JP2023180907A - ケーブル - Google Patents

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Masanori Kobayashi
得天 黄
Tokuten Ko
剛聡 伊藤
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真治 片岡
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Abstract

【課題】屈曲や捻回に対する耐性が高く、かつ、繰り返し屈曲や捻回を加えられた場合でも良好な信号伝送が可能なケーブルを提供する。【解決手段】ケーブル1は、導体21の周囲に絶縁体22を有する電線2を少なくとも1本有するケーブルコア3と、ケーブルコア3の周囲に設けられたシールド層4と、シールド層4の周囲に設けられた被覆層5と、を備え、シールド層4は、複数本の金属素線41aが集合撚りされた複数本の集合撚線41を、当該集合撚線41同士が互いに接触した状態でケーブルコア3の周囲に螺旋状に巻き付けてなる横巻きシールドからなり、ケーブル長手方向に垂直な断面において、周方向に隣り合う集合撚線41同士と被覆層5とで囲まれる部分に空隙42を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、ケーブルに関する。
特許文献1では、編組からなるシールド層を複数積層させた外部導体を有する同軸ケーブルが開示されている。特許文献1によれば、編組からなるシールド層を複数積層させた外部導体を有することで、特に、低周波帯域(例えば、1MHz以下の帯域)でのシールド性能の向上が図れるとされている。
特開2004-214137号公報
ところで、自動車溶接や部品組み立て等を行う製造ライン等で用いられる産業用ロボットでは、その内部に配線されるケーブルが繰り返し屈曲や捻回を受ける。特に、産業ロボットの手首部分に配線されるケーブルは、屈曲と捻回とを同時に受けるといった過酷な環境下におかれるため、屈曲や捻回に対する耐性が高いことが求められる。また、近年では、例えば、産業用ロボットの先端部にカメラが搭載される場合がある。このカメラ用のケーブルには、屈曲や捻回に対する耐性が高いことに加え、制御装置とカメラとの間の信号伝送も良好に行えることが求められる。
このようなケーブルとして、特許文献1に記載の同軸ケーブルを用いた場合、過酷な屈曲・捻回の影響で、編組を構成する金属素線間に隙間が生じやすい。編組の金属素線間に隙間が生じると、外部からのノイズがケーブルに入りやすくなるため、良好な信号伝送が行えなくなるおそれがある。また、特許文献1に記載のケーブルでは、屈曲・捻回が繰り返し加えられることで、積層させた編組同士が繰り返し互いに擦れ合い、その擦れによって編組を構成する金属素線が断線してしまうおそれがあり、屈曲や捻回に対する耐性が十分でない。
そこで、本発明は、屈曲や捻回に対する耐性が高く、かつ、繰り返し屈曲や捻回を加えられた場合でも良好な信号伝送が可能なケーブルを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体の周囲に絶縁体を有する電線を少なくとも1本有するケーブルコアと、前記ケーブルコアの周囲に設けられたシールド層と、前記シールド層の周囲に設けられた被覆層と、を備え、前記シールド層は、複数本の金属素線が集合撚りされた複数本の集合撚線を、当該集合撚線同士が互いに接触した状態で前記ケーブルコアの周囲に螺旋状に巻き付けてなる横巻きシールドからなり、ケーブル長手方向に垂直な断面において、周方向に隣り合う前記集合撚線同士と前記被覆層とで囲まれる部分に空隙を有する、ケーブルを提供する。
本発明によれば、屈曲や捻回に対する耐性が高く、かつ、繰り返し屈曲や捻回を加えられた場合でも良好な信号伝送が可能なケーブルを提供できる。
