JP2023176123A - ウイルスベクター及びそれを含むがん細胞増殖抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 がん細胞に対して直接ゲノムを編集して遺伝子の機能を修復することで、がん細胞の進行を抑制することができるウイルスベクターを提供する。【解決手段】本発明に係るウイルスベクターは、Krasの停止コドン付き完全長cDNAをヒト細胞ゲノムDNAのKrasの1番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクターである。【選択図】 図14

Description

本発明は、ウイルスベクター及びそれを含むがん細胞増殖抑制剤に関する。
がんは遺伝子変異の蓄積によって発病する疾患であるため、細胞が異常をきたす分子機序に対する治療法の研究開発は長年行われ、発がん機序について様々な研究によって分子メカニズムはおよそ解明されてきた。
しかしながら、がんは進行に伴って様々な遺伝子変異が蓄積されて細胞の性質が変化するため、がん細胞のみを標的とする有効な治療法がまだ確立されていない。現在までに細胞表面の受容体や放出される成長因子をターゲットとする標的療法は開発されているが、いずれも多様な遺伝子変異の蓄積という問題により治療の効果が限られており、有効な治療法が確立されていない。
遺伝子治療についてこれまでのウイルスベクターによる感染導入法では外来遺伝子をゲノムにランダムに導入することしかできないため、機能欠損型の遺伝子異常しか対応できず、ゲノムへのランダム挿入により効率の低下や標的以外の遺伝子への副作用などで、がんに対する遺伝子治療の実用化は難しいとされてきた。
近年古細菌の免疫機序であるCRISPR-Cas9というゲノム編集系が解明されて生体細胞のゲノム編集ツールとして開発されたことから、遺伝子機能の修復と抑制が可能なCRISPR-Cas9系と、より生体への投与に適するアデノ随伴ウイルスベクターを用いることで従来の遺伝子治療に伴う問題を解決しうる新たな治療法の開発が可能となった。
海外では近年CRISPR-Cas9系を用いてハンチントン病や筋ジストロフィー症の治療に効果をあげた動物実験の研究が報告(非特許文献1)されており、さらにCRISPR-Cas9系を用いた臨床研究がすでに開始されている。我が国も厚生労働省がゲノム編集を用いた遺伝子治療が可能となるという方針を打ち出しており、同じく遺伝子変異の蓄積によって発病するがんに対する治療法としても有望とみなされている。
Cia-Hin Lau, Yousin Suh,"In vivo genome editing in animals using AAV-CRISPR system: applications to translational research of human disease", F1000Research,2017,Vol.6,p:2153.
現在までにゲノム編集技術を用いた治療法はまだ遺伝病に限られており、ゲノム編集によるがんの治療法はいまだ確立されていない。本発明はゲノム編集技術を活用し、例として、大腸がん細胞に対して直接ゲノムを編集して遺伝子の機能を修復することで、がん細胞の進行を抑制する技術の確立を課題としている。
本発明は、上記のような課題を解決するために、本発明に係るウイルスベクターは、Krasの停止コドン付き完全長cDNAをヒト細胞ゲノムDNAのKrasの1番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクターであることができる。
また、本発明に係るウイルスベクターは、TP53のストップコドン付き完全長cDNAをヒト細胞ゲノムDNAのTP53の1番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクターであることができる。
また、本発明に係るウイルスベクターは、特定遺伝子の転写開始地点前にあるエクソンの部位に停止コドン付きの完全長cDNAをゲノムDNAに導入されるように作成されたウイルスベクターであることができる。
また、本発明に係るウイルスベクターは、Krasの2番目エクソンから4番目エクソンに相当するストップコドン付きcDNAをゲノムDNAのKrasの2番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクターであることができる。
また、本発明に係るウイルスベクターは、TP53の5番目エクソンから8番目までのcDNAをゲノムDNAのTP53の2番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクターであることができる。
また、本発明に係るウイルスベクターは、遺伝子変異が集中するAPCのMCR部位から翻訳される領域の最後尾までのストップコドン付きcDNAをゲノムDNAのAPCの15番目エクソンの開始位置付近から遺伝子のタンパク質コーディング領域の最後まで導入されるよう作成されたウイルスベクターであることができる。
また、本発明に係るがん細胞増殖抑制剤は、前記に記載のウイルスベクターと、DNAヌクレアーゼとが含まれることを特徴とするがん細胞増殖抑制剤であることができる。
本発明に係るウイルスベクター及びがん細胞増殖抑制剤によれば、がん細胞に対して直接ゲノムを編集して遺伝子の機能を修復することで、がん細胞の進行を抑制することができる。
また、本発明はこれまでのがん治療法と異なり、正常細胞への影響を最小限に抑えながら病原性のないウイルスベクターを用いてがん細胞の異常をもたらす原因である変異遺伝子の機能を回復させることを目的とし、より安全性が高く恒久的な遺伝子治療法の確立することができる。
本発明に係るアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を説明する図である。 本発明に係るがん細胞増殖抑制剤の機序を模式的に説明する図である。 変異遺伝子を修復するメカニズムを説明する図である。 Krasが組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。 TP53が組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。 APCが組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。 がん細胞のゲノムにあるKrasの1番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたKrasの完全長配列を示す図である。 がん細胞のゲノムにあるKrasの2番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたKrasの完全長配列を示す図である。 