85℃に加熱した。Ca(OH)でpHを10に調整し、次いで、中和された処理剤を激しく撹拌しながら添加した。85℃で45分間混合を続け、次いで懸濁液をブフナー漏斗でろ過し、オーブン(110℃)中で一晩乾燥させた。次いで、乾燥したフィルターケーキを、Retsch SR300ロータービーターミルを使用して解凝集させた(総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.27μm=0.85cm/g)。
粉末6
粉末6は、粉末2をDyno-mill粉砕機で粉砕し、次いで5重量%の処理剤Aで表面処理して調製した。この処理を行うために、この粉末800gを高速ミキサー(Somakon MP-LB Mixer、Somakon Verfahrenstechnik、ドイツ)に入れ、5分間撹拌することによって調整した(700rpm、120℃)。その後、5重量%の処理剤A(40g)を混合物に添加した。次いで、撹拌及び加熱をさらに15分間続けた(120℃、700rpm)。その後、混合物を放冷し、自由流動性粉末を回収した(粉末6、BET比表面積=101.2m/g、d50(vol)=5.9μm;d98(vol)=13μm、総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.04μm=0.323cm/g)。
粉末7
粉末7は、沈降ハイドロマグネサイト(BET比表面積=46.7m/g、d50(vol)=8.75μm;d98(vol)=29μm、総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.53μ=1.188cm/g)である。
粉末8
粉末8は、粉末7を5重量%の処理剤Aで表面処理して調製したものである。この処理を行うために、まず、処理剤(35g)を脱イオン水400mLに分散させ、60℃に加熱し、NaOH溶液でpH10に中和した。
粉末7の懸濁液(6L脱イオン水中700g)を10LのESCOバッチ反応器中で調製し、85℃に加熱した。Ca(OH)でpHを10に調整し、次いで、中和された処理剤を激しく撹拌しながら添加した。85℃で45分間混合を続け、次いで懸濁液をブフナー漏斗でろ過し、オーブン(110℃)中で一晩乾燥させた。次いで、乾燥したフィルターケーキを、Retsch SR300ロータービーターミルを使用して解凝集させた(総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.48μm=1.082cm/g)。
粉末9
粉末9を粉末7の湿式粉砕によって製造した(BET比表面積=46.5m/g、d50(vol)=7.9μm;d98(vol)=27μm)。
粉末10
粉末10は、未処理の沈降ハイドロマグネサイト(BET比表面積=42.7m/g、d50(vol)=11.6μm、d98(vol)=47μm、総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.31μm=0.507cm/g)であり、国際公開第2011/054831 A1号に記載されている方法によって得ることができる。
粉末11
粉末11は、未処理の沈降ハイドロマグネサイト(BET比表面積=70.1m/g、d50(vol)=6.3μm、d98(vol)=70μm、総粒子内圧入比細孔容積0.004~0.43μm=0.983cm/g)である。
粉末CE1(比較)
粉末CE1は、Orion engineered Carbons GmbHから得られたN550カーボンブラックフィラーである(Purex(登録商標)HS 45、ヨウ素価:43±5mg/g;STSA表面積(ASTM D 6556に従う):39±5m/g)。
粉末CE2(比較)
粉末CE2は、表面処理した超微粉砕炭酸カルシウム(BET比表面積:44.1m/g)である。
エラストマーの配合
実施例シリーズ1:EPDMエラストマー組成物
工程1-内部混合
第1の工程として、バンバリーローターを搭載した300cm容量のHAAKE内部ミキサーで各バッチを混合した。温度は、混合の開始時に40℃に設定し、処理中に、組み込まれるフィラーに応じて、この温度を90℃まで上昇させた。各バッチについて、以下のプロセスを使用した(表4)。
Figure 2023535318000004
工程2-外部混合
第2の工程では、シリンダーミキサー(150×350)上で過酸化物架橋剤との混合を行った。すべてのエラストマー前駆体を、同じ時間、シリンダー速度、及びシリンダー間隔で混合した。冷却システムを25℃に設定し、金属ガイドを、エラストマー前駆体がシリンダー表面の70%を占めることができるように設定した。2回の加速の間に、シリンダーを掃除し、冷やしておく。このプロセスの詳細な手順は、以下の表5に記載されている。
Figure 2023535318000005
工程3-圧縮成形
エラストマー組成物のシートを、160又は180℃、100kgf/cmの圧力で圧縮成形することによって製造した。このようにして、小さな150×150×2mmのシートを調製した。成形時間を決定する架橋時間を、レオロジーMDR試験を通じて決定した。
EPDMエラストマー組成物
上記の方法に従って、以下の表6のエラストマー組成物を得た。すべてのエラストマー組成物は、等容量のフィラーを有していた。すべてのフィラーをカーボンブラックと50/50%体積で組み合わせた。したがって、カーボンブラック参照バッチは、100phrのN550を含有する。その他のバッチは、50phrのN550と、それらの密度に応じてわずかに変化する量のミネラルフィラーとを含有し、それによって、50phrのカーボンブラックの体積に等しい量のミネラルフィラーを有するようにした(表6に星印を付して示してある)。
Figure 2023535318000006
得られたエラストマー組成物は、以下の特性を有していた。
