JP2023534777A - 歯科用バルクブロック及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含むガラスセラミックブロックであって、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてユークリプタイト(eucryptite)を含み、深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有し、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない傾斜機能材料である切削加工のための歯科用バルクブロックを開示する。これは、天然歯に似た審美人工歯補綴物の製造に有用であり、ユークリプタイト(eucryptite)などの追加結晶相によって二ケイ酸リチウムのみ存在するときに比べて、人工歯補綴物で機械加工するのに容易であり、製作する時間を短縮させることができるだけでなく、機械的物性の傾斜機能化により力の分散面で構造的な安定性が増加した効果をもたらすことができる。【選択図】図1

Description

本発明は、天然歯の構造的特性に似た人工歯を製造するのに有用であり、特に機械加工性が向上した歯科用バルクブロック及びその製造方法に関する。
クラウン材料は、破損した歯の象牙質とエナメルに該当する部分を修復する補綴材料を意味し、適用部位によってインレー、アンレー、ベニア、クラウンなどに区分される。クラウン材料が修復される位置は、歯の外側表面であるため、審美的特性が大きく要求され、対合歯との摩耗やチッピングなどの破折のため、高い強度が要求される。クラウン材料として使用される従来の素材としては、リューサイト結晶化ガラス(leucite glass-ceramics)、強化ポーセリン又はフッ化アパタイト(fluorapatite、Ca(POF)結晶化ガラスがあり、これらは、審美的特性に優れるものの、強度が80~120MPaと低いため破折する可能性が高いという欠点がある。このため、現在、様々な素材の高強度クラウン素材を開発しようとする研究が進行中である。
ケイ酸リチウム結晶化ガラスは、1973年、Marcus P.BoromとAnna M.Turkalo(The Pacific Coast Regional Meeting、The American Ceramic Society、San Francisco、CA、October 31、1973(Glass division、No.3-G-73P))によって紹介された。
LiO-Al-SiO-LiO-KO-B-P系ガラスを用いて、様々な結晶核形成と成長熱処理条件別に結晶相と強度について研究した。低温のメタケイ酸リチウム乃至高温の二ケイ酸リチウム結晶相を示すときに30~35KPSの強度を示した。これは、基地ガラス、母ガラス、LiSiO、LiSiO相の熱膨張係数差に起因した残留応力のためであった。
二ケイ酸リチウム結晶を含むガラスを用いて人工歯を製作する素材及び方法(モノリシック歯冠(monolithic dental crown))は、既に多数の特許に開示されている。しかし、開示された技術は、結晶相のサイズが粗大であってそのまま機械加工することが困難であり、加工のためには1次的にメタケイ酸リチウム結晶相(machinable crystalline)を形成して加工し後、2次的に熱処理を施して高強度の二ケイ酸リチウム結晶相を形成させる方法を経る。この場合、後熱処理工程による収縮により寸法の精度に劣り、熱処理工程が追加されるという煩わしさがある。一般に、CAD/CAMによる補綴物加工は、病院で直接バルク体を加工して補綴物を製作し、これを患者に最大限迅速に試適しなければならないので(one-day appointment)、熱処理工程による時間遅延は、患者及びユーザに経済的な困難を付加させる。
また、従来の二ケイ酸リチウム結晶化ガラス素材は、粗大な結晶相により、天然歯に似た高い光透過率や乳白光(opalescence)を実現するのには限界がある。
特に、従来の二ケイ酸リチウム結晶化ガラス素材は、加工のために、1次的に加工性の良いメタケイ酸リチウム(lithium metasilicate)結晶化ガラスを作り、加工後に2次結晶化熱処理を介して二ケイ酸リチウムを形成して強度を増進させ、この時、結晶相のサイズが約3μm以上であり、この状態では、加工性が著しく低下し、強度的な部分のみを実現することができた。
かかる問題点を解決するために、本出願人は、1次熱処理温度の変化により結晶サイズを調節して加工性に優れた二ケイ酸リチウム結晶相とシリケート結晶相を含む結晶化ガラスの製造方法を提案し、既に特許を受けたことがある(韓国特許第10-1975548号)。具体的には、ここでは、SiO60~83重量%、LiO10~15重量%、核形成剤の役割を果たすP2~6重量%、ガラス転移温度及び軟化点を増加させ、ガラスの化学的耐久性を増進させるAl1~5重量%、ガラスの軟化点を増加させるSrO0.1~3重量%、ZnO0.1~2重量%、着色剤(colorant)1~5重量%、及びガラスの熱膨張係数を増加させるアルカリ金属酸化物であるNaO+KO2.5~6重量%を含むガラス組成物を400℃~850℃で1次熱処理するステップと、前記1次熱処理後に780℃~880℃で2次熱処理を行うステップと、を含み、前記1次熱処理によってナノサイズ5nm~2000nmの二ケイ酸リチウム結晶相及びシリカ結晶相が生成され、前記2次熱処理温度によって透光性が調節されることを特徴とする、シリカ結晶相を含む歯用結晶化ガラスの製造方法を開示した。
一方、人間の生活水準が向上するにつれて、歯医学分野においても審美に対する要求が増加しており、患者の審美的欲求が次第に高まるにつれて、様々な材料を用いた審美補綴の修復に関する多くの研究が行われている。
現在、主に用いられている審美修復材料であって陶材修復物の審美性に影響を及ぼす要素としては、歯の外形、表面状態、透明度、色調などがあり、これらの中でも特に透明度は、成功的な修復物製作のための重要な要素であるといえる。このような審美補綴のための陶材の機械的、物理的特性に対しては多くの研究と発展が行われてきたが、色調の調和に対しては依然として多くの問題を内包しており、臨床的、技術的な面で修復物の色調選択、特に透明度については多くの困難がある。
審美補綴学において歯修復の際に審美性に影響を及ぼす要因としては、色調(Color)、歯の形態と大きさ、歯の配列状態と比率関係、光線、透過性、修復物のデザイン(Design)などがあり、実際に人間の目に敏感な要因は、色と形態であるといえる。
天然歯は、歯頸部から歯の切端まで同じ色を有する箇所が一箇所もない。
このような点を反映して、近年では、いわゆるビルドアップ方式を用いて天然歯の深い色を模倣することができる人工歯の製造方法も知られている。
