JP2023177377A - 多発性硬化症治療薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】多発性硬化症の治療薬を提供することを課題とする。また、機能障害が残り予後が悪いにも関わらず、承認薬が少ない進行型、二次進行型の患者に対して効果を奏する治療薬を提供することを課題とする。【解決手段】活性型IL-18のみを認識する抗体、すなわちネオエピトープを認識する抗体を投与することによって、再発寛解を繰り返し、機能障害が進行していく多発性硬化症モデルに対する効果が認められた。活性型IL-18のみを認識する抗体を使用することにより、活性のある成熟型IL-18の作用を効果的に中和することができるため、進行型の多発性硬化症に対しても効果を奏する。【選択図】図2

Description

本発明は、多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)の治療薬に関する。特に、炎症と神経変性をターゲットとすることにより、多発性硬化症の進行を抑制し、再発を予防する医薬に関する。
多発性硬化症は、脳、脊髄などの中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患の一つであり、病変が空間的・時間的に多発する疾患である。代表的な病理的所見は、脳や脊髄の散在性の脱落斑であり、病歴と共に神経変性に移行する。自己免疫が関与して炎症が生じ、脱髄が起こると考えられているが、原因が明らかになっているわけではない。欧米に比べ、日本では比較的稀な疾患であると言われているが、患者数は年々増加傾向にあり19000名程度(平成26年度、特定疾患医療受給者証所持者数)の患者がいる。また、世界では約230万人の患者がいると推定されている。
多発性硬化症は、脱髄、神経変性が生じる脳や脊髄の領域によって、視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性剛直性痙攣等、様々な症状が生じる。症状が出たり、治まったりを繰り返す再発寛解型(RRMS)の患者が75%程度、機能障害が徐々に進行していく進行型(PPMS)の患者が5%程度、再発を繰り返すうちに次第に再発がないときにも機能障害が進行していく二次性進行型(SPMS)の患者が20%程度いると推定されている。また、患者の20~50%が再発寛解型を経て、二次性進行型に移行すると言われている。
再発寛解型の場合には、急性増悪期にはステロイドなどの免疫抑制剤や血液浄化療法などの抗炎症療法によって治療が行われる。再発予防薬としては、IFNβ、グラチラマー、ナタリズマブ(ヒト化抗ヒトα4インテグリンモノクローナル抗体製剤)、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、ヒト型抗ヒトCD20モノクローナル抗体製剤であるリツキシマブ、オクレリズマブ、及びオファツムマブなど多数の治療薬がある。これに対し、進行型の場合は、オクレリズマブ、二次性進行型の場合はシポニモドフマル酸があるだけであり、有効な治療薬の開発が望まれている。
脳・神経系の炎症反応に関与する機構としてインフラマソームが注目されている。インフラマソームは、パターン認識受容体の活性化によって複合体形成が開始され、神経炎症や細胞死を誘導することにより、神経病態に関与することが示されている。インフラマソームは、細菌やウイルスなどの病原体を構成する分子によってパターン認識受容体の活性化が起こると巨大なタンパク質複合体を形成し、カスパーゼ1が活性化され、それに伴って、pro-IL-18が切断され、IL-18として放出され、炎症を惹起する。多発性硬化症もインフラマソームとの関連が示唆されており、神経炎症や神経変性に関与するIL-18の機能を抑制する薬剤は、上述の様々な型の多発性硬化症に対して治療効果がある可能性がある。
IL-18は、神経炎症や神経変性だけではなく、様々な炎症に関与することが示唆されていることから、抗IL-18抗体は治療薬として期待され、開発が進められている(特許文献1~5)。特許文献1~4は、IL-18アンタゴニスト、特に抗IL-18抗体を自己免疫疾患や炎症性疾患などの治療に用いることが開示されており、多くの対象疾患の1つとして多発性硬化症が挙げられている。
