JP2023509307A - β-ラクトグロブリン及び原薬の共非晶質形態 - Google Patents
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Abstract
本発明は、原薬及びタンパク質、より特にはβ-ラクトグロブリンの共非晶質形態に関するものであって、前記β-ラクトグロブリンの純度は、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも92%(w/w)である。本発明はまた、前記共非晶質形態を含む組成物、例えば医薬組成物に関する。【選択図】図1
Description
本発明は、原薬及びタンパク質、より好ましくはβ-ラクトグロブリンの共非晶質形態に関する。本発明はまた、医薬、化粧品、獣医、食品、または食事用組成物などの、共非晶質形態を含む組成物に関する。
経口送達は、経口製剤が安価に製造されて患者にとって便利であるため、薬剤投与の好ましい方法である。しかしながら、水への溶解性に乏しい結晶性原薬の経口製剤は、これらの物質が乏しい溶解度および低い溶解速度を呈し、低い生体利用度および乏しい治療性能をもたらすため、製薬業界にとって大きな課題である。
これらの問題に対処するために、非晶質製剤がこれまでに使用されてきた。薬剤の結晶形態をその非晶質の対応物に変換することにより、原薬の溶解度および溶解速度が増大し、生体利用度および治療有効性の改善につながる(Hancock et al., Pharm. Res. 17 (2000) pp.397-404) 。しかしながら、非晶質の薬剤形態は物理的に不安定であり、保存中に難溶性の結晶形態に再結晶化する傾向がある(Laitinen et al., Int. J. Pharm. 453 (2013) pp. 65-79) 。したがって、非晶質薬剤の形態を安定化させるための方法は、製薬業界により正当化される。特に、当技術分野において、共非晶質製剤の安定性および/または溶解特性をさらに改善することができる新しい賦形剤が必要である。
Albrehtら(J. Agric. Food Chem., 2012, 60, 10834-10843) は、β-ラクトグロブリンを用いたシコニンの溶解度の増加を開示している。これらの実験に用いたβ-ラクトグロブリンの純度は90%であった。さらに、Albrehtらは、シコニン及びβ-ラクトグロブリンの共非晶質形態については言及しなかった。
国際公開番号第2018/113890号は、原薬と種々のタンパク質の共非晶質形態を開示している。これらのタンパク質の1つはβ-ラクトグロブリンである。しかしながら、β-ラクトグロブリンの純度は特定されておらず、実施例で用いたβ-ラクトグロブリンは、標準純度が約90%のウシ乳由来であった(Sigma-Aldrich社製、ドイツ)。さらに、固有溶解試験および非晶質物理的安定性を用いた溶解増強に関して、最も性能の高いタンパク質は、タンパク質混合物、特に約50~約70%のβ-ラクトグロブリンを含む乳清タンパク質分離物(WPI)であることが分かった。
国際公開番号第2018/113890号において、固有溶解は、溶解媒体中の粒径効果または分散効果の寄与を最小限に抑え、頻繁に使用される溶解評価技術であるものとして使用された。特定の理論に拘束されることなく、固有溶解は、潜在的な性能に関する一般的な識見を提供するが、製剤または化合物の真の溶解挙動を必ずしも反映しないこともある。多くの場合、固有溶解実験における溶解量は非常に少ないため、溶解媒体中の薬剤の飽和濃度(シンク条件)をはるかに下回るままである。したがって、それらは製剤の過飽和または沈殿阻害の可能性に関する情報を提供しない。これらの特性は、製剤が過飽和(非シンク条件)することを可能にする粉末溶解を用いて評価することができる。
驚くべきことに、より高い純度を有するβ-ラクトグロブリンは、標準純度を有するWPIおよびβ-ラクトグロブリンの両方よりも粉末溶解および物理的安定性に関してより良好に機能することが分かった。
標準純度よりも高い純度を有するβ-ラクトグロブリンは、国際公開番号第2018/115520号に従って調製され得る。
一態様において、本発明は、β-ラクトグロブリンの純度が、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも92%(w/w)である、原薬及びβ-ラクトグロブリンの共非晶質形態に関する。
さらなる態様において、本発明は、原薬との共非晶質形態の調製における、少なくとも92%の純度を有するβ-ラクトグロブリンの使用に関する。
本発明の別の態様において、本発明は、本発明に記載の共非晶質形態と少なくとも1つの医薬として許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
定義
本発明の文脈において、「共非晶質」という用語は、成分が分子レベルで密接に混合される均質な非晶質系を形成する2つ以上の成分の組み合わせを指す。「共非晶質」サンプルは、スプレー乾燥、溶媒蒸発、凍結乾燥、超臨界流体からの沈殿、溶融急冷、加熱溶融押出、エレクトロスピニング、2D印刷、3D印刷などの溶融および溶媒ベースのアプローチにより、又はボールミリングやクライオミリングなどの動力学的無秩序プロセスにより調製される。粉末X線回折(XRPD)は、示差走査熱量測定(DSC)とともに、調製後にサンプルが「共非晶質」であるかどうかを、例えば、ブラッグピークの不在および単一のガラス転移温度の出現を測定することにより識別するために、使用される。
