JP2023173360A - 生体老化レベルの評価方法 - Google Patents

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貴亮 山田
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Abstract

【課題】生体老化レベルを客観的かつ正確に評価できる指標を用いた新たな生体老化レベルの評価方法を提供すること。【解決手段】生体試料におけるFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の発現量を指標とする、生体老化レベルの評価方法、ならびに評価用キット。【選択図】なし

Description

本発明は、生体試料における特定のタンパク質の発現量を指標として生体老化レベルを評価する方法に関する。
人の身体は老化によって、シミ、しわ、たるみ、乾燥、白髪などの外見的な変化が生じたり、骨、関節、筋肉が加齢によって衰えることで運動機能が低下する。また、老化に伴って生体防御機能を担う免疫担当細胞の機能が低下すること(非特許文献1)、認知機能や記憶力といった脳機能の低下を引き起こすことがわかっている(非特許文献2)。近年では、こうした個体の老化度を生化学的に評価できる指標(老化マーカー)の開発が進められるようになってきた。例えば、これまでに老化度の評価方法として、血液や尿等の生体試料中のベータガラクトシダーゼ活性を指標とする方法(特許文献1)、8-ハイドロキシデオキシグアノシンを指標とする方法(特許文献2)などが報告されているが、老化度と客観的に関連づけられる指標としていまだ十分満足できるものはなかった。また、近年では、生体の組織を構成する細胞は老化することで炎症性物質やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの発現が高まり、周囲の老化を促進する可能性が示唆されている(非特許文献3)。生体内のこれらの老化関連因子を評価することができれば個人の老化状態を予測できると期待されるが、具体的にどのような因子が個人の表現型に関与するかは十分に明らかとなっていない。
特許第5021273号公報 特許第2850128号公報
Anis Larbi et al., Aging of the immune system as a prognostic factor for human longevity. Physiology (Bethesda)., 23:64(2008) Park et al., Models of visuospatial and verbal memory across the adult life span. Psychol Aging., 17, 299-320(2002) Byun HO et al., From cell senescence to age-related diseases: differential mechanisms of action of senescence-associated secretory phenotypes. BMB Rep. 549-558(2015)
従って、本発明は、生体老化レベルを客観的かつ正確に評価できる指標を用いた新たな生体老化レベルの評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、Fractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lの発現量が、若齢群の検体よりも高齢群の検体のほうが有意に高く、加齢に伴う脳機能の低下、血液の老化、及び抗疲労性の低下と相関性があること、また、その相関性に基づき上記タンパク質の発現量を指標とすれば、生体老化レベルを客観的かつ正確に評価できるという知見を得、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)生体試料におけるFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の発現量を指標とする、生体老化レベルの評価方法。
(2)前記生体試料が、被験体より採取した唾液又は血液である、(1)に記載の方法。
(3)前記生体老化が、脳機能の低下である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記生体老化が、血液の老化である、(1)又は(2)に記載の方法。
(5)前記生体老化が、抗疲労性の低下である、(1)又は(2)に記載の方法。
(6)Fractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質に対する抗体を含む、生体老化レベルの評価用キット。
