JP2023172606A - 細胞死抑制剤、医薬、及びインビトロにおける細胞死を抑制する方法 - Google Patents

細胞死抑制剤、医薬、及びインビトロにおける細胞死を抑制する方法 Download PDF

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Hiroshi Kajiyama
俊英 三村
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Abstract

【課題】ヒドロキシクロロキンによる細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制することができる細胞死抑制剤、HCQが用いられる疾患に使用するための医薬、及びインビトロにおける細胞死を抑制する方法の提供。【解決手段】ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を含み、ヒドロキシクロロキン(HCQ)による細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制する細胞死抑制剤である。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞死抑制剤、HCQが用いられる疾患に使用するための医薬、及びインビトロにおける細胞死を抑制する方法に関する。
ヒドロキシクロロキン(以下、「HCQ」と称することがある。)は、全身性エリテマトーデス(以下、「SLE」と称することがある。)の病態の安定化を目的に使われている免疫調整薬である。HCQは、腎機能保護作用、生命予後改善作用があることから、長年SLEの治療薬として全世界で使われてきた。日本国内でも、2015年7月にSLEに対して保険承認となった。
一方、海外からの報告では、6年から15年間の内服の間、7~8%の症例で非可逆的失明に至る網膜症が出現すると報告され、日本国内でも数例の報告がある。また、HCQ投与により糸球体上皮細胞内にファブリー(Fabry)病で認めるゼブラボディ(Zebra body)様の封入体が形成され、蛋白尿が出現することが報告されている。
しかし、このHCQの投与による網膜症や腎障害の機序の詳細は、まだ十分に解明されていない。
なお、これまでに、円板状エリテマトーデスの治療において、ヒドロキシクロロキンが用いられることがあるものの、この薬物には網膜毒性のリスクがあることから、それに代えて、JAK経路を調節する化合物を円板状エリテマトーデスの治療に用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ドライアイおよび他の目に関連する疾患を治療するために、ヤヌスキナーゼを阻害する化合物を使用する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特表2014-507480号公報 特開2020-050682号公報
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ヒドロキシクロロキンによる細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制することができる細胞死抑制剤、HCQが用いられる疾患に使用するための医薬、及びインビトロにおける細胞死を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、HCQが、培養細胞に対して細胞死を起こすことを新たに見出した。また、JAK阻害剤を用いることで、HCQによる細胞死及び長期培養による細胞死を、再現性良く、抑制できることを見出した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を含み、
ヒドロキシクロロキン(HCQ)による細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制することを特徴とする細胞死抑制剤である。
<2> 個体に、前記<1>に記載の細胞死抑制剤を投与することを特徴とする細胞死抑制方法である。
<3> HCQが用いられる疾患に使用するための医薬であって、
JAK阻害剤を含み、HCQによる細胞死を抑制する細胞死抑制剤を含有することを特徴とする医薬である。
<4> 個体に、前記<3>に記載の医薬を投与することを特徴とするHCQが用いられる疾患の治療方法である。
<5> インビトロにおける細胞死を抑制する方法であって、
JAK阻害剤を細胞に添加することを含み、
前記細胞死が、HCQによる細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死であることを特徴とする方法である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ヒドロキシクロロキンによる細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制することができる細胞死抑制剤、HCQが用いられる疾患に使用するための医薬、及びインビトロにおける細胞死を抑制する方法を提供することができる。
図1は、試験例1の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。 図2は、試験例2の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。 図3は、試験例3の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。 図4は、試験例4の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。 図5は、試験例5の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。 図6は、試験例6の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。 図7Aは、試験例7におけるウパダシチニブを添加した場合の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。 図7Bは、試験例7におけるバリシチニブを添加した場合の生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。
