JP2023507007A - 疼痛及び軟骨破壊を治療するためのgdf-5変異体の使用 - Google Patents

疼痛及び軟骨破壊を治療するためのgdf-5変異体の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、軟骨欠損及び疼痛を治療するための、アミノ酸交換R399Eを有するGDF-5変異変異体の使用、並びに上記GDF-5変異体の薬理学的組成物に関する。

Description

本出願は、疼痛及び炎症を低減するために変形性関節症(OA)又は他の炎症性関節疾患を罹患している患者に注射するための、GDF-5変異体(R399E)及びその製剤、並びに療法用組成物の使用に関する。
変形性関節症は、関節炎の最も一般的な形態であり、世界中で何百万もの人々に影響を及ぼしている。変形性関節症は、骨の端部のクッションとなる保護軟骨が経時的に摩耗した場合に生じる。変形性関節症は、あらゆる関節に損傷を与える可能性があるが、この障害は最も一般的には、手、膝、股関節、及び脊椎の関節に影響を及ぼす。
軟骨恒常性の破綻は、その原因(加齢、遺伝的素因、外傷、又は代謝障害)が何であれ、軟骨細胞の深刻な表現型修飾を誘導し、引いてはそれが、軟骨損傷を誘導し他の関節組織を標的とする因子のサブセットの合成を促進する。興味深いことには、こうした因子の中には、炎症経路の成分が数多く存在する。軟骨細胞は、サイトカイン、ケモカイン、アラーミン、プロスタノイド、及びアディポカインを産生し、サイトカイン及びケモカインに対する数多くの細胞表面受容体、並びにトール様受容体を発現する。こうした受容体は、OA関節にある軟骨細胞の炎症及びストレス応答に関与する細胞内シグナル伝達経路を活性化する(Houardら、Curr.Reumathol Rep.、2013巻、11月;15巻(11号):375頁)。
OA症状のみであれば、鎮痛薬で一定期間管理することができるが、関節に対する損傷は元に戻すことができない。活動的であり続け、健康的な体重を維持することにより、この疾患の進行を遅らせ、疼痛及び関節機能の改善を支援することができる。にも関わらず、この疾患を停止させるか又は更に元に戻すために利用可能な効果的な治療は存在せず、ほとんどの場合、患部関節の破壊及び疼痛進行は両方とも、患者の可動性、生活の質、及び運動能力に著しい影響を及ぼす。股関節OA又は膝関節OAを有する患者の場合、関節全置換術が不可避で唯一の治療選択肢であることが多く、他の関節では疼痛管理が唯一の選択肢であることが多い。
最近の文献によると、X線写真で確認される膝関節OAが、特にこの疾患を早期発症した人々又は肥満の人々では、心血管疾患、糖尿病、及び腎性死亡のより高いリスクと関連付けられることが示された(Mendyら、Int. J. Epidemiol. 2018年12月1日;47巻(6号):1821年)。
2015年には、未入院米国成人の10.5%(2,560万人)がOAを有することが報告された。OAを有する成人は、米国未入院成人の総医療費の22.5%に相当する3,184億ドルの医療費を負担し、101億ドルの賃金損失を被った。OA有病率は、年齢(≧65歳、25.3%)、性別(女性13.3%;男性7.5%)、人種/民族(白人13.3%;アフリカ系アメリカ人7.5%;ラテン系4.2%;その他5.3%;P<0.001)により有意に異なっていた。OAを有する成人のほぼ3分の1(32.7%)が処方オピオイドを受けたのに対し、OAを有していない成人は13.8%だった(P<0.001)。回帰分析では、OAを有する成人は、OAを有していない成人よりも、中程度(調整後オッズ比[AOR]=1.99[95%CI:1.65~2.40])又は重度(AOR=2.59[2.21~3.04])のPIA、任意の機能制限(AOR=2.51[2.21~2.85])、及びSF-12身体的コンポーネントサマリー(SF-12 Physical Component Summary)でのより不良なHRQoL(調整後ベータ=-3.88[SE:0.357];P<0.001)を報告する可能性が有意により高いことが示された。OAを有する成人の調整後増分年間総医療費及び賃金損失は、OAを有していない成人と比較して、それぞれ1人当たり1778ドル(7585ドル対5807ドル)及び189ドル(740ドル対551ドル)であり、450億ドルの推定全国増分直接費及び17億ドルの推定全国増分間接費にのぼる(DOI:https://doi.org/10.1016/j.jval.2018.04.012)。
現在、組織構造病理(軟骨、骨、滑膜、半月板、靭帯)に対する有益効果及び急性でも慢性でもない疼痛に対する迅速な軽減効果の両方を示す、利用可能な変形性関節症治療は存在しない。
GDF-5(Hottenら、1994年、Biochem.Biophys Res.Commun.204巻、646~652頁、NCBI受入番号NM_000557、NP_000548)は、幾つかの組織において細胞増殖、分化、及び/又は組織形成を促進することが示されているモルフォゲンである。このタンパク質は、骨形態形成タンパク質-14(BMP-14)又は軟骨由来形態形成タンパク質-1(CDMP-1)としても知られている。GDF-5は、軟骨形成活性を示し、先天性GDF-5変異は、マウス及びヒトの指関節、手首関節、及び足首関節に欠損を引き起こす(Stormら、1994年;Thomasら、1997年)。GDF-5の発現は、最も顕著には、関節が発達することになる領域に限定されており、関節形成の最初期マーカーの1つである(Storm及びKingsley、1999年)。関節軟骨の出生後維持にはBMP受容体シグナル伝達が必要である(Rountree、2004年、PLoS Biol. 2004年11月、2(1))。
野生型GDF5治療は、軟骨及び骨の形成を誘導する。従って、アミノ酸残基399アルギニンがグルタミン酸に交換されたGDF5単一点変異体が設計された。以下ではR399Eと称されるが、R399Eは、GDF5野生型と比較して骨形成能力の低減を示し、軟骨形成能力を維持する。R399E(GDF5変異体)は、初代ブタ及びヒト変形性関節症軟骨細胞にて基質産生を増加させる(T.Mang、K.Kleinschmidt-Doerr、F.Ploeger、S.Lindemann、A.Gigout、DOI:https://doi.org/10.1016/j.joca.2018.02.176。2018年4月 26巻、増補1、S82頁)。
R399Eは、国際公開第2013083649号パンフレットにて特許請求されており、軟骨形成を誘導する能力の向上を示す。この発明の組換えGDF-5関連タンパク質は、軟骨の形成は望ましいが骨の形成は望ましくない疾患の治療に使用するために特に好適である。従って、この発明の別の態様は、そうした疾患の治療における、指定のタンパク質、核酸、ベクター、又は宿主細胞の使用である。特に、上記タンパク質、核酸、ベクター、又は宿主細胞は、軟骨欠損の治療、又は変形性関節症を含む、軟骨の外傷性断裂又は剥離の治療に使用するためのものである。
GDF-5の分野
骨形成を誘導する能力の向上及び骨形成を誘導する能力の低減を示すGDF-5関連タンパク質。こうした新規タンパク質は、骨組織の形成が望ましくない軟骨欠損の治療に特に有用である。
滑膜関節は、骨格の生体力学的機能に不可欠である。関節炎疾患で観察されるような機能不全は、直接的に、生活の質の深刻な喪失をもたらす。従って、関節生物学は、長年にわたった広範な研究の焦点であり、関節解剖学及び組織学並びに関節機能及び維持における関節軟骨及び他の成分の生体力学的特性及び役割の理解に結び付いている。
GDF-5(Hoettenら、1994年、Biochem.Biophys Res.Commun.204年、646~652頁)は、幾つかの組織において細胞増殖、分化、及び/又は組織形成を促進することが示されているモルフォゲンである。このタンパク質は、形態形成タンパク質MP52、骨形態形成タンパク質-14(BMP-14)、又は軟骨由来形態形成タンパク質-1(CDMP-1)としても知られている。GDF-5は、軟骨形成活性を示し、先天性GDF-5変異は、マウス及びヒトの指関節、手首関節、及び足首関節に欠損を引き起こす(Stormら、1994年;Thomasら、1997年)。GDF-5の発現は、最も顕著には、関節が発達することになる領域に限定されており、関節形成の最初期マーカーの1つである(Storm及びKingsley、1999年)。関節軟骨の出生後維持にはBMP受容体シグナル伝達が必要である(Rountree、2004年、PLoS Biol. 2004年11月、2(11))。GDF-5は、GDF-6及びGDF-7と密接に関連している。こうした3つのタンパク質は、TGF-βスーパーファミリーの異なる部分群を形成しており、従って同等の生物学的特性及び極めて高度なアミノ酸配列同一性を示す(つまり、Wolfmanら、1997年、J.Clin.Invest.100巻、321~330頁を参照)。ファミリーメンバーは全て、最初はより大きな前駆体タンパク質として合成され、その後、C末端からおよそ110~140アミノ酸の塩基性残基のクラスターにてタンパク質分解切断を受け、従ってN末端プロドメインからC末端成熟タンパク質部分が放出される。成熟ポリペプチドは構造的に関連しており、こうしたタンパク質の特徴的な3次元「システインノット」モチーフを担う6つ又は7つの標準システイン残基を含む保存された生物活性ドメインを含む。天然GDF-5関連タンパク質はホモ二量体分子であり、主に、I型及びII型セリン/スレオニン受容体キナーゼで構成される特異的受容体複合体との相互作用を介して作用する。その後、受容体キナーゼは、Smadタンパク質を活性化し、次いでSmadタンパク質は、核内にシグナルを伝播させて標的遺伝子発現を調節する。
GDF-5/-6/-7部分群のメンバーは、主に骨及び軟骨の重要な誘導因子及び調節因子であることが繰り返し実証されている(Chengら、2003年、J.Bone and Joint Surg.85A巻、1544~1552頁;Settleら、2003年、Developm. Biol. 254巻、116~130頁)。GDF-5及び関連タンパク質は、I型及びII型と称される2種類の膜結合型セリン-スレオニンキナーゼ受容体に結合してオリゴマー化する。リガンドが結合すると、こうした複合体は、転写因子のSMADファミリーのメンバーをリン酸化することによりシグナルを伝達し、転写因子のSMADファミリーのメンバーは、活性化されると核に進入し、応答性遺伝子の転写を調節する(Massague、1996年)。最近の実験では、骨格パターン形成に、2つの異なるI型受容体BMPR-IA及びBMPR-IBの関与が示唆されている。両受容体は、正常発生中に動的パターンで発現される。幾つかの四肢構造では、例えば、関節区域間及び軟骨膜では、BMPR-IA及びBMPR-IBの重複発現が観察される(Mishinaら、1995年;Zouら、1997年;Baurら、2000年)。BMPR-IA及びBMPR-IBの発現パターンに関して、GDF-5シグナル伝達は、BMPR-IA及びBMPR-IBの両方との相互作用により達成されるはずである(Changら、1994年;Zouら、1997年)。bmpr-1b遺伝子のヌル変異は、GDF-5を欠くマウスに見られるものとよく似た欠損を骨及び関節形成に欠損を有する生存可能なマウスを生み出すが(Storm及びKingsley、1996年;Yiら、2000年)、bmpr-Ia/マウスは、胚形成の初期に死亡することが知られている(Mishinaら、1995年)。しかしながら、GDF-5-Cre駆動因子の制御下にあるBMPR-IAの条件付きノックアウトは、胚致死性を迂回し、正常に形成された関節を有する生存可能なマウスを生み出す。しかし、出生後、関節内の関節軟骨は、変形性関節症を彷彿とさせるプロセスで摩耗する。これは、軟骨恒常性及び修復におけるこの受容体の重要性を指し示している(Rountreeら、2004年)。
GDF-5関連タンパク質ファミリーの野生型タンパク質の活性は、一般に、軟骨及び骨の形成をもたらす。しかしながら、軟骨の形成は好ましいが、骨組織の形成は望ましくない様々な医学的状態が存在する。例えば、関節欠損の場合、軟骨の形成は望ましいが、骨化は回避されるべきであることは明らかである。