ビルドアップ(Build-Up)方式とは、ポーセリンやジルコニアなどの粉末を層状に積み上げて色調を与えた人工歯を成形した後、これを熱処理して、天然歯に似た色を層状に実現する方法であって、たとえ天然歯の色をかなり類似に模倣することはできるが、これは、全的に歯科技工士の熟練機能によって人工歯の審美感が決定される方式であって、再現性に劣るうえ、即時的な方法で製造が不可能であって患者に有利でなく、CAD/CAMなどの切削加工方法では実現することが難しいという問題点がある。
一方、従来のバルクブロックを用いてCAD/CAMなどの切削加工法によって人工歯を製作する場合、バルクブロック自体が均一な物性を示す物質で構成されているので、得られた人工歯は、天然歯とは異なり、単一の色調を帯びる形で得られるしかなかった。特に、このような方法による人工歯の場合は、前歯などへの適用時に審美的に異質な感じを与えて自然さに劣るという問題点があるしかない。
上述した本出願人による韓国特許第10-1975548号に記載された結晶化ガラスの製造方法によっても、たとえ2次熱処理工程によって透明性と加工性の調節が可能ではあるが、得られた結晶化ガラスも、一つのブロック自体が同じ物性を有するものであって、これを用いて天然歯と同様の深い色相を実現するためには、複数の結果物を組み合わせる方法を適用することが必要である。言い換えれば、バルクブロック自体を活用してCAD/CAMなどの切削加工に直接適用することにより、自然色相の歯を即時的に実現することが容易ではなかった。
かかる点を改善して、本出願人は、天然歯に似た人工歯補綴物の製造に有用であり、これにより人工歯補綴物を製作する時間と工程を短縮させることができるだけでなく、機械的物性の傾斜機能化により力の分散面で構造的な安定性が増加した効果をもたらすことができるバルクブロックについて出願し、既に登録を受けたことがある(韓国特許第10-2246195号)。
本発明は、このようなバルクブロックに対して審美性が向上し、特に機械加工性をより向上させたグラデーションバルクブロックを提供するために案出されたものである。
本発明は、CAD/CAMなどの切削加工を介して他の工程の追加なしでも繰り返し再現性を持つように、天然歯に似たマルチグラデーション(Multi-gradation)透過性ないし物性を発現する人工歯修復材料の製造に使用できる歯科用バルクブロックを提供しようとする。
また、本発明は、機械加工性が向上して人工歯補綴物を製作する時間と工程を短縮させることができるだけでなく、機械的物性の傾斜機能化により力の分散面で構造的な安定性が増加した効果をもたらすことができる歯科用バルクブロックを提供しようとする。
また、本発明は、天然歯に似たマルチグラデーション(Multi-gradation)透過性ないし物性を発現する人工歯修復材料の製造に使用できる歯科用バルクブロックを簡単に製造することができる方法を提供しようとする。
また、本発明は、このような歯科用バルクブロックを加工機械を用いて容易に歯修復物に製造する方法を提供しようとする。
本発明の一実施形態は、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含むガラスセラミックブロックであって、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相がユークリプタイト(eucryptite)を含み、深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有し、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない傾斜機能材料である、歯科用バルクブロックを提供する。
本発明の好適な一実施形態において、主結晶相サイズの傾斜度は、平均粒径0.02μm~1.5μmの範囲内で実現されることができる。
本発明の一実施形態による歯科用バルクブロックは、深さに対して光透過度の傾斜度を有することができる。
好適な一実施形態において、光透過度の傾斜度は、550nm波長を基準に22~35%の範囲内であり得る。
好適な一実施形態において、光透過度の傾斜度は、深さに対して0.5mm以内の範囲内においても変化することができる
本発明の一実施形態による歯科用バルクブロックは、深さに対して色差分析によるL、a及びb値の傾斜度を有し、深さに対して1.5mmの範囲内でも色偏差(ΔE)値が変化することができる。
好適な一実施形態による歯科用バルクブロックは、40~80%の結晶化度を有することができる。
具体的な一実施形態による歯科用バルクブロックは、全体結晶相の体積を基準として二ケイ酸リチウム結晶相が50~90vol.%、ユークリプタイト(eucryptite)結晶相が10~40vol.%で含まれるものであり、他の一例としては、さらにリン酸リチウム(lithium phosphate)結晶相が最大5vol.%で含まれることができる。
また、本発明の一実施形態による歯科用バルクブロックは、深さに対して曲げ強度の傾斜度を有することができる。
好適な一実施形態において、曲げ強度の傾斜度は、210MPa~510MPaの範囲内にあり得る。
本発明の一実施形態による歯科用バルクブロックは、連続するガラスマトリックスで出来ていることができる。
好適な一実施形態において、ガラスマトリックスは、SiO69.0~78.0重量%、LiO12.0~14.0重量%、Al5.5~10重量%、ZnO0.21~0.6重量%、KO2.0~3.5重量%、NaO0.3~1.0重量%、SrO0.1~0.5重量%、CaO0.3~1.0重量%、La0.1~2.0重量%及びP2.0~6.0重量%を含み、Al/(KO+ZnO)のモル比は、1.2~2.2を満足することができる。
本発明の他の一実施形態では、SiO69.0~78.0重量%、LiO12.0~14.0重量%、Al5.5~10重量%、ZnO0.21~0.6重量%、KO2.0~3.5重量%、NaO0.3~1.0重量%、SrO0.1~0.5重量%、CaO0.3~1.0重量%、La0.1~2.0重量%及びP2.0~6.0重量%を含み、Al/(KO+ZnO)のモル比は1.2~2.2を満足するガラス組成物を溶融し、モールドで成形及び冷却し、480℃~250℃で20分~2時間所定の速度でアニーリングするステップを含むことにより、所定形状のブロックを製作するステップと、
前記ブロックを740~850℃の温度範囲で、ブロックの深さ方向に対して温度勾配を与えて熱処理するステップと、を含む、歯科用バルクブロックの製造方法を提供する。
好適な一実施形態による歯科用バルクブロックの製造方法において、熱処理するステップは、ブロックの上層部は800~850℃の温度範囲、ブロックの下層部は740~760℃の温度範囲で印加されるように行われることができる。
好適な一実施形態において、前記熱処理するステップは、勾配熱処理炉(furnace)内で作動温度800~1000℃の下で1分~40分間行われることができる。
また、本発明の一実施形態は、前記歯科用バルクブロックを加工機械を用いて加工して所定の歯修復物を製造するステップと、ポリッシング(polishing)又はグレージング(glazing)するステップと、を含む、歯修復物の製造方法を提供する。