(細胞死抑制剤)
本発明の細胞死抑制剤は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。本発明の細胞死抑制剤は、ヒドロキシクロロキン(HCQ)による細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制する。
本明細書において、「HCQによる細胞死」には、HCQを培養細胞に添加することにより起きる細胞死、HCQを個体に投与することにより起きる細胞死のいずれもが含まれる。
本明細書において、「長期培養による細胞死」とは、細胞を長期間、培養液の交換なしで培養することによる細胞死のことをいう。前記長期間とは、14日間以上のことをいい、28日間以上が好ましい。
<JAK阻害剤>
前記JAK阻害剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリシチニブ、ウパダシチニブ、トファシチニブ、ペフィシチニブ、フィルゴチニブなどが挙げられる。これらは、個体への投与の際は通常単独で用いられ、インビトロの使用の際は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記JAK阻害剤の中でも、バリシチニブ、ウパダシチニブが好ましい。
前記JAK阻害剤は、適宜調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記細胞死抑制剤における前記JAK阻害剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記細胞死抑制剤は、前記JAK阻害剤のみからなるものであってもよい。
<その他の成分>
前記細胞死抑制剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。前記担体としても、特に制限はなく、剤型等に応じて適宜選択することができる。
前記細胞死抑制剤におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<剤形>
前記細胞死抑制剤の剤形としては、特に制限はなく、所望の投与方法などに応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤などが挙げられる。
前記経口固形剤としては、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などが挙げられる。前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられる。前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
前記経口液剤としては、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチンなどが挙げられる。
前記注射剤としては、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
前記軟膏剤としては、例えば、前記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィンなどが挙げられる。前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
前記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に前記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。
前記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム、発泡体シートなどが挙げられる。
<使用>
前記細胞死抑制剤は、インビボで用いることもできるし、インビトロで用いることもできる。
前記細胞死抑制剤の投与方法、投与量、投与時期、投与回数、投与間隔、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記細胞死抑制剤の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、前記細胞死抑制剤の剤形、投与対象である個体の年齢、体重、疾患の有無、投与対象の細胞の状態などに応じて、適宜選択することができる。例えば、個体に投与する場合は、経口投与、腹腔内投与、血液中への投与等の全身投与、局所投与のいずれかを選択することができる。また、細胞に投与する場合は、培地中に添加することにより、投与することができる。
前記細胞死抑制剤の投与量(使用量)としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、疾患の有無、投与対象の細胞の状態などに応じて、適宜選択することができる。例えば、個体に対する投与量としては、有効成分であるJAK阻害剤の最大血中濃度として、0.15μM~0.5μMとすることが好ましく、0.15μM~0.35μMとすることがより好ましい。また、培養細胞に対する投与量としては、有効成分であるJAK阻害剤の培地中の濃度として、0.003μM~50μMとすることが好ましく、0.003μM~0.35μMとすることがより好ましい。
前記細胞死抑制剤の投与時期、投与回数、投与間隔としても、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、疾患の有無、投与対象の細胞の状態などに応じて、適宜選択することができる。