特許文献1には、3つの抗体13G9、2C10及び14B7が開示されている。3つの抗体のエピトープは重複しており、全て中和活性を有する抗体であると記載されている。特許文献2には、IL-18のエピトープPLFEDMTDSDCRDNA、あるいはVIRNLNDQVLFIDQに結合する、抗IL-18モノクローナル抗体が記載されている。特許文献3には、ヒトIL-18に結合し、ヒトIL-18のK53A変異体には反応しない、IL-18の生理活性を阻害する抗IL-18抗体が記載されている。特許文献4には、IL-18抗体2.5(E)は、pro-IL-18、成熟IL-18及び切断IL-18のいずれにも結合することのできる抗体であり、IL-18活性を低下、または中和する抗体であると記載されている。特許文献1~3には、抗体の性質についての記載はあるものの、多発性硬化症に効果を有することを直接的に示すデータは開示されていない。特許文献4には、実施例として、多発性硬化症モデルのマウスである実験的アレルギー性脳脊髄炎モデル(Experimental autoimmune encephalomyelitis、EAE)を抗マウスIL-18 IgGで処理することにより疾患症状の発症の遅延が観察されたことが記載されている。
上述のように、特許文献1~4には、抗IL-18抗体医薬の対象疾患として多発性硬化症が挙げられている。しかし、特許文献1~3に記載の発明には、多くの対象疾患の1つとして多発性硬化症が挙げられているものの、実施例がなく、その効果は不明である。また、特許文献4には、EAEを用いた実施例が開示されているものの疾患誘導後0日~14日目にかけて抗IL-18抗体を2回/週の頻度で投与していることから、再発と寛解を繰り返す前の発症初期の病態モデルに対する治療効果を検討しているに過ぎない。そのため、進行性であり予後不良な進行型、二次進行型に対する効果が示されているとは言えない。
また、IL-18は多くの疾患への関与が考えられることから、抗IL-18抗体医薬は複数の会社が開発しており、サルコイドーシス(NCT04064242)、アトピー性皮膚炎(NCT04836858)、移植拒絶反応(NCT02723786)、2型糖尿病(NCT01648153)、ベーチェット病(NCT03522662)、クローン病(NCT03681067)では第II相の、炎症性腸疾患(NCT01035645)、成人スティル病(NCT04752371)、アトピー性皮膚炎(NCT04975438)では第I相の臨床試験が行われているが、第III相には進んだものはなく、未だ医薬品として実用化されているものはない。また、多発性硬化症を対象とした臨床試験は行われていない。
特表2002-542769号公報 特表2004-500086号公報 国際公開第2014/080866号 特表2007-510435号公報 国際公開第2020/116423号 国際公開第2004/092219号
Arimori,T., et al., Structure, 2017, Vol. 25, pp.1611-1622 Hezarehet al., J. Virol. 2001, Vol. 75, pp.12161-12168. Oganesyan et al., Acta Cryst., 2008, D64, pp.700-704 Tao and Morrison, J. Immunol., 1989, Vol. 143, pp.2595-2601 Shields et al., J. Biol. Chem., 2001, Vol. 276, pp.6591-6604 Molgora et al., Nature, 2017, Vol.551(7678), pp. 110-114. doi:10.1038/nature24293.
上述のように多発性硬化症には、完治に導くことのできる医薬、あるいは治療法は現在のところ開発されていない。多発性硬化症は、75%程度が再発寛解型であるが、再発寛解を繰り返すうちに、多くの患者が身体機能や認知機能に障害が残り得る二次性進行型に移行すると言われている。また、進行型、二次進行型の多発性硬化症には、それぞれオクレリズマブ、又はシポニモドが進行予防薬として使用されているものの、完全に進行を抑制することができない。進行型、二次進行型は徐々に機能障害が進行し予後不良であることから、再発を防ぎ、進行を抑制する医薬の開発が望まれている。
IL-18はmRNAレベルでの産生調節を受けず、カスパーゼ1/4によって切断されることによって、活性型となることが知られている。抗体が、pro-IL-18、活性型IL-18の両方に結合する場合には、多量に存在しているpro-IL-18に結合することから、必ずしも治療に繋がらないと考えられる。複数の会社が抗IL-18抗体医薬の開発を進めてきているにも関わらず、実用化されていないのは、開発された抗体医薬が、活性型IL-18のみに結合する抗体ではないことが一因であると考えられる。本発明者は、活性型IL-18のみに結合し、中和活性を発揮する活性型IL-18の断端、ネオエピトープに対する抗体を開発している(特許文献5)。本発明は多発性硬化症の治療薬として、活性型IL-18のみを認識する抗体医薬の利用に関する。