好適な一実施形態による歯修復物の製造方法において、グレージングは、730~820℃で30秒~10分間行われることができる。
他の一実施形態による歯修復物の製造方法において、グレージングは、少なくとも825℃の熱処理を介して、加工された歯修復物の透光性を調節するための用途で使用できる。このとき、好ましくは、グレージングは少なくとも825℃の温度で1分~20分間行われることができる。
本発明による歯科用バルクブロックは、CAD/CAMなどの切削加工を介して他の工程の追加なしでも繰り返し再現性を持つように、天然歯に似たマルチグラデーション(Multi-gradation)透過性ないし物性を有する人工歯修復材料の製造に容易に使用でき、人工歯補綴物を製作する時間と工程を短縮させることができるだけでなく、機械的物性の傾斜機能化により力の分散面で構造的な安定性が増加した効果をもたらすことができ、このような歯科用バルクブロックは、特定の組成を有する単一のガラス組成物を用いて勾配熱処理する簡易な方法を介して製造できるという利点がある。
本発明のバルクブロックのX線回折分析(X-Ray Diffraction)結果グラフである。 本発明のバルクブロックの深さ別微細構造及び結晶相サイズを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明のバルクブロックの厚さ1.5mmのスライス試験片に対する可視光線透過率測定グラフである。 本発明のバルクブロックに対する切削抵抗性(cutting resistance)の比較グラフである。 一例として本発明の歯科用バルクブロックを製造する方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態によって得られたバルクブロックの深さ別主結晶相の粒子サイズを示すグラフである。 本発明の一実施形態によって得られたバルクブロックの深さ別二軸曲げ強度(biaxial flexure strength)の変化を示すグラフである。
前述した、そして追加的な本発明の様相は、添付図面を参照して説明される好適な実施形態によってさらに明らかになるだろう。以下では、本発明のこのような実施形態によって当業者が容易に理解及び再現することができるように詳細に説明する。
本発明の歯科用バルクブロックは、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含むガラスセラミックブロックであって、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相がユークリプタイト(eucryptite)を含み、深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有し、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない傾斜機能材料である。
上記及び以下の記載において、主結晶相という用語は、全体結晶相中の少なくとも50重量%を占める結晶相と定義され、追加結晶相という用語は、全体結晶相中の、主結晶相ではない残りの結晶相と定義されることができる。
結晶相の含有量は、X線回折分析によって算出できるが、一例として2つの多形相aとbからなっている試験片における結晶相aの比率Fは、定量的に下記式1で表される。
Figure 2023534777000002
この値は、二つの結晶相の強度比を測定し且つ整数Kを得ることにより求めることができる。Kは、2つの純粋な多形相の絶対強度比Ioa/Iobであり、標準物質を測定して求める。
上記及び以下の記載において、主結晶相という用語は、このような方法によって算出された含有量を基準として設定されたものと定義できる。
また、「深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有する」とは、バルクブロックの深さによる主結晶相サイズをグラフ化する場合、主結晶相サイズの変化勾配が存在することを意味する。すなわち、バルクブロックの深さに対して主結晶相サイズがグラデーション(gradation)された形で表されることを意味する。
また、「主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所」とは、バルクブロックの深さによる主結晶相サイズをグラフ化する場合、主結晶相サイズの変化勾配値が実質的に変動する箇所を意味する。ここで、「実質的に変動」という意味は、単一の数値であって、変化を意味することができるが、その値の分布に照らして実質的な変化があるものまでを含むことができる。
また、「主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない」とは、主結晶相サイズの傾斜度値の変化を示すバルクブロックの深さ箇所において、層間分離を示す有意な境界面が存在しないものと解釈できる。すなわち、バルクブロックは、深さによる界面なしに連続する形態で主結晶相サイズの傾斜度を有するものであることを意味する。
一方、「傾斜機能材料(Functionally Gradient Material、FGM)」は、通常、ある一面から他の面へと構成材料の性質が連続的に変化する材料をいうので、本発明においては、実質的に界面が存在しないが、構成材料の性質が連続的に変化することから、傾斜機能材料という表現を借用したものである。
上記及び以下の記載において、バルクブロックは、その形状的制限がなく、例えばブロック(block)タイプ、インゴット(ingot)タイプ、シリンダ(cylinder)タイプなどの多様なタイプのバルク体を含むことができるのはいうまでもない。
本発明によるバルクブロックは、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてユークリプタイト(eucryptite)を含むものであり、他の追加結晶相としてリン酸リチウムを含むことができる。
好適な一実施形態によるバルクブロックに対するXRD分析結果グラフは、図1に示されているとおりである。
図1において、本発明の一実施形態による歯科用バルクブロックは、主結晶相が二ケイ酸リチウムである。そして、追加結晶相として2θ=19.8、25.7(degree)などで主要ピークが現れるが、これは、ユークリプタイト(beta-eucryptite、JCPDS#12-0709)と解釈できる。
ここに開示された本発明の一実施形態による歯科用バルクブロックは、ユークリプタイト(eucryptite)以外に追加結晶相として2θ=22.18、22.9(degree)などで主要ピークが現れるが、これは、リン酸リチウム(lithium phosphate、JCPDS#15-0760、2θ=22.3、23.1で主要ピーク)と定義することができる。
上記及び以下の記載において、XRD分析は、X線回折分析器(D/MAX-2500、リガク社製、日本;CuKα(40kV、60mA)、走査速度:6°/分、2θ:10~60(degree)、リガク社製、日本)を用いて分析した結果として理解されるだろう。
ユークリプタイト(eucryptite)は、化学式LiAlSiOで表現されるケイ酸アルミニウムリチウム系(LASと略称する)結晶相であって、他のLAS系のスポンジュメン(spodumene)(LiAlSi)、オースクレース(orthoclase)(LiAlSi)又はペタライト(petalite)(LiAlSi)に比べて、残留熱応力によって加工工具に対して切削抵抗性が低い性質を持っている。このような結晶相を含む場合、二ケイ酸リチウムのみ存在するときより低い工具摩耗率を示すことができ、このように工具抵抗性が低くなると、切削加工効率を向上させることができ、ミリング工具の消耗を最小限に抑えることができるだけでなく、加工中に発生するチッピング(欠け落ちる現象)を最小限に抑えることができる。
このような本発明のバルクブロックを構成する結晶相は、微結晶への形成が可能であり、これが温度によって様々なサイズ及びサイズ分布を示しながら、機械的物性と光透過性様々に実現することができるという特性を持つ。
また、深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有することにより、バルクブロックは、深さに対してグラデーションされた透光性及び機械的物性を実現することができる。しかも、主結晶相サイズの傾斜度値の変化箇所に界面が存在しないことにより、層間接合による加工が不要であるうえ、切削加工途中で層分離が起こる問題を解消することができる。また、このような傾斜機能化により、力の分散面で構造的安定性が増加した人工歯補綴物を提供することができる。
このような本発明のバルクブロックにおいて、主結晶相サイズの傾斜度は、平均粒径0.02μm~1.5μmの範囲内で実現されることができる。
一例として、図2では、本発明の歯科用バルクブロックに対する走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示したが、図2の左側にはブロックの下層部(深さ20mm部分)のSEM写真を示し、図2の中央にはブロックの中間部(深さ10mm)のSEM写真を示し、図2の右側にはブロック上層部(深さ0.5mm)のSEM写真を示した。
このように得られたSEM写真を介して結晶相粒子の平均サイズを導出することができるが、具体的には、SEM写真に対角線又は無作為の直線を描いて直線が通過する結晶相の数を直線の長さで割り、倍率を勘案してlinear intercept methodによって求めることができる。
上記及び以下の記載において、結晶相のサイズは、このような方法によって算出されたものと理解されるだろう。
本発明のバルクブロックは、傾斜機能材料であって、このような傾斜機能材料が同一の加工条件によって切削加工、一例としてCAD/CAM加工などに適用されるので、機械加工性を考慮し、人工歯修復材料などとして臨床で使用可能な透過性を発現することができる観点から、主結晶相サイズの傾斜度は、平均粒径0.02μm~1.5μmの範囲内で実現されることが好ましい。
本発明の歯科用バルクブロックは、上記のように主結晶相サイズの傾斜度を有することにより、深さに対して光透過度の傾斜度を有する。
特に、上述した結晶質サイズの傾斜度において平均粒径の範囲を考慮すると、光透過度の傾斜度は、550nm波長を基準に22~35%の範囲内にあり得る。
上記及び以下の記載において、光透過度は、UV-visible分光器(UV-2401PC、島津製作所、日本)を用いて測定したものである。
上述したように本発明の歯科用バルクブロックは、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しないので、このような観点から、光透過度の傾斜度は、深さに対して0.5mm以内の範囲内においても変化し、実質的に深さに対して1.5mmの範囲内においても変化することを確認することができる。
本発明による歯科用バルクブロックに対して勾配位置別に光透過度を測定するために、透明度が減少する深さ方向に約1.5mmをカットした後、試験片の表面をエタノールを用いてきれいに拭き取り、UV-visible分光器(UV-2401PC、島津製作所、日本)を用いて測定した。この時、測定波長範囲は300~800nmとし、スリット幅は2.0nmとした。厚さ1.5mmのスライス試験片に対して透過率の差があることを図3の結果から確認することができる。
図3において、各試験片は、それぞれ下記表1の深さ別試験片に該当する。
Figure 2023534777000003
このような結果は、深さに対して1.5mmの範囲内においても光透過率値が変化するということ、すなわち、このような厚さにおいてもgradient transmittanceが現れることを意味する。これは、本発明の歯科用バルクブロックが傾斜機能材料であることを明らかに示す結果であるといえる。また、クラウンなどの補綴物に製作する際に、橋頭部に該当する位置が最も厚い厚さに加工されるので、このような厚さ範囲においても、審美的に好ましい光透過率を発現することができることを予測することができる。
他の一観点から、本発明の歯科用バルクブロックは、シェード(shade)においても傾斜度を有するので、具体的に、深さに対して色差分析によるL、a及びb値の傾斜度を有する。上述したように、本発明の歯科用バルクブロックは、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しないので、このような観点から、深さに対して1.5mmの範囲内においても色偏差(ΔE)の値が変化することを確認することができる。
色彩の正確な測定、伝達及び再現のための色彩標準化が必要とされた。このため、表色系(color system)を考案した。多くの表色系が提案されており、これらの中でも現在までに最も広く使われるものが、1976年に国際照明委員会(CIE、Commission International de l’Eclairage)で定めたCIE L色空間(CIELAB color space)である。ここで、Lは明るさ(lightness)を示し、aとbは色度座標(chromaticity coordinates)を示す。座標において、Lは、値が増加するほど明るい色を示し、値が減少するほど暗い色を示し、+aは赤色、-aは緑色、+bは黄色、-bは青色をそれぞれ意味する。