前記細胞死がHCQによる細胞死である場合には、前記細胞死抑制剤は、前記HCQを使用する前に用いることが好ましい。前記HCQを複数回使用する場合には、最初のHCQの使用前に細胞死抑制剤を使用してもよいし、各回のHCQの使用前に細胞死抑制剤を使用してもよいし、任意の回のHCQの使用前に細胞死抑制剤を使用してもよい。また、前記細胞死抑制剤の投与と、HCQの投与との間隔としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記細胞死抑制剤が対象とする個体(種)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられる。
前記細胞死抑制剤が対象とする細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した個体由来の細胞などが挙げられる。
前記細胞死抑制剤は、他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
前記細胞死抑制剤によれば、HCQによる細胞死を効果的に抑制することができる。したがって、本発明は、個体に、前記細胞死抑制剤を投与することを特徴とする細胞死抑制方法にも関する。
また、前記細胞死抑制剤は、HCQの副作用を低減するための剤、細胞保護剤ということもできる。
(HCQが用いられる疾患に使用するための医薬)
本発明のHCQが用いられる疾患に使用するための医薬(以下、「医薬」と称することがある。)は、JAK阻害剤を含み、HCQによる細胞死を抑制する細胞死抑制剤を少なくとも含有し、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記医薬によれば、前記HCQが用いられる疾患における網膜症や腎障害を抑制し得る。
<HCQが用いられる疾患>
前記HCQが用いられる疾患としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、マラリアなどが挙げられる。
<JAK阻害剤を含み、HCQによる細胞死を抑制する細胞死抑制剤>
前記JAK阻害剤を含み、HCQによる細胞死を抑制する細胞死抑制剤は、上記した本発明の細胞死抑制剤と同様である。
前記医薬における前記細胞死抑制剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬は、前記細胞死抑制剤のみからなるものであってもよい。
<その他の成分>
前記医薬におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した細胞死抑制剤におけるその他の成分と同様のものが挙げられる。
前記医薬における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<剤形>
前記医薬の剤形としては、特に制限はなく、所望の投与方法などに応じて適宜選択することができ、例えば、上記した細胞死抑制剤における剤形と同様のものが挙げられる。
<使用>
前記医薬の投与方法、投与量、投与時期、投与回数、投与間隔、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した細胞死抑制剤の「使用」の項目における個体に投与する場合と同様とすることができる。
前記医薬は、前記HCQを使用する前に用いることが好ましい。前記HCQを複数回使用する場合には、最初のHCQの使用前に細胞死抑制剤を使用してもよいし、各回のHCQの使用前に細胞死抑制剤を使用してもよいし、任意の回のHCQの使用前に細胞死抑制剤を使用してもよい。また、前記医薬の投与と、HCQの投与との間隔としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記医薬が対象とする種(個体)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられる。
前記医薬は、他の医薬と組み合わせて使用してもよい。
前記医薬によれば、HCQによる細胞死を効果的に抑制することができる。したがって、本発明は、個体に、前記医薬を投与することを特徴とするHCQが用いられる疾患の治療方法にも関する。
前記治療とは、前記HCQが用いられる疾患における、網膜症や腎障害等のHCQの副作用を治したり、和らげたり、進行を防いだりすることをいう。
また、前記医薬は、HCQの副作用を低減するための医薬、細胞を保護するための医薬ということもできる。
(インビトロにおける細胞死を抑制する方法)
本発明のインビトロにおける細胞死を抑制する方法は、JAK阻害剤を細胞に添加すること(以下、「添加工程」と称することがある。)を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。本発明のインビトロにおける細胞死を抑制する方法における細胞死は、HCQによる細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死である。
<添加工程>
前記添加工程は、JAK阻害剤を細胞に添加する工程である。
前記JAK阻害剤は、上記した細胞死抑制剤におけるJAK阻害剤と同様である。
前記JAK阻害剤の添加量(投与量)としては、特に制限はなく、投与対象の細胞の状態などに応じて、適宜選択することができ、例えば、上記した細胞死抑制剤の「使用」の項目における培養細胞に対する投与量と同様とすることができる。
前記JAK阻害剤の投与時期、投与回数、投与間隔としても、特に制限はなく、投与対象の細胞の状態などに応じて、適宜選択することができる。
前記細胞死がHCQによる細胞死である場合には、前記JAK阻害剤は、前記HCQを使用する前に用いることが好ましい。前記HCQを複数回使用する場合には、最初のHCQの使用前にJAK阻害剤を使用してもよいし、各回のHCQの使用前にJAK阻害剤を使用してもよいし、任意の回のHCQの使用前にJAK阻害剤を使用してもよい。また、前記JAK阻害剤の投与と、HCQの投与との間隔としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、哺乳動物由来の細胞が好ましい。前記哺乳動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられる。