がん細胞のゲノムにあるTP53の1番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたTP53の完全長配列を示す図である。 がん細胞のゲノムにあるTP53の5番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたTP53の部分DNA配列を示す図である。 がん細胞のゲノムにあるAPCの15番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたAPCの部分DNA配列を示す図である。 Exon2においてKrasが挿入される場所を示す図、及び、Exon1においてTP53が挿入される場所を示す図である。 Exon1においてKrasが挿入される場所を示す図、及び、Exon5においてTP53が挿入される場所を示す図である。 Exon15においてAPCが挿入される場所を示す図である。 KrasとTP53が投与されたがん由来細胞株であるDLD-1の細胞増殖を集計した図である。 KrasとTP53が投与された正常ヒト大腸上皮細胞の増殖を集計した図である。 がん細胞であるDLD-1のゲノムに挿入されるKrasとTP53をqPCR法によって測定した図である。 KrasとTP53が投与されたがん細胞であるDLD-1における細胞死の状況を測定した図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。本発明の目的は、がん細胞において特異的に増殖・発現し、抗腫瘍作用を示すウイルスベクター及びそれを含むがん細胞増殖抑制剤を提供することにある。
現在までに行われてきた大腸がんに対する遺伝子治療はがん細胞に対してウイルスベクターによる遺伝子を導入し、細胞内での遺伝子の一過性発現によってがん細胞の進行を抑制するものであるが、本発明は病原性のないウイルスベクターを用いてゲノムを直接編集することで遺伝子の機能を回復させることを目的としている。
体細胞の複製エラー、薬物や物理損傷などによってゲノムに変異が生じ、その異変が修復されず蓄積されて一定の水準を超えると細胞ががん化する。数多くの種類のがん細胞の中に、大腸がん細胞に対するがん化メカニズムの解析と遺伝子変異蓄積についての知見が数多く報告されている。これらの分析によると異なる大腸がん細胞で見つかる遺伝子変異の数は細胞の種類によって異なっているが、がん化に関与する主要シグナル伝達経路の変異は共通している(Mouradov et al 2014)。
そこで、本発明においては、異なる種類の大腸がん細胞で確認された共通の変異遺伝子であるKras、TP53とAPCを選定し、がん細胞におけるKrasとTP53の機能を回復することによるがん細胞増殖抑制を行うようにしている。
ここで、本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨でも用いられる。またその長さは特に制限されるものではない。従って、本明細書でいう「遺伝子」または「DNA」とは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)及び該正鎖に対して相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖、逆鎖)、並びに合成DNAが含まれ、さらに「遺伝子」にはRNAも含まれる。また「遺伝子」または「DNA」は、本発明の効果を保有する限りにおいて、コード領域以外に、例えば発現制御領域、シグナル領域、エキソン、イントロンを含むことができる。
また、特に言及しない限り、本発明でいう「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生理学的機能が同等であるタンパク質をコードする「遺伝子」または「DNA」が含まれる。
「ベクター」は、核酸(又は複数の核酸)を宿主細胞へ運搬するためのDNA分子を言う。例えば、インビトロまたは宿主細胞において複製し得るかまたは複製され得る、あるいは所望のDNAセグメントを宿主細胞内の所望の位置に運搬し得る、ウイルス、プラスミド、ファージ、及びその他のDNA分子を挙げることができる。ベクターは、運搬すべき物質をコード化する核酸を含み、核酸の宿主細胞内への加入及び/又はベクターの宿主細胞での複製を容易にするために、ウイルスキャプシド又は他の物質(例えば、キャプシド内、又はキャプシドの一部としてパッケージされた逆転写酵素又は他の酵素)を選択的に含むことができる。
次に本発明のウイルスベクターの使用について説明する。
本発明のウイルスベクターは、抗がん細胞ベクターとして使用することができる。例えば、単なるがんの治療だけでなく、手術後の再発予防、転移の防止及び/又は予防等にも使用できる。
本発明のウイルスベクターを適用するがんの種類としては、限定されるものではなく、あらゆる種類のがん、がんに用いることができる。特に、例えば、胃、大腸、肺、肝、前立腺、膵、食道、膀胱、胆嚢・胆管、乳房、子宮、甲状腺、卵巣等における固形がんに有効である。
本発明のウイルスベクターは、そのまま患部に適用することもできるし、あらゆる公知の方法、例えば、静脈、筋肉、腹腔内又は皮下といった注射、鼻腔、口腔又は肺からの吸入、経口投与、坐剤、外用剤等により生体(対象となる細胞や臓器)に導入することもできる。
生体におけるがん細胞に導入された本発明のウイルスベクターは、該細胞内で増殖し、該細胞の増殖抑制させることができる。そうすることによって、がんを治療したり、転移を防いだりすることができる。
また、例えば凍結などの方法により扱いやすくした後、そのまま若しくは賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤等公知の薬学的に許容される担体、公知の添加剤(緩衝剤、等張化剤、キレート剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等が含まれる。)などと混合して医薬組成物として調整することができる。
本発明のウイルスベクターは、錠剤、カプセル剤、散剤、穎粒剤、丸剤、液剤、シロップ剤等の経口投与剤、注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤等の非経口投与剤などの形態に応じて、経口投与又は非経口投与することができる。好ましくは、筋肉、腹腔等への局部注射、静脈への注射等が例示される。
本発明で用いるウイルスベクターとしては、細胞内で単鎖DNAを形成できるアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を好適に用い得る。アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は免疫原性をほとんど持たず非常に弱い免疫反応しか引き起こさず病原性も確認されていないウイルスベクターである。DNAゲノムを細胞に導入するタイミングは細胞周期に依存しないため遺伝子治療に適しており、すでに一部の遺伝子治療の試験に用いられている。また、ベクター自体に病原性がなく、安全性が高いことを特徴とする。