本発明による歯科用バルクブロックに対して勾配位置別に色を測定するために、透明度が減少する深さ方向に約1.5mmとなるように切断した後、試験片の表面をエタノールを用いてきれいに拭き取り、UV-visible分光器(UV-2401PC、島津製作所製、日本)を用いて分析した。このとき、測定波長範囲は380~780nmとし、スリット幅は2.0nmとした。基準サンプルを用いて基準線(baseline)を設定した後、試験片に対して反射率を測定してL表色系を求めた。測定したL値は、誤差を減らすために、3回繰り返し測定した後、その平均値を使用した。この3つの値を用いて色の差を示すΔEを用いて求めた。二つの試験片のΔE値が0であれば、色の差がないことを意味し、0~2に該当する値は、非常にわずかの色差(very slight difference)があることを意味する。2~4の値は、色差が目立つほど(noticeable)に区分されることを意味し、4~6の値は、容易に(appreciable)色差が区分されることを意味する。6~12の値は、色差が大きい(much)ことを意味し、12以上の値は、色差が非常に大きい(very much)ことを意味する。
図1及び図2に示されている非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含むガラスセラミックブロックであって、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相がユークリプタイト(eucryptite)を含み、深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有し、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない傾斜機能材料である歯科用バルクブロックに対して、厚さ0.31mmのスライス試験片が深さに対して1.4~1.6の色偏差(ΔE)を示すことを下記表2の結果から確認することができる。このような結果は、深さに対して1.5mmの範囲内においても色偏差(ΔE)の値が変化するということ、すなわち、このような厚さにおいても色の異なるグラディエントシェード(gradient shade)が現れることを意味すると考えられる。これは、他のある観点から、本発明の歯科用バルクブロックが傾斜機能材料であることを明らかに示す結果であるといえる。
Figure 2023534777000004
また、本発明の歯科用バルクブロックは、深さに応じて曲げ強度の傾斜度を有する。特に、上述した結晶質サイズの傾斜度において平均粒径の範囲を考慮すると、曲げ強度の傾斜度は、210MPa~510MPaの範囲内にあり得る。
一方、本発明の歯科用バルクブロックは、上述した様々な物性の機能的傾斜度を実現することができる側面及び加工性を考慮すると、好ましくは、結晶化度が40~80%であり得る。
上記及び以下の記載において、「結晶化度」は、非晶質のガラスマトリックスに対する結晶相の比率と定義できるが、これは、様々な方法によって求めることができるので、本発明の一実施形態では、X線回折分析器を介して自動計算された値である。
このような本発明の歯科用バルクブロックは、連続的な非晶質のガラスマトリックス内に結晶相が析出したガラスセラミックであって、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてユークリプタイト(eucryptite)を含む結晶相を含み、深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有し、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない傾斜機能材料を得ることができる。
特に、結晶相は、全体結晶相の体積を基準として二ケイ酸リチウム結晶相が50~90vol.%、追加結晶相であるユークリプタイト(eucryptite)結晶相が10~40vol.%で含まれることが好ましく、追加結晶相としてリン酸リチウムを含む場合、その含有量は最大5vol.%を超えないことが好ましい。
ユークリプタイト(eucryptite)結晶相は、上述したように二ケイ酸リチウムを主結晶相とするガラスセラミックの切削加工性を向上させる役割を果たすことができるが、その含有量が過度に増えると、強度を低下させる可能性がある。よって、加工性能と強度を考慮して結晶相中のユークリプタイト(eucryptite)の含有量は、全体結晶相の体積を基準として10~40vol.%であることが好ましい。
上記及び以下の記載において、「連続的なガラスマトリックス」という用語は、ガラスマトリックス内に層間界面が存在せず、ガラスマトリックスを構成する組成が全体ブロック内で同一であると定義されることができる。
好ましいガラスマトリックスは、具体的には、SiO69.0~78.0重量%、LiO12.0~14.0重量%、Al5.5~10重量%、ZnO0.21~0.6重量%、KO2.0~3.5重量%、NaO0.3~1.0重量%、SrO0.1~0.5重量%、CaO0.3~1.0重量%、La0.1~2.0重量%及びP2.0~6.0重量%を含み、Al/(KO+ZnO)のモル比は1.2~2.2を満足するものであり得る。
ガラス組成物は、結晶化生成のために結晶核の生成と結晶成長のための熱処理を経て非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を析出させるが、上述したガラスマトリックスは、結晶核と成長が発生する温度が500℃~850℃に該当する。すなわち、最低500℃から結晶核が形成され始め、昇温しながら結晶成長が行われ、この結晶成長は、最高850℃で人工歯として使用する上で最も低い光透過性を示す。つまり、結晶が成長する温度から最高850℃まで透光性が次第に低くなるので、このような結晶成長に着目するとき、これを一つバルクブロックで実現すると、これは天然歯のマルチグラデーション(multi gradation)を模倣することができる。
天然歯は、一つの歯だけではなく、全ての歯が様々な透光性を持っており、このような熱処理温度による透光性の変化を一つのバルクブロックに体現することができれば、十分に天然歯のマルチグラデーションを実現することができる。
このような観点から、本発明は、SiO69.0~78.0重量%、LiO12.0~14.0重量%、Al5.5~10重量%、ZnO0.21~0.6重量%、KO2.0~3.5重量%、NaO0.3~1.0重量%、SrO0.1~0.5重量%、CaO0.3~1.0重量%、La0.1~2.0重量%及びP2.0~6.0重量%を含み、Al/(KO+ZnO)のモル比は1.2~2.2を満足するガラス組成物を溶融し、モールドで成形及び冷却し、480℃~250℃で20分~2時間所定の速度でアニーリングするステップを含むことにより、所定形状のブロックを製作するステップと、
前記ブロックを740~850℃の温度範囲で、ブロックの深さ方向に対して温度勾配を与えて熱処理するステップと、を含む、歯科用バルクブロックの製造方法を提供する。
上述したように、ガラス組成物は、熱処理温度の範囲に応じて異なる光透光性を示す特性を発現することができるので、熱処理が全体ブロックに一定に加えられると、一定の透光性を示すが、熱処理が温度勾配を与えてブロックに加えられると、一つのブロックで物性又は透光性のマルチグラデーション(multigradation)を発現することができる。