前記JAK阻害剤は、他の添加剤と組み合わせて使用してもよい。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記インビトロにおける細胞死を抑制する方法によれば、HCQによる細胞死や長期培養による細胞死を効果的に抑制することができる。
前記インビトロにおける細胞死を抑制する方法は、HCQの副作用を低減するための方法、細胞を保護するための方法ということもできる。
以下に本発明の試験例を説明するが、本発明は、これらの試験例に何ら限定されるものではない。
(試験例1)
3~4×10cellsのヒト培養ポドサイト(「Sakairi et al., Am J Physiol Renal Physiol, 298(3) F557-567, 2010」を参照)を、インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウムを添加した10%FCS-RPMI1640培地20mLで、I型コラーゲンをコートした175cmフラスコにて、33℃、CO濃度5.0%で培養を開始し、フラスコ面の80~90%を細胞が覆う程度の細胞密度まで培養した。
その後、10%FCS-RPMI1640培地を吸引除去し、等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、数回フラスコを揺らし、PBSを吸引除去した後、3mLの0.02%トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5.0%で10分間培養した。次いで、7mLの10%FCS-RPMI1640培地を加えてトリプシンを失活させ、10mLの細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を15℃、1,600rpmで7分間遠心処理し、得られた細胞ペレットを適量の10%FCS-RPMI1640培地で再懸濁し、10×10cells/mLの細胞濃度の細胞浮遊液を作製した。
I型コラーゲンをコートした96ウェルプレートに、100μL/ウェルの量で前記細胞浮遊液を注入し、37℃、CO濃度5.0%で培養を開始した。
培養開始48時間後に、20mg/mLのヒドロキシクロロキン(HCQ)のストック溶液(溶媒はPBS)から、4mg/mL、1mg/mL、0.25mg/mL、0.0625mg/mL、0.0156mg/mL、0.00391mg/mL、0.0009mg/mLの濃度のHCQ溶液を、PBSを溶媒として作製し、各濃度のHCQ溶液を1μL、96ウェルプレートのウェルに播いた各細胞へ添加した。
HCQ添加後3日目に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて生存細胞数を決定した。ルミネセンスは、VARIOSKAN FLASH(Thermoscientific社)を用いて測定した。
結果を図1に示す。図1の縦軸は相対蛍光単位(RLU)を表し、横軸はHCQの濃度を表す。具体的には、横軸は下記のとおりである。
・ H0 ・・・ HCQの濃度が、0μg/mL
・ H10×4-5 ・・・ HCQの濃度が、0.009μg/mL
・ H10×4-4 ・・・ HCQの濃度が、0.0391μg/mL
・ H10×4-3 ・・・ HCQの濃度が、0.156μg/mL
・ H10×4-2 ・・・ HCQの濃度が、0.625μg/mL
・ H10×4-1 ・・・ HCQの濃度が、2.5μg/mL
・ H10×4 ・・・ HCQの濃度が、10μg/mL
・ H10×4 ・・・ HCQの濃度が、40μg/mL
図1に示したように、10μg/mLを超える濃度のHCQは、細胞死を起こすことが確認された。
(試験例2)
3~4×10cellsのマウス培養ポドサイト(「Kajiyama et al., Am J Nephrol, 29(3) 153-163, 2009」を参照)を、10~20U/mLのマウスIFN-γを添加した10%FCS-RPMI1640培地20mLで、I型コラーゲンをコートした175cmフラスコにて、33℃、CO濃度5.0%で培養を開始し、フラスコ面の80~90%を細胞が覆う程度の細胞密度まで培養した。
その後、10%FCS-RPMI1640培地を吸引除去し、等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、数回フラスコを揺らし、PBSを吸引除去した後、3mLの0.02%トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5.0%で10分間培養した。次いで、7mLの10%FCS-RPMI1640培地を加えてトリプシンを失活させ、10mLの細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を15℃、1,600rpmで7分間遠心処理し、得られた細胞ペレットを適量の10%FCS-RPMI1640培地で再懸濁し、10×10cells/mLの細胞濃度の細胞浮遊液を作製した。
I型コラーゲンをコートした96ウェルプレートに、100μL/ウェルの量で前記細胞浮遊液を注入し、37℃、CO濃度5.0%で培養を開始した。
培養開始48時間後に、20mg/mLのヒドロキシクロロキン(HCQ)のストック溶液(溶媒はPBS)から、4mg/mL、1mg/mL、0.25mg/mL、0.0625mg/mL、0.0156mg/mL、0.00391mg/mL、0.0009mg/mLの濃度のHCQ溶液を、PBSを溶媒として作製し、各濃度のHCQ溶液を1μL、96ウェルプレートのウェルに播いた各細胞へ添加した。
HCQ添加後2日目に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて生存細胞数を決定した。ルミネセンスは、VARIOSKAN FLASH(Thermoscientific社)を用いて測定した。
結果を図2に示す。図2の縦軸は相対蛍光単位(RLU)を表し、横軸はHCQの濃度を表す。具体的には、横軸は下記のとおりである。
