JP2023526515A - リソソーム蓄積症をヒスタチンペプチドで処置するための方法 - Google Patents

リソソーム蓄積症をヒスタチンペプチドで処置するための方法 Download PDF

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Abstract

TMEM97(シグマ2受容体)もしくはNPC1の活性および/またはコレステロールもしくは微小管関連タンパク質1軽鎖3の蓄積に関連するニーマン・ピック病C型ならびに他の疾患の処置においてヒスタチンを使用する方法が提供される。眼疾患の処置においてTMEM97および/またはNPC1の活性をモジュレートするための方法もまた提供される。

Description

導入
本出願は、2020年5月20日に出願された米国仮特許出願第63/027,885号(この内容は、その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)に対し優先権の利益を主張するものである。
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金第EY024339、EY029409、EY001792、EY024710、およびEY029426の下;ならびに、国防総省(Department of Defense)によって授与された助成金第W81XWH-17-1-0122の下;ならびに、米国退役軍人省研究開発局(Department of Veterans Affairs Office of Research and Development)によって授与された助成金第I01BX004080の下、政府の支援でなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
背景
ヒスタチン(HTN)は、唾液ならびにヒト涙腺上皮に見出されるヒスチジンリッチの小さなカチオン性ペプチドである(Aakalu,et al.(2014)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.55:3115; Ubels,et al.(2012)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.53(11):6738-47; Steele,et al.(2002)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.43:98)。ヒスタチンは、7アミノ酸残基長から38アミノ酸残基長までのサイズに及び、抗細菌特性および有意な抗真菌特性をもつ一群の抗微生物ペプチドを表す。加えて、ヒスタチンは、創傷治癒、金属イオンキレート化、抗炎症効果、および血管新生(Melino,et al.(2014)FEBS J.281:657-72; Oudhoff,et al.(2008)FASEB J.22(12):3805-12; Oudhoff,et al.(2009)J.Dent.Res.88(9):846-50; WO 2007/142381)に関係している。構造-機能研究によって、HTN1とHTN3との両方において、特徴のあるN末ドメインおよびC末ドメインが同定されており、これらは夫々、抗微生物特性および創傷治癒特性に寄与する(Melino, et al. (1999) Biochemistry 38:9626-33; Brewer,et al.(1998)Biochem.Cell Biol.76:247-56; Gusman,et al.(2001)Biochim.Biophys.Acta 1545:86-95)。この点において、ヒスタチン、ならびにフラグメント、マルチマー、およびそれらの組み合わせは、眼表面疾患(US 2013/0310327; US 2013/0310326; US 2017/0239330; WO 2016/060916; WO 2016/060917; WO 2016/060918; WO 2016/060921; US 2016/0279194; WO 2017/095769)および創傷(US 2013/0288964; US 2011/0178010)を包含する様々な疾病の処置における使用を示唆する。
ヒスタチンの環状類似体もまた、記載されている。例えば、US 6,555,650には、5~16の該アミノ酸単位の環状部分を創出するジスルフィド架橋をもつHTN5の環状類似体が記載されている。加えて、HTN5の頭尾(head-to-tail)環化は、その抗微生物効能に影響を及ぼすことなく、ペプチドの両親媒性を増大することが示されている(Sikorska & Kamysz(2014)J.Pept.Sci.20:952-7)。さらに、ヒスタチン-1の環化は、モル活性をおよそ1000倍強化し(Oudhoff,et al.(2009)FASEB J.23:3928-35)、創傷閉鎖活性を増大する(Bolscher,et al.(2011)FASEB J.25:2650-8)ことが示されている。その上、効能が増強されたヒスタチンの環状類似体は、微生物感染症の処置における使用が示唆されている(US 2010/0173833; Brewer & Lajoie(2002)Biochemistry 41:5526-5536)。
本発明の概要
本発明は、有効量の、ヒスタチンペプチドの1種または組み合わせを、処置を必要とする対象へ投与することによって、リソソーム蓄積症(例として、糖原病、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、オリゴ糖代謝異常、スフィンゴリピドーシス、リソソーム輸送疾患(lysosomal transport disease)、もしくはニーマン・ピック病C型などのリピドーシス)を処置して、かつコレステロールの蓄積を低減するか、カルシウムシグナリングをモジュレートするか、アポトーシスのシグナリングを減少させるか、細胞生存率の低下を低減するか、または微小管関連タンパク質1軽鎖3タンパク質の蓄積を低減する方法を提供する。いくつかの側面において、ヒスタチンペプチドは、ネイティブのヒスタチンあるいは合成のヒスタチン、例として、線状ペプチドまたは環化ペプチド、および任意にグリコシル化、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、リン酸化、スルホン化、ペグ化、もしくは脂質化によって修飾されたペプチドである。本発明の方法において使用されるとき、ヒスタチンは、局所、経口、眼、静脈内、硝子体内、結膜下、皮下、筋肉内、腹腔内、脳内、動脈内、門脈内、病巣内、髄腔内、または鼻腔内の投与のために製剤化されていてもよい。理想的には、ヒスタチンは、ゲル、洗浄薬(wash)、クリーム、錠剤、カプセル、丸薬、溶液、点眼薬、スプレー、包袋、コンタクトレンズ、デポー、注射可能な、埋込型の(implantable)、持続放出の、またはマイクロ粒子もしくはナノ粒子の製剤の形態に製剤化されている。
本発明はまた、眼の疾患または疾病を処置するための有効量のTMEM97モジュレーターを、処置を必要とする対象へ投与することによって、眼の疾患または疾病を処置するための方法も提供する。いくつかの態様において、有効量によって、眼組織における創傷の治癒および上皮細胞の遊走促進活性が促進される。
図1は、TMEM97のsiRNA媒介ノックダウンが、Hst1誘導のヒト角膜上皮(HCE)遊走を阻害することを示す。示されるのは、広範な濃度のHst1にわたりTMEM97のsiRNAノックダウン有りおよび無しでのボイデンチャンバーアッセイにおいて遊出した(transmigrated)HCE細胞の細胞カウント数である。統計的有意性を、ボンフェローニの事後検定を伴う二元配置(2-way)ANOVAによって決定した。**p<0.01。エラーバーは、標準誤差を指し示す。実験を三通りに実施した。統計分析を、GraphPad Prismソフトウェア5.0(GraphPad Software,La Jolla,CA)を使用して実施した。
図2は、TMEM97のsiRNA媒介ノックダウンが、Hst1誘導のHCE創傷閉鎖を阻害することを示す。示されるのは、擦過傷閉鎖%を経時的に描く棒グラフである。注目すべきことに、擦過傷閉鎖率における統計的に有意な改善が、Hst1の処置(20μMまたは50μM)濃度で8時間および16時間にて(未処置対照と対比して)見出され、この応答がTMEM97 KD細胞におけるHst1適用に対して低下した。統計的有意性を、ボンフェローニの事後検定を伴う一元配置(1-way)ANOVAによって決定した。*p<0.05; **p<0.01。エラーバーは、標準誤差を指し示す。実験を三通りに実施した。統計分析を、GraphPad Prismソフトウェア5.0(GraphPad Software,La Jolla,CA)を使用して実施した。
図3は、ヒト角膜上皮細胞のヒスタチンペプチドでの処置が、細胞のカルシウムレベルを増加することを示す。
図4は、NPC1(I1061T突然変異体)ホモ接合患者の線維芽細胞のヒスタチンペプチドでの処置が、細胞のカルシウムレベルを増加することを示す。
図5は、塩化ベンザルコニウム(BAK)で処置されたヒト角膜上皮細胞が、細胞死/細胞生存率の低下の誘導を有するが、これはヒスタチンペプチドでの処置によって抑止されることを示す。
図6は、高モル浸透圧濃度で処置されたヒト角膜上皮細胞が、アポトーシスのシグナルの誘導を呈するが、これはヒスタチンペプチドでの処置によって抑止されることを示す。
本発明の詳細な記載
ヒスタチンペプチドは、いくつかのリガンドのTMEM97への結合に拮抗して、NPC病の所見を低減させることが今や実証されている。TMEM97受容体との相互作用は、この受容体およびその一次相互作用タンパク質であるニーマン・ピックC1(またはNPC細胞内コレステロール輸送体1;NPC1)に関する様々な障害において、広い関わりを有している。炎症、がん、および神経変性障害を包含する、TMEM97およびNPC1の活性に関連する疾患ならびに疾病は数多ある。結果的に、本発明は、TMEM97および/またはNPC1活性(例として、ニーマン・ピック病C型または眼の疾患もしくは疾病)に関連する疾患あるいは疾病を処置するための、TMEM97の活性をモジュレートする(例として、拮抗する)か、および/またはNPC1活性をモジュレートする1以上の薬剤(例として、ヒスタチンペプチドもしくはTMEM97モジュレーター)の使用である。
シグマ-2受容体(S2R)は、また小胞体(endoplasmic reticular)タンパク質の膜貫通型タンパク質97(TMEM97)としても知られており、多くの細胞型におけるコレステロールのプロセシングの不可欠な構成要素である。これは、ステロール輸送体NPC1を調節する、小胞体に常在の膜貫通型タンパク質である。TMEM97は、がんおよび神経変性疾患を包含する数多の疾患に関係する。TMEM97タンパク質は、当初薬理学的に記載されており、完全に異質の小分子および薬物がこのタンパク質を標的にし、かつがん、疼痛、アルツハイマー病、老化現象およびミトコンドリア障害、ならびに多発性硬化症の処置において効き目を呈することが見出されていた。加えて、TMEM97のsiRNAノックダウンは、NPC1機能喪失型突然変異に関連する所見のいくつかを緩和することが実証されている。
NPC1(およびNPC2)は、リソソーム蓄積症であるニーマン・ピック病C型において、頻繁に突然変異し、機能の低下または低減を引き起こす輸送体である。適正なNPC1機能がないと、遊離のコレステロールは細胞内部に集まる。この欠陥の因果関係は広範かつ深刻である。NPC1は、他の疾患の中でもアルツハイマー病、クローン病、正常でない血小板の機能および形成、運動障害、神経学的機能障害、肝臓および肺の疾患、エボラウイルスといった感染症(眼の結膜炎を包含する)に対する感受性、慢性炎症、欠陥のある細菌および微生物の死滅、構成的なトール様受容体4活性化、肥満、結節性硬化症、脳血管疾患、アテローム性動脈硬化との関連を包含する多くの疾患にとって極度に重要である。
本発明によると、ヒスタチン1、3、5、および他のヒスタチンペプチド(例として、ネイティブのヒスタチン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、またはそれらの合成バリアント)などのヒスタチンは、薬理学的放射性リガンド結合アッセイおよび免疫沈降およびタンパク質-タンパク質相互作用アッセイならびに機能的アッセイを通して、TMEM97の機能およびNPC1経路をモジュレートし得る。したがって、本発明は、本発明の方法において、ネイティブのヒスタチン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および/またはそれらの合成バリアントの使用を提供する。本明細書に使用されるとき、「ネイティブのヒスタチン」、「内在性のヒスタチン」、または「天然のヒスタチン」は、7~44アミノ酸残基の、ヒスチジンリッチペプチドを指すが、これは当初、唾液から同定され、その静真菌性効果に基づき特徴付けされた。例として、Melino,et al.(2014)FEBS J.281:657-682、およびこれに引用されている参考文献を見よ。代表的なネイティブのヒスタチンは、表1中に列挙されたペプチドを包含する。
表1
Figure 2023526515000002
「Sp」または「S(PO3)」は、リン酸化されたセリンを指示する。
ネイティブなまたは天然のヒスタチンペプチドに加えて、本発明はまた、合成のヒスタチンペプチド、またはその薬学的許容し得る塩の使用も提供する。本発明の合成ペプチドは、式I:
Z-R1-[L-R2]n (I)
で表される一般構造を有するが、式中
(i) R1またはR2の少なくとも一方は、アミノ酸配列またはHEXXH(配列番号1)を有する5~10アミノ酸残基ペプチドであり、ここで各Xは、独立して、R、K、またはHである;および、R1またはR2の他方は、金属結合ペプチド、創傷治癒ペプチド、または抗微生物ペプチドである;
(ii) Zは、存在するかまたは不在であって、存在するときは、外来性のペプチドである;
(iii) Lは、リンカーであるが、これは存在してもまたは不在であってもよい;ならびに
(iv) nは、0または≧1である、
ただし、nが0であるとき、R1は、アミノ酸配列HEXXH(配列番号1)を有する5~10アミノ酸残基ペプチドである。