(1)活性型IL-18のみを認識する抗体、又は当該抗体のFab、Fab’、F(ab’)、単鎖抗体(scFv)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)、低分子化抗体(Fv-clasp)、もしくはCDRを含むペプチドを有効成分として含んでいることを特徴とする多発性硬化症治療用医薬組成物。
以下の実施例が示すように、IL-18に対して中和活性があっても、活性型だけではなく未成熟型前駆体も認識する抗体は効果が認められないのに対し、活性型IL-18のみを認識する抗体は、多発性硬化症に対して治療効果を奏することが明らかとなった。
(2)多発性硬化症の治療方法であって、患者の活性型IL-18を測定し、活性型IL-18を検出できた場合には、活性型IL-18のみを認識する抗体、又は当該抗体のFab、Fab’、F(ab’)、単鎖抗体(scFv)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)、低分子化抗体(Fv-clasp)、もしくはCDRを含むペプチドを有効成分として含んでいる医薬組成物を投与することを特徴とする治療方法。
活性型IL-18が検出される患者に対し、発症早期から活性型IL-18を認識する抗体で治療を行うことができれば、重篤な機能障害を起こすことなく、予後の改善が期待される。
ヒトとマウスのIL-18の配列の相同性を示す図。 EAE誘導後、抗IL-18抗体(ネオエピトープ抗体)投与による治療効果の行動解析による評価を示す図。 EAE誘導後、ネオエピトープ抗体投与による治療効果をEAEスコアの最大値(A)、最終スコア(B)で解析した結果を示す図。 (A)抗体投与による治療効果を組織学的に解析した結果を示す図。(B)白質内脱髄病変の割合を示す図。 抗体投与による治療効果を組織学的に解析した結果を示す図。 抗マウスIL-18抗体であるクローンYIGIF74-1G7(YIGIF74抗体)のエピトープを(A)ウエスタンブロット解析及び(B)ELISAにより解析した結果を示す図。 EAE誘導後、YIGIF74抗体投与による治療効果の行動解析による評価を示す図。EAEスコアの経時変化(A)、最大値(B)、最終スコア(C)の結果を示す図。
本発明の抗IL-18抗体は、活性型IL-18のみを認識する抗体、すなわち前駆体であるpro-IL-18がカスパーゼ1/4によって切断され、新しく形成されたネオエピトープを認識する抗体を用いている。「エピトープ」とは、抗体によって認識される抗原の一部をいい、本明細書において開示される抗体可変領域を含むドメインが結合する抗原上の部位を意味する。例えば、IL-18のようなポリペプチドを抗原とする場合には、抗体は直線的なアミノ酸配列を認識する場合も、3次元的な立体構造を認識する場合もあるから、エプトープは、アミノ酸配列や抗原の構造によって定義することができる。IL-18のネオエピトープは、カスパーゼ1/4によって切断された活性型IL-18にのみ存在する配列であり、これを認識する抗体は、活性型IL-18のみを認識する抗体であるということができる。なお、本明細書において、活性型IL-18のみを認識する抗体とネオエピトープを認識する抗体は同義に用いる。また、活性型IL-18のみを認識する抗体を抗活性型IL-18抗体、又はネオエピトープ抗体と言うことがある。
本発明で抗体とは、元の抗体と実質的に同じ抗原特異性を示す、すなわち同じエピトープを認識する当該抗体の機能的断片をも含むものとする。抗体の機能的断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、単鎖抗体(scFv)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)、低分子化抗体(Fv-clasp、非特許文献1)、もしくはCDRを含むペプチドなどの抗体の機能的断片が含まれる。
また、本発明の実施例においては、活性型のIL-18のN末端の配列がヒトとマウスでは異なっていることから(図1参照)、マウスの活性型IL-18を認識する抗体を用いているが、ヒトに応用する場合には、ヒト活性型IL-18のみを認識する抗体を使用する必要があることは言うまでもない。本願発明者らは、このようなヒト活性型IL-18のみを認識する抗体をすでに開発している(特許文献5)。