Figure 2023535318000007
Figure 2023535318000008
Figure 2023535318000009
実施例シリーズ2:NBRエラストマー組成物
上記の方法に従って、以下の表10のエラストマー組成物を得た。すべてのエラストマー組成物は、等容量のフィラーを有していた。すべてのフィラーをカーボンブラックと50/50%体積で組み合わせた。したがって、カーボンブラック参照バッチは、40phrのN550を含有する。その他のバッチは、20phrのN550と、それらの密度に応じてわずかに変化する量のミネラルフィラーとを含有し、それによって、20phrのカーボンブラックの体積に等しい量のミネラルフィラーを有するようにした(表10に星印を付して示してある)。
Figure 2023535318000010
得られたエラストマー組成物は、以下の特性を有していた。
Figure 2023535318000011
Figure 2023535318000012
実施例は、本発明のフィラーが、本発明のエラストマー組成物の空気透過率を低下させることができたことを示している。他のフィラーに加え、フィラーを使用しない場合であっても、また、エラストマー組成物中の(カーボンブラック)フィラーの一部を置換した場合であっても、その効果が認められる。同時に、本発明のエラストマー組成物は、本発明のフィラーを含有しないエラストマー組成物と比較して、増加した硬度を示している。したがって、本発明のフィラーの使用は、機械的特性を改善すると同時に、エラストマー組成物のガス透過性を低減することを可能にする。
実施例シリーズ3:EPDMエラストマー組成物
工程1-内部混合
第1の工程として、各バッチを2Lバンバリー内部ミキサー中で混合した。温度は、混合の開始時に40℃に設定し、処理中に、組み込まれるフィラーに応じて、この温度を150℃まで上昇させるように設定した。各バッチについて、以下のプロセスを使用した(表13)。
Figure 2023535318000013
工程2-外部混合
第2の工程のために、過酸化物架橋剤との混合をシリンダーミキサー(300×700)で行った。すべてのエラストマー前駆体を、同じ時間、シリンダー速度、及びシリンダー間隔で混合した。冷却システムを40℃に設定し、金属ガイドを、エラストマー前駆体がシリンダー表面の70%を占めることができるように設定した。このプロセスの詳細な手順は、以下の表14に記載されている。
Figure 2023535318000014
工程3-圧縮成形
エラストマー組成物のシートを、180℃及び200バールの圧力で圧縮成形することによって製造した。このようにして、小型の300×300×2mmのプレートを作製した。成形時間を決定する硬化時間を、MDRにおけるレオロジー試験を通じて決定した。T98値をプレスプレートの硬化時間とした。圧縮永久歪み試験片の作製は、圧縮成形と同じ手順で行った。使用した硬化時間は、これらの試験片の厚さがプレスプレートよりも厚いので、T98に10分を追加したものであった。
EPDMエラストマー組成物
上記の方法に従って、以下の表15のエラストマー組成物を得た。すべてのエラストマー組成物は、等容量のフィラーを有していた。すべてのフィラーをカーボンブラックと50/50%体積で組み合わせた。したがって、カーボンブラック参照バッチは、100phrのN550を含有する。その他のバッチは、50phrのN550と、それらの密度に応じてわずかに変化する量のミネラルフィラーとを含有し、それによって、50phrのカーボンブラックの体積に等しい量のミネラルフィラーを有するようにした(表15に星印を付して示してある)。
Figure 2023535318000015
得られたエラストマー組成物は、以下の特性を有していた。
Figure 2023535318000016
本発明のフィラーにより、Shore A硬度が向上することが分かる。
Figure 2023535318000017
さらに、M50モジュラスは、本発明のフィラーによって維持又は改善される。
Figure 2023535318000018
本発明のフィラーはすべて、比較例のフィラーと比較して、より低い空気透過率をエラストマー組成物にもたらしている。

Claims (15)

  1. エラストマーを含有するエラストマー組成物のガス透過性を低減するための多孔質フィラーの使用であって、
    前記多孔質フィラーが、表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラー材料を含み、かつ
    前記表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される、
    使用。
  2. 前記フィラー材料が以下を有する、請求項1に記載の使用:
    - 20~200m/g、好ましくは40~150m/g、より好ましくは70~120m/gのBET比表面積;及び/又は
    - 0.1~75μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~40μm、さらにより好ましくは1.2~30μm、最も好ましくは1.5~15μmの体積メジアン粒径d50;及び/又は
    - 0.2~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~80μm、さらにより好ましくは2.4~60μm、最も好ましくは3~30μmの体積トップカット粒径d98;及び/又は
    - 水銀ポロシメトリー測定によって決定した、0.1~3.0cm/g、より好ましくは0.2~2.5cm/g、さらにより好ましくは0.4~2.0cm/g、最も好ましくは0.6~1.8cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積。
