JP2023183509A - 電磁波吸収体 - Google Patents

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Hiroyoshi NISHIYAMA
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Abstract

【課題】本発明は、反射型の電磁波吸収体に用いられる誘電体層の複素誘電率虚部に着目し、抵抗層のシート抵抗が変化したとしても優れた反射減衰量を維持することを可能とする技術の提供を目的とする。【解決手段】本発明の電磁波吸収体は、抵抗層と、誘電体層と、反射層を順に備える積層体であり、前記誘電体層は少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有し、複素誘電率の虚部が0.5以上であり、85℃85%RH、700hの信頼性試験後における反射減衰量が10dB以上である。また前記誘電体層の複素誘電率の実部は10以上であること、前記抵抗層のシート抵抗が400Ω/□以上1000Ω/□以下であること、前記抵抗層の体積抵抗率が8.0×10-5~4.0×10-3Ω・mの導電性高分子材料であること、もしくは前記抵抗層の厚みが150nm~2000nmであってもよい。【選択図】図4

Description

本発明は、電磁波吸収体に関する。
近年、急速な情報量の増加や移動体の高速化、自動運転、IoT(Internet of Things)の実用化に向け、各々に対応できる通信、レーダー、セキュリティ用のスキャナ等の需要が益々高まっている。これに伴い5G、ミリ波、テラヘルツ波を活用した次世代の電磁波を用いた高速無線通信方式に関する技術が急速に進んでいる。
電磁波を利用した製品は、他の電子機器から発生する電磁波と干渉し、誤作動を引き起こすことがある。これを防止するための手段としてλ/4型と称される反射型の電磁波吸収体が知られている。
特許文献1では、モリブデンを含む抵抗皮膜、誘電体層、及び反射層をこの順で有する積層体をλ/4型電波吸収体とすることで、優れた耐久性を発揮するλ/4型電波吸収体が開示されている。
特許文献2では、インピーダンス整合膜が、金属元素と、非金属元素とを含み、10~200nmの厚みを有し、酸素原子の原子数基準の含有率が50%未満であることで、高温環境に曝されたときにインピーダンス整合の観点からシート抵抗の変化を抑制することを可能にした電波吸収体用インピーダンス整合膜が開示されている。
特開2020-115578号公報 特開2020-167414号公報
電磁波吸収体は用途の広がりに応じて高温高湿な環境下で長時間使用されるケースも増加している。しかしこうした環境においては時間の経過に伴い電磁波吸収体に含まれる抵抗層のシート抵抗が変化し、電磁波吸収体の反射減衰量の低下が発生してしまう問題が見出され、耐久性能の向上が課題として認識された。前記従来の特許文献には係る課題や解決手段に関する開示はない。
そこで本発明は、反射型の電磁波吸収体に用いられる誘電体層の複素誘電率虚部に着目し、抵抗層のシート抵抗が変化したとしても優れた反射減衰量を維持することを可能とする技術の提供を目的とする。
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の電磁波吸収体の一つは、抵抗層と、誘電体層と、反射層を順に備える積層体であり、前記誘電体層は少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有し、複素誘電率の虚部が0.5以上であり、85℃85%RH、700hの信頼性試験後における反射減衰量が10dB以上であるものである。
本発明によれば、抵抗層のシート抵抗が変化したとしても優れた反射減衰量を維持することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
図1は、第一実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。 図2は、第二実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。 図3は、第三実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。 図4は、第四実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。 図5は、実施例1に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図6は、実施例2に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図7は、実施例3に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図8は、実施例4に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図9は、実施例5に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図10は、実施例6に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図11は、実施例7に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図12は、実施例8に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図13は、実施例9に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図14は、実施例10に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図15は、実施例11に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図16は、実施例12に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図17は、実施例13に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図18は、実施例14に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図19は、実施例15に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図20は、実施例16に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図21は、実施例17に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図22は、実施例18に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図23は、実施例19に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図24は、実施例20に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図25は、実施例21に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図26は、実施例22に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図27は、比較例1に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図28は、比較例2に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図29は、比較例3に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。 図30は、比較例4に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