驚くべきことに、軟骨形成を誘導する能力の向上及び骨形成を誘導する能力の低減を示すGDF-5関連タンパク質のバリアントを提供することが可能であることが見出された。これは、BMPR-IBに対する親和性の増加及び/又はBMPR-IAに対する親和性の低減を示すように、GDF-5関連タンパク質(R399E)を改変することにより達成することができ、最も近い先行技術である国際公開第2013083649号パンフレットの主題である。
野生型GDF-5は、in vitroでは、BMPR-IA(KD約1~1.1nM)と比較して約40~120倍より高い親和性(KD約8~27pM)でBMPR-IBに結合する。BMPR-IBに対する親和性は増加するが、BMPR-IAに対する親和性は低減されるように、GDF-5関連タンパク質の結合親和性を改変することにより、軟骨形成は促進されるが骨の形成は低減されることが見出された。これは、GDF-5関連タンパク質のアミノ酸配列におけるBMPR-IB及び/又はBMPR-IA結合部位に関連する1つ又は複数のアミノ酸残基の特定の置換により達成することができる。
特定の置換を有するGDF-5関連タンパク質の結合親和性は、ヒト野生型GDF-5関連タンパク質、特にヒト野生型GDF-5の結合親和性と比較される。
誤解及び曖昧さを回避するために、本明細書で頻繁に使用される一部の用語を、以下の通り定義及び例示する。
「システインノットドメイン」という用語は、本明細書で使用される場合、つまりヒトGDF-5などのTGF-ベータスーパーファミリータンパク質の成熟部分に存在し、システインノットとして知られている3次元タンパク質構造を形成する、周知で保存されたシステインリッチアミノ酸領域を意味する。このドメインでは、互いに対するシステイン残基の対応する位置が重要であり、生物学的活性を喪失しないためにはわずかな変化しか許容されない。このタンパク質の生物学的機能にはシステインノットドメイン単独で十分であることが実証されている(Schreuderら(2005年)、Biochem Biophys Res Commun.329巻、1076~86頁)。システインノットドメインのコンセンサス配列は、当技術水準にて周知である。本明細書で規定される定義によると、タンパク質のシステインノットドメインは、対応するタンパク質のシステインノットに寄与する最初のシステイン残基から始まり、対応するタンパク質のシステインノットに寄与する最後のシステインに続く残基で終わる。
「GDF-5関連タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト成長/分化因子5(hGDF-5)と非常に密接に関連する、あらゆる天然に存在するか又は人工的に作出されたタンパク質を意味する。全てのGFD-5関連タンパク質に共通する特徴は、ヒトGDF-5の102個アミノ酸システインノットドメイン(アミノ酸400~501)に対して少なくとも60パーセントのアミノ酸同一性を有するシステインノットドメインの出現である。このタンパク質の生物学的機能にはこれで十分である。「GDF-5関連タンパク質」という用語は、脊椎動物種又は哺乳動物種に由来するGDF-5、GDF-6、及びGDF-7タンパク質の群に属するタンパク質、並びにそうしたタンパク質がヒトGDF-5のシステインノットドメインと上記で言及されている同一性パーセンテージを示す限り、それらの組換えバリアントを含む。60パーセントの限界値は、GDF-5/-6/-7群のタンパク質のメンバー並びにそれらのバリアントを、より遠縁のGDF及びBMPなどの更なるタンパク質と区別するために十分に好適である。ヒトGDF-5、ヒトGDF-6、及びヒトGDF-7の102個アミノ酸システインノットドメインを比較すると、こうしたタンパク質間に高度なアミノ酸同一性があることが明らかになる。ヒトGDF-6は、ヒトGDF-5のシステインノットドメインと87個(85パーセント)の同一残基、ヒトGDF-7は83個(81パーセント)の同一残基を共有する。これまでに識別されている、他の脊椎動物種及び哺乳動物種由来のGDF-5/-6/-7分子のそれぞれのドメインも、ヒトGDF-5と比較した場合、少なくとも75パーセント(79パーセント~99パーセント)の非常に高い同一性パーセンテージを示す。対照的に、GDF-5/-6/-7部分群に属していないGDF及びBMPは、60パーセント未満のはるかにより低い同一性値を示す。
脊椎動物及び哺乳動物GDF-5関連タンパク質の非限定的な例は、ヒトGDF-5の前駆体及び成熟タンパク質(国際公開第95/04819号パンフレットではMP52として、Hottenら、1994年、Biochem.Biophys Res.Commun.204巻、646~652頁ではヒトGDF-5として開示されている)、組換えヒト(rh)GDF-5/MP52(国際公開第96/33215号パンフレット)、MP52Arg(国際公開第97/06254号パンフレット);HMWヒトMP52s(国際公開第97/04095号パンフレット)、CDMP-1(国際公開第96/14335号パンフレット)、マウス(Mus筋肉)GDF-5(米国特許第5,801,014号明細書)、ウサギ(オリクトラグス・クニクルス(Oryctolagus cuniculus))GDF-5(Sanyalら、2000年、Mol Biotechnol.16巻.203~210頁)、ニワトリ(ガルス・ガルス(Gallus gallus))GDF-5(NCBI受入番号NP_989669)、アフリカツメカエル(ゼノパス・ラエビス(Xenopus laevis))GDF-5(NCBI受入番号AAT99303)、モノマー性GDF-5(国際公開第01/11041号パンフレット及び国際公開第99/61611号パンフレット)、ヒトGDF-6/BMP-13(米国特許第5,658,882号明細書)、マウスGDF-6(NCBI受入番号NP_038554)、GDF-6/CDMP-2(国際公開第96/14335号パンフレット)、ヒトGDF-7/BMP-12(米国特許第5,658,882号明細書)、マウスGDF-7(NCBI受入番号AAP97721)、GDF-7/CDMP-3(国際公開第96/143335号パンフレット)である。置換、付加、及び欠失などの追加の変異を有するGDF-5関連タンパク質も、こうした追加の変異が生物学的タンパク質活性を完全に消失させない限り、本発明により包含される。
背景技術に関する考察
OA患者の疼痛及び炎症を迅速に及び持続的に、並びに同時に関節組織及び形態学的特徴(軟骨、骨、滑膜、半月板、靭帯)の構造変化を継続的に、両方とも治療するために利用可能な薬物は存在しない。
変形性関節症の症状及び主に疼痛の軽減を支援することはできるが、構造に対しては効果を示さないか又は否定的な効果を示すことさえある薬剤としては、以下のものが挙げられる:
アセトアミノフェン。アセトアミノフェン(タイレノールなど)は、軽度~中程度の疼痛を有する、変形性関節症の一部の人々を助けることが示されている。推奨用量よりも多くのアセトアミノフェンを服用すると、肝臓損傷を引き起こす可能性がある。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)。推奨用量で服用したイブプロフェン(アドビル、モトリンIBなど)及びナプロキセンナトリウム(アリーブなど)などの市販のNSAIDは、典型的には、変形性関節症疼痛を軽減する。より強力なNSAIDは処方箋に基づいて入手可能である。NSAIDは、胃の不調、心臓血管の問題、出血の問題、並びに肝臓及び腎臓の損傷を引き起こす可能性がある。患部関節を覆う皮膚に塗布されるゲルとしてのNSAIDは、副作用がより少なく、疼痛を同様に軽減することができる。
デュロキセチン(シンバルタ)。通常は抗うつ薬として使用されるこの薬剤は、変形性関節症疼痛を含む慢性疼痛の治療にも承認されている。
コルチゾン注射。コルチコステロイド薬剤の注射は、関節の疼痛を軽減することができる。患者が毎年受けることができるコルチゾン注射の数は、この薬剤が経時的には関節損傷を悪化させる可能性があるため、一般に3~4回の注射に制限されている。
抗NGF(神経成長因子)抗体(タネズマブ、Pfizer社)は、現在、OAに関して臨床開発中である。この化合物は、OA患者の疼痛治療に非常に効率的であるが、他の鎮痛薬のように、この疾患の根本原因には有益な効果を示さない。対照的に、抗NGFで治療された相当数の患者では、疾患進行が有意に加速した(RPOA=急速進行OA)。RPOAの全体発生率は、タネズマブ5mg群では6.3パーセント、タネズマブ2.5mg群では3.2パーセント、NSAID群では1.2パーセントだった。本発明者らは、ラット及びウサギのOA動物モデルにおいて、抗NGF治療のこうした否定的な効果を確認した。
OA疼痛を治療するために利用可能な鎮痛薬は、著しい副作用及び有害事象を示す。これらはいずれも、疾患進行を緩徐することも阻止することもなく、関節構造に対して有益な効果を示すこともない。これらはいずれも、軟骨基質産生に対して治癒的な生物学的活性も有益な生物学的活性も示さず、関節恒常性の病理学的シフトのバランスを取り戻すこともない。一部は(タネズマブ)、OA患者の疾患進行を加速させさえした。
他の利用可能なOA療法は、外科的手技であるか、又は疾患修飾効果を示さない:
潤滑剤注射。ヒアルロン酸の注射は、膝に幾らかのクッション性を提供することにより沈痛をもたらすことができるが、研究によると、こうした注射は、プラセボよりも大きな軽減をもたらさず、構造変化及び組織病理に全く効果を示さないことが示唆されている。
関節置換。関節置換術(関節形成術)では、外科医が損傷した関節表面を除去し、それらをプラスチック部品及び金属部品で置き換える。外科的リスクとしては、感染症及び血栓が挙げられる。人工関節は摩耗又は緩む可能性があり、最終的には交換が必要となる場合がある。
OAに関して臨床開発中である構造修飾因子が1つ存在するが、この分子は、OA疼痛に有益な効果を示さない。線維芽細胞成長因子18(FGF18、スプリフェルミン、Merck社)は、軟骨細胞の増殖を誘導することが示された。スプリフェルミンは、第II相治験において、2年後にOA患者の総大腿脛骨関節軟骨厚を0.5mm増加させた。どのスプリフェルミン群でも、プラセボと比較して、総WOMAC疼痛スコアの基線からの平均絶対変化に統計的有意差はなかった。
OA疾患進行を緩徐又は停止させるか、軟骨基質産生に治癒的な又は有益な生物学的活性を示すか、関節恒常性の病理学的シフトのバランスを取り戻し、同時にOA疼痛に影響を及ぼす治療は存在しない。
有効な疾患修飾OA治療は、特に全身性又は解剖学的な変化に関連付けられる場合、繰り返し投与する必要があると考えられるため、生涯にわたる治療として安全でなければならない。全身治療後の高い全身薬物曝露は、望ましくない全身的影響又は非疾患関節の軟骨、滑膜、及び骨に対する影響のリスクを増加させるだろう。一方で、関節内注射は、年間6回よりも多くの頻度で推奨されることはない。
OAの構造及び疼痛に有益な効果を示し、断続的な治療で有効な化合物は存在しない。
R399Eは、疼痛に対して迅速で持続的な効果を示し、同時に同じ用量で、軟骨破壊を低減し、軟骨基質の産生を誘導し、OA動物モデル及びヒト組織の関節恒常性を正常化することにより、疾患進行を阻止する最初の治療手法である。OAの疼痛に対するR399Eのin vivoでの有益な効果は、2つの種で確認された(図1及び2)。また、OAの軟骨構造に対するR399Eの有益な効果は、2つの種で確認された(図15、16、17)。他の既知分子、タンパク質、又は先行技術の組合せは、OAの疼痛及び軟骨構造に対して有益な効果を示さない。更に、R399Eは、健常動物に由来する組織及び初代細胞を使用した関連in vitro実験、及び関節恒常性の正常化を可能にするヒトOA関節置換術において、炎症及びサイトカイン放出を低減する(図8、9、10、11、13)。R399Eは、関連健常動物及びヒトOA in vivo実験においてPGE2放出を阻害し、更にはOA半月板細胞においてはNGF誘導性PGE2産生を阻害する(図8、12)。PGE2は、軟骨分解及び疼痛の重要なメディエーターである(Leeら、Gene.2013年9月25日;527巻(2号):440~7頁)。R399Eは、GAGの放出を防止することにより抗異化効果を示し(Chunら、Tissue Eng. Regen Med 2019年7月5日;16巻(4号):385~393頁)、ヒトOA組織及び細胞培養並びに健常ブタ細胞でのin vitro実験では、ADAMTS5、MMP13、及びMMP1を放出し発現を低減させる(図8、13、14)。ADAMTS5のようなメタロプロテイナーゼ及びMMP13のようなマトリックスメタロプロテイナーゼは、OAの発症に重要な役割を果たす(Bondesonら、Clin Exp Rheumatol.2008年1月~2月;26巻(1号):139~45頁、及びXieら、ChemMedChem.2017年8月8日;12巻(15号):1157~1168頁)。R399Eは、健常動物及びヒトOA組織及び細胞培養において同化促進効果を示す(図18、19、20、21、22)。R399Eは、免疫組織学及び遺伝子発現分析では、グリコサミノグリカン及びヒドロキシプロリン合成の誘導、並びにコラーゲン-II、コラーゲン-VI、Sox9、及びアグリカンの遺伝子発現を示す(図21)。ヒトOAの軟骨細胞細胞培養物をR399Eで処理すると、R399Eの投与頻度が低い場合でも軟骨形成に効果を示す。