バルクタイプのブロックの場合、CAD/CAM加工など、機械加工用ワークピース(workpiece)として使用されるが、本発明の製造方法は、このブロックを熱処理するとき、深さ方向に対して温度勾配を与えて熱を加えることにより、透光性と強度がマルチグラデーション(multi-gradation)されたバルクブロックに製造することができる。
従来の結晶化ガラスは、一般的に結晶サイズが粗大であって透光性の調節が困難であり、強度も強くて加工が困難である。これに対し、本発明で採用したガラス組成物は、微結晶の形成が可能であり、これが温度に応じて様々なサイズ及びサイズ分布を示しながら、それぞれ物性と光透光性が多様に現れるので、この点を反映して一つのガラス組成からブロックを製作した後、これを温度勾配を与えて熱処理する方法によって、一つのバルクブロックに機械的物性及び光透過性がマルチグラデーションされるように体現することができる。
この時、「ブロックの深さ方向に対して温度勾配を与えて熱処理するステップ」の意味は、ブロックの深さ方向に対して下端から上端に至るまで順次上昇した温度勾配を与えることができるのはもとより、部分的に温度の差を与える方式の温度勾配も容認することができる。このような温度勾配方式の選別は、人工歯補綴物を必要とする患者の天然歯の特性に応じて変化することができるか、或いはその補綴物を必要とする歯の部位の固有な特性に応じて可変的であり得るのはいうまでもない。
しかし、通常の天然歯を考慮すると、好ましい熱処理温度勾配は、ブロックの深さに対して下端から上端にわたって次第に温度が上昇する方式で温度勾配を与えて熱処理することが好ましい。
好ましい一例として熱処理するステップは、ブロックの上層部は800~850℃の温度範囲、ブロックの下層部は740~760℃の温度範囲で印加されるように行われる。このような温度勾配のために実質的に熱処理するステップは、勾配熱処理炉(furnace)内で作動温度800~1000℃の下で1分~40分間行われることが好ましい。
上述したガラス組成物を用いて上述の本発明の熱処理方法を用いる場合、天然歯の構造が歯茎側(cervical)であれば透光性が低く、切端(incisal)側に行くほど透光性が高くなる特徴を模倣することができる。これにより、従来の方式でのように補綴物の製作時に別に特徴づける(characterizing)必要がないため、経済的に非常に利得になれる。
また、天然歯の物性は、表面層であるエナメル質は曲げ強度が高く、その内部の象牙質は強度が低いため、外部の力を吸収し分散させる役割を果たすが、本発明において熱処理の深さに応じて微細構造の差異により機械的物性、特に曲げ強度が傾斜度を有する傾斜機能材料が可能なので、天然歯の物性面とも非常に類似に再現することができることが特徴である。
本発明によって得られた歯科用バルクブロックを用いて歯修復物を製造することは、加工性面で顕著な向上を期待することができるが、具体的な一例として、本発明の一実施形態では、上述した歯科用バルクブロックを加工機械を用いて加工して所定の歯修復物を製造するステップと、ポリッシング(polisihing)又はグレージング(glazing)するステップと、を含む、歯修復物の製造方法を提供する。
上記及び以下の記載において、歯修復物は、クラウン、インレー、アンレー、ベニア、アバットメントなどを全て含む。
ここで、グレージングは、730~820℃で30秒~10分間行われることができるが、この場合は、熱処理による透光性の変化が殆どない通常の仕上げ熱処理ステップであり得る。グレージングは、通常、バルクブロック固有の透光性を変化させない範囲内で行われ、グレージング熱処理の際には、表面の微細亀裂が緩和しながら(surface healing)強度が50%以上増加することができる。
しかし、特異的な一実施形態において、本発明によるバルクブロックを使用する歯修復物の製造方法において、グレージングは、少なくとも825℃の熱処理を介して、加工された歯修復物の透光性を調節するための用途で使用できる。つまり、バルクブロックを加工して歯修復物に製造した後、最終仕上げステップで透光性を減少させて明度を調節することができる用途でグレージングを活用することができる。
バルクブロックを用いて加工者又はユーザ側で機械加工して歯修復物を製造する上で、意図せずに高い透光性を有するように変化する場合が発生しうるが、このような場合、通常の二ケイ酸リチウム系バルクブロックは、加工された当該バルクブロックを廃棄し、さらにバルクブロックから所定の熱処理を経て目的の透光性を満足させるバルクブロックを再加工した後、これを歯修復物に加工する過程を再び経なければならない。しかし、本発明によるバルクブロックの場合は、微細な結晶相を有する特異的なバルクブロックであって、熱処理温度に応じて透光性が調節される特性を発現することができるため、再加工を必要とせず、歯修復物に加工された加工物を最終仕上げするステップで所定の条件でグレージングする工程を経ることにより、簡易に透光性を再び調節することができる。これにより、グレージングを介して歯修復物に加工する途中で発生した着色歯(colored tooth)を簡易な方法で遮蔽することもできる。
このような用途としてのグレージングは、好ましくは少なくとも825℃の温度で1分~20分間行われる。
特徴的に、本発明によって得られた歯科用バルクブロックの場合は、加工機械を用いて加工する上で、加工中に工具に発生する抵抗性を著しく下げることができるが、具体的な一例として、図1及び図2に示されている非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含むガラスセラミックブロックであって、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相がユークリプタイト(eucryptite)を含み、深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有し、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない傾斜機能材料である歯科用バルクブロック(本発明)に対して、サイズ12×14×18mmにして低速切断機(ISOMET low speed saw、Buehler製、ドイツ)とdiamond electroplated wheel(2514485H17、Norton製、米国)で250RPMにて回転させながら切断時間を測定した。そして、同様の方法で、最も一般な二ケイ酸リチウム系ブロック最終熱処理(conventional lithium disilicate)(Rosetta SM、HASS Corp社製)、ジルコニア強化二ケイ酸リチウム系バルクブロック(Zirconia reinforced lithium disilicate)(Celtra Duo、DentsplySiron社製)及びアルミノケイ酸リチウム強化二ケイ酸リチウムバルクブロック(LAS reinforced lithium disilicate)(Nice、Straumann社製)に対して、切断時間を測定した。