また、本発明ではKras、TP53およびAPCという三つの遺伝子の正常配列をがん細胞にある変異遺伝子の機能を無効化しながら正常遺伝子の機能を妨げることなく副作用を起こさないように、がん細胞のゲノム上にある遺伝子の転写および翻訳枠に影響を与えないようにゲノムDNA挿入するのに使われる特別に設計したDNA配列をKras、TP53およびAPC遺伝子全長配列の前後に付加してAAVに組み込んだことを特徴とする。
本発明はゲノムDNAの特定部位を切断するヌクレアーゼと単鎖DNAを生成するウイルスベクターの組み合わせを用いて正常の機能を持つ遺伝子配列を細胞のゲノムに挿入することで遺伝子機能を回復させてがん細胞の増殖を抑制するがん細胞増殖抑制剤とすることができる。
本発明では、Kras、TP53およびAPCのゲノム編集技術を用いて、がん細胞のゲノムにあるこれらの遺伝子機能の一部を回復する遺伝子治療に使用可能な安全なベクターを作成し、大腸がん細胞に対して本発明によるがん細胞の細胞増殖への顕著な抑制効果が期待できる。
また、多くの遺伝子変異が蓄積されているがん細胞でも本発明を用いて少数の遺伝子を導入することでがん細胞内の細胞死が回復されて異常増殖を抑制でき、従来の遺伝子治療と比べてより高い効果が期待できる。さらに、本発明に係るがん細胞増殖抑制剤が正常細胞の増殖に影響を与えず、これまでのがん治療法よりも副作用が低いことから、繰り返し投与によってより効果的な遺伝子治療法を期待することができる。
図1は本発明に係るアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を説明する図である。図1(A)は修復する対象の遺伝子を含むAAVの一本鎖ゲノムDNAを示しており、
図1(B)は当該一本鎖ゲノムDNAがパッケージングされたアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示している。
本発明に係る遺伝子治療用のウイルスベクターは、標的遺伝子であるKrasおよびTP53の全長DNA配列を持つ二本鎖DNA断片の前後に、がん細胞のゲノム上にある標的遺伝子のエクソン部位に組み込まれるために独自設計された30-35塩基の長さからなる特定のDNA断片を連結させ、標的遺伝子を含むDNA配列をアデノウイルス随伴ベクターのマルチクローニングサイト領域に組み込み、更にHEK293細胞にて一本鎖DNAタンパク質のカプシドからなるウイルス粒子にパッケージングしたものからなり、ゲノム上にある標的遺伝子の特定部位を切断するヌクレアーゼと共にがん細胞に投与すると正常細胞の機能に影響を与えず、がん細胞の一部変異遺伝子の機能を正常に戻し、がん細胞の増殖を抑えて細胞死を促進することを特徴とする。
本発明においては、遺伝子治療に用いられるウイルスベクターとして、本発明では細胞内で単鎖DNAを形成できるアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いる。アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は免疫原性をほとんど持たず非常に弱い免疫反応しか引き起こさず病原性も確認されていないウイルスベクターである。また、DNAゲノムを細胞に導入するタイミングは細胞周期に依存しないため遺伝子治療に適しており、すでに一部の遺伝子治療の試験に用いられている。また、ベクター自体の安全性が高く、アデノ随伴ウイルスベクターを用いる組み換え実験はBCL1グレードの施設でも実施可能である。
図2は本発明に係るがん細胞増殖抑制剤の機序を模式的に説明する図である。本発明に係るがん細胞増殖抑制剤は、一本鎖ゲノムDNAがパッケージングされたアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)と、DNAヌクレアーゼとが含まれるものであることができる。図2(A)はがん細胞増殖抑制剤が、変異遺伝子を有する大腸がん細胞に導入される様子を示す図である。がん細胞増殖抑制剤が大腸がん細胞に導入されると、図2(B)に示すように、一本鎖ゲノムDNAとDNAヌクレアーゼとに基づくゲノム編集によって変異遺伝子が修復されていき、図2(C)に示すように大腸がん細胞の活動が抑制される。図3は変異遺伝子を修復するメカニズムを説明する図である。
図4はKrasが組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。CMVプロモーターがあるベクターはがん細胞のゲノムに組み込まれなくてもがん細胞の中で正常の遺伝子タンパク質を合成できるが、CMVプロモーターがないベクターはがん細胞のゲノムに組み込まれないと正常の遺伝子タンパク質を合成できない。二種類のアデノ随伴ウイルスベクターは遺伝子とがん細胞の性質に合わせて必要な種類をがん細胞に投与することが可能である。
図5はTP53が組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。Kras用のアデノ随伴ウイルスベクターと同様、CMVプロモーターありとなしの二種類があり、状況に応じて使用することができる。
図6はAPCが組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。このアデノ随伴ウイルスベクターに組み込まれるAPCのDNA配列は、APC遺伝子の完全長配列ではなく、15番目エクソンから翻訳される領域の最後までのDNA配列であるため、CMVプロモーターなしのアデノ随伴ウイルスベクターのみが使用可能である。
ベクターの構築について
前述通り、本発明は遺伝子治療の安全性、利便性を重視して副作用の低減を考慮して遺伝子を人体に投与する際に使用するベクターとしてアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を選定している。遺伝子治療するために挿入する予定の遺伝子配列をアデノウイルスベクターに組み込むときに以下の操作を行う
挿入される遺伝子配列の両端にアデノ随伴ウイルスベクターのマルチクローニングサイトにある制限酵素認識配列と同じものを付加する。アデノ随伴ウイルスベクターのCMVプロモーターを用いるときに挿入される遺伝子配列の先端に(SalI)、末端に(BamHI)を付加し、CMVプロモーターを用いらないときにと挿入される遺伝子配列の先端に(EcoRV)、末端に(BamHI)の認識配列を付加する。
アデノ随伴ウイルスベクターと制限酵素認識配列を付加した挿入配列に対してそれぞれ前述の制限酵素を用いて37度、2時間処理する。なお、アデノ随伴ウイルスベクターに対して制限酵素処理を行うときに、同時に脱リン酸化の酵素であるアルカリフォスファターゼ処理も行う。酵素処理したのち、タンパク質と酵素を除去するために核酸を精製する。