R399Eの同化促進効果は、proC2、proC6、及びCILP-2のような、OAに肯定的な傾向を示すことが想定されるバイオマーカーの上方制御によっても示されている。これは、図23ではヒトOA組織に関して示されている。
R399Eは、軟骨へと容易に浸透し、IA注射の7日後に細胞付近の軟骨基質内に見出すことができる。IAウサギPK研究では、R399Eは、滑液及び軟骨に見出され、6μgの注射R399Eが3日目までに検出可能だった。60μgのR399Eの注射は、滑液では14日間、軟骨では最大7日間検出することができた。GDF5野生型と比較して分子の安定性が増加しているにも関わらず、血清半減期は3.20時間を超えず、ミニブタ及びウサギでは72時間まで定量可能だった。また、薬物動態学的及び非臨床安全性研究では、ラット、ミニブタ、及びウサギにIA及びIV適用しても安全性プロファイルには問題がなかった。生理学的pHでの生物学的液体への溶解度がおよそ1μg/mLと低いことを合わせて考えると、本発明者らは、安定性の増加による安全性リスクの増加は想定していない。
R399Eによる断続的な局所(関節内)治療は、疼痛及び構造に対して有益な効果を示すのに十分であり、全身曝露は低く、非常に短期間である。GDF5野生型とは対照的に、R399Eは、軟骨が存在すると周囲液体から急速に吸収される。これにより、R399Eによる関節内治療が非常に効果的になるだけでなく、安全にもなる。
R399Eは、構造に対して有益な効果をもたらすものと同じ用量及びレジメンで、トランスレーショナル変形性関節症モデルにおいて疼痛に対して迅速で持続的な効果を示す。薬力学的効果を、疼痛(抗NGF抗体、トリアムシノロン)又は構造(スプリフェルミン)のいずれかに対して臨床的に効果的である薬物の薬力学的効果と比較することができるモデルを使用した。
本発明の好ましい実施形態は、炎症及び疼痛を低減し、関節組織構造を改善するために、関節炎症を伴う及び伴わない変形性関節症患者の関節にR399EをIA注射することである。
更に、R399Eは、局所的サイトカイン及びプロスタグランジンE2産生を低減し、それにより関節の炎症及び疼痛を低減することになる。R399Eは、局所的ADAMTS5及びMMP-13産生を低減し、それにより軟骨切断を防止するだけでなく、DAMP放出を防止することにより関節炎症及び疼痛を更に低減することになり、それによりニューロンのDAMP感作を防止することもできる。また、サイトカイン産生の低減は、BMPR発現に対する下方制御効果を低減することにより、内因性BMP及び治療自体に対する応答性を回復させることができる。R399Eは、変形性関節症軟骨細胞の細胞外基質形成を直接的に誘導し、それにより変形性関節症関節の構造的修復を支援することができる。
外傷性事象後にR399Eを関節にIA注射して、軟骨分解又は半月板分解を防止し、炎症を低減させる。これにより、後に変形性関節症を発症するリスクが低減されることになる。
本発明は、BMPR-IB及び/又はBMPR-IAとの結合に関与するGDF-5関連タンパク質のアミノ酸配列の領域に特定の修飾をなすことより、軟骨形成を誘導する能力が向上し、骨形成を誘導する能力が低減するようにこのタンパク質を変更することが可能であるという本発明者らの知見に基づく。
BMPR-IBに対する親和性が増加したタンパク質及び/又はBMPR-IAに対する親和性が低減したタンパク質は、骨の形成を低減させつつ、軟骨形成をより良好に誘導することが可能であることが見出された。こうした特性は、BMPR-IBに対する親和性の増加及びBMPR-IAに対する親和性の低減を両方とも示すタンパク質で特に顕著である。
本発明のGDF-5関連タンパク質は、化学修飾又は遺伝子工学技術により得ることができ、組換えタンパク質が好ましい。タンパク質は、GDF-5関連タンパク質のアミノ酸配列中の、BMPR-IB及び/又はBMPR-IA結合部位に関連する少なくとも1つのアミノ酸残基を置き換えることにより得ることができる。
OA又は他の炎症性疾患を罹患している患者への注射に使用されるタンパク質は、399位のアルギニン残基がグルタミン酸に交換されているヒトGDF-5のバリアントである(R399E)。GDF-5の成熟配列を参照すると、これは、18位における置換に対応する。驚くべきことに、このタンパク質バリアントは、BMPR-IAに対する親和性がかなり低減されていることが見出された。対照的に、BMPR-IBに対する親和性はほとんど影響を受けない。
好ましくは、本発明のGDF-5関連タンパク質(R399E)は、「単離された」タンパク質として存在する。これは、本発明のタンパク質が、単離されたタンパク質の天然供給源に存在する他のタンパク質及びペプチド分子(例えば、天然供給源のタンパク質の他のポリペプチド)から実質的に分離されていることを意味する。例えば、組換え発現ペプチドは、単離されているとみなされる。本発明の好ましい実施形態によると、バリアントタンパク質は、組換えタンパク質である。更に、ペプチドは、人為的な介入により変更されている場合又はその天然供給源ではない生物により発現された場合も、単離されているとみなされる。更に、「単離された」タンパク質は、天然で付随する他の細胞性物質、又は組換え技法により産生される場合は細胞培養培地、又は化学合成の場合は化学前駆体若しくは他の化学物質の一部を含まない。特に、未精製の混合物又は組成物は、「単離された」タンパク質の定義から除外される。
本出願の更なる主題は、本発明による組換えGDF-5関連タンパク質又は核酸又はベクター又は宿主細胞を含む医薬組成物である。原則として、GDF-5関連タンパク質の状況で既に公開されているあらゆる医薬組成物が好適である。発現ベクター又は宿主細胞は、医薬組成物中の活性物質として有利であるとみなすことができる。また、本発明によるタンパク質と他のタンパク質との組合せを、好ましい医薬組成物に使用することができる。無論、本発明は、例えば、薬理学的に許容される添加剤又は担体のような更なる物質を含む医薬組成物も含む。製剤は、抗酸化剤、保存剤、着色剤、香味料及び乳化剤、懸濁剤、溶媒、充填剤、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤、及び/又は医薬アジュバントを含んでいてもよい。例えば、好適な担体又はビヒクルは、注射用の水、生理食塩水、又は血清アルブミンなどの好適な担体タンパク質と混合された生理食塩水であってもよい。本発明の組成物を調製するための好ましい抗酸化剤は、アスコルビン酸である。
医薬組成物の溶媒又は希釈剤は、水性又は非水性のいずれであってもよく、pH、浸透圧、粘度、透明度、規模、無菌性、安定性、溶解速度、又は製剤の香気を改変及び/又は維持することが可能である他の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。同様に、本発明による医薬組成物には、薬学的に効果的な物質の放出速度を改変及び/又は維持するために他の成分が含まれていてもよい。そのような改変成分は、非経口投与用の投薬量を単位剤形又は多用量剤形のいずれかに製剤化するために当技術分野で通常使用される物質である。
本発明に従って調製される最終製剤化医薬組成物は、溶液、懸濁物、ゲル、エマルジョン、固形物、又は脱水若しくは凍結乾燥粉末の形態で、滅菌バイアルに保存することができる。こうした製剤は、すぐに使用できる形態、又は例えば投与前に再構成が必要である凍結乾燥粉末の場合の形態のいずれかで保存することができる。上記の及び更なる好適な医薬製剤は当技術分野で公知であり、例えば、Gus Remington’s Pharmaceutical Sciences(18版、Mack Publishing Co.、Eastern、ペンシルベニア州、1990年、1435~1712頁)に記載されている。そのような製剤は、薬学的に効果的な成分の物理的状態、安定性、in vivo放出速度、及びin vivoクリアランス速度に影響を及ぼすことができる。
他の効果的な投与形態は、非経口の徐放性、つまり遅延性製剤、吸入ミスト、又は経口的活性製剤を含む。例えば、徐放性製剤は、ポリマー性化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸など)又はリポソームの粒子状調製物に結合又は組み込まれているタンパク質を含んでいてもよい。
また、本発明による医薬組成物は、例えば、輸注又は注射による非経口投与のために製剤化されていてもよく、また、徐放性又は持続性循環製剤を含んでいてもよい。そのような非経口的に投与される療法用組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤中に薬学的に効果的な成分を含む、発熱物質を含まない非経口的に許容される水性溶液の形態である。
医薬組成物は、例えば、軟骨の再生が意図されている場合は、基質材料を含んでいてもよい。生体適合性基質材料内及び/又は上に適用される場合、タンパク質、核酸、発現ベクター、又は宿主細胞が有利である。基質材料は、本明細書で使用される場合、細胞動員、付着、増殖、及び分化のための足場として、及び/又は本発明の組換えGDF-5関連タンパク質の潜在的な送達及び貯蔵デバイスとして作用する担体又は基質を意味する。固体基質とは対照的に、担体は、明確に画定された表面を有しておらず、特定の形状を欠くアモルファス材料、つまりアルキルセルロース、プルロニック(登録商標)、ゼラチン、ポリエチレングリコール、デキストリン、植物油、糖、並びに他の液体及び粘性物質で構成される。
例示的な基質材料は、例えば、国際公開第98/21972号パンフレットに記載されている。そうした基質材料も本発明によるタンパク質に等しく好適である。基質材料は、例えば外科的に患者へと移植することができ、その場合タンパク質又はタンパク質をコードするDNAは、基質材料からゆっくりと放出され得、その後長期間にわたって効果的であり得る。生体適合性であり、目的の領域又は使用適応症のために選択される限り、全てのタイプの基質材料が本発明に有用である。基質材料は、天然材料、改変天然材料であってもよく、同様に合成材料であってもよい。形態形成タンパク質の全ての既知基質が包含される。例えば、細胞外基質は、例えば、I、II、V、IX、X、XI、及びXIII型のような種々のコラーゲン、例えば、コンドロイチン硫酸、ビグリカン、デコリン、及び/若しくはヒアルロン酸のようなさらなるプロテオグリカン及びグリコサミノグリカン、又は例えば、オステオポンチン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、及び軟骨基質タンパク質のような非コラーゲンタンパク質を含む。また、言及されている天然材料は全て、人工的に改変された形態で使用することができる。有用な担体及び基質の非限定的なリストについては、Kirker-Head、2000年、Advanced Drug Delivery 43巻、65~92頁を更に参照されたい。
更なる可能性は、本発明による組換えGDF-5関連タンパク質を含むリポソーム製剤に関する。上記製剤で使用されるリポソームは、当業者に一般的に公知である。特に、好ましいリポソーム製剤は、国際公開第2008/049588号パンフレットに開示されている。より好ましいリポソーム製剤は、国際公開第2008/049588号パンフレットの9~13ページに記載されている。