理想的には、R1およびR2の少なくとも1つは、アミノ酸配列HEXXH(配列番号1)(ここで各Xは、独立して、R(Arg)、K(Lys)、またはH(His)である)を包含する5~10アミノ酸残基ペプチドである。結果的に、R1およびR2の少なくとも1つは、アミノ酸配列HEKKH(配列番号18)、HEKRH(配列番号19)、HEKHH(配列番号20)、HERKH(配列番号21)、HERRH(配列番号22)、HERHH(配列番号23)、HEHKH(配列番号24)、HEHRH(配列番号25)、もしくはHEHHH(配列番号26)を包含する、5、6、7、8、9、または10アミノ酸残基ペプチドであってもよい。R1またはR2の少なくとも1つは、配列HEXXH(配列番号1)を包含していてもよいが、これは追加の1~5アミノ酸残基をC末端および/またはN末端上に有していてもよい。いくつかの側面において、1~5個の追加のアミノ酸残基は、内在性のまたはネイティブのアミノ酸残基である。「ネイティブの」または「内在性の」アミノ酸残基は、天然に存在するタンパク質において、その挙げられた位置にて存在するアミノ酸残基である。例証として、配列HEKHH(配列番号20)は、以下のとおり、ヒスタチン3内に存在する:DSHAKRHHGYKRKFHEKHHSHRGYRSNYLYDN(配列番号8)。結果的に、R1および/またはR2がヒスタチンに由来するとき、R1および/またはR2は、配列GYKRKFHEKHHSHR(配列番号27)、KRKFHEKHHSHR(配列番号28)、HEKHHSHR(配列番号29)、またはHEKRHH(配列番号30)を有し得る。
いくつかの側面において、合成ペプチドは、R1(すなわち、n=0)のみからなる。この側面によると、合成ペプチドは、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、もしくは配列番号26で表される配列を含むか、またはこれからなる、5、6、7、8、9、あるいは10アミノ酸残基ペプチドである。
他の側面において、合成ペプチドは、1以上のR2ペプチド(すなわち、n≧1)を包含する。この点において、合成ペプチドは、リンカーによって結び合わされた、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれより多くのペプチドを包含し得る。一側面において、本発明の合成ペプチドのR1およびR2は、同じである。他の側面において、本発明の合成ペプチドのR1およびR2は、異なる。さらなる側面において、各R2は、同じであっても、または異なってもよい。理想的には、合成ペプチドの全長は、20~100アミノ酸残基の範囲にある。
R1またはR2のうち少なくとも一方が、アミノ酸配列HEXXH(配列番号1)を有する5~10アミノ酸残基ペプチドであるのと同時に、R1またはR2のうち他方は、金属結合ペプチド、創傷治癒ペプチド、または抗微生物ペプチドであってもよい。この点において、本発明の合成ペプチドは、(i)金属結合ペプチド、(ii)創傷治癒ペプチド、(iii)抗微生物ペプチド、または(iv)(i)~(iii)のいずれの組み合わせと組み合わせて、アミノ酸HEXXH(配列番号1)を有する5~10アミノ酸残基ペプチドから構成されていてもよい。
用語「金属結合ペプチド」は、本明細書に使用されるとき、金属と結合するか、または金属と複合体を形成するアミノ酸モチーフを指す。構造上のおよび機能的なヒスタチンの特徴付けによって、2つの金属結合モチーフ:アミノ末Cu(II)/Ni(II)結合(ATCUN)モチーフであって、1個のヒスチジン残基が3番目の位置にある(NH2-X1X2H、ここでX1は、AspまたはGluであり、およびX2は、Ala、Thr、Met、またはSerである)(Grogan,et al.(2001)FEBS Lett.491:76-80; Melino,et al.(2006)Biochemistry 45:15373-83; Melino,et al.(1999)Biochemistry 38:9626-33; Gusman,et al.(2001)Biochim.Biophys.Acta 1545:86-95);ならびに、Zn(II)結合モチーフHEXXH(配列番号1)(ここで各Xは、独立して、K(Lys)、R(Arg)、またはH(His)などの塩基性アミノ酸残基を指示する)の存在が明らかにされている。結果的に、いくつかの態様において、金属結合ペプチドは、配列DSH、ESH、DAH、EAH、DTH、ETH、DMHまたはEMHを包含する。他の態様において、金属結合ペプチドは、配列HEKKH(配列番号18)、HEKRH(配列番号19)、HEKHH(配列番号20)、HERKH(配列番号21)、HERRH(配列番号22)、HERHH(配列番号23)、HEHKH(配列番号24)、HEHRH(配列番号25)、またはHEHHH(配列番号26)を包含する。金属結合ペプチドは、上述の金属結合ペプチドの特定配列を包含し得るか、または1個と6個との間の追加のネイティブのヒスタチンアミノ酸残基を金属結合ペプチドのC-および/またはN末端上に包含し得る。例証として、金属結合ペプチドは、配列GYKRKFHEKHHSHR(配列番号27)、KRKFHEKHHSHR(配列番号28)、HEKHHSHR(配列番号29)、またはHEKRHH(配列番号29)を有し得る。
いくつかの態様において、本発明の合成ペプチドは、1種の金属結合ペプチドを包含する。他の態様において、合成ペプチドは、2種の金属結合ペプチドを包含する。さらなる態様において、合成ペプチドは、3種の金属結合ペプチドを包含する。ある態様において、金属結合ペプチドは、配列HEXXH(配列番号1)を有し、ここで各Xは、独立して、塩基性アミノ酸残基を指示する。当業者には容易に解されるであろうが、合成ペプチド中に1種以上の金属結合ペプチドを包含することは、金属イオンのキレート性、抗炎症性、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害性、および/または抗血管新生の活性を、合成ペプチドへ付与する。その抗血管新生の活性に照らせば、かかる合成ペプチドは、加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、がん、および慢性または急性の重症のブドウ膜炎の処置に使用されるであろう。その金属イオンのキレート性の活性に照らせば、かかる合成ペプチドはまた、感染性の角膜炎、眼内のブドウ膜炎、眼内炎、炎症性の角膜炎、ドライアイ疾患、および眼表面疾患または眼内疾患などの炎症性ならびに感染性の疾患における、マトリックスメタロプロテイナーゼおよび他の金属依存性酵素によって媒介される組織破壊の阻害にも使用されるであろう。
本明細書に使用されるとき、「創傷治癒ペプチド」は、創傷治癒を促進または容易にさせるアミノ酸モチーフを指す。いくつかの側面において、創傷治癒ペプチドは、ヒスタチンに由来する。ヒスタチンに由来する創傷治癒ペプチドの例は、配列SNYLYDN(配列番号2)を包含するペプチドである。別の側面において、創傷治癒ペプチドは、アミノ酸配列SHXGY(配列番号3)を包含するが、ここでXは、R、K、H、D、またはEである。結果的に、創傷治癒ペプチドは、アミノ酸配列SHRGY(配列番号31)、SHDGY(配列番号32)、SHKGY(配列番号33)、SHHGY(配列番号34)、またはSHEGY(配列番号35)を有し得る。いくつかの側面において、創傷治癒ペプチドは、追加の1~5アミノ酸残基をC末端および/またはN末端上に有していてもよい。例えば、追加の1~5アミノ酸残基は、ネイティブなアミノ酸残基である。例証として、配列SHRGY(配列番号31)は、以下のとおり、ヒスタチン3内に存在する:DSHAKRHHGYKRKFHEKHHSHRGYRSNYLYDN(配列番号8)。結果的に、創傷治癒ペプチドが、ヒスタチンに由来するとき、該ペプチドは、配列HHSHRGYRSN(配列番号36)、HEKHHSHRGY(配列番号37)、EKHHSHRGYR(配列番号38)、KHHSHRGY(配列番号39)、HHSHRGY(配列番号40)、またはHSHRGY(配列番号41)を有し得る。
注目すべきことに、本発明の合成ペプチドに包含されるとき、SNYLYDN(配列番号2)またはSHXGY(配列番号3)の配列は、免疫モジュラトリ(immunomodulatory)活性を合成ペプチドへ授与するという追加の利点を有する。創傷治癒ペプチドは、上述の創傷治癒ペプチドの特定配列を包含し得るか、あるいは創傷治癒ペプチドのC-および/またはN末端上に1個と6個との間の追加のアミノ酸残基を包含し得る。例証として、ヒスタチンに由来する創傷治癒ペプチドは、配列YGDYGSNYLYDN(配列番号42)を有し得る。
いくつかの態様において、配列番号2または3の創傷治癒ペプチドに加えて、本発明の合成ペプチドは、第2の創傷治癒ペプチドを包含する。他の態様において、配列番号2または3の創傷治癒ペプチドに加えて、合成ペプチドは、2種の追加の創傷治癒ペプチドを包含する。さらなる態様において、配列番号2または3の創傷治癒ペプチドに加えて、合成ペプチドは、3種の追加の創傷治癒ペプチドを包含する。当業者には容易に解されるであろうが、合成ペプチドに1種以上の創傷治癒ペプチドを包含させることは、上皮細胞の遊走および拡散の活性を合成ペプチドへ付与する。したがって、かかる合成ペプチドは、創傷治癒、ならびに網膜色素上皮の治癒、非滲出型(dry)の加齢性黄斑変性症、眼表面疾患および眼表面の炎症性障害、眼の新血管新生(角膜および眼内、網膜、または脈絡膜を包含する)、およびドライアイ疾患の処置に使用されるであろう。
本発明の目的上、「抗微生物(の)」は、抗細菌剤と抗真菌剤との両方を包含する。結果的に、用語「抗微生物のペプチド」は、本明細書に使用されるとき、細菌細胞および/または真菌細胞に対して細胞増殖抑制性(cytostatic)のあるいは細胞破壊の活性(cytocidal activity)を呈するアミノ酸モチーフを指す。ヒスタチンの特徴付けは、HTNの正味の正電荷およびアミノ末部が、抗微生物活性を媒介することを指し示す。とりわけ、ヒスタチン3のアミノ酸配列RKFHEKHHSHRGYR(配列番号4)は、殺真菌性の活性を呈することが示されている(Oppenheim,et al.(2012)PLoS ONE 7(12):e51479)。同様に、配列AKRHHGYKRKFH(配列番号5)は、またP-113とも知られており、Candida albicansに対して殺真菌性の活性を呈する(Jang,et al.(2008)Antimicrob.Agents Chemother.5292):497-504)。よって、抗微生物ペプチドは、上述の抗微生物ペプチドの特定配列を包含し得るか、あるいは抗微生物ペプチドのC-および/またはN末端上に1個と6個との間の追加のアミノ酸残基を包含し得る。
いくつかの態様において、合成ペプチドは、1種の抗微生物ペプチドを包含する。他の態様において、合成ペプチドは、2種の抗微生物ペプチドを包含する。さらなる態様において、合成ペプチドは、3種の抗微生物ペプチドを包含する。ある態様において、抗微生物ペプチドは、配列RKFHEKHHSHRGYR(配列番号4)を有する。他の態様において、抗微生物ドメインは、配列AKRHHGYKRKFH(配列番号5)を有する。当業者には容易に解されるであろうが、合成ペプチドに1種以上の抗微生物ペプチドを包含させることは、抗真菌および/または抗細菌の活性を、合成ペプチドへ付与する。したがって、かかる合成ペプチドは、Candida目感染症などの微生物の感染症の処置、ならびに手術による移植に関連する感染症の予防に使用されるであろう。
同じかまたは異なる繰り返し単位を含有する合成ペプチドの例は、表2に提示される。
表2
Figure 2023526515000003
本発明のある側面において、外来性のまたは異種の分子は、合成ペプチドに包含される。具体的に言うと、いくつかの側面において、合成ペプチドは任意に、R1およびR2の一方もしくは両方へ直接付着された「Z」部分および/または「L」部分を包含するが、ここで「Z」部分と「L」部分との両方は、R1およびR2に関し外来性のまたは異種の分子である。用語「異種の分子」または「外来性の分子」は、ペプチドからは通常見出されも、R1および/またはR2アミノ酸配列とは典型的に関連することも全くない分子を指す。
いくつかの側面において、合成ペプチドは、「Z」部分を包含する。他の側面において、「Z」部分は、不在である。存在するとき、Zは、本明細書に定義されるとおりの外来性のペプチドである。この側面によると、Zは、1~50アミノ酸残基ペプチド、または好ましくは1~30アミノ酸残基ペプチド、またはより好ましくは1~20アミノ酸残基ペプチドであり、ここで該外来性のペプチドは、機能を有していてもまたは有していなくてもよい。
本明細書に使用されるとき、用語「L」もしくは「リンカー」、または「スペーサー」は、R1をR2へ接続、連結、もしくは結び合わせるため、および個々のR2部分を接続、連結、もしくは結び合わせるために使用される異種のまたは外来性の分子を指す。本明細書に使用されるとき、用語「連結された」、「結び合わされた」、または「接続された」は一般に、全く存在しない分子を産生する、2つの連続または隣接するアミノ酸配列間の機能的な繋がりを指す。一般に、連結されたアミノ酸配列は、相互に連続または隣接しており、結び合わされたときそれら夫々の操作性および機能を保持している。リンカーは、合成ペプチドの、所望される発現、活性、および/または立体配座の位置決めを可能にする、所望のフレキシビリティ(flexibility)を提供してもよい。
いくつかの態様において、合成ペプチドは、1種のリンカー、すなわち、n=1を包含する。他の態様において、合成ペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19種のリンカーを包含する、すなわち、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19である。ある側面において、リンカー(L)の各出現は、同じかまたは異なるリンカーを包含していてもよい。
