JP2023512828A - クロマカリムプロドラッグ療法のための改善された方法及び組成物 - Google Patents

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Abstract

式(I)、式(II)、若しくは式(III)の化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩についての新しい医学的使用。或る特定のクロマカリムプロドラッグ及びそれらの薬学的に許容可能な塩が使用される新しい方法及び組成物。

Description

[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年1月5日付けで出願された米国仮特許出願第63/134,042号、2020年12月2日付けで出願された米国仮特許出願第63/120,604号及び2020年2月7日付けで出願された米国仮特許出願第62/971,752号の利益を主張するものである。この出願は、あらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により与えられた助成番号EY021727による政府支援によりなされたものである。アメリカ合衆国政府は、本発明に関し一定の権利を有する。
本出願は、医学療法の分野であり、或る特定のクロマカリムプロドラッグ及びそれらの薬学的に許容可能な塩が使用される新しい方法及び組成物を提供する。
クロマカリム及びその降圧薬としての使用は、Beecham Group, Inc.に譲渡された特許文献1に最初に記載された。眼内圧及び緑内障に対するクロマカリムの効果についての開示は、特許文献2、非特許文献1、及び非特許文献2において報告された。
クロマカリム及びジアゾキシドは、非特許文献3において血圧を下げることが報告された。加えて、Chowdhuryら及びRoy Chowdhuryらによる出版物は、ジアゾキシド及びニコランジルの使用を記載している(非特許文献4、及び非特許文献5)。ウサギ腸間膜動脈平滑筋細胞からの膜パッチに配置されたクロマカリムは、ATPの存在下で単一のKATPチャネルの開口状態確率(Popen)を9倍超増加させる(非特許文献6)。他のATP感受性カリウムチャネル開口薬としては、in vitro及びin vivoで血管拡張薬として作用するピナシジル及びミノキシジル硫酸塩が挙げられる。
クロマカリムは、トランス配置におけるジアステレオマーの混合物((3R,4S)ジアステレオマー及び(3S,4R)ジアステレオマーの混合物)として存在する。
Figure 2023512828000002
(3S,4R)-ジアステレオマーは、(-)-クロマカリム又はレブクロマカリムとも呼ばれ、(3R,4S)-ジアステレオマーは、(+)-クロマカリム又はデクスクロマカリム(dexcromakalim)とも呼ばれる。
Figure 2023512828000003
クロマカリムの報告された活性の大部分は、(3S,4R)-ジアステレオマーであるレブクロマカリムに由来する(非特許文献7、及び非特許文献8)。
クロマカリムはカリウムチャネル開口薬及び血管拡張薬としての確立した活性を有する一方で、これは水中に実質的に不溶性である。クロマカリムの親油性は、或る特定のin vivo用途についての有用性を制限している。クロマカリムはしばしばDMSO又はクレモフォールで可溶化され、これは非水溶性薬物のタキソールにも使用される。クレモフォールは特に中毒性副作用を有する。
in vivoでの水性環境への投与に適切な特性を有するクロマカリム製剤を作製する必要性に対応して、メイヨー・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ(Mayo Foundation for Medical Education and Research)及びリージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミネソタ(Reagents of The University of Minnesota)により、ナトリウム塩としても報告されたリン酸エステルプロドラッグCKLP1が作製された。
Figure 2023512828000004
CKLP1は、親レブクロマカリムへのin vivo加水分解と組み合わせて、投与を容易にする水溶性増大の改善をもたらす。メイヨー・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ及びリージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミネソタによって出願された特許文献3を参照のこと。
非特許文献9は、リン酸プロドラッグがクロマカリムよりも水溶性が高く、正常眼圧(すなわち、正常な眼内圧(IOP))マウスモデルにおいてIOPを低下させることが報告されたが、この薬物は7日間しか投与されなかった。この論文では、ウサギの眼において或る特定のクロマカリム誘導体の用量を8日間にわたって高めた場合の有効性も報告された。これらの報告結果は興味深いものであったが、正常眼圧の動物モデル(すなわち、最初は正常なIOPを有するマウス及びウサギ)においてのみ、不変の療法で短い期間にわたって試験が行われたにすぎないという不十分さがあった。
上強膜静脈圧及び遠位流出抵抗に対するCKLP1の効果は非特許文献10に記載された。局所投与及び静脈内投与の後のウサギにおける薬物動態パラメーターは非特許文献11に記載された。CKLP1及び対応する(3R,4S)-エナンチオマーの合成は、Roy Chowdhuryらの非特許文献9に記載されている。
クロマカリムの潜在的な未開拓の利点を考えると、医学療法のための追加の方法及び組成物を有することは有益であると考えられる。
欧州特許第0120428号 国際公開第89/10757号 国際公開第2015/117024号
Lin et al., "Effects of Cromakalim and Nicorandil on Intraocular Pressure after Topical Administration in Rabbit Eyes" Journal of Ocular Pharmacology and Therapeutics, 1995, 11, 195 Roy Chowdhury et al., "Ocular Hypotensive Effects of the ATP-Sensitive Potassium Channel Opener Cromakalim in Human and Murine Experimental Model Systems" PLOS One, 2015, 10, e0141783 Quast, U. et al. J Pharmacol Exp Ther 1989, 250, 261 "ATP-Sensitive Potassium (KATP) Channel Openers Diazoxide and Nicorandil Lower Intraocular Pressure" IOVS, 2013, 54, 4894 "ATP-Sensitive Potassium (KATP) Channel Activation Decreases Intraocular Pressure in the Anterior Chamber of the Eye" IOVS, 2011, 52, 6435 Brayden, J.E. et al., Blood Vessels, 1991, 28, 147 Ashwood et al. Synthesis and Antihypertensive Activity of 4-(Cyclic Amido)-2H-1-benzopyrans" J. Med. Chem. 1986, 29, 2194 Attwood et al. "Synthesis of Homochiral Potassium Channel Openers: Role of the Benzopyranyl 3-Hydroxyl Group in Cromakalim and Pyridine N-Oxides in Determining the Biological Activities of Enantiomers" Bioorg. Med. Chem. Lett. 1992, 2, 229 Roy Chowdhury et al. "Analogs of the ATP-Sensitive Potassium (KATP) Channel Opener Cromakalim with in Vivo Ocular Hypotensive Activity" J. Med. Chem. 2016, 59, 6221 Roy Chowdhury et al. "Effect of Cromakalim Prodrug 1 (CKLP1) on Aqueous Humor dynamics and Feasibility of Combination Therapy with Existing Ocular Hypotensive Agents" IVOS, 2017, 58, 5731 Roy Chowdhury et al. "Pharmacological and Pharmacokinetic Profile of the Novel Ocular Hypotensive Prodrug CKLP1 in Dutch-belted Pigmented Rabbits" PLoS One, 2020, 15, e0231841
本発明は、式I、式II、又は式III:
Figure 2023512828000005
のクロマカリムプロドラッグ及びそれらの薬学的に許容可能な塩についての新しい医学的使用を提供する。
CKLP1(式I)の薬学的に許容可能な塩としては、
Figure 2023512828000006
(式中、X及びM2+は、所望の結果を達成するあらゆる薬学的に許容可能なカチオンであり得る)が挙げられる。
或る特定の実施の形態においては、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、鉄、亜鉛、アルギニン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、リジン、ヒスチジン、メグルミン、プロカイン、ヒドロキシエチルピロリジン、アンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルジエタナミン、及びトリエチルアミンから選択される。
一実施の形態においては、Xは、Na又はKである。一実施の形態においては、Xは、Liである。一実施の形態においては、Xは、Csである。一実施の形態においては、Xは、1の正味正電荷を有するアンモニウムイオンである。1の正味正電荷を有するアンモニウムイオンの非限定的な例としては、
Figure 2023512828000007
が挙げられる。
代替的な実施の形態においては、1の正味正電荷を有するアンモニウムイオンは、以下の式:
Figure 2023512828000008
(式中、Rは、C~Cアルキル、例えば、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、sec-ブチル、イソブチル、-CHC(CH、-CH(CHCH、及び-CHCH(CHCH、シクロプロピル、CH-シクロプロピル、シクロブチル、及びCH-シクロブチル、又はアリール、例えば、フェニル若しくはナフチルであり、ここで、C~Cアルキル又はアリールは、例えばヒドロキシル基で任意に置換されている場合がある)を有する。一実施の形態においては、アンモニウムイオンは、
Figure 2023512828000009
である。
2+は、例えば、限定されるものではないが、アルカリ土類金属カチオン(マグネシウム、カルシウム、又はストロンチウム)、+2の酸化状態を有する金属カチオン(例えば、亜鉛又は鉄)、又は2の正味正電荷を有するアンモニウムイオン(例えば、ベンザチン、ヘキサメチルジアンモニウム、及びエチレンジアミン)であり得る。一実施の形態においては、M2+は、Mg2+である。一実施の形態においては、M2+は、Ca2+である。一実施の形態においては、M2+は、Sr2+である。一実施の形態においては、M2+は、Zn2+である。一実施の形態においては、M2+は、Fe2+である。一実施の形態においては、M2+は、2の正味正電荷を有するアンモニウムイオンである。2の正味正電荷を有するアンモニウムイオンの非限定的な例としては、
Figure 2023512828000010
が挙げられる。
代替的な実施の形態においては、2の正味正電荷を有するアンモニウムイオンは、以下の式:
Figure 2023512828000011
(式中、
は、C~Cアルキル、例えば、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、sec-ブチル、イソブチル、-CHC(CH、-CH(CHCH、及び-CHCH(CHCH、シクロプロピル、CH-シクロプロピル、シクロブチル、及びCH-シクロブチル、又はアリール、例えば、フェニル若しくはナフチルであり、ここで、C~Cアルキル又はアリールは、例えばヒドロキシル基で任意に置換されている場合があり、かつ、
yは、1、2、3、4、5、6、7、及び8から選択される整数である)を有する。
重要なことには、本発明の化合物は、これらが特有な予想外の薬物動態を示すため、制御された薬物送達用途に特に有用であることが見出された。このプロドラッグは、これらが活性クロマカリム、一実施の形態においてはレブクロマカリムにゆっくりと転化するという点で、内部制御放出デバイスとして機能する。一実施の形態においては、このプロドラッグは、眼組織を含む組織中に貯留され、時間をかけて緩徐放出される。貯留及び組織からの緩徐放出と組み合わせたこの活性部分へのゆっくりとした転化により、CKLP1の投与後に、活性クロマカリム、及び一実施の形態においてはレブクロマカリムの長期的で連続的な制御された投与がもたらされる。これらの予想外の薬物動態特性は、事前に予測することができるものではなかった。
したがって、一実施の形態においては、本発明は、式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とするヒトを含む宿主に投与することによる、レブクロマカリムの制御送達を提供する。一実施の形態においては、眼へのレブクロマカリムの制御送達は、本発明の化合物の局所投与によって達成され、ここで、この化合物は、眼の組織及び房水において見られるアルカリホスファターゼを任意に経由してレブクロマカリムに転化される。本発明の選択された実施の形態においては、式I、式II、若しくは式IIIの化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、例えば局所滴剤として眼に投与され、眼において、例えば、強膜、視神経、角膜、虹彩、毛様体、線維柱帯網、及び/又は網膜においてレブクロマカリムに転化される。
非限定的な実施例2において論じられるように、in vitroでの研究により、アルカリホスファターゼに曝露されると、CKLP1は濃度依存的にレブクロマカリムに転化され、これが続いてATP感受性カリウムチャネルを通じて細胞の過分極を促進することが分かった。非限定的な実施の形態においては、CKLP1を制御送達デバイスとして使用してレブクロマカリムを送達すると、例えば上強膜静脈圧の低下によってIOPが下がる。
実施例4において論じられるように、本発明の非限定的な例示として、CKLP1をハウンドドッグに投与した。ハウンドドッグにおいてCKLP1を1日1回局所的に投与した後に、CKLP1及びレブクロマカリムの濃度を血漿及び選択された組織において測定した。驚くべきことに、CKLP1はレブクロマカリムにゆっくりと代謝され、CKLP1の濃度は、眼神経、前眼部、線維柱帯網、及び角膜等の眼組織を含む或る特定の組織において高いことが見出された。
驚くべきことに、イヌにおけるCKLP1の投与後に、IOPレベルがベースラインに復帰するまでに長時間かかることも見出された(図7A)。これと同じ効果がアフリカミドリザルにおいて観察された(図8A)。これは、レブクロマカリムの半減期がわずか2時間であるため、CKLP1の緩徐放出を可能にする眼内のCKLP1組織デポーを連想させる。デポーがない場合に、レブクロマカリムの98%は12時間までに代謝され得るが、代わりにベースラインへのゆっくりとした復帰が観察される(24時間超)。一実施の形態においては、局所投与されたCKLP1は、限定されるものではないが、線維柱帯網を含む組織中に貯留された後に、遠位流出経路に緩徐放出され、そこでレブクロマカリムに転化されて、IOP低下効果を誘発する。一実施の形態においては、ヒトを含む投与を必要とする宿主における式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグの1つ以上(例えば、2つ又は3つ)の剤形に続くIOPベースラインへの復帰は、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、又は少なくとも約72時間である。
活性代謝産物の長期的な送達につながる制御放出送達では、必要な投与頻度がより少なく、これは、患者のコンプライアンス、アドヒアランス、及びより良い転帰にとって重要である。内部制御放出デバイスの能力を有する化合物はまた、その投与が制御放出をもたらすインプラント担体又はポリマー担体等のビヒクルを必要としないため、有利である。
これらの理由から、CKLP1は局所投与として良好な忍容性を示す。CKLP1はまた、ハウンドドッグにおける組織の組織学の詳細な分析によって証明されるように安全であり、その際、治療によって引き起こされる観察可能な毒性は認められず、血液化学における実質的な変化も一切なかった。CKLP1の局所投与はまた、血圧の有意な変化をもたらさなかった(実施例4)。
さらに、充血及び血管完全性への撹乱用に選択されたバイオマーカーに対するレブクロマカリムの効果が確立された(実施例7)。レブクロマカリムは、組織及び血管の完全性の指標となる測定されたタンパク質の発現に対して有意な影響を及ぼさなかった。レブクロマカリムの効果を、血管の完全性の撹乱によって引き起こされる重大な副作用(例えば、充血を引き起こす漏出及び血管拡張、並びに点状出血及び結膜下出血につながる血管破裂)を有することが分かっている(Rhopressaにより例示される)薬物のクラスであるRhoキナーゼ阻害剤であるY-27632と比較した。Y-27632とは異なり、レブクロマカリムはこれらのタンパク質のタンパク質発現又は分布を有意に変化させなかった。したがって、一実施の形態においては、式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩の使用は、本明細書において更に記載される療法の間に、幾つかの実施の形態においては、例えば、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、又はそれ以上の長期的な療法にわたって使用した場合に、使用を必要とする患者において顕著な充血を引き起こさない。あるいは、式I、式II、又は式IIIの化合物の投与は、CD31及びVE-カドヘリンから独立して選択される少なくとも1つのタンパク質の発現を大幅に誘導しない。
CKLP1は、レブクロマカリムの水溶性代替物として開発されたが、薬物動態研究により、その活性代謝産物への転化が遅くて、貯留及び組織からの緩徐放出の能力があるため、目下、意想外にも有利であることも示された。レブクロマカリムへのこの遅い代謝は、貯留及び組織からの緩徐放出の能力と相まって、予想外にレブクロマカリムの制御された長期送達をもたらす有利な薬物動態学的特性である。さらに、CKLP1の特有の薬物動態に加えて、活性代謝産物であるレブクロマカリムも、組織及び血管の完全性に関して予想外かつ有利に安全であることが示された。
式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、(-)(3S,4R)-エナンチオマー(レブクロマカリム)若しくは(+)(3R,4S)-エナンチオマー(デクスクロマカリム)のいずれかであるクロマカリム部分、又はそれらのあらゆる混合物を含み得る。CKLP1プロドラッグは、遊離酸として、又は完全に若しくは部分的に中和された酸として使用され得る。一実施の形態においては、式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む医薬製剤のpHは、薬学的に許容可能な塩基を使用して、医薬投与に望ましいpHレベル、しばしば約5.5又は6.5から8.5の間、より典型的には6.5から8の間に調整される。
生理学的pHでは、遊離酸を有する本発明の化合物は、完全にイオン化された形態、又は一実施の形態においては、部分的にイオン化された形態と平衡状態で存在することになる。例えば、眼のpHは、およそ7.4~7.6であり、殆ど水から構成されている。したがって、本発明の化合物の遊離ヒドロキシルは、体内では(僅かに塩基性の溶液における自然な平衡のため)対応するイオン化された形態として存在する。次に、このイオン化された形態は、クロマカリム、及び一実施の形態においては、レブクロマカリムに分解することになる。
本発明はまた、血管障害、心血管障害、リンパ疾患、及び勃起不全を含む、CKLP1プロドラッグについての新しい医学的使用を提供する。眼障害に対する治療効果を呈することに加えて、驚くべきことに、CKLP1は全身投与すると、例えばイヌ(実施例5)及びラット(実施例7)において末梢血管拡張を誘発し得ることが見出された。これは、レイノー病、虚血肢症候群(ischemic limb syndrome)、肺動脈性肺高血圧症等の血管障害、又は勃起不全等の性的障害を治療することができる驚くべき有益な副作用である。したがって、一実施の形態においては、CKLP1を、投与を必要とする宿主、例えばヒトに投与して、レイノー病を治療する。別の実施の形態においては、CKLP1を、投与を必要とする宿主、例えばヒトに投与して、勃起不全を治療する。
本発明は、少なくとも以下の態様を含む:
(i)有効量の式Iの化合物(CKLP1)若しくは式II若しくは式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、治療を必要とする宿主における障害を治療する新しい医学的使用、
(ii)顕著なタキフィラキシー(すなわち、時間の経過に伴う活性の喪失)を生じさせない又は代替的には耐性を誘発しない様式における、有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与を含む、限定されるものではないが、正常眼圧緑内障についての医学療法を必要とする宿主に対する眼療法を含む長期の(すなわち、少なくとも6週間、7週間、又は少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、又は療法期間中無期限の)医学療法、
(iii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を使用して、限定されるものではないが、原発性開放隅角緑内障(POAG)、原発性閉塞隅角緑内障(慢性開放隅角緑内障、慢性単純緑内障、及び単純緑内障としても知られている)、小児緑内障、偽落屑性緑内障、色素性緑内障、外傷性緑内障、血管新生緑内障、虹彩角膜内皮緑内障(ICE)、並びに代替的な実施の形態においては、ブドウ膜炎性緑内障、ステロイド誘発性緑内障、及び進行性白内障及び/又は硝子体内注射に起因する急性緑内障を含む、眼内圧上昇に関連する緑内障を治療する1日1回(QD)のヒトへの投与、
(iv)顕著な充血(「赤目」、血管の鬱血、小さな出血、小さな点状出血、又は微小出血をもたらす可能性がある)をもたらさない有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、眼療法を必要とする宿主に使用する眼療法、
(v)限定されるものではないが、小型形式の線維柱帯切除術(マイクロ線維柱帯切除術(microtrabeculectomies))、線維柱帯バイパス手術、完全な内シャント又は脈絡膜上シャント、より優しく穏やかな形式のレーザーシクロ光凝固術、並びに代替的な実施の形態においては、シュレム管を拡張するシュレム管ステント、ゴニオトミー、管形成術、及びレーザー線維柱帯形成術を含むMIGS(低侵襲性緑内障手術)についてのプロトコルの一部としての一次治療又は二次治療又は補助治療のいずれかとしての、有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩、
(vi)眼療法についての有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む、眼療法を必要とする宿主への局所送達用の製剤、
(vii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む、塗布を必要とする宿主への外皮塗布又は経皮塗布用の製剤、
(viii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む、治療を必要とする宿主についての全身性障害を治療するCKLP1の経腸送達及び非経口的送達用の製剤、
(ix)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、宿主における心血管障害、例えば、高血圧、鬱血性心不全、一過性虚血性発作、心臓発作、急性心筋梗塞、急性及び慢性の心筋虚血、不安定狭心症若しくは関連する胸部痛、不整脈、若しくは肺動脈性肺高血圧症(PAH)、心臓発作を経験している宿主若しくは心臓手術を受けている宿主における心臓保護剤、臓器提供前の心臓の保存用の心臓保護剤、微小血管機能不全、又は内皮機能不全の治療、
(x)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、治療を必要とする宿主における血管障害、例えば、レイノー病、慢性及び急性の下肢虚血並びに慢性の手及び/又は足の冷えを含む末梢動脈疾患の治療、
(xi)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、宿主における低血糖症、高インスリン症、又は糖尿病等の内分泌障害の治療、
(xii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、宿主における骨格筋ミオパチー等の骨格筋障害の治療、
(xiii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、勃起不全又は女性の性的興奮障害等の泌尿器科の障害の治療、
(xiv)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、治療を必要とする宿主における貧毛症(正常な睫毛の成長を示すことができない)又は禿頭症等の皮膚科の障害の治療、
(xv)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、治療を必要とする宿主における神経因性疼痛又は神経変性疾患(例えば、パーキンソン病及びハンチントン病)等の神経科の障害の治療、
(xvi)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、治療を必要とする宿主におけるリンパ浮腫、リンパ管炎、リンパ節炎、リンパ管腫症、キャッスルマン病等のリンパ疾患、又はホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、若しくはリンパ管腫症を含むリンパ系の癌の治療、
(xvii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、結膜粘液腫、ドライアイ、結膜リンパ管拡張症、結膜浮腫、マスタードガス角膜炎、角膜炎症、眼窩蜂窩織炎、霰粒腫、皮膚弛緩症、及び眼瞼弛緩症から選択される眼リンパ疾患の治療、
(xviii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、治療を必要とする宿主における腫瘍低灌流又は低酸素症の治療、
(xix)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、ミトコンドリア障害の治療、
(xx)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、宿主における眼障害、例えば、グレーブス眼症、甲状腺関連眼窩症(TAO)、グレーブス眼窩症(GO)、眼球後腫瘍、海綿静脈洞血栓症、眼窩静脈血栓症、上強膜/眼窩静脈血管炎、上大静脈閉塞、上大静脈血栓症、頸動脈海綿静脈洞瘻、硬膜海綿静脈洞部シャント、眼窩静脈瘤、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、動脈閉塞性/塞栓性疾患及び/又は低灌流疾患、虚血による視神経損傷(後部及び前部虚血性視神経症(NAION))の治療、
(xxi)細胞保護及び/又は神経保護を提供する方法であって、投与を必要とする宿主に有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与する、方法、
(xxii)有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の投与による、治療を必要とする宿主における、限定されるものではないが、スタージ・ウェーバー症候群に誘発される緑内障を含むスタージ・ウェーバー症候群の治療、並びに、
(xxiii)実施の形態(i)~実施の形態(xxii)において記載される障害又は疾患のいずれか1つを治療する、有効量のCKLP1若しくは本明細書において記載される式II若しくは式IIIの他のクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
実施例1において記載される、アッセイ緩衝液コントロールと比較した、0.3μM、3μM、及び30μMのレブクロマカリムに対する膜電位応答の平均FLIPRトレースを示すHEK-Kir6.2/SUR2B細胞におけるレブクロマカリムに誘発される過分極のグラフである。矢印は、化合物又は10μMのグリベンクラミド(KATPチャネル阻害剤)のいずれかの(試験作用物質の継続的な存在下での)添加点を示す。バーは、表1におけるEC50計算用にエクスポートされた時間範囲データを示す。x軸は秒単位で測定された時間であり、y軸は平均相対蛍光応答(RFU)である。 HEK-Kir6.2/SUR2B細胞におけるレブクロマカリムに誘発される過分極の用量-応答曲線である。データは、実施例1において記載されるように反復試験日にわたって平均化されている。個々のバッチについてのデータ点は、2つの別々の実験日にわたって記録された4回~6回の反復についての平均±SEM(平均の標準誤差)である。組み合わされた実験についてのデータ点は、バッチに関係なく全ての反復の平均±SEMである。フィッティングされたEC50値が表1にまとめられている。x軸はμM単位で測定された化合物濃度であり、y軸はKATPカリウムチャネルのパーセント活性化である。 実施例1において記載される、アッセイ緩衝液コントロール(参照として含まれる100μMのピナシジルコントロール)と比較した100μMのCKLP1に対する膜電位応答の平均FLIPRトレースを示す、HEK-Kir6.2/SUR2B細胞におけるCKLP1に誘発される過分極のグラフである。矢印は、化合物又は10μMのグリベンクラミド(KATPチャネル阻害剤)のいずれかの(試験作用物質の継続的な存在下での)添加点を示す。バーは、EC50計算用にエクスポートされた時間範囲データを示す。x軸は秒単位で測定された時間であり、y軸は平均相対蛍光応答(RFU)である。 HEK-Kir6.2/SUR2B細胞におけるCKLP1に誘発される過分極の用量-応答曲線である。データは、実施例1において記載されるように反復試験日にわたって平均化されている。個々のバッチについてのデータ点は、2つの別々の実験日にわたって記録された4回~6回の反復についての平均±SEMである。組み合わされたデータについてのデータ点は、バッチに関係なく全ての反復の平均±SEMである。フィッティングされたEC50値が表1にまとめられている。x軸はμM単位で測定された化合物濃度であり、y軸はKATPカリウムチャネルのパーセント活性化である。 HEK-Kir6.2/SUR2B細胞におけるクロマカリム及びピナシジルに誘発される過分極の用量-応答曲線である。データは、実施例1において記載されるように反復試験日にわたって平均化されている。個々のバッチについてのデータ点は、2つの別々の実験日にわたって記録された4回~6回の反復についての平均±SEMである。組み合わされたデータについてのデータ点は、バッチに関係なく全ての反復の平均±SEMである。フィッティングされたEC50値が表1にまとめられている。x軸はμM単位で測定された化合物濃度であり、y軸はKATPカリウムチャネルのパーセント活性化である。 実施例2において記載される、漸減濃度(0.2U/100μL、0.02U/100μL、0.002U/100μL、及び0.0002U/100μL)のアルカリホスファターゼの存在下における60分間にわたってのin vitroでのCKLP1のレブクロマカリムへの転化を示すグラフである。x軸は分単位で測定された時間であり、y軸はレブクロマカリムのパーセント転化率である。 実施例2において記載される、漸減濃度(0.2U/100μL、0.02U/100μL、0.0020U/100μL、及び0.00020U/100μL)のアルカリホスファターゼの存在下における72時間にわたってのin vitroでのCKLP1のレブクロマカリムへの転化を示すグラフである。x軸は分単位で測定された時間であり、y軸はレブクロマカリムのパーセント転化率である。 60分間にわたってのin vitroでのCKLP1のレブクロマカリムへの転化を示すグラフである。実施例2に記載されるように、CKLP1の濃度(0.01mM、0.1mM、1mM、10mM、20mM、及び40mM)を変化させ、アルカリホスフェート(alkaline phosphate)の濃度を一定に保った。x軸は分単位で測定された時間であり、y軸はレブクロマカリムのパーセント転化率である。 72時間にわたってのin vitroでのCKLP1のレブクロマカリムへの転化を示すグラフである。実施例2に記載されるように、CKLP1の濃度(0.01mM、0.1mM、1mM、10mM、20mM、及び40mM)を変化させ、アルカリホスフェートの濃度を一定に保った。x軸は分単位で測定された時間であり、y軸はレブクロマカリムのパーセント転化率である。 実施例4において記載されるハウンドドッグにおけるCKLP1の用量応答を示す図である。CKLP1を用いた用量応答研究により、全ての濃度でIOPがベースラインと比較して有意に低下したことが示される。統計的には、10mM及び15mMの両方の濃度でIOPが最も大きく低下したが、2つの濃度の間に差は認められなかった。したがって、その後の全ての実験について10mMの濃度を選択した。x軸はmM単位で測定されたCKLP1の濃度であり、y軸はmmHg単位で測定されたベースラインと比較したIOPの変化である。 実施例4において論じられた長期投与研究のグラフである。10mMでのCKLP1の1日1回の治療は、61連続日間の治療期間にわたって持続的なIOP低下を引き起こし、優れた忍容性を示し、観察可能な眼の副作用を示さなかった。CKLP1による治療の時間はx軸に沿って示され、網掛けのボックスにより治療前及び治療後が示される。x軸は日単位で測定された時間であり、y軸はmmHg単位で測定されたビヒクルコントロールと比較したIOPの変化である。 実施例4において論じられる1日1回の局所的な10mMのCKLP1治療後のハウンドドッグの収縮期血圧及び拡張期血圧を示すグラフである。CKLP1治療は、ベースライン値と比較した場合に、平均の収縮期血圧及び拡張期血圧に有意な変化を一切引き起こさなかった。x軸には収縮期血圧又は拡張期血圧が表示され、y軸はmmHg単位で測定された血圧である。 実施例4において論じられる局所的なCKLP1治療後のアフリカミドリザルにおけるIOP測定のグラフである。10mMのCKLP1で1日1回治療すると、アフリカミドリザルにおけるIOPが低下した。治療の中止後に、IOPはほぼベースラインに復帰した。治療の過程において禁忌の副作用は観察されなかった。CKLP1による治療の時間はx軸に沿って示され、網掛けのボックスにより治療前及び治療後が示される。x軸は日単位で測定された時間であり、y軸はmmHg単位で測定されたビヒクルコントロールと比較したIOPの変化である。 実施例4において論じられる局所的なCKLP1治療後のアフリカミドリザルの収縮期血圧及び拡張期血圧を示すグラフである。10mMのCKLP1で7日間毎日治療しても、アフリカミドリザルにおいて収縮期血圧又は拡張期血圧に有意な影響は見られなかった。x軸には収縮期血圧又は拡張期血圧が表示され、y軸はmmHg単位で測定された血圧である。 実施例4において記載される研究の1日目の8つの異なる時点でハウンドドッグから採取された血液中のCKLP1及びレブクロマカリムの濃度のグラフである。ハウンドドッグは両眼において10mMのCKLP1の50μLの局所的な眼投与で1日1回8日間治療され、図9Aは1日目からの時点のグラフである。グラフは、CKLP1のレブクロマカリムへの転化とともに、薬物の特徴的な吸収及び排泄プロファイルを示している。図9Aからのデータの分析からの薬物動態パラメーターを表2A及び表2Bにおいて示す。x軸は時間単位で測定された時間であり、y軸はng/mL単位で測定された濃度である。 実施例4において記載される研究の4日目の8つの異なる時点でハウンドドッグから採取された血液中のCKLP1及びレブクロマカリムの濃度のグラフである。ハウンドドッグは両眼において10mMのCKLP1の50μLの局所的な眼投与で1日1回8日間治療され、図9Bは4日目からの時点のグラフである。グラフは、CKLP1のレブクロマカリムへの転化とともに、薬物の特徴的な吸収及び排泄プロファイルを示している。図9Bからのデータの分析からの薬物動態パラメーターを表2A及び表2Bにおいて示す。x軸は時間単位で測定された時間であり、y軸はng/mL単位で測定された濃度である。 実施例4において記載される研究の8日目の8つの異なる時点でハウンドドッグから採取された血液中のCKLP1及びレブクロマカリムの濃度のグラフである。ハウンドドッグは両眼において10mMのCKLP1の50μLの局所的な眼投与で1日1回8日間治療され、図9Cは8日目からの時点のグラフである。グラフは、CKLP1のレブクロマカリムへの転化とともに、薬物の特徴的な吸収及び排泄プロファイルを示している。図9Cからのデータの分析からの薬物動態パラメーターを表2A及び表2Bにおいて示す。x軸は時間単位で測定された時間であり、y軸はng/mL単位で測定された濃度である。 実施例4に記載される、12日間~13日間にわたる10mMのCKLP1の50μlの局所的な1日1回の眼投与後のハウンドドッグの様々な眼及び全身の組織及び液におけるCKLP1及びレブクロマカリムの分布のグラフである。CKLP1は、心臓及び肝臓において低濃度で確認され、分析された全ての眼組織においてより高い濃度で確認された。線維柱帯網、視神経、及び角膜では、最高レベルのCKLP1及びレブクロマカリム(1グラムの組織当たりのng)が示された。両薬物ともに尿中に排泄された。TM=線維柱帯網、AH=房水、VH=硝子体液。x軸には組織が表示されており、y軸はng/g単位で測定されたCKLP1又はレブクロマカリムの濃度である。CKLP1の濃度は、硝子体液、房水、及び尿がng/mL単位で測定されたことを除き、ng/g単位で測定した。 実施例4において記載される、12日間~13日間にわたる10mMのCKLP1の50μlの局所的な眼投与で1日1回治療されたハウンドドッグからの線維柱帯網及び房水管叢(aqueous vessel plexus)の代表的なヘマトキシリン染色及びエオシン染色された組織標本を示す図である。組織選択(tissue selection)には病理学的所見が全くなく、これらの動物におけるCKLP1の忍容性が良好であることが示された。スケールバーは50μmである。 実施例4において記載される、12日間~13日間にわたる10mMのCKLP1の50μlの局所的な眼投与で1日1回治療されたハウンドドッグからの網膜の代表的なヘマトキシリン染色及びエオシン染色された組織標本を示す図である。組織選択には病理学的所見が全くなく、これらの動物におけるCKLP1の忍容性が良好であることが示された。スケールバーは50μmである。 実施例4において記載される、12日間~13日間にわたる10mMのCKLP1の50μlの局所的な眼投与で1日1回治療されたハウンドドッグからの腎臓の代表的なヘマトキシリン染色及びエオシン染色された組織標本を示す図である。組織選択には病理学的所見が全くなく、これらの動物におけるCKLP1の忍容性が良好であることが示された。スケールバーは50μmである。 実施例4において記載される、12日間~13日間にわたる10mMのCKLP1の50μlの局所的な眼投与で1日1回治療されたハウンドドッグからの肝臓の代表的なヘマトキシリン染色及びエオシン染色された組織標本を示す図である。組織選択には病理学的所見が全くなく、これらの動物におけるCKLP1の忍容性が良好であることが示された。 本発明の式I、式II、及び式IIIの画像である。CKLP1は式Iである。