更に、本発明のGDF-5バリアントタンパク質(R399E)は、他の薬学的に活性な物質と組み合わせて投与することができる。上記の薬学的に活性な物質は、例えば、局所的に効果的な鎮痛剤などの鎮痛剤、又はプロテアーゼ阻害剤のような、軟骨の形成が望ましい疾患に対して肯定的な効果を示す他の物質であってもよい。これらは、考え得る添加剤の単なる例であり、当業者であれば、医薬調製物に使用されているか、又は一般に安全であるとみなされている他の賦形剤を容易に添加することができる。
軟骨形成を誘導する能力が向上されているため、本発明の組換えGDF-5バリアントタンパク質は、軟骨の形成は望ましいが骨の形成は望ましくない疾患の治療に使用するために特に好適である。
従って、本発明の別の態様は、こうした疾患の治療における、本タンパク質(R399E)、核酸、ベクター、又は宿主細胞の使用である。特に、本タンパク質、核酸、ベクター、又は宿主細胞は、軟骨欠損の治療に使用するための、又は軟骨の外傷性断裂若しくは剥離、特に例えば摩耗に起因する加齢性軟骨欠損、変形性関節症、関節リウマチ、半月板傷害若しくは靭帯断裂のようなスポーツ疾患関連傷害、軟骨異栄養症のような軟骨に影響を及ぼす可能性のある疾患、成長障害及びその後の軟骨骨化を特徴とする疾患、軟骨形成不全、肋軟骨炎、椎間板ヘルニア及び椎間板修復、再発性多軟骨炎の治療に、軟骨腫又は軟骨肉腫のような良性若しくは悪性のいずれかの腫瘍に関連付けられる軟骨欠損の修復に使用するためのものである。
別の態様は、軟骨の形成は望ましいが骨の形成は望ましくない疾患を治療するための方法であって、本発明によるタンパク質、核酸、ベクター、又は宿主細胞を、そのような治療を必要とする患者に投与するステップを含む方法である。
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、疾患、障害、若しくは状態、又はそのような用語が適用されるそのような疾患、障害、若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の進行を逆転、緩和、又は阻害することを指す。また、本明細書で使用される場合、「治療する」は、未治療対照集団と比較して、又は治療前の同じ哺乳動物と比較して、哺乳動物において疾患、障害、又は状態が発生する確率又は発生率を減少させることを指すことができる。例えば、本明細書で使用される場合、「治療する」は、疾患、障害、若しくは状態を予防することを指し、疾患、障害、若しくは状態の発症を遅延若しくは予防すること、又は疾患、障害、若しくは状態に関連付けられる症状を遅延若しくは予防することを含んでいてもよい。また、本明細書で使用される場合、「治療する」は、哺乳動物が、疾患、障害、若しくは状態に苦痛を感じる前に、疾患、障害、若しくは状態、又はそのような疾患、障害、若しくは状態に関連付けられる症状の重症度を低減することを指すことができる。苦痛を感じる前の疾患、障害、又は状態の重症度のそのような予防又は低減は、投与時に疾患、障害、又は状態に苦痛を感じていない対象への、本明細書に記載の通り本発明の組成物を投与することに関する。また、本明細書で使用される場合、「治療する」は、疾患、障害、若しくは状態の再発、又はそのような疾患、障害、若しくは状態に関連付けられる1つ若しくは複数の症状の再発を予防することを指すことができる。
ラット変形性関節症モデルにおける疼痛読み取りを示す図である。 外科的ラット変形性関節症モデルの後期慢性期での疼痛に対する数日以内の有意な効果。 ラット変形性関節症モデルにおける疼痛読み取りを示す図である。 ラットACLT+pMX OAモデルでは、6週間毎のIA治療レジメンは、手術1週間後の初期で治療を開始すると、4週間毎又は2週間毎の治療レジメンよりも有利である(B)。 ウサギ変形性関節症モデルにおける疼痛読み取りを示す図である。 R399Eによる最初のIA注射の6時間後の、ウサギACLT+pMx変形性関節症モデルにおける疼痛に対する有意な効果 基線インキャパシタンス測定を手術前に2回行った。ウサギの右膝関節のACLT+pMx膝手術により0週目にOAを誘導した。1週目にR399Eを関節内(IA)注射し、6時間後に静的体重負荷を測定した。体重負荷は、手術及び注射した右後肢にかかる圧力を左未手術後肢と比較してプレートで測定する非接触型静的インキャパシタンス測定法を用いて測定した。データは、左後肢に対して右後肢にかかる体重のパーセントであり、50%は、両肢に均等な負荷がかかっていることに相当し、0%は未手術左肢にのみ負荷がかかっていることに相当する。 ウサギ変形性関節症モデルにおける疼痛読み取りを示す図である。 最初の注射の6時間後のウサギACLT+pMx変形性関節症モデルにおける疼痛に対する有意な効果を第2の独立研究で確認し、1回のR399E注射の効果を、臨床的に効果的なトリアムシノロンと比較した。 基線インキャパシタンス測定を手術前に2回行った。ウサギの右膝関節のACLT+pMx膝手術により0週目にOAを誘導した。1週目にR399Eを関節内(IA)注射し、6時間後に静的体重負荷を測定した。体重負荷は、手術及び注射した右後肢にかかる圧力を左未手術後肢と比較してプレートで測定する非接触型静的インキャパシタンス測定法を用いて測定した。データは、左後肢に対して右後肢にかかる体重のパーセントであり、50%は、両肢に均等な負荷がかかっていることに相当し、0%は未手術左肢にのみ負荷がかかっていることに相当する。効果量を、臨床的に効果的なトリアムシノロン治療と比較した。1.41mgトリアムシノロンが、代謝体重、滑液容積、及び軟骨表面積に基づくヒト等価用量計算に相当する。 ウサギ変形性関節症モデルにおける疼痛読み取りを示す図である。 最初の注射後の最初の2週間中のOAウサギモデルにおけるOA疼痛に対する1回のR399E注射又はトリアムシノロン治療の効果。 基線インキャパシタンス測定を手術前に2回行った。ウサギの右膝関節のACLT+pMx膝手術により0週目にOAを誘導した。1週目及び3週目にR399Eを関節内(IA)注射し、常に注射前に及び最初の注射の6時間後に静的体重負荷を測定した。体重負荷は、手術及び注射した右後肢にかかる圧力を左未手術後肢と比較してプレートで測定する非接触型静的インキャパシタンス測定法を用いて測定した。データは、左後肢に対して右後肢にかかる体重のパーセントであり、50%は、両肢に均等な負荷がかかっていることに相当し、0%は未手術左肢にのみ負荷がかかっていることに相当する。効果量を、臨床的に効果的なトリアムシノロン治療と比較した。1.41mgトリアムシノロンが、代謝体重、滑液容積、及び軟骨表面積に基づくヒト等価用量計算に相当する。トリアムシノロン(Trimacinolone)。 ウサギ変形性関節症モデルにおける疼痛読み取りを示す図である。 1回のIA R399E注射のOA疼痛に対する有意な効果は、ウサギの外科的OAモデルでは、次の注射まで少なくとも2週間持続する。また、このモデルの慢性期では、R399Eは、疼痛に対して持続的で有意な効果を示す。 基線インキャパシタンス測定を手術前に2回行った。ウサギの右膝関節のACLT+pMx膝手術により0週目にOAを誘導した。手術後1、3、5、7、9、及び11週目にR399Eを関節内(IA)注射し、常に注射前に及び最初の注射の6時間後に静的体重負荷を測定した。体重負荷は、手術及び注射した右後肢にかかる圧力を左未手術後肢と比較してプレートで測定する非接触型静的インキャパシタンス測定法を用いて測定した。データは、左後肢に対して右後肢にかかる体重のパーセントであり、50%は、両肢に均等な負荷がかかっていることに相当し、0%は未手術左肢のみに負荷がかかっていることに相当する。R399Eの試験用量は全て、関節痛に対する有意な有益効果を急速に示し、効果は、次の注射まで及び研究終了まで少なくとも14日間持続した。 ウサギ変形性関節症モデルにおける疼痛読み取りを示す図である。 疼痛に対するR399Eの長期効果は、ウサギACLT+pMx OAモデルの慢性期中の臨床的に効果的な抗NGF抗体治療の効果量と同等である。 基線インキャパシタンス測定を手術前に2回行った。ウサギの右膝関節のACLT+pMx膝手術により0週目にOAを誘導した。手術後1、3、5、7、9、及び11週目にR399Eを関節内(IA)注射し、常に注射前に及び最初の注射の6時間後に静的体重負荷を測定した。体重負荷は、手術及び注射した右後肢にかかる圧力を左未手術後肢と比較してプレートで測定する非接触型静的インキャパシタンス測定法を用いて測定した。データは、左後肢に対して右後肢にかかる体重のパーセントであり、50%は、両肢に均等な負荷がかかっていることに相当し、0%は未手術左肢のみに負荷がかかっていることに相当する。R399Eの試験用量は全て、関節痛に対する有意な有益効果を急速に示し、効果は、次の注射まで及び研究終了まで少なくとも14日間持続した。慢性疼痛に対する効果量を、OA進行の慢性期の5週目及び9週目に臨床的に効果的な抗NGF-AB治療で到達された効果量と比較した。抗NGF-ABは、1週目にトリアムシノロンを受けた同じ動物に2回投与した。 ヒト変形性関節症滑膜及び軟骨外植片の共培養を示す図である。 ヒト変形性関節症滑膜及び軟骨共培養では、R399Eは、基質GAG喪失、インターロイキン-1及びプロスタグランジン2放出を低減させる。 ヒトOA軟骨細胞3Dアルギネートビーズ培養を示す図である。 リポ多糖(Lipopolysacharid)(LPS)、インターロイキン-1ベータ(IL1β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFa)、又はインターロイキン-6(IL6)で恒久的に処理された初代ヒトOA軟骨細胞(アルギネートビーズ培養、380mOsm、300ng/ml、7日間)は、骨形態形成タンパク質受容体(BMPR)発現の障害を示す。BMPRは、軟骨恒常性、骨恒常性、及び半月板恒常性に重要である。BMPRは、BMP2又はBMP7のような骨形態形成タンパク質の主な受容先であるが、GDF5及びR399Eの受容先でもある。AG-ALGIN-17-008:5人のドナーの単層ヒトOA軟骨細胞。IL1b 10ng/mL、TNFa 10ng/mL、IL6 100ng/mL、又はLPS 1μg/mLと共に48時間。統計:一元配置ANOVA、続いてダネット検定(多重比較の補正)。*は、統計的に異なることを意味し、p<0.05である。 ブタ半月板培養を示す図である。 R399Eは、ブタ半月板培養における基質喪失及びサイトカイン産生を減少させる。 滑膜細胞細胞株SW982及び初代ヒト変形性関節症滑膜細胞培養を示す図である。 滑膜細胞細胞株SW982及び初代OA滑膜細胞(C、D)におけるIL-1(A)及びIL-6(B)放出 SW982(滑膜細胞細胞株)細胞を、3つの異なる濃度のR399Eで72時間処理した。R399Eは、300ng/mlでIL-1β(A)レベル及びIL6(B)レベルを有意に低減させた。人工膝関節全置換術から得た滑膜試料から回収した初代OA滑膜細胞を、3つの異なる濃度のR399Eで72時間処理した。R399Eは、900ng/mlでIL-1β(C)を有意に低減させ、IL6レベル(D)を低減させた。 初代ヒト変形性関節症半月板細胞培養を示す図である。 R399Eは、初代ヒト半月板細胞でのNGF刺激性PGE2放出をin vitroで阻害する。 初代ブタ健常軟骨細胞培養を示す図である。R399Eは、ブタ軟骨細胞でのADAMTS5(A)発現及びMMP1(B)放出のIL-1ベータ刺激性上方制御を阻害する。 初代ヒト変形性関節症軟骨細胞培養を示す図である。R399Eは、380mOsmでの2週間アルギネートビーズ培養において、ヒトOA軟骨細胞でのMMP13発現及びADAMTS5発現を低減させる。両プロテアーゼは、コラーゲン及びアグリカンを切断することによる、OA疾患進行の主要な駆動因子である。その結果生じたDAMP(ダメージ関連分子パターン)は、疼痛(Rosenbergら、Mol Cell Biochem.2017年12月;436巻(1~2号):59~69頁。doi:10.1007/s11010-017-3078-x.Epub 2017年6月1日)及び炎症媒介性Toll様受容体に結合する。