本発明の方法によれば、生体老化レベルと相関する新規マーカーを指標とするため、生体老化レベルを客観的かつ正確に評価することができる。本発明の方法は、検体として被験者から採取した唾液や血液などの体液を用いることができるため、被験者の負担もなく、迅速かつ簡便である。本発明の方法によって得られた生体老化レベルの評価は、個人の健康状態の把握に役立ち、老化の改善や老化の予防を目的とした生活習慣の見直し、アンチエイジング志向の高まりから需要が伸びている抗老化のための医薬品やサプリメント等を積極的に取り入れる意識を高めることができる。
若齢群と高齢群における各脳機能(MST(短期記憶能力)、2-back課題(ワーキングメモリー能力)、ロンドン塔課題(プランニング能力))試験の結果(正答率)の比較を示す(*:P<0.05)。 唾液中のFractalkineの濃度と各脳機能(MST、2-back課題、ロンドン塔課題)試験の正答率との関係(散布図)を示す。 図3Aは、若齢群と高齢群における赤血球沈降速度の比較を示す(*:P<0.05)。図3Bは、唾液中のIL-1αの濃度と赤血球沈降速度との関係(散布図)を示す。 図4Aは、若齢群と高齢群における、自律神経強度(TP)の比較を示す(*:P<0.05)。図4Bは、唾液中のIL-1αの濃度とTPとの関係(散布図)を示す。
1.生体老化レベルを評価する方法
本発明の生体老化レベルを評価する方法は、生体試料におけるFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の発現量を指標として用いる。
本発明において、「生体老化レベルの評価」とは、加齢に伴う生体機能の低下の程度の判定をいう。加齢に伴う生体機能の低下としては、脳機能(記憶力・認知機能)の低下、血液の老化、抗疲労性の低下(疲れやすい、疲れが蓄積しやすい、疲れが回復しにくい等)、筋力の低下、心肺機能の低下、免疫力の低下などが含まれるが、これらに限定はされない。
本発明において、生体試料は、Fractalkine、IL-1α、TNF-α、及び/又はCD30Lの発現量の変動を測定及び/又は比較できる試料であれば、その種類は特に限定されるものではないが、体液が好ましい。生体試料を採取する被験体としてはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
体液としては、例えば、唾液、血液(例えば、全血、白血球等の血球、血漿、血清等)、尿、喀痰、咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、口腔(内頬)粘膜ぬぐい液、涙腺分泌液、関節液、膣液、精液、子宮頸分泌液、及び汗などが挙げられるが、検査の簡便性と低侵襲性の点から、唾液又は血液が好ましく、唾液がより好ましい。唾液には、安静時唾液及び刺激時唾液が包含される。
上記生体試料の採取は、通常の方法により行うことができる。例えば、生体試料が、唾液の場合は、安静時唾液は、吐唾法、ワッテ法等により採取することができ、刺激時唾液は、例えば、ガム法により採取することができる。唾液の採取方法は、当該技術分野において確立されており、当業者であれば、適宜選択することが可能である。
本発明において生体老化レベルの評価の指標として用いるFractalkine(CX3CL1)、IL-1α(interleukin 1 alpha)、TNF-α(tumor necrosis factor alpha)、CD30L(CD30Ligand/TNFSF8(Tumor necrosis factor ligand superfamily member 8))は、いずれもサイトカインタンパク質として知られており、主に生体内の様々な炎症反応、炎症の病態形成に関与する。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用することより評価の精度を高めることができる。2種以上を併用する場合は、FractalkineとIL-1αの組み合わせが好ましく、FractalkineとIL-1αとTNF-α、FractalkineとIL-1αとCD30Lの組み合わせがより好ましく、FractalkineとIL-1αとTNF-αとCD30Lの組み合わせがさらに好ましい。