I.本明細書において記載される医学的使用のためのクロマカリムリン酸エステル及び他のプロドラッグ及びそれらの薬学的に許容可能な塩
一態様において、本発明は、式I、式II、又は式III:
Figure 2023512828000012
のクロマカリムプロドラッグ及びそれらの薬学的に許容可能な塩についての新しい医学的使用である。
驚くべきことに、本発明のプロドラッグは、クロマカリム、及び一実施形態においてはレブクロマカリムの長期の制御送達をもたらす予想外の薬物動態特性を示すことが見出された。このプロドラッグは、活性のクロマカリム又はレブクロマカリムにゆっくりと転化し、一実施形態においては、眼組織を含む組織内に貯留され、時間をかけて緩徐放出されるという点で、内部制御放出デバイスとして機能する。これは事前に予測することができたものではなく、活性部分の予想外の連続的な制御送達をもたらす。
CKLP1(式I)の薬学的に許容可能な塩としては、
Figure 2023512828000013
(式中、X及びM2+は、所望の結果を達成するあらゆる薬学的に許容可能なカチオンであり得る)が挙げられる。
或る特定の実施形態においては、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、鉄、亜鉛、アルギニン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、リジン、ヒスチジン、メグルミン、プロカイン、ヒドロキシエチルピロリジン、アンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルジエタナミン、及びトリエチルアミンから選択される。
一実施形態においては、Xは、Na又はKである。一実施形態においては、Xは、Liである。一実施形態においては、Xは、Csである。一実施形態においては、Xは、1の正味正電荷を有するアンモニウムイオンである。1の正味正電荷を有するアンモニウムイオンの非限定的な例としては、
Figure 2023512828000014
が挙げられる。
代替的な実施形態においては、1の正味正電荷を有するアンモニウムイオンは、以下の式:
Figure 2023512828000015
(式中、Rは、C~Cアルキル、例えば、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、sec-ブチル、イソブチル、-CHC(CH、-CH(CHCH、及び-CHCH(CHCH、シクロプロピル、CH-シクロプロピル、シクロブチル、及びCH-シクロブチル、又はアリール、例えば、フェニル若しくはナフチルであり、ここで、C~Cアルキル又はアリールは、例えばヒドロキシル基で任意に置換されている場合がある)を有する。一実施形態においては、アンモニウムイオンは、
Figure 2023512828000016
である。
2+は、例えば、限定されるものではないが、アルカリ土類金属カチオン(マグネシウム、カルシウム、又はストロンチウム)、+2の酸化状態を有する金属カチオン(例えば、亜鉛又は鉄)、又は2の正味正電荷を有するアンモニウムイオン(例えば、ベンザチン、ヘキサメチルジアンモニウム、及びエチレンジアミン)であり得る。一実施形態においては、M2+は、Mg2+である。一実施形態においては、M2+は、Ca2+である。一実施形態においては、M2+は、Sr2+である。一実施形態においては、M2+は、Zn2+である。一実施形態においては、M2+は、Fe2+である。一実施形態においては、M2+は、2の正味正電荷を有するアンモニウムイオンである。2の正味正電荷を有するアンモニウムイオンの非限定的な例としては、
Figure 2023512828000017
が挙げられる。
代替的な実施形態においては、2の正味正電荷を有するアンモニウムイオンは、以下の式:
Figure 2023512828000018
(式中、
は、C~Cアルキル、例えば、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、sec-ブチル、イソブチル、-CHC(CH、-CH(CHCH、及び-CHCH(CHCH、シクロプロピル、CH-シクロプロピル、シクロブチル、及びCH-シクロブチル、又はアリール、例えば、フェニル若しくはナフチルであり、ここで、C~Cアルキル又はアリールは、例えばヒドロキシル基で任意に置換されている場合があり、かつ、
yは、1、2、3、4、5、6、7、及び8から選択される整数である)を有する。
式IAの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000019
が挙げられる。
式IBの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000020
が挙げられる。
式ICの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000021
が挙げられる。
式IIの薬学的に許容可能な塩としては、
Figure 2023512828000022
(式中、X及びM2+は、上記で定義されており、かつ、
xは、1、2、3、4、又は5から選択される整数である)が挙げられる。
式IIAの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000023
が挙げられる。
式IIAの一実施形態においては、xは1である。
式IIAの一実施形態においては、xは2である。
式IIAの一実施形態においては、xは3である。
式IIAの一実施形態においては、xは4である。
式IIAの一実施形態においては、xは5である。
式IIBの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000024
が挙げられる。
式IIBの一実施形態においては、xは1である。
式IIBの一実施形態においては、xは2である。
式IIBの一実施形態においては、xは3である。
式IIBの一実施形態においては、xは4である。
式IIBの一実施形態においては、xは5である。
式IICの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000025
が挙げられる。
式IICの一実施形態においては、xは1である。
式IICの一実施形態においては、xは2である。
式IICの一実施形態においては、xは3である。
式IICの一実施形態においては、xは4である。
式IICの一実施形態においては、xは5である。
式IIIの薬学的に許容可能な塩としては、
Figure 2023512828000026
が挙げられる。
式IIIAの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000027
が挙げられる。
式IIIAの一実施形態においては、xは1である。
式IIIAの一実施形態においては、xは2である。
式IIIAの一実施形態においては、xは3である。
式IIIAの一実施形態においては、xは4である。
式IIIAの一実施形態においては、xは5である。
式IIIBの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000028
が挙げられる。
式IIIBの一実施形態においては、xは1である。
式IIIBの一実施形態においては、xは2である。
式IIIBの一実施形態においては、xは3である。
式IIIBの一実施形態においては、xは4である。
式IIIBの一実施形態においては、xは5である。
式IIICの化合物の非限定的な例としては、
Figure 2023512828000029
が挙げられる。
式IIICの一実施形態においては、xは1である。
式IIICの一実施形態においては、xは2である。
式IIICの一実施形態においては、xは3である。
式IIICの一実施形態においては、xは4である。
式IIICの一実施形態においては、xは5である。
上記のような選択された薬学的に許容可能な塩がクロマカリム又はレブクロマカリムの活性に基づく医学的治療において有用であることは、本明細書において記載される本発明の一部である。概して、薬学的に許容可能な塩は、薬物の有効性若しくは毒性を増加若しくは減少させる場合があり、又は組織を通じた体内におけるその薬物動態若しくはその分布を変化させる場合がある。例えば、或る薬学的に許容可能な塩が器官内で濃縮し、別の塩が異なる器官内で濃縮する場合がある。別の例として、水溶性の増加だけでは、化合物が眼に浸透し、関連する作用部位に到達し、十分なin vivo濃度を達成し、又は有益な薬理学的効果を有することを保証することにはならない。眼への局所的な投与の場合に、薬物は、眼に浸透するのに十分に長く眼の表面上に留まる必要がある。これには、涙液層、角膜、結膜、及び強膜を含む眼球表面の複数の層を横断する必要があり、これらは全て、細胞膜、細胞間結合、並びに涙液膜の水性成分、脂質成分、及びタンパク質成分のため、様々な程度の親水性及び疎水性を有している。局所的な投与は、鼻涙(涙)管を通って次々に排出される涙液による眼表面の絶え間ない更新及び洗浄によって、より複雑になる。化合物が眼内に入るには、洗い流される前に浸透できなければならない。
本発明の一態様は、開示された薬学的に許容可能な塩が有用な薬学的効果を達成することができ、特に、例えば、前眼房内に入り、線維柱帯網に到達し、硝子体液に入り、又は網膜に到達することによって、有効性を達成する有効量において関連する眼の組織又は眼房に入ることができることである。したがって、本発明の別の態様は、本明細書において記載される式I、式II、及び式IIIの化合物自体又はそれらの薬学的に許容可能な塩、特にCKLP1が、本明細書において更に記載されるように、一般に局所送達又は全身送達のために複数の組織を通じて、標的組織に薬理学的効果を与えて対象となる障害を緩和するのに十分な長さの時間にわたって一貫した様式で治療量にて送達され得ることである。
II.式I、式II、及び式IIIの化合物、特にCKLP1、又はそれらの薬学的に許容可能な塩の医学的使用
本発明は、有効量のCKLP1又はその塩を含む式I~式IIIのクロマカリムリン酸エステル又は他のプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を送達するための新しい使用方法及びこれらを送達する組成物を提供する。本発明は、少なくとも以下の態様を含む。
本明細書において使用される「患者」又は「宿主」又は「被験体」は、典型的にはヒトであり、上記方法はヒト療法用である。適切な状況においては、その範囲には、本明細書において具体的に記載されている障害のいずれかの治療又は予防を必要とする非ヒト動物、例えば、哺乳動物、霊長類(ヒト以外)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、鳥等が含まれ得る。
顕著なタキフィラキシー又は耐性を伴わない長期療法
一実施形態においては、本発明は、限定されるものではないが、正常眼圧緑内障を含む顕著なタキフィラキシー(すなわち、時間の経過に伴う活性の喪失)又は耐性を生じさせない様式における、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を使用する、眼療法を含む長期の(すなわち、少なくとも6週間、7週間、又は少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、又は療法の期間中無期限の)医学療法を含む。タキフィラキシーは、時間の経過に伴って発生する薬物に対する応答の低下である。タキフィラシーは、初回投薬後又は一連の投薬後に発生し得る。耐性は、所与の応答を生ずる薬物の用量を増やすことが必要になることである。
本発明は、CKLP1又はその塩を含む、式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、顕著なタキフィラキシー又は代替的に耐性を誘発しない様式において長期療法に使用する方法を提供する。時間の経過に伴う活性の喪失は、眼療法薬を含む多くの薬物で注目されている。例えば、タキフィラキシーは、市販の眼アレルギー薬剤の一般的な効果であり、緑内障を含む他の眼状態用の幾つかの薬物を使用しても認められる。タキフィラキシーには、受容体又は酵素の発現の増加又は減少を含む多くの原因がある。この現象は、特にベータアドレナリン作動性アンタゴニスト及びヒスタミンに関して注目されている。
用量は、医師の最善の判断において、そして本明細書において更に説明されるように、1日1回又は1日数回であり得る。一態様においては、その用量は、正常眼圧緑内障を含む緑内障、又は本明細書において他に例として記載されるものを含むあらゆる形態の高圧緑内障のための局所滴剤として送達される。薬剤又は投薬強度を変更することを必要とせずに、長期間にわたって安定した用量の薬物を服用することができることは患者に有利である。一人として同じ患者はおらず、患者は遺伝学又は疾患に基づいて異なる結果を示す可能性があるが、一般に、治療される障害に適した送達システムにおいて有効量の式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を使用する長期療法が本発明に従って達成可能である。
1日1回の投薬
別の実施形態においては、限定されるものではないが、原発性開放隅角緑内障(POAG)、原発性閉塞隅角緑内障、小児緑内障、偽落屑性緑内障、色素性緑内障、外傷性緑内障、血管新生緑内障、虹彩角膜内皮緑内障(原発性開放隅角緑内障は、慢性開放隅角緑内障、慢性単純緑内障、及び単純緑内障としても知られている)を含む高IOP緑内障を治療する1日1回(QD)のヒト投薬が提供される。代替的な実施形態においては、1日1回(QD)のヒト投薬を使用して、進行性白内障に起因する急性高圧緑内障を治療する。更なる代替的な実施形態においては、1日1回(QD)のヒト投薬を使用して、ステロイド誘発性緑内障、ブドウ膜炎性緑内障、又は硝子体内注射後に起因する急性高圧緑内障を治療する。本発明の一態様は、制御放出製剤(例えば、ゲル剤又はマイクロ粒子剤若しくはナノ粒子剤)を用いずに(又は代替的にはそれを用いて)、ヒトにおいて1日1回の投薬で緑内障を治療する能力である。典型的な実施形態においては、これは、制御放出製剤を用いずに、例えば、任意に、限定されるものではないがマンニトール又は別の浸透圧剤を含む眼用賦形剤を含むリン酸緩衝生理食塩水又はクエン酸緩衝液等の単純な製剤において投与される。
患者のコンプライアンス及びアドヒアランスは深刻な問題であり、1日当たりの投薬が必要とされる回数が少ないほど、コンプライアンスが達成される可能性が高くなる。緑内障のための1日1回のヒト投薬は、視神経損傷を最小限に抑えながらコンプライアンス及びアドヒアランスも最適化するのに望ましい範囲において眼圧を維持するのに有利である。緑内障用の多くの治療薬を、有効な療法のために1日に複数回使用しなければならないか、又はゲル剤若しくは制御送達材料において製剤化して、1日1回の投薬を達成しなければならない。しかしながら、CKLP1を含む式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、或る特定の実施形態において選択された有効投薬量で、局所滴剤又は他の簡便な様式において1日1回投与され得る。
充血
更に別の実施形態においては、顕著な充血をもたらさない有効量のCKLP1を含む式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を使用する眼療法が提供される。充血は、器官に供給する血管内の過剰な及び/又は目立った血液である。「赤目」とも呼ばれる眼充血は、血管の鬱血、過度の血管拡張、小さな出血、小さな点状出血、及び/又は微小出血を含み得る又はそれらを引き起こし得る。眼充血は、限定されるものではないが、外因性の刺激物、コンタクトレンズ、炎症、血管破壊、結膜炎(感染性又はアレルギー性を含む)、外傷、内因性の眼傷害、結膜下出血、結膜出血、眼瞼炎、前部ブドウ膜炎、緑内障、又は刺激性薬物、及び環境刺激物(すなわち、日光及び風)を含む様々な原因を有し得る。
或る特定の眼用薬物は充血に対応しないか、又は実際に充血を引き起こすかのいずれかである。本発明によれば、CKLP1を含む式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩の使用は、療法の間に使用される場合に、一実施形態においては、本明細書において記載される長期療法にわたって使用される場合に、患者において顕著な充血を引き起こさない。一実施形態における顕著な充血は、患者がそれを治療の有害効果と見なすのに十分な変色又は不快感を患者に引き起こす充血であり、これは、十分に顕著であれば、コンプライアンスの低下どころか、療法の中止につながる可能性さえある。本発明は、患者のコンプライアンス及び快適さを支援することにより、当該技術分野の進歩をもたらし得る。一実施形態においては、式I、式II、又は式IIIの化合物の投与は、CD31及びVE-カドヘリンから独立して選択される少なくとも1つのタンパク質の発現を大幅に誘導しない。
一実施形態においては、式I、式II、又は式IIIの化合物の投与は、エンドセリン、フィブロネクチン、α-SMA、ホスホ-eNOS、及び総eNOSから独立して選択される少なくとも1つのタンパク質の発現を大幅に誘導しない。
本発明の別の態様は、皮膚、神経系、及び時には眼を冒す先天性障害であるスタージ・ウェーバー症候群に関連する緑内障の治療である。スタージ・ウェーバー症候群は、神経皮膚障害と呼ばれることもある。スタージ・ウェーバー症候群は、スタージ・ウェーバー症候群に誘発される緑内障を引き起こす可能性があり、眼の改善を示す患者の30%~70%がこれに罹患する。スタージ・ウェーバー症候群に誘発される緑内障の管理は複雑になる可能性があり、多くの患者は手術又は排液装置を必要とする。本発明によれば、スタージ・ウェーバー症候群に誘発される緑内障は、任意に本明細書において記載される薬学的に許容可能な担体中の有効量のCKLP1を含む式I、式II、若しくは式IIIのクロマカリムプロドラッグ、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与することによって治療され得る。患者は医師のケアの下で長期療法を続けることができる。
低血糖症、高インスリン症、及び糖尿病
低血糖症は、血液中の低いグルコースレベルによって引き起こされる病態である。グルコースは人体の主なエネルギー源であり、身体がそのエネルギー需要を支えるのに必要なレベルよりも血液中のグルコースレベルが低い場合に、多くの症状が発生する。例えば、患者の血糖値は1リットル当たり3.9mmol以下に低下する場合がある。低血糖症の初期症状としては、不規則な心拍、倦怠感、青白い肌、震え、不安、発汗、空腹、過敏症、口の周りのうずき感、及び/又は睡眠中の呼号が挙げられる。血糖値が更に低くなると、これらの症状は錯乱、視覚障害、発作、及び意識喪失を含むほど悪化する。血糖値が下がりすぎると、死に至る可能性がある。
低血糖症は、血糖値が身体により人為によらず適切に調節されない内分泌系の障害によって引き起こされ得る。CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩による治療は、内分泌系の安定化を助けるため、低血糖症の発症又は持続を減らすことができる。
一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩によって治療される低血糖症を引き起こす内分泌系異常は、高インスリン症である。高インスリン症は、身体が、例えば空腹時に1リットル当たり175pmol超又は食後に1リットル当たり1600pmol超の血液中の標準以上のインスリンレベルを有する場合に発生する。インスリンはグルコースを分解するので、そのレベルが高すぎると低血糖症及びその症状が発生する可能性がある。
糖尿病は、身体の血糖値が高すぎる病態である。糖尿病は一般的に2つの型に分けられる。1型糖尿病は自己免疫疾患の一形態であり、患者の免疫系が膵臓のインスリン産生細胞を攻撃して破壊し、患者の天然インスリンが殆ど又は全くなくなる場合に発生する。2型糖尿病においては、患者の細胞がインスリンに対して抵抗性になり、膵臓はこの抵抗性に打ち勝つのに十分なインスリンを作ることができない。糖尿病の型に関係なく、可能性のある症状としては、渇感の増加、頻尿、極度の空腹、原因不明の体重減少、尿中のケトンの存在、倦怠感、過敏症、かすみ目、治癒の遅いただれ、及び頻繁な感染症が挙げられる。
本発明の一態様は、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、糖尿病を治療する能力である。一実施形態においては、この化合物を使用して1型糖尿病を治療する。別の実施形態においては、この化合物を使用して2型糖尿病を治療する。
一実施形態においては、式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を有効量で非経口剤形において投与して、低血糖症、高インスリン症、又は糖尿病を治療する。一実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、輸液及びポンプを介して一日中連続的に投与される。代替的な実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、丸剤、錠剤、又はカプセル剤等の経口剤形を介して投与される。一実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、1日に少なくとも1回、2回、又は3回投与される。
一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、メトホルミン、スルホニル尿素(グリブリド(DiaBeta、Glynase)、グリピジド(Glucotrol)及びグリメピリド(Amaryl))、メグリチニド(レパグリニド(Prandin)及びナテグリニド(Starlix))、DPP-4阻害剤(シタグリプチン(Januvia)、サクサグリプチン(Onglyza)、及びリナグリプチン(Tradjenta))、GLP-1受容体アゴニスト(Exenatide(Byetta、Bydureon)、リラグルチド(Victoza)及びセマグルチド(Ozempic))、SGLT2阻害剤(カナグリフロジン(Invokana)、ダパグリフロジン(Farxiga)、及びエンパグリフロジン(Jardiance))、又はインスリンを含む糖尿病用の治療薬と組み合わせて又はそれと交互に投与される。
骨格筋ミオパチー
骨格筋ミオパチー(筋原線維性ミオパチーとしても知られる)は、骨格筋線維に欠陥が含まれ、それが筋衰弱を引き起こす障害である。例えば、筋線維は、筋収縮に必要であり、通常はZ帯と呼ばれる棒状の構造から構成されているサルコメアに欠陥を有する場合がある。Z帯は、隣接するサルコメアをつなぎ合わせて、筋線維の基本単位である筋原線維を形成する。欠陥のあるサルコメアは、筋線維内に凝集塊を形成し、筋線維の強度を大幅に低下させる可能性がある。
本発明の一態様は、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、骨格筋ミオパチーを治療する能力である。一実施形態においては、有効量の式I~式IIIのプロドラッグを非経口投与、経口投与、又は局所投与して、骨格筋ミオパチーを治療する。一実施形態においては、プロドラッグは静脈内投与される。一実施形態においては、プロドラッグは、コルチコステロイド薬(プレドニゾン)、免疫抑制薬(アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリンA、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、及びタクロリムス)、副腎皮質刺激ホルモン、又はリツキシマブ若しくは腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤(インフリキシマブ又はエタネルセプト)等の他の生物学的療法薬と組み合わせて又はそれと交互に投与される。
一実施形態においては、患者は、デスミン(DES)遺伝子において突然変異を有する。別の実施形態においては、患者は、ミオチリン(MYOT)遺伝子において突然変異を有する。別の実施形態においては、患者は、LIMドメイン結合3(LDB3)遺伝子において突然変異を有する。別の実施形態においては、患者は、DES、MYOT、又はLDB3において突然変異を有しない。
一実施形態においては、ミオパチーは後天性である。後天性ミオパチーは、炎症性ミオパチー、中毒性ミオパチー、及び全身状態に関連するミオパチーとして更に細分類され得る。一実施形態においては、炎症性ミオパチーは、多発性筋炎、皮膚筋炎、及び封入体筋炎(IBM)から選択される。中毒性ミオパチーは、薬物誘発性のミオパチーであり、コレステロール低下薬、HIV療法薬、抗ウイルス療法薬、リウマチ薬、及び抗真菌剤の使用により観察される副作用である(Valiyil et al. Curr Rheumatol Rep. 2010, 12, 213)。したがって、一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、薬剤によって誘発される中毒性ミオパチーを治療する。中毒性ミオパチーを誘発する薬剤の非限定的な例としては、ステロイド、コレステロール低下薬剤(例えば、スタチン、フィブラート、ナイアシン、及びエゼチミブ)、プロポフォール、アミオダロン、コルヒチン、クロロキン、抗ウイルス薬及びプロテアーゼ阻害剤、オメプラゾール、並びにトリプトファンが挙げられる。
代替的な実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、全身状態と関連するミオパチーを治療する。全身性疾患の非限定的な例としては、内分泌障害、全身性炎症性疾患、電解質平衡異常、重症疾患ミオパチー、及びアミロイドミオパチーが挙げられる。
一実施形態においては、ミオパチーは遺伝性である。遺伝性ミオパチーは、筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、ミトコンドリアミオパチー、及び代謝性ミオパチーとして更に細分類され得る。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ジストロフィノパチー(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、筋強直性ジストロフィー1型及び筋強直性ジストロフィー2型、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、又は肢帯型筋ジストロフィーを含む筋ジストロフィーを治療する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ネマリンミオパチー又は中心コアミオパチーを含む先天性ミオパチーを治療する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、酸性マルターゼ欠損症又は酸性α-1,4-グルコシダーゼ欠損症(ポンペ病)、糖原病3型~11型、カルニチン欠乏症、脂肪酸酸化異常症、又はカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症を含む代謝性ミオパチーを治療する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MDS)、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)、母系遺伝性難聴・糖尿病(MIDD)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(MNGIE)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)、神経障害・運動失調症・網膜色素変性(NARP)、又はピアソン症候群を含むミトコンドリアミオパチーを治療する。
勃起不全、及び血流による女性の性的興奮障害
勃起不全は、勃起すること及び/又は勃起を維持することの持続的な困難を特徴とする障害である。勃起不全は、心理的、感情的、及び身体的な問題を含む様々な要因によって引き起こされ得る。本発明の一態様は、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、勃起不全を治療することである。一実施形態においては、勃起不全を伴う患者は、陰部への血流が少ない。したがって、一態様においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、陰部への血流を増加させる。
女性の性的興奮障害は、性的興奮すること及び/又は性的興奮を維持することの持続的な困難を特徴とする障害である。女性の性的興奮障害は、心理的、感情的、及び身体的な問題を含む様々な要因によって引き起こされ得る。本発明の一態様は、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、女性の性的興奮障害を治療する能力である。一実施形態においては、女性の性的興奮障害を伴う患者は、陰部への血流が少ない。したがって、一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、陰部への血流を増加させる。
一実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグは、勃起不全又は女性の性的興奮障害の治療に必要とされる有効量で経口投与される。一実施形態においては、プロドラッグを、頓用されるクリーム剤、ゲル剤、又は軟膏剤として有効量で局所投与して、勃起不全又は女性の性的興奮障害を治療することができる。或る特定の実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグ、例えばCKLP1は、勃起不全及び/又は女性の性的興奮障害の治療用の潤滑剤中の活性作用物質として製剤化される。
或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、限定されるものではないが、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シルデナフィル、クエン酸ジルデナフィル、バルデナフィル、バルデナフィルHCl、タダラフィル、アバナフィル)、テストステロン療法、陰茎注射(例えば、ICI又は海綿体内アルプロスタジル)、尿道内薬剤(例えば、IU又はアルプロスタジル)、陰茎インプラント、療法薬の組合せ(例えば、バイミックス又はトライミックス)、又は手術を含む勃起不全用の1つ以上の追加の治療と組み合わせて又はそれと交互に有効量で投与される。