本発明の文脈において、本発明による共非晶質形態に含まれるβ-ラクトグロブリンに関連する用語「純度」は、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量に対する百分率(w/w)として定義される。共非晶質形態が医薬組成物に含まれる場合、医薬製剤中に賦形剤として含まれ得るゼラチンなどの任意の追加のタンパク質は、共非晶質形態に含まれるβ-ラクトグロブリンの純度の計算には入らない。さらに、追加のタンパク質が賦形剤として医薬組成物中に含まれる場合、前記追加のタンパク質は、前記共非晶質形態のガラス転移温度に加えて、追加の、第2ガラス転移温度(非晶質の場合)または融点(結晶性の場合)を生じ得る。
本発明の文脈において、「原薬」という用語は、活性薬理成分、栄養補助食品、または獣医用医薬品を指すことを意図する。一実施形態において、「原薬」という用語は、活性薬理成分を指す。本発明の文脈において「1つの」原薬に言及する場合、1つ以上の原薬を指してもよい。
共非晶質形態
一態様において、本発明は、β-ラクトグロブリンの純度が、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも92%(w/w)である、原薬及びβ-ラクトグロブリンの共非晶質形態に関する。特定の理論に拘束されることなく、β-ラクトグロブリンの純度は、原薬のより高い溶解度および/または安定性に対してポジティブに寄与することが見出されている。したがって、本発明の一実施形態において、本発明の共非晶質形態におけるβ-ラクトグロブリンの純度は、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも94%(w/w)である。本発明の別の実施形態において、本発明の共非晶質形態におけるβ-ラクトグロブリンの純度は、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも95%(w/w)である。本発明のさらに別の実施形態において、本発明の共非晶質形態におけるβ-ラクトグロブリンの純度は、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも96%(w/w)である。本発明のさらに別の実施形態において、本発明の共非晶質形態におけるβ-ラクトグロブリンの純度は、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも97%(w/w)である。本発明のさらなる別の実施形態において、本発明の共非晶質形態におけるβ-ラクトグロブリンの純度は、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも98%(w/w)である。
本発明の共非晶質形態は、1~99%の原薬、例えば5~95%の原薬を含み得る。一実施形態において、共非晶質形態は、10~90%の原薬及び10~90%のβ-ラクトグロブリンを含む。さらなる実施形態において、共非晶質形態は、20~90%の原薬及び10~80%のβ-ラクトグロブリンを含む。よりさらなる実施形態において、共非晶質形態は、30~85%の原薬及び15~70%のβ-ラクトグロブリンを含む。別の実施形態において、共非晶質形態は、50~85%の原薬及び15~50%のβ-ラクトグロブリンを含む。さらなる実施形態において、共非晶質形態は、55~75%の原薬及び25~45%のβ-ラクトグロブリンを含む。さらに別の実施形態において、共非晶質形態は、30%の原薬及び70%のβ-ラクトグロブリンを含む。よりさらなる実施形態において、共非晶質形態は、50%の原薬及び50%のβ-ラクトグロブリンを含む。よりさらなる実施形態において、共非晶質形態は、60%の原薬及び40%のβ-ラクトグロブリンを含む。さらに別の実施形態において、共非晶質形態は、70%の原薬及び30%のβ-ラクトグロブリンを含む。
より低い薬剤負荷は、低い溶解度を有する薬剤分子、特に非常に低い溶解度を有する薬剤分子のとりわけ良好な溶解を提供することが見出されている。したがって、一実施形態において、共非晶質形態は、5~35%(w/w)の原薬および65~95%(w/w)のβ-ラクトグロブリンを含む。さらなる実施形態において、共非晶質形態は、10~30%(w/w)の原薬および70~90%(w/w)のβ-ラクトグロブリンを含む。よりさらなる実施形態において、共非晶質形態は、12~25%(w/w)の原薬および75~88%(w/w)のβ-ラクトグロブリンを含む。よりさらなる実施形態において、共非晶質形態は、15~20%(w/w)の原薬および80~85%(w/w)のβ-ラクトグロブリンを含む。
さらなる態様において、本発明は、原薬との共非晶質形態の調製における、少なくとも92%(w/w)の純度を有するβ-ラクトグロブリンの使用に関する。
共非晶質形態は本実施例、又は国際公開番号第2018/113890号に開示される一般的な方法により調製され得る。さらに、一態様において、本発明は、本発明の共非晶質形態を調製する方法に関し、前記方法は、原薬とβ-ラクトグロブリンとを共にスプレー乾燥、溶媒蒸発、凍結乾燥、超臨界流体からの沈殿、溶融急冷、加熱溶融押出、エレクトロスピニング、2D印刷、3D印刷、及びボールミリング並びにクライオミリングなどの任意のミリング加工に供することから選択される。
原薬
ほとんどの新しい薬学的に活性な分子は非常に疎水性であって、水に溶解することは困難である。このような分子の例は、生物薬学的分類システム(BCS)のクラスIIおよびIVに分類されるものである。したがって、これらの薬学的に活性な分子は、典型的には、最終製剤におけるそれらの生体利用度を改善するために可溶化を必要とする。したがって、一実施形態において、本発明は、β-ラクトグロブリンの純度が、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも92%(w/w)であって、原薬がBCSのクラスIIまたはIVに分類される、原薬及びβ-ラクトグロブリンの共非晶質形態に関する。さらなる実施形態において、結晶性原薬は、25°Cの水中で0.1mg/ml未満の溶解度を有する。よりさらなる実施形態において、結晶性原薬は、25°Cの水中で0.02mg/ml未満の溶解度を有する。