精製された制限酵素処理済みのベクターと挿入配列にタカラバイオ社のDNAライゲーションミックスを添加して核酸連結反応を行う。反応の条件はDNAライゲーションミックスのプロトコールに準拠する。
ライゲーション反応後大腸菌に導入し、37度にて16時間培養後コロニーをピックアップして、コロニーを3mlのLB培地に入れて37度の振とう環境にて16時間培養したのち、ミニプレップ法を用いて大腸菌中の核酸を精製してKras、TP53またはAPCの遺伝子配列が入っているベクターを選別して保存する。
ウイルス産生
遺伝子が組み込まれたアデノ随伴ウイルスベクターからアデノ随伴ウイルスを産生する作業は。タカラバイオ社のAAV Pro System製品を用いて行う。アデノ随伴ウイルスベクターからアデノ随伴ウイルスを産生、生成および保存する方法はタカラバイオ社AAV Pro Systemに準拠する。
挿入するゲノム部位を選定について
本発明ではKras、TP53およびAPCという三つの遺伝子の正常配列を遺伝編集が宿主細胞にある変異遺伝子の機能を無効化しながら正常遺伝子の機能を妨げることなく副作用を起こさないように、遺伝子を挿入する部位の検討を重ねた。ゲノム上にある遺伝子の転写および翻訳枠に影響を与えないためにKras、TP53およびAPC遺伝子の全長配列をゲノムに挿入する部位を決定した。
Kras遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるKrasのExon1のccagtactcccggcccccgccatttとcggactgggagcgagcgcggcgcaggという間を挿入する部位と選定した。
TP53遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるTP53のExon1上のggacactttgcgttcggとgctgggagcgtgctttccacという部位を挿入する部位と選定した。
また、挿入する遺伝子の長さや遺伝子変異の特性によって遺伝子の全長ではなく、ゲノム上にある遺伝子配列の一部のみを無効化する目的に用いられる遺伝子挿入部位についても検討し、宿主細胞のゲノム上にある遺伝子の転写および翻訳枠に影響を与えないKras、TP53およびAPC遺伝子の部分配列をゲノムに挿入する部位を決定した。
Kras遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるKrasのExon2上のaatgactgaatataaacとttgtggtagttggagctggtgという部位を挿入する部位と選定した。
TP53遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるTP53のExon5上のcacttttcgacatagtgとtggtggtgccctatgagccgcctgという部位を挿入する部位と選定した。
APC遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるAPCのExon15上のccacgggtgtattgtgtとgacacctataaacttttccaという部位を挿入する部位と選定した。
挿入する断片の設計について
宿主細胞のゲノム上に挿入される遺伝子断片は宿主細胞の遺伝子転写および翻訳を妨げないように設計される必要があるため、宿主細胞のゲノム上にある遺伝子配列と挿入される遺伝子配列、そしてゲノム編集に必要な酵素が認識する配列を総合的に検討して以下のように設計した。
ゲノム上にあるそれぞれの遺伝子のExon1に全長cDNA配列を挿入するために遺伝子全長配列の前後に付加する配列は以下の通りで
Kras: ggcggctcggccagtactcccggcccccgccattt-[Kras遺伝子全長配列+ストップコドン]- ccgactgggagcgagcgcggcgcaggcact
TP53: tgctgggctccggggacactttgcgttccg-[TP53遺伝子全長配列+ストップコドン]- gctgggagcgtgctttccacgacggtgaca
ゲム上にあるそれぞれの遺伝子の変異多発部位に正常遺伝子配列を挿入するために遺伝子配列の前後に付加する配列は以下の通りである。
Kras: gcctgctgaaaatgactgaatatatac-[Kras遺伝子部分配列+ストップコドン]-ttgtggtagttggagctggtggcgtaggca
TP53: tggatgacagaaacacttttcgacatagtg-[TP53遺伝子部分配列+ストップコドン]-tcgtggtgccctatgagccgcctgag
APC: tttgacaatatagacaatttaagtcccacg-[APC遺伝子部分配列+ストップコドン]-gcatctcatcgtagtaagcagagacacaag
図7はがん細胞のゲノムにあるKrasの1番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたKrasの完全長配列を示す図である。なお、ゲノムに組み込まれるための特殊配列の前方また後方にある8塩基分の配列(アルファベット大文字8文字)は、合成されたDNA断片をアデノ随伴ウイルスベクターのマルチクローニングサイトという領域に組み込むための制限酵素サイトである。
図8はがん細胞のゲノムにあるKrasの2番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたKrasの完全長配列を示す図である。なお、ゲノムに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)の前方または後方の7塩基分配列(アルファベット大文字)は制限酵素サイトである。
図9はがん細胞のゲノムにあるTP53の1番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたTP53の完全長配列を示す図である。なお、ゲノムに組み込まれるための特殊配列の前方また後方にある8塩基分の配列(アルファベット大文字8文字)は、合成されたDNA断片をアデノ随伴ウイルスベクターのマルチクローニングサイトという領域に組み込むための制限酵素サイトである。
図10はがん細胞のゲノムにあるTP53の5番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたTP53の部分DNA配列を示す図である。細胞中のTP53の5番目エクソンから8番目エクソンの部分にがん化に繋がる変異が頻繁に起きる領域であるため、5番目エクソンに相当する部分からタンパク質をコードする領域の最後尾までの配列を正常配列に置き換えることでがん細胞にある変異TP53の機能を回復させるために作成されたアデノ随伴ウイルスベクターである。完全長配列のTP53が含まれるアデノ随伴ウイルスベクターとTP53の5番目エクソン以降の配列のみが含まれるアデノ随伴ウイルスベクターは、がん細胞ゲノムの状態に応じて投与することが可能である。なお、ゲノムに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)の前方または後方の8塩基分配列(アルファベット大文字)は制限酵素サイトである。