或る特定の実施形態においては、有効量の式I~式IIIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩、例えばCKLP1は、限定されるものではないが、エストロゲン療法、エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、オスペミフェン)、アンドロゲン療法、抗鬱薬(例えば、フリバンセリン)、又はメラノコルチンアゴニスト(例えば、ブレメラノチド)を含む女性の性的興奮障害用の1つ以上の追加の治療と組み合わせて投与される。
貧毛症及び禿頭症
眉毛及び睫毛の貧毛症は、眉毛及び/又は眼瞼の端にある睫毛において毛の成長が殆どないし全くない、又は毛量が不十分である障害である。
本発明の一態様は、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、貧毛症を治療する能力である。一実施形態においては、患者は、貧毛症を引き起こす遺伝子突然変異を有する。別の実施形態においては、患者は、貧毛症を引き起こす遺伝子突然変異を有しない。
一実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグは、睫毛の根元の上眼瞼の縁に塗布される局所剤形として投与される。一実施形態においては、プロドラッグは、少なくとも1日1回又は1日2回投与される。
或る特定の実施形態においては、本発明の化合物は、プロスタグランジン類似体(例えば、ビマトプロスト)と組み合わせて又はそれと交互に有効量で提供される。
禿頭症は、最も典型的には頭皮における脱毛又は無毛である。一般的な種類の禿頭症としては、男性型又は女性型の禿頭症、円形脱毛症、休止期脱毛症(ストレスの多い状況の後の脱毛)、及び成長期脱毛症(毛髪の成長サイクルの最初の段階での異常な脱毛)が挙げられる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、禿頭症を治療する。一実施形態においては、禿頭症は、男性型又は女性型の禿頭症である。一実施形態においては、禿頭症は円形脱毛症である。一実施形態においては、禿頭症は休止期脱毛症である。一実施形態においては、禿頭症は成長期脱毛症である。
神経因性疼痛及び神経変性疾患(例えば、パーキンソン病及びハンチントン病)
神経因性疼痛は、神経の損傷又は神経系の機能不全によって電撃痛又は灼熱痛が生じる障害である。神経因性疼痛は急性又は慢性である場合があり、アルコール依存症、切断術、化学療法、糖尿病、顔面神経の問題、AIDS、多発性骨髄腫、多発性硬化症、神経若しくは脊髄の圧迫、椎間板ヘルニア、関節炎、帯状疱疹、脊椎手術、梅毒、又は甲状腺の問題を含む様々な要因によって引き起こされる可能性がある。神経因性疼痛を伴う患者は、電撃痛及び灼熱痛、又はうずき感若しくはしびれ感を経験する場合がある。
本発明の一態様は、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、神経因性疼痛を治療する能力である。
一実施形態においては、有効量の式I~式IIIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を経口投与、経腸投与、又は非経口投与して、神経因性疼痛を治療する。プロドラッグは、必要である限り、医療提供者の指示に従って、1日に1回、2回、又は3回投与され得る。
一実施形態においては、神経因性疼痛を治療するために、有効量の式I~式IIIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、カルシウムチャネルα2デルタリガンド(例えば、プレガバリン又はガバペンチン)、三環系抗鬱薬(例えば、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、又はデシプラミン)、SNRI抗鬱薬(例えば、デュロキセチン又はベンラファキシン)、又はオピオイド(例えば、トラマドール又はタペンタドール)と組み合わせて又はそれと交互に使用される。
神経変性疾患は、患者の神経の変性を引き起こす又はそれに起因するものである。この細胞過程としては、ミクログリア及び星状細胞を含むグリア細胞の活性化を伴う神経炎症反応が挙げられる。神経変性疾患により、患者はバランスをとる、動く、話す、呼吸する、又は記憶することが困難になる場合がある。神経変性疾患としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン病、レビー小体病、パーキンソン病、及び脊髄性筋萎縮症が挙げられる。
本発明の一態様は、有効量の本発明の化合物、例えばCKLP1又はその薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする患者に投与して、神経変性疾患を治療することである。一実施形態においては、神経変性疾患はパーキンソン病である。別の実施形態においては、神経変性疾患はハンチントン病である。代替的な実施形態においては、神経変性疾患はアルツハイマー病である。
神経変性疾患用の療法としては、有効量の本明細書において開示される化合物との併用療法又は交互療法が挙げられる。パーキンソン病用の薬物としては、アマンタジン、ニロチニブ、ゾニサミド、セレギリン、メチルフェニデート、及びサルブタモールが挙げられる。ハンチントン病用の薬物としては、テトラベナジン、チアプリド、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、及びメマンチンが挙げられる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)用の薬物としては、マスチニブ、ドルテグラビル、アバカビル、ラミブジン、レチガビン、及びタモキシフェンが挙げられる。レビー小体病用の薬物としては、ドネペジル、ガランタミン、及びリバスチグミンが挙げられる。脊髄性筋萎縮症用の薬物としては、ヌシネルセン及びオナセムノゲンアベパルボベクが挙げられる。
虚血、脳卒中、痙攣、又は外傷の後に、脳及び/又は脊髄への損傷を防ぐために神経保護薬がしばしば投与される。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩は神経保護剤として投与される。一実施形態においては、この化合物は、虚血、脳卒中、痙攣、又は外傷の後に投与される。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩は細胞保護剤として投与される。
腫瘍の低灌流及び低酸素
一態様においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を患者に投与して、腫瘍の低灌流又は腫瘍の低酸素を治療する。腫瘍の低灌流とは、腫瘍内の血流の低下を指す。腫瘍の低酸素とは、腫瘍細胞内の酸素レベルの低下を指す。2つの間には重複がある場合がある。
腫瘍が低灌流の状態にあるとき、恐らく腫瘍は急速に成長しているため、腫瘍治療薬が腫瘍細胞に到達し得るのに十分な血流を有しない。これは、化学療法薬による治療に対する耐性をもたらす可能性がある。一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を腫瘍の低灌流を伴う患者に投与することで、こうして、腫瘍は化学療法薬等の抗腫瘍薬剤でより容易に治療される。
別の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、例えば、外傷の結果としての非腫瘍細胞の低灌流を伴う患者に投与される。
腫瘍が低酸素である場合に、細胞内の酸素が欠乏しているため、腫瘍は低酸素状態になっている。低酸素である腫瘍は、転移挙動を示す可能性がより高くなり得る。したがって、一態様においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を有効量、任意に化学療法薬又は他の抗腫瘍治療薬と組み合わせて又はそれらと交互に患者に投与して、腫瘍の低酸素を治療する。
別の実施形態においては、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を、任意に血管内皮増殖因子(VEFG)治療薬と組み合わせて投与して、低酸素又は低灌流を治療する。
代替的な実施形態においては、有効量の式I~式IIIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、酸素療法(例えば、酸素マスク又は鼻の下に取り付けられて酸素補給する小さなチューブ)又は喘息薬剤(例えば、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、シクレソニド、モンテルカスト、ザフィルルカスト、ジロートン、サルメテロール、ホルモテロール、ビランテロール、アルブテロール、レバルブテロール、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、オマリズマブ、メポリズマブ、ベンラリズマブ、又はレスリズマブ)と組み合わせて又はそれらと交互に使用される。
選択された心血管障害
不安定狭心症は、冠状動脈の狭窄のため心臓に十分な血液及び酸素が届かず、予期せぬ胸部痛及び不快感を引き起こす病態である。この病態の最も一般的な原因は、アテローム性動脈硬化による冠動脈疾患である。狭心症は、血管形成術及びステント留置、又は強化体外式カウンターパルセーションで治療され得る。幾つかの薬剤により症状が改善される場合もあり、これらの薬剤としては、アスピリン、硝酸塩、ベータ遮断薬、スタチン、及びカルシウムチャネル遮断薬が挙げられる。これらの薬物の多くは、望ましくない副作用を有する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、不安定狭心症及び関連する胸部痛を伴う患者に投与される。
一実施形態においては、有効量の式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩、例えばCKLP1は、血管形成術、ステント留置、及び/又は強化体外式カウンターパルセーションと組み合わせて投与される。別の実施形態においては、式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩、例えばCKLP1は、アスピリン、硝酸塩、ベータ遮断薬、スタチン、又はカルシウムチャネル遮断薬と組み合わせて又はそれと交互に投与される。
鬱血性心不全(CHF)は、心臓の心室が身体の残部に十分な血液容量を送り出すことができない慢性の進行性の病態である。CHFの最も典型的な形態は、左心室が適切に血液を送り出さない左側CHFであり、これは右側に進行することが多い。CHFの4つの段階は、この疾患の重症度の指標であり、更に様々な治療オプションを決定する。治療しないままでいると、血液及びその他の液が肺、腹部、肝臓、及び下半身の内部に滞留する場合があり、生命を脅かす可能性がある。CHF用の薬剤としては、ACE阻害薬、ベータ遮断薬、及び利尿薬が挙げられる。これらの薬剤はそれぞれ関連する副作用を有する。例えば、ACE阻害薬は血液中のカリウム濃度を上昇させる可能性があり、一部の患者においては忍容性が認められない場合がある。このため、一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、CHFを伴う患者に投与される。心不全は、ステージ1、ステージ2、ステージ3、又はステージ4であり得る。
慢性又は急性の心筋虚血は、血流が心臓に到達することができず、心臓に十分な酸素が届くのが妨げられることである。心筋虚血は、アテローム性動脈硬化症、凝血塊、又は冠状動脈痙攣によって引き起こされ得る。心筋虚血は、深刻な異常心拍を引き起こす場合があるどころか、心臓発作につながる場合さえもある。心筋虚血の現在の治療としては、アスピリン、硝酸塩、ベータ遮断薬、ACE阻害薬、又はコレステロール低下薬剤の投与が挙げられる場合があり、それぞれは様々な程度の副作用及び効力を有する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、慢性又は急性の心筋虚血を伴う患者に投与される。
微小血管機能不全(又は冠状動脈微小血管疾患)は、心筋に栄養補給する小血管が機能しなくなる原因となる非閉塞性冠状動脈疾患の一種である。微小血管機能不全を伴う患者は冠状動脈血管にプラークの蓄積を有しないが、血管の内壁に損傷を有し、それが痙攣を引き起こし、心筋への血流を減少させる可能性がある。本発明の代替的な実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、微小血管機能不全の治療に有効な量で提供される。
冠状動脈疾患は、心臓に血液を供給する血管である冠状動脈の壁におけるプラークの蓄積である。このプラークは動脈を狭窄し、血流を遅くし、プラークの一部が剥がれ落ちて動脈に詰まると、これが血流を完全に遮断する可能性がある。プラーク及び/又は凝血塊による心臓への血流の遮断は急性心筋梗塞と呼ばれ、これはしばしば心臓発作と呼ばれる。症状には様々あるが、しばしば、胸及び腕における圧迫感又は絞扼感、息切れ、及び/又は突然のめまいが挙げられる。典型的には、緊急医療援助が必要とされる。患者には、アスピリン、血栓溶解薬、抗血小板薬、血液希釈薬剤、ニトログリセリン、ベータ遮断薬、ACE阻害薬、又はスタチンを含む1つ又は様々な薬物が投与される場合がある。可能性のある外科的処置としては、血管形成術又はバイパス手術が挙げられる。心臓発作の後には、新たな心臓発作とその後の合併症を防ぐ薬物療法を含む心臓リハビリテーションが必要とされる。
心臓発作の生命を脅かす性質を考慮すると、可能な治療オプションとして多くの潜在的な療法剤があることが有利である。したがって、一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、心臓発作を経験している患者に、及び/又は心臓リハビリテーションにおける療法薬として投与される。薬物は、限定されるものではないが、少なくとも2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、又はそれ以上を含む医療提供者によって決定された期間にわたって投与される。一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、心臓発作の間に心臓保護剤として作用する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、心臓手術を受ける宿主において心臓保護剤として使用される。一実施形態においては、宿主は焼灼処置を受けている。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、急性心筋梗塞(AMI)又は心臓発作後の左心室不全を治療する。本発明の代替的な実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、冠状動脈疾患を治療する。
一実施形態においては、有効量の式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩、例えばCKLP1は、ACE阻害薬、ベータ遮断薬、アスピリン、硝酸塩、コレステロール低下薬剤、スタチン、又は利尿薬と組み合わせて又はそれと交互に投与される。
一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、臓器提供前の心臓の保存に有効な量で提供される。
不整脈は、心臓の不適切な(速すぎる、遅すぎる、又は不規則な)鼓動であり、これは、冠状動脈疾患、高血圧、電解質の不均衡、又は心臓発作による損傷を含む様々な病状によって引き起こされる可能性がある。不整脈は非常に一般的であり、米国では毎年300万人が罹患している。不整脈の大部分は無害である場合もあるが、非常に異常な不整脈は深刻な又は致命的な症状を引き起こす可能性がある。治療しないままでいると、不整脈は、十分な血液が臓器に到達することができないため、心臓、脳、及び他の臓器を冒す可能性がある。不整脈の治療用の埋め込み型デバイスとしては、ペースメーカー又は埋め込み型除細動器(ICD)が挙げられる。一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、不整脈を伴う患者に投与される。一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、治療又は予防を必要とする宿主におけるAMIに関連する不整脈及び/又は心室細動を治療又は予防するのに有効な量で提供される。
一実施形態においては、式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩、例えばCKLP1は、ペースメーカー又はICDと組み合わせて投与される。
内皮層は、全ての血管を裏打ちする細胞の層であり、血管の適切な拡張及び収縮を司る。内皮の緊張は、収縮と拡張との間のバランスであり、主として身体の血圧を決定する。内皮機能不全は、内皮層が拡張/収縮を調節することの不全である。内皮機能不全は、心血管リスク要因に対する十分に確立された応答であり、更にアテローム性動脈硬化の発症に先行することが多い。治療薬としては、ACE阻害薬及びスタチン薬が挙げられるが、追加の薬物についての研究が進行中である。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、内皮機能不全を伴う患者に投与する。
一過性脳虚血発作(TIA)は脳卒中に類似しているが、数分間持続するだけで、永久的な損傷を残さない。脳卒中のように、血液供給中の血塊が脳に移動する。TIAの徴候としては、衰弱、しびれ、麻痺、不明瞭な発語、めまい、失明、及び/又は突然の激しい頭痛が挙げられる。TIAの診断後には、新たなTIA又は脳卒中を予防する試みが重要である。典型的な薬剤としては、抗血小板薬、抗凝固薬、及び血栓溶解剤が挙げられる。代替的には、しばしば血管形成術が推奨される。抗血小板薬及び抗凝固薬は、出血のリスクを高めるため、慎重に服用する必要がある。このため、血管拡張薬はTIAの代替的な薬剤となる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、一過性脳虚血発作と診断された患者に投与される。
頸動脈疾患は、首の両側に沿って延びており、脳、顔、及び首に血液を供給する頸動脈におけるプラークの蓄積である。プラークの一部が剥がれ落ちて脳につながる血管において血塊が生じると、その血塊が脳卒中を引き起こす可能性がある。本発明の代替的な実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、脳卒中と診断された患者に投与される。
一実施形態においては、式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩、例えばCKLP1は、抗血小板薬、抗凝固薬、又は血栓溶解剤と組み合わせて又はそれと交互に投与される。
高血圧は、血管内を流れる血液の力が一貫して高い病態である。これは、本明細書において論じられる心臓病態及び脳卒中を含む多くの病態につながり得ることが多い。本発明の代替的な実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、高血圧を伴う患者に血圧を下げる治療薬として投与される。
血管障害
レイノー病は、低温又はストレスに応答して手足の指がしびれる血管の希少な障害である。これは、しびれ感を伴う手足の指の変色(通常は白色、次に青色)を誘発する場合がある。これは、寒さ又はストレスに曝されたときに血管痙攣を起こしている手足の指の動脈によって引き起こされ、これにより後に血管が狭窄して、一時的に血液供給が制限される。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を患者に投与して、レイノー病を治療する。これは、局所送達、経腸送達、又は非経口送達によるものであり得る。
末梢動脈疾患(PAD)は、四肢、心臓、及び他の器官に血液を運ぶ動脈においてプラークが蓄積する疾患である。これにより動脈が狭窄して、心臓からの血流が減少する。PADは塞栓症又は血栓症を引き起こす場合があり、これは急性手足病につながる可能性がある。急性手足病は治療可能であるが、治療しないままでいると(6時間~12時間の遅れ)、切断術及び/又は死に至る可能性がある。症状としては、痛み、蒼白、及び/又は麻痺が挙げられる。一実施形態においては、有効量のCKLP1プロドラッグ又はその薬学的に許容可能な塩を投与して、急性下肢虚血を治療する。
慢性下肢虚血は、時間の経過とともに進展する進行性PADの一種であり、筋肉痛、膝蓋大腿疼痛、並びに灌流不良及び低酸素症による最終的な組織喪失を含む。慢性下肢虚血は、糖尿病、喫煙、及び高血圧に関連している。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、慢性下肢虚血を治療する。
血栓性静脈炎は、静脈内に凝血塊が生じ、静脈内の血流が遅くなる場合である。血栓性静脈炎は、脚を冒すことが最も多く、腕又は体内の他の静脈に起こる場合もある。血栓性静脈炎は、脚又は腕において皮膚の直下で又はより深部で起こる場合がある。血栓性静脈炎の種類としては、皮膚の表面のすぐ下で発生する表在性静脈炎又は表在性血栓性静脈炎、体内の深部で発生する深部静脈血栓症(DVT)、及び血塊が身体の異なる部分に戻る場合の移動性血栓性静脈炎(トルーソー症候群又は移行性血栓性静脈炎)が挙げられる。本発明の代替的な実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、血栓性静脈炎を治療する。一実施形態においては、血栓性静脈炎は表在性血栓性静脈炎である。一実施形態においては、血栓性静脈炎は深部静脈血栓症である。一実施形態においては、血栓性静脈炎は移動性血栓性静脈炎である。
慢性静脈不全症(CVI)は、脚の静脈内の静脈壁及び/又は弁が効果的に機能しておらず、血液が脚から心臓に戻ることが困難となる場合に発生する病態である。CVIは、これらの静脈内に血液を「溜める」又は集める原因となり、この溜まりが鬱血と呼ばれる。CVIが治療されないと、脚の最も小さな血管(毛細血管)が破裂するまで圧迫及び腫脹が増加する。これが起こると、上にある皮膚は帯赤褐色になり、ぶつかったり又は引っ掻いたりすると非常に壊れやすい。本発明の代替的な実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、慢性静脈不全症を治療する。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、通常は若年成人期において、主として女性に現れる希少な疾患である。PAHは、肺につながる肺動脈の進行性障害であり、現在利用可能な療法があるにもかかわらず致死性である。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を患者に投与して、肺動脈性肺高血圧症を治療する。一実施形態においては、式I~IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、PDE-5阻害剤(例えば、シルデナフィル又はタダラフィル)、プロスタノイド血管拡張薬(例えば、エポプロステノール、トレプロスチニル、又はイロプロスト)、グアニル酸シクラーゼ刺激薬(例えば、リオシグアト)、又はエンドセリン受容体アンタゴニスト(例えば、ボセンタン、アンブリセンタン、又はマシテンタン)と組み合わせて投与される。
本発明の態様は、本明細書において記載される薬物を、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン、アフェジタブ、プロカルジア、アムロジピン、フェロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニソルジピン、ベラパミル、及びイスラジピン)又は別の血管拡張薬(例えば、ヒドララジン、ニトログリセリン、アルプロスタジル、リオシグアト、ネシリチド、ニトロプルシド、シルデナフィル、及びミノキシジル)と組み合わせて又はそれと交互に投与することを含む。
リンパ疾患
リンパ系は、体の毒素及び老廃物を取り除く働きをし、その主な役割は、白血球を含む液であるリンパ液を体全体に運び、感染症と戦うことである。この系は主に、リンパ液を濾過するリンパ節に接続されたリンパ管から構成されている。KATPチャネルはリンパ筋細胞によって発現され、或る特定のKATPチャネル開口薬がリンパ管を拡張することが研究により分かっている。
例えば、Garnerらによる最近の研究("KATP Channel Openers Inhibit Lymphatic Contractions and Lymph Flow as a Possible Mechanism of Peripheral Edema", Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, October 25, 2020)において論じられているように、摘出されたラット腸間膜リンパ管の律動収縮は、クロマカリム、硫酸ミノキシジル、及びジアゾキシド等のKATPチャネル開口薬に曝されると次第に減退する。クロマカリムの濃度を高めると、収縮の周波数及び振幅の減衰により、最終的に血管の収縮がなくなり、血管を通る流れが損なわれた。臨床的に関連する濃度で投与した場合に、硫酸ミノキシジル及びジアゾキシドで同様の効果が観察された。
リンパ管の炎症はリンパ管炎として知られており、症状としては一般に、感染部位の腫れ、発赤、及び/又は痛みが挙げられる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、リンパ管炎を治療する。
リンパ節もウイルス、細菌、及び/又は真菌に感染する場合があり、これはリンパ節炎と呼ばれる。リンパ節炎の症状としてはまた、リンパ節周辺の発赤又は腫れが挙げられる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、リンパ管炎を治療し、一実施形態においては、式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグは、抗生物質又は抗真菌薬剤と組み合わせて投与される。
リンパ系の一般的な癌は、リンパ球と呼ばれる白血球に由来する癌のホジキンリンパ腫である。この癌は体のあらゆる部分で発生する可能性があり、症状としては、頸部、腋下、又は鼠径部における痛みを伴わないリンパ節の腫大が挙げられる。古典的ホジキンリンパ腫及び結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫という2つの主要な種類のホジキンリンパ腫がある。ホジキンリンパ腫用の治療としては、化学療法及び/又は放射線が挙げられ、最も一般的な治療薬はモノクローナル抗体のリツキシマブ(Rituxan)である。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を化学療法及び/又は放射線と組み合わせて投与して、ホジキンリンパ腫を治療する。一実施形態においては、化学療法薬はリツキシマブである。
非ホジキンリンパ腫は、体がリンパ球と呼ばれる異常な白血球を大量に産生しすぎて、それが腫瘍につながる場合に発生する。非ホジキンリンパ腫の一般的な亜型は、B細胞非ホジキンリンパ腫である。症状としては、リンパ節の腫れ、発熱、及び/又は胸部痛が挙げられる。非ホジキンリンパ腫は、化学療法及び/又は放射線で治療される。一般的な治療は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾンに加えて、モノクローナル抗体のリツキシマブ(Rituxan)からなるR-CHOPとして知られるレジメンである。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を化学療法及び/又は放射線と組み合わせて投与して、非ホジキンリンパ腫を治療する。一実施形態においては、化学療法薬は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、及びリツキシマブからなる。
キャッスルマン病は、リンパ節腫大を特徴とするリンパ増殖性障害の群であり、単中心性キャッスルマン病(UCD)、ヒトヘルペスウイルス8関連多中心性キャッスルマン病(HHV-8関連MCD)、及び特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)という少なくとも3つの異なる亜型がある。UCDにおいては、単一の領域にリンパ節の腫大が見られ、iMCDにおいては、複数の領域にリンパ節の腫大が見られる。HHV-8関連MCDは、複数の領域にリンパ節の腫大が見られるという点でiMCDに類似しているが、その患者はヒトヘルペスウイルス8にも感染している。
一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、単中心性キャッスルマン病(UCD)、ヒトヘルペスウイルス8関連多中心性キャッスルマン病(HHV-8関連MCD)、及び特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)を含むキャッスルマン病を治療する。
リンパ管腫症は、嚢胞及び/又は病変がリンパ管から形成される疾患である。腫瘤は単一の局在性腫瘤で存在せずに広範囲に及ぶ。リンパ管腫症は、異常に増殖するリンパ流路が拡大し、周囲の組織、骨、及び器官に浸潤する多系統障害である。リンパ管腫症は、小児及び10代の若者において最も蔓延している希少疾患である。標準的な治療はなく、多くの場合、治療は症状を軽減することのみを目的とする。一実施形態においては、有効量の式I~式IIIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を投与して、リンパ管腫症に関連する症状を治療又は軽減する。
「リンパ管拡張症」としても知られるリンパ管拡張は、リンパ管の病的な拡張である。リンパ管拡張が腸内で発生すると、これは、リンパ管の拡張、慢性的な下痢、並びに血清アルブミン及びグロブリン等のタンパク質の喪失を特徴とする「腸リンパ管拡張」として知られる疾患を引き起こす。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、リンパ管拡張に関連する症状を治療又は軽減する。
眼の或る特定の部分ではリンパ管が豊富であるのに対して、眼の他の部分にはリンパ管がないという点で、眼は独特である。眼瞼、涙腺、結膜、角膜縁、視神経鞘、外眼筋、外眼筋錐の結合組織を含む眼の部分にはリンパ管が豊富であるのに対して、角膜及び網膜にはリンパ管がない。眼には多くのリンパ障害が確認されている。眼リンパ障害としては、限定されるものではないが、結膜粘液腫、ドライアイ、結膜リンパ管拡張症、結膜浮腫、マスタードガス角膜炎、角膜炎症、眼窩蜂窩織炎、霰粒腫、皮膚弛緩症、及び眼瞼弛緩症が挙げられる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、眼リンパ障害を治療する。一実施形態においては、眼リンパ障害は、結膜粘液腫、ドライアイ、結膜リンパ管拡張症、結膜浮腫、マスタードガス角膜炎、角膜炎症、眼窩蜂窩織炎、霰粒腫、皮膚弛緩症、及び眼瞼弛緩症から選択される。
また、角膜移植後の免疫拒絶には、新生血管ではなくリンパ管が重要であるという証拠もある(T. Dietrich et al., Journal of Immunology, 2010, 184, 2, 535-539)。したがって、一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を角膜移植後に投与して、免疫拒絶のリスクを低減する。
ミトコンドリア障害
ミトコンドリア疾患は長期的な遺伝性の疾患であり、しばしば遺伝する。これらの疾患は、ミトコンドリア呼吸鎖の機能不全に起因する障害の臨床的に異質な群である。ミトコンドリア呼吸鎖は、好気性代謝に不可欠な最終共通経路であり、好気性代謝に対して依存性が高い組織及び器官がミトコンドリア障害に優先的に影響される。一部のミトコンドリア障害は単一の器官のみを冒すが、多くは複数の器官系に影響し、顕著な神経学的特徴及び筋障害性の特徴を示すことが多い。ミトコンドリアは、ATPに感受性のあるカリウム特異的チャネル(mitoKATPチャネル)を含む。ミトコンドリアのKATPチャネルは、ミトコンドリア量の制御及びプロトン原動力の成分の調節において重要な役割を担う。
ミトコンドリアDNA又はmtDNAと呼ばれる独自のDNAを有するという点で、ミトコンドリアは独特である。このmtDNAにおける突然変異又は核DNA(細胞の核に見られるDNA)の突然変異は、ミトコンドリア障害を引き起こす可能性がある。環境毒素がミトコンドリア疾患を惹起する場合もある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ミトコンドリア障害を治療する。
ミトコンドリアの内部には、4つの連鎖反応に沿って電子を運び、エネルギー生成をもたらすタンパク質の群(複合体I~複合体IV)がある。この鎖は、電子伝達鎖として知られている。5番目の群(複合体V)はATPを大量生産する。電子伝達鎖とATP合成酵素とが一緒になって呼吸鎖を形成し、このプロセスは酸化的リン酸化又はOXPHOSとして知られている。この鎖における第1段階である複合体Iは、ミトコンドリア異常にとって最も一般的な部位であり、これが呼吸鎖欠損症全体の3分の1をも占める。出生時又は小児期に現れることが多い複合体I欠損症は、通常、進行性の神経変性障害であり、特に脳、心臓、肝臓、及び骨格筋等の高いエネルギーレベルを必要とする器官及び組織において、様々な臨床症状の一因となる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、複合体I欠損症を治療する。
多くの特定のミトコンドリア障害は、レーベル遺伝性視神経症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)、並びにリー症候群を含む複合体I欠損症と関連している。
ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)は、2歳から15歳の間に典型的に発症する進行性の神経変性疾患であるが、これは乳児期又は成人期になって発生する場合もある。初期症状としては、脳卒中様エピソード、発作、片頭痛、及び反復性嘔吐が挙げられ得る。しばしば発作を伴う脳卒中様エピソードは、MELASの特徴的な症状であり、部分的な麻痺、視力喪失、及び局所神経障害を引き起こす。これらのエピソードの段階的な蓄積効果により、運動能力の喪失(発話、運動、及び摂食)、感覚障害(視力喪失及び身体感覚の喪失)、及び精神障害(認知症)の様々な組合せがもたらされることが多い。MELAS患者はまた、筋衰弱、末梢神経機能不全、糖尿病、難聴、心臓及び腎臓の問題、並びに消化器異常を含む追加の症状に苦しむ場合もある。乳酸は通常、血液、脳脊髄液、又はその両方に高いレベルで蓄積する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)を治療する。
赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)は、多くの場合に最初の症状であるミオクローヌスを特徴とする多系統障害の後に、全般性癲癇、運動失調、衰弱、及び認知症が続く。症状は通常、正常な早期発達の後に小児期又は思春期に最初に現れる。80%を上回る症例において、MERRFは、MT-TKと呼ばれるミトコンドリア遺伝子における突然変異によって引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)を治療する。
リー症候群は、希少な遺伝性の神経変性病態である。リー症候群は通常、乳児期に、多くの場合ウイルス感染後に現れ、症状は通常急速に進行する。初期症状としては、不十分な吸啜能、頭部制御及び運動能力の喪失、食欲不振、嘔吐、並びに発作が挙げられ得る。病態が進行するにつれて、筋緊張の衰弱及び欠如、痙縮、運動障害、小脳性運動失調、並びに末梢神経障害が症状に含まれる場合がある。リー症候群は、ミトコンドリアDNA又は核DNAのいずれかにおける突然変異が原因である可能性がある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、リー症候群を治療する。