本発明の一実施の形態に係るケーブルのケーブル長手方向に垂直な断面示す断面図である。 (a)は屈曲試験、(b)は捻回試験、(c)はしごき試験を説明する図である。 本発明の他の実施の形態に係るケーブルのケーブル長手方向に垂直な断面示す断面図である。
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本実施の形態に係るケーブル1のケーブル長手方向に垂直な断面示す断面図である。ケーブル1は、例えば、産業用ロボットの可動部等の繰り返し屈曲・捻回(あるいは揺動)を受ける部位を通るように配線されるケーブルであり、例えば、産業用ロボットに設けられたカメラ用のケーブルとして用いられる。本実施の形態に係るケーブル1は、特に、産業用ロボットの手首部分など、屈曲と捻回の両方が加えられる過酷な部位に配線されるケーブルとして好適である。なお、ケーブル1の用途は産業用ロボットに限定されず、ケーブル1は、例えば、車両用のケーブルとして用いられてもよい。
図1に示すように、ケーブル1は、導体21の周囲に絶縁体22を有する電線2を少なくとも1本有するケーブルコア3と、ケーブルコア3の周囲に設けられたシールド層4と、シールド層4の周囲に設けられた被覆層(シース)5と、を備えている。
(ケーブルコア3)
導体21としては、複数本の金属素線を集合撚りで撚り合わせした集合撚線、または同心撚りで撚り合わせた同心撚線で構成される。なお、導体21は、撚線が圧縮された圧縮導体で構成されてもよい。また、導体21としては、後述するシールド層4を構成する集合撚線41と同じ撚線構造からなる集合撚線(すなわち、後述する集合撚線41を構成する金属素線41aと同じ外径の金属素線を同じ本数で集合撚りした集合撚線)を用いるとよい。これにより、集合撚線41と異なる構造の導体21を用いた場合と比較して、部品点数を削減し製造工程を減らすことが可能になり、低コスト化が可能になる。集合撚線41の詳細については後述する。また、導体21は、その撚り方向が、後述する集合撚線41の撚り方向と同じであるとよい。また、導体21は、その撚りピッチが、後述する集合撚線41の撚りピッチと同じであるとよい。これにより、ケーブル1が繰り返し屈曲や捻回等の動作を受けても、特性インピーダンス等の伝送特性を安定させることが可能であり、良好な信号伝送が行える。なお、ここでいう伝送特性としては、例えば、周波数が10MHzのときの特性インピーダンスが75±5Ω、周波数が625MHzのときの減衰量が20dB/30m以下、20℃でのDC往復抵抗が5Ω/30m未満である。
絶縁体22としては、単層のものを用いてもよいし、複数層のものを用いてもよい。本実施の形態では、導体21の周囲にチューブ押出により形成されたフッ素樹脂組成物からなる第1絶縁体22aと、第1絶縁体22aの周囲を覆うように形成された発泡樹脂組成物からなる第2絶縁体22bと、第2絶縁体22bの周囲を覆うように形成された非発泡の樹脂組成物からなる第3絶縁体22cと、からなる3層構造の絶縁体22を用いた。第1絶縁体22aのフッ素樹脂組成物としては、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)を用いた。第2絶縁体22bの発泡樹脂組成物としては、発泡ポリプロピレン樹脂組成物を用いた。第3絶縁体22cの非発泡の樹脂組成物としては、非発泡のポリプロピレン樹脂組成物を用いた。
本実施の形態では、ケーブルコア3が、1本の電線2で構成されている。この場合、ケーブル1は、導体21の周囲に、絶縁体22、シールド層4、被覆層5を順次設けた同軸ケーブルとなる。これに限らず、ケーブルコア3は、複数本の電線2を用いたものであってもよい。例えば、ケーブルコア3は、複数本の電線2を撚り合わせ、その周囲に押さえ巻きテープを螺旋状に巻きつけて構成されてもよい。
(被覆層5)
ケーブルコア3の周囲を覆うようにシールド層4が形成されており、そのシールド層4の周囲を覆うように被覆層5が形成されている。シールド層4の詳細については後述する。