式Iで表される合成ペプチドにおいて使用されるリンカーは、フレキシブルな(flexible)もの、リジッドな(rigid)もの、in vivoで切断可能なもの、またはそれらの組み合わせであり得る。加えて、リンカーは、アミノ酸残基(すなわち、ペプチドリンカー)から構成され得るか、または炭化水素の鎖(すなわち、炭化水素リンカー)から構成され得る。ペプチドリンカーは、R1部分とR2部分とをまたは個々のR2部分を接続するのに、いずれの適切な長さであってもよく、好ましくは、R1とR2との、正しい折り畳み、および/または機能、および/または活性を可能にさせるよう設計されている。よって、リンカーペプチドは、3以下、5以下、10以下、15以下、20以下、25以下、30以下、35以下、40以下、45以下、50以下、55以下、または60以下のアミノ酸の長さを有し得る。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50アミノ酸の長さを有し得る。いくつかの態様において、リンカーは、少なくとも10アミノ酸かつ60以下のアミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ55以下のアミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ50以下のアミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ45以下のアミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ以下の40アミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ35以下のアミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ30以下のアミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ25以下のアミノ酸、少なくとも10アミノ酸かつ20以下のアミノ酸、または少なくとも10アミノ酸かつ15以下のアミノ酸を包含する。
「フレキシブルな」リンカーは、溶液中、固定された構造を(2次構造も3次構造も)有さない、炭化水素リンカーまたはペプチドリンカーを指す。したがって、かかるフレキシブルなリンカーは、様々な立体配座を自由に採用できる。本明細書に使用のフレキシブルなリンカーは、小さい、非極性の(例として、Gly)、および/または極性の(例として、SerもしくはThr)アミノ酸残基から構成される炭化水素リンカーならびにペプチドリンカーを包含する。単純なアミノ酸(例として、単純な側鎖(例として、H、CH3、またはCH2OH)をもつアミノ酸は、これらアミノ酸上の分枝側鎖の欠如が、リンカー内に、結果的にはポリペプチド組成物内に、より大きなフレキシビリティ(例として、2次元または3次元のフレキシビリティ)を提供するところ、ペプチドリンカーでの使用が有利である。フレキシブルなリンカーは、フレキシビリティを維持するための追加のアミノ酸(ThrおよびAlaなど)、ならびに可溶性を改善するための極性アミノ酸(LysおよびGluなど)を含有していてもよい。アミノ酸は、リンカーが機能的なままである(例として、発現されたおよび/または活性のあるポリペプチド(単数もしくは複数)をもたらす)ことと調和していれば形はどうあれ、代替/反復し得る。フレキシブルなリンカーは、例えば、Chen,et al.(2013)Adv.Drug Deliv.Rev.65(10):1357-1369; US 2012/0232021; US 2014/0079701; W0 1999/045132; WO 1994/012520、およびWO2001/1053480に記載されている。
具体的な側面において、フレキシブルなリンカーは、炭化水素リンカーである。R1部分とR2部分とをまたは個々のR2部分を連結する炭化水素は、合成ペプチドが所望される立体配座を獲得できるように、充分な長さおよびフレキシビリティを有するはずである。ある態様において、炭化水素は、1以上のメチレン(-CH2-)基から構成される。ある態様において、炭化水素は、3個と25個との間のメチレン基、すなわち、-(CH2)n-(ここでnは、3~25である)を包含する。ある態様において、炭化水素リンカーは、構造-(CH2)6-を有する。グリコールリンカーなどの、炭素ベースの追加のリンカーもまた、本発明の合成ペプチドにおいて使用され得る。
他の態様において、リンカーは、リジッドなリンカーである。「リジッドな」リンカーは、溶液中にあるとき、比較的明確に定義された立体配座を採用する分子を指す。したがって、リジッドなリンカーは、溶液中、具体的な2次構造および/または3次構造を有するリンカーである。リジッドなリンカーは、典型的には、2次構造または3次構造をリンカーへ授与するのに充分なサイズにある。かかるリンカーは、芳香族分子(例として、US 6,096,875もしくはUS 5,948,648を見よ)、プロリンがリッチなペプチドリンカー、またはインフレキシブルな(inflexible)ヘリックス構造を有するペプチドリンカーを包含する。リジッドなリンカーは、例えば、Chen,et al.(2013)Adv.Drug Deliv.Rev.65(10):1357-1369; US 2010/0158823、およびUS 2009/10221477に記載されている。
他の態様において、リンカーは、in vivoで切断可能なリンカーである。In vivoで切断可能なリンカーは、2つのシステイン残基間に形成される切断可能なジスルフィド結合、またはプロテアーゼ認識配列(例として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって認識される)を有するリンカーを包含し得る。
合成ペプチドに使用される好適なペプチドリンカーの例は、表3に提供される。
表3
Figure 2023526515000004
nは、1~5である。Xは、いずれのアミノ酸残基であってもよいが、好ましくは、Ala、Lys、またはGluである。
本発明の合成ペプチドの個々のリンカーの各々は、同じであっても、または異なっていてもよい。いくつかの態様において、合成ペプチドは、少なくとも1種のフレキシブルなリンカーを包含する。いくつかの態様において、少なくとも1種のフレキシブルなリンカーは、炭化水素リンカーである。他の態様において、少なくとも1種のフレキシブルなリンカーは、ペプチドリンカーである。具体的な態様において、合成ペプチドの各リンカーは、炭化水素リンカーである。ある態様において、合成ペプチドの各リンカーは、構造-(CH2)6-を有する。
繰り返し単位とフレキシブルなリンカーとの組み合わせを含有する合成ペプチドの例は、表4に提示される。
表4
Figure 2023526515000005
いくつかの側面において、本発明のネイティブまたは合成のヒスタチンペプチドは、薬学的に許容し得る塩として調製される。本明細書に使用されるとき、用語「薬学的に許容し得る塩」は、妥当な医学的判断の範囲内で、適切でない毒性、刺激状態、アレルギー反応等もなくヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に好適であって、かつ合理的なベネフィット/リスク比に見合う、合成ペプチドのそれらの塩を指す。薬学的に許容し得る塩は、当該技術分野において周知である。例として、Berge,et al.(1977)J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19を見よ。塩は、本発明のペプチドの最終的な単離および精製の最中in situで、または遊離塩基を好適な有機酸と反応させることによって個別に、調製され得る。薬学的に許容し得る塩の例は、これらに限定されないが、アミノ基と、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸など)とまたは有機酸(酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸など)とから、あるいは当該技術分野において使用される他の方法(イオン交換など)を使用することによって形成される非毒性の酸付加塩を包含する。他の薬学的に許容し得る塩は、これらに限定されないが、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重硫酸、ホウ酸、酪酸、カンファー酸(camphorate)、カンファースルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グリセロリン酸、グルコン酸、ヘミ硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヨウ化水素酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ラクトビオン酸、乳酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、リン酸、ピクリン酸、ピバル酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸塩、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデカン酸、吉草酸の塩等を包含する。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を包含する。さらなる薬学的に許容し得る塩は、適切な場合に、対イオン(ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシラート、スルファート、ホスファート、ニトラート、1個から6個までの炭素原子を有するアルキル、スルホナート、およびアリールスルホナートなど)を使用して形成される、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンを包含する。
本明細書に記載のネイティブまたは合成のヒスタチンペプチドは、組換えタンパク質発現、化学合成、またはそれらの組み合わせを包含する定型的な方法によって、合成され得る。いくつかの態様において、本発明のペプチドは、組換えDNA技法を使用して組換えで合成される。よって、本発明は、かかるペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。関連する側面において、本発明は、ベクター、具体的には、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを持つ発現ベクターを提供する。ある態様において、ベクターは、真核細胞もしくは原核細胞において所望されるペプチドの組換え合成を容易にする、複製、転写、および/または翻訳の調節配列を提供する。結果的に、本発明はまた、ペプチドの組換え発現のための宿主細胞、ならびに宿主細胞によって産生された合成ペプチドを回収および精製する方法も提供する。組換えペプチドの産生および精製は、当業者にとって定型的な行為(practice)であって、いずれの好適な方法論も使用され得る。
別の態様において、ネイティブまたは合成のヒスタチンは、当該技術分野において知られている化学合成技法、具体的には固相合成技法のいずれによっても、例えば、市販の自動ペプチドシンセサイザーを使用して合成される。例えば、Stewart & Young(1984)Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,Pierce Chemical Co.; Tarn,et al.(1983)J.Am.Chem.Soc.105:6442-55; Merrifield(1986)Science 232:341-347;およびBarany et al.(1987)Int.J.Peptide Protein Res.30:705-739を見よ。
ネイティブまたは合成のヒスタチンは、当該技術分野において知られているいずれの好適な方法(限定せずに、ゲル濾過および親和性精製を包含する)によっても、単離および/または精製され得る。いくつかの態様において、ペプチドは、タグ(例として、エピトープタグ)とともに産生されて、ペプチドの単離を容易にする。一側面において、ペプチドは、SDS-PAGEによって決定されるとおり、少なくとも1%純粋(pure)、例として、少なくとも5%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも20%純粋、少なくとも40%純粋、少なくとも60%純粋、少なくとも80%純粋、および少なくとも90%純粋である。ひとたび単離および/または精製されると、ペプチドの特性は、当業者に知られている技法によって容易に検証され得る。
本明細書に記載のペプチドの誘導体および類似体がすべて企図されており、それらのアミノ酸配列を置換、付加、および/または欠失/切断(truncation)によって変更することによって、あるいは機能的に等価な分子をもたらす化学的修飾を導入することによって、作製され得る。いずれのポリペプチド配列中のあるアミノ酸も、ポリペプチドの活性に悪影響を及ぼさずに他のアミノ酸に代わられてもよいことは、当業者によって理解されるであろう。
ある態様において、本発明のネイティブまたは合成のヒスタチンペプチドは、限定せずに、リン酸化、グリコシル化、ヒドロキシル化、スルホン化、アミド化、アセチル化、カルボキシル化、パルミチル化、ペグ化、非加水分解性結合の導入、およびジスルフィド形成を包含する1以上の修飾を包含する。修飾は、ペプチドの安定性および/または活性を改善するものであってもよい。
例えば、C末は、アミド化、ペプチドアルコールおよびアルデヒドの付加、エステルの付加、またはp-ニトロアニリンおよびチオエステルの付加で修飾されていてもよい。N末および側鎖は、ペグ化、アセチル化、ホルミル化、脂肪酸の付加、ベンゾイルの付加、ブロモアセチルの付加、ピログルタミルの付加、スクシニル化、テトラブトキシカルボニルの付加および3-メルカプトプロピルの付加、アシル化(例として、リポペプチド)、ビオチン化、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、マレイミド基、キレート化部分、発色団、またはフルオロフォアの導入によって修飾されていてもよい。
一態様において、ネイティブまたは合成のヒスタチンペプチドは、脂肪酸へ抱合されている、例として、ペプチドは、ミリスチル化されている。例えば、脂肪酸は、ペプチドのN末端へ抱合されていてもよい。かかる脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等々を包含する。さらにまた、ペプチド中のシステインは、パルミトイル化され得る。一態様において、ペプチドは、N末アミノ酸にて、ミリスチル化、ステアリル化、またはパルミトイル化されている。
翻訳後修飾へ加えて、またはこれの代替手段として、ペプチドは、担体ペプチドなどの別のペプチドへ抱合または連結され得る。担体ペプチドは、細胞浸透を容易にするものであってもよく、アンテナペディアペプチド、ペネトラチンペプチド、TAT、トランスポータン、またはポリアルギニンなどのペプチドを包含し得る。ある態様において、ネイティブまたは合成のヒスタチンペプチドは、アンテナペディアペプチド、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号69)へ抱合または連結されている。