乳児期における重度の生命を脅かす症状から成人期に始まる筋肉疾患まで広範に及ぶ場合がある複合体II欠損症は、SDHA遺伝子、SDHB遺伝子、SDHD遺伝子、又はSDHAF1遺伝子における突然変異によって引き起こされる可能性がある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、複合体II欠損症を治療する。
複合体III欠損症は、乳酸アシドーシス、筋緊張低下、低血糖症、成長不良、脳症、及び精神運動発達の遅延等の特徴を含む重度の多系統障害である。肝臓疾患及び腎尿細管症を含む内臓への影響が起こる場合もある。これは一般に、核DNAにおけるBCS1L遺伝子、UQCRB遺伝子、及びUQCRQ遺伝子の突然変異によって引き起こされ、常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。しかしながら、複合体III欠損症は、母方から伝わる又は散発性に発生するミトコンドリアDNAにおけるMTCYB遺伝子の突然変異によって引き起こされる場合もあり、より軽度の形の病態をもたらし得る。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、複合体III欠損症を治療する。
シトクロムCオキシダーゼ欠損症(COX欠損症)としても知られる複合体IV欠損症は、骨格筋、心臓、脳、及び肝臓を含む身体の幾つかの部分を冒す可能性がある病態である。COX欠損症には、症状及び発症年齢によって区別される、良性乳児ミトコンドリア型、フランス・カナダ型、乳児ミトコンドリアミオパチー型、及びリー症候群の4種類がある。複合体IV欠損症は、少なくとも14個の遺伝子のいずれかの突然変異によって引き起こされ、遺伝パターンは関係する遺伝子に依存する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、複合体IV欠損症を治療する。
ミトコンドリア疾患には他に多くの種類がある。例えば、優性視神経萎縮症(DOA)は、典型的には生後10年間に始まる視神経の変性を特徴とする遺伝性の視神経障害である。罹患者は通常、中等度の視力喪失及び色覚欠陥を発症する。重症度は様々であり、視力は正常から法的盲までの範囲に及ぶ場合がある。常染色体優性視神経萎縮症プラス症候群(ADOAプラス)は、視力喪失、難聴、及び筋肉を冒す症状を引き起こす希少な症候群である。この症候群は、視神経萎縮に関連している。ADOAプラスのその他の症状としては、感音難聴並びに筋肉痛及び筋衰弱等の筋肉を冒す症状が挙げられる。ADOAプラスは、OPA1遺伝子における突然変異によって引き起こされる。DOA及びADOAは両者とも常染色体優性遺伝形式で遺伝する。或る特定の実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、優性視神経萎縮症(DOA)又は常染色体優性視神経萎縮症プラス症候群(ADOAプラス)を治療する。
アルパーズ症候群は、小児期の間に始まる進行性の神経障害であり、多くの場合に、重度の肝臓疾患を合併する。症状としては、反射亢進(痙縮)、発作、及び認知症を伴う筋緊張の増加が挙げられる。最も多くの場合に、アルパーズ症候群はPOLG遺伝子における突然変異によって引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、アルパーズ症候群を治療する。
バース症候群は、主に心臓、免疫系、筋肉、及び成長に影響を与える、ほぼ男性にのみ発生する代謝及び神経筋障害である。バース症候群は典型的には、乳児期又は小児期早期の間に現れることになる。この病態の主な特質としては、心臓及び骨格筋の異常(心筋症及び骨格筋ミオパチー)、細菌感染症と戦うのに役立つ好中球と呼ばれる或る特定の白血球の低いレベル(好中球減少症)、及び低身長につながる可能性がある成長遅延が挙げられる。その他の徴候及び症状としては、尿及び血液中の或る特定の有機酸(3-メチルグルタコン酸等)のレベルの上昇、並びに心不全を引き起こし得る可能性がある心内膜線維弾性症による心臓の左心室の厚さの増加が挙げられ得る。バース症候群は、TAZ遺伝子における突然変異によって引き起こされ、X連鎖劣性遺伝形式で遺伝する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、バース症候群を治療する。
ミトコンドリア脂肪酸β酸化障害(FAOD)は、脂肪酸輸送及びミトコンドリアβ酸化における異常の異質な群である。これらは、常染色体劣性障害として遺伝し、幅広い臨床所見を有する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ミトコンドリア脂肪酸β酸化障害(FAOD)を治療する。FAODとしては、CPT I欠損症、CACT欠損症、CPT II欠損症、LCAD欠損症、LCHAD欠損症、VLCAD欠損症、MCAD欠損症、SCHAD欠損症、及びSCAD欠損症が挙げられる。
原発性カルニチン欠乏症は、特に絶食期間中に、身体が或る特定の脂肪をエネルギーに使用するのを妨げる遺伝的病態である。徴候及び症状の性質及び重症度は様々であるが、乳児期又は小児期早期に現れることが最も多く、重度の脳機能障害(脳症)、心筋症、錯乱、嘔吐、筋衰弱、及び低血糖症が挙げられ得る。この病態はSLC22A5遺伝子における突然変異によって引き起こされ、常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、原発性カルニチン欠乏症を治療する。
グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ欠損症は、脳及び筋肉を冒す遺伝性疾患である。この疾患の患者は、小児期早期から3歳までに症状を示し始める可能性がある。徴候及び症状は様々であるが、軽度から重度の知的障害、再発性の発作、言語障害、及び不随意運動が挙げられ得る。GAMT欠損症は、GAMT遺伝子における突然変異によって引き起こされる。この疾患は、常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ欠損症を治療する。
原発性コエンザイムQ10欠乏症はコエンザイムQ10の欠乏を伴い、身体の多くの部分、特に脳、筋肉、及び腎臓を冒す可能性がある。原発性コエンザイムQ10欠乏症の最も軽度の症例は、人の60代の年齢になって始まり、多くの場合、小脳における欠陥による協調及びバランスの障害を指す小脳性運動失調を引き起こす。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、原発性コエンザイムQ10欠乏症を治療する。
慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)は、眼及び眼瞼の運動に関与する筋肉機能の喪失を主な特徴とする病態である。徴候及び症状は、成人期早期に始まる傾向があり、最も一般的には、眼を動かす筋肉の衰弱又は麻痺(眼筋麻痺)及び眼瞼の垂れ下がり(眼瞼下垂)が挙げられる。一部の罹患者はミオパチーも伴い、これは運動中に特に顕著になり得る。CPEOは、ミトコンドリアDNA又は核DNAに位置し得る幾つかの遺伝子のいずれかにおける突然変異によって引き起こされる可能性がある。CPEOは、運動失調ニューロパチースペクトラム及びカーンズ・セイヤー症候群(KSS)等の他の基礎病態の一部として発生する可能性がある。KSSは、眼瞼下垂から始まることが多い緩徐進行性の多系統ミトコンドリア疾患である。最終的に他の眼筋が影響を受けることとなり、眼球運動の麻痺が引き起こされる。網膜の変性により、通常、薄暗い環境での見えづらさが引き起こされる。或る特定の実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、慢性進行性外眼筋麻痺又はカーンズ・セイヤー症候群を治療する。
先天性乳酸アシドーシス(CLA)は、体内に過剰な乳酸の蓄積、つまり乳酸アシドーシスと呼ばれる病態を引き起こすミトコンドリアDNA(mtDNA)における突然変異によって引き起こされる。CLAの重度の症例は新生児期に現れるが、mtDNA突然変異によって引き起こされるより軽度の症例は成人期早期になるまで現れない場合がある。新生児期における症状としては、筋緊張低下、嗜眠、嘔吐、及び多呼吸が挙げられる。疾患が進行するにつれ、発達の遅れ、認知障害、顔及び頭の異常な発達、並びに臓器不全が引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、先天性乳酸アシドーシス(CLA)を治療する。
脳幹及び脊髄への影響と乳酸の上昇とを伴う白血球脳症(LBSL)は、殆どの患者において緩徐進行性の小脳性運動失調(運動の制御の欠如)及び後柱機能障害を伴う痙縮(位置感覚及び振動感覚の低下)を特徴とする希少な神経疾患である。この疾患は通常、小児期又は思春期に始まるが、成人期まで発症しない場合もある。症状としては、発話困難、癲癇、学習障害、認知機能低下、及び意識低下、神経学的憎悪、並びに軽度の頭部外傷後の発熱が挙げられ得る。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、脳幹及び脊髄への影響と乳酸の上昇とを伴う白血球脳症(LBSL)を治療する。
レーベル遺伝性視神経症(LHON)は、視力喪失を特徴とする病態である。一部の罹患者は、多発性硬化症に類似した特徴を顕出する。LHONは、MT-ND1遺伝子、MT-ND4遺伝子、MT-ND4L遺伝子、及びMT-ND6遺伝子における突然変異によって引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、レーベル遺伝性視神経症を治療する。
グルタル酸血症II型(GA2)は、身体がタンパク質及び脂肪を分解してエネルギーを生成する能力を妨げる障害である。殆どの場合、GA2は、乳児期又は小児期早期に衰弱、行動変化(摂食不良及び活動の低下等)及び嘔吐を引き起こす可能性のある代謝危機の突然のエピソードとして最初に現れる。GA2は常染色体劣性遺伝形式で遺伝し、ETFA遺伝子、ETFB遺伝子、又はETFDH遺伝子における突然変異によって引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、グルタル酸血症II型(GA2)を治療する。
ミトコンドリアエノイルCoAレダクターゼタンパク質関連神経変性(Mitochondrial enoyl CoA reductase protein associated neurodegeneration)(MEPAN)は、遺伝子MECR(ミトコンドリアトランス-2-エノイル-コエンザイムA-レダクターゼのタンパク質をコードする)における2つの突然変異によって引き起こされる。MEPANの特質としては、視神経萎縮及び小児期発症ジストニアが挙げられる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ミトコンドリアエノイルCoAレダクターゼタンパク質関連神経変性(MEPAN)を治療する。
ミトコンドリアDNA(mtDNA)枯渇症候群(MDS)は、mtDNAにおける突然変異又は再構成なしに罹患組織においてmtDNAコピー数が減少することを特徴とするミトコンドリア障害の臨床的に異質な群である。MDSは表現型が不均一であり、特定の器官又は器官の組合せを冒す可能性があり、その際、記載される主な所見は、肝脳性(すなわち、肝機能不全、精神運動遅延)、筋障害性(すなわち、筋緊張低下、筋衰弱、眼球衰弱(bulbar weakness))、脳筋障害性(すなわち、筋緊張低下、筋衰弱、精神運動遅延)、又は神経胃腸性(すなわち、胃腸運動障害、末梢神経障害)である。一般に、MDDSには、1)TK2遺伝子における突然変異に関連する主に筋肉を冒す形態、2)SUCLA2、SUCLG1、又はRRM2Bの遺伝子における突然変異に関連する主に脳及び筋肉を冒す形態、3)DGUOK、MPV17、POLG、又はTWNK(PEO1とも呼ばれる)における突然変異に関連する主に脳及び肝臓を冒す形態、並びに4)ECGF1(TYMPとも呼ばれる)における突然変異に関連する主に脳及び胃腸管を冒す形態の4つのクラスがある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ミトコンドリアDNA(mtDNA)枯渇症候群(MDS)を治療する。
ミトコンドリア神経胃腸脳症(MNGIE)疾患は、身体の幾つかの部分、特に消化器系及び神経系を冒す病態である。MNGIE疾患の主な特徴は、乳児期から成人期までのあらゆる時点で現れる可能性があるが、殆どの場合、徴候及び症状は20歳までに始まる。MNGIE疾患は神経系の異常も特徴としているが、これらは胃腸の問題よりも軽度である傾向がある。罹患者は、四肢、特に手足におけるうずき、しびれ、及び衰弱(末梢神経障害)を経験する。追加の神経学的徴候及び症状としては、眼瞼の垂れ下がり(眼瞼下垂)、眼球運動を制御する筋肉の衰弱(眼筋麻痺)、及び難聴が挙げられる。白質として知られる脳組織の一種の変質である白質脳症は、MNGIE疾患の特徴である。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ミトコンドリア神経胃腸脳症(MNGIE)を治療する。
神経障害・運動失調症・網膜色素変性(NARP)症候群は、主に神経系を冒す様々な徴候及び症状を特徴としている。小児期又は成人期早期に始まって、殆どのNARP患者は、腕及び脚におけるしびれ、うずき、又は痛み(感覚神経障害)、筋衰弱、並びにバランス及び協調の障害(運動失調)を経験する。罹患者は、網膜色素変性症と呼ばれる病態によって引き起こされる視力喪失を伴う場合もある。MT-ATP6遺伝子における突然変異により、NARP症候群が引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、神経障害・運動失調症・網膜色素変性(NARP)症候群を治療する。
ピアソン症候群は身体の多くの部分を冒すが、特に骨髄及び膵臓を冒す。ピアソン症候群は、赤血球、白血球、及び血小板を産生する骨髄内の細胞(造血幹細胞)を冒す。ピアソン症候群はまた膵臓を冒し、頻繁な下痢及び胃痛、体重増加の問題、並びに糖尿病を引き起こす可能性がある。ピアソン症候群を伴う小児の一部は、肝臓、腎臓、心臓、眼、耳、及び/又は脳に障害を有する場合もある。ピアソン症候群は、ミトコンドリアDNAにおける突然変異によって引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ピアソン症候群を治療する。
POLG関連障害は、乳児期から成人期後期までに発症する一連の重複する表現型を含む。POLGにおける突然変異は、小児期早期のミトコンドリアDNA(mtDNA)枯渇症候群又はmtDNA欠失に起因する遅発性症候群を引き起こす可能性がある。POLG突然変異が遺伝性ミトコンドリア障害の最も一般的な原因であり、人口の2%もがこれらの突然変異を保有している。POLG突然変異によって引き起こされる6つの主要な障害は、最も重篤な表現型の1つであるアルパーズ・ハッテンロッカー症候群、生後3年以内に現れる小児筋脳肝障害スペクトラム、ミオクローヌス癲癇・ミオパチー・感覚性運動失調、運動失調ニューロパチースペクトラム(以前はミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)及び感覚性運動失調型ニューロパチー・構音障害・眼筋麻痺(SANDO)と呼ばれていた表現型を含む)、常染色体劣性進行性外眼筋麻痺、及び常染色体優性進行性外眼筋麻痺である。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、POLG関連障害を治療する。
ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症は、乳酸及びその他の潜在的に毒性のある化合物が血中に蓄積する原因となる遺伝性障害である。高レベルのこれらの物質は、身体の器官及び組織、特に神経系に損傷を与える可能性がある。ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症にはA型、B型、及びC型の少なくとも3種類があり、これらは徴候及び症状の重症度によって分類される。この病態はPC遺伝子における突然変異によって引き起こされ、常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症を治療する。
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)欠損症は、エネルギーに使用される食物中の栄養素を身体が効率的に分解することができない一種の代謝疾患である。PDC欠損症の症状としては、極度の疲労(嗜眠)、摂食不良、及び呼吸促迫(多呼吸)等の代謝機能不全の徴候が挙げられる。その他の症状としては、発達遅延、制御不能な運動の期間(運動失調)、低筋緊張(筋緊張低下)、異常な眼球運動、及び発作等の神経機能不全の徴候が挙げられ得る。症状は通常、乳児期に始まるが、徴候は出生時又はその後の小児期に最初に現れる場合がある。最も一般的なPDC欠損症は、PDHA1遺伝子における遺伝的突然変異又は病的バリアントによって引き起こされる。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症を治療する。
TK2関連ミトコンドリアDNA枯渇症候群のミオパチー型(TK2-MDS)は、進行性ミオパチーを引き起こす遺伝性病態である。TK2-MDSの徴候及び症状は典型的には、小児期早期に始まる。通常、発育は幼い頃には正常であるが、筋衰弱が進行するにつれて、TK2-MDS患者は、立つ、歩く、食べる、話す等の運動能力を失う。一部の罹患者では、眼球運動を制御する筋肉の衰弱が増して、眼瞼の垂れ下がりが引き起こされる(進行性外眼筋麻痺)。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を投与して、TK2関連ミトコンドリアDNA枯渇症候群のミオパチー型(TK2-MDS)を治療する。
選択された眼障害
本発明の追加の態様においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を使用して、以下に記載される選択された眼障害を治療する。
グレーブス眼症又はグレーブス眼窩症(又は甲状腺眼疾患若しくは甲状腺関連眼窩症)は、眼窩及び眼窩周囲組織の自己免疫性炎症性障害であり、疾患の典型的な徴候としては、上眼瞼後退、眼瞼遅滞、腫れ、及び眼球突出が挙げられる。これらの障害は、甲状腺機能亢進によって引き起こされる眼窩自己免疫障害である。有効量の式I~式IIIのCKLP1プロドラッグを投与して、グレーブス眼症、グレーブス眼窩症、又は甲状腺関連眼窩症を治療することができる。この化合物は、腫れ及び発赤を軽減するのに頓用される局所滴剤としての形式を含む所望の効果を達成するあらゆる形式で投与され得る。一実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグは、コルチコステロイド薬又は免疫抑制薬剤(リツキシマブ又はミコフェノール酸塩)と組み合わせて服用される。
眼窩腫瘍は、良性又は悪性の眼窩の空間占有病変であり、多くの場合、眼球の異所症、運動障害、複視、視野欠損、及び時には完全な視力喪失を引き起こす。多くの場合、眼窩腫瘍は手術によって除去されるため、薬物療法が有利な治療オプションとなる。一実施形態においては、有効量の式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はその薬学的に許容可能な塩を投与して、眼窩腫瘍を治療又は軽減する。一実施形態においては、化合物は、1日に1回、2回、3回、又はそれ以上局所的に投与される。一実施形態においては、化合物は、眼窩腫瘍を除去又は軽減する手術の前又は後に投与される。
海綿静脈洞血栓症は、脱酸素化された血液を脳から排出して心臓へと戻す脳の基部にある空洞である海綿静脈洞内での凝血塊の形成である。これは希少な障害であり、敗血症性海綿状血栓症及び無菌性海綿状血栓症の2種類があり得る。その原因は、多くの場合、鼻、副鼻腔、耳、又は歯における感染症に続発するものである。海綿静脈洞病変に続発する一般的な障害は、上眼静脈血栓症であり、これは希少な眼窩病理であり、突然発症する眼球突出、結膜充血、及び視覚障害を呈する可能性がある。
一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、海綿静脈洞血栓症又は上眼静脈血栓症を治療する。一実施形態においては、有効量は、抗生物質、ヘパリン、又はステロイドと組み合わせて又はそれと交互に投与される。一態様においては、化合物は経口投与され、必要に応じて少なくとも1日に1回、2回、3回、又はそれ以上与えられる。
上強膜/眼窩静脈血管炎は、血管壁の炎症である。眼血管炎の臨床的特徴は、関係する血管の部位及び分布に応じて、結膜炎、上強膜炎、強膜炎、辺縁潰瘍性角膜炎、眼球突出、網膜血管炎、眼窩炎からブドウ膜炎まで様々であり得る。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、上強膜/眼窩静脈血管炎を治療する。一実施形態においては、プロドラッグは局所滴剤として投与される。
頸動脈海綿静脈洞瘻は、頸部の動脈と眼底にある静脈網との間の異常な接続である。瘻が海綿静脈洞内の圧力を上昇させることにより、海綿静脈洞の周囲に位置する脳神経を圧迫する可能性がある。この圧迫により、眼球運動を制御する神経機能が損なわれる可能性がある。頸動脈海綿静脈洞瘻は、直接的又は間接的なものであり得る。直接頸動脈海綿静脈洞瘻は、頸動脈壁を引き裂く事故又は創傷によって引き起こされることが多いのに対して、間接頸動脈海綿静脈洞瘻は、何の前触れもなく発生することが多く、高血圧、動脈硬化、妊娠、及び結合組織障害に関連している。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、頸動脈海綿静脈洞瘻を治療する。一実施形態においては、プロドラッグは経口剤形として投与される。
硬膜海綿静脈洞部シャントは、血液が頸動脈の小さな髄膜枝を通って流れ、海綿静脈洞近くの静脈循環に入る血管連絡である。多くの場合、この障害は先天性であり、臨床的異常の発症は頭蓋内静脈血栓症の発生に関連している場合がある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、硬膜海綿静脈洞部シャントを治療する。一実施形態においては、プロドラッグは経口剤形として投与される。
眼窩静脈瘤は、正常な眼窩血管と混ざり合う低圧で低流量の薄壁で膨張性の血管叢に代表される血管過誤腫である。殆どの患者は、頭を下に向けた姿勢での体位性眼球突出、及び咳、いきみ、バルサルバ手技、又は頸静脈の圧迫によって悪化する間欠性眼球突出を経験することになる。一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、眼窩静脈瘤を治療する。一実施形態においては、プロドラッグは経口剤形として投与される。
スタージ・ウェーバー症候群は、或る特定の血管の発達に影響を及ぼし、出生時から脳、皮膚、及び眼に異常を引き起こす病態である。スタージ・ウェーバー症候群は、ポートワイン血管腫と呼ばれる赤色又はピンク色の血管腫、脳軟膜血管腫と呼ばれる脳の異常、及び眼内のIOPの増加(緑内障)の3つの主要な特徴を有する。スタージ・ウェーバー症候群の患者においては、典型的には乳児期又は成人期早期のいずれかで緑内障が発症し、視力障害を引き起こす可能性がある。一部の罹患した乳児においては、眼圧が非常に高くなり、眼球が肥大して膨らんだように見える場合がある(牛眼症)。スタージ・ウェーバー症候群の患者は、眼の様々な部分に異常な血管叢(血管腫)を有する場合がある。これらの異常な血管が眼底にある血管網(脈絡膜)に発達すると、これはびまん性脈絡膜血管腫と呼ばれ、スタージ・ウェーバー症候群の患者の約3分の1に発生する。びまん性脈絡膜血管腫は、視力喪失を引き起こす可能性がある。存在する場合に、眼の異常は、典型的にはポートワイン血管腫と同じ頭側部に発生する。
一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、スタージ・ウェーバー症候群を治療する。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、スタージ・ウェーバー症候群に誘発される緑内障を治療する。一実施形態においては、化合物は経口製剤として、1日に1回、2回、3回、又はそれ以上投与される。一実施形態においては、プロドラッグは局所眼用製剤として投与され、本明細書において定義されるように、長期療法のために1日1回投与される。
CRVOとしても知られる網膜中心静脈閉塞症は、網膜から血液を排出する主な静脈が部分的又は完全に閉塞する病態である。これにより、かすみ目及びその他の眼の障害が引き起こされる可能性がある。CRVOについての危険因子としては、糖尿病、IOPの上昇、及び高血圧が挙げられる。この液により黄斑が腫大し、中心視に影響を及ぼす可能性がある。最終的に、血液循環がなくなると、眼の神経細胞が死滅し、視力喪失が発生する可能性がある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、網膜中心静脈閉塞症を治療する。一実施形態においては、化合物は、1日に1回、2回、又は3回与えられる局所滴剤として投与される。一実施形態においては、プロドラッグは、ベバシズマブ(Avastin(商標))、ラニビズマブ(Lucentis(商標))、及びアフリベルセプト(Eylea(商標))等の抗VEGF阻害剤と組み合わせて与えられる。
網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)は、網膜静脈の分枝が閉塞して、血液及び液の網膜への流出が引き起こされることである。BRVOについての危険因子としては、糖尿病、IOPの上昇、及び高血圧が挙げられる。この液により黄斑が腫大し、中心視に影響を及ぼす可能性がある。最終的に、血液循環がなくなると、眼の神経細胞が死滅し、視力喪失が発生する可能性がある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)を治療する。一実施形態においては、プロドラッグは、1日に1回、2回、3回、又はそれ以上与えられる局所滴剤として投与される。
非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)は、視神経への血流の喪失を指し、視神経乳頭での血液循環障害によるものである。非動脈炎性前部虚血性視神経症は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、小視神経、IOPの上昇、及び睡眠時無呼吸に関連している。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を投与して、非動脈炎性前部虚血性視神経症を治療する。一実施形態においては、プロドラッグは、1日に1回、2回、3回、又はそれ以上与えられる局所滴剤として投与される。
幾つかの実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を、ラタノプロストに対する二次治療薬として使用して、本明細書において記載される眼障害を治療する。
幾つかの実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする宿主に、例えば、
(1)プロスタグランジン類似体、例えば、ラタノプロスト(Xalatan)、ビマトプロスト(Lumigan)、トラボプロスト(Travatan又はTravatan Z)、若しくはタフルプロスト(Zioptan)、
(2)α2アドレナリン作動性アゴニスト、例えば、ブリモニジン(Alphagan(商標))、エピネフリン、ジピベフリン(Propine(商標))、若しくはアプラクロニジン(Lopidine(商標))、
(3)ベータ遮断薬、例えば、チモロール、レボブノロール、メチプラノロール、若しくはカルテオロール、
(4)ROCK阻害剤、例えば、リパスジル、ネタルスジル(Rhopressa)、ファスジル、RKI-1447、GSK429286A、若しくはY-30141、
(5)第2のカリウムチャネル開口薬、例えば、ミノキシジル、ジアゾキシド、ニコランジル、若しくはピナシジル、
(6)炭酸脱水酵素阻害剤、例えば、ドルゾラミド(Trusopt(商標))、ブリンゾラミド(Azopt(商標))、アセタゾラミド(Diamox(商標))、若しくはメタゾラミド(Neptazane(商標))、
(7)PI3K阻害剤、例えば、ワートマニン、デメトキシビリジン、ペリホシン、イデラリシブ、ピクチリシブ、Palomid 529、ZSTK474、PWT33597、CUDC-907及びAEZS-136、デュベリシブ(duvelisib)、GS-9820、BKM120、GDC-0032(タセリシブ)、(2-[4-[2-(2-イソプロピル-5-メチル-1,2,4-トリアゾール-3-イル)-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,2-d][1,4]ベンゾオキサゼピン-9-イル]ピラゾール-1-イル]-2-メチルプロパンアミド)、MLN-1117((2R)-1-フェノキシ-2-ブタニル水素(S)-メチルホスホネート;又はメチル(オキソ){[(2R)-1-フェノキシ-2-ブタニル]オキシ}ホスホニウム))、BYL-719((2S)-N1-[4-メチル-5-[2-(2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジメチルエチル)-4-ピリジニル]-2-チアゾリル]-1,2-ピロリジンジカルボキシアミド)、GSK2126458(2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド)(オミパリシブ)、TGX-221((±)-7-メチル-2-(モルホリン-4-イル)-9-(1-フェニルアミノエチル)-ピリド[1,2-a]-ピリミジン-4-オン)、GSK2636771(2-メチル-1-(2-メチル-3-(トリフルオロメチル)ベンジル)-6-モルホリノ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-カルボン酸ジヒドロクロリド)、KIN-193((R)-2-((1-(7-メチル-2-モルホリノ-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-9-イル)エチル)アミノ)安息香酸)、TGR-1202/RP5264、GS-9820((S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-7-メチル-4-モヒドロキシプロパン(mohydroxypropan)-1-オン)、GS-1101(5-フルオロ-3-フェニル-2-([S)]-1-[9H-プリン-6-イルアミノ]-プロピル)-3H-キナゾリン-4-オン)、AMG-319、GSK-2269557、SAR245409(N-(4-(N-(3-((3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)キノキサリン-2-イル)スルファモイル)フェニル)-3-メトキシ-4メチルベンズアミド)、BAY80-6946(2-アミノ-N-(7-メトキシ-8-(3-モルホリノプロポキシ)-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,2-c]キナズ(quinaz))、AS 252424(5-[1-[5-(4-フルオロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-フラン-2-イル]-メタ-(Z)-イリデン]-チアゾリジン-2,4-ジオン)、CZ 24832(5-(2-アミノ-8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル)-N-tert-ブチルピリジン-3-スルホンアミド)、ブパルリシブ(5-[2,6-ジ(4-モルホリニル)-4-ピリミジニル]-4-(トリフルオロメチル)-2-ピリジンアミン)、GDC-0941(2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-[[4-(メチルスルホニル)-1-ピペラジニル]メチル]-4-(4-モルホリニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン)、GDC-0980((S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1-オン(RG7422としても知られる))、SF1126((8S,14S,17S)-14-(カルボキシメチル)-8-(3-グアニジノプロピル)-17-(ヒドロキシメチル)-3,6,9,12,15-ペンタオキソ-1-(4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-クロメン-2-イル)モルホリノ-4-イウム)-2-オキサ-7,10,13,16-テトラアザオクタデカン-18-オエート)、PF-05212384(N-[4-[[4-(ジメチルアミノ)-1-ピペリジニル]カルボニル]フェニル]-N’-[4-(4,6-ジ-4-モルホリニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]尿素)(ゲダトリシブ)、LY3023414、BEZ235(2-メチル-2-{4-[3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]フェニル}プロパンニトリル)(ダクトリシブ(dactolisib))、XL-765(N-(3-(N-(3-(3,5-ジメトキシフェニルアミノ)キノキサリン-2-イル)スルファモイル)フェニル)-3-メトキシ-4-メチルベンズアミド)及びGSK1059615(5-[[4-(4-ピリジニル)-6-キノリニル]メチレン]-2,4-チアゾリジンジオン(thiazolidenedione))、PX886([(3aR,6E,9S,9aR,10R,11aS)-6-[[ビス(プロパ-2-エニル)アミノ]メチリデン]-5-ヒドロキシ-9-(メトキシメチル)-9a,11a-ジメチル-1,4,7-トリオキソ-2,3,3a,9,10,11-ヘキサヒドロインデノ[4,5h]イソクロメン-10-イル]アセテート(ソノリシブ(sonolisib)としても知られる))、LY294002、AZD8186、PF-4989216、ピララリシブ(pilaralisib)、GNE-317、PI-3065、PI-103、NU7441(KU-57788)、HS 173、VS-5584(SB2343)、CZC24832、TG100-115、A66、YM201636、CAY10505、PIK-75、PIK-93、AS-605240、BGT226(NVP-BGT226)、AZD6482、ボクスタリシブ(voxtalisib)、アルペリシブ、IC-87114、TGI100713、CH5132799、PKI-402、コパンリシブ(BAY 80-6946)、XL 147、PIK-90、PIK-293、PIK-294、3-MA(3-メチルアデニン)、AS-252424、AS-604850、アピトリシブ(GDC-0980;RG7422)、