<電磁波吸収体>
[第一実施形態]
以下、第一実施形態に係る電磁波吸収体について説明する。図1は、第一実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。この図に示す電磁波吸収体10はフィルム状又はシート状であり、抵抗層1と、誘電体層2と、反射層3とをこの順に備える積層体である。なお、フィルム状の電磁波吸収体10は、例えば、全体の厚さが24~250μmである。他方、シート状の電磁波吸収体10は、例えば、全体の厚さが0.25~7.1mmである。
(抵抗層)
抵抗層1は外側から入射してきた電磁波を誘電体層2へと至らしめるための層である。すなわち、抵抗層1は、インピーダンスマッチングをするための層である。
電磁波吸収体が空気(インピーダンス:377Ω/□)中で使用され、複素誘電率の虚部が0.1以下であるような誘電体層の場合、抵抗層1のシート抵抗は、例えば、反射減衰量を10dB以上得る為に、200Ω/□以上800Ω/□の範囲に設定される。
これに対し本実施形態によれば、誘電体層の複素誘電率の虚部を0.5以上とすることで、200Ω/□以上1400Ω/□以下、特に400Ω/□以上1000Ω/□以下の範囲に対しても、高い反射減衰を得ることができる為、安定した製造が可能となり、かつ信頼性試験の際に抵抗層のシート抵抗が増加しても従来よりも高い反射減衰量の電磁波吸収体が得られる。
ここで、信頼性試験は、JIS規格、ISO規格、ASTM規格に記載のある、高温試験、低温試験、高温高湿試験、ヒートサイクル試験、光照射試験、曲げ試験、衝撃試験、などが挙げられる。特に、85℃85%RHで行われる高温高湿試験は、他の試験に比べシート抵抗が大きく増加する。したがって後述するように本件発明により大きな効果が得られる。
以下にシミュレーション(後述)によるいくつかの例を用いて説明する。
28GHzにおける誘電体層2の複素誘電率の実部が2.5、虚部が0.5である場合、抵抗層1のシート抵抗は、例えば、200~1400Ω/□の範囲に設定することで、反射減衰量10dB以上の電磁波吸収体を得る事が出来る。特に、400~600Ω/□の範囲に設定することで製造直後に20dB以上の反射減衰量を得る事ができ、信頼性試験により抵抗層のシート抵抗が増加しても10dB以上の高い反射減衰量を維持することが可能となる。
28GHzにおける誘電体層2の複素誘電率の実部が10、虚部が0.5である場合、抵抗層1のシート抵抗は、例えば、200~950Ω/□の範囲に設定することで、反射減衰量10dB以上の電磁波吸収体を得る事が出来る。特に、400~550Ω/□の範囲に設定することで、製造直後に20dB以上の反射減衰量を得る事ができ、信頼性試験により抵抗層のシート抵抗が増加しても10dB以上の高い反射減衰量を維持することが可能となる。
28GHzにおける誘電体層2の複素誘電率の実部が10、虚部が1.5である場合、抵抗層1のシート抵抗は、例えば、200~2500Ω/□の範囲に設定することで、反射減衰量10dB以上の電磁波吸収体を得る事が出来る。特に、450~800Ω/□の範囲に設定することで、製造直後に20dB以上の反射減衰量を得る事ができ、信頼性試験により抵抗層のシート抵抗が増加しても10dB以上の高い反射減衰量を維持することが可能となる。
28GHzにおける誘電体層2の複素誘電率の実部が15、虚部が1.5である場合、抵抗層1のシート抵抗は、例えば、200~2000Ω/□の範囲に設定することで、反射減衰量10dB以上の電磁波吸収体を得る事が出来る。特に、420~750Ω/□の範囲に設定することで、製造直後に20dB以上の反射減衰量を得る事ができ、信頼性試験により抵抗層のシート抵抗が増加しても10dB以上の高い反射減衰量を維持することが可能となる。
発明者は上述したようなシミュレーションによる具体的な数値を用いて、抵抗層1のシート抵抗Rが式1を満たすと、反射減衰量20dB以上の電磁波吸収体が得られることを帰納的に見出した。
Figure 2023183509000002
ここで、ε、εはそれぞれ誘電体層2における複素誘電率の実部、虚部である。
抵抗層1は、導電性を有する無機材料や有機材料を含有する。導電性を有する無機材料としては、例えば、ナノ粒子及びナノワイヤーが挙げられる。ナノ粒子及びナノワイヤーの材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、カーボンナノチューブ、グラフェン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-Au及びNiが挙げられる。導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリピロール誘導体が挙げられる。抵抗層1は、特に柔軟性、成膜性、安定性、シート抵抗の観点から、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含む導電性ポリマーが好ましい。抵抗層1は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PPS)との混合物(PEDOT/PSS)を含むものであってもよい。
抵抗層1のシート抵抗値は、導電性材料の体積抵抗率ρ(Ω・m)、導電性材料の厚さt(m)とすると、導電性材料のシート抵抗σ=ρ/tで与えられる。したがって、導電性を有する無機材料や有機材料の選定、膜厚の調節によって適宜設定することができる。抵抗層1が無機材料で構成される場合、抵抗層1の厚さ(膜厚)は、0.1nm~100nmの範囲内とすることが好ましく、1nm~50nmの範囲内とすることがより好ましい。膜厚が0.1nm以上であると、均一な膜を形成しやすく、抵抗層1としての機能をより十分に果たすことができる傾向がある。一方、膜厚が100nm以下であると、十分なフレキシビリティを保持することができ、製膜後に折り曲げ、引張などの外的要因により、薄膜に亀裂を生じることをより確実に防ぐことができ且つ基材への熱による損傷や収縮を抑える傾向がある。抵抗層1が有機材料で構成される場合、抵抗層1の厚さ(膜厚)は、0.1~2.0μmの範囲内とすることが好ましい。特にシート抵抗範囲が450Ω/□以上の場合であっても、体積抵抗率が8.0×10-5~4.0×10-3Ω・mとすることで、膜厚を0.15~0.5μm、さらに0.15~0.2μmとすることができ、信頼性試験の際のシート抵抗変化を抑制することができ、反射減衰量10dB以上の電磁波吸収体を得る事が出来る。一方、膜厚が2.0μm以下であると、十分な柔軟性を保持させることができ、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じることをより確実に防ぐことができる傾向がある。
製膜方法として、ドライコーティング方法とウェットコーティング方法が挙げられる。
ドライコーティング方法は、主に抵抗加熱や誘導加熱、イオンビーム(EB)を用いた真空蒸着方式や、スパッタリング方式、等が挙げられる。抵抗加熱方式は、材料をセラミック製のるつぼに入れ、るつぼを取り巻くヒーターに電圧を印加させることで電流を流し、真空中でるつぼを加熱することで開口部から無機材料を蒸発させ、基材に付着させることで製膜する。材料と基材間距離、ヒーターに印加する電圧、電流を制御することで製膜速度を調整し、バッチ製膜であればシャッターの開閉時間やロール製膜であればライン速度などで製膜時間を制御することで、膜厚を制御する。イオンビームは、真空中でフィラメントに電流を流す事で電子を放出させ、電磁レンズで放出した電子を材料に直接当てることで、無機材料を加熱、蒸発させ、基材に付着させることで製膜する。蒸発させる為に、大きな熱量が必要な無機材料や大きな製膜レートが必要な場合に用いられる。材料と基材間距離、電流でフィラメントから発生させる電子量と電磁レンズで材料の照射位置や範囲(しぼり)を制御し、製膜速度を調整し、前記同様シャッターの開閉時間やライン速度で製膜時間を制御し、膜厚を制御する。スパッタリング方式は、無機材料からなるターゲット上に、主にArなどの希ガスを導入し、電圧を印加することでArをプラズマ化させ、プラズマ化したArを電圧で加速させターゲットに衝突させることで、材料を物理的に弾き飛ばし(スパッタリング)、基材に付着させることで製膜する。眞空蒸着方式では製膜できない無機材料もスパッタリング方式であれば製膜可能な場合がある。ターゲットと基材間距離や、ターゲットに印加する電力、Arガス圧、を制御し、製膜速度を調整し、前記同様シャッターの開閉時間やライン速度で製膜時間を制御し、膜厚を制御する。主に無機材料を製膜する際に用いられる。
