JP2023173489A - ナゲット径の推定方法 - Google Patents

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Shuhei Ogura
智彦 関口
Tomohiko Sekiguchi
亨輔 泉野
Kyosuke Izuno
知子 小笠原
Tomoko Ogasawara
優樹 松木
Yuki Matsuki
翔太 江島
Shota Ejima
瑞希 兒玉
Mizuki Kodama
泰明 沖田
Yasuaki Okita
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Abstract

【課題】チップが局所的に損傷した場合であっても、推定精度の低下を抑制することができるナゲット径の推定方法を提供する。【解決手段】抵抗溶接におけるナゲット径の推定方法は、一対のチップを含む溶接回路に空通電を行い、第1回路抵抗値を測定する工程と、溶接回路の抵抗の基準値と、測定された第1回路抵抗値と、の比較を実行する工程と、被溶接物を一対のチップで挟んで通電を行い、第2回路抵抗値を測定する工程と、比較の結果と、測定された第2回路抵抗値と、を用いて、ナゲット径を推定する工程と、を備える。【選択図】図2

Description

本開示は、ナゲット径の推定方法に関する。
抵抗溶接では、溶接対象となる2つの被溶接物(金属母材)を重ね合わせ、重ね合わせた被溶接物を、電極として機能する一対のチップにより挟んで電流を流し、被溶接物間にナゲットを形成して互いを接合させる。チップが摩耗することにより、チップと被溶接物との間の接触面積が大きくなる。これにより、接触抵抗が低下して発熱量が低下し、また、生じた熱の冷却(伝導)が進行する。特許文献1は、発熱量や冷却能力の差異に起因して被溶接物の膨張量が異なることを利用して、チップの摩耗状態を判断する技術を開示している。
特開2021-049559号公報
本願発明者らは、ナゲット径と、一対のチップを含む抵抗溶接に用いられる回路の電気抵抗値と、は相関があり、かかる電気抵抗値を利用してナゲット径を推定できることを見出した。しかし、回路の電気抵抗値は、特許文献1に開示されているようにチップの摩耗により減少する場合だけでなく、チップが欠けるなどして局所的に損傷が発生し、これによりチップと被溶接物との接触面積が小さくなることで増大する場合もある。このように様々な要因で回路の電気抵抗が変動し得るため、ナゲット径の推定精度が低下するおそれがある。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、抵抗溶接におけるナゲット径の推定方法が提供される。この方法は、一対のチップを含む溶接回路に空通電を行い、第1回路抵抗値を測定する工程と、前記溶接回路の抵抗の基準値と、測定された前記第1回路抵抗値と、の比較を実行する工程と、被溶接物を前記一対のチップで挟んで通電を行い、第2回路抵抗値を測定する工程と、前記比較の結果と、測定された前記第2回路抵抗値と、を用いて、前記ナゲット径を推定する工程と、を備える。
この形態によれば、空通電を行って測定された第1回路抵抗値と抵抗の基準値との比較の結果を、第2回路抵抗値と共に用いてナゲット径が推定される。したがって、チップが局所的に損傷し回路抵抗値が上昇した場合であっても、ナゲット径の推定精度の低下を抑制することができる。これは、チップの局所的損傷による回路抵抗値の上昇が、比較の結果に反映されるためである。
本開示は、ナゲット径の推定方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、ナゲット径の推定方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
本実施形態における抵抗溶接装置の概略構成を示す図である。 第1実施形態におけるナゲット径の推定方法を示す工程図である。 未摩耗状態のチップと、摩耗状態のチップと、摩耗に加えて局所的に損傷したチップと、の一例を示す図である。 チップの損傷径と第1回路抵抗値との関係を示すグラフである。 第2回路抵抗値の補正の一例を示すグラフである。 比較例によりナゲット径の推定を行った場合のナゲット径の推定値と実測値とを示すグラフである。 実施形態の方法によりナゲット径の推定を行った場合の推定値と実測値とを示すグラフである。