被覆層5は、ケーブルコア3やシールド層4を保護するための層である。被覆層5は、被覆層5を構成する樹脂が後述するシールド層4の集合撚線41同士の間に隙間なく入り込んでしまわないように(後述する空隙42が形成されるように)、チューブ押出により断面が円筒状に形成されている。本実施の形態では、ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなる被覆層5を用いた。被覆層5の外径、すなわちケーブル1全体の外径は、例えば6.5mm程度である。なお、被覆層5は、樹脂で構成される以外にテープ部材が巻き付けられて構成されていてもよく、また、テープ部材が巻き付けられてなるテープ部と、テープ部の周囲に樹脂をチューブ押出や挿入押出などで形成してなる樹脂部と、で構成されていてもよい。テープ部材としては、例えば、フッ素樹脂組成物で構成される。テープ部材の巻き方向は、シールド層4を構成する複数本の集合撚線41の巻き付け方向と同じであるとよい。シールド層4の周囲にテープ部材が巻き付けられていることにより、複数本の集合撚線41のそれぞれが絶縁体22の表面から離間しにくくなるため、特性インピーダンス等の伝送特性がさらに安定することになり、ケーブル1が繰り返し屈曲や捻回等の動作を受けても良好な信号伝送を維持しやすくなる。
(シールド層4)
本実施の形態に係るケーブル1では、シールド層4は、複数本の金属素線41aが集合撚りされた複数本の集合撚線41を、当該集合撚線41同士が互いに接触した状態でケーブルコア3の周囲に螺旋状に巻き付けた横巻きシールドからなる。シールド層4を横巻きシールドで構成することで、シールド層4を編組で構成した場合と比較して、ケーブル1に屈曲や捻回を加えた際にシールド層4が変形しやすくなり、屈曲や捻回に対する耐性が向上する。また、横巻きシールドに集合撚線41を用いることで、屈曲や捻回の際に集合撚線41が潰れるように変形できるようになるため、金属素線41a間に隙間が生じにくくなり、屈曲や捻回によるシールド効果の低下を抑制して良好な信号伝送を維持できる。なお、金属素線41aを同心撚りした場合には、屈曲や捻回時に変形しにくくなってしまうため、シールド層4には、同心撚線ではなく集合撚線41を用いる。なお、隣り合う集合撚線41同士は、互いに面接触していることがよい。これにより、ケーブル1が屈曲や捻回を受けたときに、隣り合う集合撚線41同士が離間せずに接触した状態となり、また、集合撚線41が絶縁体22の表面から離間しにくくなるため、伝送特性が安定し、良好な信号伝送を維持できる。
集合撚線41に用いる金属素線41aとしては、軟銅線または銅合金線を用いることができる。金属素線41aとして銅合金線を用いる場合、屈曲時や捻回時に断線しないように、引張強度が320MPa以上、かつ伸びが5%以上のものを用いるとよい。また、屈曲や捻回を容易とするために、金属素線41aの外径は、できるだけ小さいことが望ましく、0.1mm以下とするとよい。
屈曲や捻回を容易とし、屈曲や捻回時に集合撚線41が潰れやすく(変形しやすく)なるようにし、かつ、十分なシールド効果が得られる金属ボリューム(金属量、あるいは断面積)を確保するために、できるだけ細い金属素線41aを用い、集合撚線41を構成する金属素線41aの本数を多くすることが望ましい。具体的には、金属素線41aの外径は、0.1mm以下とするとよい。また、集合撚線41を構成する金属素線41aの本数は、20本以上、より好ましくは30本以上とするとよい。20本以上の金属素線41aを集合撚りして集合撚線41を構成することで、集合撚線41の径方向には少なくとも5本以上の金属素線41aが並んで配置されることになる。よって、金属素線41aの外径、すなわち、シールド層4の厚さは、金属素線41aの外径の5倍以上であるとよい。本実施の形態では、外径0.08mmの金属素線41aを50本集合撚りした集合撚線41を用いた。
集合撚線41の撚りピッチPは、集合撚線41の太さを考慮し、集合撚線41がある程度束状の状態を維持しつつも、屈曲や捻回時には潰れて変形できるように設定されるとよい。より具体的には、集合撚線41は、その撚りピッチPと、集合撚線41の最外層に配置される金属素線41aの層心径Pdとの比であるP/Pdは、10以上20以下とされるとよい。なお、撚りピッチPとは、任意の金属素線41aが集合撚線41の周方向において同じ周方向位置となる箇所の、集合撚線41の長手方向に沿った間隔である。また、層心径Pdとは、集合撚線41の長手方向に垂直な断面において、集合撚線41の最外層に配置される金属素線41aの中心を通る円の直径であり、集合撚線41全体の外径から金属素線41aの外径を減じた値に等しい。P/Pdを10以上とすることで、撚りピッチPが小さくなり過ぎて捻回時に断線しやすくなることを抑制できる。また、P/Pdを20以下とすることで、撚りピッチPが大きくなり過ぎて(集合撚線41が直線状に配置されている状態に近くなって)屈曲時に断線しやすくなることを抑制できる。本実施の形態では、ケーブル1の外径を6.5mmとしたが、この場合、集合撚線41の撚りピッチPは、10mm以下であるとよい。なお、それぞれの集合撚線41の撚り方向(すなわち、複数本の金属素線41aの集合撚り方向)は、複数本の集合撚線41の巻き付け方向と同じであるとよい。これにより、ケーブル1が屈曲や捻回等の動作を受けたときに、横巻きシールドを構成する集合撚線41を崩れにくくすることや、絶縁体22から集合撚線41を離間しにくくすることができるため、屈曲や捻回に対する耐性が高く、かつ、繰り返し屈曲や捻回を受けても良好な信号伝送が可能となる。
上述した集合撚線41の撚りピッチPや、P/Pdとすることにより、ケーブル1のシールド層4において、集合撚線41がある程度束状の状態を維持できるようになるため、ケーブル長手方向に垂直な断面において、周方向に隣り合う集合撚線41同士と被覆層5(被覆層5の内周面)とで囲まれる部分には、空隙42が形成される。空隙42は、すなわち、周方向に隣り合う集合撚線41間の谷間部分(凹部)である。この空隙42が存在することで、屈曲時等に集合撚線41を構成する金属素線41aが空隙42に逃げて、集合撚線41が変形することが可能になる。すなわち、ケーブル1が屈曲や捻回(あるいは揺動)の動作を受けたときに、空隙42は、該動作によってシールド層4に加わる応力に対して集合撚線41の形状を変形させるように金属素線41aを案内させるための案内部となる。空隙42は、ケーブル長手方向に垂直な断面において、金属素線41aの断面積よりも大きい断面積を有するとよい。なお、屈曲時や捻回時には、集合撚線41の変形によって、空隙42が小さくなったり無くなったりする(空隙42が埋まった状態となる)場合があるため、ケーブル周方向において、少なくとも1つの空隙42(金属素線41aの断面積よりも大きい断面積の空隙42)が存在していればよい。また、周方向に隣り合う集合撚線41同士とケーブルコア3(ケーブルコア3の外周面)とで囲まれる部分にも、空隙が形成されているとよい。空隙42の大きさは、例えば、光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡を用いて、ケーブル長手方向に垂直な断面を観察することで求められる。
シールド層4に用いる集合撚線41の本数は、ケーブルコア3の外径や集合撚線41の外径にもよるが、少なくとも15本以上であるとよい。シールド層4における巻きピッチPsは、ケーブルコア3の外径を考慮し、屈曲時に集合撚線41に負荷がかかりにくいピッチに設定されるとよい。具体的には、シールド層4は、横巻きシールドにおける巻きピッチPsと、シールド層4の層心径Pdsとの比であるPs/Pdsが、10未満であるとよく、より好ましくは、5以上9以下であるとよい。なお、巻きピッチPsとは、任意の集合撚線41がケーブルコア3の周方向において同じ周方向位置となる箇所のケーブル長手方向に沿った間隔である。また、シールド層4の層心径Pdsとは、ケーブル長手方向に垂直な断面において、集合撚線41の中心(シールド層4の層心)を通る円の直径であり、シールド層4の外径から集合撚線41の外径を減じた値、あるいは、シールド層4の内径と外径との中間値に等しい。