ウェットコーティング方法は、主に材料を基材に塗布する方法で、常温常圧下で固体の材料は、適宜溶媒に溶解、又は分散によりインキ化し、塗工した後、乾燥により溶媒を除去し製膜する。塗布方法はダイコート、マイクログラビアコート、ロッドグラビアコート、グラビアコート、等が挙げられる。共通してインキの固形分とダイコートであればダイヘッド開口部のギャップ、基材、コーターヘッド間のギャップ、マイクログラビアコートとロッドグラビアコート、グラビアコートであれば、版の線数、深さ、版回転比、を制御し基材にインキを塗工、乾燥し膜厚を製膜する。主に有機材料と一部の無機分散材料を製膜する際に用いられる。
抵抗層1のシート抵抗値は例えばロレスターGP MCP-T610(商品名、株式会社三菱化学アナリテック製)を用いて測定することができる。
(誘電体層)
誘電体層2は、入射する電磁波と反射した電磁波を干渉により相殺させるために位相を調整する層である。誘電体層2は、簡単には以下の式で表される条件を満たすように厚さ等が設定されている。
d=λ/(4(ε1/2
式中、λは抑制すべき電磁波の波長(単位:m)を示し、εは誘電体層2を構成する材料の複素誘電率の実部、dは誘電体層2の厚さ(単位:m)を示す。入射する電磁波の位相と反射した電磁波の位相がπずれることで反射減衰が得られる。
誘電体層2は、電磁波を最も吸収させる周波数における複素誘電率の虚部が0.5よりも高い樹脂組成物で構成されている。誘電体層2の虚部が0.5よりも高いことで、上述のとおり、高い反射減衰量を得る為に必要な抵抗層のシート抵抗範囲を十分に広げることができ、安定した製造が可能となり、かつ信頼性試験の際に抵抗層のシート抵抗が増加しても従来よりも高い反射減衰量の電磁波吸収体が得られる。特に、誘電体層2を薄くするために複素誘電率の実部を10以上であっても、高い反射減衰量を得る為に必要な抵抗層のシート抵抗範囲を十分に広げることができ、安定した製造が可能となり、かつ信頼性試験の際に抵抗層のシート抵抗が増加しても従来よりも高い反射減衰量の電磁波吸収体が得られる。
発明者は、複素誘電率の実部が一定の場合、虚部が増加すると、反射減衰量10dBを得る為に必要なシート抵抗上限が増加する傾向にある一方で、複素誘電率の虚部が一定で実部が増加すると、反射減衰量10dBを得る為に必要なシート抵抗上限は減少する傾向にあることを見出した。このことにより樹脂組成物実部の上限は、15程度であるが、複素誘電率の虚部を0.5以上とすることで、0の場合に比べ反射減衰量10dBを得る為に必要なシート抵抗上限を1割以上増加させることができ、85℃85%RHの環境試験後にシート抵抗が変化したとしても、反射減衰量の減少を有意に抑えることができる。
誘電体層2の複素誘電率の虚部が0.5以上の場合、これまで抵抗率が高く、採用できなかったような抵抗率が高い化合物を抵抗層に用いることができる。例えば、導電性に優れる酸化インジウムスズ(ITO)及び酸化インジウム亜鉛(IZO)に代えて、例えば、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)などを使用することができる。インジウムを含まない材料を使用することで、環境負荷の低減や、コストダウンのメリットがある。
誘電体層2を構成する樹脂組成物は、少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有する。樹脂組成物における誘電性化合物の選択及びその含有量に応じて、誘電体層2の複素誘電率虚部及び実部を調整することができる。樹脂組成物100体積部に対し、誘電性化合物の含有量は、好ましくは10~300体積部であり、より好ましくは25~100体積部である。樹脂組成物100質量部に対し、誘電性化合物の含有量は、好ましくは10~900質量部であり、より好ましくは25~100質量部である。樹脂組成物における誘電性化合物の含有量が下限値以上であることで、誘電体層2の複素誘電率虚部を0.5以上にできる傾向にあり、配合比を増加させることで複素誘電率の虚部を増加させることができる。他方、上限値以下であることで、ウエットコーテイング法又は押出し成形によって誘電体層2を効率的に製造する傾向にある。
例えば、樹脂組成物をウレタン樹脂、誘電性化合物をチタン酸バリウムとした場合、ウレタン樹脂100体積部に対しチタン酸バリウム22体積部、即ちウレタン樹脂100質量部に対し、チタン酸バリウム132質量部の場合、複素誘電率の虚部は0.5となる。またウレタン樹脂100体積部に対しチタン酸バリウム30体積部、即ちウレタン樹脂100質量部に対し、チタン酸バリウム180質量部の場合、複素誘電率の虚部は1.0となる。またウレタン樹脂100体積部に対しチタン酸バリウム35体積部、即ちウレタン樹脂100質量部に対し、チタン酸バリウム210質量部の場合、複素誘電率の虚部は1.5となる。
また、誘電性化合物の含有量を増加させることで耐延焼性を増加させることもできる。
誘電性化合物として、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ネオジウム酸バリウム(BaNd9.3Ti1854)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、フォルステライト(MgSiO)、酸化アルミニウム(Al)、ニオブ酸マグネシウム酸バリウム(Ba(Mg1/3Nb2/3)O)などの金属化合物やカーボンが挙げられる。
特にチタン酸バリウムとカーボンは複素誘電率の虚部を大きく増加させることができるため、好ましい。
また、金属化合物とカーボンを混合してもよい。混合により、複素誘電率虚部の増加に加え、耐延焼性を向上させることができる。
誘電性化合物の態様は粉末(例えば、ナノ粒子)であることが好ましい。粒形は0.3~1μmであると、大きな複素誘電率の実部や虚部が得られ、含有量を増加させてもフィルムが破断することなく形状を維持することができ、ウエットコーティング法又は押出し成形によって誘電体層2を効率的に製造できる。
樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メタクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、クリブタル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルホルマール、フェノール樹脂、ユリア樹脂及びポリクロロブレン樹脂が挙げられる。
樹脂成分の溶解度パラメータ(SP値)は高いほど、誘電性化合物混合時に複素誘電率虚部を大きくできる。誘電性化合物の複素誘電率虚部を0.5以上とする為の樹脂成分のSP値は好ましくは8以上であり、より好ましくは9以上であり、更に好ましくは10以上である。
樹脂成分の複素誘電率実部は、好ましく2.5~9.5であり、より好ましくは3.5~9.5であり、更に好ましくは5.0~9.5である。
樹脂組成物は粘着性を有することが好ましい。これにより、反射層3の表面に対して誘電体層2を効率的に貼り付けることができる。かかる材料として、例えば、シリコーン粘着剤、アクリル粘着剤及びウレタン粘着剤が挙げられる。これらの材料を上記樹脂成分として使用してもよいし、これらの材料で構成される粘着層を誘電体層2の少なくとも一方の面上に形成してもよい。樹脂組成物自体又は粘着層のステンレス304鋼板に対する粘着力は、好ましくは1.0N/25mm以上であり、3.0~10.0N/25mm又は10.0~15.0N/25mmであってもよい。
(反射層)