本概念は、一般的な性質のものであり、すなわち、改善された非晶質物理的安定性および/または溶解度が有益であるあらゆる種類の原薬に適用できることが意図される。前記原薬は、生物薬学的分類システムに従って、難溶性または不溶性、難溶性または非透過性、および/またはゆっくりと溶解すると分類され得る。前記原薬は、以下のリストから選択され得る:酢酸アビラテロン、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アセタゾラミド、アセチルサリチル酸、臭化アクリリニウム、アシクロビル、酢酸アファメラノチド、アルベンダゾール、硫酸アルブテロール、フマル酸アリスキレン、アロプリノール、アルプロスタジル、塩酸アマンタジン、塩酸アミノレブリン酸、塩酸アミオダロン、アモキシシリン、アンプレナビル、塩酸アナグレリド、アニドゥラファンギン、アパルタミド、アピキサバン、アプレミラスト、アプレピタント、アプリプラゾール、アトルバスタチン、アゼライン酸、アジスロマイシン、ベニジピン、酢酸バゼドキシフェン、フマル酸ベダキリン、ベンゾナチン酸塩、ベキサロテン、ビカルタミド、ビニメチニブ、ビサコジル、ブリバラセタム、ブデソニド、カンデサルタン、カルバマゼピン、カベルゴリン、カルフィルゾミブ、カリソプロドール、カルベジロール、セフジニル、セフジトレン、セフィキシム、セフォチアム、セフポドキシム、セフロキシムアキセチル、セレコキシブ、クラリスロマイシン、クロロキン、クロルプロマジン、シクレソニド、シレキセチル、シロスタゾール、シプロフロキサシン、クラドリビン、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロナゼパム、クロピドグレル、クロザピン、コビシスタット、コリステマテナトリウム、シクロスポリン、シプロテロン、メシル酸ダブラフェニブ、ダパグリフォジン、ダプソン、ダプトマイシン、ダサブビル、ダサチニブ、デフェラシロックス、デラフロキサシンメグルミン、デキサメタゾン、塩酸デクスメチルフェニデート、ジアゼパム、ジクロフェナク、ジロキサニド、ドセタキセル、ドルテグラビルナトリウム、ドキシサイクリン、デュタステリド、デュベリシブ、エバスチン、エファビレンツ、エルクサドリン、エルビトグラビル、エンパグリフロジン、メシル酸エナシデニブ、エンザルタミド、エパルレスタット、エプロサルタン、エリスロマイシン、酢酸エスリカルバゼピン、エストラジオール、硫酸エストロン、イコサペンタ酸エチル、エトポシド、エトラビリン、エベロリムス、エゼチミブ、ファモチジン、フェノフィブラート、フリバンセリン、フルオシノニド、フルルビプロフェン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、葉酸、フマル酸ホルモテロール、フロセミド、ゲフィチニブ、酢酸グラチラマー、グリベンクラミド、グリクラジド、グリムピリド、グリピジド、グリコピロレート、グリセオフルビン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシジン、イブプロフェン、イブルチニブ、イコサペントエチル、イマチニブ、インジナビル、イルベサルタン、イリノテカン、イソトレチノイン、イトラコナゾール、イバカフトール、イベルメクチン、ケトプロフェン、L-カルボシステイン、ラモトリギン、レナリドミド、レシヌラド、レテルモビル、酒石酸レバルブテロール、レボドパ、レボノルゲストレル、リネゾリド、ロピナビル、ロラタジン、ロラゼパム、ロバスタチン、ルビプロストン、マニジピン、メベンダゾール、メドロキシプロゲステロン、メフロキン、酢酸メゲストロール、メラトニン、メロキシカム、メルファラン、メナテトレノン、メルカプトプリン、メサラミエ、メタキサロン、メチルフェニデート、メトクロプラミド、メトプロロール、メトロニダゾール、ミドスタウリン、モダフィニル、フロ酸モメタゾン、硫酸モルヒネ、モサプリド、マイカミン、ナビロン、ナブメトン、ナリジクス酸、ナプロキセンナトリウム、ネルフィナビル、ネパフェナク、ネビラピン、ネラチニブ、ニセルゴリン、ニクロサミド、ニフェジピン、ニロチニブ、ニルバジピン、ニメスリド、ニモジピン、ニンテダニブ、ニチシノン、ニトロフラントイン、酢酸ノルレチンドロン、ナイスタチン、オランザピン、オラパリブ、オルメサルタン、オマダサイクリン、オピカポン、オルリスタット、オスペミフェン、オキシカルバゼピン、オキシコドン、パクリタキセル、パルミチン酸パリペリドン、塩酸パロノセトロン、パリカルシトール、塩酸パゾパニブ、ペランパネル、フェノバルビタール、フェニトイン、ピオグリタゾン、ピタバスタチン、ポサコナゾール、プランルカスト、プラジカンテル、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プロゲステロン、ピランテル、ピリメタミン、クエチアピン、キニーネ、ラロキシフェン、レバミピド、レゴラフェニブ、レチノール、コハク酸リボシクリブ、リファンピシン、リファキシミン、リルピビリン、リメゲパント、リオシグアト、リスペリドン、リトナビル、リバロキサバン、ロフェコキシブ、塩酸ロラピタント、ロキシスロマイシン、ルカパリブ、メシル酸サフィナミド、サキナビル、センノシドA、セルトラリン、炭酸セベラマー、シルデナフィル、シメプレビル、シンバスタチン、シロリムス、ソフォスブビル、リン酸ソニデジブ、トシル酸ソラフェニブ、スピロノラクトン、クエン酸スフェンタニル、スガンマデックスナトリウム、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルタミシリン、スルピリド、リンゴ酸スニチニブ、スボレキサント、タクロリムス、タダラフィル、タファミジス、タファミジスメグルミン、タモキシフェン、タシメルテオン、テコビリマット、テラプレビル、テルミサルタン、テロトリスタットエチル、テプレノン、テリフルノミド、テオフィリン、チクロピジン、チプラナビル、ニコチン酸トコフェロール、酒石酸トルテロジン、塩酸トポテカン、トスフロキサシン、トレチノイン、トリフルサル、トリメトプリム、臭化ウメクリジニウム、三酢酸ウリジン、ウルソデオキシコール酸、バルプロ酸、バルサルタン、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ベネトクラクス、ベラパミル、ボリコナゾール、ワルファリン、塩酸ジプラシドン及びザルトプロフェン。
いくつかの原薬は、アルカリ性である官能基を含み、酸との塩を生じる。その他の原薬は酸性の官能基を含み、塩基との塩を生じる。典型的には、1つ以上の酸性官能基を含有する原薬は、胃酸中でプロトン化を起こしにくいので、胃酸中で原薬の低い溶解度を維持する。一方、1つ以上のアルカリ性官能基を含有する原薬は、プロトン化のために、胃酸中での原薬の溶解度を増大する。本発明の共非晶質形態で得られる利点は、酸性基及びアルカリ性基の存在又は非存在によって限定されず、したがって本発明は、あらゆる種類の原薬に対して有用であることが想定される。
β-ラクトグロブリン
β-ラクトグロブリンは、反芻動物及びその他の多くの哺乳動物の乳汁中の主要な乳清タンパク質である。乳清とは、(チーズ製造中に)乳汁のカゼインが沈殿して除去された後に残る液体上清を指す。しかしながら、β-ラクトグロブリンはまた、乳汁から直接単離されてもよい。ウシβ-ラクトグロブリンは、約18.4kDaの分子量を有する162アミノ酸のタンパク質である。生理学的条件下では、タンパク質は主に二量体(開いた形態)であり、pH3未満で単量体状態(閉じた構造)に解離する。pHは、pHに応じて異なる格子を形成し得るウシβ-ラクトグロブリンの結晶化にとても重要である。β-ラクトグロブリンのいくつかの遺伝子変異体が同定されており、主なウシのβ-ラクトグロブリンはAおよびBと呼ばれている。本発明の一実施形態において、β-ラクトグロブリンは、その天然および/またはグリコシル化形態で、ウシ、ヒツジまたはヤギなどの哺乳動物種から得られたβ-ラクトグロブリンであり、遺伝的変異体を含む。β-ラクトグロブリンの天然に存在する形態およびその変異体、または組換え形態のタンパク質における、アミノ酸の付加、欠失、置換を含む修飾もまた、本発明において有用であることが本発明の一部として意図される。さらなる実施形態において、β-ラクトグロブリンは、ウシβ-ラクトグロブリンである。
医薬組成物
本発明の共非晶質形態は医薬組成物中に含まれてもよい。それゆえ、本発明の一態様において、本発明は、本発明に記載の共非晶質形態及び少なくとも1つの医薬として許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
本発明の共非晶質形態は、好ましくは医薬として許容される担体又は賦形剤と共に製剤される。医薬として許容される担体又は賦形剤は、各投与法に適した不活性の担体又は賦形剤であって、通常の医薬製剤(錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、注射剤、点滴剤等)に製剤化される。このような担体又は賦形剤としては、例えば、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等を挙げることができ、これらは医薬として許容される。注射液又は輸液懸濁液として使用する場合には、注射用蒸留水、生理食塩水、グルコース溶液等を用いて製剤化される。
本発明の医薬組成物の投与法は、特に限定されず、通常の経口または非経口投与方法(静脈内、筋肉内、皮下、経皮的、鼻腔内、経粘膜、経腸など)が適用される。一実施形態において、医薬組成物は、経口投与または経鼻投与に適した形態、例えば、固体製剤、粉末、錠剤、カプセル、顆粒、小袋、再構成可能な粉末、粉末、乾燥粉末吸入器薬及びチュアブル剤である。
本発明に記載の化合物に関連して上述の任意の特徴および/または態様は、本明細書に記載の方法との類推によって適用されることを理解されたい。
以下の図および実施例は、本発明を説明するために以下に提供される。それらは例示を意図しており、いかなる方法でも限定的に解釈されるべきではない。
材料
薬剤化合物A及び薬剤化合物Bは、小分子化合物である。化合物A(融点(Tm)=284°C、logP=1.8、pKa=6.3(酸性)及び9.8)は、25°Cの水中で0.02 mg/mlの溶解度、及び25°C、pH1で0.02 mg/mlの溶解度を有する。化合物B(Tm=259°C、logP=2、中性)は、25°Cの水中で0.01 mg/ml、pH1(25°C)で0.3 mg/mlの溶解度を有する。インドメタシン(IND、Tm=162°C、logP=4.3、pKa=4.5(酸性))は、Hawkins,Inc(Minneapolis,MN,USA)で購入した。乳清タンパク質分離物(WPI)、タンパク質画分中の純度>98%のβ-ラクトグロブリン(BLG98)、α-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイン糖マクロタンパク質(cGMP)をArla Food Ingredientsから入手した。タンパク質相において約90%の純度を有するβ-ラクトグロブリン(BLG90)はSigma-Aldrichから入手した。