本発明のネイティブまたは合成のヒスタチンペプチドはまた、環化されていてもよい。本明細書に使用されるとき、用語「環化された」または「環状(の)」は、少なくとも1つの架橋基(例として、アミド、チオエーテル、チオエステル、ジスルフィド、尿素、カルバマート、炭化水素、またはスルホンアミド)をアミノ酸残基間へ組み込むことで環状構造を形成する線状ペプチドの類似体を指定する。架橋基は、アミノ酸残基の側鎖または末端のアミノ酸残基上に存在し、それによって、側鎖の環化(例として、ラクタム架橋、チオエステル)、頭尾環化、または炭化水素で留められた(-stapled)ペプチドが提供され得る。
ある態様において、環状ペプチドは、ジスルフィド架橋を2つの末端システイン残基間に有する。環化された代表的な合成ペプチドは、表5に提供される。
表5
Figure 2023526515000006
「Sp」または「S(PO3)」は、リン酸化されたセリンを指示する。
他の態様において、環状ペプチドは、線状ペプチドから、ソルターゼでの環化によって調製される。「ソルターゼでの環化」または「ソルターゼで環化された」は、酵素ソルターゼを使用して線状ペプチドを環化する方法を指す。大環状ペプチドの製造について、ソルターゼをベースとした環化が当該技術分野において知られている。Bolscher,et al.(2011)FASEB J.25(8):2650-2658、およびこれに引用された参考文献を見よ。
ブテラーゼ(Butelase)環化もまた、ペプチドを環化するのに使用されている。トリペプチドAsn-His-ValモチーフのC末端での付加は、ソルターゼAより有意に速い速度にて合成ペプチドを環化するブテラーゼのための基質を提供する。Nguyen,et al.(2016)Nat.Protocols 11:1977-88;Tam,et al.(June 2015)Peptides 2015:Proc.24th Am.Pept.Symp.,Orlando,FL,pg.27を見よ。
本明細書の原理に従うと、ヒスタチンペプチドは、コレステロールの局在化をモジュレートし得、カルシウムシグナリングをモジュレートし得、アポトーシスのシグナリングをモジュレートし得、および細胞死をモジュレートし得、およびNPC1欠損症の表現型を低減し得、それによって、これらに限定されないが、ニーマン・ピック病C型、神経変性(例として、アルツハイマー病)、外傷性脳損傷、慢性疼痛、がん、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、高コレステロール血症、肝臓疾患、脂肪肝による代謝障害、脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎、肝脾腫大症、2型糖尿病、重量増加、脂質異常症等を包含する数多の疾患および疾患表現型の処置に影響が及ぼされる。この結果が実証される1つの方法は、フィリピン染色を使用する標準化された表現型アッセイ、カスパーゼアッセイ、カルシウム染色、および細胞生存率アッセイにある。本明細書に提示された結果は、ヒスタチンの、コレステロールの蓄積を低減する、野生型細胞中のカルシウムレベルを減少する、NPC1細胞中のカルシウムレベルを増加させる、有毒な攻撃(toxic assaults)に起因する細胞生存率の低下を推定する、およびNPC1モデルにおいてLC3の蓄積を低減する能力を実証する。したがって、本発明はまた、コレステロールの蓄積を低減する、カルシウムシグナリングをモジュレートする、アポトーシスのシグナリングを減少させる、細胞生存率の低下を低減させる、LC3タンパク質蓄積を低減させる方法も、ならびにNPC1疾患、NPC2疾患、および他のリソソーム蓄積症の処置における方法も提供する。
様々なリソソーム蓄積症が、様々な手法で分類されていてもよいが、本開示の範囲内にある。一態様において、リソソーム蓄積症は、糖原病、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、オリゴ糖代謝異常、リピドーシス、スフィンゴリピドーシス、およびリソソーム輸送疾患のいずれかから選出される。スフィンゴリピドーシスは、ニーマン・ピック病A型/B、ゴーシェ病I/II/III型、クラッベ病、ファブリー病、シンドラー病、GM1ガングリオシドーシス、モルキオB病、GM2ガングリオシドーシス、異染性白質ジストロフィー、ファーバー病、多種スルファターゼ欠損症、リソソーム酸リパーゼ欠損症、ガラクトシアリドーシス、テイ・サックス病、テイ・サックス病のAB変異体、およびサンドホフ病のいずれかから選出されてもよい。ムコリピドーシスは、ムコリピドーシスI、ムコリピドーシスII、ムコリピドーシスIII、およびムコリピドーシスIVのいずれかから選出されてもよい。オリゴ糖代謝異常は、ベータ-マンノシドーシス、アルファ-フコシドーシス、およびアスパルチルグルコサミン尿症のいずれかから選出されてもよい。別の側面によると、オリゴ糖代謝異常は、アスパルチルグルコサミン尿症である。リピドーシスは、ニーマン・ピック病C型、ニーマン・ピック病D型、神経セロイドリポフスチン症(I型~X型を包含)、およびウォルマン病のいずれかから選出されてもよい。一態様において、リピドーシスは、ニーマン・ピック病C型である。
糖原病は、乳児発症型ポンペ病、遅発性ポンペ病、およびダノン病から選出されてもよい。リソソーム輸送疾患は、シスチン症、濃化異骨症、シアル酸蓄積症および乳児型遊離シアル酸蓄積症から選出されてもよい。
リソソーム蓄積症は、主要なリソソーム加水分解酵素の欠陥、リソソーム酵素の翻訳後プロセシングの欠陥、リソソーム酵素の輸送(trafficking)の欠陥、リソソーム酵素の保護の欠陥、可溶性非酵素リソソームタンパク質の欠陥、膜貫通型(非酵素)タンパク質の欠陥、または未分類の欠陥であってもよい。
一態様において、リソソーム蓄積症は、主要なリソソーム加水分解酵素の欠陥から選出される。主要なリソソーム加水分解酵素の欠陥は、これらに限定されないが、テイ・サックス病(β-ヘキソサミニダーゼA欠陥)、サンドホフ病(β-ヘキソサミニダーゼA+B欠陥)、ファブリー病(α-ガラクトシダーゼA欠陥)、クラッベ病(β-ガラクトシルセラミダーゼ欠陥)、ニーマン・ピックA型およびB型(スフィンゴミエリナーゼ欠陥)、異染性白質ジストロフィー(アリルスルファターゼA欠陥)、MPS IH(ハーラー症候群;α-イズロニダーゼ欠陥)、MPS IS(シャイエ症候群;α-イズロニダーゼ欠陥)、MPS IH-S(ハーラー・シャイエ症候群;α-イズロニダーゼ欠陥)、MPS II(ハンター症候群;イズロン酸スルファターゼ欠陥)、MPS IIIA(サンフィリポA症候群;へパランスルファミダーゼ欠陥)、MPS IIIB(サンフィリポB症候群;アセチルα-グルコサミニダーゼ欠陥)、MPS IIIC(サンフィリポC症候群;アセチルCoA:α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ欠陥)、MPS IIID(サンフィリポD症候群;N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ欠陥)、MPS IV A(モルキオA病;アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ欠陥)、MPS IVB(モルキオB病;β-ガラクトシダーゼ欠陥)、MPS V(再指定されたMPS IS)、MPS VI(マロトー・ラミー症候群;アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ(アリルスルファターゼB)欠陥)、MPS VII(スライ症候群;β-グルクロニダーゼ欠陥)、MPS IX(ヒアルロニダーゼ欠陥)、ウォルマン/コレステリルエステル蓄積症(WD;酸性リパーゼ欠陥)、ポンぺ病(II型;α1,4-グルコシダーゼ欠陥)、アスパルチルグルコサミン尿症(グリコシルアスパラギナーゼ欠陥)、フコシドーシス(α-フコシダーゼ欠陥)、α-マンノシドーシス(α-マンノシダーゼ欠陥)、β-マンノシドーシス(β-マンノシダーゼ欠陥)、シンドラー病(N-アセチルガラクトサミニダーゼ欠陥)、シアリドーシス/ML I(α-ノイラミニダーゼ欠陥)、乳児型神経セロイドリポフスチン症(CLN1;パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ欠陥)、遅発型小児性神経セロイドリポフスチン症(CLN2;カルボキシペプチダーゼ欠陥)、早期乳児型GM1ガングリオシドーシス、遅発乳児型GM1ガングリオシドーシス、成人型乳児型GM1ガングリオシドーシス、ゴーシェ病1型(非神経障害性)、ゴーシェ病2/3型(神経障害性)、神経セロイドリポフスチン症4型(CLN4;クッフス病;成人型NCL;パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ-1欠損症(A型);カテプシンF欠損症(B型))、神経セロイドリポフスチン症4型(CLN10;先天性カテプシンD欠損症)、濃化異骨症(カテプシンK欠陥)、乳児発症型ポンペ病、遅発性ポンペ病、ファーバー病(ファーバー脂肪肉芽腫症;セラミダーゼ欠損症;線維芽細胞ムコ多糖異常症(Fibrocytic dysmucopolysaccharidosis);脂肪肉芽腫症)、およびガラクトシアリドーシス(防御タンパク質カテプシンA欠陥、PPCA欠陥)を包含する。一態様において、主要なリソソーム加水分解酵素の欠陥は、テイ・サックス病、サンドホフ病、ニーマン・ピックA型、ニーマン・ピックB型、神経セロイドリポフスチン症、ゴーシェ病、ファブリー病、クラッベ病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、異染性白質ジストロフィー、およびファーバー病から選出される。一態様において、主要なリソソーム加水分解酵素の欠陥は、テイ・サックス病、サンドホフ病、ニーマン・ピックA型、ニーマン・ピックB型、およびGM1ガングリオシドーシスから選出される。
一側面において、リソソーム蓄積症は、リソソーム酵素の翻訳後プロセシングの欠陥から選出される。リソソーム酵素の翻訳後プロセシングの欠陥は、これらに限定されないが、ムコスルファチドーシス(mucosulphatidosis)(MSD;多種スルファターゼ欠損症)、MLII(I細胞病;N-アセチルグルコサミンホスホリルトランスフェラーゼ欠陥)、およびMLIII(偽性ハーラー・ポリジストロフィー;N-アセチルグルコサミンホスホリルトランスフェラーゼ欠陥)を包含する。
別の側面において、リソソーム蓄積症は、リソソーム酵素の輸送の欠陥から選出される。リソソーム酵素の輸送の欠陥は、これらに限定されないが、ムコリピドーシスII型(I細胞病;N-アセチルグルコサミンホスホリルトランスフェラーゼ欠陥)、ムコリピドーシスIDA型(偽性ハーラー・ポリジストロフィー; N-アセチルグルコサミンホスホリルトランスフェラーゼ欠陥)、およびムコリピドーシスIIIC型を包含する。
さらなる側面において、リソソーム蓄積症は、リソソーム酵素の保護の欠陥である。リソソーム酵素の保護の欠陥は、これらに限定されないが、ガラクトシアリドーシス(防御タンパク質カテプシンA(PPCA)の欠陥)を包含する。
もう1つの側面において、リソソーム蓄積症は、可溶性非酵素リソソームタンパク質の欠陥である。可溶性非酵素リソソームタンパク質の欠陥は、これらに限定されないが、GM2アクチベータータンパク質欠乏症(変異体AB)、ニーマン・ピック病C型2(NPC2)、スフィンゴ脂質アクチベータータンパク質(SAP)欠損症を包含する。
なおもさらなる側面において、リソソーム蓄積症は、膜貫通型(非酵素)タンパク質欠陥である。膜貫通型(非酵素)タンパク質の欠陥は、これらに限定されないが、ダノン病(リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2)欠陥)、NPC(NPC1欠陥)、シスチン症(シスチノシン欠陥)、乳児型遊離シアル酸蓄積症(ISSD;シアリン欠陥)、サラ病(遊離シアル酸蓄積;シアリン欠陥)、若年型神経セロイドリポフスチン症(CLN3、バッテン病)、成人型神経セロイドリポフスチン症(クッフス病;成人型NCL;パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ-1欠損症(A型);カテプシンF欠損症(B型))、神経セロイドリポフスチン症(NCL)(CLN6、CLN7、およびCLN8)、ならびにムコリピドーシスIV型(ムコピリン欠陥)を包含する。
具体的な側面において、リソソーム蓄積症は、ニーマン・ピックC1型またはニーマン・ピックC2型である。ニーマン・ピック病は、常染色体劣性リソソーム蓄積症の混成群である。一般的な細胞の特色は、単核食細胞および実質組織ならびに(肝)脾腫における正常でないスフィンゴミエリン(SM)蓄積を包含する。主な3下位群(A~C)のうち、NPCは、後期エンドソーム/リソソームコンパートメントにおいて正常でない細胞内コレステロール輸送に誘導される非エステル化コレステロールの蓄積によって引き起こされる、致死的な内臓神経のリソソーム蓄積症として分類される。CNS外部のNPCの細胞特徴は、後期エンドソーム/リソソームコンパートメント内の非エステル化コレステロールおよび他の脂質(例として、GSL)の正常でない蓄積を包含する。逆に言うと、CNSにおいては正味のコレステロール上昇はない(だが分布の変更はある)が、GSLレベルは高度に上昇している。進行性の神経変性は、小脳性運動失調とNPC経過中に見られる神経学的機能障害の他の側面との発病および進行と並行する、小脳におけるGABA作動性プルキンエニューロンの逐次的な変性によって具体的に特徴付けられる。遺伝学研究によって、NPC病は、Npc1遺伝子またはNpc2遺伝子のいずれかにおける突然変異によって引き起こされることが示されている。NPC1は、後期エンドソーム/リソソーム限界膜の多層膜(multimembrane)貫通タンパク質をコードするのに対し、NPC2は、リソソームの可溶性コレステロール結合タンパク質である。NPC1が不活性化されと、スフィンゴシンは、貯蔵されるべき最初の脂質になるが、このことはNPC1がリソソーム(ここでスフィンゴシンは通常、スフィンゴ脂質異化の一環として生成される)からのスフィンゴシンの輸送において役割を果たすことを示唆する。上昇したスフィンゴシンは次に、酸性貯蔵体中へのカルシウム侵入の欠陥を引き起こして、このコンパートメントからのカルシウム放出の大きな低減をもたらす。これは次いで、カルシウム依存性プロセスである後期エンドソーム-リソソームの融合を防止して、後期エンドサイトーシス経路を通した運搬における貨物(cargos)である脂質(コレステロール、スフィンゴミエリン、およびスフィンゴ糖脂質)の二次蓄積を引き起こす。NPC1機能を阻害することの他の二次的な因果関係として、エンドサイトーシスに欠陥があること、および自食作用胞を取り除き損ねることが挙げられる。NPC1/NPC2細胞経路は、病原性マイコバクテリアによって標的にされて、後期エンドソームにおけるそれらの生存が促進されることが示されている。