具体的には、重鎖可変ドメインがGFSLSSSGMG(配列番号1)のアミノ酸配列からなるCDRH1領域、IWWDDDK(配列番号2)のアミノ酸配列からなるCDRH2領域、TRTRTYSNFGGGMAY(配列番号3)のアミノ酸配列からなるCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが、QSIAHSNGYTY(配列番号4)のアミノ酸配列からなるCDRL1領域、KVS(配列番号5)のアミノ酸配列からなるCDRL2領域、VQGSHVPLT(配列番号6)のアミノ酸配列からなるCDRL3領域を含む抗体(9-10.2抗体)、あるいは、重鎖可変ドメインが、GFSLTSYG(配列番号7)のアミノ酸配列からなるCDRH1領域、IWAGGST(配列番号8)のアミノ酸配列からなるCDRH2領域、ARESSYDAMDY(配列番号9)のアミノ酸配列からなるCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが、ENVVTY(配列番号10)のアミノ酸配列からなるCDRL1領域、GAS(配列番号11)のアミノ酸配列からなるCDRL2領域、GQGYSYPYT(配列番号12)のアミノ酸配列からなるCDRL3領域を含む抗体(8-4.1抗体)が挙げられる。また、H鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号13であり、L鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号14であるか(9-10.2抗体)、又はH鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号15であり、L鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号16である抗体(8-4.1抗体)、あるいはこれら抗体と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有する抗体を用いることができる。
また、ヒト活性型IL-18を認識する9-10.2抗体、8-4.1抗体はマウスモノクローナル抗体であるが、ヒトでの臨床応用を行う場合には、これらモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を利用してヒト型キメラ抗体、ヒト化CDR移植抗体などとしたヒト化抗体、遺伝子改変マウスを用いたヒト抗体もまた本発明の抗体に含まれる。ヒト化抗体、ヒト抗体は、ヒトに投与した場合、ヒト以外の動物の抗体に比べ副作用が少なく、その治療効果が長時間持続する。また、IgG1のFc領域に変異を導入し、C1qやFc受容体への結合性を低下させ、抗体がマクロファージなどの免疫細胞に取り込まれるのを防ぎ、より中和活性の強い抗体とすることもできる。このような変異には、K322A、L234A、L235A(非特許文献2)、L234F/L235E/P331Sの三重変異(非特許文献3)、N297Q(非特許文献4、5)などがある。これらの知見をもとに、例えば、LALA変異(L234A、L235A)を導入し、マクロファージなどの免疫細胞に取り込まれるのを抑制した抗体(特許文献6)としてもよい。なお、本発明者らは、すでにネオエピトープを認識するヒト化抗体を作製し、十分な中和活性を有することも確認している。
本発明の医薬組成物は、活性化型IL-18に作用し、中和する抗体である。したがって、活性化型IL-18が検出される患者に対して、特に効果を奏するものと考えられる。したがって、患者血液中の活性化型IL-18を測定し、患者を層別化することが望ましい。活性化型IL-18の測定は、活性化型IL-18のみを認識する抗体を用いて、ELISA等、この分野で通常用いられる方法により測定することができる。
本発明の医薬組成物の患者への投与方法としては、非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、又は鼻腔内投与が有用である。好ましい実施形態としては、皮下注射又は筋肉注射によって投与される。他の好ましい実施形態としては、静脈内に点滴静脈注射、あるいは静脈注射によって投与される。また、注射液剤として用いる場合には、本発明の有効成分である抗体、又は当該抗体の機能的断片を0.1~250mg/mLを含有する注射液剤として調製することが好ましい。また、医薬組成物には、製薬上許容される担体を含むことができる。具体的な製薬上許容される担体としては、生理的に許容される全ての溶媒、分散媒、抗菌剤または抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。製薬上許容される担体の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどがあり、これら担体を少なくとも1種以上含んでも良い。製薬上許容される担体には、さらに、湿潤剤や乳化剤、防腐剤、緩衝剤など、抗体または抗体部分の貯蔵寿命または有効性を高める少量の物質を補助的に含めることができる。