Millerら、Arthritis Rheumatol。著者原稿;PMC 2016年11月1日。最終編集形態はArthritis Rheumatol。2015年11月;67巻(11号):2933~2943頁。doi:10.1002/art.39291としと出版された。 ウサギ変形性関節症モデルにおける構造読み取りを示す図である。R399Eは、組織学(A)読み取り及びマイクロCT(B、C)読み取りでは、OAのウサギACLT+pMxモデルの軟骨構造に対して有意な有益効果を示す。マイクロCTでは、軟骨の厚さ及び容積を、造影増強関節腔の区分化により定量化した。 ヒツジ変形性関節症モデルにおける構造読み取りを示す図である。 R399Eは、OAのヒツジ関節不安定性の組織学的予備研究において、軟骨構造に対して有意な有益効果を示す。R399Eを、手術1週間後から開始して4週間毎に3回注射した。 ヒツジ変形性関節症モデルにおける構造読み取りを示す図である。 R399Eは、OAのヒツジ関節不安定性のMRI予備研究において、軟骨構造に対して有益効果を示す(統計的に有意ではない)。R399Eを、手術1週間後から開始して4週間毎に3回注射した。 初代ブタ健常軟骨細胞培養を示す図である。 恒久的なR399E処理を用いたか又は用いなかった380mOsmでのブタ健常軟骨細胞の軟骨組織アナログ(CTA、Cartilage Tissue Analogue)3D培養における細胞外基質産生は、有意な同化促進効果を示す。初代ブタ健常軟骨細胞(4週間3D培養軟骨組織アナログ、380mOsm、300ng/ml)。 初代ヒト変形性関節症軟骨細胞3Dアルギネートビーズ培養を示す図である。R399Eは、ヒトOA軟骨細胞GAG、HPro、proC2の細胞外基質産生を用量依存的に増加させる。 初代ヒト変形性関節症軟骨細胞3Dアルギネートビーズ培養を示す図である。R399Eは、ヒトOA軟骨細胞のアグリカン産生を用量依存的に増加させる。 ヒトOA軟骨細胞アルギネートビーズでのアグリカン産生に対する化合物の効果。軟骨細胞を、3人の独立ドナーから単離した。細胞を、異なる濃度の化合物で7日間刺激した。ビーズ解重合後に領域間基質のアグリカンを測定し、7日目の対照レベルと比較した。 初代ヒト変形性関節症軟骨細胞3Dアルギネートビーズ培養を示す図である。 R399Eを用いた又は用いなかった380mOsmでのヒトOA軟骨細胞の2週間アルギネート封入3D培養における細胞外基質産生。初代ヒトOA軟骨細胞(2週間アルギネートビーズ培養、380mOsm、300ng/ml) 初代ヒト変形性関節症軟骨細胞3Dアルギネートビーズ培養を示す図である。 R399Eによる断続的な治療は、経時的に有意な同化促進効果に到達するのに十分である。ヒトOA軟骨細胞を、上述のようにアルギネート中で培養し、1か月当たり1週間、2週間、3週間、若しくは4週間にわたってR399E 300ng/mLで処理したか、又は未処理のままにして、終了時にGAG含有量を定量化した。初代ヒトOA軟骨細胞(アルギネートビーズ培養、380mOsm、300ng/ml);細胞=軟骨細胞の数、GAG=アグリカンの成分、Hpro(ヒドロキシプロリン)=コラーゲンII型の成分、proC2=コラーゲンII型産生のバイオマーカー。 初代ヒト変形性関節症軟骨細胞3Dアルギネートビーズ培養を示す図である。R399Eを用いたか又は用いなかった380mOsmでのヒトOA軟骨細胞の4週間アルギネート封入3D培養における、proC2(A)、proC6(B)、及びCILP-2(C)の同化促進バイオマーカー測定。
表1 KK-ラット-14-09の治療スキーム及び研究概要
3つの異なるレジメン及び9つの用量を、ラットACLT+pMx OAモデルで試験した。研究は、1群当たりn=10匹の動物で実施した。灰色セルの数字は、関節内(IA)に適用された用量を、30μl総容積中のngで示している。歩行分析を2週間毎に実施し、vonFrey過敏症試験を15週目又は16週目に実施した。
表2 ラット変形性関節症モデルにおける疼痛読み取り
ラットOA不安定性モデルにおける異なる用量及びレジメンのIA R399E治療の症候性利益。この表には、プラセボよりも>30%良好だった効果のみが列挙されている。最も有効で持続可能な効果は、ラットに1350ngを6週間毎に2回注射した場合に見られた。
[実施例1]
外科的誘導慢性ラットOAモデルでは、1回のR399E関節内(IA)注射は、関節不安定化手術の12週間後に投与すると、後期疾患において14日以内に疼痛に対して有意な効果を示す(CB-ラット-14-029、図1を参照)。
関節の変化はOA患者に見出されるもの(軟骨損傷、骨棘、軟骨下硬化症、歩行障害、及び炎症に基づく過敏症)と同等であるため、内側半月板(pMx)の切除による前十字靭帯切断(ACLT)をげっ歯動物の不安定性OAモデルとして組織内で確立した。catwalk試験により決定した歩行困難症状を、平坦表面を歩いている間に経験した疼痛を評価するように患者に求める臨床質問票に類似の一次読み取りとして使用した(Ferreira-Gomesら、The journal of pain:official journal of the American Pain Society。2008年10月;9巻(10号):945~54頁。PubMed PMID:18650131を参照)。ACLT+pMx手術誘導性関節不安定性は、軟骨侵食を引き起こす点状異常負荷を内側脛骨顆に早くも1週間以内にもたらした(Naveenら、International journal of medical sciences。2014年;11巻(1号):97~105頁。PubMed PMID:24396291。Pubmed Central PMCID:3880996を参照)。
歩行困難は、典型的には手術1週間後に生じ(術後疼痛)、その後は無症状期間が続き、最終的には後期慢性OA期中に再発する。この後期歩行困難期は、OA疼痛期であると理解されている。R399Eの単回注射が、構造的修復効果前に症候性利益を生み出すことができるか否かを調査するため、CB-ラット-14-029では、慢性OA疼痛による歩行困難が十分に確立された際のACLT+pMx手術の12週間後に、R3399Eを単回注射(3用量IAの)として投与した。試験施設に3週間馴化させた後、ラットを偽手術(皮膚切開)又はACLT+pMx手術のいずれかに供した。OA疼痛関連症状を決定するため、手術の10、11、及び12週間後にCatWalk試験で歩行困難を決定した。歩行困難症状を示した全てのラットを4つの治療群(R399Eの用量が異なる3群及びプラセボ対照)に無作為化し、ACLT+pMx手術後の81日目にIA注射を1回行った。この3週間の期間中にACLT+pMx手術に対して最も感受性が高かった歩行パラメーターに基づき、本発明者らは、8匹のラットを無症候性であると特定し、研究から除外した。残りの40匹のラットを、歩行困難に基づいて4群に無作為化し、手術後80日目にIAプラセボ又はR399E(90ng、900ng、又は9000ng/関節)のいずれかを投与した。分析計画で事前に規定されているように、治療効果を、この単回注射の1、3、7、及び14日後にCatWalk試験で決定し、4回の測定全ての平均を群間で比較した。この期間では、6つの歩行パラメーターが、偽+プラセボ群とACLT+pMx+プラセボ群との間で有意に異なることを特定し、従ってOA疾患関連症状を説明するためにそれらを使用した。本発明者らは、この期間では注射直後に、こうした疾患関連歩行パラメーターは全て、R399Eの注射により肯定的な影響を受けたことを見出した。全ての適格なパラメーターのプラセボに対する利益パーセントは、900ng/関節のR399Eが最も効率的な用量であり、60%の症候性利益を生み出すことを明らかにした。最も低い用量[90ng/関節]は効果をほとんど示さず、最も高い用量[9000ng/関節]は、プラセボに対して40%利益を生み出した(図1を参照)。
[実施例1.1]
実施例1で使用したものと同じラットモデルでは、OA疼痛に対するR399Eの効果は、次の注射まで少なくとも6週間持続する(KK-ラット-14-009、図2及び表1及び表2を参照)。KK-ラット-14-009は、同じ外科ラットOAモデルを使用し、R399Eの慢性関節内(IA)注射を異なる用量及びレジメンで常に投与した場合、慢性ラット変形性関節症疼痛モデルにおいて症候性利益を示すか否かを調査するために設計した。軟骨基質産生に対するin vitro EC50が108ng/mlだったこと(図20を参照)及びウサギ予備研究では2週間毎に2000ngの用量が効果的だったこと(データ非表示)に基づき、毎月0.9~9000ngの用量、並びに6週目毎に135ng、1350ng、並びに2週間毎に45ng及び450ngの用量をそれぞれ選択した(表1を参照)。ラットを手術後17週間にわたって治療し、症状をCatWalk歩行分析装置及びvon-Frey痛覚過敏試験で測定した。慢性疾患の経過(手術後12~16週目)では、未治療ラットは、CatWalk装置による歩行障害又はvon-Frey試験による機械的痛覚過敏として測定することできる症状を発症する。事前に規定した分析計画に従って、本発明者らは、12週目~16週目のキャットウォーク測定の平均を計算し、ビヒクルよりも30%高い値を有意義であるとみなした。16週目のvon-Frey測定では、対ビヒクル利益限界を同じく30%と規定した。
CatWalk試験で決定した歩行困難の分析は、2週間毎に45ngのレジメンが、ACLT+pMx+ビヒクル群に対して16%利益をもたらしたことを明らかにした。2週間毎に注射した450ngでは20%利益に到達したが、それでも統計的に有意でも意味のあるものでもなかった。4週間レジメンでは、0.9ngは、ACLT+pMx+ビヒクルに対して52%有意義な利益をもたらし、9ngは、4.4%と効果を示さず、90ngは、82%と統計的に有意な効果を示し、900ngは、ACLT+pMx+ビヒクルに対して1.4%と効果を示さず、9000ngは、17%と意味のある効果を示さなかった。6週間毎に135ng/注射のレジメンにおける対応する用量は、ACLT+pMx+ビヒクルに対して22%利益という傾向を示したが、より高い用量の1350ng/注射は、ACLT+pMx+ビヒクルに対して47%という統計的に有意であり意味のある利益を示した(図2及び表2を参照)。
von-Frey痛覚過敏試験では、2週間毎の注射は、45ngではACLT+pMx+ビヒクルと比較して104%過敏症低減をもたらし、これは両側t検定で有意であり、450ngでは68%利益をもたらした。4週間レジメンでは、この場合も、0.9ng(71%利益)及び90ng(91%利益)は、過敏症を有意に低減したが、9ng(-5%)及び9000ng(-12%)は、効果を示さなかった。しかしながら、von-Frey試験では、900ng群もビヒクルに対して90%利益に到達したが、統計的有意性はなかった。6週間毎のレジメンでは、ビヒクル(ビヒクル)群はより少ない過敏症を示し、変動性は、より頻繁に治療され偽群に対して統計的有意差に到達しなかったビヒクル群よりも高かった。6週間毎の135ng注射は、ビヒクルに対して16%利益を示し、1350ngは70%効果を示した(表2を参照)。
[実施例2]
外科的誘導ウサギOAモデルでは、1回の関節内R399E注射は、疼痛に対して6時間以内に有意な効果を示す。この効果は、次の注射まで少なくとも2週間持続する。この結果は、2つの独立研究で確認された(図3及び4を参照)。