反射層3は、誘電体層2から入射してきた電磁波を反射させ、誘電体層2へと至らしめるための層である。反射層3の厚さは、例えば、0.1nm~1mmであり、0.1nm~10μmの薄膜又は0.01~0.2mmの箔、0.2mm~1mmの板であってもよい。
反射層3は、導電性を有する無機材料や有機材料を含有する。導電性を有する無機材料としては、例えば、ナノ粒子及びナノワイヤーが挙げられる。ナノ粒子及びナノワイヤーの材料としては、例えば、酸化ンジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、カーボンナノチューブ、グラフェン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-Au及びNiが挙げられる。導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリピロール誘導体が挙げられる。また導電性を有する無機材料や有機材料を基材上に製膜してもよい。特に柔軟性、成膜性、安定性、シート抵抗、低コストの観点から、PETフィルムと、その表面に蒸着されたアルミニウム層とを備える積層フィルム(Al蒸着PETフィルム)を反射層として用いることが好ましい。反射層3のシート抵抗は、100Ω/□以下であってよい。
電磁波吸収体10の最大反射減衰量は、10dB以上、20dB以上、又は30dB以上であってよい。
[第二実施形態]
以下、第二実施形態に係る電磁波吸収体について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一実施形態に係る電磁波吸収体と同様である。図2は、第二実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。この図に示す電磁波吸収体20は、保護層4と、抵抗層1と、誘電体層2と、反射層3とをこの順に備える積層体である。
(保護層4)
保護層4は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリプロピレン及びシクロオレフィン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;並びにトリアセチルセルロース、エチレンテトラフルオロエチレン;ポリクロロテトラフルオロエチレン;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、等が挙げられるが、これらに限定されない。保護層4は、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム又はポリオレフィンフィルムであることが好ましく、ポリエステルフィルム又はポリアミドフィルムであることがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)であることが更に好ましい。PETフィルムは、加工適性及び密着性の観点から望ましい。また、PETフィルムは、ガスバリア性の観点から、二軸延伸PETフィルムであることが好ましい。更に前述したPETフィルムにコーティング膜や蒸着膜を形成したバリアフィルムでも良い。
保護層4の厚さは、例えば、11~13μm、49~51μm、74~76μm、又は95~110μmであってもよい。
抵抗層1は、保護層4上に形成してもよく、保護層4が最表面にあってもよく、抵抗層1が最表面にあってもよい。保護層4が最表面にあると水蒸気や酸素等、外部環境による抵抗層1のシート抵抗増加を抑制することができる。
保護層4の表面には、木目調やタイルなど意匠性のあるデザインが形成されていてもよい。
以上、第一実施形態及び第二実施形態に係る電磁波吸収体について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、電磁波吸収体20において、保護層4と、抵抗層1との間に、下地層を設けてよい。これにより、電磁波吸収体は、保護層及び抵抗層の密着性が向上し、また、保護層の塗工性が向上する傾向にある。また、電磁波吸収体20において、保護層4の抵抗層1と接する表面とは反対側の表面にオーバーコート層が設けられていてもよい。これにより、マイグレーションが抑制される傾向にあり、また、保護層4を保護できる。
[第三実施形態]
以下、第三実施形態に係る電磁波吸収体について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一、第二実施形態に係る電磁波吸収体と同様である。図3は、第三実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。この図に示す電磁波吸収体30は、保護層4と、抵抗層1と、バリア接着層5と、バリア層6と、誘電体層2と、反射層3とをこの順に備える積層体である。バリア接着層5とバリア層6を備える事によって、誘電体層2による抵抗層1の抵抗増加を抑制し、反射減衰量が大きく帯域幅が広い電磁波吸収体が得られる。
(バリア接着層)
バリア接着層5は、抵抗層1の抵抗を上昇させることなく、バリア層6と密着させる為の層である。
バリア接着層5の厚さは、吸収周波数と密着力に応じ適宜されることが好ましい。即ち、0.5μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上25μm以下であることがより好ましい。この厚さが0.5μm以上であると十分な密着力が得られ、100μm以下であると電磁波吸収体の総厚を薄くすることができる。
バリア接着層5は、例えば、アクリル系接着剤や粘着剤、シリコーン系接着剤や粘着剤、ポリオレフィン系接着剤や粘着剤、ウレタン系接着剤や粘着剤、又はポリビニルエーテル系接着剤や粘着剤等が挙げられる。このうち、シリコーン系粘着剤は、透明性、耐湿熱性が高く、信頼性試験下においても密着力を低下させることなく、かつ抵抗層1の抵抗上昇が小さい為、好ましい。バリア接着層5のシート抵抗値は十分に高いことが好ましく、例えば、1.0×10Ω/□以上であることが好ましい。バリア接着層5のシート抵抗値が1.0×10Ω/□以上であることで、抵抗層1から入射してきた電磁波がバリア接着層5の表面で反射することを抑制することができる。
(バリア層)
バリア層6は、誘電体層2による抵抗層1の抵抗増加を抑制させる為の層である。バリア層6のシート抵抗値は十分に高いことが好ましく、例えば、1.0×10Ω/□以上であることが好ましい。バリア層6のシート抵抗値が1.0×10Ω/□以上であることで、抵抗層1から入射してきた電磁波がバリア層6の表面で反射することを抑制することができる。
バリア層6の酸素透過度は、好ましくは4.0×10cc/m・day・atm以下であり、より好ましくは1.0×10cc/m・day・atm以下であり、更に好ましくは1.0×10-1cc/m・day・atm以下である。酸素透過度は、JIS K7126-2に記載の方法に準拠し、温度30℃、相対湿度70%の条件下で測定される値を意味する。
バリア層6の水蒸気透過度は、好ましくは1.0×10g/m・day以下であり、より好ましくは1.0×10g/m・day以下であり、更に好ましくは2.0×10-1g/m・day以下である。水蒸気透過度は、JIS K7129Bに記載の方法に準拠し、温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定される値を意味する。
バリア層6の厚さは、吸収周波数と酸素透過度、水蒸気透過度に応じ適宜されることが好ましいが、3μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。この厚さが3μm以上であると加工が容易であり、100μm以下であると電磁波抑制体の総厚を薄くすることができる。なお、バリア層6は、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤及び滑り剤等の添加剤を含んでいてもよい。バリア層の表面は、コロナ処理、フレーム処理及びプラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