図11はがん細胞のゲノムにあるAPCの15番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたAPCの部分DNA配列を示す図である。APCの完全長配列の塩基数は8000個以上であるため、完全長のDNA配列のゲノムへの組換え効率はかなり低いと考えられる。細胞のゲノムにあるAPCの15番目エクソンの配列は3000塩基があり、APC配列の主要部分がほぼ含まれているだけでなく、がん化に繋がる変異が頻繁に起きる領域でもあるため、15番目エクソン以降の配列を正常配列に置き換えることががん細胞にある変異APCの機能を回復させるが可能である。なお、アルファベット小文字の部分はゲノムに組み込むために設計された特殊配列であり、その前方または後方の8塩基分配列(アルファベット大文字)は制限酵素サイトである。
図12はKrasとTP53が挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。KrasとTP53が挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。Kras遺伝子を細胞ゲノム上にあるKrasのExon2上のaatgactgaatataaacとttgtggtagttggagctggtgという部位を挿入するようにKrasが組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。TP53遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるTP53のExon1上のgacactttgcgttcggとgctgggagcgtgctttccacという部位を挿入するようにTP53が組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。
図13はKrasとTP53が挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。Kras遺伝子を細胞ゲノム上にあるKrasのExon2上のaatgactgaatataaacとttgtggtagttggagctggtgという部位を挿入するようにKrasが組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。TP53遺伝子を細胞ゲノム上にあるTP53のExon5上のcacttttcgacatagtgとtggtggtgccctatgagccgcctgという部位を挿入するようにTP53が組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。
図14はAPCが挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。APC遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるAPCのExon15上のccacgggtgtattgtgtとgacacctataaacttttccaという部位を挿入するようにAPCが組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。
図15はKrasとTP53が投与されたがん由来細胞株であるDLD-1の細胞増殖を集計した図である。ヒト大腸がん細胞由来の細胞株であるDLD-1細胞に対してCas9とKrasおよびTP53遺伝子の DNA両方を導入すると細胞増殖が抑制されていることがわかった。特にTP53が導入された細胞では細胞の数が対照組と比べて著しく少ないことが観察された。また、TP53ほど効果が顕著ではないがKrasが導入された細胞でも対照組と比べて細胞増殖の低下がみられた。KrasとTP53両方のDNAが投与された細胞ではTP53のみ投与された細胞と比べて細胞数が少ないことから、両方が同時に投与されることによる細胞増殖に抑制効果が単独投与より大きくなると考えられる。また、Cas9とCDS DNA両方が導入された細胞の方ではCDS DNAが組み込まれているAAVベクターのみ投与された細胞より細胞増殖抑制の効果が顕著であったことから、正常遺伝子を導入するより変異した遺伝子の置き換えががん細胞の異常増殖を抑制できることを示している。なお、Cas9とguide RNAのみ投与された細胞の細胞数が対照組と比べて有意な差はなかった。
図16はKrasとTP53が投与された正常ヒト大腸上皮細胞の増殖を集計した図である。Cas9とDNA投与の有無にかかわらず細胞増殖が対照組と比較して有意な差は見られなかったことから、本発明が正常細胞の細胞増殖に対する影響は見られない。
図17はがん細胞であるDLD-1のゲノムに挿入されるKrasとTP53をqPCR法によって測定した図である。ヌクレアーゼと標的遺伝子が組み込まれたアデノ随伴ウイルスベクターが細胞内で相同性組換えを引き起こす効率を確かめるために、遺伝子がゲノムに組み込まれた場合のみに存在する特殊配列と標的遺伝子が含まれていない部分のゲノム配列に対してそれぞれqPCRを行い、相同性組換えによって遺伝子が挿入されると予想される部位と相同性組換えが起きない部位と細胞内における量の比較を行った。その結果から相同性組換えによって目的部位に組み込まれたDNAは約全体の約10%前後であることがわかった。
図18はKrasとTP53が投与されたがん細胞であるDLD-1における細胞死の状況を測定した図である。がん細胞の増殖が抑制された原因をより詳細に調べるために、KrasとTP53の遺伝子を導入された細胞に起こるApoptosisとNecrosisなど異なる種類の細胞死の割合を調べた。その結果、遺伝子を導入された細胞ではApoptosisとNecrosisの割合が対照組の細胞と比較して増大したことが分かった。Krasのみ導入された細胞ではApoptosisの割合が増大したのに対して、TP53のみ導入された細胞ではNecrosisの割合が増大したことが明らかになって、それぞれの遺伝子ががん細胞の増殖抑制における働きを示唆している。また 、KrasとTP53両方の遺伝子が導入された細胞ではApoptosisとNecrosis両方増大していることが見られ、KrasとTP53をがん細胞に同時導入することによってがん細胞における異なる種類の細胞死が一斉に増加することがKrasとTP53によるがん細胞増殖抑制の相乗効果の原因であることが明らかになった。また、がん細胞ゲノムへの遺伝子組み換えが起きないように遺伝子のみ導入された細胞では細胞死の割合に顕著な増加は見られず、本発明によるがん細胞増殖抑制の効果が一般的な遺伝子導入法より高いであることがわかった。