このように得られたそれぞれの切断時間値から切削抵抗性(cutting resistance、%)を算出したところ、具体的には、一般な二ケイ酸リチウムブロックに対して得られた切断時間を100%とし、これに対する相対的百分率で切断時間を換算して、これをそれぞれの切削抵抗性値として算出した。
その結果を図4に示した。
図4の結果から、一般な二ケイ酸リチウムブロックの切削抵抗性が最も高く、その次にLAS(lithium alumino silicate)結晶化ガラス、ジルコニア強化結晶化ガラスの切削抵抗性が高く、本発明によるブロックの切削抵抗性が著しく低いことを確認した。このような結果から、本発明のガラスセラミックブロックが最もマシナブル(machinable)であり、これは追加結晶相としてユークリプタイトを含むことによるものであることを予測することができる。
本発明の具体的な一実施形態は、まず、SiO69.0~78.0重量%、LiO12.0~14.0重量%、Al5.5~10重量%、ZnO0.21~0.6重量%、KO2.0~3.5重量%、NaO0.3~1.0重量%、SrO0.1~0.5重量%、CaO0.3~1.0重量%、La0.1~2.0重量%、及びP2.0~6.0重量%を含み、Al/(KO+ZnO)のモル比は1.2~2.2を満足するガラス組成物を秤量して混合する。
Alは、シリケートガラスに添加すると、4面体位置(tetrahedral site)に入ってガラス形成剤(glass former)の役割を果たし、粘度を増加させ、イオンの移動度(mobility)を減少させる役割を果たす。これに対し、KO、ZnO、CaO、LaOは、粘度を下げ、イオンの移動度を増加させる。イオンの移動度が増加するほどユークリプタイト(eucryptite)優先配向成長するものと予測することができる。また、ZnOなどのmodifierの増加は、イオンの移動度を増加させ、ここに過量のSiOが含まれる場合、ユークリプタイトなどのminorな結晶相が主結晶相である二ケイ酸リチウムと共に、ガラスマトリックス内に析出する。このような観点から、Al/(KO+ZnO)のモル比が1.2~2.2であることが、追加結晶相としてユークリプタイトを含む本発明のバルクブロックを提供する上で好ましい。
ガラス組成物としてLiOの代わりにLiCOを添加することもでき、LiCOの炭素(C)成分である二酸化炭素(CO)は、ガラスの溶融工程でガスとして排出されて抜け出す。また、アルカリ酸化物においてKO及びNaOの代わりにそれぞれKCO、NaCOを添加することもでき、KCO、NaCOの炭素(C)成分である二酸化炭素(CO)は、ガラスの溶融工程でガスとして排出されて抜け出す。
混合は、乾式混合工程を利用し、乾式混合工程としては、ボールミル(ball milling)工程などを使用することができる。ボールミル工程について具体的に考察すると、出発原料をボールミル機(ball milling machine)に装入し、ボールミル機を一定の速度で回転させて出発原料を機械的に粉砕し、均一に混合する。ボールミル機に使用されるボールは、ジルコニアやアルミナなどのセラミック材質からなることができ、すべて同じサイズ又は少なくとも2つのサイズを有することができる。目標の粒子サイズを考慮して、ボールのサイズ、ミリング時間、ボールミル機の分あたりの回転速度などを調節する。一例として、粒子サイズを考慮して、ボールのサイズは1mm~30mm程度の範囲に設定し、ボールミル機の回転速度は50~500rpm程度の範囲に設定することができる。ボールミルは、目標の粒子サイズなどを考慮して、1~48時間行うことが好ましい。ボールミルによって、出発原料は微細なサイズの粒子に粉砕され、均一な粒子サイズを有し、且つ均一に混合される。
混合された出発原料を溶融炉に込め、出発原料入りの溶融炉を加熱して出発原料を溶融する。ここで、溶融とは、出発原料が固体状態ではなく、液体状態の粘性を有する物質状態に変化することを意味する。溶融炉は、高融点を有しながら強度が大きく、溶融物がくっ付く現象を抑制するために接触角が低い物質で製造されることが好ましく、このために、白金(Pt)、DLC(diamond-like-carbon)、シャモット(chamotte)などの物質で製造された、或いは白金(Pt)又はDLC(diamond-like-carbon)などの物質で表面がコートされた溶融炉であることが好ましい。
溶融は、1,400~2,000℃で常圧にて1~12時間行うことが好ましい。溶融温度が1400℃未満である場合には、出発原料が溶融されないおそれがあり、前記溶融温度が2,000℃を超える場合には、過剰なエネルギーの消費が必要であって経済的でないため、上述した範囲の温度で溶融することが好ましい。また、溶融時間があまり短い場合には、出発原料が十分に溶融されないおそれがあり、溶融時間があまり長い場合には、過剰なエネルギーの消費が必要であって経済的ではない。溶融炉の昇温速度は5~50℃/min程度であることが好ましいが、溶融炉の昇温速度があまりにも遅い場合には、時間が長くかかって生産性に劣り、溶融炉の昇温速度があまりにも速い場合には、急激な温度上昇により出発原料の揮発量が多くなって結晶化ガラスの物性が良くないおそれがあるので、上述した範囲の昇温速度で溶融炉の温度を上げることが好ましい。溶融は、酸素(O)や空気(air)などの酸化雰囲気中で行うことが好ましい。
溶融物を、所望の形態及びサイズの歯用結晶化ガラスを得るために所定の成形モールドに注ぐ。成形モールドは、高融点を有しながら強度が大きく、ガラス溶融物がくっ付く現象を抑制するために接触角が低い物質で製造されたことが好ましく、このために、グラファイト(graphite)やカーボン(carbon)などの物質で製造され、熱衝撃を防止するために200~300℃で予熱を行い、溶融物を成形モールドに注ぐことが好ましい。
成形モールドに入った溶融物が成形及び冷却されるので、冷却過程以後に480℃~250℃で20分~2時間所定の速度で徐冷(annealing)するステップを経ることが好ましい。このように徐冷ステップを経ることが、成形物内における応力バラツキを減らし、好ましくは応力が存在しないようにして、以後の結晶化ステップで結晶相のサイズ制御及び結晶分布の均一度の向上に好ましい影響を与えることができ、これにより究極的に目的の傾斜機能材料を得ることができる。
ここで、所定の速度とは、2.3~14℃/分であることが、十分な徐冷となれるので好ましい。
このように徐冷過程を経た成形物を結晶化熱処理焼成炉に移して核形成及び結晶成長させて目的の結晶化ガラスを製造する。
図5には、本発明によって温度勾配を与えて結晶化熱処理を行う方法を模式化して示したが、ブロックタイプ又はインゴットタイプのバルクブロックを結晶化熱処理する上で深さ方向に沿って上端は高温の熱処理(High temperature)を行い、下端は低温の熱処理(Low temperature)を行うように温度勾配を与えて熱処理する。