・ H0 ・・・ HCQの濃度が、0μg/mL
・ H10×4-5 ・・・ HCQの濃度が、0.009μg/mL
・ H10×4-4 ・・・ HCQの濃度が、0.0391μg/mL
・ H10×4-3 ・・・ HCQの濃度が、0.156μg/mL
・ H10×4-2 ・・・ HCQの濃度が、0.625μg/mL
・ H10×4-1 ・・・ HCQの濃度が、2.5μg/mL
・ H10×4 ・・・ HCQの濃度が、10μg/mL
・ H10×4 ・・・ HCQの濃度が、40μg/mL
図2に示したように、2.5μg/mLを超える濃度のHCQは、細胞死を起こすことが確認された。
(試験例3)
ヒト網膜色素上皮細胞株ARPE-19を、培地(10%FCS-DMEM/F12(1:1)+L-グルタミン+15mM HEPES)で、何もプレコートしていないフラスコにて、33℃、CO濃度5.0%で培養を開始し、フラスコ面の80~90%を細胞が覆う程度の細胞密度まで培養した。
その後、前記培地を吸引除去し、等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、数回フラスコを揺らし、PBSを吸引除去した後、3mLの0.02%トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5.0%で7分間培養した。次いで、7mLの培地(10%FCS-DMEM/F12(1:1)+L-グルタミン+15mM HEPES)を加えてトリプシンを失活させ、10mLの細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を15℃、1,600rpmで7分間遠心処理し、得られた細胞ペレットを適量の培地(10%FCS-DMEM/F12(1:1)+L-グルタミン+15mM HEPES)で再懸濁し、12×10cells/mLの細胞濃度の細胞浮遊液を作製した。
ウェルの底面に何もコートしていない、通常の96ウェルプレートに、100μL/ウェルの量で前記細胞浮遊液を注入し、37℃、CO濃度5.0%で培養を開始した。
培養開始48時間後に、20mg/mLのヒドロキシクロロキン(HCQ)のストック溶液(溶媒はPBS)から、8mg/mL、2mg/mL、0.5mg/mL、0.125mg/mL、0.03125mg/mL、0.007813mg/mL、0.00195mg/mLの濃度のHCQ溶液を、PBSを溶媒として作製し、各濃度のHCQ溶液を1μL、96ウェルプレートのウェルに播いた各細胞へ添加した。
HCQ添加後4日目に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて生存細胞数を決定した。ルミネセンスは、VARIOSKAN FLASH(Thermoscientific社)を用いて測定した。
結果を図3に示す。図3の縦軸は相対蛍光単位(RLU)を表し、横軸はHCQの濃度を表す。具体的には、横軸は下記のとおりである。
・ PBS ・・・ HCQの濃度が、0μg/mL
・ H0.019 ・・・ HCQの濃度が、0.019μg/mL
・ H0.078 ・・・ HCQの濃度が、0.078μg/mL
・ H0.3125 ・・・ HCQの濃度が、0.3125μg/mL
・ H1.25 ・・・ HCQの濃度が、1.25μg/mL
・ H5 ・・・ HCQの濃度が、5μg/mL
・ H20 ・・・ HCQの濃度が、20μg/mL
・ H80 ・・・ HCQの濃度が、80μg/mL
図3に示したように、5μg/mLを超える濃度のHCQは、細胞死を起こすことが確認された。
(試験例4)
3~4×10cellsのヒト培養ポドサイト(「Sakairi et al., Am J Physiol Renal Physiol, 298(3) F557-567, 2010」を参照)を、インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウムを添加した10%FCS-RPMI1640培地20mLで、I型コラーゲンをコートした175cmフラスコにて、33℃、CO濃度5.0%で培養を開始し、フラスコ面の80~90%を細胞が覆う程度の細胞密度まで培養した。
その後、10%FCS-RPMI1640培地を吸引除去し、等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、数回フラスコを揺らし、PBSを吸引除去した後、3mLの0.02%トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5.0%で10分間培養した。次いで、7mLの10%FCS-RPMI1640培地を加えてトリプシンを失活させ、10mLの細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を15℃、1,600rpmで7分間遠心処理し、得られた細胞ペレットを適量の10%FCS-RPMI1640培地で再懸濁し、10×10cells/mLの細胞濃度の細胞浮遊液を作製した。
I型コラーゲンをコートした96ウェルプレートに、100μL/ウェルの量で前記細胞浮遊液を注入し、37℃、CO濃度5.0%で培養を開始した。
培養開始48時間後に、バリシチニブ(BAR)を、50μM、10μM、2μM、0.4μM、0.08μM、0.016μM、0.0032μMの最終濃度になるように、各ウェルにBARを添加した。
BARを添加した48時間後に、HCQを20μg/mLの最終濃度となるように、一部のウェルに添加した。
HCQ添加後7日目に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて生存細胞数を決定した。ルミネセンスは、VARIOSKAN FLASH(Thermoscientific社)を用いて測定した。
結果を図4に示す。図4の縦軸は相対蛍光単位(RLU)を表し、横軸はBAR及びHCQの濃度を表す。具体的には、横軸は下記のとおりである。
・ H20-PBS ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARのコントロールとしてPBSを1μL/well加えた(BARは無し)。