(屈曲試験、捻回試験、しごき試験の結果)
図1のケーブル1を試作して実施例とし、屈曲試験、捻回試験、及びしごき試験を行った。屈曲試験では、図2(a)に示すように、ケーブル1の線心の移動が起こらないようにケーブル1を固定し、左右90度屈曲することを繰り返す左右90度屈曲試験を行った。図2(a)に示す矢印a~dのサイクルを1回として、毎分30回の速度で屈曲を繰り返した。シールド層4に定電圧源により数Vの電圧を加え、初期(屈曲を繰り返す前の状態でのシールド層4の抵抗値)に対してシールド層4の抵抗値が20%上昇したときに断線したと判断した。また、屈曲試験では、曲げ半径を15mmとし、荷重Wを0.5kgf(4.9N)とした。屈曲試験では、屈曲回数30万回後に断線が生じていない場合に合格(〇)とし、屈曲回数30万回以前に断線が生じた場合に不合格(×)とした。
捻回試験では、図2(b)に示すように、ケーブル1の線心の移動が起こらないようにケーブル1を固定し、±180°捻回することを繰り返す±180°捻回試験を行った。図2(b)に示す矢印a~dのサイクルを1回として、毎分30回の速度で捻回を繰り返した。断線の判断については、屈曲試験と同様とした。すなわち、シールド層4に定電圧源により数Vの電圧を加え、初期(捻回を繰り返す前の状態でのシールド層4の抵抗値)に対してシールド層4の抵抗値が20%上昇したときに断線したと判断した。また、捻回試験では、捻回長を500mm、荷重Wを0.5kgf(4.9N)とした。捻回試験では、捻回回数30万回後に断線が生じていない場合に合格(〇)とし、捻回回数30万回以前に断線が生じた場合に不合格(×)とした。
しごき試験では、図2(c)に示すように、2つの滑車91を有するスライド部9を用い、両滑車91でケーブル1をそれぞれ180°方向転換させてクランク状にケーブル1を配置した状態で、スライド部9を左右に一定のストロークで平行移動させることを繰り返した。図2(c)に示す矢印a,bのサイクル(一往復)を1回とし、毎分10回の速度でスライド部9を往復させた。断線の判断については、屈曲試験と同様とした。すなわち、シールド層4に定電圧源により数Vの電圧を加え、初期(スライド部9のスライドを繰り返す前の状態でのシールド層4の抵抗値)に対してシールド層4の抵抗値が20%上昇したときに断線したものと判断した。また、しごき試験では、滑車91の直径を120mmとし、ケーブル1の両端部の荷重をそれぞれ0.6kgf(5.9N)とした。しごき試験では、しごき回数2000回後に断線が生じていない場合に合格(〇)とし、しごき回数2000回以前に断線が生じた場合に不合格(×)とした。
同様にして、シールド層4に編組を2層積層した2重編組を用いた以外は実施例と同じ構造の比較例のケーブルを作成し、実施例と同様に屈曲試験、捻回試験、及びしごき試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
Figure 2023180907000002
表1に示すように、実施例のケーブル1では、屈曲試験、捻回試験、及びしごき試験のいずれにおいても合格となり、繰り返し屈曲、捻回、しごきが加えられた場合の耐性が高いことが確認できた。これに対して、比較例のケーブルでは、屈曲試験においては屈曲回数10万回、捻回試験では捻回回数10万回で断線が発生し、屈曲試験及び捻回試験が不合格となった。また、しごき試験では、実施例と比較例ともに合格となったが、比較例よりも実施例の方が抵抗値が増加しにくい傾向にあることが確認できた。実施例、比較例のいずれにおいても、試料を3つ作成し同様の試験を行ったが、同様の結果が得られた。以上の結果から、本発明による実施例のケーブル1は、屈曲、捻回、及びしごきに対する耐性が十分に高いことが確認できた。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル1では、シールド層4は、複数本の金属素線41aが集合撚りされた複数本の集合撚線41を、当該集合撚線41同士が互いに接触した状態でケーブルコア3の周囲に螺旋状に巻き付けた横巻きシールドからなり、ケーブル長手方向に垂直な断面において、周方向に隣り合う集合撚線41同士と被覆層5とで囲まれる部分に空隙42を有している。