(8)BTK阻害剤、例えば、イブルチニブ(PCI-32765としても知られる)(Imbruvica(商標))(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロパ-2-エン-1-オン)、ジアニリノピリミジン系阻害剤、例えばAVL-101及びAVL-291/292(N-(3-((5-フルオロ-2-((4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド)(Avila Therapeutics)(米国特許出願公開第2011/0117073号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす))、ダサチニブ(N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-(6-(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル)-2-メチルピリミジン-4-イルアミノ)チアゾール-5-カルボキサミド)、LFM-A13(α-シアノ-β-ヒドロキシ-β-メチル-N-(2,5-ジブロモフェニル)プロペンアミド)、GDC-0834(R-N-(3-(6-(4-(1,4-ジメチル-3-オキソピペラジン-2-イル)フェニルアミノ)-4-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イル)-2-メチルフェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド)、CGI-560 4-(tert-ブチル)-N-(3-(8-(フェニルアミノ)イミダゾ[1,2-a]ピラジン-6-イル)フェニル)ベンズアミド、CGI-1746(4-(tert-ブチル)-N-(2-メチル-3-(4-メチル-6-((4-(モルホリン-4-カルボニル)フェニル)アミノ)-5-オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イル)フェニル)ベンズアミド)、CNX-774(4-(4-((4-((3-アクリルアミドフェニル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-2-イル)アミノ)フェノキシ)-N-メチルピコリンアミド)、CTA056(7-ベンジル-1-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)-2-(4-(ピリジン-4-イル)フェニル)-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6(5H)-オン)、GDC-0834((R)-N-(3-(6-((4-(1,4-ジメチル-3-オキソピペラジン-2-イル)フェニル)アミノ)-4-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イル)-2-メチルフェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド)、GDC-0837((R)-N-(3-(6-((4-(1,4-ジメチル-3-オキソピペラジン-2-イル)フェニル)アミノ)-4-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イル)-2-メチルフェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド)、HM-71224、ACP-196、ONO-4059(Ono Pharmaceuticals)、PRT062607(4-((3-(2H-1,2,3-トリアゾール-2-イル)フェニル)アミノ)-2-(((1R,2S)-2-アミノシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド塩酸塩)、QL-47(1-(1-アクリロイルインドリン-6-イル)-9-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-2(1H)-オン)及びRN486(6-シクロプロピル-8-フルオロ-2-(2-ヒドロキシメチル-3-{1-メチル-5-[5-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-ピリジン-2-イルアミノ]-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-イル}-フェニル)-2H-イソキノリン-1-オン)、又は、
(9)Syk阻害剤、例えばセルデュラチニブ(Cerdulatinib)(4-(シクロプロピルアミノ)-2-((4-(4-(エチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド)、エントスプレチニブ(entospletinib)(6-(1H-インダゾール-6-イル)-N-(4-モルホリノフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピラジン-8-アミン)、フォスタマチニブ([6-({5-フルオロ-2-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]-4-ピリミジニル}アミノ)-2,2-ジメチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル二水素ホスフェート)、フォスタマチニブ二ナトリウム塩(ナトリウム(6-((5-フルオロ-2-((3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-2,2-ジメチル-3-オキソ-2H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4(3H)-イル)メチルホスフェート)、BAY 61-3606(2-(7-(3,4-ジメトキシフェニル)-イミダゾ[1,2-c]ピリミジン-5-イルアミノ)-ニコチンアミドHCl)、RO9021(6-[(1R,2S)-2-アミノ-シクロヘキシルアミノ]-4-(5,6-ジメチル-ピリジン-2-イルアミノ)-ピリダジン-3-カルボン酸アミド)、イマチニブ(Gleevac;4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-N-(4-メチル-3-{[4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)ベンズアミド)、スタウロスポリン、GSK143(2-(((3R,4R)-3-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ)-4-(p-トリルアミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド)、PP2(1-(tert-ブチル)-3-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン)、PRT-060318(2-(((1R,2S)-2-アミノシクロヘキシル)アミノ)-4-(m-トリルアミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド)、PRT-062607(4-((3-(2H-1,2,3-トリアゾール-2-イル)フェニル)アミノ)-2-(((1R,2S)-2-アミノシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド塩酸塩)、R112(3,3’-((5-フルオロピリミジン-2,4-ジイル)ビス(アザンジイル))ジフェノール)、R348(3-エチル-4-メチルピリジン)、R406(6-((5-フルオロ-2-((3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-2,2-ジメチル-2H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン)、ピセアタンノール(3-ヒドロキシレスベラトロール)、YM193306、7-アザインドール、ピセアタンノール、ER-27319、PRT060318、ルテオリン、アピゲニン、ケルセチン、フィセチン、ミリセチン、モリンから選択される有効量の化合物と組み合わせて投与することが有用であり得る。
代替的な実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、投与を必要とする宿主に、限定されるものではないが、NCX-470、NCX-1728、NCX-4251、NCX-4016、NCX-434、NCX-667、Vyzulta(ラタノプロステンブノド点眼液)、又はニトロプルシドナトリウム(SNP)を含む一酸化窒素ドナーと組み合わせて投与される。
眼神経保護
神経保護は、神経細胞の回復を最大化し、損傷による神経細胞死を最小限に抑えることを目標とする治療戦略である。損傷は、機械的、虚血性、変性、又は放射線によるものであり得る。多くの神経変性障害は老化に関連しており、高齢者にとって有害である場合がある。例えば、緑内障は、多くの場合、網膜神経節細胞の喪失を特徴としており、高齢者における視力喪失及び失明の主な原因である。
一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を、投与を必要とする宿主に投与して、眼関連神経変性障害を治療する。眼関連神経変性障害は、ニューロン又は網膜神経節細胞等の神経細胞を含む細胞の機能不全又は変性に関連するあらゆる障害である。
本発明の一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、軽減を必要とする宿主の眼における神経損傷又は細胞損傷を軽減する方法として投与される。一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、軽減を必要とする宿主の緑内障の眼における神経損傷又は細胞損傷を軽減する方法として投与される。
別の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、網膜神経節細胞の生存、成長、再生、及び/又は神経突起伸長を促進する。別の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、損傷した神経細胞の死を予防する。
神経細胞死は網膜虚血の結果である可能性もあるため、一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、軽減を必要とする宿主における網膜虚血後の眼における神経損傷又は細胞損傷を軽減する方法として投与される。
視力喪失を特徴とすることが多い視神経への損傷である視神経症は、網膜神経節細胞の喪失をもたらす。虚血性視神経症、視神経炎、圧迫性視神経症、浸潤性視神経症、及び外傷性視神経症を含む多くの種類の視神経症がある。栄養不足及び/又はビタミンB12欠乏によって、栄養障害性視神経症が生じる場合もある。エチレングリコール、メタノール、エタンブトール、アミオダロン、タバコ、又はクロラムフェニコール若しくはジギタリス等の或る特定の薬物への曝露によって、中毒性視神経症が生じる場合がある。レーベル遺伝性視神経症(LHON)、優性視神経萎縮症、ベール症候群、及びベルク・タバツニック(Berk-Tabatznik)症候群を含む或る特定の形態の視神経症は遺伝する可能性がある。一実施形態においては、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩は、視神経症を伴う軽減を必要とする宿主の眼における神経損傷又は細胞損傷を軽減する方法として投与される。
眼に関連する神経変性疾患の追加の非限定的な例としては、格子状ジストロフィー、網膜色素変性症、加齢黄斑変性(滲出型又は萎縮型)、滲出型加齢黄斑変性又は萎縮型加齢黄斑変性に関連する光受容体変性、及び視神経ドルーゼンが挙げられる。
低侵襲緑内障手術(MIGS)による統合療法又は補助療法
最小(又は低)侵襲緑内障手術(MIGS)は、緑内障手術の進化において革新的な手法となった。緑内障は主にIOPの上昇により視神経が損傷する疾患であるため、緑内障手術の目標は、IOPを下げて視神経への損傷を防止又は軽減することである。
標準的な緑内障手術は依然として大手術と見なされており、線維柱帯切除術、ExPRESSシャント、又はAhmedスタイル、Moltenoスタイル、及びBaerveldtスタイルのバルブインプラント等の外部チューブシャントを要する。このような手法はしばしば、眼圧を下げ、緑内障の進行を妨げるのに有効であるが、複視、酷い眼の感染症、排液インプラントの露出、角膜の腫れ、及び過度に低いIOP等の多くの潜在的な合併症を伴う。
Saheb及びAhmedによれば、最小(又は低)侵襲緑内障手術は、5つの好ましい性質:
1.結膜切開なしで済ます場合がある透明角膜切開を介したab internoアプローチ及び/又はab externoアプローチ、
2.標的組織への最小限の外傷的処置、
3.アプローチを正当化するIOP低下効果、
4.他の緑内障手術と比較して深刻な合併症を回避する高い安全性プロファイル、及び所与のより低い低眼圧症の可能性、並びに、
5.患者の生活の質への影響を最小限に抑えた素早い回復、
を共有する外科的処置の群を指す。
MIGS群の手術は、殆どの標準的な緑内障手術の合併症の一部を軽減するのに近年開発された。したがって、一実施形態においては、式I~式IIIのプロドラッグは、低侵襲性緑内障手術(MIGS)と組み合わせて添加剤として使用される。
MIGSは、緑内障を伴う患者におけるより低いIOPをより低侵襲性の外科的処置で達成し、理想的には薬剤節約効果を達成することを目的としている。MIGS処置は、微視的大きさの機器及び小さな切開を使用することによって機能し、流出の制御を可能にし、白内障手術時に行われることが多い。これらは合併症の発生率を低下させるが、或る程度の有効性が安全性の向上と引き換えとなる(Pillunat, L.E., et al., Clin Ophthalmol. 2017; 11: 1583-1600)。
MIGS群の手術は、幾つかのカテゴリー:
1.線維柱帯バイパス手術(すなわち、角度ベースのデバイス及び/又は結膜下シャント術デバイス)、
2.マイクロ線維柱帯切除術(microtrabeculectomies)(小型化された形式の線維柱帯切除術)、
3.完全な内シャント又は脈絡膜上シャント、及び、
4.より優しく穏やかな形式のレーザー光凝固術、
に分類される。
線維柱帯手術(線維柱帯切除術)は、眼に特殊なコンタクトレンズを使用し、高出力顕微鏡制御下で小さなデバイスを用いて線維柱帯網を切り開くことを伴う。これは、眼内排液経路における他の組織に損傷を与えずに行われる。線維柱帯網を破壊するか(Trabectome又はTrab360)、又は小さなシュノーケル様デバイス(iStent)若しくはプラグ形状のステントデバイス(iStent Inject)を使用してバイパスする場合がある。どちらの手法もFDAの承認を受けているが、一般的に眼圧をそれほど低く下げないため、緑内障の初期段階から中等度の段階において有用である。これらのデバイスを用いると、線維柱帯網の抵抗は未然に防がれるため、主に遠位流出能及び上強膜静脈圧が更なる房水排液に対する制限として残る。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩をTrabectome又はTrab360及び/又はiStent/iStent Injectと組み合わせて添加剤として使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
マイクロ線維柱帯切除術は、小さな微視的大きさのチューブを眼に挿入し、眼の内側から眼の外膜(結膜)の下に排液することによって機能する。Xen Gel Stent及びPRESERFLOは、線維柱帯切除術の手術をより安全なものにし得る2つの新しいデバイスである。結果は、米国外で行われた研究において、線維柱帯切除術よりも安全性の改善を伴って優れた圧力低下を示した。或る特定の実施形態においては、本発明の化合物をXen Gel Stent及び/又はPreserfloを用いたプロトコルの部分として使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
Gold Microシャント、iStent Supra、Aquashunt、及びSTARfloを含む脈絡膜上シャントは、非常に小さな内部開口部を有する小さいチューブを使用し、前眼部を網膜と眼球壁との間の脈絡膜上腔に接続して、眼からの排液を増やすことによって機能する。この手術は深刻な合併症が比較的少なく、中等度の緑内障でさえも有用であるほど十分に圧力を下げる。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を脈絡膜上シャント手法と組み合わせて使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
線維柱帯バイパスステント及びシャントは、シュレム管を拡張する機能を有する治験用デバイスである。これらの手法は、シャント挿入(Eyepass Glaucoma Implant、GMP Companies, Inc.、フロリダ州フォート・ローダデール)又はシュレム管自体へのステント挿入(iStent、Glaukos Corp.、カリフォルニア州ラグーナヒルズ)によってシュレム管への房水の流入を促進する。Solx Gold Micro-Shunt(OccuLogix, Inc.、カナダのオンタリオ州ミシサガ)等の他のデバイスは、房水を脈絡膜上腔へと迂回させる。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を線維柱帯バイパスステント又はシャント手法と組み合わせて使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)は、IOPの低下を助けるあらゆる管理の間に使用される。LiGHT研究の実施以来、SLTは、目下、線維柱帯網のレベルで効果的に作用して流出を改善する、IOPの低下を助ける第一選択治療としてより頻繁に使用されている。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を、SLTと一緒に又はそれに加えて使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加及び/又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
レーザー光凝固術は、以前は線維柱帯切除術又はチューブシャントにもかかわらず抑えることができなかった進行性緑内障に限定されていた。内視鏡的毛様体光凝固術及びマイクロパルスダイオード毛様体光凝固術は、レーザー光凝固術の使用に対する2つの最近の進展であり、緑内障がまだ進行していない症例において有用であることが証明されている。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を内視鏡的毛様体光凝固術及びマイクロパルス毛様体光凝固術のプロトコルにおいて使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加及び/又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
近年の内視鏡的毛様体光凝固術は、医学的に抑えられる緑内障と抑えられない緑内障との両方における白内障手術の補助として、眼内レンズの配置を伴う水晶体超音波乳化吸引術と組み合わせて、難治性緑内障、小児緑内障の広く受け入れられた人気のある治療法になっている。内視鏡的毛様体光凝固術は、レンズの除去及び眼内レンズの移植に続いて、白内障の切開部を通り、前眼部を横切って眼の鼻側の後眼房へとエンドレーザーユニットを挿入することによって行われる。レーザーエネルギーを毛様体突起に適用して、房水を産生する毛様体上皮細胞を破壊する。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩を内視鏡的毛様体光凝固術プロトコルにおいて使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加及び/又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
マイクロパルス毛様体光凝固術は、レーザーを短いバーストで伝送して、外科医が毛様体の特定領域を標的とすることができるようにすると同時に、バーストの間に冷える時間を組織に与え、損傷を最小限に抑える。MicroPulse P3プローブ及び新しいCyclo G6緑内障レーザーシステム(Iridex)は両者とも網膜疾患において使用に成功しており、優れた安全性及び有効率を示している。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩をマイクロパルス毛様体光凝固術の手術プロトコルにおいて使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加及び/又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
その他のデバイスとしては、ゴニオスコピー支援経管的線維柱帯切開術(Gonioscopy-assisted transluminal trabeculotomy)(GATT)、カフークデュアルブレード、Ab interno管形成術及びHydrus Microstent、iStent Supra、Xen Glaucoma Treatment System、並びにInnFocus MicroShuntが挙げられる。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩をこれらのデバイスの手術プロトコルにおいて使用して、上記の緑内障を治療する。
選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)、アルゴンレーザー線維柱帯形成術(ALT)、エキシマレーザー線維柱帯形成術、及びマイクロパルスレーザー線維柱帯形成術(MLT)を含むレーザー線維柱帯形成術は、線維柱帯網の細胞を切除し、他の形態の線維柱帯形成術及び或る特定のMIGSデバイスと同様にして流出を改善することによって線維柱帯網での抵抗を減らすのに役立つ外科的レーザー手術である。或る特定の実施形態においては、エキシマレーザー線維柱帯形成術をレーザー線維柱帯形成術と組み合わせて添加剤として使用して、急性又は慢性の使用設定における処置の前又は後の遠位流出の増加又は上強膜静脈圧の低下を介したIOPの相加的な低下により緑内障を治療する。
一実施形態においては、式I~式IIIのCKLP1プロドラッグは、ラタノプロスト(Xalatan)、ビマトプロスト(Lumigan)、トラボプロスト(Travatan又はTravatan Z)、ラタノプロステンブノド(Vyzulta)、又はタフルプロスト(Zioptan)等のプロスタグランジン類似体に対する二次療法薬として、そして本明細書において記載される最小(又は低)侵襲緑内障手術(MIGS)への添加剤として使用される。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。
一実施形態においては、式I~式IIIのCKLP1プロドラッグは、ラタノプロスト(Xalatan)に対する二次療法薬として、そして本明細書において記載される最小(又は低)侵襲緑内障手術への添加剤として使用される。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。
一実施形態においては、式I~式IIIのCKLP1プロドラッグは、ブリモニジン(Alphagan(商標))、エピネフリン、ジピベフリン(Propine(商標))、又はアプラクロニジン(Lopidine(商標))等のα2アドレナリン作動性アゴニストに対する二次療法薬として、そして本明細書において記載される最小(又は低)侵襲緑内障手術(MIGS)への添加剤として使用される。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。
一実施形態においては、式I~式IIIのCKLP1プロドラッグは、チモロール、レボブノロール、メチプラノロール、又はカルテオロール等のベータ遮断薬に対する二次療法薬として、そして本明細書において記載される最小(又は低)侵襲緑内障手術(MIGS)への添加剤として使用される。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。
一実施形態においては、式I~式IIIのCKLP1プロドラッグは、リパスジル、ネタルスジル(Rhopressa)、ファスジル、RKI-1447、GSK429286A、又はY-30141等のROCK阻害剤に対する二次療法薬として、そして本明細書において記載される最小(又は低)侵襲緑内障手術(MIGS)への添加剤として使用される。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。
一実施形態においては、式I~式IIIのCKLP1プロドラッグは、ミノキシジル、ジアゾキシド、ニコランジル、又はピナシジル等の第2のカリウムチャネル開口薬に対する二次療法薬として、そして本明細書において記載される最小(又は低)侵襲緑内障手術(MIGS)への添加剤として使用される。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。
一実施形態においては、式I~式IIIのCKLP1プロドラッグは、ドルゾラミド(Trusopt(商標))、ブリンゾラミド(Azopt(商標))、アセタゾラミド(Diamox(商標))、又はメタゾラミド(Neptazane(商標))等の炭酸脱水酵素阻害剤に対する二次療法薬として、そして本明細書において記載される最小(又は低)侵襲緑内障手術(MIGS)への添加剤として使用される。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯切開術である。更なる実施形態においては、MIGSはマイクロ線維柱帯切除術である。更なる実施形態においては、MIGSは脈絡膜上シャントである。更なる実施形態においては、MIGSは線維柱帯バイパスステント又はシャントである。更なる実施形態においては、MIGSは選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSは毛様体光凝固術である。更なる実施形態においては、MIGSはレーザー線維柱帯切開術である。
III.医薬組成物及び剤形
本明細書において記載される本発明のCKLP1を含む式I、式II、若しくは式III、又は薬学的に許容可能な塩は、本明細書において記載される適応症のいずれかのために、投与を必要とする宿主、典型的にはヒトに有効量で投与され得る。化合物又はその塩は、無溶媒の化学物質として提供され得るが、より典型的には、そのような治療を必要とする宿主、典型的にはヒトに有効な量のCKLP1を含む式I、式II、若しくは式III、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物として投与される。したがって、一実施形態においては、本開示は、有効量のCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩とともに、本明細書において記載される使用のいずれかのための少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、唯一の活性作用物質として化合物若しくはその塩を含み得るか、又は代替的な実施形態においては、化合物若しくはその塩及び少なくとも1つの追加の活性作用物質を含み得る。
送達を必要とする宿主、典型的にはヒトに送達される本明細書において記載される活性化合物又は医薬組成物の正確な量は、所望の臨床的利益を達成するように医療提供者によって決定されることになる。
ここで企図される医薬組成物は、下で更に説明する担体を任意に含む。担体は、治療される患者への投与に適しているように十分に高い純度及び十分に低い毒性を有する必要がある。担体は不活性であっても、又は独自の薬効を有していてもよい。化合物と共に用いられる担体の量は、化合物の単位用量当たり実用的な量の投与される物質を提供するのに十分である。代表的な担体としては、溶媒、希釈剤、pH調整剤、保存剤、酸化防止剤、懸濁化剤、湿潤剤、粘性剤、等張化剤、安定剤及びそれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態では、担体は水性担体である。
1つ以上の粘性剤を、所望に応じて組成物の粘度を増大させるために医薬組成物に添加することができる。有用な粘性剤の例としては、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルを含む)、ポリ酢酸ビニル、それらの誘導体及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
投与のための液剤、懸濁剤又はエマルジョン剤は、選択された投与に適したpHを維持するのに必要とされる有効量の緩衝剤で緩衝化してもよい。好適な緩衝剤は当業者に既知である。有用な緩衝剤の幾つかの例は、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩緩衝剤である。
本明細書において記載される本発明のCKLP1を含む式I、式II、若しくはIII、又はその薬学的に許容可能な塩は、所望の結果を達成し、更に投与経路に依存するあらゆる投薬強度において提供され得る。或る特定の実施形態においては、医薬組成物は、約0.1mg~約2000mg、約10mg~約1000mg、約100mg~約800mg、又は約200mg~約600mgの活性化合物と、任意に約0.1mg~約2000mg、約10mg~約1000mg、約100mg~約800mg、又は約200mg~約600mgの追加の活性作用物質とを単位剤形において含む剤形で存在する。例は、少なくとも約0.1mg、0.2mg、0.25mg、0.5mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1250mg、1300mg、1400mg、1500mg、又は1600mgの活性化合物又はその塩を含む剤形である。或る特定の実施形態においては、剤形は、少なくとも約0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、200mg、400mg、500mg、600mg、1000mg、1200mg、又は1600mgの活性化合物又はその塩を有する。剤形中の活性化合物の量は、塩を参照せずに計算される。
代替的な実施形態においては、医薬組成物は、約0.005mg~約5mg、約0.003mg~約3mg、約0.001mg~約1mg、約0.05mg~約0.5mg、約0.03mg~約0.3mg、又は約0.01mg~約0.1mg、又は約0.01mg~約0.05mgのCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む剤形で存在する。一実施形態においては、剤形は、少なくとも約0.01mg、0.02mg、0.025mg、又は0.05mgの活性化合物又はその塩を有する。
非限定的な実施形態として、医薬剤形中の本化合物の治療的有効量は、例えば、1日当たり約0.001mg/kg~約100mg/kg以上の範囲であり得る。式I、式II、若しくは式IIIの化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、例えば、非限定的な実施形態においては、患者における作用物質の薬物動態に応じて、1日当たり患者1kg当たり約0.1mg~患者1kg当たり約35mgの範囲の量で投与され得る。代替的な実施形態においては、式I、式II、若しくは式IIIの化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、患者における作用物質の薬物動態に応じて、1日当たり患者1kg当たり約0.01mg~患者1kg当たり約3.5mgの範囲の量で投与され得る。
或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I、式II、若しくは式IIIの化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、療法中無期限を含む、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、2週間、3週間、1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、又はそれ以上投与される。或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I、式II、若しくは式IIIの化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、1日に1回、2回、3回、又はそれ以上投与される。
本明細書において記載される適切な適応症用の薬学的に許容可能な製剤として使用され得る、追加の賦形剤又は他の添加剤を含む又は含まない緩衝液の非限定的な例としては、例えば(例示的であるが、非限定的な濃度及びpHで)、酢酸緩衝液(0.1M、pH5.0)、BES緩衝生理食塩水(2×)(0.05M、pH6.95)、ビシン(1M、pH8.26)、CAPS(1M、pH10.4)、CHES(1M、pH9.5)、クエン酸緩衝液(0.1M、pH6.0)、クエン酸リン酸緩衝液(0.15M、pH5.0)、ジエタノールアミン(1M、pH9.8)、EBSS(マグネシウム、カルシウム、フェノールレッド)(pH7.0)、グリシン-HCl緩衝液(0.1M、pH3.0)、グリシン-水酸化ナトリウム緩衝液(0.08M、pH10)、HBSS(ハンクス平衡塩溶液)、HEPPSO(1M、pH7.85)、HHBS(Hepesを含むハンクス緩衝液)、塩酸-塩化カリウム緩衝液(0.1M、pH2.0)、イミダゾール-HCl緩衝液(0.05M、pH7.0)、MES(0.5M、pH6)、MOPS緩衝液(10×)(0.2M、pH7)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)(1×、pH7.4)、ホウ酸ナトリウム緩衝液(1M、pH8.5)、TAE(1M、pH8.6)、TAE緩衝液(50×)(0.04M、pH8.5)、TBS(1M、pH7.4)、TE緩衝液(10×);トリシン(1M、pH8.05)、Tris緩衝液(1M、pH7.2)、酢酸緩衝液(pH3.6~5.6)、炭酸塩-重炭酸塩緩衝液(pH9.2~10.6)、クエン酸緩衝液(pH3.0~6.2)、リン酸緩衝液(pH5.8~8.0)、リン酸カリウム(pH5.8~8.0)、及びTrizma(商標)緩衝液(pH7.0~9.2)が挙げられる。
眼送達、局所送達、経腸送達、及び非経口送達用の製剤を以下でより詳細に説明する。
眼送達
眼治療に使用する場合に、有効量の本明細書における本発明のCKLP1を含む式I、式II、若しくは式III、又はその薬学的に許容可能な塩は、例えば、液剤、懸濁液剤、又はエマルジョン剤等の局所製剤として投与され得る。局所製剤は、典型的には、水性担体又は非水性担体であり得る薬学的に許容可能な担体を含む。
水性担体の例としては、限定されるものではないが、水溶液又は水性懸濁液、例えば生理食塩水、血漿、骨髄穿刺液、緩衝液、例えばハンクス緩衝塩溶液(HBSS)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、リンガー緩衝液、ProVisc(商標)、希釈ProVisc(商標)、PBSで希釈したProVisc(商標)、クレブス緩衝液、ダルベッコPBS、標準PBS、ヒアルロン酸ナトリウム溶液(HA、PBS中5mg/mL)、擬似房水、擬似涙液を含む擬似体液、濃縮血小板血漿及び組織培養培地、又は有機溶剤を含む水溶液若しくは水性懸濁液が挙げられる。眼投与用の医薬製剤は、好ましくは滅菌水溶液の形態で存在する。許容可能な溶液としては、例えば、水、リンガー液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、クエン酸緩衝生理食塩水、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。製剤はまた、1,3-ブタンジオール等の非毒性希釈剤又は溶剤中の滅菌液剤、滅菌懸濁液剤、又は滅菌エマルジョン剤であり得る。一実施形態においては、担体はPBSである。一実施形態においては、担体は、クエン酸緩衝生理食塩水を含むクエン酸緩衝液である。適切な適応症用の薬学的に許容可能な眼用製剤において使用され得る緩衝液の更なる例は上記に記載されている。