投与を容易にするため、本発明はまた、1種以上のネイティブおよび/または合成のペプチド、および/またはそのフラグメントと、薬学的に許容し得る担体または賦形剤とを含有する組成物も提供する。本明細書に提供される医薬組成物は、経口、眼、静脈内、硝子体内、結膜下、皮下、筋肉内、腹腔内、脳内、動脈内、門脈内、病巣内、髄腔内、もしくは鼻腔内の投与、または局所投与のために製剤化され得る。好適な医薬組成物は、例えば、意図される投与ルート、送達形式、および所望される投薬量に依存して、当業者によって決定され得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th edition,1995)を見よ。
ネイティブおよび/または合成のペプチド(単数もしくは複数)は、ゲル、洗浄薬、クリーム、錠剤、カプセル、丸薬、溶液、点眼薬、スプレー、包袋、コンタクトレンズ、デポー、注射可能な、埋込型の、持続放出の製剤、または持続的な薬物送達系などの従来の剤形に組み込まれ得る。剤形はまた、必要な、生理学的に許容し得る担体材料、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、界面活性剤、抗細菌薬、増量剤(マンニトールなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸もしくは重亜硫酸ナトリウム)、または同種のものも包含することがある。
許容し得る製剤材料は、好ましくは、採用される投薬量および濃度にて、レシピエントに対し非毒性である。医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明さ、色、等張性、臭い、無菌状態、安定性、溶解速度もしくは放出速度、吸着もしくは浸透を修飾、維持、または保存するための製剤材料を含有していてもよい。好適な製剤材料は、これらに限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリシンなど);抗微生物剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、もしくは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、もしくは他の有機酸など);増量剤(マンニトールもしくはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、もしくはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類、二糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど);着色料、フレーバー剤、および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);保存料(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、もしくは過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールもしくはソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(PLURONICS、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20およびポリソルベート80などのポリソルベート、TRITON、トロメタミン(trimethamin)、レシチン、コレステロール、もしくはチロキサポール(tyloxapal)など);安定性増強剤(スクロースもしくはソルビトールなど);弾力性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくはナトリウムもしくはカリウム塩化物、マンニトール、またはソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または医薬用アジュバントを包含する。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Idを見よ。
医薬組成物中の主要な担体または賦形剤は、水性または非水性いずれかの性質であってもよい。例えば、好適な担体または賦形剤は、注射用水、生理食塩水、もしくは人工脳脊髄液であってもよく、または非経口投与のための組成物に共通する他の材料で補充されていてもよい。中性緩衝生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示の賦形剤である。医薬組成物は、約pH7.0~8.5のトリス緩衝剤、または約pH4.0~5.5の酢酸緩衝剤を包含し得、これはさらにソルビトールまたは好適な代替物を包含していてもよい。本発明の医薬組成物は、所望される純度を有する選択される組成物と任意の製剤化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences,Id.)とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水性溶液の形態で保管のために調製されていてもよい。さらに、本発明のペプチドは、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として製剤化されていてもよい。
本発明の医薬組成物のための投与ルートは、経口ルート;静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、もしくは病巣内のルートによる注射;または持続放出系を介するかもしくは埋め込みデバイスによるものを包含する。医薬組成物は、ボーラス注射によって投与されても、または注入もしくは埋め込みデバイスによって絶えず投与されてもよい。医薬組成物はまた、合成ヒスタチン(単数もしくは複数)が吸収またはカプセル化された膜、海綿、あるいは別の適切な材料の埋め込みを介して局部的にも投与され得る。埋め込みデバイスが使用される場合、デバイスは、いずれの好適な組織または器官中へ移植されてもよく、内在性または合成のヒスタチン(単数もしくは複数)の送達は、拡散、時限放出ボーラス、または連続投与を介してもよい。
非経口投与が企図されるとき、本発明における使用のための組成物は、本発明のネイティブおよび/または合成のヒスタチン(単数もしくは複数)を薬学的に許容し得るビヒクル中に含有する、パイロジェンフリーの非経口的に許容し得る水性溶液の形態であってもよい。非経口注射のための具体的に好適なビヒクルは、ペプチド(単数または複数)が滅菌等張溶液として製剤化されて適切に保存されている滅菌蒸留水である。調製は、ペプチド(単数もしくは複数)の制御放出または持続放出を提供できる薬剤(注射可能なミクロスフェア、生体分解可能な(bio-erodible)粒子、高分子化合物(ポリ乳酸もしくはポリグリコール酸など)、ビーズ、またはリポソームなど)との、ペプチド(単数または複数)の製剤化を伴い得、これらは次いでデポー注射を介して送達されてもよい。とりわけ、ヒアルロン酸との製剤化は、循環時間の持続を促進する効果を有する。
組成物はまた、吸入のためにも製剤化されていてもよい。これらの態様において、本発明のペプチド(単数もしくは複数)は、吸入用の乾燥粉末として製剤化されるか、あるいは吸入溶液はまた、エアロゾル送達(噴霧などによる)のために噴霧剤とともに製剤化されていてもよい。経肺投与は、例としてWO 1994/020069にさらに記載されている。
本発明の医薬組成物は、経口など、消化管を通して送達され得る。かかる薬学的に許容し得る組成物の調製は、当該技術分野における技能の範囲内にある。この様式で投与される本発明のペプチド(単数または複数)は、固体剤形(錠剤およびカプセルなど)の配合において習慣的に使用されるそれら担体の有無にかかわらず、製剤化されていてもよい。カプセルは、バイオアベイラビリティが最大化されかつ全身での事前分解が最小化される胃腸管内の時点で、製剤の活性部分を放出するように設計されていてもよい。追加の薬剤は、合成ペプチド(単数または複数)の吸収を容易にするために包含され得る。希釈剤、フレーバー剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および結合剤もまた、使用されていてもよい。
これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントも含有していてもよい。微生物作用の予防は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を包含することによって保証され得る。等張剤、たとえば、糖、塩化ナトリウム等を包含することもまた、所望されることがある。注射可能な医薬形態の持続的な吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる薬剤を包含させることによってもたらされ得る。
ある態様において、ネイティブおよび/または合成のヒスタチンペプチド(単数または複数)は、液滴(drop)形態で;局所ゲル形態で;固体製剤(例として、ヒドロキシプロピルセルロース眼科用挿入物であるLACRISERTと同様のもの)として;目の前眼房中への注射剤によって;血管新生の阻害のため、破壊的MMP活性の阻害のため、または上皮の創傷治癒を増強するため、目の後眼房中への注射剤によって;手術用デバイス(眼内レンズ、緑内障デバイス、人工角膜移植(keratoprosthetic)、涙管への挿管用管、涙管の迂回用管)のコーティング剤によって;コンタクトレンズのコーティング剤によって;マイクロビーズ、ナノビーズ、または他の同様の構築物のコーティング剤によって;全身送達のために;洗口薬または洗口ゲル(mouth washes or gels)における送達のために;エマルション、クリーム、ゲル、軟膏、またはチンキ剤を通した局所適用における送達のために;長時間持続する(long standing)デポー注射剤によって;経口、経鼻、経静脈洞、経肺、もしくは経上気道粘膜に対する刺激応答性または遅延放出(triggered or delayed release)の製剤として;あるいは、経直腸または経カテーテル(GI、GU、造瘻術)用の製剤として、製剤化されている。
好適な送達方法はさらに、中枢神経系もしくは血液脳関門に浸透させるための、従来のマイクロ粒子またはナノ粒子の送達系を包含する。例として、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド)、もしくは乳酸およびグリコール酸(ポリ(乳酸-co-グリコール酸))コポリマー(PLGA)から構成される、マイクロ粒子またはナノ粒子;トランスフェリンまたはラクトフェリンで表面修飾されたPLGAナノ粒子;ポリエチレングリコールのブロックを含有し、かつ中性近くに帯電した表面を有する、ポリエチレングリコールまたはブロックコポリマーで密にコーティングされたナノ粒子;シクロデキストリンに基づく送達系;等。例として、WO 2020/210805 A1を見よ。
また当業者にも解されるであろうが、本明細書に記載の組成物は、有害な副作用が最小限になるよう製剤化され得る。本明細書に記載の組成物は、単独での繰り返し可能なかつ長期の使用に好適;補助治療として有用;および/または、薬剤の交代(それによって、いずれか1つの薬剤への長期曝露(したがって、それによって生じる副作用)が減少する)を伴うプログラムにおいて有用であり得る。
眼組織における創傷治癒および上皮細胞の遊走促進活性において、TMEM97およびNPC1経路の役割が新たに同定されたことを考えると、本発明はまた、TMEM97および/またはNPC1の活性をモジュレートする薬剤を使用して眼疾患を処置する方法も提供する。かかる剤は、これらに限定されないが、オピプラモール、MIN-101(2-[[1-[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]ピペリジン-4-イル]メチル]-3H-イソインドール-1-オン)、CT-1812、シラメシン、リムカゾール、イボガイン、アホバゾール、BMY-14802(1-(4-フルオロフェニル)-4-[4-(5-フルオロ-2-ピリミジニル)-1-ピペラジニル]-1-ブタノール)、およびパナメシンを包含する。上記のTMEM97リガンドは、例として、ドイツ連邦共和国特許第1,132,556号、米国特許第9,458,130号、第7,166,617号、第8,765,816号、PCT刊行物第WO 2015/116923号、米国特許第5,665,725号、第4,379,160号、第4,499,096号、ロシア国特許第2,061,686号、ロシア国特許第2,485,954号、米国特許第4,605,655号、および第5,232,931号に記載されている。追加の例示TMEM97リガンドは、11C-PB-28、125I-RHM-4、125I-IAC44、125I-IAF(1-N-(2',6'-ジメチル-モルホリノ)-3-(4-アジド-3-[(125)I]ヨード-フェニル)プロパン、18F-イソ-1、2-(4-(3-(4-フルオロフェニル)インドール-1-イル)ブチル)-6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン)、3H DTG、3H-アジド-DTG、3H-PB28、3H-RHM-1、99mTc BAT-EN6、99mTc-4-(4-シクロヘキシルピペラジン-1-イル)-ブタン-1-オン-1-シクロペンタジエニルトリカルボニルテクニチウム、ABN-1、AG-205、ANSTO-19、ベンゾオキサゾロン、BIMU-1、CB-182、CB-184、CB-64D、CB-64L、コカイン、ジトリルグアニジン(DTG)、F281、インドール((1-[3-[4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル]-プロピル]-1H-インドール、K05-138、K05-138、N-ベンジル-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、PB183、PB28、RHM-1、RHM-138、RHM-2、RHM-4、SM-21、SN79、SV119、SW107、SW116、SW120、SW43、TC4ANSTO-19、WC-21、WC-26、WC-59、yun179、yun194、yun201、yun202、yun203、yun204、yun209、yun210、yun212、yun234、yun236、yun242、yun243(RMH-1)、yun245、yun250、yun251、yun253、yun254、およびyun552である。