バリア層6は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリプロピレン及びシクロオレフィン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;並びにトリアセチルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。バリア層6は、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム又はポリオレフィンフィルムであることが好ましく、ポリエステルフィルム又はポリアミドフィルムであることがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)であることが更に好ましい。PETフィルムは、加工適性及び密着性の観点から望ましい。また、PETフィルムは、ガスバリア性の観点から、二軸延伸PETフィルムであることが好ましい。
バリア層6は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリプロピレン及びシクロオレフィン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;並びにトリアセチルセルロース等の基材フィルム上に蒸着層とバリア性被覆層とをこの順序で含む積層構造であってもよい。バリア性被覆層は蒸着層を覆うように設けられている。バリア性被覆層は、後工程での二次的な各種損傷を防止するとともに、高いバリア性を付与するために設けられるものである。バリア性被覆層の厚さは、50~2000nmであることが好ましく、100~1000nmであることがより好ましい。バリア性被覆層の厚さが50nm以上であると、膜形成がしやすくなる傾向があり、他方、2000nm以下であると、割れ又はカールを抑制できる傾向がある。
バリア性被覆層は、シロキサン結合を含んでいてもよい。シロキサン結合を含む化合物は、例えば、シラン化合物を用い、シラノール基を反応させて形成されることが好ましい。このようなシラン化合物としては、下記式2で表される化合物が挙げられる。
R1(OR2)4-nSi …(式2)
[式中、nは0~3の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。]
上記式2で表される化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。窒素を含むポリシラザンを使用してもよい。
バリア性被覆層には、他の金属原子からなる前駆体から作られる材料を使用してもよい。Ti原子を含む化合物としては、例えば、下記式3で表される化合物が挙げられる。
R1(OR2)4-nTi …(式3)
[式中、nは0~3の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。]
上記式3で表される化合物としては、例えば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、及びテトラブトキシチタニウム等が挙げられる。
Al原子を含む化合物としては、例えば、下記式4で表される化合物が挙げられる。
R1(OR2)3-mAl …(式4)
[式中、mは0~2の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。]
上記式4で表される化合物としては、例えば、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、及びトリブトキシアルミニウム等が挙げられる。
Zr原子を含む化合物としては、例えば、下記式5で表される化合物が挙げられる。
R1(OR2)4-nZr …(式5)
[式中、nは0~3の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。]
上記式5で表される化合物としては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、及びテトラブトキシジルコニウム等が挙げられる。
バリア性被覆層は、大気中で形成することもできる。バリア性被覆層を大気中で形成する場合は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアルコールのような極性を持つ化合物、ポリ塩化ビニリデン等の塩素を含む化合物、及びSi原子を含む化合物、Ti原子を含む化合物、Al原子を含む化合物、Zr原子を含む化合物等を含有する塗布液を蒸着層上に塗布し、乾燥硬化させることで形成することができる。バリア性被覆層を大気中で形成する際の塗布液の塗布方法としては、具体的には、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、及びダイコーター等による塗布方法が挙げられる。上記塗布液は塗布後、硬化される。硬化方法としては、特に限定されないが、紫外線硬化及び熱硬化等が挙げられる。
紫外線硬化の場合、塗布液は重合開始剤及び二重結合を有する化合物を含んでいてもよい。また必要に応じて、加熱エージングがされてもよい。
バリア性被覆層を大気中で形成する別の方法として、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウムなどの無機酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して脱水縮合することで得られる反応生成物をバリア性被覆層とする方法を用いることもできる。具体的には、無機酸化物の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)と、無機酸化物と反応可能なリン化合物の部位(例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子)とが、縮合反応を起こし、結合する。反応生成物は、例えば、無機酸化物とリン化合物とを含む塗布液を蒸着層の表面に塗布し、形成した塗膜を熱処理することにより、無機酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して結合する反応を進行させることで得られる。熱処理の温度の下限は、110℃以上であり、120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることが更に好ましい。熱処理温度が低いと、十分な反応速度を得ることが難しくなり、生産性が低下する原因となる。熱処理の温度の好ましい上限は、基材の種類などによって異なるが、220℃以下であり、190℃以下であることが好ましい。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、又はアルゴン雰囲気下などで実施することができる。
バリア性被覆層を大気中で形成する場合は、凝集等しない限り、上記塗布液は更に樹脂を含んでいてもよい。上記樹脂としては、具体的にはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。上記塗布液は、これらの樹脂のうち、塗布液中の他の材料との相溶性が高い樹脂を含むことが好ましい。上記塗布液は、更に、フィラー、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、並びに、シランカップリング剤及びチタンキレート剤等を必要に応じて含んでいてもよい。
[第四実施形態]
以下、第四実施形態に係る電磁波吸収体について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一~第三実施形態に係る電磁波吸収体と同様である。図4は、第四実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。この図に示す電磁波吸収体40は、保護層4と、抵抗層1と、バリア接着層5と、バリア層6と、接着層7と、誘電体層2と、接着層7と、反射層3とをこの順に備える積層体である。
(接着層)
接着層7は、誘電体層2に接着性、粘着性が無い場合、バリア層6と反射層3と密着させる為の層である。