適切な非水性の薬学的に許容可能な担体としては、限定されるものではないが、オレオイルポリエチレングリコールグリセリド、リノレオイルポリエチレングリコールグリセリド、ラウロイルポリエチレングリコールグリセリド、流動パラフィン(Paraffinum liquidum、鉱油)、軽質流動パラフィン(低粘度パラフィン、Paraffinum perliquidum、軽質鉱油)、軟パラフィン(ワセリン)、硬パラフィンのような炭化水素ビヒクル、ヒマシ油、ラッカセイ油、若しくはゴマ油のような植物性脂肪油、中鎖トリグリセリド(MCT、飽和脂肪酸、好ましくはオクタン酸及びデカン酸とのトリグリセリド)、イソプロピルミリステート、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドのような合成脂肪油、セチルステアリルアルコール等の羊毛アルコール、羊毛脂、グリセロール、プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸のプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコール(PEG)、半フッ素化アルカン(例えば、国際公開第2011/113855号に記載される)、又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、溶液に使用される非水性の薬学的に許容可能なビヒクルは疎水性である。
本発明による局所眼科用医薬組成物において使用される薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定されるものではないが、安定剤、界面活性剤、ゲル化剤のようなポリマーベースの担体、有機共溶剤、pH活性成分、浸透圧活性成分、及び保存剤が挙げられる。
本発明による局所眼科用医薬組成物において使用される界面活性剤としては、限定されるものではないが、リン脂質、ホスファチジルコリン、レシチン、カルジオリピン、脂肪酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチド、チロキサポール等の脂質、PEG400、PEG1500、PEG2000、ポロキサマー407、ポロキサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20のようなポリエチレングリコール及び誘導体、ラウリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、又はそれらの混合物、好ましくはポリソルベート80が挙げられる。本発明による局所眼科用医薬組成物において使用されるゲル化剤のような適切なポリマーベースの担体としては、限定されるものではないが、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、アミラーゼ(amylase)及び誘導体、アミロペクチン及び誘導体、デキストラン及び誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、並びにHEMA、カルボポールのようなポリアクリル酸若しくはポリメタクリル酸の誘導体等のアクリルポリマー、並びに上述のものの誘導体、又はそれらの混合物が挙げられる。
本発明による医薬組成物において使用される緩衝剤又はpH調整剤等の適切なpH活性成分としては、限定されるものではないが、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウムを含む、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びリン酸緩衝液が挙げられる。pH活性成分は、一般にpH4~9の範囲である組成物についての目標pHに基づいて選択される。或る特定の実施形態においては、式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む製剤は、およそ5から8の間、5.5から7.4の間、6から7.5の間、又は6.5から7の間のpHを有する。一実施形態においては、製剤は、およそ6.5から7のpHのクエン酸緩衝液を含む。別の実施形態においては、製剤は、およそ6.5から7のpHのリン酸緩衝液を含む。本発明による医薬組成物において使用される適切な浸透圧活性成分としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウム、マンニトール、及びグリセロールが挙げられる。
本発明による医薬組成物において使用される有機共溶剤としては、限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチルピロリドン、2-ピロリドン、3-ピロリジノール、1,4-ブタンジオール、ジメチルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ソルケタール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられる。
本発明による医薬組成物において使用される保存剤としては、限定されるものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、臭化ベンゾドデシニウム、塩化ベンゼトニウム、チオメルサール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、ソルビン酸、メチルパラベン及びプロピルパラベン、クロルヘキシジンジグルコネート、EDTA、又はそれらの混合物が挙げられる。
所望であれば、組成物の粘度を高めるために、医薬組成物に増粘剤を加えることができる。有用な増粘剤の例としては、限定されるものではないが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルを含む)、ポリ酢酸ビニル、それらの誘導体、及びそれらの混合物が挙げられる。一実施形態においては、増粘剤はヒアルロン酸であり、ヒアルロン酸は架橋されている。一実施形態においては、増粘剤はヒアルロン酸であり、ヒアルロン酸は線状である。
局所剤形は、例えば、必要に応じて、1日1回(q.d.)、1日2回(b.i.d.)、1日3回(t.i.d.)、1日4回(q.i.d.)、2日ごとに1回(Q2d)、3日ごとに1回(Q3d)、又は本明細書において記載される障害の治療をもたらすあらゆる投薬スケジュールで投与され得る。
或る特定の非限定的な実施形態においては、医薬組成物は、約0.005mg~約5mg、約0.003mg~約3mg、約0.001mg~約1mg、約0.05mg~約0.5mg、約0.03mg~約0.3mg、又は約0.01mg~約0.1mg、又は約0.01mg~約0.05mgのCKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む眼用剤形で存在する。
或る特定の実施形態においては、眼用液剤は、mg/mLにおいて測定されて、およそ0.1%~5.0%の式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む。或る特定の実施形態においては、眼用液剤は、mg/mLにおいて測定されて、およそ5%~30%の式I~式IIIの化合物を含む。或る特定の実施形態においては、該液剤は、mg/mLにおいて測定されて、およそ0.2%~4.5%、0.3%~3.0%、0.4%~2.0%、又は0.5%~1.5%の式I~式IIIの化合物を含む。或る特定の実施形態においては、該液剤は、少なくとも10%、少なくとも8%、少なくとも5%、少なくとも4%、少なくとも3%、少なくとも2%、少なくとも1%、少なくとも0.9%、少なくとも0.7%、少なくとも0.5%、少なくとも0.3%、又は少なくとも0.1%の式I~式IIIの化合物を含む。他の実施形態においては、該液剤は、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%、又は少なくとも15%の式I~式IIIの化合物を含む。或る特定の実施形態においては、該液剤は、およそ0.2%、0.4%、又は0.8%の式I~式IIIの化合物又はそれらの塩を含む。或る特定の実施形態においては、該液剤は、およそ0.5%、1%、又は2%の式I~式IIIの化合物又はそれらの塩を含む。
代替的な実施形態においては、眼用液剤は、mg/mLにおいて測定されて、およそ0.01%~5.0%のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む。或る特定の実施形態においては、液剤は、mg/mLにおいて測定されて、およそ0.01%~3%、0.01%~1.0%、0.01%~0.5%、0.01%~0.1%、0.01%~0.08%、又は0.01%~0.05%の式I~式IIIの化合物を含む。
他の実施形態においては、該液剤は、約2.5mM~500mMの範囲のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩の濃度を有する。或る特定の実施形態においては、その濃度は、約550mM、500mM、450mM、400mM、350mM、300mM、250mM、200mM、150mM、100mM、50mM、45mM、40mM、35mM、30mM、25mM、20mM、15mM、10mM、8mM、6mM、5mM、4mM、3mM、2.5mM、2.0mM、1.5mM、又は1.0mMを超えない。
代替的な実施形態においては、該液剤は、約0.1mM~2.5mMの範囲のCKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩の濃度を有する。或る特定の実施形態においては、その濃度は、約1.0mM、0.9mM、0.8mM、0.7mM、0.6mM、0.5mM、0.4mM、0.3mM、0.2mM、又は0.1mMを超えない。
或る特定の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩の濃度は、およそ0.2%~2%(5mM~52mMの溶液に相当)の範囲である。或る特定の実施形態においては、その濃度は、少なくとも0.2%(5Mに相当)、少なくとも0.4%(10mMに相当)、少なくとも0.5%(12.5mMに相当)、少なくとも0.8%(20mMに相当)、少なくとも1%(およそ25mMに相当)、又は少なくとも2%(およそ50mMに相当)である。
代替的な実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩の濃度は、およそ0.02%~0.2%の範囲である。一実施形態においては、この濃度は、少なくとも0.02%、少なくとも0.04%、少なくとも0.05%、少なくとも0.08%、少なくとも0.1%、又は少なくとも0.2%である。
CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、代替的な経路、すなわち、硝子体内注射、角膜実質内注射、前房内注射、テノン嚢下注射、網膜下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、脈絡膜上注射、脈絡膜下注射、脈絡膜注射、結膜注射、結膜下注射、上強膜注射、眼周囲注射、経強膜注射、後部強膜近傍注射、角膜周囲注射、若しくは涙管注射を使用して、又は粘液、ムチン、若しくは粘膜バリアを通じて、即時放出若しくは制御放出の方式で、又は眼デバイス、若しくは注射を介して、眼療法に使用することもできる。一実施形態においては、眼用デバイスは、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を放出するコンタクトレンズである。
一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグの化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、脈絡膜上注射を介して投与される。脈絡膜上送達は、米国特許第9,636,332号、米国特許第9,539,139号、米国特許第10,188,550号、米国特許第9,956,114号、米国特許第8,197,435号、米国特許第7,918,814号、並びに国際公開第2012/051575号、国際公開第2015/095772号、国際公開第2018/031913号、国際公開第2017/192565号、国際公開第2017/190142号、国際公開第2017/120601号、及び国際公開第2017/120600号に記載されている。
脈絡膜上腔への薬物の低侵襲的送達のためのデバイスは、薬物又は薬物含有材料を脈絡膜上腔に直接注射する針を含み得る。このデバイスはまた、内側脈絡膜層への穿孔又は外傷なしに、結膜及び強膜組織を通って脈絡膜上腔に又は脈絡膜上腔のすぐ隣に針を前進させる要素を備え得る。送達デバイスの先端突先の位置は、超音波若しくは光コヒーレンストモグラフィー等の非侵襲的イメージング、デバイスの組織接触部分にある外部深さマーカー若しくは止め具、デバイスに組み込まれた深さセンサー若しくは位置センサーによって、又はそのようなセンサーの組合せによって確認され得る。例えば、送達デバイスは、脈絡膜の深さ及び位置を測定する光導体若しくは超音波センサー等の先端突先にあるセンサー、又は脈絡膜上腔への進入による局所的流体圧力の変化を測定する圧力トランスデューサーを含み得る。或る特定の実施形態においては、脈絡膜上注射は、26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、又は30ゲージの薄壁又はレギュラー壁の針を用いて行われる。代替的な実施形態においては、脈絡膜上注射は、31ゲージ、32ゲージ、又は33ゲージの薄壁又はレギュラー壁の針を用いて行われる。更なる代替的な実施形態においては、脈絡膜上注射は、34ゲージ又はそれより小さなゲージの薄壁又はレギュラー壁の針を用いて行われる。
活性化合物を送達する方法の付加的な非限定的な例は、「眼病態の治療のための前房内インプラント(Intracameral Implant for Treatment of an Ocular Condition)」と題する国際公開第2015/085251号(Envisia Therapeutics, Inc.);「改変エアロゾル粒子及び関連方法(Engineered Aerosol Particles, and Associated Methods)」と題する国際公開第2011/008737号、「マクロファージ又は免疫応答を調節する幾何学的に改変した粒子及び方法(Geometrically Engineered Particles and Methods for Modulating Macrophage or Immune Responses)」と題する国際公開第2013/082111号、「特に非湿潤鋳型における粒子複製を用いた分解性化合物及びその使用方法(Degradable compounds and methods of use thereof, particularly with particle replication in non-wetting templates)」と題する国際公開第2009/132265号、「介入薬物送達系及び関連方法(Interventional drug delivery system and associated methods)」と題する国際公開第2010/099321号、「高い忠実度、サイズ及び形状の粒子を有するポリマー粒子複合材(Polymer particle composite having high fidelity order, size, and shape particles)」と題する国際公開第2008/100304号、「ナノ粒子製作方法、システム及び材料(Nanoparticle fabrication methods, systems, and materials)」と題する国際公開第2007/024323号(Liquidia Technologies, Inc.及びノースカロライナ大学チャペルヒル校);「眼内での制御放出配合物のイオン導入送達(Iontophoretic Delivery of a Controlled-Release Formulation in the Eye)」と題する国際公開第2010/009087号(Liquidia Technologies, Inc.及びEyegate Pharmaceuticals, Inc.)及び「カーゴの細胞内送達及び放出のための組成物及び方法(Compositions and Methods for Intracellular Delivery and Release of Cargo)」と題する国際公開第2009/132206号、「化粧品用途のためのナノ粒子(Nano-particles for cosmetic applications)」と題する国際公開第2007/133808号、「医療デバイス、材料及び方法(Medical device, materials, and methods)」と題する国際公開第2007/056561号、「パターン化材料を作製する方法(Method for producing patterned materials)」と題する国際公開第2010/065748号、「生物医学/生体材料用途のためのナノ構造表面及びそのプロセス(Nanostructured surfaces for biomedical/biomaterial applications and processes thereof)」と題する国際公開第2007/081876号(Liquidia Technologies, Inc.)に提示されている。
一実施形態においては、式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグは、組織内にデポーとして貯留された後に、時間をかけて緩徐放出され、そこでレブクロマカリムに転化されて、IOP低下効果を誘発する。一実施形態においては、式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグは、線維柱帯網において貯留された後に、近位遠位流出経路に緩徐放出される。一実施形態においては、ヒトを含む復帰を必要とする宿主における式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグの剤形に続くベースラインのIOPへの復帰は、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、又は少なくとも約72時間である。
局所皮膚送達又は経皮送達
CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又は薬学的に許容可能な塩の投与としては、局所投与又は経皮投与を挙げることもできる。皮膚への局所適用に適した医薬組成物は、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、スプレー剤、エアロゾル剤、又は油剤の形態を取ることができ、任意に、石油ゼリー、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、又はそれらの組合せを含み得る。
経皮投与に適した医薬組成物は、レシピエントの表皮と長期間密接に接触を保つように適合された別個のパッチとして提供され得る。経皮投与に適した医薬組成物はまた、イオントフォレシス(例えば、Pharmaceutical Research 3 (6):318 (1986)を参照)によって送達される場合もあり、典型的には、活性化合物の任意に緩衝された水溶液の形態を取る。一実施形態においては、生物学的組織、特に皮膚を横切って又はその中に薬物を送達するのに、マイクロニードルパッチ又はマイクロニードルデバイスが提供される。マイクロニードルパッチ又はマイクロニードルデバイスは、組織への損傷、痛み、又は刺激を最小限に抑えるか、又はそれらを伴わずに、皮膚又は他の組織バリアを越えて又はその中に臨床的に関連する速度で薬物送達を可能にする。
有利には、限定されるものではないが、コンディショニング剤、皮膚保護剤、他の酸化防止剤、UV吸収剤、日焼け止め活性剤、クレンジング剤、粘度調整剤、皮膜形成剤、エモリエント剤、界面活性剤、可溶化剤、保存剤、芳香剤、キレート剤、発泡剤又は消泡剤、乳白剤、安定剤、pH調整剤、吸収剤、固化防止剤、スリップ改良剤、様々な溶剤、可溶化剤、変性剤、研磨剤、増量剤、乳化安定剤、懸濁剤、着色剤、結合剤、コンディショニング剤-エモリエント、界面活性乳化剤、生物由来物質、抗ニキビ活性剤、抗しわ及び抗皮膚萎縮活性剤、皮膚バリア修復補助剤、化粧用緩和助剤(cosmetic soothing aids)、局所麻酔薬、人工日焼け剤及び促進剤、皮膚美白活性剤、抗微生物及び抗真菌活性剤、皮脂刺激剤、皮脂阻害剤、保湿剤、及び/又はそれらの組合せを含む多種多様なスキンケア活性成分及び不活性成分を、本発明による本化合物と組み合わせることができる。
一般に、コンディショニング剤を使用して、局所適用時及び局所適用後に保湿、水分補給、可塑化、潤滑、及び閉塞、又はそれらの組合せを介して、皮膚の外観及び/又は感触を改善することができる。コンディショニング成分の非限定的な例としては、限定されるものではないが、鉱油、ペトロラタム、C~C40分岐鎖状炭化水素、C~C30カルボン酸のC~C30アルコールエステル、C~C30ジカルボン酸のC~C30アルコールエステル、C~C30カルボン酸のモノグリセリド、C~C30カルボン酸のジグリセリド、C~C30カルボン酸のトリグリセリド、C~C30カルボン酸のエチレングリコールモノエステル、C~C30カルボン酸のエチレングリコールジエステル、C~C30カルボン酸のプロピレングリコールモノエステル、C~C30カルボン酸のプロピレングリコールジエステル、糖類のC~C30カルボン酸モノエステル及びポリエステル、ポリジアルキルシロキサン、ポリジアリールシロキサン、ポリアルカリールシロキサン、3個~9個のケイ素原子を有するシクロメチコン、植物油、水素化植物油、ポリプロピレングリコールC~C20アルキルエーテル、ジC~C30アルキルエーテル、及びそれらの混合物が挙げられる。約7個~約40個の炭素原子を有する直鎖状及び分岐鎖状の炭化水素の非限定的な例としては、限定されるものではないが、ドデカン、イソドデカン、スクアラン、コレステロール、水素化ポリイソブチレン、ドコサン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、C~C40イソパラフィン、C~C30カルボン酸のモノグリセリド、C~C30カルボン酸のジグリセリド、C~C30カルボン酸のトリグリセリド、C~C30カルボン酸のエチレングリコールモノエステル、C~C30カルボン酸のエチレングリコールジエステル、C~C30カルボン酸のプロピレングリコールモノエステル、及びC~C30カルボン酸(直鎖状カルボン酸、分岐鎖状カルボン酸、及びアリールカルボン酸を含む)のプロピレングリコールジエステル、並びにこれらの材料のプロポキシル化誘導体及びエトキシル化誘導体が挙げられる。
糖類の非限定的な例としては、スクロース、マンニトール、トレハロース、グルコース、アラビノース、フコース、マンノース、ラムノース、キシロース、D-キシロース、グルコース、フルクトース、リボース、D-リボース、ガラクトース、デキストロース、デキストラン、ラクトース、マルトデキストリン、マルトース、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、アスパルテーム、サッカリン、ステビア、スクラロース、アセスルファムカリウム、アドバンテーム、アリテーム、ネオテーム、及びスクラロースが挙げられる。
組成物において有用な日焼け止め剤の非限定的な例としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、4-ヒドロキシジベンゾイルメタンとの4-N,N-(2-エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)-メチルアミノ安息香酸エステル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)-メチルアミノ安息香酸エステル、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシルN,N-ジメチル-p-アミノベンゾエート、p-アミノ安息香酸、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、オクトクリレン、オキシベンゾン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、4,4’-メトキシ-t-ブチルジベンゾイルメタン、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、3-ベンジリデンカンファー、3-(4-メチルベンジリデン)カンファー、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、酸化鉄、及びそれらの混合物が挙げられる。他の有用な日焼け止め剤としては、4-アミノ安息香酸(PABA)、ベンジリデンカンファー、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジエタノールアミンp-メトキシシンナメート、5ジオキシベンゾン(5 dioxybenzone)、エチルジヒドロキシプロピルPABA、アミノ安息香酸グリセリル、サリチル酸ホモメンチル、イソプロピルジベンゾイルメタン、ローソン及びジヒドロキシアセトン、アントラニル酸メンチル、アントラニル酸メチル、メチルベンジリデンカンファー、オクトクリレン、オクチルジメチルPABA、オクチルメトキシシンナメート、オキシベンゾン、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、レッドペトロラタム、スリソベンゾン、二酸化チタン、サリチル酸トリエタノールアミン、酸化亜鉛、並びにそれらの混合物が挙げられる。
使用することができる日焼け止め剤の正確な量は、選択した日焼け止め剤と、達成が望まれる紫外線防御指数(SPF)とに応じて変動することになる。
所望であれば、組成物の粘度を高めるために、局所製剤に増粘剤を加えることができる。有用な増粘剤の例としては、限定されるものではないが、Carbopol及びPemulen等の水溶性ポリアクリル樹脂及び疎水変性されたポリアクリル樹脂、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、及びタピオカ等のデンプン、グアーガム及びアラビアガム等のガム、並びにヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテルが挙げられる。
多種多様な乳化剤も有用であり、限定されるものではないが、ソルビタンエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、メチルグルコースエステル、スクロースエステル、エトキシル化脂肪アルコール、硬化ヒマシ油エトキシレート、ソルビタンエステルエトキシレート、高分子乳化剤、シリコーン乳化剤、グリセリルモノエステル、好ましくは、C16~C22飽和、不飽和、及び分岐鎖状の脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、オレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、及びそれらの混合物、C16~C22飽和、不飽和、及び分岐鎖状の脂肪酸のポリグリセリルエステル、例えば、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-3、モノオレイン酸ジグリセロール、モノオレイン酸テトラグリセロール、及びそれらの混合物、メチルグルコースエステル、好ましくは、C16~C22飽和、不飽和、及び分岐鎖状の脂肪酸のメチルグルコースエステル、例えば、ジオレイン酸メチルグルコース、セスキイソステアリン酸メチルグルコース、及びそれらの混合物、スクロース脂肪酸エステル、好ましくは、C12~C22飽和、不飽和、及び分岐鎖状の脂肪酸のスクロースエステル、例えば、ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース(例えば、CRODESTA(商標)F10)、及びそれらの混合物、C12~C22エトキシル化脂肪5アルコール、例えば、オレス-2、オレス-3、ステアレス-2、及びそれらの混合物、硬化ヒマシ油エトキシレート、例えば、PEG-7硬化ヒマシ油、ソルビタンエステルエトキシレート、例えば、ペルオレイン酸PEG-40ソルビタン、ポリソルベート-80、及びそれらの混合物、高分子乳化剤、例えば、エトキシル化ドデシルグリコールコポリマー、並びにシリコーン乳化剤、例えば、ラウリルメチコンコポリオール、セチルジメチコン、ジメチコンコポリオール、及びそれらの混合物が挙げられる。
全身送達
別の実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、有効量において所望の効果を達成するあらゆる全身経路を介して投与される。例は、液剤、懸濁液剤、エマルジョン剤、又は凍結乾燥粉末剤を含む、経口送達、頬側送達、舌下送達、静脈内送達、皮下送達、筋肉内送達、髄腔内送達、又は鼻腔内送達を含む経腸投与又は非経口投与である。場合によっては、組成物は液体形態において分配又は包装される。代替的には、製剤は、例えば、適切な液体製剤の凍結乾燥によって得られる固体として包装され得る。固体は、投与前に適切な担体又は希釈剤で再構成され得る。一実施形態においては、化合物は、坐剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、又は軟膏剤を介して経膣投与される。
他の投与形態としては、経口、直腸、舌下、唇下、又は頬側が挙げられ、これらの経路に典型的な剤形としては、丸剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁液剤、エマルジョン剤、又は坐剤が挙げられる。
一実施形態においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、吸入肺経路を介して投与される。肺薬物送達用の剤形としては、噴射剤、非水性吸入器、乾燥粉末吸入器、及びジェットネブライザー又は超音波ネブライザーが挙げられる。
経口送達
一態様においては、CKLP1を含む式I~式IIIのクロマカリムプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、経口投与される。クロマカリムプロドラッグは、プロドラッグを無溶媒の化学物質(例えば、粉末、無定形態、非晶質形態、又は油)として製剤化すること、又はプロドラッグを薬学的に許容可能な賦形剤と混合することを含むあらゆる所望の技術を使用して製剤化され得る。経口送達用の得られる薬学的に許容可能な組成物は、有効量のプロドラッグ又はその薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。
賦形剤
薬学的に許容可能な賦形剤は、治療される患者への投与に適したものにするのに十分に高い純度及び十分に低い毒性を有するべきである。賦形剤は不活性である場合もあり、又はそれ自体の医薬的利益を有する場合もある。化合物と組み合わせて使用される賦形剤の量は、化合物の単位用量当たりの投与される材料の実用的な量を提供するのに十分である。賦形剤の部類としては、限定されるものではないが、結合剤、緩衝剤、着色料、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、充填剤、着香剤、滑剤、滑沢剤、pH調整剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、可溶化剤、錠剤化剤、及び湿潤剤が挙げられる。例示的な薬学的に許容可能な賦形剤としては、糖類、デンプン、セルロース、トラガント末、モルト、ゼラチン、タルク、及び植物油が挙げられる。他のマトリックス材料、充填剤、又は希釈剤の例としては、ラクトース、マンニトール、キシリトール、微結晶性セルロース、二リン酸カルシウム、及びデンプンが挙げられる。表面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、及びポリソルベート80が挙げられる。薬物錯化剤(drug complexing agents)又は可溶化剤の例としては、ポリエチレングリコール、カフェイン、キサンテン、ゲンチシン酸、及びシクロデキストリンが挙げられる。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、及びクロスカルメロースナトリウムが挙げられる。結合剤の例としては、メチルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ガム、及びトラガカントが挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸カルシウムが挙げられる。pH調節剤の例としては、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、乳酸、アスパラギン酸、コハク酸、リン酸等の酸、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の塩基、及び概して酸と該酸の塩との混合物を含む緩衝剤が挙げられる。任意に、本発明の化合物の活性を実質的に妨げない限り、医薬組成物中には他の活性作用物質が含まれていてもよい。
或る特定の実施形態において、賦形剤は、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシネート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール(hexanedecanol);脂肪アルコール;ポリエチレングリコール(PEG);ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸又はオレイン酸等の界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span(商標)85)グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(商標)20);ポリソルベート20(Tween(商標)20);ポリソルベート60(Tween(商標)60);ポリソルベート65(Tween(商標)65);ポリソルベート80(Tween(商標)80);ポリソルベート85(Tween(商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキサマー;ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;アセチルパルミテート;グリセロールリシノレエート;ヘキサデシルステアレート;イソプロピルミリステート;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性特性を有する合成及び/又は天然洗剤;デオキシコール酸塩;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオン対形成剤(ion pairing agent);グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン及びノイラミン酸;プルラン、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストリン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、グリコン(glycon)、アミロース、キトサン、N,O-カルボキシルメチルキトサン、アルギン及びアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン(pustulan)、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン及びキサンタン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール及びラクチトール、プルロニック(登録商標)ポリマー、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えば、ポリ(1,3-ジオキサン-2-オン))、ポリ無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフマレート、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えばポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-コ-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ(β-ヒドロキシアルカノエート))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン及びポリアミン、ポリリシン、ポリリシン-PEGコポリマー及びポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEGコポリマー、グリセロールモノカプリロカプレート、プロピレングリコール、ビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネートとしても知られる)、ゼラチン、二酸化チタン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー(PEO/PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)から選択される。