本発明の効果検証について
本発明によってがん細胞の状態を変化させて可逆性の可能性を検証するために、構築した遺伝子組み込みしたアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、ゲノム上の特定部位を切断できるゲノム編集の手法と組み合わせて細胞のゲノムへ遺伝子を挿入した。この後、細胞の状態を解析することで、遺伝子の機能を回復させることによって細胞の状態を変化させる可能性を検証した。
検証対象の細胞として数ある遺伝子疾患から大腸がんを選定した。大腸がんの病因および遺伝子変異の蓄積と変化は長い間研究検証されており、がん化の原因及びメカニズムの解明はかなり進んでいる。大腸がんを遺伝子変異の様式と頻度によって大まかに四つのパターンに分類できる。
本発明においては、この四つのパターンからAPC、KrasおよびTP53を共通の主要ながん遺伝子としてピックアップしている。この三つの遺伝子からAAVベクターへの導入に適するKrasおよびTP53を用いて、遺伝子機能を修復する手法を構築し、さらにがん細胞に対する遺伝子治療の効果を検証した。
相同性組換えによってこれらの遺伝子の全長CDSがExon1に組み込まれた場合、正常な配列を持つCDSが転写されて機能異常の内在性遺伝子が翻訳されないように設計されている。CRISPR/Cas9とAAVベクターが細胞内で相同性組換えを引き起こす効率を確かめるために、CRISPR/Cas9とターゲット部位を決めるguide RNA、そして遺伝子のCDS DNAをすべて導入された細胞に対してPCRを行い、相同性組換えによって遺伝子が挿入されると予想される部位と相同性組換えが起きない部位と細胞内における量の比較を行った。qPCRの結果から相同性組換えによって目的部位に組み込まれたDNAは約全体の約10%前後であることがわかった。
ヒト大腸がん細胞由来の細胞株であるLovo細胞に対してCRISPR/Cas9とKrasおよびTP53遺伝子のタンパク質コーディング領域であるCDSが含まれるDNA両方を導入すると細胞増殖が抑制されていることがわかった。特にTP53が導入された細胞では細胞の数が対照組と比べて著しく少ないことが観察された。
また、TP53ほど効果が顕著ではないがKrasが導入された細胞でも対照組と比べて細胞増殖の低下がみられた。KrasとTP53両方のCDS DNAが投与された細胞ではTP53のみ投与された細胞と比べて細胞数が少ないことから、両方が同時に投与されることによる細胞増殖に抑制効果が単独投与より大きくなると考えられる。
また、CRISPR/Cas9とCDS DNA両方が導入された細胞の方ではCDS DNAが組み込まれているAAVベクターのみ投与された細胞より細胞増殖抑制の効果が顕著であったことから、正常遺伝子を導入するより変異した遺伝子の置き換えががん細胞の異常増殖を抑制できることを示している。なお、CRISPR/Cas9とguide RNA(gRNA)のみ投与された細胞の細胞数が対照組と比べて有意な差はなかった。
細胞に遺伝子が導入された後の挙動を観察するために、AAVベクターにGFP(緑色蛍光タンパク質)を連結したTP53をCRISPR/Cas9と一緒に細胞に導入して相同性組換えが起きた細胞の挙動を観察した。
この時、組換えされていない遺伝子が発現しないようにAAVベクター上にあるCMVプロモーターが取り外された。TP53が導入された24時間後の細胞では遺伝子組み換えが起きてGFPの蛍光が観察されるが、時間が経つにつれ細胞内のGFPのシグナルが減少していることがわかった。
特にTP53が導入された細胞のGFPシグナル数が導入72時間後ではほとんど消失した。対照的にコントロールが導入された細胞ではGFPのシグナル数の増加が確認され、細胞増殖に対する遺伝子組み換えによる影響が確かめられた。GFPシグナルの数がPCRの結果と比べてかなり少数であることからウイルスベクターの量を増やして24時間後に観察すると、TP53が導入された細胞ではGFPシグナルがほとんど確認できず、細胞の増殖も著しく抑えられた。
また、細胞に対して影響のないコントロールDNAベクターが導入された細胞では細胞増殖が抑制されずGFPシグナルが観察されたことから、GFPが観察可能な量まで蓄積する前にTP53による細胞増殖抑制が働きApoptosisをもたらしたと推測される。なお、Krasについて遺伝子の同時導入する効率が悪くGFPシグナルはほとんど確認できなかった。
がん細胞の増殖が抑制された原因をより詳細に調べるために、KrasとTP53の遺伝子を導入された細胞に起こるApoptosisとNecrosisなど異なる種類の細胞死の割合を調べた。その結果、遺伝子を導入された細胞ではApoptosisとNecrosisの割合が対照組の細胞と比較して増大したことが分かった。Krasのみ導入された細胞ではApoptosisの割合が増大したのに対して、TP53のみ導入された細胞ではNecrosisの割合が増大したことが明らかになって、それぞれの遺伝子ががん細胞の増殖抑制における働きを示唆している。
また、KrasとTP53両方の遺伝子が導入された細胞ではApoptosisとNecrosis両方増大していることが見られ、KrasとTP53をがん細胞に同時導入することによってがん細胞における異なる種類の細胞死が一斉に増加することがKrasとTP53によるがん細胞増殖抑制の相乗効果の原因であることが明らかになった。また、がん細胞ゲノムへの遺伝子組み換えが起きないように遺伝子のみ導入された細胞では細胞死の割合に顕著な増加は見られず、本発明による手法によるがん細胞増殖抑制の効果が一般的な遺伝子導入より高いことがわかった。
本発明の検証から、細胞へのDNA相同性組換えの効率は細胞の増殖を抑制できるほどのものであることが明らかになった。
CRISPR/Cas9とAAV vectorによる相同性組換えの効率を高める相乗効果についてすでに報告されており、Endonucleaseによって切断されたゲノムDNAの近くに単鎖のDNAが存在することで未知の因子によってDNA修復機序が活性化されて稼働し始めることで、相同性組換えが通常よりも高い効率で行われていると推測されておる。また、Cas9のみではなくDNA Endonucleaseによる切断も同様な現象が引き起こされると考えられる。
本発明の検証結果からKras/TP53のCDS DNAはベクターとして存在するよりもKras/TP53のCDS DNAがCRISPR/Cas9と同時に投与される方が細胞増殖抑制への影響が大きいことが分かった。ベクターにもCMVプロモーターが組み込まれているため、遺伝子の発現効率は相同性組換えによって劇的に高まるとは考えにくい。また、CRISPR/Cas9によってExon1に変異が生じて発現が低下した可能性についてもCRISPR/Cas9とGuide RNAが投与された細胞の解析結果からかなり低いと考えられる。