接着層7の厚さは、吸収周波数と密着力に応じ適宜されることが好ましい。即ち0.5μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上25μm以下であることがより好ましい。この厚さが0.5μm以上であると十分な密着力が得られ、100μm以下であると電磁波抑制体の総厚を薄くすることができる。
接着層7は、例えば、アクリル系接着剤や粘着剤、エポキシ系接着剤や粘着剤、シリコーン系接着剤や粘着剤、ポリオレフィン系接着剤や粘着剤、ウレタン系接着剤や粘着剤、又はポリビニルエーテル系接着剤や粘着剤等が挙げられる。
<電磁波吸収体の製造方法>
[第一実施形態]
以下、第一実施形態に係る電磁波吸収体10の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、溶融した状態の熱可塑性樹脂を含む組成物を押出すことで誘電体層2を形成する工程を備える。
抵抗層1の製膜方法は、抵抗層1を構成する材質によって適宜選択されることが好ましい。例えば、材質が有機材料であれば、ウェットコーテイング法が好ましく、材質が無機材料であればドライコーテイング法が好ましい。ウエットコーティング法としては、例えば、ダイコーター、マイクログラビアコーター、キスリバースコーター及びリップコーターが挙げられる。ドライコーティング法としては、例えば、抵抗加熱蒸着、イオンビーム(EB)法及びスパッタリング法が挙げられる。抵抗層1は、誘電体層2の表面状に直接形成してよい。
熱可塑性樹脂としては、誘電体層2を構成する有機材料として例示した樹脂のうち、熱可塑性樹脂であるものを用いてよい。
電磁波吸収体10は、抵抗層1と、反射層3と、を誘電体層2により貼り合わせることで製造されてもよく、抵抗層1及び誘電体層2を備える積層体と、反射層3と、を積層体の誘電体層2及び反射層3が対向するように貼り合わせることで製造されてもよい。
[第二実施形態]
以下、第二実施形態に係る電磁波吸収体20の製造方法について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一実施形態に係る電磁波吸収体10の製造方法と同様である。
抵抗層1の製膜方法は、抵抗層1を構成する材質によって適宜選択されることが好ましい。例えば、材質が有機材料であれば、ウェットコーテイング法が好ましく、材質が無機材料であればドライコーテイング法が好ましい。ウエットコーティング法としては、例えば、ダイコーター、マイクログラビアコーター、キスリバースコーター及びリップコーターが挙げられる。ドライコーティング法としては、例えば、抵抗加熱蒸着、イオンビーム(EB)法及びスパッタリング法が挙げられる。抵抗層1は、保護層4の表面上に直接形成してよい。
誘電体層2は、ウェットコーティングにより形成される。ウェットコーティングは、誘電体層2を構成する材料が分散した分散液を基材上に塗工して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることで行われてよい。ウェットコーティングの方法としては、グラビアコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、コンマコーテイング及びナイフコーティングなどが挙げられ、分散液の塗工及び塗膜の乾燥という操作が1回であっても十分な厚さの誘電体層が形成できる傾向にあることから、コンマコーティング、ナイフコーティング及びロールコーティングであることが好ましい。誘電体層2は、抵抗層1の表面上に直接形成してもよいし、反射層3の表面上に直接形成してもよいし、一時的に誘電体層2に用いる材料に対し離形性のある材料が表面に形成された離形フィルム上に形成した後、誘電体層2と、反射層3をラミネート法で貼合し、離形フィルムを剥離し、保護層4の表面上に形成された抵抗層1と貼合してもよい。
ウェットコーティングにおいて、分散液の塗工及び塗膜の乾燥という操作は、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。
[第三実施形態]
以下、第三実施形態に係る電磁波吸収体30の製造方法について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一、第二実施形態に係る電磁波吸収体10、20の製造方法と同様である。本実施形態に係る製造方法は、ウェットコーティングにより誘電体層2を形成する工程を備える。
第一実施形態と同様の方法で作製した抵抗層1とバリア層6をバリア接着層5で貼合する。貼合方法は例えば、バリア層6の表面にグラビアコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、コンマコーティング及びナイフコーティングなどのウェットコーティング法で塗工及び塗膜の乾燥を行い形成したバリア接着層5に、抵抗層1をラミネートロールで直接貼合するドライラミネート法、または、前記ドライラミネート法でシリコーンやフッ素樹脂で形成された離形フィルムを一方の面に一時的に貼合した後、離形フィルムを剥がし、バリア接着層5に抵抗層1をラミネート法で貼合する方法がある。
更に、反射層3上に、接着、粘着性を有する誘電体層2で、抵抗層1、バリア接着層5、バリア層6の順に備える積層体のバリア層6上に、同様のドライラミネート法で貼合する。
[第四実施形態]
以下、第四実施形態に係る電磁波吸収体40の製造方法について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一~第三の実施形態に係る電磁波吸収体10、20、30の製造方法と同様である。本実施形態に係る製造方法は、溶融した状態の熱可塑性樹脂を含む組成物を押出すことで誘電体層2を形成する工程を備える。
反射層3にグラビアコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、コンマコーティング及びナイフコーティングなどのウェットコーティング法で塗工及び塗膜の乾燥を行い接着層7を形成し、第一実施形態と同様の方法で作製した誘電体層2をドライラミネート法で貼合した。
次に、第三実施形態と同様の方法で作製した抵抗層1、バリア接着層5、バリア層6を順に備える積層体のバリア層6の表面に、グラビアコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、コンマコーティング及びナイフコーティングなどのウェットコーティング法で塗工及び塗膜の乾燥を行い接着層7を形成し、誘電体層2、接着層7、反射層3を順に備える積層体の誘電体層2の表面を、ドライラミネート法で貼合する。
<実施例>
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず反射減衰特性について実測を行った実施例15、19、23、および比較例1で用いる各構成要素の部材と製造方法について述べる。
[保護層]
PETフィルム(厚さ:50μm、東レ株式会社製、商品名「ルミラーS10」)
[抵抗層]
ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PPS)との混合物(PEDOT/PSS)(ナガセケムテックス株式会社製)
[バリア接着層]
シリコーン粘着剤(商品名「KR-3700」「CAT-PL-50T」信越化学工業社製)
[バリア層]
バリアフィルム(商品名「GL-RD」凸版印刷社製)
[誘電体層]
アクリル粘着剤(商品名「OC-3405」「K-341」、サイデン化学株式会社製)
ウレタン樹脂(商品名「C60A」BASF社製)
チタン酸バリウムのナノ粒子(堺化学工業株式会社製、平均一次粒径:100nm)
[接着層]
エポキシウレタン接着剤(商品名「AD-393」「CAT-EP5」東洋インキ社製)
[反射層]
Al蒸着PETフィルム(蒸着層の厚さ:30nm、全体の厚さ:12μm)
(実施例15)
PETフィルム(保護層)の表面に、PEDOT/PSSの抵抗層(厚さ:500nm)を、固形分1.3wt%、バーコーターNo.30を用いて塗工後、120℃に設定したオーブンで1分間乾燥して第1の積層体を得た。