例えば、シールド層4を編組で構成した場合、シールド性能を高めるために編組を積層すると、積層した編組同士が屈曲や捻回により擦れて断線が発生しやすくなる。これに対して、本実施の形態では、集合撚線41を横巻きしたシールド層4とすることで、編組を積層した場合と同等以上のシールド性能を確保しつつも、屈曲や捻回に対する耐性を高めることが可能になる。さらに、集合撚線41を横巻きしたシールド層4とすることで、多数の金属素線41aが径方向に積層して配置されている状態となっているため、屈曲や捻回によって金属素線41a間に隙間が生じにくく、シールド性能が高い。
また、周方向に隣り合う集合撚線41同士と被覆層5とで囲まれる部分に空隙42が形成されるようにすること、すなわち、集合撚線41をある程度束状に維持できるように構成することで、屈曲や捻回時に集合撚線41を構成する金属素線41aが空隙42に逃げるように変形することが可能となる。その結果、屈曲や捻回時に金属素線41aに過大な負荷がかかることが抑制され、金属素線41aの断線を抑制することができると共に、金属素線41a同士の間に隙間が生じてしまうことが抑制され、シールド性能の低下を抑制することが可能になる。このように、本実施の形態によれば、屈曲や捻回に対する耐性が高く、かつ、繰り返し屈曲や捻回を加えられた場合でも良好な信号伝送が可能なケーブル1を実現できる。
(他の実施の形態)
図3は、本発明の他の実施の形態に係るケーブル1aのケーブル長手方向に垂直な断面示す断面図である。図3に示すように、ケーブル1aは、図1のケーブル1と基本的に同じ構成であり、被覆層5が、樹脂で構成され、周方向に隣り合う集合撚線41同士の間に入り込む凸部5aを有する点が異なっている。
このような凸部5aを有する被覆層5は、例えば挿入押出によって、被覆層5のケーブル径方向内方への締め付け力を大きくすることで、形成することができる。なお、被覆層5は挿入押出等によってチューブ状に形成されるため、周方向に隣り合う集合撚線41間の谷間部分に形成される空隙42は、その一部が凸部5aにより埋められるものの、他部が周方向に隣り合う集合撚線41と凸部5aとの間に残っている。なお、被覆層5は、上述した実施の形態と同様に、テープ部材がシールド層4の周囲に巻き付けられて構成されるテープ部をさらに有してもよい。
被覆層5が凸部5aを有することで、被覆層5がシールド層4をケーブル径方向内方に押さえ込むように作用するため、ケーブル1aを屈曲・捻回させたときに、シールド層4を構成する集合撚線41が絶縁体22の表面から離間しにくくなる。そして、集合撚線41が絶縁体22の表面から離間しにくくなることにより、導体21と集合撚線41(シールド層4)間の距離が安定し、それにより特性インピーダンス等の伝送特性を安定させることが可能になる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]導体(21)の周囲に絶縁体(22)を有する電線(2)を少なくとも1本有するケーブルコア(3)と、前記ケーブルコア(3)の周囲に設けられたシールド層(4)と、前記シールド層(4)の周囲に設けられた被覆層(5)と、を備え、前記シールド層(4)は、複数本の金属素線(41a)が集合撚りされた複数本の集合撚線(41)を、当該集合撚線(41)同士が互いに接触した状態で前記ケーブルコア(3)の周囲に螺旋状に巻き付けてなる横巻きシールドからなり、ケーブル長手方向に垂直な断面において、周方向に隣り合う前記集合撚線(41)同士と前記被覆層(5)とで囲まれる部分に空隙(42)を有する、ケーブル(1)。
[2]前記複数本の集合撚線(41)は、その撚りピッチPと、前記集合撚線(41)の最外層に配置される前記金属素線(41a)の層心径Pdとの比であるP/Pdが、10以上20以下である、[1]に記載のケーブル(1)。