Kras/TP53のCDS DNAはベクターとして存在するよりも相同性組換えによってゲノムに組み込まれた方が細胞増殖抑制への影響が大きいことが考えらえる。原因としてKras/TP53のCDS DNAが相同性組換えによってKras/TP53のExon1へ組み込まれることで異常をきたした遺伝子の翻訳を阻害し、Kras/TP53の遺伝子変異に起因する細胞の異常増殖を抑制できたと考えられる。本発明の検証結果によって相同性組換えを用いて正常遺伝子配列をExon1など遺伝子の転写開始地点に組み込むことで細胞内の遺伝子変異による機能異常を修復できる可能性が示された。
KrasもTP53も細胞周期や細胞の増殖、細胞死の制御に関与している重要な遺伝子として報告されている。KrasはRAR/ERKやPI3K/AKTのシグナル経路を通じて、Apoptosisの制御に関与することが知られており、TP53についても細胞に対するストレスによるNecrosisの制御に関与していることが知られている。Krasの機能を回復したことで異常に活性化されたPI3K/AKTの働きが抑制されることでApoptosisが促進され、TP53の機能を回復したことでNecrosisが増加してがん細胞の異常な細胞増殖を正常のレベルに復帰させるというのは、Kras/TP53投与相乗効果の作用機序ではないかと推測する。
本発明の検証からEndonucleaseと単鎖DNAを生成するウイルスベクターの組み合わせを用いて遺伝子を細胞のゲノムに挿入することで遺伝子機能を回復させてがん細胞の増殖を抑制することは可能であることがわかった。
さらなる検証の結果によって単一遺伝子のみの導入によってがん細胞内のApoptosisとNecrosisの機能が回復されてがん細胞の異常増殖を抑制しうることが明らかになった。がん細胞の発生機序から見るとがん細胞になるまで多くの遺伝子変異を蓄積する必要があり、株化されたがん細胞は長い継代培養を経てさらに多くの変異が蓄積されていることが知られている。
しかしながらそういった特質を持つがん細胞に対して、最低でも一つの遺伝子の機能を回復させることでがん細胞における細胞死の機序を回復させての細胞増殖を大幅に抑制できることは、がん細胞が獲得した異常な不死性と細胞増殖の特質は強固で不可逆なものではなく、それらに関与する遺伝子機能を回復させることによって正常細胞と同じレベルに戻せる可能性があることを示唆している。
本発明の成果を生かしてがん細胞における遺伝子異常を回復することによってがん細胞を可逆的に正常化する手法が確立すされれば、がん治療における画期的な治療法の開発につながる。
以上、本発明に係るウイルスベクター及びがん細胞増殖抑制剤によれば、がん細胞に対して直接ゲノムを編集して遺伝子の機能を修復することで、がん細胞の進行を抑制することができる。
また、本発明はこれまでのがん治療法と異なり、正常細胞への影響を最小限に抑えながら病原性のないウイルスベクターを用いてがん細胞の異常をもたらす原因である変異遺伝子の機能を回復させることを目的とし、より安全性が高く恒久的な遺伝子治療法の確立することができる。
本発明に係るアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を説明する図である。 本発明に係るがん細胞増殖抑制剤の機序を模式的に説明する図である。 変異遺伝子を修復するメカニズムを説明する図である。 Krasが組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。 TP53が組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。 APCが組み込まれる2種類のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を示す図である。 がん細胞のゲノムにあるKrasの1番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたKrasの完全長配列を示す図(配列番号31)である。 がん細胞のゲノムにあるKrasの2番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたKrasの完全長配列を示す図(配列番号32)である。 がん細胞のゲノムにあるTP53の1番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたTP53の完全長配列を示す図(配列番号33)である。 がん細胞のゲノムにあるTP53の5番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたTP53の部分DNA配列を示す図(配列番号34)である。 がん細胞のゲノムにあるAPCの15番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたAPCの部分DNA配列を示す図(配列番号35)である。 Exon2においてKrasが挿入される場所を示す図(配列番号36)、及び、Exon1においてTP53が挿入される場所を示す図(配列番号37)である。 Exon1においてKrasが挿入される場所を示す図(配列番号38)、及び、Exon5においてTP53が挿入される場所を示す図(配列番号39)である。 Exon15においてAPCが挿入される場所を示す図(配列番号40)である。 KrasとTP53が投与されたがん由来細胞株であるDLD-1の細胞増殖を集計した図である。 KrasとTP53が投与された正常ヒト大腸上皮細胞の増殖を集計した図である。 がん細胞であるDLD-1のゲノムに挿入されるKrasとTP53をqPCR法によって測定した図である。 KrasとTP53が投与されたがん細胞であるDLD-1における細胞死の状況を測定した図である。
Kras遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるKrasのExon1のccagtactcccggcccccgccattt(配列番号1)とcggactgggagcgagcgcggcgcagg(配列番号2)という間を挿入する部位と選定した。
TP53遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるTP53のExon1上のggacactttgcgttcgg(配列番号3)とgctgggagcgtgctttccac(配列番号4)という部位を挿入する部位と選定した。
Kras遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるKrasのExon2上のaatgactgaatataaac(配列番号5)とttgtggtagttggagctggtg(配列番号6)という部位を挿入する部位と選定した。