KK-ウサギ-16-01では、麻酔をかけたウサギを加温パッドに位置決めし、手術中は5%グルコース溶液をゆっくりと静脈内に輸注した。右膝関節を削り、消毒した。メス及びはさみを使用して、皮膚、筋肉、及び嚢を開いた。膝蓋骨を側方に位置決めし、脂肪体を切開して前十字靭帯を露出させた。小型留め金及びメスを使用して靭帯を切断した。半月板の前角を露出させ、半月板-脛骨靭帯から外した。小型鉗子を使用して固定したうえで、半月板の前半分を切除した。関節を滅菌生理食塩溶液で洗浄し、吸収性縫合材料を使用して嚢及び皮膚を3層に閉じた。麻酔から完全に回復するまでウサギをケージに入れたままにし、その後群に戻した。研究が終了するまで、ウサギは、56m2の小屋で自由に動き、ジャンプすることができた。関節荷重を評価するために、インキャパシタンス試験を実施した。各後肢の体重負荷を圧力プレートで測定し、以下の通り、左未手術膝関節の右手術膝関節に対する比として電子的に記録した:右肢/(右肢+左肢)*100。使用したインキャパシタンスデバイスは、扱いやすく、静止させるために固定する必要がない、よく訓練された群飼育ウサギ用に特別に作られていた。ウサギをこのデバイスに置き、後肢を圧力測定プレートの中央に位置決めした。観察者による影響を防ぐため、観察者は、測定中に動物を固定することも触れることもなかった。測定は接続されていたPCにより制御され、データは自動的に収集され、観察者には依存しなかった。各測定にはおよそ5秒間かかり、最低で3秒間を超える安定データが得られたら手動で停止させた。希に、動物が静止しなかった場合、測定を停止し、その後繰り返した。
ACLT+pMx手術は、手術後の1、2、3、5、7、9、11、及び12週目に、有意な右後肢の除荷をもたらした。関節荷重は、右後肢対左後肢の50:50%負荷から、左(未手術)対右(手術)後肢のおよそ66:34%負荷へとシフトした。
動物に、プラセボ(R399Eビヒクル)、0.6、6、又は60μgのR399Eを、手術1週間後から開始してその後14日毎に合計6回、関節内(IA)に注射した。最後の注射の2週間後である13週目に動物を安楽死させた。
最初の注射(最初の測定)の6時間後には既に、R399Eの試験用量は全て、右後肢の負荷を有意に回復させ、およそ60:40の左:右負荷比をもたらした。これは、0.6μgで36.5%利益(p=0.0023)、6μgで45.2%利益(p=0.0002)、及び60μgで38.9%利益(p=0.0016)を意味する(図3を参照)。
[実施例3]
外科的誘導ウサギOAモデルでは、1回の関節内注射後の疼痛に対するR399E効果の発生は、手術1週間後の急性及び炎症初期で臨床的に効果的なトリアムシノロンと同様に即効性だった。疼痛に対するR399Eの効果は、全ての用量で統計的有意性に到達するが、トリアムシノロンの効果はわずかにより低い(図4)。
KK-ウサギ-17-01では、KK-ウサギ-16-01と同じ外科的誘導OAモデル及び研究設計を使用し、R399Eの効果を、手術1週間後の初期及び急性期で臨床的に効果的なトリアムシノロンの効果量と比較することを目的とした。
上記に記載の通り、変形性関節症様軟骨分解を、前十字靭帯の切断(ACLT)及び内側半月板の部分的前側切除(pMx)により、62匹の雌36~37週齢ニュージーランドホワイト(NZW)ウサギに実験的に誘導した。動物を体重により5群に無作為分配した。4群は、1注射当たり200μlビヒクル中0μg(ビヒクル対照、n=13)、0.6μg(n=12)、6μg(n=13)、及び60μg(n=13)のR399Eを受け取った。追加の実験第5群(n=11)にトリアムシノロンを注射して(手術後1週目に1×IA注射)、R399Eの薬理学的効果を、OA患者において症候性有効性を示しているトリアムシノロンと比較した。関節内(IA)治療は、手術1週間後に最初の注射を行うことから開始した。
トリアムシノロン及び全ての試験用量0.6μg(ビヒクルに対して38.3%、p<0.01)、6μg(ビヒクルに対して48%、p<0.001)、及び60μg(ビヒクルに対して42.7%、p<0.01)は、最初の注射から6時間後に既に疼痛に対して有意な効果を示した(図4を参照)。
[実施例4]
ウサギOAモデルの手術後急性初期中に手術膝にIA注射した6及び60μgのR399Eの疼痛軽減効果は、次の注射まで少なくとも2週間持続するが、1.41mgのトリアムシノロンの効果は、最初の注射の1週間後には既になくなっている(図5)。
KK-ウサギ-17-01では、上記に記載のように、前十字靭帯の切断(ACLT)及び内側半月板の部分的前側切除(pMx)により変形性関節症様軟骨分解を雌ウサギに実験的に誘導した。
手術後2週目には、プラセボと比較して>30%の症候性効果は、6μg(35.7%、p=0.0802)及び60μg(40.8%、p=0.0417)のR399Eにより説明され、トリアムシノロンの症候性効果(-11.6%、p=0.89)は完全になくなり、動物はその時点でプラセボ治療動物よりも更により高い軽減傾向を示した(図5を参照)。
[実施例5]
R399EのIA注射は、ウサギの外科的誘導OAモデルの慢性期中も疼痛に対して有益な効果を示す(図6)。
上記に記載のKK-ウサギ-16-01実験全体を通して、6μgの中用量は、最も高い観察された平均効果を経時的に示し、2週目に49%、3週目に57%、5週目に55%、7週目に60%、9週目及び11週目に69%、並びに12週目に72%(全ての時点でp=0.0001)の効果を発揮した。0.6μg(p=0.0027)群及び60μg(p=0.0001)群は、5週目~7週目に、ビヒクルに対しておよそ40%の最大効果レベルに到達した。その後、この効果量は研究終了まで安定していたが、0.6μgの効果(約50%利益)は、9週目から始まりそれ以降の時点で60μgの効果(約40%)よりもわずかにより高かった(図6を参照)。
[実施例6]
外科的誘導ウサギOAモデルでは、1回の関節内注射後の疼痛に対するR399Eの効果量は、疾患進行の慢性期中の臨床的に効果的な抗NGF抗体治療の大きさと同等である(図7)。
実施例5(KK-ウサギ-16-01の時間経過)と同様に、KK-ウサギ-17-01では、R399E IA治療の症候性利益は研究全体を通して持続した。注射は手術1週間後に開始し、その後隔週で合計6回行った。この研究の群1~3をR399E IAで治療し、群4をプラセボIAで治療した。群5では、上記に記載の通り、トリアムシノロンを1週目にIA注射した。同じ動物は、トリアムシノロン効果が完全になくなった後5週目及び9週目にヒト等価用量の臨床的に効果的な抗NGF抗体をIVで受け取った。加えて、この群に、プラセボIA注射を3、5、7、9、及び11週目に投与した。観察者非依存性無接触インキャパシタンスデバイス測定を、最初の注射の6時間後に及びその後は隔週で常に注射前に上記の実施例と同様に実施した。
1mg/kgの抗NGF抗体によるIV治療は、疼痛に対して最大で56%効果をもたらした(p=0.0195)。この効果量は、同じ時点における3用量のR399Eで達成された、疼痛に対する47.1%(p=0.0426)、57.8%(p=0.0091)、及び75.7%(p=0.0011)効果と同等である(図7を参照)。
[実施例7]
ヒト滑膜+軟骨外植片培養では、R399Eは、基質喪失(GAG放出)を低減し、それにより関節恒常性の有意な正常化に寄与する。加えて、R399Eは、OAの疼痛及び炎症の原因となり、関節恒常性を損なうサイトカイン:IL1及びPGE2の放出を低減する(図8)。こうしたサイトカインは、OA患者の疼痛及び炎症を直接的に誘導するだけでなく、軟骨細胞でのBMP受容体発現を下方制御する。その結果としてBMPに対する軟骨細胞の応答性が低減するため、疾患進行が加速する可能性がある(図9)。
基質モジュレーション(GAG放出)、PGE2、及び炎症促進性サイトカインに対するR399Eの効果を、軟骨外植片+滑膜、又は滑膜のみで構成されるヒトOA共培養モデルで調査した。組織を7日間共培養し、1、4、7日後に試料採取した。OA軟骨外植片とOA滑膜との共培養は、上清へのGAG放出を有意に誘導した。R399E(100及び300ng/mL)による治療は、GAG放出を阻害し、300ng/mLで統計的有意性に到達した(p=0.016)。滑膜のみの培養はGAG放出を誘導しなかった。これは、OA軟骨が共培養系におけるGAGの主な供給源であることを示している(図8)。
OA軟骨とOA滑膜とを一緒に共培養すると、IL1β及びPGE2の上清への放出がロバストに誘導された。R399Eは、共培養系では、IL1β(100ng/mLでp=0.0245及び300ng/mLでp=0.0159、図11を参照)産生及びPGE2(100ng/mLでp=0.9872及び300ng/mLでp=0.0057)産生を阻害した。滑膜のみの培養は、外植片のみの培養よりも有意により多くのPGE2を上清中にもたらした(p=0.0001)。これは、滑膜がこの系におけるPGE2の主要な供給源であることを示している。試験したR399E用量は両方とも、滑膜による未刺激PGE2放出を阻害した(100ng/mLでp=0.007及び300ng/mLでp=0.027)。
まとめると、R399Eは、ヒトOA軟骨及び滑膜の共培養において基質分解を阻害した。加えて、R399Eは、炎症性サイトカイン及び疼痛媒介性PGE2の阻害として表されるように、OA軟骨とOA滑膜との間のオートクリン及び/又はパラクリンシグナル伝達を妨害した。
[実施例8]
TNFアルファ+オンコスタチンで刺激した半月板組織培養では、R399Eは、OAの疼痛及び炎症の原因となり、関節恒常性を損なうサイトカインの放出を低減し(TNFa、IL6)、基質喪失を防止する(GAG、図10)。
プロスタグランジンE2(PGE2)及びサイトカインIL1β、IL6、IL8、及びTNFαの放出に対するR399Eの効果を調査することを目的として、ブタ半月板を培養した。ブタ半月板(半月板外植片)の完全スライスをT+O(20ng/mL TNFα+10ng/mL OSM(オンコスタチンA))で刺激した。加えて、半月板外植片を、異なる濃度のR399E(300、900、1200ng/mL)で処理した。全インキュベーション時間は7日間であり、2、5、7日後に試料採取した。対照として、半月板外植片は、刺激したが未処理(T+O)だったか又は未刺激だった(外植片のみ)。T+Oによる刺激は、ブタ半月板からIL6を誘導した。R399Eによる処理は、T+O誘導性IL6放出を阻害した(900ng/mL研究バッチでp=0.0001、300及び1200ng/mL toxバッチでp<0.015、300及び900ng/mL GMPバッチでp<0.005)。R399Eは、T+O誘導性PGE2放出をGMPバッチで最大44%、研究バッチで最大72%、GLPバッチで49%阻害したが、p<0.05の統計的有意性には到達しなかった。バッチ間に有意差は観察されなかった。ILβ、Il-8、及びTNF-アルファ放出に対するR399Eの効果には一貫性がなく、この実験設定では用量依存的ではなかった(図10を参照)。
まとめると、こうしたデータは、半月板が膝OAの炎症環境に寄与すること、及びR399Eによる処理が、半月板に由来する炎症促進性サイトカイン及びPGE2の濃度を低減し、それによりOA動物モデル及びOA患者においてIA注射後に鎮痛をもたらすことができることを示す。
[実施例9]
また、滑膜細胞細胞株(SW982)及び初代ヒト変形性関節症滑膜細胞細胞培養では、R399Eは、インターロイキン-6(図11A、C)及びインターロイキン-1(図11B、D)のサイトカイン放出を低減させ、それにより関節恒常性の正常化、並びに疼痛、炎症、及び更には疾患進行の防止を助長する(図11)。
[実施例10]
神経成長因子(NGF)で刺激した初代ヒト半月板細胞培養では、R399Eは、OAの疼痛及び炎症の原因となるPGE2の放出を低減させる。人工膝関節全置換術に由来する初代半月板細胞を、倫理的許可の枠内で手術1日後に新たに調製した。まず、皮膚及び筋肉を除去して半月板を単離した。半月板を、HAM F12+1%P/S+1%アンホテリシンBで満たした10cm皿に移した。組織を、およそ3×3mmの小片に切断し、消化のために滅菌ビーカーに移した。消化は、HAM F12+1%P/S+1%アンホテリシン溶液中0.4%の50mlコラゲナーゼ中で、37℃、7.5%CO2にて絶えず撹拌しながら16時間実施した。16時間後、溶液をピペットで100μmフィルターに、続いて40μmフィルターに通し、その後1400gで5分間遠心分離した。細胞を含む残留ペレットを、20mlのHAM F12+1%P/S+1%アンホテリシン+10%FCSに再懸濁した。細胞数を計数し、細胞生存率を決定した。最後に、1ウェル当たり10,000個の細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞を、コンフルエンシーに到達するまで最大1週間培養した。その間に培地を1回交換しました。細胞がコンフルエンシーに到達したら、10ng/ml rhNGFで刺激し、及び/又は0.1μMデキサメタゾン、0.1μMトリアムシノロン、375ng/ml抗ベータNGF抗体、300ng/ml R399Eで処理したか、又は未処理のままにした(陰性対照)。個々の化合物の効果を、rhNGFのみで刺激した細胞と比較した。2日間のインキュベーション後、培地中のプロスタグランジンE2(PGE2)を決定するために、上清を除去した。初代半月板細胞をrhNGFで処理するとPGE2が誘導されたが、これは全ての試験化合物により有意に阻害された。R399Eの効果を、臨床的に効果的なデキサメタゾン、トリアムシノロン、及び抗NGF抗体処理の効果と比較する(図12)。