A.第1実施形態:
A1:装置構成:
図1は、本実施形態における抵抗溶接装置100の概略構成を示す図である。抵抗溶接装置100は、重ね合わせた複数の被溶接物W1,W2に電流を流すことでジュール熱を発生させ、被溶接物W1,W2を接合させる装置である。抵抗溶接装置100は、溶接ガン10と、ロボット20と、抵抗測定装置30と、制御部40と、を備える。
被溶接物W1,W2は、例えばアルミまたは鋼などの金属材である。被溶接物W1,W2は、それぞれ同じ種類の金属材でもよいし、異なる種類の金属材でもよい。また、被溶接物W1,W2は、2枚に限らず、3枚以上であってもよい。
溶接ガン10は、ガン本体1と、一対の電極である上部電極2および下部電極3と、アクチュエータ4と、を備える。
上部電極2および下部電極3は、シャンク5a,5bと、チップ6a,6bと、ひずみセンサ7a,7bと、を備える。上部電極2は、ガン本体1の上部1aにアクチュエータ4を介して装着されている。下部電極3は、ガン本体1の下部1bに配置されている。本実施形態において、上部電極2は、移動電極であり、下部電極3は、固定電極である。チップ6a,6bは、それぞれシャンク5a,5bの先端に取り付けられている。チップ6a,6bは、抵抗溶接を行う際に、被溶接物W1,W2と接触する。ひずみセンサ7a,7bは、それぞれシャンク5a,5bの側面に取り付けられている。ひずみセンサ7a,7bは、抵抗溶接時の被溶接物W1,W2の膨張量および収縮量を計測する。ひずみセンサ7a,7bは、例えば被溶接物W1,W2の変位量を光学的に検知することができるセンサである。計測された膨張量および収縮量は、制御部40に伝達される。
アクチュエータ4は、ガン本体1の上部1aに取り付けられており、上部電極2を下部電極3に対して接触させる方向、または下部電極3から離間させる方向に移動させる。これにより、被溶接物W1,W2は、抵抗溶接を行う際に、上部電極2および下部電極3に加圧されて挟持される。アクチュエータ4は、例えば、電動式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、または空圧式アクチュエータである。
ロボット20は、例えば多関節ロボット等である。ロボット20は、溶接ガン10を水平方向及び鉛直方向に移動させ、溶接ガン10を任意の回転軸を中心に回転させるように作動し、溶接ガン10の位置および角度を変更する。
抵抗測定装置30は、抵抗溶接装置100における回路抵抗値を測定する。本実施形態において回路抵抗値とは、溶接ガン10とロボット20と抵抗測定装置30と制御部40とを含む系全体の抵抗値である。抵抗測定装置30で測定された回路抵抗値は、制御部40に伝達される。
制御部40は、溶接ガン10およびロボット20の動作を制御する。具体的には、制御部40は、上部電極2および下部電極3に流す電流値の調整と、アクチュエータ4の動作により被溶接物W1,W2に加えられる圧力の調整と、被溶接物W1,W2における上部電極2および下部電極3の打点位置の調整と、を実行する。制御部40は、例えば、プロセッサおよびメモリを有するコンピュータによって実現される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成され、メモリは、例えばROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、ストレージと、によって構成される。
上述した抵抗溶接装置100により被溶接物W1,W2を溶接する場合、上部電極2および下部電極3に挟持された被溶接物W1,W2は、加圧されながら通電される。通電による抵抗発熱により被溶接物W1,W2が溶融し、その後凝固することで、被溶接物W1,W2が接合される。接合された被溶接物W1,W2の接合界面には、ナゲットが形成される。ナゲットは、被溶接物W1,W2の溶融部が冷却凝固した部分である。ナゲットの形状は、接合界面を中心面とする碁石状の形状である。
A2.ナゲット径の推定方法:
図2は、第1実施形態におけるナゲット径の推定方法を示す工程図である。ナゲット径の推定方法は、抵抗溶接の信頼度を評価するために実行される。例えば、かかる推定方法により推定されるナゲット径が正常範囲内の値であれば、抵抗溶接の信頼度は高いと評価される。他方、正常範囲から外れた値であれば、抵抗溶接の信頼度は低いと評価される。