アパルタミド(APA)、フマル酸ベダキリン(BDQ)、ニモジピン(NMD)、リファキシミン(RIF)、リトナビル(RIT)、及びベネトクラクス(VNX)は、酸性、塩基性及び中性分子並びに塩の形態のイオン性化合物を含む、異なる物理化学的特性を有する小分子活性化合物である。
方法
ボールミリング
タンパク質ベースの共非晶質形態を、振動ボールミリング(MixerMill MM400,Retsch GmbH & Co., Haan, Germany)を用いて、4℃の低温室で30Hzで60分間調製した。この目的のために、タンパク質と薬剤との間のそれぞれの質量比(30%、50%、60%または70%薬剤負荷)で総質量500mgの材料を25mlミリングジャーに秤量して、2つの12mmステンレス鋼球で粉砕を行った。
スプレー乾燥
タンパク質ベースの共非晶質形態を、3つの流体ノズル(Buchi Labortechnik AG, Falwil, Switzerland)、不活性ループB-295(Buchi Labortechnik AG)、及び除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備えた、Buchi B-290 spray dryer(Buchi Labortechnik AG, Falwil, Switzerland)を用いることにより調製した。化合物RIFを20 mg/mlの濃度でエタノール(無水、99.8%以上)に内側供給液として溶解し、BLG98又はBLG90を20 mg/mlの濃度で水に溶解し、外側供給液として用いた。内側供給液及び外側供給液を、1.8 ml/分の一定の供給速度でスプレー乾燥機に別々にポンプで送り込んだ。スプレー乾燥工程は、以下の工程設定で実施した:入口温度100°C、乾燥空気流量約35 m3/時、及び噴霧空気流量473 l/時。出口温度は65~70°Cを記録した。
固体形態の測定のためのX線粉末回折(XRPD)
完全に非晶質の製剤または結晶性を有する製剤の存在を、Cu Kα放射(λ=1.54187オングストローム)を有するX'Pert PANanalytical PRO X-ray diffractmeter(PANanalytical, Almelom, The Netherlands)を用いて測定した。サンプルを、0.067°2θ/秒のスキャン速度、及び0.026°2θのステップサイズで、5°~30°2θの反射率モードでスキャンした。加速電圧及び電流はそれぞれ45kV及び40mAであった。
0.1M HCl、FaSSGF及びFaSSIF中の粉末溶解試験
試料の粉末溶解を、溶解溶媒として0.1M HCl又は絶食状態模擬腸液V2(FaSSIF V2、Biorelevant)のいずれかで室温で決定した。20mgの薬剤に相当するサンプルを、20mlの溶解溶媒を含む100mlの三角フラスコに添加した。溶解溶媒を入れた三角フラスコに磁気攪拌子を加え、200rpmで攪拌した。予め決められた時点(5、10、20、40、60、90、120分)で、2mlの溶解溶媒を溶解容器から取り出して、直ちに2mlの新しい溶解溶媒に置き換えた。溶解サンプルを0.45μmフィルターで濾過し、アセトニトリルを用いて溶解し、そしてその後0.45μmフィルターで再度濾過した。最後に、化合物A、化合物B、化合物IND、化合物NMD、化合物RIF、化合物RIT及び化合物VNX(BLG90使用)の場合、高速液体クロマトグラフィー(HPLC);又は化合物APA、化合物BDQ及び化合物VNX(BLG98使用)の場合、UV分光法を用いてサンプルを薬剤含量について分析した。HPLC分析には、Agilent 1290 Diode Array Detectorを備えたAgilent 1260 infinity HPLCシステム(Agilent, Santa Clara, USA)を用いた。カラムはAgilent 5TC-C18(2) 250* 4.6 mm, 5μmであって、注入量は20μlであった。流速は、すべての化合物について1ml/分であった。化合物A、化合物B、化合物RIF及び化合物RITの定量には、5TC-C18(2)(Agilent、4.6×150mm、5μm)カラムを使用した。化合物VNX(BLG90を使用)の定量には、Eclipse XDB-C18(Agilent、4.6×150mm、5μm)カラムを使用した。
化合物Aの場合、移動相は3:7の体積比で、15mMリン酸二水素アンモニウム水溶液及びアセトニトリルから成り、一方、化合物Bの場合、移動相は4:6の体積比で、0.05% TFA水溶液及びアセトニトリルから成っていた。UV検出波長は、化合物A及び化合物Bについてそれぞれ225nm及び248nmであった。保持時間は、化合物Aおよび化合物Bについてそれぞれ約3.9分および4.3分であった。インドメタシンの場合、移動相は15:85の体積比で、1.25%リン酸水溶液及びメタノールから成っていた。UV検出波長は240nm、保持時間は約5.5分であった。
化合物RIFの場合、移動相は、20倍量の3.16g/lギ酸アンモニウム(pH7.2±0.05)、及び80倍量のアセトニトリル並びにメタノールの等量混合物であった。UV検出波長は276nm、保持時間は約5.6分であった。化合物RITの場合、移動相は、体積比45:55の2g/l KH2PO4水溶液及びアセトニトリルの混合物であった。H3PO4を用いることにより、移動相をpH 4.0±0.05に調製した。UV検出波長は215nm、保持時間は約11.7分であった。化合物VNX(BLG90使用)の場合、移動相は、10倍量の25mMギ酸アンモニウム(pH6.5)及び90倍量のアセトニトリルであった。UV検出波長は250nm、保持時間は約5.3分であった。