上記のタンパク質の配列情報は、例えばヒトの場合は、Fractalkine(GenBank number:NP_002987.1)、IL-1α(GenBank number:NP_000566)、TNF-α(GenBank number: NP_000585)、CD30L(GenBank number:NP_001239219)として登録されている。ヒトのFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lのアミノ酸配列は、配列表の配列番号1、2、3、4にそれぞれ示される。本発明においてこれらのタンパク質は、生体老化レベルの指標として用いることができる限り、配列番号1、2、3、及び4の各アミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよく、そのようなホモログタンパク質も、本発明にいうFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lに包含されるものとする。
本発明に係る生体老化レベルの評価方法は、生体試料におけるFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lの発現量が、老化が進むと増加するという知見に基づき、生体試料を採取した被験者の生体老化レベルを評価するものである。よって、評価にあたっては、生体老化レベルの評価に供する生体試料を用意し、該生体試料におけるFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質(以下、これらを「老化マーカータンパク質」という)の発現量を測定し、該発現量に基づいて老化レベルを評価する。生体試料における老化マーカータンパク質の発現量は、絶対値又は相対値(比較対照又は基準発現量との比率や差など)として算出され、必ずしも老化マーカータンパク質の絶対的な発現量を測定する必要はなく、対照の老化マーカータンパク質の発現量との相対的な関係が明らかになればよい。また、ここでいう「評価」は、医師による診断を包含せず、加齢により発症する特定の疾患に対して医師による診断が介入する場合であっても、診断の補助を意味し、具体的には、診断のためのデータを取得することをいう。
老化マーカータンパク質の発現量の測定は、例えば、老化マーカータンパク質に対する抗体又は抗体断片を用いて免疫学的に測定する方法を用いることができる。具体的には、ウエスタンブロッティング法、酵素免疫測定法(ELISA)、放射線免疫測定法(RIA)、蛍光抗体法、セルアレイ法、組織アレイ法等を挙げることができる。その他、抗体を用いず、同時に多くのタンパク質を定量できるハイスループットなタンパク質質量分析技術であるLC-MS/MS MRM等を用いることができる。これらの測定方法についても、常法のプロトコル、又は常法のプロトコルを適宜修正・変更したプロトコルによって実施することができる。
本発明において、生体老化レベルの評価は、例えば、上記の方法で測定した生体試料における老化マーカータンパク質の発現量と、予め定めた基準発現量とを比較することにより行うことができる。基準発現量としては、例えば、若齢群、高齢群、あるいは年齢群別に平均値をとって定めた老化マーカータンパク質の発現量を用いることができる。あるいは、老化マーカータンパク質の発現量と生体老化の指標(例えば、認知機能試験の正答率、赤血球沈降速度、自律神経強度(TP))との相関図を予め作成しておき、被験体の生体試料における当該老化マーカータンパク質の発現量をその相関図と比較してもよい。
発現量の比較は、有意差の有無に基づいて行うことが好ましい。例えば、生体試料における老化マーカータンパク質の発現量が、基準発現量と比べて、10%、又は20%、又は30%、又は50%、又は70%、又は100%高い、又は低い場合、有意に高い、又は、有意に低いとすることができる。生体試料における老化マーカータンパク質と高齢群又は若齢群の基準発現量とを比較し、該生体試料における老化マーカータンパク質の発現量が高齢群の基準発現量と同等又は若齢群の基準発現量よりも有意に高い場合には、該生体試料を採取した被験体の生体老化レベルが高いと評価でき、該生体試料における老化マーカータンパク質の発現量が若齢群の基準発現量と同等又は高齢群の基準発現量よりも有意に低い場合には、該生体試料を採取した被験体の生体老化レベルが低いと評価できる。
あるいは、別の方法として、20代、30代、40代、50代、60代、70代といったように年代別に「基準発現量(平均値)+2SD」をカットオフ値として規定し、被験体より採取した生体試料中の老化マーカータンパク質の発現量が、該被験体の実年齢に相当する年代のカットオフ値より高い場合には、該被験体の生体老化レベルが高い、生体老化が進んでいると評価でき、カットオフ値より低い場合には、該被験体の生体老化レベルが低い、生体老化が進んでいないと評価することができる。
カットオフ値を用いる場合の生体老化レベルの評価方法は、具体的には、(a)被験体より採取した生体試料におけるFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の発現量を測定する工程、(b)工程(a)で測定したFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の発現量を、予め設定されたカットオフ値と比較し、該発現量が該カットオフ値以上である場合は該被験体の生体老化レベルが高いと評価し、該発現量が該カットオフ値以下である場合は該被験体の生体老化レベルが低いと評価する工程を含む。