一対のチップ6a,6bを含む溶接回路に空通電を行い、第1回路抵抗値を測定する(ステップS105)。本実施形態において、溶接回路とは、一対のチップ6a,6bを含む抵抗溶接装置100の系全体の回路のことをいう。また、本実施形態において、空通電とは、被溶接物W1,W2を介さずに、上部電極2および下部電極3を接触させて、抵抗溶接装置100に通電することをいう。
測定される第1回路抵抗値は、チップ6a,6bの状態によって変化する。図3は、未摩耗状態のチップ6a,6bと、摩耗状態のチップ6a,6bと、摩耗に加えて局所的に損傷したチップ6a,6bと、の一例を示す図である。チップ6a,6bは、抵抗溶接時に加圧され、通電により発生する熱が加えられる。加圧と加熱が繰り返し行われることで、被溶接物W1,W2との接触部が摩耗により略平面状になり、図3中央および右に示すように、摩耗部621,631が形成される。チップ6a,6bは、摩耗により被溶接物W1,W2との接触面積が大きくなるため、回路抵抗値が小さくなる。更に、チップ6a,6bは、摩耗に加えて、欠けなどの局所的な損傷が発生することで、摩耗部631に凹部632が形成される場合がある。図3右に示す凹部632は、平面視したときに略円形状であり、この直径を損傷径rdと呼ぶ。図4は、チップ6a,6bの損傷径rdと第1回路抵抗値との関係を示すグラフである。横軸は、損傷径rdを示し、縦軸は、第1回路抵抗値を示す。チップ6a,6bは、摩耗に加えて局所的な損傷が発生することで、被溶接物W1,W2との接触面積が小さくなり、第1回路抵抗値が大きくなる。損傷径rdが大きければ大きいほど、第1回路抵抗値も大きくなる。
溶接回路の抵抗の基準値と、測定された第1回路抵抗値と、の比較を実行する(ステップS110)。本実施形態において、溶接回路の基準値とは、摩耗のない一対のチップ6a,6bを用いて、溶接回路に空通電を行ったときの回路抵抗値である。第1回路抵抗値と基準値とを比較することで、チップ6a,6bの局所的な損傷による抵抗値の変化を調べることができる。ステップS110では、第1回路抵抗値を基準値で除算することで、基準値に対する第1回路抵抗値の比率(第1回路抵抗値/基準値)が計算される。
被溶接物W1,W2を一対のチップ6a,6bで挟んで通電を行い、第2回路抵抗値を測定する(ステップS115)。即ち、第2回路抵抗値とは、被溶接物W1,W2を抵抗溶接する際に計測される回路抵抗値のことをいう。
比較の結果と、測定された第2回路抵抗値と、を用いて、ナゲット径を推定する(ステップS120)。ナゲット径の推定は、ナゲット径を目的変数とし、抵抗溶接時の被溶接物W1,W2の膨張量と、収縮量と、回路抵抗値と、を説明変数とする重回帰式により計算される。ここで、膨張量と収縮量が大きいほどナゲット径は大きく推定され、抵抗値が大きいほどナゲット径は小さく推定される。かかる重回帰式は、抵抗溶接を行った際の膨張量と、収縮量と、回路抵抗値とを実験データとして集計し、重回帰分析を行うことで得られる。かかる重回帰式を用いてナゲット径の推定を行う場合、チップ6a,6bの局所的な損傷による抵抗値の変化が考慮されていないため、ナゲット径の推定精度が低下するおそれがある。そこで、ステップS110の比較の結果を用いて、第2回路抵抗値の補正を行う。具体的には、ステップS110で得られた基準値に対する第1回路抵抗値の比率の逆数(基準値/第1回路抵抗値)を、第2回路抵抗値に乗算することで補正を行う。図5は、第2回路抵抗値の補正の一例を示すグラフである。横軸は、抵抗溶接を開始してからの時間を示し、縦軸は回路抵抗値を示す。図5では、抵抗溶接開始から250ms~300msの抵抗値の平均値を、重回帰式の説明変数として用いる場合の補正の一例を示している。このように補正した第2回路抵抗値を説明変数として用いて、ナゲット径の推定を行う。
以上に説明した実施形態によるナゲット径の推定方法によれば、チップ6a,6bの損傷による抵抗値の変化分を補正した第2回路抵抗値を用いて、ナゲット径の推定を行っている。このため、チップ6a,6bの損傷による回路抵抗値の変動に起因するナゲット径の推定精度の低下を抑制することができる。