化合物APA、BDQ、及びVNX(BLG98使用)の場合、サンプルをEvolution 300 UV spectrophotometer(Thermo Scientific, Cambridge, UK)を320nmで用いることにより、分析した。
物理的安定性
化合物A及び化合物Bを含むすべてのサンプルを、飽和塩化ナトリウム溶液中で40°Cのデシケーターに保存し、相対湿度75%(40℃/75%RH)を得た。化合物A、化合物B及びIND[薬剤負荷50%(w/w)でのIND]を含むサンプルを、0日目及び続いて1、3並びに5週間後にXRPDによって固体状態について試験した。インドメタシンを含むサンプルは、40℃/75%RHおよび周囲条件の両方で保存して、1週間及び1ヶ月の保存後に分析した。30%(w/w)の薬剤負荷でINDを含むサンプルを、0日目に、続いて3週間後にXRPDによって固体状態について試験した。
共非晶質形態のガラス転移温度(Tg)及び均質性の測定のための温度示差走査熱量測定(mDSC)の調整
サンプルのmDSCサーモグラムは、Discovery DSC(TA instruments, New Castle, USA)を用いて、50ml/分の窒素ガス流下で収集された。化合物A、化合物B及びINDを含むサンプルを、0.2120°Cの基礎変調温度振幅、及び40秒の周期で、25°Cから200°Cまで昇温速度2°C/分で分析した。残りのサンプルについて、同じ昇温速度、振幅および周期を適用した。化合物APA、BDQ、RIF、及びVNXを含むサンプルを25°Cから250°Cまで加熱して、化合物RITを含むサンプルを0°Cから170°Cまで加熱した。合計4~8mgのサンプル粉末をaluminium Tzero panに充填して、aluminium Tzero lidで密封した。ガラス転移温度(Tg)は、リバーシングヒートフローから中点として求めた。
実施例1―共非晶質製剤の粉末溶解(薬剤化合物A、化合物B、及びインドメタシン)
負荷量が50%(w/w)の化合物Aの場合、WPI、ALA、及びBLG98を含む共非晶質製剤は、化合物Aの約90%を放出し、0.1M HCl及びFaSSIFで同等の性能を発揮した(図1)。しかしながら、負荷量が60%(w/w)の化合物Aの場合、WPI、ALA及びBLG98を含む共非晶質製剤は異なる性能を発揮した。溶解溶媒0.1M HClにおいて、ALA及びBLG98との共非晶質製剤は、最初に化合物Aの約80%を放出して(5分~60分)、その後、ALAを含む製剤は薬剤の沈殿を示すが、BLG98を含む製剤はその濃度レベルを維持して、沈殿の兆候を示さなかった。WPIを含む共非晶質製剤は、10分後に約75%の化合物Aを放出するわずかに低い濃度に達し、120分で約70%の化合物Aを放出する濃度に、わずかにしかし連続的に低下した。したがって、WPIはBLG98(実験全体)及びALA(実験の最初の60分)よりも全体的に劣った性能を発揮した。溶解溶媒FaSSIFにおいて、ALA及びBLG98を含む共非晶質形態は同等の性能を発揮して、約80%の化合物Aを放出して、その濃度レベルを維持して、沈殿の兆候を示さなかった。WPIを含む共非晶質製剤は、約75%の化合物Aを放出するわずかに低い濃度に達し、ALA及びBLG98(実験全体)よりも全体的に劣った性能を発揮した。最後に、すべての共非晶質製剤(50%及び60%の薬剤負荷)は、純粋な結晶性化合物Aよりも優れた性能を発揮した。
負荷量が50%及び60%(w/w)の化合物Bの場合、WPI、ALA、BLG98及びcGMPを含む共非晶質製剤は、0.1M HClにおいてそれぞれ化合物Bの約90%及び80%を放出し、実験の終わりまで保持された(図2)。同様に、負荷量が70%(w/w)の化合物Bの場合、ALA及びBLG98を含む共非晶質製剤は、0.1M HClにおいて化合物Bの約80%を放出して、実験の終わりまで保持された。
FaSSIFにおいて、WPI、ALA及びBLG98を含む負荷量50%及び60%(w/w)の化合物Bの共非晶質製剤は、最初に化合物Bの約70%を放出し(10分間)、続いて約40%の薬剤放出の濃度レベルまで化合物Bを沈殿させた。ALA及びBLG98を含む負荷量70%(w/w)の化合物Bの共非晶質製剤は、同様の性能を示した。反対に、cGMPを含む負荷量50%及び60%(w/w)の化合物Bの共非晶質製剤は、FaSSIF中でほかのすべての製剤に対して劣った性能を発揮し、化合物Bの総量の約20%を放出した。
最後に、すべての共非晶質製剤(50、60%及び70%の薬剤負荷)は、純粋な結晶性化合物Bよりも優れた性能を発揮した。
負荷量が50%(w/w)の化合物Bの場合、BLG98及びBLG90を含む共非晶質製剤は、0.1M HCl中でそれぞれ約85及び80%を放出した。FaSSIF V2中では、それぞれ約45及び30%を放出した(図3)。これは、より高い純度を有するβ-ラクトグロブリンが、酸性及び中性溶媒の両方において、化合物Bに対する改善された溶解度及び溶解を提供することを実証した。
負荷量が50%(w/w)のインドメタシンの場合、BLG98を含む共非晶質製剤は、0.1M HClにおいてWPI及びBLG90の両方より高い放出を示し、BLG90はWPIよりも優れた性能を示した(図4)。FaSSIF中では、異なるタンパク質グレードが、類似の最終放出プロファイルを示した。しかしながら、BLG98はBLG90よりも早くプラトーに到達した(図4)。