経口剤形
経口投与用の典型的な剤形としては、丸剤、錠剤、カプセル剤、ジェルカプセル剤、液剤、懸濁液剤、又はエマルジョン剤が挙げられる。剤形はまた、区画化を特徴とし得る。例えば、剤形が丸剤、錠剤、又はカプセル剤である場合に、これは、異なる賦形剤又は異なる濃度の賦形剤を有する異なる材料の層を有し得る。例えば、腸溶コーティングされた経口錠剤を使用して、経口投与経路についての化合物の生物学的利用能を高めることができる。腸溶コーティングは、錠剤が胃酸に耐えることを可能にする賦形剤の層であることになる。最も有効な剤形は、選択された特定の作用物質の生物学的利用能/薬物動態だけでなく、患者における疾患の重症度にも依存することになる。投与し易く、有利な患者のコンプライアンスが見込まれるため、経口剤形が特に好ましい。
或る特定の実施形態においては、経口剤形は、本明細書において記載される1つ以上の追加の活性作用物質を含む。或る特定の実施形態においては、第2の活性作用物質は、本発明の化合物とは別個に投与される。
別の実施形態においては、或る剤形を別の剤形に変換して、特性を有利に改善することができる。例えば、固体の薬学的に許容可能な組成物を作る場合に、適切な液体の製剤化は凍結乾燥であり得る。固体は、投与前に適切な担体又は希釈剤で再構成され得る。
経口医薬組成物は、所望の結果を達成するあらゆる量の活性化合物、例えば、0.1重量%から99重量%の化合物、通常は少なくとも約5重量%の化合物を含み得る。幾つかの実施形態は、少なくとも約10%、15%、20%、25重量%~約50重量%、又は約5重量%~約75重量%の化合物を含む。
経口剤形は、例えば、必要に応じて、1日1回(q.d.)、1日2回(b.i.d.)、1日3回(t.i.d.)、1日4回(q.i.d.)、2日ごとに1回(Q2d)、3日ごとに1回(Q3d)、又は本明細書において記載される障害の治療をもたらすあらゆる投薬スケジュールで投与され得る。
本発明の化合物及びそれらの薬学的に許容可能な塩の一般的な合成
本発明の記載される薬学的に許容可能な塩を、既知の方法に従って調製することができる。例えば、当業者は、CKLP1又はそのエナンチオマー(ent-CKLP1)のナトリウム塩を、以下のスキーム1及びスキーム2を介して調製することができる。これらの合成順序に様々な変更を加えて、他の薬学的に許容可能な塩を調製することができる。このプロセスを以下でより詳細に説明する。
一般的なスキーム1:
Figure 2023512828000030
一般的なスキーム2:
Figure 2023512828000031
CKLP1及びent-CKLP1についての合成のこれらのスキーム及び他の方法は、非特許文献9及び特許文献3の出願においてより詳細に記載されている。
ジベンジル((3S,4R)-6-シアノ-2,2-ジメチル-4-(2-オキソピロリジン-1-イル)クロマン-3-イル)ホスフェートからのCKLP1及びent-CKLP1の合成
乾燥CHCl(3mL)中のジベンジル((3S,4R)-6-シアノ-2,2-ジメチル-4-(2-オキソピロリジン-1-イル)クロマン-3-イル)ホスフェート(65.5mg、0.120mmol)の溶液に、シリンジによりTMSBr(53μL、0.40mmol)を加えた。6時間撹拌した後に、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残留物をクロマトグラフィー(0%のアセトニトリル/20mMの酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液~100%のアセトニトリル、Cisカラム)により精製して、凍結乾燥後に53.5mgの白色の固体を得た。ナトリウム塩を調製するために、1cm幅のカラムに12cmのDOWEX 50W2(50メッシュ~100メッシュ)イオン交換樹脂を充填した。カラムを、1:1のアセトニトリル/水、1MのNaHCO水溶液、水、次に最後に1:1のアセトニトリル/水で順次洗浄することによって調製した。反応生成物を1:1のアセトニトリル/水中に溶解して、カラムにロードし、これを1:1のアセトニトリル/水で溶出させた。生成物を含む画分を凍結乾燥して、白色の固体として得た(40.9mg、83%の収率)。
イオン交換クロマトグラフィー
或る特定の実施形態においては、本明細書において記載されるリン酸エステル塩を、スキーム1及びスキーム2において記載されるイオン交換を介して形成することができる。イオン交換クロマトグラフィーを使用する場合に、生ずるカチオンは、イオン交換洗浄溶液中に存在していたカチオンである。例えば、スキーム1及びスキーム2において、CKLP1及びent-CKLP1のナトリウムカチオンは、NaHCO中のナトリウムである。したがって、当業者であれば、イオン交換カラムを代わりに異なる塩で洗浄して、本発明の異なる薬学的に許容可能な塩を調製することができる。
例えば、1MのNaHCOを1MのKCO、KHCO、又はKOHに置き換えて、化合物
Figure 2023512828000032
を得ることによって、カリウム塩を生成することができる。
例えば、1MのNaHCOを1Mの(NHCO又はNHOHに置き換えて、化合物
Figure 2023512828000033
を得ることによって、アンモニウム塩を生成することができる。
例えば、1MのNaHCOを1MのCaCO又はCa(OH)に置き換えて、化合物
Figure 2023512828000034
を得ることによって、カルシウム塩を生成することができる。
例えば、1MのNaHCOを1MのLiCO又はLiOHに置き換えて、化合物
Figure 2023512828000035
を得ることによって、カルシウム塩を生成することができる。
所望であれば、他のカラム材料、塩洗浄、及び濃度を利用することができる。
合成的な塩形成
或る特定の実施形態においては、本明細書において記載されるリン酸エステルを、イオン交換の代替として直接的な化学反応によって形成することができる。例えば、本明細書において記載される化合物のナトリウム塩を生成するために、酸形式の化合物を、反応容器内でNaOH、NaHCO、NaCO、又は酢酸ナトリウム等の水溶液又は塩基溶液と反応させることができる。或る特定の実施形態においては、他の水溶液を使用することができる。例えば、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
或る特定の実施形態においては、当量比が同じ、例えば1:1の比であるときに、又は当量比が異なる、例えば1:10、1:5、1:3、1:2、若しくは1:1.5のCKLP1対カチオン源の比であるときに、化学反応が起こり得る。溶液中の塩の濃度は様々であり得る。例えば、試料を1MのNaHCO水溶液で洗浄したときに化学反応が起こり得るが、試料を所望であれば1M未満又は1M超のNaHCO水溶液で洗浄したときにも、化学反応が起こり得る。この当量の変化を、所望であれば他の塩又は塩基溶液を含む化学反応に適用して、本発明の塩を得ることもできる。
代替的には、その他の塩を以下のものから調製することができる:(a)金属水酸化物、例えば、あらゆるアルカリ金属水酸化物(例えば、NaOH及びKOH)、二価金属(マグネシウム、カルシウム等)、及び(b)有機水酸化物、例えば、少なくとも1つの第三級アミン、アンモニウム基、又は少なくとも1つの第四級アンモニウムイオンを含む有機化合物(例えば、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルピロリジン、コリン、及びヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウム等)。
本明細書において記載される化合物の塩は、該化合物をアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコキシド、例えば、NaOH、KOH、又はNaOCHと、例えば、低分子量ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びn-メチルピロリジノン等から選択され得る様々な溶媒中で反応させることによって調製され得る。一実施形態においては、溶媒は水である。別の実施形態においては、溶媒はTHFである。
本明細書において記載される化合物は、少なくとも1つの第三級アミン又はアンモニウムカチオンを含む有機カチオンと塩を形成することもできる。有機カチオン化合物は、化合物内にそれぞれ1つ、2つ、3つ、又は4つの第三級アミン又はアンモニウムイオンを含めることによって、1分子当たり+1、+2、+3、又は+4の電荷を有することができる。多電荷化合物が使用される場合に、第三級アミン部分又は第四級アンモニウム部分は、好ましくは、少なくとも4個の原子の鎖によって、より好ましくは、例えば、ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムジヒドロキシドのように、少なくとも6個の原子の鎖によって分離され、その際、第四級アンモニウム部分は-(CH-によって分離されている。
本明細書において記載される化合物の塩は、該化合物を、少なくとも1つの第三級アミン又は第四級アンモニウムイオンを含む化合物(例えば、水酸化コリン、ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムジヒドロキシド)と、低分子量ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、及びn-メチルピロリジノンから選択される溶媒中で反応させることによって調製され得る。アルカリ金属水酸化物からの塩の調製と同様に、溶媒がアルコールである場合に、アミン含有化合物及びアンモニウム含有化合物は典型的には、塩を形成しない。
典型的には、本明細書において記載される化合物の塩の塩基性付加物(basic addition of salts)としては、ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウム、コリン、ナトリウム、カリウム、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ヒドロキシエチルピロリジン、テトラプロピルアンモニウム、及びテトラブチルホスホニウムイオンを含むものが挙げられ得る。
典型的には、本明細書において記載される化合物の塩の塩基性付加物は、あらゆる適切な試薬、例えば、ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムジヒドロキシド、水酸化コリン、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、水酸化カリウム、カリウムメトキシド、水酸化アンモニウム、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、又はテトラブチルホスホニウムヒドロキシドを使用して調製され得る。塩の塩基性付加物は、無機塩(例えば、ナトリウム、カリウム等)と、有機塩(例えば、コリン、ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムヒドロキシド等)とに分けられ得る。
本明細書において記載される化合物の塩は、限定されるものではないが、カルシウム、ジメグルミン、二カリウム、二ナトリウム、メグルミン、ポリスチレックス、又はトロメタミンを含む有機又は無機の対イオンを含み得る。適切な有機カチオンとしては、第三級アミン又は第四級アンモニウム基を有する化合物が挙げられる。
本明細書において記載される化合物の薬学的に許容可能な塩としては、クロロプロカイン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、及びアルキルアミンを含む塩等の塩の塩基性付加物も挙げられ得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., Vol. 2, p. 1457, 1995を参照のこと。
本明細書において記載される化合物の塩は、例えば、遊離塩基形の化合物を、適切な酸を含む水溶液又は水性アルコール溶液等の適切な溶媒中に溶解することによって調製され、次に、溶液を蒸発させることによって単離され得る。別の例においては、塩は、有機溶媒中で遊離塩基及び酸を反応させることによって調製される。
本明細書において記載される化合物の薬学的に許容可能な塩の調製に有用な溶媒としては、例えば、アセトニトリル、アセトン、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノール)、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン(MEK)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN-メチルピロリジノン(NMP)等の有機溶媒が挙げられる。一実施形態においては、溶媒はアセトニトリル及びMEKから選択される。
実施例1.レブクロマカリムは、ヒトATP感受性カリウムチャネルを調節する。
CKLP1及びCKLP1の活性部分であるレブクロマカリムが、Kir6.2(ヒト遺伝子KCNJ11によってコードされる)とスルホニル尿素受容体SUR2B(ヒト遺伝子ABCC9によってコードされる)とのカップリングにより構成されるヒトATP感受性カリウムチャネルの機能を薬理学的に調節する能力を研究した。両方の化合物のKATPチャネル調節活性を、細胞膜電位における蛍光ベースの変化を使用して決定し、活性を既知の参照KATPチャネルアクチベーター(ピナシジル及びクロマカリム)と比較した。
Figure 2023512828000036
化合物をDMSO中に溶解して、10mMのストック溶液にした。100%のDMSO中の100倍の濃度で10点の濃度応答曲線を作成した。DMSO中で10mMの化合物ストックを連続希釈して、漸進的な半対数希釈スキーマを作成することによって、化合物供給源プレートを作製した。次に、用量応答ストックプレート(10μL)を、90μLのアッセイ緩衝液を含むアッセイプレートに移し、10倍の作業濃度を生成した。最終アッセイ試験濃度は100μM~0.003μMの範囲であり、最終DMSO濃度は1.0%である。
ヒトKir6.2/SUR2B KATPチャネルサブユニットを安定的に発現するヒト胎児腎臓(HEK)細胞を、96ウェルの黒色のポリ-d-リジン(PDL)でコーティングされたマイクロプレートに播種し、実験に使用する前日に成長培地中で維持した。培地をプレートから除去し、アッセイ緩衝液(EBSS - mM単位で:NaCl 145、KCl 2、グルコース 5、CaCl 1.8、MgCl 0.8、HEPES 10、NaOHでpH7.4、290mOSm~300mOSm)中に再懸濁された膜電位感受性蛍光色素FMP-Blueの90μLの1×ストックを細胞に加えた。細胞を室温で遮光して45分間~60分間インキュベートした。インキュベーション期間の後に、細胞、試験化合物、及びグリベンクラミドのプレートを蛍光プレートリーダー(FLIPR-TETRA(商標))に装填し、スキャンを開始した。FLIPRが10秒のベースラインを計測した後に、10μLの10倍の最終的な所望の濃度の試験作用物質を加えた。蛍光の変化を更に5分間監視した。化合物を5分間インキュベートした後に、10μLの受容体阻害剤グリベンクラミドを細胞プレートに加えた(10μMの最終的なグリベンクラミド濃度)。次に、蛍光の変化を更に5分間監視した。
Kir6.2/SUR2B KATPチャネルに媒介される細胞膜電位の変化の化合物による調節を、以下のように決定した。化合物の投与後に、FMP蛍光を5分間監視した。以下のパラメーターを記録し、FLIPRからエクスポートした:平均のバックグラウンドEBSS緩衝液の応答を差し引いたアッセイにおける5分の時点で撮影された5つの画像の平均相対蛍光応答(RFU)。次に、100μMのピナシジルへのコントロールの応答に対してデータを正規化した。試験作用物質の効果を、以下の式:
%活性化=(試験作用物質のRFU-緩衝液コントロールのプレート平均のRFU)/(100μMのピナシジルコントロールのプレート平均のRFU-緩衝液コントロールのプレート平均のRFU)×100
を使用して%活性化として計算した。
レブクロマカリムがSUR2B受容体に結合した後のヒトKir6.2を通じたカリウム流出の活性化により、グリベンクラミド感受性の様式で細胞膜電位の濃度依存的な過分極がもたらされた。図1Aは、3つの試験濃度(30μM、3μM、及び0.3μM)にわたるレブクロマカリムについて見られた平均FLIPR蛍光応答の時間経過を示す。図1Bは、レブクロマカリムについてのEC50を決定するのに使用されるフィッティングされた濃度応答曲線を示す。GraphPad Prismグラフ作成ソフトウェアにおいて4パラメーターの可変傾斜フィット式を使用して、曲線フィットを実行した。
CKLP1を適用しても、100μMの最大試験濃度まで顕著な過分極は一切起こらなかった。図2Aは、最高試験濃度(100μM)の場合のCKLP1について観察された平均FLIPR時間経過応答を示す。図2Bは、CKLP1のEC50を決定するのに使用されるフィッティングされた濃度応答曲線を示す。GraphPad Prismにおいて4パラメーターの可変傾斜フィット式を使用して、曲線フィットを実行した。全ての試験作用物質についてのフィッティングされたEC50を表1にまとめる。図3は、参照化合物のピナシジル及びクロマカリムのEC50を決定するのに使用されるフィッティングされた濃度応答曲線を示す。
Figure 2023512828000037
レブクロマカリムは、0.53μMのEC50でHEK-Kir6.2/SUR2B細胞の濃度依存的な過分極を引き起こした。比較すると、CKLP1は、アッセイにおいて試験された最高濃度(100μM)まで、ヒトKir6.2/SUR2Bチャネルの顕著な活性化を生ずることができなかった。参照KATPチャネルアクチベーターであるピナシジル及びクロマカリムは両方とも、それぞれ5.5μM及び1.4μMのEC50値でHEK-Kir6.2/SUR2B細胞の濃度依存的な過分極を引き起こした。レブクロマカリム並びに参照KATPアクチベーターのピナシジル及びクロマカリムによるHEK-Kir6.2/SUR2B細胞の過分極は、確立されたKATPスルホニル尿素阻害剤のグリベンクラミド(10μM)との作用物質の同時投与によって逆転することが観察されたことから、レブクロマカリムに媒介される過分極がKir6.2/SUR2B KATPチャネルの活性化によって媒介されることが確認される。対照的に、プロドラッグCKLP1では、最大100μMで存在しても、Kir6.2/SUR2B KATPチャネルの明確な活性化は一切なかった。100μMの試験された最高濃度で見られた最大応答は、9.4%の活性化±3.6%(標準偏差)であった。
実施例2.CKLP1のレブクロマカリムへのin vitroでの転化
CKLP1(200μM~5.0mM)の転化を、ヒトアルカリホスファターゼ(ALP)、酸性ホスファターゼ、又は5’-ヌクレオチダーゼ(2.01nM~1.0μM)のいずれかとともにpH7.4で最大2時間インキュベートした後にLC/MS-MSによって調査した。酸性ホスファターゼ又は5’-ヌクレオチダーゼではなく、ヒトALPが、in vitroでCKLP1をレブクロマカリムに転化し、ここで、ミカエリス定数(K)及び基質から生成物への触媒的転化の速度定数(kcat)の値は、それぞれ630μM及び15分(-1)であった。
以下に記載される2つの個別の研究において、ヒトALP(0.0002U/μl~0.2U/μl)とともに最大72時間インキュベートした後に、CKLP1(0.01mM~40.0mM)のレブクロマカリムへの転化の用量依存的かつ時間依存的な分析を求めた。CKLP1を活性化するために、リン酸エステルをホスファターゼにより加水分解して、ATP感受性カリウムチャネルを開口(活性化)することができる活性部分であるレブクロマカリムを生成する。以下で論じられるように、CKLP1は、ヒトアルカリホスファターゼによって濃度依存的にレブクロマカリムに転化される。
固定濃度のCKLP1と様々な濃度のヒトアルカリホスファターゼ
1つ目の実験においては、固定濃度のCKLP1溶液を様々な濃度の胎盤由来ヒトアルカリホスファターゼとともにインキュベートした。これを達成するために、100μLの容量の胎盤由来ヒトアルカリホスファターゼ(0.0002U)を13本の1.5mLチューブにそれぞれ加えた。次に、各チューブに、CKLP1を固定濃度(10mM(0.4%))で加えた。チューブを2回逆さにし、37℃の水浴中でインキュベートした。13点の異なる各時点(0分、1分、2.5分、5分、15分、及び30分、並びに1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、及び72時間)で、単一のチューブを取り出し、2容量(200μL)のアセトニトリルを加えることによって反応を止めた。試料を-80℃で貯蔵した。0.002U、0.02U、及び0.2Uの濃度の胎盤由来ヒトアルカリホスファターゼの存在下で、10mMのCKLP1(0.4%)を用いて実験を繰り返した。全てのアッセイをpH10で行った。
溶液中のCKLP1の固定濃度(10mM(0.4%))で、最大およそ21%のCKLP1が、ヒトアルカリホスファターゼ濃度に依存してレブクロマカリムに転化された(図4A及び図4B)。例えば、CKLP1(10mM(0.4%)の濃度に固定)のレブクロマカリムへの24時間での転化率は、0.0002U/100μL、0.002U/100μL、0.02U/100μL、及び0.2U/100μLの濃度でヒトアルカリホスファターゼの存在下にて、それぞれ0.4%、1.3%、4.8%、及び13.7%であった。
固定濃度のヒトアルカリホスファターゼと様々な濃度のCKLP1
2つ目の実験においては、固定濃度の胎盤由来ヒトアルカリホスファターゼを、様々な濃度のCKLP1とともにインキュベートした。これを達成するために、100μLの容量の固定濃度の0.02Uの胎盤由来ヒトアルカリホスファターゼを13本の1.5mLチューブにそれぞれ加えた。次に、各チューブに、CKLP1を加えた(0.01mM(0.0004%))。チューブを2回逆さにし、37℃の水浴中でインキュベートした。13点の異なる各時点(0分、1分、2.5分、5分、15分、及び30分、並びに1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、及び72時間)で、単一のチューブを取り出し、2容量(200μL)のアセトニトリルを加えることによって反応を止めた。試料を-80℃で貯蔵した。同じ濃度の胎盤由来ヒトアルカリホスファターゼ(0.02U)及び様々な濃度のCKLP1(0.1mM(0.004%)、1mM(0.04%)、10mM(0.4%)、20mM(0.8%)、及び40mM(1.6%))を用いて実験を繰り返した。全てのアッセイをpH10で行った。
固定濃度(0.02U/100μL)で存在するヒトアルカリホスファターゼは、CKLP1濃度に逆依存してCKLP1をレブクロマカリムに転化させた(図5A及び図5B)。例えば、固定濃度の胎盤由来ヒトアルカリホスファターゼ(0.02U/100μL)の存在下で、CKLP1のレブクロマカリムへの24時間での転化率は、CKLP1が0.01mM、0.1mM、1mM、10mM、20mM、及び40mMの濃度で存在する場合に、それぞれ26.9%、20.0%、5.2%、4.9%、3.2%、及び1.7%であった。最大反応速度(Vmax)は1.35×10-4mM/分であり、ミカエリス定数(Km)は0.399mMであった。
実施例3.ヒト眼組織におけるCKLP1のレブクロマカリムへのin vitroでの転化
CKLP1が眼組織及び眼液においてレブクロマカリムに転化されるかどうかを確かめる研究を行った。ヒトの眼組織及び眼液におけるCKLP1のレブクロマカリムへの転化を評価するために、70歳の女性からのヒトドナーの眼を取得したため、ヒトの眼組織を切り出して転化研究に使用することができた。
各眼から房水を採取し、単一の1.5mLチューブ中で合わせた。次に、眼を赤道面で二等分し、両眼から硝子体液を採取して合わせ、15mLコニカルチューブに入れ、1500rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後に、上方の上清相(より粘性の低い領域)を分離し、1.5mLチューブに入れた。房水及び硝子体液が入ったチューブを氷上で貯蔵した。以下の組織を眼から切り出した:角膜、網膜、視神経、強膜、虹彩、毛様体、及び線維柱帯網。およそ200μLの50mMのTris緩衝液(pH7.1)が入った1.5mLチューブに組織試料を入れた。視神経試料を除く各試料には、両眼からの組織が入っていた。試料を氷上で貯蔵した。組織を独立してPolytron PT 1200(設定8)で均質化し、氷上に置いた。小さな乳棒を使用して線維柱帯網を溶解させた。試料の合間に、ホモジナイザーを洗浄し、最低200mLの蒸留水で徹底的に洗浄した。
残りの組織及び破片をEppendorf 5415C遠心分離器において13000rpmで2分間ペレット化した。上清を分離し、新しい1.5mLチューブに入れた。各試料の5μLの上清を用いて、ブラッドフォードタンパク質アッセイを行った。アッセイの完了時に、各試料の200μLのアリコートを96ウェルプレートに入れ、TECAN Infinite(商標)M200プレートリーダーを使用してタンパク質濃度を595nmで読み取った。全ての試料についての最終濃度は、タンパク質濃度が低いため10μMのCKLP1中に100μgのタンパク質しか含まない硝子体液を除いて、10μMのCKLP1溶液中150μgのタンパク質であった。全部で18個の試料があった。試料を混合し、手短に遠心分離した後に、各試料について、100μLの部分を取り出して新しいチューブに入れたため、両方のチューブには100μLが含まれていた(それぞれ50μgを含む硝子体液を除いて、それぞれ75μgのタンパク質)。試料の全てのペアを、37℃でのインキュベーションにかけた。チューブの各ペアについて、一方のチューブを4時間インキュベートし、一方のチューブを24時間インキュベートした。インキュベーション期間の完了時に、200μLのアセトニトリルを各チューブに加えて混合した。チューブを手短に遠心分離し、-80℃に置いた。
高圧液体クロマトグラフィー-質量分析/質量分析(LC-MS/MS)を使用して、眼組織試料をCKLP1及びレブクロマカリムについて分析した。CKLP1は、毛様体(2.6%)、視神経(0.9%)、虹彩(3.9%)、強膜(1.6%)、網膜(0.7%)、角膜(0.8%)、及び線維柱帯網(1.6%)において24時間にわたってレブクロマカリムに転化されたが、房水及び硝子体液においては転化されなかった。虹彩、毛様体、強膜、及び線維柱帯網が最も効率的な転化を示した。
実施例4.正常眼圧のハウンドドッグ及び非ヒト霊長類におけるCKLP1の薬理学的プロファイル及び眼圧降下効果
CKLP1の薬物動態パラメーターをハウンドドッグにおいて測定し、CKLP1の眼圧降下効果を、ハウンドドッグ及びアフリカミドリザルにおいて測定した。以下で論じられるように、CKLP1は、両方のモデルにおける全身血圧に影響を与えずに、長期間にわたってIOPを有意に低下させることが示された。薬物動態分析により、CKLP1は、正常眼圧の動物の眼においてIOPの有意な低下をもたらすのに十分な量でレブクロマカリムへと切断されることが示された。さらに、眼組織及び眼液に加えて、CKLP1で治療されたハウンドドッグからの全身器官及び血液の詳細な組織学的分析によっては、有意な病理は見られなかった。
ハウンドドッグにおけるIOPの低下に最適なCKLP1の用量の決定
その後の薬物動態研究に最適なCKLP1の局所的な眼用量を決定するために、ハウンドドッグ(n=3)を4つの異なる濃度のCKLP1(5mM、10mM、15mM、及び20mM)を用いて1日1回で5連続日間治療した。全てのCKLP1濃度で有意なIOP低下が示され(p≦0.01)、その際、10mM(2.3±0.5mmHg)及び15mM(2.5±0.4mmHg)で最大の効果が観察された(図6)。10mMの用量と15mMの用量との間で、IOPの低下に差は認められなかった(p=0.57)。効果的なIOP低下を伴う最低用量濃度を利用するために、その後の全ての実験について最適な用量として10mMのCKLP1の50μLの局所的眼投与を選択した。
IOPを、治療の1時間後、4時間後、及び23時間後に対応する時間で毎日3回測定した。任意の所与の日の3つの時点での測定値の平均を、毎日のIOPとして記録した。
用量応答研究のために、ベースラインのIOP測定値を取得し、記録した(治療の3連続日前)。各イヌの片眼を5mMのCKLP1の50μLの局所的眼投与で治療し、反対側の眼を10mMのCKLP1で1日1回5連続日間治療した。5日後に、5mMのCKLP1が投与された眼を15mMのCKLP1で治療し、一方で、10mMのCKLP1が投与された眼には20mMのCKLP1を投与した。治療の1時間後、4時間後、及び23時間後に対応する時間でIOPを毎日測定した。全ての実験について、右眼をコントロールとして使用し、一方で、左眼を治療眼として選択した。
ハウンドドッグにおけるIOP及び全身血圧に対するCKLP1の効果
IOP低下の長期効果を評価するために、ハウンドドッグ(n=5)を、片眼は10mMのCKLP1で、そして反対側の眼はビヒクル(PBS)で1日1回61連続日間治療した。図7Aにおいて示されるように、実験の過程にわたって、ビヒクルで治療された眼における平均IOPは16.0±2.4mmHgであったのに対して、治療された眼は有意により低かった(12.9±2.0mmHg、p<0.001)。平均して、全治療期間にわたって5匹の全てのハウンドドッグにおいてIOPは18.9±1.3%だけ低下した(3.0±0.5mmHgの低下、p<0.001)。さらに、収縮期(ベースライン、141.0±6.7;治療、138.9±9.5;p=0.56)血圧又は拡張期(ベースライン、80.1±8.9;治療、78.1±5.9;p=0.76)血圧の有意な変化は、治療期間中に観察されなかった(図7B)。ハウンドドッグを、眼の赤み、眼又は眼瞼の腫れ、眼からの異常な排出物、及び全体的な食物摂取量についても評価した。これらのパラメーターにおいて特筆すべき所見は確認されなかった。
長期投与研究のために、ベースラインのIOPを1日3回5連続日間測定した。3回の測定値の平均を毎日のIOPとして記録し、治療前の最終値として5日間にわたる平均をとった。ベースラインのIOPの測定後に、イヌ(n=5)を片眼は10mMのCKLP1で治療し、一方で、反対側の眼にはビヒクル(PBS)を投与した。治療の1時間後、4時間後、及び23時間後に対応する時間でIOPを毎週少なくとも3回測定した。治療後4時間の時点で、血圧を毎週3回測定した。
アフリカミドリザルにおけるIOP及び全身血圧に対するCKLP1の効果
大型動物モデルにおけるCKLP1のIOP低下効果を更に検証するために、5匹のアフリカミドリザルの片眼を10mMのCKLP1の局所的眼投与で治療し、一方で、反対側の眼にビヒクル(PBS)を投与した。コントロールの眼及び治療される眼におけるベースラインのIOPは、それぞれ20.1±1.8mmHg及び21.9±2.5mmHgであった。治療後に、CKLP1を投与した眼は、ベースラインと比較して3.8±1.8mmHgのIOPの低下を示し(p=0.01)、これはIOPの16.7±6.7%の変化に相当するものであった。対照的に、図8Aにおいて示されるように、ビヒクルで治療された眼は、0.1±1.0mmHgのIOPの増加を示し、これはベースラインとの統計的差異を有しなかった(p=0.80)。ハウンドドッグと同様に、CLKP1の局所的点眼は、ベースラインと比較して、全身血圧に一切影響を及ぼさなかった。平均ベースライン収縮期圧は118.7±12.0mmHgであり、これは治療後に121.1±7.3mmHgに僅かに増加した(p=0.6)。同様に、図8Bにおいて示されるように、CKLP1治療後の拡張期血圧(76.0±8.2mmHg)において、ベースライン(68.1±6.0mmHg;p=0.13)と比較して有意な変化は見られなかった。
治療日には、10mMのCKLP1(PBS中に溶解)を各サルの片眼に50μlの局所的眼投与にて1日1回7連続日間加え、一方で、反対側の眼にはビヒクル(PBS)の50μlの眼投与を与えた。
まとめると、CKLP1は、ハウンドドッグ及びアフリカミドリザルにおいて、それぞれおよそ19%及び17%だけIOPを低下させた。CKLP1がマウスにおいてIOPをおよそ17%だけ低下させ、ダッチベルテッド系の有色ウサギにおいて16%だけ低下させることが以前に報告されている(非特許文献9、非特許文献10)。正常眼圧の動物において15%~20%のIOP低下が見られる傾向は、小型動物と大型動物との間で一貫している(非特許文献2、Roy Chowdhury, U. et al. Exp. Eye Res. 2017, 158, 85、非特許文献9、非特許文献10)。
ハウンドドッグ及びアフリカミドリザルの両方で、CKLP1は収縮期圧にも拡張期圧にも有意な効果を有しなかった。アフリカミドリザルにおける治療はたったの7日間であったが、ハウンドドッグでは、61連続日間の1日1回のCKLP1治療後に、血圧に対して影響は及ぼされなかった。これは、血漿中に見られるレブクロマカリムの濃度が低い(1ng/ml)ためである可能性があり、この濃度は、血圧に対する全身効果を誘発するのに必要とされる薬物の報告された閾値よりもはるかに低い(Hamilton TC, et al. Gen. Pharmacol. 1989; 20, 1、Hamilton TC, et al. Levcromakalim. Cardiovascular Drug Reviews. 1993; 11, 199、Wilson C, et al. Eur. J. Pharmacol. 1988; 152:331-339)。しかしながら、この低いレベルのレブクロマカリムは、潜在的に遠位流出経路における血管の拡張を通じて限局性のIOP低下効果を発揮するには依然として十分である。局所的な眼への適用により、十分なCKLP1がレブクロマカリムに転化されて、IOPの低下が誘発されるが、血圧に影響を及ぼすほど十分ではない。
ハウンドドッグにおけるCKLP1及びレブクロマカリムの薬物動態パラメーターの分析
薬物動態パラメーターを評価するために、ハウンドドッグ(n=3)を、10mMのCKLP1又はビヒクル(PBS)(n=2)の50μLの局所的眼投与で両眼において1日1回8日間治療した。1日目、4日目、及び8日目での治療後の8つの異なる時点(5分、15分、30分、60分、2時間、4時間、8時間、及び24時間)でヘパリン採血チューブ中に血液(およそ3mL)を採取した。2000rpmで5分間遠心分離することにより、血漿を血液から分離した。