・ H20-Dm ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARのコントロールとしてDMSOを1μL/well加えた(BARは無し)。
・ H20-B10×5-5 ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARの濃度が0.0032μM
・ H20-B10×5-4 ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARの濃度が0.016μM
・ H20-B10×5-3 ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARの濃度が0.08μM
・ H20-B10×5-2 ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARの濃度が0.4μM
・ H20-B10×5-1 ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARの濃度が2μM
・ H20-B10×5 ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARの濃度が10μM
・ H20-B10×5 ・・・ HCQの濃度が20μg/mL、BARの濃度が50μM
・ H0 ・・・ HCQのコントロールとしてPBSを1μL/well加えた(HCQは無し)。BARのコントロールとしてDMSOを1μL/well加えた(BARは無し)。
図4に示したように、少なくとも2~50μMのBARにより、濃度依存的にHCQによる細胞死が抑制された。また、より低濃度のBARでも、HCQによる細胞死が抑制される傾向が見られた。
(試験例5)
3~4×10cellsのマウス培養ポドサイト(「Kajiyama et al., Am J Nephrol, 29(3) 153-163, 2009」を参照)を、10~20U/mLのマウスIFN-γを添加した10%FCS-RPMI1640培地20mLで、I型コラーゲンをコートした175cmフラスコにて、33℃、CO濃度5.0%で培養を開始し、フラスコ面の80~90%を細胞が覆う程度の細胞密度まで培養した。
その後、10%FCS-RPMI1640培地を吸引除去し、等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、数回フラスコを揺らし、PBSを吸引除去した後、3mLの0.02%トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5.0%で10分間培養した。次いで、7mLの10%FCS-RPMI1640培地を加えてトリプシンを失活させ、10mLの細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を15℃、1,600rpmで7分間遠心処理し、得られた細胞ペレットを適量の10%FCS-RPMI1640培地で再懸濁し、10×10cells/mLの細胞濃度の細胞浮遊液を作製した。
I型コラーゲンをコートした96ウェルプレートに、100μL/ウェルの量で前記細胞浮遊液を注入し、37℃、CO濃度5.0%で培養を開始した。
培養開始48時間後に、バリシチニブ(BAR)を、50μM、10μM、2μM、0.4μM、0.08μM、0.016μM、0.0032μMの最終濃度になるように、各ウェルにBARを添加した。
BARを添加した48時間後に、HCQを10μg/mLの最終濃度となるように、一部のウェルに添加した。
HCQ添加後9日目に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて生存細胞数を決定した。ルミネセンスは、VARIOSKAN FLASH(Thermoscientific社)を用いて測定した。
結果を図5に示す。図5の縦軸は相対蛍光単位(RLU)を表し、横軸はBAR及びHCQの濃度を表す。具体的には、横軸は下記のとおりである。
・ H10-PBS ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARのコントロールとしてPBSを1μL/well加えた(BARは無し)。
・ H10-Dm ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARのコントロールとしてDMSOを1μL/well加えた(BARは無し)。
・ H10-B10×5-5 ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARの濃度が0.0032μM
・ H10-B10×5-4 ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARの濃度が0.016μM
・ H10-B10×5-3 ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARの濃度が0.08μM
・ H10-B10×5-2 ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARの濃度が0.4μM
・ H10-B10×5-1 ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARの濃度が2μM
・ H10-B10×5 ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARの濃度が10μM
・ H10-B10×5 ・・・ HCQの濃度が10μg/mL、BARの濃度が50μM
・ H0 ・・・ HCQのコントロールとしてPBSを1μL/well加えた(HCQは無し)。BARのコントロールとしてDMSOを1μL/well加えた(BARは無し)。
図5に示したように、少なくとも2~50μMのBARにより、濃度依存的にHCQによる細胞死が抑制された。また、より低濃度のBARでも、HCQによる細胞死が抑制される傾向が見られた。