上記及び以下の記載において、温度勾配を与えて熱処理するステップは、特定の装置及び方法に制限されるものではないが、例えば勾配熱処理炉(furnace)内で行われ得る。熱処理温度を考慮すると、作動温度は900~1,100℃の下で行われることが好ましい。
このような温度勾配を与えた熱処理によって高温部分から低温部分へと、光透過率は高透過率(high transmittance)で傾斜度を有し、曲げ強度は低強度(low flexural strengh)で傾斜度を有する様相を示す。これは、結晶化ガラス内の結晶サイズが温度に応じて調節できるためである。温度勾配を有する熱処理の後に生成される結晶相は、主結晶相として二ケイ酸リチウム、追加結晶相としてユークリプタイトを含み、平均粒径0.02μm~1.5μmの主結晶相のサイズ傾斜度を有するように生成できる。
一方、本発明によって得られたバルクブロックに対して深さに対する結晶質の粒子サイズを分析し、これを図6に示した。
また、本発明によって得られたバルクブロックに対して深さに対する曲げ強度の変化を測定し、これを図7に示した。
本発明は、図面に示された一実施形態を参照して説明されたが、この実施形態は例示的なものに過ぎない。本技術分野の通常の知識を有する者であれば、この実施形態から様々な変形や均等な他の実施が可能であることを理解するだろう。
本発明は、天然歯の構造的特性に似た人工歯を製造するのに有用であり、特に機械加工性が向上した歯科用バルクブロック及びその製造方法に関する。
本発明に係る歯科用バルクブロックは、CAD/CAMなどの切削加工を介して他の工程の追加なしでも繰り返し再現性を持つように、天然歯に似たマルチグラデーション(Multi-gradation)透過性ないし物性を有する人工歯修復材料の製造に容易に使用でき、人工歯補綴物を製作する時間と工程を短縮させることができるだけでなく、機械的物性の傾斜機能化により力の分散面で構造的な安定性が増加した効果をもたらすことができ、このような歯科用バルクブロックは、特定の組成を有する単一のガラス組成物を用いて勾配熱処理する簡易な方法を介して製造できるという利点がある。

Claims (19)

  1. 非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含むガラスセラミックブロックであって、
    結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相がユークリプタイト(eucryptite)を含み、
    深さに対して主結晶相サイズの傾斜度を有し、主結晶相サイズの傾斜度値変化箇所に界面が存在しない傾斜機能材料である
    ことを特徴とする歯科用バルクブロック。
  2. 主結晶相サイズの傾斜度は、平均粒径0.02μm~1.5μmの範囲内で実現される
    請求項1に記載の歯科用バルクブロック。
  3. 深さに対して光透過度の傾斜度を有する
    請求項1に記載の歯科用バルクブロック。
  4. 光透過度の傾斜度は、550nmの波長を基準に22~35%の範囲内にある
    請求項3に記載の歯科用バルクブロック。
  5. 光透過度の傾斜度は、深さに対して0.5mm以内の範囲内においても変化する
    請求項3に記載の歯科用バルクブロック。
  6. 深さに対して色差分析によるL、a及びb値の傾斜度を有し、深さに対して1.5mmの範囲内でも色偏差(ΔE)値が変化する
    請求項1に記載の歯科用バルクブロック。
  7. 結晶化度が40~80%である
    請求項1に記載の歯科用バルクブロック。
  8. 結晶相は、全体結晶相の体積を基準として、二ケイ酸リチウム結晶相が50~90vol.%、ユークリプタイト(eucryptite)結晶相が10~40vol.%で含まれる
    請求項1または7に記載の歯科用バルクブロック。
  9. 深さに対して曲げ強度の傾斜度を有する
    請求項1に記載の歯科用バルクブロック。
  10. 曲げ強度の傾斜度は、210MPa~510MPaの範囲内にある
    請求項9に記載の歯科用バルクブロック。
  11. 歯科用バルクブロックは、連続するガラスマトリックスで出来ている
    請求項1に記載の歯科用バルクブロック。
  12. ガラスマトリックスは、SiO69.0~78.0重量%、LiO12.0~14.0重量%、Al5.5~10重量%、ZnO0.21~0.6重量%、KO2.0~3.5重量%、NaO0.3~1.0重量%、SrO0.1~0.5重量%、CaO0.3~1.0重量%、La0.1~2.0重量%及びP2.0~6.0重量%を含み、Al/(KO+ZnO)のモル比は1.2~2.2を満足する
    請求項1または11に記載の歯科用バルクブロック。
  13. SiO69.0~78.0重量%、LiO12.0~14.0重量%、Al5.5~10重量%、ZnO0.21~0.6重量%、KO2.0~3.5重量%、NaO0.3~1.0重量%、SrO0.1~0.5重量%、CaO0.3~1.0重量%、La0.1~2.0重量%及びP2.0~6.0重量%を含み、Al/(KO+ZnO)のモル比は1.2~2.2を満足するガラス組成物を溶融し、モールドで成形及び冷却し、480℃~250℃で20分~2時間所定の速度でアニーリングするステップを含むことにより、所定形状のブロックを製作するステップと、
    前記ブロックを740~850℃の温度範囲で、ブロックの深さ方向に対して温度勾配を与えて熱処理するステップと、を含む
    ことを特徴とする歯科用バルクブロックの製造方法。
  14. 前記熱処理するステップは、ブロックの上層部は800~850℃の温度範囲、ブロックの下層部は740~760℃の温度範囲で印加されるように行われる
    請求項13に記載の歯科用バルクブロックの製造方法。
  15. 前記熱処理するステップは、勾配熱処理炉(furnace)内で作動温度800~1,000℃の下で1分~40分間行われる
    請求項13または14に記載の歯科用バルクブロックの製造方法。
  16. 請求項1に記載の切削加工のための歯科用バルクブロックを加工機械を用いて加工して所定の歯修復物を製造するステップと、
    歯修復物をポリッシング(polishing)又はグレージング(glazing)するステップと、を含む
    ことを特徴とする歯修復物の製造方法。
  17. グレージングは、730~820℃で30秒~10分間行われる
    請求項16に記載の歯修復物の製造方法。
  18. グレージングは、少なくとも825℃熱処理を介して、加工された歯修復物の透光性を調節するための用途である
    請求項16に記載の歯修復物の製造方法。
  19. グレージングは少なくとも825℃の温度で1分~20分間行われる
    請求項18に記載の歯修復物の製造方法。
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