[実施例11]
R399Eは、ブタ健常軟骨細胞(図13)及びヒトOA軟骨細胞(図14)においてADAMTS5(トロンボスポンジンモチーフ5を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ)発現及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)放出を低減させる。ADAMTS5は、OA進行中の軟骨基質の病理学的切断の原因である異化プロテアーゼである。それにより、R399Eは更なる軟骨破壊を防止し、内因性DNA及び他の軟骨基質分解産物などの損傷関連分子パターン分子(DAMP)の産生を低減する。こうした分子は、OA病理の加速に関連しており、OA関連炎症及び疼痛並びにニューロン感作の原因である。
ブタ軟骨細胞を、地元食肉処理場(Arras、Reichelsheim-Beerfurth)から得たおよそ1歳のブタの大腿骨頭から単離した。軟組織から細胞を取り出すために、軟骨を、HAM F12(Gibco(登録商標)、Life Technologies社、カタログ番号21765)中0.25%質量/容積コラゲナーゼ(Serva GmbH社、カタログ番号17465)で45分間室温にて、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco(登録商標)、Life Technologies社)を有するHAM F12中0.1%質量/容積コラゲナーゼで一晩37℃にて連続消化した。得られた細胞懸濁物を、100μm、次いで40μmのセルストレーナー(Becton Dickinson GmbH社)で濾過し、遠心分離により数回洗浄し、培養培地に再懸濁した。新たに単離したブタ軟骨細胞を、まずDMEMHG、10%ウシ胎仔血清(FCS、Promocell GmbH社)、50μg/mLアスコルビン酸-2-リン酸塩、及び0.4mMプロリン(Prolin)中で7日間にわたって単層で培養し、次いで10ng/mlのIL-1βが添加された同じ培地中で、qPCR分析用には15000細胞/ウェルで、又はMMP1測定用には200000細胞/ウェルで培養し、30、300、及び900ng/mLのR399Eで、3日間(MMP1)又は7日間(qPCR)にわたって24ウェルプレートにて処理したか又は未処理のままにした。
遺伝子発現のため、Qiagen社のRNeasy Mini Kitを使用してRNAを単離した。mRNAの濃度及び品質を、Agilent Technologies Inc社のAgilent RNA 6000ナノチップを用いてAgilent Bioanalyserで分析した。Invitrogen Corp社のSuperScript III First-Strand Synthesis SuperMixで逆転写を実現させ、続いてRNAseH処理を行った。qPCRは、ブタADAMTS5に対するプライマー(’TCACACTGCTCATGACGAAA; GCAAGTGTGTGGACAAAACC)を使用して、Sigma社のSYBR Green JumpStart Taq Ready Mixで実施した。60Sリボソームタンパク質L13a(RPL13A)をハウスキーピング遺伝子として使用した。
MMP1測定の場合、上清を収集し、ヒトMMP3-Plex超高感度キット(MSD社)を使用してMMP1を測定した。
ヒト軟骨細胞を、人工膝又は股関節全置換術を受けた3人のOA患者から採取した軟骨から単離した。患者は全員、インフォームドコンセントに署名した。細胞単離は、0.25%コラゲナーゼ(HAM F12中2.5%のServaでコラゲナーゼNBG4を1/10に希釈した)で45分間消化することから構成されていた。ほぐれた細胞を廃棄し、軟骨を0.1%コラゲナーゼ(1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するHAM F12で2.5%コラゲナーゼNBG4を1/25に希釈した)で一晩更に消化して軟骨細胞を抽出した。
新たに単離したヒトOA軟骨細胞を、まず、10%FBS、0.4mMプロリン、及び50μg/mLアスコルビン酸-2-リン酸塩、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するDMEM高グルコース中で5日間にわたって単層で培養し、次いで200000細胞/ウェルにて24ウェルプレートの同じ培地中で培養し、30、300、1000ng/mLのR399Eで7日間処理したか又は未処理のままにした。遺伝子発現のため、Qiagen社のRNeasy Mini Kitを用いてRNAを単離した。mRNAの濃度及び品質を、Agilent Technologies Inc社のAgilent RNA 6000ナノチップを用いてAgilent Bioanalyserで分析した。Invitrogen Corp社のSuperScript III First-Strand Synthesis SuperMixで逆転写を実現させ、続いてRNAseH処理を行った。qPCRは、Life Technologies社のTaqman Universal PCR Mastermixを用いて、Applied Biosystems社の対応するTaqMan遺伝子発現アッセイで実施した。EF1アルファをハウスキーピング遺伝子として使用した。
[実施例12]
外科的誘導ウサギ不安定性OAモデル(ACLT+pMx、KK-ウサギ-16-01)では、0.6(p=0.205)及び6μg(p=0.0404)が、肉眼的形態学的分析において軟骨形態に意味のある>30%有益効果を示した(図15A)。6μg群(肉眼的形態が最良の結果)の軟骨容積のマイクロCTに基づく定量化は、軟骨容積及び厚さがプラセボ群と比較して有意により高いことを明らかにした(図15B及び15C)。
実施例2で説明したように、雌ウサギの前十字靭帯を切断し(ACLT)、内側半月板のおよそ半分を切除した(pMx)。動物に、プラセボ(R399Eビヒクル)0.6、6、又は60μgのR399Eを、手術1週間後から開始してその後14日毎に合計6回、関節内(IA)に注射した。最後の注射の2週間後、13週目に動物を安楽死させた。
マイクロCT分析のため、剖検プロセス中に膝関節を大腿骨及び脛骨で分離した。その後、4%パラホルムアルデヒド(PFA、Merck社、ダルムシュタット、ドイツ、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4中、Gibco社、Thermo Fisher Scientific社、ウォルサム、米国)で、完全に固定されるように少なくとも5日間固定した。マイクロCT画像を得る前に、関節を1×PBSですすいでPFA残留物を洗浄し、気泡を含まないMoltofill(商標)elastic(Akzo Nobel Deco GmbH社、ケルン、ドイツ)で満たされた小さなプラスチックショットグラス(2cl、EDEKA GUT&GUENSTIG、ドイツ)に個々に充填した。65kV/384μAのX線源、17.60μmのピクセルサイズ、及び1mmのアルミニウムフィルターを有するマイクロCT装置(SkyScan1176;Bruker社、コンティフ、ベルギー)を使用して、標本をスキャンした。スキャン後、NReconソフトウェア(Bruker社)を用いて断面スライスを生成した。規定の閾値を使用して各スキャンを再構築して、bone&Moltofill(商標)(同じ骨様造影剤)を、ビーム硬化及びリングアーチファクト補正が適用された軟骨の負のコントラストと区別した。均一な分析を確実にするためにDataViewerソフトウェア(Bruker社)を同じように使用して、全てのデータセットを解剖学的マーカーに対して調整した。CTAnソフトウェア(Bruker社)を使用して3次元分析を実施した。関心容積(VOI)を、寸法が直径3502.8μm(199ピクセル)の内側大腿顆の体重負荷領域に適用した。このVOI内の左及び右(対側)内側大腿顆の軟骨容積及び軟骨厚を計算し、対応する対側関節の%値として表した(図15B、15C)。
肉眼的形態学的調査のため、脛骨及び大腿骨の関節表面をトルイジンブルー(0.05%)で30秒間室温にて染色し、続いて脱塩水に浸漬し、15~20分間空気乾燥した。滑面組織と線維状組織とのコントラストを増加するために、染色した表面を黒色インク(Higgins black Indiaインク(Chartpak Inc社、リーズ、マサチューセッツ州、米国)に1秒間浸漬し、続いて3秒間待機し、水道水で3秒間すすいだ。15分間の追加の空気乾燥期間後、Discovery V12顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy GmbH社、イエナ、ドイツ)を使用して表面を画像化し、Axiocam HRCカメラ及び適切なソフトウェアAxioVision4.8.2(Carl Zeiss Microscopy社、イエナ、ドイツ)で撮影した。倍率は、関節表面全体が画像形式を満たすように選択した。取得したZステープルからの3D画像の再構成には電動光学系を使用した。Zステープルの高さは、各関節の関心領域をスクロールすることにより手動で決定した。Zスタックの10~20枚の単一画像を取得し、Cavaleri分析用の最終画像に結合した。
画像解析ソフトウェアを使用して総関節表面積を測定し、スコアを使用して形態学的変化を定量化した。総関節表面積は、手術により増加した。この知見は予想されており、このモデル並びに他の外科モデル及び異なる種を使用した他の研究とも一致する。R399Eは、このパラメーターに対して効果を示さなかった。肉眼的形態合計スコアでは、100%の改善が対側平均レベルに対応し、0%がビヒクル平均レベルに対応することになることを考慮すると、3つの治療群全ての平均は投薬とは無関係におよそ30%改善した。スコアが1と評価された軽度変化のみの領域は、ビヒクル処理動物よりもR399E処理群の方が多かった。この場合も、3つの用量全てが、ビヒクル群の平均よりも30%改善という意味のある効果に到達した。中程度の損傷軟骨の量を表すスコア2の領域では、0.6μg群の平均は、ビヒクル群の平均と比較して30%利益を示した。亀裂を伴う重度損傷軟骨(スコア3)の量に注目すると最も明確な構造的効果が見られた。0.6μgのR399Eは、およそ40%少ないスコア3の領域をもたらし、6μgは、50%の効果量で亀裂を有する領域を低減させ、統計的有意性(p=0.0404)に到達し、60μgは、ビヒクル群の平均と比較して30%改善した平均値をもたらしたが、統計的有意性に到達しなかった(図15A)。
[実施例13]
外科的誘導ヒツジOAモデルでは、1群当たり7匹のみの動物を用いた予備研究において既に、R399Eを4週間毎に3回関節内注射することにより、傾向として、プラセボと比較して組織学的スコアの有意な改善(図16)及びより良好なMRIスコア(図17)がもたらされていた。
この実験では、内側半月板切断モデル(Cake、2013年 Osteoarthritis and Cartilage 2013年;21巻:226~236頁)を使用して、12週間の「生存」期で変形性関節症(OA)様変化を誘導した。試験品目であるR399Eを、手術後7日目から開始して3つの異なる用量(12、120、及び1200μg/関節)の月1回レジメンで関節内(IA)投与した。この研究の主要評価項目は、組織学的切片の定量的スコアリングにより決定される内側及び外側大腿骨顆軟骨の構造的改善だった。R399Eは、この転帰を有意に改善した。ここでは、R399Eは、120μg/関節の中用量が最も有効だった。