これらの試料の薬物動態分析により、CKLP1及びレブクロマカリムの特徴的な分布、吸収、及び排出プロファイルが示された(図9A、図9B、及び図9C)。一般に局所投与後60分以内に血漿中のCKLP1の最大濃度(10.5±1.7ng/ml)が得られた。レブクロマカリムの最大濃度(1.2±0.2ng/ml)は120分付近で生じた。CKLP1の半減期は、1日目、4日目、及び8日目に180.5分、451.8分、及び253.7分であった。それらの同日での親化合物レブクロマカリムの半減期は、74.3分、87.8分、及び126.4分であった。CKLP1についての濃度対時間曲線下の平均面積(AUC)(5261.4±918.9ng×分/ml)は、レブクロマカリム(233.0±102.8ng/ml×分)よりも22.4倍大きかったことから、動物における内部組織源からのCLKP1の緩徐放出の可能性が示される。これは、1日目と比較して4日目及び8日目におけるCKLP1のTlast(薬物が血漿中で最後に検出された時間)がより長いことによって更に示される(表2A及び表2B)。
ハウンドドッグのCKLP1治療により、CKLP1(およそ60分)と比較してより長いレブクロマカリムのTmax(およそ120分)によって裏付けられるように、その親化合物であるレブクロマカリムへの転化が示された。報告された10%の転化率値は、血液中のレブクロマカリムとCKLP1との濃度の比較に基づく推定値である。ハウンドドッグにおける用量応答研究に基づく圧力を下げるのに最適なCKLP1の濃度は、ダッチベルテッド系の有色ウサギにおいて行われた以前の研究で使用されたものと同じであった(非特許文献10、非特許文献11)。
Figure 2023512828000038
Figure 2023512828000039
選択された眼及び全身組織におけるCKLP1及びレブクロマカリムの濃度
薬物動態研究のための採血後に、CKLP1(10mM)による両側の眼の治療をハウンドドッグにおいて更に4日間~5日間続けた。最後の治療の23時間後に、動物を安楽死させ、選択した眼及び全身組織の試料を収集し、LC-MS/MSによってCKLP1及びレブクロマカリムの存在について分析した。
眼組織の収集のために、眼を摘出し、房水、硝子体液、線維柱帯網、視神経、毛様体、虹彩、網膜、及び角膜を単離し、-80℃で貯蔵した。剖検中に組織を収集している間、心臓、腎臓、肺、脳、肝臓、及び骨格筋の部分を薬力学分析用に直ちに凍結し、一方で、残りの組織試料を、10%の中性緩衝ホルマリン中で直ちに固定した。
生体試料(液及び組織)中のCKLP1及びレブクロマカリムの濃度を、確立されたLC-MS/MSベースのアッセイによって決定した。分析の直前に組織を解凍し、それらの重量を測定した。PBSを組織容積の2倍で加え、ローターステーター型ホモジナイザーにおいて30秒間均質化した。簡潔には、CKLP1、レブクロマカリム、及びフラボピリドール(内部標準)を、AgilentのEC-C18プレカラム(2.7μm、2.1×5mm)と連結されたWatersのAcquity UPLCBEH C18カラム(1.7μm、2.1×50mm)において分離した。多重反応モニタリング(MRM)を用いたポジティブエレクトロスプレーイオン化を使用して検出を行った。MRMの前駆イオン及び生成イオンを、CKLP1、レブクロマカリム、及びフラボピリドール(内部標準)について、それぞれ367>86、287>86、及び402>341のm/zでモニタリングした。データを、WatersのMassLynx v4.1ソフトウェアを使用して取得及び分析した。
値は平均±標準偏差として表される。対応のあるt検定を使用して、同じ動物内の群平均を比較した。3つ以上の群の平均(用量応答研究)を、一元配置ANOVAとそれに続くペアワイズt検定を使用して比較した。JMPソフトウェアを使用して統計的検定を実行した。
ハウンドドッグのうち2匹はそれらの組織において顕著なレベルのCKLP1及びレブクロマカリムを示したのに対して、3匹目のハウンドドッグにおけるレベルは定量的レベル未満(BQL)であった。図10において示されるように、2匹の動物からのデータを使用すると、視神経(63.8±63.1ng/g)、線維柱帯網(169.5±21.6ng/g)、角膜(31.3±10.8ng/g)、及び硝子体液(24.4±2.4ng/g)において高濃度のCKLP1が見られ、その際、毛様体(10.3±8.1ng/g)、虹彩(4.8±1.1ng/g)、網膜(6.2±3.8ng/g)、及び房水(10.2±14.4ng/g)においては、より低いレベルのCKLP1が見られた。これらの試料においてはレブクロマカリムも存在していたが、より低い濃度で存在していた。線維柱帯網(2.0±0.5ng/g)に続いて角膜(1.4±0.3ng/g)及び房水(1.1±1.5ng/ml)において最も高い濃度のレブクロマカリムが見られた。視神経、毛様体、虹彩、網膜、及び硝子体液でも、1ng/g未満ではあるが、レブクロマカリムが示された。治療された動物の尿中にCKLP1(88.0±134.9ng/ml)及びレブクロマカリム(3.7±4.5ng/ml)の両方の高い濃度が認められたことから、これが身体からの薬物排泄の重要な経路であることが示される。全身器官の中では、CKLP1及びレブクロマカリムは両方とも存在しないか、又は心臓(3.7±0.5ng/gのCKLP1;0.9±0.8ng/gのレブクロマカリム)、腎臓(2.7±2.9ng/gのCKLP1;0.8±1.2ng/gのレブクロマカリム)、及び肺(CKLP1は検出されなかった;0.3±0.4ng/gのレブクロマカリム)において低濃度で見られるかのいずれかであった。
眼へのCKLP1の両側の局所投与の局所的及び全身的な副作用を評価するために、追加の組織試料を採取して組織学的検査を行った。剖検中に採取して固定された組織をパラフィンブロックへと加工し、切片にし、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
各ハウンドドッグからの評価された40個の異なる組織のうち、分析された組織のいずれも偶発的な所見を超える有意な病理を一切示さなかった。有意な病理学的変化がないことは、CKLP1による治療により観察可能な毒性が一切見られなかったことを示唆している。図11A、図11B、図11C、及び図11Dは、CKLP1で治療された選択された組織(線維柱帯網、網膜、腎臓、肝臓)からの代表的な画像を示す。
典型的な血液化学は、アルブミンを除いて、これまでの範囲(historical range)と比較してハウンドドッグについての正常範囲内であり、これは、治療された動物及びコントロールの動物の両方において僅かに低い濃度であることが判明した。さらに、治療期間中に、ハウンドドッグの食物摂取量又は行動において変化は観察されなかった。同様に、実験前及び実験後のイヌの体重は有意な変化を一切示さなかった(治療された群及びコントロール群の両方についてp>0.36)。
まとめると、これらの結果は、CKLP1による両側の眼の治療は忍容性が高く、眼毒性又は全身毒性を引き起こさないことを示唆している。
血液中に見られるレブクロマカリムの濃度が低いのは、最初に薬物を貯留し、次に緩徐放出することによりCKLP1にとってのリザーバーとして機能する組織が原因である可能性もある。利用可能な薬物の量を示すAUCの値は、レブクロマカリムよりもCKLP1の場合の方が22.4倍高いことから、これは、CKLP1が貯留され、時間をかけて緩徐放出され得ることを示している。さらに、幾つかの眼組織は、高濃度のCKLP1及びレブクロマカリムを示している。そのような組織の1つは線維柱帯網であると思われ、これは、分析された眼組織の中で最も多くのCKLP1及びレブクロマカリムを含む。線維柱帯網において確認された高濃度のCKLP1は、臨床的に関連する濃度においてレブクロマカリムを緩徐放出するリザーバーとして機能している可能性がある。これは、小型動物モデルにおいて確認された治療の中止後のIOPのベースラインへの復帰の遅延を部分的に説明することもでき(非特許文献2、非特許文献10、非特許文献11)、上記でも報告された。線維柱帯網は遠位流出領域のすぐ近位にあるため、CKLP1からレブクロマカリムへの転化が遠位流出経路に対する効果を誘発するのに有利な場所である。
実施例5.静脈内CKLP1はイヌにおける末梢血管拡張を誘導する。
2匹のビーグル犬(1匹の雄及び1匹の雌)に漸増用量(0.05mg/kg、0.5mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、及び5mg/kg)のCKPL1を静脈内注射して、CKLP1の毒性を評価した。橈側皮静脈を通じて注射を行い、CKLP1をリン酸緩衝生理食塩溶液((0.096%の第二リン酸ナトリウム、0.089%のオルトリン酸二水素ナトリウム一水和物、0.83%の塩化ナトリウム)pH6.5±0.1、注射用滅菌水USP中)中で投与した。投与スケジュールを以下の表3に示す。
Figure 2023512828000040
以下のパラメーター及び終点を評価した:死亡率、臨床観察、体重及び器官の重量、並びに食物摂取量。毒物動態パラメーター(CKLP1及びレブクロマカリムの両方について)用の生物分析試料を、各投与レベル(1日目、3日目、8日目、10日目、及び14日目)の後に、投与前、投与の1時間後、3時間後、6時間後、8時間後、及び24時間後に収集した。生物分析試料の収集スケジュールの完了後に動物を研究から解放した。
毒物動態(TK)を、試料採取された各研究日(1日目、3日目、8日目、10日目、及び14日目)での各動物についての個別の曝露に基づいて決定した。1日目に、雌についての0.05mg/kgのレブクロマカリムに対して毒物動態分析を行わなかったのは、プロファイルにおいて定量化された収集時点のうち2点だけで評価を行うには、血漿濃度データが不十分であったからである。雌イヌについての0.05mg/kgでのレブクロマカリムのAUCTlastを、用量比(10倍)によって正規化された次に低い投与レベル(0.5mg/kg)からのAUCTlastを使用して推定して、雌イヌにおけるレブクロマカリムについてのより高い用量でのRAUC値を推定した。10日目の雌イヌを除いて、投与前の試料はどの動物においてもどの日にも、定量可能な曝露を有しなかった。静脈内Cの推定を可能にするために、10日目の雌イヌについての投与前濃度をTK分析から除外した。CKLP1の静脈内ボーラス投与後のCKLP1及びレブクロマカリムについてのTKパラメーターの雄及び雌の概要を以下に表す。CKLP1についてのパラメーターを表4Aに示し、レブクロマカリムについてのパラメーターを図4Bに示す。
Figure 2023512828000041
Figure 2023512828000042
一般に、静脈内ボーラス投与のみの後の時間ゼロでの理論濃度(C)、観察された最大血漿濃度(Cmax)、及び濃度対時間曲線下面積(AUC)に基づくCKLP1曝露は、両方のイヌにおいてほぼ用量に比例していた。各投与後のAUC値の差は2倍未満であったため、一貫した性差は認められなかった。
両方のイヌにおけるレブクロマカリム曝露は、投与されたCKLP1用量に比例するように見えた。雄イヌと雌イヌとの間で、レブクロマカリムTKパラメーターにおいて一貫した明らかな差は見られなかった。CKLP1の血漿濃度は、初期の時点でレブクロマカリムよりも300倍超高かった。Cmaxの差は、雄において300倍~400倍高く、雌において350倍~650倍高かった。レブクロマカリムではCKLP1よりもT1/2が幾らか長いように見え、相対的な差は投与後の時間にわたって減少した。時間ゼロからの無限大まで外挿された濃度対時間曲線下のCKLP1面積(AUC(0-inf))は、雄においてはレブクロマカリムよりも100倍~200倍高く、雌においては200倍~300倍高かった。
単回の漸増静脈内用量が投与されたイヌにおいては、最大耐用量(MTD)は3mg/kgであると決定された。このMTDは、CKLP1に関しては16.4μg/mL及び106.55μg×h/mL、レブクロマカリムに関しては35.5ng/mL及び431ng×h/mLの性別をまとめたCmax値及びAUCTlast値に相当した。死亡率、体重又は食物消費量の変化は認められなかった。組織学的検査では、CKLP1治療の結果としての全身毒性は示されなかった。この研究中に死亡は見られず、食物消費量又は体重に対するCKLP1関連の影響は見られなかった。
驚くべきことに、以下の表5において示されるように、CKLP1関連の臨床徴候としては、雄における0.05mg/kg以上での、そして雌における0.5mg/kg以上での皮膚(耳介、歯茎、全身領域、及び/又は左前肢(雌のみ))の赤変の一貫性のない所見が挙げられた。無有害作用量(NOAEL)は3mg/kgであった。5mg/kgでは、心拍数、ぬくもり、及び/又は部分的に閉じた眼(雌のみ)の増加というCKLP1関連の有害な臨床徴候が観察された。
Figure 2023512828000043
この研究により、CKLP1が静脈内投与後にレイノー病を含む血管障害に有益な末梢血管拡張を誘発することが確認される。
実施例6.ビーグル犬における28日間の点眼投与後の血漿薬物動態
ビーグル犬における28日間の局所的な点眼投与後のCKLP1及びレブクロマカリムの血漿薬物動態を評価した。この研究においては、イヌ(3匹の雄及び3匹の雌)に、片眼当たり40μLの2.0%、4.0%、又は8.0%(mg/mLで測定)(片眼当たり0.8mg、1.6mg、又は3.2mgのCKLP1に相当)のリン酸緩衝生理食塩水中のCKLP1を両眼に毎日局所投与した。試験開始時の7.9kgの雄イヌの平均体重に基づくと、これらの用量は0.20mg/kg、0.41mg/kg、又は0.81mg/kgに相当し、研究開始時の6.0kgの雌イヌの平均体重に基づくと、これらの用量は0.27mg/kg、0.53mg/kg、又は1.07mg/kgに相当した。毒物動態分析のために、1日目及び28日目において、投与前に、並びに投与の1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、12時間後、及び24時間後に、血液を採取した。さらに、最終投与後に、各性別の2匹の動物に336時間(14日間)の回復時間を与え、その時点で最終的な血液試料を取得した。試料を、検証済みのLC-MS/MS法(MET244v1)によってCKLP1及びレブクロマカリムについて分析した。
局所投与した場合に、無有害作用量(NOAEL)は、8.0%(mg/mLで測定)であると決定された。この用量では、28日目の平均Cmax値及びAUC Tlast値は、雄の場合にそれぞれ147ng/mL及び1.26μg×h/mlであり、その際、雌においても同様の結果であった。NOAELでのCKLP1のCmaxレベル及びAUC Tlastレベルは、雄において31ng/ml及び166ng×h/mlであり、その際、雌においても同様の結果であった。
3.2mg/眼/用量(mg/mLで測定して8%)で、主に、軽度から中等度の発赤(鬱血)の発生率及び重症度の増加と、赤血球量の僅かな減少とからなる有害でない眼への影響が観察された。CKLP1関連の顕微鏡所見は、1.6mg/眼/用量(4%)以上での雄の角膜上皮における有害でない軽度の有糸分裂の増加及び3.2mg/眼/用量(8%)での1匹の雌におけるその増加、並びに3.2mg/眼/用量(8%)での2匹の雌における軽度の涙腺房萎縮に限定されており、その毒性学的意義は不明であった。
1匹のコントロール動物を含む治療された群の中の数匹の動物において、巨視的には胸腺の重量及びサイズの減少が観察され、微視的にはリンパ系細胞性の最小限ないし軽度の減少が観察された。これらの変化は有害ではなく、生理学的退縮及びストレスの組合せに伴うものであると考えられた。
14日間の回復期間の後に、全ての眼の所見は完全に回復し、(3.2mg/眼/用量(8%)での)血液学パラメーター及び胸腺における有害でない変化は部分的に回復した。
28日目に中用量で1匹の雄及び1匹の雌において、そして1日目及び28日目に1匹の高用量の雌において低い曝露が起こった。これは、両方の用量でのCKLP1についての性別間の比較と、高用量での雌におけるレブクロマカリム血漿濃度とに影響を与えたものと考えられた。
表6に見られるように、1日目と28日目との間でCKLP1曝露において一貫した差は見られなかったが、レブクロマカリム曝露及びCKLP1からレブクロマカリムへのパーセンテージ転化率は、1日目よりも28日目の方が低い傾向があった。CKLP1及びレブクロマカリムへの曝露は用量とともに増加したが、その増加は厳密には用量に比例しなかった。
低用量及び中用量での雌は、雌におけるmg/kgの有効用量がより高いことを考慮したとしても、雄よりも高いCKLP1レベルを示した。雌に投与される用量をより高く調整した後に、高用量での雌におけるCKLP1及びレブクロマカリムへの曝露は、雄より僅かに低いように見えた。低用量及び中用量でレブクロマカリムに関して性差は観察されなかった。
毒物動態分析により、CKLP1への曝露は、全ての用量及び時点にわたりレブクロマカリムの曝露を上回ることが示された。レブクロマカリムのCmax及びAUCtlastの平均値は、それぞれ、1日目のCKLP1の18.1%~69%及び10.2%~43.2%であり、28日目のCKLP1の9.86%~27%及び6.01%~18.5%であった。
CKLP1の最大濃度(Cmax)は、1日目及び28日目に両方の性別において1時間又は2時間で生じた。CKLP1の平均T1/2は、3.32時間~6.18時間の範囲であった。1日目及び28日目に0.8mg/眼/用量(2%)及び1.6mg/眼/用量(4%)で雄と比較して雌においてより高いCKLP1への曝露(2倍超のAUC)が観察されたが、3.2mg/眼/用量(8%)では性別間で同様の曝露が観察された。曝露の文脈における用量の比例関係は、1日目及び28日目の両方で、雄及び雌において不定であった。一般に、全ての用量レベルで1日目と比較して28日目にCKLP1の蓄積(平均値)は見られなかったが、一部の個々の動物では28日目に曝露の増加が示された。
レブクロマカリムのCmaxは、1日目に両方の性別において1時間から4時間の間で観察され、28日目に雄において1時間から8時間の間で、そして雌において2時間又は4時間で観察された。平均T1/2は2.06時間から4.90時間の間であった。全ての用量及び時点での曝露(AUC)の性差は2倍未満であった。レブクロマカリムへの曝露の文脈における用量の比例関係は、1日目及び28日目の両方で不定であった。一般に、レブクロマカリムへの全身曝露は、雄においては全ての用量レベルで1日目と比較して28日目に減少し、雌において3.2mg/眼/用量(8%)で減少し、雌においては0.8mg/眼/用量(2%)及び1.6mg/眼/用量(4%)で1日目と28日目との間でほぼ同様であった。
CKLP1についての終末相消失半減期は、およそ3時間から6時間の間の範囲であった。レブクロマカリムについての終末相消失半減期は僅かにより低く、投与後2時間から5時間の間の範囲であった。
28日目に投与前に採取された血漿試料は、低用量で1匹の雌において、中用量で全ての雌において、そして高用量で全ての雄及び雌において検出可能なレベルのCKLP1を示した。CKLP1の投与前レベルは、投与後のピーク血漿濃度よりも16倍から25倍低かった。28日目の投与前のレブクロマカリムレベルは、定量下限(0.499ng/mL)を下回るか、又はそれを僅かに上回るかのいずれかであった。回復期間の終わりに採取された血漿試料は、雄イヌ及び雌イヌの両方において、CKLP1(1.999ng/mL)及びレブクロマカリム(0.499ng/mL)の両方の定量下限を下回っていた。
Figure 2023512828000044
実施例7.静脈内CKLP1はラットにおける末梢血管拡張を誘導する。
3つのラットの群に、異なる用量のCKLP1を静脈内投与した。研究の詳細を表7に示す。研究は14日間の回復期間を含め28日間の長さであった。
Figure 2023512828000045
研究期間の終わりに、CKLP1群とコントロール群との間で、食物消費量、体重、又は体重増加に関して差は見られなかった。以下の表8において示されるように、0.15mg/kg/日以上のCKLP1が投与された雄ラット及び雌ラットの臨床徴候としては、前肢及び後肢の皮膚の赤み、耳介の赤み、並びに陰嚢の赤み(雄のみ)が挙げられた。8日目から14日目の間に、CKLP1が1.5mg/kg/日以上投与された雄及び雌において前足の皮膚の赤みが観察され、CKLP1が1.5mg/kg/日投与された雄及び雌において鼻鏡部の赤みが観察された。15mg/kgの用量が投与された雄において異常な眼の色も観察された。この研究により、CKLP1が静脈内投与後にレイノー病を含む血管障害にとって有益な末梢血管拡張を誘発することが更に確認される。
Figure 2023512828000046
実施例8.3Dの緑内障ヒト線維柱帯網/シュレム管組織モデルにおけるレブクロマカリムの使用
従来の流出経路の解剖学及び生理学に対する緑内障の病理及び薬剤誘発性の変化のシミュレーションは、特有の課題を提示する。以下に記載される研究においては、3Dの生物工学による緑内障の従来の流出モデルを使用して、in vitroでの流出を調節するレブクロマカリムの能力を調査した。ヒト線維柱帯網/シュレム管の共培養物における線維化マーカー及び内皮接合部マーカーに対するレブクロマカリムの効果も以下に記載する。
4人のドナー(47歳~91歳)を使用した生体工学による3Dの従来の流出路構築物を、TGF-β2(5ng/mL)で6日間処理した。次に、構築物をレブクロマカリム(1μM、10μM、又は100μM)、又はRhoキナーゼ阻害剤であるY-27632(10μM)で処理した。レブクロマカリム(1μM)の流出機能(透過係数)に対する効果を、様々な灌流速度で圧力を絶えず記録する灌流研究によって評価した。α-平滑筋アクチン(α-SMA)、CD31、エンドセリン-I、フィブロネクチン、VE-カドヘリン、ホスホ-eNOS、及び総eNOSのタンパク質発現をウエスタンブロットにより分析した。α-SMA、フィブロネクチン、ホスホ-eNOS、及び総eNOSの細胞発現を、免疫細胞化学及び共焦点顕微鏡検査によって確かめた。統計的有意性を、テューキーの多重比較検定を用いた一元配置ANOVA、又は二元配置ANOVAによって決定した。
レブクロマカリムは、TGF-β2又はY-27632で処理されたドナーと比較して、全てのドナーにわたって流出機能を有意に増加させた(それぞれP<0.0001及びP<0.05)。レブクロマカリムは、細胞接着タンパク質CD31及びVE-カドヘリンの発現に有意な影響を与えなかったが、Y-27632はそれらの含有量を有意に減少させた(P<0.01)。どちらの化合物も、エンドセリン、フィブロネクチン、α-SMA、又はホスホ-eNOS、又は総eNOSのタンパク質発現又は分布を有意に変化させなかった。
レブクロマカリムは、線維化マーカー又は内皮接合部マーカーのタンパク質発現に影響を与えることなく、緑内障構築物における流出機能を有意に改善した。対照的に、Y27632は内皮接合部マーカーの発現を減少させた。これらの結果は、レブクロマカリムが、血管の完全性を変化させずに、したがって顕著な充血を誘発せずに、上昇したIOPを低下させ得る治療薬であることを示している。
本明細書は、本発明の実施形態を参照して記載された。本明細書における教示により、当業者は、所望の目的に対して本発明を修正することができ、かかる変形は本発明の範囲に含まれるものとされる。

Claims (50)

  1. 治療を必要とする宿主におけるグレーブス眼症、海綿静脈洞血栓症、眼窩静脈血管炎、頸動脈海綿静脈洞瘻、眼窩静脈瘤、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、及び非動脈炎性前部虚血性視神経症から選択される眼障害を治療する方法であって、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000047
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
  2. 前記眼障害は、非動脈炎性前部虚血性視神経症である、請求項1に記載の方法。
  3. 治療を必要とする宿主におけるレイノー病、末梢動脈疾患、慢性下肢虚血、血栓性静脈炎、肺動脈性肺高血圧症、及び慢性静脈不全症から選択される血管障害を治療する方法であって、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000048
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
  4. 前記血管障害は、レイノー病である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記血管障害は、肺動脈性肺高血圧症である、請求項3に記載の方法。
  6. 治療を必要とする宿主における慢性又は急性の心筋虚血、微小血管機能不全、冠動脈疾患、不整脈、高血圧、内皮機能不全、及び心臓発作から選択される心血管疾患を治療する方法であって、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000049
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
  7. 治療を必要とする宿主における勃起不全又は女性の性的興奮障害を治療する方法であって、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000050
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
  8. 勃起不全を治療する、請求項7に記載の方法。
  9. 治療を必要とする宿主におけるリンパ節腫脹、リンパ管炎、リンパ管拡張症、リンパ節炎、及びリンパ管腫症から選択されるリンパ疾患を治療する方法であって、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000051
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
  10. 治療を必要とする宿主における結膜粘液腫、ドライアイ、結膜リンパ管拡張症、結膜浮腫、マスタードガス角膜炎、角膜炎症、眼窩蜂窩織炎、霰粒腫、皮膚弛緩症、及び眼瞼弛緩症から選択される眼リンパ障害を治療する方法であって、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000052
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
  11. 前記有効量の式I、式II、又は式IIIの化合物は、顕著な充血を引き起こさない、請求項1又は10に記載の方法。
  12. 前記化合物は、式IA、式IB、又は式IC:
    Figure 2023512828000053
    (式中、X及びM2+は、薬学的に許容可能なカチオンである)から選択される式Iの薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記式IAの化合物は、
    Figure 2023512828000054
    から選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 前記式IBの化合物は、
    Figure 2023512828000055
    から選択される、請求項12に記載の方法。
  15. 前記式ICの化合物は、
    Figure 2023512828000056
    から選択される、請求項12に記載の方法。
  16. 前記化合物は、式IIA、式IIB、又は式IIC:
    Figure 2023512828000057
    (式中、X及びM2+は、薬学的に許容可能なカチオンであり、かつ、
    xは、1、2、3、4、又は5から選択される整数である)から選択される式IIの薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記化合物は、式IIIA、式IIIB、又は式IIIC:
    Figure 2023512828000058
    (式中、X及びM2+は、薬学的に許容可能なカチオンであり、かつ、
    xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)から選択される式IIIの薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  18. は、Na、K、Li、Cs、又は1の正味正電荷を有するアンモニウムイオンから選択される、請求項12~14並びに請求項16及び17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Zn2+、Fe2+又は2の正味正電荷を有するアンモニウムイオンから選択される、請求項12及び請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
  20. xは、1である、請求項1~11及び請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. xは、1、2又は3である、請求項1~11及び請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
  22. xは、4又は5である、請求項1~11及び請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記薬学的に許容可能な担体は、眼局所送達に適した剤形である、請求項1及び請求項10~22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記薬学的に許容可能な担体は、経口投与に適した剤形である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記剤形は、固体剤形である、請求項24に記載の方法。
  26. 前記剤形は、丸剤、カプセル剤、又はゲルキャップ剤である、請求項25に記載の方法。
  27. 前記剤形は、液体剤形である、請求項24に記載の方法。
  28. 前記剤形は、懸濁液剤又は液剤である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記薬学的に許容可能な担体は、局所投与に適した剤形である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記薬学的に許容可能な担体は、静脈内投与に適した剤形である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記薬学的に許容可能な担体は、非経口投与に適した剤形である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
  32. 前記化合物は、CKLP1:
    Figure 2023512828000059
    又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11及び請求項23~31のいずれか一項に記載の方法。
  33. 前記化合物は、式:
    Figure 2023512828000060
    の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項32に記載の方法。
  34. 前記化合物は、式:
    Figure 2023512828000061
    の化合物である、請求項33に記載の方法。
  35. 前記宿主は、ヒトである、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 治療を必要とする宿主におけるグレーブス眼症、海綿静脈洞血栓症、眼窩静脈血管炎、頸動脈海綿静脈洞瘻、眼窩静脈瘤、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、及び非動脈炎性前部虚血性視神経症から選択される眼障害を治療するのに使用される、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000062
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩。
  37. 前記眼障害は、非動脈炎性前部虚血性視神経症である、請求項36に記載の化合物。
  38. 治療を必要とする宿主におけるレイノー病、末梢動脈疾患、慢性下肢虚血、血栓性静脈炎、肺動脈性肺高血圧症、及び慢性静脈不全症から選択される血管障害を治療するのに使用される、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000063
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩。
  39. 前記血管障害は、レイノー病である、請求項38に記載の化合物。
  40. 前記血管障害は、肺動脈性肺高血圧症である、請求項38に記載の化合物。
  41. 治療を必要とする宿主における本明細書において記載される障害又は疾患を治療するのに使用される、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000064
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩。
  42. 請求項1~35のいずれか一項に記載の治療方法のための、請求項41に記載の有効量の化合物。
  43. 治療を必要とする宿主におけるグレーブス眼症、海綿静脈洞血栓症、眼窩静脈血管炎、頸動脈海綿静脈洞瘻、眼窩静脈瘤、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、及び非動脈炎性前部虚血性視神経症から選択される眼障害を治療する医薬の製造における、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000065
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩の使用。
  44. 前記眼障害は、非動脈炎性前部虚血性視神経症である、請求項43に記載の使用。
  45. 治療を必要とする宿主におけるレイノー病、末梢動脈疾患、慢性下肢虚血、血栓性静脈炎、肺動脈性肺高血圧症、及び慢性静脈不全症から選択される血管障害を治療する医薬の製造における、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000066
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩の使用。
  46. 前記血管障害は、レイノー病である、請求項45に記載の使用。
  47. 前記血管障害は、肺動脈性肺高血圧症である、請求項45に記載の使用。
  48. 治療を必要とする宿主における本明細書において記載される障害又は疾患を治療する医薬の製造における、任意に薬学的に許容可能な担体中の有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000067
    (式中、xは、1、2、3、4、及び5から選択される整数である)の化合物、又は薬学的に許容可能な塩の使用。
  49. 請求項1~35のいずれか一項に記載の治療方法のための、請求項48に記載の有効量の化合物の使用。
  50. 請求項1~35のいずれか一項に記載の治療方法のための、有効量の式I、式II、若しくは式III:
    Figure 2023512828000068
    の化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
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