[3]前記シールド層(4)は、前記横巻きシールドにおける巻きピッチPsと、前記シールド層(4)の層心径Pdsとの比であるPs/Pdsが、10未満である、[1]または[2]に記載のケーブル(1)。
[4]前記導体(21)は、前記横巻きシールドを構成する前記集合撚線(41)と同じ構造の集合撚線で構成されている、[1]乃至[3]のいずれかに記載のケーブル(1)。
[5]前記シールド層(4)は、その厚さが前記金属素線(41a)の外径の5倍以上である、[1]乃至[4]のいずれかに記載のケーブル(1)。
[6]前記空隙(42)は、前記ケーブル長手方向に垂直な断面において、前記金属素線(41a)の断面積よりも大きい断面積を有する、[1]乃至[5]のいずれかに記載のケーブル(1)。
[7]前記シールド層(4)は、前記周方向に隣り合う前記集合撚線(41)同士が面接触している、[1]乃至[6]のいずれかに記載のケーブル(1)。
[8]前記被覆層(5)は、前記シールド層(4)の周囲に巻き付けられたテープ部材で構成されるテープ部を有する、[1]乃至[7]のいずれかに記載のケーブル(1)。
[9]前記被覆層(5)は、前記集合撚線(41)同士の間に入り込む凸部を有する、[1]乃至[8]のいずれかに記載のケーブル(1)。
[10]前記空隙(42)は、前記シールド層(4)に加わる応力に対して前記集合撚線(41)の形状を変形させるように前記金属素線(41a)を案内させる案内部である、[1]乃至[9]のいずれかに記載のケーブル(1)。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
1…ケーブル
2…電線
21…導体
22…絶縁体
3…ケーブルコア
4…シールド層
41…集合撚線
41a…金属素線
42…空隙
5…被覆層

Claims (10)

  1. 導体の周囲に絶縁体を有する電線を少なくとも1本有するケーブルコアと、
    前記ケーブルコアの周囲に設けられたシールド層と、
    前記シールド層の周囲に設けられた被覆層と、を備え、
    前記シールド層は、複数本の金属素線が集合撚りされた複数本の集合撚線を、当該集合撚線同士が互いに接触した状態で前記ケーブルコアの周囲に螺旋状に巻き付けてなる横巻きシールドからなり、
    ケーブル長手方向に垂直な断面において、周方向に隣り合う前記集合撚線同士と前記被覆層とで囲まれる部分に空隙を有する、
    ケーブル。
  2. 前記複数本の集合撚線は、その撚りピッチPと、前記集合撚線の最外層に配置される前記金属素線の層心径Pdとの比であるP/Pdが、10以上20以下である、
    請求項1に記載のケーブル。
  3. 前記シールド層は、前記横巻きシールドにおける巻きピッチPsと、前記シールド層の層心径Pdsとの比であるPs/Pdsが、10未満である、
    請求項1に記載のケーブル。
  4. 前記導体は、前記横巻きシールドを構成する前記集合撚線と同じ構造の集合撚線で構成されている、
    請求項1に記載のケーブル。
  5. 前記シールド層は、その厚さが前記金属素線の外径の5倍以上である、
    請求項1に記載のケーブル。
  6. 前記空隙は、前記ケーブル長手方向に垂直な断面において、前記金属素線の断面積よりも大きい断面積を有する、
    請求項1に記載のケーブル。
  7. 前記シールド層は、前記周方向に隣り合う前記集合撚線同士が面接触している、
    請求項1に記載のケーブル。
  8. 前記被覆層は、前記シールド層の周囲に巻き付けられたテープ部材で構成されるテープ部を有する、
    請求項1に記載のケーブル。
  9. 前記被覆層は、前記集合撚線同士の間に入り込む凸部を有する、
    請求項1に記載のケーブル。
  10. 前記空隙は、前記シールド層に加わる応力に対して前記集合撚線の形状を変形させるように前記金属素線を案内させる案内部である、
    請求項1に記載のケーブル。
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