2.生体老化レベルの評価用キット
本発明に係る生体老化レベルの評価用キットは、前記のFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上の老化マーカータンパク質の発現量を測定するための試薬を含む。当該キットを構成する試薬としては、老化マーカータンパク質に対する抗体を用いることができる。
老化マーカータンパク質に対する抗体は、当該タンパク質と特異的に結合可能なものであれば特に限定されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよい。また抗体は、上記のタンパク質に特異的に結合し得る限り断片であってもよい。抗体の断片としては、例えば、Fab断片、F(ab’)断片、単鎖抗体(scFv)等が挙げられる。抗体の作成は、上記タンパク質を抗原として、常法により作製することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス等)から血液を採取し、この血液から公知の方法により血清を分離することによって得られる。また、モノクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物から抗体産生細胞(脾臓細胞、リンパ節細胞等)を取り出して骨髄腫細胞と細胞融合させ、得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から回収することによって得られる。また、市販品を用いることもできる。タンパク質の定量のために、これらの抗体を適宜標識してもよい。標識物質は、蛍光色素、放射性同位体、酵素等を使用することができる。
本発明のキットには、前記の測定方法において用いる抗体を少なくとも含んでいればよいが、必要に応じて、固定化担体、標識物質、標識の検出に用いられる基質化合物、陽性や陰性の標準試料、キットの使用方法を記載した指示書等を含めることもできる。なお、キット中の試薬は溶液でも凍結乾燥物でもよい。
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)唾液中のタンパク質濃度の測定
被験者20名(20~30代若齢群10名、50~60代高齢群10名)から唾液を採取した。唾液は、水道水で口を3回ゆすいだ後、自然に分泌される唾液を5分間採取した。採取した唾液を3,500rpmにて15分間遠心し、上清を回収した。回収した上清を100℃で5分間加熱した後、3,500rpmで15分間遠心し、還元処理したものをサンプルとして用いた。還元処理前のサンプルのタンパク質濃度をPierce(登録商標)BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher社製)により測定し、サンプルのタンパク質濃度を調整した。ドットブロッター(SCIE-PLAS社製)を用いてメンブレン(MERCK社製)上にサンプルを吸引・吸着させ、PBS(-)にて洗浄し、PVDF Blocking Reagent for Can Get Signal(登録商標)(TOYOBO社製)でブロッキングをした。PBS(-)で洗浄した後、Can Get Signal Solution 1(TOYOBO社製)で希釈した一次抗体をメンブレンに添加し、4℃で12時間反応させた。一次抗体には抗Fractalkine抗体(Gene Tex社製)、抗IL-1a抗体(protein tech社製)、抗TNF-α抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗CD30L抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)を用いた。一次抗体反応後、PBS(-)で洗浄し、Can Get Signal Solution 2(TOYOBO社製)で希釈した二次抗体をメンブレンに添加し、室温で1時間反応させた。二次抗体には、Peroxidase F(ab’)2 Fragment Rabbit Anti-Rat IgG (H+L)抗体(Jackson Immuno Research社製)を用いた。二次抗体反応後、PBS(-)で洗浄し、ECLTM Prime Western Blotting Detection Reagents(cytiva社製)で処理し、WSE-6200H LuminoGraphII(ATTO社製)を用いて発光強度を測定し、検量線の発光強度を比較することでタンパク量を定量した。各群(10名)における平均タンパク質濃度(ng/mL)を表1に示した。