全体的に、溶解試験の結果を考慮すると、純粋な結晶性薬剤は任意の共非晶質製剤に劣った性能を発揮した。共非晶質製剤内では、cGMPはWPI、ALA及びBLG98よりも劣った性能を発揮した。化合物Aのみの結果を考慮すると、BLG98は、60%(w/w)の薬剤負荷でALA及びWPIと比較して優れており、50%(w/w)の薬剤負荷で等しいようであった。化合物Bについて、溶解挙動に関してWPI、ALA及びBLG98について同様の結果が得られた。化合物B及びインドメタシンについて、BLG98はBLG90よりも明確に優れており、そしてインドメタシンについては、WPIに関してもまた優れていた。したがって、β-ラクトグロブリンのより高い純度は、純度90%の先行技術形態と比較して改善された特性を提供する。
実施例2―薬剤化合物A、化合物B、及びインドメタシンを含む共非晶質サンプルの物理的安定性
サンプルの固体状態を分析するためにXRPDを使用した。XRPDは、サンプルの固体状態を分析するために使用した。非晶質材料は、XRPDにおける非晶質ハロー構造の出現、すなわち回折図中のブラッグピークが1つも出現しないことよって示されるが、結晶性の存在は、回折図中の結晶ピークの存在によって同定された。図5及び6は、それぞれの場合における非晶質ハローの出現を示し、純粋な薬剤化合物Aおよび化合物B、又はすべての薬剤-タンパク質混合物のいずれかについて非晶質化の成功を証明した。物理的安定性は、オープンバイアル中で40℃および75%RHの湿潤条件下で行った。
保存すると、純粋な非晶質薬剤である化合物Aおよび化合物Bが不安定であり、保存後1週間以内に既に結晶ピークの出現を示していることがわかった(図7及び8)。負荷量が50%及び60%(w/w)の化合物Aの場合、ALA及びBLG98を含む共非晶質製剤は、全期間(5週間)にわたって非晶質のままであったのに対し、WPI又はcGMPを含む共非晶質製剤は、保存の1週間(化合物A-cGMP 60%)、3週間(化合物A-cGMP 50%、化合物A-WPI 50%)または5週間(化合物A-WPI 60%)後に結晶ピークを示した(図7)。化合物Aの負荷量が70%(w/w)の場合、WPI、ALA及びcGMPを含む共非晶質製剤は、1週間後に結晶ピークを示す一方で、BLG98は1週間後に非晶質のままであり、3週間後に結晶ピークを示した。負荷量が50%、60%、及び70%(w/w)の化合物Bの場合、すべての調査した共非晶質製剤は、全期間(5週間)にわたって非晶質のままであった。
WPI、BLG90及びBLG98との共非晶質製剤中にそれぞれ50%の薬剤負荷で、加速条件(40℃ / 75%RH)及び周囲条件下で保存されたインドメタシンは、BLG98がBLG90と比較して安定性が改善されたことを実証した(図9及び10)。1ヶ月後、BLG98は依然として非晶質ハローを有するが、BLG90は1週間後に結晶ピークを示す。WPIはまた、BLG90よりも長く非晶質形態を維持する。
全体として、安定性試験の結果を考慮すると、純粋な薬剤は非晶質安定剤を必要とし、比較的BLG98が最も良好に機能した。
実施例3―共非晶質製剤の熱分析
表1は、純粋な薬剤化合物A及び化合物BのTgが、任意の共非晶質製剤について共に低いことを明らかにする。共非晶質製剤の任意のmDSCサーモグラムにおける単一のTgの出現は、すべての製剤がすべてのタンパク質、WPI、ALA、BLG98及びcGMPと組み合わせて、均質な単相非晶質系をもたらしたことを示唆する。さらに、すべてのタンパク質、WPI、ALA、BLG98及びcGMPは、それぞれの薬剤負荷について類似の値を有するTgsをもたらすことが分かる。5週間の保存後に非晶質のままであったそれらのサンプルについて、Tgを再分析して、Tgが新たに調製されたTgと非常によく似たままであることが分かり、貯蔵によりこれらの共非晶質製剤の均質性は変化しなかったことを示す。
実施例4―ボールミリングにより得られたBLG98又はBLG90と組み合わせた50%の薬剤負荷での共非晶質製剤の調製、回折分析、熱分析及び粉末溶解(薬剤APA、BDQ、RIF、RIT、及びVNX)
調製されたばかりの50%の薬剤負荷での共非晶質製剤は、非晶質ハローの出現(図11)並びに単一ガラス転移温度(表2)を示し、すべての製剤がBLG98又はBLG90のいずれかと組み合わせて、均質な単相非晶質系をもたらしたことを示唆する。
50%(w/w)の薬剤負荷で、化合物APA、BDQ、RIF、RIT、及びVNXをBLG98又はBLG90と共に含む共非晶質製剤は、それぞれの純粋な結晶性化合物と比較して、両方の溶解溶媒における溶解速度及び溶解度の実質的な増加を示した(図12)。さらに、BLG98を用いて調製された共非晶質製剤は、一般に、BLG90を用いて調製されたそれぞれの共非晶質製剤と比較して、より速い溶解及びより高い溶解度を示したことがわかった。
全体として、BLG98は、BLG90で調製されたそれぞれの結晶性薬剤および共非晶質製剤と比較して、50%(w/w)の薬剤負荷で異なる物理化学的特性を有する様々な化合物に対する改善された溶解及び溶解度を提供する。
実施例5―ボールミリングにより得られたBLG98と組み合わせた30%の薬剤負荷での共非晶質製剤の調製、物理的安定性、熱分析及び粉末溶解(薬剤IND)