(試験例6)
ヒト網膜色素上皮細胞株ARPE-19を、培地(10%FCS-DMEM/F12(1:1)+L-グルタミン+15mM HEPES)で、何もプレコートしていないフラスコにて、33℃、CO濃度5.0%で培養を開始し、フラスコ面の80~90%を細胞が覆う程度の細胞密度まで培養した。
その後、前記培地を吸引除去し、等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、数回フラスコを揺らし、PBSを吸引除去した後、3mLの0.02%トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5.0%で7分間培養した。次いで、7mLの培地(10%FCS-DMEM/F12(1:1)+L-グルタミン+15mM HEPES)を加えてトリプシンを失活させ、10mLの細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を15℃、1,600rpmで7分間遠心処理し、得られた細胞ペレットを適量の培地(10%FCS-DMEM/F12(1:1)+L-グルタミン+15mM HEPES)で再懸濁し、12×10cells/mLの細胞濃度の細胞浮遊液を作製した。
ウェルの底面に何もコートしていない、通常の96ウェルプレートに、100μL/ウェルの量で前記細胞浮遊液を注入し、37℃、CO濃度5.0%で培養を開始した。
培養開始48時間後に、ウパダシチニブ(UPA)を、50μM、10μM、2μM、0.4μM、0.08μM、0.016μM、0.0032μMの最終濃度になるように、各ウェルにUPAを添加した。
UPAを添加した24時間後に、HCQを80μg/mLの最終濃度となるように、一部のウェルに添加した。
HCQ添加後4日目に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて生存細胞数を決定した。ルミネセンスは、VARIOSKAN FLASH(Thermoscientific社)を用いて測定した。
結果を図6に示す。図6の縦軸は相対蛍光単位(RLU)を表し、横軸はUPA及びHCQの濃度を表す。具体的には、横軸は下記のとおりである。
・ H80-Dm ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAのコントロールとしてDMSOを1μL/well加えた(UPAは無し)。
・ H80-Up10×5-5 ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAの濃度が0.0032μM
・ H80-Up10×5-4 ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAの濃度が0.016μM
・ H80-Up10×5-3 ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAの濃度が0.08μM
・ H80-Up10×5-2 ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAの濃度が0.4μM
・ H80-Up10×5-1 ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAの濃度が2μM
・ H80-Up10×5 ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAの濃度が10μM
・ H80-Up10×5 ・・・ HCQの濃度が80μg/mL、UPAの濃度が50μM
・ H0 ・・・ HCQのコントロールとしてPBSを1μL/well加えた(HCQは無し)。UPAのコントロールとしてDMSOを1μL/well加えた(UPAは無し)。
図6に示したように、0.016~10μMのUPAにより、HCQによる細胞死が抑制された。
(試験例7)
マウス培養ポドサイト(「Kajiyama et al., Am J Nephrol, 29(3) 153-163, 2009」を参照)を、10~20U/mLのマウスIFN-γを添加した10%FCS-RPMI1640培地20mLで、I型コラーゲンをコートした175cmフラスコにて、33℃、CO濃度5.0%で培養を開始し、フラスコ面の80~90%を細胞が覆う程度の細胞密度まで培養した。
その後、10%FCS-RPMI1640培地を吸引除去し、等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、数回フラスコを揺らし、PBSを吸引除去した後、3mLの0.02%トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5.0%で10分間培養した。次いで、7mLの10%FCS-RPMI1640培地を加えてトリプシンを失活させ、10mLの細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を15℃、1,600rpmで7分間遠心処理し、得られた細胞ペレットを適量の10%FCS-RPMI1640培地で再懸濁し、10×10cells/mLの細胞濃度の細胞浮遊液を作製した。
I型コラーゲンをコートした96ウェルプレートに、100μL/ウェルの量で前記細胞浮遊液を注入し、37℃、CO濃度5.0%で培養を開始した。
培養開始48時間後に、最終濃度が10μM、2.5μM、0.625μM、0.156μM、0.039μMとなるように、ウェルにBAR又はUPAを添加し、そのまま液替えなしで28日間培養した。
BAR又はUPAを添加した28日間後に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて生存細胞数を決定した。ルミネセンスは、VARIOSKAN FLASH(Thermoscientific社)を用いて測定した。