次に、バリアフィルム(バリア層)の表面に、KR-3700、CAT-PL-50T、トルエン溶媒が質量基準の混合比率40:0.2:60となるよう混合、攪拌し、固形分20wt%のシリコーン粘着剤を得た。作製したシリコーン粘着剤を、バーコーターNo.34を用いて塗工後、130℃に設定したオーブンで1分間乾燥しバリア接着層(厚さ:10μm)を形成した後、ラミネート温度40℃、圧力0.4MPa、速度1m/minに設定したラミネーターで第1の積層体と貼合し、第2の積層体を得た。
次に、誘電体層を以下の方法で得た。
チタン酸バリウムのナノ粒子、OC-3405、K-341、トルエン溶媒が質量基準の混合比率57:28:1:15、となるよう混合、攪拌し固形分74%のアクリル粘着剤を得た。
このように作製したアクリル粘着剤と、セパレートフィルム(商品名「TN-100」、東洋紡製)とシムテープ(厚さ300μm)とアプリケーター(200μmギャップ)を用いて以下のように塗工を行った。
セパレートフィルム離形面とアプリケーターの基準面の間にシムテープを設置した。こうしてアプリケーター塗工時のセパレートフィルム離形面と、アプリケーターナイフ部の間隔は常に平均500μmとなるようにした。
アクリル粘着溶液をセパレートフィルム離形面とアプリケーターギャップ間に滴下し、アプリケーター基準面をシムテープに接触させながらアプリケーターを走査するよう塗工した後、50℃に設定したオーブンで、2分間乾燥、80℃に設定したオーブンで、2分間乾燥、120℃に設定したオーブンで2分間乾燥させ製膜した後、製膜面同士をラミネート温度60℃、圧力0.4MPa、速度1m/minに設定したラミネート装置で貼合し誘電体層を得た。
こうして得られた誘電体層の片方のセパレートフィルムを剥離後、Al蒸着PETフィルム(反射層)をラミネート温度40℃、圧力0.4MPa、速度1m/minに設定したラミネート装置にて貼合し、もう一方のセパレートフィルムを剥離後、第2の積層体を同様にラミネート装置にて貼合した。
貼合後、50℃のエージングルームで3日間エージングし、図3に示す電磁波吸収体と同様の層構成の電磁波吸収体を得た。
(実施例19)
誘電体層とその上下層の貼合方法を以下の方法で作製した以外は、実施例15と同様にして電磁波吸収体を得た。
チタン酸バリウムのナノ粒子とウレタン樹脂ペレットC60Aを質量基準の混合比率70:30で混合、攪拌して得られた混合ペレットを、押出機に投入し、100℃で溶融・混錬し棒状に押し出し冷却した後、ペレット状に切断し、マスターバッチを作製した。
こうして得られたマスターバッチをカレンダーロール温度140℃、ロール間ギャップ390μmに設定したカレンダー成型機で圧延し成型シートを得た。
このように作製した成型シート上に、同様の方法で圧延した成型シートを積層し、誘電体層を得た。
次に、AD-393、CAT-EP5、IPA溶媒が質量基準の混合比率44:3:53となるよう混合、攪拌し、固形分25wt%のエポキシウレタン接着剤を得た。作製したエポキシウレタン接着剤を、Al蒸着PETフィルム(反射層)のPET表面に滴下し、バーコーターNo.34を用いて塗工後、130℃に設定したオーブンで1分間乾燥し接着層(厚さ:8μm)を形成した後、ラミネート温度40℃、圧力0.4MPa、速度1m/minに設定したラミネーターで誘電体層と貼合し、第3の積層体を得た。
同様に、エポキシウレタン接着剤を、第2の積層体のバリアフィルム表面に滴下し、
バーコーターNo.70を用いて塗工後、130℃に設定したオーブンで1分間乾燥し接着層(厚さ:18μm)を形成した後、ラミネート温度40℃、圧力0.4MPa、速度1m/minに設定したラミネーターで第3の誘電体の誘電体層面と貼合した。
(実施例21)
カレンダーロール間ギャップを270μmに設定した以外は、実施例19と同様にして電磁波吸収体を得た。
(比較例1)
PETフィルム(保護層)の表面に、PEDOT/PSSの抵抗層(厚さ:500nm)を、固形分1.3wt%、バーコーターNo.30を用いて塗工後、120℃に設定したオーブンで1分間乾燥して第1の積層体を得た。
次に、OC-3405、K-341、トルエン溶媒が質量基準の混合比率73:2:25、となるよう混合、攪拌し固形分45%のアクリル粘着剤を得た。
このように作製したアクリル粘着剤と、セパレートフィルム(商品名「TN-100」、東洋紡製)とシムテープ(厚さ300μm)とアプリケーター(200μmギャップ)を用いて以下のように塗工を行った。
セパレートフィルム離形面とアプリケーターの基準面の間にシムテープを設置した。こうしてアプリケーター塗工時のセパレートフィルム離形面と、アプリケーターナイフ部の間隔は常に平均500μmとなるようにした。
アクリル粘着溶液をセパレートフィルム離形面とアプリケーターギャップ間に滴下し、アプリケーター基準面をシムテープに接触させながらアプリケーターを走査するよう塗工した後、50℃に設定したオーブンで、2分間乾燥、80℃に設定したオーブンで、2分間乾燥、120℃に設定したオーブンで2分間乾燥させ製膜した後、製膜面同士をラミネート温度60℃、圧力0.4MPa、速度1m/minに設定したラミネート装置で貼合し誘電体層を得た。
こうして得られた誘電体層の片方のセパレートフィルムを剥離後、Al蒸着PETフィルム(反射層)のAl蒸着面とラミネート温度40℃、圧力0.4MPa、速度1m/minに設定したラミネート装置にて貼合し、もう一方のセパレートフィルムを剥離後、第1の積層体のPEDOT/PSSとを同様にラミネート装置にて貼合した。なお、比較例の誘電体層と反射層の接合面はAl蒸着層になるが、実施例と同様にPETが接合面になりように貼合してもよい。いずれの場合も信頼性試験に影響を及ぼすものではない。
<保護層の厚さの測定>
保護層の厚さは、シックネスゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用いてJIS B 7503:2011に準拠し、測定した。
<保護層の複素誘電率の測定>
保護層の複素誘電率は、ベクトルネットワークアナライザ(Keysight PNA N5222B 10MHz-43.5GHz、Virginia DiodesInc、WR12 55-95GHz)を用いた周波数変化法により測定した。保護層の複素誘電率の実部は、2.95、虚部は0.003であった。
<誘電体層の複素誘電率の測定>
誘電体層の複素誘電率は、ベクトルネットワークアナライザ(Keysight PNA N5222B 10MHz-26.5GHz、Virginia DiodesInc、WR12 55-95GHz)を用いた周波数変化法により測定した。誘電体層の複素誘電率を表1に示した。
<反射減衰特性の測定>
各実施例及び比較例で得られた電磁波吸収体について反射減衰量を以下の装置を使用して測定した。
ベクトルネットワークアナライザ(Keysight PNA N5222B 10MHz-26.5GHz、Virginia DiodesInc、WR12 55-95GHz)
高周波ネットワークアナライザー(アジレント・テクノロジー製、E8362C)
送信アンテナからミリ波を電磁波吸収体に照射し、電磁波吸収体を反射して受信アンテナに入射するミリ波の強度を測定して減衰量(dB)を求めた。
<高温高湿試験>
各実施例及び比較例で得られた電磁波吸収体を、以下の装置内に設置し、1000h経過後に取り出し、室温に戻した後、シート抵抗の測定と反射減衰易特性の測定を行った。
恒温恒湿器(エスペック社製、RP-4J)
<反射減衰特性のシミュレーション>
実施例1~14、16~18、20、22、及び比較例2~4に関しては、反射減衰特性をシミュレーションで導き出し、誘電体層の複素誘電率虚部が反射減衰特性に与える影響を評価した。シミュレーションソフトは、λ/4型電波吸収体における反射減衰特性を導出する理論とアルゴリズム(「電波吸収体入門」、橋本修著、森北出版、1997年、58~62、128~134頁参照)に基づいて内製したのものを使用した。シミュレーションでは、層構成を電磁波の入射側から順に、保護層、抵抗層、バリア接着層、バリア層、接着層、誘電体層、接着層、反射層(支持体PET、Al蒸着層(短絡))とし、各層は上述した製造方法と同様の方法で作製した。