より低い薬剤負荷により薬剤放出を潜在的に改善できるかどうかを試験するために、薬剤負荷30%(w/w)で、BLG98又はBLG90と共に化合物INDを含有する共非晶質製剤をボールミリングによって調製した。図13で示されるように、薬剤負荷30%(w/w)で新しく調整された共非晶質製剤は、Tg(IND-BLG98-30%)=141.0℃及びTg(IND-BLG90-30%)=144.1℃において、非晶質ハローの出現、ならびに単一ガラス転移温度を示し、両製剤がBLG98及びBLG90と組み合わせて、単相非晶質系をもたらしたことを示唆する。化合物INDの負荷量が30%(w/w)の場合、BLG98又はBLG90を含む共非晶質製剤は、0.1M HCl及びFaSSIFの両方で約800μg/mlの薬剤放出に達した(図14)。溶解溶媒0.1M HClに関しては、BLG98を含む薬剤負荷50%(w/w)(約25μg/ml、図4参照)での化合物INDの共非晶質製剤の薬剤放出と比較して、溶解はより速く、はるかに高い濃度が得られた。溶解培地FaSSIFに関しても、BLG98を含む薬剤負荷50%(w/w)での化合物INDの共非晶質製剤に同様の濃度が得られた(図4)。したがって、前記結果により、50%(w/w)未満の薬剤負荷がBLGとの共非晶質製剤からの薬剤の溶解性能及び溶解度を増加させることができることが示唆される。
実施例6―スプレー乾燥により得られた共非晶質製剤の粉末溶解及び物理的安定性(薬剤RIF)
図15に示すように、RIFを50%(w/w)の薬剤負荷で含む、新しく調製されたスプレー乾燥共非晶質製剤は、Tg(RIF-BLG98-50%)=198.4℃及びTg(RIF-BLG90-50%)=199.2℃において、非晶質ハローの出現、ならびに単一のガラス転移温度を示し、得られたスプレー乾燥製剤がBLG98及びBLG90と組み合わせた単相非晶質系をもたらしたことを示唆している。溶解挙動に関して(図16)、2つのスプレー乾燥共非晶質製剤は、最初の20分間において類似の薬剤放出を示し、しかしながら、20分後、RIFをBLG98と共に含む共非晶質製剤は、溶解RIFの濃度において安定に保たれたが、RIFをBLG90と共に含む共非晶質製剤は沈殿を示して、薬剤をその過飽和状態に維持することができなかった。さらに、ボールミリングを行った共非晶質製剤から得られた溶解と比較して、スプレー乾燥材料からより高い薬剤放出が得られた(図12)。
Claims (16)
- 原薬とβ-ラクトグロブリンとの共非晶質形態であり、前記β-ラクトグロブリンの純度が、前記共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも92%(w/w)である、前記共非晶質形態。
- 原薬が、25°Cの水において0.1mg / ml未満の溶解度を有する、請求項1に記載の共非晶質形態。
- 前記β-ラクトグロブリンの純度が、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも94%(w / w)である、先行する請求項のいずれか1項に記載の共非晶質形態。
- 前記β-ラクトグロブリンの純度が、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも96%(w / w)である、請求項3に記載の共非晶質形態。
- 前記β-ラクトグロブリンの純度が、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも97%(w / w)である、請求項4に記載の共非晶質形態。
- 前記β-ラクトグロブリンの純度が、共非晶質形態に含まれるタンパク質の総量の少なくとも98%(w / w)である、請求項5に記載の共非晶質形態。
- 前記β-ラクトグロブリンがウシβ-ラクトグロブリンである、先行する請求項のいずれか1項に記載の共非晶質形態。
- 前記共非晶質形態が、5~85%(w / w)の前記原薬および15~95%(w / w)のβ-ラクトグロブリンを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の共非晶質形態。
- 前記共非晶質形態が、5~35%(w / w)の前記原薬および65~95%(w / w)のβ-ラクトグロブリンを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の共非晶質形態。
- 前記原薬が水中で25°Cで0.02mg/ml未満の溶解度を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の共非晶質形態。
- 請求項1~10のいずれか1項で定義される共非晶質形態、及び少なくとも一つの医薬として許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物。
- 原薬との共非晶質形態を調製するための、少なくとも92%(w / w)の純度を有するβ-ラクトグロブリンの使用。
- 前記β-ラクトグロブリンの純度が少なくとも94%、例えば少なくとも95%、96%、97%、又は98%(w/w)である、請求項12に記載の使用。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載の共非晶質形態を調製する方法であって、前記方法は、原薬とβ-ラクトグロブリンとを共にスプレー乾燥、溶媒蒸発、凍結乾燥、超臨界流体からの沈殿、溶融急冷、加熱溶融押出、エレクトロスピニング、2D印刷、3D印刷、及びボールミリング並びにクライオミリングなどの任意のミリング加工に供することから選択される、前記方法。
- 前記方法が、スプレー乾燥である、請求項14に記載の方法。
- 前記スプレー乾燥が、原薬およびβ-ラクトグロブリンの両方が同じ溶媒または溶媒混合物中で共に溶解され、続いてスプレー乾燥プロセスに供される2つの流体ノズルの使用;または、原薬およびβ-ラクトグロブリンが別々の溶媒または溶媒混合物中で溶解され、スプレー時に、溶媒が3つの流体ノズルを介してスプレー乾燥プロセスにおいて組み合わされる、3つの流体ノズルの使用のいずれかによって行われる、請求項15に記載の方法。
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