上記のリガンドは、例として、Guo & Zhen(2015)Curr.Med.Chem.22(8):989-1003;およびMach,et al.(2013)J.Med.Chem.56(18):7137-60に記載されている。さらなる例示のTMEM97リガンドは、SAS-0132(ベンジル(1R,5S)-8-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1,3,4,5-テトラヒドロ-2H-1,5-メタノベンゾ[c]アゼピン-2-カルボキシラート)、CM398(1-(4-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)ブチル)-3-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2(3H)-オン)、LR-132、LR-172、MS-377、BIMU-1、RS-23597-190、BMS-181100、DKR-1051、DKR-1005、JVW-1009、ならびに2(3H)-ベンゾチアゾロンおよび2(3H)-ベンゾチアゾロン、たとえば、CM-156およびCM777、ならびにYi,et al.(2017)J.Neurochem.140(4):561-575に記載のいずれの追加の化合物も包含する。追加の例示TMEM97リガンドは、化合物12、16、20、39、40、19、38、27、41、42、43、44、32、33、34、35、36、37、28、29、30、31(SAS-1121)、およびSahn,et al.(2016)ChemMedChem.11(6):556-61に記載のいずれの追加の化合物も包含する。追加のTMEM97リガンドは、米国特許出願刊行物第2006/0004036号、米国特許出願刊行物第2012/0190710号、米国特許出願刊行物第2013/0274290号、PCT刊行物第WO 01/85153号、PCT刊行物第WO 2001/80905号、PCT刊行物第WO 1997/34892号、PCT刊行物第WO 1997/30038号、PCT刊行物第WO 1996/05185号、欧州特許刊行物第0881220号、米国特許第6,015,543号、第5,993,777号、第5,919,934号、第5,969,138号、第5,911,970号、およびPCT刊行物第WO 2001/85153号に開示されている。追加のリガンドは知られており、Huang,et al.(2014)Med.Res.Rev.34(3):532-66; Cheng et al.(2020)Curr.Med.Chem.27:1-18; Floresta,et al.(2018)Marine drugs 16(10):384; Rescifina,et al.(2017)Data Brief 13:514-35; Nastasi,et al.(2017)J.Cheminformatics 9(1):1-9); Alon,et al.(2021)bioRxiv 2021.04.29.441652;およびS2RSLDBデータベースに記載されている。いくつかの態様において、薬剤は、TMEM97活性をモジュレートし、TMEM97に拮抗する。他の態様において、TMEM97活性をモジュレートする薬剤は、TMEM97に拮抗する。
有効量の、1以上の上述のTMEM97リガンドを使用して処置され得る眼疾患は、これらに限定されないが、数ある中でも、眼の炎症、眼の創傷治癒、角膜の創傷治癒、結膜の創傷治癒、網膜の変性、糖尿病網膜症、加齢性黄斑変性症、角膜のニューロパチー(糖尿病性神経障害を包含する)、ドライアイ疾患(蒸発性、水の欠乏、またはその他)、シェーグレン症候群、眼の移植片対宿主病、緑内障(一次、二次、先天性、青年期、外傷性、炎症性)、ブドウ膜炎、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、強膜炎、眼窩の炎症性または感染性症候群、甲状腺眼症、斜視、結膜炎、眼表面障害、アレルギー性およびアトピー性の目の疾患、マイボーム腺障害、および酒さを包含する。
SHRGY(配列番号31)配列を包含する合成ペプチドはまた、ERK1/2活性化を増大することも示されている。結果的に、本発明はまた、1以上のTMEM97モジュレーターを、ERKの活性化を増大するのに有効な量で、かかる処置を必要とする対象へ投与することによって、ERKの活性化を増大するための方法も提供する。ERKのモジュレーションが、先天性免疫系と適応免疫系との両方において重要であることは十分に確立されている(Zhang & Dong(2005)Cell.Mol.Immunol.2(1):20-27)。
本文脈中、その方法について、「対象」は、ヒトならびに非ヒト動物を包含することが意図される。本明細書に使用されるとき、用語「有効量」または「治療的に有効な量」は、本明細書に開示の薬剤(例として、ヒスタチンペプチドもしくはTMEM97モジュレーター)、または同薬剤を含有する医薬組成物の、明言した所望の結果を達成するのに充分な量を指す。いくつかの側面において、有効量は、例として、ニーマン・ピック病C型もしくは表現型、または眼疾患もしくは表現型(例として、上皮細胞遊走の割合、創傷閉鎖の割合もしくはそれまでの時間、および/またはERKの増加および生存経路のモジュレーション)などのリソソーム蓄積症において、かかる処置を受けなかった対象と比較して、測定可能な改善を提供する。「有効量」または「治療的に有効な量」を構成しない薬剤の量は、処置されるべきペイシェント(patient)の疾患の重症度、状態、重量、または齢(age)、投薬の頻度、または投与のルートに依存して変動してもよいが、当業者によって定型的に決定され得る。処置されるべき場所および状態に依存して、1ピコモル濃度~500モル濃度の範囲にある用量、またはより多くの薬剤が使用されてもよい。臨床医は、最適な治療効果が得られる投薬量または投与のルートをタイターして(titer)もよい。典型的な投薬量は、上に言及された因子に依存して、約0.1μg/kgから最大約100mg/kgまでまたはそれより多くに及ぶ。ある態様において、投薬量は、0.1μg/kgから最大約100mg/kgまで、または1μg/kgから最大約100mg/kgまで、または5μg/kgから最大約100mg/kgまでに及んでいてもよい。
対象を「処置すること」は、以下:(a)疾患または疾病の重症度を低減させること;(b)疾患または疾病の発症を阻むこと;(c)疾患または疾病の悪化を阻害すること;(d)疾患または疾病の再発を、これまでにその疾患または疾病を有していたペイシェントにおいて制限または予防すること;(e)疾患または疾病の退行を引き起こすこと;(f)疾患または疾病の症状を改善または解消すること;および/または(g)生存率を改善すること、のうち1以上を成し遂げることを意味する。
本発明をさらに説明するために以下の非限定例を提供する。
例1: 材料および方法
ペプチドの合成および精製。
ヒスタチン1(Hst1)、Hst1スクランブル(scrambled)ペプチド(Hst1SP)、およびTMEM97ペプチド[TMEM97(108~176)、TMEM97(108~143)、TMEM97(144~176)](表6)を、知られている方法に従って合成した。
表6
Figure 2023526515000007
「Sp」または「S(PO3)」は、リン酸化されたセリンを指定する。
手短に言えば、線状ペプチドを、チャネル多重(channel multiplex)ペプチドシンセサイザー(Protein Technologies;Tucson,AZ)で、製造業者の手順に従い、ワング(Wang)樹脂(AnaSpec;Fremont,CA)上9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学による段階的固相方法を使用して合成した。ペプチド合成は、ペプチドのC末端から開始した。樹脂のFmoc基を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中20%ピペリジンで除去し(5分間、X2)、これに続き樹脂をDMFで洗浄し(30秒間、6X)、その後にアミノ酸(Fmocで保護、2当量)を、DMF中の0.2M 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3,-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU、1.9当量)および0.4M 4-メチルモルホリン(NMM、4当量)の存在下で加えた(30分間、X3)。過剰な試薬をDMFで洗い流した(30秒間、6X)。最後のアミノ酸を加えるまでこの処理を繰り返した。完了後、N末FmocをDMF中20%ピペリジンで除去し(5分間、X2)、これに続き樹脂をDMFで洗浄した(30秒間、6X)。ペプチドの樹脂からの脱離および側鎖保護基の除去を、樹脂をトリフルオロ酢酸(TFA):チオアニソール:水:フェノール:1,2-エタンジチオ(82.5:5:5:5:2.5v/v)カクテルとともに2時間インキュベートすることによってした。反応混合物を濾過し、これに続き樹脂をTFAで洗浄した(2X)。氷冷エチルエーテルを沈殿物へ加え、ペプチドおよびペレットを氷冷エチルエーテルで2回洗浄した。続いて粗ペプチドを水中50%アセトニトリルに溶解し、凍結乾燥させた。
粗ペプチドを、BioCad Sprint(商標)HPLC系(Applied Biosystems;Foster City,CA)を使用し、分取KINETEX(登録商標)逆相C18カラム、150X21.1mm(Phenomenex;Torrance,CA)上で精製した。溶媒A(脱イオン水中0.1%TFA)および溶媒B(アセトニトリル中0.1%TFA)で30mL/分の流速を使用した。試料注入の前にカラムを5%溶媒Bで平衡化した。溶離を、60分間に5%溶媒Bから100%溶媒Bまでの直線勾配で実施した。カラム溶離物の吸光度を214nmにて監視し、ピーク画分をプールして凍結乾燥した。純粋なペプチド画分をエレクトロスプレイイオン化質量分析(ESI MS)によって同定し、凍結乾燥した。
放射性リガンド結合アッセイ。
放射性リガンド結合/競合アッセイを、University of North Carolina(UNC)Psychoactive Drug Screening Program(PDSP)によって実施した。S2R一過的過剰発現HEK293T細胞株を膜調製に使用した。次いで、一次および二次放射性リガンド結合アッセイを、当初10μM濃度のHst1を使用して実施し、これに続き平衡結合親和性を複数の濃度にわたり三通りに決定した。S2Rの「ホットリガンド」は[3H]-1,3-ジ-o-トリルグアニジン([3H]-DTG)であり、ハロペリドールを原型的なインヒビターとして使用した。各アッセイプレートにつき4つの実験の平均で、全結合(緩衝剤あり)を0%阻害として、非特異的結合(参照化合物の存在下)を100%阻害としてパーセンテージ阻害を算出し、これを使用して、二次スクリーニングに好適な化合物(>50%阻害)を同定する。二次スクリーニング結果を、標準的な参照用量-応答曲線で、残存するホットリガンド結合量[カウント毎分(CPM)]として報告する(すべて三通りに)。次いで参照薬物(ハロペリドール)および実験物(Hst1)へのKiの決定を実施する。各実験につき二次スクリーニングアッセイを、3つの技術的再現で3回別々に実施する。
細胞培養。
ヒト角膜上皮(HCE)細胞は、Deepak Shukla(University of Illinois at Chicago;Chicago,IL)によって提供された。HCE細胞を、10%ウシ胎仔血清[(FBS),Gibco Life Technologies;Grand Island,NY)]および1%ペニシリンで補充された最小必須培地(MEM)(Corning,Cellgro;Manassas,VA)中で培養した。定型的な継代の最中、標準的な細胞培養条件(37℃、5%CO2、>95%湿度)を使用した。
免疫沈降/ウェスタンブロット分析。
前日に、HCE細胞を5X106細胞/ウェルの濃度にて100mmディッシュに播き、20μMのHst1で6時間処置した。細胞をリシス(lysis)緩衝剤(1%NP40、137mM塩化ナトリウム、20mMトリス[pH8.0]、および10%グリセロール)で回収し、ライセート(lysates)を、確証された5μLのウサギポリクローナル抗TMEM97抗体(Novus Bio.;Littleton,CO)とともに4℃にて終夜インキュベートした。ライセートを、プロテインA/G(Santa Cruz Biotechnology;Dallas,TX)の30μLの懸濁液とともに4℃にて2時間、緩やかに振盪させながらインキュベートした。5分間の遠心分離後、ペレットを3回洗浄し、50μLの2X NUPAGE(登録商標)LDS試料緩衝剤(Invitrogen;Carlsbad,CA)に再懸濁して10分間煮沸する。
TMEM97タンパク質へ結合したHst1を検出するため、ライセートを12%NUPAGE(登録商標)Bis-Trisゲル(Invitrogen;Carlsbad,CA)上の電気泳動へ供し、これに続きニトロセルロース膜(Amersham Protran,GE Healthcare;Pittsburgh,PA)へ移した。次いで膜を、3%脱脂粉乳を含有するトリス緩衝生理食塩水で1時間ブロッキングし、Hst1に対するウサギ一次抗体(Mybiosource;San Diego,CA)(1:1000)とともに4℃にて終夜インキュベートした。商品名TWEEN(登録商標)20(TBST)で販売される0.05%ポリソルベート20を含有する0.05%トリス緩衝生理食塩水中で洗浄後、膜を次いで二次抗体としてのヤギ抗ウサギ-HRP(BD Biosciences;San Jose,CA)(1:2000)とともに1時間インキュベートした。膜を、MYELC Imager(Thermo Fisher Sci.;Waltham,MA)およびECL Pro溶液(PerkinElmer;Waltham,MA)を使用して現像した。β-アクチンを内部対照として使用した。
円二色性(CD)。