図6は、比較例によりナゲット径の推定を行った場合のナゲット径の推定値と実測値とを示すグラフである。比較例では、第2回路抵抗値を補正しないでナゲット径の推定の重回帰式に用いた。図7は、実施形態の方法によりナゲット径の推定を行った場合の推定値と実測値とを示すグラフである。図6および図7において、横軸は、ナゲット径の推定値を示し、縦軸は、ナゲット径の実測値を示す。また、図6および図7において、実線L1は、推定値と実測値とが一致する直線、即ち推定精度が100%であることを示す直線である。破線L2は、推定値が実測値に対して10%不足していることを示す直線である。破線L3は、推定値が実測値に対して10%超過していることを示す直線である。ここで、推定精度は、実測値を基準とした推定値の割合をいう。推定精度は、-10%~+10%の範囲内であることが望ましい。図6に示すように、比較例の場合、推定精度は-21%~+16%の範囲内であった。推定値が実測値に対して不足しているデータが多い理由は、チップ6a,6bの局所的な損傷により抵抗値が大きくなることで、推定値が実際よりも小さく見積もられるためである。図7に示すように、実施形態の方法によれば、チップ6a,6bの損傷による抵抗値の上昇分を補正してからナゲット径の推定を行うので、推定精度が-9%~+8%の範囲内である。これは、実施形態のナゲット径の推定方法により、チップ6a,6bが局所的に損傷した場合であっても、推定精度の低下が抑制されていることを示している。
また、本実施形態の方法によれば、ナゲット径の推定精度の低下を抑制することができるため、一定の水準を保ちながら溶接の信頼度を算出することができる。このため、従来行われている検査員による溶接後の超音波検査の工程を省略することができ、製造コストの低下を実現することができる。
B.他の実施形態:
(B1)第1実施形態において、回路抵抗値の基準値は、未摩耗状態の一対のチップ6a,6bを用いて空通電を行った際の回路抵抗値であったが、摩耗状態または局所的に損傷している一対のチップ6a,6bを用いて空通電を行った際の回路抵抗値であってもよい。例えば、1組の被溶接物W1,W2の溶接を終える毎に空通電を行い、その際に測定された回路抵抗値を次回推定時の基準値として用いてもよい。基準値は、溶接を終える毎に更新されてもよい。
(B2)各実施形態において、ナゲット径の推定は、制御部40により行われてもよい。かかる場合、制御部40は、メモリに記録されたプログラムを実行することで、ナゲット径の推定を行ってもよい。
(B3)各実施形態において、上部電極2が移動電極、下部電極3が固定電極である抵抗溶接装置100について説明したが、この構成に代えて、上部電極2が固定電極、下部電極3が移動電極であってもよい。また、上部電極2および下部電極3の両方が移動電極であってもよい。
(B4)各実施形態において、ナゲット径の推定に用いる回路抵抗値(即ち第2回路抵抗値)は、抵抗溶接開始から250m~300msの時間の抵抗値の平均値を用いていたが、抵抗溶接開始から終了までの全範囲の時間の抵抗値の平均値を用いてもよい。また、任意の時間範囲の回路抵抗値の平均値を用いてもよい。また、平均値に代えて積分値を用いてもよい。
(B5)各実施形態において、膨張量および収縮量は、ひずみセンサ7a,7bにより計測されるが、これに代えて、移動電極の変位量を用いて膨張量および収縮量の計測を行ってもよい。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
1…ガン本体、1a…上部、1b…下部、2…上部電極、3…下部電極、4…アクチュエータ、5a,5b…シャンク、6a,6b…チップ、7a,7b…ひずみセンサ、10…溶接ガン、20…ロボット、30…抵抗測定装置、40…制御部、100…抵抗溶接装置、621…摩耗部、631…摩耗部、632…凹部、W1,W2…被溶接物、rd…損傷径

Claims (1)

  1. 抵抗溶接におけるナゲット径の推定方法であって、
    一対のチップを含む溶接回路に空通電を行い、第1回路抵抗値を測定する工程と、
    前記溶接回路の抵抗の基準値と、測定された前記第1回路抵抗値と、の比較を実行する工程と、
    被溶接物を前記一対のチップで挟んで通電を行い、第2回路抵抗値を測定する工程と、
    前記比較の結果と、測定された前記第2回路抵抗値と、を用いて、前記ナゲット径を推定する工程と、
    を備える、ナゲット径の推定方法。
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