Figure 2023173360000001
表1に示されるように、唾液中のFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lの濃度は、若齢群の検体よりも高齢群の検体のほうが有意に高かった。
(実施例2)脳機能の測定
被験者20名(20~30代若齢群10名、50~60代高齢群10名)の脳機能として、短期記憶能力、ならびに前頭前野に関連するワーキングメモリー能力及びプランニング能力を測定した。短期記憶能力の測定にはMnemonic Similarity Task(MST)を用いた。MSTとは被験者に対して様々な画像を提示し、10分後に先ほど見た画像を正確に憶えているかを測定する試験である。本試験では10枚の画像を5秒ずつ提示し、10分後の正答率を短期記憶能力として算出した。ワーキングメモリー能力の測定には2-back課題を用いた。2-back課題とは被験者に対して様々な画像を数枚提示し、提示し終えた時点から2枚前の画像を正確に憶えているかを測定する試験である。本試験では3~5枚の画像を提示し2枚前の画像を回答させるのを10セット行い、正答率をワーキングメモリー能力として算出した。プランニング能力の測定にはロンドン塔課題を用いた。ロンドン塔課題とは被験者にそれぞれ高さの異なる3本の棒に「赤」、「青」、「緑」の3色の球が配置されているスタートの画像とゴールの画像を提示し、球を最低何回動かせばスタートの配置からゴールの配置になるかを回答させる試験である。本試験では10セット行い、正答率をプランニング能力として算出した。
図1に、若齢群と高齢群における各脳機能(MST(短期記憶能力)、2-back課題(ワーキングメモリー能力)、ロンドン塔課題(プランニング能力))の試験結果(正答率(%))の比較を示す。また、図2に、実施例1で測定したFractalkineの濃度(ng/mL)と各脳機能試験の正答率(%)との関係(散布図)を示す。
図1に示されるように、若齢群に比べて高齢群は各脳機能試験の正答率が下がり、加齢によって脳機能が低下した。また、図2に示されるように、唾液中のFractalkineの濃度が高くなるにつれて各脳機能試験の正答率が下がり、Fractalkineの濃度と脳機能とは、負の相関関係(MST:相関係数r=-0.489467086、2-back課題:相関係数r=-0.465350918、ロンドン塔課題:相関係数r=-0.655635794)があることが認められた。
(実施例3)血液の状態(赤血球沈降速度)の測定
被験者20名(20~30代若齢群10名、50~60代高齢群10名)から血液を採取し、外部機関にて血液検査を行った(名古屋臨床センター)。測定項目は赤血球沈降速度を設定した。赤血球沈降速度は、採取した血液に抗凝固剤を添加したものを細管に入れ、自然放置することで赤血球が沈降することを利用した検査方法であり、古くから炎症の診断に用いられてきた。赤血球の沈降速度は赤血球の凝集しやすさに比例するため、沈降速度から赤血球の状態を推定できる。一般に老化した赤血球は膜構造の不安定化により凝集しやすくなることが知られているため、沈降速度の速い検体では老化した赤血球が多く存在すると考えられる
図3Aに、若齢群と高齢群における赤血球沈降速度(mm/時間)の比較を示す。また、図3Bに、実施例1で測定したIL-1α濃度(ng/mL)と赤血球沈降速度(mm/時間)との関係(散布図)を示す。
図3Aに示されるように、若齢群に比べて高齢群は赤血球沈降速度が上がり、加齢によって血液(赤血球)の老化が生じた。また、図3Bに示されるように、唾液中のIL-1αの濃度が高くなるにつれて赤血球沈降速度が上がり、IL-1αの濃度と血液(赤血球)の老化とは、正の相関関係(相関係数r=0.66669395)があることが認められた。
(実施例4)疲労度の測定
被験者20名(20~30代若齢群10名、50~60代高齢群10名)の指尖脈波を計測し、疲労度を解析した。指尖脈波の計測及び解析にはSA-3000plus(東京医研)を用い、自律神経強度(Total Power:TP)の解析を行った。一般に、自律神経強度と疲労度との間に相関関係があることが知られており、自律神経強度を測定することにより疲労度の客観的な測定が可能であるとされている。
図4Aに、若齢群と高齢群におけるTP(mS)の比較を示す。また、図4Bに、実施例1で測定したIL-1α濃度(ng/mL)とTP(mS)との関係(散布図)を示す。
図4Aに示されるように、若齢群に比べて高齢群はTPが下がり、加齢によって疲労度が増し、抗疲労性が低下した。また、図4Bに示されるように、唾液中のIL-1αの濃度が高くなるにつれてTPが下がり、IL-1αの濃度と抗疲労性とは、負の相関関係(相関係数r=-0.446704813)があることが認められた。