CD分析をJasco 815 CD分光計上、室温にて実施した。TMEM97(108~176)およびHst1完全長ペプチドを夫々、25%DMSOおよび水中、10mMストックとして調製し、10mM Na3HPO4緩衝剤中0.15mg/mL最終濃度まで希釈した。各試料の全400μLを1mm石英試料セル中へ加え、CDスペクトルを260nm波長から190nm波長まで記録した。データポイントを、100nm/分の走査スピードにて0.5nm波長ステップで測定した。各試料につき全5スペクトルを取得して平均した。対照曲線としてペプチドのないNa3HPO4緩衝剤を使用し、続いてこれをペプチド試料のCDスペクトルから引いた。その結果得られた、緩衝剤対照が引かれたCD強度生データ(ミリ度単位)をDichroWebへ投稿し、複数の組込み(embedded)モデルとフィッティングさせて平均残基楕円率へ変換した。
表面プラズモン共鳴(SPR)。
組換えの完全長TMEM97(またMAC30とも呼ばれる、HEK293細胞から)およびGST-TMEM97(108~176、組換えGST-C末端、小麦胚芽から)タンパク質を夫々、OriGene(Rockville,MD)およびAbnova(Taipei City,Taiwan)から購入した。TMEM97(108~176)、TMEM97(108~143)、およびTMEM97(144~176)の3種のペプチドを合成した。すべてのタンパク質およびペプチドを当初、10mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、および0.05%界面活性剤P20を含有するHBS緩衝剤中で調製した。Biacore T200またはBiacore 8K器械(GE Healthcare)を使用し、CM5センサ表面を最初に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)混合物によって活性化させた。完全長TMEM97およびGST-TMEM97(108~176)の2種の組換えタンパク質を、pH5.5にて10mM酢酸ナトリウム中50μg/mLまで希釈して、フローチャネル2および4へ固定化し、これに続き非占有表面エリア上をエタノールアミンでブロッキングした。フローチャネル1および3を参照として使用した。
3種の合成されたペプチドを、pH4.0にて10mM酢酸ナトリウム中50μg/mLまで希釈し、夫々別のセンサチップ上のフローチャネル2、3および4へ固定化した。フローチャネル1上の未修飾表面を参照対照として使用した。ヒスタチン溶液を一連の漸増濃度(2倍希釈にて0.78~25μM)で、30μL/分の流速にて4チャネルすべてへ25℃にて適用した。データを、参照チャネルおよびゼロ濃度応答で二重参照し、参照が引かれたセンサグラムを、Biacore T200評価ソフトウェアV3.0またはInsight評価ソフトウェアを使用して1:1のLangmuir速度論的モデルでフィッティングした。平衡解離定数(KD)を2つの速度定数(KD=kd/ka)から決定した。
等温滴定熱量計(ITC)。
TMEM97(108~176)、TMEM97(108~143)、およびTMEM97(144~176)の3種の合成されたペプチドを、ITC緩衝剤(10mMトリス(pH7.4)、150mM NaCl、0.05%ポリソルベート20)中40μM濃度にて調製し、試料セルに入れた。すべてのITC実験をITC緩衝剤中25℃にて、VP-ITC滴定マイクロ熱量計(MicroCal(商標)、LLC(Northampton,MA)から)を使用し、395rpmにて撹拌しながら実施した。マイクロシリンジをヒスタチン1溶液(ITC緩衝剤中500μM)でロードした。すべての滴定を、当初2.5μLの注入、これに続き35回の5μLの同一注入を使用し、16秒の持続時間(注入毎)および注入と注入との間210秒の間隔で行った。緩衝剤対照滴定(緩衝剤中へのヒスタチン1)シグナルを実験データから引いた。収集データを、NITPIC(NIH)、SEDPHAT(NIH)、およびGUSSI(NIH)を使用して評価した。
免疫蛍光画像化。
HCE細胞を、6ウェルプレート内のガラスカバースリップ(Fisher Scientific Co.;Pittsburgh,PA)上3X105(細胞/ウェル)播種密度にて播種した。細胞を培地で洗浄し、20μMのHst1での処置または非処置をしたが、ともに低減された血清条件(MEM培地中0.5%FBS)で6時間であった。次いでHCE細胞を3.7%パラホルムアルデヒド中で固定し、0.2%TRITON(商標)X-100を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で5分間透過処理し、PBS中で3回、各回5分間洗浄した。ブロッキングのため、細胞を、PBS中5%ウシ血清アルブミン(BSA)および5%正常ヤギ血清とともに室温にて30分間インキュベートした。小胞体(ER)染色のため、Cytopainter ER染色キット(Abcam;Cambridge,MA)を製造業者の指示に従い使用した。1Xアッセイ緩衝剤で洗浄後、細胞を、単層の細胞を覆うGreen Detection Reagentとともにインキュベートした。Hst1およびTMEM97の検出のため、マウス抗Hst1抗体(Abcam;Cambridge,MA)、Hst1に対するウサギ一次抗体(Mybiosource;San Diego,CA)、およびウサギ抗TMEM97抗体(Novus Bio.;Littleton,CO)を使用した。細胞を一次抗体とともに終夜4℃にてインキュベートし、PBS中で3回、各回5分間洗浄した後、二次抗体とともに30分間インキュベートした。次いで細胞をPBS中1μg/mL 4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)溶液で3分間対比染色し、次いで0.05%TRITON(商標)X-100を含有するPBSで3回、各回5分間洗浄して、PBSで2度各回5分間洗浄し、蒸留水で1度10秒間洗浄した。細胞をトリス緩衝剤(Electron Microscopy Sciences;Hatfield,PA)とともにフルオロゲルに載せ、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 710共焦点顕微鏡;Oberkochen,Germany)下40X対物を使用し観察した。商品名ALEXA FLUOR(登録商標)488 NHS Ester(Molecular Probes;Carlsbad,CA)で販売される蛍光色素を、Alexa-488とカップリングした合成Hst1を作製するために使用した。
TMEM97のトランスフェクション/ノックダウン。
35mm 6ウェルプレート中で増殖したサブコンフルエントな単層のHCE細胞を、商品名OPTI-MEM(登録商標)培地(Gibco Life Technologies;Grand Island,NY)で販売される培養培地中の、TMEM97に対する100pmolの低分子干渉RNA(siRNA)(Santa Cruz Biotechnology;Dallas,TX)および商品名LIPOFECTAMINE(登録商標)2000(Invitrogen;Carlsbad,CA)で販売される5μLのトランスフェクション試薬から構成される反応混合物で、48時間トランスフェクトした。複合体を24℃にて20分間インキュベートし、次いで細胞へ37℃にて加えた。インキュベーションを5%CO2中37℃にて24~48時間継続した。TMEM97のノックダウン(KD)を、ウサギ抗TMEM97抗体(Novus Bio.;Littleton,CO)を使用し、ウェスタンブロット分析によって確認した。
細胞遊走アッセイ。
HCE遊走アッセイを、48ウェルマイクロ化学走性チャンバー(Neuro Probe,Inc.;Cabin John,MD)中、製造業者の指示に倣い、また先の報告の修正に倣い実施した。12μm孔をもつポリエステル膜(Neuro Probe,Inc.;Gaithersburg,MD)を使用した。細胞をHst1とともに6時間インキュベートし、Versene(Life Technologies,Corp.;Grand Island,NY)を使用して回収し、0.5%FBSを含有するRPMI-1640培地(Life Technologies,Corp.;Grand Island,NY)に再懸濁した。チャンバーの底へ、2%FBSを含有するRPMI-1640培地をロードし、フィルターを培地上に横たえた。チャンバーの上側へ3X104細胞をロードし、次いで37℃にて16時間インキュベートした。次いでフィルターを固定し、エオシン(Richard-Allan Sci.;Kalamazoo,MI)を使用して染色した。各条件を三通りのウェルで研究し、各実験を3回別々に実施し、単一の実験から3つ再現した。
in vitroでの擦過傷アッセイにおける創傷治癒。
HCE細胞を、96ウェルプレート中5X104(細胞/ウェル)播種密度にて培養し、コンフルエンスまで増殖させた。続いて、直線の擦過痕を、複数擦過創傷メーカー(multiscratch wound maker)(IncuCyte(登録商標)96ウェルWoundMaker Tool,Essen Biosciences;Ann Arbor,MI)で作製した。次いで細胞をPBSで2度洗浄することで、細胞デブリを除去した。次いで創傷エリアを、低減された血清条件(0.5%FBS)下、20μMもしくは50μMのHst1の有りまたは無しで処置した。擦過傷を、その実験の過程にわたり1時間毎、顕微鏡下4X倍率にて撮影した(Image express Micro,Molecular devices;San Jose,CA)。創傷エリアを、ImageJソフトウェア(ImageJ 1.47v,NIH,Thornwood;Bethesda,MD)を使用して測定した。相対的な創傷閉鎖を、処置された創傷の閉鎖を非処置の対照創傷の閉鎖で除算することによって算出した。各条件を三通りのウェルで研究し、各実験を3回別々に実施し、単一の実験から3つ再現した。
例2: 結合アッセイはHst1がTMEM97へ結合することを実証する
Hst1の潜在的な受容体のためのスクリーニングを、様々な薬理学的に重要な受容体の過剰発現細胞株の現行のライブラリにおいて放射性リガンド結合アッセイを使用して実行した。合成Hst1の、HEK293T膜を含有するTMEM97との結合を、一次結合スクリーニングにおいて同定し、二次結合アッセイで確認した。結果を、記載のとおりの用量範囲にわたり、至適基準インヒビターであるハロペリドールと比較した。二次放射性リガンド結合アッセイ確認試験の結果によって、至適基準ハロペリドール(Ki=44nM)に対し、Hst1のKiは239nMであることが実証されたが、このことはこの相互作用に薬理学的関連性があることを指し示す。同様の実験において、Hst3およびHst5の、HEK293T膜を含有するTMEM97との結合を、放射性リガンド結合アッセイにおいて決定した。この分析の結果は、Hst3およびHst5もまた夫々、1088nMおよび582nMのKi値でTMEM97へ結合したことを指し示した。
免疫共沈降(co-IP)アッセイを、Hst1とTMEM97との間の相互作用が細胞レベルにて再現性のあるものかを決定するために実施した。Hst1をHCE細胞へ外から適用した後、細胞ライセートを得て、TMEM97抗体での免疫沈降、これに続くHst1抗体での免疫ブロッティングによって、Hst1がTMEM97と共沈殿したことが実証された。興味深いことに、co-IP上、2つのバンド(1つがちょうど10kDaを下回り、もう1つがちょうど15kDaを下回る)が認められた。これらのバンドは、Hst1の単量体バージョンおよび二量体バージョンを表す可能性があり、Hst1含有試料のウェスタンブロット分析で見られたものと同様である。これらの結果は、細胞を用いないこの相互作用の所見が生理学的細胞環境においても実証できることを指し示す。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)もまた、TMEM97でコーティングされたプレート上に結合したHst1を検出するために行った。この分析はさらに、Hst1とTMEM97との間の結合を確認した。注目すべきことに、原型的なTMEM97アゴニストである1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DTG)の添加によって、ELISAにおけるHst1のTMEM97への結合が変わらなかったが、このことは新規な相互作用部位があることを指し示す。
続いて、Hst1とTMEM97との間の相互作用が各タンパク質の構造に影響を及ぼし得たかという仮説について試験した。また、Hst1およびTMEM97の2次構造も、溶液中CD測定を使用して試験した。Hst1単独では、ある程度のβ-鎖はあるが、ほとんどが無秩序である(50%超)のに対し、TMEM97(108~176)では、いくつかのα-ヘリックス領域およびβ-鎖領域を含有しており、無秩序領域が~34%であることが認められた。CDスペクトル比較によると、Hst1がTMEM97(108~176)へ結合する際、より多くの2次構造が形成されたようであった。DichorWebを使用するCDデータ分析によって、Hst1-TMEM97(108~176)複合体の無秩序領域は、タンパク質各々が単独の場合より有意に小さかったことが明らかにされた(表7)。これらの結果は、Hst1がTMEM97へ結合するのみならず、その相互作用によって2次構造がさらに誘導されることも指し示す。
表7
Figure 2023526515000008
SPR試験を実施し、真核生物系において産生される完全長の組換えTMEM97へ選択的に結合したことを実証した(HEK293細胞;KD=1.3±0.3μM、%Rmax=32%)。これに続き、GSTタグ付けされた小麦胚芽由来C末フラグメントTMEM97(108~176)での試験によって、Hst1の、TMEM97のC末領域への結合が、同様の親和性(KD=1.6±0.2μM、%Rmax=43%)で可能であったことが決定された。Hst1のスクランブルペプチド対照バージョンは、完全長TMEM97(結合なし、%Rmax=8%)またはTMEM97(108~176)(結合なし、%Rmax=5%)のいずれに対しても有意な結合を呈さなかった。これらの結果は、Hst1が、TMEM97のC末端と特異的に結合すること、およびこの相互作用が、TMEM97の複数の異なる組換え供給源で再現可能であることを指し示す。