  3. 前記多孔質フィラーが、前記フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層をさらに含み、前記表面処理層が、前記フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物と前記フィラー材料とを接触させることによって形成される、請求項1又は2に記載の使用。
  4. 前記表面処理組成物が、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換無水コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸含有化合物、不飽和炭素部分を含むモノ-又はジ-置換コハク酸塩含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩、不飽和炭素部分を含むトリアルコキシシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含み、
    好ましくは、下記からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和表面処理剤を含む、請求項3に記載の使用:
    (a)モノ-又はジ-置換コハク酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ストロンチウム、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び/又はアンモニウム塩、ここで、前記アミン塩は直鎖状又は環状であり、一方又は両方の酸基が塩の形態であることができ、好ましくは両方の酸基が塩の形態である;不飽和脂肪酸、好ましくはオレイン酸及び/又はリノール酸;リン酸の不飽和エステル;アビエチン酸;及び/又はこれらの混合物であり、好ましくは、完全に中和された表面処理剤;及び/又は
    (b)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー又は無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエン-スチレンコポリマー及び/又はその酸及び/又は塩、好ましくは、以下を有する無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー及び/又はその酸及び/又は塩:
    (i)EN ISO 16014-1:2019に準拠して測定した、1000~20000g/mol、好ましくは1400~15000g/mol、より好ましくは2000~10000g/molのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量M、及び/又は
    (ii)1鎖あたり2~12、好ましくは2~9、より好ましくは2~6の範囲の無水物基の数、及び/又は
    (iii)400~2200、好ましくは500~2000、より好ましくは550~1800の範囲の無水物当量、及び/又は
    (iv)ASTM D974-14に準拠して測定された、無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマー1g当たり10~300meq KOH、好ましくは1g当たり20~200meq KOH、より好ましくは1g当たり30~150meq KOHの範囲の酸価、及び/又は
    (v)無水マレイン酸をグラフトしたポリブタジエンホモポリマーの不飽和炭素部分の総量に対して、5~80mol%、好ましくは10~60mol%、より好ましくは15~40mol%の範囲の1,2-ビニル基のモル量。
  5. 前記表面処理組成物が、下記からなる群から選択される少なくとも1つの飽和表面処理剤を含む、請求項3又は4に記載の使用:
    (I)1つ又は複数のリン酸モノエステル及び/又はそれらの塩、及び/又は1つ又は複数のリン酸ジエステル及び/又はそれらの塩のリン酸エステルのブレンド、及び/又は
    (II)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖状若しくは分岐状カルボン酸及び/又はそれらの塩、好ましくはC~C24の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはC12~C20の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはC16~C18の総炭素原子数を有する少なくとも1つの脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、及び/又は
    (III)置換基中に少なくともC~C30の総炭素原子数を有する直鎖基、分岐基、脂肪族基及び環式基から選択される基でモノ置換された無水コハク酸からなる少なくとも1つのモノ置換無水コハク酸及び/又はそれらの塩、及び/又は
    (IV)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、好ましくは少なくとも1つのポリジメチルシロキサン、より好ましくは、ジメチコン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、及び/又は
    (V)少なくとも1つのトリアルコキシシラン、好ましくは硫黄含有トリアルコキシシラン又はアミノ含有トリアルコキシシラン、及び/又は
    (VI)(I)~(V)による材料の混合物。
  6. 前記エラストマー組成物が、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、イソブテン-イソプレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、ポリスルフィドゴム、熱可塑性ゴム及びこれらの混合物のような天然又は合成ゴムから選択されるエラストマー前駆体から形成されたエラストマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