骨軟骨試料(6×6mm)を、外側及び内側大腿骨顆並びに外側及び内側近位脛骨顆の荷重負荷軟骨領域から収集した。各関節の測定値を使用して決定した関節の中央部分から各試料を得た。定規を使用して顆状突起の中点に印を付け、中点を骨軟骨試料の中心として使用した。試料を10%緩衝生理食塩水で固定し、10%EDTA溶液で4週間、続いて5%ギ酸で1週間脱灰した。パラフィン包埋切片(厚さ5μm)を調製した。切片をトルイジンブルー及びサフラニンO-ファストグリーンで染色して、構造及び軟骨を強調した(Schmitzら、2010年 Osteoarthrtis and Cartilage。18巻S3号 S113~116頁)。改変マンキンスコアを使用して、軟骨の組織学的変化を定量化した。
手術した関節の4つの区画から切片を得、改変マンキンスコアを使用してスコア付けした。組織学的スコアを合計すると、ビヒクル対照と比較して、12、120μg/関節のR399Eを受け取った動物には統計的に有意な損傷の低減が存在した(図16を参照)。マンキンスコアの様々な成分を部分的に分析すると、損傷の低減がいずれか1つの測定されたパラメーターによるものではなく、低減は全てのパラメーターにわたって広がっていることが示された。
低磁場MRI(Esoate社)を使用して、死後に各手術肢から磁気共鳴画像(MRI)を得た。MR画像は、改変sMOAKSスコアを使用してヨーロッパイメージングスペシャリスト(European Imaging Specialist)により盲検的にスコア付けされた(Moya-Angeler、2016年3月;23巻(2号):214~20頁。doi:10.1016/j.knee.2015.11.017。Epub 2016年1月27日を参照)。
MRIの場合、関節には、3つの単位-内側及び外側大腿脛骨関節並びに大腿膝蓋骨関節があるとみなした。関節の各領域について、以下のもの:関節軟骨喪失、骨棘、関節滲出液、骨髄病変(高強度軟骨下骨(subchondral bone hyperintensity))をスコア付けした。
MRIは、死後に低磁場磁石を使用して全ての手術肢から得た。MR画像は、改変sMOAKSスコアを使用して、ヨーロッパイメージングスペシャリストにより盲検的にスコア付けされた。完全な関節の3つの区画全てのスコア又は内側大腿骨-脛骨区画のみのスコアを分析したところ、120μg及び1200μgのR399E/関節で治療した動物のsMOAKスコアには、対照と比較して傾向が存在した(図17を参照)。
[実施例14]
ブタ健常軟骨細胞細胞培養実験では、R399Eは、軟骨細胞外基質産生及び細胞増殖を有意に増加させる(図18)。
ブタ軟骨細胞を単離し、他所で説明されている通りに(Gigoutら、2017年 Osteoarthritis and cartilage、25巻:1858~1867年)無足場3D培養系(軟骨組織アナログ、CTA)で培養した。100万個細胞/3D構築物を、10%FCS、0.4mMプロリン、及び50μg/mLアスコルビン酸-2-リン酸塩で補完されたDMEM高グルコースに播種し、N=3で4週間、300ng/mLのR399Eで処理したか又は未処理のままにした。
培養の終了時に、3D細胞構築物を収集して、それらのDNA、GAG、及びヒドロキシプロリンの含有量又は遺伝子発現をqPCRで評価した。また、各条件毎に試料を固定し、組織学用にパラフィンに包埋した(N=3)。GAG、ヒドロキシプロリン、及びDNAを測定する前に、3D細胞構築物をパパインで消化した(パパイン緩衝液中の0.125mg/mLパパイン、5mM L-システインと共に60℃で一晩)。DNAは、Invitrogen社のQuaniT PicoGreen ds DNAキットを用いて製造業者の推奨に従って測定した。GAGは、ジメチルメチレンブルー(DMMB)アッセイ(Farndaleら、1986年 Biochem Biophys Acta 883巻:173~177頁)、及びGigoutら、2007年に記載の通りのHPLCによるHProで定量化した。
遺伝子発現のため、Qiagen社のRNeasy Mini Kitを使用してRNAを単離した。mRNAの濃度及び品質を、Agilent Technologies Inc社のAgilent RNA 6000ナノチップを用いてAgilent Bioanalyserで分析した。Invitrogen Corp社のSuperScript III First-Strand Synthesis SuperMixで逆転写を実現させ、続いてRNAseH処理を行った。qPCRは、200nMのリバースプライマー及びフォワードプライマーを用いて、Sybr-Green Jumpstart Taq Ready Mix(Sigma-Aldrich社)で実施した。EF1アルファをハウスキーピング遺伝子として使用した。
組織学的評価のため、3D細胞構築物を4%パラホルムアルデヒドで30分間室温にて固定し、PBSで3回洗浄し、細胞外基質をサフラニン-Oで又はコラーゲン2型を染色した。
[実施例15]
ヒトOA軟骨細胞細胞培養実験では、R399Eに対する恒久的な曝露は、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒドロキシプロリン(HPro)、及びプロコラーゲン2型(proC2)の産生を有意に及び用量依存的に増加させる(図19)。
ヒト軟骨細胞を、人工膝又は股関節全置換術を受けた3人のOA患者から採取した軟骨から単離した。患者は全員、インフォームドコンセントに署名した。細胞単離は、0.25%コラゲナーゼ(HAM F12中2.5%のServaでコラゲナーゼNBG4を1/10に希釈した)で45分間消化することから構成されていた。ほぐれた細胞を廃棄し、軟骨を0.1%コラゲナーゼ(1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するHAM F12で2.5%コラゲナーゼNBG4を1/25に希釈した)で一晩更に消化して軟骨細胞を抽出した。各条件をN=4で実施した。
新たに単離したヒトOA軟骨細胞を、まず、10%FBS、0.4mMプロリン、及び50μg/mLアスコルビン酸-2-リン酸塩、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有し、380mOsmに調整された(浸透圧は浸透圧計で確認した)DMEM高グルコースで5日間単層で培養した。次いで細胞を回収し、2×106個の細胞をアルギネート溶液(AppliChem社の0.2M HEPES及びMerck社の1.5M NaCl中のFluka社の1.25%アルギネート、pH7.4に調整)に再懸濁し、細胞懸濁物を、10mM HEPES(AppliChem社)を含む120mM CaCl2(Merck社)に1滴ずつ注いだ。細胞液滴を撹拌しながら15分間重合させてアルギネートビーズを形成し、150mM NaCl溶液で3回洗浄した。アルギネートビーズを、まず、380mOsmに調整した培養培地中で処理せずに7日間培養した。続いて、ビーズを、300ng/mL R399E又は12.5μM HCL(対照)で補完した380mOsmの培養培地1mL中に5ビーズ/ウェルで24ウェル超低結合プレート(VWR社)に移した。14日後、アルギネートビーズを、pH8の150mM NaCl及び40μLの2.5%コラゲナーゼを有する460μLの55mMクエン酸Na(Merck社)に1時間溶解した。次に、500μLのDMEM高グルコース又はPBSを添加し、溶液を遠心分離した。溶解したアルギネート上清中のGAG、HPro、及びProC2を測定した。GAG及びHProは、上記に記載の通りに分析した。ProC2は、Gudmannら、2014年 Int J Mol Sci、15巻:18789~18803頁に記載の通りに測定した。
[実施例16]
ヒトOA軟骨細胞細胞培養実験では、R399Eに対する恒久的な曝露は、108ng/mLのEC50で、アグリカンタンパク質レベルを有意に及び用量依存的に増加させる(図20)。
軟骨生検を、人工膝関節全置換術中に3人のヒトドナーから単離し、細かく刻んで消化した。細胞を培養し、P1で液体窒素(LN)にて凍結した。細胞をLNから解凍し、10000個細胞/cm2の細胞密度で培養し、細胞がコンフルエンシーになるまで増殖させた。8日後、P2のコンフルエント細胞をトリプシン処理して計数し、ビーズを製作した(-5日目)。5日間の培養後(0日目)、ビーズを7日間で3回(0、2、4日目)刺激した。1週間後、ビーズを回収し、アグリカン含有量を分析した。
含まれている対照は、通常培養培地中の0日目ビーズ及びビヒクル対照培地(通常増殖培地による10mM HCl pH0.2の1:50希釈)による7日目ビーズである。
試料のアグリカン含有量は、Diasource社の市販PG-ELISA(カタログ番号KAP1461)を使用して決定した。実験OD値から、ブランク(blanco)対照を差し引いた。検量線式に基づいてアグリカンの絶対量を算出した。7日目ビーズ(刺激なし-ビヒクル対照培地のみ)と比較した比を算出し比較した。3人のドナーの平均比の4PLフィッティングを使用してEC50値を算出した。
[実施例17]
ヒトOA軟骨細胞細胞培養実験では、R399Eに対する恒久的な曝露は、硝子軟骨基質産生を経時的に有意に増加させる(図21)。
ヒトOA軟骨細胞を、上記に記載の通りに、単離し、培養し、アルギネートに包埋し、300ng/mLのR399Eで処理したか又は未処理のままにした。ビーズ溶解後、細胞の含有量を、Beckman Coulter社のViCellで細胞分析した。溶解したアルギネート中のGAG、HPro、及びProC2を、上記に記載の通りに測定した。遺伝子発現分析を、上記に記載の通りに細胞に対して実施した。
[実施例18]
R399Eによる断続的な治療は、経時的に有意な同化促進効果に到達するのに十分である。ヒトOA軟骨細胞を、上述の通りにアルギネート中で培養し、1か月当たり1週間、2週間、3週間、若しくは4週間にわたってR399E 300ng/mLで処理したか又は未処理のままにした。8週間(2か月)後、細胞含有量、GAG含有量、HPro含有量、及びProC2含有量は、有意に上昇した(図22)。
[実施例18]ヒトOA軟骨細胞細胞培養実験では、R399Eに対する恒久的な曝露は、proC2、proC6、及びCILP-2の同化促進性バイオマーカー産生を有意に増加させる(図23)。
ヒトOA軟骨細胞を、上述の通りにアルギネート中で培養し、4週間にわたってR399E 300ng/mLで処理したか又は未処理のままにした。培養培地中のProC2、Proc6、及びCILP2を、様々な時点で測定した。ProC2は、上記で言及されている通りに測定し、Proc6は、Nordic Bioscienceにより測定され、CILP2は、Abbexa社のELISAキットabx151073を用いて測定した。
Figure 2023507007000001
Figure 2023507007000002

Claims (7)

  1. 軟骨欠損及び疼痛を治療するための、アミノ酸交換R399Eを有するGDF-5変異タンパク質の使用。
  2. 前記軟骨欠損は、変形性関節症、関節リウマチ、半月板傷害又は靭帯断裂のようなスポーツ関連傷害、並びに軟骨異栄養症のような軟骨に影響を及ぼす可能性のある疾患、成長障害及びその後の軟骨骨化により特徴付けられる疾患、軟骨形成不全、肋軟骨炎、椎間板ヘルニア及び椎間板修復、再発性多軟骨炎、軟骨腫又は軟骨肉腫のような良性又は悪性のいずれかの腫瘍に関連付けられる軟骨欠損の修復、並びに疼痛である、請求項1に記載のタンパク質の使用。
  3. 炎症及び疼痛を低減することにより軟骨分解又は半月板分解を防止するための、請求項1に記載のタンパク質の使用。
  4. 軟骨欠損及び疼痛を罹患している患者に対する、患部関節への関節内注射による、請求項1に記載のタンパク質の投与。
  5. 請求項1に記載のタンパク質、並びに軟骨欠損及び疼痛を治療するための少なくとも1つの他の薬理学的有効成分を含む薬理学的組成物。
  6. 軟骨欠損及び疼痛を治療するための、請求項1に記載のタンパク質及びスプリフェルミンを含む薬理学的組成物。
  7. 軟骨欠損及び疼痛を治療するための許容される添加剤又は担体を有する、請求項4又は5に記載の薬理学的組成物。
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