TMEM97のどのセグメントが、Hst1の結合に必要かをより正確に決定するため、TMEM97の複数の合成フラグメントを生成し(表6)、SPRを使用してHst1への結合を試験した。全C末の合成TMEM97(108~176;KD=2.8±0.6μM、%Rmax=38%)は、完全長TMEM97およびGSTタグ付けされた組換えTMEM97と同様の親和性で、Hst1に結合したことが見出された。次いで、これまでに記載されたモデリング実験に基づき、TMEM97のC末端の、(予測される)内腔(108~143)および細胞質(144~176)への露出セグメントを表す、TMEM97のC末のより小さいフラグメントを構築した。この分析の結果は、TMEM97(144~176)がHst1結合に必要であり(KD=2.7±0.4μM、%Rmax=21%)、TMEM97(108~143)がHst1に結合できないことを指し示した。同様のSPR分析において、Hst3およびHst5は夫々、完全長TMEM97およびGST-TMEM97(108~176)に、3.8μM(%Rmax=56%)および4.7μM(%Rmax=72%)のKD値で、結合することが見出された。注目すべきことに、DTGのTMEM97への推定結合部位の突然変異(すなわち、突然変異E170A、E171A、およびE170A/E171A)は、Hst1のTMEM97(144~176)への結合に影響を及ぼさなかった。このことは新規な相互作用部位があることを指し示す。その上、DTGまたはハロペリドールのいずれかの反応への付加は、Hst1の、完全長TMEM97またはGST-TMEM97(108~176)のいずれへの結合にも影響を及ぼさなかった。Hst1のSPR結果を、直交分析方法としてITCを使用して確認した。同様に、Hst1は、TMEM97(108~176)に高親和性(KD=0.89±0.2μM、ΔH=-4.9±10.1kcal/mol、ΔS=11.6±3.4cal/mol K)で結合したこと、およびTMEM97のC末は、この相互作用(KD=0.46±0.12μM、ΔH=-790±28kcal/mol、ΔS=-2.28(±0.37)X103cal/mol K)に必要であったことが見出された。まとめると、これらの結果は、Hst1がTMEM97へ特異的に結合すること、およびTMEM97の残基144~176がこの相互作用に必要であることを指し示す。
結合アッセイの結果が、正常な細胞の状態および機能に関係があるかを決定するため、数種のアッセイを、Hst1とTMEM97との間の相互作用の存在および関連性を確認するために実施した。Hst1がHCE細胞中へ内在化され得るか、および内在化したHst1の局在化がTMEM97と共局在し得るかを決定するために、試験を行った。蛍光染料とカップリングされた合成Hst1を使用して、外から適用されたこのペプチドが、曝露から24時間後にてHCE細胞中へ内在化し、核周囲エリアへの局在化が相対的に多かったことが実証された。これに続く、外から適用されたHst1の、HCE細胞への免疫学的局在決定、および小胞体染色剤での可視化によって、良好な共局在化が実証された。最終的に、外から適用されたHst1の、TMEM97との免疫学的共局在決定によって、有意な重複が実証された。これらの結果は、Hst1が、TMEM97が機能的な役割を有すると考えられるエリアへ局在化すること、およびこれまでに記載された結合アッセイが、生細胞において生理学的な相関性を有することもあることを指し示す。
例3: TMEM97培地はHst1に誘導されるHCE遊走および創傷治癒を媒介する
次いで、HCEに対するHst1の知られている機能(細胞遊走および創傷治癒を包含する)がTMEM97に依存するかを決定するため、試験を実施した。Hst1の知られている機能におけるTMEM97の重要性を査定するために、TMEM97のsiRNAノックダウン(KD)をHCE細胞において実施した。KD細胞 対 野生型細胞におけるHst1の内在化および局在化を、次いで試験した。注目すべきことに、TMEM97のKDは、KD細胞におけるHst1の内在化および/または局在化を有意に妨害した。ボイデンチャンバーをベースとした細胞遊走アッセイを実施し、Hst1処置が、刺激(2%FBS)に対して細胞遊出の用量依存的な増加を引き起こしたことを実証した。HCE細胞におけるTMEM97のKDは、Hst1へのこの応答を消失させたが、このことは、Hst1に応答した遊出の加速がTMEM97の存在に依存することを指し示す(図1)。続いて、HCE細胞の創傷治癒において、Hst1に応答した増大がTMEM97に依存するかを試験した。標準的な擦過傷アッセイを使用することで、HCE細胞においてHst1に応答して創傷治癒率の増加が認められることが見出された。TMEM97のsiRNA KDは、この応答を消失させた(図2)。これらの所見は、Hst1の新規な経路/機序が創傷治癒および上皮細胞遊走を誘導することを指し示す。
例4: Hst1のN末端はTMEM97結合に要される
TMEM97への結合を媒介するHst1の領域(単数または複数)を決定するため、SPR試験を、様々なHst1フラグメントと、組換えTMEM97(GSTタグ付けされた小麦胚芽由来C末フラグメントTMEM97(108~176))または合成されたTMEM97(TMEM97(108~176)、TMEM97(108~143)、およびTMEM97(144~176))のいずれかで実施した。これらの分析結果を表8に提示する。
表8
Figure 2023526515000009
*Hst1フラグメントに包含される残基は、丸括弧内にある。
SP、スクランブルペプチド。
これらの結果は、Hst1のTMEM97のC末端との結合が、ヒスタチンのN末端である残基DSHAKRHHGYKRKFHEKHH(配列番号75)によって媒介されることを指し示す。
例5: ヒスタチンは細胞代謝をモジュレートする
コレステロール。
NPC1の活性をモジュレートすることにおいてヒスタチンの使用を実証するため、NPC1細胞を、NPC1のsiRNA媒介ノックダウン(KD)の有りまたは無しで、Hst1(20μMまたは50μM)で処置した。フィリピン染色は一般に、NPC細胞中のコレステロール堆積の検出のために受け入れられているツールであって(Vanier,et al.(2003)Clin.Genet.64:269-81)、これを使用して対照およびNPC1 KD細胞中のコレステロールを視覚化した。この分析によって、NPC1表現型と一致する、NPC1 KD細胞中のフィリピン染色されたコレステロールのクラスター化および集束の増加が指し示された。これと比較すると、Hst1での処置は、コレステロール蓄積を低減させ、NPC1疾患の所見を低減させた。
さらに、NPC1ペイシェント線維芽細胞のHst1ペプチド処置は、NPC1遺伝子発現を増加させ、かつHMG-CoAレダクターゼ遺伝子発現を低減させることによって、コレステロール代謝を変えることが実証された。加えて、野生型ヒト皮膚線維芽細胞またはNPCノックアウト線維芽細胞(NPC1-/-)中のコレステロール蓄積を、Hst1処置の有りまたは無しで評価した。この分析によって、フィリピン染色細胞中のコレステロール蓄積が低減され、かつNPC病表現型が正常に近いレベルまで正常化したことが指し示された。加えて、非処置NPC1-/-細胞中のLAMP1リソソームマーカー蓄積が、Hst1処置で正常化された。まとめると、これらの結果は、ヒスタチンペプチドが、他のリソソーム蓄積症に加えてNPC病の処置にも役に立つことを指し示す。
マウス小脳組織(7週齢のNPCマウスモデル)のHst1ペプチド処置もまた、ガングリオシド(GM3、GM2、およびGM1;p<0.001)、ならびにセラミド(Cer NS(d18:1/16:0;p=0.05)、HexCer NS(d36:1;p=0.05)、およびSM(d34:0;p<0.001))を有意に増加させることによって、コレステロール代謝を変えることが見出された。その上、NPC1-/-マウス小脳組織(9週齢のマウスからの)において、Hst1処置によって、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスファート(PIP2;20:4/18:0)レベルが有意に減少したことが見出された(p<0.001)。この点において、ヒスタチンペプチドはまた、肝臓組織中のコレステロールの蓄積を低減させることに加え、ニューロン組織における脂肪酸およびコレステロールの代謝を変え、それによって神経変性に関連する変化を低減させることにも使用され得る。
オートファジー。
NPC1欠損症は、上昇した微小管関連タンパク質1軽鎖3(LC3)レベル、無数の自食作用胞、および長寿命タンパク質の増強された分解でも分かるとおり、増大したオートファジーをもたらす(Pacheco,et al.(2007)Human Mol.Genet.16(12):1495-1503)。先の所見と一致し、NPC1 KD細胞中のLC3の免疫学的局在決定によって、NPC1疾患の兆候であるLC3染色の増加が示された。これらの細胞のHst1(20μMまたは50μM)での処置によって、LC3レベルの用量依存的な低減が提供されたが、このことはHst1がNPC1欠損症の効果を低減させ、したがってNPC1疾患の処置に役立つことを指し示す。
カルシウムシグナリング。
ヒト角膜上皮細胞を、Hst1またはHst5で処置してCalcium Green-2で染色し、相対的な蛍光強度を1時間、2時間、および4時間にて監視した。この分析によって、ヒスタチンペプチド処置はヒト角膜上皮細胞のカルシウムシグナリングを各時点にて増加させるが(図3)、このことは薬剤標的化シグマ-2受容体を標的にする薬剤と一致することが指し示された。カルシウムシグナリングの同様の増加が、Hst1およびHst5で処置されたヒト皮膚線維芽細胞においても観察された。その上、NPC1(I1061T突然変異体)ホモ接合ペイシェント線維芽細胞のHst1処置も細胞のカルシウムレベルを増加させた(図4)。しかしながら、Hst1およびHst5ペプチドは、塩化ベンザルコニウム(0.001%BAK)で処置されたヒト角膜上皮細胞の上昇したカルシウムレベルを低減した。塩化ベンザルコニウム処置からの毒性後に見られる、細胞のカルシウムレベルのこの正常化は、慢性疼痛および他の疾病に見られる毒性効果と類似する。そのため、ヒスタチンペプチドは、慢性疼痛の回復に役立ち得る。
アポトーシス。
BAKで処置されたヒト角膜上皮細胞は、細胞死の誘導および/または細胞生存率の低下を呈する。注目すべきことに、この細胞生存率の低下は、これらの細胞のHst1またはHst5での処置によって抑止される(図5)。同様に、ヒト角膜上皮は、有毒な高モル浸透圧濃度(hOsm)によって誘導される細胞死を呈する。しかしながら、これらの細胞のHst5での処置は、有毒な高モル浸透圧濃度(すなわち、450mOsm)の効果、およびカスパーゼ3/7などのアポトーシスのシグナルの誘導を抑止する(図6)。BAKおよびhOsmは、角膜上皮および神経の細胞死ならびに毒性の標準的な誘導因子であって、その現象は、眼表面疼痛および慢性疼痛症候群に関連する。まとめると、これらの結果は、慢性疼痛症候群におけるヒスタチンペプチドの治療への応用を指し示す。
神経変性のカルシウム仮説は、正常でないカルシウム動力学が神経変性に関連することを示唆する。NPC病が細胞のカルシウム低減に関連すること、ならびにカルシウム動員がコレステロールの正常化および神経変性の低減に関連し得ることもまた、考えられる。結果的に、本明細書に提示される所見は、アルツハイマー病および外傷性脳損傷を包含する複数の神経変性障害の処置ならびに慢性疼痛の処置におけるヒスタチンペプチドの使用へのサポートを提供する。注目すべきことに、ヒト肝臓ミクロソームのアッセイにおいて試験したとき、Hst1の代謝速度は、ジフェンヒドラミン(陽性対照)のと同様であったが、それによってヒスタチンペプチドは、迅速な分解もなくヒト疾患の全身的な処置に許容し得るやり方で投薬され得ることが実証される。

Claims (13)

  1. リソソーム蓄積症を処置する方法であって、有効量の、ヒスタチンペプチドの1種または組み合わせを、処置を必要とする対象へ投与することで、対象のリソソーム蓄積症を処置することを含む、前記方法。
  2. 有効量の、ヒスタチンペプチドの1種または組み合わせが、コレステロールの蓄積を低減するか、カルシウムシグナリングをモジュレートするか、アポトーシスのシグナリングを減少させるか、細胞生存率の低下を低減するか、または微小管関連タンパク質1軽鎖3タンパク質を低減させる、請求項1に記載の方法。
  3. ヒスタチンペプチドの1種または組み合わせが、ネイティブのヒスタチン、合成のヒスタチン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 該ネイティブのヒスタチンまたは合成のヒスタチンが、線状であるか、または環化されている、請求項3に記載の方法。
  5. ネイティブのヒスタチンまたは合成のヒスタチンが、グリコシル化、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、リン酸化、スルホン化、ペグ化、または脂質化から選択される修飾を含む、請求項3に記載の方法。
  6. ヒスタチンペプチドの1種または組み合わせが、局所、経口、眼、静脈内、硝子体内、結膜下、皮下、筋肉内、腹腔内、脳内、動脈内、門脈内、病巣内、髄腔内、または鼻腔内の投与のために製剤化されている、請求項1に記載の方法。
  7. 製剤が、ゲル、洗浄薬、クリーム、錠剤、カプセル、丸薬、溶液、点眼薬、スプレー、包袋、コンタクトレンズ、デポー、注射可能な、埋込型の、持続放出の、またはマイクロ粒子もしくはナノ粒子の製剤の形態である、請求項6に記載の方法。
  8. リソソーム蓄積症が、糖原病、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、オリゴ糖代謝異常、リピドーシス、スフィンゴリピドーシス、またはリソソーム輸送疾患である、請求項1に記載の方法。
  9. リピドーシスが、ニーマン・ピック病C型である、請求項8に記載の方法。
  10. コレステロールの蓄積を低減するか、カルシウムシグナリングをモジュレートするか、アポトーシスのシグナリングを減少させるか、細胞生存率の低下を低減するか、または微小管関連タンパク質1軽鎖3タンパク質を低減させるための方法であって、有効量の、ヒスタチンペプチドの1種または組み合わせを、処置を必要とする対象へ投与することで、コレステロールの蓄積を低減するか、カルシウムシグナリングをモジュレートするか、アポトーシスのシグナリングを減少させるか、細胞生存率の低下を低減するか、または微小管関連タンパク質1軽鎖3タンパク質を低減させることを含む、前記方法。
  11. コレステロールの蓄積、カルシウムシグナリング、または微小管関連タンパク質1軽鎖3の蓄積が、ニーマン・ピックCタンパク質欠乏症によって媒介される、請求項10に記載の方法。
  12. 眼の疾患または疾病を処置するための方法であって、眼の疾患または疾病を処置するための有効量のTMEM97モジュレーターを、処置を必要とする対象へ投与することを含む、前記方法。
  13. 有効量によって、眼組織における創傷の治癒および上皮細胞の遊走促進活性が促進される、請求項12に記載の方法。
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