  7. 前記エラストマー組成物中のエラストマー前駆体の総重量に基づいて、100部当たり5~175部(phr)、好ましくは100部当たり10~160部、より好ましくは100部当たり30~150部の範囲の量で、前記エラストマー組成物中に前記多孔質フィラーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
  8. 前記エラストマー組成物が、顔料、染料、ワックス、潤滑剤、酸化-及び/又はUV-安定剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、相溶化剤、シラン、酸化防止剤、加工助剤、さらなるフィラー、及びそれらの混合物のような添加剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の使用であって、
    (a)前記多孔質フィラーを等容量のカーボンブラックで置き換えた同じエラストマー組成物と比較して、前記エラストマー組成物のShore A硬度が、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも8%増加し、かつ/又は
    (b)前記多孔質フィラーを等容量のカーボンブラックで置き換えた同じエラストマー組成物と比較して、空気透過率が、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%減少し、
    ここで、前記カーボンブラックは、ASTM D 6556-19に準拠して測定して、39±5m/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有し、かつ
    前記Shore A硬度をNF ISO 7619-1:2010に準拠して測定し、かつ前記空気透過率をNF ISO 2782-1:2018に準拠して測定する、
    使用。
  10. 以下の工程を含む、低減したガス透過性を有するエラストマー組成物の調製方法:
    (a)架橋性ポリマーを提供すること、
    (b)表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィラー材料を含む多孔質フィラーを提供すること、
    ここで、前記表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される、
    (c)任意に、好ましくは、カーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、ナノフィラー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるさらなるフィラーを提供すること、
    (d)任意の順序で、工程(a)の前記架橋性ポリマー、工程(b)の前記多孔質フィラー、及び任意に工程(c)の第2のフィラーを混合して混合物を形成すること、及び
    (e)工程(d)で得られた前記混合物を架橋して、低減したガス透過性を有するエラストマー組成物を形成すること。
  11. 前記多孔質フィラーが、前記フィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理層をさらに含み、前記表面処理層が、前記フィラー材料の表面1m当たり0.07~9mg、好ましくは1m当たり0.1~8mg、より好ましくは1m当たり0.11~3mgの量の表面処理組成物と前記フィラー材料とを接触させることによって形成される、請求項10に記載の方法。
  12. 架橋工程(e)を以下によって実施する、請求項10又は11に記載の方法:
    (i)架橋剤及び架橋助剤の添加と、それに続く少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも180℃の温度での熱架橋であって、任意に、少なくとも10MPa、好ましくは少なくとも15MPa、より好ましくは少なくとも20MPaの圧力での圧縮成形と組み合わせた熱架橋、及び/又は
    (ii)紫外線放射、電子ビーム放射、核放射、ガンマ線放射、マイクロ波放射及び/又は超音波放射による硬化。
  13. 以下を含む組成物から形成した低減したガス透過性を有するエラストマー組成物であって:
    架橋性ポリマー、
    表面反応炭酸カルシウム、沈降ハイドロマグネサイト、及びそれらの混合物からなる群から選択される多孔質フィラー、及び
    好ましくは、カーボンブラック、シリカ、粉砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、ナノフィラー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるさらなるフィラー、
    ここで、前記表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される、
    低減したガス透過性を有するエラストマー組成物。
  14. 前記さらなるフィラーに対する前記多孔質フィラーの体積比が、10:90~90:10、好ましくは25:75~75:25、より好ましくは40:60~60:40である、請求項13に記載のエラストマー組成物。
  15. 好ましくは、チューブレス物品、メンブラン、シーリング、O-リング、グローブ、パイプ、ケーブル、電気コネクター、オイルホース、ボール、及び靴底を含む群から選択される、請求項13又は14に記載のエラストマー組成物を含む物品。
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