投与間隔としては、治療効果を見ながら、適切な期間治療を継続することが望ましいが、抗体製剤であることから、2~4週毎の反復投与を行うことが好ましい。再発/寛解を繰り返す場合であっても、治療を継続することによって、再発予防薬として、あるいは再発した場合であっても再発時の症状の改善が期待できる。進行型の場合は、病状進行を抑制する効果を有する可能性がある。
[実施例1]
1.マウスIL-18ネオエピトープを認識する抗体の作製
ヒト炎症性サイトカインIL-18タンパク質(uniprot:Q14116、配列番号17)は、カスパーゼによって切断される37~193位のポリペプチドが活性型IL-18として機能する。マウスIL-18(NP_001344150、配列番号18)とヒトIL-18は相同性が高いものの、ネオエピトープとなる活性型IL-18のN末端側の配列は異なっている(図1、矢印よりC末端側が活性型IL-18として機能する。)。そのため、マウスIL-18のネオエピトープを認識する抗体を作製した。カスパーゼによって切断され断端となるマウスIL-18の36位~44位までのペプチドのC末端にシステイン(C)を付加したマウスIL-18ネオエピトープ配列(NFGRLHCTTC、配列番号19)を常法により合成した。
感作抗原としてkeyhole-limpet hemocyanin(以下、KLH)をImject Maleimide-Activated mcKLH spin Kit(Thermo Scientific)を用いて配列番号19のペプチドにクロスリンク後、常法に従いマウスに免疫した。
同じペプチドを牛血清アルブミン(以下、BSA)にImject Maleimide-Activated BSA spin Kit(Thermo Scientific)を用いてクロスリンクし、ELISA法によりスクリーニングを行い、ハイブリドーマ5-4.1を選別樹立した。なお、ハイブリドーマ5-4.1が産生する抗体を5-4.1抗体と称する。
IsoStrip マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche)を用いて、ハイブリドーマ5-4.1が産生する活性型IL-18を認識するモノクローナル抗体5-4.1のアイソタイプを確認したところ、IgG1,κであった。5-4.1抗体を用いて、多発性硬化症のモデルマウス(MOG誘導性実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルマウス)に対し治療効果を有するか検討を行った。
2.実験的自己免疫性脳脊髄炎マウスによる評価
(1)EAEの誘導
EAEは、中枢神経組織由来のタンパク質抗原やペプチドを免疫することによって誘導される自己免疫モデルであり、多発性硬化症と多くの病態を共有することから、病態研究、治療法開発に使用されているモデルである。
8週齢のC57BL/6J雌マウス(日本エスエルシー)を購入し、3週間馴化させる。ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myelin oligodendrocyte glycoprotein、MOG)の35-55番目までの残基(35-MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK-55、配列番号20)に相当するペプチド200 μg(Scrum社)をリン酸緩衝食塩水(以下PBS)100 μLに溶解する。その溶液100 μLと、M.Tuberculosis H37Ra死菌(6 mg/mL)(ベクトンディッキンソン Difco)をフロイト完全アジュバント(Sigma-Aldrich)100 μLに溶解した溶液と混和しエマルジョン液を200 μL作製した。そしてマウスの左右の鼠経リンパ節に、作製したエマルジョン液を100 μLずつ投与した。これとは別に、初回感作時と2日後に2回、PBSに溶かしたPertussis toxin(400 ng/匹)を腹腔内投与した。一度の免疫で10~14日といった比較的短時間で麻痺などの神経症状が出現する。なお、EAEモデルマウスは、使用するマウスの系統、誘導に用いるタンパク質抗原やペプチドによって、その病態が異なることが知られている。ここで用いているMOG誘導性EAEモデルは、後遺障害が観察されることから、進行型の病態の中の神経変性も同時に起こる病態モデルとなる。以下のEAEスコアでマウスを評価する。
EAEスコア
0:症状なし、1:尾のトーヌス低下、2:尾の完全下垂、3:歩行異常、4:下肢の完全麻痺、5:上肢麻痺(四肢麻痺)、6:死亡
(2)抗活性型IL-18抗体による治療効果