こうして保護層の複素誘電率と厚みの実測結果、抵抗層のシート抵抗実測結果、バリア接着層の厚みと実測結果、バリア層の厚みと実測結果、接着層の厚みと実測結果、誘電体層の厚みの実測結果と複素誘電率、接着層の厚みと複素誘電率の実測結果、反射層の厚みと複素誘電率の実測結果、を設定値とした。信頼性試験85℃85%RH 700h及び1000h後は、反射層が無い構成を別途用意し、非接触抵抗計で測定した抵抗層のシート抵抗実測結果を設定値とした。
<特性評価>
実施例及び比較例について、反射減衰特性を実測及びシミュレーションで評価した結果を表1、図5~30に示した。反射減衰特性は、反射減衰量が最大になるときの周波数(GHz)と最大減衰量(dB)を、電磁波吸収体を作製した当初(初期)、信頼性試験(85℃85%RH 700h及び1000h)を行った後、の値で示している。
Figure 2023183509000003
Figure 2023183509000004
Figure 2023183509000005
↑は同上であることを表す。また(↑)は反射減衰量の実測やシミュレーションには影響を与えない数値であることを表す。
図5は、実施例1に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。図5(a)は初期での特性、図5(b)は85℃85%RH 1000hでの信頼性試験を行ったものの特性を示す。図6~図26も実施例2~22に関し実施例1と同様であるので説明を省略する。また図27は、比較例1に係る電磁波吸収体の反射減衰特性を示すグラフである。図27(a)は初期での特性、図27(b)は85℃85%RH 1000hでの信頼性試験を行ったものの特性を示す。図28~図30も比較例2~4に関し比較例1と同様であるので説明を省略する。
実施例及び比較例から明らかなように、誘電体層の複素誘電率の虚部が0.5以上の電磁波吸収体に関しては、85℃85%RH、700hの信頼性試験を行った後で、シート抵抗の値が増加した場合でも反射減衰量が10dB以上の良好な特性を維持する。また、85℃85%RH、1000hの信頼性試験の行った場合でも大半の実施例で反射減衰量10dB以上の良好な特性を示した。
<適用事例>
第一~第四実施形態に係る電磁波吸収体10、20、30、40は、様々な物品に適用可能である。物品の具体例として、建装材(例えば、鏡面化粧板、フロアシート及び化粧フィルム)や産業資材(例えば、路面部材、ガードレール、道路標識及び防音壁)が挙げられる。第一~第四実施形態に係る電磁波吸収体10、20、30、40を建装材に適用することで、例えば、オフィスビルや集合住宅で、5G、6Gなどの電磁波を用いた高速無線通信を使用する場合であっても、良好な反射減衰量を実現することで5G、6G本来の通信速度を維持できる。具体的には、内壁の少なくとも一部が第一~第四実施形態に係る電磁波吸収体10、20、30、40を備えた前記建装材で覆われている部屋と、前記部屋内に配置された発信器とを備える通信安定室であれば係る効果を期待できる。また前記通信安定室と当該通信安定室内に配置された無線通信装置とを備えるシステムも同様の効果を期待できる。さらには前記通信安定室または前記システムが形成する空間で良好な反射減衰量が実現された通信安定空間を提供することも可能である。この他例えば、第一~第四実施形態に係る電磁波吸収体10、20、30、40を産業資材に適用することで、電磁波の散乱やノイズを抑制することができ、自動運転の安全性向上に寄与できる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
本発明の内容となり得る項目を以下に述べる、ただしこれに限られるものではない。
(項目1)
抵抗層と、誘電体層と、反射層を順に備える積層体であり、
前記誘電体層は少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有し、複素誘電率の虚部が0.5以上であり、
85℃85%RH、700hの信頼性試験後における反射減衰量が10dB以上である、電磁波吸収体。
(項目2)
前記誘電体層の複素誘電率の実部が10以上である、項目1に記載の電磁波吸収体。
(項目3)
前記抵抗層のシート抵抗が400Ω/□以上1000Ω/□以下である、項目1または2に記載の電磁波吸収体。
(項目4)
前記抵抗層の体積抵抗率が8.0×10-5~4.0×10-3Ω・mの導電性高分子材料である、項目1~3のいずれか一つに記載の電磁波吸収体。
(項目5)
前記抵抗層の厚みが150nm~2000nmである、項目1~4のいずれか一つに記載の電磁波吸収体。
(項目6)
前記抵抗層のシート抵抗R(Ω/□)と、前記誘電体層の複素誘電率の実部εと、虚部εが式1の関係である、項目1~5のいずれか一つに記載の電磁波吸収体。
Figure 2023183509000006
(項目7)
前記積層体が、前記抵抗層と、バリア接着層と、バリア層と、前記誘電体層と、前記反射層を順に備える、項目1~6のいずれか一つに記載の電磁波吸収体。
(項目8)
前記積層体が、前記抵抗層と、前記バリア接着層と、前記バリア層と、接着層と、前記誘電体層と、接着層と、前記反射層を順に備える、項目7のいずれか一つに記載の電磁波吸収体。
(項目9)
85℃85%RH 1000hの信頼性試験後の反射減衰量が10dB以上である、項目1~8のいずれか一つに記載の電磁波吸収体。
(項目10)
項目1~9のいずれか一つに記載の電磁波吸収体を備える、建装材。
(項目11)
内壁の少なくとも一部が項目10に記載の建装材で覆われている部屋と、前記部屋内に配置された発信器と、
を備える通信安定室。
(項目12)
項目11に記載の通信安定室と、
前記通信安定室内に配置された無線通信装置と、
を備えるシステム。
1…抵抗層、2…誘電体層、3…反射層、4…保護層
5…バリア接着層、6…バリア層、7…接着層
10、20、30、40…電磁波吸収体

Claims (12)

  1. 抵抗層と、誘電体層と、反射層を順に備える積層体であり、
    前記誘電体層は少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有し、複素誘電率の虚部が0.5以上であり、
    85℃85%RH、700hの信頼性試験後における反射減衰量が10dB以上である、電磁波吸収体。
  2. 前記誘電体層の複素誘電率の実部が10以上である、請求項1に記載の電磁波吸収体。
  3. 前記抵抗層のシート抵抗が400Ω/□以上1000Ω/□以下である、請求項1または2に記載の電磁波吸収体。
  4. 前記抵抗層の体積抵抗率が8.0×10-5~4.0×10-3Ω・mの導電性高分子材料である、請求項1または2に記載の電磁波吸収体。
  5. 前記抵抗層の厚みが150nm~2000nmである、請求項1または2に記載の電磁波吸収体。
  6. 前記抵抗層のシート抵抗R(Ω/□)と、前記誘電体層の複素誘電率の実部εと、虚部εが式1の関係である、請求項1または2に記載の電磁波吸収体。
    Figure 2023183509000007
  7. 前記積層体が、前記抵抗層と、バリア接着層と、バリア層と、前記誘電体層と、前記反射層を順に備える、請求項1に記載の電磁波吸収体。
  8. 前記積層体が、前記抵抗層と、前記バリア接着層と、前記バリア層と、接着層と、前記誘電体層と、接着層と、前記反射層を順に備える、請求項7に記載の電磁波吸収体。
  9. 85℃85%RH 1000hの信頼性試験後の反射減衰量が10dB以上である、請求項1に記載の電磁波吸収体。
  10. 請求項1、2、7~9のいずれか一つに記載の電磁波吸収体を備える、建装材。
  11. 内壁の少なくとも一部が請求項10に記載の建装材で覆われている部屋と、前記部屋内に配置された発信器と、を備える通信安定室。
  12. 請求項11に記載の通信安定室と、
    前記通信安定室内に配置された無線通信装置と、を備えるシステム。
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