TP53遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるTP53のExon5上のcacttttcgacatagtg(配列番号7)とtggtggtgccctatgagccgcctg(配列番号8)という部位を挿入する部位と選定した。
APC遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるAPCのExon15上のccacgggtgtattgtgt(配列番号9)とgacacctataaacttttcca(配列番号10)という部位を挿入する部位と選定した。
ゲノム上にあるそれぞれの遺伝子のExon1に全長cDNA配列を挿入するために遺伝子全長配列の前後に付加する配列は以下の通りで
Kras: ggcggctcggccagtactcccggcccccgccattt(配列番号11)-[Kras遺伝子全長配列+ストップコドン]- ccgactgggagcgagcgcggcgcaggcact(配列番号12)
TP53: tgctgggctccggggacactttgcgttccg(配列番号13)-[TP53遺伝子全長配列+ストップコドン]- gctgggagcgtgctttccacgacggtgaca(配列番号14)
ゲム上にあるそれぞれの遺伝子の変異多発部位に正常遺伝子配列を挿入するために遺伝子配列の前後に付加する配列は以下の通りである。
Kras: gcctgctgaaaatgactgaatatatac(配列番号15)-[Kras遺伝子部分配列+ストップコドン]-ttgtggtagttggagctggtggcgtaggca(配列番号16)
TP53: tggatgacagaaacacttttcgacatagtg(配列番号17)-[TP53遺伝子部分配列+ストップコドン]-tcgtggtgccctatgagccgcctgag(配列番号18)
APC: tttgacaatatagacaatttaagtcccacg(配列番号19)-[APC遺伝子部分配列+ストップコドン]-gcatctcatcgtagtaagcagagacacaag(配列番号20)
図7はがん細胞のゲノムにあるKrasの1番目エクソンに組み込むために設計された特殊配列(アルファベット小文字の部分)と連結されたKrasの完全長配列を示す図である。なお、ゲノムに組み込まれるための特殊配列の前方また後方にある8塩基分の配列(アルファベット大文字8文字)は、合成されたDNA断片をアデノ随伴ウイルスベクターのマルチクローニングサイトという領域に組み込むための制限酵素サイトである。
図12はKrasとTP53が挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。KrasとTP53が挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。Kras遺伝子を細胞ゲノム上にあるKrasのExon2上のaatgactgaatataaac(配列番号21)とttgtggtagttggagctggtg(配列番号22)という部位を挿入するようにKrasが組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。TP53遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるTP53のExon1上のgacactttgcgttcgg(配列番号23)とgctgggagcgtgctttccac(配列番号24)という部位を挿入するようにTP53が組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。
図13はKrasとTP53が挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。Kras遺伝子を細胞ゲノム上にあるKrasのExon2上のaatgactgaatataaac(配列番号25)とttgtggtagttggagctggtg(配列番号26)という部位を挿入するようにKrasが組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。TP53遺伝子を細胞ゲノム上にあるTP53のExon5上のcacttttcgacatagtg(配列番号27)とtggtggtgccctatgagccgcctg(配列番号28)という部位を挿入するようにTP53が組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。
図14はAPCが挿入されるゲノムDNAの位置を示す概略図である。APC遺伝子を宿主細胞ゲノム上にあるAPCのExon15上のccacgggtgtattgtgt(配列番号29)とgacacctataaacttttcca(配列番号30)という部位を挿入するようにAPCが組み込まれているアデノ随伴ウイルスベクターと同時に該当部位を切断できるヌクレアーゼをがん細胞に投与する。本発明ではCas9と切断箇所をCas9に示すガイドRNAを用いた。

Claims (7)

  1. Krasの停止コドン付き完全長cDNAをヒト細胞ゲノムDNAのKrasの1番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクター。
  2. TP53のストップコドン付き完全長cDNAをヒト細胞ゲノムDNAのTP53の1番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクター。
  3. 特定遺伝子の転写開始地点前にあるエクソンの部位に停止コドン付きの完全長cDNAをゲノムDNAに導入されるように作成されたウイルスベクター。
  4. Krasの2番目エクソンから4番目エクソンに相当するストップコドン付きcDNAをゲノムDNAのKrasの2番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクター。
  5. TP53の5番目エクソンから8番目までのcDNAをゲノムDNAのTP53の2番目エクソンに導入されるように作成されたウイルスベクター。
  6. 遺伝子変異が集中するAPCのMCR部位から翻訳される領域の最後尾までのストップコドン付きcDNAをゲノムDNAのAPCの15番目エクソンの開始位置付近から遺伝子のタンパク質コーディング領域の最後まで導入されるよう作成されたウイルスベクター。
  7. 請求項1乃至請求項6の任意の1項又は複数項に記載のウイルスベクターと、DNAヌクレアーゼとが含まれることを特徴とするがん細胞増殖抑制剤。
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