EAE誘導日を0日として、EAE誘導後、7日目、10日目、13日目に、1匹あたり抗マウスIL-18抗体200 μg(mAbProtein社、5-4.1)を、あるいはアイソタイプコントロール抗体(Bio X cell社、BE0083)を200 μg、それぞれ14匹ずつ盲検化して投与した(図2、↓は抗体を投与した日を示す。)。毎日EAEスコアを計測した。抗活性型IL-18抗体投与群(図2、ネオエピトープ抗体)は、コントロール抗体投与群(図2、Control)に比較して有意にEAEスコアの改善が認められた。
また、EAEスコアの最大値及び最終スコアを評価した(図3)。EAEスコアの最大値については有意差はなかったものの、ネオエピトープ抗体投与群では、コントロール抗体投与群に比べてEAEスコアの低下が認められた(図3(A))。6週間後の後遺障害の程度を示す最終スコアは、有意にネオエピトープ抗体投与群では低下が認められた(図3(B))。
さらに、組織学的解析を行った。EAE誘導後42日目のマウスの髄鞘をFluoroMyelin染色(Invitrogen)で、蛍光顕微鏡(KEYENCE、BZ-X710)により評価した(図4(A))。図4(A)のB及びDは、それぞれA、Cの四角で囲んだ部分の強拡大像である。ネオエピトープ抗体を用いた群において、髄鞘の脱落の抑制が認められ組織学的な治療効果が確認された。
さらに、白質内脱髄病変の割合をImageJ Fiji software(National Institutes of Health:NIH)を用いて計測した。具体的には、脊髄全体の面積から灰白質面積を差し引くことで白質の面積を算出し(白質面積=脊髄全体面積-灰白質面積)、次に白質中のFluoroMyelinにより染色されなかった領域である白質脱髄面積を算出し(白質脱髄面積=FluoroMyelin陰性面積-灰白質FluoroMyelin陰性面積)、全白質面積中の脱髄面積を全白質中の脱髄領域の割合(%)として算出した。その結果、ネオエピトープ抗体投与群では有意に白質内脱髄の割合が減少していた(図4(B))。白質内脱髄の割合が減少していたことから、IL-18が関与する多発性硬化症以外の脱髄・髄鞘障害性疾患にも、ネオエピトープ抗体が効果を奏する可能性がある。
また、脊髄の炎症を評価するにあたり、抗Iba1抗体でミクログリアの細胞数や形態を(図5のB、F、J、N)、抗CD45抗体で白血球の浸潤を(図5のC、G、K、O)、GFAPでグリア瘢痕(図5のD、H、L、P)を観察した。図5のA、E、I、MはDAPI染色を加えた各染色のMergeを示す。図5のA、Iの四角で囲んだ領域の強拡大像を下段のパネルに示している。ネオエピトープ抗体を投与した群において、髄鞘内へのミクログリアの浸潤や瘢痕が抑制されており、組織学的な治療効果も確認された。
[比較例1]
(1)エピトープの解析
実施例で示した多発性硬化症に対する抗体の効果は、ネオエピトープを認識する抗体である5-4.1抗体に特異的なものであるか、あるいはIL-18中和活性があれば効果が得られるのかを解析した。抗マウスIL-18抗体、クローンYIGIF74-1G7(以下、YIGIF74抗体という。)は、中和活性を有することが知られている(非特許文献6)。まず、YIGIF74抗体が、IL-18の活性化断端(ネオエピトープ)以外のエピトープを認識する中和抗体であるか確認を行った。
全長マウスIL-18、あるいは活性型マウスIL-18(36~192位)タンパク質を準備し、ウエスタンブロット解析を行った。なお、活性型マウスIL-18は以下のようにして精製した。大腸菌で発現した全長マウスIL-18を精製後、大腸菌で発現精製した活性型caspase-4105-377(caspase-4の105位~377位のペプチドを意味する。)と混合し、活性型マウスIL-18タンパク質(IL-1836-192)を精製取得した。エドマン分解法により同精製タンパク質のN末端配列を決定したところ、予想通りNFGRであった。これは活性型のIL-18のN末端である36位のアスパラギンから、39位のアルギニンに該当する。これらタンパク質を用いてウエスタンブロット解析を行ったところ、YIGIF74抗体は、全長マウスIL-18及び活性型IL-18の両方を認識した(図6(A))。
さらに、YIGIF74抗体の認識する領域をELISAによって確認した。活性型マウスIL-18タンパク質のN末端配列ペプチド(36位~44位)にクロスリンク用にシステインをC末端に付加したペプチド(NFGRLHCTTC、配列番号19)にImject Maleimide-Activated BSA spin KitによりBSAをクロスリンクし、プレートに固相化したELISA法により、YIGIF74抗体及び5-4.1抗体の認識部位(エピトープ)解析を行った(図6(B))。右のグラフは、プレートリーダーで取得した各吸光度を平均±標準偏差とともに示している。YIGIF74抗体は、活性化によるネオエピトープであるN末端配列ペプチドを全く認識しなかった。以上の結果が示すように、5-4.1抗体はマウスIL-18活性型断端ペプチドを認識するが、YIGIF74抗体はマウスIL-18活性型断端ペプチドを認識しない抗体であることが明らかである。すなわち、YIGIF74抗体は、ネオエピトープ以外の領域を認識する中和抗体である。