結果を図7A及び7Bに示す。図7AはUPAを添加した場合の結果を示し、図7BはBARを添加した場合の結果を示す。図7A及び7Bの縦軸は相対蛍光単位(RLU)を表し、横軸はUPA又はBARの濃度を表す。具体的には、横軸は下記のとおりである。
・ PBS+Dm ・・・ PBSで希釈したDMSOのみ(UPA又はBARは無し)
・ 0.039 ・・・ UPA又はBARの濃度が0.039μM
・ 0.156 ・・・ UPA又はBARの濃度が0.156μM
・ 0.625 ・・・ UPA又はBARの濃度が0.625μM
・ 2.5 ・・・ UPA又はBARの濃度が2.5μM
・ 10 ・・・ UPA又はBARの濃度が10μM
図7に示したように、長期培養の系では、次第に細胞死が起こるが、少なくとも2.5μMのUPA、2.5~10μMのBARにより、長期培養による細胞死が抑制された。また、より低濃度のUPA、BARでも、長期培養による細胞死が抑制される傾向が見られた。
HCQの網膜毒性はHCQ平均血中濃度と正の相関が報告されており、血中濃度が0~741ng/mLの群で1.2%と最小の網膜毒性出現率である一方、最近のメタアナリシスにより、臨床効果を得るための血中濃度として、750ng/mL以上の濃度が提唱されており、網膜毒性のリスクを念頭に置きつつ、一定の濃度でのHCQの血中濃度維持がその効果発現には求められる。
上記したJAK阻害剤の細胞保護効果は、通常用量内服によって得られる最大血中濃度(1μM)よりもはるかに低い濃度(16~400nM)でもその傾向が認められており、JAK阻害剤を必要最低限の用量で継続しつつHCQを継続することで、HCQの毒性を最小限にしつつHCQの臨床効果を得ることが可能になる。したがって、本発明によれば、HCQの副作用を回避することができ、HCQ内服中の症例の網膜症や腎障害の抑制につながる可能性がある。
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を含み、
ヒドロキシクロロキン(HCQ)による細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制することを特徴とする細胞死抑制剤である。
<2> 前記細胞死が、HCQによる細胞死であり、前記細胞死抑制剤が、前記HCQを使用する前に用いられる前記<1>に記載の細胞死抑制剤である。
<3> 前記JAK阻害剤が、バリシチニブ、ウパダシチニブ、トファシチニブ、ペフィシチニブ、及びフィルゴチニブからなる群から選択される少なくとも1つである前記<1>から<2>のいずれかに記載の細胞死抑制剤である。
<4> 個体に、前記<1>から<3>のいずれかに記載の細胞死抑制剤を投与することを特徴とする細胞死抑制方法である。
<5> HCQが用いられる疾患に使用するための医薬であって、
JAK阻害剤を含み、HCQによる細胞死を抑制する細胞死抑制剤を含有することを特徴とする医薬である。
<6> 前記医薬が、前記HCQを使用する前に用いられる前記<5>に記載の医薬である。
<7> 前記JAK阻害剤が、バリシチニブ、ウパダシチニブ、トファシチニブ、ペフィシチニブ、及びフィルゴチニブからなる群から選択される少なくとも1つである前記<5>から<6>のいずれかに記載の医薬である。
<8> 個体に、前記<5>から<7>のいずれかに記載の医薬を投与することを特徴とするHCQが用いられる疾患の治療方法である。
<9> インビトロにおける細胞死を抑制する方法であって、
JAK阻害剤を細胞に添加することを含み、
前記細胞死が、HCQによる細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死であることを特徴とする方法である。
<10> 前記細胞死が、HCQによる細胞死であり、
前記JAK阻害剤が、前記HCQを使用する前に用いられる前記<9>に記載の方法である。
<11> 前記JAK阻害剤が、バリシチニブ、ウパダシチニブ、トファシチニブ、ペフィシチニブ、及びフィルゴチニブからなる群から選択される少なくとも1つである前記<9>から<10>のいずれかに記載の方法である。

Claims (9)

  1. ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を含み、
    ヒドロキシクロロキン(HCQ)による細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死を抑制することを特徴とする細胞死抑制剤。
  2. 前記細胞死が、HCQによる細胞死であり、
    前記細胞死抑制剤が、前記HCQを使用する前に用いられる請求項1に記載の細胞死抑制剤。
  3. 前記JAK阻害剤が、バリシチニブ、ウパダシチニブ、トファシチニブ、ペフィシチニブ、及びフィルゴチニブからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1から2のいずれかに記載の細胞死抑制剤。
  4. HCQが用いられる疾患に使用するための医薬であって、
    JAK阻害剤を含み、HCQによる細胞死を抑制する細胞死抑制剤を含有することを特徴とする医薬。
  5. 前記医薬が、前記HCQを使用する前に用いられる請求項4に記載の医薬。
  6. 前記JAK阻害剤が、バリシチニブ、ウパダシチニブ、トファシチニブ、ペフィシチニブ、及びフィルゴチニブからなる群から選択される少なくとも1つである請求項4から5のいずれかに記載の医薬。
  7. インビトロにおける細胞死を抑制する方法であって、
    JAK阻害剤を細胞に添加することを含み、
    前記細胞死が、HCQによる細胞死及び長期培養による細胞死のいずれかの細胞死であることを特徴とする方法。
  8. 前記細胞死が、HCQによる細胞死であり、
    前記JAK阻害剤が、前記HCQを使用する前に用いられる請求項7に記載の方法。
  9. 前記JAK阻害剤が、バリシチニブ、ウパダシチニブ、トファシチニブ、ペフィシチニブ、及びフィルゴチニブからなる群から選択される少なくとも1つである請求項7から8のいずれかに記載の方法。
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