なお、上記実施例2~4の相関係数rは、唾液中のタンパク質の濃度をx(説明変数)、各試験で得られた測定値をy(目的変数)とし、下記の式1で算出される。
Figure 2023173360000002
(実施例5)唾液中のタンパク質と老化レベル測定値との相関解析
実施例1で測定した唾液中のタンパク質(Fractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30L)の濃度を説明変数とし、実施例2(脳機能:MST、2-back課題、ロンドン塔課題)、実施例3(血液の状態:赤血球沈降速度)、実施例4(抗疲労性:TP)で得られた測定値を目的変数とし、それぞれ単回帰分析によって決定係数Rを算出した。また、実施例1で測定した唾液中のタンパク質の濃度の複数の組み合わせを説明変数とし、実施例2(脳機能)、実施例3(血液の状態)、実施例4(抗疲労性)の各測定で得られた測定値を目的変数とし、それぞれ重回帰分析によって決定係数Rを算出した。決定係数Rは寄与率ともいい、説明変数が目的変数をどれくらい説明しているかを表す。決定係数Rは、推定された回帰式の当てはまりの良さの度合いを示す指標であり、0から1までの値を取り、1に近いほど回帰式が測定されたデータに良く当てはまることを示す。また、説明変数と目的変数から得られた決定係数Rが統計的に有意であるかどうかを判定するために該説明変数と該目的変数のp値を求めた。p値は0.05(=5%)を有意水準として、p値が0.05より小さい場合に有意性があるとされる。本実施例では被験者が20名であるため、決定係数Rが0.143142でp値<0.1、決定係数Rが0.196926でp値<0.05、決定係数Rが0.315209でp値<0.01の値となる。
表2に、唾液中のタンパク質と、脳機能、血液の状態、抗疲労性の老化レベルの測定値の相関解析により算出した決定係数Rを示す。
Figure 2023173360000003
表2に示されるように、Fractalkineと脳機能との単回帰分析により算出した決定係数Rは0.24、0.22、0.43で、p値が有意水準以下であることから、Fractalkineと脳機能との有意な相関性が認められた。また、IL-1αと血液の状態との単回帰分析により算出した決定係数Rは0.44、IL-1αと抗疲労性との単回帰分析により算出した決定係数Rは0.20で、p値が有意水準以下であることから、IL-1αは血液の状態及び抗疲労性との有意な相関性が認められた。また、FractalkineとIL-1αの組み合わせ、及び、FractalkineとIL-1αと、TNF-α又はCD30Lとの組み合わせでは、さらに決定係数Rが大きくなり、より強い相関が認められた。
以上より、Fractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の発現量により、脳機能、血液の状態、抗疲労性の老化レベルが十分に説明できることが明らかとなり、これらのタンパク質は生体老化レベルの新たな指標として有効であることがわかった。
本発明の方法によれば、生体老化レベルを客観的かつ正確に、しかも迅速に評価することができる。よって、本発明の方法によって得られた生体老化レベルの評価結果に基づき、被験者にカスタマイズした老化の改善や老化の予防のためのサプリメントを提供すること、また、老化の改善や老化の予防のためのケア方法に関するカウンセリングやアドバイスを行うことが可能となる。

Claims (6)

  1. 生体試料におけるFractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の発現量を指標とする、生体老化レベルの評価方法。
  2. 前記生体試料が、被験体より採取した唾液又は血液である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記生体老化が、脳機能の低下である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記生体老化が、血液の老化である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記生体老化が、抗疲労性の低下である、請求項1又は2に記載の方法。
  6. Fractalkine、IL-1α、TNF-α、及びCD30Lから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質に対する抗体を含む、生体老化レベルの評価用キット。


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