(2)活性型IL-18を認識する抗体と他の中和抗体との効果の比較
YIGIF74抗体の多発性硬化症に対する治療効果の解析を行った。マウスモデルを用いて、5-4.1抗体と同様にして解析を行った。EAE誘導日を0日として、EAE誘導後、7日目、10日目、13日目に、1匹あたり活性型断端ペプチドを認識しない中和抗体であるYIGIF74抗体を200 μg、あるいはコントロール抗体(Bio X cell社、BE0083)を200 μg、それぞれ盲検化して投与した(図7)。毎日EAEスコアを計測し、コントロール抗体投与群(Control)と比較した。抗IL-18抗体(YIGIF74抗体)投与群はコントロール抗体投与群と比較してEAEスコアの改善が認められなかった(図7(A))。また、EAEスコアの最大値や、最終スコアを評価した。EAEスコアの最大値(図7(B))、6週間後の後遺障害の程度を示す最終スコア(図7(C))ともに有意な低下は見いだせなかった。
これらの結果から、活性型のみに対して中和活性を有する抗IL-18活性化断端抗体は、これまで開発が行われてきた活性型及び非活性型の両方を認識する抗IL-18抗体よりも明らかにすぐれた治療効果を持つと結論づけられた。
以上、マウスモデルで示したように、活性型IL-18のみを認識する抗体を用いることにより、炎症が生じている局所において、IL-18活性を効果的に抑制することができるので、高い治療効果を得ることができる。活性型IL-18のみを認識する抗体は、今まで治療法の選択がなかった進行型、あるいは二次性進行型など予後の悪い多発性硬化症に対しても効果を奏するものと考えられる。

Claims (4)

  1. 活性型IL-18のみを認識する抗体、又は当該抗体のFab、Fab’、F(ab’)、単鎖抗体(scFv)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)、低分子化抗体(Fv-clasp)、もしくはCDRを含むペプチドを有効成分として含んでいることを特徴とする多発性硬化症治療用医薬組成物。
  2. 前記活性型IL-18のみを認識する抗体の重鎖可変ドメイン、又は活性型IL-18のN末端領域に結合する第一の抗原結合部位がGFSLSSSGMG(配列番号1)のアミノ酸配列からなるCDRH1領域、IWWDDDK(配列番号2)のアミノ酸配列からなるCDRH2領域、TRTRTYSNFGGGMAY(配列番号3)のアミノ酸配列からなるCDRH3領域を含み、
    軽鎖可変ドメインが、QSIAHSNGYTY(配列番号4)のアミノ酸配列からなるCDRL1領域、KVS(配列番号5)のアミノ酸配列からなるCDRL2領域、VQGSHVPLT(配列番号6)のアミノ酸配列からなるCDRL3領域を含むペプチドであるか、又は
    重鎖可変ドメインが、GFSLTSYG(配列番号7)のアミノ酸配列からなるCDRH1領域、IWAGGST(配列番号8)のアミノ酸配列からなるCDRH2領域、ARESSYDAMDY(配列番号9)のアミノ酸配列からなるCDRH3領域を含み、
    軽鎖可変ドメインが、ENVVTY(配列番号10)のアミノ酸配列からなるCDRL1領域、GAS(配列番号11)のアミノ酸配列からなるCDRL2領域、GQGYSYPYT(配列番号12)のアミノ酸配列からなるCDRL3領域を含むペプチドであることを特徴とする請求項1記載の多発性硬化症治療用医薬組成物。
  3. 前記活性型IL-18のみを認識する抗体、又は活性型IL-18のN末端領域に結合する第一の抗原結合部位のH鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号13であり、L鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号14であるか、又はH鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号15であり、L鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号16であることを特徴とする請求項1又は2記載の多発性硬化症治療用医薬組成物。
  4. 進行型、又は二次進行型の多発性硬化症を治療するためのものである請求項1~3いずれか1項記載の多発性硬化症治療用医薬組成物。
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